JP6295606B2 - 眼内レンズ - Google Patents

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Description

本発明は、被検者眼の眼内に設置される眼内レンズに関する。
白内障手術で水晶体を摘出した後の眼内(嚢内)に、眼内レンズを挿入する手法が一般的に知られている。眼内レンズは、所定の屈折力を有し水晶体の代替となる光学部と、光学部を眼内で支える一対の支持部から構成される。例えば、光学部と支持部とが一体的に形成された折り曲げ可能な1ピース型の眼内レンズが知られている(特許文献1参照)。
特表2005−507286号公報
このような折り曲げ可能な眼内レンズは、眼内レンズ挿入器具(以下、インジェクターと記す)によって小さく折り曲げられ、患者の眼球に形成した切開創から眼内に挿入される。患者の負担を減らすためには、切開創をできるだけ小さくすることが好ましい。切開創をできるだけ小さくするためには、インジェクターの先端形状(断面積)が小さいことが好ましい。インジェクターの先端形状(断面積)が小さくても眼内レンズを眼内へ射出できるように、眼内レンズはインジェクター内で出来るだけ小さく折り曲げることが求められている。
また、インジェクターの先端から射出される折り曲げられた眼内レンズは、患者の眼内で展開される。展開された眼内レンズの支持部が嚢からはみ出た場合、展開した支持部が角膜内皮に接触してしまう可能性がある。また、眼内レンズによって期待する患者の眼屈折力が得られるように、展開された眼内レンズを患者の眼内で安定して保持することが求められている。
本発明は眼内レンズを小さく折り曲げることができるとともに、眼内レンズを速やかに眼内に配置でき、眼内レンズを眼内で安定して保持することができる眼内レンズを提供することを技術課題とする。
上記課題を解決するために、本発明は以下のような構成を備えることを特徴とする。
(1)光学部と、該光学部を眼内で固定保持するための一対の支持部と、を備える折り曲げ可能な眼内レンズにおいて、前記一対の支持部は、前記光学部の中心を通る第1直線に沿って前記光学部の縁から外径方向に延びるように形成され前記光学部の中心に対して対称に設けられる一対の根元部と,該根元部から所定角度だけ折り曲げられた状態で先端に向けて内側に湾曲しながら前記光学部の周方向に延びる腕部であって,前記根元部から所定角度だけ折り曲げられた状態で腕部の基端から腕部全長の少なくとも30%となる地点までは第2直線に沿って伸びるよう形成された腕部と、を有し前記第1直線前記第2直線とがなす前記所定角度は85度以上120度以下とされ、前記支持部の長さ(L1)は7.0mm以上7.8mm以下であり、前記光学部及び前記一対の支持部を含む前記眼内レンズの最外径は12.5mm以上13.5mm以下であることを特徴とする。
本発明によればインジェクターを用いて眼内レンズを小さく折り曲げることができるとともに、眼内レンズを速やかに眼内に配置でき、眼内で安定して保持することのできる眼内レンズを提供できる。
1ピース型の眼内レンズの構成図である。 インジェクターの外観概略図である。 プランジャーの構成の説明図である。 インジェクター内での眼内レンズの押出動作の説明図である。 眼内レンズがインジェクターから嚢内に射出された際の説明図である。 1ピース型の眼内レンズの変容例である。
本発明の実施形態を図面に基づき説明する。図1は1ピース型の眼内レンズ100の構成図であり、図1(a)に正面図、図1(b)に側面図が示されている。眼内レンズ100は、所定の屈折力を有する光学部110と、光学部110に接続されるループ形状の一対の支持部120とから構成される。
なお、図1および図6(変容例であり後述する)で示す本実施形態の眼内レンズ100は各々の実施形態で一対の支持部120が同じ構造となる。また、一対の支持部120は眼内レンズ100の光学部110の中心(光軸L)に対して対照に配置している。図1および図6において支持部120の符合等は片方の支持部120のみ表記している。
1ピース型の眼内レンズ100は、後述する眼内レンズ挿入器具1(以下、インジェクターと記す)を用いた折り曲げ可能な柔軟性と、折り曲げられた状態から元の状態に戻る復元性と、支持部120によって光学部110を眼内で保持できる反発力と、を有するように周知の軟性眼内レンズ材料で形成される。例えば、眼内レンズ材料としては、例えば常温で折り曲げ可能なアクリル樹脂を好適に用いることができる。このような材料を用いてモールディング加工、切削加工等を行うことで、光学部110と支持部120とが一体形成される。
