JP7380118B2 - 硫酸ニッケルの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、硫酸ニッケルの製造方法に関し、特にORP測定によるチオ硫酸濃度管理を含んだ硫酸ニッケルの製造方法に関する。
硫酸ニッケルは、ニッケルめっきのめっき液原料や、電池材料用の水酸化ニッケル粉末の原料等の様々な用途に使われている。硫酸ニッケルの工業的な製造方法としては、例えば原料のニッケル酸化鉱石に対して高圧酸浸出処理を含む一連の湿式処理からなるHPAL(High Pressure Acid Leaching)プロセスで処理することによってニッケル・コバルト混合硫化物を作製し、これを中間原料として更に湿式処理する方法が従前から用いられている。
すなわち、先ずHPALプロセスにおいて、原料としてのニッケル酸化鉱石に硫酸を加えて高温高圧下で酸浸出処理し、得られたニッケル及びコバルトを含む浸出液を中和処理することで鉄などの不純物を除去する。この不純物が除去された浸出液に硫化水素ガス等の硫化剤を添加することで硫化反応を生じさせ、これによりミックスサルファイド(MS)とも称するニッケル・コバルト混合硫化物を生成させる。
次に特許文献1に示されているように、上記ニッケル・コバルト混合硫化物に水を加えて調製したスラリーを高温高圧下で浸出処理する。これにより、下記式1及び式2で表される硫黄の酸化反応を生じさせて不純物を含む粗硫酸ニッケル水溶液を生成させる。この粗硫酸ニッケル水溶液から不純物を除去することで高純度硫酸ニッケル水溶液を得た後、晶析により硫酸ニッケル結晶を生成させる。
[式1]
NiS+2O→Ni2++SO 2-
[式2]
CoS+2O→Co2++SO 2-
特開2017-149609号公報
しかしながら、上記の高温高圧下におけるニッケル・コバルト混合硫化物の浸出処理の際、なんらかの理由により上記式1及び式2の硫黄の酸化反応が十分に進行しなくなると、下記式3に示すように硫酸イオン(SO 2-)だけでなくチオ硫酸イオン(S 2-)が生成する場合があった。
[式3]
NiS+O→Ni2++SO 2-+S 2-
上記の浸出処理時に生成したチオ硫酸イオンは、一般的な不純物除去法では除去することが困難であるため、最終製品である硫酸ニッケル結晶に混入する可能性がある。このようなチオ硫酸が混入した硫酸ニッケル結晶を原料にしてニッケルめっきを行うと、めっき表面に品質上の問題が生じることがあった。本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、簡便且つ迅速にチオ硫酸濃度を分析することで、硫酸ニッケル結晶へのチオ硫酸の混入を抑制可能な硫酸ニッケルの製造方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成するため、本発明に係る硫酸ニッケルの製造方法は、ニッケル硫化物スラリーを高圧下で硫酸浸出処理及び酸化処理して不純物を含む粗硫酸ニッケル水溶液からなる浸出液を得る浸出工程と、酸化中和法又は溶媒抽出法による不純物除去に加えて、空気の吹き込み、酸素の吹き込み、又は過酸化水素水の添加によりチオ硫酸を酸化分解する追加の酸化処理を行なうことで該浸出液から該不純物を除去して高純度硫酸ニッケル水溶液を得る不純物除去工程と、該高純度硫酸ニッケル水溶液から硫酸ニッケル結晶を晶析させる結晶工程とからなる硫酸ニッケルの製造方法であって、チオ硫酸濃度が異なる以外は前記浸出液と同等の濃度を有する複数の硫酸ニッケル水溶液に対してORP測定を行うことによりチオ硫酸濃度とORP値との関係を予め求めておき、前記浸出液に対してORP測定を行うことで得たORP値を該予め求めた関係に照合することで該浸出液中のチオ硫酸濃度を求め、前記求めたチオ硫酸濃度に基づいて前記不純物除去工程における前記追加の酸化処理の処理条件を調整することを特徴としている。
本発明によれば、簡便且つ迅速にチオ硫酸濃度を求めることができるので、チオ硫酸をほとんど含まない硫酸ニッケルを製造することができる。
