JP6288107B2 - 粉体塗料およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、粉体塗料およびその製造方法に関する。
粉体塗料は、塗料中に有機溶剤や水などの溶媒を用いず、顔料を含んだバインダー樹脂が配合されている粉末状塗料である。粉体塗料は直接金属等の被塗装物に吹き付けるため、細かい粒子で被塗装物が覆われるため、パウダーコーティングとも呼ばれる。
粉体塗料を構成する粉体粒子は静電気の力で被塗装物に付着する。一般的に、被塗装物はアースされ、そこに摩擦帯電等によって電荷が付与された粉体の塗料が付着する。その後、加熱(焼き付け)することによってバインダー樹脂が溶融して塗膜が形成される。
粉体塗料は、トルエン、キシレンなどの溶剤を使用しないため、VOC(Volatile Organic Compounds:揮発性有機物質)規制に対応でき、環境に優しい塗料として注目されている。また、被塗装物に塗着しなかった粉体塗料は回収して再使用できるため、資源を有効活用できるという利点もある。
一般的に粉体塗料は、樹脂、顔料、添加剤などを溶融混練した後、粉砕・分級して得られる。例えば、特開平05−098193号公報(欧州特許出願公開第0536791号明細書)では、粉体塗料用原料粒子を溶融混練して得られたペレットを粉砕することによって得られる、平均粒径が5〜20μmであり、かつ粒径が5μm以下の粒子の含有量が25重量%以下である粉体塗料が開示されている。また、特開平07−179790号公報(米国特許第5468813号明細書)では、同様に、バインダー樹脂および硬化剤を含む原料を溶融混練した後、粉砕、分級することにより、粉体塗料を得ている。この際、粉砕の条件を適宜設定することにより硬化剤の粒度特性を一定の範囲内とすると、粉体塗料の貯蔵安定性が向上し、塗装表面の平滑性が優れたものになるとしている。
一方、上記溶融混合・粉砕法とは別途の粉体塗料の製造方法も開発されている。例えば、特開2005−213507号公報(米国特許出願公開第2005/163925号明細書)では、樹脂粒子を水性分散物中で凝集して凝集粒子を生成し、凝集粒子を合一して融合粒子を生成することによって、粉体塗料組成物を得ている。この際、樹脂粒子は、着色剤/硬化剤の分散物とともに凝集して、合一して粉体粒子とすることができることが段落[0010]、[0040]に開示されている。
しかしながら、従来の粉体塗料は、塗膜形成時に塗膜が収縮するといった欠陥が生じたり、また、塗料を長期保管した場合に、凝集体の異物が発生するといった欠陥が生じ、塗膜の美観性や塗膜の強度が損なわれるという問題点があった。
したがって、本発明の目的は、塗膜欠陥が少なく、塗膜美観性に優れ、塗料の長期保管性にも優れ、さらに、塗膜強度が高い粉体塗料およびその製造方法を提供することにある。
上述した目的のうち少なくとも一つを実現するために、本発明の一側面を反映した粉体塗料は、樹脂粒子から少なくとも構成される粉体塗料であって、樹脂粒子は、多層樹脂微粒子を含む凝集体の融着物であり、多層樹脂微粒子は、最外層よりも内側の層に硬化剤を含む。
多層樹脂微粒子、凝集体、および融着物を示す概念図である。図1において、11は多層樹脂微粒子、11aは第1層、11bは第2層、11cは第3層、13は硬化剤、15は凝集粒子(凝集体)、16は着色剤、17は凝集体の融着物(樹脂粒子)を示す。
本発明の一実施形態は、樹脂粒子から少なくとも構成される粉体塗料であって、樹脂粒子は、多層樹脂微粒子を含む凝集体の融着物であり、多層樹脂微粒子は、最外層よりも内側の層に硬化剤を含む、粉体塗料である(以下、本実施形態を第1実施形態とする)。
第一実施形態の粉体塗料は、塗料の長期保管性に優れ、また、被塗装物に塗料を塗着した後の塗膜の収縮が少なく、塗膜美観性に優れ、さらに、塗膜強度が高い。
図1は本発明の粉体塗料に含まれる樹脂粒子の一実施形態を示す概念図である。(a)は3層からなる多層樹脂微粒子の模式的な拡大図を示し、少なくともバインダー樹脂と硬化剤を用いて形成した3層構造(第1層11a(コア部)+第2層11b+第3層11c)からなる多層樹脂微粒子11を示し、第2層11bに硬化剤13が内包されている。次いで、図1(b)の模式図(部分的に断面を図示)に示すように、複数の多層樹脂微粒子11が凝集することにより、多層樹脂微粒子の凝集体15を形成する。図1では、多層樹脂微粒子11に加えて、着色剤16が凝集体を形成している。さらに、図1(c)に示す外観図のように、凝集体15を融着して塊状にすることによって、凝集体15の融着物である樹脂粒子(粉体塗料粒子)17となる。なお、図1は理解を補助するための概念図であり、粒子数や粒径、含有量等は、これに拘束されるものではない。
