JP3732305B2 - 耐食性及び熱間加工性並びに耐応力腐食割れ性に優れた銅基合金とその銅基合金の製造方法 - Google Patents
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【発明の属する技術分野】
本発明は、耐食性及び熱間加工性並びに耐応力腐食割れ性に優れた銅基合金とその銅基合金の製造方法に関し、詳しくは腐食性水溶液存在下で、耐脱亜鉛腐食性を必要とする材料であって、その材料が熱間鍛造等の熱間加工性が要求される分野であり、更に、切削加工用材として利用され、また、カシメ等応力付加状態で使用され、しかも、耐脱亜鉛性と共に耐応力腐食割れ性も要求される分野に広く利用される銅基合金とその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
銅基合金素材として、一般に、鍛造用黄銅棒(JIS C3771)、快削黄銅棒(JIS C3604)、ネーバル黄銅棒(JIS C4641)、高力黄銅棒(JIS C6782)等が知られている。
しかし、これらの銅基合金は、種々の欠点があり、満足するものではないため、従来より各種の改良銅基合金が提案されている。
【0003】
本件出願人も、特開平7−207387号公報によって、耐脱亜鉛腐食性と熱間加工性の優れた銅基合金を既に提案している。
同公報の合金は、特性に優れ広い分野で実施されているが、その合金の実施経過とともに次のような課題点が発生しているため、これらの改善の開発が望まれていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
この点を具体的に説明すると、腐食液雰囲気にて脱亜鉛腐食試験を実施したところ局部腐食が生ずる場合があり、更に、この銅基合金は、切削加工材として利用されたり、また、カシメ等の応力付加状態で使用された場合、応力腐食割れを生ずることもある。
【0005】
本発明は上記の課題点に鑑み、鋭意研究の結果開発に至ったものであって、その目的とするところは、腐食液雰囲気中で優れた耐脱亜鉛腐食性を有し、熱間加工性と耐応力腐食割れ性に優れた性質を有する銅基合金とその製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、請求項1における発明は、Cu58.0〜63.0%、Pb0.5〜4.5%、P0.05〜0.25%、Sn0.5〜3.0%、Ni0.05〜0.30%を含有し、残りがZnと不可避不純物からなる組成(以上重量%)で、PとSnの組成比をP(%)×10=(2.8〜3.98)(%)−Sn(%)となるように配分する銅基合金とした。
【0008】
請求項1における優れた耐応力腐食割れ性を有する手段及び請求項4における耐応力腐食割れ性を改善する製造方法は、次の通りである。上記の発明の銅基合金を快削材として使用する場合の鋳造ビレットを押出し加工の後、475〜600℃、1〜5時間の熱処理を施し、次いで、材料強度を上げるため、10〜30%の減面率にて抽伸により、塑性加工を加えた後、加熱温度250〜400℃、1〜5時間保持後、空冷又は炉冷の熱処理を行なう銅基合金の製造法である。この製法により、材料強度を上げるための材質調整(引張強さ400N/mm2以上、伸び25mm以上、硬さHv100以上)及び残留応力除去処理が十分に実施された耐応力腐食割れ性にも優れた銅基合金を得ることが可能となった。
【0009】
また、請求項2及び請求項3の発明は、上記の発明の合金を押出し加工する際、その押出時のビレット加熱温度を680℃以下に下げて押出すことにより、棒材組織の結晶粒径を約20μm以下に細粒化することによって、熱間加工性に優れた性質を有する銅基合金とした。
