JP6293672B2 - ガラス物品およびその製造方法 - Google Patents

ガラス物品およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6293672B2
JP6293672B2 JP2014549935A JP2014549935A JP6293672B2 JP 6293672 B2 JP6293672 B2 JP 6293672B2 JP 2014549935 A JP2014549935 A JP 2014549935A JP 2014549935 A JP2014549935 A JP 2014549935A JP 6293672 B2 JP6293672 B2 JP 6293672B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
glass
glass article
content
liquid
surface side
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2014549935A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2014084380A1 (ja
Inventor
一雄 立和名
一雄 立和名
淳子 阿子島
淳子 阿子島
照夫 山下
照夫 山下
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Hoya Corp
Original Assignee
Hoya Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Hoya Corp filed Critical Hoya Corp
Publication of JPWO2014084380A1 publication Critical patent/JPWO2014084380A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6293672B2 publication Critical patent/JP6293672B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C03GLASS; MINERAL OR SLAG WOOL
    • C03CCHEMICAL COMPOSITION OF GLASSES, GLAZES OR VITREOUS ENAMELS; SURFACE TREATMENT OF GLASS; SURFACE TREATMENT OF FIBRES OR FILAMENTS MADE FROM GLASS, MINERALS OR SLAGS; JOINING GLASS TO GLASS OR OTHER MATERIALS
    • C03C3/00Glass compositions
    • C03C3/12Silica-free oxide glass compositions
    • C03C3/23Silica-free oxide glass compositions containing halogen and at least one oxide, e.g. oxide of boron
    • C03C3/247Silica-free oxide glass compositions containing halogen and at least one oxide, e.g. oxide of boron containing fluorine and phosphorus
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C03GLASS; MINERAL OR SLAG WOOL
    • C03CCHEMICAL COMPOSITION OF GLASSES, GLAZES OR VITREOUS ENAMELS; SURFACE TREATMENT OF GLASS; SURFACE TREATMENT OF FIBRES OR FILAMENTS MADE FROM GLASS, MINERALS OR SLAGS; JOINING GLASS TO GLASS OR OTHER MATERIALS
    • C03C21/00Treatment of glass, not in the form of fibres or filaments, by diffusing ions or metals in the surface
    • C03C21/001Treatment of glass, not in the form of fibres or filaments, by diffusing ions or metals in the surface in liquid phase, e.g. molten salts, solutions
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C03GLASS; MINERAL OR SLAG WOOL
    • C03CCHEMICAL COMPOSITION OF GLASSES, GLAZES OR VITREOUS ENAMELS; SURFACE TREATMENT OF GLASS; SURFACE TREATMENT OF FIBRES OR FILAMENTS MADE FROM GLASS, MINERALS OR SLAGS; JOINING GLASS TO GLASS OR OTHER MATERIALS
    • C03C23/00Other surface treatment of glass not in the form of fibres or filaments
    • C03C23/008Other surface treatment of glass not in the form of fibres or filaments comprising a lixiviation step
    • GPHYSICS
    • G02OPTICS
    • G02BOPTICAL ELEMENTS, SYSTEMS OR APPARATUS
    • G02B1/00Optical elements characterised by the material of which they are made; Optical coatings for optical elements
    • GPHYSICS
    • G02OPTICS
    • G02BOPTICAL ELEMENTS, SYSTEMS OR APPARATUS
    • G02B3/00Simple or compound lenses

Landscapes

  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Materials Engineering (AREA)
  • General Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Geochemistry & Mineralogy (AREA)
  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Chemical Kinetics & Catalysis (AREA)
  • General Physics & Mathematics (AREA)
  • Optics & Photonics (AREA)
  • Surface Treatment Of Glass (AREA)
  • Glass Compositions (AREA)
  • Mechanical Engineering (AREA)