本発明の実施形態に係る硫酸ニッケルの製造方法のブロックフロー図である。 本発明の実施例において作成した硫酸ニッケル水溶液のORP値とチオ硫酸濃度との関係を表す検量線である。
1.硫酸ニッケルの製造方法
以下、本発明の実施形態に係る硫酸ニッケルの製造方法について図面を参照しながら説明する。この本発明の実施形態に係る硫酸ニッケルの製造方法は、例えばHPALプロセスで作製した中間原料としてのニッケル硫化物から硫酸ニッケル結晶を作製する方法であり、図1に示すように、該ニッケル硫化物に水を加えることでニッケル硫化物スラリーの調製を行うスラリー調製工程S1と、該ニッケル硫化物スラリーに対して加圧下で浸出処理及び酸化処理を行って浸出液を得る浸出工程S2と、該浸出液に含まれる不純物を除去して高純度硫酸ニッケル水溶液を得る不純物除去工程S3と、該高純度硫酸ニッケル水溶液から硫酸ニッケル結晶を晶析させる晶析工程S4とからなる。以下、各工程について具体的に説明する。
(1)スラリー調製工程S1
硫酸ニッケルの製造方法の原料には、ニッケル・コバルト混合硫化物に代表されるニッケル硫化物が用いられる。このニッケル硫化物は、前述したようにニッケル酸化鉱石を高圧酸浸出して得た浸出液を中和処理及び硫化処理することで作製され、これにより例えばニッケル品位が50~60質量%程度、コバルト品位が4~6質量%程度、硫黄品位が30~34質量%程度のニッケル・コバルト混合硫化物が得られる。
スラリー調製工程S1では、上記のニッケル硫化物を必要に応じて粉砕及び分級し、水を添加してスラリー化することでニッケル硫化物スラリーを調製する。このニッケル硫化物スラリーの固形分濃度には特に限定はないが、100~300g/Lが好ましく、200g/L程度がより好ましい。この固形分濃度が300g/Lを超えると、スラリー粘度が高くなりすぎ、ポンプによる送液不良が発生するおそれがある。逆にこの固形分濃度が100g/L未満の場合は、固形分濃度が薄すぎるため、生産性が低下する。
(2)浸出工程S2
浸出工程S2では、上記のスラリー調製工程S1で調製したニッケル硫化物スラリーを高温高圧下で硫酸浸出処理することで浸出液を生成する。具体的には、先ず、上記ニッケル硫化物スラリーを硫酸と共にオートクレーブとも称する圧力容器に供給する。このオートクレーブには更に酸化剤として空気などの酸素含有ガスを供給することで酸化反応を伴う浸出処理を行い、浸出液を生成させる。その際、該ニッケル硫化物スラリーの組成や粒度、滞留時間に影響する該ニッケル硫化物スラリーの供給流量、該ニッケル硫化物スラリーに対する硫酸及び酸化剤の供給割合、オートクレーブ内の温度及び圧力などの各種浸出条件を適宜調整する。
例えば、オートクレーブに高圧蒸気を吹き込むことで、オートクレーブ内の温度を150~180℃に、圧力を1~2MPaGに調整するのが好ましい。本発明の実施形態の硫酸ニッケルの製造方法においては、このオートクレーブにおいて生成された浸出液に対して、ORP測定により該浸出液のチオ硫酸濃度を間接的に求め、その結果に基づいて後工程の不純物除去工程S3の処理条件を調整する。このORP測定によるチオ硫酸濃度の定量方法については後で詳細に説明する。
(3)不純物除去工程S3
上記浸出工程S2で生成される硫酸イオン濃度160~230g/L程度の硫酸ニッケル水溶液からなる浸出液は、例えばニッケル濃度100~120g/L程度、コバルト濃度10g/L程度の組成を有している。この浸出液は上記のニッケルやコバルト等の有価金属のほか、鉄に代表される不純物を含んでいるため、粗硫酸ニッケル水溶液とも称される。この浸出液中の不純物を除去するため、不純物除去工程S3では、酸化中和法により不純物を沈殿除去したり、溶媒抽出法により不純物を除去したりすることが行われる。これにより、ある程度純度の高い硫酸ニッケル水溶液が得られるものの、上記の酸化中和法や溶媒抽出法では、チオ硫酸イオンはほとんど除去されない。
