JP5933848B2 - 耐変色性銅合金および銅合金部材 - Google Patents

耐変色性銅合金および銅合金部材 Download PDF

Info

Publication number
JP5933848B2
JP5933848B2 JP2015539378A JP2015539378A JP5933848B2 JP 5933848 B2 JP5933848 B2 JP 5933848B2 JP 2015539378 A JP2015539378 A JP 2015539378A JP 2015539378 A JP2015539378 A JP 2015539378A JP 5933848 B2 JP5933848 B2 JP 5933848B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
mass
phase
content
discoloration
copper alloy
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2015539378A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2015046421A1 (ja
Inventor
真次 田中
真次 田中
恵一郎 大石
恵一郎 大石
畑 克彦
克彦 畑
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Mitsubishi Shindoh Co Ltd
Original Assignee
Mitsubishi Shindoh Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Mitsubishi Shindoh Co Ltd filed Critical Mitsubishi Shindoh Co Ltd
Application granted granted Critical
Publication of JP5933848B2 publication Critical patent/JP5933848B2/ja
Publication of JPWO2015046421A1 publication Critical patent/JPWO2015046421A1/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C22METALLURGY; FERROUS OR NON-FERROUS ALLOYS; TREATMENT OF ALLOYS OR NON-FERROUS METALS
    • C22CALLOYS
    • C22C9/00Alloys based on copper
    • C22C9/04Alloys based on copper with zinc as the next major constituent

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • Mechanical Engineering (AREA)
  • Metallurgy (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Agricultural Chemicals And Associated Chemicals (AREA)
  • Laminated Bodies (AREA)