<光学部>
光学部110は、術眼に所定の屈折力を与える円盤形状の部材であり、眼内で角膜側に位置される前面111と、眼内で網膜側に位置される後面112と、前面111と後面112とを接続すると共に所定の幅(厚さ)を有する縁(以下、コバと記す)115から構成される。前面111と後面112は所定の曲率の曲面に形成される。コバ115が後面112と交わる位置には、眼内レンズ100を眼内への取り付けた際、水晶体嚢(以下、嚢と記す)の後嚢に接触する(食い込む)形状(角度)のエッジ(図番号を省略する)が形成されている。コバ115のエッジを後嚢に密着させることで、角膜上皮細胞の増殖が抑制され、後発白内障による白濁が発生し難くなる。
なお、本実施形態の光学部110の前面111は曲面と斜面で構成されている(図示略す)。曲面は所定の屈折力をもたせるものである。また、曲面は円形であり、曲面の曲率半径が光学部110の光軸Lと一致するように配置される。曲面の周囲には全周にわたって周辺面が形成されている。周辺面は全周にわたって光軸Lに対して斜面で形成されている。周辺面は支持部120の剛性を確保すると共に、眼内レンズ100の光軸方向の厚さを低減させる効果がある。斜面は曲面と接する側が最も後面112に近くなり、曲面から離れるほど後面112からも離れてゆく。斜面は曲面の端からコバ115まで形成される。
光学部110の外径(R2)は、伸縮する瞳孔の瞳孔径を配慮することが望ましい。瞳孔は明所では縮瞳するため小さい瞳孔径となり、暗所では散瞳するため大きい瞳孔径となる。瞳孔径は凡そ2〜8mmの間で変化する。光学部110の外径が瞳孔径よりも小さいほど、瞳孔を通過して眼底へ向かう光が光学部110の周囲のコバ115や支持部120等で不要な屈折を生じ易くなる。不要な屈折は患者に不快なフレアやゴーストを感じさせる要因となる。
一方、通常の成人眼の嚢の大きさは直径が9mm程度とされている。光学部110の外径が嚢の大きさよりも大きい場合、嚢からの応力が光学部110に直接かかり、光学部110が歪んでしまう可能性がある。光学部110が歪むと所定の屈折力を得られなくなる可能性がある。また、眼内レンズ100の応力が嚢に負担を掛け、嚢に損傷を与えてしまう可能性もある。
また、手術状況によっては、嚢外(前房)で復元した眼内レンズ100を鑷子等を用いて眼内で再度折り曲げ、折り曲げられた眼内レンズ100を直径4.5mm程度に連続円形切嚢(CCC)した前嚢から嚢内へと挿入する挿入方法も考えられる。光学部110が大きい場合、眼内レンズ100を折り曲げたとしても断面積または体積が大きく、眼内レンズ100を切開した前嚢から嚢内へと入れ難くなる。同様に、光学部110が大きいほど大きな角膜切開創が必要になる。
前述した嚢の大きさ,変化する瞳孔径,嚢内への挿入し易さ,角膜切開創から眼内への挿入し易さ等を配慮し、眼内レンズ100の光学部110の外径は5.0〜7.0mmが好ましい。本実施形態では、光学部110の外径をより好ましい5.5〜6.5mmとしている。
<支持部>
眼内レンズ100を嚢内に設置した際、光学部110に期待する屈折力を持たせるためには、眼内レンズ100の光学部110を嚢内で安定して固定保持させることが好ましい。本実施形態では眼内レンズ100を眼内で安定して固定保持させるため、光学部110の周辺に一対の支持部120を形成させている。より詳しくは、支持部120の応力を利用して、眼内レンズ100は嚢に対して一定の力をかける。
本実施形態の眼内レンズ100の支持部120は、一端が光学部110のコバ115に接続され、他端(先端P1)は開放端とされる。また、支持部120は、腕部123と根元部125とから構成される。根元部125は光学部110のコバ115から光学部110の外径方向に延びるように形成され、根元部125は光学部110の中心(光軸L)に対して対称となる形で2つ設けられる。腕部123はコバ115から光学部110の外形方向に延びる根元部125から所定角度(θ1)だけ折り曲げられた状態で、先端に向けて内側に湾曲しながら光学部110の周方向に延びる。根元部125と腕部123のより詳しい説明は後述する。
<眼内レンズの最外径>
