JP6898586B2 - 硫化物の浸出方法 - Google Patents

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Description

本発明は、硫化物の浸出方法に関する。さらに詳しくは、所定の硫化物に含まれるニッケル等を硫酸酸性溶液に浸出すると同時に、硫黄が完全に酸化されるのを抑制する、硫化物の浸出方法に関する。
ニッケルやコバルトを精錬する方法の一部として、ニッケル酸化鉱石を硫酸溶液とともにオートクレーブなどの反応溶液に入れ、高温高圧下でニッケル酸化鉱石に含有するニッケルやコバルトを硫酸溶液中に浸出するHPAL(High Pressure Acid Leach)プロセスがある。このHPALプロセスで得られた浸出液は、ニッケルやコバルトを含有する硫酸酸性溶液である。この浸出液は、次にアルカリ等が添加されて中和澱物として不純物が沈殿分離された中和後液となり、次いでこの中和後液に硫化剤が添加されて混合硫化物(Mixed Sulfide:以下、本明細書において「MS」と称することがある)が析出する。そして、硫化後液とMSが固液分離されてMSが回収される。
上述の回収されたMSに、硫酸や塩酸などの酸を加えて浸出すると、ニッケルやコバルトの硫酸塩溶液や塩化物溶液(以下、本明細書において「浸出後液」と称することがある)を得ることができ、これらの溶液に中和剤を添加し、溶媒抽出等の手段を用いて不純物を分離した後、ニッケルやコバルトを含む酸性溶液を電解採取などの方法に供することで、ニッケルメタルやコバルトメタルが精製され、これらが高純度のメタルとして取引される。
上記の酸を加えて浸出する工程で、塩化物溶液が用いられると、その後の電解採取では、アノードから塩素ガスが発生するため、設備をこの塩素ガスに耐えうるものにする必要がある。しかし、硫酸塩溶液を用いた電解採取では、アノードから発生するのは酸素になるので、塩化物溶液を用いる場合と比較して設備を特殊にする必要がなく、これにより製造費用を抑えることができるとともに、製造が容易であるという効果を有する。
上記のニッケルやコバルトを精錬する方法の一部を構成している、MSを硫酸で浸出する方法として、例えば特許文献1に開示された方法がある。
特許文献1の方法は、数1に示すように、硫化物(ここではニッケル硫化物)を溶液中でスラリーとし、酸素を用いて硫酸塩(ここでは硫酸ニッケル)を得るものである。浸出時の反応温度を110〜165℃、反応容器内の酸素分圧を0.05〜2.0MPaの範囲とすることで、スラリー中の硫化物に含有された硫化物イオン(S2−)全量を硫酸イオン(SO 2−)にまで酸化させている。
(数1)
NiS + 2O → NiSO
しかしながら、上記の硫化物を酸素によって完全に酸化させる、所謂「完全酸化浸出法」を用いた場合、硫黄のバランスが取れなくなり、発生する硫酸の処理に要する費用が大きくなるという問題がある。
「硫黄のバランスが取れなくなる」と言う点を以下に具体的に説明する。上記の完全酸化浸出法で得た硫酸ニッケルを含有する酸性溶液を、上述のように電解液として用いて電解採取によってニッケルメタルを回収する場合は、数2に示したように、ニッケルがカソード上に析出した後に電解液内で硫酸が生成する。生成した硫酸をそのまま放置すると、ニッケルの電析に伴って電解液の硫酸濃度が許容限界以上に増加して最後には操業できなくなる。このため、電解液の一部を抜き出して消石灰などの中和剤を加えて硫酸を中和し電解液を処分する作業が必要となる。この結果、処理に用いる中和剤や発生する澱物を処理するための費用がかかる。
(数2)
NiSO + 2H + 2e → Ni +HSO
ここで、ニッケルやコバルトを精錬する一連の方法では、上述したように、ニッケル酸化鉱石やMSからニッケルを浸出する工程で、硫酸が用いられている。数2で生成した硫酸をこの浸出する工程で用いることも考えられる。しかし硫化物に含有された硫黄をすべて酸化して硫酸イオンにしてしまうと、生成した硫酸量は上記の浸出に必要となる量よりも多くなり、一部の硫酸については中和し処分する必要がある。またMSを析出させる際に用いる、硫化水素などの硫化剤は、単体の硫黄から製造するものであり、精製プロセスの下流で、硫酸を中和することで硫黄を処分しながら、プロセスの上流では新たな硫黄を加えるなど、プロセス自体が効率的でないという問題がある。
