JP6299620B2 - 硫酸ニッケルの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、硫酸ニッケルの製造方法に関し、より詳しくは、硫酸ニッケルの結晶化を行う前に硫黄を除去して高純度な硫酸ニッケルの結晶を得る方法に関する。
硫酸ニッケルは、ニッケルめっきのめっき液や、電池材料向けの水酸化ニッケル原料として広く使われている。このような硫酸ニッケルを得る方法としては、電気ニッケルを製造する際の副産物として生成させる方法がある。
具体的には、電解液の一部を抜き出し、不純物を分離して硫酸ニッケルの結晶を晶析させるというものである。しかしながら、硫酸浴よりも低コストな塩化浴(塩酸浴)を用いて電気ニッケルを製造するプロセスの場合、塩化浴の電解液を溶媒抽出等の手段を用いて硫酸浴に変換しなければならず、また塩化物が硫酸浴に微量でも混入すると製品品質に影響するため、それだけ手間がかかるという問題があった。
さらに、電気ニッケル製造プロセスの副産品として硫酸ニッケルを生成させる場合は、その硫酸ニッケルの生産量が電気ニッケルの生産量に律速されるという問題もあった。つまり、硫酸ニッケル、電気ニッケルの双方が影響し合うことになり、生産性の自由度が制約されていた。
このため、ニッケルを含有する原料をはじめから硫酸浴に溶解して、その水溶液から硫酸ニッケルの結晶を得るプロセスが検討されてきた。具体的には、ニッケル硫化物等のニッケル含有原料を硫酸溶液と共にオートクレーブ等の加圧反応容器に装入し、高温高圧下でニッケルを浸出させて硫酸ニッケルを含有する硫酸酸性溶液を生成させ、その溶液から硫酸ニッケルを得るというものである。
具体的には、図2に示すように、先ず、ニッケル硫化物等のニッケル含有原料を硫酸溶液と共にオートクレーブに装入し、高温高圧下において浸出処理を施して、ニッケルを含有する硫酸酸性溶液の浸出液、つまりニッケルを含有する硫酸浴を得る(加圧浸出工程)。なお、このような加圧浸出により浸出液を得る方法は、特許文献1等に開示された公知の方法を用いて行うことができる。
次に、得られた浸出液に含まれる鉄を除去する脱鉄処理を施す(脱鉄工程)。具体的には、浸出液に酸化剤を添加しつつそのpHを中和領域に維持する酸化中和処理を行って鉄を沈殿物として固定除去し、粗硫酸ニッケル溶液を得る。
次に、粗硫酸ニッケル溶液に対して溶媒抽出処理を施し、ニッケル以外の不純物元素を除去して高純度の硫酸ニッケル溶液(以下、「純液」という)を得る(溶媒抽出工程)。なお、溶媒抽出を経て高純度の硫酸ニッケル溶液を得る方法は、特許文献2等に開示された公知の方法を用いて行うことができる。
そして、得られた純液から硫酸ニッケルの結晶を晶析させる(晶析工程)。具体的には、例えば純液を晶析缶に装入して濃縮し、硫酸ニッケルの結晶を析出させて、製品となる硫酸ニッケル結晶を得る。
このような硫酸ニッケルの製造方法は、上述した電気ニッケル製造プロセスにおける副産品として生成させる方法に比べると、塩化浴から硫酸浴への浴変換が不要であり、また工程液に塩化物イオンが含まれないため製品へのコンタミや塩素ガス発生のおそれが無い等の点で優れている。
しかしながら、このような方法を用いて製造した硫酸ニッケル結晶の場合、しばしば、その得られた硫酸ニッケルを溶解させると単体硫黄の発生が確認されるという問題があった。結晶中に硫黄が生じると、例えば、その硫酸ニッケルを原料としてめっき液としたとき、硫酸ニッケルの結晶を溶解する際に硫黄が浮上してしまい、めっき液を用いためっき処理作業が困難になる。したがって、そのような硫黄が発生した硫酸ニッケルは、製品として販売できず、それだけ生産効率が低下する結果となる。