Description

本発明は、ガラス物品に関する。
多くの光学素子そのもの又はその材料として、ガラス物品が用いられている。光学素子の製造の工程中、ガラス物品の表面に加工液や異物等が付着して汚れる機会がある。そのため、適宜、ガラス物品に対する洗浄工程が行われ、ガラス物品は清浄に保たれる。また洗浄に用いられた洗浄液をすすぐべく、洗浄工程と共に、リンス工程も設けられる。通常、このリンス工程において用いられるリンス液には、特許文献1に示すような純水や、その他の脱イオン水(以降、DI水とも呼ぶ。)などが用いられる。以降、洗浄工程に関しては、DI水を用いる場合を例に挙げて説明する。なお、IPAなど有機化合物も、リンス液として用いられている。
更に、このような工程間あるいは次工程に搬送する間に一時的に、ガラス物品を保管する必要がある。
ガラス物品を保管する場合、空気中で保管すること、あるいは保管液に接触させて保管することが考えられる。保管液を用いる場合、たとえば特許文献2に示すように、水中で保管することが考えられる。
また、ガラス物品の製造の際には、ガラス物品が種々の液と接触することになる。この種々の液としては、上記の洗浄液、リンス液及び保管液に加え、研磨液が挙げられる。この研磨液として、ガラス物品のpHと研磨剤含有分散液のpHとを近似させた技術が、本出願人により特許文献3にて開示されている。この技術は、ガラス物品と研磨液との化学反応を抑制するという思想の基になされたものである(特許文献3の[0010])。
特開2010−108590号公報 特開2009−167039号公報 特許第3361270号明細書
しかしながら、ガラス物品に対する研削工程、研磨工程、洗浄液による洗浄工程、リンス液によるリンス工程、更には保管工程等を含むウェットプロセス(液体とガラスとが接触するプロセス)を経て光学素子であるレンズを作製した場合、レンズ表面に反射防止膜をコートするまでの間に、そのレンズの表面にヤケやクモリが生じたり、潜傷が顕在化してしまうという問題が生じることがあった。
たとえば、光学特性(異常分散性あるいは低分散性)に優れるフツリン酸塩ガラスに関しては、処理液として、水(脱イオン水または純水)を用いて処理(研削、研磨、洗浄、リンス、保管等の処理)した場合、白ヤケ、青ヤケ、クモリが発生し、または潜傷が顕在化し、ガラス物品の表面品質の低下が顕著になるという問題が生じた。
そこで本発明は、ウェットプロセスを経ても表面を高品質に維持可能なガラス物品を提供することを、主たる目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決すべく、フツリン酸塩ガラスについて詳細な検討を行った。具体的には、フツリン酸塩ガラスの処理液として、DI水または純水等の水を用いた場合に、フツリン酸塩ガラスの表面近傍において変化が生じることに着目した。フツリン酸塩ガラスは、一般的に、リン(P)および酸素(O)が結合した網目構造を有しており、フッ素(F)等のイオン結合性が強い成分が該構造の隙間を埋めていると考えられる。本発明者らは、フツリン酸塩ガラスの表面が処理液としての水に接触すると、網目構造はそれほど影響を受けないものの、修飾成分であるアルカリ土類金属成分やF成分がガラス表面から水へ溶出し、ヒドロニウムイオン(H)あるいは水酸化物イオン(OH)等の水に由来するイオンがガラス内に容易に進入してしまうことを見出した。また、このヒドロニウムイオンあるいは水酸化物イオン等のガラス内への移動が、フツリン酸塩ガラスに、白ヤケ、青ヤケ、クモリの発生や潜傷の顕在化等を引き起こすことも見出した。
そして、上記の知見に基づき、本発明者らは、処理液中に含まれる物質とガラス中に含まれるガラス成分とが結合し、水に対して難溶性の化合物を生成することにより、ガラス表面を難溶化し、ガラス内へのヒドロニウムイオンあるいは水酸化物イオン等の移動を抑制することを想到した。そして、フツリン酸塩ガラスの表面において、水に対して難溶性の化合物を密に存在させることで、上記の課題を解決できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
具体的には、溶質と溶媒とを含む処理液を用いて、溶質の一部をフツリン酸塩ガラス表面に存在するガラス成分と結合させることにより、処理液に接触後のフツリン酸塩ガラスの表面に溶媒に対して難溶性化合物を形成させて、ガラス表面を溶媒に対して難溶化し、溶媒中に含まれる水素がガラス内へ移動(ヒドロニウムイオン、水酸化物イオンとして移動)することを抑制できる程度にガラス表面を再構成できることを見出した。
別の言い方をすると、溶媒及び溶質から構成される溶液である処理液を用い、当該溶質を、ガラス物品内におけるガラス成分の新たな供給源とするという手法を新たに創出した。そして、ガラス物品の組成においては、ガラス骨格を構成し得る成分の含有量については、ガラス物品の表面側(浅い部分)が、内部側(深い部分)よりも多いガラス物品を新たに創出した。
本発明の手法は、特許文献1や2のように、ガラス成分の溶出を抑制するという従来の観点とは全く逆の観点を有している。つまり本発明は、溶質をガラス成分の一員に迎え入れるという思想に基づいて成されたものである。特に、特許文献3に記載の技術と本発明とは、正反対の思想に基づいて成されたものである。特許文献3に記載の技術は、ガラス物品と研磨液との間の化学反応の抑制に基づいて成されたものである。その一方、本発明は、むしろ積極的に、処理液の溶質の一部をガラス表面層においてガラス成分の一員に迎え入れるという化学反応を促進させることに基づいて成されたものである。
なお、本発明における処理液は、ガラスに対して研削処理、研磨処理、洗浄処理、リンス処理、保管処理のいずれか一以上の処理を行う際に用いる液体、例えば、研削液、研磨液、洗浄液、リンス液、保管液等を意味する。
以上の構成を具体化した本発明の態様は、以下の通りである。
本発明の第1の態様は、
P、Al、アルカリ土類金属、F及びOを含有するガラス物品であって、
P及びOの含有量については、ガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも多く、
アルカリ土類金属の合計含有量及びFの含有量については、ガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも少ないことを特徴とするガラス物品である。
本発明の第2の態様は、
アルカリ土類金属の含有量については、ガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも少ないことを特徴とする第1の態様に記載のガラス物品である。
本発明の第3の態様は、
Alの含有量については、ガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも多いことを特徴とする第1の態様または第2の態様に記載のガラス物品
本発明の第4の態様は、第1ないし第3の態様のいずれかに記載の発明において、
前記ガラス物品は光学素子であることを特徴とする。
本発明によれば、ウェットプロセスを経ても表面を高品質に維持可能なガラス物品を提供することができる。
実施例1及び参考例におけるガラス物品(ガラス基板)に対し、XPS(X線光電子分光:X−ray Photoelectron Spectroscopy)を行った結果を示すグラフであり、Alについての結果を示すグラフである。(a)は実施例1の結果を示し、(b)は参考例の結果を示す。 実施例1及び参考例におけるガラス基板に対し、XPSを行った結果を示すグラフであり、Pについての結果を示すグラフである。(a)は実施例1の結果を示し、(b)は参考例の結果を示す。 実施例1及び参考例におけるガラス基板に対し、XPSを行った結果を示すグラフであり、Oについての結果を示すグラフである。(a)は実施例1の結果を示し、(b)は参考例の結果を示す。 実施例1及び参考例におけるガラス基板に対し、XPSを行った結果を示すグラフであり、Caについての結果を示すグラフである。(a)は実施例1の結果を示し、(b)は参考例の結果を示す。 実施例1及び参考例におけるガラス基板に対し、XPSを行った結果を示すグラフであり、Srについての結果を示すグラフである。(a)は実施例1の結果を示し、(b)は参考例の結果を示す。 実施例1及び参考例におけるガラス基板に対し、XPSを行った結果を示すグラフであり、Fについての結果を示すグラフである。(a)は実施例1の結果を示し、(b)は参考例の結果を示す。 実施例1におけるガラス基板に対し、XPSを行った結果を示すグラフであり、Baについての結果を示すグラフである。 実施例1におけるガラス基板に対し、XPSを行った結果を示すグラフであり、Mgについての結果を示すグラフである。 図9は、ガラス1を用いて作製したガラス基板に対し、XPSを行った結果を示すグラフであり、Oについての結果を示すグラフである。 図10は、ガラスαを用いて作製したガラス基板に対し、XPSを行った結果を示すグラフであり、Oについての結果を示すグラフである。
以下、本発明の実施の形態について説明する。
本実施形態においては、次の順序で説明を行う。以下、明細書に特筆のない事項については、公知の技術を使用しても構わない。
1.ガラス物品の製造方法
A)ガラス物品の準備
B)ガラス物品に対する加工
a)CG加工
b)スムージング
c)研磨加工
d)欠陥発生抑制処理
e)第1の洗浄
f)第1のリンス
g)芯取加工
h)第2の洗浄
i)第2のリンス
C)ガラス物品の保管
D)その他(成膜等)
2.ガラス物品
3.実施の形態による効果
4.変形例
なお、本実施形態においては、本発明の構成を、後述する欠陥発生抑制処理で用いられる処理液に適用する場合に加え、洗浄液、リンス液及び保管液に適用した場合について述べる。先にも述べたように、本発明において「処理液」は、欠陥発生抑制処理にて用いられる液のことを指すほか、「洗浄液」や「保管液」を含む液でもあり、ガラス表面の品質低下の予防処理に用いられる液のことである。また、「洗浄液」とは、文字通り洗浄用途としての液体、例えば洗剤を含む液体も含むし、洗浄液、特に洗剤を洗い流すために用いられるリンス液も含まれる。
<1.ガラス物品の製造方法>
A)ガラス物品の準備
本実施形態におけるガラス物品は、光学素子そのもの、又はその材料(ガラス素材)、もしくは製品となる前の段階の中間品を指す。ガラス素材としては精密プレス成形用プリフォームなどを例示することができる。このガラス物品としては、ガラス成分として、P、Al、アルカリ土類金属、F及びOを含有するガラスからなり、後に光学素子として出荷できる程度の品質を有するものであれば、素材・形状共に、特に限定はない。本実施形態においてはフツリン酸塩ガラスをガラス物品として用いた場合について述べる。なお、このガラス物品の組成についても特に限定されることはない。
B)ガラス物品に対する加工(処理)
a)CG加工
最終形状の光学素子に近似させた形状に形成したガラス物品(例えば光学素子ブランク)に対し、切削・研削方法として球面加工、トーリック面加工、および自由曲面加工を行うためのカーブジェネレーティング加工(CG加工)を行う。CG加工が行われる工程は、粗削り工程とも呼ばれる。
b)スムージング
CG加工が行われたガラス物品に対し、スムージングを行う。このスムージングは、CG加工により粗くなったガラス物品表面を整えるために行われる工程である。CG加工およびスムージングは、後の研磨工程の前段階の研磨でもあり、研削加工ともいう。この研削加工では、研削液を供給しながらガラス物品表面(レンズ面等)を研削加工する。この研削液は、界面活性剤等を含む液体であり、研削加工時の潤滑性を高め、被加工物を冷却するために用いられる。
c)研磨加工
次いで、研磨工程において、レンズ形状を略反転した形状の研磨工具を用いて研磨液を供給しながらレンズ面を研磨加工して平滑な面に仕上げる。この研磨液は、たとえば、粒径が数μmの砥粒(酸化セリウム粒子、酸化ジルコニウム粒子等)を含む液体である。
なお、上記のa)CG加工、b)スムージング、c)研磨加工の代わりに、精密プレス成形によりガラス物品(レンズ等)の加工を行っても構わない。
d)欠陥発生抑制処理
先にも述べたように、ガラス物品を製造する際の各工程において、ガラス物品の表面の品質の低下のおそれがある。それに加え、ガラス物品の表面品質の低下の抑制のためには、環境負荷が大きな物質を用いる必要が生じる場合もある。
上記の各問題を解消すべく、本実施形態においては、上記のガラス物品を、処理液を用いて処理する欠陥発生抑制処理を行う。以下、詳述する。
まず、処理液は、溶媒及び溶質から構成される溶液である。そして、処理液をガラス物品と接触させて欠陥発生抑制処理を行う際に、当該溶質を、ガラス物品内におけるガラス成分の新たな供給源とする。更に言うと、当該溶質の一部を、ガラス物品の表面近傍におけるガラス成分と結合自在とし、ガラス表面層においてガラス成分として加入自在とする。
上記の内容を具体的に説明すると、本実施形態におけるフツリン酸塩ガラスを用いたガラス物品の場合、主にガラス骨格(ネットワークフォーマー)として、P、O、Al等のイオンが各々結合し、網目を形成している。これらの物質はガラス成分ではあるが、主にガラス骨格を構成することから、これらの成分のことを「ガラス骨格物質」とも言う。そして、その網目の隙間部分に、CaF、SrF、BaF等のガラス成分が存在している。これらの成分のことを「修飾物質」とも言う。もちろん、P、O、Al等のイオンが修飾物質となることもあるが、以下においてはこれらのイオンをガラス骨格物質として取り扱う場合について述べる。
欠陥発生抑制処理前のガラス物品に対し、従来の保管工程のように純水に漬けた状態にしてしまうと、ガラス表面近傍に存在する修飾物質が純水中に溶出してしまう。そして、修飾物質が抜けた部分に、水に起因する物質(例えばHやOH)が入り込んでしまう。その結果、金属化合物に代表される修飾物質が溶出することにより、ガラス物品の表面の耐久性が低下してしまい、その後のガラス物品の製造工程にて欠陥が発生または顕在化してしまうと考えられる。なお、説明の便宜上、「欠陥発生抑制処理」と名付けているが、本処理においては「欠陥の発生または顕在化を抑制」している。
ところが、本実施形態の欠陥発生抑制処理を行うことにより、修飾物質は処理液(以降、「溶液」とも言う)の溶媒へと溶出してしまうものの、処理液中の溶質の一部、例えばリン酸イオンがガラス成分と結合する。つまり、ガラス骨格物質と処理液中の溶質の一部とが新たに結合し、ガラス骨格が密になる。また、別のメカニズムとしては、網目構造を構成していなかった酸化アルミニウム(酸化状態のAl)やその他のAlがリン酸アルミニウム(リン酸塩状態のAl)へと変化するのに伴い、このリン酸アルミニウムが新たに網目構造に組み込まれるというメカニズムが挙げられる。いずれにせよ、その結果、ガラス物品の表面の耐久性の低下を抑制することが可能となり、その後のガラス物品の製造工程にて欠陥が発生することを抑制することが可能となると考えられる。
また、本実施形態の欠陥発生抑制処理を行うことにより、処理液との接触後のガラス物品の表面は、処理液との接触前の表面と異なる表面に再構成され、ガラス表面に溶媒に対して難溶性化合物としてのリン酸アルミニウムが形成され、ガラス表面が溶媒に対して難溶化する。一旦、再構成された表面は、処理液中に含まれるガラス表面の品質の低下につながる成分、すなわち水素がガラス表面からガラス内に移動することを抑制できる。
また、処理液は、pHの緩衝作用を有することが好ましい。本実施形態の場合、ガラス物品はフツリン酸塩ガラスからなる物品であることから、処理液をリン酸塩水溶液とするのが好ましい。即ち、溶媒を水、溶質をリン酸塩とした溶液を用いるのが好ましい。
その理由としては、以下の通りである。まず、リン酸塩水溶液は緩衝液であり、pHの変動をマイルドにすることができる。こうすることにより、H、H及びOHがガラス物品中に入り込む可能性を減らすことができる。
また、処理液についてであるが、上述の通り、従来の処理液(DI水や純水等)は、ガラス物品表面に少なからず品質劣化の影響を与える。本来ならば、当業者は、水そして水をベースにした処理液は、必ずしも好ましくないと考えるはずである。しかしながら本発明者は、上記の知見を初めて得た上で、あえて溶媒として水を使用することとした。
本発明者の鋭意工夫の末、ガラス骨格物質となり得る物質である溶質を水である溶媒に加えることにより、上記の影響を排することが可能な処理液を想到するに至った。この処理液のおかげで、ガラス物品に含まれる成分が水に溶出してしまう硝種のガラス物品に対しても、表面の品質劣化を抑制させる機能を備えさせることが可能となる。
水は、極めて使い勝手が良い物質である。仮に、処理液をIPAなど有機化合物とした場合、気化したときの有害性や悪臭という問題も発生する。また、わざわざ処理液(洗浄液や保管液)のために有機化合物を使用することは、廃液処理のコスト増加をもたらし、ひいては光学素子等のガラス製品の価格に大きな影響を与える。そのため、作業者の安全や環境への配慮を考慮に入れると、処理液に有機化合物を用いずに、水を用いることは極めて好ましい。
そこで、本実施形態のようにフツリン酸塩ガラスを用いるのならば、処理液の溶媒として水を使用可能である上、上述のように溶質をガラス物品内におけるガラス成分の新たな供給源としうる化合物を水に加えるという手法により、上記の問題点は解消されるのである。その結果、作業の安全性を確保し、且つ、環境への負荷も小さくしつつも、ガラス物品の表面の品質劣化を抑制することが可能となる。なお、ガラス物品の全表面において高品質が要求されない場合がある。例えば、光学素子の光学機能面以外の面、例えば、光学レンズのコバに相当する面などは潜傷が顕在化したり、ヤケが生じても光学素子としての性能低下には至らない。したがって、本実施形態において、ガラス物品の表面というときは、ガラス物品の表面のうち、少なくとも高品質が要求される面(例えば、光学素子の光学機能面)を含む面を指し、必ずしもガラス物品の全表面でなくてもよい。なお、光学機能面とは光学素子の制御対象である光の透過、屈折、反射、回折等に使用する面を意味する。光学素子の光学機能面は、レンズの光学機能面のようにガラス物品の表面であることが多い。
また、本実施形態の別の好ましい例としては、処理液を、ガラス骨格物質に含まれる成分と同種のイオンを含む水溶液とする場合が挙げられる。具体的に言うと、ガラス物品がPを含むガラス物品であり、処理液の溶媒は水であり、処理液の溶質はリン酸塩を含むものとする。
なお、同種のイオンとは、同じイオン又は当該同じイオンと平衡関係にあるイオンのことであり、本実施形態で言うところのリン酸イオンである。つまり、ガラス物品に含まれる成分であるPおよびOが、ガラス物品から溶出する際にリン酸イオンとなっている状態のことを、上記の内容は指す。また、この場合、処理液に含まれている「同じイオン」とはP n−(ただし、x、y、nは自然数)、例えばPO 3−のことを指し、「同じイオンと平衡関係にあるイオン」とは、P n−と電離平衡となっているイオンのことであり、例えばPO 3−に加え、HPO 2−、HPO も含むイオンである。
また、本実施形態における処理液のpHは、好ましくは3〜9.8、より好ましくは5〜9、さらに好ましくは6〜8、一層好ましくは6.5〜7.5、より一層好ましくは6.6〜7.3である。この範囲のpHならば、ガラス物品に含まれる成分がガラス物品から溶出し過ぎることがなくなる。特に、処理液をリン酸塩水溶液とする場合、リン酸塩水溶液には3段階の解離平衡状態が存在し、pHの変動が少なくなるのはpH=2.15、7.20、12.38の3つの状態である。この中でもpH=7.20をカバーするpH5以上9以下という範囲が好ましい。なお、本実施形態において、より一層好ましい実施の形態は、リン酸イオンPO 3−を含み、pHが7付近にコントロールされた水溶液を処理液として用いることである。
以下、本実施形態における処理液の具体例について詳述する。
処理液は溶質および溶媒を含む溶液であり、本実施形態では、例えば処理液としてリン酸イオンPxOyn−、例えばPO 3−とアルカリ金属イオンを含む水溶液を用い、これらのイオンにより水溶液のpHがコントロールされていることが好ましい。そのための処理液は、溶質としてのリン酸塩と、溶媒としての水と、を含む。リン酸塩としては、特に制限されず、リン酸二水素ナトリウム(NaHPO)、リン酸水素二ナトリウム(NaHPO)、リン酸ナトリウム(NaPO)、リン酸二水素カリウム(KHPO)、リン酸水素カリウム(KHPO)、リン酸カリウム(KPO)等が例示される。ただし、トリポリリン酸ナトリウム(STTP Na10)のようにリン酸化合物であってもキレート効果を有する物質(キレート錯体)を溶質として使用すると、金属イオンがキレート効果を有する物質に取り込まれ、ガラス表面の品質が劣化してしまう。そのため、処理液中にキレート効果を有する物質を加えないことが好ましく、処理液がキレート効果を有する物質を含まないことが好ましい。処理液は、リン酸塩などの溶質を溶媒に溶解した溶液であってもよいし、溶媒に酸とアルカリを加えて中和させ、溶質が溶媒に溶解した状態と同様の溶液であってもよい。いずれの場合も処理液は溶質と溶媒とを含む。
処理液の具体例としては、例えば、リン酸二水素ナトリウムとリン酸水素二ナトリウムをモル比で1:1の割合で混合し、リンの濃度とナトリウムの濃度がそれぞれ10〜1000ppmの範囲となるように混合物をDI水または純水内に導入した処理液が挙げられる。あるいはまた、所定濃度のリン酸二水素ナトリウム水溶液と所定濃度のリン酸水素二ナトリウム水溶液を作り、これらの水溶液を混合してもよい。このとき、リン酸二水素ナトリウムの導入比率を高めると、処理液のpHが小さくなり、リン酸水素二ナトリウムの導入比率を高めると、処理液のpHが大きくなる傾向にある。従って、処理液のpHの調整は、リン酸成分とアルカリ成分の導入比率を調整することで、容易に調整可能である。
なお、処理液の温度は特に限定されず、例えば、常温を含む5〜60℃の範囲内で適宜使用できる。
上記の処理液中では、溶質であるリン酸塩はその解離定数に従って電離しており、リン酸イオン(HPO 、HPO 2−、PO 3−等)が存在している。ガラス物品(加工後のガラス素材)が処理液と接触すると、ガラス物品の表面近傍にリン酸イオンが存在することとなり、そのリン酸イオンが、ガラス表面においてガラス成分の少なくとも一種、例えばAlと結合する。Al成分はガラスの網目構造を形成する働きがあるため、処理液との接触前からガラス物品内に既に存在していた網目構造に、溶質の一部、すなわち、本実施形態においてはリン酸イオンが新たに結合し、ガラス表面に水に対して難溶性の化合物であるリン酸アルミニウムが形成され、ガラス表面が水に対して難溶化する。
また、別のメカニズムとしては、網目構造を構成していなかった酸化アルミニウムがリン酸アルミニウムへと変化するのに伴い、このリン酸アルミニウムが新たに網目構造に組み込まれるというメカニズムが挙げられる。いずれにせよ、このような新たな結合はガラス物品またはガラス素材の表面近傍でのみ生じる。その結果、ガラス物品の品質の低下につながる溶媒中の水素、たとえばヒドロニウムイオン(H)や水酸化物イオン(OH)等が、ガラス物品内に移動することを抑制することができる。
換言すれば、処理液との接触後のガラス物品の表面は、処理液との接触前の表面と異なる表面に再構成され、ガラス表面に溶媒に対して難溶性化合物としてのリン酸アルミニウムが形成され、ガラス表面が溶媒に対して難溶化する。しかも、再構成された表面は、処理液中に含まれるガラス表面の品質の低下につながる成分、すなわち水素がガラス表面からガラス内に移動することを抑制できる。特に、処理液の溶媒が水である場合には、水中に含まれるヒドロニウムイオンや水酸化物イオンなどの水素がガラス内へ移動するのを抑制することができる。
なお、上述したガラス表面の難溶化は、ガラス表面と処理液とが接触した瞬間から始まると考えられる。したがって、ガラス表面の難溶化が初期段階で急激に進むため、処理液との接触時間が短くても十分に難溶化する。そのため、ガラス表面が処理液と接触しさえすれば、接触時間が短い場合であっても、上述した効果は得られる。その結果、水素がガラス内に移動することを抑制することができる。
これに対し、処理液が水(DI水あるいは純水等)である場合には、ガラス表面に存在するガラス成分と結合し、難溶性化合物を生成する溶質が存在しないため、ガラス表面の再構成は起こらない。したがって、水中に存在する水素がガラス内に移動することを抑制できず、その結果、白ヤケ、青ヤケ、クモリが発生したり、潜傷が顕在化してしまう。
ところで、ガラス物品内で網目構造の隙間を埋めて存在しているイオン結合性の化合物(たとえば、アルカリ土類金属元素のフッ化物)が、処理液に溶出しやすい場合には、これらの化合物の溶出によりガラス構造中に隙間が形成される。そのため、ガラス表面の品質の低下につながる水素が処理液中よりガラス内へより進入しやすくなる。その結果、ガラス表面の品質の低下がさらに促進されてしまう。
しかしながら、本実施形態では、このようにガラス成分が溶出しやすい場合であっても、これらの成分の溶出により形成される隙間には、ガラス表面の品質の低下につながる水素が進入するよりもリン酸イオンなどの溶質の一部の方が優先的に進入し、網目構造を形成するAlと結合し、ガラス表面を溶媒に対して難溶化すると考えられる。
一般的には、ガラスを構成する成分が処理液に流出することは好ましくない。しかしながら、本実施形態では、むしろ、アルカリ土類金属成分やF成分が溶出する場合には、ガラス表面の品質の低下につながる水素が、処理液からガラス内に移動するのを抑制できるため、ガラス表面の品質低下を抑制することができる。
なお、溶質の一部、例えばリン酸イオンとガラス成分の少なくも一種との結合による難溶性化合物の形成(ガラス表面の難溶化)は、ガラスの表面近傍で生じていると考えられる。具体的には、このような構造は、表面から深さ方向に10nm以内に形成されていると考えられる。そのため、このような構造は、ガラス物品の光学特性(屈折率や分散値など)にはほとんど影響しないと考えられる。
また、Znは、処理液に接触する前のガラスにおいて、網目構造を形成せず、いわゆる修飾成分として存在していると考えられる。しかしながら、処理液に接触後のガラスの表面では、ガラス物品内に導入された溶質の一部と結合し、水に難溶な物質を形成することができる。したがって、フツリン酸塩ガラスにZnが含まれている場合には、水に難溶な物質(リン酸亜鉛)をガラス物品の表面に形成することができ、より好ましい。
なお、本実施形態では、溶媒として水を選択している。上述したように、処理液が水である場合、ヒドロニウムイオンや水酸化物イオン等が、フツリン酸塩ガラスの表面からガラス内に移動し、ガラス表面の品質の低下につながるため好ましくない。
処理液としてイソプロピルアルコール(IPA)を使用してもフツリン酸塩ガラスの表面品質の低下を抑制することはできるが、有機溶媒は環境への負荷が大きく、コストも高い。また、有機溶媒は揮発性を有するものが多いため、十分な排気がなされた作業環境にする必要がある。また排気ガスから揮発ガスを除去するフィルター装置も必要になる。溶媒として水を使用できるのであれば、上記措置が不要になる。また、水は、IPAのような有機溶媒に比べて、低コストでもあるため、処理液の溶媒として好適である。
このように、処理液に水を使用することにはメリットもデメリットも存在する。しかしながら、本実施形態では、上記の処理液を用いることで、処理液の溶質が、ガラス物品の表面に元々存在しているガラス成分と結合し、処理液中の水素等のガラス内への移動を抑制する。したがって、水を溶媒として選択する際のメリットのみを享受できるため、従来、フツリン酸塩ガラスを保管するには適さない水をあえて溶媒として選択することができる。
本実施形態では、処理液がpHの緩衝作用を有していることが好ましい。ガラス表面における溶質の一部とガラス成分との結合は、溶質の一部を消費して形成されたものである。したがって、処理液の溶質は、ガラス表面に形成される難溶性化合物の原料供給源であるということができる。そのため、溶質の一部(たとえば、ガラス物品の表面と接触する液体中のリン酸イオン(例えばPO 3−))がガラス表面のAl成分などとの新たな結合に消費された場合であっても、緩衝作用により、処理液中において新たなリン酸イオン(PO 3−)が供給される。また、処理液中の水素イオンが増えた場合であっても、その変動を低減することができる。
処理液と接触した後のガラス物品の表面において、上述したような構造が形成されているか否かについては、表面近傍における元素の種類および結合状態を比較できる手法により判断できる。本実施形態では、たとえば、以下に示す方法により判断すればよい。
まず、処理液に接触する前のガラス物品と、処理液に接触させた後のガラス物品と、を準備する。準備したガラス物品の試料の表面を、X線光電子分光装置を用いて、測定することで、XPSスペクトルが得られる。XPSスペクトルとして検出される光電子のエネルギーは、試料の表面近傍に存在する元素の種類や結合状態を反映している。したがって、各元素について、光電子のエネルギー値およびピークのシフト等を考慮することにより、表面近傍における元素の存在状態を推定することができる。
本実施形態では、XPSにより得られる各元素の結合状態を示す特定のピークを解析し、処理液との接触前の試料と接触後の試料とを比較する。そして、たとえば、溶質にPおよびOが含まれている場合であれば、PおよびOの結合やP、Oおよび他の金属の結合を示すピークの強度を、接触前の試料と接触後の試料とで比較する。比較した結果、接触後の試料において、ピーク強度が高くなっている場合には、ガラス物品の表面において、処理液との接触により、ガラス物品の表面近傍において、溶質の一部(PおよびO、すなわち、リン酸イオン)がガラス物品のガラス成分(Alおよび他の金属)と結合していると判断する。定量的には、XPSスペクトルの各元素の波形とベースラインとによって囲まれる領域の面積の比が、各元素の存在比となる。特定の元素において、結合状態が異なるものが存在する場合、XPSスペクトル波形を結合状態毎のガウス関数型波形に分離することができ、これらガウス関数型波形とベースラインとによって囲まれる各領域の面積の比が、各結合状態にある元素の存在比となる。
X線光電子分光法(XPS)では、水素元素を検出することができないが、ガラス素材やガラス物品の表面における水素元素の定量は、例えば二次イオン質量分析法(SIMS)により測定することができる。したがって、SIMSによる分析であれば、処理液に接触する前のガラス物品の分析結果と、処理液に接触させた後のガラス物品の分析結果とを比較することにより、処理中のガラス内への水素の移動が抑制されたことを直接的に確認することができる。
以上のような欠陥発生抑制処理で用いられる処理液は、研磨液、洗浄液、リンス液及び保管液としても適用できる。したがって、本発明にかかるガラス物品を製造するにあたり、欠陥発生抑制処理を必ずしも独立したプロセスとして設ける必要はなく、研磨加工、洗浄工程、リンス工程、保管工程の過程で所定の処理液を用いることにより欠陥発生抑制処理を併行して実施できる。
以上が本実施形態におけるd)欠陥発生抑制処理である。その後、e)第1の洗浄を行う。
e)第1の洗浄(工程)
研磨加工が行われたガラス物品の表面に付着する付着物(研磨液や研磨剤など)を除去するために、ガラス物品に対して洗浄が行われる。この洗浄については公知の手法を用いても構わないが、本実施形態の主な特徴である上述のd)欠陥発生抑制処理で用いた処理液に洗剤を加えた液により洗浄を行うのが好ましい。具体的には、研磨加工後のガラス物品(光学レンズ)を保持具に載置し、洗剤や界面活性剤を上述した処理液に添加した洗浄液を貯留する洗浄槽に浸漬することにより洗浄を行う(洗浄工程)。このとき、洗浄槽の底面周囲から洗浄液に対して所定の周波数(例えば、50kHz)で超音波を印加し洗浄液を振動させて超音波洗浄を行うことが好ましい。この洗浄は複数の槽で所望の回数行うことができる。
f)第1のリンス(工程)
第1の洗浄工程を終えた後、ガラス物品の表面に付着する洗浄液を洗い流すために、ガラス物品に対して第1のリンス工程が行われる。第1のリンス工程については、公知の手法を用いても構わないが、本実施形態の主な特徴であるd)欠陥発生抑制処理で用いた処理液によりリンス工程を行うのが好ましい。なお、第1のリンス工程は第1の洗浄工程に含めた一連のプロセスとして行うことができる。
具体的には、上記の洗浄工程後の光学レンズを保持具に載置し、上述した処理液としてのリンス液を貯留するリンス槽に浸漬させてリンスを行う(リンス工程)。このとき、リンス液に対して所定の周波数(例えば、50kHz)で超音波を印加し水溶液を振動させて超音波洗浄を行うことが好ましい。このリンス工程は複数の槽で所望の回数行うことができ、必ずしも超音・BR>Gを印加しなくても良い。
g)芯取加工
芯取加工は、研磨加工または精密プレス成形によって得られたガラス物品の外周部を、光軸を中心として所望の形状に研削する工程である。この工程では、芯取り液を供給しながら、ガラス物品の外周部を研削する。この芯取り液は、研削液と同様に、芯取り時の潤滑性を高め、被加工物を冷却するために用いられる。芯取り加工を行うことにより、ガラス物品の外周形状が、ガラス物品をレンズとしたときの光軸を中心とする真円形となる。芯取加工の具体的な手法については、本出願人における特許第4084919号明細書に記載のような、公知のものを適用すれば良い。
h)第2の洗浄(工程)
芯取加工が行われた後、ガラス物品に付着している加工液やスラッジを除去するために、ガラス物品に対して洗浄が行われる。この洗浄については公知の手法を用いても構わないが、第1の洗浄と同様に、本実施形態の主な特徴である欠陥発生抑制処理で用いた処理液または処理液に洗剤を加えた液にて洗浄を行うのが好ましい。
i)第2のリンス(工程)
その後、ガラス物品の表面に付着する洗浄液を洗い流すために、ガラス物品に対して第2のリンス工程が行われる。リンス工程については、公知の手法を用いても構わないが、第1のリンスと同様に、本実施形態の主な特徴である欠陥発生抑制処理で用いた処理液により第2のリンス工程を行うのが好ましい。なお、第2のリンス工程は第2の洗浄工程に含めた一連のプロセスとして行うことができる。
上記の研削加工、研磨加工および芯取り加工は、ガラス物品の製造方法において、処理工程に相当する。本実施形態では、上述した処理液を、研削液および研磨液のいずれか一方、もしくは両方として用いることができる。このようにすることで、処理工程により生じるヤケやクモリまたは潜傷等がもたらすガラス物品の品質の低下を抑制できる。