第1実施形態に係る粉体塗料は、多層樹脂微粒子に硬化剤が内包されていること、および硬化剤が最表層に存在しないことに特徴を有する。
従来の溶融混合・粉砕法による粉体塗料の製造方法では、硬化剤を粉体塗料中で均一に分散させることが難しく、粉体塗料内で硬化剤の存在に偏りが生じていた。このため、塗膜形成時の硬化の際にも塗膜内で硬化の程度に差が生じ、塗膜の収縮による欠陥などが生じていた。また、硬化剤が不均一に粉体塗料内に存在するため、保管時に硬化剤濃度が高い部分の硬化反応が進行して粒子の凝集が発生し、粉体塗料内の硬化剤の低減に起因して、かような粉体塗料を用いて塗膜形成を行うと、塗膜の収縮欠陥が起こりやすかった。さらに、溶融混合・粉砕法による粉体塗料の製造方法では、小粒径とすることに限界があり、粒子サイズが比較的大きいものとなっていた。このため、塗膜を均一に形成することには限界があった。
また、上記特開2005−213507号公報(米国特許出願公開第2005/163925号明細書)で開示されているように、乳化凝集法により樹脂粒子とともに硬化剤を凝集させた場合であっても、硬化剤が粉体塗料中で均一に存在していないため、塗膜の収縮による欠陥などが生じていた。
これに対し、第1実施形態においては、個々の多層樹脂微粒子内に硬化剤が内包されている。この多層樹脂微粒子を凝集・融着して樹脂粒子を得るために、樹脂粒子内に硬化剤が均一に分散されており、粉体塗料内で硬化剤が均一に存在することができる。このため、塗膜硬化時の塗膜収縮が起きにくく、塗膜美観性に優れ、塗膜強度が高いものとなると考えられる。
一方、第1実施形態ではさらに硬化剤が最外層に含まれず、最外層よりも内側の層に含まれることも一特徴である。したがって、第1実施形態の粉体塗料では、硬化剤が表面に露出していない。このため、長期保管時に硬化反応が進行して粒子の凝集物が発生することも少ない。また、硬化剤が表面に露出していないために、長期保管後であっても、硬化剤の損失に起因する塗膜の収縮が起きにくい。
以下、本発明の実施の形態をさらに詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態のみには限定されない。また、本明細書において、範囲を示す「X〜Y」は「X以上Y以下」を意味する。また、特記しない限り、操作および物性等の測定は室温(20〜25℃)/相対湿度40〜50%の条件で測定する。
[多層樹脂微粒子]
多層樹脂微粒子は、バインダー樹脂および硬化剤を含み、複数の層(2層以上)から構成される(図1:多層樹脂微粒子)。複数層とすることで、硬化剤を最外層ではなく、最外層より内側の内層に含有させることができる。多層樹脂微粒子を構成する層の数は特に限定するものではないが、生産効率や、効果の飽和を考慮すると、2〜10層であることが好ましく、2〜5層であることがより好ましく、2または3層であることが好ましい。このような多層樹脂微粒子は、後述の製造方法の欄で述べるように、重合性単量体の重合を複数回にわたって行うことによって、得ることができる。
多層樹脂微粒子の体積平均粒径は50〜500nmであることが好ましく、80〜300nmであることがより好ましい。かような範囲に多層樹脂微粒子の粒子径があることで、硬化剤の分散性がより良好となり、塗膜硬化がより均一となる。ここで、多層樹脂微粒子の体積平均粒径は、多層樹脂微粒子の分散液中の粒子の粒子径を測定することによって得られる。また、本明細書において、体積平均粒径は、特に記載のない限り、下記実施例に記載の方法(レーザー回析式粒度分布測定装置を用いた方法)によって測定された値を採用する。
また、多層樹脂微粒子を構成する各層の厚さは適宜設定されるが、第1段階の重合で形成されるコア部の体積平均粒径は、50〜300nmであることが好ましく、60〜200nmであることがより好ましい。コア部の体積平均粒径は、製造段階の分散液中の粒子の粒径を測定することによって測定することができる。
