JP6290973B2 - 保持体、結晶製造装置および結晶の製造方法 - Google Patents

保持体、結晶製造装置および結晶の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、炭化珪素の結晶を成長させるのに用いる保持体、それを用いた結晶製造装置および結晶の製造方法に関するものである。
トランジスタなどのデバイスを形成する基板材料として、現在、炭素と珪素の化合物である炭化珪素(Silicon Carbide;SiC)が注目されている。炭化珪素は、バンドギャ
ップがシリコンと比べて幅広く、絶縁破壊に至る電界強度が大きいことなどを理由に注目されている。炭化珪素の結晶は、炭素を含む珪素の溶液を用いて溶液成長法で製造される(例えば、特許文献1参照)。
特開2000−264790号公報
炭化珪素の結晶を成長させる研究・開発において、結晶を長尺化または大口径化するために、結晶を長時間にわたって成長させる必要がある。長時間にわたる結晶成長において、時間の経過とともに溶液に含まれる元素の比率が変動したり、溶液の特性を途中で変化させたりする必要があり、成長の途中で溶液に原料または添加材を供給する必要があった。本発明は、このような事情を鑑みて案出されたものであり、成長の途中で溶液に原料または添加材を供給することが可能な保持体、結晶製造装置および結晶の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の保持体は、下端に種結晶を保持する保持体であって、上方から側面にかけて貫通した貫通孔を有しており、前記貫通孔の内壁は、材料補給可能な供給路を構成する。
本発明の結晶製造装置は、坩堝と、下端部が前記坩堝内に配置される、上記の保持体と、前記下端に配された炭化珪素の種結晶と、を備え、前記開口は、前記下端部に位置している。
本発明の結晶の製造方法は、坩堝と、前記坩堝内に配置された、炭素を含む珪素の溶液と、上記の保持体と、炭化珪素からなる前記種結晶と、を準備する準備工程と、前記下端に前記種結晶を保持する保持工程と、前記種結晶を前記坩堝内に保持された前記溶液に接触させる接触工程と、前記溶液に含まれる元素の原料または添加材を前記保持体の前記貫通孔から前記溶液に供給する供給工程と、を有する。
本発明の保持体を用いることにより、貫通孔を通して原料または添加材を、結晶の成長途中であっても溶液に供給することができる。そのため、溶液に原料を添加した場合には、長時間にわたって安定的に結晶成長を行なうことができる。その結果、結晶を長尺化または大口径化することができる。
本発明の結晶の製造方法に用いる結晶製造装置の一例を示す断面図である。 本発明の一実施形態に係る保持体の斜視図である。 図2に示す保持体の断面図を示す図であり、図2のA−A’線で切断した断面に相当する。 本発明の一実施形態の変形例に係る保持体の断面図であり、図2のA−A’線で切断したときの断面に相当する。 図4に示す保持体の変形例であり、図2のA−A’線で切断したときの断面に相当する。 本発明の一実施形態に係る結晶の製造方法の一工程を示す断面図であり、図2のA−A’線で切断したときの断面に相当する。 本発明の一実施形態に係る結晶の製造方法の一工程を示す断面図であり、図2のA−A’線で切断したときの断面に相当する。 本発明の一実施形態に係る結晶の製造方法の一工程を示す断面図であり、図2のA−A’線で切断したときの断面に相当する。
<保持体および結晶製造装置>
本発明の一実施形態に係る保持体および結晶製造装置について、図面を参照しつつ説明する。結晶製造装置1は、主に保持体2、種結晶3および溶液4によって構成されている。以下に、図1を参照しつつ、結晶製造装置1の概略を説明する。
坩堝5は、坩堝容器6の内部に配置されている。坩堝容器6は、坩堝5を保持する機能を担っている。この坩堝容器6と坩堝5との間には、保温材7が配置されている。この保温材7は、坩堝5の周囲を囲んでいる。保温材7は、坩堝5からの放熱を抑制し、坩堝5の温度を安定して保つことに寄与している。