Description

本発明は、黄銅色を呈するとともに耐変色性を有する耐変色性銅合金及びこの耐変色性銅合金を用いた銅合金部材に関するものであり、特に、熱間加工性、冷間加工性、プレス性等の加工性および機械的性質に優れ、且つ、抗菌性および殺菌性に優れた耐変色性銅合金及びこの耐変色性銅合金を用いた銅合金部材に関する。
本願は、2013年9月26日に、日本に出願された特願2013−199475号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
従来、Cu−Zn等の銅合金は、配管器材、建築資材、電気・電子機器、日用品、機械部品等の各種用途に使用されている。建築材の中で、手すり、ドアノブ等の装飾・建築用金具、洋食器、キー等の用途においては、美観上の問題から変色しにくいことが要求されている。その要求に対処するために、銅合金製品にニッケル・クロムめっき等のめっき処理あるいはクリア塗装などの樹脂で表面を被覆している。
しかし、めっき製品は、長期間の使用により表面のめっき層が剥離してしまう。また、塗装製品は、経年により色調が変化するとともに、塗装皮膜が剥離するという問題を有している。また、めっき製品および塗装製品は、銅合金と接触することがないため銅合金のもつ抗菌性(殺菌性)が損なわれてしまう。
Cu−Zn等の銅合金はZnの含有量が15mass%、または、20mass%を超えると黄銅色を有するようになる。しかしながら、めっきあるいは塗装などの保護皮膜を形成させず、素材表面のままで装飾品などに使用すると、置かれている環境にも影響されるが短期間で茶褐色あるいは赤褐色に変色してしまう。また、変色の状況は均一に変色するわけではなく、環境、部位や場所により変色あるいは色調に差がある不均一な変色となり、当初の金属光沢のある美麗な状態を維持できなくなる。
従来から、耐変色性のある材料として銅合金では、めっきと同じような光沢のある白色を呈するCu−Ni−Zn合金や黄金色を呈するアルミニウム青銅が提案されている。
そのようなCu−Ni−Zn合金として、例えば、JIS C 7941には、Cu(60.0〜64.0mass%)、Ni(16.5〜19.5mass%)、Pb(0.8〜1.8mass%)、Zn(残部)等を含有する快削洋白が規定されている。また、特許文献1には、Al(5〜9mass%)、Ni(1〜4mass%)、In(0.005〜0.3mass%)にMn(0.1〜0.5mass%)、Co(0.001〜0.01mass%)、Be(0.0025〜0.2mass%)、Ti(0.001〜0.01mass%)、Cr(0.05〜0.2mass%)、Si(0.001〜0.5mass%)、Zn(0.005〜0.5mass%)、Sn(0.003〜0.4mass%)のうち1種又は2種を含有し、残部Cuと不可避不純物からなるアルミ銅合金が開示されている。
また、銅合金においては、抗菌作用(殺菌作用)を有することが知られている。病院等の医療機関では抗生物質等の薬剤耐性を得た黄色ブドウ球菌や緑膿菌等が患者に感染する、一般的に院内感染と呼ばれている問題が発生している。また、インフルエンザなどの感染症は世界的な広がりを見せるなど、菌あるいはウィルスなどが原因である疾患が問題視されている。
例えば、院内感染では、原因となる菌の経路は色々あり、菌を持っている患者が触れ、菌が付着したところに別の患者あるいは医療従事者が触れ、その原因菌が院内に広がっていくことが考えられる。これらの患者や医療従事者が触れる物を銅合金とすることにより、それらの菌が死滅あるいは減少する。そして、それに伴って感染経路が絶たれること等により、院内感染を減少させることが期待される。具体的には、院内の各扉に設置されている取手、レバーハンドル、ドアハンドル等、或いは、ベッドに設置される柵、サイドレール、ナースカートを銅合金とすることで、菌の拡大経路を少なくすることが期待できる。またインフルエンザなどでは、電車、バスあるいは公園等の公共機関において不特定多数の人が接触するような部材に抗菌性(殺菌性)のある銅合金を使用することで様々な菌、ウィルスによる感染を予防することが可能となる。
日本国特開2004−143574号公報
しかしながら、JIS C 7941に開示された銅合金は、Ni及びPbを大量に含有するものであって健康衛生面で問題があるので、その用途が制限される。Niは金属アレルギーの中でも特に強いNiアレルギーを引き起こす原因となるものである。また、Pbは周知のように有害物質なので、人の肌に直接触れる手すり等の建築金具や、家電製品等の身の回り品等としての用途には問題がある。また、Niを大量に含有させると熱間圧延性、プレス性等の加工性が劣り、Niが高価であることとも相俟って製造コストが高くなるので、用途が制限される。
さらに、特許文献1に開示された銅合金は、Alが5mass%以上含まれたアルミニウム含有合金であり、耐変色性には優れるが、圧延などの加工性が劣るため、主に鋳物材として製造され、薄板などに加工することが困難である。更に、曲げなどの加工を伴う、例えば90度曲げなどでは延性が乏しいため曲げ部分に割れが生じるなど、冷間加工性が悪い。また、表面にアルミニウムの酸化皮膜が形成することにより抗菌性が弱く、長期の使用で抗菌性を失うことになり、問題がある。
また、取手、レバーハンドル、ドアハンドル等に通常の銅合金を実際に使用すると、時間と共に人体と触れる部分とそうでない部分とで材料に色調の差が生じる。長期的な使用においては、人体との接触が多い部分は変色層(酸化物)の形成が遅い、あるいは変色層が形成されたとしても人体が接触することによる摩耗などの物理的作用により除去されることになり、その他の部分(人体との接触が少ない部分)との色調の差がより明確になり、美観上余り優れているとは言い難い。なお、これらの色調の差は、人体が材料に触れて人体の汗、皮脂などが材料に付着し、その付着した物質による変色を促進あるいは遅延させる効果によって、人体が触れない場所と表面条件が異なることによって生じる。また、変色は材料が使用される環境によっても異なり、高温・高湿であるほど発生しやすく、水滴(雨水など含む)が付着するようなところでは顕著に現れ、更にこれらの場合には極短期に変色が発生する。そのため、これらの用途に用いられている銅合金製取手類のほとんどは、めっき、クリアコート等により銅合金表面を被覆して変色が発生し難い状態で使用されている。
銅合金は他の金属には無い有色金属であり、代表的な色調として銅の赤橙色、黄銅(Cu−Zn合金)の黄色あるいは洋白(Cu−Ni−Zn合金)の銀白色などがある。このように銅合金は添加元素により様々な色調の材料となるが、上述のように人体と接触する条件下で使用された場合、合金によっても異なるが、変色することは避け難いものである。特に、赤橙色である銅、および黄色である黄銅は極短時間で変色が発生するが、他金属には無い色調であるため、意匠的、デザインあるいは美観上の観点からこれら有色の銅合金材料が用いられることがある。しかし、変色を防止するためにクリアコートなどの樹脂皮膜を表面に被覆(塗装)されており、上述した抗菌性(殺菌性)の機能が発揮されない状況にある。
本発明は、以上のような事情を背景としてなされたものであって、黄色(黄銅色)の色調を有するとともに、熱間加工性、冷間加工性、プレス性等の加工性に優れ、さらに耐変色性と抗菌性(殺菌性)にともに優れた耐変色性銅合金およびこの耐変色性銅合金を用いた銅合金部材を提供することを目的としている。
前記課題を解決するため、本発明者は、黄銅色を呈する銅合金の組成及び金属組織について検討した結果、次のような知見を得た。
Cu−Zn−Sn−Al合金においては、それぞれの添加元素の含有量にもよるが、熱間圧延あるいは熱間押出など材料が高温になると、マトリックス中にβ相が出現し、熱間での変形抵抗を低くさせ、熱間変形能が優れるようになる。しかし、常温(室温)においてβ相の面積率が0.9%又はγ相の面積率が0.7%を超えて存在すると、延性が悪くなり、次工程の冷間圧延あるいは冷間抽伸などの冷間加工性だけでなく、耐変色性などが悪くなる。また、管材では曲率半径の小さい曲げや扁平などの加工も劣ることとなる。更に耐食性にも悪影響を及ぼし、脱亜鉛腐食性、応力腐食割れ性が悪くなる。なお、Cu−Zn−Sn−Al合金で出現するβ相は、Sn、Alを含有していることから、Cu―Zn合金のβ相よりも硬く、脆い。
また、Cu−Zn−Sn−Al合金では、熱間圧延あるいは熱間押出などの高温で加工するとβ相が出現し、冷却条件によっては共析反応によりβ相からγ相が出現するようになる。γ相はマトリックスの大部分を占めるα相と比較しても硬質な相であり、β相よりもZn含有量が多く、Sn,Alもβ相よりも2倍以上含有されるため、硬質で脆い相である。このγ相の面積率が0.7%を超えると、β相と同じく材料の延性が乏しくなり、冷間加工性が低下する。また、β相よりも影響は小さいものの脱亜鉛腐食性などの耐食性が低下し、耐変色性も悪くなる。更にγ相が0.7%を超えると材料の延性が著しく低下し、衝撃が加わるような部材に用いると割れが生じる可能性も高くなる。Sn、Alの一部をNiで置き換えたCu−Zn−Sn−Al−Ni合金についても同様であり、マトリックス中の金属組織が材料の様々な特性に影響する。
なお、Cu−Zn合金は、一般的に鋳造により製造した鋳塊を高温に加熱した後、熱間圧延あるいは熱間押出などで加工する。その後、冷間での圧延あるいは抽伸の塑性加工および焼鈍などの熱処理を繰り返すことで所望の寸法の製品を得る。Cu−Sn合金やCu−Zn−Ni合金などの熱間加工性の悪い材料では、連続鋳造により鋳塊よりも薄い(圧延品)あるいは細い(押出材)サイズの鋳物を製造し、その後、冷間加工することにより製造される。鋳塊は、鋳型にもよるが1時間当たり10トン程度で製造することが可能であるが、連続鋳造では鋳塊に較べ断面積が小さいため1時間当たりの製造量は数分の1と小さくなる。このため製造コストとしては、鋳塊で製造する方が連続鋳造で製造するよりも低く、多くの銅合金は、鋳塊を製造した後の熱間加工により製造する方法を採用している。Cu−Zn−Sn−Al合金もCu−Zn合金と同じく鋳塊を熱間圧延あるいは熱間押出により製造可能であるが、連続鋳造によっても製造可能であり、少量の製品が必要な場合、連続鋳造で製造する方がコスト的に優位になることもある。
以上のように、各元素の添加量および製造条件に影響されるが、材料が高温になると現れるβ相が、冷却過程でγ相に変態し、また常温でもβ相が残存することになり、それぞれの相が単独でそれぞれ面積率0.7%(γ相)、0.9%(β相)を超えるだけでなく、β相とγ相の面積率をそれぞれ(β)%および(γ)%とすると、2×(γ)+(β)が合わせて1.5%を超えると、冷間での延性の低下により冷間加工性が低下するとともに、耐変色性および耐食性が劣化するおそれがある。
また、固体である銅合金の抗菌性(殺菌性)は、その表面において過酸化水素や活性ラジカルなどの活性酸素群が生成し、この活性酸素群が菌の細胞膜やDNAに作用することで発揮される。この活性酸素群が生成する銅合金の表面では、銅が酸化・還元反応に寄与しており、大気中に存在する水分などと反応することになる。また、銅合金に液体が接触する場合の抗菌性(殺菌性)も接触する液体と銅合金が反応し、銅イオンが溶出する。これらの反応は、いわゆる銅合金が腐食することと同じであり、抗菌性(殺菌性)が発揮される際には、銅合金の表面では腐食反応が起こる。銅合金の表面が腐食するということは、銅合金の変色の起因となる。このように、抗菌性(殺菌性)は、耐変色性と基本的に相反する特性であり、耐変色性を高めることは抗菌性(殺菌性)の効果を弱めることに繋がる。つまり、耐変色性と抗菌性(殺菌性)は必ずしも両立するものではない。このように相反する特性を両立させるためには、Zn、SnおよびAl等の関係式、SnとAl等の関係式が重要となる。
本発明は、上記の本発明者の知見に基づき完成された。すなわち、前記課題を解決するため、以下の発明を提供する。
本発明の第1の態様である耐変色性銅合金は、17〜34mass%のZnと、0.01〜2.5mass%のSnと、0.005〜1.8mass%のAlと、0.0005〜0.009mass%のPbとを含有し、残部がCu及び不可避不純物からなり、Znの含有量〔Zn〕mass%と、Snの含有量〔Sn〕mass%と、Alの含有量〔Al〕mass%との間に、24≦〔Zn〕+5×〔Sn〕+3×〔Al〕≦40の関係を有し、かつ、Snの含有量〔Sn〕mass%と、Alの含有量〔Al〕mass%との間に、1.2≦〔Sn〕+2×〔Al〕≦4.0の関係を有しており、α相マトリックスのγ相の面積率(γ)%とβ相の面積率(β)%との間に0≦2×(γ)+(β)≦1.5の関係を有するとともに、α相マトリックスに面積率で0〜0.7%のγ相および0〜0.9%のβ相が分散した金属組織とされている。
本発明の第1の態様である耐変色性銅合金によれば、Zn、Sn、Al、Pbの含有量が上述の範囲内とされているとともに、Zn、SnおよびAlの関係、SnとAlの関係が、それぞれ上述の範囲内に規定されているので、黄銅色を呈することになる。さらに耐変色性と抗菌性(殺菌性)とを両立することができ、銅合金の優れた抗菌性(殺菌性)を維持したまま、耐変色性を向上させることが可能となる。
また、α相マトリックスにおけるγ相とβ相の面積率が上述のように規定されているので、加工性、耐変色性、耐食性を向上させることができる。
本発明の第2の態様である耐変色性銅合金は、17〜34mass%のZnと、0.01〜2.5mass%のSnと、0.005〜1.8mass%のAlと、0.0005〜0.009mass%のPbと、0.01〜5mass%のNiを含有し、残部がCu及び不可避不純物からなり、Znの含有量〔Zn〕mass%と、Snの含有量〔Sn〕mass%と、Alの含有量〔Al〕mass%と、Niの含有量〔Ni〕mass%の間に、24≦〔Zn〕+5×〔Sn〕+3×〔Al〕−0.5×〔Ni〕≦40の関係を有し、かつ、Snの含有量〔Sn〕mass%と、Alの含有量〔Al〕mass%と、Niの含有量〔Ni〕mass%との間に、1.2≦0.7×〔Ni〕+〔Sn〕+2×〔Al〕≦4.0の関係を有しており、α相マトリックスのγ相の面積率(γ)%とβ相の面積率(β)%との間に0≦2×(γ)+(β)≦1.5の関係を有するとともに、α相マトリックスに面積率で0〜0.7%のγ相および0〜0.9%のβ相が分散した金属組織とされている。
本発明の第2の態様である耐変色性銅合金においては、上述した第1の態様である耐変色性銅合金におけるSnとAlの一部をNiで代替した。ここで、Zn、Sn、Al、Pb、Niの含有量が上述の範囲内とされているとともに、Zn、Sn、AlおよびNiの関係、SnとAlおよびNiの関係が、それぞれ上述の範囲内に規定されているので、銅合金の優れた抗菌性(殺菌性)を維持したまま、耐変色性を向上させることが可能となる。また、Niを添加することにより、耐変色性、耐食性をさらに向上させることができる。
さらに、α相マトリックスにおけるγ相とβ相の面積率が上述のように規定されているので、加工性、耐変色性、耐食性を向上させることができる。
また、本発明の第3の態様である耐変色性銅合金は、上述した第1,2の態様の耐変色性銅合金において、さらに、0.01〜1.0mass%のSi、0.01〜0.5mass%のTi、0.01〜1.5mass%のMn、0.001〜0.09mass%のFeのうちいずれか1種以上を含有し、Znの含有量〔Zn〕mass%と、Snの含有量〔Sn〕mass%と、Alの含有量〔Al〕mass%と、Si、Ti、Ni、Mn、Feのそれぞれの含有量〔Si〕mass%、〔Ti〕mass%、〔Ni〕mass%、〔Mn〕mass%、〔Fe〕mass%との間に、24≦〔Zn〕+5×〔Sn〕+3×〔Al〕+2.5×〔Si〕+1.0×〔Ti〕−0.5×〔Ni〕+0.5×〔Mn〕+0.2×〔Fe〕≦40の関係を有する。
本発明の第3の態様である耐変色性銅合金によれば、Si、Ti、Mn、Feといった元素を、使用用途に応じて上述の範囲内で適宜添加することにより、所望の特性を備えた耐変色性銅合金を得ることが可能となる。そして、これらの元素を添加した場合であっても、Zn、Sn、Al、Ni、Si、Ti、Mn、Feの関係を上述の範囲内とすることにより、銅合金の優れた抗菌性(殺菌性)を維持したまま、耐変色性を向上させることが可能となる。
また、本発明の第4態様である耐変色性銅合金は、上述した第1〜3の態様の耐変色性銅合金において、さらに、0.005〜0.09mass%のP、0.01〜0.09mass%のSb、0.01〜0.09mass%のAs、0.001〜0.03mass%のMgのうちのいずれか1種以上を含有する。
本発明の第4の態様である耐変色性銅合金によれば、P、Sb、As、Mgといった元素を、使用用途に応じて上述の範囲内で適宜添加することにより、所望の特性を備えた耐変色性銅合金を得ることが可能となる。なお、これらの元素の含有量は、比較的少なく規定されており、抗菌性(殺菌性)や耐変色性への影響が小さいことから、Zn、Sn、Al等との関係を考慮する必要はない。
本発明の第5の態様である耐変色性銅合金は、上述した第1〜4の態様の耐変色性銅合金において、溶接管、鍛造品、鋳物の形態で使用されることを特徴とする。
本発明の第5の態様である耐変色性銅合金によれば、溶接管、鍛造品、鋳物の形態で使用することにより、各種製品の部材として広く適用することができる。
本発明の第6の態様である耐変色性銅合金は、上述した第1〜5の態様の耐変色性銅合金において、抗菌性試験における10分経過後の生菌率が、純銅の生菌率と同等もしくは低くなっている。
本発明の第6の態様である耐変色性銅合金によれば、純銅と同等もしくはより優れた抗菌性を有することになり、医療機関、公共施設、衛生管理に厳しい研究施設(例えば食品、化粧品、医薬品等)で使用される製品の部材として適用することが可能となる。
本発明の銅合金部材は、上述した第1〜5の態様の耐変色性銅合金からなる耐変色性銅合金からなる基材と他部材とが接合されることにより構成されている。他部材とは例えば本発明の耐変色性銅合金や一般的な銅及び銅合金、鉄鋼材料、スレンレス鋼、アルミニウム合金などの金属材料や樹脂、木材など、耐変色性銅合金を用いた製品として、目的に応じていろいろな部材の材料のことを示す。
この構成の銅合金部材によれば、上述の耐変色性銅合金を基材として用いているので、基材の変色が抑制されるとともに抗菌性(殺菌性)に優れることになり、様々な用途で使用することが可能となる。
本発明の銅合金部材の具体的な用途としては、ドアハンドル、ドアノブ、ドアプッシュ板、手摺り、ベッド柵、サイドボード、机天板、椅子背もたれ、ナースカート取手の部材、ペンのグリップ、キーボード、マウス、シンク、つり革、建材等が挙げられる。
本発明によれば、黄色(黄銅色)の色調を有するとともに、熱間加工性、冷間加工性、プレス性等の加工性に優れ、さらに耐変色性と抗菌性(殺菌性)にともに優れた耐変色性銅合金およびこの耐変色性銅合金を用いた銅合金部材を提供することが可能となる。
以下に、本発明の実施形態に係る耐変色性銅合金について説明する。なお、本明細書では、〔Zn〕のように括弧付の元素記号は当該元素の含有量(mass%)を示すものとする。
また、本実施形態では、この含有量の表示方法を用いて、以下のように、複数の組成指数を規定する。なお、組成指数f1において、添加されていない元素、および、Sn、Al、Si、Ti、Ni、Mn、Feについては、各々の含有量が0.01mass%より少ない場合は、組成指数f1の数値にほとんど影響しないとして、〔〕=0とする。
組成指数f1=〔Zn〕+5×〔Sn〕+3×〔Al〕+2.5×〔Si〕+1.0×〔Ti〕−0.5×〔Ni〕+0.5×〔Mn〕+0.2×〔Fe
組成指数f2=〔Sn〕+2×〔Al〕
組成指数f3=0.7×〔Ni〕+〔Sn〕+2×〔Al〕
組成指数f4=〔Sn〕×〔Al〕+0.1×〔Ni〕
本発明の第1の実施形態に係る耐変色性銅合金は、17〜34mass%のZnと、0.01〜2.5mass%のSnと、0.005〜1.8mass%のAlと、0.0005〜0.009mass%のPbとを含有し、残部がCu及び不可避不純物からなり、 Znの含有量〔Zn〕mass%と、Snの含有量〔Sn〕mass%と、Alの含有量〔Al〕mass%との間に、24≦〔Zn〕+5×〔Sn〕+3×〔Al〕≦40の関係を有し、かつ、Snの含有量〔Sn〕mass%と、Alの含有量〔Al〕mass%との間に、1.2≦〔Sn〕+2×〔Al〕≦4.0の関係を有している。すなわち、この第1の実施形態に係る耐変色性銅合金においては、組成指数f1が24≦f1≦40の範囲内、組成指数f2が1.2≦f2≦4.0の範囲内とされている。
なお、上述の組成とされた第1の実施形態である耐変色性銅合金を、第1発明合金と称する。
本発明の第2の実施形態に係る耐変色性銅合金は、17〜34mass%のZnと、0.01〜2.5mass%のSnと、0.005〜1.8mass%のAlと、0.0005〜0.009mass%のPbと、0.01〜5mass%のNiを含有し、残部がCu及び不可避不純物からなり、Znの含有量〔Zn〕mass%と、Snの含有量〔Sn〕mass%と、Alの含有量〔Al〕mass%と、Niの含有量〔Ni〕mass%の間に、24≦〔Zn〕+5×〔Sn〕+3×〔Al〕−0.5×〔Ni〕≦40の関係を有し、かつ、Snの含有量〔Sn〕mass%と、Alの含有量〔Al〕mass%と、Niの含有量〔Ni〕mass%との間に、1.2≦0.7×〔Ni〕+〔Sn〕+2×〔Al〕≦4.0の関係を有している。さらに、本実施形態では、0.3≦〔Sn〕×〔Al〕+0.1×〔Ni〕≦1.4の関係を有している。すなわち、この第2の実施形態に係る耐変色性銅合金においては、組成指数f1、24≦f1≦40の範囲内、組成指数f3が1.2≦f3≦4.0の範囲内とされている。
