JP3719140B2 - ワイヤーハーネスの製造方法並びにサブアッセンブリ受け渡し具及び布線板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はワイヤーハーネスの製造方法並びにサブアッセンブリ受け渡し具及び布線板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
車両装備の電子化は目覚しく、車両に配索されるワイヤーハーネスも複雑な分岐線を有する大型のものになっている。そのため、ワイヤーハーネスを製造する際においても、ワイヤーハーネスを幾つかのサブアッセンブリに分割し、各サブアッセンブリをメインラインの布線板上でグロスアッセンブルする工法が一般に採用されている。そのようなワイヤーハーネスの組立手順として、従来は、小サブ工法と呼称される方法と、中サブ工法と呼称される方法とが採用されていた。
【0003】
いわゆる小サブ工法においては、電線の端部に接続された端子をコネクタに挿入することにより、幾つかのサブアッセンブリを構成する接続工程と、製造された複数のサブアッセンブリをメインラインの布線板上に配索する配索工程と、配索された複数のサブアッセンブリ同士を結束することにより最終的なワイヤーハーネスの電線群を構成するグロスアッセンブル工程とを備えている。
【0004】
また、いわゆる中サブ工法においては、上記サブアッセンブリを幾つか組み合わせて中間アッセンブリを製造し、その後、中間アッセンブリをグロスアッセンブルする工程を含んでいる(特開平8−235943号公報参照)。
【0005】
ところで、上記いずれの工法においても、製造されたサブアッセンブリがグロスアッセンブル時の形態に適合させておかなければ、グロスアッセンブル時に作業動線が錯綜したり、無駄な取り置き作業が発生したりすることになる。
【0006】
そのため、従来の工法では、いずれの場合もサブアッセンブリをグロスアッセンブル時の形態と同様な形態に配索して製造していた。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ところで最近では、車両用ワイヤーハーネスの電子化とあいまって、複雑な分岐線を有する、例えば80回路〜100回路もの大型のサブアッセンブリを製造することが要請される。特にそのような回路数の大きなサブアッセンブリを一度に製造することは、コネクタに未挿入の端子(以下、「ばら端子」という)を低減する上でも好ましいことである。
【0008】
しかしながら、大型のサブアッセンブリを一気に製造した場合、作業エリアがサブアセンブリの配線形態に沿う広いエリアにわたってしまうため、サブアセンブリの布線作業に手間がかかり、作業性が悪くなるという不具合があった。
【0009】
そのため、本件発明者は鋭意研究の結果、サブアッセンブリを構成するコネクタを特定の条件に基づくグループに分類してレイアウトし、電線接続作業を行うことにより、布線板よりも作業領域の小さいなボード上で大型のサブアッセンブリを製造した場合に、当該サブアッセンブリの最終形態をいわば圧縮した状態で維持することに成功した。
【0010】
他方、かかるサブアッセンブリをメインラインに搬送する際には、当該ワイヤーハーネスの分岐線を構成する電線群がもつれたり、作業時に作業者の動線が錯綜しないように、上記サブアッセンブリの配索形態がメインラインの布線板上で維持されている必要がある。特に電線同士の絡みが一箇所でも生じると、グロスアッセンブルできなくなるので、サブアッセンブリの受け渡し工程(サブアッセンブルラインからメインラインへの搬送)におけるサブアッセンブリの形態の取り扱いは非常に重要であった。
【0011】
本発明は上記不具合に鑑みてなされたものであり、最終形態が圧縮された状態で製造される大型のサブアッセンブリを容易にサブアッセンブルラインからメインラインに受け渡すことができ、それによって大型のサブアッセンブリの製造を容易にすることのできるワイヤーハーネスの製造方法並びにサブアッセンブリ受け渡し具及び布線板を提供することを課題としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明は、ワイヤーハーネスを構成するサブアッセンブリをあらかじめサブアッセンブルラインで製造し、その後、製造されたサブアッセンブリをメインラインの布線板上に配索することにより最終形態となるワイヤーハーネスを製造するワイヤーハーネスの製造方法であって、メインラインの布線板上での配索形態をサブアッセンブルラインのボード上で圧縮した圧縮形態にてサブアッセンブリを製造する工程と、このサブアッセンブリの圧縮形態を上記ボード上のサブアセンブリ受け渡し具によって仮保持する工程と、仮保持されたサブアッセンブリを、サブアッセンブリ受け渡し具とともにメインラインのボード上に受け渡した後、当該サブアッセンブリの圧縮形態を最終形態に展開しながら上記布線板上で配索する工程とを備えたことを特徴とするワイヤーハーネスの製造方法である。