坩堝5は、製造する炭化珪素の結晶の原料を内部で融解させる器としての機能を担っている。本例では、坩堝5の中で、結晶の原料(炭素および珪素)を融解させて、溶液4として貯留する。本実施形態では、溶液成長法を採用しており、この坩堝5の内部で熱的平衡状態を作り出すことによって結晶の製造を行なう。
坩堝5は、回転および停止が可能となっている。坩堝5の回転は、坩堝5のみを回転させてもよいし、坩堝5と保温材7を回転させてもよいし、坩堝5、保温材7および坩堝容器6を回転させてもよい。坩堝5は、D1、D2方向に回転されるようになっている。具体的に、坩堝5は、D3、D4方向に平面視したときに、坩堝5の重心が回転中心となるように回転するようになっている。
坩堝5は、D3からD4方向にみたときに、時計回り(D1方向)または反時計回り(D2方向)することができるようになっている。坩堝5は、時計回りまたは反時計回りに、例えば500rpm以下となるように回転させることができる。
坩堝5は、加熱機構8によって、熱が加えられる。本実施形態の加熱機構8は、電磁波によって坩堝5を加熱する電磁加熱方式を採用しており、コイル9および交流電源10を含んで構成されている。坩堝5は、例えば炭素(黒鉛)によって構成されている。
坩堝5の内部には、溶液4が配置されている。溶液4は、炭素(溶質)が珪素(溶媒)に溶けて構成されている。溶質となる元素の溶解度は、溶媒となる元素の温度が高くなるほど大きくなる。溶液4の温度は、例えば1300℃以上2500℃以下となるように設定されている。このため、高温下の溶媒に多くの溶質を溶解させた溶液4が冷えると、熱的な平衡を境に溶質が析出する。本実施形態における溶液成長法では、この熱的平衡による析出を利用して、種結晶3の下面3Bに炭化珪素の結晶を成長させている。なお、溶液4には、
クロム、ガリウム、インジウムまたはセリウムなどの添加材を供給してもよい。また、以下の説明において、種結晶3の下面3Bに成長した成長結晶が存在する場合には、「種結晶3」には種結晶3および成長結晶を含むものである。
本実施形態では、坩堝5を、次のようにして加熱している。まず、交流電源10を用いてコイル9に電流を流して、保温材7を含む空間に電磁場を発生させる。この電磁場によって、坩堝5に誘導電流が流れる。坩堝5に流れた誘導電流は、電気抵抗によるジュール発熱、およびヒステリシス損失による発熱などの種々の損失によって、熱エネルギに変換される。つまり、坩堝5は、誘導電流の熱損失によって加熱される。なお、この電磁場によって溶液4自体に誘導電流を流して発熱させてもよい。このように溶液4自体を発熱させる場合は、坩堝5自体を発熱させなくてもよい。
また本実施形態では、加熱機構8として電磁加熱方式を採用しているが、他の方式を用いて加熱してもよい。加熱機構8は、例えば、カーボンなどの発熱抵抗体で生じた熱を伝熱する方式などの他の方式を採用することができる。この伝熱方式の加熱機構を採用する場合は、(坩堝5と保温材7との間に)発熱抵抗体が配置される。
種結晶3は、搬送機構11により上下方向に移動させられることにより溶液4に接触させられる。搬送機構11は、溶液4の中から製造した結晶を搬出する機能も担っている。搬送機構11は、保持体2および動力源12を含んで構成されている。保持体2によって、種結晶3および種結晶3の下面3Bに製造した結晶の搬入出が行なわれる。種結晶3は、保持体2の下端面2Bに取り付けられており、この保持体2は、動力源12によって上下方向(D3、D4方向)の移動が制御される。本実施形態では、D4方向が物理空間上の下方向を意味し、D3方向が物理空間上の上方向を意味する。
種結晶3は、保持体2の下端面2Bに接着材等を介して固定されている。保持体2は、下端面2Bを有していればよく、下端面2Bは、平面視形状が四角形状などの多角形状、または円形状などの形状をなしている。