このような現象は、塩化浴から製造した硫酸ニッケルではあまり観察されず、したがって品質にばらつきを生じさせることになるため、硫酸浴で生産した硫酸ニッケルの品質や生産性に不安が生じる原因ともなっていた。
特開2005−350766号公報 特開2013−151717号公報 特開平10−310437号公報 特開平10−30135号公報 特開2004−307270号公報
本発明は、上述したような実情に鑑みて提案されたものであり、例えばニッケルを含有する硫化物原料等を硫酸酸性溶液(硫酸浴)で加圧浸出して得られた浸出液(硫酸ニッケルを含有する溶液)から硫酸ニッケルの結晶を得る方法において、硫黄の発生を防ぎ、得られる硫酸ニッケル結晶への硫黄の混入を抑制することができる硫酸ニッケルの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上述した課題を解決するために鋭意検討を重ねた。その結果、硫酸ニッケルを含有する溶液から硫酸ニッケルの結晶を析出させるに先立ち、その溶液のpHを特定の範囲に維持しつつ、オゾンを添加して特定の酸化還元電位となるように酸化処理を施すことによって、硫黄発生の原因となるチオ硫酸塩を効果的に分解させることができ、硫酸ニッケル結晶への硫黄の混入を抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下のものを提供する。
(1)本発明の第1の発明は、硫酸ニッケルを含有する溶液(硫酸ニッケル含有溶液)から硫酸ニッケルを晶析させて硫酸ニッケルの結晶を得る硫酸ニッケルの製造方法であって、晶析前に、前記硫酸ニッケル含有溶液をpH1.0〜3.0に維持しつつ、銀塩化銀電極を参照電極とする酸化還元電位が1000mV以上となるようにオゾンを添加して酸化する酸化工程を有する硫酸ニッケルの製造方法である。
(2)本発明の第2の発明は、第1の発明において、前記硫酸ニッケル含有溶液が、ニッケル硫化物を硫酸酸性溶液中にて加圧浸出して得られた浸出液である硫酸ニッケルの製造方法である。
(3)本発明の第3の発明は、第1又は第2の発明において、前記酸化工程を経て得られた溶液に含まれる鉄を固定除去する脱鉄工程をさらに有し、前記脱鉄工程を経て得られた溶液から硫酸ニッケルの結晶を晶析させる硫酸ニッケルの製造方法である。
本発明に係る硫酸ニッケルの製造方法によれば、硫黄の混入がほとんどない硫酸ニッケルの結晶を製造することができる。
硫酸ニッケルの製造方法の流れを説明するためのフロー図である。 従来の硫酸ニッケルの製造方法の流れを示すフロー図である。
以下、本発明に係る硫酸ニッケルの製造方法の具体的な実施形態(以下、「本実施の形態」という)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲で種々の変更が可能である。
本実施の形態に係る硫酸ニッケルの製造方法は、硫酸ニッケルを含有する溶液(硫酸ニッケル含有溶液)から硫酸ニッケルを晶析させて硫酸ニッケルの結晶を得る方法である。そして、この製造方法においては、溶液から硫酸ニッケルの結晶を晶析させる(晶析工程)前に、その硫酸ニッケル含有溶液をpH1.0〜3.0に調整して維持しつつ、銀塩化銀電極を参照電極とする酸化還元電位が1000mV以上となるようにオゾンを添加して酸化する酸化工程を有することを特徴としている。
このように、結晶の析出に先立って、硫酸ニッケル含有溶液に対して所定の条件でオゾンを用いた酸化処理を施すことによって、結晶への硫黄の混入を抑制することができる。
