以下では、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
尚、本発明において、露光に際して照射される「放射線」には、可視光線、紫外線、遠紫外線、X線および荷電粒子線等が含まれる。
<液晶表示素子>
図1は、本発明の実施形態の液晶表示素子の第1例における画素構造を模式的に示す断面図である。
本発明の実施形態の第1例である液晶表示素子1は、対向配置された第1の基板2および第2の基板3の間に液晶4を挟持し、第1の基板2において、第2の基板3と対向する面に一対の電極5、6を配置して、その一対の電極5、6間に印加される電界により液晶4を駆動する液晶表示素子である。
第1の基板2と第2の基板3の間隔は、通常、2μm以上20μm以下、すなわち、2μm〜20μmであり、これらは、周辺部に設けられたシール材(図示されない)によって互いに固定されている。
第1の基板2および第2の基板3を構成する材料としては、例えば、ソーダライムガラスや無アルカリガラス等のガラス、シリコン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド等が挙げられる。また、これらの基板には、所望によりシランカップリング剤等による薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着等の適宜の前処理を施しておくこともできる。
第1の基板2および第2の基板3それぞれの対向する面には、配向膜(図示されない)を設けることが好ましい。例えば、配向膜は、第1の基板2および第2の基板3の液晶4と接する面、並びに、後述する電極5、6の液晶4と接する面に設けることができる。そして、配向膜は、例えば、ポリイミド等の高分子材料を用いて形成することができる。また、配向膜は、必要な場合に、例えば、ラビング処理や光配向処理等の配向処理が施され、第1の基板2および第2の基板3の間に挟持された液晶4の均一な配向を実現することができる。
液晶表示素子1の一対の電極5、6はいずれも、第1の基板2の面から第2の基板3側に向けて突設された壁状の樹脂部9、10と、樹脂部9、10の側面に設けられた導電性部材からなる膜状の導電部11、12とを有する壁状電極である。導電部11、12はそれぞれ、樹脂部9、10の互いに対向する側面の少なくとも一部を含む領域に設けられる。すなわち、壁状電極をなす電極5、6の導電部11、12はそれぞれ、液晶4を挟んで、互いに対向する部分を有するように構成される。
そして、壁状電極をなす電極5、6の導電部11、12はそれぞれ、例えば、図1に示すように、樹脂部9、10の互いに対向する側面の全面に設けることも可能である。また、電極5、6の導電部はそれぞれ、樹脂部9、10の互いに対向する側面の一部のみに設けることも可能である。
電極5、6の導電部11、12は、それぞれ同様に、導電性部材を用いて形成される。導電部11、12を構成する導電性部材としては、ITO(Indium Tin Oxide)、酸化亜鉛系のAZO(Aluminum doped Zinc Oxide)やGZO(Gallium doped Zinc Oxide)等の透明導電性材料を挙げることができる。
電極5、6の壁状の樹脂部9、10は、それぞれ同様に、絶縁性の樹脂からなる。そして、電極5、6は、壁状の樹脂部9、10の構造に従い、第1の基板2の面から第2の基板3に向かって突出して形成されるともに、その延在方向が第1の基板の主面に対して垂直となるように形成される壁状の電極形状となっている。
したがって、電極5、6それぞれの導電部11、12を用いて、一対の電極5、6間に印加される電界は、第1の基板2の第2の基板3に対向する面と平行な成分を有する。液晶表示素子1は、この一対の電極5、6間に印加される電界により、液晶4を初期の配向状態から駆動して、第1の基板2の第2の基板3に対向する面内で配向変化させる。
そして、このような壁状の電極5、6を備えることにより、液晶表示素子1は、第1の基板2に近い領域から遠い領域(第2の基板3に近い領域)においても、電気力線の密度が同様となるようにして、液晶4の駆動効率を向上させることができ、表示効率を向上させることができる。
以下、図2〜図4を用いて液晶表示素子1における液晶4の駆動をより詳細に説明する。
図2は、本発明の実施形態の液晶表示素子の第1例における画素構造を模式的に示す平面図である。
図2に示すように、本発明の実施形態の液晶表示素子の第1例である液晶表示素子1は、上述した配向膜(図示されない)の作用により、液晶4を構成する、棒状に図示された液晶分子7が均一に配向する。すなわち、液晶4は、電極5、6間に電圧が印加されない電圧無印加時の初期配向状態において、図2に示す電極5、6の長手方向に対し、棒状に図示された液晶分子7が若干の角度を形成するように、均一に配向されている。より具体的には、電極5、6間に電圧を印加したときに電極5、6間に形成される、上述した電界の形成方向(図2中、電界方向として矢印で示す。後述する図3および図4においても同様とする。)と、液晶分子7の長軸(光学軸)方向のなす角が、45度以上90度未満となるように液晶4は均一に配向されている。
図3は、本発明の実施形態の液晶表示素子の第1例における電界印加時の画素構造を模式的に示す断面図である。
図4は、本発明の実施形態の液晶表示素子の第1例における電界印加時の画素構造を模式的に示す平面図である。
そして、液晶表示素子1において、電極5、6間に電界が印加されると、図3および図4に示されるように、液晶4が駆動される。液晶表示素子1において液晶4は、例えば、正の誘電異方性を有する。したがって、液晶表示素子1の液晶4を構成する液晶分子7は、その長軸方向が、電極5、6間の電界方向と平行となるように配向変化する。
このとき、上述したように、電極5、6それぞれの導電部11、12を用いて、一対の電極5、6間に印加される電界は、上述したように、第1の基板2の第2の基板3に対向する面と平行な成分を有する。したがって、液晶表示素子1において、液晶4の液晶分子7は、第1の基板2の第2の基板3に対向する面内で、配向する角度を変える配向変化をすることになる。
以上で説明した液晶4の駆動が可能な本実施形態の液晶表示素子1は、第1の基板2および第2の基板3のそれぞれにおいて、液晶4に接する側と反対の側の面に、偏光板(図示されない)を配置して設けることができる。
この一対の偏光板は、液晶4を挟持する第1の基板2および第2の基板3をさらに挟持する。そのため、液晶表示素子1は、この一対の偏光板の偏光透過軸を所定角度に配置することで、電界印加によって液晶4の液晶分子7を配向変化させ、光透過率を変化させることができる。
すなわち、本実施形態の液晶表示素子1は、所謂、複屈折モードの液晶表示素子を構成することができる。液晶表示素子1は、電界印加により、液晶4の液晶分子7の長軸(光軸)方向を基板面にほぼ平行なまま、面内でその方位を変え、所定角度に設定された偏光板の軸とのなす角を変えて光透過率を変化させる。そして、液晶表示素子1は、この電界印加による光透過率の変化を画像の表示に利用する。
上述したように、本実施形態の液晶表示素子1は、電界の印加される一対の電極5、6が、いずれも第1の基板2の面から第2の基板3に向けて突設された壁状電極である。液晶表示素子1は、液晶4を挟持する第1の基板2および第2の基板3の互いに対向する基板面と平行な電界を効率良く形成することができる。その結果、本実施形態の液晶表示素子1は、高い表示効率を実現することができる。
尚、図1〜図4の本発明の実施形態の液晶表示素子の第1例である液晶表示素子1では、1つの画素部分のみが示され、その1つの画素に対して、一対の電極5、6が配置される構造が示されている。しかしながら、本発明の実施形態の第1例である液晶表示素子1では、そうした構造のみに限られるわけではない。液晶表示素子1は、複数の画素を有し、それぞれの画素に壁状の電極を配置することができる。また、本発明の実施形態の第1例である液晶表示素子1は、電極5、6と異なる配置の壁状の電極を有することができる。
図5は、本発明の実施形態の液晶表示素子の壁状電極の別の例を模式的に示す平面図である。
図5は、平面図により、液晶表示素子1(図示されない)の1つの画素部分に配置される電極15、16の構造を模式的に示している。図5に示す例では、隣接して互いに対向する一対の電極15および電極16の間の領域が副画素を構成し、その複数の副画素から1つの画素が構成される。このとき、電極15および電極16は、いずれも壁状電極とすることができる。その場合、電極15、16は、一方の基板面から他方の基板側に向けて突設された壁状の樹脂部と、その樹脂部の両方の側面に配置された導電部とを有して構成されることが好ましい。
すなわち、本実施形態の液晶表示素子の壁状電極の別の例においては、図5に示すように、配線17に壁状電極である電極15を複数接続して櫛型に配置するとともに、別の配線18に壁状電極である電極16を複数接続して同様の櫛型に配置する。そして、2つの櫛型配置の櫛歯部分が互いに咬み合うように配置され、電極15と電極16とが交互に並ぶように配列される。すなわち、櫛型配置する複数の電極15のそれぞれが、櫛型配置する複数の電極16の1つと対向するように配列されて、画素内の電極群を構成することができる。画素内の壁状電極がこうした構造を有することにより、本実施形態の液晶表示素子は、画素のサイズと独立に、電界の印加される一対の電極間の距離を制御することができる。その結果、本実施形態の液晶表示素子は、液晶への電界印加が容易となって高効率な液晶の駆動が可能となる。
