JP6289174B2 - 画像形成装置 - Google Patents

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Description

本発明は、記録材上のトナー像を昇温した定着部材にて記録材上に押し付け記録材上にトナーを定着させる熱圧方式の定着手段を備えた画像形成装置に関する。
像担持体に形成したトナー像を記録媒体(記録材)に転写し、トナー像が転写された記録媒体を定着手段の一例である定着装置で加熱して画像を記録材に定着させる画像形成装置が広く用いられている。定着装置は、加熱した定着ローラや定着ベルトを記録材のトナー像担持面に接触させて加圧を伴ってトナー像を加熱する接触加熱方式が主流である。なお、トナー画像は、トナー像、トナー像が半定着された半定着画像、トナー像が定着された定着画像を含む。
一方、トナー像を担持した記録材面に光(赤外線を含む)を照射してトナーを溶解させる非接触加熱方式の定着装置も提案されている(特許文献1、2)。しかし、可視光を用いる非接触加熱方式の定着装置は、トナーの色、色の濃度に応じて光の吸収率が異なるため、複数種類のトナー像間で定着性(光沢、付着強度等)がばらつく問題がある。特に、黒色のトナーは、イエロートナー、透明トナーに比較して光の吸収率が高いため、等しい強度の光を照射された際に過剰に溶融する。
そこで、特許文献1では、赤外線吸収性能を有する共通の添加剤を、光の吸収率差に応じて各色のトナーの高分子材料に添加することにより、各色のトナー間の放射エネルギ吸収率差を緩和している。また、特許文献2では、加熱部材の表面を分割して、それぞれの分割領域に各色の波長の放射エネルギを高めるような固有の立体構造を形成して、加熱部材側で各色の波長の放射エネルギを揃えている。
特開昭58−102247号公報 米国特許第7141761号公報
特許文献1の画像加熱装置では、添加剤のコストを要する。添加剤は、トナーの色相や性質を変化させる傾向がある。特許文献2の画像形成装置では、シアン、マゼンタ、イエローの熱吸収量は揃えられるが、可視光のすべての波長を吸収するブラックのトナー像が過剰に溶融する問題は解決されない。
本発明は、添加剤に頼らなくても、色が異なるトナー像をほぼ同等に加熱できる定着手段を備えた画像形成装置を提供することを目的としている。
本発明の画像形成装置は、トナー像を記録材に形成するトナー像形成手段と、記録材上のトナー像を昇温した定着部材にて記録材上に押し付け記録材上にトナーを定着させる熱圧方式の定着手段と、を有するものである。そして、前記定着部材表面を構成する高分子に存在する結合、または官能基に起因する赤外吸収波長領域が8.2μm以上かつ8.8μm以下であり、加熱用の光の発光強度のピークが8.2μm以上かつ8.8μm以下の赤外線発熱装置を有し、前記赤外線発熱装置により定着部材を昇温させる。
本発明の画像加熱装置は、色による吸収率差の少ない高分子材料固有の赤外線吸収性能を利用するから、高分子材料そのものが加熱され、添加剤に頼らなくても色の異なるトナー像をほぼ同等に加熱できる。
画像形成装置の構成の説明図である。 参考例1の定着装置の構成の説明図である。 ランプヒータの構成の説明図である。 各色トナーの赤外線吸収波長特性の説明図である。 加熱素子の表面の凹凸構造の平面図である。 加熱素子の表面の凹凸構造の深さ方向の断面図である。 微細構造の有無による赤外線放射特性の違いの説明図である。 各色トナーの温度上昇速度の比較の説明図である。 加熱素子の赤外線放射波長特性の説明図である。 加熱素子の材料の別の例の説明図である。 微細構造の凹凸の平面形状の別の例の説明図である。 微細構造を積層した加熱素子の説明図である。 粒子の空隙で赤外線波長を規制する加熱素子の説明図である。 試作した加熱素子の表面構造の電子顕微鏡写真である。 試作した加熱素子の赤外線放射波長特性の説明図である。 試作した加熱素子を装備した定着装置の模式図である。 実施の形態における定着装置の構成の説明図である。
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳細に説明する。
参考例1>
(画像形成装置)
図1は画像形成装置の構成の説明図である。図1に示すように、画像形成装置100は、トナー像形成手段の一部である中間転写ベルト9に沿ってイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdを配列したタンデム型中間転写方式のフルカラープリンタである。
画像形成装置100は、通信可能に接続した外部ホスト装置から入力されたカラー色分解画像信号に基づいて、トナー像形成手段の一部である画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdを動作させて、記録材上にフルカラー画像を形成して出力する。外部ホスト装置は、コンピュータ、イメージリーダー等である。
画像形成部Paでは、感光ドラム3aにイエロートナー像が形成されて中間転写ベルト9に一次転写される。画像形成部Pbでは、感光ドラム3bにマゼンタトナー像が形成されて中間転写ベルト9に一次転写される。画像形成部Pc、Pdでは、感光ドラム3c、3dにそれぞれシアントナー像、ブラックトナー像が形成されて、中間転写ベルト9に一次転写される。
記録材Pは、記録材カセット10から1枚ずつ取り出されてレジストローラ12で待機する。レジストローラ12は、中間転写ベルト上のトナー像にタイミングを合わせて記録材Pを二次転写部T2へ給送する。二次転写部T2を搬送されて中間転写ベルト9からトナー像を二次転写された記録材Pは、定着装置90へ搬送される。記録材Pは、定着装置90で加熱加圧を受けて、トナー像を定着された後に、機体外部へ排出される。
画像形成部Pa、Pb、Pc、Pdは、現像装置1a、1b、1c、1dで用いるトナーの色がイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックと異なる以外は、実質的に同一に構成される。以下では、画像形成部Paについて説明し、画像形成部Pb、Pc、Pdに関する重複した説明を省略する。
(画像形成部)
画像形成部Paは、感光ドラム3aの周囲に、コロナ帯電器2a、露光装置5a、現像装置1a、一次転写ローラ6a、及びドラムクリーニング装置4aを配置している。感光ドラム3aは、アルミニウムの円筒材料の表面に感光層が形成されている。
コロナ帯電器2aは、感光ドラム3aの表面を一様な電位に帯電させる。露光装置5aは、レーザービームを走査して感光ドラム3aに画像の静電像を書き込む。現像装置1aは、静電像を現像して感光ドラム3aにトナー像を形成する。一次転写ローラ6aは、電圧を印加されて感光ドラム3aのトナー像を中間転写ベルト9へ一次転写させる。
二次転写ローラ11は、対向ローラ13に支持された中間転写ベルト9に当接して二次転写部T2を形成する。ドラムクリーニング装置4aは、感光ドラム3aにクリーニングブレードを摺擦させて、中間転写ベルト9への転写を逃れて感光ドラム3aに付着した転写残トナーを回収する。ベルトクリーニング装置30は、二次転写部T2で記録材への転写を逃れて中間転写ベルト9に付着した転写残トナーを回収する。
(定着装置)
図2は参考例1の定着装置の構成の説明図である。図3はランプヒータの構成の説明図である。図2に示すように、定着装置90は、ランプヒータ901から出力される赤外光を反射鏡904で反射させて、搬送ローラ903が搬送する記録媒体902上のトナー像905を加熱する。定着装置90の加熱部は、熱源のランプヒータ901と反射板の反射鏡904とで構成される。