(多層樹脂微粒子を構成する樹脂:バインダー樹脂)
バインダー樹脂は、粉体塗料の塗膜形成を担う役割を果たし、また、場合により、着色剤同士を結び付ける。バインダー樹脂は、重合性単量体を重合して得られる重合体であることが好ましい。各層を構成するバインダー樹脂は同じ組成であってもよいし、異なる組成であってもよい。
バインダー樹脂の粉体塗料中の含有量は、塗膜形成性、その他の添加剤との含有量等を考慮して適宜設定されるが、粉体塗料全体の質量に対して40〜95質量%であることが好ましく、60〜80質量%であることがより好ましい。
粉体塗料は、塗膜形成温度で加熱することによって、バインダー樹脂が樹脂粒子に含まれる硬化剤により架橋されることが好ましい。したがって、バインダー樹脂としては、少なくとも硬化剤を含有する層を構成するバインダー樹脂として硬化剤と反応する置換基を有する樹脂を用いることが好ましく、全ての層を構成するバインダー樹脂として硬化剤と反応する置換基を有する樹脂を用いることがより好ましい。かような樹脂を用いることによって、塗膜形成時の加熱によりバインダー樹脂が架橋されて硬化反応が効率的に進行することができる。
硬化剤と反応する置換基としては、水酸基、カルボキシル基、アミノ基、イミダゾール基、チオール基、酸無水物等が挙げられる。
硬化剤と反応する置換基を有する樹脂は、上記重合性単量体として、硬化剤と反応する置換基を有する重合性単量体を1種類以上使用することによって得られる。
硬化剤と反応する置換基を有する重合性単量体の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシメチルメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシメチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、ヒドロキシフェニルメタクリレート、カルボキシエチルアクリレート、カルボキシメチルアクリレート、カルボキシフェニルアクリレート、2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−アクリロイロキシエチルフタル酸、2−アクリロイロキシエチル−2ヒドロキシエチル−フタル酸、2−アクリロイルオキシエチルアシッドフォスフェート、2−アクリロイロキシエチルコハク酸、2−ヒドロキシ−3−フェイキシプロピルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、イミダゾール−4−アクリル酸、3−(1H−イミダゾール−4−イル)アクリル酸エチル、エテンチオール、プロピレンチオール等が挙げられる。これらの硬化剤と反応する置換基を有する重合性単量体は、1種単独でも2種以上併用してもよい。
硬化剤と反応する置換基を有する重合性単量体の全重合性単量体中の含有量は特に限定されるものではないが、硬化剤との反応を考慮して、硬化剤を含有する層を構成する重合性単量体100質量部に対して、硬化剤と反応する置換基を有する重合性単量体の量が1〜95質量部であることが好ましく、1〜70質量部であることがより好ましく、1〜35質量部であることがさらに好ましく、1〜20質量部であることがさらに好ましい。
重合性単量体としては、塗膜形成の観点から、上記硬化剤と反応する置換基を有する重合性単量体以外の重合性単量体を用いてもよい。硬化剤と反応する置換基を有する重合性単量体以外の重合性単量体としては、例えば、下記のビニル系重合性単量体が挙げられる。これらビニル系重合性単量体は1種単独で用いても2種以上併用してもよい。
以下に、ビニル系重合性単量体の具体例を示す。
(1)スチレンあるいはスチレン誘導体
スチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、p−フェニルスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン等が挙げられる。
(2)メタクリル酸エステル誘導体
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸t−ブチル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸ジエチルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル等が挙げられる。
