以下、本発明の実施形態について添付図面に基づき説明する。なお、各図に共通する部分には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
図1及び図2は、本実施形態に係るプラズマ光源システム1を説明するための図である。図1に示すように、プラズマ光源システム1は、プラズマ光源10と、電源装置20と、プラズマ光源10内に放電を発生させるレーザー装置30と、高電圧電源40とを備える。また、図2に示すように、プラズマ光源システム1は、プラズマ光源10を収容する真空槽50を備えている。
まず、プラズマ光源10について説明する。
図2に示すように、プラズマ光源10は一対の同軸状電極11、11と、各同軸状電極11に対して個別に設けられるリザーバ16とを備え、各同軸状電極11内に発生した放電2によってプラズマ3を繰返し発生する。なお、図2において右側の同軸状電極11は、左側の同軸状電極11と同一の構成であるため、詳細な図示を省略する。
一対の同軸状電極11、11は真空槽50内に設けられ、対称面Sを挟んで互いに対向配置される。即ち、各同軸状電極11は対称面Sを中心として、一定の間隔を隔てて互いに対向するよう設置される。一対の同軸状電極11、11は、極端紫外光を放射するプラズマ3を発生すると共に、両者の間に当該プラズマ3を閉じ込める。放電前の各同軸状電極11には、電源装置20により同極性の放電電圧が印加される。なお、真空槽50内は、真空槽50の排気口52から真空ポンプ(図示せず)によって排気され、プラズマ3の発生に適した圧力に保持されている。
図2に示すように、各同軸状電極11は、中心電極12と、複数の外部電極13と、絶縁体14とを備える。中心電極12と各外部電極13との間には、電源装置20(高電圧電源40)によって高電圧(例えば5kV)が印加されている。換言すると、電源装置20は、放電に必要な電気エネルギーを中心電極12と各外部電極13に供給している。中心電極12は、各同軸状電極11に共通する単一の軸線Zを中心軸(以下、この軸を中心軸Zと称する)として、この中心軸Z上に延びる棒状の導電体である。中心電極12は、対称面Sに面する先端部12aと、先端部12aの後方(即ち、中心軸Zに添って対称面Sから離れる方向)に設けられる媒体保持部15と、媒体保持部15の後方に設けられる基部12bとから一体的に構成される。
媒体保持部15は多孔質の材料で形成され、中心電極12の後部に接続するリザーバ16から中心電極12に形成された流路12cを介してプラズマ媒体が導入される。プラズマ媒体は低融点金属(低融点合金)であり、液体の状態で媒体保持部15(中心電極12)の側面に露出する。プラズマ媒体の組成は、必要とする光の波長に応じて選択される。例えば、13.5nmの紫外光が必要な場合はLiやSn等を含み、6.7nmの紫外光が必要な場合はBi等を含む。なお、媒体保持部15を多孔質の構造とする代わりに、プラズマ媒体単体あるいはプラズマ媒体と他の金属との合金によって、層状あるいは塊状に形成してもよい。
先端部12a及び基部12bは、高温プラズマに対して耐熱性を有する材料を用いて形成される。このような材料は、例えばタングステンやモリブデン等の高融点金属である。対称面Sに対向する先端部12aの端面は、半球状の曲面になっている。ただし、この形状は必須ではない。従って、先端部12aの端面に凹部(図示せず)を設けてもよく、或いは単なる平面でもよい。また、基部12bは、先端部12aほど高温に晒されないので、その材料は上述の高融点金属に限られず、熱伝導率の高い銅などでもよい。
図2に示すように、外部電極13は、中心電極12の外周を囲むように設けられた棒状の導電体である。外部電極13は例えば中心電極12と平行に配される。外部電極13は、中心電極12と同じく、高温プラズマに対して耐熱性をもつ材料を用いて形成される。対称面Sに対向する外部電極13の端面は曲面、平面の何れでもよい。また、外部電極13は、中心電極12と一定の間隔を隔てながら、中心電極12の周方向に沿って所定の角度毎に配置されている。換言すると、各外部電極13は中心電極12と平行に配置され、中心電極12の周囲を囲んでいる。例えば、6本の外部電極13が、中心電極12の周りで60°毎に配置される。