このため、上記の完全酸化浸出法によるニッケル溶液の製造は、生産量が多いニッケルメタルを得るプロセスに用いられるよりも、例えば2次電池の材料として用いられる硫酸ニッケル溶液や硫酸ニッケル結晶を得る比較的小規模なプロセスで用いられることが多く、ニッケルメタルを得るプロセスでは、利用の拡大に難点、特に費用低減が難しいという問題がある。
上記のような問題があることから、ニッケル酸化鉱石などから得たMSを原料として、ニッケルやコバルトのメタルを、費用を抑えて効率よく製造できるプロセスが望まれていた。
特公平7−84623号公報
本発明は上記事情に鑑み、ニッケルやコバルトを含有する硫化物を含む硫化物スラリーが供給された反応容器内で、硫黄が完全に酸化されるのを抑制することで、費用を抑えることができる、硫化物の浸出方法を提供することを目的とする。
第1発明の硫化物の浸出方法は、ニッケルおよびコバルトの少なくとも一方を含有する硫化物と、鉄イオンを含有する硫酸酸性溶液と、を混合した硫化物スラリーが供給された反応容器内で、該硫化物スラリーの温度を80℃以上115℃未満とし、前記反応容器内に酸素含有ガスを供給することで、前記反応容器内の酸素分圧を、0MPaを越え1MPa以下とする条件下で、浸出後液と硫黄とを得、前記硫化物が、ニッケル酸化鉱石を、硫酸を用いて浸出して得られた酸性溶液に、硫化剤を添加して得られたものであり、前記硫黄を、前記硫化剤の原料として繰り返すことを特徴とする。
発明の硫化物の浸出方法は、第1発明において、前記浸出後液から不純物を分離した電解始液から、ニッケルおよびコバルトの少なくとも一方を電析により回収した後の電解終液を、前記硫酸酸性溶液として繰り返すことを特徴とする。
第1発明によれば、反応容器内を所定の条件とする、硫化物の浸出方法により、硫化物からニッケル等を浸出する際に、硫黄を完全に酸化するのを抑制できる。これにより、硫酸の発生を抑えることができるので、硫酸の処理量を少なくでき、硫酸の処理にかかる費用を抑えることができる。また、この硫化物の浸出方法を採用することで、ニッケルメタル等の製造費用を抑えることができる。
また、硫化物が、ニッケル酸化鉱石を、硫酸を用いて浸出して得られた酸性溶液に硫化剤を添加して得られたものであることにより、成分の安定した、浸出後液と硫黄とを得ることができる。これにより、本願の硫化物の浸出方法の下流側へ安定した浸出後液を提供できるので、下流側のプロセスが安定する。
また、浸出後液と同時に得られた硫黄を、硫化剤の原料として繰り返すことにより、添加する硫化剤に追加する、新たな硫黄の量を減らすことができ、プロセスにかかる費用を抑制することができる。
発明によれば、電解終液を硫酸酸性溶液として繰り返すことにより、新たに追加する硫酸酸性溶液の量を減らすことができ、プロセスにかかる費用を抑制することができる。
本発明の実施態様に係る硫化物の浸出方法の説明図である。 酸素分圧を変化させたときの、Ni浸出率とS酸化率との関係を示すグラフである。 硫酸濃度を変化させたときの、Ni浸出率とS酸化率との関係を示すグラフである。 硫化物スラリーの温度を変化させたときのNi浸出率と時間との関係を示すグラフである。
本発明の硫化物の浸出方法について説明する。
本発明の硫化物の浸出方法は、ニッケルおよびコバルトの少なくとも一方を含有する硫化物と、鉄イオンを含有する硫酸酸性溶液と、を混合した硫化物スラリーが供給された反応容器内で、硫化物スラリーの温度を80℃以上115℃未満とし、反応容器内に酸素含有ガスを供給することで、反応容器内の酸素分圧を、0MPaを越え1MPa以下とする条件下で、浸出後液と硫黄とを得るものである。
ここで、ニッケルおよびコバルトの少なくとも一方を含有する硫化物が、ニッケル酸化鉱石を、硫酸を用いて浸出して得られた酸性溶液に、硫化剤を添加して得られたもの、いわゆるMSであることが望ましい。