【0013】
また別の態様は、メインラインの布線板上での配索形態がサブアッセンブルラインのボード上で圧縮された状態で製造されたサブアッセンブリを当該サブアッセンブルラインのボードからメインラインの布線板に受け渡すための、請求項1に係る製造方法に用いるサブアッセンブリ受け渡し具であって、上記ボードに着脱可能に取り付けられる担持体と、この担持体に配列され、当該サブアッセンブリを構成する電線を、上記圧縮された形態のまま仮保持可能な仮保持部材とを備え、上記仮保持部材は、仮保持したサブアッセンブリが圧縮された形態から上記布線板上での配索形態へ展開できるように上記担持体上で変位可能に担持されていることを特徴とするサブアッセンブリ受け渡し具である。
【0014】
本発明の上記各態様では、メインラインの布線板上での配索形態がサブアッセンブルラインのボード上で圧縮された状態でサブアッセンブリが製造され、その圧縮された形態がそのまま仮保持部材によって維持される。そして、サブアッセンブルラインのボードに着脱可能に取り付けられた担持体を取り外すことにより、仮保持されたサブアッセンブリをサブアッセンブルラインから取り外し、メインラインの布線板に搬送することが可能になる。さらに上記布線板においては、担持体上で仮保持部材を変位させることにより、サブアッセンブルライン上で圧縮されたサブアッセンブリを布線板での最終形態に伸長させることが可能になる。この発明において、サブアッセンブリをサブアッセンブルラインで圧縮して製造する具体的な手段としては、メインライン上での作業手順に基づいて、各分岐線を複数のグループに分類する工程と、各分岐線に対応するコネクタを当該グループ毎に分類してレイアウトする工程と、レイアウトされたコネクタに対応する電線を接続する工程を含んでいることが好ましい。
【0015】
好ましい態様において、上記担持体は伸縮可能なレール体である。このようにすると、担持体が廉価で軽量な構造となる。
【0016】
さらに好ましい態様において、各仮保持部材は、接離方向に相対変位可能な連結機構を介して連結されているものである。このようにすると、圧縮形態にあるサブアッセンブリをメインラインでの配索形態に展開する際に、両端側の仮保持部材を動かすだけで途中の仮保持部材を連動させることができるので、展開作業が容易になる。
【0017】
さらに好ましい態様において、上記連結機構は、同一仕様に設定されて上記担持体の長手方向にスライド可能に装着される複数のスライドピースと、各スライドピースを伸縮自在に連結するワイヤーとを有し、上記仮保持部材は、各スライドピース上に選択的に着脱自在に固定されるものである。このようにすると、多種類のサブアッセンブリを製造する際に、個々のサブアッセンブリに対応して仮保持部材をスライドピースに選択的に固定することにより、汎用化を持たせることが可能になる。また、仮保持部材の一部が破損した場合でも、破損した仮保持部材のみを良品と交換すればよいので、メンテナンス性が高くなる。
【0018】
特に好ましい態様において、上記スライドピースは、製造対象となる多種類のサブアッセンブリのうち、最も配線数の多いサブアッセンブリに対応可能な個数に設定されている。このようにすると、単一の仕様で設計されたサブアッセンブリ受け渡し具を何れのサブアッセンブリにも適用することが可能になり、最も汎用性を高めることが可能になる。
【0019】
さらに好ましい態様において、上記連結機構は、可撓性のあるワイヤーを含んでいる。
【0020】
このようにすると、連結機構の伸縮構造をコンパクト化し、全体としてより軽量で簡素な構造を得ることが可能になる。
【0021】
本発明のさらに別の態様は、サブアッセンブリ受け渡し具の担持体を着脱可能に保持する着脱具と、着脱具に保持された上記サブアッセンブリ受け渡し具から当該サブアッセンブリを配索するために着脱具を立設するための立設具とを設けたことを特徴とするワイヤーハーネスの布線板である。
【0022】
この態様にかかる発明では、サブアッセンブリが大型のものであっても、着脱具に受け渡し具を保持させることによって、片手で容易に圧縮されたサブアッセンブリを展開し、メインラインの布線板上に配索することができる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照しつつ本発明の好ましい実施の形態について詳述する。
【0024】
図1は本発明の実施形態にかかるサブアッセンブリ製造装置の要部を概略的に示す平面略図である。
【0025】
まず、図1を参照して、本実施形態にかかる生産ラインは、最終的なワイヤーハーネスの仕上げ加工を行うメインラインMLと、このメインラインMLに対して枝状に接続される複数のサブアッセンブルラインSLとを有している。
【0026】