なお、上述の組成とされた第2の実施形態である耐変色性銅合金を、第2発明合金と称する。
本発明の第3の実施形態に係る耐変色性銅合金は、上述の第1、2発明合金において、さらに0.01〜1.0mass%のSi、0.01〜0.5mass%のTi、0.01〜1.5mass%のMn、0.001〜0.09mass%のFeのうちいずれか1種以上を含有し、Znの含有量〔Zn〕mass%と、Snの含有量〔Sn〕mass%と、Alの含有量〔Al〕mass%と、Si、Ti、Ni、Mn、Feのそれぞれの含有量〔Si〕mass%、〔Ti〕mass%、〔Ni〕mass%、〔Mn〕mass%、〔Fe〕mass%との間に、24≦〔Zn〕+5×〔Sn〕+3×〔Al〕+2.5×〔Si〕+1.0×〔Ti〕−0.5×〔Ni〕+0.5×〔Mn〕+0.2×〔Fe〕≦40の関係を有している。すなわち、この第3の実施形態に係る耐変色性銅合金においては、組成指数f1が24≦f1≦40の範囲内とされている。また、組成指数f2、f3は、それぞれ上述の第1の実施形態または第2の実施形態で規定した範囲内とされている。
なお、上述の組成とされた第3の実施形態である耐変色性銅合金を、第3発明合金と称する。
本発明の第4の実施形態に係る耐変色性銅合金は、上述の第1〜3発明合金において、さらに、0.005〜0.09mass%のP、0.01〜0.09mass%のSb、0.01〜0.09mass%のAs、0.001〜0.03mass%のMgのうちのいずれか1種以上を含有している。ここで、P、Sb、Asは、含有量が少なく特性に与える影響が小さいことから、組成指数f1には考慮されていない。よって、この第4の実施形態に係る耐変色性銅合金においても、上述の組成指数f1が24≦f1≦40の範囲内とされている。また、組成指数f2、f3は、それぞれ上述の第1の実施形態または第2の実施形態で規定した範囲内とされている。
なお、上述の組成とされた第4の実施形態である耐変色性銅合金を、第4発明合金と称する。
そして、上述した本発明の第1〜4の実施形態に係る耐変色性銅合金(第1〜4発明合金)においては、α相マトリックスのγ相の面積率(γ)%とβ相の面積率(β)%との間に0≦2×(γ)+(β)≦1.5の関係を有するとともに、α相マトリックスに面積率で0〜0.7%のγ相および0〜0.9%のβ相が分散した金属組織を有している。
以下に、成分組成、組成指数f1、f2、f3、f4、金属組織を、上述のように規定した理由について説明する。
(Zn:17mass%以上34mass%以下)
Znは、本発明合金において主要元素であり、引張強度、耐力等の機械的強度、耐変色性、加工性を向上させ、更にSn,Alとの相乗効果によって各種特性をより向上させる作用効果を有する。また、抗菌性(殺菌性)の効果をより強化し、銅合金の特性を確保する上で重要な元素である。なお、純銅や銅濃度の高い銅合金よりも、Znを多く含有する銅合金の方が耐変色性、強度に優れ、抗菌性(殺菌性)において同等もしくはより優れる。さらに、Cuとの合金である黄銅の特長的な色調である黄色(黄色味を帯びた色調、黄銅色)を発揮させるためにも必須の元素である。Zn、Sn,Al等(Cuは残部)の含有量によってはβ相が出現することになり、常温(室温)でもβ相が残存する可能性が高くなり、β相の面積率によっても異なるが、加工性、耐食性等が劣るなどの問題を生じる可能性がある。また、含有成分によって異なるが、β相から冷却条件によってはγ相が共析反応により生じ、γ相がマトリックスに存在するとβ相と同じく冷間での加工性や耐食性が悪くなる。これは高温加熱されるろう付けや溶接などの接合がなされる部分においても同様である。なお、溶接管は条製品(素材をテープ形状のコイルに巻き取られた製品)を、ロール(型)を用いて円形に成型し、その両端を溶接により接合し管材を得るが、溶接部分は加熱され高温になり融点を局部的に超える。また、材料厚さ(管材では肉厚)が薄いため、溶接後に大気空冷されるときの冷却速度が速く、溶接箇所およびその近傍(溶接箇所を中心として幅10mm(片側5mm)離れた部分までの熱影響部)はβ相が残存しやすくなる。なお、溶接管の溶接には高周波誘導加熱コイルを用いて加熱し、つき合わせて溶接する方法や溶接部を直接TIG溶接で接合するなど種々ある。しかしながら、溶接方法はこれらに限定されるのではなく、ロール成型後の材料の両端をオンライン上で溶接することが可能となる方法であればどのような溶接・接合方法も対応可能である。ろう付けにおいても同様で、コンベア炉を用いた炉中ろう付けという方法もあるが、人の手によりろう付け箇所を部分的にバーナーで炙る手ろう付けという方法などもあり、いずれの場合においてろう付け部分は、ろう材の融点、あるいはそれ以上の温度、たとえば、800度以上の温度に加熱される。そして手ろう付けの場合も溶接と同じく加熱部分は急冷されることになり、β相が残存しやすい。
また、銅合金は優れた抗菌性(殺菌性)を有するが、その作用は銅の含有量に依存するとされており、銅の含有量は少なくとも60mass%以上、好ましくは70mass%以上と言われている。しかし、単純に銅の含有量だけでなく、Zn量やSn,Al量によっても抗菌性(殺菌性)は変化し、特にZn量が17mass%以上、或いは20mass%含まれる方が、Cu含有量の高い銅合金よりも抗菌性(殺菌性)が向上することを実験において確認している。つまり、本発明合金では、Znを一定量以上含有させることと、Sn,Alの相乗効果により抗菌性(殺菌性)が更に向上する。なお、Znの含有量が17mass%を下回ると、合金の色調もやや赤みを帯びてくるようになる。純銅は赤橙色のいわゆる銅色であるが、この銅色の色調である銅合金は、Zn量の多い黄色味を帯びた黄銅色である材料に比べて、耐変色性が劣る。よって、耐変色性についても、Znの含有量を概ね20mass%、またはそれ以上とし、Sn、Alとの相乗効果と相まって優れた性能を発揮する。同じ環境に置かれた場合、例えば60℃、相対湿度95%で8時間暴露したときの銅色の銅合金は茶褐色の変色が見られ、表面がくすんだ状態になるのに対し、黄色(黄銅色)の銅合金では暴露初期の金属光沢を維持し、目立った変色は認められないなど、Znが含有されることで耐変色性は向上する。
Znの含有量は、機械的性質、抗菌性(殺菌性)、合金の色調の点から、17.0mass%以上であり、好ましくは18.0mass%以上、より好ましくは20.0mass%以上であり、最適には21.0mass%以上である。
しかし、Znの含有量が34.0mass%を超えると熱間(材料温度が高温)でβ相が多く出現し、熱間での加工性に寄与する一方で、冷間での延性、曲げ加工性、耐食性、耐応力腐食割れ性および耐変色性が悪くなり、抗菌性(殺菌性)も飽和するか、寧ろ悪くなる。また、溶接管製造時やろう付け時にβ相が出現しやすくなり、γ相も多く存在する可能性が高くなる。Znの含有量は32.0mass%以下が好ましく、更には30.0mass%以下、28.0mass%以下がより好ましい。なお、Znの含有量が少なく17.0mass%未満(Cuの含有量が多くなる)の場合、機械的強度が低下し、熱間での加工性、成形性が悪くなり、Sn,Al等の含有量にもよるが抗菌性(殺菌性)が劣る。また冷間でのプレス加工などの冷間加工時のバリが大きくなる。
これらの各種特性は後述する組成指数f1に大きく影響し、この指数の値により加工性、耐食性、耐変色性および機械的強度なども変化する。
(Sn:0.01mass%以上2.5mass%以下)
Snは耐変色性に大きく寄与するだけでなく、高温でβ相を生じさせやすくするなど、高温での変形抵抗を下げる効果がある。また、耐食性、機械的強度、プレス加工などの打ち抜き性にも貢献する。ただし、Snが含有するCu−Zn合金はγ相が多くなり、γ相が存在することにより冷間での圧延性、加工性、耐食性、耐変色性に影響を与える。Snは銅合金中に含まれた場合、例えば水道水中などの腐食面から見た過酷な環境ではSnの酸化物などを優先的に形成し、銅あるいはその他の元素の酸化物との複合酸化物となるが、安定した保護皮膜として作用することで大きく耐食性に寄与する。酸化物を形成することは腐食することであり、すなわち材料は変色することになるので、変色についてもSnの酸化物が影響する。大気中においての使用でもSnが酸化物あるいは大気中の成分(腐食性のある硫黄酸化物や塩化物などの化合物)によってはそれらの化合物として優先して生成する。ただし、大気中では水中と異なり厚い皮膜ではなく極薄い皮膜として形成するため目視で確認しても色調に大きな変化は見られない。この皮膜が保護作用を示すことで耐変色性が向上する。この皮膜の保護作用が強すぎると抗菌性(殺菌性)にも影響するが、以上の耐変色性や、抗菌性(殺菌性)は、Znの適量存在の元、Alとの共添加によって、より一層高められることになり組成指数f1などによる成分バランスが重要になる。
上述のような効果を発揮するためには、Snは0.01mass%以上必要であり、好ましくは0.1mass%以上、より好ましくは0.3mass%以上、最適には0.5mass%以上である。なお、0.01mass%未満では、耐変色性、抗菌性(殺菌性)の効果が少なく、機械的強度、耐食性などへの寄与も少ない。
一方、Snの含有量が2.5mass%を超えると、耐変色性、耐食性が飽和するだけでなく、常温でのγ相が多く出現(高温でのβ相が多くなる)し、溶接管を含めた溶接性、冷間加工性、冷間での曲げ加工性、耐食性などが悪くなる。したがって、Snの含有量は2.5mass%以下であり、好ましくは2.0mass%以下、より好ましくは1.8mass%以下、最適には1.5mass%以下である。なお、耐変色性、抗菌性(殺菌性)、および組織(β相、γ相)の関係は後述する組成指数f1、f2が大きく関係し、特にAlとの関係式である組成指数f2、f3、f4は各種特性に対して重要な因子となる。単独では効果が少ないものの、Alとの共存による相乗効果が高く、f2の関係式を満足する組成範囲では耐変色性、抗菌性(殺菌性)など種々の特性が良好となる。
なお、Snは、上述のように規定された範囲内、好ましい範囲内においては、色調に与える影響はほとんど無い。
(Al:0.005mass%以上1.8mass%以下)
AlはSnと同じく耐変色性に大きく貢献する。Alは酸化物の生成自由エネルギーが低く酸化しやすい活性な元素の1つである。このAlの添加により表面に極薄い酸化皮膜が形成することで、耐変色性が高くなる。一方、表面に薄い酸化皮膜が生成され耐変色性が向上すると抗菌性(殺菌性)が阻害されるおそれがあるが、適正な配合のZn、Snの配合により、抗菌性(殺菌性)が損なわれずに保持できる。また、高温でのβ相の出現を多くする効果もあり、高温での変形抵抗、変形能にも寄与し、強度も高くなる。ただし、ZnやSn含有量にもよるが、Alの添加は、β相を形成しやすくするので、冷間での加工性に問題を生じるおそれがある。さらに、Alの添加により溶湯の粘度を低下させ、鋳造性も向上すると共に、鋳造時および溶接時に発生するZnの蒸気を抑制する効果もある。同様に、溶接時の溶接性が向上し、健全な溶接管、接合構造体が得られる。一方、Alを多く含むと酸化皮膜を形成しやすくなるものの、酸化皮膜が強固に厚くなり、その皮膜が存在することにより表面に菌が付着したとしても抗菌性(殺菌性)を示す銅合金の母材(素材)と菌の接触が制限され、抗菌性(殺菌性)が低下する。また、大気中などで実際に使用していると酸化などの表面の腐食が進行するが、その腐食により表面に形成した酸化皮膜ために耐変色性には貢献するものの、抗菌性(殺菌性)がより悪くなり、条件によっては抗菌性(殺菌性)を示さなくなるおそれがある。溶接時においても、Alを多く含むと強固なAlの酸化皮膜(酸化物)の形成により、寧ろ溶接性が悪くなる。
上述のような効果を発揮するためには、Alは、0.005mass%以上であり、好ましくは0.1mass%以上必要であり、より好ましくは0.3mass%以上、最適には0.4mass%以上である。なお、0.005mass%未満では表面に形成する酸化皮膜が少なく、耐変色性の効果が小さい。
一方、Alの含有量が1.8mass%を超えると、強固な酸化皮膜が形成することにより耐変色性は良好になるが抗菌性(殺菌性)あるいは溶接性を阻害することになる。好ましくは1.7mass%以下、より好ましくは1.6mass%以下であり、最適には1.5mass%以下である。また、Snと同じく特性、組織などについては組成指数f1、f2、f3、f4に大きく影響される。
なお、Alは、上述のように規定された範囲内、好ましい範囲内においては、色調に与える影響はほとんど無い。
(Pb:0.0005mass%以上0.030mass%以下)
Pbは、プレス等のせん断加工や研磨等の加工性を向上させるために含有される。Pbは、金属組織がα単相のCu−Zn−Sn−Al系合金には、常温でほとんど固溶しない。Zn、Sn、Al等(残部Cu)が上述した組成範囲内であり、組成指数f1、f2が適正範囲内であり、熱間圧延あるいは熱間押出終了後の冷却時、熱処理の冷却時、又は、溶接管溶接後、鍛造後およびろう付け後の加熱部分の冷却時に、結晶粒界を主として、Pbが析出する。これらのPbは、Pb粒子として微細に析出するので、プレス等のせん断加工や、研磨等の加工性が向上する。
以上のような効果を発揮するためには、Pbは0.0005mass%以上であり、好ましくは0.001mass%以上である。一方、Pbの含有量が多すぎると、合金の延性、熱間圧延性、溶接性、溶接管の扁平加工性や曲げ性に悪影響を与える。Pbの含有量は、0.030mass%以下であり、好ましくは0.015mass%以下であり、最適には0.009mass%以下である。特に、Pbは有害物質であるので、より少ない方が望ましい。
次に、第2発明合金において添加されるNiについて説明する。
(Ni:0.01mass%以上5mass%以下)
Niは、耐変色性を確保する上で、また、溶接や熱間加工時に生成するβ相、γ相の生成を抑制する重要な元素である。耐変色性について上述のSnとAlの効果をNiで代替したものである。すなわちSnやAlは酸化物などの安定な皮膜を材料表面に形成することによって耐変色性が向上するが、NiもCuやその他元素との複合的な酸化物を形成し、耐変色性に寄与する。Ni添加量にもよるが、Cu−Zn合金にNi単独で添加しても耐変色性を向上させる効果はSnやAlに比べ低く、SnおよびAlとの共添加によって耐変色性に貢献する。
ここで、Niの含有量が一定量を超えると、鋳造時の湯流れ性の悪化やSn,Al,Zn量とも関係するが熱間圧延の表面割れや耳割れが発生するなど、熱間加工性が悪くなる。また、プレス成形性が低下し、アレルギー(Niアレルギー)が生じる可能性が高くなり、黄銅色から離れ、白色を帯びてくるようになる。しかし、Niの含有量が少ないと、耐変色性を向上させる効果が少ない。そこで、Niを添加する場合、Niの含有量は、0.01mass%以上であり、好ましくは0.3mass%以上である。特に、Sn、Alの効果をNiで代替する場合、SnとAlの合計含有量が0.02mass%以上で、0.5mass%以下の場合(Snの含有量〔Sn〕mass%と、Alの含有量〔Al〕との間に0.02≦[Sn]+[Al]≦0.5)、良好な耐変色性などの特性を得るためのNiの含有量は1.5mass%以上が好ましい。耐変色性などはSnおよびAlとNiの共添加によって発揮されるが、SnおよびAlの含有量が少ない場合にNi含有量も少なくなると耐変色性への効果が小さくなり、Ni含有量を1.5mass%以上とすることでSn、Alの耐変色性等への効果の低下分をNiの添加で補うことができる。
一方、黄銅色を有すること、Niアレルギーや、熱間圧延性の観点から、Niの含有量は、5.0mass%以下である。好ましくは4.0mass%以下、最適には、3.0mass%以下である。なお、Niは、抗菌性(殺菌性)への寄与は小さく、Zn、Al、Snとの配合割合を表す組成指数f1、f3、f4が重要になる。
次に、第3発明合金において添加されるSi、Ti、Mn、Feについて説明する。
(Si:0.01mass%以上1.0mass%以下)
Siの添加は高温でのβ相を拡大する効果があり、高温での変形抵抗、変形能を向上させるが、多量に含むとβ相が多くなり、常温(室温)でもβ相が多く残存し、Sn、Alとの共添によりγ相なども多くなる(冷却条件にも影響される)。また、機械的強度も高くなるものの、伸びが低下し、強度と伸びのバランスが悪くなる。0.01mass%以下では耐変色性の効果は小さく、1.0mass%を超えて添加すると、耐変色性には効果があるが、β相の析出だけでなく、機械的強度と伸びのバランスが悪くなる。
以上のことから、Siを添加する場合には、Siの含有量は0.01mass%以上1.0mass%以下となり、好ましくは0.01mass%以上0.5mass%以下である。
(Ti:0.01mass%以上0.5mass%以下)
Tiは、Cu−Zn−Sn−Al合金には多く固溶せず、一部TiCuなどの析出物を形成する。Tiの添加は耐変色性には寄与するものの、多量に存在すると析出物が多くなり、強度には寄与するが、伸び値が低下する。また鋳造時の酸化物の巻き込みなどが問題となり、真空溶解など特殊な溶解法が必要になる。0.01mass%未満では耐変色性の効果が小さく、0.5mass%を超えると機械的性質が悪化するおそれがあり、また、鋳造歩留まりも悪くなる。
以上のことから、Tiを添加する場合には、Tiの含有量は0.01mass%以上0.5mass%以下となり、好ましくは0.01mass%以上0.2mass%以下である。
(Mn:0.01mass%以上1.5mass%以下)
Mnは、強度、耐摩耗性を向上させ、曲げ性、プレス性を向上させるものである。一方、Mnの含有量が多すぎると、熱間圧延性を阻害する。なお、耐変色性や、抗菌性(殺菌性)への寄与は、Mn単独では小さく、場合によっては、抗菌性(殺菌性)を阻害することもあり、Cu、Zn、Al、Snとの配合の割合が重要となる(組成指数f1)。また、Mnを含有させることにより、溶湯の湯流れ性を向上させることができる。これらの点から、Mnを添加する場合には、Mnの含有量は0.01〜1.5mass%であり、好ましくは0.1〜1.0mass%である。なお、MnとSiの共添加は、Mn−Siの化合物を生成し、冷間加工性を阻害するので避けなければならない。もし、SiとMnを共添加する場合は、Siを0.05mass%以下、Mnを0.5mass%以下とするのが好ましい。
(Fe:0.001mass%以上0.09mass%以下)
Feは、焼鈍時の結晶粒を微細化する効果があり、特に、溶接管の溶接部の結晶粒を細かくし、溶接管において高い強度が得られ、溶接管を曲げ加工を施したとき、表面が肌荒れせずに平滑な状態になる。このような作用効果を得るためには、Feは、0.001mass%以上必要である。また、0.09mass%を超えて含有しても、上述の作用効果は飽和し、寧ろ冷間での加工性が低下する。
以上のことから、Feを添加する場合には、Feの含有量は0.001mass%以上0.09mass%以下である。
次に、第4発明合金において添加されるP、Sb、As、Mgについて説明する。
(P:0.005mass%以上0.09mass%以下)
Pは、耐食性を向上させ、溶湯の湯流れ性を向上させる。この効果を発揮するためにはPの含有量は、0.005mass%以上とする必要がある。また、過剰なPの含有量は冷間及び熱間での延性に悪影響を及ぼすことになることから、Pの含有量は、0.09mass%以下とする。
以上のことから、Pを添加する場合には、Pの含有量は0.005mass%以上0.09mass%以下である。
(Sb:0.01mass%以上0.09mass%以下)
SbもPと同様に耐食性を向上させるために添加される。この効果を得るために、Sbの含有量は0.01mass%以上必要である。また、0.09mass%を超えて含有させても、含有量に見合う効果が得られず、かえって延性が低下する。また、Sbは、人体に悪影響を及ぼすおそれがあるため、含有量は、0.05mass%以下とすることが好ましい。
以上のことから、Sbを添加する場合には、Sbの含有量は0.01mass%以上0.09mass%以下であり、好ましくは0.01mass%以上0.05mass%以下である。
(As:0.01mass%以上0.09mass%以下)
AsもPと同様に耐食性を向上させるために添加される。この効果を得るために、Asの含有量は0.01mass%以上必要である。また、0.09mass%を超えて含有させても、含有量に見合う効果が得られず、かえって延性が低下することになる。また、Asは、人体に悪影響を及ぼすおそれがあるため、含有量は、0.05mass%以下とすることが好ましい。
以上のことから、Asを添加する場合には、Asの含有量は0.01mass%以上0.09mass%以下であり、好ましくは0.01mass%以上0.05mass%以下である。
(Mg:0.001mass%以上0.03mass%以下)
銅合金は、原料の一部としてスクラップ材が使用されることが多く、そのようなスクラップ材にはS(硫黄)成分が含まれている場合がある。Mgは、このようなS成分を含んだスクラップを合金原料とし製品を製造する場合において、S成分をMgSの形態で除去することができる。このMgSが合金に残留したとしても、耐食性、耐変色性などには悪影響を及ぼさない。また、S成分をMgSの形態にすると、プレス性が向上する。S成分を含んだスクラップにMgを添加せずに用いると、Sは合金の結晶粒界に存在しやすく、粒界腐食を助長することがあり、そうなると耐食性および耐変色性も低下させる。しかし、Mgを添加することにより粒界腐食を効果的に防止することができる。その効果を発揮するためには、Mgの含有量は0.001〜0.03mass%としておくことが必要である。Mgは酸化しやすいため、過剰に添加すると鋳造時に酸化し、酸化物を形成することで溶湯の粘度が上がり、酸化物の巻き込みなどの鋳造欠陥を生じるおそれがある。