なお、本実施形態では、処理液の溶媒として、水を用いている。一方、上述した芯取り液は通常油系の液体を用いるため、必ずしも処理液を芯取り液として用いる必要はない。
上記の洗浄工程およびリンス工程も、ガラス物品の製造方法において、処理工程に相当する。本実施形態では、上述した処理液を、洗浄液およびリンス液のいずれか一方、もしくは両方として用いることが好ましい。このようにすることで、処理工程により生じるヤケやクモリまたは潜傷等がもたらすガラス物品の品質の低下を抑制できる。この場合、処理液は、用途に応じて洗剤等を含んでもよいが、キレート効果を有する物質を含めないことが好ましい。
以上の工程により、本実施形態におけるガラス物品が製造される。このガラス物品は、光学素子としてはもちろんのこと、光学素子になる前の中間品としても使用することが可能である。また、このガラス物品は、高い表面品質が求められる精密プレス成形用プリフォームとしても使用することができる。
C)ガラス物品の保管
上記の研磨、洗浄、リンス等の各種処理を行った後、もしくは各種処理の途中で、ガラス物品の少なくとも一部の表面を、溶質と溶媒とを含む保管液に接触させてガラス素材またはガラス物品を保管する保管工程を経ても構わない。その際、保管液としては、上記の処理液を用いるのが好ましい。
例えば、研磨加工後のガラス素材(ガラス物品)に付着した研磨剤や研磨液を除去するためにガラス素材を洗浄する場合において、洗浄工程に移行する間に一定時間が経過すると、ガラス表面に残存した研磨剤や研磨液が乾燥してガラス表面に固着してしまい、洗浄工程でこれらを容易に除去することが困難になる。このような場合は、研磨加工後のガラス素材を保管液中に保管することで、研磨剤や研磨液の固着を未然に防止できる。
したがって、本実施形態では、ガラス素材の研磨工程後に保管工程を行うことが好ましい。また本実施形態では、研磨工程の途中に保管工程を行うことが好ましい。
保管工程後のガラス物品は、前工程でガラス表面に付着した研磨剤や研磨液、もしくは保管工程中に接触した保管液を除去するために洗浄液で洗浄され、さらに洗浄液をすすぐためにリンス液でリンスされた後、乾燥される。
D)その他(成膜等) 本実施形態のリンス工程を行った後、ガラス物品を、IPA(イソプロピルアルコール)を貯留する脱水槽に浸漬して、レンズ表面のリンス液をIPAと置換してガラス表面のリンス液を除去する。最後に、ベーパー槽にてIPA蒸気乾燥を行う(乾燥工程)。乾燥後、必要に応じてガラス物品の表面に反射防止膜等の成膜を行っても構わない。成膜する前にガラス物品の表面を清浄化する工程、すなわち、上記の洗浄工程を行ってもよい。成膜方法は、公知の手法を採用しても構わない。
<2.ガラス物品>
本実施形態の特徴は、欠陥発生抑制処理が行われた後のガラス物品に、構造的に大きな特徴がある。具体的に言うと、ガラス物品において、処理液と直接接触した部分(即ち最表面側の部分)と、それ以外の部分(即ちガラス物品の内部側の部分)との間で、組成に大きな違いがある。
ところで、ガラス製光学素子の表面に反射防止膜などがコーティングされていたり、ガラス表面に塗布物が塗布されていることがある。このようなコートや塗布物は、コーティングされているガラスや塗布物が塗布されているガラスとは異質なものである。
表面側と内部側との間で組成に大きな違いがあるといっても、本実施形態のガラス物品の表面側とコートや塗布物とは明瞭に区別される。したがって、ガラス表面にコートや塗布物などの異質な物質が存在するとしても、本実施形態において、コートや塗布物はガラス物品に含まれない。
ガラス物品の表面において、高い表面品質が求められる部分は、光学研磨された面、すなわち、光学研磨面や、光学素子においては光学機能面であり、精密プレス成形用プリフォームにおいては、精密プレス成形により光学機能面となる面である。したがって、本実施形態において、ガラス物品の表面側とは、ガラス物品の高い表面品質が求められる面、例えば、光学研磨面、光学機能面、光学機能面に成形される面等、における表面側を指す。また、ガラス物品の内部側とは、前記表面側よりも深層部にある部分を指す。内部側の最表面からの深さについては後述する。
光学機能面とは周知のように、光を透過させたり、屈折させたり、回折させたり、反射させたり、部分反射させたりする面であり、当該面に入射した光が散乱しないことが好ましいとされる。表面欠陥は光の散乱原因になるので、光学機能面において欠陥発生を抑制することが求められる。
勿論、ガラス物品の高い表面品質が求められる面以外においても、以下に説明する表面側と内部側の所定の関係が成り立っていてもよい。
まず、本実施形態のガラス物品は、特定のガラス成分について、ガラス物品の表面側の含有量と、ガラス物品の内部側の含有量との間に分布が生じている。具体例を挙げると、本実施形態で用いたフツリン酸塩ガラスを用いたガラス物品のように、P、Al、アルカリ土類金属、F及びOを含有するガラス物品の場合、第1の態様においては、P及びOの含有量については、ガラス物品の表面側(浅い部分)が、ガラス物品の内部側(深い部分)よりも多くなっている。Alの含有量についても、ガラス物品の表面側(浅い部分)が、ガラス物品の内部側(深い部分)よりも多くなっていることが好ましい。その一方、アルカリ土類金属の合計含有量及びFの含有量については、ガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも少なくなっている。第2の態様のように、アルカリ土類金属の含有量についても、ガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも少なくなっていることが好ましい。
第3の態様においては、P、Al及びOの含有量については、ガラス物品の表面側(浅い部分)が、ガラス物品の内部側(深い部分)よりも多くなっている。その一方、アルカリ土類金属及びFの含有量については、ガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも少なくなっている。すなわち、ガラス物品の表面側にも内部側と同様、P、Al及びOが存在する。
ここで、ガラス物品の表面側とは、ガラス物品の最表面から深さ4〜5nmまでの範囲を指す。ガラス物品の内部側とは、ガラス物品の最表面(スパッタ前の最表面)を基準にして深さ100nmから深さ104〜105nmまでの部分を指す。
P、Al、アルカリ土類金属、F及びOの定量はXPSより各元素の存在比を求めることにより行われる。XPS波形において、元素固有の束縛エネルギー(結合エネルギーあるいはBinding Energyともいう)に相当する位置に各元素に由来するスペクトルが現れる。各元素に由来するXPS波形とベースラインとによって囲まれる領域の面積を検出された元素毎に求める。そして、元素毎の前記面積の比率が、各元素の存在比となる。存在比の合計が100%になるように各元素の存在比を規格化すれば、原子%(atomic %)表示の各元素の存在量、すなわち、各元素の含有量が得られる。特定の元素について、ガラス物品の表面側と内部側の含有量、存在量を比較する場合、これらの含有量、存在量は原子%(atomic %)表示による量である。ガラス物品の最表面について、各元素の定量を行う際は、C、Nなどの汚染物(コンタミネーション)を除外して、各元素の存在比を求める。一方、真空チャンバー内でスパッタによりガラス表面を掘り下げ、形成した面には汚染物の付着はほとんどないと考えてよいので、XPSにより検出された元素の存在比を求めればよい。
また、ガラス物品の高い表面品質が求められる面(光学機能面、光学機能面に成形される面など)は、例えば、上記処理液に接触させることにより処理されるから、高い表面品質が求められる面の全域にわたり、XPS分析を行って表面側および内部側における各元素の組成比、結合状態を調べる必要はなく、高い表面品質が求められる面の少なくとも一ヶ所において、XPS分析を行い、表面側および内部側における各元素の組成比を調べたり、結合状態を調べればよい。
この理由としては、修飾物質(アルカリ土類金属及びF)は処理液の溶媒へと溶出してしまうものの、ガラス骨格物質(P、Al及びO)と処理液の溶質(例えばリン酸塩)とが新たに結合し、ガラス骨格が密になっているためと考えられる。その結果、<1.ガラス物品の製造方法>で述べた効果と同様の効果を、本実施形態のガラス物品は奏することとなる。
なお、本実施形態におけるフツリン酸塩ガラスを用いたガラス物品としては、以下のガラス物品が好適である。
・Al及びアルカリ土類金属を含むガラス物品(好ましくは、アルカリ土類金属は、Mg、Ca、Sr及びBaのうち少なくともいずれかである。)
・Znを含むガラス物品
・希土類元素を含むガラス物品
もちろん、上記以外の物質を更に含有するガラス物品であっても構わない。なお、フツリン酸塩ガラスにおいて、ガラスを構成するガラス成分をカチオン成分とアニオン成分とに分けた場合、周知のように、P、Al、アルカリ土類金属、Znおよび希土類元素はカチオンであり、OおよびFはアニオンである。
ガラス物品が希土類元素成分を含む場合、原子%表示にて、内部側における希土類元素の合計含有量をRE(in)、表面側における希土類元素の合計含有量をRE(su)としたとき、RE(in)に対するRE(su)の比(RE(su)/RE(in))が3以下であることが、ガラス物品表面の欠陥発生を抑制し、表面を高品質に維持する上から好ましい。DI水や純水にガラスを浸漬すると、前述のように水に溶出しやすい成分が選択的に溶出し、水に溶出しにくい希土類元素がガラス表面に残留するため、ガラスの表面側における希土類元素の存在量が増加し、ガラス表面が白濁するなどして表面品質が低下する。例えば、後述するガラスCでは、ガラスを純水に浸漬することにより、比(RE(su)/RE(in))が5を超える。これに対し、比(RE(su)/RE(in))が3以下であればガラス表面の品質を良好に維持することができる。ガラス表面の品質を良好に維持する上から、比(RE(su)/RE(in))が2.5以下であることがより好ましく、2.0以下であることがさらに好ましく、1.5以下であることが一層好ましい。
希土類元素の有無によらず、原子%表示にて、内部側におけるOの含有量をO(in)、表面側におけるOの含有量をO(su)としたとき、O(in)に対するO(su)の比(O(su)/O(in))をガラス表面におけるガラスの骨格の粗密を示す目安の一つと考えることができる。
例えば、Fの含有量が80アニオン%以上、O2−の含有量が20アニオン%以下のガラスを、pHが7付近のリン酸塩水溶液に浸漬すると、浸漬前のガラスでは、比(O(su)/O(in))が2.0未満であるのに対し、浸漬後の比(O(su)/O(in))は2.0以上となる。したがって、ガラス表面を高品質に維持する上から、比(O(su)/O(in))が2.0以上であることが好ましい。ガラス表面を高品質に維持する上から、比(O(su)/O(in))が2.1以上であることがより好ましく、2.2以上であることがさらに好ましく、2.4以上であることが一層好ましい。
本実施形態では、ガラス物品の表面において、修飾物質であるFが処理液の溶媒へと溶出し、ガラス骨格物質(P、Al及びO)と処理液の溶質(例えばリン酸塩)とが新たに結合し、表面側のFの含有量が内部側のFの含有量より少ないガラス物品が得られる。後述する表7に示すように、リン酸塩水溶液を用いて処理したガラス物品(ガラスC)では、比(表面側のFの含有量/内部側のFの含有量)が0.80以下になるのに対し、研磨した面をエタノールで拭いて汚れを除去したガラス物品では、比(表面側のFの含有量/内部側のFの含有量)が0.80を超えている。また、表9に示すように、リン酸塩水溶液を用いて処理したガラス物品(ガラスD)でも、比(表面側のFの含有量/内部側のFの含有量)が0.80以下になっている。
このように、比(表面側のFの含有量/内部側のFの含有量)は、ガラス物品表面の水に対する難溶化の指標の一つになっているため、本実施形態において、比(表面側のFの含有量/内部側のFの含有量)が0.80以下であることが好ましく、0.75以下であることがより好ましく、0.70以下であることがさらに好ましい。
また、本実施形態のガラス物品はFおよびOを含むガラス物品であり、優れた光学特性(低分散性あるいは異常部分分散性)を有するガラスを得る上から、Fの含有量は20アニオン%以上、Oの含有量は80アニオン%以下であることが好ましい。特に、Fの含有量が55アニオン%以上、かつOの含有量が45アニオン%以下であることがさらに好ましく、Fの含有量が70アニオン%以上、Oの含有量が30アニオン%以下であることが一層好ましく、Fの含有量が80アニオン%以上、Oの含有量が20アニオン%以下であることがより一層好ましく、Fの含有量が85アニオン%以上、Oの含有量が15アニオン%以下であることがさらに一層好ましい。
ガラス物品の組成は深さ方向に分布を有する。ガラス物品の最表面の組成とガラス物品の内部の組成は異なる。ガラス物品内の組成は、深さとともに連続的に変化するが、最表面からの深さがある程度深くなると、深さが変化しても組成は一定になる。したがって、深さ方向に一定の組成を有する範囲がガラス本来の組成を有する部分、すなわち、バルクに相当する部分と考えることができる。上記のF、Oの含有量は、それぞれ、このバルク部分における含有量である。バルク部分の組成は、次のようにして測定することができる。ガラス物品の表面をスパッタにより掘り下げ、掘り下げた面においてXPSにより検出された各元素の存在比を測定する。深く掘り下げても検出される元素の種類、各元素の存在比が変化しなくなれば、その元素の存在比がバルク部分の組成である。バルク部分の組成は均一であり、一定の組成となっている。
部位を特定せずにガラス物品の組成、あるいはガラス成分の含有量というときは、このバルク部分における組成、あるいはガラス成分の含有量を意味する。
ガラス物品のバルク部分における組成、あるいはガラス成分の含有量は、上記のように、カチオン%、アニオン%表示で表示することもできる。例えば、アッベ数を決める組成上の大きな要因はF、Oの含有量の比である。したがって、アッベ数の挙動を考える場合、Fの含有量、Oの含有量をアニオン%により示したほうが都合がよい。このように、ガラス物品全体の性質については、カチオン%、アニオン%表示のほうがガラス組成との関係を把握しやすい。
ガラス物品のバルク部分における組成、あるいはガラス成分の含有量は、ICP−AES法、ICP−MS法、原子吸光光度法などにより定量することもできる。
フツリン酸塩ガラスの場合、ガラス骨格物質のAlや修飾物質のCa,SrとFとが結合している。上記の範囲を満たせば、修飾物質として金属フッ化物が溶出しているのと引き換えに、ガラス骨格物質においては、AlとFとの間の結合が切断され、AlとOとの間の結合が新たに十分形成されていることを表す。
それに伴い、酸化状態のAl及びリン酸塩状態のAlの合計含有量については、ガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも多くなっていることが好ましい。また、リン酸塩状態のAlの含有量についても、ガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも多くなっていることが好ましい。酸化状態のAl及びリン酸塩状態のAlの含有量についても、ガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも多くなっているのが好ましい。欠陥発生抑制処理の前だと、AlとFとが結合してしまいこの部分がガラス骨格の末端となってしまっていた。しかしながら、欠陥発生抑制処理の後だと、上述の通り、AlとFとの間の結合が切断され、AlとOとの間に結合が新たに形成され、この結合を基として、新たなガラス骨格が次々と形成されていく。その結果、酸化状態のAl及びリン酸塩状態のAlの合計含有量、リン酸塩状態のAlの含有量は、処理液と接触するガラス物品の表面側において、ガラス物品の内部側よりも多くなっている。また、酸化状態のAl及びリン酸塩状態のAlの含有量は、処理液と接触する表面側においてガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも多くなっていることが好ましい。なお、酸化状態のAlとは、酸素と直接結合した状態のAlを意味し、リン酸塩状態のAlとは、PのPと直接結合した状態のAlを意味する。ただし、x、yは自然数である。なお、XPSスペクトルにおいて、酸化状態のAlに由来する波形は、束縛エネルギーが74.07eV付近にピークを有し、リン酸塩状態のAlに由来する波形は、束縛エネルギーが74.93eV付近にピークを有する。酸化状態のAlとリン酸塩状態のAlが存在する場合、XPSスペクトルの波形は、酸化状態のAlに由来する波形とリン酸塩状態のAlに由来する波形を、重ね合わせた波形となる。さらに、酸化状態、リン酸塩状態以外の結合状態と有するAlが存在する場合、酸化状態、リン酸塩状態以外の結合状態のAlに由来する波形がさらに重なった波形となる。したがって、XPSの測定データを処理することにより、Alが酸化状態であるか、リン酸塩状態であるかは、上記のようにXPSの分析結果より判別することができる。
さらに、酸化状態のAl及びリン酸塩状態のAlの合計含有量については、原子%表示で、Alの含有量(総量)をAl(all)、酸化状態のAlの含有量をAl(ox)、リン酸塩状態のAlの含有量をAl(ph)としたとき、表面側においてAl(all)に対するAl(ox)とAl(ph)の合計量の比((Al(ox)+Al(ph))/Al(all))が0.5以上であること、すなわち、表面側において、Alの総量のうち、半分以上を酸化状態またはリン酸塩状態のいずれかの状態にあるAlが占めることがことがガラス表面を水などに対して難溶化する上から好ましい。ガラス表面を水などに対して難溶化する上から、比((Al(ox)+Al(ph))/Al(all))が0.55以上であることがより好ましく、0.60以上であることがさらに好ましい。
それと同様に、フッ化状態のアルカリ土類金属の含有量については、ガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも少なくなっている。
上記の組成を有するガラス物品の表面のヘイズ値は1%以下であり、極めて効果的に欠陥発生を抑制することができている。ヘイズ値の好ましい範囲は0.5%以下、より好ましい範囲は0.1%以下、さらに好ましくは0.0%である。
本実施形態におけるガラス物品は光学素子(例えば光学ガラス物品レンズ)として極めて好適である。もちろん、他の具体例として、球面レンズ、非球面レンズ、マイクロレンズ等の各種のレンズ、回折格子、回折格子付のレンズ、レンズアレイ、プリズム等を例示することができる。また、形状面からは凹メニスカスレンズ、両凹レンズ、平凹レンズ、凸メニスカスレンズ、両凸レンズ、平凸レンズ等を例示することができる。
なお、これらのレンズに対し、必要に応じて、反射防止膜、全反射膜、部分反射膜、分光特性を有する膜等の光学薄膜や多層膜を設け、光学素子とすることもできる。
また、上記光学素子は、高性能かつコンパクトな撮像光学系の部品として好適であり、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ、携帯電話搭載カメラ、車載カメラ等の撮像光学系に好適である。
また、上記ガラス物品の中でも、研磨面、特に光学研磨面を有するガラス物品において、液体処理後の表面品質低下が深刻な問題を引き起こしやすい。
そのため、上記ガラス物品は、研磨を含む工程を経て作製されたガラス物品、すなわち、研磨面を有するガラス物品であることが好ましく、光学研磨面を有するガラス物品であることがより好ましい。したがって、上記ガラス物品は、光学研磨面を有する光学素子であることが好ましい。
