以下、本発明の実施の形態について、図を参照して詳細に説明する。なお、以下に示す実施の形態においては、同一のまたは共通する部分について図中同一の符号を付し、その説明は繰り返さない。
(実施の形態1)
図1は、本実施の形態に係る磁気抵抗素子の概略断面図である。図1を参照して、本実施の形態に係る磁気抵抗素子1について説明する。
図1に示すように、磁気抵抗素子1は、基板10と、絶縁層11と、積層体12と、一対の電極部18と、保護層19とを備える。
基板10としては、たとえば、シリコン基板が用いられる。また、基板10として、ガラス基板やプラスチック基板などの絶縁性基板が用いられてもよい。この場合には、絶縁層11を省略することができる。
絶縁層11は、基板10の主表面全体を覆うように設けられている。絶縁層11は、たとえば、シリコン酸化膜(SiO2膜)や酸化アルミ膜(Al2O3)が用いられる。絶縁層11は、たとえば、CVD法等によって形成することができる。
積層体12は、たとえば、矩形形状を有し、図中DR1方向に長手方向を有する。積層体12は、絶縁層11上に設けられている。積層体12は、下地層13、反強磁性体層14および強磁性体層15を含む。下地層13としては、Ta、W、Mo、Cr、Ti、Zr等の金属からなる1つの金属膜や、面心立方晶からなり反強磁性体層14の界面と平行方向に(111)面が優先配向されている金属や合金(例えば、Ni、Au、Ag、Cu、Pt、Ni−Fe、Co−Fe等)からなる1つの金属膜、及びこれらの金属膜が積層された積層膜が用いられる。下地層13は、絶縁層11上に設けられている。下地層13は、反強磁性体層14の結晶を適切に成長させるために設けられている。なお、下地層13は、反強磁性体層14の結晶を適切に成長させることができる場合には、省略することができる。
反強磁性体層14は、基板10の上方に設けられている。具体的には、反強磁性体層14は、下地層13上に設けられている。なお、上述のように下地層13が省略される場合には、反強磁性体層14は、絶縁層11上に設けられる。
反強磁性体層14は、Ni、Fe、Pd、Pt、およびIrのいずれか1種の元素とMnとを含む合金、PdとPtとMnとを含む合金、またはCrとPtとMnとを含む合金などのMnを含む合金からなる。これら合金は、ブロッキング温度が高いことから、高温まで交換結合磁界が消失しない。このため、磁気抵抗素子1を安定に作動させることができる。
FeとMnとを含む合金、PtとMnとを含む合金、IrとMnとを含む合金およびCrとPtとMnとを含む合金は、組成によって結晶構造が不規則合金であるため、交換結合を生じさせるための熱処理(結晶構造を規則化させるための熱処理)が不要となる。このため、反強磁性体層14として、これら合金を採用した場合には、製造工程が単純化できる。
強磁性体層15は、反強磁性体層14の主面全体を覆うように反強磁性体層14上に設けられている。強磁性体層15は、NiとFeとを含む合金やNiとCoとを含む合金など異方性磁気抵抗効果が生じる材料からなる。NiとFeとを含む合金は、保磁力が小さいため、ヒステリシスを小さくすることができる。特に、Ni80Fe20、または、Ni80Fe20に近い組成を有するNiとFeとを含む合金は、立方晶の結晶磁気異方性がほぼ0erg/cm3になる。結晶磁気異方性が0erg/cm3になる材料は、結晶磁気異方性による磁化容易軸や磁化困難軸がないため、等方的である。また、上記組成およびこれに近い組成を有するNiとFeとを含む合金では、磁歪もほぼ0になるため、結晶の歪等により磁気弾性的に誘導される磁気異方性が小さい。また、NiとFeとを含む合金等は、磁界中での熱処理により薄膜全体にわたった巨視的な磁化容易軸を簡単に誘導することができるため、薄膜全体にわたる磁化容易軸方向の設計がしやすくなる。
一対の電極部18は、積層体12の上面で互いに対峙するように積層体12の両端に設けられている。電極部18は、Al等の電気導電性の良好な金属材料からなる。電極部18と強磁性体層15との密着性を高めるために、電極部18と強磁性体層15との間には、Tiなどからなる密着層が設けられていてもよい。
保護層19は、積層体12、および一対の電極部18を覆うように設けられる。保護層19には、一対の電極部18の一部が露出するようにコンタクトホール19aが設けられている。保護層19は、たとえばシリコン酸化膜(SiO2)からなり、強磁性体層15などが酸化や腐食することを防ぐために設けられている。なお、保護層19は設けられていなくてもよい。
図2は、図1に示す反強磁性体層と強磁性体層とが交換結合している状態を模式的に示す断面図である。図2を参照して、反強磁性体層14と強磁性体層15が交換結合している状態について説明する。
図2に示すように、強磁性体層15の下面全面にわたって反強磁性体層14が設けられていることにより、交換結合磁界が強磁性体層の全体に作用する。これにより、強磁性体層15の磁化方向を一方向に揃えることができる。すなわち、強磁性体層15を単磁区化することができる。交換結合磁界の大きさは、たとえば強磁性体層15の膜厚によって調整することができる。
図3は、反強磁性体層からの交換結合磁界により固定された強磁性体層の磁化方向と、電極部間を最短でつなぐ方向とを示す平面図である。
図3に示すように、強磁性体層15と反強磁性体層14との間で生じる交換結合磁界により固定された強磁性体層15の磁化方向Mと、電極部18間を最短でつなぐ方向(DR1方向)とは、交差する。具体的には、交換結合磁界により固定された強磁性体層の磁化方向Mと、電極部18間を最短でつなぐ方向とが交差する角度は、45°となる。これにより、検出電流Iの大部分は、一対の電極部18間を最短で繋ぐ方向に流れ、検出電流Iが流れる向きと強磁性体層15の磁化方向Mとが45°で交差する。
このように強磁性体層15の磁化方向と、電極部18間を最短でつなぐ方向とを設定するに際して、まず、真空蒸着法、スパッタ法等を用いて下地層13から強磁性体層15まで形成する。続いて、磁界を印加しながら熱処理を行うことで、強磁性体層15と反強磁性体層14の間に交換結合磁界が得られ、強磁性体層15の磁化方向が磁界の方向に固定される。
また、磁界を印加しながら、真空蒸着法、スパッタ法等を用いて下地層13から強磁性体層15まで形成した場合、反強磁性体層14が不規則合金なら、強磁性体層15の磁化方向が、強磁性体層15と反強磁性体層14の間の交換結合磁界によって磁界の方向に固定されるため、交換結合を生じさせるための熱処理が不要となる。なお、十分な大きさの交換結合磁界を得るために、積層体12を形成した後に、形成中に印加されていた磁界と同じ方向に磁界を印加しながら熱処理を施しても良い。
反強磁性体層14が規則合金である場合、積層体12を形成した後、続いて磁界を印加しながら熱処理を行うことで、強磁性体層15と反強磁性体層14の間に交換結合磁界が得られ、強磁性体層15の磁化方向が磁界の方向に固定される。印加磁界の向きは、形成中に印加されていた磁界と同じ方向にする方がより良い。
積層体12は、強磁性体層15の磁化方向と積層体12の長手方向とが45°で交差するように、矩形形状にパターニングされる。
図4は、図1に示す磁気抵抗素子の磁気抵抗と磁界との関係を示す図である。図4を参照して、磁気抵抗素子1の磁気抵抗と磁界との関係について説明する。