上記メインラインMLは、ワイヤーハーネスを布線するための布線板11を周知のコンベヤーで搬送する形式のものである。このメインラインMLの布線板11上では、後述するサブアッセンブルラインSLで製造されたサブアッセンブリM同士をグロスアッセンブルして最終形態のワイヤーハーネスを構成したり、グロメットやコルゲートチューブ等の外装部品を取り付けたりする作業が主として行われる。
【0027】
上記サブアッセンブルラインSLは、サブアッセンブリ製造用のコンベヤーを周回する手押し式搬送台車110と、この手押し式搬送台車110に担持される図板ユニットBとを含んでいる。
【0028】
図2は、図1の実施形態にかかる図板ユニットを担持した手押し式搬送台車の斜視図である。
【0029】
同図に示すように、手押し式搬送台車110は、ベース111と図板フレーム112とをヒンジ113で連結したものであり、上記図板フレーム112上はボード201を担持しているとともに、上記ベース111上に取り付けられたローラ111aによって、レール103上を走行するものである。そして、上記レール103沿いに設定される複数のステーションを周回することより、上記ボード201上に設けられた端子挿入支援ユニット210によってサブアッセンブリMの接続作業が行われるようになっている。図2において111bは弾性ストッパーである。
【0030】
コネクタホルダ211は、外殻が概ね直方体に形成され、その上面には、対象となるコネクタC(図8参照)の外形に応じて開口する有底の上記コネクタ収容部212を有している。コネクタホルダ211は、保持対象となるコネクタCの極数や形状に対応して様々な形状に設定されている。これらコネクタホルダ211が複数個レイアウトされているのは、各コネクタホルダ211のコネクタ収容部212にそれぞれ対応するコネクタを収容し、端子付電線W(図8参照)の一方の端部を一のコネクタホルダ211に装着されたコネクタに接続した後、そのままの状態で上記端子付電線Wの他方の端部を別のコネクタホルダ211に装着されたコネクタに接続するためである。各コネクタホルダ211のコネクタ収容部212の底部には、図略のプローブ保持プレートが固定されており、このプローブ保持プレートによって上記コネクタ収容部212に収容されるコネクタCの底部を受ける載置面が形成されているとともに、プローブ220が保持されている。このプローブ220は、各コネクタホルダ211に保持されるコネクタの極(端子収容部)に1対1対応で設けられたものであり、コネクタCがコネクタ収容部212に収容される際に各プローブ220が当該コネクタCの端子収容室内に入り込み、上記端子収容室に端子付電線Wの端部が接続されることによって、該端子付電線Wの端子と接続されるように構成されているものである。
【0031】
なお、以上の端子挿入支援ユニット210は、インターフェースコネクタ250を有しており、このインターフェースコネクタ250を介して各ステーションに配置された電線接続指示装置(図示せず)と電気的に接続され、所要のサブアッセンブリMの接続指示が、コネクタホルダ211に設けられた表示ランプ240によってなされるようになっている。
【0032】
そして、図示の実施形態において、上記端子挿入支援ユニット210は、以下に説明する観点からグループ分けされている。
【0033】
図1に示すように、上記図板ユニットBのボード201上に立設される端子挿入支援ユニット210は、メインラインMLの布線板11にサブアッセンブリMを配索した場合における各分岐線毎にグループGとして分類された状態で配設されている。
【0034】
これらグループGは、グロスアッセンブルを行う際の作業手順に基づいている。
【0035】
すなわち、メインラインMLの布線板11が例えば矢印AW1で示すコンベヤー搬送方向に移動する場合、メインラインMLの布線板11のコンベヤー搬送方向AW1と逆向きの方向AW2に沿って作業を行なえば、作業者は殆ど定位置で止まったままの状態で、個々の作業を効率よく行うことができる。従って、図示の例では、上記作業者がメインラインMLの布線板11上で行なう作業エリアをコンベヤー搬送方向AW1の上流側から分岐線毎に分割し、対応するグループGにかかるコネクタに対応する端子挿入支援ユニット210を図の左から右側に配列しているのである。なおグループ分けを識別する手段としては、各端子挿入支援ユニット210をグループG毎に色分けしたり、ボード201上にグループG毎の仕切り線等の表記をしておくことにより実現される。
【0036】
なお図示の例において、ワイヤーハーネス同士を接続するための接続コネクタ等、後工程での処理が異なるものについては、別のグループFとして分類している。
【0037】
このように図示の実施形態では、各コネクタCを分岐線毎に分類してレイアウトすることにより、サブアッセンブリMの最終形態をいわば圧縮した圧縮形態にできるので、大型のサブアッセンブリMを製造する場合においても、コネクタCを密集させてレイアウトすることにより、コンパクトな作業領域内にてサブアッセンブリMの接続作業等を行うことも可能になる。従って作業性が向上する。