また、図1〜図4の本発明の実施形態の液晶表示素子の第1例である液晶表示素子1においては、電界の印加される一対の電極5、6のいずれもが、第1の基板2の面から第2の基板3に向けて突設された壁状電極であるが、電極5、6のうちの一方を第1の基板2の基板面上に形成された線状電極とすることができる。
図6は、本発明の実施形態の液晶表示素子の第2例における画素構造を模式的に示す断面図である。
図6の本発明の実施形態の第2例である液晶表示素子101は、一対の電極5、106のうちの電極106の構造が異なる以外、図1〜図4の液晶表示素子1と同様の構造を有する。したがって、共通する構成要素については、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図6に示す、本発明の実施形態の第2例である液晶表示素子101は、上述した液晶表示素子1と同様、一対の電極5、106を有する。そして、液晶表示素子101の一対の電極5、106のうち、電極5は、第1の基板2の面から第2の基板3側に向けて突設された壁状の樹脂部9と、樹脂部9の側面に設けられた膜状の導電性部材からなる導電部11とを有する。
一方、液晶表示素子101において、電極106は、第1の基板2の面上に設けられた膜状の線状電極である。電極106を構成できる導電性部材としては、ITO、酸化亜鉛系のAZOやGZO等の透明導電性材料を挙げることができる。
そして、液晶表示素子101において、電極5、106間に電界が印加されると、液晶4の液晶分子7は配向変化する。このとき、一対の電極5、106間に印加される電界は、第1の基板2の第2の基板3に対向する面と平行な成分を有する。したがって、液晶表示素子101において、液晶4の液晶分子7は、第1の基板2の第2の基板3に対向する面内で、配向する角度を変える配向変化をすることになる。
本実施形態の液晶表示素子101は、液晶表示素子1と同様に、第1の基板2および第2の基板3のそれぞれにおいて、液晶4に接する側と反対の側に、偏光板(図示されない)を配置して設けることができる。
したがって、本実施形態の液晶表示素子101は、上述した液晶表示素子1と同様に、複屈折モードの液晶表示素子を構成する。液晶表示素子101は、電界印加により、液晶4の液晶分子7の長軸(光軸)方向を基板面にほぼ平行なまま面内でその方位を変え、所定角度に設定された偏光板の軸とのなす角を変えて光透過率を変える。そして、液晶表示素子101は、この電界印加による光透過率の変化を画像の表示に利用することができる。
尚、本発明の実施形態の第2例である液晶表示素子101においては、1つの画素に対し、壁状電極をなす電極5をその画素の端部に配置し、線状電極をなす電極106をその画素の内部に配置することも可能である。その場合、壁状の電極である電極5を2つ以上用いて画素の端部に配置し、少なくとも1つの電極106を用いて画素の内部に配置することが好ましい。そのような電極の配置構造とすることにより、電極5のそれぞれと画素内部の電極106との間に電界を印加できて、画素内で効率のよい電界の形成が可能となる。
また、本発明の実施形態の液晶表示素子は、アクティブマトリクス方式の液晶表示素子を構成することができる。その場合、例えば、本発明の実施形態の液晶表示素子の第1例である液晶表示素子1において、第1の基板2上には、走査線(図示されない)と信号線(図示されない)とがマトリクス状に配線され、その走査線と信号線の各交点にはTFT等のアクティブ素子(図示されない)を介して各画素が接続される。
走査線と信号線とはそれぞれ走査駆動回路(図示されない)、信号駆動回路(図示されない)に接続され、各走査線または信号線に任意の電圧を印加できる。そして、アクティブ素子がTFTである場合、TFTのドレイン電極(図示されない)が信号線に接続し、TFTのソース電極(図示されない)が、例えば、電極6に電気的に接続する。
さらに、第1の基板2上には、信号線と平行にコモン線(図示されない)が配設され、全ての画素に接続されて、全画素にコモン電圧発生回路(図示されない)からコモン電圧を印加できるようにされる。具体的には、コモン線に電極5が接続し、各画素にコモン電圧が印加されるように構成される。
第1の基板2と第2の基板3との間には液晶4が封入されており、液晶表示素子1はアクティブマトリクス方式の液晶表示素子を構成することができる。
また、本発明の実施形態の液晶表示素子において、壁状の電極の上端部分が、対向する基板と接するように構成することは必須ではない。例えば、図1に示す液晶表示素子1において、電極5、6の上端部分が、対向する第2の基板3の面に接するように構成されているが、そのような構造は必須ではない。電極5、6は、第1の基板2の面から第2の基板3側に向けて突設された壁状電極であれば、それらの上端部分が第2の基板3に接しなくてもよい。
したがって、例えば、液晶表示素子1において、電極5および電極6の少なくとも一方を、上端部分がそれと対向する第2の基板3の面と接しない構造とすることも可能である。すなわち、液晶表示素子1では、電極5および電極6の少なくとも一方において、それらの上端部分と、それに対向する第2の基板3との間に隙間を設けて構成することも可能である。
図7は、本発明の実施形態の液晶表示素子の第3例における画素構造を模式的に示す断面図である。
図7の本発明の実施形態の液晶表示素子の第3例である液晶表示素子201は、電界の印加される一対の電極5、206のうちの電極206の構造が異なる以外、図1〜図4の液晶表示素子1と同様の構造を有する。したがって、液晶表示素子1と共通する構成要素については、同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
図7に示す液晶表示素子201では、電極5と対向する電極206において、その上端部分が、第2の基板3と接しない構造とされている。液晶表示素子201の電極206は、第1の基板2の面から第2の基板3側に向けて突設された壁状の樹脂部210と、樹脂部210の側面に設けられた導電性部材からなる膜状の導電部212とを有する壁状電極である。そして、電極206の上端部分と、それに対向する第2の基板3との間には、隙間が設けられて構成されている。
また、本発明の実施形態の液晶表示素子においては、対向する一対の壁状の電極の両方を、その上端部分が、対向する基板の面と接触しない構造とすることも可能である。例えば、図1の液晶表示素子1において、電極5および電極6の両方の上端部が、対向する第2の基板3の面と接触しない構造とすることも可能である。
そして、液晶表示素子1において、電極5および電極6がそれぞれ複数ある場合、複数の電極5のうちの一部または複数の電極6のうちの一部を、上端部分が第2の基板3の面と接しない構造とすることが可能である。さらに、複数の電極5および複数の電極6の両方について、それぞれの一部を、上端部分が第2の基板3の面と接しない構造とすることも可能である。
このとき、本発明の実施形態の液晶表示素子においては、液晶を挟持する第1の基板および第2の基板のうちの、第1の基板上に設けられた壁状電極をなす電極が、対向する第2の基板の面に接する構造である場合、その電極を、基板間距離を保持するためのギャップ保持材(スペーサ)として利用することができる。
例えば、図1に示す液晶表示素子1においては、電極5、6の上端部分が第2の基板3の面と接するように構成されており、電極5、6を第1の基板2と第2の基板3との間の基板間距離を保持するためのスペーサとして利用することができる。
また、図7に示す液晶表示素子201においては、電極5の上端部分が第2の基板3の面と接するように構成されており、電極5を第1の基板2と第2の基板3との間の基板間距離を保持するためのスペーサとして利用することができる。
従来の液晶表示素子では、液晶を挟持するよう対向配置された一対の基板間のギャップを保持するために、球形のポリマービーズをスペーサとして基板間に分散させる技術が用いられてきた。このような技術の場合、基板上にポリマービーズが均等に分散せず、基板間のギャップにむらが生ずることがあった。そして、そのようなギャップむらによって、画像の表示時に輝度むらが発生することがあった。
そうした問題に対し、例えば、本発明の実施形態の液晶表示素子1では、上述したように、電極5、6を第1の基板2と第2の基板3との間に設けられたスペーサとして用いることができる。同様に、液晶表示素子201では、電極5をスペーサとして用いることができる。そのため、液晶表示素子1、201においては、基板間のギャップむらの発生が抑制され、輝度むら等の表示不良を低減することができる。
尚、液晶表示素子201において、電極206は、その上端部分が第2の基板3と接していない。しかしながら、液晶表示素子201に対し、使用者等によって、例えば、第2の基板3が液晶4側に凹むような押圧が加えられたときに、凹み変形を抑制するための支持材として電極206を用いることができる。
以上で説明した本発明の実施形態の液晶表示素子は、液晶を挟持する基板面と平行な電界を効率良く形成することができるが、こうした効果を実現するため、壁状電極をなす電極の構造が特に重要となる。