各外部電極13は中心電極12の周方向に沿って等間隔に配列することが望ましい。例えば、加工や組み立ての観点から、各外部電極13は中心電極12に対して回転対称な位置に設置することが望ましい。しかしながら、本発明はこのような配列に限定されるものではない。また、外部電極13の本数も6本に限定されず、中心電極12及び外部電極13の大きさや形状、両者の間隔などに応じて適宜設定される。
中心電極12の周りに複数の外部電極13にこのように配置することで、放電2の初期放電(例えば沿面放電)を、各外部電極13と中心電極12との間で発生させることができる。即ち、各外部電極13の表面において中心電極12に最も近接した点を回転対称な位置に置き、これらの点を放電経路に含む初期放電を優先的に発生させる。これにより、初期放電を中心電極12の全周に亘って発生させることが可能になり、環状の放電2の形成が容易になる。
絶縁体14は例えばセラミックを用いて形成され、中心電極12と外部電極13の各基部を支持して両者の間隔を規定すると共にその間を電気的に絶縁する。絶縁体14は例えば円盤状に形成され、中心電極12及び外部電極13が貫通する貫通孔を有する。
リザーバ16は、その内部にプラズマ媒体6を貯留するための空間16aを有する。空間16aは、中心電極12の流路12cと連通している。リザーバ16にはヒータ17が設けられている。ヒータ17は、リザーバ16内のプラズマ媒体6を溶解する。ヒータ17は、熱媒体(油)循環式のヒータで構成される。ヒータ17によって空間16a内で溶解したプラズマ媒体6は、流路12cを介して媒体保持部15に流出する。ヒータ17は、媒体保持部15においてもプラズマ媒体6を液体の状態で保持する。
ヒータ17は、油等の熱媒体によってプラズマ媒体6を加熱、溶解する。ヒータ17は、熱媒体(油)の加熱手段(図示せず)および供給(循環)手段(図示せず)を備えている。ヒータ17によって空間16a内で溶解したプラズマ媒体6は、流路12cを介して媒体保持部15に流出する。ヒータ17は、リザーバ16内を加熱する熱媒体の流路である金属製の配管18を有する。例えば、配管18は絶縁性のカップリング19を介して加熱手段等に接続される。従って、配管18は、フランジ53に固定された配管55から電気的に絶縁されている。
真空槽50はプラズマ光源10及びリザーバ16を収容する。真空槽50には、レーザー光31を導入するためのガラス窓(図示せず)や、プラズマ光源10を真空内に設置するためのポート(フランジ)51が設けられている。また、真空槽50は排気口52を有する。排気口52には真空ポンプ(図示せず)が接続され、真空ポンプ(図示せず)は真空槽50内を排気する。これにより、真空槽50内は、プラズマ3が発生する圧力(真空度)に維持される。また、真空槽50内には遮蔽板60が設けられている。この遮蔽板60については後述する。
真空槽50のポート51にはフランジ53が取り付けられている。フランジ53は、フランジ本体54と、少なくとも1本の配管55と、フランジ本体54に取り付けられ、フランジ本体54および配管55の間を断熱するとともに配管55をフランジ本体54に固定する支持体56とを備える。なお、各同軸状電極11は、このフランジ53に支持されていてもよい。
フランジ本体54は、ボルト等の締結部材(図示せず)を用いて真空槽50側の相手フランジ53に取り付けられる。フランジ本体54には少なくとも1つの貫通穴54aが形成されている。貫通穴54aには配管55が挿入される。また、貫通穴54aの内面と配管55の外面との間に隙間が形成されるように、貫通穴54aの内径は配管55の外径よりも大きい値に設定されている。
ヒータ17の配管18と同じく、配管55も熱媒体の流路である。配管55は金属製であり、溶接やろう付けによって支持体56に固定される。
ところで、極端紫外光のように短波長の光が得られるプラズマの原料(即ち、プラズマ媒体)の1つとして、Li(リチウム)などの低融点金属が利用されている。Liは固体の状態で真空槽50内のリザーバ17に貯蔵されており、プラズマ光源10の稼動時にはLiを溶融させてプラズマの発生領域近傍に移送される。この溶融を行うため、リザーバ17には高温の熱媒体(例えば油)が供給される。ところが熱媒体の加熱は大気側で行われているため、熱媒体の供給路が真空槽50に接触する。その結果、熱媒体から真空槽50への熱の漏洩による熱媒体の温度低下が発生する。熱媒体の温度低下が著しい場合はLiの溶融が不可能になるため、通常はこの温度低下を考慮して予め熱媒体の温度を高めに設定している。この結果、熱媒体を加熱する際の電力エネルギーなどのエネルギー消費量が増加してしまう。そこで、本実施形態では配管55を、支持体56を介してフランジ本体54に固定している。
