以下、図面を参照しつつ、画像形成装置および画像形成方法について説明する。ただし、本発明は図面または以下に記載される実施形態には限定されないことを理解されたい。
図1は、プリンタ1の概略構成を説明するための図である。なお、図1では、プリンタ1が備える各構成要素の内で、説明のために必要な部分のみを示し、その他の構成要素については省略している。
プリンタ1(画像形成装置の一例)は、ヘッドに対してロール状の記録用紙(記録媒体の一例)を往復動させて記録用紙の同一紙面上に例えばイエロー、マゼンタおよびシアンの複数色を順次転写することにより画像を形成する熱転写プリンタである。以下では、画像形成のことを「印画」ともいう。
プリンタ1は、ロール状の記録用紙10をロール紙ホルダ2に保持しておき、このロール紙ホルダ2からほどかれた記録用紙10の記録面上に画像を形成する。ロール状の記録用紙10をロール紙ホルダ2に保持させるには、例えば、ロール状の記録用紙10が有する中心軸をロール紙ホルダ2によって回転自在に支持させる。これによって、記録用紙10は、ロール紙ホルダ2に回転可能に収納される。
画像形成は、インクリボン4(転写媒体の一例)を記録用紙10の記録面に当接させながら、ヘッド3によって所定位置にインクを記録することによって行われる。その際は、インクリボン4と記録用紙10を重ねて移動させて、ヘッド3とプラテンローラ9の間に通過させる。ヘッド3は、プラテンローラ9に対して移動可能に構成され、画像形成時にプラテンローラ9に押圧されて接触する。プリンタ1は、ヘッド3を構成する発熱体を所定のパターンで発熱させて、インクリボン4から記録用紙10の上にインクを転写することにより、画像を形成する。
カラー画像を形成するには、例えばイエロー、マゼンタおよびシアン(転写材料の一例)のインク領域を、インクリボン4の巻取り方向に沿ってインクリボン4に順に用意しておき、インクリボン4を巻き取りながらインク領域をヘッド3に通過させる動作を、色毎に繰り返す。インクリボン4は、供給側リボンローラ4Aから供給され、巻取側リボンローラ4Bに巻き取られる。以下、これらのローラを単に、「リボンローラ4A,4B」ともいう。インクリボン4は、供給側リボンローラ4Aとヘッド3の間にあるリボンガイドローラ15や、ヘッド3と一体に構成されたリボンガイド部16(図2(A)を参照)によって案内される。
記録用紙10は、各色の転写時に、先端が一旦ヘッド3の位置を通過し、画像を形成する長さに応じて巻きほどかれた後で巻き戻される。ヘッド3は、この記録用紙10を巻き戻す過程において画像を形成する。プリンタ1は、画像形成の際、記録用紙10の同一の画像形成領域に各色の画像を重ねて転写するために、記録用紙10を往復動させる。この記録用紙10の往復動は、記録用紙10の搬送経路に設けられたグリップローラ17とピンチローラ18により行われる。これらのローラにより記録用紙10の搬送方向に応じてロール紙ホルダ2の回転方向を変えて、記録用紙10の巻きほどきと巻戻しが繰り返される。画像形成が行われないときには、グリップローラ17に対してピンチローラ18が離間して、記録用紙10が解放される。一方、画像形成時には、グリップローラ17とピンチローラ18が、記録用紙10を挟んで搬送する。このようにして、プリンタ1は、記録用紙10をヘッド3に対して往復動させ、記録用紙10の同一の画像形成領域に対して複数回の転写を繰り返して行う。
また、インクリボン4は、イエロー、マゼンタおよびシアンのインク領域に加えてオーバーコート層(転写材料、保護材の一例)を備える。全色の転写が終了した記録用紙10の記録面上は、このオーバーコート層で覆われることによって保護される。なお、以下では、インクリボン4にはイエロー、マゼンタ、シアンおよびオーバーコートの各領域がこの順序で長手方向に繰り返し配置されているものとして説明するが、イエロー、マゼンタおよびシアンはこれとは異なる順序で繰り返し配置されていてもよい。ただし、オーバーコートは、全色が転写された記録用紙10上を覆うものであるため、4つの領域の最後に位置する。