光学部110と一対の支持部120を組合せた眼内レンズ100の最外径(R1)について説明する。なお、眼内レンズ100の最外径とは、眼内レンズ100に応力がかかっていない状態の大きさ(最大全長)を示す。眼内レンズ100の最外径は、嚢内に眼内レンズ100を設置した際、嚢から支持部120に加えられる応力で光学部110を保持させるため、人眼の嚢の直径を配慮した大きさが好ましい。前述の通り嚢の大きさは直径9mm程度とされている。よって眼内レンズ100の最外径は12.0mm以上13.5mm以下としている。なお、本実施形態の眼内レンズにおいては、この最外径の範囲を超えないように眼内レンズの他の設計値が設定される。
なお、本実施形態の軟性眼内レンズ100は光学部110に対して支持部120の断面積が小さい。断面積の違いによって、支持部120は光学部110よりも柔らかい。また、断面積の違いによって根元部125よりも腕部123の方が柔らかい。なお、断面積が小さく柔らかいほど眼内レンズ100の構造保持力や応力が弱くなり、眼内レンズ100の構造が変形し易くなる。嚢内で復元した眼内レンズ100の最外径が嚢の直径より大きくても、嚢の直径を超える部分が支持部120であるならば、眼内レンズ100の応力によって嚢が損傷してしまう可能性は低い。
なお、本実施形態の支持部120は、光学部110から離れるほど断面積が小さくなってゆく。断面積が小さくなるほど嚢に対する応力や支持部120の構造保持力が弱まる。よって、支持部120を長くし過ぎると、支持部120の先端が嚢の内側外縁に沿わずに瞳孔方向へと向かい、支持部120の先端付近が術眼の瞳孔領域に入ってしまう可能性がある。瞳孔領域に入った支持部120は、眼底に向かう光に対して不要な反射や減光を生じさせてしまう可能性がある。
<根元部>
根元部125は、術眼に所定の屈折力を与える光学部110と嚢の内側外縁に接し沿わせるための腕部123とを繋げる役割を有する。なお、根元部125自体もまた、その外縁が嚢に接するように形成されており、眼内で光学部110を固定保持させる役目も果たす。さらに、根元部125は眼内レンズ100を安定して小さく折り曲げるための大きさとされている(詳しくは後述する)。
腕部123はその形状(幅や厚さ)によって、光学部110や根元部125よりも軟性を有する。一方、根元部125はその形状によって光学部110に続いて変形し難い。コバ115から光学部110の外径方向に延びる根元部125の長さが長いほど、嚢に対して押圧し易くなるため、光学部110の嚢内固定性が良くなる。しかし、嚢の大きさは直径9mm程度とされており、術者が連続円形切嚢(CCC)する前嚢の開口径は直径4.5mm程度とされているため、長すぎる根元部は眼内レンズの嚢内での取り扱いを行い難くする原因となる。したがって、根元部125の長さは、嚢の大きさ,連続円形切嚢(CCC)の大きさ、プランジャー40による押し出し性、等を配慮して決定される。本実施形態では光学部110の嚢内固定性に作用する光学部110と一対の根元部125を組合せた距離H−H’を10mm未満としている(詳しくは後述する)。
本実施形態の支持部120は光学部110のコバ115から光学部110の外径方向に延びるように形成される。また、根元部125の幅Waは腕部123の幅Wbよりも広く、根元部125の厚さd2は腕部123の厚さd1よりも厚く形成される。即ち、根元部125の断面積の方が腕部123の断面積より大きく形成されている。
また、距離H−H’は、根元部125の幅の中心になる地点W1と光学部110の中心(光軸L)とを結ぶ線分W1−Lが、眼内レンズ100の輪郭(一対の支持部の外縁)と交わる地点(地点Hと地点H’)間の距離とされる。
根元部125は光学部110のコバ115から突出して形成されているため、連続円形切嚢からはみ出しやすい(図5参照)。よって、距離H−H’は、展開した眼内レンズ100の嚢内での固定保持性、プランジャー40による押し出し性、連続円形切嚢(CCC)への引っ掛かり難さを配慮した高さが好ましい。距離H−H’は8.0mm以上9.5mm以下が好ましい。本実施形態では、距離H−H’をより好ましい8.2mm以上9.2mm以下としている。