<3.実施の形態による効果>
上記の実施形態では、ガラス物品を処理液に接触させることで、処理液に含まれる溶質の一部を、ガラス表面に存在するガラス成分と結合させ、ガラス表面に処理液に対して難溶性の化合物を形成(ガラス表面の難溶化)させ、フツリン酸塩ガラスが元来有する網目構造と一体化させている。このようにすることで、ガラス物品の表面近傍において、処理液との接触前よりも網目構造が密に存在することになる。この網目構造は、比較的強い結合を有しているため、溶媒と反応しがたい。したがって、溶媒が水である場合でも、溶媒中のヒドロニウムイオンや水酸化物イオン等がガラス内へ移動するのを抑制することができる。
特に、フツリン酸塩ガラスにおいて、網目構造の隙間にイオンあるいはイオン結合性化合物として存在している考えられる元素(アルカリ金属元素、アルカリ土類金属元素、フッ素等)が、処理液に容易に溶出する場合には、溶出により形成されたガラス構造中の隙間に、溶質の一部が進入してガラス成分と結合し、ガラス表面を処理液中の水素がガラス内に移動しにくい部分として再構成できるため、ガラス内に水素が移動するのをさらに抑制することができる。
また、ガラス物品を構成するフツリン酸塩ガラスに対し、処理液の溶質としてリン酸塩を採用する場合には、フツリン酸塩ガラスにおいて、網目構造の主成分であるPおよびOの両方を含むリン酸イオン(PO 3−等)がガラス内に導入される。そのため、ガラス内に導入されたリン酸イオンが、ガラス成分と結合することで、ガラス表面の品質低下を抑制することができる。
また、処理液の溶媒としてフツリン酸塩ガラスの処理には適さないと考えられる水を採用することで、環境負荷を小さくでき、しかも低コストで処理液を作製することができる。さらに、処理液にpHの緩衝作用を持たせることができるため、処理液中におけるガラス成分と結合する溶質の一部の濃度を一定に保つことができ、安定してガラス表面の品質低下抑制効果を得ることができる。また、pHの範囲を特定の範囲とすることで、ガラス成分の溶出をより一層抑制することができる。
その結果、ガラス物品の品質の低下の可能性が予め低減され、ウェットプロセスを経ても表面を高品質に維持可能なガラス物品、そのようなガラス物品の製造方法、そして品質低下の予防処理方法としてのガラス物品の欠陥発生抑制方法を提供できる。
<4.変形例>
以下、上記の本実施形態以外の変形例について述べる。
(ガラス物品の等級)
本実施形態におけるガラス物品としては特に限定がないことは上述の通りだが、本発明を適用する際には、耐潜傷性(DNaOH)が比較的低いガラス物品であっても、処理液がもたらすガラス物品表面への悪影響を軽減することができる。特に、潜傷の顕在化等による品質低下が生じ易い硝種(即ち、耐潜傷性が低い硝種)に対して、本発明を適用することは好適である。具体的には、空気中での保管あるいは水中での保管により、ヤケ、クモリの発生や潜傷の顕在化等による品質低下が生じるような硝種(耐潜傷性の低い硝種)にも特に好適である。また、処理液(研削液、研磨液、洗浄液、リンス液等)として水を用いた場合に、ヤケ、クモリの発生や潜傷の顕在化等による品質低下が生じるような硝種(耐潜傷性の低い硝種)にも特に好適である。
(有機化合物を用いた処理液)
処理液として水溶液を用いた場合のメリットについては既に述べたとおりだが、溶質をガラス骨格の一員に迎え入れることができるのなら、有機化合物を用いた処理液を使用しても構わない。
(リン酸塩水溶液以外の処理液)
溶質をガラス骨格の一員に迎え入れることができるのならば、処理液には特に限定はない。たとえば、溶質は酸と塩基との組み合わせによる塩でもよい。また、溶質は、ガラス成分の一種と結合するため、ガラス成分に含まれる元素から構成されることがより好ましい。リン酸塩水溶液以外の処理液としては、例えばケイ酸塩水溶液が挙げられるが、この場合、ガラス物品がケイ酸塩ガラス物品であるのが好ましい。また、ホウケイ酸塩水溶液でも構わない。また、リン酸塩及びホウケイ酸塩を加えた水溶液を処理液として用いても構わない。
また、緩衝液として用いられている化合物(酢酸、クエン酸、フタル酸等々)の水溶液に対して適宜化合物を混合して、これを処理液としても構わない。ただし、キレート機能を有する溶質を含む液体はガラス物品の表面品質を低下させるおそれがあるため、処理液としては好ましくない。
(欠陥発生抑制処理を行うタイミング)
本実施形態においては、c)研磨加工後に、欠陥発生抑制処理を行った。しかしながら、この処理は、ガラス物品の欠陥が発生または顕在化する前に行われるならば、任意のタイミングで行っても構わない。例えば、保管工程を兼ねて、欠陥発生抑制処理を行っても構わない。研磨工程、洗浄工程又はリンス工程については、ガラス物品と処理液とが接触する時間が短くなるものの、表面の難溶化は瞬間的に生じるため、本発明の効果を奏することができる。光学素子を研削、研磨して製造する場合、高い品質が求められる光学機能面は最終的に研磨工程により創成される。仮に研磨工程前にガラス表面の品質が劣化したとしても、品質が劣化した表面を研磨工程で除去すれば、高い品質を有する表面を得ることができる。表面品質の劣化が特に問題になるのは、研磨工程後、もしくは研磨工程の最終段階における光学機能面の品質劣化である。したがって、欠陥発生抑制処理は研磨工程後の工程、または研磨工程の最終段階を含む研磨工程において行うことが好ましい。精密プレス成形により光学素子を製造する場合は、精密プレス成形用プリフォームの表面品質の良否が光学素子の光学機能面の品質の良否に大きく影響する。したがって、精密プレス成形用プリフォームの研磨工程の最終段階や研磨工程後のプリフォーム洗浄工程、リンス工程において欠陥発生抑制処理を行うことが好ましい。
(欠陥発生抑制処理条件の多様性)
なお、上記の実施形態に係る効果を実現するための条件は、ガラス物品の硝種等によって異なる。本明細書においては主に、ガラス物品がフツリン酸塩ガラスである場合について例示している。ガラス物品の硝種によっては、処理液をリン酸塩水溶液とすると本発明の効果を奏さない場合もある。
いずれにせよ、本発明の技術的思想は、「処理液における溶質を、ガラス物品内におけるガラス成分を新たに供給する源とし、ガラス成分として溶質の一部(例えばリン酸イオン)をガラス物品の一員に加える」ことにあり、この思想自体に保護される価値がある。具体的な欠陥発生抑制処理条件(溶媒、溶質、処理温度、処理pH、処理液との接触時間等々)は、ガラス物品のガラス骨格物質と同じ物質を含む物質を使用することを中心として調べることにより、当業者ならガラス物品の硝種ごとに把握可能である。
(ガラス物品の製造方法)
上記の実施形態では、ガラス素材を研削加工および研磨加工することにより、光学レンズを製造しているが、光学レンズは、プレス成形、たとえば精密モールドプレス成形法により製造することもできる。この成形法は、以下に示すような方法である。まず、球形状や扁平球形状など所定の形状に予備成形されたガラス素材を上型および下型からなる成形型の間に供給し、成形型と共にガラス素材を加熱する。加熱後、ガラス素材を軟化させた状態において上下の成形型を用いてプレスしてガラス素材を変形させる。その後、ガラス素材がガラス転移点温度以下になった後に、成形型から取り出すことによりガラス物品としての光学レンズが得られる。
また、この精密モールドプレス成形法は、成形型内へ供給する前に型外で予熱したガラス素材を、所定温度に加熱された成形型に供給した後に、ガラス素材をプレス成形して、ガラス素材がガラス転移点温度以下になった後に、成形型から取り出す方法も含む。
また、上記の精密モールドプレス成形法等のプレス成形によって得られた光学レンズの外周を芯取り加工する場合は、上記の実施形態の研磨レンズの場合と同様にすればよい。芯取り加工後に、レンズに付着した芯取り液を洗浄する際には、洗浄液およびリンス液のいずれか一方、もしくは両方として、上記の処理液を用いることができる。また、プレス成形により得られた光学レンズに被膜を形成する前に洗浄工程を行う場合にも、洗浄液およびリンス液のいずれか一方、もしくは両方として、上記の処理液を用いることができる。
さらに、光学レンズを精密モールドプレス成形方法で製造する場合には、製造工程において、ガラス素材と成形型との融着を防止するために、ガラス素材の表面に硬質炭素膜等の薄膜を成膜する場合がある。その成膜プロセスの前工程で洗浄が行われ、この洗浄を行う場合にも、洗浄液およびリンス液のいずれか一方、もしくは両方として、上記の処理液を用いることができる。
(ガラス物品の組成)
次にフツリン酸塩ガラスの組成例について説明するが、本実施形態において使用するガラスは、これら組成例のガラスに限定されるものではない。なお、これらの組成例は、バルク部分の組成である。
フツリン酸塩ガラスの第1の好ましいガラス(以下、ガラス1という)は、Fの含有量が55アニオン%以上、Oの含有量が45アニオン%以下のガラス、すなわち、Fを55アニオン%以上、O2−を45アニオン%以下含むガラスである。ガラス表面を水に接触させたとき、表面品質の低下はガラス中のFの含有量の増加に伴い一層顕著になる。したがって、本実施態様の効果は、Fの含有量がより多いガラスにおいて一層顕著なものとなる。したがって、ガラス1において、より好ましいガラスは、Fを70アニオン%以上、O2−を30アニオン%以下含むガラスであり、さらに好ましいガラスはFを80アニオン%以上、O2−を20アニオン%以下含むガラスであり、一層好ましいガラスはFを85アニオン%以上、O2−を15アニオン%以下含むガラスである。ガラス1の中でより好ましいガラスは、ガラス成分として、P5+を1〜35カチオン%、Al3+を10〜40カチオン%、Liを0〜25カチオン%、Fを55〜99アニオン%、O2−を1〜45アニオン%含むフツリン酸塩ガラス(ガラス1A)である。さらに、ガラス1Aの中でより好ましいガラス(ガラス1B)は、ガラス成分として、P5+を3〜25カチオン%、Al3+を30カチオン%を超え40カチオン%以下、Liを0〜20カチオン%、Fを65〜99アニオン%、O2−を1〜35アニオン%含むフツリン酸塩ガラスである。さらに、ガラス1Bにおいて、より分散の低いガラスを得る上から、Fの含有量の下限値が70アニオン%のガラスが好ましく、80アニオン%のガラスがより好ましく、85カチオン%のガラスがさらに好ましい。
ガラス1、ガラス1A、ガラス1Bのいずれにおいても、上記成分に加え、カチオン%表示にて、Mg2+を0〜15%、Ca2+を0〜35%、Sr2+を0〜25%、Ba2+を0〜20%、Naを0〜10%、Kを0〜10%、希土類イオンを合計で0〜12%含むガラスがさらに好ましい。中でも、希土類イオンの合計含有量の上限値が10%であることが好ましく、7%であることがより好ましく、5%であることがさらに好ましい。また、希土類イオンの合計含有量の下限値が0.1%であることが好ましい。また、Ca2+を3〜35%含むガラスが好ましい。希土類イオンとしては、ガラスを着色させないY3+、Gd3+、La3+、Yb3+、Lu3+のいずれかが好ましく、それらの合計含有量が0.1カチオン%以上であることが好ましく、12カチオン%以下であることが好ましい。中でも、Y3+、Gd3+、La3+およびYb3+の合計含有量を0.1〜10カチオン%にすることが好ましく、0.1〜7カチオン%にすることがより好ましく、0.1〜5カチオン%にすることがさらに好ましい。そして、これら希土類イオンの中でもガラスの安定性を維持する上から、Y3+を含有することが好ましく、Y3+を0.1〜12カチオン%含有することが好ましく、0.1〜10カチオン%含有することがより好ましく、0.1〜7カチオン%含有することがさらに好ましく、0.1〜5カチオン%含有することが一層好ましい。
ガラス1(ガラス1A,ガラス1Bを含む)のアッベ数νdは78以上であることが好ましく、80以上であることがより好ましく、85以上であることがさらに好ましく、90以上であることが一層好ましく、93以上であることがより一層好ましい。アッベ数νdの上限は上記組成により自ずと定まるが、100以下を目安とすることができる。アッベ数νdは概ねガラス中のFの含有量に依存し、Fの含有量の増加とともにアッベ数νdも増加する。そのため、アッベ数νdが大きいガラスほど、水に接触したときの表面品質の低下は顕著になる。したがって、アッベ数νdが大きいガラスほど、本実施態様の効果も一層顕著になる。
5+は、ガラスの網目構造を形成する機能を有する。ガラスの安定性を維持しつつ、ガラス溶解時の揮発を抑えて光学的に均質なガラスを得るという観点から、P5+の含有量を上記範囲とすることが好ましい。
Al3+は、ガラスの安定性を向上させる働きをし、溶質の一部と結合して水などの溶媒に対して難溶性化合物を形成する上で有用な成分である。このような働きを得るという観点から、Al3+の含有量を上記範囲にすることが好ましい。
Liは、ガラス融液の粘性を低下させるが、液相温度を低下させる働きが非常に強く、結果的に液相温度におけるガラスの粘度を大きくし、熔融ガラスを成形する際、脈理の発生を抑制する働きをする。また、ガラス転移温度を低下させる働きもある。こうした効果を得るという観点から、Liの含有量を上記範囲にすることが好ましい。Liの含有量の好ましい下限は0.1カチオン%である。
は、ガラスに低分散性、異常分散性を付与するための必須成分である。所望の低分散性、異常分散性を得るという観点から、Fの含有量を上記範囲にすることが好ましい。
ガラス1におけるアニオン成分は実質的にFとO2−からなる。この他、アニオン成分として少量のClを導入することもできる。熔融ガラスを白金系パイプから流出する際、ガラスがパイプ外周面に濡れ上がって脈理などの発生要因となるが、Clを添加することによりガラス融液の濡れ上がりを低減する効果が得られる。
熱的安定性の優れたガラスを実現するという観点から、FとO2−の合計含有量をアニオン%表示で95%以上とすることが好ましい。
ガラスの熱的安定性、耐水性を改善するという観点から、Mg2+、Ca2+、Sr2+、Ba2+、Na、Kの各成分の含有量を上記範囲にすることが好ましい。
3+は、少量の導入によりガラスの熱的安定性向上が期待されるが、過剰に導入するとガラスの熔融温度が上昇し、熔融ガラスからの揮発が助長されるとともに、ガラスの熱的安定性も低下する。したがって、Y3+の含有量を上記範囲にすることが好ましい。Y3+の含有量のより好ましい範囲は0.1〜12カチオン%、さらに好ましい範囲は0〜10カチオン%、一層好ましい範囲は0.1〜7カチオン%、より一層好ましい範囲は0.1〜5カチオン%である。
この他、屈折率の調整などを目的として少量のLa3+、Gd3+、Zr4+、Zn2+を導入することができる。あるいは、Yb3+、Lu3+を導入することもできる。
3+はガラスの揮発性を著しく助長させるため、B3+の含有量を0〜1%とすることが好ましく、実質的に含有しないことがより好ましい。なお、「実質的に含有しない」とは、全くB3+を含有しないことも含むし、B3+を含有していたとしてもガラスの揮発性が発揮されない程度の微々たる量であることを指す。
Pb、As、Cd、Tl、Te、Cr、Se、U、Thは、環境負荷が大きい物質であるので、ガラスに導入しないことが好ましい。
ガラス1は、Sc、Hf、Geといった成分を必要としない。Sc、Hf、Geは高価な成分なので、これらを導入しないことが好ましい。また、Luは、必須成分ではなく、高価な成分なので、ガラス物品の原料コストを低減する上からは、ガラスに導入しないことが好ましい。ガラス1は可視域の広い波長域にわたり、優れた光線透過性を示す。こうした性質を活かすという観点から、Cu、Cr、V、Fe、Ni、Co、Nd、Er、Tb、Euなどの着色の要因となる物質を導入しないことが好ましい。
屈折率ndの好ましい範囲は1.42〜1.53である。なお、ガラス1の揮発性、侵蝕性を抑制するという観点から、P5+の含有量に対するO2−の含有量のモル比O2−/P5+を3.5以上、すなわち、7/2以上にすることが望ましい。
フツリン酸塩ガラスの第2の好ましいガラス(以下、ガラス2という)は、原子%表示で、Pを0.1〜6%、Alを0.8〜22%、Oを1〜20%、Fを30〜60%、を含有し、Ca、SrおよびBaの合計含有量は0原子%を超え、PおよびAlの合計量をFの含有量で割った値((P+Al)/F)が0.1〜0.4であるガラスである。
ガラス2において、Caを1〜20原子%、Srを1〜20原子%、Baを1〜20原子%、Fを30〜60原子%、Oを1〜20原子%、Mgを0〜10原子%、Yを0〜10原子%含有することが好ましい。ガラス2によればアッベ数νdが90〜100のガラスを得ることができる。
なお、ガラスの熱的安定性を維持する上から、ガラス1、ガラス1A、ガラス1B、ガラス2のいずれにおいても、P5+の含有量に対するO2−の含有量のモル比O2−/P5+が2.5以上であることが好ましく、2.8以上であることがより好ましく、2.9以上であることがさらに好ましく、3以上であることが一層好ましい。
なお、上記の実施形態においてはフツリン酸塩ガラスを用いたガラス物品を例として挙げた。ただ、それ以外の物質からなるガラス物品にも本発明は適用可能である。
以下、ガラス物品としてホウ酸塩ガラス物品を用いた例について述べる。
ホウ酸塩ガラス物品は、Bを含む。そして、その際、溶媒を水とし、溶質はホウ酸塩を含むようにする。この時、溶質として、更にリン酸塩を含むようにしても構わない。
なお、本実施形態におけるホウ酸塩ガラス物品としては、以下のガラス物品が好適である。
・アルカリ土類金属及びZnを含むガラス物品
・希土類金属(希土類元素)を含むガラス物品
・アルカリ金属を含むガラス物品
もちろん、上記以外の物質を更に含有するガラス物品であっても構わないし、フツリン酸塩ガラスと同様、Fを含むガラス物品であっても構わない。
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
次に実施例を示し、本発明について具体的に説明する。もちろん本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
まず、ガラス物品としては、円盤状の平面ガラス基板(直径43.7mm、厚さ5mm)を用いた。この平面基板は、既に研磨加工され、光学研磨面を有している。また、このガラス基板の硝材は、カチオン成分としてP5+を5.4カチオン%、Al3+を33.7カチオン%、Liを1.0カチオン%、Naを1.2カチオン%、Mg2+を6.8カチオン%、Ca2+を28.7カチオン%、Sr2+を17.2カチオン%、Ba2+を4.7カチオン%、Y3+を1.3カチオン%含み、アニオン成分としてFを91.6アニオン%、O2−を8.2アニオン%、Clを0.2アニオン%を含むフツリン酸塩ガラス(モル比O2−/P5+=3.5)であり、屈折率ndが1.433、アッベ数νdが96である(ガラスAという)。ここで、上記のガラス組成、光学特性は上記ガラス基板のバルク部分の組成、特性である。
原子%(atomic%)表示でのガラスAの組成は、Pの含有量が1.64%、Alの含有量が10.21%、Mgの含有量が2.06%、Caの含有量が8.69%、Srの含有量が5.21%、Baの含有量が1.42%、Liの含有量が0.3%、Naの含有量が0.36%、Yの含有量が0.39%、Fの含有量が63.85%、Oの含有量が5.72%、Clの含有量が0.14%である。
そして、このガラス基板を、処理液としてのリン酸塩水溶液に浸漬させた。なお、リン酸塩水溶液としては、NaHPOとNaHPOをモル比1:1としてpH7.0となるようにした水溶液を用いた。また、処理液におけるリン(P)濃度とナトリウム(Na)濃度はともに160ppmとし、処理液の温度は16℃とし、浸漬時間は合計15時間とした。