保持体2の下端面2Bは、種結晶3の上面3Aの面積以上の面積でもよいし、種結晶3の上面3Aの面積よりも小さい面積でもよい。下端面2Bが、上面3Aの面積以上の面積の場合、上面3A全体を固定することができるため、種結晶3が保持体2から剥離されることを抑制することができる。一方、下端面2Bが、上面3Aの面積よりも小さい面積の場合、種結晶3が接着材による熱収縮などの影響を受けにくくすることができる。本実施形態では、下端面2Bが、種結晶3の上面3Aの面積以上の面積をもつ場合である。保持体2の幅は、例えば3cm以上10cm以下となるように設けられている。
保持体2は、回転および停止が可能となっている。保持体2が回転および停止されることによって、保持体2の下端面2Bに固定された種結晶3が回転および停止されることとなる。種結晶3は、D1、D2方向に回転されるようになっている。具体的に、種結晶3は、D3、D4方向に平面視したときに重心が、回転中心となるように回転するようになっている。種結晶3は、D3からD4方向にみたときに、時計回りまたは反時計回りすることができるようになっている。種結晶3は、時計回りまたは反時計回りに、例えば500
rpm以下となるように回転させることができる。なお、種結晶3および坩堝5は回転していなくてもよいが、本実施形態では種結晶3および坩堝5を回転させて溶液4内で種結晶3に向かう対流を発生させている場合である。
保持体2は、炭素から構成されている。保持体2は、炭素を主成分とする材料によって構成されていればよい。保持体2の炭素は、例えば炭素の多結晶体または炭素を焼成した焼成体などによって構成されている。また保持体2は、円柱状、または四角形状若しくは
六角形状などの多角形状の底面をもつ多角柱などの形状となっている。
保持体2の内部には、貫通孔2aが設けられて、空洞を有している。貫通孔2aは、断面が円形状または多角形状となっている。貫通孔2aの幅は、例えば5mm以上5cm以下となるように設けられている。
貫通孔2aは、上端2Aに位置する上端開口部2A’が、平面視したときに、上端2Aの平面視形状の中心位置と重なるように配置されていてもよい。このように上端開口部2A’を配置することによって、保持体2を回転する際に、回転軸がずれることを抑制することができる。
貫通孔2aは、上端2Aから側面2Cにかけて貫通している。貫通孔2aは、直線的に設けられていてもよいし、途中に屈曲部を有するように設けられていてもよい。本実施形態では、図3に示すように、途中で屈曲している場合である。貫通孔2aは、上端2Aから下方に延びる第1空洞部2a1と、第1空洞部2a1と連続し、側面2Cにおける開口部2C’をもつ第2空洞部2a2を有している。
開口部2C’は、結晶成長の際に、坩堝5の内部に位置するように用いられる。坩堝5内に配置された溶液4の液面に対して開口部2C’が離れるように配置される。具体的に、種結晶3の下面3Bが溶液4に接触した状態において、溶液4の液面に対する開口部2C’の距離は、例えば2cm以上10cm以下となるように設定することができる。
第2空洞部2a2は、下端面2Bに対して、上方に傾斜するように設けられている。このように第2空洞部2a2が傾斜していることにより、後述する通り原料または添加材を貫通孔2aの上端2Aから供給したときに、第2空洞部2a2を自重で下方に滑りやすくすることができる。その結果、上端2Aから供給された原料または添加材を保持体2の開口部2C’から保持体2の外部に排出されやすくすることができる。
コイル9は、導体によって構成され、坩堝5の周囲を囲むように配置されている。交流電源10は、コイル9に交流電流を流すためのものであり、交流電流の周波数が高いものを用いることによって、坩堝5内の設定温度までの加熱時間を短縮することができる。