上述したように、本実施形態の液晶表示素子の電極は、第1の基板の面から第2の基板側に向けて突設された壁状の樹脂部と、その樹脂部の側面の少なくとも一部を含む領域に設けられた導電性部材からなる導電部とを有して構成される。そして、その電極は、樹脂部の構造に従う形状を備える。すなわち、本実施形態の液晶表示素子の電極は、第1の基板の面から第2の基板に向かって突出して形成されるとともに、その延在方向が第1の基板の主面に対して垂直となるように形成されて壁状の形状を有する。
本実施形態の液晶表示素子の壁状電極をなす電極において、樹脂部は、断面形状を台形、または、矩形(長方形、正方形)とすることが好ましい。特に、樹脂部は、第1の基板上で、後述する順テーパー形状を有することが好ましい。そして、その電極の導電部は、上述したように、ITO等の導電材料から形成されて膜状をなし、樹脂部の側壁面を含む領域に配置される。本実施形態の液晶表示素子において、壁状電極をなす電極は、樹脂部と導電膜である導電部との積層構造を有して構成される。
このような本実施形態の液晶表示素子の電極において、導電部の形成は公知の方法を利用して行うことができる。すなわち、樹脂部を形成した後、公知の方法に従い、その樹脂部上に、例えば、ITO等の導電膜を成膜する。そして、公知の方法を用いて、その導電膜をパターニングして導電部を形成することができる。
したがって、本実施形態の液晶表示素子において、壁状電極をなす電極を複数の画素間で高均一に高い生産性で形成しようとする場合、樹脂部の形成が重要となる。すなわち、電極を構成する樹脂部は、高均一にパターニングされることにより形成されることが好ましい。
そのため、樹脂部と導電部からなる壁状電極の形成においては、樹脂部を高感度かつ高均一にパターニングし、壁状電極である電極を形成する技術が特に重要となる。
そこで以下、本実施形態の壁状電極をなす電極の樹脂部の形成について、より詳細に説明する。特に、液晶を挟持する一対の基板のうちの一方の面に設けられ、対向する他方の基板側に向けて突設された樹脂部を形成するのに好適に用いられる感放射線性樹脂組成物について説明する。
<感放射線性樹脂組成物>
本発明の実施形態の液晶表示素子の、壁状電極をなす電極の樹脂部の形成には、本発明の実施形態の感放射線性樹脂組成物が用いられる。
本発明の実施形態の感放射線性樹脂組成物は、[A]重合体、および[B]感光剤を含有してなる。本実施形態の感放射線性樹脂組成物は感放射線性を有する。
本発明の実施形態の感放射線性樹脂組成物は、光が照射された部分が現像で溶解するポジ型パターン形成用の感放射線性樹脂組成物、および、光が照射された部分が不溶化するネガ型パターン形成用の感放射線性樹脂組成物のいずれも適用できる。
ポジ型パターン形成用の感放射線性樹脂組成物は、[B]成分である[B]感光剤として、[B−2]光酸発生剤を用いることができる。そして、ネガ型パターン形成用の感放射線性樹脂組成物は、[B]成分である[B]感光剤として、[B−1]光ラジカル重合開始剤を用いることができる。
すなわち、本発明の実施形態の感放射線性樹脂組成物は、[B]感光剤として、[B−1]光ラジカル重合開始剤および[B−2]光酸発生剤のうちから選ばれる少なくとも一方を用いることができ、ネガ型パターン形成用またはポジ型パターン形成用として使用できる。
本実施形態の感放射線性樹脂組成物は、上述した感放射線性を有し、感放射線性を利用した露光・現像によって容易に微細かつ精巧なパターンを形成することができる。すなわち、本実施形態の感放射線性樹脂組成物は、基板上に突設される、壁状電極をなす電極の樹脂部を高精度に形成することができる。そして、後述する[D]硬化促進剤を含有することによって、例えば、200℃以下等、より低温での硬化を実現する。併せて、保存安定性を有し、かつ充分な解像度および放射線感度を有する。以下、本実施形態の感放射線性樹脂組成物の各成分を詳述する。
<[A]重合体>
感放射線性樹脂組成物に含有される樹脂成分として[A]重合体を含有するが、本実施形態の樹脂部のパターニングを考慮し、[A]重合体としては、アルカリ可溶性樹脂を選択することが好ましい。アルカリ可溶性樹脂は、カルボキシル基を有することで、アルカリ現像性を有する樹脂であれば、特に限定されない。そして、アルカリ可溶性樹脂には、エポキシ基を有する化合物を含有することができる。
エポキシ基を有する化合物としては、例えば、1分子内に2個以上のオキシラニル基、オキセタニル基、グリシジル基、3,4−エポキシシクロヘキシル基を有する化合物等が挙げられる。
1分子内に2個以上の3,4−エポキシシクロヘキシル基を有する化合物としては、例えば、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル−5,5−スピロ−3,4−エポキシ)シクロヘキサン−メタ−ジオキサン、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)アジペート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、メチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサン)、ジシクロペンタジエンジエポキサイド、エチレングリコールのジ(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)エーテル、エチレンビス(3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート)、ラクトン変性3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート等が挙げられる。
1分子内に2個以上のオキセタニル基(1,3−エポキシ構造)を有する化合物としては、例えば1,4−ビス[(3−エチル−3−オキセタニルメトキシ)メチル]ベンゼン、ビス{[1−エチル(3−オキセタニル)]メチル}エーテル、ビス(3−エチル−3−オキセタニルメチル)エーテル等が挙げられる。
その他の[A]重合体に含有できるエポキシ化合物としては、グリシジル基を有する化合物として、例えば、
ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールADジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル等のビスフェノール化合物のジグリシジルエーテル;
1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル等の多価アルコールのポリグリシジルエーテル;
エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の脂肪族多価アルコールに1種または2種以上のアルキレンオキサイドを付加することにより得られるポリエーテルポリオールのポリグリシジルエーテル;
フェノールノボラック型エポキシ樹脂;
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂;
ポリフェノール型エポキシ樹脂;
環状脂肪族エポキシ樹脂;
脂肪族長鎖二塩基酸のジグリシジルエステル;
高級脂肪酸のグリシジルエステル;
エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油等が挙げられる。
これらの市販品としては、例えば、
ビスフェノールA型エポキシ樹脂として、エピコート(登録商標)1001、同1002、同1003、同1004、同1007、同1009、同1010、同828(以上、ジャパンエポキシレジン社)等;
ビスフェノールF型エポキシ樹脂として、エピコート(登録商標)807(ジャパンエポキシレジン社)等;
フェノールノボラック型エポキシ樹脂として、エピコート(登録商標)152、同154、同157S65(以上、ジャパンエポキシレジン社)、EPPN(登録商標)201、同202(以上、日本化薬社)等;
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂として、EOCN(登録商標)102、同103S、同104S、1020、1025、1027(以上、日本化薬社)、エピコート(登録商標)180S75(ジャパンエポキシレジン社)等;
ポリフェノール型エポキシ樹脂として、エピコート(登録商標)1032H60、同XY−4000(以上、ジャパンエポキシレジン社)等;
環状脂肪族エポキシ樹脂として、CY−175、同177、同179、アラルダイト(登録商標)CY−182、同192、184(以上、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社)、ERL−4234、4299、4221、4206(以上、U.C.C社)、ショーダイン509(昭和電工社)、エピクロン200、同400(以上、大日本インキ社)、エピコート(登録商標)871、同872(以上、ジャパンエポキシレジン社)、ED−5661、同5662(以上、セラニーズコーティング社)等;
脂肪族ポリグリシジルエーテルとしてエポライト100MF(共栄社化学社)、エピオール(登録商標)TMP(日本油脂社)等が挙げられる。
これらのうち、フェノールノボラック型エポキシ樹脂およびポリフェノール型エポキシ樹脂が好ましい。
そして、感放射線性樹脂組成物の含む[A]重合体としては、カルボキシル基を有する構成単位と重合性基を有する構成単位とを含む樹脂で、アルカリ現像性を有する樹脂を用いることができる。