また、プリンタ1は、排出経路13上であって排出口6の直前の位置に記録用紙切断部5を備える。画像形成が終了した記録用紙10は、ヘッド3の部分を通過した後、排出経路13を通過し、プリンタ1の筐体7に設けた排出口6からプリンタ外部に排出される。記録用紙切断部5は、排出口6から外部に送り出された記録用紙10を、排出口6の手前の位置で切断する。切断された記録用紙10は、排出口6から取り出される。
さらにプリンタ1は、制御部30、データメモリ31、記録用紙駆動部32、ヘッド駆動部33、インクリボン駆動部34、切断制御部35、通信インタフェース36およびタイマ37を備える。
制御部30は、インクリボン4および記録用紙10の搬送、ヘッド3による転写などの、プリンタ1の動作を制御する。制御部30は、CPUやRAM、ROMなどを含み、ROMに予め記憶されたプログラムをRAMにロードして実行することにより、後述する画像形成処理を実行する。データメモリ31は、通信インタフェース36を介してホストコンピュータから受信された画像データを蓄積する記憶領域である。
記録用紙駆動部32は、グリップローラ17とピンチローラ18で記録用紙10を挟んで記録用紙10を駆動する。記録用紙駆動部32は、グリップローラ17およびロール紙ホルダ2を回転駆動することによって記録用紙10を送り出す。また記録用紙駆動部32は、駆動方向を反転させてグリップローラ17およびロール紙ホルダ2を回転駆動することによって、送り出された記録用紙10を巻き戻す。プリンタ1は、送り出された記録用紙10が巻き戻されるときに、記録用紙10上に画像を形成する。
ヘッド駆動部33は、画像データに基づいてヘッド3を駆動し、記録用紙10上に画像を形成する。ヘッド3には、昇華型プリンタ、熱溶融型プリンタなどの各種の画像形成方式に応じた機構が用いられる。プリンタ1では、記録媒体上に画像を形成する画像形成部の一例として、ヘッド3や、プラテンローラ9、ヘッド駆動部33が設けられている。
インクリボン駆動部34は、供給側リボンローラ4Aと巻取側リボンローラ4Bを駆動し、ヘッド3の駆動と同期してインクリボン4をヘッド3に対して移動させる。インクリボン駆動部34はインクリボン4の巻戻し機構も備えており、巻取り方向(順方向)とは逆方向である巻戻し方向にインクリボン4を駆動可能である。プリンタ1では、帯状の転写媒体を搬送する搬送部の一例として、リボンローラ4A,4Bや、インクリボン駆動部34が設けられている。
切断制御部35は、記録用紙10が排出経路13を経由し排出口6から外部に排出されるときに、記録用紙10の記録部分の後端を切断して1枚ずつに切り分けるように記録用紙切断部5を制御する。
通信インタフェース36は、通信ケーブルを介してホストコンピュータとの間でデータを送受信する。タイマ37は、例えば、インクリボン4のインク領域より小さいサイズの2枚の画像データをホストコンピュータから予め定められた時間内に続けて受信した場合に、その2枚の画像データを同じインク領域内に割り付けて画像形成する処理を行うために、経過時間を計測する。
図2(A)および図2(B)は、図1のヘッド3の周辺を拡大した図である。図2(A)は、1つの色についての転写が始まるときのヘッド3と記録用紙10の位置関係を示す。一方、図2(B)は、1つの色についての転写が終わるときのヘッド3と記録用紙10の位置関係を示す。図2(A)では、画像形成中のヘッド3の位置を実線で、画像形成していないときのヘッド3の位置を破線で、それぞれを1つの図に重ねて表示している。
図2(A)に示すように、1つの色についての転写が始まるときには、まず、記録用紙10上の画像形成領域の長さに応じて記録用紙10が矢印A方向に送り出され、記録用紙10の端部10Eが図中左側に来る。例えば、イエローの転写が始まるときには、ヘッド3が画像を形成する位置Phに、イエローのインク領域の先頭と記録用紙10上の画像形成領域の先頭とが位置合わせされる。以下では、インクリボン4の搬送経路上でヘッド3が画像を形成する位置のことを、「ヘッド位置Ph」という。ヘッド位置Phにおいてインクリボン4と記録用紙10が重なった状態で、記録用紙10は矢印B方向に、インクリボン4は矢印C方向にそれぞれ搬送されながら、ヘッド3により記録用紙10上にイエローの転写が行われる。