(参考例)
参考例においては、実施例1における研磨後のガラス基板の表面を直ちにエタノールで拭いて、ガラス表面に付着したスラリーやスラッジを除去した。こうして得られたガラス基板を参考例とした。したがって、参考例のガラス基板は、リン酸塩水溶液に接触していない。それ以外は、実施例1と同様の手法を用いて、ガラス基板を作製した。なお、ガラス物品の量産において、研磨直後のガラス表面をエタノールで拭いて、固着の原因となる研磨砥粒などを除去する作業は生産性を低下させるため、このような方法は実用上、好ましくない。
(評価)
実施例1で得られたガラス基板の表面をエタノールで拭いた後、実施例1および参考例の各ガラス基板に対し、XPSスペクトルを測定し、ガラス基板の表面近傍(4〜5nm)に含まれる元素の種類および結合状態について評価した。また、比較のため、組成とガラス基板の内部(表面から100nm程度)についても、元素の種類および結合状態を評価した。なお、ガラス基板の内部を測定する際には、スパッタリングにより表面を100nm程度削った。
また、XPSの測定条件は、以下の通りである。
励起X線:Al mono
検出領域:φ100μm
取出し角:45deg
検出深さ:破線:4〜5nm、実線:100nm(スパッタリング)
スパッタリング条件:Ar 2.0kV
スパッタリングレート:約5nm/min(SiO換算)
上記測定条件により、ガラス基板、すなわちガラス物品の表面側および内部側に存在する元素の種類、各元素の存在比および結合状態を評価することができる。
なお、図1〜図6は、XPSを行った結果を示すグラフであり、(a)は実施例1の結果を示し、(b)は参考例の結果を示す。ガラス基板の組成のうち、図1はAl2p、図2はP2s、図3はO1s、図4はCa2p、図5はSr3p3/2、図6はF1sについての結果を示すグラフである。なお、図7〜図8は、実施例1の結果のみを示す。図7はBa3d5/2、図8はMg1sについての結果を示すグラフである。
図1〜図3はフツリン酸塩ガラスにおいて網目構造を形成している元素Al、P、Oに関する結果である。各図において、実線で示されるガラス内部のXPSスペクトルは、処理液の影響を受けていないと考えられるため、実施例1と参考例とではほぼ同じスペクトルを示していると考えられる。
参考例(各図(b))に比べ、実施例1(各図(a))の方が、ガラス基板の内部に比べガラス基板の表面において、網目構造を形成する元素(P、Al及びO)のピーク強度が顕著に高い。これは、ガラス基板の表面が処理液と接触することにより、溶質の一部がガラス基板内に導入され、ガラス成分と結合した結果、結合を示すピーク強度が高くなったと考えられる。この結果は、ガラス基板の表面に難溶性化合物(リン酸アルミニウム)が形成されていることを示していると考えられる。
一方、図4〜図6は、網目構造の隙間に存在していると考えられる元素に関する結果である。図1〜3とは逆に、参考例(各図(b))に比べ、実施例1(各図(a))の方が、ガラス基板の内部に比べガラス基板の表面において、アルカリ土類金属及びFのピーク強度が顕著に低い。これは2つの理由が考えられる。1つは、アルカリ土類金属元素およびフッ素がガラス表面から処理液に流出した可能性が考えられる。もう1つは、表面近傍において、リン酸イオンが網目構造のAlと結合した結果、表面におけるアルカリ土類金属元素およびフッ素の割合が相対的に減少した可能性が考えられる。いずれの理由であっても、結局のところ、表面には、難溶性化合物(リン酸アルミニウム)が形成されていることを示していると考えられる。
また、図7〜図8も実施例1における網目構造の隙間に存在していると考えられる元素に関する結果であるが、図4(a)〜図6(a)と同様の傾向を示している。
特に、図2〜図3においては、実施例1と参考例との間に、ピーク強度だけでなく、ピーク位置にも顕著な差が生じている。図2においては、実施例1(図2(a))では、参考例(図2(b))に比べ、金属とPOxとの間の結合に起因するピーク強度が極端に増加し、Pに起因するピークからピーク位置のシフトが生じている。同様に、網目構造を形成しているAl(図1(a))やO(図3(a))においてもピーク強度が増大していること、O(図3(a))において、金属とPOxとの間の結合に起因するピーク強度が極端に増加し、金属とOとの間の結合に起因するピークからピーク位置のシフトが生じている。これらは、Al、PおよびOから構成される網目構造がガラス表面において増えていることを示していると考えられる。
さらに、上記の実施例1および参考例と同様の方法でそれぞれガラス基板を作成し、その深さ方向について二次イオン質量分析(SIMS)を行った。その結果、実施例1の試料(リン酸塩水溶液に浸漬させた試料)および参考例の試料(リン酸塩水溶液に浸漬させなかった試料)は、どちらも、水素の二次イオン強度は、表面から漸次低下し、ある深さ以降では、ほぼ一定の値となる傾向を示していた。したがって、実施例1における処理液中の水素のガラス内への移動は、処理液中の水素の移動も起こらない参考例と同レベルであり、処理液中に含まれる水素のガラス内へ移動が抑制されていることを示していると考えられる。
さらに、実施例1では、処理液中への浸漬によってガラス表面への研磨砥粒の固着を防止しつつ、クモリのない高品質なガラス表面が維持されていることが確認できた。
次にガラスAを研削してレンズ形状に加工し、さらに研磨液を用いて光学研磨し、光学レンズを作製した。研磨液は、上記処理液に研磨砥粒を分散させたものである。研磨後、上記処理液と同種の液を保管液とし、この保管液の中にレンズを浸漬して保管した。さらに、レンズを保管液から取り出し、上記処理液と同種の液に洗剤を加えた液でレンズ表面に着いた異物を洗浄、除去し、さらに上記処理液と同種の液をリンス液としてレンズをリンスした。そして最後にレンズをIPA(イソプロピルアルコール)で処理し、乾燥させて表面にクモリのない清浄なレンズを得た。
(硝種毎の実施例及び比較例)
次に、硝種毎における実施例及び比較例の結果について述べる。
(実施例2〜18)
まず、試料となるガラス物品としては、実施例1と同様のガラスAからなる円盤状の平面ガラス基板(直径43.7mm、厚さ5mm)を用いた。この平面基板は、研磨加工され、光学研磨面を有している。
そして、このガラス基板を、表1に示す処理液に浸漬させた。また、リン酸塩水溶液の温度は16℃とし、浸漬時間は合計15時間とした。なお、参考として、処理液における元素分析濃度も表1に掲載した。
上記の保管処理を行ったガラス物品に対し、保管前後での重量変化値(ΔWt(mg))および保管後のヘイズ値(%)を下記に示す方法により評価した。また、目視により、ガラス物品の表面において、欠陥が発生しているか否かについて評価した。さらに、上記の処理を行った前後の処理液のpHについても求めた。結果を表1に示す。
(重量変化値)
重量変化値は、処理液への浸漬前後での試料の重量を計測し、それぞれの計測結果の差分として算出される。重量変化値が大きいと、潜傷が拡大している可能性が高いため、重量変化値は小さいことが好ましい。結果を表1に示す。
(ヘイズ値)
ヘイズ値は、いわゆるガラスの曇りの度合を表す値であり、数値が小さい程透明性が高く好ましい。具体的には、ヘイズ値(%)=Td/Tt×100(Td:拡散透過率、Tt:全光線透過率)の式で特定される。このようなヘイズ値は、「日本光学硝子工業会規格JOGIS 光学ガラス物品の化学的耐久性の測定方法(表面法) 07−1975」に定められたヘイズメーターを用い、処理液に所定時間浸漬した後における硝材試料の対向する二つの表面に対し垂直に測定光を透過させることで、測定される。結果を表1に示す。
表1より、いくつかの実施例では、わずかに青ヤケや白濁の兆候が見られた試料(表中○で表記)があったものの、総じて良好であることが確認できた(表中◎で表記)。
(比較例1〜21)
表2に示す処理液に接触させた以外は実施例2〜18と同様に評価を行った。結果を表2に示す。
表2より、全ての比較例のガラス物品の表面において、白濁、ヤケ、細かい傷の表出等、欠陥が発生していることが確認できた。
実施例2〜18においても、実施例1と同様にガラスAからなる表面にクモリのない清浄なレンズを得た。
(実施例19〜22)
硝材として、カチオン成分として、P5+を27.4カチオン%、Al3+を20.9カチオン%、Mg2+を8.3カチオン%、Ca2+を14.2カチオン%、Sr2+を16.9カチオン%、Ba2+を11.7カチオン%、Y3+を0.6カチオン%、アニオン成分としてFを62.9アニオン%、O2−を37.1アニオン%含み、モル比O2−/P5+が3、屈折率ndが1.497、アッベ数νdが81.6のフツリン酸塩ガラス(ガラスBという)を用いて、表3に示す処理液に接触させた以外は実施例2〜18と同様に評価を行った。なお、ガラス基板のバルク部分の組成は、上記硝材の組成である。
原子%(atomic%)表示でのガラスBの組成は、Pの含有量が8.52%、Alの含有量が6.5%、Mgの含有量が2.58%、Caの含有量が4.42%、Srの含有量が5.26%、Baの含有量が3.64%、Yの含有量が0.19%、Fの含有量が43.34%、Oの含有量が25.56%である。
表3より、いくつかの実施例では、わずかに青ヤケや白濁の兆候が見られた試料があったものの、総じて良好であることが確認できた。
次にガラスBを研削してレンズ形状に加工し、さらに研磨液を用いて光学研磨し、光学レンズを作製した。研磨液は、上記各処理液に研磨砥粒を分散させたものである。研磨後、上記処理液と同種の液を保管液をとし、この保管液の中にレンズを浸漬して保管した。さらに、レンズを保管液から取り出し、上記各処理液と同種の液に洗剤を加えた液でレンズ表面に着いた異物を洗浄、除去し、さらに上記各処理液と同種の液をリンス液としてレンズをリンスした。そして最後にレンズをIPA(イソプロピルアルコール)で処理し、乾燥させて表面にクモリのない清浄なレンズを得た。
(比較例22〜30)
表4に示す処理液に接触させた以外は実施例19〜22と同様に評価を行った。結果を表4に示す。
表4より、全ての比較例のガラス物品の表面において、白濁、ヤケ、細かい傷の表出等、欠陥が発生していることが確認できた。
なお、表1〜4に示す結果から、処理液が緩衝機能を必ずしも有している必要はないことが確認できる。また、処理液のpHが必ずしも上述した範囲内にある必要はないことも確認できる。また、処理液が溶質としてリン酸塩を有している必要はなく、たとえば、リン酸(HPO)と水酸化ナトリウム(NaOH)との組み合わせでもよい。
すなわち、図1〜8から明らかなように、溶質の一部がガラス物品の表面に存在しているガラス成分と結合できるように処理液を選定すればよい。
なお、表1〜4に示す結果を考慮すると、必ずしも、処理液が緩衝機能を有していれば良いというわけでもないし、処理液のpHが6以上8以下だと良いというわけでもない。ガラス物品の硝種に応じて、処理液及び処理条件を調整する必要がある。ただ、図1〜8に示すように、欠陥発生抑制処理の際に、処理液における溶質を、ガラス成分をガラス物品に対して新たに供給する源とできればよい。つまり、処理液における溶質を、ガラス物品内におけるガラス成分と結合自在とし、当該ガラス成分(特にガラス骨格物質)として加入自在とする条件は、当業者であれば、pHや処理液の溶質や溶媒の種類を調節することにより、適宜設定することが可能である。結局のところ、ガラス骨格を構成し得る成分の含有量については、ガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも多いようにするという思想こそが、本発明の大きな特徴である。
(実施例23)
次に、原子%(atomic %)表示にて、Pを1.89%、Alを9.74%、Mgを2.04%、Caを8.55%、Srを5.11%、Baを1.4%、Liを1.47%、Naを0.61%、Yを0.38%、Fを61.41%、Oを7.28%、Clを0.12%含み、屈折率ndが1.437、アッべ数νdが95.1のフツリン酸ガラス(以下、ガラスCという)を用い、実施例1と同様の光学研磨面を有する円盤状の平面ガラス基板を7枚、用意した。
なお、ガラスCのモル比(O2−/P5+)は3.85であり、カチオン%、アニオン%表示の組成は、P5+の含有量が6.06カチオン%、Al3+の含有量が31.23カチオン%、Mg2+の含有量が6.54カチオン%、Ca2+の含有量が27.41カチオン%、Sr2+の含有量が16.38カチオン%、Ba2+の含有量が4.49カチオン%、Liの含有量が4.71カチオン%、Naの含有量が1.96カチオン%、Y3+の含有量が1.22カチオン%であり、Fの含有量が89.25アニオン%、O2−の含有量が10.58アニオン%、Clの含有量が0.17アニオン%である。
なお、ガラス基板のバルク部分の組成は、上記硝材の組成である。
各基板を、以下に示す条件C−1から条件C−5までの5種の条件でそれぞれ処理した。
(条件C−1)
まず、処理液としてのリン酸塩水溶液を用意した。リン酸塩水溶液としては、NaHPOとNaHPOをモル比1:1としてpH7.0となるようにした水溶液である。処理液におけるリン(P)濃度とナトリウム(Na)濃度はともに150ppmとした。
7槽からなるリンス装置を用い、第1槽から第3槽にリンス液として上記処理液を入れ、第4槽から第6槽にリンス液としてイソプロピルアルコール(IPA)を入れた。
第1槽、第2槽、第4槽、第5槽では超音波洗浄を行った。第1槽から第6槽まで順次、ガラス基板を浸漬し、ガラス基板表面の清浄度を高めていった。第1槽から第6槽までの各槽におけるガラス基板の浸漬時間はいずれも100秒とした。また、第1槽から第6槽までの各槽において、槽毎に槽内の液を槽内からフィルター、イオン交換樹脂、槽内へと循環させて、リンス液としての機能が低下しないようにした。第1槽から第6槽までの各槽におけるリンス液の温度はいずれも室温である。第7槽はベーパー槽(Vapour槽)と呼ばれる。ベーパー槽では、103℃でイソプロピルアルコール(IPA)によるVapour処理(IPA蒸気乾燥処理)を60秒間行い、ガラス基板の表面を清浄な状態で乾燥させた。
(条件C−1+条件C−2)
条件C−1によりリンスした平面ガラス基板を250℃で30分間、真空加熱した(条件C−2)。条件C−2は光学研磨面に光学多層膜をコーティングするとき基板加熱を想定したものである。
(条件C−1+条件C−2+条件C−3)
条件C−2の真空加熱とともに、酸素、アルゴンガスを導入し、熱電子イオンガンを用いて、平面ガラス基板の光学研磨面をイオンクリーニングした(条件C−3)。条件C−3も光学研磨面に光学多層膜をコーティングするとき基板加熱を想定したものである。
(条件C−4)
平面ガラス基板を、実施例1と同様のリン酸塩水溶液に15時間浸漬した。リン酸塩水溶液の温度を16℃とした。リン酸塩水溶液は保管液に相当する。
(条件C−5)
平面ガラス基板を、実施例1と同様のリン酸塩水溶液に1分間浸漬した。リン酸塩水溶液の温度を16℃とした。
(試験例A)
研磨後のガラス基板の表面を直ちにエタノールで拭いて、ガラス表面に付着したスラリーやスラッジを除去した。
(試験例B)
平面ガラス基板を、16℃の純水に15時間浸漬した。
(評価)
条件C−1〜条件C−5の各条件で処理した各ガラス基板に対し、XPSスペクトルを測定し、ガラス基板の表面近傍(4〜5nm)に含まれる元素の存在比および結合状態について評価した。また、比較のため、ガラス基板の内部(表面から100nm程度)についても、XPSスペクトルを測定し、元素の存在比および結合状態を評価した。なお、ガラス基板の内部を測定する際には、スパッタリングにより表面を100nm程度削った。
XPSの測定条件は、実施例1と同様である。
XPSスペクトルにおいて、元素固有の束縛エネルギー(Binding Energy)の位置にピークが現れる。これらピーク周辺のスペクトル波形とスペクトルのベースラインによって囲まれた領域の面積を取り、元素毎の面積比を算出すると、この比が各元素の存在比となる。
単一の元素が単一の結合状態にある場合、その元素に由来するXPSスペクトルの波形はガウス関数形となる。結合状態が単一ではなく、複数の結合状態にある場合、XPSスペクトルの波形は、ピーク位置が僅かに異なる複数のガウス関数形を合成した形になる。したがって、XPSによって得られたスペクトル波形を、想定される結合状態に対応する束縛エネルギーの位置をピークとする複数種のガウス関数に分解(分離)し、得られた各ガウス関数とベースラインとによって囲まれる領域の面積の比を求めれば、各結合状態の元素の存在比を算出することができる。XPSスペクトルの複数種のガウス関数への分解(分離)は、各ガウス関数における定数を最小二乗法などによりフィッティングすればよい。
ガラス基板の内部(内部側)の元素の存在比、結合状態は、条件C−1〜条件C−5、試験例A、試験例Bの各条件でほぼ同じであった。そこで、条件C−1により処理したガラス基板について得た内部側の各元素の存在量およびAlの結合状態毎の存在量を、ガラス基板の内部側の各元素の存在量およびAlの結合状態毎の存在量とした。ここで、存在量は、C、Nなどコンタミネーションを除外した、残る元素についての原子%(atomic%)表示での存在量である。
[表5について]
表5に、条件C−1〜C−5の処理をそれぞれ行ったガラス基板についてXPS測定を行い、ガラス基板の表面側におけるP、Al、Mg、Ca、Sr、Ba、F、Oの各存在量と、内部側における各元素の存在量と、の比率を示す。
表5より明らかなように、リン酸塩水溶液を用いて処理を行ったいずれの条件においても、P、Al、Oの存在量の比率はそれぞれ1.0を超えており、表面側の存在量が内部側の存在量よりも多い。Mg、Ca、Sr、Ba、Fの各存在量の比率Mg、Ca、Sr、Baの合計存在量(合計含有量)の比率は、どちらも1.0未満であり、表面側の存在量が内部側の存在量よりも少ない。
条件C−1〜C−5の処理を行った各ガラス基板の光学研磨面のヘイズ値は0.0%、重量変化量は1.6×10-3mg/(cm・hour)以下であった。
[表6について]
表6に、条件C−1〜C−5の処理をそれぞれ行ったガラス基板と、試験例Bのガラス基板についてXPS測定を行い、測定結果から求めたガラス基板の表面側におけるYの存在量と、内部側におけるYの存在量と、の比率を示す。
表6より明らかなように、リン酸塩水溶液を用いて処理を行った条件C−1〜C−5については、Yの内部側の存在量に対する表面側の存在量の比率(表面側の存在量/内部側の存在量)が1.13以下であるのに対し、表面が白濁した試験例Bでは、比率(表面側の存在量/内部側の存在量)が5.13と極めて大きい値を示した。
[表7について]
表7に、条件C−1〜C−5の処理をそれぞれ行ったガラス基板と、試験例Aのガラス基板についてXPS測定を行い、測定結果から求めたガラス基板の表面側におけるOの存在量と、内部側におけるOの存在量と、の比率、ならびにガラス基板の表面側におけるFの存在量と、内部側におけるFの存在量と、の比率を示す。
表7から明らかなように、リン酸塩水溶液を用いて処理した条件C−1〜C−5については、Oの内部側の存在量に対する表面側の存在量の比率(表面側の存在量/内部側の存在量)が2.45〜4.45と高い値を示した。一方、試験例Aについては、比率(表面側の存在量/内部側の存在量)が1.91と2.0未満であった。
また、リン酸塩水溶液を用いて処理した条件C−1〜C−5については、Fの内部側の存在量に対する表面側の存在量の比率(表面側の存在量/内部側の存在量)が0.13〜0.68と0.80以下の値を示した。一方、試験例Aについては、比率(表面側の存在量/内部側の存在量)が0.84と0.80を超えていた。
[表8について]