なお、根元部125と光学部110とが繋がる箇所の眼内レンズ100の輪郭形状(図1のR3)は、支持部120が発生させる応力に影響する。輪郭部分(R3)の半径が大きいほど根元部125の断面積が大きくなるため、支持部120全体の応力が大きくなる。例えば、光学部110のコバ115から外径方向に延びる根元部125の長さを短くするほど支持部120の応力が減少するが、輪郭部分(R3)の半径を大きくすることで支持部120の応力を増加させることができる。輪郭部分(R3)は半径0.6mmを超える曲線で構成することが好ましく、本実施形態では輪郭形状(R3)をより好ましい半径1.9mmの曲線で形成している。
<腕部>
腕部123は、腕部123を嚢に沿わせることで光学部110の位置を安定させる役割を有する。また、本実施形態の腕部123は、眼内レンズ100が眼内に取り付けられた状態で、支持部120に生じる応力によって腕部123が嚢に沿う形状で形成している。例えば、本実施形態の腕部123の幅Wbは、好ましくは0.20mm〜0.65mmであり、より好ましくは0.3mm〜0.55mmである。また、腕部123の厚さd1は、好ましくは0.1mm〜0.55mm、より好ましくは0.2mm〜0.45mmである。腕部123の幅及び厚さが上記の範囲よりも小さいと、インジェクター1で眼内レンズ100を折り曲げる際の支持部120が破損や、適正な反発力(応力)が得られない可能性が高くなる。一方、腕部123の幅及び厚さが上記の範囲よりも大きいと、腕部123に生じる反発力によって支持部120全体が嚢に沿って好適に位置され難くなる可能性が高くなる。なお、このような腕部123の幅及び厚さ(断面積)は、上記の条件を満たすことができるように、眼内レンズ材料の種類に応じて適宜選択されれば良い。
また、腕部123の幅(断面積)が細く形成されることで、インジェクター1で眼内レンズ100を折り曲げる際、タッキングによって光学部110上に支持部120が載せられたとき、押出軸に垂直な方向から見たときの眼内レンズ100の断面積の最大値の増加量が抑えられる。その為、本実施形態では支持部120を光学部110の中心(光軸L)付近に乗せたときの断面積の増加量が抑えられる。つまり、支持部120が光学部110上へと折り曲げられたとき、腕部123の先端が光学部110の中心(光軸L)まで達するように、腕部123から根元部125までの長さを形成できる。そして、眼内レンズ100が嚢に取り付けられたとき、支持部120を構成する腕部123の広い領域が嚢に接触されるようになり、眼内レンズ100が嚢内でより安定して位置されるようになる。
また、腕部123が細く形成されることで、眼内レンズ100が嚢内で開放される際、光学部110上から支持部120が離れ易くなる。折り曲げ可能な眼内レンズ100は所定の粘性を有する為、光学部110上に支持部120が載せられた状態で折り曲げられると、眼内で眼内レンズ100が開放されるとき、支持部120が光学部110に接着されて離れない場合がある。そこで、本実施形態では支持部120の腕部123を細くして、光学部110との接触面積をできるだけ少なくすることで、眼内レンズ100の復元力によって、光学部110上から支持部120を離れ易くしている。
<支持部の長さ>
眼内レンズ100の良好な射出を確保し、支持部120の適度な応力による嚢内固定の安定性を両立させるため、支持部120の長さL1は7.0mm以上7.8mm以下が好ましい。本実施形態では、支持部120の長さL1をより好ましい7.4mm以上7.6mm以下としている。なお、支持部120の長さとは、支持部120の基端から先端までの長さである。より詳しくは、眼内レンズ100を光軸L方向からみた際の支持部120の輪郭であり、光学部110のコバ115から支持部120の先端まで支持部120の輪郭を辿った長さになる。なお、本実施形態の眼内レンズ100は支持部120はコバ115から光学部110の外径方向に湾曲して延びるため、支持部120の長さL1は眼内レンズ100の最外径を形成する輪郭側(地点La〜Lb)としている。また、本実施形態の眼内レンズ100の支持部120は先端が半弧形状になるため、支持部120の長さL1は半弧形状を除外している。なお、本実施形態では、支持部120の地点P2にて表される眼内レンズの最外径により形成される仮想の円周よりも内側に向くように、支持部先端が湾曲している。
長い腕部123は嚢の内側外縁に沿わずに瞳孔方向へ向かい易く、腕部123の先端部が瞳孔領域に入ってしまい、患者に不快な反射や減光を生じさせてしまう可能性がある。また、長い腕部123は折り曲げられた眼内レンズ100が嚢内で展開する際、支持部120が嚢から溢れ出易くなり、眼内レンズ100の良好な射出を行い難くなる。一方、短い腕部は嚢の内側外縁に這わせる領域が短くなるため、眼内レンズ100の光学部110を嚢内固定が安定し難くなる。