硫酸ニッケル含有溶液としては、ニッケル含有原料、例えばニッケルを含む硫化物(ニッケル硫化物)を硫酸酸性溶液中にて高温加圧浸出して得られた浸出液を用いることができる(図1のフロー図における加圧浸出工程)。また、その原料とするニッケル硫化物としては、例えばニッケル酸化鉱を高温加圧浸出してニッケルを含有する浸出液を得て、その浸出液に中和剤を添加して不純物を分離した後、中和後の溶液に硫化水素ガス等の硫化剤を添加して得られたニッケル混合硫化物等を利用することができる。
ニッケル硫化物を加圧浸出する方法としては、ニッケル硫化物をオートクレーブ等の加圧反応容器等に装入し、硫酸酸性溶液を添加して溶解させ、高圧下でニッケル硫化物に含まれるニッケルを浸出させる。より具体的には、例えば特許文献1に開示された方法により行うことができる。
ここで、ニッケルを含有する溶液として、硫酸浴では、塩化物イオンを含まないため、塩化浴(塩酸浴)と比較するとその塩化物イオンによる酸化力が利用できない。そのため、硫酸浴では、酸化力が弱いという傾向がある。例えば、上述したように原料としてのニッケル硫化物を浸出させて得られる浸出液(硫酸ニッケル含有溶液)の場合、そのニッケル硫化物に対する浸出処理での操業条件の変動や誤差等により酸化中の酸化力が不十分となると、ニッケル硫化物中の硫黄が本来は硫酸イオン(SO 2−)にまで酸化されるべきところ、チオ硫酸塩(S 2−)までで留まってしまう場合があると考えられる。
そのような場合、操業を続けて得られた硫酸ニッケル含有溶液から硫酸ニッケルの結晶を製造すると、その製造プロセス中に、生成したチオ硫酸塩を除去する機能がないため、不純物として結晶中に混入してしまうことになる。
例えば、ニッケル量換算で100g/L程度、チオ硫酸塩が30mg/L程度の割合で含有する硫酸ニッケル溶液では、溶解時には、チオ硫酸塩の硫黄分が分離して、硫黄単体の微粒子となって水溶液中に混濁する。そして、その水溶液を用いてそのまま晶析の操作を行っていくと、硫酸ニッケルの結晶に単体の硫黄が巻き込まれる形で混入していき、不純物となってしまう。このことが、例えばニッケル硫化物を原料として硫酸酸性溶液で浸出して得られた硫酸浴(硫酸ニッケル含有溶液)を結晶析出の対象として用いた場合に、単体硫黄が生成するメカニズムであると考えられる。
このように硫黄が混入した硫酸ニッケルの結晶(製品)を、例えばめっき作業のために水に溶解すると、下記式1のような反応が起こり「S」が発生する。
2−+1/2O → SO 2−+S・・・(式1)
本発明者は、硫酸浴においても、酸化力をより増強させて、硫黄がチオ硫酸塩で留まらせずに硫酸イオンにまで完全に酸化させるようにすることで、チオ硫酸塩を効果的に分解除去して、得られる結晶中への硫黄の混入を抑制する方法を見出した。
すなわち、本実施の形態に係る硫酸ニッケルの製造方法では、硫酸ニッケル含有溶液(硫酸浴)から硫酸ニッケルの結晶を析出させる前工程として、その硫酸ニッケル含有溶液を特定のpH範囲の条件に維持するとともに、特定の酸化還元電位(ORP)の範囲となるようにオゾンを添加して酸化させる酸化工程を実行する。
[酸化工程]
酸化工程において、硫酸ニッケル含有溶液のpH条件としては、1.0〜3.0の範囲とする。溶液のpHが3.0を超えると、チオ硫酸塩が安定化して後述するオゾンによっても分解され難くなる。一方で、溶液のpHが1.0未満であると、チオ硫酸塩の分解は効果的に進行するものの、添加する硫酸量が多くなりすぎて効率的な処理を行うことができない。なお、pH条件としては。2.0〜2.5の範囲とすることがより好ましい。
酸化工程においては、硫酸ニッケル含有溶液に対してオゾンを添加するが、オゾンの添加方法としては特に限定されず、例えば、公知のオゾン発生装置等から発生させたオゾンを空気や酸素ガス等に含有させ、それを硫酸ニッケル含有溶液中に吹き込むことで行うことができる。また、ガスの吹込み方法についても特に限定されないが、シンターガラス吹込み管等によってガスを吹込むことにより、そのガスが細かい泡となってガスによる反応効率が向上するため特に好ましい。