そこで、上記浸出工程S2で生成される浸出液に対してORP測定を行うことにより該浸出液のチオ硫酸濃度を間接的に求める。その結果、該浸出液にチオ硫酸が含まれる場合は、追加の酸化処理を行うことでこのチオ硫酸の酸化分解を行う。これにより、製品となる硫酸ニッケル結晶へのチオ硫酸の混入を抑えることができる。上記の追加の酸化処理としては、硫酸ニッケル水溶液からなる浸出液に対して、空気の吹き込み(エアレーションとも称する)、酸素の吹き込み、過酸化水素水の添加等による該浸出液中のチオ硫酸の酸化分解法を挙げることができる。
この追加の酸化処理後の浸出液に対して、再度ORP測定を行うことにより処理後チオ硫酸濃度を求め、この求めた処理後チオ硫酸濃度に基づいて上記の空気や酸素の吹き込み、過酸化水素水の添加等による酸化剤の添加量をフィードバックにより調整してもよい。これにより、後述する検量線の作成時に調製した模擬液の組成が実際にサンプリングした浸出液の組成と異なっている等の検量線の適用上の誤差が生じている場合であっても、効果的にチオ硫酸濃度を低減することが可能になる。その結果、上記の酸化剤の添加量に過不足をほとんど生じさせることなく極めて効率的に酸化処理を行ってチオ硫酸イオンをほとんど含まない高純度硫酸ニッケル水溶液を得ることが可能となる。
(4)晶析工程S4
晶析工程S4では、上記の不純物除去工程S3で不純物を除去することによって得た高純度硫酸ニッケル水溶液を晶析装置に装入し、該高純度硫酸ニッケル水溶液を濃縮することで硫酸ニッケル結晶を晶析させる。この晶析工程S4で処理される高純度硫酸ニッケル水溶液は上記のようにチオ硫酸イオンをほとんど含んでいないので、該チオ硫酸イオンが硫酸ニッケル水溶液中に残存することで生じる結晶中のチオ硫酸塩(チオ硫酸ニッケル(NiS)の形態の不純物)に起因する品質上の問題を防ぐことができる。
上記のように、本発明の実施形態の硫酸ニッケルの製造方法は、浸出工程S2で生成される浸出液に対してORP測定を行うことで、該浸出液に含まれるチオ硫酸の濃度を迅速且つ簡便に求めることができるので、その結果を、後工程の不純物除去工程S3における酸化剤の添加によるチオ硫酸の酸化分解処理に迅速に反映させることができる。よって、該酸化剤の添加量に過不足をほとんど生じさせることなくチオ硫酸の濃度管理を行うことができ、高品質の硫酸ニッケル結晶を極めて効率的に作製することが可能になる。次に、上記のORP測定によるチオ硫酸濃度の定量化について詳細に説明する。
2.ORP測定によるチオ硫酸濃度の定量化
従来、ニッケル硫化物を浸出処理することで得られる硫酸ニッケル水溶液に含まれるチオ硫酸の濃度を定量分析する場合は、高木誠司著の「定性分析化学」(南江堂)の「第3章、チオ硫酸」に記載されているような、ヨウ素-ヨウ化物-デンプン試薬を脱色する反応を用いた滴定法が用いられてきた。しかし、この滴定法で正確な濃度分析を行うには熟練を要するうえ、分析結果が得られるまでに1時間程度かかるため、分析結果を硫酸ニッケルの製造方法にタイミングよく反映させにくかった。すなわち、浸出液中のチオ硫酸濃度が高いことが判明しても、当該チオ硫酸濃度の高い浸出液は、そのことが判明するまでの間に既に不純物除去工程S3を経て晶析工程S4において晶析処理が完了しているのが一般的であり、結果的に硫酸ニッケル結晶中にチオ硫酸塩が混入してしまう問題が生ずることがあった。
また、浸出工程S2で生成されるチオ硫酸の量を過去の運転データ等に基づいてある程度想定して、例えばこの想定した量のチオ硫酸を除去するために必要な量の酸化剤を浸出工程S2の後工程において添加して酸化処理を行うことが考えられるが、この場合は実際に生成したチオ硫酸の量が想定した量よりも多いと酸化剤の量が不足することになるので硫酸ニッケル結晶製品にチオ硫酸が混入してしまい、逆に実際に生成したチオ硫酸の量が想定した量より少ないと酸化剤が過剰に添加されることになるので不経済となる。従って、実際に生成したチオ硫酸に対して過不足のない酸化処理を行うためには、チオ硫酸濃度の迅速な定量分析が必要となる。