以上のことから、Mgを添加する場合には、Mgの含有量は0.001mass%以上0.03mass%以下である。
(Cu:残部)
Cuは、Zn,SnおよびAl等の残余成分であり(ただし、不可避不純物を除く)、これら主要元素のバランスとして含まれる。Cuは、銅合金としての引張強度、耐力等の機械的強度を向上させると共に、抗菌性(殺菌性)等の特性を確保する上で重要な元素である。残余成分であるが、各種特性を発揮するためのCuの含有量は、64.0mass%以上であり、好ましくは65.0mass%以上であり、より好ましく70.0mass%、最適には、72.0mass%以上である。一方、Cuの含有量が81.0mass%を超えると、機械的強度が低下し、熱間圧延性や成形性等の加工性が悪くなり、また抗菌性(殺菌性)が劣るようになるだけでなく耐変色性も低下する。なお、Cuの含有量は、81.0mass%以下であり、好ましくは80.0mass%以下であり、より好ましくは78.0mass%、最適には77.0mass%以下である。
(不可避不純物)
また、不可避的不純物としては、Cr,Ag,Ca,Sr,Ba,Sc,Y,Hf,V,Nb,Ta,Mo,W,Re,Ru,Os,Se,Te,Rh,Ir,Pd,Pt,Au,Cd,Ga,In,Li,Ge,Tl,Bi,S,O,Be,N,H,Hg, B、希土類等が挙げられる。これらを含む不可避不純物は、総量で0.5mass%以下であることが望ましい。不可避不純物が総量で0.5mass%以上と多く含まれる場合、金属組織にも影響を与え、耐食性、抗菌性(殺菌性)などを低下させ、伸びを低下させるなど冷間加工性を低下させ、また熱間での変形抵抗を増加させるなど、含まれないことが望ましい。なお、不可避不純物は意図的に含まない元素のことを示す。
(組成指数f1)
Znの含有量〔Zn〕mass%と、Snの含有量〔Sn〕mass%と、Alの含有量〔Al〕mass%と、Si、Ti、Ni、Mn、Feのそれぞれの含有量を〔Si〕mass%、〔Ti〕mass%、〔Ni〕mass%、〔Mn〕mass%、〔Fe〕mass%に、それぞれの元素毎に係数を掛け、合計した関係式とその数値は、溶接管、板、棒、鍛造品、鋳物の金属組織中に存在するβ相、γ相の面積率に影響し、冷間加工性(冷間圧延、冷間伸線などの塑性加工)、溶接管や板材の曲げ加工性、強度、耐食性、耐変色性および抗菌性(殺菌性)に影響を与える。よって、組成指数f1は、これらの特性、性質を総合的に数値化した重要な関係式である。
組成指数f1の値が24よりも低いと、熱間圧延、熱間押出あるいは熱間鍛造などの熱間での変形抵抗が高くなる。また、材料の強度が低く、耐変色性も乏しく、プレス加工性も悪くなる。熱間圧延では所定の温度に熱した鋳塊(例えば板厚190mm)を圧延機により徐々に板厚を薄く圧延加工していく。しかしながら、パワーの小さい圧延機では変形抵抗が大きいため1パスでの加工率を大きく取ることができない。そのため加工パス回数が多くなり、熱間加工後半(最終の板厚を12mm程度まで熱間圧延を実施する場合において25mm以下となる熱間圧延後期)では材料が薄くなり、また材料長さが長くなるため、熱間圧延の加工時間が長くなる。このため、材料の温度ドロップが大きくなり、変形抵抗が大きくなり圧延機の負荷が高くなるだけでなく、所望の薄さの圧延材を得ることができなくなるなど、熱間圧延性に悪影響を及ぼす。また、Zn、Sn、Alを始め各元素の含有量と、元素ごとに重みを付けた総合計含有量:f1の数値が低いと、耐変色性も十分ではない。同様に抗菌性(殺菌性)も劣る。また、プレス加工などのせん断加工を行う場合の加工性は、バリが発生しやすくなるなど、悪くなる。また、材料強度が低くなり、強度が必要な部材に使用する場合、材料厚みを厚くする必要があり、コスト的にも問題がある。また、組成指数f1の値が低いと、熱伝導性が高くなって、溶接性が悪くなり、機械的強度が低くなり、延性とのバランスが悪くなる。銅合金は、良好な熱伝導性を備えるが、熱伝導性(電気伝導性に置き換えられ、熱伝導率と電気伝導性の指標である導電率には比例の関係がある)が良いと、溶接時またはろう付け時に熱が拡散するため、広範囲にわたり加熱する必要があり、溶接性・ろう付け性が悪くなる。良好な溶接やろう付けを行うためには、導電率に換算して25%IACS以下が望ましい。
以上のように、組成指数f1の値は、熱間圧延性、プレス加工性および強度から、24以上であり、好ましくは26以上、より好ましくは28以上であり、最適には29以上である。
組成指数f1の値が40を超えると、熱間圧延、熱間押出、管溶接、熱間鍛造などの高温状態でのβ相の面積率が多くなり、常温(室温)でのβ相、γ相の面積率も高くなる。そのため材料強度は高くなるものの材料強度(引張強さ)と伸びのバランスが悪く、その関係式であるM1=σ×(1+ε/100)(σは引張強さ、εは伸びを示す値)が小さくなる。また、β相が増えることにより熱間変形抵抗値は小さくなり、熱間加工性は良くなるが、常温(室温)において組織中にβ相、γ相が多く残存することにより冷間加工性が著しく低下する。冷間圧延、冷間伸線等の製造時および、管材や板材等の曲げ加工などの冷間での加工では延性が低くなり、加工時に割れが生じたり、十分な加工率が得られないなどの悪影響がある。更に耐食性である耐脱亜鉛腐食性および応力腐食割れ性が悪くなる。耐変色性も同様で、数値が上限になると耐変色性が飽和し、寧ろ低下する。更に銅合金の特長である抗菌性(殺菌性)も飽和するどころか、却って低下する。
また、電縫加工により溶接管を製造するが、その溶接性が悪くなり、溶接管製造時の歩留まりが悪くなる。また、溶接管は、局所的に温度上昇、溶融を伴い、管の肉厚が薄く、冷却速度が速いため、溶接管の金属組織中に占めるβ相、γ相の面積率が高くなる。溶接管は用途上、90°曲げ(例えば曲率半径40mm)や複雑な曲げ加工が施されて使用される場合があり、曲げ部分に割れを生じたり、所定の曲げ形状に加工できないなどの不具合を生じる。曲げ加工は曲げ部分を加熱するなどを実施すれば、割れを生じることなく曲げ加工が可能になるが、その部分の強度が低くなる。また、加熱された部分は焼鈍されることになるため結晶粒径が成長し、曲げ加工時に肌荒れや強度、疲労などの不具合を生じる可能性もある。加えて耐変色性、耐食性および抗菌性(殺菌性)も悪くなり、更にコストも増大するなどの弊害を生じる。また、溶接管の製造において、組成指数f1の値が40より高いと、接合部分及び溶接の熱を受ける部分でβ相或いはγ相が残留し、その後の製造工程である冷間圧延や冷間抽伸に問題が生じる。また、耐変色性、抗菌性(殺菌性)が悪くなる。
以上のように、耐変色性、抗菌性(殺菌性)、冷間加工性、曲げ性などを考慮すると、組成指数f1の値は、40以下であり、好ましくは38以下、より好ましくは36以下、最適には34以下となる。一方、熱間圧延性、プレス加工性および強度を考慮すると、f1の値は、24以上であり、好ましくは26以上、より好ましくは28以上であり、最適には29以上である。
すなわち、組成指数f1は、24≦f1≦40の範囲内とされ、好ましくは26≦f1≦38の範囲内、さらに好ましくは28≦f1≦36の範囲内、最適には29≦f1≦34の範囲内とされる。
ところで、組成指数f1においては、Sn、Alに大きな係数が与えられている。その主な理由として、Sn、Al共に、耐変色性、耐食性、抗菌性(殺菌性)に大きな影響を与え、さらに、Snは、溶接時に局部溶融する際、Snの偏析が生じ、少量のSnでβ相、γ相が残留し、濃度の増加とともにβ相、γ相の量が増える。また、熱間加工においても、β相、γ相が残留しやすい。また、Snを多く含んだβ相、γ相は、脆く、硬いため、冷間加工性、曲げ加工性に影響を与える。Alは、金属組織的にはSnと同様の傾向を示すが、その度合いは、小さく、溶接性にはプラスに働き、Snの影響を緩和する。特に、本発明の主題である耐変色性、抗菌性(殺菌性)を含め、各特性にはSn、Alの相乗効果が加味されている。
第2発明合金において添加されるNiは、組成指数f1の係数が小さく、マイナスとなっている。耐変色性は、Sn、Alの相乗効果に比べて小さいものの一定の効果があることから、Niの含有量に依存する。また、Niには、SnおよびAlを含有することによる溶接時、熱間加工時のβ相、γ相生成を抑制する作用がある。特に組成指数f1が、大きな値を示す場合には、Sn、Alの代わりに、Niの含有させることより、耐変色性を保ち、β相、γ相の生成の抑制作用に利用することが可能である。係数は小さくその作用は小さいように見えるが、Niを効果的に使用することにより、加工性を改善しつつ耐変色性、抗菌性(殺菌性)を向上させることが可能となる。
また、第3発明合金において添加されるSi、Ti、Mn、Feにおいては、加工性、耐変色性、抗菌性(殺菌性)等の各種特性に影響を与えることから、組成指数f1において、それぞれの元素に係数を掛けて加えられている。
一方、第4発明合金において添加されるP、Sb、As、Mgは、含有量の他元素と比較し少量であり、機械的性質、耐食性、耐変色性などに大きな影響を与える相組織への影響は少ないため(すなわち、係数は0または0に近い数字のため)、組成指数f1の関係式には含めていない。
なお、不可避的に含まれる不純物については、合計の不純物量が0.5mass%より少ない場合は、組成指数f1にほとんど影響を与えない。合計の不可避不純物量が0.5mass%を超える場合は、不可避不純物の含有量を〔X〕mass%とし、f1=〔Zn〕+5×〔Sn〕+3×〔Al〕+2.5×〔Si〕+1.0×〔Ti〕−0.5×〔Ni〕+0.5×〔Mn〕+0.2×〔Fe〕+〔X〕の値が、24≦f1≦40の範囲内とされていればよい。
(組成指数f2)
SnとAlはZn量とも関連するが、組成指数f2の数値は、Al:0.01〜1.8mass%、Sn:0.01〜2.5mass%が前提で、AlとSnの相乗効果により、耐変色性、耐食性および抗菌性(殺菌性)に大きな影響を与え、溶接性、熱間加工性、冷間加工性、曲げ加工性、プレス加工などの打ち抜き加工性に影響する。
組成指数f2=〔Sn〕+2×〔Al〕の値が1.2未満では、耐変色性に大きく寄与せず、プレス加工などの打ち抜き性を悪化させ、抗菌性(殺菌性)も劣る。一方、組成指数f2の値が4.0を超えると、耐変色性は向上するものの、抗菌性(殺菌性)が低下し、溶接性、熱間加工性、冷間加工性、曲げ加工性も低下する。なお、AlとSnの共添加の下、Alは、Snより大きな係数が与えられているのは、Alは、少量の含有で、特に耐変色性に効果を発揮するが、Alの含有を多くするにしたがって、抗菌性(殺菌性)が、損なわれ始めることによる。このような特性から考慮するとf2の値は、1.3以上が好ましく、1.5以上がより好ましい。また3.5以下が好ましく、3.2以下がより好ましい。なお、AlとSnの相乗効果の点から、Alは、0.4mass%以上、Snは、0.5mass%以上、各々含有すると、格段の効果を有する。
すなわち、組成指数f2は、1.2≦f2≦4.0の範囲内とされ、好ましくは1.3≦f2≦3.5の範囲内、さらに好ましくは1.5≦f2≦3.2の範囲内とされる。
なお、不可避的に含まれる不純物については、合計の不純物量が0.5mass%より少ない場合は、組成指数f2にほとんど影響を与えない。合計の不可避不純物量が0.5mass%を超える場合であっても、組成指数f2が上述の範囲内であればよい。
(組成指数f3)
第2発明合金のように、Al、Snの一部をNiで代替する場合、組成指数f3=0.7×〔Ni〕+〔Sn〕+2×〔Al〕が、1.2≦f3≦4.0の範囲内であると、耐変色性、耐食性、および抗菌性(殺菌性)が良く、熱間加工性、冷間加工性、曲げ加工性、プレス加工などの打ち抜き加工性も良好な合金となる。また、組成指数f3から、Niの耐変色性等の効果は、AlやSnに比べて低く、Niを多く含有する必要があり、係数は小さくなっている。
組成指数f3は、組成指数f2と同様に、各種特性から考慮すると1.2以上であり、1.3以上が好ましく、1.5以上がより好ましい。一方で4.0以下であり、3.5以下が好ましく、3.2以下がより好ましい。
すなわち、組成指数f3は、1.2≦f3≦4.0の範囲内とされ、好ましくは1.3≦f3≦3.5の範囲内、さらに好ましくは1.5≦f3≦3.2の範囲内とされる。
なお、不可避的に含まれる不純物については、合計の不純物量が0.5mass%より少ない場合は、組成指数f3にほとんど影響を与えない。合計の不可避不純物量が0.5mass%を超える場合であっても、組成指数f3が上述の範囲内であればよい。
(組成指数f4)
また、SnとAlは上述のように共存添加すると耐変色性、抗菌性(殺菌性)や強度など、様々な特性に寄与することになり、組成指数f4=〔Sn〕×〔Al〕+0.1×〔Ni〕も重要な因子となる。なお、Niを添加しない場合には、組成指数f4=〔Sn〕×〔Al〕となる。
組成指数f4が0.02未満では、Sn、Alの共添加によっても耐変色性、強度などが十分でない。よって、組成指数f4は、0.02以上であり、好ましくは0.1以上、さらに好ましくは0.2以上、最適には0.3以上である。一方、組成指数f4が1.8を超えると共添加による相加相乗の効果が飽和するだけなく、寧ろ冷間加工性の低下など、悪い面が現れる。よって、組成指数f4は、1.8以下であり、好ましくは1.6以下、さらに好ましくは1.4以下、最適には1.3以下である。
すなわち、組成指数f4は、0.02≦f4≦1.8の範囲内、好ましくは0.1≦f4≦1.6の範囲内、より好ましくは0.2≦f4≦1.4の範囲内、最適には0.3≦f4≦1.3の範囲内とされる。
なお、不可避的に含まれる不純物については、合計の不純物量が0.5mass%より少ない場合は、組成指数f4にほとんど影響を与えない。合計の不可避不純物量が0.5mass%を超える場合であっても、組成指数f4が上述の範囲内であればよい。
(金属組織)
β相は、Zn量(Cu量)およびSn量、Al量によって出現する面積率が異なり、組成指数f1の値が重要になる。β相は、Cu−Zn合金においてCu−Znの2元平衡状態図から見るとZn量が32.5mass%以上のとき材料温度が高温になると出現する。高温状態でβ相が出現するが、材料が冷却される段階でβ相からα相に変態し、β相は減少する。またZn量が39mass%以上になると常温でもβ相が消滅せずに存在する。ただし、一般的な製造方法で製造すると非平衡状態となり、平衡状態図の通りとならずβ相の残存するZn量が低濃度側へシフトする。また、Sn、Alは、高温でβ相を出現させやすくする元素である。さらに、Sn、Alは実用の生産において、より一層、平衡状態から離れた金属組織、相構成にするので、ZnおよびSn,Al等の組成は組成指数f1等により適正な範囲が決められる。
β相は銅合金において高温での変形抵抗を低下させ、熱間での加工性、変形能を向上させる働きがある。しかし、常温(室温)の状態でマトリックス中にβ相が存在すると、マトリックスの大部分であるα相よりもβ相は硬く、強度も高いため冷間加工性を低下させる。Sn,Alはα相よりもβ相に多く分配されるため、更に硬い。具体的には冷間での曲げ加工、圧延などの塑性加工では曲げの曲率半径の厳しい部分で割れが生じたり、冷間圧延中に耳割れ(鋳塊の端面部の割れ)を発生したりする。また、耐食性がα相と比較し非常に悪く、脱亜鉛腐食や応力腐食割れを引き起こす原因ともなる。特にβ相が多いと圧延材や押出材で圧延方向あるいは押出方向に平行にβ相が連続する場合があり、耐食性の悪いβ相が連続することにより腐食深さが大きくなる。また、耐変色性、抗菌性(殺菌性)についても悪い影響を与える。なお、Cu−Zn−Sn−Al系合金において高温で出現したβ相は、Cu−Zn合金と同じく冷却によりα相、あるいはα相とγ相に変態するが、Zn量およびSn、Al量により影響され、組成指数f1、f2、f3、f4が関係する。
一方、β相が存在することによりプレス加工などのせん断を行う場合にはβ相および後述するγ相が微量存在するほうが良好になる。Zn濃度が高く、f2、f3、f4の条件を満たすSn,Alを含有するα相、すなわち、β相が出現する直前の状態にあるα相は、β相や、γ相を含まなくても、Zn濃度の低いα相よりも、Sn,Alを含まない、あるいは含んだとしても少量であるα相よりもプレス性は向上する。また、β相が微量存在することにより熱処理など材料温度が上がったときのマトリックスのα相の結晶粒成長が抑えられる働きをし、結果として結晶粒が小さくなる。結晶粒は機械的性質(強度)に影響し、結晶粒度が小さいほうが強度は高くなる。このようにβ相の存在により各種特性は色々な影響を受ける。
同様に、組成指数f1、f2、f3およびf4を十分に満たし、β相が出現する直前の状態にある、金属組織がα相のみの本合金は、耐変色性、抗菌性(殺菌性)がよく、曲げ加工性、溶接性も良い。
以上のことから、常温(室温)でのβ相の面積率は0.9%以下であり、0.5%未満が好ましく、より好ましいのは0%か0%の近傍である。つまり、本発明の目的を達成するには、金属組織の観点から、β相が出現する直前のα相のみの金属組織、或いは、マトリックスがα相で、面積率で0.1%程度のβ相を含む金属組織が良い。
γ相は、高温で出現したβ相が共析反応によりα相とγ相に変態することにより発生する。γ相は上述のβ相よりも硬質であり、脆い性質を示す。Cu−Zn−Sn−Al系合金で形成されるγ相(例えば、50mass%Cu−40mass%Zn―10mass%(Sn+Al)からなるγ相)は、多くのSn,Alを含有するため、更に硬くなる。このため同量の面積率で比較すると、β相のよりもγ相のほうが引張試験を実施したときの伸びに大きく影響し、冷間加工性を低下させる。また、γ相は、β相よりも耐食性は良好であるものの、マトリックスのα相よりも悪いことから、全体的な耐食性(脱亜鉛腐食、応力腐食割れなど)を低下させる原因となる。γ相は、Cu−Zn2元合金においても見られ、Zn量が48.9mass%以上で出現するが、Cu−Zn−Sn−Al系合金では、Cu−Zn2元合金のγ相と異なり、Sn、Alも含まれることになり、より硬質であり、脆くなっており、冷間加工性に与える影響も大きくなる。なお、微量のγ相は、プレス加工性を向上させる。
γ相は、β相と同じくZn量およびSn、Al量に影響を受け、適正なγ相の量にしておくためには、組成指数f1、f2の値が良好な範囲内にあることが必要であり、各種特性から見て重要である。また、γ相の面積率で見ると、0.7%以下である必要があり、0.4%未満が好ましく、より好ましいのは0%か0%の近傍である。金属組織の観点から、β相と同じく、耐変色性、抗菌性(殺菌性)が良く、曲げ加工性、溶接性を良好とするためには、γ相が出現する直前のα相のみの金属組織、或いは、マトリックスがα相で、面積率で0.1%程度のγ相を含む金属組織が良い。
β相とγ相が常温(室温)で存在すると上述のように冷間加工性や耐食性に悪影響を及ぼす。これらのβ相とγ相が同時に常温(室温)で存在するとそれらの相乗効果によりそれぞれが単独で存在するよりも影響が大きくなる。この影響を鑑み、γ相の面積率を(γ)、β相の面積率を(β)とした場合に、面積率指数f5=2×(γ)+(β)の値が1.5を超えると冷間加工性や耐食性が悪くなり、それ以下であることが各種特性を得るためには必要である。
よって、面積率指数f5は、1.5以下であり、好ましくは1.2以下、更に好ましいf3の値は1.0以下であり、最も好ましいのは0%か0%近傍である。
また、本発明合金では、α相のマトリックス中にβ相の面積率が、0〜0.9%、好ましくは、0〜0.5%であり、β相が存在するか、しないかの金属組織が好ましい。ところが、α相の結晶粒界及び、α―βの相境界は、β相の形成を促進するZn、Sn、Alや他の不可避不純物の濃度も高くなり、耐食性等が不安定になり、強化する必要がある。このために、Mg、Sb、As、Pの添加が必要になる。なお、β相には、規則−不規則変態で生じるβ′相を含むものとする。
ここで、本発明の第1〜4の実施形態に係る耐変色性銅合金(第1〜4発明合金)においては、抗菌性試験における10分経過後の生菌率が、純銅の生菌率と同等もしくはより低くなっている。すなわち、純銅と同等もしくはより優れた抗菌性(殺菌性)を備えている。
ここで、生菌率とは、JIS Z 2801の(抗菌加工製品−抗菌性試験方法・抗菌効果)に準拠した試験方法により、評価される。
(強度・伸びバランス指数M1)
なお、本発明の第1〜4の実施形態に係る耐変色性銅合金(第1〜4発明合金)においては、引張強さσ、伸びεとした場合に、強度・伸びバランス指数M1=σ×(1+ε/100)を考慮することが好ましい。
高強度であれば使用される製品の薄肉化・軽量化が可能となり、コスト的には有利となるが、高強度の材料は伸び値が小さくなり、冷間加工性、曲げ加工などの塑性加工性が悪く、強度と伸びのバランスが重要になる。強度・伸びバランス指数M1=σ×(1+ε/100)が440以上であれば強度・伸びのバランスが良く、冷間加工性、曲げ加工及び強度なども必要最低限は確保される。なお、強度・伸びバランス指数M1は、490以上であることが望ましい。
(平均結晶粒径)
さらに、本発明の第1〜4の実施形態に係る耐変色性銅合金(第1〜4発明合金)においては、平均結晶粒径についても考慮することが好ましい。