また、そのオゾンの添加により、硫酸ニッケル含有溶液の酸化還元電位(ORP)を、銀−塩化銀電極を参照電極とする電位で1000mV以上となるようにすることが重要となる。このように、酸化還元電位が1000mV以上となるようにオゾンを添加することにより、酸化反応が効率的に進行してチオ硫酸塩が効果的に分解されるようになり、次の晶析工程にて得られる結晶への硫黄の混入を抑制することができる。
なお、オゾンの添加に基づく酸化による電位としては、過度に酸化還元電位が上昇しても効果はそれ以上に高まらない。そのため、酸化還元電位の上限値としては、概ね1200mV〜1300mV程度とすることが好ましい。
ここで一般的に、酸化処理を施すためのいわゆる酸化剤としては、様々なものがあるが、例えば酸素ガスを溶液に吹き込んだ場合には、その酸化還元電位は500mV未満程度までしか上昇させることができず、また過硫酸ナトリウムを溶液に添加した場合でも800mV未満程度であるため、酸化効果として不十分である。塩素ガスは、高い酸化力を有しているものの、硫酸ニッケル含有溶液中に塩化物イオンを残留させることになり、得られる結晶の品質が低下する。
本実施の形態に係る硫酸ニッケルの製造方法によれば、上述したように、硫酸ニッケル含有溶液に対してオゾンを添加して酸化処理を行うようにしていることにより、塩酸と比較して酸化力の弱い硫酸浴であっても、不純物としてのチオ硫酸塩を効果的に分解除去することができ、晶析に際して硫黄の混入を抑制することができる。また、溶液中に塩化物イオンを残留させないことから、結晶の品質低下を防ぐことができる。
硫酸ニッケル含有溶液にオゾンを添加して酸化するにあたっては、溶液のpHが上昇することがある。上述したように、その硫酸ニッケル含有溶液のpHが3.0を超えると、溶液中のチオ硫酸塩が安定化して分解され難くなるため、適宜硫酸を添加する等してpHを1.0〜3.0の範囲に維持する。
酸化工程における温度条件としては、特に限定されず、例えば温度が低くても時間をかければ効果を得ることができるが、60℃〜70℃程度とすることが好ましい。例えば、ニッケル硫化物を硫酸酸性溶液で加圧浸出して得られた溶液を硫酸ニッケルの晶析対象の硫酸ニッケル含有溶液とする場合、その加圧浸出で得られる浸出液の温度が65℃程度であることからも、60℃〜70℃程度の温度条件とすることが好ましい。なお、温度が低すぎると、酸化が完了するまでの時間が掛かりすぎ、一方で温度が高すぎると、水溶液からの水分蒸発量が多くなりすぎて安定した条件が得られにくい。
なお、チオ硫酸塩が混入して不良品となってしまった硫酸ニッケルの結晶(製品)についても、それを再溶解して上述した条件で酸化処理を施した後に再度晶析させることで、硫黄の混入のない硫酸ニッケルの結晶とすることができる。
[脱鉄工程]
上述のようにして酸化工程を経て得られた溶液から結晶を析出させることによって、硫酸ニッケルの結晶を得ることができるが、硫酸ニッケル溶液中に鉄が含まれている場合には、酸化工程にて酸化処理を施して得られた溶液に対して脱鉄処理を施すことが好ましい。特に、その硫酸ニッケル溶液として、ニッケル硫化物を硫酸酸性溶液により加圧浸出して得られた浸出液を用いる場合には、原料とするニッケル硫化物には鉄が多く含有されていることから、加圧浸出して得られた浸出液中にも多量に鉄イオンが存在する。