【0038】
次に、図板ユニットBのボード上にて製造されたサブアッセンブリMを布線板11に受け渡すための受け渡し具500について説明する。
【0039】
図3は上記受け渡し具500の取り付け構造を示す斜視図である。図4は本実施形態にかかるサブアッセンブリの受け渡し具500の概略構成を示す斜視図であり、図5は上記受け渡し具500の正面図であって(A)はレール体を省略したもの、(B)はレール体を記載したものである。図6は上記受け渡し具500の動作を示す斜視図である。図7は本実施形態にかかる受け渡し具の要部を示す斜視図である。また図8は本実施形態にかかるサブアッセンブリMの仮保持状態を概略的に示す平面略図であり、(A)は仮保持前の布線状態、(B)は仮保持状態をそれぞれ示している。
【0040】
図2並びに図3ないし図8に示すように、上記図板ユニットBには各電線WをグループG毎に仮保持するための受け渡し具500が設けられている。受け渡し具500は、担持体としてのレール体501と、このレール体501に立設される仮保持部材としての弾性クランプ510を有しており、弾性クランプ510は、図板ユニットBに割り当てられたグループGに対応して複数個立設されている。
【0041】
図3に示すように、上記弾性クランプ510は、一対のクランプ片511をケース512に開閉自在に取り付け、さらにケース512に取り付けられた弾性片513を各クランプ片511毎に設けて図示の閉じ姿勢に付勢したものである。そして、電線WをコネクタCに接続する工程が終了した後に、この弾性クランプ510によって仮保持を行えば、テーピング作業が不要になる。
【0042】
さらに図3に示すように、上記受け渡し具500は、着脱ホルダ550によって図板ユニットB上に着脱可能に設けられている。着脱ホルダ550は、係止爪551を有するブラケット552と、ブラケット552に保持されて上記係止爪551と協働して受け渡し具500を挟持する挟持姿勢と開放する開放姿勢との間にスライドするスライド爪553と、スライド爪553を挟持姿勢に付勢する平面視X字状の板ばね554とを有しており、このブラケット552を上記図板ユニットBの適所に複数個配設して、受け渡し具500を着脱できるようにしている。
【0043】
次に図4〜図6を参照して、各弾性クランプ510は、連結機構520によって連結されている。
【0044】
この連結機構520は、弾性クランプ510の一側部に片持ち状に固定されてレール体501と平行に延びるロッド521と、ロッド521に対して往復移動可能に取り付けられたスライダ522と、スライダ522の一側部に片持ち状に固定され、上記ロッド521と平行に延びる剛性線材523と、上記ロッド521の端部に固定され、かつ上記剛性線材523に対しては往復移動可能に連結されたストッパスライダ524と、上記剛性線材523の端部に固定されてレール体501内に往復移動可能にガイドされる連結スライダ525と、この連結スライダ525の一側部に対向する次の弾性クランプ510に対し、当該連結スライダ525を連結するワイヤー526とを備えており、上述したパターンが繰り返されている。
【0045】
図示の実施形態において、各スライダ522、524、525は、いずれもレール体501の長手方向に沿って往復移動可能な同種のスライド部材で具体化されており、さらに具体的にはカーテンレールのスライドランナーを流用することが可能である。図示の例では図7に示すように、いずれもコアR1にスリーブR2を回転自在に取り付け、このスリーブR2をレール体501内にて転動させることにより、各スライダ522、524、525は、往復移動可能に構成されている。また、図示の例では、弾性クランプ510の下部にも同種のスライダ527が設けられている。
【0046】
この構成を採用すれば、図6に示すように、スライダ522は、対応する一の弾性クランプ510とこの弾性クランプ510と一体化されたストッパスライダ524との間で、上記ロッド521沿いに変位するとともに、弾性クランプ510またはストッパスライダ524と当接することにより変位時の力を上記弾性クランプ510に伝達することが可能になる。また、このスライダ522と剛性線材523を介して一体化された連結スライダ525は、ワイヤー526を介して別の弾性クランプ510と連結されているので、この別の弾性クランプ510が上記一の弾性クランプ510から離反すると、ワイヤー526、連結スライダ525、剛性線材523、スライダ522、及びストッパスライダ524を介して上記一の弾性クランプ510を連動するようになっている。
【0047】