イエローの転写が終わり図2(B)に示す状態になると、記録用紙10が再び矢印A方向に送り出される。これにより、ヘッド3と記録用紙10の位置関係は、再び図2(A)と同じ状態になる。そして、次のマゼンタのインク領域の先頭と記録用紙10上の画像形成領域の先頭とがヘッド位置Phに位置合わせされ、マゼンタの転写が行われる。このように、ヘッド3は、インクリボン4が矢印C方向(順方向、巻取り方向)に搬送されるときに、イエロー、マゼンタ、シアンおよびオーバーコートの1組の領域を使用してその領域ごとに各色のインクを転写することにより、記録用紙10上に画像を形成する。その後、記録用紙10は矢印A方向に送られ、記録用紙切断部5により画像後端で切断されて排出される。
インクリボン4は、巻取側リボンローラ4Bに巻き取られるときに矢印C方向に搬送され、供給側リボンローラ4Aに巻き戻されるときに矢印D方向に搬送される。矢印C方向と矢印D方向は、それぞれ巻取り方向と巻戻し方向に対応する。インクリボン4については、供給側リボンローラ4Aから巻取側リボンローラ4Bに向かう矢印C方向が、上流から下流への向きになる。これは、記録用紙10がヘッド3やプラテンローラ9を通って、排出経路13を経て排出される矢印A方向とは逆向きである。
プリンタ1では、イエロー、マゼンタ、シアンおよびオーバーコートが順次塗布されたインクリボン4の各インク領域の境界を検出するためのリボンセンサ8が、ヘッド3に対しインクリボン4の巻取り方向の下流側に設けられている。リボンセンサは、各色の転写が終わってインクリボン4がさらに巻き取られるときに、次の領域の境界を検出する。以下では、各色のインク領域やオーバーコートの領域(転写材料領域の一例)のことを「パネル」といい、各パネルの境界のことを「パネル境界」という。また、符号Psは、インクリボン4の搬送経路上でリボンセンサ8が設けられている位置を示す。
なお、リボンセンサは、各パネル境界を検出できる範囲内であればどこに配置してもよい。例えば、ヘッド3に対しインクリボン4の巻取り方向の上流側にリボンセンサを配置してもよい。
プリンタ1では、リボンセンサ8として透過型カラーセンサが用いられる。透過型カラーセンサは、インクリボン4の搬送経路を挟んで対向する位置にそれぞれ設けられた投光側リボンセンサと受光側リボンセンサで構成される。なお、投光側リボンセンサと受光側リボンセンサを互いに逆の位置に配置してもよい。
また、図示しないが、リボンローラ4A,4Bのどちらか一方か、または両方は、インクリボン4の移送量を検出するエンコーダを備えている。インクリボン駆動部34は、そのエンコーダのパルス数や、リボンローラ4A,4Bのどちらか一方かまたは両方の巻き径、リボンセンサ8の検出結果などに基づいて、ヘッド3のヘッド位置Phに各パネルの先頭を位置決めするために必要な送り量を算出する。インクリボン駆動部34は、その送り量に応じてインクリボン4を搬送することにより、ヘッド位置Phに各パネルの先頭を位置決めする。
さらに、リボンローラ4A,4Bのどちらか一方には、インクリボン4の特性に関するデータ、累計使用量(残使用可能量)などの情報を記憶するRFIDタグが内蔵されている。このRFIDタグの情報は、プリンタ1の印画条件(ヘッド3の通電条件)を設定するために用いられる。
記録用紙10上に画像形成できる長さは、インクリボン4における各色のパネルの長さに依存する。プリンタ1は、例えばL版、2L版の写真に相当する画像を形成する場合には、それぞれ、L版、2L版の寸法に応じた長さのパネルを有するインクリボン4を使用する。ただし、プリンタ1は、インクリボン4の各パネルの長さより短い画像も形成することができる。例えば、2L版のインクリボンが取り付けられているときには、プリンタ1は、2L版の他、L版の画像を形成することができる。