このような鉄が溶液中に存在すると、硫酸ニッケルの結晶を析出させる前の溶媒抽出処理に際してクラッド発生の原因となり、また逆抽出の効率が悪くなって多量の酸(強硫酸等)が必要となる。したがって、例えば、鉄を多量に含むニッケル硫化物を原料として用いた場合には特に、酸化工程を経て得られた溶液に対して脱鉄処理を施すことが好ましく、この脱鉄処理を施すことにより、後述する溶媒抽出の処理を効率的に行うことができ、溶媒抽出後の溶液から硫酸ニッケルの結晶をより効果的に析出させることができる。
脱鉄工程における脱鉄処理としては、特に限定されるものではなく、酸化工程における酸化処理後の溶液に酸化剤を添加しつつ、その溶液のpHを中和領域に維持する酸化中和処理を行って、鉄を沈殿物(鉄澱物)として固定除去する方法が挙げられる。
具体的には、例えば、酸化剤として圧縮空気等を溶液中に吹き込むことによって、その溶液中に含まれるFe2+をFe3+に酸化するとともに、中和剤(pH調整剤)としての消石灰や水酸化ナトリウム水溶液等を添加して中和反応を生じさせ、Fe(OH)の沈殿物(鉄澱物)を生成させる。
処理条件としては特に限定されないが、例えば、反応温度50℃〜60℃の下、圧縮空気を13Nm/Hr〜20Nm/Hrで吹き込みながら、pH5.0〜6.0になるように150g/L〜250g/Lの消石灰スラリー液等を添加する。
このような脱鉄処理により生成したFe(OH)の沈殿やその他の不純物成分の沈殿物は、その後のフィルタープレス等による固液分離処理によって分離されて残渣となる。沈殿物を分離して得られた処理後液(脱鉄後液)は、次の溶媒抽出工程における溶媒抽出処理に付されて、不純物が除去された高純度の硫酸ニッケル溶液(純液)となる。
[溶媒抽出工程]
溶媒抽出工程では、酸化工程を経て得られた溶液、または酸化工程を経た後に脱鉄工程における脱鉄処理を施して得られた溶液に対して溶媒抽出処理を施す。
溶媒抽出は、水相と有機相を接触させて各相中の成分を交換することで水相中に存在するある成分の濃度を高め、他の異なる成分の濃度を低くするものである。本実施の形態においては、水相として、酸化工程を経て得られた溶液、または酸化工程を経た後に脱鉄工程における脱鉄処理を施して得られた溶液を用いる。一方で、有機相としては、例えば、ホスホン酸やホスフィン酸等の有機溶媒、あるいは特許文献3〜特許文献5に示されるようなニッケルを含む有機溶媒を用いる。
このような溶媒抽出処理を施すことで、不純物金属元素を分離除去することができ、より一層に高純度の硫酸ニッケル溶液を得ることができる。
[晶析工程]
晶析工程では、硫酸ニッケル含有溶液から硫酸ニッケルの結晶を析出させる。硫酸ニッケル含有溶液としては、例えば上述したように溶媒抽出処理を施して得られた溶液を用いることができる。
晶析方法としては、特に限定されるものではなく、一般的な結晶化方法を用いて行うことができる。例えば、硫酸ニッケル溶液を晶析缶に収容し、その晶析缶内で晶析することにより結晶を得る方法が挙げられる。晶析缶は、所定圧力下で硫酸ニッケル溶液中の水分を蒸発させることにより結晶を析出させるものであり、例えばDP(ダブルプロペラ)型の晶析缶が用いられる。晶析缶では、内部の圧力が真空ポンプ等により約7.5kPaA程度に制御されており、ダブルプロペラで攪拌しながら晶析が進行する。なお、晶析缶内では、硫酸ニッケル溶液に硫酸ニッケルの結晶が混合したスラリーとなっている。
晶析缶から排出されたスラリーは、遠心分離機等により硫酸ニッケルの結晶と母液とに固液分離される。硫酸ニッケルの結晶は、乾燥機に供給されて乾燥処理が施され、水分を除去された後に振動篩機等に供給される。振動篩機では、製品として適正な粒度の硫酸ニッケルの結晶を選別して排出する。