<根元部と腕部の角度>
一対の根元部125の幅の中心(地点W1)と光学部110の中心(光軸L)とを結ぶ線分W1−Lと、腕部123の幅の中心を結ぶ線とが成す角度をθ1とする。光学部110の大きさは嚢の大きさ,変化する瞳孔径を配慮する必要がある。また、小さい切開創で眼内に挿入できるように、眼内レンズ100を小さく折り曲げる必要がある。更には、支持部120で眼内レンズ100の光学部110を患者の眼内で安定保持する必要がある。
眼内レンズ100の良好な射出を確保し、支持部120の適度な応力による嚢内固定の安定性を両立させるため、本実施形態では角度θ1を、好ましい85°以上120°以下の範囲としている。なお、本実施形態では、腕部123は基端側から長さL1の30%となる地点まで角度θ1で延びる。角度θ1が85°よりも小さい場合、眼内レンズ100を所定の外径にするためには腕部123を長くする必要がある。長い腕部123は折り曲げた眼内レンズ100が嚢内で展開される際、腕部123の振れ量が大きくなる。腕部123の振れ量が大きくなるほど腕部123が嚢からはみ出す可能性が高くなり、はみ出た腕部123が角膜内皮等に接触してしまう可能性が高くなる。また、腕部123が嚢から溢れ出た場合、術者ははみ出た腕部123を嚢内へと収める手間が生じる。
一方、角度θ1が120°よりも大きい場合、インジェクター1で眼内レンズ100を折り曲げる際にタッキングが行い難くなる。より詳しくは、腕部123は断面積が小さいため、腕部123は光学部110や根元部125よりも柔らかい。インジェクター1の押出軸の方向と腕部123が伸びる方向(θ1)とが平行に近づくほど、腕部123をプランジャー40で押した際に、腕部123はインジェクター1の押出軸と垂直となる方向に湾曲し易くなる。即ち、腕部123全体が節部124を支点として折り曲がらず、光学部110上に支持部120(腕部123)をタッキングすることが困難となる。
なお本実施形態の眼内レンズ100の支持部120は、光学部110の円周方向へと複数回曲げている。より詳しくは、根元部125から角度θ1で伸びる腕部123は、腕部123の長さの30%を越えた、より好ましい腕部123の長さの50%となる地点P3で角度θ1よりも小さい角度で光学部110の円周方向に再度曲げている。腕部123の基端を発し、地点P3を通過して再度曲がった腕部123は、腕部123の先端P1に達する前に眼内レンズ100の最外径を形成(地点P2)する。また、腕部123の先端P1は、根元部125の幅の中心になる地点W1と光学部110の中心(光軸L)とを結ぶ線分W1−Lと角度θ2を成す位置まで伸びる。角度θ2は50°以上65°以下の範囲が好ましく、本実施形態では角度θ2をより好ましい59°としている。
角度θ1で延びる腕部123が長さの30%を過ぎた地点で再度曲げることで、嚢の大きさで決まる眼内レンズ100の最外径を満たしつつ、嚢の内側外縁に沿う長過ぎない腕部123を形成することができる。また、支持部120の先端P1が線分W1−Lと角度θ2を成す位置まで伸びることで、プランジャー40の押出軸と支持部120(腕部123)が交わる角度が直角に近くなる。よって、支持部120を光学部110上にタッキングする際にプランジャー40の先端44から支持部120が外れ難くなり、腕部123がプランジャー40の押出軸と垂直となる方向に湾曲し難くもなり、支持部120を好適に光学部110上にタッキングすることができる。なお、腕部123の形状は直線と曲線で形成するに限らず曲線だけで形成してもよい。腕部123の基端から先端にかけて異なる複数の曲線で形成してもよい。
更には、本実施形態の眼内レンズ100の腕部123は先端に向かうほど湾曲度合い(曲がり角度)が大きくなってゆく。眼内レンズ100の最外径となる腕部123の地点P2に達しても支持部120が光学部110の円周方向よりも更に内側に湾曲して延びるため、インジェクター1で眼内レンズ100を折り曲げ支持部120を光学部110上にタッキングした際、支持部120の先端P1がより光学部110の中心に近づき易くなる(図4b)。よって、インジェクター1で眼内レンズ100を折り曲げ眼内に挿入する際、支持部120のタッキングが外れ難くなる。