上述のように、検出電流Iが流れる向きと強磁性体層15の磁化方向Mとが45°で交差することにより、良好な線形的に応答する領域が得られる。
本実施の形態にあっては、バーバーポール電極を強磁性体層15層上に設けることなく、強磁性体層15の磁化方向を検出電流が流れる方向(電極間を最短でつなぐ方向)に対して45°傾けて固定することができる。これにより、強磁性体層15の感磁領域が減少することを抑制することができる。
また、バーバーポール電極が設けられないため、バーバーポール電極の電気抵抗が強磁性体層の電気抵抗に加算されることを防止できる。これらの結果、本実施の形態に係る磁気抵抗素子1は、感磁領域の減少を抑制し、磁気抵抗変化率を向上させることができる。
さらに、強磁性体層15が反強磁性体層14の主面全体を覆うように反強磁性体層14上に設けられており、強磁性体層15の磁化方向は反強磁性体層14からの交換結合磁界によって一方向に固定されているため、単磁区化することができる。これにより、バルクハウゼンノイズを抑制することができる。
加えて、強磁性体層15の磁化方向は、反強磁性体層14からの交換結合磁界によって一方向に固定される。このため、大きな外部磁界がかかり強磁性体層15の磁化方向が回転しても、外部磁界がなくなれば強磁性体層15の磁化方向は、回転前の方向に戻る。これにより、外乱磁界による故障を抑制することができる。
(磁気センサ)
図5は、図1に示す磁気抵抗素子を複数個用いて構成される磁気センサの平面図である。図5を参照して、図1に示す磁気抵抗素子を複数個用いて構成される磁気センサ100について説明する。
図5に示すように、磁気センサ100は、4個の磁気抵抗素子1A,1B,1C,1Dを用いてフルブリッジ回路を構成することにより設けられる。磁気抵抗素子1Aの一端側は、配線パターン3Aを介して、出力電圧Vout2を取り出すための電極パッドP1と電気的に接続される。磁気抵抗素子1Aの他端側は、配線パターン3Bを介して、電源電圧Vccを印加するための電極パッドP3と電気的に接続される。磁気抵抗素子1Dの一端側は、配線パターン3Aを介して電極パッドP1と電気的に接続されている。磁気抵抗素子1Dの他端側は、配線パターン3Dを介して、グランドに接続される電極パッドP4と電気的に接続される。
磁気抵抗素子1Bの一端側は、配線パターン3Cを介して、出力電圧Vout1を取り出すための電極パッドP2と電気的に接続される。磁気抵抗素子1Bの他端側は、配線パターン3Bを介して、電極パッドP3と電気的に接続される。磁気抵抗素子1Cの一端側は、配線パターン3Cを介して、電極パッドP2に電気的に接続される。磁気抵抗素子1Cの他端側は、配線パターン3Dを介して電極パッドP4に接続される。
磁気抵抗素子1A,1Dが、配線パターン3B,3A,3Dおよび電極パッドP3,P1,P4を介して直列接続されることにより、第1の直列回路(ハーフブリッジ回路)が形成される。磁気抵抗素子1B,1Cが、配線パターン3B,3C,3Dおよび電極パッドP3,P2,P4を介して直列接続されることにより、第2の直列回路(ハーフブリッジ回路)が形成される。第1の直列回路(ハーフブリッジ回路)および第2の直列回路(ハーフブリッジ回路)が、電極パッドP3,P4を介して並列接続されることにより、フルブリッジ回路が形成される。磁気抵抗素子1A,1Cは、正出力性を有し、磁気抵抗素子1B,1Dは負出力性を有する。
電極パッドP3と電極パッドP4との間に電源電圧Vccを印加すると、電極パッドP1および電極パッドP2からは、磁界強度に応じて、出力電圧Vout2,Vout1が取り出される。出力電圧Vout2,Vout1は、差動増幅器(不図示)を介して差動増幅される。
このようにブリッジ回路を構成することにより、感磁領域の減少を抑制し、磁気抵抗変化率を向上させることができるとともに、温度などの外部環境の変化に対する耐性を向上させることができる。
また、本実施の形態に係る磁気センサにあっては、磁気抵抗素子にバーバーポール電極が設けられていないため、バーバーポール電極の加工ばらつきが生じない。このため、磁気抵抗素子の電気抵抗のばらつきが小さく、フルブリッジ回路を構成した場合に、オフセット電圧を合わせやすくなる。
(磁気センサの第1変形例)
図6は、第1変形例における磁気センサを示す平面図である。図6を参照して、第1変形例における磁気センサ100Aについて説明する。
第1変形例における磁気センサ100Aは、実施の形態1に係る磁気センサ100と比較した場合に、磁気抵抗素子1A,1B,1C,1Dが、複数の積層体12がミアンダ形状に配置されてこれらが電気的に接続されることにより構成されている点において相違する。
具体的には、図6に示すように、各磁気抵抗素子1A,1B,1C,1Dに、積層体12が複数設けられ、各磁気抵抗素子1A,1B,1C,1Dにおいて、複数の積層体12は、磁化方向が揃うように平行に並んで設けられ、かつ、電極部が、互いに隣り合う積層体12の端部同士を交互に接続されている。これにより、各磁気抵抗素子1A,1B,1C,1Dがミアンダ状に形成されている。
より具体的には、磁気抵抗素子1A,1B,1C,1Dのそれぞれは、長い短冊状パターンの積層体12と、短い短冊状パターンの接続電極40とを交互に直交させて接続することで、ミアンダ状に形成される。
磁気抵抗素子1A,1Cに含まれる複数の積層体12のそれぞれは、同一方向に沿って延在し、延在方向に直交する方向に所定の間隔をあけて配置される。磁気抵抗素子1B,1Dに含まれる複数の積層体12のそれぞれは、同一方向に沿って延在し、延在方向に直交する方向に所定の間隔をあけて配置される。磁気抵抗素子1A,1Cに含まれる複数の積層体12の延在方向は、磁気抵抗素子1B,1Dに含まれる複数の積層体12の延在方向と直交する。
このように構成した場合であっても、第1変形例における磁気センサ100Aは、磁気センサ100と同様の効果が得られる。
(実施の形態2)
図7は、本実施の形態に係る磁気抵抗素子の概略断面図である。図7を参照して、本実施の形態に係る磁気抵抗素子1Eについて説明する。
図7に示すように、磁気抵抗素子1Eは、実施の形態1に係る磁気抵抗素子1と比較した場合に、交換結合磁界調整層16をさらに備える点において相違する。その他の構成については、ほぼ同様である。
交換結合磁界調整層16は、反強磁性体層14と強磁性体層15との間に設けられ、反強磁性体層14と強磁性体層15との間に発生する交換結合磁界の大きさを調整する。交換結合磁界調整層16は、たとえばCoもしくはCoを含む合金からなる強磁性体層である。交換結合磁界調整層16は、反強磁性体層14の主面全体を覆うように反強磁性体層14上に設けられていることが好ましい。
交換結合磁界調整層16を設けて交換結合磁界の大きさを調整することにより、線形的に応答する領域の範囲を調整することができる。これにより、入力ダイナミックレンジの設計の自由度を大きくすることができる。
たとえば、交換結合磁界調整層16と反強磁性体層14との間に発生する交換結合磁界の大きさは、反強磁性体層14上に直接強磁性体層15を積層した場合に反強磁性体層14と強磁性体層15との間に発生する交換結合磁界の大きさよりも大きいことが好ましい。この場合には、交換結合磁界調整層16を設けることにより、反強磁性体層14から強磁性体層15に作用する交換結合磁界の大きさを大きくすることができる。これにより、線形的に応答する領域の範囲を拡張することができる。