支持体56は、フランジ本体54における真空側においてフランジ本体54の貫通穴54aが形成された位置に固定される。支持体56は、筒状部材57と、筒状部材57の長手方向における両側に取り付けられた筒状かつ金属性のアダプタ58a、58bとを有する。アダプタ58aは筒状に形成され、その端部が溶接やろう付けによってフランジ本体54に固定される。筒状部材57は、セラミックなどの断熱材によって形成されている。アダプタ58bは筒状に形成され、溶接やろう付けによって配管18に固定される。この固定によって、フランジ53の大気側と真空側は遮断される。
アダプタ58aおよび筒状部材57の各内径は、アダプタ58aおよび筒状部材57の各内面と配管55の外面との間に隙間が形成されるように、アダプタ58aおよび筒状部材57の各内径は、配管55の外径よりも大きい値に設定されている。一方、ろう付けなどによってアダプタ58bの内面と配管18の外面とが互いに固定されるように、アダプタ58bは内径と配管18の外径はほぼ一致している。また、上述の通り、フランジ本体54の貫通穴54aの内径は、配管18の外径よりも大きい。従って、配管55の外面は、大気側において、フランジ本体54、アダプタ58a、筒状部材57と熱的に接触しない。一方、アダプタ58bは配管55の外面に接触するものの、アダプタ58bは、断熱性を有する筒状部材57を介してアダプタ58aに連結されている。従って、アダプタ58bからフランジ本体54への熱の流出も抑制されている。
このように、配管18とフランジ本体54との間の熱的な接触は極力抑制されている。従って、熱媒体からフランジ本体54への熱の漏洩による熱媒体の温度低下を抑制できる。即ち、この温度低下を考慮した熱媒体の過剰な加熱が不要になる。その結果、プラズマ光源システムの稼動時におけるエネルギー消費量を低減できる。
レーザー装置30は、各同軸状電極11の中心電極12の媒体保持部15にレーザー光31を照射することで、プラズマ媒体を放出させるアブレーションを行うと共にプラズマ3の初期放電(即ち、放電2)を発生させる。レーザー装置30は例えばYAGレーザーであり、アブレーションを行うために基本波の二倍波を短パルスのレーザー光31として出力する。レーザー光31の1回あたりの出力時間は100ns程度、その周期は例えば1ms程度である。
レーザー光31は媒体保持部15に照射される。具体的には、レーザー光31は、ミラーによる光路変更、ビームスプリッタ(ハーフミラー)による分岐を経て、各中心電極12の媒体保持部15に照射される。媒体保持部15においてレーザー光31が照射された部分ではアブレーションが生じ、プラズマ媒体が中性ガス又はイオンとなって放出される。
なお、放電2の発生箇所は、レーザー光31の照射領域及びその近傍に制限される可能性がある。従って、レーザー装置30は、各中心電極12の中心軸Zに対して対称な位置にレーザー光31を照射することが好ましい。これは、誘発された放電の領域が、中心電極12の軸を基点に180°以上の開き角があった実験結果に基づいている。なお、複数のレーザー光の同時照射は、光路長の調整により容易に達成できる。
図2に示すように、各同軸状電極11における媒体保持部15には、レーザー装置30のレーザー光31が同時に照射される。このとき、中心電極12と各外部電極13の間には高電圧が印加されている。レーザー光31の直後、中心電極12と各外部電極13の間で初期放電が発生する。その後、中心電極12の全周に亘って放電が分布する放電(面状放電)2が得られる。放電2の形成により、各同軸状電極11において、媒体保持部15からLiを含むガス又はイオンが放出される。なお、面状放電とは、2次元的に広がる面状の電流のことであり、電流シート又はプラズマシートとも呼ばれる。