結晶製造装置1では、加熱機構8の交流電源10と、搬送機構11の動力源12とが制御部13に接続されて制御されている。つまり、この結晶製造装置1は、制御部13によって、溶液4の加熱および温度制御と、種結晶3の搬入出とが連動して制御されている。制御部13は、中央演算処理装置およびメモリなどの記憶装置を含んで構成されており、例えば公知のコンピュータからなる。
本実施形態では、保持体2を用いて結晶成長を行なう場合、貫通孔2aの開口部2C’が坩堝5内に位置することになり、坩堝5の外に位置する上端2Aから原料または添加材を溶液4に供給することができる。そのため、長時間にわたって結晶の成長を行なう場合に、溶液4の炭素の濃度または添加材の濃度が変化しても、成長の途中で炭素または添加材などを容易に供給することができる。すなわち、成長の途中で溶液4の状態を調整することができる。
また、本実施形態では、原料または添加材を供給する貫通孔2aを保持体2の内部に配置した同軸構造をなしているため、図1に示すように、保持体2と坩堝5の周囲を坩堝容器6で覆うことができる。そのため、原料または添加材を供給するために新たに開口部を設ける必要がなく、溶液4の温度を維持しやすくすることができる。
(保持体の変形例1)
保持体2は、図4に示すように、開口部2C’と下端面2Bの間に配置された、種結晶3のよりも大きい外縁をもつ調整板14をさらに有していてもよい。調整板14は、平面透視して、種結晶3の外縁よりも大きい外縁をもつように設けられている。本変形例では、調整板14が保持体2の外周を一周取り囲むように設けられている。なお、開口部2C’付近のみに調整板14が設けられていてもよい。
調整板14を有する場合には上端2Aから原料または添加材が供給されたときに、原料または添加材が、貫通孔2aを通り調整板14上をつたって溶液4に供給されることとなる。調整板14が種結晶3の外縁よりも大きくなっていることから、原料または添加材は種結晶3の外縁から離れた位置に供給される。そのため、原料または添加材が溶液4に供給された際に、種結晶3付近の溶液4の温度変化を小さくすることができる。その結果、種結晶3に雑晶が付着したり、種結晶3の周囲に雑晶が成長したりすることを抑制することができ、結晶を長時間成長することができる。
また、このように調整板14が保持体2に配置されていることにより、溶液4からの蒸気を上方に移動しにくくすることができる。さらに、溶液4が1400℃以上の熱を有していることから、溶液4からの輻射熱を調整板14によって溶液4側に反射することができる。その結果、種結晶3の周辺に位置する溶液4の温度が下がりにくくすることができる。
また、調整板14は、図5に示すように、下端面2Bに対して下方に傾斜していてもよい。本実施形態は、調整板14が保持体2の側面2Cに対して45°傾斜している場合である。なお、調整板14は、側面2Cに対して、40°以上70°以下となるように傾斜させることができる。このように調整板14を傾斜させることにより、開口部2C’から出た原料または添加材を調整板14上で滞留しにくくすることができる。その結果、貫通孔2aに供給した原料または添加材が、溶液4に供給されやすくすることができる。
<結晶の製造方法>
本発明の実施形態に係る結晶の製造方法について説明する。本実施形態の結晶の製造方法は、準備工程、保持工程、接触工程および供給工程を有している。
炭化珪素からなる結晶は、例えば結晶製造装置1によって製造することができる。結晶製造装置1は、主に、坩堝5、坩堝容器6、加熱機構8、搬送機構11および制御部13を有して構成されている。本実施形態の結晶の製造方法は、この結晶製造装置1で溶液成長法を用いて結晶の製造を行なうものである。
(準備工程および保持工程)