以下では、例えば、各パネルのサイズが6×8インチ(152×203mm)のインクリボン4を使用して、サイズが6×8インチか、またはその半分である6×4インチ(152×101mm)の画像を形成する場合を説明する。ただし、サイズはこれらに限定されず、面積が2倍以上異なる2つのサイズの組について、以下の動作例は適用可能である。例えば、2つのサイズの組は、A5サイズ(148×210mm)とA6サイズ(105×148mm)や、2Lサイズ(127×178mm)とLサイズ(89×127mm)などでもよい。なお、以下では、サイズが6×8インチであることを「6×8サイズ」といい、サイズが6×4インチであることを「6×4サイズ」という。6×8サイズは第1の大きさの一例であり、6×4サイズは第1の大きさの半分以下である第2の大きさの一例である。
ホストコンピュータから6×8サイズの画像形成を指示されたときには、プリンタ1は、イエロー、マゼンタ、シアンおよびオーバーコートのそれぞれについて、6×8サイズのパネルの全面を使用して、記録用紙10上にその画像を形成する。
一方、ホストコンピュータから6×4サイズの画像形成を指示されたときには、プリンタ1は、イエロー、マゼンタ、シアンおよびオーバーコートのそれぞれについて、インクリボン4の巻取り方向(順方向)に対する6×8サイズのパネルの前半部分または後半部分を使用して、記録用紙10上にその画像を形成する。その際、プリンタ1は、先の6×4サイズの画像形成により半分未使用となったパネルがない場合には新たなパネルを使用し、半分未使用のパネルがある場合にはその未使用部分を使用する。特に、プリンタ1は、1組の未使用のパネルを使用して6×4サイズの画像を形成するときに、その1組のうち最初と最後に転写されるイエローとオーバーコートのパネルについては順方向に対する上流側(前半部分)を部分使用し、その1組のうち最初と最後以外に転写されるマゼンタとシアンのパネルについては順方向に対する下流側(後半部分)を部分使用する。また、プリンタ1は、部分使用された1組のパネルがある状態で6×4サイズの画像を新たに形成するときに、そのイエローとオーバーコートのパネルの下流側(後半部分)を再使用し、そのマゼンタとシアンのパネルの上流側(前半部分)を再使用する。
プリンタ1は、未使用のパネルを使用して6×4サイズの画像を形成したときには、そのパネルを次の6×4サイズの画像形成に再使用できることを、例えばリボンローラ4A,4Bのどちらか一方に内蔵されたRFIDタグに記憶しておく。そして、プリンタ1の制御部30は、その情報とホストコンピュータから指示された印画対象の画像サイズとから、新たなパネルを使用するか、またはインクリボン4を巻き戻して半分未使用のパネルを再使用するかを判定する。
新たなパネルを使用すると制御部30が判定した場合には、インクリボン駆動部34は、新たなイエローのパネルの先頭をヘッド位置Phに位置合わせする。一方、半分未使用のパネルを再使用すると制御部30が判定した場合には、インクリボン駆動部34は、半分未使用のイエローのパネルにおける未使用部分の先頭位置がヘッド位置Phに来るまで、インクリボン4の巻戻し機構によりインクリボン4を巻き戻す。
図3(A)〜図3(F)は、比較例のプリンタで6×4サイズの印画を繰り返すときの各パネルの使用順序を示す図である。また、図4(A)〜図4(F)は、プリンタ1で6×4サイズの印画を繰り返すときの各パネルの使用順序を示す図である。比較例のプリンタは、6×4サイズの印画時における各パネルの使用順序以外の点ではプリンタ1と同一の構成を有する。以下では、比較例のプリンタとの比較により、6×4サイズの印画を繰り返すときのプリンタ1の動作について説明する。
各プリンタには、6×8サイズのインクリボン4がセットされているとする。図3(A)〜図4(F)の各図は、6×8サイズのインクリボン4のうち、イエローY1、マゼンタM1、シアンC1およびオーバーコートOP1の1組のパネルと、次の組のイエローY2のパネルを示す。各図の上側および下側の図示しない範囲にも、イエロー、マゼンタ、シアンおよびオーバーコートの各パネルがこの順序で繰り返し配置されているとする。なお、各図における下方向はインクリボン4の巻取り方向(順方向、図2(A)の矢印C方向)に、上方向はインクリボン4の巻戻し方向(逆方向、図2(A)の矢印D方向)にそれぞれ相当する。
