JP6289205B2 - 溶銑鍋における脱珪方法 - Google Patents
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Description
特許文献1は、インジェクションランス及び酸素ランスを用いて容器内の溶銑の脱珪脱硫を行うに際し、脱珪処理から脱硫処理の切り替え時にスラグを除去することなく精錬を行うことを目的としたものである。この特許文献1では、Siが0.25%以上含有する溶銑を取鍋に装入して、取鍋内の溶銑に酸素ランスから酸素を吹き付けると共にインジェクションランスから酸素ランスの方向に撹拌用ガスおよび精錬剤を吹き込むことで、溶銑の脱珪及び脱硫を行う溶銑の精錬方法であって、精錬剤を脱珪材から脱硫剤に切り替えて、脱珪から脱硫に移行する際のスラグ組成がC/S=0.5〜1.0、T.Fe≦15%の範囲となるように調整している。
特許文献2は、脱珪酸素効率をより向上させるような取鍋の傾斜角度やインジェクションランスの吐出方向について開示されておらず、排さい処理時間等に関することもないため、生産性に対する定量的効果が見込めないのが実情である。
本発明の技術的手段は、溶銑予備処理における精錬容器として溶銑鍋を用いて脱珪を行う方法において、前記溶銑鍋に挿入されたランスに対する当該溶銑鍋の傾斜角度θ(°)を式(1)の範囲で傾斜ておき、脱珪処理開始時に、前記傾斜角度θ(°)で傾斜した状態の溶銑鍋の上部に設置した投入装置からT.Fe=50〜80質量%を含む酸化鉄を1.0〜22.2kg/t投入し、前記溶銑鍋の中央側に配置した酸素ランスの高さを0.65〜1.50mとすると共に、前記酸素ランスの酸素ガス流量を0.15〜0.30Nm3/min・tとして酸素ガスを吹きつけ、さらに、前記酸素ランスの側部に配置したインジェクションランスを溶銑に浸漬して、前記インジェクションランスの吐出角度αを、前記傾斜角度θ(°)を含む式(2)を満たす角度にすると共に、インジェクションランスの浸漬深さを1.5〜2.0mとし、前記インジェクションランスの窒素ガス流量を0.0056〜0.020Nm3/min・tとして、前記窒素ガスと共にCaO、或いは、CaO及び酸化鉄の混合粉体を吹き込むことにより、前記溶銑鍋を傾斜させたまま当該脱珪処理を行い、前記脱珪処理後に前記溶銑鍋を傾斜させ、スラグドラッガーにてスラグを排さいすることを特徴とする.。
15≦α≦θ+20 ・・・(2)
本発明の溶銑鍋における脱珪方法は、高炉等で製造された溶銑を、溶銑鍋に装入して、当該溶銑の脱珪処理を行うものである。言い換えれば、本発明は、溶銑の脱りん処理前に行われる溶銑予備処理プロセスにおいて、実施される脱珪を対象としたものである。
図1は、脱珪を行うことが可能な精練処理設備を示している。
精練処理設備1は、溶銑鍋2を据え付け且つ据え付けられた溶銑鍋2を傾動する傾動装置3と、排ガス等の集塵を行う集塵装置4と、据え付けられた溶銑鍋2に上部から酸化鉄源等の投入を行う投入装置5と、酸素を吹き付ける酸素ランス6と、精練材等の吹き込みを行うインジェクションランス7とを備えている。
傾動装置3は、ランス(酸素ランス6、インジェクションランス7)に対して溶銑鍋2を傾動させる装置であって、溶銑鍋2を据え付け可能で且つ傾動自在な台車10と、この伸縮する伸縮機構(例えば、油圧シリンダ)11とを備えている。この傾動装置3では、台車10或いは溶銑鍋2にシャックル(被係合部)12を設けると共に、このシャックル12に油圧シリンダ11の先端に設けられたフック(係合部)13を係合して、油圧シリンダ11を伸縮させることによって、台車10上の溶銑鍋2を傾動することができる。なお、傾動装置3は、上述した例に限定されない。