また、CoもしくはCoを含む合金からなる強磁性体層からなる交換結合磁界調整層16を設けることにより、反強磁性体層14に含まれるMnが強磁性体層15に拡散することを防止することができる。これにより、拡散に伴う性能劣化を抑制でき、特性が安定するとともに、信頼性を向上させることができる。
この結果、本実施の形態に係る磁気抵抗素子1Eは、実施の形態1に係る磁気抵抗素子と同等以上の効果が得られる。
(検証実験)
ここで、比較例に係る磁気抵抗素子を具備する磁気センサを用意する。図8は、比較例に係る磁気抵抗素子を具備する磁気センサの平面図である。磁気センサXは、非特許文献1に開示の磁気抵抗素子のように、バーバーポール電極17を備える磁気抵抗素子1AX,1BX,1CX,1DXにより構成されている。
具体的には、図8に示すように、磁気センサXは、磁気センサ100と同様に、4個の磁気抵抗素子1AX,1BX,1CX,1DXを用いてフルブリッジ回路を構成することにより設けられる。磁気抵抗素子1AXの一端側は、配線パターン3AXを介して、出力電圧Vout2Xを取り出すための電極パッドP1Xと電気的に接続される。磁気抵抗素子1AXの他端側は、配線パターン3BXを介して、電源電圧Vccを印加するための電極パッドP3Xと電気的に接続される。磁気抵抗素子1DXの一端側は、配線パターン3AXを介して電極パッドP1Xと電気的に接続されている。磁気抵抗素子1DXの他端側は、配線パターン3DXを介して、グランドに接続される電極パッドP4Xと電気的に接続される。
磁気抵抗素子1BXの一端側は、配線パターン3CXを介して、出力電圧Vout1Xを取り出すための電極パッドP2Xと電気的に接続される。磁気抵抗素子1BXの他端側は、配線パターン3BXを介して、電極パッドP3Xと電気的に接続される。磁気抵抗素子1CXの一端側は、配線パターン3CXを介して、電極パッドP2Xに電気的に接続される。磁気抵抗素子1CXの他端側は、配線パターン3DXを介して電極パッドP4Xに接続される。
磁気抵抗素子1AX,1CXは正出力性を有し、磁気抵抗素子1BX,1DXは負出力性を有する。
電極パッドP3Xと電極パッドP4Xとの間に電源電圧Vccを印加すると、電極パッドP1Xおよび電極パッドP2Xからは、磁界強度に応じて、出力電圧Vout2X,Vout1Xが取り出される。出力電圧Vout2X,Vout1Xは、差動増幅器(不図示)を介して差動増幅される。
実施例1に係る磁気センサおよび比較例に係る磁気センサXを交えながら、検証実験の条件および結果について説明する。実施例1に係る磁気センサは、実施の形態1に係る磁気センサ100を用いている。
実施例1に係る磁気センサを構成する磁気抵抗素子においては、積層体12として、基板10側から順に、下地層、反強磁性体層、強磁性体層の順に積層させた積層体(Si/SiO2/Ta/Ni−Fe/Ni−Mn/Ni−Fe)を用いている。なお、上述のSi/SiO2は、基板および絶縁層であり積層体には含まれない。実施例1においては、下地層13としてTa膜に、NiとFeとを含む合金を積層させた積層膜を用いている。反強磁性体層14としてNiとMnとを含む合金を用いている。強磁性体層15としてNiとFeとを含む合金を用いている。下地層13において、Ta膜の厚さは2nmであり、NiとFeとを含む合金層の厚さは5nmである。反強磁性体層14において、NiとMnとを含む合金層の厚さは40nmである。強磁性体層15としてNiとFeとを含む合金層の厚さは30nmである。なお、実施例1においては、積層体12上に保護層を設けていない。
比較例に係る磁気センサを構成する磁気抵抗素子は、実施例1に係る磁気センサを構成する磁気抵抗素子と同じ構成を有する積層体(Si/SiO2/Ta/Ni−Fe/Ni−Mn/Ni−Fe)を備える。なお、各層の厚さも同じとされている。
図9は、実施例1に係る磁気センサのブリッジ電圧変化率と磁界との関係を示す図である。図10は、比較例に係る磁気センサのブリッジ電圧変化率と磁界との関係を示す図である。
図10に示すように、比較例に係る磁気センサはバーバーポール電極を備えることから、ブリッジ電圧変化率が線形性を示す。一方、図9に示すように、実施例1に係る磁気センサも、ブリッジ電圧変化率が線形性を示す。
以上の検証実験の結果から、強磁性体層15の磁化方向Mと電極部18間を最短でつなぐ方向とが交差するように、強磁性体層15の磁化方向と電極部18間を最短でつなぐ方向とを設定することにより、バーバーポール電極を設けずとも、AMR素子の特性を奇数関数化し、AMR素子の磁気抵抗変化が外部磁界に対して線形的に応答するようにできることが実験的にも証明されたと言える。
(実施の形態3)
(電流センサ)
図11は、本実施の形態に係る電流センサを示す概略図である。図11を参照して、本実施の形態に係る電流センサについて説明する。上述の磁気センサは、比較的に広範囲に亘って線形的に応答する領域を有するため、強い磁界を測定する場合にも磁気飽和しないため電流センサ等に用いることができる。
図11に示すように、本実施の形態に係る電流センサ150は、磁気センサ100A,100B、測定対象の電流が流れるバスバー110および減算器130を備える。磁気センサ100A,100Bは、実施の形態1に係る磁気センサ100と同様の構成を有し、奇関数入出力特性を有する。
磁気センサ100A,100Bは、バスバー110を流れる電流により発生する磁界の強さを検出し、この磁界の強さに応じた信号を上述のブリッジ回路から出力する。減算器130は、磁気センサ100Aおよび磁気センサ100Bの各検出値を減算することにより上記電流の値を算出する算出部である。
バスバー110は、電気的に直列に接続されている第1バスバー部111、第2バスバー部および第3バスバー部113を含む。第1バスバー部111と第3バスバー部113とは、互いに離間して平行に延在する。第1バスバー部111と第3バスバー部113とは、第2バスバー部によって接続されている。
第2バスバー部は、第1バスバー部111および第3バスバー部113の各々に対して間隔を置いて平行に並んで延在する平行部112を含む。また、第2バスバー部は、第1バスバー部111の他端と第2バスバー部の平行部112の一端とを連結する第1連結部114と、第2バスバー部の平行部112の他端と第3バスバー部113の一端とを連結する第2連結部115とを含む。
第1バスバー部111と第2バスバー部の平行部112と第3バスバー部113とは、等間隔に配置されている。第1バスバー部111、第2バスバー部の平行部112および第3バスバー部113の各々は、直方体状の形状を有している。ただし、第1バスバー部111、第2バスバー部の平行部112および第3バスバー部113の各々の形状は直方体状に限られず、たとえば円柱状であってもよい。
第2バスバー部の第1連結部114は、側面視にて直線状に延在して第1バスバー部111および第2バスバー部の平行部112の各々と直交している。第2バスバー部の第2連結部115は、側面視にて直線状に延在して第2バスバー部の平行部112および第3バスバー部113の各々と直交している。
第2バスバー部の第1連結部114および第2連結部115の各々は、直方体状の形状を有している。ただし、第2バスバー部の第1連結部114および第2連結部115の各々の形状は直方体状に限られず、たとえば円柱状であってもよい。