また、これらの各図では、インクリボン4の右側の矢印で、インクリボン4が搬送されることによる各パネルとヘッド位置Phとの位置関係の変化を示している。このうち、細い矢印は印画を伴わないインクリボン4の搬送に対応し、太い矢印は印画を伴うインクリボン4の搬送に対応する。なお、印画時にはインクリボン4は巻取り方向に搬送されるが、リボンセンサ8がパネル境界を検出して各パネルの先頭をヘッド位置Phに位置決めすることに伴い、パネル境界付近で一部巻戻しが行われる。これに対応して、図3(A)、図3(C)などの各図では、一部区間において、インクリボン4の巻戻しを示す短い上向きの矢印も示している。
比較例のプリンタは、全面未使用のパネルを用いて6×4サイズの印画を行うときには、インクリボン4の巻取り方向(順方向)に対する各パネルの下流側半分を使用し、さらに続けて6×4サイズの印画を行うときには、インクリボン4を巻き戻し、部分使用された各パネルの上流側半分を使用する。順方向に対する上流側半分とは、各図におけるパネルの上側半分に相当し、この部分のことを前半部分ともいう。また、順方向に対する下流側半分とは、各図におけるパネルの下側半分に相当し、この部分のことを後半部分ともいう。
図3(A)は、比較例のプリンタが全面未使用のイエローY1、マゼンタM1、シアンC1およびオーバーコートOP1のパネルを使用して6×4サイズの1回目の印画を行うときの各パネルの状態を示す。このとき、全面未使用だった各パネルは、順方向に対する各パネルの後半部分(1)が使用されて半分未使用のパネルになる。
ヘッド3は、オーバーコートを記録用紙10上に転写するときに、オーバーコート以外の各色インクを転写するときと比べて大きなエネルギーをインクリボン4に印加する。このエネルギーの差は、特に印画物に対してマット仕上げを行うときに大きくなる。これにより、オーバーコートOP1の使用済み部分(1)には、他の色の使用済み部分(1)と比べて大きな熱負荷がかかるため、皺が発生しやすくなる。図3(A)に示す1回目の印画の終了時には、まだオーバーコートOP1の使用済み部分(1)にも、その使用済み部分(1)と次の未使用のイエローY2との境界部分51にも皺は発生していないが、この後インクリボン4を繰り返し往復搬送すると、境界部分51に皺(折れ)が発生し得る。
図3(B)は、比較例のプリンタが6×4サイズの1回目の印画後にインクリボン4を巻き戻すときの各パネルの状態を示す。このとき、インクリボン4は、図中上方向に搬送されて、1回目の印画に使用されたイエローY1の先頭がヘッド位置Phに来るまで巻き戻される。オーバーコートOP1とイエローY2との境界部分52にはまだ皺は発生していないが、巻戻しにより、オーバーコートOP1(および他のパネル)の使用済み部分(1)には皺が発生する。
図3(C)は、比較例のプリンタが半分未使用のイエローY1、マゼンタM1、シアンC1およびオーバーコートOP1のパネルを使用して6×4サイズの2回目の印画を行うときの各パネルの状態を示す。このとき、半分未使用だった各パネルは、順方向に対する各パネルの前半部分(2)が使用されて全面使用済みのパネルになる。2回目の印画が行われると、オーバーコートOP1とイエローY2との境界部分53に皺が発生する。
図3(D)は、比較例のプリンタが全面未使用のイエローY2、マゼンタM2、シアンC2およびオーバーコートOP2のパネル(イエローY2以外は図示せず)を使用して6×4サイズの3回目の印画を行うときの各パネルの状態を示す。このとき、全面未使用だった各パネルは、順方向に対する各パネルの後半部分(3)が使用されて半分未使用のパネルになる。3回目の印画が行われると、オーバーコートOP1とイエローY2との境界部分54の皺がさらに成長する。
図3(E)は、比較例のプリンタが6×4サイズの3回目の印画後にインクリボン4を巻き戻すときの各パネルの状態を示す。このとき、インクリボン4は、図中上方向に搬送されて、3回目の印画に使用されたイエローY2の先頭がヘッド位置Phに来るまで巻き戻される。この巻戻しにより、オーバーコートOP1とイエローY2との境界部分55の皺がさらに成長する。