図2に示すように、放電2は、自己磁場によって電極から排出される方向(対称面Sに向かう方向)に移動する。このときの放電2は、軸線Z−Zから見て略環状に分布する。放電2は同軸状電極11の先端に達すると、放電2の電流の出発点は強制的に中心電極12の円周側面から先端部12aに移行する。換言すれば、電流は先端部12aから集中的に流れ出す。この電流集中によるピンチ効果によって先端部12a周辺の電流密度は急激に上昇し、一対の放電2の間に挟まれていた先端部12a周辺のLiを含むプラズマ媒体は高密度、高温になる。
さらに、この現象は対称面Sを挟んだ各同軸状電極11で進行するため、プラズマ媒体は、一方の同軸状電極11から他方の同軸状電極11に向かって押し出される。その結果、プラズマ媒体は、軸線Z−Z(中心軸Z)沿う両方向からの電磁的圧力を受けて各同軸状電極11が対向する中間位置(即ち、中心電極12の対称面S)に移動し、プラズマ媒体を成分とする単一のプラズマ3が形成される。
上述の通り、放電2が発生している間は各中心電極12の先端部12aに各放電2の電流が集中する。従って、先端部12a周辺には、プラズマ3に対して軸線Z−Zに向かうピンチ効果が働き、プラズマ3の高密度化及び高温化が進行する。即ち、プラズマ媒体の電離が進行する。その結果、プラズマ3からは極端紫外光を含むプラズマ光8が放射される。この状態において、電源装置20は、プラズマ3の発光エネルギーに相当するエネルギーを供給し続ける。このエネルギー供給によってプラズマ光8が長時間に亘って発生する。
しかしながら、高エネルギーのプラズマ光8は得られるものの、プラズマ3に流れる電流の一部(大部分)は、プラズマ媒体6の電離に殆ど或いは全く寄与することなく、電源装置20に帰還する。
電源装置20及びプラズマ光源10を電流の循環回路としてみた場合、この回路におけるプラズマ光源10のインピーダンスは、プラズマが発生する前と後で著しく変化している。即ち、プラズマ光源10のインピーダンスは、プラズマ3が発生する前は電流が流れないことから非常に高く、プラズマ3が発生した後はプラズマ中を流れることから急激に低下する。従って、従来の光源システムでは、このインピーダンスの不整合によって、電流は順流と逆流を繰り返しながら(即ち、振動しながら)減衰する。一方、冒頭で述べたように、電流によるプラズマへの実質的なエネルギー供給(即ちプラズマ光8が得られる電離)は電流が最初に最大となる時点でほぼ完了しており、その後の電流はプラズマ光8の発生に寄与しない。
そこで、本実施形態の電源装置20は、電気エネルギーをプラズマ光源10の中心電極12と各外部電極13に供給する電気エネルギー供給部21を備えている。電気エネルギー供給部21は、上記の電気エネルギーを蓄積する蓄電部22を有する。また、電源装置20はさらに、プラズマ3中を流れる電気エネルギーの一部を回収し、電気エネルギー供給部21の蓄電部22に再蓄積する電気エネルギー回生部23を備える。
図3に示すように、電気エネルギー供給部21の蓄電部22は例えば電荷を蓄積するコンデンサである。電源装置20の作動初期において、電荷は、電気エネルギー供給部21に接続する高電圧電源40から供給される。即ち、蓄電部22としてのキャパシタには、高電圧電源40による高電圧が印加される。蓄電部22は電気エネルギーが流入、流出する第1端子22a及び第2端子22bを有する。蓄電部22の第1端子22aは高電圧電源40の出力及びプラズマ光源10の中心電極12に接続する。蓄電部22の第2端子22bはプラズマ光源10の外部電極13に接続している。第2端子22bは、プラズマ光源10から帰還した電流を受けるため、第2端子22bの接続先は、電源装置20のコモン側とも言える。なお後述の通り、蓄電部22の第2端子22bとプラズマ光源10の外部電極13との間には、電気エネルギー回生部23の逆流阻止部24aが挿入されている。
電気エネルギー回生部23は、プラズマ3中を流れ、電源装置20に帰還したる電気エネルギーの一部(即ち電流)を回収し、回収した電気エネルギーを電気エネルギー供給部21の蓄電部22に再蓄積させる。つまり、電気エネルギー回生部23は、プラズマ3に投入された電気エネルギーを回生する。図3に示すように、電気エネルギー回生部23は、プラズマ3の発生時に電気エネルギー回生部23を流れる電流の逆流を阻止する逆流阻止部24aと、蓄電部22による電気エネルギーの再蓄積時に、蓄電部22の端子22a、22b間を電気的に接続するスイッチ部25と、蓄電部22による電気エネルギーの再蓄積時に、スイッチ部25を介して蓄電部22の端子22a、22b間に流れる電流の逆流を阻止する逆流阻止部24bとを含んでいる。