表8に、条件C−1〜C−5の処理をそれぞれ行ったガラス基板と、試験例Aのガラス基板についてXPS測定を行い、測定結果から求めたガラス基板の表面側における結合状態毎のAlの存在量と、試験例Aのガラス基板の内部側における結合状態毎のAlの存在量と、を示す。
なお、表8において、Alの存在量は、Alおよびその他のガラス成分元素の存在量の合計が100原子%(atomic %)となるように定めている。
また、AlのXPSスペクトル波形は、6種の結合状態のガウス関数形に分離することができる。
6種の結合状態は、束縛エネルギーが70.60eVに相当する帯電状態の異なる金属Al、束縛エネルギーが73.05eVに相当する金属Al、束縛エネルギーが74.07eVに相当するAl等の酸化状態のAl、束縛エネルギーが74.93eVに相当するAl−POx等のリン酸塩状態のAl、束縛エネルギーが75.45eVに相当するAlOF等、束縛エネルギーが76.90eVに相当するAlF等のフッ化状態のAlである。
前述の方法により、AlのXPSスペクトル波形を6種の結合状態毎の波形に分離し、分離した各波形とベースラインとにより囲まれる領域の面積の比から、各結合状態にあるAlの存在量を求めた。
表8より、条件C−3、C−4により処理したガラス基板の最表面における酸化状態のAlの存在量は、ガラス基板の内部側における酸化状態のAlの存在量よりも多いことがわかる。
また、条件C−1〜C−4により処理したガラス基板の最表面におけるリン酸塩状態のAlの存在量は、ガラス基板の内部側におけるリン酸塩状態のAlの存在量よりも多いことがわかる。
さらに、条件C−1〜C−4により処理したガラス基板の最表面における酸化状態のAlの存在量とリン酸塩状態のAlの存在量との合計は、ガラス基板の内部側における酸化状態のAlの存在量とリン酸塩状態のAlの存在量との合計よりも多いことがわかる。
さらに、Alの総量(各状態のAlの存在量の合計量)に対する酸化状態のAlの存在量とリン酸塩状態のAlの存在量との合計量の比率((酸化状態のAlの存在量+リン酸塩状態のAlの存在量)/Alの総量)は、条件C−1〜C−4により処理したガラス基板はいずれも0.5以上であるのに対し、試験例Aのガラス基板では、上記比率が0.43と、酸化状態またはリン酸塩状態のAlの合計存在量がAlの総量の半分にも達していないことがわかる。
結局のところ、表8は、ガラス基板を処理液(リン酸塩水溶液)で処理することにより、処理液の溶質がガラス内部に取り込まれ、ガラス基板の表面が難溶化すれば、その後に、加熱等の処理を行い、表面側のリン酸塩状態のAlが減少したとしても、欠陥発生抑制効果は維持されることを示している。
(実施例24)
次に、原子%(atomic %)表示にて、Pを8.53%、Alを6.5%、Mgを2.58%、Caを4.41%、Srを5.25%、Baを3.64%、Yを0.2%、Fを43.32%、Oを25.58%含み、屈折率ndが1.497、アッべ数νdが81.61であるフツリン酸ガラス(以下、ガラスDという)を用い、実施例1と同様の光学研磨面を有する円盤状の平面ガラス基板を用意した。
なお、ガラスDのモル比(O2−/P5+)は3.00であり、カチオン%、アニオン%表示の組成は、P5+の含有量が27.42カチオン%、Al3+の含有量が20.89カチオン%、Mg2+の含有量が8.29カチオン%、Ca2+の含有量が14.18カチオン%、Sr2+の含有量が16.88カチオン%、Ba2+の含有量が11.70カチオン%、Y3+の含有量が0.64カチオン%であり、Fの含有量が62.87アニオン%、O2−の含有量が37.13アニオン%である。
なお、ガラス基板のバルク部分の組成は、上記硝材の組成である。
条件C−1と同様の条件D−1で上記ガラス基板を処理した。
[表9について]
実施例23と同様にして、条件D−1により処理したガラス基板における表面側と内部側とのガラス成分元素の存在量を定量した。得られた表面側におけるP、Al、Mg、Ca、Sr、Ba、Y、F、Oの存在量と、内部側における各元素の存在量と、の比率を表9に示す。
表9より、P、Oの比率(表面側の存在量/内部側の存在量)はそれぞれ1.0を超え、個々のアルカリ土類金属の比率(表面側の存在量/内部側の存在量)、アルカリ土類金属の合計存在量AEの比率(表面側の合計存在量/内部側の合計存在量)、Fの比率(表面側の存在量/内部側の存在量)はそれぞれ1.0未満になっている。
また、Yの比率(表面側の存在量/内部側の存在量)は1.00であり、実施例23においてリン酸塩水溶液を用いて処理したときと同様、上記比率の増大がリン酸塩水溶液の使用によって抑えられている。
条件D−1による処理後の光学研磨面のヘイズ値は0.0%、重量変化量は0.9×10-3mg/(cm・hour)未満であった。
[表10について]
実施例23と同様にして、条件D−1による処理後のガラス基板についてXPS測定を行い、ガラス基板の表面側および内部側における結合状態毎のAlの存在量を求めた。各結合状態のAlの存在量(原子%)を表10に示す。
表10より、リン酸塩状態のAlの存在量、比率((酸化状態のAlの存在量+リン酸塩状態のAlの存在量)/Alの総量)については、0.5を超えている。
(実施例25)
表11(原子%表示)および表12(カチオン%およびアニオン%表示)に示す組成および特性を有するガラスE1〜E10、ガラスF1、ガラスF2の12種のフツリン酸ガラスについても、上記実施例と同様、光学研磨面を有する平面ガラス基板を作製し、条件C−1〜条件C−5の各条件で処理を行い、XPSによりガラス基板の表面側および内部側における各元素の存在量、結合状態を分析、定量した。
[ガラスE1〜E10の分析結果について]
条件C−1〜C−5により処理したガラス基板について、P、Al及びOの含有量については、ガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも多く、アルカリ土類金属の含有量、アルカリ土類金属の合計含有量及びFの含有量については、ガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも少なかった。
ガラスE1〜E10はいずれも希土類元素成分を含む。原子%表示にて、内部側における希土類元素の含有量をRE(in)、表面側における希土類元素の含有量をRE(su)としたとき、条件C−1〜C−5により処理した各ガラス基板について、RE(in)に対するRE(su)の比(RE(su)/RE(in))が2以下であったが、ガラスE1〜E10の各ガラスを用い、試験例Bと同様の方法により処理したガラス基板については、光学研磨面が白濁し、比(RE(su)/RE(in))が3を超えていた。
条件C−1〜C−5により処理した各ガラス基板において、原子%表示にて、内部側におけるOの含有量をO(in)、表面側におけるOの含有量をO(su)としたとき、O(in)に対するO(su)の比(O(su)/O(in))が2.0以上であった。一方、試験例Aと同様の方法により処理したガラス基板において、比(O(su)/O(in))が2.0未満であった。
条件C−1〜C−5により処理した各ガラス基板において、リン酸塩状態のAlの含有量、酸化状態のAl及びリン酸塩状態のAlの合計含有量については、いずれもガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも多かった。
また、条件C−1〜C−5により処理した各ガラス基板において、原子%表示で、各結合状態のAlの含有量(Alの総量)をAl(all)、酸化状態のAlの含有量をAl(ox)、リン酸塩状態のAlの含有量をAl(ph)としたとき、表面側においてAl(all)に対するAl(ox)とAl(ph)との合計量の比((Al(ox)+Al(ph))/Al(all))が0.5以上であった。
条件C−1〜C−5により処理した各ガラス基板について、Fの内部側の存在量に対する表面側の存在量の比率(表面側のFの存在量/内部側のFの存在量)を求めたところ、0.1〜0.69と、いずれのガラス基板においても0.70以下であった。
条件C−1〜C−5により処理した各ガラス基板の光学研磨面には、クモリ、白濁などの欠陥は認められなかった。また、上記各ガラス基板の光学研磨面のヘイズ値は0.0%であった。また重量減少量も実施例23における重量減少量と同等であった。
[ガラスF1、ガラスF2の分析結果について]
条件C−1〜C−5により処理したガラス基板について、P及びOの含有量については、ガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも多く、アルカリ土類金属の含有量、アルカリ土類金属の合計含有量及びFの含有量については、ガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも少なかった。
ガラスF1、ガラスF2はいずれも希土類金属成分を含む。原子%表示にて、内部側における希土類元素の合計含有量をRE(in)、表面側における希土類元素の合計含有量をRE(su)としたとき、条件C−1〜C−5により処理した各ガラス基板について、RE(in)に対するRE(su)の比(RE(su)/RE(in))が2以下であったが、試験例Bと同様の方法により処理したガラス基板については、光学研磨面が白濁し、比(RE(su)/RE(in))が3を超えていた。
条件C−1〜C−5により処理した各ガラス基板において、原子%表示にて、内部側におけるOの含有量をO(in)、表面側におけるOの含有量をO(su)としたとき、O(in)に対するO(su)の比(O(su)/O(in))が1.0を超えていた。
条件C−1〜C−5により処理した各ガラス基板において、リン酸塩状態のAlの含有量については、ガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも多かった。
また、条件C−1〜C−5により処理した各ガラス基板において、原子%表示で、各結合状態のAlの含有量(Alの総量)をAl(all)、酸化状態のAlの含有量をAl(ox)、リン酸塩状態のAlの含有量をAl(ph)としたとき、表面側においてAl(all)に対するAl(ox)とAl(ph)の合計量の比((Al(ox)+Al(ph))/Al(all))が0.5以上であった。
条件C−1〜C−5により処理した各ガラス基板について、Fの内部側の存在量に対する表面側の存在量の比率(表面側のFの存在量/内部側のFの存在量)を求めたところ、0.69〜0.75であり、いずれのガラス基板においても0.75以下であった。
試験例Aと同様の処置を行ったガラス基板のいずれも、比率(表面側の存在量/内部側の存在量)が0.85以上であった。
条件C−1〜C−5により処理した各ガラス基板の光学研磨面には、クモリ、白濁などの欠陥は認められなかった。また、上記各ガラス基板の光学研磨面のヘイズ値は0.0%であった。また重量減少量も実施例24における重量減少量と同等であった。
(実施例26)
ガラスA〜ガラスDの各ガラスを、研磨工程を含む工程により両凸レンズ、凸メニスカスレンズ、凹メニスカスレンズ、両凹レンズなどのレンズ形状に加工した。研磨工程途中において上記各実施例において使用したリン酸塩水溶液(保管液)の中にガラスを浸漬、保管し、その後、リン酸塩水溶液中からガラスを取り出し、さらに研磨して上記レンズ形状に加工した。
次に、ガラスA〜ガラスDの各ガラスからなるレンズを洗浄して研磨スラリーや加工屑を除去し、条件C−1と同様の条件で洗浄したレンズをリンスし、IPAによるvapour処理を行って清浄な表面を有するレンズを得た。
得られたレンズの光学研磨面(光学機能面に相当する)について、表面側および内部側における各元素の存在量、特定状態にある元素の存在量をXPSにより分析したところ、上記実施例で得た結果と一致していた。
次に、ガラスCからなるレンズを条件C−2(条件C−1+真空加熱)により処理した後、XPSにより分析したところ、実施例23と同様の結果が得られた。
さらに、ガラスCからなるレンズを条件C−3(条件C−2+イオンクリーニング)により処理した後、XPSにより分析したところ、実施例23と同様の結果が得られた。
いずれの場合も、各レンズの光学機能面にクモリ、白濁は認められず、ヘイズ値も0.0%であった。また、十分な洗浄、リンスが行われたため、研磨剤や加工屑、汚れが完全に除去されていた。このように、リン酸塩水溶液による処理後に、真空加熱やイオンクリーニングを行っても、ガラス物品の表面品質は維持される。
レンズの光学研磨面上に反射防止用の光学多層膜をコーティングした。コーティングによってもレンズの表面側の状態はコーティング前の状態に保たれており、光学機能面にクモリ、白濁は認められなかった。
したがって、ガラス物品の表面をコートしても、ガラス物品の表面品質は維持される。
上記レンズは研磨工程を含む工程を経て加工されたガラス物品であるが、研磨工程を経ずに精密プレス成形により成形されるレンズについても、同様に清浄かつクモリや白濁のないレンズを得ることができ、表面側、内部側における元素の存在量、結合状態についても、上記実施例と同様の関係が成り立つ。
こうして得た各種レンズは、カメラなどの撮像光学系を構成する光学素子、プロジェクタなどの投射光学系を構成する光学素子、光ディスクなどにデータを記録したり、光ディスクに記録されたデータを読み取るための光学系を構成するマイクロレンズなどの光学素子、CCTVなどの監視カメラや車載カメラの撮像光学系、内視鏡に搭載される光学素子などに好適である。
これらの光学素子は、従来のものと比較して、クモリ、白濁、汚れの付着などの表面の欠陥が極めて低レベルに抑えられているため、撮像光学系においては、極めて鮮明な画像を提供することを可能にする。例えば、内視鏡など極めて鮮明な画像が求められる医療分野の機器に好適である。また、表面欠陥が低レベルであるため、レーザー光を入射してもダメージが発生することもないため、レーザー光を導くための光学素子としても好適である。
以上、光学素子の例としてレンズを挙げたが、プリズムなどの他種の光学素子にも応用ができる。
ガラスE1〜E10、ガラスF1、ガラスF2についても、同様に表面品質が高い光学素子を作ることができる。
(実施例27)
本発明を適用可能なガラスの例として、ガラス1及びガラス2を挙げた。その一方、ガラスの性質によっては、本発明を適用するのが更に好ましい場合がある。具体例を挙げると、純水に決まった時間浸漬させても表面がもともと白濁しにくいガラスよりも、純水に決まった時間浸漬させると表面が白濁しやすいガラスの方が、白濁を抑制し、ガラス物品の品質を維持する効果を顕著に発現できるという点で、本発明の適用が更に有効である。
そこで、「本発明の適用が可能なガラス」と「本発明の適用が好適なガラス」を区別し得る規定を設けるべく、本発明者は調査を行った。この調査に際し、純水に15時間浸漬させると表面が白濁するガラス(上記のガラス1)と15時間純水に浸漬させても表面が白濁しないフッ素系ガラス(ガラスα)の2種類のガラスに対して、XPSスペクトルの測定を行った。測定条件は上記の実施例と同様とした。以降、特記のない事項については実施例と同様とする。なお、ガラスαは、P5+を24.4カチオン%、O2−を49.7アニオン%、Fを50.3アニオン%、その他のカチオン成分を含む。
まず、ガラス1に対するXPSを行った結果を検証例1として、以下、説明する。図9は、ガラス1を用いて作製したガラス基板に対し、XPSを行った結果を示すグラフである。
図9において、横軸は束縛エネルギー、縦軸はXPSの信号強度である。ここでは、酸素O1sに注目し、束縛エネルギーが525〜540eVの範囲でXPSスペクトルを示す。
図9において、白丸は、ガラス1から構成されるガラス基板を純水に15時間浸漬させた場合のガラス基板の最表面について得られたデータである。黒丸は、上記ガラス基板の最表面をスパッタにより100nm掘り下げた面についてXPS分析を行い、得られたデータである。すなわち、白丸は純水浸漬後の表面側(最表面)に関するプロットであり、黒丸はガラス基板の内部側に関するプロットである。
本例では、ガラス基板の最表面から100nmよりも深い部分は、深さによらず、ほぼ一定の組成を有している。
なお、ガラス1から構成されるガラス基板は、純水に15時間浸漬させた後、表面が白濁していた。
一方、ガラスαに対するXPSを行った結果を検証例2として、以下、説明する。図10は、ガラスαを用いて作製したガラス基板に対し、XPSを行った結果を示すグラフであり、Oについての結果を示すグラフである。
図10において、横軸は束縛エネルギー、縦軸はXPSの信号強度である。
図10も、束縛エネルギーが525〜540eVの範囲でXPS波形を示す。
図10において、白丸は、ガラスαから構成されるガラス基板を純水に15時間浸漬させた場合のガラス基板の最表面のプロットであり、黒丸は、上記ガラス基板の最表面をスパッタにより100nm掘り下げた面についてXPS分析を行って得られたデータである。すなわち、白丸は純水浸漬後の表面側(最表面)に関するプロットであり、黒丸はガラス基板の内部側に関するプロットである。
本例でも、ガラス基板の最表面から100nmよりも深い部分は、深さによらず、ほぼ一定の組成を有している。
なお、ガラスαから構成されるガラス基板は、浸漬させた後、表面は白濁していなかった。
表面が白濁していなかったガラスα(図10)では、純水浸漬後の表面側、すなわち最表面(白丸)と、内部側(黒丸)とを比べると、束縛エネルギー531.9eVにおけるXPSの信号強度は等しい、または、最表面における信号強度(白丸)のピークのほうが内部側の信号強度(黒丸)のピークよりも小さい。
一方、表面が白濁していたガラス1(図9)では、束縛エネルギー531.9eVにおけるXPSの信号強度は、純水浸漬後の表面側、すなわち最表面(白丸)のほうが、深さ100nmの内部側(黒丸)より、著しく大きい。
束縛エネルギーが531.9eV付近に対応する結合としては、金属−POx、金属−OH、金属−CO、金属−OFなどが挙げられる。これに対し、金属−O結合に対応する束縛エネルギーは低エネルギー側にある。
図9では、内部側(黒丸)に比べて純水浸漬後の表面側(白丸)のピーク位置が高エネルギー側にシフトしている。
ガラスAを用いて作製したガラス基板を純水に浸漬すると、修飾物質であるアルカリ土類金属成分やF成分が基板表面から純水へ溶出し、ヒドロニウムイオンや水酸化物イオンなどの水に由来するイオンがガラス内に進入すると考えられる。そのため、純水に浸漬することによって、基板表面の金属−POx、金属−OH等の結合状態にある酸素が相対的に増加すると考えられる。このようなガラスは、純水に浸漬することにより、表面が白濁しやすい。
一方、ガラスαを用いて作製したガラス基板を純水に浸漬しても、基板表面の金属−POx、金属−OH等の結合状態にある酸素の相対的な増加は見られない。このようなガラスは、比較的、純水に浸漬しても、表面が白濁しにくい。
また、表面側および内部側における各元素の存在量をXPSデータから求め、表面側における酸素Oの存在量(原子%)と内部側における酸素Oの存在量(原子%)の比率からも純水に浸漬したときに白濁しやすいガラスか白濁しにくいガラスかを区分けすることができる。
試験例Bと同様の条件で純水に浸漬したガラスCでは、内部側における酸素Oの存在量に対する表面側における酸素Oの存在量の比率(表面側における酸素Oの存在量/内部側における酸素Oの存在量)が3.3であった。
一方、同様の条件で純水に浸漬したガラスαでは、比率(表面側における酸素Oの存在量/内部側における酸素Oの存在量)が1.8であった。
このように、純水に浸漬したとき、白濁しにくいガラスでは、比率(表面側における酸素Oの存在量/内部側における酸素Oの存在量)が2.0未満であるのに対し、白濁しやすいガラスでは、前記比率が2.0以上となる。
したがって、試験例Bと同様の条件で純水に浸漬した後の比率(表面側における酸素Oの存在量/内部側における酸素Oの存在量)が2.0以上のガラス物品が、本発明の適用が好ましいガラス物品である。試験例Bと同様の条件で純水に浸漬した後の比率(表面側における酸素Oの存在量/内部側における酸素Oの存在量)が2.5以上のガラス物品に本発明の適用がより好適であり、前記比率が3.0以上のガラス物品に本発明の適用がさらに好適である。特に、Fの含有量が80アニオン%以上、Oの含有量が20アニオン%以下のガラスにおいて、試験例Bと同様の条件で純水に浸漬した後の比率(表面側における酸素Oの存在量/内部側における酸素Oの存在量)が上記範囲内になるガラスが好ましい。
Fの含有量が80アニオン%以上であるガラスA、ガラスE1〜ガラスE10についても、試験例Bと同様の条件で純水に浸漬した後の比率(表面側における酸素Oの存在量/内部側における酸素Oの存在量)が3.0以上であった。
ガラスB、ガラスD、ガラスF1、ガラスF2についても、参考例3と同様の条件で純水に浸漬した後の比率(表面側における酸素Oの存在量/内部側における酸素Oの存在量)が2.5以上であった。
水に浸漬した後に表面が白濁しやすいガラスでは、ガラス表面からのフッ素の溶出量が多いため、水に浸漬した後に表面が白濁しにくいガラスと比較して、内部側におけるフッ素Fの存在量(原子%)に対する表面側におけるフッ素Fの存在量(原子%)の比率(表面側におけるフッ素Fの存在量/内部側におけるフッ素Fの存在量)が小さくなる。
試験例Bと同様の条件で純水に浸漬したガラスCでは、比率(表面側におけるフッ素Fの存在量/内部側におけるフッ素Fの存在量)が0.5である。
一方、同様の条件で純水に浸漬したガラスαでは、比率(表面側におけるフッ素Fの存在量/内部側におけるフッ素Fの存在量)が0.74である。
このように、純水に浸漬したとき、白濁しにくいガラスでは、比率(表面側における酸素Oの存在量/内部側における酸素Oの存在量)が0.7以上であるのに対し、白濁しやすいガラスでは、前記比率が0.7未満となる。
したがって、試験例Bと同様の条件で純水に浸漬した後の比率(表面側におけるフッ素Fの存在量/内部側におけるフッ素Fの存在量)が0.7未満のガラス物品が、本発明の適用が好ましいガラス物品である。試験例Bと同様の条件で純水に浸漬した後の比率(表面側におけるフッ素Fの存在量/内部側におけるフッ素Fの存在量)が0.65以下のガラス物品に本発明の適用がより好適であり、前記比率が0.6以下のガラス物品に本発明の適用がさらに好適であり、前記比率が0.55以下のガラス物品に本発明の適用が一層好適である。
ガラスA、ガラスE1〜ガラスE10についても、試験例Bと同様の条件で純水に浸漬した後の比率(表面側におけるフッ素Fの存在量/内部側におけるフッ素Fの存在量)が0.55以下となる。
なお、ガラス物品の表面側についてXPS分析を行う場合、分析を行う面を光学研磨面とすることが好ましい。
このように、純水浸漬後の最表面のXPSスペクトルと、スパッタにより100nm掘り下げた面のXPSスペクトルとの間に見られる関係は、純水浸漬後のガラス表面の白濁しやすさと関連付けることができる。
以上の内容をまとめると、上記の実施の形態に記載の内容に加え、以下の関係を満たすガラスを用いて作製したガラス物品であれば、本発明の適用が更に好適になる。
sur>Iin
sur:純水に15時間浸漬させたガラスの表面において、束縛エネルギー531.9eVでのXPSの信号強度
in:純水に15時間浸漬させたガラスの最表面より深さ100nm掘り下げた面において、束縛エネルギー531.9eVでのXPSの信号強度
ただし、Isur、Iinは任意単位ではあるが、共通の単位により求めた値である。
また、XPSの測定条件は、前述の条件と同様、以下の通りである。
励起X線:Al mono
検出領域:φ100μm
取出し角:45deg
検出深さ:4〜5nm(表面)
スパッタ深さ:100nm
スパッタリング条件:Ar 2.0kV
スパッタリングレート:約5nm/min(SiO換算)
16℃の純水に15時間浸漬した後において、比率(表面側における酸素Oの存在量/内部側における酸素Oの存在量)が2.0以上のガラス物品が好ましく、前記比率が2.5以上のガラス物品がより好ましく、前記比率が3.0以上のガラス物品がさらに好ましい。
なお、上記の例では、浸漬させる対象が純水の場合について述べたが、水酸化ナトリウム(NaOH)の場合についても、同様のことが言える。つまり、NaOH水溶液(pH=8.2)に決まった時間浸漬させても表面がもともと白濁しにくいガラスαよりも、NaOH水溶液(pH=8.2)に決まった時間浸漬させるとガラス内の所定の成分が溶出して表面が白濁しやすいガラス1の方が、白濁を抑制し、ガラス物品の品質を維持する効果を顕著に発現できるという点で、本発明の適用が更に有効である。そして、NaOH水溶液(pH=8.2)に浸漬したときの表面の白濁しやすさについても、条件「Isur>Iin」と関連付けることができる。
この場合、上記の実施の形態に記載の内容に加え、以下の関係を満たすガラスであれば、本発明の適用が更に好適になる。
NaOH水溶液(pH=8.2)に15時間浸漬させた後のガラスの表面のヘイズ値>1%
更に好適な関係としては、以下の通りである。
NaOH水溶液(pH=8.2)に15時間浸漬させた後のガラスの表面のヘイズ値>5%
一層好適な関係としては、以下の通りである。
NaOH水溶液(pH=8.2)に15時間浸漬させた後のガラスの表面のヘイズ値>10%
つまり、NaOH水溶液とガラス物品とが接触することによりガラスの表面の品質が低下してしまうようなガラスほど、本発明を適用することに著しい価値が生まれる。そのため、上記性質を有するガラスを用いて作製されたガラス物品ほど好適である。
なお、ガラスA〜D、ガラスE1〜E10、ガラスF1、ガラスF2は、いずれも、上記水酸化ナトリウム水溶液に15時間浸漬すると表面が白濁する。
以下、本発明の別の態様について付記する。
[付記1]
液体を用いてガラス物品を洗浄する洗浄工程を有するガラス物品の製造方法であって、
前記液体を構成する物質を、ガラス成分をガラス物品の表面に対して新たに供給する源とし、ガラス物品の前記液体と接する表面の欠陥発生を抑制することを特徴とするガラス物品の製造方法。
[付記2]
液体を用いてガラス物品を洗浄する洗浄工程を有するガラス物品の製造方法であって、
前記液体は、溶媒及び溶質から構成される溶液であり、
前記洗浄工程の際に、前記溶質を、ガラス成分をガラス物品に対して新たに供給する源とすることを特徴とするガラス物品の製造方法。[付記3]
ガラス素材を加工してなるガラス物品を製造する方法であって、
前記ガラス素材または前記ガラス物品の少なくとも一部の表面を、溶質と溶媒とを含む処理液(研削液、研磨液、洗浄液、リンス液、保管液等)に接触させて前記ガラス素材または前記ガラス物品を処理する処理工程を有し、
前記ガラス素材は、ガラス成分として少なくともP、Al、アルカリ土類金属元素、OおよびFを含み、
前記処理液が接触した前記ガラス素材または前記ガラス物品の表面において、前記溶質の一部が、前記ガラス成分の少なくとも一種と結合して、前記表面を前記溶媒に対して難溶化することを特徴とするガラス物品の製造方法。
[付記4]
前記ガラス物品の表面に、難溶性化合物を形成することを特徴とする付記3に記載のガラス物品の製造方法。
[付記5]
前記難溶性化合物は、リン酸アルミニウムである付記4に記載のガラス物品の製造方法。
[付記6]
前記ガラス素材のFの含有量が55アニオン%以上、Oの含有量が45アニオン%以下であることを特徴とする付記3〜5のいずれかに記載のガラス物品の製造方法。
[付記7]
ガラス素材を加工してなるガラス物品を製造する方法であって、
前記ガラス素材または前記ガラス物品の少なくとも一部の表面を、溶質と溶媒とを含む処理液(研削液、研磨液、洗浄液、リンス液、保管液等)に接触させて前記ガラス素材または前記ガラス物品を処理する処理工程を有し、
前記ガラス素材は、ガラス成分として少なくともP、Al、アルカリ土類金属元素、OおよびFを含み、
前記処理液がリン酸塩溶液であることを特徴とするガラス物品の製造方法。
[付記8]
前記処理液中に含まれる水素の前記ガラス素材または前記ガラス物品中への移動を抑制することを特徴とする付記3〜7のいずれかに記載のガラス物品の製造方法。
[付記9]
ガラス素材を加工してなるガラス物品を製造する方法であって、
前記ガラス素材または前記ガラス物品の少なくとも一部の表面を、溶質と溶媒とを含む処理液(研削液、研磨液、洗浄液、リンス液、保管液等)に接触させて前記ガラス素材または前記ガラス物品を処理する処理工程を有し、
前記ガラス素材は、ガラス成分として少なくともP、Al、アルカリ土類金属元素、OおよびFを含み、
前記処理液が接触した前記ガラス素材または前記ガラス物品の表面において、前記溶質の一部が前記ガラス成分の少なくとも一種と結合することにより、前記処理液中に含まれる水素の前記ガラス素材または前記ガラス物品内への移動を抑制することを特徴とするガラス物品の製造方法。
[付記10]
前記ガラス素材のFの含有量が55アニオン%以上、Oの含有量が45アニオン%以下であることを特徴とする付記7〜9のいずれかに記載のガラス物品の製造方法。
[付記11]
前記溶質がリン酸塩である付記3〜10のいずれかに記載のガラス物品の製造方法。
[付記12]
前記溶媒が水を含むことを特徴とする付記3〜11のいずれかに記載のガラス物品の製造方法。
[付記13]
前記ガラス素材は、Znを含むことを特徴とする付記3〜12のいずれかに記載のガラス物品の製造方法。
[付記14]
前記ガラス素材は、希土類元素を含むことを特徴とする付記3〜13のいずれかに記載のガラス物品の製造方法。
[付記15]
前記処理液がpHの緩衝作用を有することを特徴とする付記3〜14のいずれかに記載のガラス物品の製造方法。
[付記16]
前記処理液のpHが3〜9.8であることを特徴とする付記3〜15のいずれかに記載のガラス物品の製造方法。
[付記17]
前記処理工程は、前記処理液を研削液として用いる研削工程、前記処理液を研磨液として用いる研磨工程、前記処理液を洗浄液として用いる洗浄工程から選ばれる少なくとも1つである付記3〜16のいずれかに記載のガラス物品の製造方法。
[付記18]
前記洗浄工程は、前記処理液をリンス液として用いるリンス工程を含むことを特徴とする付記17に記載のガラス物品の製造方法。
[付記19]
前記洗浄工程後に、前記ガラス物品に被膜を形成する被膜形成工程を有することを特徴とする付記17または18に記載のガラス物品の製造方法。
[付記20]
前記ガラス物品が光学素子であることを特徴とする付記3〜19のいずれかに記載のガラス物品の製造方法。
[付記21]
ガラス物品の少なくとも一部の表面を処理液(研削液、研磨液、洗浄液、リンス液、保管液等)に接触させて前記ガラス物品を処理するガラス物品の処理方法であって、
前記ガラス物品は、ガラス成分として少なくともP、Al、アルカリ土類金属元素、OおよびFを含み、
前記処理液が接触した前記ガラス物品の表面において、前記処理液中に含まれる溶質の一部が、前記ガラス成分の少なくとも一種と結合して、前記表面を前記溶媒に対して難溶化することを特徴とするガラス物品の処理方法。
[付記22]
ガラス物品の少なくとも一部の表面を処理液(研削液、研磨液、洗浄液、リンス液、保管液等)に接触させて前記ガラス物品を処理するガラス物品の処理方法であって、
前記ガラス物品は、ガラス成分として少なくともP、Al、アルカリ土類金属元素、OおよびFを含み、
前記処理液がリン酸塩溶液であることを特徴とするガラス物品の処理方法。
[付記23]
ガラス物品の少なくとも一部の表面を処理液(研削液、研磨液、洗浄液、リンス液、保管液等)に接触させて前記ガラス物品を処理するガラス物品の処理方法であって、
前記ガラス物品は、ガラス成分として少なくともP、Al、アルカリ土類金属元素、OおよびFを含み、