図3(F)は、比較例のプリンタが半分未使用のイエローY2、マゼンタM2、シアンC2およびオーバーコートOP2のパネル(イエローY2以外は図示せず)のパネルを使用して6×4サイズの4回目の印画を行うときの各パネルの状態を示す。このとき、順方向に対する各パネルの前半部分(4)が使用されるが、イエローY2のパネルの前半部分(4)には、オーバーコートOP1とイエローY2との境界部分56に皺が発生しているため、この皺が記録用紙10に転写されてしまう。このため、4回目の印画時には印画不良が発生する。
比較例のプリンタでは、6×4サイズの印画を繰り返す場合には、オーバーコートOP1の後半部分(1)の転写を行ってから、隣接するイエローY2の前半部分(4)の転写を行うまでに、図3(B)および図3(E)に示した2回の巻戻しが必要である。このように、インクリボン4を繰り返し往復搬送すると、特に大きなダメージを受けたオーバーコートOP1の使用済み部分からインクリボン4に皺(折れ)が発生し、その折れが往復搬送の度に成長して次のイエローY2の未使用部分にまで拡大するため、印画物にも皺が発生し得る。この現象は、特に、オーバーコートとイエローのパネル境界における転写に使用されない余白部分が他のパネル境界における余白部分より短いインクリボンを使用する場合に顕著に現れる。
なお、6×4サイズの印画時に全面未使用の各パネルの上流側半分から使用した場合には、オーバーコートOP1の1回目の使用済み部分(前半部分)に発生した皺が、隣接するシアンC1の下流側の未使用部分(後半部分)にまで拡大し得る。このため、2回目の6×4サイズの印画時にその皺が記録用紙10に転写されて、やはり印画不良が発生する。
そこで、プリンタ1は、全面未使用のパネルを使用して6×4サイズの印画を行うときに、イエロー(面順次の最初)とオーバーコート(面順次の最後)のパネルについては順方向に対する上流側半分(前半部分)を使用し、マゼンタとシアン(面順次の最初と最後以外)のパネルについては順方向に対する下流側半分(後半部分)を使用する。また、プリンタ1は、半分未使用のパネルを使用して6×4サイズの印画を行うときに、イエローとオーバーコートのパネルについては下流側半分(後半部分)を使用し、マゼンタとシアンのパネルについては上流側半分(前半部分)を使用する。プリンタ1では、このような順序で各パネルを使用できるように、制御部30がインクリボン4の搬送を制御する。
図4(A)は、プリンタ1が全面未使用のイエローY1、マゼンタM1、シアンC1およびオーバーコートOP1のパネルを使用して6×4サイズの1回目の印画を行うときの各パネルの状態を示す。このとき、イエローY1とオーバーコートOP1のパネルは前半部分(1)が使用され、マゼンタM1とシアンC1のパネルは後半部分(1)が使用されて、それぞれ半分未使用のパネルになる。1回目の印画の終了時には、まだオーバーコートOP1の使用済み部分(1)にも、その使用済み部分(1)と未使用部分との境界部分61にも皺は発生していない。
図4(B)は、プリンタ1が6×4サイズの1回目の印画後にインクリボン4を巻き戻すときの各パネルの状態を示す。このとき、インクリボン4は、一旦イエローY1の先頭がヘッド位置Phに来るまで巻き戻される。巻戻しにより、オーバーコートOP1(および他のパネル)の使用済み部分(1)には皺が発生するが、オーバーコートOP1の使用済み部分(1)と未使用部分との境界部分62にはまだ皺は発生していない。
図4(C)は、プリンタ1が半分未使用のイエローY1、マゼンタM1、シアンC1およびオーバーコートOP1のパネルを使用して6×4サイズの2回目の印画を行うときの各パネルの状態を示す。このとき、イエローY1とオーバーコートOP1のパネルは後半部分(2)が使用され、マゼンタM1とシアンC1のパネルは前半部分(2)が使用されて、それぞれ全面使用済みのパネルになる。2回目の印画の終了時には、まだオーバーコートOP1の使用済み部分(2)と次の未使用のイエローY2との境界部分63には皺は発生していない。