また、浸出後液と同時に得られた硫黄を、前記硫化剤の原料として繰り返すことが望ましい。
加えて、浸出後液から不純物を分離した電解始液から、ニッケルおよびコバルトの少なくとも一方を電析により回収した後の電解終液、すなわち硫酸ニッケルや硫酸コバルトからニッケルやコバルトが分離され遊離硫酸として復生(あるいは副生ともいう)した硫酸を、硫酸酸性溶液として繰り返し、MSの浸出に利用することが好ましい。
本発明の硫化物の浸出方法の実施態様について、図1、および化学反応式を用いて説明する。なお、本発明の硫化物の浸出方法は、この実施の態様に限定されるものではない。
図1には、本発明の実施態様に係る硫化物の浸出方法の説明図を示す。図1に示すように、本実施態様では、反応容器として、オートクレーブ(Autoclave)を用いる。ただし、反応容器は特にこれに限定されるものではなく、硫化物スラリーを高温高圧下で処理できるものであれば特に問題ない。
本実施態様では、鉄イオンを含有する硫酸酸性溶液は、硫酸第二鉄であることが好ましい。本実施態様で、MSを硫酸(数3)および硫酸第二鉄溶液(数4)を用いてニッケルを浸出する場合の化学反応式を以下に示す。このとき、数3に示したように、発生した硫化水素は硫酸第二鉄の存在によって数5に示す反応で硫黄分(あるいは、硫化物イオン(S2−))が単体硫黄(S)として固定される。
なお、硫酸第二鉄は酸化剤として作用し、自身は還元されて硫酸第一鉄になるので、再度空気等で酸化することで硫酸第二鉄を再生し酸化剤として繰り返し使用できる。
(数3)
NiS + HSO → NiSO + H
(数4)
NiS + Fe(SO → NiSO + 2FeSO + S
(数5)
S + Fe(SO → 2FeSO + HSO +S
なお本明細書では、硫化物に含有されたニッケルがニッケルイオンとして酸性溶液中に溶解する割合を「Ni浸出率」と表現し、硫化物に含有された硫黄が硫酸イオンになる割合を「S酸化率」と表現する。ここで、「S酸化率」は、硫化物が酸化されて溶液中に溶出する割合と原則一致する。当然ながらニッケルの浸出率が高い方が、ニッケルの回収率が高くなるので好ましく、本発明のように硫黄をできるだけ溶出させたくない場合は、硫黄の酸化率が低い方が好ましい。
本実施態様では、反応容器内の酸素分圧を制御することで、MSと酸素が数1で示した完全酸化浸出法による直接浸出とならないように反応を抑制しながら、浸出にて消費(還元)された硫酸第一鉄の酸化(数6)を促進し硫酸第二鉄を再生する。このように本実施態様は、MSを単独原料とし、MSに含まれる硫化物イオンが硫酸イオンまで酸化することを抑制する、硫化物の浸出方法であり、この硫化物の浸出方法は、ニッケル等の湿式精錬法の一部を構成する。
(数6)
2FeSO + HSO + 1/2O → Fe(SO + H
なお、前述したようにニッケル酸化鉱石の多くはニッケルとともにコバルトを含有することが知られているが、コバルトはニッケルと同様な化学的挙動を取り、精製工程の後段で溶媒抽出等の手段を用いて分離する必要がある。そのため他の実施の態様として、本発明に係る硫化物の浸出方法は、コバルトの精製方法でも用いることができる。その場合、上記の化学反応式で、Niと表示されているものはCoに置き換えて解釈することができる。
本発明の実施の態様に係る、硫化物の浸出方法についてさらに詳細に説明する。
先ず、MSを硫酸塩溶液の中に添加してスラリー化し、硫化物スラリーを得る。図1に示すように、この硫酸塩溶液は硫酸第二鉄の単独の溶液か、あるいは硫酸第二鉄を含む電解終液(Electrolytic effluent、以下本明細書において、「電解貧液」と言う場合がある)を用いることができる。
次にこの硫化物スラリーに必要に応じて硫酸を添加し、図1に示すようにこのスラリーをオートクレーブなど高温高圧に耐えられる密閉容器内に移し、所定の温度と酸素分圧に維持して反応させる。
上記のスラリーでの硫酸や硫酸第二鉄の濃度は、酸性であればよく、特に限定されるものではないが、MSに含まれるニッケルやコバルトなど浸出対象となる有価金属のmol量に対して硫酸量で1〜2倍当量がよく、硫酸第二鉄量の量は同じく有価金属の0.25〜0.5倍当量とすることが好ましい。なお、本明細書において記号「〜」は、「以上、以下」を意味する。