(3)アクリル酸エステル誘導体
アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸t−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸ラウリル、アクリル酸フェニル等が挙げられる。
(4)オレフィン類
エチレン、プロピレン、イソブチレン等が挙げられる。
(5)ビニルエステル類
プロピオン酸ビニル、酢酸ビニル、ベンゾエ酸ビニル等が挙げられる。
(6)ビニルエーテル類
ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等が挙げられる。
(7)ビニルケトン類
ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、ビニルヘキシルケトン等が挙げられる。
(8)N−ビニル化合物類
N−ビニルカルバゾール、N−ビニルインドール、N−ビニルピロリドン等が挙げられる。
(9)その他
ビニルナフタレン、ビニルピリジン等のビニル化合物類、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミド等のアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体等が挙げられる。
塗膜平滑性、保存安定性の点から、各重合で得られる各層のバインダー樹脂のガラス転移温度(Tg)は、25〜70℃であることが好ましく、30〜60℃であることがより好ましい。なお、ガラス転移温度は、ASTM D3418に準拠して、示差走査熱量計(島津製作所製:DSC−60A)を用いて得ることができる。この装置(DSC−60A)の検出部の温度補正はインジウムと亜鉛との融点を用い、熱量の補正にはインジウムの融解熱を用いた。サンプルは、アルミニウム製パンを用い、対照用に空パンをセットし、昇温速度10℃/分で昇温し、200℃で5分間ホールドし、200℃から0℃まで液体窒素を用いて−10℃/分で降温し、0℃で5分間ホールドし、再度0℃から200℃まで10℃/分で昇温を行い、2度目の昇温時の吸熱曲線から解析をおこない、オンセット温度をTgとする。
また、塗膜平滑性、保存安定性の点から、各重合で得られる各層のバインダー樹脂の重量平均分子量は、1万〜30万であることが好ましく、1.5万〜20万であることがより好ましい。重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
(硬化剤)
多層樹脂微粒子は最外層よりも内側の層に硬化剤を含む。多層樹脂微粒子の最外層には硬化剤を含まない。
硬化剤は、塗膜形成温度で加熱することによって、多層樹脂微粒子を構成する樹脂と硬化反応を生じる硬化剤であることが好ましい。塗膜形成温度の加熱によって硬化反応で塗膜を硬化できるので、塗膜強度が上がる。かような硬化剤は、塗膜形成温度および樹脂種を考慮して適宜選択される。具体的には、樹脂と架橋反応を生じる置換基を有する化合物であって、塗膜形成温度以上で架橋反応が進行するものを選択する。
塗膜形成温度は特に限定されるものではないが、従来の塗膜形成の手順で使用されている温度範囲に設定することが好ましい。但し、粉体塗料製造時に硬化反応が進行しないように、少なくとも粉体塗料製造時の樹脂粒子融着温度より高く設定する。具体的には、100〜200℃であることが好ましい。
硬化剤としてはTGIC等のエポキシ基を含有する化合物、HAA(βヒドロキシアルキルアミド)、ブロックイソシアネート化合物等が挙げられる。特にブロックイソシアネート化合物が好ましい。ブロックイソシアネート化合物としては、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、トリエンジイソシアネート、ポリメリックMDI、トリジンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、リジンジイソシアネートメチルエステル、水添キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、メチレンビス(4,1−シクロヘキシレン)=ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂肪族、脂環式又は芳香族イソシアネートをフェノール類、ε−カプロラクタム類、アルコール類等でブロックしたものが挙げられる。かような硬化剤としては市販品を用いてもよく、市販品としては、例えば、ベスタゴンB−1530(エボニック社製)などが挙げられる。これらの硬化剤は単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