図3に示すように、ランプヒータ901は、加熱素子901Hを赤外線の放射源としている。加熱素子901Hは、抵抗値を高めるとともに所定波長域の赤外線放射面積を増すために、高融点金属を用いて薄いシート状に形成され、長手方向に電流を流すことによって発熱して昇温する。高融点金属の例は、カーボン、タングステン、ニッケル、チタン等である。高融点金属以外に、チッ化アルミニウム、チッ化タンタル等の金属チッ化物、金属炭化物等も利用できる。加熱用の光を照射する発光源の一例である通電加熱層の表面には、後述するように放射赤外光の波長選択性を付与するために、周期的な凹凸格子構造(微細構造)が形成されている。
加熱素子901Hは、赤外線透過性のガラス材料の透明管901G内に密封されている。透明管901G内は、加熱素子901Hの酸化を防ぐために、真空にしてある。透明管901G内は、アルゴンArなどの希ガス類や窒素など、化学的な活性の低い不活性ガスを封入してもよい。不活性ガスは、Arなどの希ガス類や窒素などの活性の低いガスが望ましい。
透明管901Gの材料は、被加熱物に応じた赤外線透過特性を有するものを選ぶ。透明管901Gに使用される赤外線透過効率の高い透明材料は、加熱対象物に応じて選定される。石英ガラスは、波長λ=0.7〜4.0μmの赤外光の透過性を有するので、0.7μm〜4.0μmに赤外線の吸収ピークを有する加熱対象物であるトナーや紙の加熱において使用することができる。
被加熱物である各色トナーに共通な赤外線吸収ピーク波長は、3.4μmであるため、透明管901Gの材料は石英ガラスでもよい。しかし、トナーへ到達する放射エネルギを増してトナーの高速な加熱溶融を実現するには、石英ガラスよりも遠赤外線を効率的に透過させる材料が好適である。石英ガラスよりも遠赤外線を効率的に透過する材料の例は、カルシウムやバリウムなどのフッ素化合物や、サファイア、シリコン、ゲルマニウム、セレンや硫黄の亜鉛化合物などである。これらの材料を用いると、赤外線の透過光量が増えて好ましい。
記録媒体902の反対側でランプヒータ901を覆って反射鏡904が配置される。反射鏡904は、ランプヒータ901から記録媒体902と反対側の空間へ放射される赤外線を遮断するとともに、記録媒体902へ向かって折り返させる。反射鏡904は、ランプヒータ901を焦点に配置した楕円反射鏡であるため、折り返して記録媒体902側へ放射される赤外線を集光させる効果もある。ランプヒータ901は、加熱物の記録媒体902に近接させて配置してもよい。
反射鏡904は、耐熱性の高い金属を用いることが可能である利点がある。反射鏡904の材料は、赤外光に対する反射率が高いほどよい。具体的には、金、銀などの貴金属が赤外線の反射効率に優れる。また、アルミニウムは、汚れた場合に研磨などし易く、加工も容易なので、使用されることがある。反射鏡904は、表面を多層膜構造にして、特定の波長域の反射率を高くした構成でもよい。
なお、ランプヒータ901と記録媒体902との間に赤外線レンズを配置して、赤外線をレンズ集光させてもよい。レンズ集光では、赤外線を吸収するとレンズ温度が上昇するので対応が必要である。例えば、赤外線を透過させる効率の高い材料を採用することが望ましい。レンズ集光では、レンズ表面に反射防止膜を膜付けしてレンズの吸収波長域を反射させることも有効である。ゲルマニウム、シリコンなど空気に対して屈折率の高いレンズは反射防止コートが必須となる。
非接触加熱方式の定着装置90は、トナーと定着装置90の加熱構造とが接触しないため、高速定着しても線画の飛び散りが発生せず、曲面の記録媒体や、表面凹凸や皺のある記録媒体でもトナー画像を定着できる。表面層に加熱を集中させるため、熱吸収の大きな記録媒体も熱吸収の小さな記録媒体も等しい速度で定着できる。
非接触加熱方式の定着装置として、従来、可視光〜遠赤外線領域の光をトナー画像に照射するフラッシュ定着装置や赤外線ランプ定着装置が提案されている。しかし、一般的には、各色トナーごとに熱吸収がばらついてトナーの溶け方が異なってしまう。熱吸収率が高いブラックトナーでは過溶融になり易く、他色のトナーの定着画像との間に光沢差が生じる。さらに、溶け過ぎたトナーが気泡を発生して火ぶくれ状になるブリスタ現象が問題になる場合もある。
そこで、参考例1では、各色トナーに共通に含まれる官能基であるCH結合が選択的に加熱されるように赤外線の波長帯域を選択して、これらの問題を解消している。そのため、赤外線発生部の表面には、CH結合やOH結合の赤外線吸収ピークの波長に応じた1.3μm以上かつ1.8μm以下の開口長を持たせて密集させた多数の凹所が形成されている。凹所は赤外線の周波数(0.3THz〜400THz)の範囲に含まれる空間周波数で繰りかえし構成される。
(官能基と吸収波長の関係)
図4は各色トナーの赤外線吸収波長特性の説明図である。カラートナーA、B、及びブラックトナーCについて赤外線吸収特性を測定して比較した。カラートナーA、B、及びブラックトナーCは、いずれもCH結合を官能基とするポリエステル系の樹脂材料を主成分としている。官能基とは、分子中に任意の境界を設定して定義された「原子が相互に共有結合で連結された部分構造」である。図4の横軸は赤外線の波長、縦軸は光の吸収率である。
図4に示すように、カラートナーA、B、及びブラックトナーCの樹脂材料の赤外線吸収波長領域は、官能基による複数の共通の吸収率のピークを有して、1〜7μmの範囲にわたっている。官能基による吸収ピークは、波長の短い順に、OH基(代表吸収波長2.8μm)、NH結合(代表吸収波長3.0μm)、CH結合(代表吸収波長3.4μm)、CF結合(8.3μm、8.7μm)などがある。このような赤外線吸収特性は、次のようなメカニズムによって形成されていると考えられる。
(1)近赤外線領域(波長760nm〜1.5μ)では、高分子の平面構造と結合の種類と官能基の組み合わせによって赤外線吸収が発生する。
(2)近赤外線領域と遠赤外線領域の中間領域(波長1.5μm〜5.0μm)では、高分子の官能基によって赤外線吸収が発生する。赤外線吸収特性は、高分子の種類とは無関係に、含まれる官能基の種類によって支配される。
(3)遠赤外線領域(波長5.0μm〜)では、高分子の官能基の組み合わせによって赤外線吸収が発生する。当該領域の赤外線吸収特性は、高分子の種類によって異なり、高分子の同定に使用可能なほど分子特有である。
赤外線照射によりトナー像を加熱する従来のフラッシュ定着装置では、可視光〜近赤外線領域のエネルギ密度の高い赤外線が使用されていた。近赤外線領域の赤外線が照射されたとき、そのままでは、ブラックトナーCに比較して赤外線の吸収量が少なくなるカラートナーA、Bは、温度上昇が不十分になって定着不良を引き起こし易くなる。
これに対して、特許文献1の定着装置では、ブラックトナーCとの赤外線吸収率の差を埋めるために、カラートナーA、Bに短波長領域の赤外線の吸収剤を添加している。しかし、このような添加剤は、トナーの顔料に近い分子構造を有するので、光を吸収して分解が起こった場合には、トナーの色相を変化させるおそれがある。
また、従来の一般的なセラミックヒータは、遠赤外線領域の赤外線を発生する。遠赤外線領域の場合も、図4に示すように、カラートナーA、Bは、ブラックトナーCに比較して赤外線吸収率が低いため、ブラック画像とカラー画像とでトナー像の定着性に大きな差が生じてしまう。セラミックヒータを用いて温度だけで、赤外線放射ピーク波長を3.4μmに設定しようとすると、ヒータの表面温度は、ウイーンの変位則から560℃と計算される。ヒータの表面温度が560℃では、放射エネルギの密度が不足するので、長時間の加熱が必要となって生産性が要求される定着装置には利用できない。加熱エネルギ密度の不足をヒータと記録媒体の対向面積で補うと、定着装置が巨大化するという問題が新たに発生する。