その場合、重合性基を有する構成単位とは、エポキシ基を有する構成単位および(メタ)アクリロイルオキシ基を有する構成単位からなる群より選ばれる少なくとも1種の構成単位であることが好ましい。[A]重合体が、上記特定の構成単位を含むことで、優れた表面硬化性および深部硬化性を有する硬化膜を形成し、壁状電極をなす電極の樹脂部を形成することができる。
(メタ)アクリロイルオキシ基を有する構成単位は、例えば、共重合体中のエポキシ基に(メタ)アクリル酸を反応させる方法、共重合体中のカルボキシル基にエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルを反応させる方法、共重合体中の水酸基にイソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸エステルを反応させる方法、共重合体中の酸無水物部位に(メタ)アクリル酸ヒドロキシエステルを反応させる方法等により形成することができる。これらのうち特に、共重合体中のカルボキシル基にエポキシ基を有する(メタ)アクリル酸エステルを反応させる方法が好ましい。
カルボキシル基を有する構成単位と重合性基としてエポキシ基を有する構成単位を含む[A]重合体は、(A1)不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸無水物からなる群より選択される少なくとも1種(以下、「(A1)化合物」とも称する。)と、(A2)エポキシ基含有不飽和化合物(以下、「(A2)化合物」とも称する。)とを共重合して合成することができる。この場合、[A]重合体は、不飽和カルボン酸および不飽和カルボン酸無水物からなる群より選ばれる少なくとも1種から形成される構成単位並びにエポキシ基含有不飽和化合物から形成される構成単位を含む共重合体となる。
この[A]重合体は、例えば、溶媒中で重合開始剤の存在下、カルボキシル基含有構成単位を与える(A1)化合物と、エポキシ基含有構成単位を与える(A2)化合物とを共重合することによって製造できる。また、(A3)水酸基含有構成単位を与える水酸基含有不飽和化合物(以下、「(A3)化合物」とも称する。)をさらに加えて、共重合体とすることもできる。さらに、カルボキシル基を有する構成単位と重合性基としてエポキシ基を有する構成単位を含む[A]重合体の製造においては、上記(A1)化合物、(A2)化合物および(A3)化合物とともに、(A4)化合物(上記(A1)、(A2)および(A3)化合物に由来する構成単位以外の構成単位を与える不飽和化合物)をさらに加えて、共重合体とすることもできる。以下、各化合物を詳述する。
[(A1)化合物]
(A1)化合物としては、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸の無水物、多価カルボン酸のモノ〔(メタ)アクリロイルオキシアルキル〕エステル等が挙げられる。
不飽和モノカルボン酸としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等が挙げられる。
不飽和ジカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、メサコン酸、イタコン酸等が挙げられる。
不飽和ジカルボン酸の無水物としては、例えば、上記ジカルボン酸として例示した化合物の無水物等が挙げられる。
多価カルボン酸のモノ〔(メタ)アクリロイルオキシアルキル〕エステルとしては、例えば、コハク酸モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕、フタル酸モノ〔2−(メタ)アクリロイルオキシエチル〕等が挙げられる。
これらの(A1)化合物のうち、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸が共重合反応性、アルカリ水溶液に対する溶解性および入手の容易性からより好ましい。
これらの(A1)化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
(A1)化合物の使用割合は、(A1)化合物並びに(A2)化合物(必要に応じて任意の(A3)化合物および(A4)化合物)の合計に基づいて、5質量%〜30質量%が好ましく、10質量%〜25質量%がより好ましい。(A1)化合物の使用割合を5質量%〜30質量%とすることによって、[A]重合体のアルカリ水溶液に対する溶解性を最適化するとともに、放射線性感度に優れる絶縁膜が得られ、壁状電極をなす電極の樹脂部の形成の好適となる。
[(A2)化合物]
(A2)化合物は、ラジカル重合性を有するエポキシ基含有不飽和化合物である。エポキシ基としては、オキシラニル基(1,2−エポキシ構造)またはオキセタニル基(1,3−エポキシ構造)等が挙げられる。
オキシラニル基を有する不飽和化合物としては、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−メチルグリシジル、アクリル酸3,4−エポキシブチル、メタクリル酸3,4−エポキシブチル、アクリル酸6,7−エポキシヘプチル、メタクリル酸6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、メタクリル酸3,4−エポキシシクロへキシルメチル等が挙げられる。これらのうち、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸2−メチルグリシジル、メタクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテル、メタクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシル、アクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシル等が、共重合反応性および電極の樹脂部の耐溶媒性等の向上の観点から好ましい。
オキセタニル基を有する不飽和化合物としては、例えば、
3−(アクリロイルオキシメチル)オキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)−2−メチルオキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)−3−エチルオキセタン、3−(アクリロイルオキシメチル)−2−フェニルオキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)オキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)−2−エチルオキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)−3−エチルオキセタン、3−(2−アクリロイルオキシエチル)−2−フェニルオキセタン等のアクリル酸エステル;
3−(メタクリロイルオキシメチル)オキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2−メチルオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−3−エチルオキセタン、3−(メタクリロイルオキシメチル)−2−フェニルオキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)オキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−エチルオキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−3−エチルオキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2−フェニルオキセタン、3−(2−メタクリロイルオキシエチル)−2,2−ジフルオロオキセタン等のメタクリル酸エステル等が挙げられる。
これらの(A2)化合物のうち、メタクリル酸グリシジル、メタクリル酸3,4−エポキシシクロヘキシル、3−(メタクリロイルオキシメチル)−3−エチルオキセタンが好ましい。これらの(A2)化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
(A2)化合物の使用割合は、(A1)化合物並びに(A2)化合物(必要に応じて任意の(A3)化合物および(A4)化合物)の合計に基づいて、5質量%〜60質量%が好ましく、10質量%〜50質量%がより好ましい。(A2)化合物の使用割合を5質量%〜60質量%とすることによって、優れた硬化性等を有する、壁状電極をなす電極の樹脂部を形成することができる。
[(A3)化合物]
(A3)化合物としては、水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル、フェノール性水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステル、ヒドロキシスチレンが挙げられる。
水酸基を有するアクリル酸エステルとしては、アクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸4−ヒドロキシブチル、アクリル酸5−ヒドロキシペンチル、アクリル酸6−ヒドロキシヘキシル等が挙げられる。