坩堝5と、坩堝5内に配置された、炭素を含む珪素の溶液4とを準備する。具体的には、珪素の原料となる珪素粒子と、炭素の原料となる炭素粒子とを坩堝5内に配置し、珪素の融点(約1414℃)以上に加熱する。坩堝5内に、炭素を含む珪素の溶液4を配置することができる。なお、溶液4に含まれる炭素は、黒鉛からなる坩堝5から供給してもよい。次に、上述した保持体2を準備し、当該保持体2の下端面2Bに炭化珪素からなる種結晶3を固定して保持する。種結晶3の固定には、接着材を用いて行なう。
(接触工程)
その後、種結晶3の下面3Bを溶液4に接触させる。種結晶3は、保持体2を上下(D3、D4)方向に移動させることにより溶液4の液面に対する高さを変えて、溶液4に接触させる。なお、本実施形態では、溶液4および種結晶3を接触させる手段として、種結晶3を移動させる手段を説明するが、坩堝5を移動させる手段、または種結晶3および坩堝5を移動させる手段を用いてもよい。
種結晶3は、下面3Bの少なくとも一部が溶液4に接触していればよい。そのため、下面3B全体が接触するようにしてもよいし、種結晶3の側面または上面3Aが浸かるように溶液4に接触させてもよい。種結晶3の側面または上面3Aが浸かるように溶液4に入れた場合、種結晶3の下面3B全体を確実に溶液4に接触させることができ、生産性を向上させることができる。
溶液4の温度は、例えば1400℃以上2000℃以下となるように設定されている。溶液4の温度が変動する場合には、溶液4の温度として、例えば、一定時間において、複数回測定した温度を平均した温度を用いることができる。溶液4の温度は、例えば熱電対で直接的に測定する方法、またはレーザーを用いて間接的に測定する方法などを用いることができる。
種結晶3の下面3Bを溶液4に接触させることにより、下面3Bとその付近の溶液4との間に温度差ができるため、下面3Bに炭化珪素の結晶の成長を開始することができる。種結晶3の下面3Bを接触させた後、種結晶3を上(D3)方向に少しずつ引き上げることによって、下面3Bに成長した結晶を厚み方向に長尺化することができる。種結晶3を引き上げる速度は、例えば50μm/h以上に設定することができる。
種結晶3の下面3Bに結晶が成長しているときは、溶液4内の炭素が結晶および雑晶で消費されることとなるが、炭素からなる坩堝5の内壁の一部が溶液4で溶解されて溶液4の炭素濃度がある程度維持されることになる。そのため、結晶を連続的に成長させることができる。
(供給工程)
その後、保持体2を用いて、原料(炭素または珪素)または添加材を溶液4に供給する。添加材として、例えばガリウム、インジウムまたはセリウムなどを用いることができる。原料または添加材は、粒子状のもの、または液体状のものを用いることができる。供給する量は、結晶成長時間または成長した結晶の厚み等を考慮して定めればよい。
原料または添加材は、保持体2の上端2Aから貫通孔2aを通して溶液4に供給される。具体的に、図6〜8を参照しつつ説明する。図6〜8に示す実施形態では、貫通孔2aが直角状に屈曲している場合である。図6〜8に示すように、貫通孔2aの上端2Aから原料15を添加し(図6)、屈曲部または開口部2C’付近で原料15が溶解された後(図7)、この溶解原料15’が開口部2C’から溶液4に供給されることとなる(図8)。
本実施形態の結晶の製造方法では、貫通孔2aの開口部2C’付近が1400℃以上となっており、原料15として珪素を供給した際に当該珪素が溶解される場合について説明したが、原料15は必ずしも貫通孔2a内で溶解される必要はない。このように貫通孔2aで原料または添加材が溶解されて溶液4に供給される場合は、溶液4に固体で供給される場合と比較して、溶液4の温度の低下を抑制することができる。
本実施形態の結晶の製造方法では、内部に貫通孔2aを有する保持体2を用いることから、結晶成長の途中で原料または添加材を溶液4に供給することができる。そのため、保持体2および坩堝5の周りを坩堝容器6および保温材7で取り囲むことができるため、供給工程において溶液4の温度変化を抑制することができる。すなわち、溶液4の温度変化を抑制しつつ、結晶成長の途中で溶液4に含まれる材料の濃度を調整することができる。その結果、溶液4に雑晶が成長または発生することを抑制しつつ、長時間にわたって結晶成長させることができる。