酸素ランス6は、パイプ状に形成され且つ下端側にノズル孔が2〜6個形成されたもので、上部から供給された溶銑の湯面へ酸素ジェットを吹き付けることができる装置である。この酸素ランス6は、溶銑鍋2を水平にした状態において当該溶銑鍋2の幅方向の中央部に設置されている。なお、酸素ランスのノズル孔の個数は一般的な数である。
インジェクションランス7は、一般的に不定形耐火物(キャスタブル等)で施工された円柱状の構造で、内部に紛体を吹込み可能なパイプ状の芯金を中心に埋め込んだものである。このインジェクションランス7は、酸素ランス6の側方であって、溶銑鍋2を傾動する側とは反対側に配置されている。以降、説明の便宜上、溶銑鍋2が傾動した際に当該溶銑鍋2の縁が下がる側のことを「傾動側」といい、傾動側と反対側のことを「非傾動側」ということがある。
以下、溶銑鍋における脱珪方法について詳しく説明する。
3.0≦θ≦9.0 ・・・(1)
ここで、溶銑鍋の傾斜角度θは、溶銑鍋が水平に置かれた状態(溶銑鍋の上端が床面等に対して水平となっている状態)を0°とし、この水平ラインL1に対する溶銑鍋の上端のなす角度のことである。傾斜角度θ(°)は、例えば、フック13をシャックル12に係合して油圧シリンダ11を伸縮することにより傾動させる場合、油圧シリンダ11の縮むストローク、即ち、フック13の上昇ストロークと、溶銑鍋の寸法によって幾何学的に求めることが可能である。
なお、インジェクションランス7では、脱珪処理における精練材、即ち、脱珪材として、CaO(生石灰、焼石灰)を含む粉体、或いは、CaO(生石灰、焼石灰)及び酸化鉄を含む混合粉体を吹き込むこととしている。混合粉体を用いる場合は、酸化鉄源としてミルスケール等を予め規定の比率で混合したものを使用する。
15≦α≦θ+20 ・・・(2)
インジェクションランス7の吐出角度αは、インジェクションランス7と直交する方向(水平方向)の軸を「X軸」としたうえで、このX軸と、インジェクションランス7の吐出口16の軸芯とのなす角である。ここで、吐出角度αは、インジェクションランス7の内部に設けたパイプの角度(吐出口16の角度)を変更することで変更することができる。なお、吐出角度αが異なるインジェクションランス7、即ち、パイプの角度が異なるインジェクションランス7を数種類準備して、各インジェクションランス7毎に吹込みを行うことで、角度に対する脱珪処理における反応効率の検証を行うことが可能である。
吐出角度αが0より小さい(マイナス)の場合は、紛体を水平方向より上部へ吹き上げることとなり、当然ながらインジェクションランス7による紛体と溶銑との接触時間が短くなることによって脱珪酸素効率の低下を招いてしまう。一方、吐出角度αがθ+20°より大きい場合は、紛体を吹込んだ際にその紛体が溶銑鍋の底部へ接触する量が増加する。その結果、溶銑鍋の底部へ紛体が付着しやすくなり溶銑と反応せず、供給された紛体がインプットに対してロスすることとなり、結果的に脱珪酸素効率の低下を招いてしまう。
が2.0mより大きい場合は、紛体を吹込んだ際にその紛体が溶銑鍋の底部へ接触する量が増加する。その結果、溶銑鍋の底部へ紛体が付着しやすくなり溶銑と反応せず、供給された紛体のインプットに対してロスすることとなり、結果的に脱珪酸素効率の低下を招いてしまう。
精錬容器は、溶銑用の溶銑鍋を用いた。溶銑鍋の半径は1.34mである。処理時の溶銑量は、87.5〜96.0ton、溶銑温度は、1290〜1400℃とした。溶銑の
炭素濃度は、4.5〜4.8質量%、溶銑のSi濃度は、0.40〜0.90質量%とした。