水酸基を有するメタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸4−ヒドロキシブチル、メタクリル酸5−ヒドロキシペンチル、メタクリル酸6−ヒドロキシヘキシル等が挙げられる。
フェノール性水酸基を有するアクリル酸エステルとしては、アクリル酸2−ヒドロキシフェニル、アクリル酸4−ヒドロキシフェニル等が挙げられる。フェノール性水酸基を有するメタクリル酸エステルとしては、メタクリル酸2−ヒドロキシフェニル、メタクリル酸4−ヒドロキシフェニル等が挙げられる。
ヒドロキシスチレンとしては、o−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、α−メチル−p−ヒドロキシスチレンが好ましい。これらの(A3)化合物は、単独で使用してもよいし2種以上を混合して使用してもよい。
(A3)化合物の使用割合は、(A1)化合物、(A2)化合物並びに(A3)化合物(必要に応じて任意の(A4)化合物)の合計に基づいて、1質量%〜30質量%が好ましく、5質量%〜25質量%がより好ましい。
[(A4)化合物]
(A4)化合物は、上記の(A1)化合物、(A2)化合物および(A3)化合物以外の不飽和化合物であれば、特に制限されるものではない。(A4)化合物としては、例えば、メタクリル酸鎖状アルキルエステル、メタクリル酸環状アルキルエステル、アクリル酸鎖状アルキルエステル、アクリル酸環状アルキルエステル、メタクリル酸アリールエステル、アクリル酸アリールエステル、不飽和ジカルボン酸ジエステル、マレイミド化合物、不飽和芳香族化合物、共役ジエン、テトラヒドロフラン骨格等をもつ不飽和化合物およびその他の不飽和化合物等が挙げられる。
メタクリル酸鎖状アルキルエステルとしては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸sec−ブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸イソデシル、メタクリル酸n−ラウリル、メタクリル酸トリデシル、メタクリル酸n−ステアリル等が挙げられる。
メタクリル酸環状アルキルエステルとしては、例えば、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸2−メチルシクロヘキシル、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02, 6]デカン−8−イル、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルオキシエチル、メタクリル酸イソボロニル等が挙げられる。
アクリル酸鎖状アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸sec−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸イソデシル、アクリル酸n−ラウリル、アクリル酸トリデシル、アクリル酸n−ステアリル等が挙げられる。
アクリル酸環状アルキルエステルとしては、例えば、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−2−メチルシクロヘキシル、アクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル、アクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イルオキシエチル、アクリル酸イソボロニル等が挙げられる。
メタクリル酸アリールエステルとしては、例えば、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ベンジル等が挙げられる。
アクリル酸アリールエステルとしては、例えば、アクリル酸フェニル、アクリル酸ベンジル等が挙げられる。
不飽和ジカルボン酸ジエステルとしては、例えば、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジエチル等が挙げられる。
マレイミド化合物としては、例えば、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−ベンジルマレイミド、N−(4−ヒドロキシフェニル)マレイミド、N−(4−ヒドロキシベンジル)マレイミド、N−スクシンイミジル−3−マレイミドベンゾエート、N−スクシンイミジル−4−マレイミドブチレート、N−スクシンイミジル−6−マレイミドカプロエート、N−スクシンイミジル−3−マレイミドプロピオネート、N−(9−アクリジニル)マレイミド等が挙げられる。
不飽和芳香族化合物としては、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン、p−メトキシスチレン等が挙げられる。
共役ジエンとしては、例えば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン等が挙げられる。
テトラヒドロフラン骨格を含有する不飽和化合物としては、例えば、メタクリル酸テトラヒドロフルフリル、2−メタクリロイルオキシ−プロピオン酸テトラヒドロフルフリルエステル、3−(メタ)アクリロイルオキシテトラヒドロフラン−2−オン等が挙げられる。
その他の不飽和化合物としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、アクリルアミド、メタクリルアミド、酢酸ビニル等が挙げられる。
これらの(A4)化合物のうち、メタクリル酸鎖状アルキルエステル、メタクリル酸環状アルキルエステル、メタクリル酸アリールエステル、マレイミド化合物、テトラヒドロフラン骨格、不飽和芳香族化合物、アクリル酸環状アルキルエステルが好ましい。これらのうち、特に、スチレン、メタクリル酸メチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸n−ラウリル、メタクリル酸ベンジル、メタクリル酸トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン−8−イル、p−メトキシスチレン、アクリル酸2−メチルシクロヘキシル、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、メタクリル酸テトラヒドロフルフリルが、共重合反応性およびアルカリ水溶液に対する溶解性の点から好ましい。
これらの(A4)化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
(A4)化合物の使用割合としては、(A1)化合物、(A2)化合物並びに(A4)化合物(および任意の(A3)化合物)の合計に基づいて、10質量%〜80質量%が好ましい。
<[B]感光剤>
本発明の実施形態の感放射線性樹脂組成物に含有される[B]感光剤としては、放射線に感応してラジカルを発生し重合を開始できる化合物(すなわち、[B−1]光ラジカル重合開始剤)、または、放射線に感応して酸を発生する化合物(すなわち、[B−2]光酸発生剤)を挙げることができる。
このような[B−1]光ラジカル重合開始剤としては、O−アシルオキシム化合物、アセトフェノン化合物、ビイミダゾール化合物等が挙げられる。これらの化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
O−アシルオキシム化合物としては、例えば、1,2−オクタンジオン1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、1−(9−エチル−6−ベンゾイル−9.H.−カルバゾール−3−イル)−オクタン−1−オンオキシム−O−アセテート、1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−エタン−1−オンオキシム−O−ベンゾエート、1−〔9−n−ブチル−6−(2−エチルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−エタン−1−オンオキシム−O−ベンゾエート、エタノン−1−[9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロフラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル]−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロピラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−5−テトラヒドロフラニルベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−{2−メチル−4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)等が挙げられる。
これらのうち、1,2−オクタンジオン1−[4−(フェニルチオ)−2−(O−ベンゾイルオキシム)]、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)、エタノン−1−〔9−エチル−6−(2−メチル−4−テトラヒドロフラニルメトキシベンゾイル)−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)またはエタノン−1−〔9−エチル−6−{2−メチル−4−(2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラニル)メトキシベンゾイル}−9.H.−カルバゾール−3−イル〕−1−(O−アセチルオキシム)が好ましい。