【0010】
上記した本発明における銅基合金の組成範囲とその理由について説明をする。Cu:Cu量を増加させると耐脱亜鉛腐食性は高まるが、CuはZnよりも材料単価が高価であり、原材料コストを低く抑えること、及び本発明の主用途である熱間鍛造性も良好であることを考慮して、Cuの組成範囲を58.0〜63.0%とした。中でも、60.0〜61.5%の範囲が好ましい結果を得た。
【0011】
Pb:Pbは鍛造製品の切削加工性を向上させるために添加する。0.5%以下では十分な切削加工性が得られない。また、あまりに多く添加すると、引張り強さ、伸び、衝撃値等が低下するので、Pb組成範囲を0.5〜4.5%とした。中でも、1.7〜2.4%の範囲が好ましい結果を得た。
【0012】
P:Pは、耐脱亜鉛腐食性を向上させるために添加した。表1に示す通り、添加料を増加する程、耐脱亜鉛腐食性は向上する。しかし、Pが多く含まれると銅との化合物Cu3Pが結晶粒界へ析出してくる。この化合物は堅くて、脆く、熱間加工時に溶融すること等により押出しや熱間鍛造時に熱間割れを生じやすい。本発明合金の主用途である耐脱亜鉛腐食性も満足するPの組成範囲を0.05〜0.25%とした。中でも、熱間鍛造性に悪影響を及ぼさない成分範囲として、0.07〜0.10%の範囲が好ましい結果を得た。
【表1】
【0013】
Sn:Snは、耐脱亜鉛腐食性を向上させるために添加した。下記に示す表2に、Sn(%)と腐食の関連グラフを示す。特にPを同じに加えることにより、より効果的である。表3にPとSnを同時に加えた時の腐食の変化グラフを示す。Snは材料単価がZnよりも高価であり、原材料コストを考えると低く抑える方が良い。更に、耐脱亜鉛腐食に有効な成分Cu及びPとの相乗効果を考慮して最も良好な耐脱亜鉛腐食性を示すSnの範囲を0.5〜3.0%とした。そして、PとSnの割合が、P(%)×10=(2.8〜3.98)(%)−Sn(%)の式に従う時に耐脱亜鉛腐食性は優れていることを確認した。また、Snの成分範囲は、1.0〜2.5%が好ましい結果を得た。Pと兼ね合いで、Pが多くなると熱間鍛造性が悪くなること、Snが過剰になるとγ相の析出が多くなってくること等を考慮して、特に、P(%)×10=(2.8〜3.2)(%)−Sn(%)の場合が好ましい。
【0014】
Ni:Niは、添加することにより直接脱亜鉛腐食性に効果がある。また、一方で鋳塊状態での組織を微細化し、α+β組織の均一細分化が可能であり、その後の押出、鍛造等の加工により均一な細かい組織を得ることが出来、これによって更に耐脱亜鉛腐食を防止する効果がある。そこで、Niの組成範囲を0.05〜0.30%とした。中でも、0.05〜0.10%の範囲が好ましい結果を得た。
【0015】
Ti:Niとの相乗効果でβ相の均一細分化の効果を助長させるため添加した。そのTi組成範囲を0.02〜0.15%とした。
【0016】
不可避不純物成分:Feなどの製造上、不可避な不純物成分は合計で0.8%以下にすることが好ましい。この範囲は公知のJIS規格範囲で通常の一般黄銅材を製造している限り、特別な製法をとることなく管理可能である。
【0017】
請求項1に基づき成分調整された銅基合金の製法について説明する。耐脱亜鉛腐食性を有する銅基合金を低いコストで製造するために、原材料価格が安価なPを用いた。このPは微量な添加量で耐脱亜鉛腐食性に効果があり、同様の効果のあるSnの添加量を減らすことが可能となった。
【0018】