ここで図示の実施形態では、一の弾性クランプ510と別の弾性クランプ510とを、可撓性を有するワイヤー526を介して連結しているので、両弾性クランプ510、510の相対変位を許容しながら両弾性クランプ510、510を連動させるにあたり、簡素で廉価な構成とすることができる。
【0048】
次に図1及び図7を参照して、上記レール体501は、おおむねチャネル状に形成された外レール501aと、この外レール501a内にスライド可能に装着される内レール501bとを主要部としている。
【0049】
上記弾性クランプ510、510、…及び連結機構520の組立体ASは、これらレール501a、501bに収容されているとともに、該組立体ASの両端部分に該当する弾性クランプ510、510のスライダ527は、それぞれ対応するレール501a、501bの端部に固定されている。これにより、両レール501a、501bは、互いに相対変位が許容されつつ、上記組立体ASの最大伸長長さによって分離が規制されている。そして、かかる構造を採用することにより、図1及び図2に示すように図板ユニットB上では、外レール501aに内レール501bが収容された縮小状態でボード201上に取り付けられ、該ボード201上で接続されたサブアッセンブリMを仮保持することができる(図8(A)(B)参照)とともに、仮保持後にレール体501をボード201から受け渡し具500を取り外し、次に説明するように、メインラインMLの布線板11に配索する際には、布線板11の幅寸法に対応して受け渡し具500に仮保持されたサブアッセンブリMを伸長させ、布線板11上に展開しながら配索することができる。
【0050】
次にメインラインMLでのサブアッセンブリMの受け渡し工程について図9以下を参照しながら説明する。図9はメインラインMLに採用されている布線板11の側面図であり、(A)は配索時、(B)は配索後をそれぞれ示している。また、図10ないし図15は、受け渡し工程を示す斜視図である。
【0051】
まず、図9(A)(B)及び図10を参照して、布線板11は、周知の通り、作業者側が低くなる状態に傾斜した板材で構成されている。この布線板11には、サブアッセンブリM(最終的にはワイヤーハーネスとなるもの)を担持する布線保持具11aがあらかじめ定められた順序に従って多数立設されており、これらの配列に沿ってサブアッセンブリMを配索することにより、最終的な配索形態にサブアッセンブリMを布線することができる。
【0052】
図1に模式化して示したように、本実施形態にかかるサブアッセンブリMは、幹線M1から▲1▼〜▲5▼でグループ分けした複数の分岐線が分岐する樹状形態になっており、各布線保持具11aも、この分岐態様に応じて配列されている。
【0053】
そして、図示の実施形態では、図9(A)の仮想線で示すように、上記幹線M1がレイアウトされる幹線レイアウト位置よりも上側の部位には、一対のピラー81(立設具)が立設され、このピラー81の上部にはフック82(着脱具)が形成されている。そして、上述した受け渡し具500は、このピラー81に設けられたフック82に係止することにより、布線板11上で保持される(図11及び図12参照)。さらに図示の実施形態では、フック82に係止された受け渡し具500から垂れ下がるサブアッセンブリMがみだりに布線保持具11aに引っかかるのを防止するためにカバーボード85が各布線板11毎にワイヤー85aで吊り下げ可能に取り付けられている。このカバーボード85は、上記幹線レイアウト位置(図9(A)参照)から下側の布線保持具11aの上部を覆い、サブアッセンブリMがこのカバーボード85上に垂れ下がることによって配索時に電線Wが引っかからないようにしている。
【0054】
図示の例では、上記カバーボード85の上縁に一対のフック86を設け、このフック86を布線板11上に立設された所定の保持具87に係止することにより、カバーボード85を各保持具11aに対して位置決めすることが可能になる。上記保持具87は、図示の例では一部の保持具11aを流用したものになっているが、これに限らず、専用のフック等で保持具87を構成してもよい。
【0055】
さらに上記カバーボード85には、所定の個所に切欠88が設けられ、この切欠によって上記幹線レイアウト位置から下側に配置された布線保持具11aの一部が露出する構成になっている。これにより、次に説明する受け渡し工程において、作業者はメインラインMLの布線板11のコンベヤー搬送方向AW1と逆向きの方向AW2に沿って、受け渡し作業を効率よく行うことができる。
【0056】
次に、この布線板11への受け渡し工程について説明する。
【0057】
以上の構成では、図10に示すように、まず布線板11に吊り下げれらたカバーボード85を布線板11の所定位置に載置し、フック86を布線板11上の保持具87に係止する。ついで図11に示すように、サブアッセンブリMを仮保持した受け渡し具500を上記布線板11上のピラー81に設けられたフック82に係止する。この段階では、受け渡し具500は、図板ユニットBの長手寸法に対応した収縮状態にあるので、作業手順としては、まず一対のピラー81のうち、布線板11のコンベヤー搬送方向AW1の下流側のものに受け渡し具500の端部を係止する。
