図1〜図10は、本発明のハーネス配索装置及びハーネス配索方法の一実施形態を示すものである。
図1〜図3に示す如く、ハーネス配索装置1のフレーム2の内側に水平な配索板3が設けられ、配索板3の前端側に水平な横長の配列台4が配置され、配列台4の上に複数(多数)のコネクタ受け具(部品受け具)5が等ピッチで並列に配置されている。
配列台4は、前後方向に延びた左右一対のガイドレール6に沿って駆動手段7で配索板3の少し上方を前後方向進退可能となっている。各ガイドレール6は配索板3の左右端側に位置している。駆動手段7は、例えば、一方のガイドレール6に沿うねじ軸(図示せず)と、ねじ軸に螺合して配列台4の一側部に固定されたナット部(図示せず)と、ねじ軸を回転させるモータ7aとを備えている。
図4に図3のA部拡大図を示す如く、配列台4の上面にコネクタ受け具5が着脱自在に載置されている。例えば、コネクタ受け具5の底面に下向きに突設されたピン8が、配列台4の上面に設けられた穴(符号8で代用)に係合して、あるいは、コネクタ受け具5の底面に設けられた穴(図示せず)が、配列台4の上面に突設されたピン(図示せず)に係合して、配列台4にコネクタ受け具5が位置決め保持されている。ピン8は例えば長さ違いの二本であることが、回り止め及び二つの穴(8)へのスムーズな挿入の上から好ましい。
配列台4は、左右両端の垂直な支持板部4aと、両支持板部4aで支持された水平な配列板部4bとを備えている。支持板部4aが左右の前後方向のガイドレール6(図1,図2)にスライド自在に係合している。
各コネクタ受け具5には予めコネクタ(部品)10(図4)がセットされている。コネクタ10は、合成樹脂製のコネクタハウジング(符号10で代用)と、コネクタハウジングの端子収容室内に収容された複数(一つである場合は殆どない)の電線11付きの端子(図示せず)とで概ね構成されている。端子に接続された電線11はコネクタ受け具5から前方に導出されて下向きに湾曲しつつ垂れ下がっている。なお、明細書で前後左右の方向性は説明の便宜上のものである。
配列台4の前側に隣接してロールカーテン12が配設されている。「カーテン」とは膜という意味である。ロールカーテン12は、布又は合成樹脂製のシート状のカーテン(膜)12aと、カーテン12aを巻いた状態に収容する略円筒状のケース12bと、カーテン12aをケース12b内にロール状に引き込む不図示のばね部材とで概ね構成され、ケース12bがブラケット13でフレーム2に固定されている。
カーテン12aがケース12bから後方に略水平(やや後上がり)に少し引き出されて、カーテン12aの先端(後端)12a’が配列台4の下部に固定されている。図4の状態からカーテン12aがさらに後方に引き出され、カーテン12aは配索板3の上方に対向して位置する。配列台4の下側後部には、後上がりに傾斜した横長板状の配線受け14が設けられている。
配線受け14は、コネクタ受け具5からコネクタ10の電線11を後向きに導出させて、配列台4の後端と配索板3の前端との間の隙間に下向きに垂らす場合に用いられる。この場合、例えば配列台4は前工程の端子挿入を完了した後、左右方向に延びる不図示のガイドレールでハーネス配索装置1に送られる。本例(図4)では電線11をコネクタ10から前方に導出させた例で説明している。
図1〜図3の如く、フレーム2の上部には、左右(横)方向に延びた水平なX軸レール(移動手段)15と、X軸レール15のスライド係合部(移動部)19に固定され、前後(縦)方向に延びた水平な左右一対のY軸レール(移動手段)16とが配設されている。各Y軸レール16のスライド係合部(移動部)20(図3)には、前後(縦)方向に短く延びたY’軸レール(移動手段)17が平行に設けられている。
各Y’軸レール17のスライド係合部(移動部)21に上下方向(高さ方向ないしZ軸方向)の移動部としての垂直なエアシリンダ(移動手段)18が下向きに固定され、各エアシリンダ18のロッドの先端(下端)側に回転駆動部22を介して把持アーム23が設けられている。回転駆動部22はエア圧式ないし電気式のアクチュエータであり、把持アーム23を水平方向回転可能に支持している。
各軸のレール15〜17のスライド係合部(移動部)19,20は、例えば、ねじ軸(図示せず)に螺合したナット部であり、ねじ軸はモータ24,25で回転駆動される。これらねじ軸とナット部とモータとで駆動部が構成される。X軸レール15のモータは図示を省略している。