本発明における製造法は、まず鋳造工程で請求項1の成分で、更に成分調整された銅基合金を鋳造し、鋳塊を造る。次いで、製棒工程でその鋳塊ビレットを一例として加熱温度700℃にて押出し、抽伸することにより棒材を製造する。次に、鍛造工程ではその棒材を用いて、650〜800℃の加熱温度による熱間鍛造をすることによって製品を成型する。更に、これを450〜600℃、1〜5時間保持後空冷の熱処理を実施し、その合金組織の調整及び内部応力の除去を十分に行なうことによって、耐脱亜鉛腐食性に優れた銅基合金材を製造する。
【0019】
ま た、他の方法として、請求項1の成分で成分調整された銅基合金の鋳塊ビレットを、例えば、加熱温度700℃にて熱間押出して棒材又はコイル材を造り、加熱温度475〜600℃にて1〜5時間保持後空冷の熱処理を実施する。次に、コイル材を10〜25%の減面率にて、しぼり、抽伸加工をすることにより、塑性加工を加えた後、加熱温度250〜400℃、1〜5時間保持後空冷の焼鈍処理を行なう。これにより材質調整(引張強さ400N/mm2以上、伸び25mm以上、硬さHv100以上)がなされると共に内部応力が十分に取り除かれる。以上の様な製造法により、耐脱亜鉛腐食性に優れ、更に高強度で耐応力腐食割れ性に優れた銅基合金を得られる。表4に焼鈍時の保持時間に対する脱亜鉛深さの変化実験グラフを示す。
【0020】
更に、請求項1の成分で、成分調整された銅基合金鋳塊を出来るだけ低い加熱温度で押出すことによって棒材の組織の結晶粒を小さくする。このことにより熱間加工性が向上する。表5に押出温度と結晶粒径との関係のグラフ、表6に結晶粒径と鍛造性との関連グラフをそれぞれ示す。これらの結果によると、押出工程にてビレット加熱温度を680℃以下に下げて押出すことにより棒材組織の結晶粒径は細粒化され、即ち、このことによって熱間加工性に優れた合金材料の得られることが確認された。結晶粒径は、約20μm以下で熱間鍛造性は良くなるが、試験の結果から15μm以下が特に良好である。
【0021】
【実施例】
本発明の銅基合金を適用した実施例並びに比較例について説明する。各サンプルの耐脱亜鉛腐食試験及び熱間鍛造性試験結果を表7に示す。
各試験サンプルは前記した公知の製造法により製造したものであり、まず連続鋳造法によって造られたφ250mmの鋳塊ビレットを熱間押出機を用いて押出温度700℃でφ25の棒材を造る。次いで、断面減少率12.5%の抽伸加工を行なった。
【0022】
鍛造性試験:上記棒材を用いて工業用バルブ部品の鍛造成型性試験を行なった。鍛造温度700℃で熱間鍛造を行ない、外観形状、表層の割れ、しわの状況確認を行なった。確認方法として、10倍率実体顕微鏡を用いた。なお、成型性の比較については公知のJIS C3771(サンプルNo.1)材を用いた鍛造品の成型状態を基準として、同等のものを○印、劣るものを×印として示した。
【0023】
脱亜鉛腐食性試験:上記の鍛造後のバルブ部品サンプルを550℃×5.0Hr空冷の条件で熱処理を実施し、鍛造組織の調整と内部応力除去を行なった。脱亜鉛腐食性試験はISO式脱亜鉛試験に基づいて実施した。その方法は試験片表面をエメリーペーパー1000番で仕上げ、エタノールで洗浄した後、75±3℃の1%塩化第2銅水溶液中にその量が、サンプル表面積当り、2.5ml/mm2以上になる様にして浸漬し、24時間保持した。浸漬試験後のサンプルの表面よりの脱亜鉛深さを測定した。脱亜鉛腐食性の評価方法はその深さが75μm以下を◎印、75〜200μmを○印、200μm以上を×印として示した。
【表7】
【0024】
上記した表7の試験結果の内容を説明する。