また、ヒータの表面温度がもっと高い場合でも、一般的なセラミックヒータでは、放射光の赤外線領域の波長スペクトルにおけるエネルギ分布が広がってしまうため、加熱対象のトナーに含まれる単位の分子構造だけを選択的に加熱することができない。
そこで、参考例1では、表面に微細構造の凹凸を形成して、中間領域(波長1.5μm〜5.0μm)の赤外線によりトナー像を加熱する。特に、CH結合によって効率的に吸収されて樹脂材料の主成分を直接加熱できる波長3.2μm〜3.6μmの赤外線は、トナーに含まれる発色成分、バインダー樹脂等の構成分子が異なっても、ほぼ等しく赤外線の放射エネルギを吸収するので好ましい。図4に示すように、波長3.2μm〜3.6μmの赤外線であれば、カラートナーA、Bは、ブラックトナーCとほぼ等しい吸収率で赤外線を吸収して、ほぼ等しい熱量で加熱されて加熱温度が揃う。
プランクの法則から波長の短い光ほどエネルギ密度が高い。よって、加熱される官能基に光エネルギを与える場合も、波長が短いほど短時間で多量のエネルギを与えることが可能である。この意味からも、赤外線領域の短波長側にあるメチレン基の吸収帯3.4μmは、従来のセラミックヒータ等と比較して、加熱素子901Hからの放射エネルギが強くて好都合である。
(加熱素子の構造)
図5は加熱素子の表面の凹凸構造の平面図である。図6は加熱素子の表面の凹凸構造の深さ方向の断面図である。図2に示すように、加熱素子901Hは、加熱によって赤外線放射面となる加熱層を長手方向に沿った四つの側面に有して、通電により発熱するフィラメントである。加熱素子901Hは、記録媒体に担持された加熱対象のトナーの樹脂材料に含まれる単位の分子構造を選択的に加熱するために、当該単位の分子構造に起因する赤外吸収波長ピークに一致させた波長の赤外線を記録媒体上のトナー像に放射する。
加熱素子901Hの表面には、赤外線の波長選択性を付与するための微細な密集した凹凸構造が形成されている。微細な密集した凹凸構造を特定の寸法Lで形成することで、選択的に特定の波長を発振、増幅することが可能になっている。
寸法Lの規定方法についてのべる。図6に示したように、深さ方向に3点ほど選び最大径を示す部分をL1、L2、L3とする。図6では波長の1倍、1/2倍、1/4倍の位置を示した。このとき、Lは3点の平均とする。Lの標準偏差σとしては、後述するように、CH結合の収縮、振動に幅があることを考慮して、3σ=0.1μmとする。
また、図3に示したように、多数の凹所がヒータ表面に形成されていることになる。たとえば、10mm×110mmのヒータ面積中には3.3億個形成されることになる。これら凹所の形状の確認方法としては、無作為に200個程度を抽出して代表長さをSEMなどで測定し、平均値、標準偏差を測定すればよい。また、t検定などを用いて数十個のデータから推定してもよい。
図5に示すように、加熱素子901Hはニッケル等の高融点金属で形成される。加熱素子901Hの表面には、凹凸形状として矩形の凹所が碁盤の目状に形成されている。ここでは、代表図として3×3の凹凸形状を示したが、実際には加熱素子901Hの赤外線放射面の全体が多数の密集した凹凸形状の立体構造で占められている。この構造は繰り返し構成される。
図6に示すように、矩形の凹部幅は1.7μmであり、凹部と凹部の間の壁厚さは0.1μm、深さ3.4μmである。微細構造の凹凸の代表長さL=1.7μmは、トナーの色相に関係なく、トナー粒子の基体である樹脂材料に共通に含まれるメチレン基(CH結合)の吸収帯3.2μm〜3.6μmのλ/2に設定している。CH結合の吸収帯は、伸縮非対称運動3.4μm、伸縮対称運動3.5μmが基本となるが、周囲の分子構造やその偏角運動を考慮することによって、中心値から±0.1〜0.2μm程度の吸収幅を考慮した。
図4に示すように、CH結合を含む樹脂材料は、この波長域に、その他の波長域に比べて強い吸収ピークが発現する。CH結合の吸収領域の放射を行うことができるように、微細構造の凹凸の内法の代表長さLは、1.6μm〜1.8μmが好ましい。すなわち、CH結合に照射される光の最大強度を示す波長位置に対応する発光源の周期的な凹凸格子構造の単位構造内法寸法が1.6μm以上かつ1.8μm以下であることが好ましい。
(加熱素子の赤外線放射特性)
図7は微細構造の有無による赤外線放射特性の違いの説明図である。加熱素子901Hをニッケルで形成した場合の微細構造の有無による赤外線放射特性の違いをコンピュータシミュレーションした。図7に示すように、微細構造を形成した実施例1の加熱素子901Hは、微細構造を形成していない比較例の加熱素子に比較して中間波長領域に大きな吸収ピークが形成されている。比較例の加熱素子は、一般的な平板状のニッケルの赤外線放射特性である。
ここでは、マクスウエル方程式を平面波展開して放射率の波長スペクトルを計算している。計算に用いたニッケルの光学物性値(屈折率、消衰係数)は表1の文献による。計算の境界条件は周期境界条件となるので、計算結果は平面上に多数に凹凸が存在している例となる。計算結果からは反射率と透過率が求まるので、「吸収率=1−透過率−反射率」の関係から吸収率を求めている。キルヒホッフの法則から等方性を考慮した場合、放射率は吸収率と等しい。今回の場合は近似的にキルヒホッフが成立つものとして放射率を表示した。
図7に示すように、特定寸法の微細構造の凹凸を加熱素子901H上に作成した実施例1では、平板の比較例に比べて特定の波長域に大きなピークが発生している。微細構造の凹凸の代表長さLを半波長とする1波長分、つまり、代表長さLの二倍の波長帯域が最も強く放射される。短い波長側(1.0μm以下の部分)のピークは、平板のニッケルの比較例にも現れているように金属格子の結合による寄与が大きい。
これは、微細構造の凹凸の代表長さLによって加熱素子901Hの平面に存在が許される波長帯が制限され、そのために、図6に示すように共振する特定の波長が強く放射されるからである。凹部に発生する定在波は半波長、1波長、1.5波長・・・と周期的に存在可能なので、それに応じて周期的に強調され得る放射光波長がある。実際には、図5、図6に示すように、横、奥行き、高さ方向の三次元方向に存在可能な電磁波のモードが複数存在し、そのうちで最も存在確立の高くなる波長が強く放射される。この最も存在確立の高いモードを電磁波平面展開計算により求めた演算結果が図7である。
なお、凹所を隔てる壁の厚さは0.1μmとしたが、ピークの放射強度に関しては壁の厚さは薄いほど好ましいと考えられる。しかし、壁を薄くすると機械的強度が弱くなるので耐久性を考慮すれば壁の厚さが厚いほうが都合がよい。ここで、壁の厚さを0.1μm〜1.0μm付近まで変えて、3.4μm波長の赤外線の放射強度の実用性を前述の計算法により計算した。その結果、壁厚1.0μmまでは、微細構造の凹凸によって3.4μm波長の赤外線の放射強度が増強されて、実用的と評価された。従って、壁の厚みは1.0μm以下が望ましい。
また、凹所の深さに関しては半波長を一単位としてその倍数単位で深いほどよい。これは、3.4μm波長の赤外線の定在波の存在確立が上がることによる。凹所の開口幅Lに対して深さが2倍程度あると、凹凸が無い場合に比べて数倍もの放射強度が発生する。
しかし、加熱素子の大面積化を考慮した場合、製造コストの観点からフォトリソグラフィー技術を用いて作成することが好ましい。一般的なフォトリソグラフィープロセスの場合、表面から深さ方向に加工が進行するため、開口と深さの比が2程度で最も形状を精度良く作成可能である。そのため、実施例1では、凹部の幅を1.7μm、深さを3.4μmとして計算を行った。