本例において、一対のY軸レール16は、X軸レール15の一つのスライド係合部19に固定されており、一対の垂直なエアシリンダ18と各回転駆動部22と各把持アーム23と共に、左右方向に一体に移動し、前後方向に別体に(独立して)移動可能である。各Y’軸レール17も同様に移動する。Y’軸レール17は把持アーム23の前後方向位置の微調整を行う。
図5は、コネクタ受け具5の一例を示すものである。このコネクタ受け具5は、金属ないし合成樹脂を材料として、コネクタ受け部26とアーム把持部27とを前後に有したものである。コネクタ受け部26は、前側と上側に各開口26a’を有するコネクタ収容空間26aと、コネクタ10をコネクタ収容空間26a内に係止する不図示のロック手段とを有している。アーム把持部27は後側に垂直な把持壁27aを有している。コネクタ受け具5の形態はこれに限らず、種々の形態を適宜設定可能である。
コネクタ受け部5にコネクタ10が収容係止された状態で、把持アーム23の前後一対のチャック23aがアーム把持部27aを把持し、垂直なエアシリンダ18(図1)のロッドの圧縮動作で把持アーム23がコネクタ受け具5を図1〜図3の配列台4から持ち上げて離脱させる。
他の例のコネクタ受け具(5)として、把持アーム23側にコネクタ10の電線11を導出させるように、図5のコネクタ10を前後逆にコネクタ受け具(5)に配置させることも可能である。この場合は、コネクタ受け具(5)を配列台4(図2)から持ち上げた直後に回転駆動部22(図1)で前後180°反転させる。
図6は、把持アーム23が、コネクタ受け具5(図5)ではなく、電線掻き寄せ具28を把持する状態を示すものである。電線掻き寄せ具28はコネクタ受け具5と並んで配列台4(図1)に例えば一つないし二つ配置される。電線掻き寄せ具28は、把持アーム23の一対のチャック23aで上側の垂直な板部28cを把持された状態で、各軸のレール15〜17の駆動手段で配索板3(図1)の上面(配索面)3aに沿って移動しながら、配索板3上の電線11(図4)を目標配索位置に向けて掻き寄せるものである。
電線掻き寄せ具28の先端(下端)28a’は配索板3(図1)の上面3aに隙間なく接触するようになっている。例えば、電線掻き寄せ具28の下半部28aが上半部28bに対して自重等で下向きにスライド移動する途中の状態で、下半部28aの先端(下端面)28a’が配索板3の上面3aに接触(当接)するようにする。
電線掻き寄せ具28の下半部28aを上半部28bに対して自重に加えて不図示のばね部材で下向きに付勢した状態で配索板3に当接させることも可能である。あるいはこれら自重等によるスライド機構に代えて、垂直なエアシリンダ18内のエア圧を解除(開放)した状態で、電線掻き寄せ具28の先端28a’を配索板3(図1)の上面3aに接触させることも可能である。電線掻き寄せ具28の先端28a’はXY方向の移動手段15〜17で配索板3(図1)の上面3aに沿ってスライド移動する。電線掻き寄せ具28の下半部28aの下端面28a’には穴を設けて、配列台4(図1)の上面に突設したピンにその穴を係合させて位置決めすることが好ましい。電線掻き寄せ具28は配列台4の例えば端部側に配置される。
図7は、配索板3の一部(左半側)を示すものである。配索板3の上面(表面)3aには各コネクタ受け具5が配列台4(図2)から把持アーム23(図1)で移動して配置されている。配索板3の下側(裏側)には底板29(図1)が配設され、複数の水平なエアシリンダ30が適宜位置に配置され、各エアシリンダ30のロッド30aの先端側に垂直な電線掻き寄せピン31が上向きに配置され、配索板3に各電線掻き寄せピン31を上向きに突出させるための長孔32(図9)が設けられている。長孔32の長手方向は電線掻き寄せピン31の進退方向に一致している。
また、配索板3には、各コネクタ受け具5を把持アーム23(図1)で受け渡して位置決め保持させるために、コネクタ受け具5の底面のピン8(図4)又は穴を係合させる孔又はピン(受け具支持部)33が設けられている。受け具支持部33である孔又はピンは、コネクタ受け具5の二本の円柱形のピン8(図4)又は穴に対応して二つ配置されていることが、回り止めの上で好ましい。これは前記配列台4においても同様である。配索板3はサブワイヤハーネスの品番に応じて交換可能となっている。
例えば図8(a)に示す如く、水平なエアシリンダ30のロッド30aの先端に連結部30cを介して垂直なエアシリンダ34が固定され、垂直なエアシリンダ34の進退可能なロッドが電線掻き寄せピン31を兼ねている。水平なエアシリンダ30の筒部30bは、前後のブラケット35で配索板3の下側に位置する底板29に固定される。