サンプルNo.1は、Cuが低く、P、Snを殆ど含んでいないため耐脱亜鉛性が劣る。No.2〜No.4は、Pも0.09〜0.10%含んでおり、耐脱亜鉛腐食性は良好であるが、Cuが高く鍛造性は良くない。No.5は、Snを含有していないため耐脱亜鉛腐食性は劣る。No.6はPを含有していないために耐脱亜鉛腐食性は劣る。No.7〜No.12は、P及びSnを含有し、P(%)×10+Sn(%)の式より算出すると2.81〜3.98となり、耐脱亜鉛腐食性は良好である。No.7〜No.10は、鍛造性も良好であるが、No.11、No.12はPが高いために熱間鍛造割れを生じた。No.13〜No.15は、Cuは低いので、鍛造性は良いが、Snが低いので耐脱亜鉛腐食性は良くない。
以上のことから、耐脱鉛腐食性及び熱間鍛造性のいずれも良好なのは、No.7〜No.10でP(%)×10+Sn(%)=2.81〜3.98である。ただし、Snが高いと、組織にγ相が多く析出するおそれがあるため、No.10はSn(2.98%)とした。
従って、No.7〜No.10が良好でP(%)×10+Sn(%)=2.81〜3.23である。特に、P(%)=0.07〜0.10の場合、P(%)×10+Sn(%)=2.8〜3.2が好ましい。
【0025】
図3(表7のサンプルNo.1)は、公知の鍛造用黄銅棒(JIS C3771)を用いて熱間鍛造したサンプルをISO−6509式の脱亜鉛腐食試験を実施した時の腐食部の写真のカラー複写である。これによると約1000μm〜1400μmの深さの脱亜鉛腐食層が確認された。快削黄銅棒(JIS C3604)についての同様試験結果を図4に示す。これも図3の場合と同様1000μm〜1400μmの脱亜鉛腐食層が確認された。
【0026】
図1(表7中のNo.7サンプル)と図2(表7中のNo.8サンプル)は、本発明における鍛造用黄銅棒を用いて熱間鍛造・熱処理を実施して造ったサンプルをISO−6509式脱亜鉛腐食性試験法にて、腐食試験を行なった結果の写真のカラー複写である。これによると腐食は殆どみられず、耐腐食性良好判定深さ75μmを大きく下回っており、本発明合金が優れた耐脱亜鉛腐食性の効果を発揮する銅基合金材料であることを示した。
【0027】
図5は、本発明の表7中のサンプルNo.7(P0.10%)の銅基合金を加熱温度720℃にてバルブ部品を鍛造したサンプルである。外観は目視及び10倍率の実体顕微鏡を用いて表層のヒビ割れ等不具合の有無の検査を行なった。その結果、割れ、その他欠陥も認めず、良好であった。
図6は、表7中の比較例No.12(P0.18%)のサンプル材を鍛造温度720℃でバルブ部品を鍛造したサンプルである。表層にヒビ割れを生じている。これは、Pが高すぎたためであり、P(%)が0.18%では熱間加工性が悪くなることを示している。
【0028】
以上のことから明らかなように、本発明における銅基合金はバルブ、ボデー、ステム、ジスク等のバルブ部品材、建築資材や電気、機械、船舶、自動車等の機械部材、塩水使用のプラント等の部材等で耐脱亜鉛腐食性を必要とする材料に広く適用することが出来る。
【0029】
本発明合金が耐応力腐食割れ性に優れている実施例を説明する。
図9〜図11に示すように、本発明の銅基合金材を快削材として製造する場合、通常工程は鋳造ビレットを熱間押出しの後、棒材の形状・サイズ等によって「焼鈍→出荷」と「焼鈍→抽伸加工→出荷」の場合がある。更に、図11に示すように、本発明の「焼鈍→抽伸加工→焼鈍→出荷」等がある。これら3種類の工程の異なる製法によって造った棒材に対して応力割れ試験、その他の試験を行った。表8にそれぞれのサンプルと工程の種類を示す。