本実施の形態に係る硫酸ニッケルの製造方法においては、上述したように、硫酸ニッケル含有溶液に対して特定の条件からなる酸化処理を施すようにしているため、溶液中に含まれるチオ硫酸塩を効果的に分解除去することができ、当該晶析工程において晶析される硫酸ニッケルの結晶への硫黄の混入を抑制することができる。
以下、本発明の実施例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
[実施例1]
原料としてニッケル硫化物を用い、このニッケル硫化物をオートクレーブ内で硫酸酸性溶液により加圧浸出した(加圧浸出工程)。この加圧浸出処理により生成した浸出液(硫酸ニッケル含有溶液)に含まれる硫酸ニッケルの濃度とチオ硫酸ニッケルの濃度は、以下の通りである。
<浸出液(硫酸ニッケル含有溶液)>
硫酸ニッケル濃度 : 100g/L
チオ硫酸ニッケル濃度 : 30mg/L
次に、得られた浸出液に対して酸化処理を施した(酸化工程)。この酸化処理では、浸出液を反応槽内に装入し、適宜pH調整剤を添加しながらその浸出液のpHを1.0〜3.0の範囲に維持しつつ、酸化還元電位(参照電極:銀−塩化銀電極)が1000mV以上となるように、オゾンを含んだ酸素ガスを溶液中に吹き込んで酸化処理を施した。オゾンは、酸素ガスを市販のオゾン発生装置(株式会社マルニサイエンス製,型番M2−O3)に通してオゾンを含有させたガスとしたものを用いた。オゾンを含有する酸素ガスの流量は200L/分とした。なお、酸化処理におけるその他の条件は、以下の通りである。
<酸化処理条件>
反応槽のサイズ :1.3L
装入する浸出液の量 :1.0L
反応温度 :65℃
pH調整剤 :硫酸
酸化処理時間 :60分
<pH、ORPの測定条件、方法>
pH測定 :pH計
(HIRAMA LABORATORIES社製,PH−CON−2)
電極 東亜DKK社製の複合電極(型番GST−5211C)
ORP測定 :ORP計
(HIRAMA LABORATORIES社製,ORP−CON−2)
電極 東亜DKK社製の金属電極(型番HA−105)
<チオ硫酸塩の分析>
チオ硫酸塩の分析には、過マンガン酸による酸化還元滴定法を用いた。具体的には、下記式2の滴定反応により、溶液の色が、紫から薄い桃色に変わることで判定した。
6H+5S 2−+2MnO
→ 2Mn2++5S+3HO+5SO 2− ・・(式2)
上述した酸化工程における酸化処理の結果、処理前の浸出液においては、チオ硫酸イオン濃度は28mg/Lで、ORPは309mVであったのに対して、酸化処理後の浸出液では、チオ硫酸イオン濃度は定量下限以下となり、ORPは1243mVであった。このように、チオ硫酸塩は溶液中から完全に除去された。
このようにして得られた酸化処理後液を用いて、公知の方法により晶析させて硫酸ニッケルの結晶を得た(晶析工程)。得られた硫酸ニッケルの結晶を水溶液に溶解させて濾過したものの、硫黄が発生する様子は全く観察されなかった。このことから、硫酸ニッケルの結晶への硫黄の混入を効果的に抑制することができたことが分かった。
[実施例2]
実施例2では、酸化処理の処理時間を10分としたこと以外は、実施例1と同様とした。なお、浸出液のpHは硫酸を添加して1.0〜3.0の範囲に維持した。
このような酸化処理の結果、処理前の浸出液においては、チオ硫酸イオン濃度は28mg/Lで、ORPは374mVであったのに対して、酸化処理後の浸出液では、チオ硫酸イオン濃度は定量下限以下となり、ORPは1234mVであった。このように、チオ硫酸塩は溶液中から完全に除去された。
また、その酸化処理後液を用いて、公知の晶析缶を使用した晶析方法により硫酸ニッケルの結晶を得た。得られた硫酸ニッケルの結晶を水溶液に溶解させて濾過したものの、硫黄が発生する様子は全く観察されなかった。このことから、硫酸ニッケルの結晶への硫黄の混入を効果的に抑制することができたことが分かった。