平均結晶粒径は、打ち抜き性、曲げ性、強度及び耐食性などに影響することから、0.003〜0.070mm(3〜70μm)が好ましい。平均結晶粒径が0.070mmより大きいと、曲げ加工等を施すと肌荒れ(ザラ)が生じる。また、打ち抜き時、だれやかえりが大きくなり、打ち抜き部近傍も肌荒れが生じるなど、製品としての品質が悪くなる。さらに強度が低くなり、手摺りやドアハンドル等に使用する場合、強度が足りず問題となり、繰り返し疲労についても悪くなる。強度不足により肉厚(板厚)を厚くする必要があるため、軽量化が図れず、また耐食性、耐変色性も悪くなる傾向にある。好ましくは、0.050mm以下がよく、最適には0.040mm以下である。一方、平均結晶粒径が0.003mm未満であると曲げ性に問題が生じ、0.005mm以上、さらには0.010mm以上が最適である。なお、冷間抽伸を施さない溶接したままの溶接管の場合、用途上強度が必要とされるので、溶接管の素材の条の平均結晶粒径は0.005〜0.020mmがよい。
次に、本発明の第1〜4の実施形態に係る耐変色性銅合金(第1〜4発明合金)の製造方法、及び、第1〜4発明合金からなる銅合金部材と銅合金部材の製造方法について説明する。
Zn,SnおよびAlなどの含有量により熱間加工時の高温でβ相が出現する場合があり、高温域から冷却段階でβ相からα相へ変態するか、α相とγ相への共析反応によりγ相が出現する。非平衡で存在するβ相やγ相の量を、最終の板材や、溶接管において所定量以下にするためには、熱間加工後の段階で、β相とγ相の合計量を5%以下、好ましくは3%以下にしておかねばならない。熱間圧延等熱間加工の開始温度は、組成にもよるが、760〜930℃であり、圧延材は、10〜20mmの厚みに仕上がる。押出材であれば所定の寸法に押し出される。圧延材の場合は、熱間圧延後、ミーリング、冷間圧延を経て、焼鈍される。連続焼鈍洗浄ラインで冷間圧延材を熱処理(焼鈍などの軟化熱処理)する場合、焼鈍時の最高到達温度が、550〜780℃で、熱間圧延や熱間押出のような高温域まで加熱することは無く、加熱時間も短時間であるため、マトリックス中のβ相が増加することは無い。しかしながら、バッチ式焼鈍の場合、450℃以下の温度で、第1回目の焼鈍を実施するとγ相が増えることもあるので注意を要する。好ましくは480℃以上の条件でバッチ焼鈍が望ましい。
熱間鍛造では、材料温度を高温にすると変形抵抗が下がり、更には高温でβ相が出現した方が高温での変形抵抗が低下し、変形能が向上するため、700〜880℃まで材料温度を上げて実施される。熱間鍛造時、β相を10%以上と多く含む場合は、鍛造後から650℃までの冷却速度を3℃/秒以下または、10℃/秒以下とすることでβ相が少なくなる。なお、熱間鍛造では鍛造の形状にもよるが鍛造後の材料厚さが薄い部分は冷却速度が速く、厚い部分は冷却速度が遅くなるが、早い部分での冷却速度が1℃/秒以下であれば全体的なβ相が少なくなる。
溶接管を形成する場合、溶接管の接合部は瞬時に溶融状態になるため、β相が出現しやすくなる。また、溶接やろう付け等によって接合を行う場合、溶接部は瞬時に溶融状態になり、ろう付け箇所は800℃かそれ以上の温度に加熱されるため、やはり、β相が出現しやすくなる。また、板厚が薄い場合など、冷却条件が早くなりβ相が残存しやすくなる。このため、あらかじめ、溶接管の素材の金属組織中のβ相、γ相の占める割合を0%、あるいは0.5%以下にしておく必要がある。
ここで、本発明の第1〜4の実施形態に係る耐変色性銅合金(第1〜4発明合金)は、例えば、病院内、公共施設で使用されるレバーハンドル、ドアハンドル等、ナースカート、或いは、ベッドに設置される柵、サイドレールに使用されるが、それらは、管材が多く使用されている。これらの用途では、管材は、90度曲げ、扁平やカシメなどの加工が実施されて使用され、柵、サイドレール、レバーハンドルの場合、使用時に大きな荷重が掛かるので、高い強度と延性が、そして安全性、抗菌性(殺菌性)が求められる。本合金の場合、管材として、溶接管(電縫管)が好ましく、溶接管において耐変色性、抗菌性(殺菌性)に優れることは勿論のこと、溶接性がよく、溶接管の強度が高く、強度・延性のバランスに優れる必要がある。本発明合金では、各元素の組成範囲、組成指数f1、f2、f3、f4、面積率指数f5およびβ相、γ相の占有面積の要件を満たすことにより、前記特性を備えることができる。
なお、溶接管の評価としては、押し広げ試験、扁平試験および180°曲げ試験を適用することができる。押し広げ試験では溶接管を、元の溶接管の直径の1.25倍に広げたときに溶接部に割れがないこと、また扁平試験では溶接部を厚みが3t(3倍の肉厚:tは管材の肉厚)に扁平させたとき、溶接部に割れがないことにより、溶接部分が健全であることが証明される。溶接管に180度曲げを実施したとき、曲げRが直径の3倍以内で、割れが生じなければ実用上問題がない。そして好ましくは、溶接管の引張強さが350MPa以上、より好ましくは、400MPa以上、または、耐力で120MPa以上、好ましくは150MPa以上、より好ましくは200MPa以上であれば、強度上良好といえ、鉄製でできた管材に比べ、薄肉化ができる。
各製造方法で、高温加熱、つまり熱間加工(圧延、押出、鍛造など)では700〜930℃に加熱され、または溶接管では、瞬時に溶融するが、その素材の各成分が組成指数f1を満たすことにより、β相、γ相が、所定の量に収まる。なお、β相の残存が多い場合、機械的強度は上がるものの、伸びが低下し、強度と延びのバランスが悪く、冷間加工性なども悪く、抗菌性(殺菌性)および耐食性にも悪影響を及ぼす。β相の面積率を低下させるためには組成指数f1などで適正範囲にするなどで各種特性を良好にすることができる。
ドアハンドルやエルボ等は、鍛造品で作られることもあり、適正な鍛造荷重で割れが無いことが求められる。本発明合金では、各元素の組成範囲、組成指数f1、f2、f3、f4、面積率指数f5およびβ相、γ相の占有面積の要件を満たすことにより、鍛造特性、耐変色性、抗菌性(殺菌性)を備えることができる。
溶接管は、前記のように、サイドレール、柵等に用いられるが、それらは、管材同士の接合、その他、管材と同種、および、異材の管、鍛造品、板、棒、線、鋳物等が溶接、はんだ、ろう付けなどにより接合され、1つの部材(例えばサイドレール)になっている。したがって、少なくとも本発明合金には、接合性、溶接性、はんだ付け性、ろう付け性がよいことが必要である。本発明合金では、各元素の組成範囲、組成指数f1、f2、f3、f4、面積率指数f5およびβ相、γ相の占有面積の要件を満たすことにより、接合性、耐変色性、抗菌性(殺菌性)を備えることができる。
以上のように、本発明の第1〜4の実施形態に係る耐変色性銅合金(第1〜4発明合金)においては、耐変色性、耐食性、抗菌性(殺菌性)を備え、溶接管、鍛造品が作れ、接合性がよく、機械的強度、延性がよいことから、ドアハンドル、ドアノブ、ドアプッシュ板、手摺り、ベッド柵、サイドボード、机天板、椅子背もたれ、ナースカート取手、ペンのグリップなどの文房具用品、キーボード、マウス、シンク、つり革、スイッチ、スイッチカバー、エレベータなどに用いられる壁用の建材に好適に用いることが可能となる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。
以下、本発明の効果を確認すべく行った確認実験の結果を示す。なお以下の実施例は、本発明の効果を説明するためのものであって、実施例に記載された構成、プロセス、条件が本発明の技術的範囲を限定するものでない。
上述した第1発明合金、第2発明合金、第3発明合金、第4発明合金及び比較用の組成の銅合金を用い、製造工程を変えて試料を作成した。比較用の銅合金には、JIS H 3100で定められたC1020、2600、及びJIS H 3250で定められたC4622を用いた。
製造工程P1は、組成の影響を調べることを目的として、ラボテストで行い、工程P1−1を圧延材、工程P1−2を押出材とした。
製造工程P2は、圧延材としての量産設備での製造を目的とするとともに、溶接管での調査を目的とした。
製造工程P3は、押出材としての量産設備での製造を目的とするとともに、鍛造品およびろう付け、溶接等の接合についての調査を目的とした。
製造工程P1−1は次のように行った。
電気銅、電気亜鉛、高純度のSn、Al及びその他市販の純金属を各種成分調整した原料を電気炉で溶解させた。その後、幅70mm×厚み35mm×長さ200mmの金型鋳型に溶湯を注ぎ、試験サンプルの板状鋳塊を得た。板状鋳塊は全面の鋳肌部分及び酸化物を切削加工により取り除き、幅65mm×厚み30mm×長さ190mmの試料を作成した。この鋳塊を800℃に加熱し、3パスで厚み8mmまで熱間圧延し、空冷及び冷却ファンを用いた強制空冷により冷却した。熱間圧延した試料の表面の酸化物を研摩により除去した後、冷間圧延にて厚み1.0mmまで圧延し、連続炉(光洋サーモシステム製:810A)を用い、窒素雰囲気中で炉設定温度、送り速度を変化することにより、最高到達温度を650℃、最高到達温度より50℃低い温度から最高到達温度までの温度域での保持時間を0.3minの条件で熱処理した。これらの熱処理は量産材を連続焼鈍洗浄ラインで製造することを想定して実施し、連続焼鈍洗浄ラインと同等の熱処理条件で熱処理を行うことが可能である。熱処理後に更に0.9mm(加工率10%)まで冷間圧延し、試料とした。
製造工程P1−2は次のように行った。
電気銅、電気亜鉛、高純度のSn、Al及びその他市販の純金属を各種成分調整した原料を電気炉で溶解させた。その後、直径100mm×高さ200mmの金型鋳型に溶湯を注ぎ、棒状鋳塊を得た。棒鋳鋳塊は全面の鋳肌部分及び酸化物を切削加工により取り除き、直径90mm×高さ190mmの試料を作成した。この試料を800℃に加熱し、500トンプレス押出機により直径21mmに押出し、長さ2000mmの棒材を得た。この押出棒を直径20mmに抽伸し、冷間抽伸材(加工率9.3%)を得た。
製造工程P2は次のように行った。
所定の成分に調整した原料を溝型低周波誘導加熱炉にて溶解し、厚さ:190mm、幅:840mm、長さ:2000mmの板状鋳塊を作成し、その鋳塊を800℃に加熱し、厚さ:12mmまで熱間圧延した(13パス)。圧延材の各表面を面削後(厚み:11.2mm)、冷間圧延にて1.0mmまで加工した。この材料を連続焼鈍洗浄ラインにおいて熱処理材の最高到達温度は650℃、最高到達温度より50℃低い温度から最高到達温度までの温度域での保持時間は0.3minで熱処理を行った。熱処理材をスリッターにより幅87mmおよび80mmに切断し、溶接管の素条(素材)を作製した。
溶接管の製造は溶接方法を2通りで実施した。素条の幅は溶接方法により異なり、高周波誘導加熱コイルにより加熱し溶接管を製造する場合、素条の幅は87mm、TIG溶接で行う場合は80mmとし、厚み1.0mmの熱処理材(焼鈍材))を用いた。高周波誘導加熱コイルによる溶接管製造では素条を送り速度60m/minで材料の供給を行い、複数個のロールにより円形に塑性加工させ、円筒状となった材料を高周波誘導加熱コイルにより加熱し、素条の両端を付き合わせることにより接合する。その接合部分のビード部分はバイト(切削刃具)による切削加工で除去することにより、直径25.4mm、肉厚1.08mmの溶接管を得た。肉厚の変化から、溶接管に成形する際に、実質上数パーセントの冷間加工が施されている。TIG溶接による溶接管製造では素条を送り速度2m/minで供給し、複数個のロールにより板状形状を円形上に塑性変形させ(高周波加熱コイルによる加熱方法と同じ)、両端面を接触させ、その部分をArガスを供給しながらTIG溶接により接合する。溶接部のビード部分はバイト(切削刃具)によりオンラインで切削除去された。この方法により直径25.4mm、肉厚1.0mmの溶接管を得た。なお、誘導加熱コイルによる溶接管では肉厚の変化があったが、TIG溶接では殆どなかった。
また、連続焼鈍洗浄ラインで熱処理した後の圧延材を、各種特性を評価するために冷間圧延により板厚0.9mm(加工率10%)に圧延した。
また、比較材として板厚1mmのC2600(70Cu/30Zn黄銅)及びC1020(無酸素銅)を、連続炉を用いて窒素雰囲気中で炉設定温度、送り速度を調整することにより、最高到達温度を650℃、最高到達温度より50℃低い温度から最高到達温度までの温度域での保持時間を0.3minで熱処理を行った。熱処理した各板材は板厚0.9mm(加工率10%)まで冷間圧延を行った。
製造工程P3は、次のように行った。
所定の成分に調整した原料を溝型低周波誘導加熱炉にて溶解し、直径240mm、長さ700mmの棒材鋳塊を作成し、その鋳塊を800℃に加熱し、3000トン押出機により直径21mmの押出材を作成した。押出材は直径20mm(加工率9.3%)に冷間抽伸し、抽伸材を得た。
抽伸材は長さ200mmに切断し、炉中で800℃に加熱し、ドアハンドルの形状(L形)に熱間鍛造した。鍛造直後800℃〜650℃の冷却速度は1.5℃/秒であった。
比較材として直径21mmのC4622(63Cu−35.9Zn−1.1Sn)を製造工程P3と同じ工程で製造し、直径20mm(加工率9.3%)に冷間抽伸した。
工程P1−1によりNo.1〜8、1−1〜1−12、2−1〜2−10、3−1〜3−6、4−1、4−2、No.A1〜A7、A9〜A11、A1−1、A1−2、A2−1〜A2−4、A3−1〜A3−5、A4−1、A4−2、およびNo.B1、B2を、工程P1−2でNo.9〜11、1−13〜1−15、2−11、3−7、3−8、No.A8、A12、A13およびNo.B3を作成し、熱間加工性、組織観察、機械的性質測定、耐変色性試験、耐食性試験等を実施した。
また、工程P2によりNo.12、13、17を作成し、連続焼鈍洗浄ラインで熱処理を行ったのち、冷間圧延により厚さ0.9mmとした圧延材(加工率10%)および熱処理した材料を溶接管加工により溶接管を試作した。圧延材は工程P1−1と同じく、熱間加工性、組織観察、機械的性質測定、耐変色性試験、耐食性試験等を実施した。溶接管はこれらに加え、扁平試験、押し広げ試験などの溶接管の健全性を評価する試験および溶接性評価も実施した。
工程P3によりNo.14、15、16の押出材(抽伸材)を製造した。これらは工程P1−2と同じ評価およびろう付け性試験および鍛造品を試作し、鍛造性、鍛造品の組織を確認した。
<色調及び色差>
後述する耐変色性試験において評価する銅合金の表面色(色調)については、JIS Z 8722−2009(色の測定方法−反射及び透過物体色)に準拠した物体色の測定方法を実施し、JIS Z 8729−2004(色の表示方法─L表色系及びL表色系)で規定されているL表色系で示した。
具体的には、コニカミノルタ社製の分光測色計「CM−700d」を使用して、SCI(正反射光込み)方式でL、a、b値を測定した。JIS Z8730(色の表示方法−物体色の色差)による色差(ΔE={(ΔL+(Δa+(Δb1/2: ΔL、Δa、Δbは2つの物体色の差)を試験前後で測定したそれぞれのLから算出し、その色差の大きさで評価した。なお、試験前後のL測定は3点測定し、その平均値を用いた。
<耐変色性試験1:高温高湿雰囲気試験>
材料の耐変色性を評価する耐変色性試験は、恒温恒湿槽(楠本化成株式会社HIFLEX FX2050)を用いて温度60℃、相対湿度95%の雰囲気中に各サンプルを暴露した。試験時間は24時間とし、試験後に試料を取り出し、暴露前後の材料の表面色を分光測色計によりLを測定し、色差を算出し評価した。色差が小さいほど色調の変化が少なく、したがって耐変色性が優れることになる。耐食性評価として色差の値が「A」:0〜4.9、「B」:5〜9.9、「C」:10以上とした。色差は試験前後でのそれぞれの測定値の違いを表し、その値が大きいほど試験前後の色調が異なり、色差が10以上では目視で十分に変色していることが確認でき、耐変色性が劣ると判断出来る。
比較材としてC2600(黄銅:70Cu−30Zn)、C1020(無酸素銅:100Cu)及びC4622(ネーバル黄銅:63Cu−35.9Zn−1.1Sn)についても同様に耐変色性を評価した。なお、棒材形状の耐変色性は直径20mmの抽伸材を50mmに、長手方向と垂直に切断し幅20mm×長さ50mmの断面を#1200番の耐水研磨紙を用いて乾式で表面研摩を行い試験に供した。板状形状の材料は10%冷間圧延材を縦150mm×横50mmの材料を用い、材料表面は#1200番の耐水研磨紙を用いて乾式で表面研摩を行って試験に供した。
C2600、C1020は一般的な銅合金製造会社で実施されている防錆処理(市販の銅合金用防錆液を用いた処理)を施した。防錆処理は各材料の表面をアセトン脱脂した後、75℃に加温した主成分がベンゾトリアゾールである市販の銅合金用防錆液を0.1vol%含む水溶液に10秒間浸漬し、その後、水洗、湯洗を行い、最終ブロワー乾燥した材料を作成した。これは一般的な銅合金の防錆処理条件(量産)と類似である。また、C4622及び発明合金は防錆処理を施さずに暴露試験した。
<耐変色性試験2:屋内暴露試験>
実際にプッシュプレートとして使用することを念頭に、三菱伸銅株式会社三宝製作所内にある建屋の屋内ドアに10%冷間圧延材を縦150mm×横50mmに切断した板を貼り付けて表面の変色状況について確認した。この供試材は暴露前に表面を#1200番の耐水研磨紙を用いて乾式で表面研摩を行い、室温(空調あり)で1ヶ月暴露した。このプッシュプレートは少なくとも100回/日は人の手が接触する(1回の接触時間は約1秒)条件で使用した。暴露前後の材料の表面色を分光測色計によりLを測定し、色差を算出し評価した。評価基準は高温高湿雰囲気試験と同じく、色差の値が「A」:0〜4.9、「B」:5〜9.9、「C」:10以上として評価した。C2600防錆処理材及びC1020防錆処理材も比較材として同様に暴露試験を行い、評価した。
<プレス性>
プレス打ち抜き試験は、直径57mmのパンチ及びダイを備えた打ち抜き治具により、200kN油圧型万能試験機(株式会東京試験機製 AY−200SIII−L)により実施した。銅合金板を円形状の丸穴を有するダイ上部に保持し、上部から下部に向かって5mm/秒の速度で打ち抜いた。パンチ、ダイの材質はSKS−3を用い、パンチとのクリアランスは3%、抜きダイテーパーは0°であり、無潤滑で実施した。評価する試料は10%冷間圧延材とした。
直径57mmの円形に打ち抜きされた銅合金板の端部から幅5mm、長さ10mmのサンプルを切り出し、そのサンプルを樹脂埋めし、銅合金板端部から垂直方向に金属顕微鏡にて観察し、バリの高さを測定した。打ち抜きサンプルは90°方向に区切った4点を平均として「バリ高さ」を算出した。プレス性(打ち抜き性)は「バリ高さ」が低いほど評価は高く、「バリ高さ」の測定値から評価した。プレス性(打ち抜き性)の評価はA:5μm未満、B:5〜10μm未満、C:10μm以上とした。バリ高さは小さいほどプレス性が良く、5μm未満「A」であれば良好であると判断できる。
<曲げ性>
曲げ性は、試料をJIS Z 2248(金属材料曲げ試験方法)に記載の180度曲げを行い、その曲げ加工部の状況により判断した。180度曲げ試験は10%冷間圧延を行った板厚0.9mmのサンプルを用い、圧延方向に平行方向に長さ50mm、幅10mmに切り出し、圧延方向と垂直方向に曲げ、曲げ加工部の曲げ半径(R)を0.45mmとし、R/ta=0.5としての180度曲げを行った(taは、板厚)。評価は、曲げ部(湾曲部)を目視により観察し、A:しわが無い又は小さなしわが存在、B:大きなしわが存在、C:ザラが発生、D:割れが存在、とした。
曲げ加工による支障をきたさない「A」(しわが無いあるいは小さなしわが存在)を曲げ性良好と判断し、割れ(クラック)の無いB以上の評価が望ましい。なお、目視によりしわの規模の判断が困難な場合、JBMA(日本伸銅協会技術標準)T307:1999の銅及び銅合金薄板条の曲げ加工性評価方法に示されるように、曲げ加工部(湾曲部:幅10mm)を金属顕微鏡にて50倍に拡大して観察し、判断した。また、材料の結晶粒が粗大となると曲げ加工を行った場合、曲げ加工部周辺に割れは存在しないものの、大きなザラ(肌荒れ)が生じ、それらの材料は使用することが出来ない。ザラを生じたサンプルの評価は「C」とした。
<溶接性>
溶接管は、一般に素材となる条製品を幅方向にフォーミングローラーにより徐々に塑性加工し円形に成形した後、高周波誘導加熱コイルにより誘導発熱させ、、あるいはTIG溶接によりその両端を突き合わせて接合することにより製造する。接合部は局部的に加熱し、瞬間的には溶融させ、その両端を接合する、いわゆる圧接であり、接合部は突き合わされた余分な材料により大きなビードが形成され、その溶接ビード部は連続して切削刃具により管の内部及び外部共に切削除去される。ただし、溶接管の直径がφ15mm以下と小径の場合は内部に挿入する刃具も細くなり十分なビード部分が切削除去できない場合もあるので、すべての溶接管でビード部が切削除去されるわけではない。溶接部は突き合わせ部の密着性により接合性に不具合が生じる。溶接性の評価はJIS H 3320の銅及び銅合金の溶接管に記載の扁平試験により行った。溶接管の端から約100mmの試料を採取し、2枚の平板間に試料を挟み、平板間の距離が管の肉厚の3倍になるまで押しつぶし、そのときの溶接管の溶接部を圧縮方向と垂直の方向に置き、曲げの先端となるように扁平曲げを行い、曲げ加工された溶接部の状態を目視で観察した。なお、扁平曲げは溶接した管材を使用した。評価は、A:割れ、微細ホール等の欠陥が認められない、B:微細割れが認められる(開口した割れの長さが管材長手方向に2mm未満)、C:部分的に割れ(開口した割れの長さが管材長手方向に2mm以上)が認められる、とした。