かかる実情に鑑み、本発明者らは、ニッケル硫化物の硫酸浸出処理により生成される浸出液中のチオ硫酸濃度の迅速な測定方法について鋭意検討を行ったところ、電気化学的分析法であるORP測定によって該浸出液中のチオ硫酸濃度を迅速且つ簡便に測定可能であることを見出した。なお、ORP測定とは、溶液の酸化性や還元性を示す指標である酸化-還元電位を測定する電気化学的分析法であり、測定対象の溶液に白金電極及び比較電極からなる1対の電極を浸漬させ、これら両電極に接続した電位差計に電位差として表示されるORP値を読み取ることで、簡易且つ迅速に定性分析及び定量分析を行うことができる。
具体的に説明すると、本発明の硫酸ニッケルの製造方法の実施形態においては、チオ硫酸濃度が異なる複数の硫酸ニッケル水溶液を調製し、これら濃度既知のチオ硫酸を含んだ複数の硫酸ニッケル水溶液の各々に対してORP測定を行い、得られた複数のORP値と、これら複数のORP値にそれぞれ対応する複数の硫酸ニッケル水溶液のチオ硫酸濃度との相関関係を予めデータベース化しておく。このデータベース化の具体例としては、例えばチオ硫酸濃度を横軸、ORP値を縦軸とするグラフ上にプロットすることで得られる検量線の作成を挙げることができる。そして、測定対象の浸出液に対して同様の条件でORP測定を行うことで得たORP値を、上記の検量線等のデータベース化したチオ硫酸濃度とORP値との相関関係に照合することで、該浸出液中のチオ硫酸濃度を求めることができる。
上記の浸出液のORP測定によるチオ硫酸濃度の定量方法について、該ORP測定用のORP計の比較電極が銀-塩化銀電極である場合を例に挙げて詳細に説明する。先ず、一般的なニッケル・コバルト混合硫化物の硫酸浸出処理により得られる浸出液とほぼ同等のNi濃度120質量%、Co濃度10質量%、及び硫酸イオン濃度210質量%の硫酸ニッケル水溶液を調製し、これを例えば5つに小分けする。そして、これら小分けした5つのうち、1つにはチオ硫酸を添加せずにブランクの模擬液とし、残る4つにはチオ硫酸濃度が例えば1mg/Lから1000mg/Lの範囲内で10倍ごとに濃度が異なるようにチオ硫酸を添加して、チオ硫酸の濃度既知の4種類の模擬液とする。
上記にて調製した5種類の模擬液を、5個のビーカーにそれぞれ10mLずつ入れて液温度25℃に調整した後、各々ORP計の両電極の先端部を浸漬させてORP測定を行う。これにより、0mg/L以上1000mg/L以下の範囲内でチオ硫酸濃度が異なる5種類の硫酸ニッケル水溶液にそれぞれ対応する5つのORP値が得られる。これらの相関関係をデータベース化するため、例えば図2に示すように、対数目盛で表示される横軸に硫酸ニッケル水溶液の過酸化水素濃度をとり、リニア目盛で表示される縦軸にORP値をとった片対数グラフ上に、上記のチオ硫酸濃度とORP値とをプロットすることで検量線を作成する。なお、この検量線の作成に際して、チオ硫酸濃度1mg/Lから1000mg/Lの模擬液のORP値からブランクの模擬液のORP値を差し引いた値を採用してもよい。
次に、測定対象の浸出液に対して上記と同様の条件でORP測定してORP値を測定する。この浸出液のORP測定は、例えば前述したHPALプロセスで作製したニッケル・コバルト混合硫化物のスラリーを加圧下のオートクレーブ内で硫酸浸出処理することで生成した浸出液を定期的に採取してORP計でORP測定を行ってもよいし、オートクレーブ等の機器にORP計を取り付けて連続的にORP測定を行ってもよい。得られたORP値を、上記にて作成した検量線に照合することで、測定対象となる浸出液に含まれるチオ硫酸の濃度を求めることができる。
上記のORP測定においては、浸出液の採取からチオ硫酸濃度を求めるまでにかかる時間は5分足らずであるので、前述した浸出工程S2の後工程の不純物除去工程S3において、チオ硫酸以外の不純物の除去処理に要する時間に比べて短時間で済ませることができる。よって、このチオ硫酸以外の不純物の除去処理の更に後工程において行われる追加の酸化処理において、上記のORP測定の結果を反映させることができ、該追加の酸化処理において添加する酸化剤に過不足を生じさせることなく効率よくチオ硫酸を酸化分解することができる。
[実施例1]