逆流阻止部24aは、整流作用をもつ少なくとも1つの電子素子(電子部品)で構成される。この電子素子は例えばダイオードなどの半導体素子である。逆流阻止部24aは、プラズマ光源10の外部電極13と蓄電部22の第2端子22bとの間に挿入される。逆流阻止部24aは、蓄電部22の端子22aからプラズマ光源10を介して蓄電部22の端子22bに帰還する電流を通過させ、その逆流を阻止する。
逆流阻止部24aと同じく、逆流阻止部24bも、整流作用をもつ少なくとも1つの電子素子(電子部品)で構成される。この電子素子は例えばダイオードなどの半導体素子である。逆流阻止部24bは、スイッチ部25が閉じることによって蓄電部22の第2端子22bから第1端子22aに至る閉回路26が形成されたとき、この閉回路26において第2端子22bから第1端子22aに流れる電流を通過させ、その逆流を阻止する。従って、スイッチ部25と逆流阻止部24bは、蓄電部22の第1端子22aと第2端子22bの間で直列に接続する。ここで、説明の便宜上、プラズマ光源10を介さずに、蓄電部22の第2端子22bからスイッチ部25を介して第1端子22aに至る回路26を回生回路と称する。
スイッチ部25は、回生信号に基づいた回生回路26の開閉を行う。即ち、回生信号がスイッチ部25に入力されると、スイッチ部25は回生回路26を閉じる。一方、回生信号が途絶えるとスイッチ部25は回生回路26を開く。スイッチ部25は、このような動作を行う少なくとも1つの電子素子で構成される。この電子素子は例えばIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)やサイリスタなどの半導体素子である。なお、回生信号はレーザー装置30のレーザー光31を照射するトリガ信号に応じて生成される信号である。蓄電部22への再充電は、プラズマ3の残存による中心電極12と各外部電極13との間の導通が解消された後に行われる。従って、回生信号は、回生信号の発生から十分に経過した後、例えば数百マイクロ秒後にスイッチ部25に入力される。回生信号の遅延及び信号レベルの維持は、ディレイ回路及び信号発生器を用いて達成できる。なお、この遅延時間はレーザー光31の照射周期やプラズマの持続時間を考慮して設定される。また、信号レベルの維持時間は後述の再蓄積に必要な時間を考慮して設定される。
電気エネルギー回生部23は、回生回路26に設けられる電源部27を更に備えてもよい。電源部27は、蓄電部22による電気エネルギーの再蓄積時に、電気エネルギー回生部23が回収した電気エネルギーに新たな電気エネルギーを補充する。即ち、電源部27は、回収した電気エネルギーに対応する電圧に、新たな電圧を付加する。回収した電気エネルギーは、プラズマ3の発生および成長に寄与した分だけ、蓄電部22に当初蓄積された電気エネルギーよりも小さい。従って、回収した電気エネルギーによって蓄電部22に生じる電圧は、当初の電圧よりも低い。電源部27はこの差を補填し、蓄電部22に発生する電圧を、当初の電圧に戻す。なお、電源部27には、既製の定電圧電源などを用いてもよい。
電気エネルギー回生部23は、放電時にプラズマ光源10またはプラズマ光源10を収容する真空槽(図示せず)から回り込むノイズ電流を阻止するインダクタ28を含む。プラズマ光源10内で発生する放電は非常に大きく、上述した振動電流や不要な放電(説明の便宜上、この放電を誘導放電と称する)によるノイズ電流が発生する。このような電流が電気エネルギー回生部23に進入した場合、電気エネルギー回生部23が損傷を受けるおそれがある。特に、電源部27が定電圧電源のように制御回路等の複雑な回路を含む電源で構成されている場合、電源部27は損傷を受けやすい。インダクタ28は、電源部27の2つの端子(即ち、出力端子とコモン端子)のそれぞれと直列に接続し、このような電流の流入を阻止あるいは抑制する。インダクタ28は電源部27の出力及びコモンのそれぞれに対して直列に接続される。