[比較例1]
比較例1では、オゾンを含まない酸素ガスを用い、流量300mL/分で浸出液(硫酸ニッケル含有溶液)に吹き込んだこと以外は、実施例1と同様とした。なお、浸出液のpHは硫酸を添加して1.0〜3.0の範囲に維持した。
このような酸化処理の結果、処理前の浸出液においては、チオ硫酸イオン濃度は28mg/Lで、ORPは334mVであったのに対して、酸化処理後の浸出液では、チオ硫酸イオン濃度は28mg/Lで、ORPは353mVであり、酸化処理前の溶液とほとんど変化はなく、チオ硫酸塩を全く除去することができなかった。
また、その酸化処理後液を用いて、実施例1と同様に晶析させて硫酸ニッケルの結晶を得た。得られた硫酸ニッケルの結晶を水溶液に溶解させて濾過したところ、硫黄が発生する様子を確認した。
[比較例2]
比較例2では、酸化剤として濃度100g/Lの過硫酸ソーダの溶液を用い、その酸化剤溶液を浸出液(硫酸ニッケル含有溶液)に添加して酸化処理を施した。なお、浸出液のpHは硫酸を添加して1.0〜3.0の範囲に維持した。
このような酸化処理の結果、処理前の浸出液においては、チオ硫酸イオン濃度は21mg/Lで、ORPは335mVであったのに対して、酸化処理後の浸出液では、チオ硫酸イオン濃度は14mg/Lで、ORPは761mVであり、チオ硫酸塩の一部は除去できたと考えられるものの、残留するチオ硫酸塩は多く、不十分な結果であった。
また、その酸化処理後液を用いて、実施例1と同様に晶析させて硫酸ニッケルの結晶を得た。得られた硫酸ニッケルの結晶を水溶液に溶解させて濾過したところ、硫黄が一部で観察された。
[比較例3]
比較例3では、オゾンを含有する酸素ガスを用い、流量200mL/分の流量で吹き込んで酸化処理を行った。なお、硫酸は添加せずに、浸出液のpHは4.5〜5.5の範囲で酸化処理を行った。これ以外の条件は、実施例1と同様とした。
このような酸化処理の結果、処理前の浸出液においては、チオ硫酸イオン濃度は28mg/Lで、ORPは275mVであったのに対して、酸化処理後の浸出液では、チオ硫酸イオン濃度は28mg/Lで、ORPは1038mVであり、酸化還元電位は十分に上昇したものの、チオ硫酸塩はほとんど除去されなかった。
また、その酸化処理後液を用いて、実施例1と同様に晶析させて硫酸ニッケルの結晶を得た。得られた硫酸ニッケルの結晶を水溶液に溶解させて濾過したところ、一部で硫黄の浮上が観察された。
下記表1に、上述した実施例及び比較例における酸化処理条件、並びに酸化処理前後のチオ硫酸塩の濃度の測定結果をまとめて示す。
Figure 0006299620

Claims (3)

  1. 硫酸ニッケルを含有する溶液(硫酸ニッケル含有溶液)から硫酸ニッケルを晶析させて硫酸ニッケルの結晶を得る硫酸ニッケルの製造方法であって、
    晶析前に、前記硫酸ニッケル含有溶液をpH1.0〜3.0に維持しつつ、銀−塩化銀電極を参照電極とする酸化還元電位が1000mV以上となるようにオゾンを添加して酸化する酸化工程を有する
    ことを特徴とする硫酸ニッケルの製造方法。
  2. 前記硫酸ニッケル含有溶液は、
    ニッケル硫化物を硫酸酸性溶液中にて加圧浸出して得られた浸出液である
    ことを特徴とする請求項1に記載の硫酸ニッケルの製造方法。
  3. 前記酸化工程を経て得られた溶液に含まれる鉄を固定除去する脱鉄工程をさらに有し、
    前記脱鉄工程を経て得られた溶液から硫酸ニッケルの結晶を晶析させる
    ことを特徴とする請求項1又は2に記載の硫酸ニッケルの製造方法。
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