硬化剤の含有量は、塗膜形成時に硬化反応が適切に進行するよう適宜設定されるが、粉体塗料を構成する樹脂成分に対して5〜500質量%であることが好ましく、5〜250質量%であることがより好ましく、5〜100質量%であることがさらに好ましい。
硬化剤の含有位置は特に限定されるものではなく、最外層よりも内層に含まれていれば特に限定されない。また、複数層にまたがって硬化剤が含有されていてもよい。好ましくは、硬化剤は、最内層に含まれる、および/または、最外層に隣接する内層(外から2番目の層)に含有されていることが好ましい。
[樹脂粒子]
本発明の実施形態に係る粉体塗料は、少なくとも樹脂粒子を含む。
樹脂粒子は、多層樹脂微粒子を含む凝集体の融着物である。この際、凝集体は、着色剤を含むことが好ましく、その他添加剤を含んでいてもよい。かような多層樹脂微粒子を含む凝集体およびその融着物は、例えば、後述の製造方法に記載の方法によって得ることができる。
樹脂粒子の体積基準メディアン径は、より良好な塗膜を得られることから、4.5〜30μmであることが好ましく、5.5〜20μmであることがより好ましい。体積基準メディアン径は、実施例の方法によって測定された値を採用する。
(着色剤)
多層樹脂微粒子の凝集体(凝集体の融着物である樹脂粒子)には、必要に応じて着色剤が含有されていてもよい。着色剤としては、一般の粉体塗料で使用される顔料、染料、及び、これらの混合物を用いることができる。光輝顔料等であってもよい。無着色の透明なクリア塗膜を形成する場合に用いられる粉体塗料の場合には、着色剤は不要である。
(各着色剤の具体例)
黒色の着色剤としては、たとえば、ファーネスブラック、チャンネルブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、ランプブラック等のカーボンブラック、更にマグネタイト、フェライト等の磁性粉も使用可能である。
マゼンタもしくはレッド用の着色剤としては、C.I.ピグメントレッド2、同3、同5、同6、同7、同15、同16、同48:1、同53:1、同57:1、同60、同63、同64、同68、同81、同83、同87、同88、同89、同90、同112、同114、同122、同123、同139、同144、同146、同149、同150、同163、同166、同168、同170、同177、同178、同184、同185、同187、同188、同202、同206、同207、同209、同214、同222、同238、同256、同257、同269等がある。
また、オレンジもしくはイエロー用の着色剤としては、C.I.ピグメントオレンジ同13、31、同34、同36、同38、同43、同62、C.I.ピグメントイエロー12、同13、同14、同15、同17、同74、同81、同83、同93、同94、同97、同120、同138、同139、同151、同154、同155、同162、同175、同180、同181、同185、同191、同242等がある。
さらに、グリーンもしくはシアン用の着色剤としては、C.I.ピグメントブルー2、同3、同15、同15:1、同15:2、同15:3、同15:4、同16、同17、同25、同60、同62、同66、C.I.ピグメントグリーン7等がある。
光輝顔料としては、例えば、アルミニウム粉顔料、ニッケル粉顔料、ステンレス粉顔料、銅粉、ブロンズ粉、金粉、銀粉、雲母顔料、グラファイト顔料、ガラスフレーク顔料、薄片化加工したプラスチック顔料、及び鱗片状酸化鉄顔料等を挙げることができる。
これらの着色剤は1種単独で用いることもできるし、2種以上併用してもよい。