以上のように、実施例1の加熱素子901Hは、比較例の平板の加熱素子に比べて、表面に微細構造の凹凸を形成することで、凹凸形状の代表長さLに応じた特定の波長をより強く放射する。実施例1の加熱素子901Hは、トナーを構成する樹脂材料の分子の代表的な官能基であるCH結合の赤外線吸収を利用する。
(CH結合による加熱)
一般的なトナーの構成成分であるポリエステル樹脂に関して、CH結合に起因するエネルギ吸収によって定着に十分な温度上昇が可能であることを計算により確認した。トナーに使用されるポリエステル樹脂にはいろいろなバリエーションがある。今回は、その中でも代表的な例である「基本骨格がポリエチレンテレフタレート(C10、分子量182)であるポリエステル樹脂について計算した。ポリエチレンテレフタレートの構造は以下の化学式のとおりであって、CH結合が2つ含まれる。
一般的に記録媒体への最大トナー載り量は0.6mg/cm程度である。よってA4サイズの記録媒体の全体に最大トナー載り量のトナー像が転写されている場合、トナー像のトナー総量は0.8gとなる。0.8gのトナー総量の5.0%がポリエチレンテレフタレートであると想定すると、A4サイズの記録媒体の全体では、次式で示すように、N個のポリエチレンテレフタレートが存在する。
N=(トナー総量)×(トナー総量中のポリエチレンテレフタレートの割合)÷(ポリエチレンテレフタレートの分子量)×(アボガドロ数)×(ポリエチレンテレフタレート中のCH結合の数)
= 0.8g × 5.0% ÷ 182 × 6.02×1023 × 2
= 2.6×1021 個・・・[I]
また、A4サイズ領域全域に0.8gのトナーが載った場合、トナーを室温2.5度から平均温度をΔT度上昇させるために必要なエネルギQは、一般的なトナーの比熱を1.5[J/K/g]とすると、次式となる。
Q=mCΔT=0.8×1.5= 1.2ΔT [J]
よって、ポリエチレンテレフタレートが一個あたり吸収する必要のあるエネルギQ/Nは次式となる。
Q/N=1.2ΔT ÷ 2.6×1021 = 4.6ΔT×1022 [J/個]・・・[II]
一方、CH結合の赤外線吸収域の代表波長λ=3.4μmにおける光子一個あたりのエネルギEは、プランクの法則より次式となる。
E=hC/λ= 6.6×10−34 × 3×10/(3.4×10−6
= 5.8×10−20 [J/個]・・・[III]
CH結合が3.4μmの波長を100%吸収したとすると、[II]=[III]が成り立つので、温度上昇ΔTを求めると次式となる。
ΔT=5.8×10−20 ÷ (4.6×10−22) = 126度
一般的に、記録媒体に対してトナーの定着が完了するために、トナーと記録媒体の界面温度としては130〜150℃程度の温度上昇が必要であるが、トナー全体の平均温度に換算すれば60〜90度の温度上昇でよい。このため、CH結合の吸収のみで十分にトナーを定着させることが可能である。
トナーに使用される一般的な樹脂の場合、ピーク強度差として±10%程度となる。よって複数色のトナーで異なった樹脂を使用していたとしても、溶融に差異は生じない。
また、トナー樹脂中に最低必要なCH結合の個数を求めることが可能となる。上記[III]式より、波長λ=3.4μmにおける光子一個あたりのエネルギEはプランクの法則より次式となる。
E=hC/λ= 6.6×10−34 × 3×10/(3.4×10−6
= 5.8×10−20 [J/個]
代表的なPET樹脂(厚さ1.0μm)の波長3.4μmにおける吸光度ABSを測定すると次式となった。
ABS=1.6
参考書「光エネルギー工学 円山重直著 養賢堂2004年 p225」に記載されるように、ランバート・ベールの法則を用いて波長λ=3.4μmにおける吸光度ABSは、波長λ=3.4μmにおける光吸収率αに変換可能である。
α=1−1/exp(ABS)
=0.8 ・・・[IV]
よって、光子1個当たりのエネルギのうち8割がCH結合に吸収されることになる。
一方、[I]式に関して説明したように、A4サイズ記録媒体におけるトナー総量mは0.8g、トナーの比熱c=1.5J/g/K程度であるので、トナー総量mをΔT=60℃温度上昇させるために必要なエネルギQは次式となる。
Q=mcΔT=0.8×1.5×60=72 [J]
また、光子一個当たりのエネルギの内80%がCH結合に吸収されるので、トナー総量mを60℃温度上昇させるために必要なCH結合の数Nは次式となる。
NCH2=72/(5.8×10−20×0.8)= 1.55 × 1021[個]
=2.6×10−3[mol]
したがって、赤外領域の波長3.4μmに吸収をもつ結合または官能基をトナー中に2.6x10−3[mol]以上含むことが好ましい。そして、トナー総量m=0.8g中に含まれる化学式1で表わされるPET(単位分子量182g/mol)の数NPETは次式となる。
NPET=0.8/182 =4.4 ×10−3 [mol]
CH結合はPETの単位分子中に2個あるので、NPETに含まれるCH結合の数NCHは次式となる。
NCH =8.8 × 10−3 [mol]
よって、化学式1で含まれるPET樹脂の場合には、次式のように、30%ほどCH結合が含まれていれば60℃温度上昇させることが可能となる。
NCH/NPET= 2.6×10−3 / 8.8×10−3 =0.3
さらに、すべての樹脂が3.4μm吸収帯で構成される場合、樹脂としては直鎖パラフィンなどに相当する。その場合、CHの分子量が14であるから、次式となる。
0.8/14=57.1 × 10−3 [mol]
2.6/57.1=0.045
したがって、4.5%程度のCH結合が樹脂材料中に含有していれば、トナーに含まれるCH結合の加熱によってトナーの平均温度は十分に上昇する。
(トナー像の温度上昇速度)
図8は各色トナーの温度上昇速度の比較の説明図である。図2に示すように、トナー像を転写された記録媒体は、定着装置90を通過する有限の時間内にトナーの温度が閾値以上に上昇する必要がある。そのため、加熱素子901Hからの赤外線を各色のトナーが共通で吸収し易い短波長領域に制御することによってトナーの温度が短時間で上昇することを一次元非定常熱伝導計算によって求めた。
図8に示すように、加熱素子901Hを通過する過程で、時間の経過に伴って、記録媒体上のトナー像の温度は次第に上昇する。横軸は加熱時間、縦軸はトナーの温度上昇幅である。
一般的なトナー像の定着プロセスでは、最も多いトナー載り量の全面画像のトナー像を溶かすときに最も熱量を必要とし、一般的なトナー粒子であれば、記録媒体とトナー粒子の界面温度が140℃から150℃に達すれば記録媒体へ定着完了する。このため、一次元非定常熱伝導計算によって、トナーの深さ方向に一次元的な熱の出入りを計算して、定着性を評価した。
計算は、近赤外領域で最も吸収率が高いブラックトナーと近赤外領域で最も吸収率が低いイエロートナーとを用いて行った。測定結果から、波長3.2〜3.6μm付近における各種トナーの赤外線吸収率をブラックトナー90%、イエロートナー80%とし、赤外領域(波長1μm以上10μm以下)のブラックトナーとイエロートナーの平均吸収率をそれぞれ、70%、30%とした。
ハロゲンランプやセラミックスヒータのような一般的なヒータを用いて加熱した場合、赤外領域に幅広い放射光分布を持つために、ブラックトナーの吸収率70%とイエロートナーの吸収率30%との違いによる影響を大きく受けてしまう。図8に従来例として示すように、イエロートナーでは短時間でトナー温度を十分に上げることができず、同じ時間で十分に温度が上がるブラックトナーとの間に溶け方の大きな差異が生じて出力画像の定着不良が発生する。