従来の結晶の製造方法では、原料または添加材を供給するために、坩堝容器等に孔をあけておく必要があり、原料または添加材を供給する際に溶液の温度が下がってしまうことから、溶液内に雑晶が成長または発生していた。そのため、原料または添加材を供給しても長時間にわたって結晶成長させることは難しかった。
(結晶の製造方法の変形例1)
供給工程において、溶液4の粘度を小さくする材料であるガリウムなどを添加材として供給してもよい。従来の結晶の製造方法では、結晶成長が終了して保持体を引き上げた際に、溶液の液滴が種結晶の下面に付着し、その液滴が乾燥するときの熱応力が成長結晶との界面付近に発生することにより、成長結晶が割れたり、転位が新たに発生したりすることがあった。
そのため、結晶成長を終了するために種結晶3を引き上げる前に、溶液4の粘度を小さくする材料を供給することにより、種結晶3の下面3Bに溶液4の液滴が付着することを抑制することができる。ガリウムは、例えば溶液4に対して1重量%以上10重量%以下となるように供給することができる。
また、溶液4の粘度を小さくするために、珪素を供給してもよい。珪素を溶液4に供給することにより、溶液4の珪素の比率を高くして溶液4の粘度を小さくすることができる。珪素の供給量は、珪素を供給した後の溶液4に含まれる珪素が85重量%以上となるように設定すればよい。珪素を供給して溶液4の粘度を小さくする場合は、成長させる結晶に不純物が含まれにくくすることができる。
(結晶の製造方法の変形例2)
供給工程の後、種結晶3の下面3Bの溶液4から離し、溶液4の温度を珪素の融点以下に降下を開始した後、下面3Bを溶液4に再度接触させる工程をさらに有していてもよい。
具体的には、溶液4の粘度を下げる材料を供給した後、種結晶3を溶液4から離す。その後、溶液4の温度を珪素の融点以下に降下させて、溶液4を液体から固体へ相変換する。このように相変換を行なっている間または相変換後に、種結晶3を再度溶液4に接触させることにより、下面3Bに液滴が付着していた場合でも、この液滴を溶液4側に付着させることができる。これにより下面3Bに付着した液滴の量を少なくすることができ、その結果、液滴による熱応力を小さくすることができる。
種結晶3を溶液4から離す手段としては、種結晶3の下面3Bが溶液4の液面から離れるように、種結晶3を上(D3)方向に引き上げる。種結晶3を溶液4から離した後、液面から一定の高さとなる位置で維持される。液面からの高さは、下面3Bが溶液4と接触しない位置であればよく、例えば1mm以上3cm以下となるように設定することができる。溶液4に近いほど溶液4の蒸気が下面3Bに当たりやすくなるため、下面3Bの表面温度が下がることを抑制することができ、下面3Bに雑晶が発生しにくくすることができる。
また供給工程の前に種結晶3の下面3Bを溶液4から離す工程を有していてもよい。このように供給工程の前に溶液4を離すことにより、供給工程の後、原料または添加材が溶液4内に混ざる時間の成長を中止することができる。種結晶3を溶液4から離している時間は、原料を供給する場合には溶液4の炭素の濃度が飽和濃度となるまでの時間に設定してもよいし、炭素の濃度が特定の濃度となるまでの時間に設定してもよい。溶液4の炭素の濃度を飽和濃度にする場合には、種結晶3を溶液4から離している時間を十分長くとればよく、時間を容易に設定することができるため、生産性を向上させることができる。
(結晶の製造方法の変形例3)
供給工程の後、溶液4の温度を上昇させるために加熱する加熱工程を有してもよい。このような工程を有していることにより、原料または添加材を溶液4に供給した場合に、溶液4の温度が降下するのを抑制することができる。また、溶液4の溶解度を高くすることができるので、原料または添加材が溶解されやすくすることができる。