アセトフェノン化合物としては、例えば、α−アミノケトン化合物、α−ヒドロキシケトン化合物が挙げられる。
α−アミノケトン化合物としては、例えば、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン等が挙げられる。
α−ヒドロキシケトン化合物としては、例えば、1−フェニル−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−i−プロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル−(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられる。
アセトフェノン化合物としては、α−アミノケトン化合物が好ましく、特に、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルホリノフェニル)−ブタン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)−ブタン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オンが好ましい。
ビイミダゾール化合物としては、例えば、2,2’−ビス(2−クロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾール、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾールまたは2,2’−ビス(2,4,6−トリクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾールが好ましく、そのうち、2,2’−ビス(2,4−ジクロロフェニル)−4,4’,5,5’−テトラフェニル−1,2’−ビイミダゾールがより好ましい。
[B−1]光ラジカル重合開始剤は、上述したように、単独でまたは2種以上を混合して使用できる。[B−1]光ラジカル重合開始剤の含有割合は、[A]重合体100質量部に対して、1質量部〜40質量部が好ましく、5質量部〜30質量部がより好ましい。[B−1]光ラジカル重合開始剤の使用割合を1質量部〜40質量部とすることで、感放射線性樹脂組成物は、低露光量であっても、高い耐溶媒性、高い硬度および高い密着性を有する硬化膜を形成することができ、そうした特性に優れた電極の樹脂部を提供できる。
次に、本実施形態の感放射線性樹脂組成物の[B]感光剤である[B−2]光酸発生剤としては、例えば、オキシムスルホネート化合物、オニウム塩、スルホンイミド化合物、ハロゲン含有化合物、ジアゾメタン化合物、スルホン化合物、スルホン酸エステル化合物、カルボン酸エステル化合物等が挙げられる。尚、これらの[B−2]光酸発生剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
オキシムスルホネート化合物としては、下記式(1)で表されるオキシムスルホネート基を含む化合物が好ましい。
上記式(1)中、Raは、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のフルオロアルキル基、炭素数4〜12の脂環式炭化水素基、炭素数6〜20のアリール基、あるいはこれらのアルキル基、脂環式炭化水素基およびアリール基が有する水素原子の一部または全部が置換基で置換された基である。
上記式(1)中のRaで表されるアルキル基としては、炭素数1〜12の直鎖状または分岐状のアルキル基が好ましい。この炭素数1〜12の直鎖状または分岐状のアルキル基は置換基により置換されていてもよく、上記置換基としては、例えば、炭素数1〜10のアルコキシ基、7,7−ジメチル−2−オキソノルボルニル基等の有橋式脂環基を含む脂環式基等が挙げられる。炭素数1〜12のフルオロアルキル基としては、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプチルフルオロプロピル基等が挙げられる。
上記Raで表される脂環式炭化水素基としては、炭素数4〜12の脂環式炭化水素基が好ましい。この炭素数4〜12の脂環式炭化水素基は置換基により置換されていてもよく、上記置換基としては、例えば、炭素数1〜5のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
上記Raで表されるアリール基としては、炭素数6〜20のアリール基が好ましく、フェニル基、ナフチル基、トリル基、キシリル基がより好ましい。上記アリール基は置換基により置換されていてもよく、上記置換基としては、例えば、炭素数1〜5のアルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
オニウム塩としては、例えば、ジフェニルヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム塩、スルホニウム塩、ベンゾチアゾニウム塩、テトラヒドロチオフェニウム塩等が挙げられる。
スルホンイミド化合物としては、例えば、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(カンファスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(4−フルオロフェニルスルホニルオキシ)スクシンイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(カンファスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(2−トリフルオロメチルフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(2−フルオロフェニルスルホニルオキシ)フタルイミド、N−(トリフルオロメチルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(カンファスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド、N−(4−メチルフェニルスルホニルオキシ)ジフェニルマレイミド等が挙げられる。
[B−2]光酸発生剤としては、オキシムスルホネート化合物、オニウム塩、スルホンイミド化合物が好ましく、オキシムスルホネート化合物がより好ましい。
また、上記オニウム塩としては、テトラヒドロチオフェニウム塩、ベンジルスルホニウム塩が好ましく、4,7−ジ−n−ブトキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネート、ベンジル−4−ヒドロキシフェニルメチルスルホニウムヘキサフルオロホスフェートがより好ましく、4,7−ジ−n−ブトキシ−1−ナフチルテトラヒドロチオフェニウムトリフルオロメタンスルホネートがさらに好ましい。上記スルホン酸エステル化合物としては、ハロアルキルスルホン酸エステルが好ましく、N−ヒドロキシナフタルイミド−トリフルオロメタンスルホン酸エステルがより好ましい。[B−2]光酸発生剤を上記化合物とすることで、得られる本実施形態の感放射線性樹脂組成物は、感度および溶解性を向上させることができる。
[B−2]光酸発生剤の含有量としては、[A]重合体成分100質量部に対して、0.1質量部〜10質量部が好ましく、1質量部〜5質量部がより好ましい。[B−2]光酸発生剤の含有量を上記範囲とすることで、本実施形態の感放射線性樹脂組成物の感度を最適化し、表面硬度が高い硬化膜を形成でき、そうした特性に優れた電極の樹脂部を提供できる。
<[C]重合性化合物>
本発明の実施形態の感放射線性樹脂組成物は、[A]重合体および[B]感光剤とともに、[C]重合性化合物を含有することができる。本実施形態の感放射線性樹脂組成物は、[B]感光剤として[B−1]光ラジカル重合開始剤を選択し、さらに、[C]重合性化合物を含有させることで、ネガ型パターン形成用の感放射線性樹脂組成物として好適に使用することが可能である。
本実施形態の感放射線性樹脂組成物に含有可能な[C]重合性化合物としては、例えば、ω−カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、エチレングリコール(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノキシエタノールフルオレンジ(メタ)アクリレート、ジメチロールトリシクロデカンジ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイロキシプロピルメタクリレート、2−(2’−ビニロキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリ{2−(メタ)アクリロイロキシエチル}フォスフェート、エチレンオキサイド変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、コハク酸変性ペンタエリスリトールトリアクリレート等の他、直鎖アルキレン基および脂環式構造を有しかつ2個以上のイソシアネート基を有する化合物と、分子内に1個以上の水酸基を有しかつ3個〜5個の(メタ)アクリロイロキシ基を有する化合物とを反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