前記処理液が接触した前記ガラス物品の表面において、前記処理液中に含まれる溶質の一部が前記ガラス成分の少なくとも一種と結合することにより、前記処理液中に含まれる水素の前記ガラス素材または前記ガラス物品内への移動を抑制することを特徴とするガラス物品の処理方法。[付記24]
前記処理工程は、研磨加工後のガラス物品を前記保管液に接触させて保管する保管工程であることを特徴とする付記3〜16のいずれかに記載のガラス物品の製造方法。
[付記25]

前記保管工程において保管したガラス素材またはガラス物品を洗浄する洗浄工程を有することを特徴とする付記24に記載のガラス物品の製造方法。
続いて実施の形態について総括する。
本発明の実施の形態1は、
P、Al、アルカリ土類金属、F及びOを含有するガラス物品であって、
P及びOの含有量については、ガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも多く、
アルカリ土類金属の合計含有量及びFの含有量については、ガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも少ないことを特徴とするガラス物品である。
好ましくは、さらに、アルカリ土類金属の含有量については、ガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも少ないガラス物品である。
本発明の実施の形態2は、形態1において、
Alの含有量については、ガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも多いことを特徴とするガラス物品である。
本発明の実施の形態3は、形態1または2において、
酸化状態のAl及びリン酸塩状態のAlの合計含有量については、ガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも多いのが好ましい。
本発明の実施の形態4は、形態1ないし3のいずれかにおいて、
リン酸塩状態のAlの含有量については、ガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも多いのが好ましい。
本発明の実施の形態5は、形態1ないし4のいずれかにおいて、
酸化状態のAl及びリン酸塩状態のAlの含有量については、ガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも多いのが好ましい。
本発明の実施の形態6は、形態1ないし5のいずれかにおいて、
フッ化状態のアルカリ土類金属の含有量については、ガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも少ないことが好ましい。
本発明の実施の形態7は、形態1ないし6において、
前記アルカリ土類金属は、Mg、Ca、Sr及びBaのうち少なくともいずれかであることが好ましい。
本発明の実施の形態8は、形態1ないし7のいずれかにおいて、
Fの含有量(Fの含有量)が55アニオン%以上、Oの含有量(O2−の含有量)が45アニオン%以下であるガラスを用いて作製されたガラス物品であることが好ましく、Fの含有量が80アニオン%以上、Oの含有量が20アニオン%以下であるガラスを用いて作製されたガラス物品であることがより好ましく、Fの含有量が85アニオン%以上、Oの含有量が15アニオン%以下であるガラスを用いて作製されたガラス物品であることがさらに好ましい。
本発明の実施の形態9は、形態1ないし8のいずれかにおいて、
前記ガラス物品の表面のヘイズ値が1%以下であることが好ましい。
本発明の実施の形態において、P5+含有量に対するO2−含有量のモル比O2−/P5+が2.8以上であるガラスを用いて作製されたガラス物品であることが好ましい。
本発明の実施の形態において、Fの含有量が55アニオン%以上、Oの含有量が45アニオン%以下、モル比O2−/P5+が2.5以上であるガラスを用いて作製されたガラス物品であることが好ましく、Fの含有量が80アニオン%以上、Oの含有量が20アニオン%以下、モル比O2−/P5+が2.5以上であるガラスを用いて作製されたガラス物品であることがより好ましく、Fの含有量が85アニオン%以上、Oの含有量が15アニオン%以下、モル比O2−/P5+が2.5以上であるガラスを用いて作製されたガラス物品であることがさらに好ましい。
本発明の実施の形態において、下記(1)式を満たすガラスを用いて作製されたガラス物品であることが好ましい。
sur>Iin ・・・ (1)
ただし、
sur:純水に15時間浸漬させたガラスの表面において、束縛エネルギー531.9eVでのXPSの信号強度
in:純水に15時間浸漬させたガラスの最表面より深さ100nm掘り下げた面において、束縛エネルギー531.9eVでのXPSの信号強度
sur、Iinは任意単位ではあるが、共通の単位により求めた値。
本発明の実施の形態において、Fの含有量が55アニオン%以上、Oの含有量が45アニオン%以下、上記(1)式を満たすガラスを用いて作製されたガラス物品であることが好ましく、Fの含有量が80アニオン%以上、Oの含有量が20アニオン%以下、上記(1)式を満たすガラスを用いて作製されたガラス物品であることがより好ましく、Fの含有量が85アニオン%以上、Oの含有量が15アニオン%以下、上記(1)式を満たすガラスを用いて作製されたガラス物品であることがさらに好ましい。
本発明の実施の形態において、Fの含有量が55アニオン%以上、Oの含有量が45アニオン%以下、モル比O2−/P5+が2.5以上、上記(1)式を満たすガラスを用いて作製されたガラス物品であることが好ましく、Fの含有量が80アニオン%以上、Oの含有量が20アニオン%以下、モル比O2−/P5+が2.5以上、上記(1)式を満たすガラスを用いて作製されたガラス物品であることがより好ましく、Fの含有量が85アニオン%以上、Oの含有量が15アニオン%以下、モル比O2−/P5+が2.5以上、上記(1)式を満たすガラスを用いて作製されたガラス物品であることがさらに好ましい。
本発明の実施の形態において、NaOH水溶液(pH=8.2)に15時間浸漬させた後のガラスの表面のヘイズ値が1%を超えるガラスを用いて作製されたガラス物品であることが好ましい。
また、上記の各形態において、
希土類元素を含み、原子%表示にて、内部側における希土類元素の合計含有量をRE(in)、表面側における希土類元素の合計含有量をRE(su)としたとき、RE(in)に対するRE(su)の比(RE(su)/RE(in))が3以下であるガラス物品が好ましい。
また、上記の各形態において、
原子%表示にて、内部側におけるOの含有量をO(in)、表面側におけるOの含有量をO(su)としたとき、O(in)に対するO(su)の比(O(su)/O(in))が2.0以上であるガラス物品が好ましく、特に、Fの含有量が80アニオン%以上であることが好ましい。
また、上記の各形態において、
酸化状態のAl及びリン酸塩状態のAlの合計含有量については、ガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも多いガラス物品が好ましい。
また、上記各形態において、希土類元素の合計含有量が0.1カチオン%以上であるガラス物品が好ましく、Y、La、Gd、YbおよびLuの合計含有量が0.1カチオン%以上であるガラス物品が好ましい。
また、上記各形態において、希土類元素の合計含有量が12カチオン%以下であるガラス物品が好ましく、Y、La、Gd、YbおよびLuの合計含有量が12カチオン%以下であるガラス物品が好ましい。
また、上記の各形態において、 原子%表示で、Alの含有量をAl(all)、酸化状態のAlの含有量をAl(ox)、リン酸塩状態のAlの含有量をAl(ph)としたとき、表面側においてAl(all)に対するAl(ox)とAl(ph)の合計量の比((Al(ox)+Al(ph))/Al(all))が0.5以上であるガラス物品が好ましい。
上記の各形態において、ガラス物品が、16℃の純水に15時間浸漬した後、内部側における酸素Oの存在量(原子%)に対する表面側における酸素Oの存在量(原子%)の比率(表面側における酸素Oの存在量/内部側における酸素Oの存在量)が2以上となるガラス物品であることが好ましく、前記比率が2.5以上のガラス物品であることがより好ましく、前記比率が3.0以上のガラス物品であることがさらに好ましい。
上記の各形態において、ガラス物品が、16℃の純水に浸漬した後、内部側におけるフッ素Fの存在量(原子%)に対する表面側におけるフッ素Fの存在量(原子%)の比率(表面側におけるフッ素Fの存在量/内部側におけるフッ素Fの存在量)が0.7未満のガラス物品であることが好ましく、前記比率が0.65以下のガラス物品であることがより好ましく、前記比率が0.6以下のガラス物品であることがさらに好ましく、前記比率が0.55以下のガラス物品であることが一層好ましい。
上記の各形態において、内部側のFの含有量に対する表面側のFの含有量の比(表面側のFの含有量/内部側のFの含有量)が0.80以下であることが好ましく、0.75以下であることがより好ましく、0.70以下であることがさらに好ましい。
本発明の実施の形態10は、上記各形態において、
前記ガラス物品は光学素子であることが好ましい。
また、本発明の実施の形態10において、光学研磨面を有するガラス物品であることが好ましい。
最後に、本発明の別の形態について総括する。
本発明の別の形態1は、ガラス素材を加工してなるガラス物品を製造する方法であって、ガラス素材またはガラス物品の少なくとも一部の表面を、溶質と溶媒とを含む処理液(研削液、研磨液、洗浄液、リンス液、保管液等)に接触させてガラス素材またはガラス物品を処理する処理工程を有し、ガラス素材は、ガラス成分として少なくともP、Al、アルカリ土類金属元素、OおよびFを含み、
処理液が接触したガラス素材またはガラス物品の表面において、溶質の一部が、ガラス成分の少なくとも一種と結合して、表面を溶媒に対して難溶化することを特徴とするガラス物品の製造方法である。
別の形態1において、処理液が接触したガラス素材またはガラス物品の表面において、ガラス素材に含まれるアルカリ土類金属成分およびF成分のうち少なくとも一種が処理液へ溶出し、溶質の一部がガラス成分の少なくとも一種と結合して、難溶性化合物を形成するガラス物品の製造方法であることが好ましい。
また、別の形態1において、溶質がリン酸塩であることが好ましい。
また、別の形態1において、処理液中のリン酸イオンがガラス中のAl成分と結合して、難溶性化合物を形成することが好ましい。
また、別の形態1において、ガラス素材が、ガラス成分としてZnを含み、処理液中のリン酸イオンがガラス中のZn成分と結合して、難溶性化合物を形成することが好ましい。
本発明の別の形態2は、ガラス素材を加工してなるガラス物品を製造する方法であって、ガラス素材またはガラス物品の少なくとも一部の表面を、溶質と溶媒とを含む処理液(研削液、研磨液、洗浄液、リンス液、保管液等)に接触させてガラス素材またはガラス物品を処理する処理工程を有し、
ガラス物品は、ガラス成分として少なくともP、Al、アルカリ土類金属、O、Fを含み、
処理液が接触したガラス素材またはガラス物品の表面において、溶質の一部がガラス成分の少なくとも一種と結合することにより、処理液中に含まれる水素のガラス内への移動を抑制することを特徴とするガラス物品の製造方法である。
別の形態2において、処理液が接触したガラス素材またはガラス物品の表面において、ガラス素材に含まれるアルカリ土類金属成分およびF成分のうち少なくとも一種が処理液へ溶出し、溶質の一部がガラス成分の少なくとも一種と結合して、水素の移動を抑制することが好ましい。
また、別の形態2において、溶質がリン酸塩であることが好ましい。
本発明の別の形態3は、ガラス素材を加工してなるガラス物品を製造する方法であって、ガラス素材またはガラス物品の少なくとも一部の表面を、溶質と溶媒とを含む処理液(研削液、研磨液、洗浄液、リンス液、保管液等)に接触させてガラス素材またはガラス物品を処理する処理工程を有し、ガラス素材は、ガラス成分として少なくともP、Al、アルカリ土類金属、OおよびFを含み、
処理液がリン酸塩溶液であることを特徴とするガラス物品の製造方法である。
別の形態3において、処理液が接触したガラス素材またはガラス物品の表面において、ガラス素材に含まれるアルカリ土類金属成分およびF成分のうち少なくとも一種が処理液へ溶出し、処理液中に含まれるリン酸イオンとガラス成分の少なくとも一種とが結合するガラス物品の製造方法であることが好ましい。
上記別の形態1〜3において、処理液中に含まれる水素のガラス中への水素の移動を抑制するガラス物品の製造方法であることが好ましい。
上記別の形態1〜3において、溶媒が水を含むことが好ましい。
また上記別の形態1〜3において、ガラス素材において、Fの含有量(Fの含有量)が20アニオン%以上、Oの含有量(O2−の含有量)が80アニオン%以下であることが好ましい。
また上記別の形態1〜3において、ガラス素材において、Fの含有量(Fの含有量)が55アニオン%以上、Oの含有量(O2−の含有量)が45アニオン%以下であることが好ましい。
また上記別の形態1〜3において、ガラス素材において、P5+含有量に対するO2−含有量のモル比O2−/P5+が2.8以上であるガラスを用いて作製されたものであることが好ましい。
また、ガラス素材において、Fの含有量が55アニオン%以上、Oの含有量が45アニオン%以下、モル比O2−/P5+が2.5以上であるガラスを用いて作製されたものであることが好ましい。
また、ガラス素材において、下記(1)式を満たすガラスを用いて作製されたものであることが好ましい。
sur>Iin ・・・ (1)
ただし、
sur:純水に15時間浸漬させたガラスの表面において、束縛エネルギー531.9eVでのXPSの信号強度
in:純水に15時間浸漬させたガラスの最表面より深さ100nm掘り下げた面において、束縛エネルギー531.9eVでのXPSの信号強度
sur、Iinは任意単位ではあるが、共通の単位により求めた値。
また、ガラス素材において、Fの含有量が55アニオン%以上、Oの含有量が45アニオン%以下、上記(1)式を満たすガラスを用いて作製されたものであることが好ましい。
また、ガラス素材において、Fの含有量が55アニオン%以上、Oの含有量が45アニオン%以下、モル比O2−/P5+が2.5以上、上記(1)式を満たすガラスを用いて作製されたものであることが好ましい。
また、ガラス素材において、NaOH水溶液(pH=8.2)に15時間浸漬させた後のガラスの表面のヘイズ値が1%を超えるガラスを用いて作製されたものであることが好ましい。
また上記別の形態1〜3において、ガラス素材は、Znを含むことが好ましい。
また上記別の形態1〜3において、ガラス素材は、希土類元素を含むことが好ましい。
また上記別の形態1〜3において、ガラス素材は、希土類元素を0.1カチオン%以上含むことが好ましい。
また上記別の形態1〜3において、ガラス素材は、希土類元素としてY3+を含むことが好ましい。
また上記別の形態1〜3において、ガラス素材は、Y3+を0.1カチオン%以上含むことが好ましい。
また上記別の形態1〜3において、ガラス素材は、アルカリ金属を含むことが好ましい。
また上記別の形態1〜3において、処理液がpHの緩衝作用を有することが好ましい。
また上記別の形態1〜3において、処理液のpHが3〜9.8であることが好ましい。
また上記別の形態1〜3において、処理工程は、処理液を研削液として用いる研削工程、処理液を研磨液として用いる研磨工程および処理液を洗浄液として用いる洗浄工程から選ばれる少なくとも1つであることが好ましい。
また上記別の形態1〜3において、洗浄工程は、処理液をリンス液として用いるリンス工程を含むことが好ましい。
また上記別の形態1〜3において、洗浄工程後に、ガラス物品に被膜を形成する被膜形成工程を有することが好ましい。
また上記別の形態1〜3において、ガラス物品が光学素子であることが好ましい。
また、光学研磨面を有するガラス物品であることが好ましい。
本発明の別の形態4は、ガラス物品の少なくとも一部の表面を処理液(研削液、研磨液、洗浄液、リンス液、保管液等)に接触させてガラス物品を処理するガラス物品の処理方法であって、ガラス物品は、ガラス成分として少なくともP、Al、アルカリ土類金属、O、Fを含み、処理液は溶質と溶媒とを含み、処理液が接触したガラス物品の表面において、溶質の一部がガラス成分の少なくとも一種と結合して、溶媒に対して難溶な化合物を形成することを特徴とするガラス物品の処理方法である。
本発明の別の形態5は、加工によりガラス物品となるべきガラス素材の少なくとも一部の表面を、溶質と溶媒とを含む処理液(研削液、研磨液、洗浄液、リンス液、保管液等)に接触させてガラス素材を処理するガラス素材の処理方法であって、ガラス素材は、ガラス成分として少なくともP、Al、アルカリ土類金属、O、Fを含み、処理液が接触したガラス素材の表面において、溶質の一部がガラス成分の少なくとも一種と結合して、溶媒に対して難溶な化合物を形成することを特徴とするガラス素材の処理方法である。
本発明の別の形態6は、ガラス物品の少なくとも一部の表面を処理液(研削液、研磨液、洗浄液、リンス液、保管液等)に接触させてガラス物品を処理するガラス物品の処理方法であって、ガラス物品は、ガラス成分として少なくともP、Al、アルカリ土類金属、O、Fを含み、処理液は溶質と溶媒とを含み、処理液が接触したガラス物品の表面において、溶質の一部が、ガラス成分の少なくとも一種と結合して、表面を溶媒に対して難溶化することを特徴とするガラス物品の処理方法である。
本発明の別の形態7は、加工によりガラス物品となるべきガラス素材の少なくとも一部の表面を処理液(研削液、研磨液、洗浄液、リンス液、保管液等)に接触させてガラス素材を処理するガラス素材の処理方法であって、
ガラス素材は、ガラス成分として少なくともP、Al、アルカリ土類金属、O、Fを含み、処理液は溶質と溶媒とを含み、処理液が接触したガラス素材の表面において、溶質の一部が、ガラス成分の少なくとも一種と結合して、表面を溶媒に対して難溶化することを特徴とするガラス素材の処理方法である。
本発明の別の形態8は、ガラス物品の少なくとも一部の表面を処理液(研削液、研磨液、洗浄液、リンス液、保管液等)に接触させてガラス物品を処理するガラス物品の処理方法であって、ガラス物品は、ガラス成分として少なくともP、Al、アルカリ土類金属、O、Fを含み、処理液は溶質と溶媒とを含み、
処理液が接触したガラス物品の表面において、溶質の一部がガラス成分の少なくとも一種と結合することにより、処理液中に含まれる水素のガラス内への移動を抑制することを特徴とするガラス物品の処理方法である。
本発明の別の形態9は、加工によりガラス物品となるべきガラス素材の少なくとも一部の表面を処理液(研削液、研磨液、洗浄液、リンス液、保管液等)に接触させてガラス素材を処理するガラス素材の処理方法であって、ガラス素材は、ガラス成分として少なくともP、Al、アルカリ土類金属、O、Fを含み、処理液は溶質と溶媒とを含み、処理液が接触したガラス素材の表面において、溶質の一部が前記ガラス成分の少なくとも一種と結合することにより、処理液中に含まれる水素のガラス内への移動を抑制することを特徴とするガラス素材の処理方法である。
本発明の別の形態10は、ガラス物品の少なくとも一部の表面を処理液(研削液、研磨液、洗浄液、リンス液、保管液等)に接触させてガラス物品を処理するガラス物品の処理方法であって、ガラス物品は、ガラス成分として少なくともP、Al、アルカリ土類金属、OおよびFを含み、処理液がリン酸塩溶液であることを特徴とするガラス物品の処理方法である。
本発明の別の形態11は、加工によりガラス物品となるべきガラス素材の少なくとも一部の表面を、処理液(研削液、研磨液、洗浄液、リンス液、保管液等)に接触させてガラス素材を処理するガラス素材の処理方法であって、ガラス素材は、ガラス成分として少なくともP、Al、アルカリ土類金属、OおよびFを含み、処理液がリン酸塩溶液であることを特徴とするガラス素材の処理方法である。
なお、上記処理方法に関する別の形態4〜11における好ましい形態は、上記ガラス物品の製造方法に関する別の形態における好ましい形態と同様である。
上記各態様、各形態は、相互に矛盾が生じない限り、任意の組み合わせが可能である。