【0058】
次に図12に示すように、受け渡し具500のレール体501を伸長し、他方の端部を布線板11のコンベヤー搬送方向AW1の上流側のピラー81に設けたフック82に係止する。この伸長作業では、コンベヤー搬送方向AW1の下流側のフック82に受け渡し具500の対応する端部に固定された弾性クランプ510が係止した状態でレール体501を伸長することができるので、容易に伸長作業を行うことができる。そして、この伸長作業により、いわば圧縮状態で保持されているサブアッセンブリMが、その配索形態(分岐線毎にグループ分けして分類された状態)を維持したまま展開されることになる。
【0059】
その後、図13及び図14に示すように、布線板11のコンベヤー搬送方向AW1の下流側から順に、分岐線を受け渡し具500の弾性クランプ510から取り外して対応する布線保持具11a上に配索してゆくことにより、サブアッセンブリMを容易に布線板11上に配索することができる。この配索作業では、サブアッセンブリMがカバーボード85上に垂れ下がった状態で行われるので、サブアッセンブリMの電線Wが保持具11aに引っかかるという不具合が可及的に回避される。さらに図示の実施形態では、カバーボード85の所定位置に切欠88を設け、この切欠88から露出する保持具11aに対しても布線作業を行うことができるので、布線作業を上記布線板11のコンベヤー搬送方向AW1の下流側から順に滑らかに実行することができる。
【0060】
そして、カバーボード85で覆われていないグループGの布線作業が終了した後は、図9(B)及び図15に示すように、カバーボード85を布線板11から降ろして幹線M1から下側のグループの配索作業を行い、すべての配索作業が終了した後は、受け渡し具500を取り外せばよい。
【0061】
以上説明したように、本実施形態によれば、サブアッセンブリMを圧縮した配索形態で製造することにより、作業エリアを可及的にコンパクトにまとめ、製造作業の効率化を図ることができるとともに、製造されたサブアッセンブリMの形態を維持したままメインラインMLの布線板11上で展開することができるので、形態を圧縮してもスムーズにメインラインMLへのサブアッセンブリMの受け渡し工程を行うことができる。
【0062】
従って本実施形態によれば、大型のサブアッセンブリMの製造が容易になり、大幅に効率が向上するという顕著な効果を奏する。
【0063】
上述した実施の形態は本発明の好ましい具体例を例示したものに過ぎず、本発明は上述した実施の形態に限定されない。
【0064】
たとえば、本発明に係る受け渡し具として、図16以下の構成のものを採用することが可能である。
【0065】
図16は本発明の別の実施形態に係るサブアッセンブリ受け渡し具700の要部構成を示す分解斜視図であり、図17は図16のサブアッセンブリ受け渡し具700の全体構成を示す一部破断断面略図であり、図18及び図19は、図16のサブアッセンブリ受け渡し具700の使用態様を示す斜視図である。
【0066】
まず、図16及び図17を参照して、図示の実施形態においては、図3の実施形態に係る連結機構520に代えて連結機構720が採用されている。
【0067】
本実施形態に係る連結機構720は、レール体501内にてスライド移動可能なスライドピース721を多数備えている。各スライドピース721は、何れも同一仕様の概ね長方体形状に形成された樹脂成型品であり、その両側部には、レール体501を構成する外レール501a及び/または内レール501bのガイド縁501cを嵌入させる嵌入溝722が形成されている。そして、各スライドピース721は、この嵌入溝722にレール体501の上記ガイド縁501cをスライド自在に嵌入させることにより、レール体501の長手方向に沿って往復移動することが可能になっている。
【0068】
各スライドピース721は、図3の実施形態と同様なワイヤー731によって互いにレール体501の長手方向に相対変位可能な状態で連結されている。各ワイヤー731は、両端部分に端子732が圧着された可撓性を有する金属線で具体化されている。そして各端子732が図示の通りビス733でスライドピース721に固定されることにより、ワイヤー735は、各スライドピース721を接離可能に連結している。また、各端子732は、各スライドピース721が互いに接合できるように、各端子732は、スライドピース721の平面内に収まっている。
【0069】