図1に示すようなブロックフロー図に沿ってニッケル硫化物としてのニッケル・コバルト混合硫化物から硫酸ニッケル結晶を作製した後、無電解めっきによりニッケルめっき膜を作製してその品質を目視により評価した。具体的には、先ずスラリー調製工程S1において、公知のHPALプロセスにより製造したNiを55質量%、Coを5.3質量%含むニッケル・コバルト混合硫化物に対して湿式粉砕を行った後、目開き0.2mmの篩で篩別し、0.2mmオーバーの粗大粒子を除去した。得られた0.2mmアンダーの粒子に水を添加して原料スラリーを調製した。
次に、浸出工程S2において、上記原料スラリーをオートクレーブに装入し、温度165℃、圧力1.8MPaGに調整された条件下で、硫酸及び空気を供給して硫酸浸出処理を行った。このオートクレーブから抜き出した浸出液を採取し、比較電極が銀-塩化銀電極からなるORP計を用いてORP測定を行ったところ、ORP値は0.484Vであった。
この採取した浸出液に対してICP-OESで分析したところ、Ni濃度122質量%、Co濃度10質量%、硫酸イオン濃度220質量%であり、前述した図2の検量線の作製に際して調製した模擬液のNi濃度、Co濃度、及び硫酸イオン濃度とほぼ同じであったので、上記のORP値を図2の検量線と照合した。これにより、上記の浸出液のチオ硫酸濃度が20mg/Lであることを求めることができた。なお、上記の浸出液の採取からそのチオ硫酸濃度を求めるまでに要した時間は4分であった。
上記方法で求めたチオ硫酸濃度を有する浸出液に対して、該浸出液内のチオ硫酸を分解するため、不純物除去工程S3において、直ちに浸出液1000cc当たり標準状態で40cc/minの流量の空気を60分間吹き込むエアレーションを行った。このエアレーションで酸化処理した浸出液に対して、再度上記と同じ条件でORP測定を行ったところ、ORP値は図2のチオ硫酸濃度の下限値1mg/Lに対応するORP値である0.488Vを大きく超えていた。すなわち、チオ硫酸が分析限界以下まで酸化分解されていることが分かった。この不純物除去工程S3でのチオ硫酸の酸化分解により得た高純度硫酸ニッケル水溶液に対して、晶析工程S4において濃縮することで硫酸ニッケル結晶を生成させた。
上記晶析工程S4で生成した硫酸ニッケル結晶を溶解し、得られた硫酸ニッケル水溶液にジ亜リン酸ナトリウムを添加して、硫酸ニッケル25g/L、ジ亜リン酸ナトリウム20g/Lとなるよう組成を調整しためっき液を作製した。このめっき液を容量1Lのビーカーに入れ、温度90±3℃、めっき時間10分の条件で5cm×5cmのステンレス製薄板上にニッケルめっき皮膜を形成させた。このめっき皮膜が形成された薄板をビーカーから取り出して水洗し、目視によりめっき皮膜の外観を評価したところ、平滑なめっき皮膜が形成されていた。
(実施例2)
実施例1とは異なる日時に採取したニッケル・コバルト混合硫化物を用いた以外は実施例1と同様に硫酸浸出処理し、該硫酸浸出処理で得た浸出液を採取してORP測定を行ったところ、ORP値は0.485Vであった。また、採取した浸出液はNi濃度120質量%、Co濃度11質量%、及び硫酸イオン濃度210質量%であり、図2の検量線の作成時に調製した模擬液のNi濃度、Co濃度及び硫酸イオン濃度とほぼ同じであったので、上記のORP値を図2の検量線と照合した。これにより、上記の浸出液のチオ硫酸濃度が10mg/Lであることを求めることができた。なお、上記の浸出液の採取からそのチオ硫酸濃度を求めるまでに要した時間は4分であった。
次に、不純物除去工程S3において、浸出液1000cc当たり標準状態で20cc/minの流量の空気を60分間吹き込むエアレーションを行った後、該エアレーションで酸化処理した浸出液に対して再度上記と同じ条件でORP測定を行ったところ、上記実施例1と同様に浸出液中のチオ硫酸濃度は分析限界以下であった。以降は実施例1と同様にして晶析工程S4及びニッケルめっき皮膜の形成を行ったところ、実施例1と同様の平滑なめっき皮膜が形成されていた。
(比較例)