バスバー110は、側面視にてS字状の形状を有している。このように折り返すように曲折した形状を有する1つのバスバー部材によってバスバー110を構成することにより、機械的強度が高くシンメトリーな形状を有するバスバー110を得ることができる。ただし、バスバー110の形状はこれに限られず、たとえば、バスバー110が、E字形状のように第1バスバー部111と第2バスバー部と第3バスバー部113とを有する形状であれば適宜選択することができる。
バスバー110は、たとえばアルミニウムで構成されている。ただし、バスバー110の材料はこれに限られず、銀、銅などの金属単体、または、これらの金属と他の金属との合金でもよい。また、バスバー110は、表面処理を施されていてもよい。たとえば、ニッケル、錫、銀、銅などの金属単体またはこれらの合金からなるめっき層を、バスバー110の表面に単層または複層で形成してもよい。
バスバー110は、薄板をプレス加工することにより形成される。ただし、バスバー110の形成方法はこれに限られず、切削,鋳造または鍛造などの方法でバスバー110を形成してもよい。
第1バスバー部111を電流が流れる方向211と第3バスバー部113を電流が流れる方向215とは同一である。第1バスバー部111を電流が流れる方向211、および第3バスバー部113を電流が流れる方向215と、第2バスバー部の平行部112を電流が流れる方向213とは反対である。第2バスバー部の第1連結部114を電流が流れる方向212と、第2バスバー部の第2連結部115を電流が流れる方向214とは同一である。
磁気センサ100Aは、互いに対向する第1バスバー部111と第2バスバー部の平行部112との間に位置している。磁気センサ100Bは、互いに対向する第2バスバー部の平行部112と第3バスバー部113との間に位置している。
磁気センサ100Aは、第1バスバー部111と第3バスバー部113とが並ぶ方向に対して直交する方向、かつ、第1バスバー部111の延在方向に対して直交する方向である、図11中の矢印101Aで示す方向に検出軸を有する。
磁気センサ100Bは、第1バスバー部111と第3バスバー部113とが並ぶ方向に対して直交する方向、かつ、第3バスバー部113の延在方向に対して直交する方向である、図11中の矢印101Bで示す方向に検出軸を有する。
磁気センサ100A,100Bは、検出軸の一方向に向いた磁界を検出した場合に正の値で出力し、かつ、検出軸の一方向とは反対方向に向いた磁界を検出した場合に負の値で出力する、奇関数入出力特性を有している。すなわち、バスバー110を流れる電流により発生する磁界の強さについて、磁気センサ100Aの検出値の位相と、磁気センサ100Bの検出値の位相とは、逆相である。
磁気センサ100Aは、第1接続配線141によって減算器130と電気的に接続されている。磁気センサ100Bは、第2接続配線142によって減算器130と電気的に接続されている。
減算器130は、磁気センサ100Aの検出値と、磁気センサ100Bの検出値とを減算することにより、バスバー110を流れる電流の値を算出する。なお、本実施形態においては、算出部として減算器130を用いているが、算出部はこれに限られず、差動増幅器などでもよい。
図12は、図11に示すXII−XII線矢印方向から見た断面図において、発生する磁界を模式的に示す図である。図12においては、磁気センサ100Aおよび磁気センサ100Bの検出軸方向をX方向、第1バスバー部111と第2バスバー部の平行部112と第3バスバー部113とが並ぶ方向をY方向として示している。なお、第2バスバー部の平行部112の延在方向がZ方向である。
図12に示すように、第1バスバー部111に電流が流れることにより、いわゆる右ねじの法則によって図中の右回りに周回する磁界111eが発生する。同様に、第2バスバー部の平行部112に電流が流れることにより、図中の左回りに周回する磁界112eが発生する。第3バスバー部113に電流が流れることにより、図中の右回りに周回する磁界113eが発生する。
その結果、磁気センサ100Aには、矢印101Aで示す検出軸の方向において、図中の左向きの磁界が印加される。一方、磁気センサ100Bには、矢印101Bで示す検出軸の方向において、図中の右向きの磁界が印加される。
よって、磁気センサ100Aの検出した磁界の強さを正の値とすると、磁気センサ100Bの検出した磁界の強さは負の値となる。磁気センサ100Aの検出値と磁気センサ100Bの検出値とは、減算器130に送信される。
減算器130は、磁気センサ100Aの検出値から磁気センサ100Bの検出値を減算する。その結果、磁気センサ100Aの検出値の絶対値と、磁気センサ100Bの検出値の絶対値とが加算される。この加算結果から、バスバー110を流れた電流の値が算出される。
なお、磁気センサ100Aと磁気センサ100Bとの入出力特性を互いに逆の極性にしつつ、減算器130に代えて加算器または加算増幅器を算出部として用いてもよい。
本実施形態における電流センサ150においては、第1バスバー部111および第3バスバー部113は横断面において、第2バスバー部の平行部112の中心点を中心として互いに点対称に位置している。かつ、第1バスバー部111および第3バスバー部113は横断面において、磁気センサ100Aおよび磁気センサ100Bの検出軸の方向における第2バスバー部の平行部112の中心線を中心として互いに線対称に位置している。
また、磁気センサ100Aおよび磁気センサ100Bは横断面において、第2バスバー部の平行部112の中心点を中心として互いに点対称に位置している。かつ、磁気センサ100Aおよび磁気センサ100Bは横断面において、磁気センサ100Aおよび磁気センサ100Bの検出軸の方向における第2バスバー部の平行部112の中心線を中心として互いに線対称に位置している。
このように点対称に配置された磁気センサ100Aおよび磁気センサ100Bは、バスバー110を流れる電流により発生する磁界を等しく反映した検出値を示す。そのため、バスバー110を流れる電流により発生する磁界の強さとそれから算出されるバスバー110を流れる電流の値との線形性を高めることができる。
なお、本実施の形態においては、電流センサ150に具備される磁気センサが、実施の形態1に係る磁気抵抗素子によって構成される場合を例示して説明したが、これに限定されず、実施の形態2に係る磁気抵抗素子によって構成されてもよい。また、本実施の形態に係る磁気センサは、第1変形例における磁気センサと同様に構成されていてもよい。さらに、本実施の形態に係る磁気センサは、後述する実施の形態3に係る磁気センサ、第2変形例における磁気センサ、第3変形例における磁気センサ、第4変形例における磁気センサ、および第5変形例における磁気センサのいずれかと同様に構成されていてもよい。
以上のように構成することにより、本実施の形態に係る電流センサ150は、感磁領域の減少を抑制し、磁気抵抗変化率を向上させることができる。
(実施の形態4)
(磁気抵抗素子)
図13は、本実施の形態に係る磁気抵抗素子の概略断面図である。図13を参照して、本実施の形態に係る磁気抵抗素子1Eについて説明する。