なお、図示の実施形態では、図17に示すように、上記レール体501の両端(外レール501aの一端側と内レール501bの他端側)にロケーションピン734を突設されているとともに、レール体501の終端に配置されたスライドピース721の上記終端側には、ロケーションピン734に掛け止めされる無端状のワイヤー735が固定されている(図16参照)。そして、これらロケーションピン734にスライドピース721の連結体を連結させることにより、図3の実施形態と同様にレール体501の外レール501aと内レール501bとの相対変位に各スライドピース721を連動させることが可能になる。
【0070】
次に各スライドピース721と弾性クランプ510の取り付け構造について説明する。
【0071】
図16を参照して、各スライドピース721の中央部には、当該スライドピース721の幅方向に開く装着溝723が形成されており、この装着溝723には、取付板744が嵌合している。取付板744は、弾性クランプ510の底部を着座させることにより、弾性クランプ510をスライドピース721に取り付けるためのものであり、その中央部には、挿通孔745を有している。そして、この挿通孔745を挿通するビス746を装着溝723の中央部に形成されたねじ穴727に螺合させることによって、装着溝723に嵌合された取付板744は、スライドピース721と十字に交差した姿勢でスライドピース721と一体化される。さらに取付板744には、その長手方向両側に一対のねじ孔747が形成されている。
【0072】
他方、図示の実施形態において弾性クランプ510は、その前後両側(一方のみ図示)のケース512にステー514を一体に有しており、このステー514に形成された挿通孔515を挿通するビス516を上記取付板744のねじ孔747に螺合させることにより、弾性クランプ510は、取付板744を介しスライドピース721に対して着脱可能に固定されることになる。なお、図示の例において、上記弾性クランプ510の底部には、図略の空隙が形成されているので、取付板744を挿通するビス725の頭部が弾性クランプ510と干渉することはない。
【0073】
次に図18及び図19を参照しながら、図16の実施形態の作用について説明する。
【0074】
上述した図16以下の実施形態では、基本的には図3の実施形態と同様に、複数の弾性クランプ510をレール体501の伸縮動作に追従して互いに相対的に接離することができるので、布線板上で製造されるサブアッセンブリの最終的な配索形態を維持しながらサブアッセンブリをメインラインへ受け渡すことが可能になる。
【0075】
しかも上述した実施形態では、同一仕様のスライドピース721をレール体501に装着しているとともに、各スライドピース721に対し、弾性クランプ510を着脱可能に固定しているので、以下のような態様で使用することが可能である。
【0076】
すなわち、多種類のサブアッセンブリを製造するに当たり、受け渡し具700の標準仕様として、スライドピース721の個数を最も配線数の多いサブアッセンブリに対応させ、図18に示すように、全てのスライドピース721に弾性クランプ510を固定しておけばよい。このようにしておくと、配線数の最も多いサブアッセンブリを製造する場合には、標準仕様の受け渡し具700をそのまま使用することができるとともに、上記サブアッセンブリよりも配線数の少ないサブアッセンブリを製造する場合には、上記標準仕様の受け渡し具700から不要な弾性クランプ510を取り外すだけで、図19に例示するように、別仕様の受け渡し具700を容易に構成することが可能になる。
【0077】
従って図16以下の実施形態では、受け渡し具700に汎用性を持たせることが可能になるので、製造されるサブアッセンブリ毎に受け渡し具を設計し直す手間がなくなる。そのため、種々の品番のサブアッセンブリを製造するラインや、複数の品番のサブアッセンブリを同一の製造ラインに混流させる混流生産ラインにおいて、本実施形態の受け渡し具700を容易且つ廉価に実施することが可能なる。
【0078】
また、個々の弾性クランプ510がスライドピース721に対して着脱可能に構成されているので、弾性クランプ510が破損した場合でも、その交換が極めて容易になり、メンテナンス性も高まるという利点がある。
【0079】
その他、本発明の特許請求の範囲内で種々の設計変更が可能であることはいうまでもない。
【0080】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、サブアッセンブリを圧縮した配索形態で製造することにより、作業エリアを可及的にコンパクトにまとめ、製造作業の効率化を図ることができるとともに、製造されたサブアッセンブリの形態を維持したままメインラインの布線板上で展開することができるので、形態を圧縮してもスムーズにメインラインへのサブアッセンブリの受け渡し工程を行うことができる。
【0081】
従って本発明によれば、大型のサブアッセンブリの製造が容易になり、大幅に効率が向上するという顕著な効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態にかかるサブアッセンブリ製造装置の要部を概略的に示す平面略図である。