これに対して、加熱素子901Hに微細構造の凹凸が形成されている場合、加熱素子901Hから放射されたエネルギのうち80%以上がブラックトナーとイエロートナーの共通波長領域に照射されて吸収される。このため、時間精度1.0msec以内の誤差で10℃以内の温度差となり、ブラックトナーとイエロートナーとで溶融差がほぼ無くなる。
つまり、3.4μmを中心としたブラックトナーとイエロートナーの共通領域に加熱素子901Hの放射波長を設定することによって、ブラックトナーとイエロートナーの温度上昇時間変化は十分に近づく。このため、同じ加熱時間で、かつ短時間で色差及び光沢差の少ない定着画像が得られる。
(加熱素子の赤外線放射波長特性)
図9は加熱素子の赤外線放射波長特性の説明図である。図9中、縦軸のエネルギは、黒体輻射のエネルギに対する強度比率である。横軸の波長は、加熱素子から放射される電磁波の波長である。
図9に示すように、微細構造の凹凸を形成した実施例1の加熱素子は、上述した表面構造によって、波長3.4μmに放射赤外線の強度ピークを設定されている。これに対して、一般的に加熱ランプとして用いられる従来例のハロゲンランプは、1.8μmに放射赤外線の強度ピークを有して、3.4μmの放射赤外線は相対的に低い波長特性となっている。
ここで、トナーを構成する樹脂材料に共通なCH結合による赤外線吸収ピーク波長を3.2μmから3.6μmとして、エネルギ比率を次の領域に分ける。
(1)波長3.2μm未満のエネルギ比率 A
(2)波長3.2μm以上3.6μm未満のエネルギ比率 B
(3)波長3.6μm以上のエネルギ比率 C
フルカラー定着装置の場合、ブラックトナーとイエロートナーとで最も光エネルギの吸収率差が発生する。しかし、CH結合に吸収される波長3.2μm以上3.6μm未満の赤外光については、ブラックトナーとイエロートナーとで光エネルギの吸収率差がほとんど無い。そのため、加熱素子からの放射特性は、(2)波長3.2μm以上3.6μm未満のエネルギ比率Bが高いほどよい。
一方、(1)波長3.2μm未満のエネルギ比率Aと、(3)波長3.6μm以上のエネルギ比率Cとは、トナーのカラー差による溶融差異を生じ易くなるので少ないほどよい。ブラックトナーとイエロートナーとで溶融状態の違いの問題を生じないための比率A、B、Cの閾値は、図8より以下のように求めることができる。
図8に示すように、トナーのエネルギ吸収率が30%では、長時間加熱してもトナーの一般的な定着温度に達しない。つまり、A+C<30%であれば、ブラックトナーが過剰に溶融しないための閾値となる。一方、トナーのエネルギ吸収率が70%以上あれば、ブラックトナーもイエロートナーも短時間のうちにトナーの一般的な定着温度に達している。よってB≦70%がブラックトナーとイエロートナーとが同等に溶融するための閾値となる。
これら二つの条件は、ブラックトナーとイエロートナーとが同時に加熱されるフルカラー定着の場合、定着プロセスにおいて同時に満たしている必要がある。よって次式の条件が成り立つ。
以上より、前述の定着性評価の実験とともに計算によっても有効性が確認できた。
以上説明したように、参考例1では、CH結合を有する高分子材料を含むトナーを用いて形成されて記録媒体に担持されたトナー画像に赤外線を照射してトナー画像を加熱する。赤外線発生部の一例である加熱素子901Hの表面層は、加熱されることによりトナー画像を加熱するための赤外線を発生する。加熱部の一例である加熱素子901Hの中心部は、通電により発熱して加熱素子901Hの表面層を加熱する。
(1)式は凹所の存在割合にも適用可能である。これは代表長さLを有する凹所から発生される電磁波はすべてトナーに吸収されるために、代表長さLが70%以上存在すれば色差異によって生じるトナーの溶け方に差異が生じないこととなるためである。つまり、多数ある微細構造のうち70%以上が代表長さLの範囲にあればよいことになる。
参考例1の効果)
参考例1では、加熱素子901Hの表面には、CH結合の赤外線吸収ピークの波長の1/2に対応する開口長を持たせて密集させた多数の凹所が形成されている。加熱素子901Hの表面に所定の微細構造を形成することにより、加熱素子901Hが発生する赤外線吸収波長のピークを3.2μm以上3.6μm以下に設定してある。加熱素子901Hの凹所は、CH結合の赤外線吸収ピークの波長の整数倍に対応する深さ方向の単位構造を有する。
言い換えれば、トナーや記録媒体を構成する分子の官能基における赤外線吸収を利用する。トナーの材料の高分子の固有の格子振動と共鳴する波長領域の赤外線を利用して、トナーのみならず記録媒体902の温度も同時に上昇させる。各色トナーや記録媒体902、搬送ベルトに共通に含まれるCH結合を加熱する。
このため、各色トナーに特別に添加剤等を加えることなく、各色トナーの共通に含まれる官能基の吸収波長を選択的にヒータから放射することができ、トナーの色差に左右されずにトナー画像を定着することが可能である。トナーに特別な添加剤を加えることなく、トナーの色差による定着性のばらつきを解消できる。
また、加熱素子901Hから放射される赤外線が既に特定の波長領域に絞られているので、光学フィルタを用いて特定波長だけを透過する構成よりも省エネルギでトナーを定着させることができる。同一材料同一形状で表面凹凸のみを省いた加熱素子901Hに光学フィルタを組み合わせて波長選択を行う構成よりも、与えられた入力エネルギを有効に放射できて省エネルギとなる。加熱源をより低温度で運転して所望の波長域の放射が得られるため、省エネルギ化、高速定着を達成することが可能である。
参考例1では、加熱素子901Hは、表面に密集した多数の凹所が形成されて通電により発熱するフィラメントである。このため、赤外線発生部から独立した加熱部を設ける場合に比較して加熱部の発熱を無駄なく利用できる。
参考例1では、フィラメントは、記録媒体の搬送方向に直角な方向に長いシート状に形成されている。このため、フィラメントの抵抗が高まって、フィラメントに流れる電流を少なくすることが可能となり、外側の電流供給回路における発熱を軽減できる。
参考例1では、プランクの法則から波長の短い光ほどエネルギ密度が高い。よって、加熱される官能基に光エネルギを与えるのも、波長が短いほど短時間で多量のエネルギを与えることが可能となる。
(変形例1)
図10は加熱素子の材料の別の例の説明図である。加熱素子に適する金属材料はニッケルには限らない。加熱素子に用いる金属材料は、融点が高いほど加熱源として高温にすることができるので好ましい。高融点の金属の例(括弧内は融点)は、タングステン(3410℃)、レニウム(3180℃)、オスミウム(3045℃)、タンタル(2996℃)、モリブデン(2610℃)、ニオブ(2468℃)、イリジウム(2454℃)である。他の例は、ルテニウム(2250℃)、ハフニウム(2222℃)、テクニチウム(2130.℃)、ロジウム(1966℃)、チタン(1668℃)である。
図10に示すように、各種の金属材料において、図7のニッケルの場合と等しく表面の微細構造を設定して、ニッケルについて上述した計算方法により、各種の金属材料における赤外線吸収特性を計算した。計算条件として、上述したように、凹凸の開口幅1.7μm、壁の厚さ0.1μm、凹凸の深さ3.4μmを設定した。上述したように、計算の境界条件は周期境界条件としたので、計算結果は無数に凹凸が存在している場合が想定されている。
図10に示すように、高融点金属の中でもチタン(W)、レニウム(Re)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、プラチナ(Pt)が、メチレン基の赤外線吸収ピーク波長3.4μm付近に赤外線放射ピークを効率良く形成できる。これらの金属材料における微細構造の凹凸の加工法としてはエッチング法が望ましいと考えられる。例えば、高速原子線エッチング法は、高融点金属材料を数ミクロンオーダーで加工することができるので望ましい。