以下に、このサンプルの製造方法について述べる。試験では前記表7におけるNo.7と同成分鋳造ビレットを利用し、例えば、φ250鋳造ビレットを熱間押出しにてサンプル(イ)であるφ16の直棒材及びφ18.2のコイル材サンプル(ロ)(ハ)をそれぞれ造った。表8中のサンプル(イ)は、熱間押出後のφ16の棒を用いて、550℃×3.0Hr空冷の熱処理を実施した。サンプル(ロ)は、図10の工程に従い、熱間押出後のコイル材で550℃×3.0Hr空冷の熱処理実施後、抽伸加工により、φ16の棒を造り、定寸法への加工と塑性加工を加えた。更に、表8中のサンプル(ハ)は、図11の工程に従い、熱間押出後のコイル材を550℃×3.0Hr空冷の熱処理実施後、次いで、抽伸加工により、定寸法への加工と塑性加工を行った。更に、350℃×3.0Hr空冷の熱処理を加えた。ここで、サンプル(ロ)、(ハ)の断面減少率は、22.7%である。そして、3種の工程で造られたサンプルの応力腐食割れ試験及び機械的性質の測定を行なった。
その試験結果及びその評価を表8に示す。
【表8】
【0030】
応力腐食割れ試験:棒材のままの応力腐食割れ試験はJIS H3250の時期割れ試験に従って実施した。即ち各工程の異なる種類のサンプルの棒材を80mm切取り、脱脂乾燥した後、14%アンモニア水を入れたデシケータに入れ、このアンモニア雰囲気中に常温で2時間保持した。試験完了のサンプルを10%硫酸液にて洗浄し、更に水洗し十分乾燥して表面の割れ確認を行った。付加圧時の応力腐食割れ試験は図8の様な試験具を作り、サンプルをセットした後、上記同様の14%アンモニア水の入ったデシケータに入れて、2時間保持した。この後、上記の棒材の場合と同様洗浄してサンプル表面の割れ確認を行った。割れの確認出来たものを×印、確認出来なかったものを○印とした。
【0031】
表8の機械的性質及び応力腐食割れ試験の結果及び評価について説明する。
サンプル(イ)は、押出し棒材のままでは応力腐食割れは生じていないが、付加圧状態の試験では割れを生じている。これは材料強度が低く付加圧に耐えられず、微小な塑性変形を生じて、その微小変形部に内部応力が残留して割れに到ったものと推定される。
サンプル(ロ)は棒材の場合、付加圧時の試験のいずれも割れを生じた。これは抽伸加工によって大きな内部エネルギーが残留しているためである。硬度も高く、靱性も少なく、付加圧時に更に内部応力が加わったために大きな内部応力が残留し、割れを生じたものである。
次に、サンプル(ハ)は棒材試験、付加圧試験いずれにおいても割れは生じなかった。このサンプルは抽伸加工によって塑性加工を受け材料強度を増し、次いで歪取り焼鈍により、内部応力を取り除くことにより内部応力のない強度の高い材料となり、外部よりの付加応力による破壊に対する限界値の高い材料になっている。従って、付加圧時の応力にも耐えることが出来て、割れは生じなかったものである。これによりサンプル(ハ)と同工程で処理するとき、耐脱亜鉛腐食性に優れ、更に耐応力腐食割れ性にも優れていることが確認された。これらの結果を図7(a)における写真のカラー複写において、アンモニア水14%2Hrの応力腐食割れ試験の結果で示す。
【0032】
以上のことから、請求項4における銅基合金は押出→熱処理(475〜660℃、1.0〜5.0Hrの空冷)→抽伸加工(減面率10〜30%)→熱処理(250〜400℃、1.0〜3.0Hrの空冷又は炉冷)のプロセスで製造する時、耐脱亜鉛腐食性、及び耐応力腐食割れ性にも優れている。
【0033】
従って、ホースニップル部品などのカシメ組立て部品、バルブステム、ジスク等の応力のかかる部品で腐食性水溶液中で使用される機器の部材等に適用することが出来る。
【0034】
【発明の効果】
以上の通り、Pb入り黄銅本来の熱間鍛造性を有し、優れた脱亜鉛腐食性を持ち、熱間加工用の銅基合金である。そして、耐腐食性向上のために、Pを利用することにより原材料コストをより安価にすることで経済性にも富む。