溶接管の溶接部の評価としては、上述の扁平試験だけでなく、押し広げ試験および180°曲げ試験により行った。押し広げ試験はJIS H 3320に記載の方法で行った。押し広げ試験は溶接管を50mmに切断した試料の1端に頂角60°の円すい形の工具を押し込み、外径の1.25倍(つまり押し広げにより端面部分の直径が25.4mmの1.25倍である直径31.75mm)となるところまで押し広げ、溶接部分の割れを目視により確認した。A:割れ、微細ホール等の欠陥が認められない、B:微細な割れが認められる(溶接部が分割していない状態)、C:溶接部に割れが認められ、分割しているとして評価した。
180°曲げ試験は溶接管を300mmに切断し、CNCベンダマシン(千代田工業製)を用い、180°曲げを実施した。溶接部分を180°曲げを実施したときの最外径となる部分として曲げを行い、溶接部の状況を目視で確認した。なお、曲げ加工を実施した後の曲げ部(溶接部)の直径を直径の3倍である76.2mmとして曲げを行い評価した。割れ、微細ホール等の欠陥が認められないものを「A」、割れ、微細ホール等の欠陥が認められるものを「C」として評価した。
また、溶接性については直径25.4mmの溶接管を150mmに切断し、その切断した溶接管の両端を突合せ、シリコンが添加されている銅合金溶接棒(JIS Z 3341 YCuSi A 2.4Si−Cu:元素記号の前はmass%を示す)を用いて全円周方向をTIG溶接により溶接した。全長300mmとなったパイプを引張試験機(島津製作所 AG−X)により破断するまで引張り、溶接管の引張強さを測定した。なお、引張強さを求めるときの断面積は溶接管の断面積とした(溶接部の断面積ではない)。突合せ溶接した溶接管の引張強さが突合せ溶接していない溶接管(素材まま)の引張強さの70%を超えるものをA、50〜70%以上をBとし、それ未満の場合をCとし、B以上を溶接性があるとし、A以上を溶接性が良好であるとした。
<ろう付け性>
直径20mmの抽伸棒を長さ50mmに切断し、切断面の中心に直径5mmの穴をドリルであけ、そのドリル穴に直径4.8mmのC1100(タフピッチ銅)の棒材入れた。バーナーにより当該部を加熱し、銀が添加されているリン銅ロウ(JIS Z 3264 BCuP−4 7.2P−5Ag−Cu:元素記号の前はmass%を示す)を用いてろう付けを行った。
引張試験機(島津製作所 AG−X)を用い、ろう付けしたサンプルの引張試験を行い、ろう付け部以外のC1100で破断したときにろう付け性を良好とし、ろう付け部分で破断した場合を不良と評価した。引張試験のチャック部(試験機でサンプルを保持する部分)は直径20mmと直径4.8mmのC1100である。
なお、ろう付け前の各サンプルはアセトン脱脂を行い、フラックスはなしとしてろう付けを行った。
<結晶粒径>
結晶粒径は、リダクション10%冷間圧延試料を圧延方向と平行方向の断面および直径20mm抽伸材(リダクション9.3%)の棒材を抽伸方向と平行方向の断面の金属組織を金属顕微鏡(ニコン製EPIPHOT300)を用いて150倍(結晶粒径に応じ適宜500倍まで変化させた)で観察を行い、その測定した金属組織のα相結晶粒についてJIS H 0501(伸銅品結晶粒度試験方法)の比較法により測定した。なお、結晶粒径(α相結晶粒)は任意の3点の平均値とした。
鍛造品の金属組織は、後述するβ相、γ相の面積率と同じく、鍛造表面から厚み方向で1/5の部分を測定し、3点の平均値とした。
<β相、γ相の面積率>
β相およびγ相の面積率は次のようにして求めた。リダクション10%冷間圧延試料の圧延方向と平行方向の断面およびφ20mm抽伸材(リダクション9.3%)の棒材の抽伸方向と平行方向の断面の金属組織を、金属顕微鏡(ニコン製ECLIPSE MA200)により500倍(視野270μm×220μm)で観察し、その観察した金属組織を画像処理ソフト「WinROOF」を用い、β相およびγ相について2値化の処理を行ない、金属組織全体の面積に対するβ相の面積の割合を面積率とした。なお、金属組織は3視野の測定を行い、それぞれの面積率の平均値を算出した。
溶接管は溶接部を中心として円周方向に5mm離れた部分を厚み方向で外表面から1/5の部分について測定した。鍛造品は鍛造表面から厚み方向で1/5の部分を測定した。なお、溶接管および鍛造品の金属組織とも3視野の測定を行い、それぞれの面積率の平均値を算出した。
500倍の金属顕微鏡によりβ相あるいはγ相の判別が困難な場合、FE−SEM−EBSP(Electron Back Scattering diffraction Pattern)法によって求めた。すなわち、FE−SEMは日本電子株式会社製 JSM−7000F、解析にはTSLソリューションズOIM−Ver.5.1を使用し、解析倍率500倍の相マップ(Phaseマップ)から求めた。すなわち、α相は、FCC(面心立方格子)の結晶構造を示し、β相、γ相はBCC(体心立方格子)の結晶構造を取る。β相とγ相は同じ結晶構造であるが、原子間距離や格子定数などが異なるため、それぞれの相を判別できる。
<熱間加工性>
熱間加工性については、熱間圧延後の割れ状況により評価した。外観を目視で観察し、熱間圧延に起因する割れ等の損傷が全くないもの、又は割れがあっても微細(3mm以下)であるものについては実用性に優れるとして「A」で示し、5mm以下の軽度な耳割れが全長に渡り5箇所以下であるものについては実用可能であるとして「B」で示し、5mmを超える大きな割れ、あるいは、3mm以下の小さな割れが6箇所を超えるものについては、実用性困難(実用上大きな手直しが必要)として「C」で示した。また、熱間変形抵抗が大きく熱間圧延でのパス回数で規定の厚み(P1−1では8mm)に圧延できなかった場合も実用性困難と評価し、「C」とした。そして、「C」と評価したものは、基本的に以降の試験を中止した。
<冷間加工性>
冷間加工性については、熱間圧延材を80%以上の高い加工率で冷間圧延した後の割れ状況(冷間加工材の割れ状況)により評価した。外観目視で割れ等の損傷が全くないもの又は割れがあっても微細(3mm以下)であるものについては実用性に優れるとして「A」で示し、3mmを超え5mm以下の耳割れが生じているものについては実用可能であるとして「B」で示し、5mmを超える大きな割れが生じているものについては実用性困難として「C」で示した。この評価は鋳塊に起因する割れは対象外とし、熱間圧延で予め目視で判断できる割れについては、熱間圧延で生じた割れを除き冷間圧延で生じた割れ長さで判断した。そして、「C」と評価したものは、基本的に以降の試験を中止した。
<抗菌性(殺菌性)1>
抗菌性評価はJIS Z 2801の(抗菌加工製品−抗菌性試験方法・抗菌効果)を参考にした試験方法により実施し、試験面積(フィルム面積)及び接触時間を変更して評価した。試験に用いた細菌は大腸菌(菌株の保存番号:NBRC3972)とし、35±1℃で前培養(前培養の方法はJIS Z 2801に記載の5.6.aの方法)した大腸菌を1/500NBを用いて希釈し、菌数が1.0×10個/mLに調整した液を試験菌液とした。試験方法は20mm四角に切り出した試料を滅菌したシャーレに置き、前述の試験菌液(大腸菌:1.0×10個/mL)0.045mLを滴下し、直径15mmのフィルムをかぶせ、シャーレの蓋を閉じる。そのシャーレを35℃±1℃、相対湿度95%の雰囲気で10分間培養(接種時間:10分)する。培養した試験菌液をSCDLP培地10mLにより洗い出し、洗い出し菌液を得る。洗い出し菌液を、リン酸緩衝生理食塩水を用いて10倍ずつに希釈し、その菌液に標準寒天培地を加え、35±1℃、48時間培養し、集落数(コロニー数)が30以上となる場合にその集落数を計測し、生菌数(cfu/mL)を求めた。接種時の菌数(殺菌性試験開始時の菌数:cfu/mL)を基準とし、それぞれのサンプルの生菌数と比較し、A:10%未満、B:10〜33%未満、C:33%以上として評価した。A以上(つまり接種時の生菌数に対し評価サンプルの生菌数が1/3未満となる)の評価を得たサンプルは抗菌性(殺菌性)が優れると判断した。培養時間(接種時間)を10分と短時間にしたのは、抗菌性(殺菌性)の即効性について評価したためである。評価した試料はリダクション10%冷間圧延試料である。なお、純銅(C1020)においては、上記の試験方法では10分後の菌数は接種の菌数の33%となっている。以上のことから、評価A又は評価Bの材料は、純銅(C1020)と同等もしくはよりも抗菌性(殺菌性)が高い、つまり、接種から10分後における生菌率が同等もしくは低いものとなり、優れた抗菌性(殺菌性)を有する。なお、棒状形状の材料は長手方向と垂直方向に切断した断面で実施した。板状形状の材料は20mm×20mmに切断した。
<抗菌性(殺菌性)2>
上述した耐変色性試験2の暴露材(三菱伸銅株式会社三宝製作所内屋内ドアのプッシュプレートとして1ヶ月間暴露)の表面色を測定後、20mm四角に切断し、上記の大腸菌を用いた試験菌液による殺菌試験を行い、長期使用後のサンプルについての抗菌性(殺菌性)を評価した。試験方法及び評価方法は上述した抗菌性(殺菌性)1の評価方法と同じである。
<耐食性>
耐食性はISO6509:1981(Corrosion of metals and alloys determination of dezincification resistance of brass)による脱亜鉛腐食試験により評価した。試験は75℃に加温した1%第2塩化銅水溶液中に24時間保持したサンプルを暴露表面から垂直方向の金属組織を観察し、脱亜鉛腐食の最も進行している部分の深さ(最大脱亜鉛腐食深さ)を測定した。その最大脱亜鉛腐食深さが200μm以下を「A」、200μmを超えるものを「C」とした
<引張試験>
熱処理工程後の圧延材(冷間圧延前の試料)及び10%冷間圧延試料、押し出し後の棒材及び抽伸(Re:9.3%)後の棒材をそれぞれJIS Z2201:金属材料引張試験片の5号試験片(圧延材:幅25mm、標点間距離50mm)および4号試験片(棒材:径14mm、標点間距離50mm)に加工し、200kN油圧型万能試験機(株式会東京試験機製 AY−200SIII−L)により引張試験を実施した。また、溶接したままの溶接管(直径25.4mm、肉厚1.08mm又は1.0mm)はJIS Z2201:金属材料引張試験片の11号試験片(標点間距離50mm:試験片は管材から切り取ったまま)とし、つかみ部に芯金を入れて、200kN油圧型万能試験機(株式会社東京試験機製 AY−200SIII−L)により引張試験を実施した。引張試験により引張強さ、伸びおよび0.2%耐力を測定した。なお、明細書に記載の耐力はJIS Z2241:金属材料引張試験方法に記載のオフセット法により永久伸び0.2%のときの耐力を示す。
また、引張強度をσ(MPa)、伸びをε(%)としたとき、強度と延性のバランスを示す指標として強度・伸びバランス指数M1=σ×(1+ε/100)を定めた。
なお、製造工程P2を実施したものでは、熱処理工程後の圧延材(冷間圧延前の試料)及び10%冷間圧延試料の他に、熱処理工程後の圧延材:素条(幅111mm×厚み1.0mm)から製造した溶接管の引張試験を行った。その結果を、10%冷間圧延試料の引張試験結果の欄に( )付きで示す。
<導電率>
導電率はSIGMATEST D2.069(日本フェルスター株式会社製)を用いて測定した。各種圧延材は冷間圧延材(Re10%)の表面、棒材(φ20mm冷間抽伸材:Re9.3%)は押出方向と垂直方向に切断した面を測定周波数480kHzで測定した。
組成、評価結果を表1〜10に示す。
Figure 0005933848
Figure 0005933848
Figure 0005933848
Figure 0005933848
Figure 0005933848
Figure 0005933848
Figure 0005933848
Figure 0005933848
Figure 0005933848
Figure 0005933848
試験の結果、下記のことが分かった。
第1発明合金(請求項1に記載の組成範囲の耐変色性銅合金)であって、組成指数f1が24≦f1≦40の範囲内、組成指数f2が1.2≦f2≦4.0の範囲内にあれば、熱間加工性、冷間加工性も良好であり、冷間圧延材の金属組織はβ相の割合およびγ相の割合がそれぞれ単独で0.9%以下、0.7%以下となり、平均結晶粒度も30μm以下となった。そのため、機械的性質(強度)が高く、また伸びもあり、強度・伸びバランス指数であるM1も480以上であり高い数値を示した。さらに耐変色性が良好であり、打ち抜き性、曲げ性などの加工性も優れ、抗菌性(殺菌性)も純銅(C1020)と同等もしくはより優れるB評価以上であり、耐食性も良好であった。
組成指数f1およびf2からみると、これらが好ましい範囲に入ると、耐変色性、抗菌性(殺菌性)がより優れる結果となり、これらの組成指数f1およびf2が各特性に大きく影響を与えていることがわかった。f1が適正範囲を超えるNo.A1,A9はβ相、γ相が多く、冷間加工性に問題があり、耐変色性や加工性に劣る。一方f1が適正範囲よりも下回るNo.A3,A4は熱間加工中に変形抵抗が大きいため所定の板厚まで圧下できなかった。No.A4は変形抵抗も高く圧下にも問題があったが、Pbが適正範囲を超えていることもあり、大きな耳割れが生じており、熱間加工性も問題があった。
比較材である黄銅材(C2600)は殺菌性が良好であるものの、耐変色性が劣り、また打ち抜き性などの加工性も問題があった。純銅(C1020)は短時間で変色が生じるなど、耐変色性が悪く、打ち抜き性などの加工性も低くかった。また、抗菌性(殺菌性)は上述のように試験後の生菌数の割合が接種時の33%であり、第1発明合金と同等あるいは悪く、強度も弱かった(M1の値が小さい)。ネーバル黄銅(C4622)は冷間抽伸前の強度・伸びバランスが低く、耐変色性にも問題があった。また、耐食性(耐脱亜鉛腐食性)にも問題があった。
Znの含有量が本発明の範囲よりも多いNo.A1、A9では組成指数f1も範囲よりも大きくなり、そのため金属組織中のβ相、γ相の割合が2%以上と大きく、冷間加工性(冷間圧延により大きな割れを生じた)に問題があり、その結果強度はある程度高いものの、伸び値が低く、強度・伸びバランス指数M1が低く、耐変色性、曲げ性および耐食性に大きな問題が生じ、耐変色性銅合金として使用するのは問題があった。
Znの含有量が本発明の範囲よりも少ないNo.A3では組成指数f1も範囲より小さく、熱間圧延時の変形抵抗が大きくなり、所望の厚みまで圧延できなかった。
Snの含有量が本発明の範囲よりも多いNo.A2では組成指数f2が範囲より大きくなり、金属組織中のβ相はないものの、γ相が多く、そのため冷間圧延時に大きな割れが生じた。そのため伸びも小さくなり、M1も小さい値となり、曲げ性、耐食性で大きな問題が生じた。逆にSnの含有量が本発明の範囲よりも少ないNo.A1−1は組成指数f4が範囲より小さくなり、γ相はないものの、引張強さが低く、M1も小さい値となり、耐変色性、打ち抜き加工性に問題を生じた。
Pbの含有量が本発明の範囲よりも多いNo.A4ではf1が小さいが、熱間圧延時に大きな割れが生じたため、次工程の冷間圧延が実施できなかった。
逆にPbの含有量が本発明の範囲よりも少ないNo.A6では機械的性質や耐変色性、抗菌性(殺菌性)に与える影響はほとんど無いものの、打ち抜き試験を行ったときのバリ高さが大きく、プレス加工性に問題があった。
Alの含有量が本発明の範囲よりも多いNo.A5では組成指数f2も大きく、金属組織中のβ相率が高くなっていた。また、Alが多いため特に長期暴露したサンプルでの抗菌性(殺菌性)が悪くなった。Alの含有量が本発明の範囲よりも少ないNo.A8では組成指数f2、f4の値が小さく、結晶粒が大きく、引張強さも小さくM1が小さかった。また耐変色性に劣った。
第2発明合金(請求項2に記載の組成範囲の耐変色性銅合金)は、上述の第1発明合金中のSnとAlの一部をNiで代替する組成であって、組成指数f1が24≦f1≦40の範囲内、組成指数f3が1.2≦f3≦4.0の範囲内にあれば、熱間加工性、冷間加工性、機械的強度(強度・伸びのバランス指数)も良好で、打ち抜き性などの加工性だけでなく、殺菌性、耐食性も優れる結果が得られ、SnとAlをNiで代替しても各種特性は同等レベルであり、問題がなかった。特に、組成指数f4が0.02≦f4≦1.8の範囲内であれば、上述の特性がさらに向上した。
組成指数f3が4.0より大きいNo.A7では、Ni−Al系の金属間化合物が熱間加工性を低下させるため、大きな割れが生じた。
Siの含有量が本発明の範囲よりも多く、組成範囲f2、f4も範囲を超えたNo.A8では、熱間圧延中に大きな耳割れが生じた。これは組成指数f2、f4が上限を超えていることと、Siの含有量が多くなっているためであった。熱間加工性がC評価であるが、本合金のみ熱間圧延材の耳部をグラインダーで削り取り、冷間加工を行い、各種評価を行った。なお冷間加工性の評価もCであり、大きな割れが生じた。金属組織中のβ相、γ相が多く、そのため延性(伸び)が小さく焼鈍材でのM1が小さくなり、曲げ性、抗菌性(殺菌性)および耐食性が悪くなった。
Niの含有量が本発明の範囲よりも多く組成指数f3も範囲を超えたNo.A11では、熱間加工性が悪化し、大きな割れが生じた。
第3発明合金(請求項3に記載の組成範囲の耐変色性銅合金)は、上述の第1、2発明合金において、さらに0.01〜1.0mass%のSi、0.01〜0.5mass%のTi、0.01〜1.5mass%のMn、0.001〜0.09mass%のFeのうちいずれか1種以上を含有し、組成指数f1が24≦f1≦40の範囲内とされ、組成指数f2が1.2≦f2≦4.0の範囲内、あるいは、組成指数f3が1.2≦f3≦4.0の範囲内とされた合金である。
これらの合金では耐変色性、加工性、抗菌性(殺菌性)および耐変色性は組成指数f1、f2あるいはf3に影響されるが、第1発明合金、第2発明合金とほぼ同等であり、更に機械的性質(強度)がアップし、M1が大きくなった。
Sn,Siの含有量が本発明の範囲よりも少なくTiの含有量が本発明の範囲よりも多いNo.A10では、伸びが小さく、M1も小さくなっており、曲げ加工性においても割れを生じるなど冷間での加工性が劣った。また、Sn,Siが少ないため抗菌性(殺菌性)が劣る結果となった。
Si,Tiが本発明の範囲よりも小さいNo.A3−1、およびMn,Feが本発明の範囲よりも小さいNo.A3−2は組成の近いNo.1とほぼ同等の機械的性質(強度)、耐変色性、殺菌性などを示し、これらの添加元素による各特性の向上は見られなかった。
一方、Tiが本発明の範囲を超えるNo.A10は曲げ加工性で割れが生じ、加工性に問題が生じた。それぞれSi,Fe、TiおよびMnが本発明の範囲を超えるNo.A3−3、A3−4およびA3−5はβ相、γ相が多く冷間加工性および耐食性に問題がありTiなどの酸化物の巻き込みによる鋳塊欠陥による熱間加工性が悪い、およびMnが大量に含まれることによる熱間加工性の悪化による大規模な耳割れが生じるなど、加工性および諸特性に問題が生じた。
第4発明合金は、第1〜3の発明合金の耐変色性銅合金において、さらに、0.005〜0.09mass%のP、0.01〜0.09mass%のSb、0.01〜0.09mass%のAs、0.001〜0.03mass%のMgのうちのいずれか1種以上を含有するものである。各種特性は組成指数f1、f2などに影響されるものの、耐変色性、殺菌性などが第1発明合金などよりも向上しており、添加元素の効果が見られた。P,Sb,Asが本発明の適正範囲よりも低いNo.A4−1は若干組成が異なるものの良く似た組成のNo.4とほぼ同様の各種特性を示し、添加元素による効果は見られなかった。一方、P,Mgが本発明の適正範囲を超えて含まれるNo.A4−2はPが過剰に含まれていることによる熱間加工時に大きな割れ、およびMgの酸化物による鋳塊欠陥も生じるなど熱間加工性に問題を生じた。
第1発明合金、第2発明合金および第3発明合金について量産試作にて素条を作成し、溶接管を試作したが、溶接管の健全性(扁平試験、押し広げ試験、180度曲げ)は良好であり、溶接部近傍の組織もβ相、γ相の面積率も小さく、問題なかった。また溶接性(突合せ溶接)でも問題ないことを確認した。いずれも引張強度、伸びも優れ、それらのバランスも良好であった。また、第2発明合金(現在の図ではNo.17)の溶接管は高周波誘導コイルを用いた加熱およびTIG溶接により製造した。いずれの方法で製造した溶接管は溶接管の健全性(扁平試験、押し広げ試験、180°曲げ)において良好であり、組織もα単相と問題なく、引張強度、伸びおよびそれらのバランスも優れていた。
また、押出材では熱間鍛造品を試作し、耐食性、組織などを確認したが、いずれのサンプルについても問題はなかった。
このように各種発明合金は条製品、板製品およびそれらから製造される溶接管についても各種特性を満足する材料を得ることができた。また、棒材(押出材)についても良好に製造することが可能であり、熱間鍛造品なども問題なく製造できることが確認された。
なお、平均結晶粒径については範囲内にあれば組成指数f1などにも影響されるが、機械的性質も良好であるが、粗大であると曲げ加工時にザラが発生するなど、加工性に問題が発生した。
以上、各種発明合金は組成指数f1、f2、f3、f4により、β相、γ相の面積率や耐変色性、加工性だけでなく抗菌性(殺菌性)、耐食性にも寄与するが、これらが請求項であげた範囲内にあれば、各種特性の優れる耐変色性銅合金を得ることが可能であることが確認された。
本発明の耐変色性銅合金およびこの耐変色性銅合金を用いた銅合金部材によれば、黄色(黄銅色)の色調を有するとともに、熱間加工性、冷間加工性、プレス性等の加工性に優れ、さらに耐変色性と抗菌性および殺菌性を向上させることができる。