図4(D)は、プリンタ1が全面未使用のイエローY2、マゼンタM2、シアンC2およびオーバーコートOP2のパネル(イエローY2以外は図示せず)を使用して6×4サイズの3回目の印画を行うときの各パネルの状態を示す。このとき、イエローY2とオーバーコートOP2のパネルは前半部分(3)が使用され、マゼンタM2とシアンC2のパネルは後半部分(3)が使用されて、それぞれ半分未使用のパネルになる。プリンタ1では、2回目の印画においてオーバーコートOP1の後半部分(2)が使用された直後に、3回目の印画においてイエローY2の前半部分(3)が使用される。このため、オーバーコートOP1とイエローY2との境界部分64に皺が発生する前に3回目の印画を実行することができ、印画不良の発生が抑制される。
図4(E)は、プリンタ1が6×4サイズの3回目の印画後にインクリボン4を巻き戻すときの各パネルの状態を示す。このとき、インクリボン4は、一旦イエローY2の先頭がヘッド位置Phに来るまで巻き戻される。この巻戻しにより、オーバーコートOP1とイエローY2との境界部分65には皺が発生するが、イエローY2の前半部分(3)は既に使用済みのため、その皺が印画物に影響することはない。
図4(F)は、プリンタ1が半分未使用のイエローY2、マゼンタM2、シアンC2およびオーバーコートOP2のパネル(イエローY2以外は図示せず)のパネルを使用して6×4サイズの4回目の印画を行うときの各パネルの状態を示す。イエローY2については後半部分(4)が使用されるため、このときも、オーバーコートOP1とイエローY2との境界部分66に発生した皺が印画物に影響することはない。
このように、プリンタ1は、オーバーコートOP1の後半部分(2)を使用した直後にイエローY2の前半部分(3)を使用する。このため、オーバーコートの転写後、次のイエローの転写前にインクリボン4の巻戻しが行われないので、オーバーコートとイエローの境界部分に発生した皺がイエローの前半部分にまで及ぶ前に次の印画が実行される。したがって、プリンタ1では、パネルへのダメージが大きいマット仕上げを行った場合でも、オーバーコートとイエローのパネル境界の皺による印画不良の発生が抑制される。
なお、全面未使用のパネルを使用して6×4サイズの印画を行うときに、オーバーコート(面順次の最後)のパネルだけ順方向に対する上流側半分(前半部分)を使用し、イエロー、マゼンタおよびシアンのパネルについては順方向に対する下流側半分(後半部分)を使用してもよい。この場合には、半分未使用のパネルを使用して6×4サイズの印画を行うときに、オーバーコートのパネルについては下流側半分(後半部分)を使用し、イエロー、マゼンタおよびシアンのパネルについては上流側半分(前半部分)を使用する。この場合でも、比較例のプリンタよりは、パネル境界の皺による印画不良の発生が抑制される。ただし、この場合には、オーバーコートの下流側半分の転写後、隣接するイエローの上流側半分の転写前に、図3(E)に相当する1回の巻戻しが行われるため、オーバーコートとイエローのパネル境界に発生した皺が4回目の印画時に印画物に転写されるおそれがある。したがって、プリンタ1の順序で各パネルを使用することが好ましい。
図5は、プリンタ1の動作例を示したフローチャートである。図5に示したフローは、制御部30内のROMに予め記憶されたプログラムに従って、制御部30内のCPUにより実行される。プリンタ1には6×8サイズのインクリボン4がセットされているとする。
プリンタ1は、まず、ホストコンピュータから印画指示および印画対象の画像データを受信する(S1)。すると制御部30は、その画像データが6×4サイズであるか否かを判定する(S2)。例えば6×8サイズなど、画像データが6×4サイズでない場合(S2でNo)には、処理は後述するS31に進む。なお、6×8サイズのパネルより大きなサイズの画像データであった場合にはエラー処理が行われる(図示せず)。
画像データが6×4サイズである場合(S2でYes)は、制御部30は、さらに、例えばプリンタ内で保持した半分未使用のパネルの有無を示す情報を参照することにより、新たなパネルを使用するか、またはインクリボン4を巻き戻して半分未使用のパネルを再使用するかを判定する(S3)。