上述した実施の形態1においては、基板10の上方に設けられた積層体が、基板10側から順に反強磁性体層14と強磁性体層15とがこの順で積層されることにより構成される場合を例示して説明したが、これに限定されず、図13に示すように、基板10側から強磁性体層15と反強磁性体層14とがこの順で積層されることにより構成されてもよい。すなわち、強磁性体層15および反強磁性体層14の一方は、強磁性体層15および反強磁性体層14の他方の主面全体を覆うように強磁性体層15および反強磁性体層14の他方上に設けられる。
本実施の形態における下地層13は、強磁性体層15および反強磁性体層14の結晶を適切に成長させるために設けられている。なお、下地層13は、これを用いずに強磁性体層15および反強磁性体層14の結晶を適切に成長させることができる場合には、これを省略することができる。下地層13を省略する場合には、磁気抵抗素子1Eの構成を簡素化することができる。
本実施の形態においては、強磁性体層15が反強磁性体層14の結晶を適切に成長させるための下地層として機能する。
以上のように構成した場合においても、本実施の形態に係る磁気抵抗素子1Eは、実施の形態1とほぼ同様の効果が得られる。
(実施の形態5)
(磁気抵抗素子)
図14は、本実施の形態に係る磁気抵抗素子の平面図である。図15は、図14に示すXV−XV線に沿った断面図である。なお、図14においては、便宜上のため保護層19を省略している。図14および図15を参照して、本実施の形態に係る磁気抵抗素子1Fについて説明する。
図14および図15に示すように、磁気抵抗素子1Fは、実施の形態1に係る磁気抵抗素子1と比較した場合に、複数の積層体12と複数の電極部とが所定の方向に交互に並んで構成されている点において相違する。その他の構成は、ほぼ同様である。
磁気抵抗素子1Fは、複数の積層体12および複数の電極部を含む。複数の積層体12は、絶縁層11上に設けられている。なお、基板10が絶縁性基板である場合には、絶縁層11を省略してもよい。
複数の積層体12は、積層方向から見た場合に互いに対向する2組の対辺を有する矩形形状を有する。複数の積層体12は、強磁性体層15の磁化方向Mが揃うようにして互いに離間して設けられている。磁化方向Mは、電極部が並ぶ方向に交差する。
複数の積層体12は、上記2組の対辺のうちの一方の対辺が延在する方向に沿って直線状に並んで設けられている。複数の積層体12のそれぞれは、上記2組の対辺のうちの一方の対辺が延在する方向において一端12aおよび他端12bを有する。
複数の積層体12は、強磁性体層15となる強磁性体膜の磁化方向が交換結合磁界によって所定の方向に固定された積層体膜をパターンニングすることにより形成される。
積層体膜は、実施の形態1と同様に真空蒸着法、スパッタ法等を用いて下地層13となる下地膜、反強磁性体層14となる反強磁性体膜、強磁性体層15となる強磁性体膜とを積層することにより形成される。実施の形態1と同様に、磁界を印加しながら積層体膜を形成したり、積層体膜を形成後に積層体膜に磁界を印加しながら熱処理したりすることにより、強磁性体膜と反強磁性体膜との間で生じる交換結合磁界によって強磁性体膜の磁化方向が固定される。
互いに隣り合う積層体12は、電極部としての接続電極41によって接続されている。接続電極41は、互いに隣り合う積層体12のうち一方の積層体の一端12a側と、当該一端12a側に向かい合う他方の積層体の他端12b側とを接続する。接続電極41は、互いに隣り合う積層体12の間の隙間に入り込むように設けられている。
複数の積層体12が並ぶ方向における接続電極41の幅は、複数の積層体12が並ぶ方向における電極部18の幅よりも小さいことが好ましい。
複数の積層体12のうち、これらが並ぶ方向における両端に位置する積層体12には、それぞれ電極部18が設けられている。複数の積層体12が並ぶ方向の一方側の電極部18aは、上記両端に位置する一方の積層体12の一端12a側に設けられている。複数の積層体12が並ぶ方向の他方側の電極部18bは、上記両端に位置する他方の積層体12の他端12b側に設けられている。
保護層19は、複数の積層体12、複数の接続電極41、および一対の電極部18を覆うように設けられる。保護層19には、一対の電極部18の一部がそれぞれ露出するようにコンタクトホール19aが設けられている。
このように構成とした場合であっても、交換結合磁界によって強磁性体層15の磁化の向きを固定することができる。このため、個々の積層体12上に複数のバーバーポール電極を設ける必要がないため、バーバーポール電極の電気抵抗が強磁性体層15の電気抵抗に加算されることを防止できる。この結果、本実施の形態に係る磁気抵抗素子1Fにあっても、実施の形態1と同様に、感磁領域の減少を抑制し、磁気抵抗変化率を向上させることができる。
また、互いに離間して直線状に並ぶように設けられた複数の積層体12を接続電極41にて接続する構成とすることにより、同一の長さの磁気抵抗素子を単数の積層体で構成する場合と比較して、後述の形状異方性による影響を低減させることができる。これにより、磁界の変化に対して磁気抵抗素子1Fが線形的に応答する領域において、磁界の値0を基準とした場合に、当該基準する対称性を良好に維持することができる。
図16は、形状異方性について説明するための図である。図16を参照して、形状異方性について説明する。強磁性体層15が短手方向および長手方向を有する矩形形状を有する場合には、形状異方性によって強磁性体層15の磁化は長手方向を向きやすくなる。また、長手方向の長さが長ければ長いほど、磁化の向きは長手方向に向きやすくなる。
このため、強磁性体層15の磁化方向Mを検出電流Iが流れる方向(電極部間を最短でつなぐ方向)に対してθ1の角度で固定した場合であっても、実際の磁化の向きは、長手方向に近づくように傾斜して、検出電流Iが流れる方向に対してθ2の角度で固定される。この状態は、磁化方向がθ1の角度で固定されている状態から見た場合には、磁気バイアスが印加された状態と同等となる。
図17は、形状異方性によって磁化の向きが変化した場合の磁気抵抗と磁界との関係を示す図である。図17においては、形状異方性による影響を受けない場合の磁気抵抗の変化を一点鎖線で示し、形状異方性による影響を受ける場合の磁気抵抗の変化を実線で示す。
上述のように、形状異方性による影響により固定された磁化方向Mが傾斜する状態は、磁気バイアスが印加された状態と同等と考えることができる。このような場合には、磁気抵抗の変化を示す線分は、一点鎖線で示す位置から、実線で示す位置に移動する。形状異方性による影響が強いほど、実線で示す部分は、図中矢印方向に大きく移動する。一方で、形状異方性による影響が弱いほど、実線で示す部分は、図中矢印方向に小さく移動する。形状異方性による影響は、上述のように積層体12の延在方向の長さが長いほど強くなる。
本実施の形態に係る磁気抵抗素子1Fのように、複数の積層体12を互いに離間して直線状に配置し、これらを接続電極41にて接続する構成とすることにより、同一の長さの磁気抵抗素子を単数の積層体で構成する場合と比較して、各積層体12の延在方向の長さを短くすることができる。これにより、磁気抵抗素子1F全体として、形状異方性による影響を小さくすることができる。
形状異方性による影響を小さくすることにより、図17において、磁気抵抗の変化を示す線分の図中矢印方向への移動を低減させることができる。これにより、磁界の変化に対して磁気抵抗素子1Fが線形的に応答する領域(磁気抵抗の変化を示す線分のうち直線状に延在する部分)において、磁界の値0を基準とした場合に、当該基準する対称性を良好に維持することができる。さらに、積層体12の形状を、積層方向から見た場合に、略正方形形状とすることにより、上記対称性をより良好に維持することができる。