電線掻き寄せピン31は配索板3の長孔32を貫通して上向きに突出し、水平なエアシリンダ30の圧縮動作で長孔32に沿って移動し、垂直なシリンダ34の圧縮動作で配索板3の上面3aよりも下方に引っ込む。水平なエアシリンダ30を長手方向に180°反転させて使用する(圧縮動作で図8(a)の電線掻き寄せピン31の位置を得る)ことも可能である。
あるいは図8(b)に示す如く、水平なエアシリンダ30のロッド30aの先端に連結部30cを介して電線掻き寄せピン31が上向きに固定され、エアシリンダ30の筒部30bが前後のブラケット35で水平な基板部36に固定され、基板部36が垂直なエアシリンダ37のロッド37aで昇降自在に支持され、垂直なエアシリンダ37が下側のブラケット38で底板29に固定される。作用は上記図8(a)におけると同様である。上記図8(a)の昇降構造が簡素化、コンパクト化の上で好ましい。
以下に、上記ハーネス配索装置1の作用すなわちハーネス配索装置1を用いたハーネス配索方法の一実施形態を説明する。
図1の如く、先ず、作業者があるいは前工程の不図示の端子挿入装置で配列台4上の各コネクタ受け具5に電線11付きのコネクタ10(図5)を装着すると共に、配列台4の掻き寄せ具支持部に電線掻き寄せ具28(図6)を配置する。電線掻き寄せ具28は配列台4のコネクタ受け具支持部に配置することもできる。配列台4への各コネクタ(コネクタ毎に種類が異なる)10(図5)の並び順はランダムであるが、配列台4のどの位置にどの品番のコネクタ10が配置されるかは予め設定されて(プログラム化されて)不図示の制御装置に記録されている。
X軸レール15(図1)と例えば一方のY軸レール16(図2)及びY’軸レール17(図3)で、Z軸方向の一方の垂直なエアシリンダ18(図1)と一体に一方の把持アーム23が配列台4の上方に移動し、エアシリンダ18の伸長動作で把持アーム23が下降して、配列台4の上の第一のコネクタ受け具5を把持して、エアシリンダ18の圧縮動作で上昇しつつコネクタ受け具5を配列台4から離脱させる。「第一の」とは、配列台4の端からという意味ではなく、予め設定された選び順の一番目という意味である。
次いで、図9に一例を示す如く、第一のコネクタ受け具5内のコネクタ10の電線11が前方に導出された状態から第一のコネクタ受け具5を把持アーム23と一体に図7の配索板3の上面3aに沿って(上面3aとの間に隙間を存して)各軸のレール15〜17でXY方向(二次元方向)すなわち後方や左右方向(後方に移動した後、前方に移動することも可)に移動させる。この際、エアシリンダ18(図1)の伸長動作で把持アーム23と一体に第一のコネクタ受け具5を配索板3の上面3aに近づくように下降させておく。
これらの操作で、第一のコネクタ受け具5内のコネクタ10から導出された(コネクタ10に続く)電線11を配索板3の第一の目標配索経路L(図9)の近傍に沿って配索する。その際、第一の目標配索経路Lにおける電線掻き寄せピン31を図7,図9の配索板3から上向きに突出させた状態で、目標配索経路Lから離間する方向に移動させておく(一対の対向する電線掻き寄せピン31は互いに開いた状態にしておく)。コネクタ10の電線11は電線掻き寄せピン31と目標配索経路Lとの間を通って配索板3上に配索される。
例えば図7の左端のコネクタ51の電線(コネクタ10からの導出電線)11は、点線111で示すように目標配索経路から外れて配索されるが、その配索位置よりも離れた位置すなわち水平なエアシリンダ301のロッド30aを伸長させた位置に点線で示す電線掻き寄せピン311を配置しておき、その電線掻き寄せピン311の復元方向内側を通って(電線掻き寄せピン311の進退ストロークの範囲内を通って)、電線111を配索する。電線111の配索はあくまでコネクタ受け具51をコネクタ10と一体に把持アーム23(図9)で移動させることで行われる。
電線111を配索した後に、水平なエアシリンダ301のロッド30aを圧縮させて、ロッド30aと一体に電線掻き寄せピン311を復元方向に移動させることで、掻き寄せピン311が電線111を目標配索経路(図7の符号11で示す位置)に移動させる。電線11の配索直後にコネクタ受け具5は把持アーム23(図9)と共に垂直なエアシリンダ18(図1)の伸長動作でさらに下降して配索板3に受け渡されて保持される。すなわち、コネクタ受け具5の底面のピン33(図7)又は穴が配索板3の孔又はピン(受け具支持部)に係合して位置決め支持される。