新たなパネルを使用すると判定された場合、すなわち、半分未使用のパネルがない場合(S3でYes)には、ヘッド3が1枚のパネル(最初はイエローYの前半部分)を部分使用して印画を行う(S11)。このとき、記録用紙駆動部32は、記録用紙10上の画像形成領域のサイズに合わせて記録用紙10を送り出す。またヘッド駆動部33は、ヘッド3を移動させてプラテンローラ9に対して押圧する。そして記録用紙駆動部32が送り出した記録用紙10を巻き戻しながら、1つの色(最初はイエローY)についてヘッド3により転写を行う。このときインクリボン4も一緒に移動させる。この記録用紙10の巻戻しとインクリボン4の巻取りとヘッド3による転写は、同期をとって行われる。1つの色について転写が終わると、ヘッド駆動部33はヘッド3をプラテンローラ9から離間させる。
そして、インクリボン駆動部34は、次の色(2色目はマゼンタM)のパネルの先頭がヘッド位置Phに来るまでインクリボン4を巻き取る(S12)。ここで、制御部30は、オーバーコートOPまでの印画が終了したか否かを判定する(S13)。まだオーバーコートOPまで印画されていない場合(S13でNo)には、処理はS11に戻り、マゼンタM、シアンCおよびオーバーコートOPについても、イエローYのときと同様に、転写が行われる。このときの各パネルの使用順序は、図4(A)に(1)で示した通りである。このようにして、記録用紙10の同じ画像形成領域上に、イエローY、マゼンタMおよびシアンCの各色カラー画像を形成し、オーバーコート層を被覆して保護層を形成する。オーバーコートOPまでの印画が終了したら(S13でYes)、処理はS40に進む。
一方、半分未使用のパネルを再使用すると制御部30が判定した場合(S3でNo)には、インクリボン駆動部34は、部分使用されたイエローYのパネルにおける未使用の後半部分の先頭がヘッド位置Phに来るまで、インクリボン4を巻き戻す(S20)。その際、インクリボン駆動部34は、各パネルのピッチや、エンコーダのパルス数、リボンローラ4A,4Bの巻き径などに基づいて必要な送り量を算出し、この送り量に従って、インクリボン4を巻き戻す。
続いて、ヘッド3が1枚のパネルの未使用部分(最初はイエローYの後半部分)を使用して印画を行う(S21)。このときの処理は、各パネルの使用部分を除いて上記のS11と同様である。その後、制御部30は、オーバーコートOPまでの印画が終了したか否かを判定する(S22)。まだオーバーコートOPまで印画されていない場合(S22でNo)には、インクリボン駆動部34は、次の色(2色目はマゼンタM)のパネルにおける未使用の前半部分の先頭がヘッド位置Phに来るまで、インクリボン4を巻き取る(S23)。
そして処理はS21に戻り、マゼンタM、シアンCおよびオーバーコートOPについても、イエローYのときと同様に転写が行われる。このときの各パネルの使用順序は、図4(C)に(2)で示した通りである。このようにして、プリンタ1は、記録用紙10の同じ画像形成領域上に、イエローY、マゼンタMおよびシアンCの各色カラー画像を形成し、オーバーコート層を被覆して保護層を形成する。オーバーコートOPまでの印画が終了したら(S22でYes)、処理はS40に進む。
また、印画対象の画像データが6×4サイズでない場合、すなわち6×8サイズの場合(S2でNo)には、ヘッド3が新しいパネルの全面を使用して上記のS21と同様に印画を行う(S31)。そして、オーバーコートOPまでの印画が終了したら(S32でYes)、処理はS40に進む。
印画終了後に、記録用紙駆動部32が記録用紙10を送り出し、記録用紙切断部5が記録用紙10を切断して、排出口6から排出させる(S40)。以上で、プリンタ1は動作を終了する。
以上説明してきたように、プリンタ1は、全面未使用のパネルを使用して6×4サイズの印画を行うときに、イエローとオーバーコートのパネルについては順方向に対する上流側を使用し、マゼンタとシアンのパネルについては順方向に対する下流側を使用する。オーバーコートのパネルの後半部分を使用した直後に次のイエローYのパネルの前半部分を使用することで、オーバーコートとイエローのパネル境界の皺に起因する印画不良の発生が抑制される。