実施例1及び実施例2とは異なる日時に採取したニッケル・コバルト混合硫化物に対して、実施例1と同様に硫酸浸出処理した後、該硫酸浸出処理で得た浸出液に対してORP測定に代えてヨウ素滴定法によりチオ硫酸濃度測定した。その結果、チオ硫酸濃度が15mg/Lであることが分かった。このヨウ素滴定法は、ヨウ素添加後の未反応ヨウ素を逆滴定するため、測定に要した時間は60分であった。次に、不純物除去工程S3において、浸出液1000cc当たり標準状態で30cc/minの流量の空気を吹き込むエアレーションを行った後、該エアレーションで酸化処理した浸出液に対して、再度上記と同じ滴定法によりチオ硫酸濃度を測定したところ分析限界以下であった。以降は実施例1と同様にして晶析工程S4及びニッケルめっき皮膜の形成を行った。
得られた無電解ニッケルめっき膜を目視にて評価したところ、微細な凹凸が発生しており、表面性状が実施例1や2に比べて悪化していた。これは、チオ硫酸の測定に要した時間が長かったため、その測定結果を不純物除去工程S3の処理条件に反映するのが遅れ、結果的に浸出液に含まれるチオ硫酸が不純物除去工程S3において十分に酸化分解されず、未分解のチオ硫酸を含んだ浸出液が次工程の晶析工程S4に流出したためと考えられる。
(参考例)
実施例1、2及び比較例1とは異なる日時に採取したニッケル・コバルト混合硫化物を用いた以外は実施例1と同様に硫酸浸出処理し、該硫酸浸出処理で得た浸出液を採取してORP測定を行ったところ、ORP値は0.484Vであった。また、採取した浸出液はNi濃度118質量%、Co濃度12質量%、及び硫酸イオン濃度210質量%であり、図2の検量線の作成時に調製した模擬液のNi濃度、Co濃度及び硫酸イオン濃度とほぼ同等であったので、上記ORP値を図2の検量線と照合した。これにより、上記の浸出液のチオ硫酸濃度が20mg/Lであることを求めることができた。なお、上記の浸出液の採取からそのチオ硫酸濃度が求まるまでに要した時間は4分であった。
次に、不純物除去工程S3において、浸出液1000cc当たり標準状態で5cc/minの流量の空気を60分間吹き込むエアレーションを行った後、該エアレーションで酸化処理した浸出液に対して再度上記と同じ条件でORP測定を行ったところ、チオ硫酸濃度は2mg/Lであった。以降はエアレーション条件の調整を行わなかった以外は実施例1と同様にした。その結果、作製した硫酸ニッケル結晶を用いて実施例1と同様に形成した無電解ニッケルめっき膜は、微細な凹凸が発生しており、実施例1に比べて表面性状が悪化していた。
S1 スラリー調製工程
S2 浸出工程
S3 不純物除去工程
S4 晶析工程

Claims (2)

  1. ニッケル硫化物スラリーを高圧下で硫酸浸出処理及び酸化処理して不純物を含む粗硫酸ニッケル水溶液からなる浸出液を得る浸出工程と、酸化中和法又は溶媒抽出法による不純物除去に加えて、空気の吹き込み、酸素の吹き込み、又は過酸化水素水の添加によりチオ硫酸を酸化分解する追加の酸化処理を行なうことで該浸出液から該不純物を除去して高純度硫酸ニッケル水溶液を得る不純物除去工程と、該高純度硫酸ニッケル水溶液から硫酸ニッケル結晶を晶析させる結晶工程とからなる硫酸ニッケルの製造方法であって、
    チオ硫酸濃度が異なる以外は前記浸出液と同等の濃度を有する複数の硫酸ニッケル水溶液に対してORP測定を行うことによりチオ硫酸濃度とORP値との関係を予め求めておき、前記浸出液に対してORP測定を行うことで得たORP値を該予め求めた関係に照合することで該浸出液中のチオ硫酸濃度を求め、前記求めたチオ硫酸濃度に基づいて前記不純物除去工程における前記追加の酸化処理の処理条件を調整することを特徴とする硫酸ニッケルの製造方法。
  2. 前記追加の酸化処理が施された浸出液に対して再度ORP測定を行うことによって処理後チオ硫酸濃度を求め、この処理後チオ硫酸濃度に基づいて前記追加の酸化処理の処理条件を調整することを特徴とする、請求項に記載の硫酸ニッケルの製造方法。
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