Claims (8)

  1. 17〜34mass%のZnと、0.01〜2.5mass%のSnと、0.005〜1.8mass%のAlと、0.0005〜0.009mass%のPbとを含有し、残部がCu及び不可避不純物からなり、
    Znの含有量〔Zn〕mass%と、Snの含有量〔Sn〕mass%と、Alの含有量〔Al〕mass%との間に、24≦〔Zn〕+5×〔Sn〕+3×〔Al〕≦40の関係を有し、かつ、Snの含有量〔Sn〕mass%と、Alの含有量〔Al〕mass%との間に、1.2≦〔Sn〕+2×〔Al〕≦4.0の関係を有しており、
    α相マトリックスのγ相の面積率(γ)%とβ相の面積率(β)%との間に0≦2×(γ)+(β)≦1.5の関係を有するとともに、α相マトリックスに面積率で0〜0.7%のγ相および0〜0.9%のβ相が分散した金属組織とされている耐変色性銅合金。
  2. 17〜34mass%のZnと、0.01〜2.5mass%のSnと、0.005〜1.8mass%のAlと、0.0005〜0.009mass%のPbと、0.01〜5mass%のNiを含有し、残部がCu及び不可避不純物からなり、Znの含有量〔Zn〕mass%と、Snの含有量〔Sn〕mass%と、Alの含有量〔Al〕mass%と、Niの含有量〔Ni〕mass%の間に、24≦〔Zn〕+5×〔Sn〕+3×〔Al〕−0.5×〔Ni〕≦40の関係を有し、かつ、Snの含有量〔Sn〕mass%と、Alの含有量〔Al〕mass%と、Niの含有量〔Ni〕mass%との間に、1.2≦0.7×〔Ni〕+〔Sn〕+2×〔Al〕≦4.0の関係を有しており、
    α相マトリックスのγ相の面積率(γ)%とβ相の面積率(β)%との間に0≦2×(γ)+(β)≦1.5の関係を有するとともに、α相マトリックスに面積率で0〜0.7%のγ相および0〜0.9%のβ相が分散した金属組織とされている耐変色性銅合金。
  3. さらに、0.01〜1.0mass%のSi、0.01〜0.5mass%のTi、0.01〜1.5mass%のMn、0.001〜0.09mass%のFeのうちいずれか1種以上を含有し、
    Znの含有量〔Zn〕mass%と、Snの含有量〔Sn〕mass%と、Alの含有量〔Al〕mass%と、Si、Ti、Ni、Mn、Feのそれぞれの含有量〔Si〕mass%、〔Ti〕mass%、〔Ni〕mass%、〔Mn〕mass%、〔Fe〕mass%との間に、24≦〔Zn〕+5×〔Sn〕+3×〔Al〕+2.5×〔Si〕+1.0×〔Ti〕−0.5×〔Ni〕+0.5×〔Mn〕+0.2×〔Fe〕≦40の関係を有する請求項1又は請求項2に記載の耐変色性銅合金。
  4. さらに、0.005〜0.09mass%のP、0.01〜0.09mass%のSb、0.01〜0.09mass%のAs、0.001〜0.03mass%のMgのうちのいずれか1種以上を含有する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の耐変色性銅合金。
  5. 溶接管、鍛造品、鋳物の形態で使用される請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の耐変色性銅合金。
  6. 抗菌性試験における10分経過後の生菌率が、純銅の生菌率と同等もしくは低くなっている請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の耐変色性銅合金。
  7. 請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の耐変色性銅合金からなる基材と他部材とが接合されることにより構成されている銅合金部材。
  8. ドアハンドル、ドアノブ、ドアプッシュ板、手摺り、ベッド柵、サイドボード、机天板、椅子背もたれ、ナースカート取手の部材、ペンのグリップ、キーボード、マウス、シンク、つり革、スイッチ、スイッチカバー、建材として使用される請求項7に記載の銅合金部材。
JP2015539378A 2013-09-26 2014-09-26 耐変色性銅合金および銅合金部材 Active JP5933848B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013199475 2013-09-26
JP2013199475 2013-09-26
PCT/JP2014/075612 WO2015046421A1 (ja) 2013-09-26 2014-09-26 耐変色性銅合金および銅合金部材