図7において符号112で示す如く、水平なエアシリンダ301のロッド30aの伸縮範囲(電線掻き寄せピン311の進退ストロークの範囲すなわち配索板3の長孔32(図9)の長さの範囲)よりも外側に電線112が配索されてしまう可能性のある場合(それが事前に分かっている場合)には、予め設定されたプログラムに従って、電線掻き寄せピン311を配索板3の下側に引っ込めた状態で(予め引っ込めておいてもよく、電線配索後に引っ込めてもよい)、図6の電線掻き寄せ具28を用いて電線112の位置を修正する。例えば、外れた電線112の位置が、エアシリンダ301の圧縮された側の実線で示す電線掻き寄せピン31よりも内側(図7で前側)にある場合は、伸長した側の電線掻き寄せピン311を配索板3の下側に引っ込めずに、電線掻き寄せ具28で電線112の位置をエアシリンダ301のロッド30aの伸縮範囲に修正可能である。
すなわち、図1の他方の把持アーム23が図6の電線掻き寄せ具28を配列台4(図1)から取り上げて、XY方向の各レール15〜17の動作で電線掻き寄せ具28(図6)が、範囲に外側に外れた電線112を図7の矢印Pの如く配索台3の上面3aに沿ってエアシリンダ301のロッド30aの伸縮範囲(電線掻き寄せピン31の進退ストロークの範囲)内に押して戻す。その後、電線掻き寄せピン311が図8の垂直なエアシリンダ34,37の動作で配索板3上に突出して、水平なエアシリンダ30の圧縮動作で電線掻き寄せピン311が(図7)目標配索経路まで電線112を押して移動させる。
図7の例の左から一番目と二番目の各エアシリンダ301,302はロッド30aの圧縮動作で電線111〜3の位置を修正(矯正)するが、その他のエアシリンダ30はロッド30aの伸長動作で電線11の位置を修正している(電線11を目標配索経路に移動させている)。電線11の位置の修正をロッド30aの圧縮動作で行うか伸長動作で行うかは、配索板3の裏側のエアシリンダ配置スペース等の関係による。
図7の例の左端の第一のコネクタ受け具51のコネクタ10から導出された電線111の配索は、図7の左から三番目のエアシリンダ303のロッド30aと、そのロッド30aの電線掻き寄せピン313に隣接する電線掻き寄せピン314を有するエアシリンダ304のロッド30aとを圧縮させて、両電線掻き寄せピン313,314を開いた状態で両電線掻き寄せピン313,314の間に電線111を挿通させて行われる。
この際、電線111の配索経路は両電線掻き寄せピン313,314の進退可能は範囲内であればよく、その範囲よりも外れる場合は、前述の電線掻き寄せ具28(図6)で両電線掻き寄せピン313,314の進退範囲内に電線111を移動させた後、両電線掻き寄せピン313,314を閉じ方向に移動させることで、電線111が目標配索経路に沿って位置修正(矯正)される。なお、電線掻き寄せ具28は、電線11を配索したのと同じ把持アーム(配索専用の把持アーム)23で把持して移動させることも可能である。この場合、把持アーム23の総数は一つでもよい。把持アーム23の総数を三つ以上とすることも可能である。
また、把持アーム23(図1)が配列台4からコネクタ受け具5を持ち上げた後に、例えばコネクタ10の電線11の配索方向に応じて、把持アーム23の上側の回転駆動部22(図1)で把持アーム23を水平方向に適宜角度に回転させることで、コネクタ10の電線11を配索板3の上方で所要の方向に湾曲させて、目標配索経路に沿うようにコネクタ10の電線11の向きを修正することも可能である。その向きでコネクタ受け具5を配索板3の受け具支持部39(図9)に受け渡し(コネクタ受け具の底面のピン8を配索板3の孔(受け具支持部)39に係合させ)てもよく、あるいは配索板3の受け具支持部39の上方でコネクタ受け具5の向き(コネクタ10の向き)を回転駆動部22(図1)で変えることも可能である。
このようにして、第二,第三……のコネクタ受け具5を把持アーム23で把持して移動手段15〜17でXY方向に移動させることで、各コネクタ10から導出された電線11の配索が行われる。配索板3上への電線11の配索本数が少ないうちは、把持アーム23でコネクタ受け具5内のコネクタ10の電線11を例えば一対の電線掻き寄せピン31の間の上方の空間を通って配索することも可能であるが、配索板3上への電線11の配索本数が増えるにつれて、特に短い電線11は電線掻き寄せピン31よりも高く把持アーム23で持ち上げることができなくなるので、図9の如く一対の電線掻き寄せピン31の間を通って把持アーム23を移動させることになる。