脱珪処理では、脱珪材を構成する粉体として、CaOを含むもの、或いは、CaOと酸化鉄とを混合した混合粉体を用いた。混合粉体では、粉体比率は、CaO:酸化鉄=50:50とした。また、脱珪材として、混合粉体を用いない場合は、CaO:酸化鉄=100:0とした。脱珪材の吹込量は、処理前のSi濃度に応じて0.6〜4.3kg/tの範囲で当業者常法の副原料制御により決定した。
実施例及び比較例では、脱珪酸素効率の評価を行った。脱珪酸素効率(ηSi)は、与えた酸素量に対して、溶銑中[Si]の酸化に使用された酸素分の割合を示すもので、式(3)により求めることができる。
一方、比較例28〜37では、溶銑鍋2の傾斜角度θが式(1)の範囲から外れているため、脱珪酸素効率は40%未満となった。また、比較例38〜41では、脱珪処理開始時に投入する酸化鉄のT.Feが50質量%未満或いは80質量%を超え、比較例42〜45では、酸化鉄の投入量が1.0kg/t未満或いは22.2kg/tを超え、比較例46〜49では、酸素ランスの高さが0.65m未満或いは1.50mを超え、比較例50〜53では、酸素ガス流量が0.15Nm3/min・t未満或いは0.30Nm3/min・tを超えた。そのため、比較例38〜53では、脱珪酸素効率は40%未満となった。
比較例66、67では、窒素ガス流量が0.0056Nm3/min・t未満であるため、ノズル閉鎖が発生して、脱珪処理は中断となった。比較例68、69では、窒素ガス流量が0.020Nm3/min・tを超えているため、脱珪酸素効率は40%未満となった。
なお、今回開示された実施形態において、明示的に開示されていない事項、例えば、運転条件や操業条件、各種パラメータ、構成物の寸法、重量、体積などは、当業者が通常実施する範囲を逸脱するものではなく、通常の当業者であれば、容易に想定することが可能な事項を採用している。
2 溶銑鍋
3 傾動装置
4 集塵装置
5 投入装置
6 酸素ランス
7 インジェクションランス
10 台車
11 伸縮機構
12 シャックル(被係合部)
13 フック(係合部)
14 スラグドラッガー
15 スラグピット
16 吐出口
Claims (1)
- 溶銑予備処理における精錬容器として溶銑鍋を用いて脱珪を行う方法において、
前記溶銑鍋に挿入されたランスに対する当該溶銑鍋の傾斜角度θ(°)を式(1)の範囲で傾斜ておき、
脱珪処理開始時に、前記傾斜角度θ(°)で傾斜した状態の溶銑鍋の上部に設置した投入装置からT.Fe=50〜80質量%を含む酸化鉄を1.0〜22.2kg/t投入し、前記溶銑鍋の中央側に配置した酸素ランスの高さを0.65〜1.50mとすると共に、前記酸素ランスの酸素ガス流量を0.15〜0.30Nm 3 /min・tとして酸素ガスを吹きつけ、
さらに、前記酸素ランスの側部に配置したインジェクションランスを溶銑に浸漬して、前記インジェクションランスの吐出角度αを、前記傾斜角度θ(°)を含む式(2)を満たす角度にすると共に、インジェクションランスの浸漬深さを1.5〜2.0mとし、前記インジェクションランスの窒素ガス流量を0.0056〜0.020Nm 3 /min・tとして、前記窒素ガスと共にCaO、或いは、CaO及び酸化鉄の混合粉体を吹き込むことにより、前記溶銑鍋を傾斜させたまま当該脱珪処理を行い、
前記脱珪処理後に前記溶銑鍋を傾斜させ、スラグドラッガーにてスラグを排さいすることを特徴とする溶銑鍋における脱珪方法。
3.0≦θ≦9.0 ・・・(1)
15≦α≦θ+20 ・・・(2)
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