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP5933848B2 true JP5933848B2 (ja) 2016-06-15
JPWO2015046421A1 JPWO2015046421A1 (ja) 2017-03-09

Family

ID=52743547

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2015539378A Active JP5933848B2 (ja) 2013-09-26 2014-09-26 耐変色性銅合金および銅合金部材

Country Status (3)

Country Link
JP (1) JP5933848B2 (ja)
TW (1) TWI516615B (ja)
WO (1) WO2015046421A1 (ja)

Families Citing this family (14)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP6477127B2 (ja) * 2015-03-26 2019-03-06 三菱伸銅株式会社 銅合金棒および銅合金部材
DE202016102696U1 (de) * 2016-05-20 2017-08-29 Otto Fuchs - Kommanditgesellschaft - Sondermessinglegierung sowie Sondermessinglegierungsprodukt
JP6927844B2 (ja) * 2016-10-28 2021-09-01 Dowaメタルテック株式会社 銅合金板材およびその製造方法
US11293084B2 (en) 2016-10-28 2022-04-05 Dowa Metaltech Co., Ltd. Sheet matertal of copper alloy and method for producing same
CN109112350A (zh) * 2018-08-29 2019-01-01 宁波兴敖达金属新材料有限公司 高强韧耐腐蚀的铝黄铜合金网衣材料及其制备方法
CN113906150B (zh) * 2019-06-25 2023-03-28 三菱综合材料株式会社 易切削铜合金铸件及易切削铜合金铸件的制造方法
TWI731506B (zh) * 2019-06-25 2021-06-21 日商三菱伸銅股份有限公司 快削性銅合金及快削性銅合金的製造方法
JP2021004048A (ja) * 2019-06-25 2021-01-14 三菱マテリアル株式会社 家畜運搬用容器
JP7266540B2 (ja) 2020-01-14 2023-04-28 株式会社オートネットワーク技術研究所 接続端子
TW202142716A (zh) * 2020-03-27 2021-11-16 日商三菱綜合材料股份有限公司 抗菌構件
EP3992318A1 (de) * 2020-10-29 2022-05-04 Otto Fuchs - Kommanditgesellschaft - Legierungsprodukt hergestellt aus einer bleifreien kupfer-zink-legierung und verfahren für dessen herstellung
EP3992319A1 (de) * 2020-10-29 2022-05-04 Otto Fuchs - Kommanditgesellschaft - Legierungsprodukt hergestellt aus einer bleifreien kupfer-zink-legierung und verfahren für dessen herstellung
KR102628870B1 (ko) * 2021-12-23 2024-01-24 세종대학교 산학협력단 단상을 갖는 컬러 합금 구현 기술과 결정립 크기 조절을 통한 컬러 합금 특성 제어 기술
CN115710655B (zh) * 2022-11-25 2023-10-27 有研工程技术研究院有限公司 一种高耐蚀抗菌铜合金材料及其制备方法和应用

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH06228684A (ja) * 1993-02-05 1994-08-16 Mitsubishi Shindoh Co Ltd Cu合金製電気電子機器用コネクタ
JPH10265874A (ja) * 1997-03-25 1998-10-06 Kobe Steel Ltd 電気・電子部品用銅合金及びその製造方法
JP2007211317A (ja) * 2006-02-12 2007-08-23 Sanbo Copper Alloy Co Ltd 銅合金製塑性加工材及びその製造方法
JP5245015B1 (ja) * 2011-06-29 2013-07-24 三菱伸銅株式会社 銀白色銅合金及び銀白色銅合金の製造方法

Family Cites Families (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS6086231A (ja) * 1983-10-14 1985-05-15 Nippon Mining Co Ltd 高力導電銅合金
JPS6086233A (ja) * 1983-10-14 1985-05-15 Nippon Mining Co Ltd 高力導電銅合金
US20110142715A1 (en) * 2009-12-11 2011-06-16 Globe Union Industrial Corporation Brass alloy
WO2013115363A1 (ja) * 2012-02-01 2013-08-08 Toto株式会社 耐食性に優れた黄銅

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH06228684A (ja) * 1993-02-05 1994-08-16 Mitsubishi Shindoh Co Ltd Cu合金製電気電子機器用コネクタ
JPH10265874A (ja) * 1997-03-25 1998-10-06 Kobe Steel Ltd 電気・電子部品用銅合金及びその製造方法
JP2007211317A (ja) * 2006-02-12 2007-08-23 Sanbo Copper Alloy Co Ltd 銅合金製塑性加工材及びその製造方法
JP5245015B1 (ja) * 2011-06-29 2013-07-24 三菱伸銅株式会社 銀白色銅合金及び銀白色銅合金の製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
TWI516615B (zh) 2016-01-11
TW201516165A (zh) 2015-05-01
WO2015046421A1 (ja) 2015-04-02
JPWO2015046421A1 (ja) 2017-03-09

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5933848B2 (ja) 耐変色性銅合金および銅合金部材
JP5245015B1 (ja) 銀白色銅合金及び銀白色銅合金の製造方法
TWI521075B (zh) 銅合金
EP2952596B1 (en) Lead-free easy-to-cut corrosion-resistant brass alloy with good thermoforming performance
CN101932741B (zh) 高强度高导电铜棒线材
CN101952469B (zh) 银白色铜合金及其制造方法
TWI668315B (zh) 快削性銅合金及快削性銅合金的製造方法
JP6477127B2 (ja) 銅合金棒および銅合金部材
JP6448167B1 (ja) 高強度快削性銅合金、及び、高強度快削性銅合金の製造方法
TWI554355B (zh) 硬焊接合結構體
JP2886818B2 (ja) 装飾用の銅合金の製造方法
EP0685564B1 (en) Copper-zinc-manganese alloy for the production of articles coming into direct and prolonged contact with the human skin
JP6448166B1 (ja) 快削性銅合金、及び、快削性銅合金の製造方法
JP4632239B2 (ja) 冷間加工用βチタン合金材
JP3732305B2 (ja) 耐食性及び熱間加工性並びに耐応力腐食割れ性に優れた銅基合金とその銅基合金の製造方法
JPWO2019035226A1 (ja) 快削性銅合金、及び、快削性銅合金の製造方法
JPS624848A (ja) 高強度および高硬度を有する析出強化型耐食Ni基合金

Legal Events

Date Code Title Description
TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20160405

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20160502

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 5933848

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250