より詳しくは、インジェクター1で眼内レンズ100を折り曲げ眼内に挿入する際、粘着性のある軟性眼内レンズ100とインジェクター1との摩擦を低減するため、インジェクター1内には粘弾性物質が注入される。眼内レンズ100をタッキングした際、支持部120の先端P1が光学部110の中心に近づくことで、支持部120の先端の向きが押出軸よりも内側を向き、載置部20に載置された眼内レンズ100を折り曲げながら挿入部10の先端11から射出する過程で支持部120に粘弾性物質の抵抗が掛かっても、タッキングされた支持部120(腕部123)が押出軸から離れる方向に変位し難くなる。
<インジェクター>
次に、インジェクター1の構成を説明する。図2はインジェクター1の外観概略図である。図3はプランジャー40の構成の説明図である。インジェクター1は、筒部本体(以下、本体と記す)30、押出部材(以下、プランジャーと記す)40、蓋部60から構成されており、本体30は挿入部10と載置部20を備える。このようなインジェクター1は樹脂材料等を用いたモールド成型や、樹脂の削り出しによる切削加工で形成される。
本体30の挿入部10は、その先端に向かい通路の内径が徐々に小さく(細く)なる領域(内壁形状)を有する中空の筒形状をしており、先端11には眼内レンズ100を外部に送出するための切欠き(ベベル)が形成されている。挿入部10を通過した眼内レンズ100は、挿入部10の内壁に沿って小さく折り曲げられ先端11から外部に送出される。本体30の載置部20は挿入部10の基端に形成され、眼内レンズ100が位置する空間(隙間)を形成する。また、使用状態で眼内レンズ100が置かれる載置面が位置される。
プランジャー40は、眼内レンズ100を挿入部10内で押して小さく折り曲げ、先端から眼内へと押出す部材である。プランジャー40は術者に押圧される押込部41と、押込部41に接続される軸基部42と、軸基部42に接続される押出棒43と、押出棒43の先端に接続され,眼内レンズ100の押出時に光学部110に当接される先端44と、から構成される。
また、先端44の裏面側には軸方向に伸び所定の傾斜を有する斜面(図示を省略する)が形成されている。プランジャー40の押込み時に、斜面によって先端44が一旦持ち上げられることで、後方側の支持部120の腕部123の一部を光学部110上に載せるタッキングの操作が好適に行われる。以上のような構成により、プランジャー40は、本体30から挿入部10の先端まで繋がる通路を軸方向に進退可能に挿通される。
<使用時の動作>
次に、以上のような構成のインジェクター1を用いて眼内レンズ100を眼内に取り付ける際の動作を説明する。図4はインジェクター1内での眼内レンズ100の押出動作の説明図である。
まず術者は、載置部20の押出軸上(載置面上)に眼内レンズ100を載せて蓋部60を閉じた状態から、図示を略す開口又は先端11から周知の粘弾性物質を挿入部10内に注入する。眼内レンズ100の設置が完了し、術者によって押込部41が押されると、プランジャー40の先端44が先端11に向けて移動される。そして、図4(a)に示すように、プランジャー40の先端44によって後側の支持部120の一部が押されるようになる。
押込部41を更に押し込むと、図4(b)に示すように根元部125と腕部123の接合点となる節部124の位置で支持部120全体が折り曲げられる。折り曲げられた支持部120の先端付近が光学部110上に載せられるタッキングが行われる。なお、前側の支持部120も後側の支持部120と同様に腕部123の先端付近が光学部110上に載せられるタッキングが行われる。より詳しくは、インジェクター1の内壁に移動する前側の支持部120が接することで支持部120全体が折り曲げられ、腕部123の先端が光学部110上に載せられる。
先端44がコバ115に当接された状態から更に押込部41が押されると、図4(c)に示すように、光学部110に加えられる押圧によって、光学部110と支持部120が一体で挿入部10の内壁に沿って次第に折り曲げられるようになる。この時、支持部120全体が折り曲げられて光学部110上に載せられた状態となるので、眼内レンズ100の全長が短くなり、光学部110を押し込むだけで眼内レンズ100が好適に眼内へと押し出されるようになる。なお、インジェクター1の先端11は術者によって連続円形切嚢(CCC)された前嚢の開口部に位置させておく。