(磁気センサ)
図18は、図14に示す磁気抵抗素子を複数個用いて構成される磁気センサの平面図である。図18を参照して、図14に示す磁気抵抗素子1Fを用いて構成される磁気センサ100F1について説明する。
図18に示すように、磁気センサ100F1は、4個の磁気抵抗素子1F1,1F2,1F3,1F4を用いてフルブリッジ回路を構成することにより設けられる。
磁気抵抗素子1F1,1F2,1F3,1F4の構成は、実施の形態5に係る磁気抵抗素子1Fの構成とほぼ同様である。磁気抵抗素子1F1,1F2,1F3,1F4に含まれる強磁性体層15の磁化方向Mは、全て同じ方向を向く。
磁気抵抗素子1F1,1F3に含まれる複数の積層体12が並ぶ方向は、同一方向である。たとえば、磁気抵抗素子1F1,1F3に含まれる複数の積層体12は、積層体12が有する2組の対辺のうちの一方の対辺が延在する方向に沿って直線状に並んでいる。
磁気抵抗素子1F2,1F4に含まれる複数の積層体12が並ぶ方向は、同一方向である。たとえば、磁気抵抗素子1F2,1F4に含まれる複数の積層体12は、積層体12が有する2組の対辺のうちの他方の対辺が延在する方向に沿って直線状に並んでいる。
磁気抵抗素子1F1,1F3に含まれる複数の積層体12が並ぶ方向と、磁気抵抗素子1F2,1F4に含まれる複数の積層体12が並ぶ方向とは、直交する。
磁気抵抗素子1F1の一端側は、配線パターン3Aを介して、出力電圧Vout2を取り出すための電極パッドP1と電気的に接続される。磁気抵抗素子1F1の他端側は、配線パターン3Bを介して、電源電圧Vccを印加するための電極パッドP3と電気的に接続される。磁気抵抗素子1F4の一端側は、配線パターン3Aを介して電極パッドP1と電気的に接続されている。磁気抵抗素子1F4の他端側は、配線パターン3Dを介して、グランドに接続される電極パッドP4と電気的に接続される。
磁気抵抗素子1F2の一端側は、配線パターン3Cを介して、出力電圧Vout1を取り出すための電極パッドP2と電気的に接続される。磁気抵抗素子1F2の他端側は、配線パターン3Bを介して、電極パッドP3と電気的に接続される。磁気抵抗素子1F3の一端側は、配線パターン3Cを介して、電極パッドP2に電気的に接続される。磁気抵抗素子1Cの他端側は、配線パターン3Dを介して電極パッドP4に接続される。
磁気抵抗素子1F1,1F4が、配線パターン3B,3A,3Dおよび電極パッドP3,P1,P4を介して直列接続されることにより、第1の直列回路(ハーフブリッジ回路)が形成される。磁気抵抗素子1F2,1F3が、配線パターン3B,3C,3Dおよび電極パッドP3,P2,P4を介して直列接続されることにより、第2の直列回路(ハーフブリッジ回路)が形成される。第1の直列回路(ハーフブリッジ回路)および第2の直列回路(ハーフブリッジ回路)が、電極パッドP3,P4を介して並列接続されることにより、フルブリッジ回路が形成される。磁気抵抗素子1F1,1F3は、正出力性を有し、磁気抵抗素子1F2,1F4は負出力性を有する。
電極パッドP3と電極パッドP4との間に電源電圧Vccを印加すると、電極パッドP1および電極パッドP2からは、磁界強度に応じて、出力電圧Vout2,Vout1が取り出される。出力電圧Vout2,Vout1は、差動増幅器(不図示)を介して差動増幅される。
このように、本実施の形態に係る磁気センサ100F1にあっては、バーバーポール電極を備えない磁気抵抗素子1F1,1F2,1F3,1F4を用いて、ブリッジ回路を構成することにより、感磁領域の減少を抑制し、磁気抵抗変化率を向上させることができる。また、温度などの外部環境の変化に対する耐性を向上させることができる。
また、磁気抵抗素子1F1,1F2,1F3,1F4にバーバーポール電極が設けられていないため、バーバーポール電極の加工ばらつきが生じない。このため、磁気抵抗素子の電気抵抗のばらつきが小さく、フルブリッジ回路を構成した場合に、オフセット電圧を合わせやすくなる。
さらに、上述のように各磁気抵抗素子1F1,1F2,1F3,1F4において、複数の積層体12を互いに離間して直線状に配置し、これらを接続電極41にて接続する構成とすることにより、同一の長さの磁気抵抗素子を単数の積層体で構成する場合と比較して、各積層体12の延在方向の長さを短くすることができる。これにより、磁気抵抗素子1F1,1F2,1F3,1F4全体として、形状異方性による影響を小さくすることができる。これにより、磁界の変化に対して磁気抵抗素子1F1,1F2,1F3,1F4が線形的に応答する領域において、磁界の値0を基準とした場合に、当該基準する対称性を良好に維持することができる。
(磁気センサの第2変形例)
図19は、第2変形例における磁気センサの平面図である。図19を参照して、第2変形例における磁気センサ100F2について説明する。
図19に示すように、第2変形例における磁気センサ100F2は、実施の形態5に係る磁気センサ100F1と同様に、4個の磁気抵抗素子1F11,1F12,1F13,1F14を用いてフルブリッジ回路を構成することにより設けられる。
磁気センサ100F2は、実施の形態5に係る磁気センサ100F1と比較した場合に、磁気抵抗素子1F11,1F12,1F13,1F14の構成が相違する。
各磁気抵抗素子1F11,1F12,1F13,1F14は、平行に並ぶ複数の感磁部20と、互いに隣り合う感磁部20の端部同士を交互に接続する複数の接続電極40とによってミアンダ状に形成されている。
複数の感磁部20のそれぞれは、短手方向と長手方向とを有する短冊形状を有する。接続電極40は、感磁部20よりも短い短冊形状を有する。各磁気抵抗素子1F11,1F12,1F13,1F14は、長い短冊形状の感磁部20と、短い短冊形状の接続電極40とを交互に直交させて接続することで、ミアンダ状に形成される。
磁気抵抗素子1F11,1F13に含まれる複数の感磁部20のそれぞれは、同一方向に沿って延在し、延在方向に直交する方向に所定の間隔をあけて並んで設けられている。磁気抵抗素子1F12,1F14に含まれる複数の感磁部20のそれぞれは、同一方向に沿って延在し、延在方向に直交する方向に所定の間隔をあけて並んで設けられている。磁気抵抗素子1F11,1F13に含まれる複数の感磁部20の延在方向は、磁気抵抗素子1F12,1F14に含まれる複数の感磁部20の延在方向と直交する。
感磁部20は、複数の積層体12と複数の接続電極41とを含む。複数の積層体12は、強磁性体層の磁化方向Mが揃うように互いに離間して設けられている。複数の積層体12は、2組の対辺のうちの一方の対辺が延在する方向に沿って直線状に並んで設けられている。接続電極41は、互いに隣り合う積層体12を電気的に接続する。
磁気抵抗素子1F11,1F12,1F13,1F14に含まれる全ての積層体12は、磁化方向Mが揃うように設けられている。
このように構成した場合であっても、第2変形例における磁気センサ100F2は、磁気センサ100F1とほぼ同様の効果が得られる。
(実施の形態6)
図20は、本実施の形態に係る磁気抵抗素子の平面図である。図20を参照して、本実施の形態に係る磁気抵抗素子1Gについて説明する。