また適切な抽伸加工及び熱処理を加えることにより耐応力腐食割れ性にも優れた効果がある。
従って、本発明によって、耐脱亜鉛腐食性、耐応力腐食割れ性及び熱間加工性に優れた効果を発揮し、経済性にも富む銅基合金を提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明材(表7中のNo.7サンプル)に対し、ISO式脱亜鉛腐食試験を実施したサンプルのミクロ組織写真のカラー複写である。
【図2】本発明材(表7中のNo.8サンプル)に対し、ISO式脱亜鉛腐食試験を実施したサンプルのミクロ組織写真のカラー複写である。
【図3】従来の鍛造用黄銅棒材JIS C3771を用いて鍛造したバルブ部品に際し、ISO式脱亜鉛腐食試験を実施したサンプルのミクロ組織写真のカラー複写である。
【図4】従来の快削黄銅棒材JIS C3604を用いて加工した部品に対し、ISO式脱亜鉛腐食試験を実施したサンプルのミクロ組織写真のカラー複写である。
【図5】本発明材(表7中のNo.7サンプル)の鍛造品(バルブ部品)の外観写真のカラー複写である。
【図6】表7中のNo.12サンプルの鍛造品(バルブ部品)の外観写真表面にヒビ割れが生じている写真のカラー複写である。
【図7】 (a)は本発明材の押出品の応力腐食割れ試験結果でサンプルは割れなし(押出→550℃×3.0Hr焼鈍→抽伸→350℃×3.0Hr焼鈍)と割れあり(押出→550℃×3.0Hr焼鈍→抽伸)の2種類のテストの品の写真のカラー複写であり、同図(b)はその説明図である。
【図8】付加圧力時の応力腐食割れ試験を行なう試験具を示した説明図である。
【図9】本発明合金のサンプル(イ)の製造工程を示した説明図である。
【図10】本発明合金のサンプル(ロ)の製造工程を示した説明図である。
【図11】本発明合金のサンプル(ハ)の製造工程を示した説明図である。
Claims (4)
- Cu58.0〜63.0%、Pb0.5〜4.5%、P0.05〜0.25%、Sn0.5〜3.0%、Ni0.05〜0.30%を含有し、残部がZnと不可避不純物からなる組成(以上重量%)を有し、かつ前記Pと前記Snの組成比をP( % )× 10 =( 2.8 〜 3.98 )(%)−Sn(%)となるように配分し、押出工程と熱処理工程を施すことにより耐食性及び熱間加工性に優れた銅基合金であると共に、耐応力腐食割れ性をも有する合金であることを特徴とする耐食性及び熱間加工性並びに耐応力腐食割れ性に優れた銅基合金。
- 請求項 1 に記載の銅基合金において、押出工程を制御して金属組織を調整し、結晶粒径を略平均 20 μ m 以下とすることにより、機械的性質、耐食性及び熱間加工性に優れた性質を有する銅基合金。
- 請求項2おける銅基合金を押出し加工する際、その押出時のビレット加熱温度を 680 ℃以下に下げて押出すことにより、棒材の結晶粒径を細粒化することによって熱間加工性に優れた性質を有するようにした銅基合金。
- 請求項1の銅基合金における製造方法において、鋳造ビレットを押出し加工の後、 475 〜 600 ℃、1〜5時間の熱処理を施し、次いで、材料強度を上げるため、 10 〜 30 %の減面率にて抽伸により、塑性加工を加えた後、加熱温度 250 〜 400 ℃、1〜5時間保持後、空冷、又は炉冷の熱処理を行なうことにより、材質調整及び残留応力除去処理が十分に実施されて耐応力腐食割れ性にも優れた銅基合金を得るようにした銅基合金の製造方法。
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