図1の配列台4に配置されるサブワイヤハーネスとしては、電線11の一端と他端にコネクタ10を有するU字形態のものは少なく、図10に示すように、電線11の幹線部11Aと分岐線部11Bとが入り組んで配線され、例えば第一の分岐線11Bの一方の端末11aのコネクタ10が第二,第三の分岐線11Bの他方の端末11aの各コネクタ10に続いているというような形態のサブワイヤハーネス40が多い。そのため、上記のように一対の電線掻き寄せピン31(図9)の間を通す配索が必要になる。
また、図7のように配索板3上への電線11の配索が進むにつれて、あるいは配索板3上への電線11の配索の途中で、例えば第四のコネクタ受け具5を把持アーム23で把持してXY方向に移動させると、第四のコネクタ受け具5のコネクタ10から導出された電線11が、例えば第一〜三の何れか又は第五のコネクタ受け具5における配索板3上に配索済みの電線11に絡んでしまう心配があるものは、予め設定されたプログラムに従って、第四のコネクタ受け具5を把持アーム23で把持して、電線11の絡みを生じる心配のない配列台5の位置にXYZの各移動手段15〜18で移し替えておく。
その状態で、第五のコネクタ受け具5を把持アーム23で把持して、第五のコネクタ受け具5内のコネクタ10の電線11を各移動手段15〜18で配索板3に沿って配索し、その後、再度、第四のコネクタ受け具5を把持アーム23で配列台4から取り上げて(離脱させて)、各移動手段15〜18で第四のコネクタ受け具5内のコネクタ10の電線11を配索板3に沿って配索する。
各コネクタ受け具5は、コネクタ受け具5内のコネクタ10の電線11を把持アーム23で配索する度に、配索板3に受け渡して保持させる(コネクタ受け具5の底面のピン8又は穴を配索板3の孔部39又はピンに係合させる)ことは言うまでもない。
以下に、配列台4の前後方向の移動とロールカーテン12(図4)の作用について説明する。
図1〜図4において、配列台4は左右一対のガイドレール6に沿って駆動手段(ねじ軸とナット部とモータ)で配索板3の前端側から後端側に向けて前後方向中間部(所望の位置)まで移動可能である。
例えば配索板3の後半側にコネクタ受け具5を配列台4から把持アーム23で移動させる場合は、配列台4を後方に移動させることで、配列台4から配索板3の後半側の受け具支持部(孔部39又はピン)までの前後方向距離が短縮されて、配列台4から把持アーム23でコネクタ受け具5を後半側の受け具支持部39まで運ぶ時間が短縮される。また、サブワイヤハーネス40(図10)のうちの短い電線11を配索板3の後半側に配索する場合は、短い電線11が配索板3の後半側まで届かない場合があるので、その場合も配列台4を後方に移動させた後、短い電線11を配索する。
後方に移動した配列台4は、配索板3上に配置されたコネクタ受け具5よりも上方に位置する。配列台4を後方に移動する際に、配索板3の上に突出している電線掻き寄せピン31はコネクタ受け具5よりも高く突出しているので、電線掻き寄せピン31は必要に応じて垂直なエアシリンダ34,37(図8)の圧縮動作で配索板3よりも下側に引っ込める。
配索板3の後半側から前半側にコネクタ受け具5の移動位置が変わった場合は、配列台4を適宜前進させる。このように、配列台4の移動は一つのサブワイヤハーネス40の配索過程で適宜行われる。サブワイヤハーネス40(図10)は、少なくとも複数本の電線11と、各電線部分(電線群)11A,11Bの端末に設けられた各コネクタ10とで構成される。コネクタ10からは複数本(少なくとも二本)の電線11が導出されている。
図4のロールカーテン12のカーテン(膜部)12aの先端(後端)は配列台4に固定されているので、ロールカーテン12は配列台4の後退時に円筒状のケース12bから引き出され、配列台4の前進時にケース12b内にばね力で引き込まれるというように、配列台4と一体に配索板3上を進退する。
配列台4が後退した際に、後方に引き出されたカーテン12aは配索板3の上を覆って、配索板3の前半側の既に配置されたコネクタ受け具5や配索電線11を外部から隔離して保護する。その状態で、把持アーム23が次のコネクタ受け具5を配列台3から取り上げて後退させる際に、そのコネクタ受け具5のコネクタ10から導出された電線11がカーテン12aの上面に沿って移動することで、配索板3の前半側の既に配置されたコネクタ受け具5や配索電線11との干渉が防止される。