(変形例2)
図11は微細構造の凹凸の平面形状の別の例の説明図である。図11中、(a)は六角孔(代表長さは対角線)、(b)は円孔(代表長さは直径)である。図5、図6では、直方体状の凹所を碁盤目に配置する立体構造を示した。しかし、図3に示す加熱素子901Hの表面の微細構造は、図11の(a)、(b)に示すように、円柱状やその他の多角形柱状の凹凸に置き換えてもよい。
(変形例3)
図12は微細構造を積層した加熱素子の説明図である。上述したように、微細構造の凹凸は、微細構造の凹凸の代表長さL=1.7μmの整数倍の深さを有し、不必要な波長の赤外線放射を減らすためには、凹部の深さは深いほどよいと考えられる。しかし、凹部の深さを深くする代わりに、図12に示すように、三次元的に凹部を積層して配置することで、単層の場合よりも波長3.4μmの赤外線の定在波の存在確率を高めることが可能である。
このような積層構造は、凹部が二次元的に広がった高融点金属のレイヤーを積み重ねて接合させる操作を繰り返すことでも形成できる。フォトリソグラフプロセス−エッチングを繰り返して三次元的に凹部を作成してもよい。三次元プリンタを用いて高融点金属粒子をレーザー照射により融合させて作成することも可能である。
以上説明したように、変形例3では、加熱素子901Hの凹部(溝)は、CH結合の赤外線吸収ピークの波長の整数倍に対応する深さ方向の単位構造を有し、当該単位構造は、凹部の深さ方向に複数段重ねて配置されている。
(変形例4)
図13は粒子の空隙で赤外線波長を規制する加熱素子の説明図である。図13に示すように、球状の高融点金属粒子を単純立方晶のような三次元的な配置で集積させて、球状の粒子で囲まれた空間を利用して、波長3.4μmの赤外線の増幅器を作成することも可能である。
(変形例5)
図5、図6に示す微細構造の凹凸の作成法として、ナノインプリント法も有効である。ナノインプリント法では、凹所の型となる凸部を配列した構造体を樹脂やシリコンなどで作成し、構造体の表面にニッケル無電解メッキなどで金属層を形成し、樹脂やシリコンを溶解除去して凹所が配列した立体構造を作成する。この場合、メッキとして使用できる金属が限定されてしまうが、大面積を作成するには都合がよい。
また、図5、図6に示す微細構造の凹凸の作成法として、レーザー加工、機械加工(切削、ドリルなど)も利用可能である。特にフェムト秒レーザーを用いた加工は、高融点金属のタングステンであっても、サブミクロンの微細パターンを瞬時に作成可能であるので、加熱源のフィラメントに成形した後に表面に直接加工することができる。
(変形例6)
一般的に、トナーに使用される樹脂としては、トナー像の現像、転写など定着以外の画像形成プロセスおよび、定着後の堅牢性などを考慮して最適なものが使用される。
したがって、本発明においては、トナーの基材としては、ポリエステル樹脂に限らない。一般的にトナーに用いられるCH結合が含まれている樹脂材料であれば、ポリエチレン樹脂、アクリル樹脂、スチレンアクリル酸樹脂なども基材として使用可能である。
参考例2>
図10に示すように、チタンは、同様に微細構造の凹凸を形成しても、他の高融点金属に比較して、波長3.4μmの赤外線を高い効率で放射することができる。そのため、チタンを用いて実際に加熱素子を試作して、トナー像の定着性能を評価した。具体的には、図14に示すように、シリコン基板に微細構造の凹凸を形成してチタン薄膜をコートすることにより加熱素子を試作した。図16に示すように、試作した加熱素子を真空引きした透明容器に収納して通電により加熱し、透明容器越しに赤外線を記録媒体の紙に照射して各色トナーの定着性能を評価した。
(加熱素子の製造方法)
図14は試作した加熱素子の表面構造の電子顕微鏡写真である。図15は試作した加熱素子の赤外線放射波長特性の説明図である。図14中、(a)は正面図、(b)は断面図である。
以下の手順で加熱素子を試作した。
(1)シリコン基板の表面にレジスト層を形成し、レジスト層をフォトリソグラフィー法により部分的に除去して格子パターンのマスク層を形成した。
(2)マスク層を形成したシリコン基板にドライエッチング処理を施して、シリコン基板の一方の表面に立体的な格子状の周期的な凹凸を持つ微細構造を形成して加熱素子の基板とした。形成された立体的な格子のサイズは、深さ3.4μm、格子の内法が縦横1.7μmである。垂直に凹凸を深く作成することが可能であるため、反応性イオンエッチング(いわゆるDEEP−RIE)法を採用した。
(3)表面に微細構造を形成した加熱素子の基板の表面にチタンをスパッタリング積層する金属製膜を行って、シリコンの微細構造の表面を約100nm程度の厚さのチタン層で被覆した。チタンを選択した理由は、図10に示すように、メチレン基の赤外線吸収ピーク波長3.4μm付近に赤外線放射ピークを効率良く形成できるからである。
(4)試作した加熱素子の赤外線吸収特性を、FT−IR(パーキンエルマ社 Specttraμm−One)にて測定した。
図15に示すように、同条件で形成した実施例2の加熱素子の演算による赤外線吸収特性(×印)を求めて、試作品の実施例2における測定結果と比較した。その結果、理論計算と試作品の実験結果とで赤外線吸収特性のピークを示す波長領域がほぼ一致していた。
(加熱素子の定着性能評価)
図16は試作した加熱素子を装備した定着装置の模式図である。図16に示すように、定着装置を試作して、試作した加熱素子1503を装備し、紙上のトナー像1504の定着性能を、以下の手順により評価した。加熱素子1503の凹所は、少なくとも表面が融点1600℃以上の金属の一例であるチタンで形成されている。
(1)加熱素子1503を、微細構造を形成した表面側を下向きにしてフッ化バリウムの真空容器1502内に設置した。加熱素子1503の酸化を防止するために、真空ポンプ1505にて真空容器1502内を真空引きした。
(2)ハロゲンランプ(ウシオ電機 1000W)1501を用いて真空容器1502の外側から赤外線を加熱素子1503の背面に集光して、加熱素子1503の温度を約1000℃まで上げた。真空容器1502、加熱素子1503の構造及び材料の制約から加熱の上限温度を1000℃に設定した。
(3)真空容器1502の下に未定着のイエローとブラックのトナー像1504を担持した普通紙を挿入して、10秒経過後のトナー像の定着性を評価した。定着性の評価項目は、目視による定着画像の光沢とブリスタ発生の有無とである。
(4)続いて、微細構造の凹凸を形成していないシリコン基板にチタンコートした比較例2の加熱素子で図16の試作した実施例2の加熱素子1503を置き換えて、同様の定着実験と評価とを行った。試作した実施例2の加熱素子1503と比較例2の加熱素子とにおいて、表2に示す評価項目を○×にて評価した。
表2に示すように、平板な比較例2の加熱素子に比べて、微細構造を表面に形成した実施例2の加熱素子1503のほうがトナー像1504の溶融状態の差異に起因する画像の光沢差、ブリスタの発生が抑えられている。平板な比較例2の加熱素子に比べて、微細構造を表面に形成した実施例2の加熱素子1503のほうが、イエローとブラックのトナー像の溶融状態の差が少ない。
参考例3>
参考例1、2では、トナーや記録媒体など被加熱部材を構成する高分子材料の分子にある官能基であるCH結合(メチレン基)と赤外線の吸収ピーク波長の関係を利用してトナー像を非接触加熱して記録媒体に定着させた。CH結合(メチレン基)は、トナーに含まれる樹脂材料を構成する代表的な官能基だからである。