硫酸濃度が過剰に高いと廃液処理時の中和剤の費用が増える。同様に硫酸第二鉄濃度が過剰に高いと、電解前に浄液して鉄を分離する費用がそれぞれ増加するので好ましくない。
密閉容器内でのMSの浸出は、単体硫黄(S)が融解しない115℃未満の温度で行うことが好ましく、80℃以上105℃以下の範囲とすることがより好ましい。反応温度が80℃未満だと浸出速度が低下してしまい、115℃以上であると完全酸化浸出となってしまうからである。
一方、浸出時の酸素分圧は0.15〜1.0MPaの範囲とすることが好ましい。酸素分圧が1.0MPaを超えても浸出反応が早く進むような優位性はなく、むしろMSを酸素が直接浸出する上記の数1に示した完全酸化浸出が促進されるので、硫黄の酸化率が上昇するなど好ましくない。
一方で酸素分圧が0MPaでは酸素が全く存在せず反応が進まないため酸素分圧は0MPaを超える量が必要であるが、0.15MPa以上では反応が効率よく進むので好ましい。
以上に示した浸出条件で得た浸出後液から、ニッケルやコバルトなどの有価成分とともに浸出された鉄等の不純物を、中和や溶媒抽出等の公知の手段によって分離する浄液工程(Impurity removal)に付し、得た浄液後の溶液を電解始液として電解槽に入れ、例えば不溶性アノードとチタン等を用いたカソードとを装入して電解採取(Electrowinning)し、カソード上にニッケルメタルを電析させ、引き揚げて剥ぎ取ることで図1に示すようにニッケルメタル(図1のE−Ni)を回収できる。
また、図1に示すように、カソード表面でニッケルが析出することで生成した電解液中の硫酸、すなわち電解終液を電解槽に繰り返し、MSの浸出に用いることが望ましい。この際電解終液中の硫酸濃度を上昇させ、硫酸濃度が電解での許容上限の濃度にまで上昇した時点で電解槽から払い出すことが望ましい。
以下、本発明の具体的な実施例について説明する。なお、本発明の範囲は、下記のいずれかの実施例に限定されるものではない。
<MSの調整>
ニッケル酸化鉱石を公知のHPAL処理に付して硫酸酸性の浸出液を得、この浸出液に炭酸カルシウムを添加して中和し、不純物を中和澱物として沈殿させて中和後液から分離し、次いで中和後液に硫化水素ガスを吹き込んで、ニッケルやコバルトを含むMSとして回収した。
次にこのMSを、遊星ボールミルを用いて粉砕し、MS粉砕品を得た。表1には、MS粉砕品の品位と粒度分布を示す。各成分の品位はICP発光分光分析法を用いて分析した。
Figure 0006898586
<実施例1>
表1に示す組成のMS粉砕品50gを用い、表2に示す硫酸第二鉄濃度と酸素分圧の水準で反応性について密閉容器を用いて反応させた。密閉容器には容量3.4Lのハステロイ製オートクレーブ(日東高圧(株)製)を用い、酸素分圧の制御は、BROOKS社製のマスフローコントローラー(形式名5850i SIRIES)を用いた。なお、上記コントローラーは開度が100%の時に流量が0.5L/minとなるので、開度を1%程度に調整し、酸素分圧を0.15MPaに調整して維持した。
Figure 0006898586
MSをスラリー化する溶液の成分濃度は、ニッケル電解採取の電解終液(電解貧液)での硫酸ニッケルの濃度と同じ濃度の0.85mol/L(ニッケル濃度換算で50g/L)とした。硫酸添加量は、MS中に含まれるニッケルのモル当量とほぼ同量となる0.49mol/L(硫酸濃度換算で48.4g/L)とした。
硫酸第二鉄の添加量は、酸化と還元を繰り返すことを考えて、MS中に含まれるニッケルのモル当量の約半量の0.26mol/L(三価の鉄イオン濃度に換算して30g/L)、および25%となる0.13mol/L(三価の鉄イオン濃度に換算して15g/L)、さらに電解前の浄液工程での負荷低減を考慮した0.04mol/L(三価の鉄イオン濃度に換算して5g/L)の3水準とした。