これにより、スムーズで確実な電線11の配索が可能となる。電線11の配索は、コネクタ受け具5を把持アーム23で移動してコネクタ受け具5内のコネクタ10の電線11を配索板3上に配索することで行われることは言うまでもない。
上記図1〜図3における二本の把持アーム23の動作の説明では、一方の把持アーム23でコネクタ受け具5を把持し、他方の把持アーム23で電線掻き寄せ具28(図6)を把持した例で説明したが、二本の把持アーム23でそれぞれ各コネクタ受け具5を把持して、各移動手段15〜18で配索板3上に移動させつつ各コネクタ10の電線11を配索して、配索板3上の各受け具支持部39(図9)まで運ぶことも可能である。
図1〜図3の例では、二本の把持アーム23を支持する一対のY軸レール16(図1)がX軸レール15に一つのスライド係合部19で連結されており、一対のY軸レール16が各把持アーム23と共にY(前後)方向に独立で移動可能で、X(左右)方向には一体的に移動するので、一方の把持アーム23でコネクタ受け具5を把持し、他方の把持アーム23で電線掻き寄せ具28を把持している。
これに対し、二本の把持アーム23を支持する一対のY軸レール16(図1)がX軸レール15にそれぞれ独立した各スライド係合部19で連結される構成とすることで、例えば配索板3の左半側におけるコネクタ10の電線11の配索を左側の把持アーム23で行わせ、それと同時にあるいはそれとは別に、配索板3の右半側におけるコネクタ10の電線11の配索を右側の把持アーム23で行わせることも可能である。
この場合は、必要に応じて例えば何れか一方の把持アーム23がコネクタ受け具5を配索板3上に受け渡した後、配列台4から電線掻き寄せ具28を取り上げて、配索板3上の配索済みの電線11を目標配索経路に近づけるように移動させる。その後、配索板3の電線掻き寄せピン31がその電線11を目標配索経路に沿うように移動させる。使用の終わった電線掻き寄せ具28は把持アーム23から配列台4の所定の位置に戻す。
配索板3上に全てのコネクタ10の電線11の配索が完了して、配索板3上にサブワイヤハーネス40が所定形状(例えば車両への組付形状)に展開される。複数種(例えば二種類)のサブワイヤハーネス40を配索板3上で合体させる(両サブワイヤハーネスは端子接続される)場合もある。そして、例えば配索板上であるいは後工程で、サブワイヤハーネス40にコルゲートチューブや係止クリップやプロテクタや防水グロメット等といった外装部品(ハーネス部品)が装着されて、ワイヤハーネス(組電線)が所定の仕様で完成する。
上記実施形態においては、コネクタ受け具5を把持アーム23で把持したが、例えば、コネクタ受け具5に代えてコネクタ自体(コネクタハウジング)10を把持アーム23で直接把持して、配索板3上に運びながらコネクタ10の電線11を配索板3上に配索することも可能である。この場合、コネクタハウジングに傷が付かないように、把持アーム23は把持面にゴム等の柔軟な部材を有していてもよい。
配列台4には各コネクタ受け具(上記コネクタ受け具5から把持部27を除いた形状のもの)が配置され、各コネクタ受け具内の電線11付きのコネクタ10を把持アーム23で把持してコネクタ受け具から離脱させる。配索板3には予め各コネクタ10に対応する形態の不図示のコネクタ支持部(支持部材)をセットしておく。
また、コネクタ10を把持アーム23で把持することに代えて、サブワイヤハーネスの複数本の電線の端末側に装着されたコルゲートチューブ等(硬質なものが好ましい)といった外装部品を配列台4の上の部品受け具(図示せず)から把持アーム23で把持して配索板3上に運びながら、外装部品からの導出電線11を配索板3上に配索することも可能である。この場合、配索板3には外装部品を支持する部品支持部(支持部材)を予め配設しておく。外装部品はサブワイヤハーネス40のコネクタ10に隣接して設けられる。
また、把持アーム23で外装部品を直接把持するのではなく、外装部品をセットした部品受け具を配列台4から把持アーム23で把持して取り上げて、配索板3上に運びながら、部品受け具内の外装部品からの導出電線11を配索板3上に配索することも可能である。この場合、配索板3には、コネクタ受け具5におけると同様に、部品受け具の底部のピン又は穴等を支持する孔部39又はピン等といった受け具支持部を設けておく。
図11〜図12は、本発明のハーネス配索方法の他の実施形態を示すものである。