図20に示すように、本実施の形態に係る磁気抵抗素子1Gは、実施の形態5に係る磁気抵抗素子1Fと比較した場合に、複数の積層体12と複数の電極部の並び方が相違する。その他の構成については、ほぼ同様である。
複数の積層体12は、強磁性体層の磁化方向が揃うように互いに離間して設けられている。複数の積層体12の各々は、積層方向から見た場合に互いに対向する2組の対辺を有する矩形形状を有する。
複数の積層体12および複数の電極部は、実施の形態5に係る磁気抵抗素子1Fに含まれる複数の積層体12および複数の電極部と同様に、積層体12の積層方向から見た場合に、上記2組の対辺のうち一方の対辺が延在する方向に沿って電極部と積層体12とが交互に並んでいる。これに加えて、複数の積層体12は、上記2組の対辺のうち他方の対辺が延在する方向にずれて設けられている。
具体的には、複数の積層体12は、上記2組の対辺のうち他方の対辺が延在する方向の一方側に所定のピッチでずれている。なお、複数の積層体12のそれぞれの中心は、直線状に並ぶことが好ましい。
以上のように本実施の形態に係る磁気抵抗素子1Gは、ジグザグ状に形成されている。このように構成した場合であっても、交換結合磁界によって強磁性体層の磁化方向を固定することができる。このため、個々の積層体12上に複数のバーバーポール電極を設ける必要がないため、バーバーポール電極の電気抵抗が強磁性体層の電気抵抗に加算されることを防止できる。この結果、本実施の形態に係る磁気抵抗素子1Gにあっても、実施の形態1と同様に、感磁領域の減少を抑制し、磁気抵抗変化率を向上させることができる。
また、互いに離間して所定の方向に並ぶように設けられた複数の積層体12を接続電極41にて接続する構成とすることにより、同一の長さの磁気抵抗素子を単数の積層体で構成する場合と比較して、上述の形状異方性による影響を低減させることができる。これにより、磁界の変化に対して磁気抵抗素子1Gが線形的に応答する領域において、磁界の値0を基準とした場合に、当該基準する対称性を良好に維持することができる。さらに、積層体12の形状を積層方向から見た場合に、略正方形形状とすることにより、上記対称性をより良好に維持することができる。
(磁気センサ)
図21は、図20に示す磁気抵抗素子を複数個用いて構成される磁気センサの平面図である。図21を参照して、図20に示す磁気抵抗素子を複数個用いて構成される磁気センサ100G1について説明する。
図21に示すように、磁気センサ100G1は、4個の磁気抵抗素子1G1,1G2,1G3,1G4を用いてフルブリッジ回路を構成することにより設けられる。
磁気センサ100G1は、実施の形態5に係る磁気センサ100F1と比較した場合に、磁気抵抗素子1G1,1G2,1G3,1G4の構成が相違する。
磁気抵抗素子1G1,1G2,1G3,1G4の構成は、上記磁気抵抗素子1Gの構成とほぼ同様である。磁気抵抗素子1G1,1G2,1G3,1G4に含まれる強磁性体層15の磁化方向Mは、全て同じ方向を向く。
磁気抵抗素子1G1,1G3に含まれる複数の接続電極42が延在する方向は、同一方向である。磁気抵抗素子1G1,1G3に含まれる複数の接続電極42は、接続電極42と積層体12とが交互に並ぶ方向に直交する方向に延在する。
磁気抵抗素子1G2,1G4に含まれる複数の接続電極42が延在する方向は、同一方向である。磁気抵抗素子1G2,1G4に含まれる複数の接続電極42は、接続電極42と積層体12とが交互に並ぶ方向に直交する方向に延在する。
磁気抵抗素子1G1,1G3に含まれる複数の接続電極42が延在する方向と、磁気抵抗素子1G2,1G4に含まれる複数の接続電極42が延在する方向とは、直交する。
当該磁気センサ100G1においては、磁気抵抗素子1G1,1G3は、正出力性を有し、磁気抵抗素子1G2,1G4は負出力性を有する。電極パッドP3と電極パッドP4との間に電源電圧Vccを印加すると、電極パッドP1および電極パッドP2からは、磁界強度に応じて、出力電圧Vout2,Vout1が取り出される。出力電圧Vout2,Vout1は、差動増幅器(不図示)を介して差動増幅される。
このように、本実施の形態に係る磁気センサ100G1にあっては、バーバーポール電極を備えない磁気抵抗素子1G1,1G2,1G3,1G4を用いて、ブリッジ回路を構成することにより、感磁領域の減少を抑制し、磁気抵抗変化率を向上させることができる。また、温度などの外部環境の変化に対する耐性を向上させることができる。
また、磁気抵抗素子1G1,1G2,1G3,1G4にバーバーポール電極が設けられていないため、バーバーポール電極の加工ばらつきが生じない。このため、磁気抵抗素子の電気抵抗のばらつきが小さく、フルブリッジ回路を構成した場合に、オフセット電圧を合わせやすくなる。
さらに、上述のように各磁気抵抗素子1G1,1G2,1G3,1G4において、互いに離間して所定の方向に並ぶように設けられた複数の積層体12を接続電極41にて接続する構成とすることにより、同一の長さの磁気抵抗素子を単数の積層体で構成する場合と比較して、上述の形状異方性による影響を低減させることができる。これにより、磁界の変化に対して磁気抵抗素子1Gが線形的に応答する領域において、磁界の値0を基準とした場合に、当該基準する対称性を良好に維持することができる。
(磁気センサの第3変形例)
図22は、第3変形例における磁気センサの平面図である。図22を参照して、第3変形例における磁気センサ100G2について説明する。
図22に示すように、第3変形例における磁気センサ100G2は、実施の形態6に係る磁気センサ100G1と同様に、4個の磁気抵抗素子1G11,1G12,1G13,1G14を用いてフルブリッジ回路を構成することにより設けられる。
磁気センサ100G2は、実施の形態6に係る磁気センサ100G1と比較した場合に、磁気抵抗素子1G11,1G12,1G13,1G14の構成が相違する。
各磁気抵抗素子1G11,1G12,1F13,1G14は、平行に並ぶ複数の感磁部20Gと、互いに隣り合う感磁部20Gの端部同士を交互に接続する複数の接続電極40とによってミアンダ状に形成されている。
感磁部20Gは、互いに離間して設けられた複数の積層体12を複数の接続電極42によってジグザグ状に接続することにより構成される。感磁部20Gにおいては、複数の積層体12は、当該積層体12が有する2組の対辺のうち一方の対辺が延在する方向に沿って延在する方向に互いに離間して並んで設けられ、かつ、上記2組の対辺のうち他方の対辺が延在する方向の一方側に所定のピッチでずれて設けられている。感磁部20Gにおいて、複数の接続電極42と複数の積層体12とは、上記2組の対辺のうち一方の対辺が延在する方向に沿って延在する方向に交互に並ぶ。
磁気抵抗素子1G11,1G13に含まれる複数の感磁部20Gのそれぞれは、同一方向(DR1方向)に向かうようにジグザグ状に延在し、DR1方向に直交する方向に所定の間隔をあけて並んで設けられている。
磁気抵抗素子1G12,1G14に含まれる複数の感磁部20Gのそれぞれは、同一方向にDR1方向)に向かうようにジグザグ状に延在し、DR1方向に直交する方向に所定の間隔をあけて並んで設けられている。
磁気抵抗素子1G11,1G13に含まれる複数の接続電極42が延在する方向と、磁気抵抗素子1G12,1G14に含まれる複数の接続電極42が延在する方向とは、直交する。