これらを邪魔板付きのチタン製の上面が開口した容器に入れて硫化物スラリーとし、上述のオートクレーブ内に装入した。次にオートクレーブを密栓し、オートクレーブ内の硫化物スラリーの温度を105℃まで昇温し、次いで、酸素ガスをオートクレーブ外から送り込んでオートクレーブ内の気相部(溶液が入っていない隙間部分)の酸素分圧を制御しながら3時間維持しながら浸出を継続した。内部の圧力を測定しながら反応により酸素分圧が低下すれば所定の分圧になるように酸素含有ガスを供給した。
反応時間経過後、70℃以下まで冷却してからオートクレーブの蓋を開け、チタン製の容器を取り出した。次いでチタン製容器内のスラリーをヌッチェとNo.5Cの定量ろ紙を用いて固液分離した。得られた浸出残渣は、純水を用いてレパルプ洗浄して付着液を取り除き、その後、真空乾燥して重量を確認した。その後分取して浸出残渣の成分品位を、ICP発光分光分析法を用いて分析した。
表2に示した各条件でのNi浸出率とS酸化率を表2ならびに図2に示した。なお、Ni浸出率とS酸化率の具体的な計算方法は、数7、数8に示すとおりである。
Figure 0006898586
Figure 0006898586
本実施例の結果を示した表2および図2より、以下のことがわかる。
1)硫化物スラリーの温度を105℃とした場合、酸素分圧を0MPaを越え1MPa以下とすることにより、ニッケルを浸出しながらS酸化率を下げて硫黄を得ることができる。
2)スラリー中の硫酸第二鉄の濃度については、同じ酸素分圧(例えばグラフの三角印である酸素分圧0.5MPaや、グラフの丸印である酸素分圧1.0MPa)で比較すると、0.04mol/Lから0.13mol/Lへ硫酸第二鉄の濃度が高くなるとS酸化率を下げることができる。すなわち、MSに含まれる硫化物イオン(S2−)が硫酸イオン(SO 2−)に酸化するのを抑制できる。
なお、硫酸第二鉄の濃度が0.13mol/Lと0.26mol/Lの場合では、S酸化率の差は大きくなかった。ただし、硫酸第二鉄の添加量が濃度0.04mol/Lまで低下すると、Ni浸出率は同じであるのに対し、S酸化率は増加する。これは、反応容器内でMSが浸出されるのに伴って硫酸第二鉄の硫酸第一鉄への還元反応(数6)よりもMSが直接浸出される(数1)のに酸素が優先的に消費されるためと考えられる。このため、硫酸第二鉄の添加量は、MS中のニッケルのモル当量に対して0.25当量(本実施例であれば、0.13mol/L)以上を確保することが望ましい。
3)反応容器内の酸素分圧については、同じ硫酸第二鉄濃度とした場合、酸素分圧の増加にしたがって、ニッケル浸出率と硫黄酸化率とが直線的に増加する。すなわち、酸素分圧が増加すると、S酸化率が上がり、MSの硫黄が酸素によって直接浸出される傾向が増す。これより、酸素分圧は低い方が好ましいと考えられるものの、十分なニッケル浸出率を得ることが必要なことから、実用的には0.15MPaを下限に、好ましくは1.0MPaに近い程度の酸素分圧が必要となる。
<実施例2>
実施例1と同様のMS粉砕品50gを用いて、このMS粉砕品を含有する溶液に加える硫酸添加量の影響を確認した。このときの酸素分圧は表3に示すとおりである。硫酸は反応容器の耐久性を考慮して0.92mol/L(硫酸濃度に換算して90g/L)を上限とし、実施例1で加えていた0.49mol/Lの場合と比較した。他の処理条件や処理方法は実施例1で挙げたものと同じである。この時のNi浸出率とS酸化率を表3、および図3に示す。
Figure 0006898586
本実施例の結果を示した表3および図3より、以下のことがわかる。
1)実施例1と同様、硫化物スラリーの温度を105℃とし、酸素分圧を0MPaを越え1MPa以下とすることにより、S酸化率を下げて硫黄を得ることができる。
2)表3および図3より、硫酸添加量を増加させる、すなわち硫酸濃度を高くすると、Ni浸出率はほぼ同じになるものの、S酸化率を低減できることがわかる。これは、硫化物イオン(S2−)が硫酸イオン(SO 2−)になることを抑制できたことを意味する。
この硫酸量の増加による硫黄酸化の抑制は、硫酸量の増加により、数3で示したMSの硫酸による浸出が促進され、硫酸第二鉄による硫黄の固定(数5)によって還元された硫酸第一鉄が多く得られ、この多く得られた硫酸第一鉄が酸化されて硫酸第二鉄を再生する反応(数6)に酸素が多く消費されたためと考えられる。