更に押込部41が押されることで、折り曲げられた眼内レンズ100は先端11まで達する。更に押込部41が押されることで、眼内レンズ100はインジェクター1から嚢内へと射出される。そして、折り曲げられた眼内レンズ100は復元力によって嚢内で次第に復元される。このとき、一対の支持部120の腕部123は細く形成され、光学部110との接触面積が小さくされているので、支持部120の腕部123が光学部110から容易に離れる。これにより、支持部120が光学部110に貼り付くことで生じる術者の操作、それに伴う患者の負担が低減される。
そして、嚢内で眼内レンズ100が次第に復元されると、嚢と接することで支持部120が撓み応力を発生し、支持部120によって眼内レンズ100全体が保持される。また、腕部123の全体が嚢に沿って(接触して)好適に位置されるようになり、眼内レンズ100の取り付け位置が安定して保持される。
続けて、図6に実施形態の変容例を示す。この実施形態も光学部110とループ状の支持部120を備えた軟性素材で形成された1ピース型の眼内レンズ100である。以下では前述した実施形態(図1)と主に異なる点を説明する。
変容例では節部124の近傍に腕部123を光学部110側に湾曲させた湾曲部122を形成している。湾曲部122の幅Wcは最大箇所で0.55mm〜0.85mmの範囲であって、厚さは0.2mm〜0.45mmの範囲とされている。湾曲部122の断面積は他の腕部123の断面積よりも大きいことから、湾曲部122は他の腕部123よりも応力が大きい。腕部123に湾曲部122を加えることで、眼内レンズ100をインジェクター1で折り曲げる際、節部124でより曲がり易くなる。支持部120が節部124で折り曲がり易くなることで、支持部120のタッキングがより安定する。
以上説明したように、支持部120を形成する腕部123と根元部125とがなす角度(θ1)と、腕部123の長さ(L1)とを所定の範囲に定めることで、短い支持部120(腕部123)であっても支持部120の適度な応力による嚢内固定の安定性と、眼内レンズ100の良好な射出の確保を両立させることができる。
また、根元部125間の長さ(H−H‘)と光学部110の大きさ(R2)を所定の範囲に定めることで、嚢での根元部125の突っ張りを抑制し、嚢内への眼内レンズ100の挿入のし易さを向上させることができる。
更には、眼内レンズ100の最外径(R1)を所定の範囲に定めることで、支持部120(腕部123)の長さ,折り曲げ角度(θ1)に基づき好適に支持部120の湾曲を形成できる。支持部120の湾曲によって嚢内において嚢と支持部120との接触領域が広がり、短い支持部120であっても嚢内固定を安定して行うことができる。
更には、腕部123が湾曲している区間に眼内レンズ100の最外径となる地点(P2)があり、腕部123は最外径となる地点(P2)から更に湾曲することで、後方の支持部120を光学部110上にタッキングした際、支持部120の先端付近の向きが押出軸と平行に近づく。よって押出中、タッキングした支持部120が粘弾性物質に絡みながら進んでも、支持部120の先端付近に掛かる粘弾性物質からの圧力を低減でき、支持部120のタッキングが外れ難くなる。眼内レンズ100の安定した眼内射出が可能になる。
100 眼内レンズ
110 光学部
120 支持部
123 腕部
124 節部
125 根元部

Claims (1)

  1. 光学部と、該光学部を眼内で固定保持するための一対の支持部と、を備える折り曲げ可能な眼内レンズにおいて、
    前記一対の支持部は、前記光学部の中心を通る第1直線に沿って前記光学部の縁から外径方向に延びるように形成され前記光学部の中心に対して対称に設けられる一対の根元部と,
    該根元部から所定角度だけ折り曲げられた状態で先端に向けて内側に湾曲しながら前記光学部の周方向に延びる腕部であって,前記根元部から所定角度だけ折り曲げられた状態で腕部の基端から腕部全長の少なくとも30%となる地点までは第2直線に沿って伸びるよう形成された腕部と、を有し
    前記第1直線前記第2直線とがなす前記所定角度は85度以上120度以下とされ、前記支持部の長さ(L1)は7.0mm以上7.8mm以下であり、前記光学部及び前記一対の支持部を含む前記眼内レンズの最外径は12.5mm以上13.5mm以下であることを特徴とする眼内レンズ。
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