【図2】 図1の実施形態にかかる図板ユニットを担持した手押し式搬送台車の斜視図である。
【図3】 図2の受け渡し具の取り付け構造を示す斜視図である。
【図4】 本実施形態にかかるサブアッセンブリの受け渡し具の概略構成を示す斜視図である。
【図5】 上記受け渡し具の正面図であって(A)はレール体を省略したもの、(B)はレール体を記載したものである。
【図6】 上記受け渡し具の動作を示す斜視図である。
【図7】 本実施形態にかかる受け渡し具の要部を示す斜視図である。
【図8】 本実施形態にかかるサブアッセンブリの仮保持状態を概略的に示す平面略図であり、(A)は仮保持前の布線状態、(B)は仮保持状態をそれぞれ示している。
【図9】 メインラインに採用されている布線板の側面図であり、(A)は配索時、(B)は配索後をそれぞれ示している。
【図10】 受け渡し工程を示す斜視図である。
【図11】 受け渡し工程を示す斜視図である。
【図12】 受け渡し工程を示す斜視図である。
【図13】 受け渡し工程を示す斜視図である。
【図14】 受け渡し工程を示す斜視図である。
【図15】 受け渡し工程を示す斜視図である。
【図16】 本発明の別の実施形態に係るサブアッセンブリ受け渡し具の要部構成を示す分解斜視図である。
【図17】 図16のサブアッセンブリ受け渡し具の全体構成を示す一部破断断面略図である。
【図18】 図16のサブアッセンブリ受け渡し具の使用態様(標準仕様)を示す斜視図である。
【図19】 図16のサブアッセンブリ受け渡し具の使用態様(仕様変更例)を示す斜視図である。
【符号の説明】
11 布線板
11a 布線保持具
81 ピラー
82 フック
201 ボード
500、700 サブアッセンブリ受け渡し具
510 弾性クランプ
520、720 連結機構
721 スライドピース
526、730 ワイヤー
AS 組立体
B 図板ユニット
C コネクタ
M サブアッセンブリ
ML メインライン
SL サブアッセンブルライン
W 端子付電線
Claims (6)
- ワイヤーハーネスを構成するサブアッセンブリをあらかじめサブアッセンブルラインで製造し、その後、製造されたサブアッセンブリをメインラインの布線板上に配索することにより最終形態となるワイヤーハーネスを製造するワイヤーハーネスの製造方法であって、
メインラインの布線板上での配索形態をサブアッセンブルラインのボード上で圧縮した圧縮形態にてサブアッセンブリを製造する工程と、
このサブアッセンブリの圧縮形態を上記ボード上のサブアセンブリ受け渡し具によって仮保持する工程と、
仮保持されたサブアッセンブリを、サブアッセンブリ受け渡し具とともにメインラインのボード上に受け渡した後、当該サブアッセンブリの圧縮形態を最終形態に展開しながら上記布線板上で配索する工程と
を備えたことを特徴とするワイヤーハーネスの製造方法。 - メインラインの布線板上での配索形態がサブアッセンブルラインのボード上で圧縮された状態で製造されたサブアッセンブリを当該サブアッセンブルラインのボードからメインラインの布線板に受け渡すための、請求項1に係る製造方法に用いるサブアッセンブリ受け渡し具であって、
上記ボードに着脱可能に取り付けられる担持体と、
この担持体に配列され、当該サブアッセンブリを構成する電線を、上記圧縮された形態のまま仮保持可能な仮保持部材と
を備え、
上記仮保持部材は、仮保持したサブアッセンブリが圧縮された形態から上記布線板上での配索形態へ展開できるように上記担持体上で変位可能に担持されていることを特徴とするサブアッセンブリ受け渡し具。 - 請求項2記載のサブアッセンブリ受け渡し具において、
各仮保持部材は、接離方向に相対変位可能な連結機構を介して連結されているものであることを特徴とするサブアッセンブリ受け渡し具。 - 請求項3記載のサブアッセンブリ受け渡し具において、
上記連結機構は、同一仕様に設定されて上記担持体の長手方向にスライド可能に装着される複数のスライドピースと、各スライドピースを伸縮自在に連結するワイヤーとを有し、上記仮保持部材は、各スライドピース上に選択的に着脱自在に固定されるものであることを特徴とするサブアッセンブリ受け渡し具。 - 請求項4記載のサブアッセンブリ受け渡し具において、
上記スライドピースは、製造対象となる多種類のサブアッセンブリのうち、最も配線数の多いサブアッセンブリに対応可能な個数に設定されているものであることを特徴とするサブアッセンブリ受け渡し具。 - 請求項2、3、4、または5記載のサブアッセンブリ受け渡し具の担持体を着脱可能に保持する着脱具と、
着脱具に保持された上記サブアッセンブリ受け渡し具から当該サブアッセンブリを配索するために着脱具を立設するための立設具と
を設けたことを特徴とするワイヤーハーネスの布線板。
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