<実施例3>
実施例3は、MSの硫酸による浸出性が、硫化物スラリーの温度によって受ける影響を調査したものである。
邪魔板付きの耐熱ガラス製セパラブルフラスコ4セットを用意し、それぞれ硫酸濃度が20g/Lの硫酸溶液1リットル(硫酸量は0.204mol)を供給した。それぞれを回転速度800rpmで撹拌しながらオイルバスの中に入れ、オイルバスの温度を50℃、70℃、80℃、90℃とした。
その後、上記表1に示す組成のMSを、1セットに10g(ニッケル量は0.099mol)ずつ投入して2時間維持し、反応を行わせた。MS投入後、5分、10分、20分、30分、60分、90分、120分経過した時点でそれぞれ浸出後液を30mLずつサンプリングした。
サンプリングを行った浸出後液は、No.5Cの定量ろ紙を用いてろ過し、得たろ液のニッケル濃度を、ICP発光分析法を用いで分析し、ニッケル溶出量を確認した。それぞれのNi浸出率を、表4および図4に示す。
Figure 0006898586
表4および図4より、浸出温度が50℃と70℃では、時間が経過しても浸出率が大きく変化しないが、80℃以上の温度では浸出率が向上する傾向を示した。これは、MSの硫酸に対する浸出速度は80℃未満では十分に得られないことを意味する。このため80℃を超えた温度で浸出することが好ましい。
<実施例4>
実施例1と同様のMS粉砕品50gを用いて、表5に示す80℃から150℃の硫化物スラリーの温度で、Ni浸出率とS酸化率を測定した。このときの酸素分圧は0.15MPa、浸出の時間は3時間、硫酸第二鉄の濃度は30g/Lであり、他の処理条件や処理方法は実施例1で挙げたものと同じである。
Figure 0006898586
表5より、80〜105℃の温度範囲では、Ni浸出率とS酸化率はほとんど差が見られない。これに対し、120℃ではNi浸出率が低下したり、150℃ではNi浸出率が増加しないにもかかわらずS酸化率が増加したりする現象が確認された。
これは、MSを硫酸および硫酸第二鉄で浸出する過程で生成した単体硫黄が、融点を超える浸出温度では融解し、MS表面が硫黄で覆われコーティングされた状態となり、硫酸や硫酸第二鉄によるMSの浸出が阻害され、ニッケルの浸出が硫黄の酸化を伴う完全酸化浸出(数1)で進むためと考えられる。
以上、上述の実施例1から4の結果から、本発明の硫化物の浸出方法の条件範囲でMSを浸出することで硫黄の酸化を抑制しながらニッケルを浸出することができる。これにより、ニッケルを含有する浸出後液を電解採取することでニッケルメタルを得ることができる。また、ニッケルを電析により回収した後の電解終液をMS浸出に繰り返したり、酸化されずに回収した単体硫黄を硫化剤の原料に繰り返して利用したりすることで、本発明の硫化物の浸出方法が、硫化剤等の費用を削減した経済的なものとなり、これを利用して、費用を抑えながらニッケル製錬プロセスを行うことができることを確認することができた。

Claims (2)

  1. ニッケルおよびコバルトの少なくとも一方を含有する硫化物と、鉄イオンを含有する硫酸酸性溶液と、を混合した硫化物スラリーが供給された反応容器内で、
    該硫化物スラリーの温度を80℃ 以上115℃ 未満とし、
    前記反応容器内に酸素含有ガスを供給することで、前記反応容器内の酸素分圧を、0MPaを越え1MPa以下とする条件下で、
    浸出後液と硫黄とを得
    前記硫化物が、
    ニッケル酸化鉱石を、硫酸を用いて浸出して得られた酸性溶液に、
    硫化剤を添加して得られたものであり、
    前記硫黄を、前記硫化剤の原料として繰り返す、
    ことを特徴とする硫化物の浸出方法。
  2. 前記浸出後液から不純物を分離した電解始液から、ニッケルおよびコバルトの少なくとも一方を電析により回収した後の電解終液を、前記硫酸酸性溶液として繰り返す、
    ことを特徴とする請求項に記載の硫化物の浸出方法。
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