このハーネス配索方法は、上記図1〜図10の実施形態における電線掻き寄せピン31を用いずに、一対の把持アーム23のうちの何れかの把持アーム23で電線掻き寄せ具28を把持した状態で、配索板3上に既に配索済みの電線11を電線掻き寄せ具28で配索板3上の配索目標経路Lに向けて移動させて位置修正するものである。
図1〜図10の構成は、電線掻き寄せピン31を省略した状態で本実施形態に共通で使用する。ハーネス配索装置1は、電線掻き寄せピン31を省略した状態で図1〜図10のものを流用する。
図11の如く、配索板3上にサブワイヤハーネス40(図10)の各端末11a側のコネクタ10に続く電線11を一方(一)の把持アーム23(図12)で配索板3上の目標配索経路Lの近くに配索する。電線11は目標配索経路Lに配索されてもよいが、その必要はない。
図11においては、配索板3上にサブワイヤハーネス40の各端末側の電線11を全て配索した状態で示しているが、実際は、図12に示す如く、サブワイヤハーネス40の一の端末側の電線11を配索した後、あるいは一の端末側の電線11を配索する途中で(これも配索済みの電線と言う)、配索済みの電線11を電線掻き寄せ具28で矢印の如く目標配索経路Lに向けて移動させる。電線11を配索する途中で電線掻き寄せ具28で位置修正する場合は、例えば、配索板3上の目標配索経路Lに停止させた電線掻き寄せ具28を支点に(電線掻き寄せ具28の外周面に電線11を接触させて)、電線11を屈曲させて配索することが可能である。その場合、一方の把持アーム23でコネクタ受け具5を把持し、他方の把持アーム23で電線掻き寄せ具28を把持する。コネクタ受け具5を用いない場合は一方の把持アーム23でコネクタ10を把持する。
図1〜図10の実施形態では、電線掻き寄せ具28で電線11を目標配索経路Lに向けて移動させるのみであった(後は電線掻き寄せピン31で目標配索経路Lに移動させた)が、本実施形態においては、電線掻き寄せ具28のみで電線11を目標配索経路Lに移動させる。
電線掻き寄せ具28は他方(他)の把持アーム23で把持される。図12における一方の把持アーム23によるサブワイヤハーネス40の一の端末側の電線11の配索と、他方の把持アーム23で把持した電線掻き寄せ具28による電線11の位置修正とを、図11におけるサブワイヤハーネス40の各端末側の電線11について順次行って、サブワイヤハーネス40の配索が完了する。
一例として、図11の左端のコネクタ受け具51内のコネクタ10の電線(コネクタから導出された電線)111を配索して電線掻き寄せ具281で目標配索経路Lに移動させ、図11の左から2番目のコネクタ受け具52内のコネクタ10の電線112を配索して電線掻き寄せ具282で目標配索経路Lに移動させ、図11の左から3番目と4番目の各コネクタ受け具53,54内のコネクタ10の電線113,114を配索して電線掻き寄せ具283,284で目標配索経路Lに移動させる。また、図11の上側の左から5番目のコネクタ受け具55内のコネクタ10の電線115を配索して電線掻き寄せ具285で目標配索経路Lに移動させる。
また、図11の下側の右端のコネクタ受け具56内のコネクタ10の電線116を配索して電線掻き寄せ具286で目標配索経路Lに移動させ、図11の下側の右から2番目のコネクタ受け具57内のコネクタ10の電線117を配索して電線掻き寄せ具287で目標配索経路Lに移動させる。右端のコネクタ受け具56内と右から2番目のコネクタ受け具57内の各コネクタ10は、左から1〜4番目の各コネクタ受け具51〜54内のコネクタ10に電線11で接続されている。図11の符号281〜287で示す電線掻き寄せ具は一つ(同じもの)である。
図11において、電線11を配索してから電線掻き寄せ具28で移動させる方向は、主に、電線11の屈曲部11bにおける凹側から凸側に向かう方向(屈曲部11bの屈曲半径の中心位置から外側に向かう方向)である。図12の下側の左端の実線で示す電線掻き寄せ具28の如く、電線11の屈曲部11bではなく長めの真直部11cを目標配索経路Lに向けてほぼ平行に移動させたり、図12の上側の右端の電線掻き寄せ具288の如く、電線11の屈曲部11bにおける凸側から凹側に向けて電線11を目標配索経路Lに向けて移動させることも可能である。