加熱工程は、溶液4の温度を接触工程における温度よりも高く且つ珪素の沸点(2355℃)よりも低くする。溶液4を上昇させる温度としては、接触工程における溶液4の温度に対して、例えば40℃以上150℃以下とすることができる。溶液4の温度を上昇させる方法
としては、コイル9に流す電流を大きくして、坩堝5を加熱する電磁波を強くする方法を用いることができる。
溶液4の温度は、徐々に高くしていってもよいし、急激に高くしてもよい。溶液4の温度を徐々に高くしていく場合には、例えば5℃/h以上30℃/h以下となるように設定することができる。このように徐々に溶液4の温度を高くしていく場合、坩堝5と溶液4との間の温度差が小さい状態で溶液4の温度を高くすることができるため、坩堝5と溶液4との界面付近における溶液4の蒸発を抑制することができる。
1 結晶製造装置
2 保持体
2a 貫通孔
2a1 第1空洞部
2a2 第2空洞部
2A 上端
2A’ 上端開口部
2B 下端面
2C 側面
2C’ 開口部
3 種結晶
4 溶液
5 坩堝
6 坩堝容器
7 保温材
8 加熱機構
9 コイル
10 交流電源
11 搬送機構
12 動力源
13 制御部
14 調整板
15 原料
15’ 溶解原料

Claims (9)

  1. 下端に種結晶を保持する保持体であって、
    上方から側面にかけて貫通した貫通孔を有しており、
    前記貫通孔の内壁は、材料補給可能な供給路を構成する、保持体(但し、前記保持体が、種結晶固定軸と、前記種結晶固定軸を貫通し、別部材であるシリコン原料供給とを有する場合を除く)。
  2. 下端に種結晶を保持する保持体であって、
    上方から側面にかけて貫通した貫通孔を有しており、前記貫通孔は空洞である、保持体(但し、前記保持体が、種結晶固定軸と、前記種結晶固定軸を貫通し、別部材であるシリコン原料供給とを有する場合を除く)。
  3. 下端に種結晶を保持する保持体であって、
    上方から側面にかけて貫通した貫通孔を有しており、回転可能である、保持体(但し、前記保持体が、種結晶固定軸と、前記種結晶固定軸を貫通し、別部材であるシリコン原料供給とを有する場合を除く)。
  4. 下端に種結晶を保持する保持体であって、
    上方から側面にかけて貫通するとともに、上下方向に対して傾斜した傾斜部を含む貫通孔を有した、保持体(但し、前記保持体が、種結晶固定軸と、前記種結晶固定軸を貫通し、別部材であるシリコン原料供給とを有する場合を除く)。
  5. 下端に種結晶を保持する保持体であって、
    上方から側面にかけて貫通し、前記側面に配された開口と、上下方向に対して傾斜した傾斜部を含む貫通孔を有した保持体(但し、前記開口から、前記貫通孔が延在するように別部材が配されている場合を除く)。
  6. 前記保持体の側面に位置した前記貫通孔の開口と前記下端との間に配された板状部材をさらに有している、請求項1〜5のいずれかに記載の保持体。
  7. 前記保持体は、炭素から構成されている、請求項1〜6のいずれかに記載の保持体。
  8. 坩堝と、
    下端部が前記坩堝内に配置される、請求項1〜7のいずれかに記載の保持体と、
    前記下端に配された炭化珪素の種結晶と、を備え、
    前記開口は、前記下端部に位置している、結晶製造装置。
  9. 坩堝と、前記坩堝内に配置された、炭素を含む珪素の溶液と、請求項1〜8のいずれかに記載の保持体と、炭化珪素からなる前記種結晶と、を準備する準備工程と、
    前記下端に前記種結晶を保持する保持工程と、
    前記種結晶を前記坩堝内に保持された前記溶液に接触させる接触工程と、
    前記溶液に含まれる元素の原料または添加材を前記保持体の前記貫通孔から前記溶液に供給する供給工程と、を有する結晶の製造方法。
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