磁気抵抗素子1G11,1G12,1G13,1G14に含まれる全ての積層体12は、磁化方向Mが揃うように設けられている。
このように構成した場合であっても、第3変形例における磁気センサ100G2は、磁気センサ100G1とほぼ同様の効果が得られる。
(磁気センサの第4変形例)
図23は、第4変形例における磁気センサの平面図である。図23を参照して、第4変形例における磁気センサ100H1について説明する。
図23に示すように、第4変形例における磁気センサ100H1は、4個の磁気抵抗素子1H1,1H2,1H3,1H4を用いてフルブリッジ回路を構成することにより設けられている。
磁気センサ100H1は、実施の形態1に係る磁気センサ100と比較した場合に、磁気抵抗素子1H1,1H2,1H3,1H4の構成が相違する。
各磁気抵抗素子1H1,1H2,1H3,1H4に含まれる積層体12H1,12H2,12H3,12H4は、磁化方向が揃うようにしてミアンダ状に形成されている部分21と、ミアンダ状に形成されている部分21の両端に接続される電極下地部22を有する。
積層体12H1,12H2,12H3,12H4は、強磁性体層15となる強磁性体膜の磁化方向が交換結合磁界によって所定の方向に固定された上述の積層体膜をパターニングすることにより、一体に形成されている。
ミアンダ状に形成されている部分21は、平行に並ぶ複数の線状部21aと、互いに隣り合う線状部21aの端部同士を交互に接続する複数の折り返し部21bとによって構成される。
磁気抵抗素子1H1、1H3において、積層体12が有する複数の線状部21aは、同一方向に沿って延在する。磁気抵抗素子1H2,1H4において、積層体12が有する複数の線状部21aは、同一方向に延在する。
磁気抵抗素子1H1,1H3に含まれる線状部21aの延在方向は、磁気抵抗素子1H2,1H4に含まれる線状部21aの延在方向と直交する。
磁気抵抗素子1H1と磁気抵抗素子1H2とは、共通の電極下地部22を有する。磁気抵抗素子1H1と磁気抵抗素子1H2との共通の電極下地部22上には、配線パターン3Bおよび電源電圧Vccを印加するための電極パッドP3が形成される。
磁気抵抗素子1H2と磁気抵抗素子1H3とは、共通の電極下地部22を有する。磁気抵抗素子1H2と磁気抵抗素子1H3との共通の電極下地部22上には、配線パターン3Cおよび出力電圧Vout1を取り出すための電極パッドP2が形成される。
磁気抵抗素子1H3と磁気抵抗素子1H4とは、共通の電極下地部22を有する。磁気抵抗素子1H3と磁気抵抗素子1H4との共通の電極下地部22上には、配線パターン3Dおよびグランドに接続される電極パッドP4が形成される。
磁気抵抗素子1H4と磁気抵抗素子1H1とは、共通の電極下地部22を有する。磁気抵抗素子1H4と磁気抵抗素子1H1との共通の電極下地部22上には、配線パターン3Aおよび出力電圧Vout2を取り出すための電極パッドP1が形成される。
当該磁気センサ100H1においては、磁気抵抗素子1H1,1H3は、正出力性を有し、磁気抵抗素子1H2,1H4は負出力性を有する。電極パッドP3と電極パッドP4との間に電源電圧Vccを印加すると、電極パッドP1および電極パッドP2からは、磁界強度に応じて、出力電圧Vout2,Vout1が取り出される。出力電圧Vout2,Vout1は、差動増幅器(不図示)を介して差動増幅される。
本実施の形態に係る磁気センサ100H1にあっては、バーバーポール電極を備えない磁気抵抗素子1H1,1H2,1H3,1H4を用いて、ブリッジ回路を構成することにより、感磁領域の減少を抑制し、磁気抵抗変化率を向上させることができるとともに、温度などの外部環境の変化に対する耐性を向上させることができる。
また、磁気抵抗素子1H1,1H2,1H3,1H4にバーバーポール電極が設けられていないため、バーバーポール電極の加工ばらつきが生じない。このため、磁気抵抗素子の電気抵抗のばらつきが小さく、フルブリッジ回路を構成した場合に、オフセット電圧を合わせやすくなる。
また、電極下地部22を設け、電極下地部22上に、配線パターン3A,3B,3C,3Dおよび電極パッドP1,P2,P3,P4を形成することにより、配線パターン3Aと電極パッドP1,配線パターン3Bと電極パッドP3、配線パターン3Cと電極パッドP2、および配線パターン3Dと電極パッド4のそれぞれにおいて段差が形成されることを防止することができる。これにより、配線パターン3A,3B,3C,3Dおよび電極パッドP1,P2,P3,P4が断線することを防止でき、信頼性を向上させることができる。
また、各積層体12H1,12H2,12H3,12H4は、積層体膜をミアンダ状にパターニングすることに形成されているため、複数の積層体の端部同士を接続電極にて交互に接続して磁気抵抗素子をミアンダ状に形成する場合と比較して、接続電極を設ける必要がなくなる。このため、接続電極が積層体の段差によって断線されることがなくなる。この点においても、磁気抵抗素子の信頼性を向上させることができる。
(磁気センサの第5変形例)
図24は、第5変形例における磁気センサの平面図である。図24を参照して、第5変形例における磁気センサ100H2について説明する。
図24に示すように、第5変形例における磁気センサ100H2は、第4変形例における磁気センサ100H1と比較した場合に、複数の折り返し部21b上のそれぞれに、強磁性体層よりも電気抵抗の低い導電層44が設けられている点において相違する。その他の構成については、ほぼ同様である。
各磁気抵抗素子1H1,1H2,1H3,1H4において、導電層44が設けられていない場合には、積層体12H1,12H2,12H3,12H4内では、線状部21aに位置する強磁性体層と、折り返し部21bに位置する強磁性体層の両方に電流が流れる。
線状部21aに位置する強磁性体層を流れる電流の方向と、折り返し部21bに位置する強磁性体層を流れる電流の方向とは、直交する。このため、折り返し部21bに位置する強磁性体層に電流が流れた場合には、線状部21aに位置する強磁性体層から生成される出力の一部が、折り返し部21bに位置する強磁性体層から生成される出力によって打ち消される。これにより、取出される出力電圧Vout2,Vout1が低下する場合がある。
本実施の形態においては、強磁性体層(より具体的には第2強磁性体層)よりも電気抵抗の低い導電層44を折り返し部21b上(より具体的には折り返し部21bに位置する第2強磁性体層上)に設けることにより、折り返し部21bにおいて電流は、導電層44を流れる。このため、線状部21aに位置する強磁性体層から生成される出力の一部が、折り返し部21bに位置する強磁性体層から生成される出力によって打ち消されることを防止することができる。
上述した実施の形態5,6に係る磁気抵抗素子、第2変形例から第6変形例における磁気センサに具備される磁気抵抗素子に含まれる積層体にあっては、基板10側から順に反強磁性体層14と強磁性体層15とがこの順で積層されることにより構成される場合を例示して説明したが、これに限定されず、実施の形態4のように、基板10側から強磁性体層15と反強磁性体層14とがこの順で積層されることにより構成されてもよい。
以上、本発明の実施の形態および実施例について説明したが、今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。