電気エネルギー回生部23は、逆流阻止部24c、24dをさらに含んでもよい。逆流阻止部24c、24dもインダクタ28と同じく、ノイズ電流の流入を阻止あるいは抑制する。逆流阻止部24cはプラズマ光源10の中心電極12に対して直列に接続する。また、逆流阻止部24dは、電源部27のコモン側に対して直列に接続する。逆流阻止部24c、24dも逆流阻止部24a、24bと同じく、整流作用をもつ少なくとも1つの電子素子(電子部品)で構成される。
上述の通り、プラズマ光源10は中心電極12と、その周りに設置された複数の外部電極13とを備えている。放電2は中心電極12と各外部電極13との間で発生する。従って、電気エネルギー供給部21および電気エネルギー回生部23は放電2の発生箇所の数(即ち、中心電極と外部電極の組み合わせの数)だけ用意される。
プラズマ光源10、真空槽50、電源装置20の間のインピーダンスは完全には整合されていない。そのため、放電2或いはプラズマ3の発生時には、これらの電位が不安定になる。この電位の不安定性によって、誘導放電が発生することがある。誘導放電の電流は接地されていた真空槽50から電源装置20に向けて瞬間的に流れる。
電源装置20のインダクタ28及び逆流阻止部24c、24dは、回路内に侵入した上記の誘導放電によるノイズ電流を阻止する。さらに本実施形態に係るプラズマ光源システム1は、プラズマ光源10と真空槽50との間に、プラズマ光源10(同軸状電極11、11)を囲むように設けられた遮蔽板60を備えている。遮蔽板60は、真空槽50からプラズマ光源10に向かう放電の発生を抑制する。換言すれば、遮蔽板60は、真空槽50の空間内における誘導放電の経路を遮断する。なお、遮蔽板60は、周知の支持部材(図示せず)によって真空槽50内に固定されている。
遮蔽板60は、導電性部材で構成されてもよく、絶縁性部材で構成されてもよい。ただし何れの場合も遮蔽板60は、プラズマ光源10、電源装置20、真空槽50から絶縁されている。即ち、遮蔽板60は、これらに対して電気的に浮いている。導電体からなる通常の電磁シールドであれば、定常的に接地電位にあると想定された真空槽50と電気的に接続される。しかしながら、本実施形態に係る遮蔽板60は、この真空槽50と電気的には接続していない。
遮蔽板60は、遮蔽板60の内側の空間を排気するための開口60aを有する。開口60aは、例えば、真空槽50の排気口52に対応する位置に形成される(図2参照)。また、開口60aは、プラズマ3の発生時の排気に影響を及ぼさない程度のコンダクタンスをもつことが好ましい。
遮蔽板60は、間隔61を置いて真空槽50の排気口52を覆うように設けられる網部62を含んでもよい。網部62は、遮蔽板60と一体に形成されてもよく、遮蔽板60とは別体として設けられてもよい。何れの場合も網部62は、遮蔽板60と同じく、導電性部材あるいは絶縁性部材で構成され、プラズマ光源10、電源装置20、真空槽50から絶縁されている。なお、網部62が遮蔽板60と別体で設けられている場合、網部62は周知の支持部材(図示せず)によって真空槽50内に固定されている。この支持部材は、真空槽50(排気口52の開口面)と網部62との間隔61を形成する。
網部62には、真空ポンプの排気を促す複数の開口62aが形成されている。また、各開口62aの内径は、プラズマ3のデバイ長以下の値に設定されている。誘導放電の発生は、プラズマ光源10との真空槽50との間を遮蔽することで抑制される。従って、真空槽50の排気口52にも遮蔽板60を設けることが好ましい。しかしながら、真空槽50は排気口52から排気されている。網部62は、この排気に著しく干渉することなく、排気口52周辺からの放電の発生を抑制する。また、開口の内径がプラズマ3のデバイ長以下に設定されているので、網部62を通したプラズマ3の漏洩が防止され、且つこの漏洩による誘導放電の誘発が防止される。
以上、本実施形態によれば、プラズマ発生時の不要な放電による電源回路の故障を防止することができる。また、プラズマ媒体を加熱する熱媒体の配管と当該配管が固定されるフランジとの間を断熱することで、プラズマ光源システムの稼動時におけるエネルギー消費量を低減できる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されず、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲の記載と均等の意味および範囲内でのすべての変更を含むものである。