しかし、トナー画像の加熱に利用できる赤外線吸収のピーク波長は、CH結合(メチレン基)のものには限らない。CH結合(代表吸収波長3.4μm)の他に、OH基(代表吸収波長2.8μm)、NH結合(代表吸収波長3.0μm)、CF結合(8.3μm、8.7μm)なども利用できる。したがって、トナーを構成する高分子に存在する結合、または官能基に起因する赤外吸収波長領域は、概ね2.6μm以上かつ、3.6μm以下である。このことから、トナー像または記録材へ照射される加熱用の光の最大強度を示す波長位置が2.6μm以上かつ3.6μm以下にあることが望ましい。
(OH結合による加熱)
参考例3では、OH基(代表吸収波長2.8μm)による赤外線吸収を利用してトナー像とともに記録媒体の紙を加熱する定着装置の例について説明する。また、記録媒体、トナー以外の加熱ベルト、搬送ベルトの材料にOH基が含まれる場合でも、同一の微細構造を表面に形成してトナー像の加熱/記録媒体への定着に利用できる点では同様に本発明を適用可能である。
図4に示すように、トナーの樹脂材料が官能基としてCH結合の他にOH基を有する場合、OH基の赤外線吸収ピーク波長である2.6μm〜3.2μmの波長に放射赤外線のピーク波長を設定した加熱素子によるトナー像の加熱が有効である。とくにトナーに含まれる高分子材料の分子の官能基にOH基が多いものの場合、有効である。OH基を選択的に加熱する赤外線であれば、トナー像が転写されている記録媒体の紙も分子構造中に豊富にOH基を含むため、記録媒体もトナー像と同時に加熱されて好ましい。
OH基の赤外線吸収ピークは、水素結合型と遊離型をあわせると2.6μm〜3.2μmとなる。このため、OH基を選択的に加熱する場合は、図3に示す加熱素子901H表面の微細構造の凹凸の代表長さとして1.3μm以上かつ1.6μm以下を設定する必要がある。参考例1で説明したように、凹凸の代表径1.3μm以上かつ1.6μm以下を二倍した波長2.6μm以上かつ3.2μm以下の赤外線が優先的に放射されるからである。微細構造の凹凸の作成方法は参考例1、2で説明したとおりである。
微細凹凸の代表長さの取り方、標準偏差などは前述の参考例1(加熱素子の構造)に示したものと同じであり、CH結合の吸収波長の中心をOH基の吸収波長の中心に変えればよい。
微細凹凸の占める割合に関しても同様に(1)式を適用可能である。これは代表長さLを有する凹所から発生される電磁波はすべてOH基を有する媒体に吸収されるために、代表長さLが70%以上存在すれば、加熱対象物に溶け方の差異や加熱むらが生じない。つまり、多数ある微細構造のうち70%以上が代表長さLの範囲にあればよいことになる。
図1に示すように画像形成装置100の定着装置90に実施例3のランプヒータ901が装備される。図3に示すように、ランプヒータ901は、ランプ形状に形成されて表面に微細構造を形成した加熱素子901Hを赤外線透過効率の高い透明管901G内に封入している。透明管901G内は、加熱素子901Hの酸化を防ぐために真空にするか不活性ガスを封入する。OH基の赤外線吸収ピーク波長は、中心で2.8μmなので透明管901Gは、石英ガラスでも良いが、より遠赤外線を透過する材料の方が望ましい。
OH基による赤外線吸収を利用する方法は、加熱時にトナー像が記録媒体に載っていて、記録媒体上でトナー像を加熱定着させる方式が望ましい。これは、紙に代表される記録媒体はセルロースで構成される。セルロースの高分子は、OH基を多数含むため、トナー像で吸収しきれなかった中心波長2.8μmの赤外線を記録媒体でも吸収して、トナー/記録材界面の温度上昇に寄与させることが可能なためである。
また、高分子材料として多種の分子構造が含まれることも多い。この場合にはCH結合とOH基が混在していることになるので、吸収波長域としては2.6μm〜3.6μmとなる。この場合には、実施例1に記載したものと合わせて加熱素子の放射強度の最大値を2.6μm〜3.6μmとすればよい。
参考例3の効果)
以上説明したように、参考例3では、水酸基(OH基)を有する材料で形成されてトナー画像を担持した記録媒体に赤外線を照射して少なくとも記録媒体を加熱する。加熱素子901Hの表面には、水酸基の赤外線吸収ピークの波長の1/2に対応する開口長を持たせて密集させた多数の凹所が形成されている。凹所は、水酸基の赤外線吸収ピークの波長の整数倍に対応する深さ方向の単位構造を有する。
記録媒体が紙の場合、紙のセルロース分子にはOH基が多数含まれるので、トナー像を透過した赤外線で記録媒体の紙を有効に加熱できるため、定着装置90の加熱効率が上がって都合がよい。
また、加熱素子901Hは、各色トナーに共通に含まれるOH基の吸収帯を有効に加熱することが可能な赤外線放射特性を有するため、イエロートナー像とブラックトナー像とをほぼ等しく加熱することができる。このため、トナーに特別な赤外線吸収剤を添加しなくても、イエロートナー像とブラックトナー像とをほぼ等しく加熱して、定着画像の光沢度の差異を解消可能である。これにより、参考例1よりも赤外線を有効利用して、加熱素子901Hの消費電力を節約できる。
また、加熱素子901Hから放射される赤外線エネルギが既に特定の波長領域に絞られているので、通常の加熱源に光学フィルタを組み合わせる構成よりも、与えられた入力エネルギを有効に放射できて省エネルギとなる。
参考例3では、被加熱部材としてトナーと紙を代表に説明したが、OH基を豊富に含む樹脂材料を含有する紙以外の記録媒体や、記録媒体の搬送ベルトを被加熱部材として設計する場合でも同様な電力節約効果を実現できる。
(変形例6)
高分子材料にアミノ基を含む場合には、アミノ基の赤外吸収域である2.7〜3.1μmの波長域の赤外線も有効である。参考例3では、アミノ基の赤外線吸収もOH基の赤外線吸収と同様にトナー像の加熱に寄与している。
<実施の形態>
図17は実施の形態における定着装置の構成の説明図である。図17に示すように、定着装置90は、図1に示す画像形成装置100に参考例1の定着装置を置き換えて装備される。
定着装置90は、定着ローラ912を、トナー画像を担持した記録媒体902のトナー画像担持面に当接させてトナー画像を加熱する熱圧方式である。定着装置90は、定着ローラ912と加圧ローラ913のニップ部でトナー像905を担持した記録媒体902を挟持搬送して、画像を記録媒体902に定着させる。定着ローラ912の表面層は、フッ化メチレン基を豊富に有する高分子材料を含む。
加圧ローラ913は、ステンレスの基材913aの表面にシリコンゴムの弾性層913bを設けている。定着ローラ912は、ステンレスの基材912aの表面にシリコンゴムの弾性層912bを設け、弾性層912bの表面を離型層912cで覆って構成される。離型層912cは、フッ素樹脂材料の一例であるポリテトラフルオロエチレン(PTFE)を主成分としているため、フッ化メチレン基を豊富に含んでいる。
定着ローラ912の離型層912cに対向させて加熱素子911が配置され、加熱素子911の背面側に反射鏡904が配置されている。反射鏡904は、加熱素子911の背面から逃げる赤外線を加熱素子911へ再入射させるために配置されている。
加熱素子911の離型層912cに対向する表面には、CF結合の赤外線吸ピークの波長に合わせた微細構造が形成されている。加熱素子911の表面には、CF結合の赤外線吸収ピークの波長の1/2に対応する開口長を持たせて密集させた多数の凹所が形成されている。当該凹所は、CF結合の赤外線吸収ピークの波長の整数倍に対応する深さ方向の単位構造を有する。
(CF結合による加熱)
定着ローラ912の表層にはトナーの離型性能、防汚性能の観点から、PTFE、PFAなどのフッ素樹脂材料が一般的に用いられる。フッ素樹脂材料の場合、CF結合が特徴的な吸収波長域を形成する。CF結合の場合、前述のように、波長ピークは8.3μm、8.7μmとなる。したがって、定着部材表面を構成する高分子に存在する結合、または官能基に起因する赤外吸収波長領域が8.2μm以上かつ8.8μm以下である。このことから、加熱用の光の発光強度のピークが8.2μm以上かつ8.8μm以下の赤外線発熱装置を用いることが好ましい。