[C]重合性化合物は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
本発明の実施形態の感放射線性樹脂組成物における[C]重合性化合物の含有量としては、[A]重合体100質量部に対して20質量部〜200質量部が好ましく、40質量部〜160質量部がより好ましい。[C]重合性化合物の使用割合を上記範囲とすることで、密着性に優れ、低露光量においても十分な硬度を有する硬化膜を形成でき、そうした特性に優れた電極の樹脂部を提供できる。
<[D]硬化促進剤>
本実施形態の感放射線性樹脂組成物は、上述した[A]重合体および[B]感光剤等に加え、さらに[D]硬化促進剤を含有することができる。[D]硬化促進剤は、硬化を促進する機能を果たす化合物であり、例えば、200℃以下の低温硬化による電極の樹脂部の形成を実現する点から好適である。
[D]硬化促進剤としては、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、3−アミノベンゼンスルホン酸エチル、3,5−ビストリフルオロメチル−1,2−ジアミノベンゼン、4−アミノニトロベンゼン、N,N−ジメチル−4−ニトロアニリン等の分子中に電子吸引性基とアミノ基を有する化合物、3級アミン化合物、アミド化合物、チオール化合物、ブロックイソシアネート化合物およびイミダゾール環含有化合物からなる群より選ばれる少なくとも1つの化合物を挙げることができる。
本実施形態の感放射線性樹脂組成物が、上述の特定の化合物群から選択される[D]硬化促進剤を含有することで、感放射線性樹脂組成物の硬化が促進され、膜の低温硬化による電極の樹脂部の低温形成、具体的には200℃以下での形成を実現することができる。さらに、上述の[D]硬化促進剤を用いることで、感放射線性樹脂組成物の保存安定性を向上させることもできる。
<その他の成分>
本実施形態の感放射線性樹脂組成物は、[A]重合体等の必須の成分や、[D]硬化促進剤の他、その他の任意成分を含有することができる。
本実施形態の感放射線性樹脂組成物は、その他の成分として、本発明の効果を損なわない範囲で必要に応じ、界面活性剤、保存安定剤、接着助剤、耐熱性向上剤等を含有できる。これらの各任意成分は、単独で使用してもよいし、2種以上を混合して使用してもよい。
<感放射線性樹脂組成物の調製>
本発明の実施形態の感放射線性樹脂組成物は、[A]重合体および[B]感光剤等に加え、[D]硬化促進剤の他、所期の効果を損なわない範囲で必要に応じて上述したその他の任意成分を所定の割合で混合することにより調製される。本実施形態の感放射線性樹脂組成物は、好ましくは適当な溶媒に溶解されて溶液状態で用いられる。
感放射線性樹脂組成物の調製に用いられる溶媒としては、[A]重合体および[B]感光剤、並びに必要に応じて含有される[C]重合性化合物を均一に溶解または分散し、各成分と反応しないものが用いられる。そして、その溶媒は、[D]硬化促進剤や、その他の任意成分を均一に溶解または分散し、各成分と反応しないものが好ましい。
本実施形態の感放射線性樹脂組成物の調製に用いられる溶媒としては、例えば、アルコール、グリコールエーテル、エチレングリコールアルキルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノアルキルエーテル、ジエチレングリコールジアルキルエーテル、ジプロピレングリコールジアルキルエーテル、プロピレングリコールモノアルキルエーテル、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノアルキルエーテルプロピオネート、ケトン、エステル等が挙げられる。
本実施形態の感放射線性樹脂組成物における溶媒の含有量は、特に限定されないが、得られる感放射線性樹脂組成物の塗布性、安定性等の観点から、感放射線性樹脂組成物の溶媒を除いた各成分の合計濃度が、5質量%〜50質量%となる量が好ましく、10質量%〜40質量%となる量がより好ましい。感放射線性樹脂組成物の溶液を調製する場合、実際には、上記濃度範囲において、所望の膜厚の値等に応じた固形分濃度(組成物溶液中に占める溶媒以外の成分)が設定される。
このようにして調製された溶液状の組成物は、孔径0.5μm程度のミリポアフィルタ等を用いて濾過した後に壁状電極をなす電極の樹脂部の形成に使用することが好ましい。
次に、本実施形態の感放射線性樹脂組成物を用いた、壁状電極をなす電極の樹脂部の形成方法について説明する。
<電極の樹脂部の形成方法>
壁状電極をなす電極の樹脂部の形成工程においては、上述した本実施形態の感放射線性樹脂組成物を用いて基板上に樹脂部を形成する工程が主要な工程として含まれる。この樹脂部の形成工程では、本実施形態の感放射線性樹脂組成物を用いて得られた塗膜のパターニング等が行われる。
壁状電極をなす電極の樹脂部の形成方法では、基板上に所望形状の樹脂部が形成されるように、少なくとも下記の[1]工程〜[4]工程を含むことが好ましい。
[1]本実施形態の感放射線性樹脂組成物の塗膜を基板上に形成する工程(以下、「[1]工程」と称することがある。)
[2][1]工程で形成された感放射線性樹脂組成物の塗膜の少なくとも一部に放射線を照射する工程(以下、「[2]工程」と称することがある。)
[3][2]工程で放射線が照射された塗膜を現像する工程(以下、「[3]工程」と称することがある。)
[4][3]工程で現像された塗膜を加熱硬化する工程(以下、「[4]工程」と称することがある。)
以下、[1]工程〜[4]工程について説明する。
[[1]工程]
壁状電極をなす電極の樹脂部の製造においては、[1]工程において、本実施形態の感放射線性樹脂組成物の塗膜を基板上に形成する。この基板の材料としては、例えば、ソーダライムガラスや無アルカリガラス等のガラス、シリコン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリカーボネート、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド等を用いることができる。さらに、その基板には、所望によりシランカップリング剤等による薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着等の適宜の前処理を施しておくこともできる。
また、本発明の実施形態の液晶表示素子が、アクティブマトリクス方式の液晶表示素子である場合、基板としては、走査線と信号線とがマトリクス状に配線され、その走査線と信号線の各交点にTFT等のアクティブ素子が設けられ、さらに、信号線と平行にコモン線が配線されて全ての画素に接続されるように形成された基板を用いることができる
本実施形態の感放射線性樹脂組成物の塗布方法としては、例えば、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法またはスピンナ法と称されることもある。)、スリット塗布法(スリットダイ塗布法と称されることもある。)、バー塗布法、インクジェット塗布法等の適宜の方法が採用できる。これらのうち、均一な厚みの膜を形成できる点から、スピンコート法またはスリット塗布法が好ましい。
塗布法により感放射線性樹脂組成物の塗膜を形成する場合、基板の上に感放射線性樹脂組成物を塗布した後、好ましくは塗布面を加熱(プレベーク)することにより溶媒を蒸発させ、塗膜を形成することができる。
上述のプレベークの条件としては、感放射線性樹脂組成物を構成する各成分の種類、配合割合等によって異なるが、温度は70℃〜120℃が好ましく、時間は1分間〜15分間程度が好ましい。塗膜のプレベーク後の膜厚は、0.5μm〜10μmが好ましく、1.0μm〜7.0μm程度がより好ましい。
[[2]工程]
次いで、[1]工程で基板上に形成された塗膜の少なくとも一部に、放射線を照射する。このとき、所望の位置に電極の樹脂部を形成するため、塗膜の一部に放射線を照射するが、例えば、所定のパターンを有するフォトマスクを介して行うことができる。
照射に使用される放射線としては、可視光線、紫外線、遠紫外線等が挙げられる。このうち波長が250nm〜550nmの範囲にある放射線が好ましく、365nmの紫外線を含む放射線がより好ましい。
放射線照射量(露光量とも言う。)は、照射される放射線の波長365nmにおける強度を照度計(OAI model 356、Optical Associates Inc.製)により測定した値として、10J/m2〜10,000J/m2とすることができ、100J/m2〜5000J/m2が好ましく、200J/m2〜3000J/m 2がより好ましい。
壁状電極をなす電極の樹脂部の形成に用いられる感放射線性樹脂組成物は、従来知られている技術、例えば、液晶表示素子における樹脂製のスペーサを形成するための組成物と比較して放射線感度が高い。例えば、上記放射線照射量が700J/m2以下、さらには600J/m2以下であっても、所望の膜厚、良好な形状、優れた密着性および高い硬度の硬化膜として電極の樹脂部を得ることができる。