図11で符号33は、コネクタ受け具5の底面のピンを示し、図12の符号39は、ピン33を挿入する孔部(支持具受け部)を示している。一方の把持アーム23で把持したコネクタ受け具5と、他方の把持アーム23で把持した電線掻き寄せ具28とは、図1〜図3のX軸レール(移動手段)15で横方向に一体に移動し、各Y軸レール(移動手段)16と各Y’軸レール(移動手段)17とZ方向の各エアシリンダ(移動手段)18で縦方向と高さ方向に別体に移動可能である。X方向の移動手段15に各Y軸レール16を各スライド係合部19で固定すれば、一方の把持アーム23で把持したコネクタ受け具5と、他方の把持アーム23で把持した電線掻き寄せ具28とを横方向にも別々に移動可能である。
図11〜図12の実施形態によれば、配索板3に電線掻き寄せピン31(図9)を上下前後左右方向に移動可能に設ける必要がないので、配索板3周りの構造が簡素化、低コスト化される。配索板3上に電線掻き寄せピン31がないので、電線掻き寄せピン31の制約(ピン31との干渉等)を受けずに自由に電線11を配索することができる。本実施形態は、電線11を比較的簡単な形態に配索するのに適している(電線位置決め用のピン31がないので、電線11を複雑な形態に配索することは難しい)。
図13〜図14は、本発明のハーネス配索方法のその他の実施形態を示すものである。
このハーネス配索方法は、水平方向に移動可能な電線掻き寄せピン31(図9)ではなく、固定式又は上下方向のみ移動(昇降)可能な電線位置決めピン41を配索板3上に突出させた状態で、把持アーム23で把持された電線掻き寄せ具28で、布線板3上の電線11を電線位置決めピン41の方向すなわち目標配索経路Lに向けて移動させるものである。
上述の図1〜図10の構成は、電線掻き寄せピン31を電線位置決めピン41に代えた状態で本実施形態に共通で使用する。ハーネス配索装置1は、電線掻き寄せピン31に代えて電線位置決めピン41を設けた状態で図1〜図10のものを流用する。
電線位置決めピン41は配索板3に移動不能に固定されたものでもよく、あるいは配索板3の不図示の円形の孔部を貫通して配索板3上に突出し、例えば図8(a)における垂直なエアシリンダ34の圧縮動作で配索板3の下側に引っ込むようにしたものでもよい。
配索板3の目標配索経路Lに沿って複数の電線位置決めピン41が突出して設けられる。図13,図14に示す如く、例えば電線11の屈曲配索部11bにおいて、電線11が凸となる側に左右ないし前後ないし斜め方向の一対の電線位置決めピン41が配置される。
例えば一方の把持アーム23(図14)で把持されたコネクタ受け具5内のコネクタ10の電線11が、配索板3上の各電線位置決めピン41の近傍に沿って配索され(電線位置決めピン41に接触して配索されてもよいがその必要はない)、電線11の配索の途中であるいは配索の完了後に、他方の把持アーム23(図14)で把持された電線掻き寄せ具28が、電線11の屈曲配索部11bの凹となる側に配置され、XY方向の移動手段15〜17で電線11の屈曲配索部11bの凸となる側に移動しつつ、電線11を凸側の一対の電線位置決めピン41の間に向けて移動させる。電線11は一対の電線位置決めピン41の間で屈曲して、目標配索経路L上に位置する。
また、図13の例えば左から2〜4番目のコネクタ受け具5から導出された電線11や、右端のコネクタ受け具5から導出された電線11や、図14の手前側の電線部分11cのように、屈曲配索部11bではなく真直配索部11cにおいて、電線掻き寄せ具28で電線11を電線位置決めピン41の側に向けて押して真直に位置修正することも可能である。
電線掻き寄せ具28の先端(下端)28a’(図14)は、配索板3の上面(配索面)3aに摺接しながら電線11の掻き寄せを行う。これにより、電線掻き寄せ具28の下端28a’と配索板3の上面3aとの間に隙間がなくなり、隙間への電線11の入り込みが防止され、スムーズで確実な電線11の掻き寄せ動作が行われる。これは上述の各実施形態においても同様である。
配索板3上にサブワイヤハーネス40の各端末を展開状態に配索(整形)した後、電線位置決めピン41は垂直なエアシリンダ34(図8)の圧縮動作で下降して、配索板3上からなくなることが、整形されて完成したサブワイヤハーネスないしワイヤハーネスを配索板3からスムーズに取り外す上で好ましい。図13,図14における電線位置決めピン41の配置はあくまで一例であり、電線11の配索形態に応じて各電線位置決めピン41が適宜位置に配置される。
図13,図14の実施形態によれば、電線掻き寄せピン31(図9)に比べて電線位置決めピン41周りの構造が簡素化・低コスト化されると共に、電線位置決めピン41に沿って電線掻き寄せ具28で電線11を掻き集めることで、目標配索経路Lに沿って電線11を精度良く配置することができる。