Claims (20)

  1. P、Al、アルカリ土類金属、F及びOを含有するガラス物品であって、
    ガラス物品の内部におけるAlの含有量が4.66カチオン%以上、Fの含有量が80アニオン%以上、Oの含有量が20アニオン%以下であり、
    P及びOの含有量については、ガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも多く、
    アルカリ土類金属の合計含有量及びFの含有量については、ガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも少ない状態であり、
    原子%表示で、結合状態毎のAlの含有量の合計をAl(all)、酸化状態のAlの含有量をAl(ox)、リン酸塩状態のAlの含有量をAl(ph)としたとき、表面側においてAl(all)に対するAl(ox)とAl(ph)の合計量の比((Al(ox)+Al(ph))/Al(all))が0.5以上であり、
    ガラス物品の表面のヘイズ値が1%以下であることを特徴とするガラス物品。
  2. P、Al、アルカリ土類金属、F及びOを含有するガラス物品であって、
    ガラス物品の内部におけるアルカリ土類金属の含有量が39.38カチオン%以上、Fの含有量が80アニオン%以上、Oの含有量が20アニオン%以下であり、
    P及びOの含有量については、ガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも多く、
    アルカリ土類金属の合計含有量及びFの含有量については、ガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも少ない状態であり、
    原子%表示で、結合状態毎のAlの含有量の合計をAl(all)、酸化状態のAlの含有量をAl(ox)、リン酸塩状態のAlの含有量をAl(ph)としたとき、表面側においてAl(all)に対するAl(ox)とAl(ph)の合計量の比((Al(ox)+Al(ph))/Al(all))が0.5以上であり、
    ガラス物品の表面のヘイズ値が1%以下であることを特徴とするガラス物品。
  3. ガラス物品の内部におけるFの含有量が85アニオン%以上、Oの含有量が15アニオン%以下である請求項1または2に記載のガラス物品。
  4. ガラス物品の内部におけるFの含有量が86.55アニオン%以上、Oの含有量が13.29アニオン%以下である請求項1ないし3のいずれかに記載のガラス物品。
  5. 前記ガラス物品は、希土類元素を含み、原子%表示にて、ガラス物品の内部側における希土類元素の合計含有量をRE(in)、ガラス物品の表面側における希土類元素の合計含有量をRE(su)としたとき、RE(in)に対するRE(su)の比(RE(su)/RE(in))が3以下であることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載のガラス物品。
  6. Alの含有量については、ガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも多いことを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載のガラス物品。
  7. アルカリ土類金属の含有量については、ガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも少ないことを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載のガラス物品。
  8. 原子%表示にて、ガラス物品の内部側におけるOの含有量をO(in)、ガラス物品の表面側におけるOの含有量をO(su)としたとき、O(in)に対するO(su)の比(O(su)/O(in))が2.0以上であることを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載のガラス物品。
  9. 酸化状態のAl及びリン酸塩状態のAlの合計含有量については、ガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも多いことを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載のガラス物品。
  10. リン酸塩状態のAlの含有量については、ガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも多いことを特徴とする請求項1ないしのいずれかに記載のガラス物品。
  11. 酸化状態のAl及びリン酸塩状態のAlの含有量については、ガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも多いことを特徴とする請求項1ないし10のいずれかに記載のガラス物品。
  12. フッ化状態のアルカリ土類金属の含有量については、ガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも少ないことを特徴とする請求項11に記載のガラス物品。
  13. 前記アルカリ土類金属は、Mg、Ca、Sr及びBaのうち少なくともいずれかであることを特徴とする請求項1ないし12のいずれかに記載のガラス物品。
  14. モル比O2−/P5+が2.5以上である請求項1ないし13のいずれかに記載のガラス物品。
  15. 前記ガラス物品は光学素子であることを特徴とする請求項1ないし14のいずれかに記載のガラス物品。
  16. 16℃の純水に15時間浸漬した後、内部側における酸素Oの存在量(原子%)に対する表面側における酸素Oの存在量(原子%)の比率(表面側における酸素Oの存在量/内部側における酸素Oの存在量)が2以上となるガラスが、
    P及びOの含有量については、ガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも多く、
    アルカリ土類金属の合計含有量及びFの含有量については、ガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも少ない状態となった請求項1ないし15のいずれかに記載のガラス物品。
  17. P、Al、アルカリ土類金属、F及びOを含有するガラス物品であって、
    16℃の純水に浸漬した後、内部側におけるフッ素Fの存在量(原子%)に対する表面側におけるフッ素Fの存在量(原子%)の比率(表面側におけるフッ素Fの存在量/内部側におけるフッ素Fの存在量)が0.7未満のガラスが、
    P及びOの含有量については、ガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも多く、
    アルカリ土類金属の合計含有量及びFの含有量については、ガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも少ない状態となった請求項1ないし15のいずれかに記載のガラス物品。
  18. 16℃の純水に15時間浸漬した後、内部側における酸素Oの存在量(原子%)に対する表面側における酸素Oの存在量(原子%)の比率(表面側における酸素Oの存在量/内部側における酸素Oの存在量)が2以上、かつ、内部側におけるフッ素Fの存在量(原子%)に対する表面側におけるフッ素Fの存在量(原子%)の比率(表面側におけるフッ素Fの存在量/内部側におけるフッ素Fの存在量)が0.7未満のガラスが、
    P及びOの含有量については、ガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも多く、
    アルカリ土類金属の合計含有量及びFの含有量については、ガラス物品の表面側が、ガラス物品の内部側よりも少ない状態となった請求項1ないし15のいずれかに記載のガラス物品。
  19. ガラス素材を加工してなるガラス物品を製造する方法であって、
    ガラス素材またはガラス物品の少なくとも一部の表面を、溶質としてのリン酸イオンと溶媒とを含む処理液に接触させてガラス素材またはガラス物品を処理する処理工程を有し、
    ガラス素材またはガラス物品は、ガラス成分として少なくともP、Al、アルカリ土類金属、OおよびFを含み、
    ガラス素材またはガラス物品の内部におけるAlの含有量が4.66カチオン%以上、Fの含有量が80アニオン%以上、Oの含有量が20アニオン%以下であり、
    P及びOの含有量については、ガラス素材またはガラス物品の表面側が、ガラス素材またはガラス物品の内部側よりも多く、
    アルカリ土類金属の合計含有量及びFの含有量については、ガラス素材またはガラス物品の表面側が、ガラス素材またはガラス物品の内部側よりも少ない状態であり、
    前記処理工程により、
    処理液が接触したガラス素材またはガラス物品において、原子%表示で、結合状態毎のAlの含有量の合計をAl(all)、酸化状態のAlの含有量をAl(ox)、リン酸塩状態のAlの含有量をAl(ph)としたとき、表面側においてAl(all)に対するAl(ox)とAl(ph)の合計量の比((Al(ox)+Al(ph))/Al(all))を0.5以上とし
    ガラス素材またはガラス物品の表面のヘイズ値を1%以下とすることを特徴とするガラス物品の製造方法。
  20. ガラス素材を加工してなるガラス物品を製造する方法であって、
    ガラス素材またはガラス物品の少なくとも一部の表面を、溶質としてのリン酸イオンと溶媒とを含む処理液に接触させてガラス素材またはガラス物品を処理する処理工程を有し、
    ガラス素材またはガラス物品は、ガラス成分として少なくともP、Al、アルカリ土類金属、OおよびFを含み、
    ガラス素材またはガラス物品の内部におけるアルカリ土類金属の含有量が39.38カチオン%以上、Fの含有量が80アニオン%以上、Oの含有量が20アニオン%以下であり、
    P及びOの含有量については、ガラス素材またはガラス物品の表面側が、ガラス素材またはガラス物品の内部側よりも多く、
    アルカリ土類金属の合計含有量及びFの含有量については、ガラス素材またはガラス物品の表面側が、ガラス素材またはガラス物品の内部側よりも少ない状態であり、
    前記処理工程により、処理液が接触したガラス素材またはガラス物品において、原子%表示で、結合状態毎のAlの含有量の合計をAl(all)、酸化状態のAlの含有量をAl(ox)、リン酸塩状態のAlの含有量をAl(ph)としたとき、表面側においてAl(all)に対するAl(ox)とAl(ph)の合計量の比((Al(ox)+Al(ph))/Al(all))を0.5以上とし
    ガラス素材またはガラス物品の表面のヘイズ値を1%以下とすることを特徴とするガラス物品の製造方法。
JP2014549935A 2012-11-30 2013-11-29 ガラス物品およびその製造方法 Active JP6293672B2 (ja)

Applications Claiming Priority (13)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012263739 2012-11-30
JP2012263738 2012-11-30
JP2012263740 2012-11-30
JP2012263739 2012-11-30
JP2012263740 2012-11-30
JP2012263738 2012-11-30
JP2013113432 2013-05-29
JP2013113433 2013-05-29
JP2013113431 2013-05-29
JP2013113433 2013-05-29
JP2013113432 2013-05-29
JP2013113431 2013-05-29
PCT/JP2013/082275 WO2014084380A1 (ja) 2012-11-30 2013-11-29 ガラス物品

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2014084380A1 JPWO2014084380A1 (ja) 2017-01-05
JP6293672B2 true JP6293672B2 (ja) 2018-03-14

Family

ID=50828008

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014549935A Active JP6293672B2 (ja) 2012-11-30 2013-11-29 ガラス物品およびその製造方法

Country Status (6)

Country Link
US (1) US9718723B2 (ja)
JP (1) JP6293672B2 (ja)
KR (1) KR101875261B1 (ja)
CN (1) CN104797540B (ja)
TW (1) TWI616419B (ja)
WO (1) WO2014084380A1 (ja)

Families Citing this family (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2014109204A1 (ja) * 2013-01-10 2014-07-17 Hoya株式会社 光学素子の製造方法
US10358382B2 (en) * 2014-06-27 2019-07-23 Vidrio Plano De Mexico, S.A. De C.V. Production method for sheets of glass with a diffuse finish, and resulting sheet of glass
CN107445475B (zh) 2016-06-24 2020-02-07 成都光明光电股份有限公司 光学玻璃、光学预制件和光学元件
KR102022976B1 (ko) * 2017-05-19 2019-09-20 한국광기술원 형광 장수명 특성을 갖는 능동소자용 불소인산염계 유리
WO2019012763A1 (ja) * 2017-07-12 2019-01-17 日本電産株式会社 レンズ製造方法
KR20210060531A (ko) * 2018-09-20 2021-05-26 니폰 덴키 가라스 가부시키가이샤 적외선 흡수 유리의 제조 방법
US20210395135A1 (en) * 2018-09-28 2021-12-23 Cdgm Glass Co., Ltd Fluorophosphate optical glass, and optical preform, element and instrument
JP2021172574A (ja) * 2020-04-30 2021-11-01 日本電気硝子株式会社 ガラス板の前処理方法及びガラス物品の製造方法

Family Cites Families (16)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US5053360A (en) * 1987-12-04 1991-10-01 Kigre, Inc. Ion-exchangeable phosphate glass compositions and strengthened optical quality glass articles
JP2605133B2 (ja) * 1988-12-06 1997-04-30 旭硝子株式会社 リン酸塩系ガラスの表面処理方法
JP3361270B2 (ja) * 1997-04-04 2003-01-07 ホーヤ株式会社 ガラス製品の製造方法およびフィルター
US6093484A (en) * 1997-04-04 2000-07-25 Hoya Corporation Method for the production of glass product
JPH11209144A (ja) * 1998-01-21 1999-08-03 Hoya Corp 近赤外吸収フィルター用ガラスおよびそれを用いた近赤外吸収フィルター
US6652972B1 (en) * 1999-11-01 2003-11-25 Schott Glass Technologies Inc. Low temperature joining of phosphate glass
US20050188724A1 (en) 2004-03-01 2005-09-01 Hoya Corporation Process for the production of precision press-molding preform and process for the production of optical element
JP4166173B2 (ja) * 2004-03-05 2008-10-15 Hoya株式会社 精密プレス成形用プリフォームの製造方法および光学素子の製造方法
JP4458897B2 (ja) 2004-03-29 2010-04-28 Hoya株式会社 熔融ガラス流出ノズル、およびガラス成形体、プレス成形用プリフォーム、光学素子それぞれの製造方法
JP5016826B2 (ja) 2006-01-30 2012-09-05 Hoya株式会社 成形用ガラス素材の製造方法、ガラス素材、及びガラス光学素子の製造方法
JP5491686B2 (ja) 2006-09-07 2014-05-14 株式会社オハラ ガラス
JP2009167039A (ja) 2008-01-15 2009-07-30 Nippon Electric Glass Co Ltd ガラス物品の保管方法及びレンズ硝材の製造方法
JP5371667B2 (ja) 2008-09-30 2013-12-18 Hoya株式会社 磁気ディスク用ガラス基板の製造方法及び磁気ディスクの製造方法
JP2010083733A (ja) * 2008-10-02 2010-04-15 Olympus Corp 加工液およびガラス製品の製造方法
JP5846877B2 (ja) * 2011-11-30 2016-01-20 Hoya株式会社 ガラスの処理方法および光学素子の製造方法
EP3083217B1 (en) * 2013-12-20 2019-03-27 Novartis AG Molds for making contact lenses

Also Published As

Publication number Publication date
JPWO2014084380A1 (ja) 2017-01-05
CN104797540B (zh) 2019-03-12
KR101875261B1 (ko) 2018-07-05
WO2014084380A1 (ja) 2014-06-05
KR20150071028A (ko) 2015-06-25
TW201439023A (zh) 2014-10-16
TWI616419B (zh) 2018-03-01
US20150299029A1 (en) 2015-10-22
US9718723B2 (en) 2017-08-01
CN104797540A (zh) 2015-07-22

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6293672B2 (ja) ガラス物品およびその製造方法
TWI687385B (zh) 光學玻璃及光學元件
JP7219199B2 (ja) 光学ガラスおよび光学素子
CN102992600A (zh) 离子交换玻璃制品的制造方法
JP2007269614A (ja) モールドプレス用ガラス素材、及びガラス光学素子の製造方法
JP7385334B2 (ja) 光学素子及び光学装置
KR20140008994A (ko) 광학 유리, 프레스 성형용 유리 소재 및 광학 소자
KR20120004538A (ko) 광학유리, 광학소자 및 정밀 프레스 성형용 프리폼
SG177280A1 (en) Manufacturing method for glass substrates for magnetic disks
US6093484A (en) Method for the production of glass product
JP3361270B2 (ja) ガラス製品の製造方法およびフィルター
JP6325460B2 (ja) 光学素子の製造方法
JP5846877B2 (ja) ガラスの処理方法および光学素子の製造方法
JP6716316B2 (ja) 多層膜付き基板の再生方法、多層反射膜付き基板の製造方法、及び反射型マスクブランクの製造方法
US10295705B2 (en) Anti-reflection glass substrate and method for manufacturing same
JP2002121051A (ja) 情報記録媒体用ガラス基板の製造方法、及び情報記録媒体の製造方法
JP5769585B2 (ja) ガラス製光学素子の製造方法
JP2019199391A (ja) ガラス基板およびガラス基板の製造方法
US8926759B2 (en) Manufacturing method of a glass substrate for a magnetic disk
WO2011093235A1 (ja) 光学部品の製造方法
JP2012091952A (ja) ガラスの表面処理法、ガラスの研磨方法および光学素子の製造方法。
JP2024036312A (ja) フツリン酸光学ガラス及びその製造方法、並びに、フツリン酸光学ガラス球面レンズ及びフツリン酸光学ガラス非球面レンズ
JP3597152B2 (ja) レンズの製造方法
CN105122363A (zh) 磁盘用玻璃基板的制造方法和磁盘的制造方法
JP2007065036A (ja) 光学器材用液剤

Legal Events

Date Code Title Description
A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20161110

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170307

A601 Written request for extension of time

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A601

Effective date: 20170428

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170703

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20171004

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20171124

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20180206

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20180214

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6293672

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250