[[3]工程]
次に、[2]工程の放射線照射後の塗膜を現像して不要な部分を除去し、所定の形状の電極の樹脂部のパターンを得る。
現像に使用される現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム等の無機アルカリや、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アンモニウム塩や、コリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等のアルカリ性化合物の水溶液が使用できる。上述のアルカリ性化合物の水溶液には、メタノール、エタノール等の水溶性有機溶媒を適当量添加して使用することもできる。さらに、界面活性剤をそれのみで、または、上述の水溶性有機溶媒を添加とともに、適当量添加して使用することもできる。
現像方法は、液盛り法、ディッピング法、シャワー法、スプレー法等のいずれでもよく、現像時間は、常温で5秒間〜300秒間とすることができ、好ましくは常温で10秒間〜180秒間程度である。現像処理に続いて、例えば、流水洗浄を30秒間〜90秒間行った後、圧縮空気や圧縮窒素で風乾することによって、所望の電極の樹脂部のパターンが得られる。
[[4]工程]
次いで、[3]工程で得られた、電極の樹脂部のパターンをなす塗膜を、ホットプレート、オーブン等の適当な加熱装置により硬化(ポストベークとも言う。)する。これにより、硬化膜としての壁状電極をなす電極の樹脂部が得られる。
本実施形態の感放射線性樹脂組成物によれば、硬化温度を200℃以下とすることが可能である。さらに、樹脂基板上での形成により好適な180℃以下であっても十分な特性の絶縁膜が得られる。具体的には、硬化温度を100℃〜200℃とすることが好ましく、低温硬化と耐熱性を高いレベルで両立させようとする場合、150℃〜180℃とすることがより好ましい。硬化時間は、例えば、ホットプレート上では5分間〜30分間とすることが好ましく、オーブン中では30分間〜180分間とすることが好ましい。
以上の形成方法に従い、基板上に、壁状電極をなす電極の樹脂部を形成することが可能である。壁状電極をなす電極の樹脂部は、その断面形状が順テーパー形状(パターンの断面形状が底辺部から離れるにしたがってその幅が徐々に狭くなっている形状)であることが好ましく、断面形状のテーパー角(パターンの断面形状の底辺と、エッジ部の接線がなす角、以下同じ。)が80°以下であることが好ましく、60°以下であることがさらに好ましい。上述のテーパー角とすることで、壁状電極の周辺部および壁状電極をスペーサとして用いた場合のスペーサ周辺部において、光漏れを低減させることができる。これは液晶配向剤として後述の光配向剤とした場合に効果が顕著となる。そして、上述したように、樹脂部上には、公知の方法に従い、例えば、ITO等からなる導電部を設けることが可能であり、壁状電極をなす電極を形成することができる。そして、壁状電極をなす電極の形成された基板は、上述した本発明の実施形態の液晶表示素子用として好適に用いることができる。
また、壁状電極をなす電極の形成された基板を用いて本実施形態の液晶表示素子を提供するに際し、その基板には、液晶の配向を制御するための配向膜を設けることが好ましい。したがって次に、本実施形態の液晶表示素子において設けることができる、本発明の実施形態の配向膜について説明し、特に、配向膜を形成する本発明の実施形態の液晶配向剤について説明する。
<液晶配向剤>
本発明の実施形態の液晶配向剤としては公知の液晶配向剤を使用することができる。通常液晶配向剤から形成された塗膜にラビング処理を施したり、偏光照射による光配向処理を施すことによって液晶配向能を付与する。本発明の液晶配向剤としては、光配向処理を施すことにより液晶配向能を発現する液晶配向剤(以下、光配向剤と言うことがある。)であることが好ましい。
光配向剤としては、光配向性構造を有する重合体を含有するものとしてもよい。ここで、光配向性構造とは、光配向性基および分解型光配向部の両者を含む概念である。具体的には、光配向性構造としては、光異性化や光二量化、光分解、光フリース転移等によって光配向性を示す種々の化合物由来の基を採用することができ、例えば、アゾベンゼンまたはその誘導体を基本骨格として含有するアゾベンゼン含有基、桂皮酸またはその誘導体を基本骨格として含有する桂皮酸構造を有する基、カルコンまたはその誘導体を基本骨格として含有するカルコン含有基、ベンゾフェノンまたはその誘導体を基本骨格として含有するベンゾフェノン含有基、クマリンまたはその誘導体を基本骨格として含有するクマリン含有基、シクロブタン骨格構造含有基、芳香族エステル構造含有基等が挙げられる。これらのうち、桂皮酸構造を有する基、シクロブタン骨格構造含有基、芳香族エステル構造含有基であることが好ましい。これらは、例えば、特開平6−287453号公報、特開平9−297313号公報、特願2013−60878号に記載された方法に従って得ることができる。
上述の重合体の基本骨格としては、例えば、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド、ポリオルガノシロキサン、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリ(メタ)アクリルアミド、ポリビニルエーテル、ポリオレフィン等を挙げることができるが、ポリアミック酸、ポリアミック酸エステル、ポリイミド、ポリオルガノシロキサンであることが好ましい。
光配向剤は上述の光配向性構造を有する重合体以外の重合体、硬化剤、硬化触媒、硬化促進剤、エポキシ化合物、官能性シラン化合物、界面活性剤、光増感剤等をさらに含有することができる。
<配向膜の形成>
次に、本発明の実施形態の配向膜の形成方法について説明する。
配向膜の形成は、例えば、上述のようにして壁状電極をなす電極が形成された基板を用い、本実施形態の液晶配向剤を塗布する。塗布方法としては、例えば、ロールコーター法、スピンナ法、印刷法、インクジェット法等を挙げることができる。
次いで、液晶配向剤の塗布された基板をプレベークし、その後、ポストベークすることにより塗膜を形成する。
プレベーク条件は、例えば、温度が40℃〜120℃で、時間が0.1分間〜5分間である。ポストベーク条件の温度は、好ましくは120℃〜250℃であり、より好ましくは150℃〜230℃であり、さらに好ましくは180℃〜230℃である。また、ポストベークの時間は、ホットプレートやオーブン等の加熱装置によって異なるが、通常は、好ましくは5分間〜200分間であり、より好ましくは10分間〜100分間である。ポストベーク後の塗膜の膜厚は、好ましくは0.001μm〜1μmであり、より好ましくは0.005μm〜0.5μmである。
液晶配向剤を塗布する際に使用される液晶配向剤の固形分濃度(液晶配向剤の溶媒以外の成分の合計重量が液晶配向剤の全重量に占める割合)は、粘性、揮発性等を考慮して適宜に選択されるが、好ましくは、1重量%〜10重量%である。
液晶配向剤として、光配向剤を用いる場合は、上述の塗膜に、直線偏光もしくは部分偏光された放射線、または、非偏光の放射線を照射することにより、液晶配向制御能を付与する。こうした偏光放射線の照射は、配向膜の配向処理に対応する。
ここで、放射線としては、例えば、150nm〜800nmの波長の光を含む紫外線および可視光線を用いることができる。特に、放射線として、200nm〜400nmの波長の光を含む紫外線を用いることが好ましい。使用する放射線が直線偏光または部分偏光している場合には、照射は基板面に垂直の方向から行っても、プレチルト角を付与するために斜め方向から行ってもよく、また、これらを組み合わせて行ってもよい。非偏光の放射線を照射する場合には、照射の方向は斜め方向である必要がある。
放射線の照射量としては、好ましくは1J/m2以上であって10000J/m2より少ない量であり、より好ましくは10J/m2〜3000J/m2である。
液晶配向剤として、光配向剤以外の液晶配向剤を用いる場合は、ポストベーク後の塗膜を配向膜として使用することも可能である。そして、必要に応じて、ポストベーク後の塗膜に対し、例えば、ナイロン、レーヨン、コットン等の繊維からなる布を巻き付けたロールで一定方向に擦る処理(ラビング処理)を施して、液晶配向制御能を付与することが可能である。
こうして製造された、本実施形態の壁状電極をなす電極と配向膜の形成された基板は、本発明の実施形態の液晶表示素子の製造に好適に用いることができる。
例えば、上述した壁状電極をなす電極と配向膜の形成された基板を第1の基板とする。そして、それと対向配置される基板を第2の基板として、上記と同様の方法で、配向膜を形成する。そして、シール材を用いた第1の基板と第2の基板の貼り合せおよび液晶の封入を行い、その後、偏光板の貼り合せ等を行って、本発明の実施形態の液晶表示素子を製造することができる。
尚、第2の基板として、公知のカラーフィルタを備えたカラーフィルタ基板を用いた場合、本発明の実施形態の液晶表示素子は、カラー液晶表示素子を構成することができる。
以上のようにして、基板上に壁状電極をなす電極を形成し、配向膜等を形成して、高い表示効率を有する本発明の実施形態の液晶表示素子を製造することができる。
尚、本発明は上記各実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、種々変形して実施することができる。