この場合の放射素子の代表長さとしては、前述のCH結合と同じように、4.15μm、4.35μmとなる。素子の作成精度、吸収波長の誤差などを前述のCH結合の時と同じように考察して、素子の凹凸の代表長さは4.1〜4.4μmとなる。このため、赤外線発熱装置の周期的な凹凸格子構造の単位構造内法寸法が4.1μm以上かつ4.4μm以下であることが好ましい。
微細凹凸の代表長さの取り方、標準偏差などは前述の参考例1(加熱素子の構造)に示したものと同じであり、CH結合の吸収波長の中心をCF結合の吸収波長の中心に変えればよい。そのため、赤外線発生部の表面には、CF結合の赤外線吸収ピークの波長に応じた4.1μm〜4.4μmに対応する開口長を持たせて密集させた多数の凹所が形成されている。
微細凹凸の占める割合に関しても同様に(1)式を適用可能である。これは代表長さLを有する凹所から発生される電磁波はすべてCF結合を有する媒体に吸収されるためであり、代表長さLが70%以上存在すれば、表層材料の発熱が十分に起きることを意味する。つまり、多数ある微細構造のうち70%以上が代表長さLの範囲にあればよいことになる。
(加熱に必要なCF結合の個数)
定着ローラ912を十分に加熱して定着画像が得られるためのフッ素樹脂中に最低必要なCF結合の個数は、次のように求めることができる。上記[III]式より、赤外線代表波長λ=8.5μmにおける光子一個あたりのエネルギEは、プランクの法則より次式となる。
E=hC/λ= 6.6×10−34 × 3×10/(8.5×10−6
=2.33×10−20 [J/個]
代表的なフッ素樹脂(厚さ2.5.μm)の波長8.5μmにおける吸光度ABSを測定すると次式となる。
ABS=4.0
参考文献「光エネルギー工学 養賢堂2004年 p225」に示されるように、ランバート・ベールの法則を用いて波長8.5μmにおける吸光度ABSを光吸収率αに変換する。
α=1−1/exp(ABS) =0.98 ・・・[IV]
よって、光子1個当たりのエネルギのうち98%がCF結合に吸収されることになる。
一方、フッ素樹脂量(Φ50mm、長さ330mm、厚さ25μmの総量)は0.88g、比熱c=1.0 J/g/K程度であるので、フッ素樹脂全体を平均ΔT=150℃昇温させるために必要なエネルギQは次式となる。
Q=mcΔT=0.88×1.0×150=132 [J]
よって、光子一個当たりのエネルギの内98%がCF結合に吸収されるので、フッ素樹脂全体をΔT=150℃挙げるために必要なCF結合個数NCFは次式となる。
NCF=132/(2.33×10−20×0.98)
=5.8 ×1021 [個]
=0.96×10−3 [mol]
したがって、赤外領域の波長8.5μmに吸収をもつ結合または官能基を定着部材表面の表層中に0.96x10−3[mol]以上含むことが好ましい。そして、フッ素樹脂の基本骨格がCFで構成されていると仮定すると、CFの分子量は50のため、0.88gのフッ素樹脂材料に含まれるCFの数は次式となる。
0.88/50=0.0176 =17.6 ×10−3 [mol]
よって、0.96/17.6 = 0.0545 から5.4%程度のCF結合が含まれていれば、十分昇温することになる。なお、便宜的に8.5μmに吸収のある官能基としてCF結合を上げているが、上記計算で求められた官能基の個数は、CF以外でも8.5μmに吸収ピークを持つものの個数も含んでいる。
(実施の形態の効果)
以上説明したように、実施の形態では、定着ローラ912の外部から加熱素子911によって表面層のフッ素樹脂のみを効率的に加熱することが可能となる。この時、トナーや定着ローラのフッ素樹脂以外で構成されている部分は余り温度が上がらない。また、記録媒体902が定着ローラ912に巻き付いたときにも、記録媒体902は通常、CF結合を含まないので、温度が上がらず都合がよい。さらに、トナーを熱溶融するニップ部の直前で定着ローラ912を加熱することができるので、効率的に定着ローラ912を加熱して、定着ローラ912の表面を所定の温度まで上げる時間を短くできる。
<その他の実施形態>
本発明は、各色のトナーの材料に共通の赤外線吸収ピークの波長域の赤外線を用いてトナー画像を加熱する限りにおいて、参考例及び実施の形態の構成の一部または全部を、その代替的な構成で置き換えた別の実施の形態でも実施できる。
したがって、参考例及び実施の形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特に特定的な記載が無い限りは、本発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
例えば、図3に示すランプヒータ901の加熱素子901Hは、微細な密集した凹凸構造が形成された赤外線放射体から独立させて通電加熱層を設けてもよい。図3に示すランプヒータ901は、微細構造を全体に形成した線状のフィラメントを複数本平行に配置して赤外透過性の管内に封入したものでもよい。
赤外線放射体の加熱は通電加熱層への通電には限らない。電磁誘導(IH)加熱、ニクロム線加熱、ハロゲンランプ、セラミックスヒータ等に置き換えてもよい。参考例1では、被加熱部材としてトナーを説明したが、CH2を有する樹脂材料を含有する記録媒体や搬送ベルトを被加熱部材としてもよい。実施の形態では、定着ローラの加熱を説明したが、同様な構成で定着ベルトを加熱してもよい。
ローラ部材やベルト部材を未定着トナー像に接触させてトナーを熱変形させて定着させる定着装置のみならず、半定着画像又は定着画像を加熱する画像加熱装置においても本発明を実施できる。
画像形成装置は、1ドラム型/タンデム型の区別なく実施できる。感光体の数、帯電方式、静電潜像の形成方式、転写方式、定着方式等の区別無く実施できる。ここでは、トナー像の形成/転写に係る主要部のみを説明しているが、本発明は、必要な機器、装備、筐体構造を加えて、プリンタ、各種印刷機、複写機、FAX、複合機等、種々の用途の画像形成装置で実施できる。
90 定着装置
901 ランプヒータ
901H 加熱素子
901G 透明管
902 記録媒体
903 搬送ローラ
904 反射鏡
1501 ハロゲンランプ
1502 真空容器
1503 加熱素子
1504 トナー像
1505 真空ポンプ

Claims (3)

  1. トナー像を記録材に形成するトナー像形成手段と、記録材上のトナー像を昇温した定着部材にて記録材上に押し付け記録材上にトナーを定着させる熱圧方式の定着手段と、を有する画像形成装置において、
    前記定着部材表面を構成する高分子に存在する結合、または官能基に起因する赤外吸収波長領域が8.2μm以上かつ8.8μm以下であり、
    加熱用の光の発光強度のピークが8.2μm以上かつ8.8μm以下の赤外線発熱装置を有し、前記赤外線発熱装置により定着部材を昇温させることを特徴とする画像形成装置。
  2. 前記赤外線発熱装置の周期的な凹凸格子構造の単位構造内法寸法が4.1μm以上かつ4.4μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
  3. 赤外領域の波長8.5μmに吸収をもつ結合または官能基を前記定着部材表面の表層中に0.96×10 −3 [mol]以上含むことを特徴とする請求項1に記載の画像形成装置。
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