着色剤の含有量は、適宜設定すればよいが、粉体塗料全体の質量に対して好ましくは1〜30質量%、より好ましくは2〜25質量%の範囲で用いる。かような範囲であると着色剤の機能を確保できる。
また、着色剤の大きさとしては、一次平均粒子径で、10〜200nmであることが好ましく、10〜150nmがより好ましい。
[その他添加剤]
第一実施形態に係る粉体塗料は必要に応じて粉体塗料に通常用いられる添加剤を含んでいても構わない。添加剤としては、ジメチルシリコーンやメチルシリコーンなどのシリコーン類およびアクリルオリゴマーなどの表面調整剤、ベンゾインやベンゾイン誘導体などのベンゾイン類に代表される発泡防止剤、硬化促進剤(または硬化触媒)、可塑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、顔料分散剤、難燃剤、流動付与剤、紫外線吸収剤、アミン化合物、イミダゾール化合物、カチオン重合触媒等の硬化促進剤(または硬化触媒)、体質顔料や防錆顔料などを例示することができる。体質顔料としては、例えば、硫酸バリウム、炭酸バリウム、炭酸カルシウム、クレー、シリカ粉、珪藻土、タルク、塩基性炭酸マグネシウム、及びアルミナホワイト等の無機顔料や、内部構造が多孔質、中空構造又は架橋タイプ等の樹脂ビーズを代表とするプラスチック顔料を挙げることができる。また、防錆顔料としては、例えば、縮合リン酸カルシウム、リン酸アルミニウム、縮合リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、亜リン酸アルミニウム、亜リン酸亜鉛、亜リン酸カルシウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸カルシウム、及びモリブデン酸マンガン等が挙げられる。
他の添加剤の含有量は所望の性能を発揮させるために適宜設定されるが、粉体塗料100質量部に対して、通常0〜10質量部程度である。
[粉体塗料の製造方法]
本発明の粉体塗料の好適な一実施形態は、樹脂粒子から少なくとも構成される粉体塗料の製造方法であって、最外層よりも内側の層に硬化剤を含む多層樹脂微粒子を得る工程(1)と、得られた多層樹脂微粒子を凝集し、融着させることにより樹脂粒子を得る工程(2)と、を含む、粉体塗料の製造方法である。
さらに、冷却工程、濾過・洗浄工程、乾燥工程などが含まれうる。
[多層樹脂微粒子を得る工程(1)]
多層樹脂微粒子の製造方法は特に限定されるものではないが、小粒径の多層樹脂微粒子を製造でき、また簡便に多層構造とすることができることから、重合法による製造方法が好ましい。重合法としては、具体的には、小粒径の多層樹脂微粒子が得られることから、水系媒体中に重合性単量体を添加して重合を行う、懸濁重合や乳化重合が好ましく、より好ましくは乳化重合法で製造することが好ましい。
したがって、好適には、工程(1)は、第1の重合性単量体を水系媒体に添加して第1の重合性単量体を重合することによって樹脂微粒子分散液を調製する工程(A)と、該樹脂微粒子分散液中に第2の重合性単量体を添加して第2の重合性単量体を重合することによって樹脂微粒子分散液を調製する工程(B)と、を有し、必要により、さらに樹脂微粒子分散液中に重合性単量体を添加して該重合性単量体を重合する工程を繰り返す。すなわち、工程(A)において第1段階の重合を行い、工程(B)において、第2段階の重合を行い、さらに必要により第3段階以降の重合を行う。かように複数回の重合反応を段階的に行うことによって、多層樹脂微粒子を得ることができる。
1.第1段階の重合(工程(A))
第1段階の重合によってコア部が形成される。
この際用いられる第1の重合性単量体としては、上記バインダー樹脂の欄に記載した重合性単量体を用いることができる。
単量体の水系媒体への混合や重合の際には、単量体の分散を良好なものとし、重合が円滑に進行するよう、機械的エネルギーを用いて撹拌しながら行うことが好ましい。かような機械的エネルギーを付与する機器としては、ホモジナイザー、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機、高圧衝撃式分散機、アルティマイザーなどの分散機が挙げられる。
重合性単量体の重合は、常圧、減圧、加圧のいずれでも行うことができるが、好ましくは常圧(又はその近傍、通常±10mmHg)で行われる。また、重合工程における重合温度は、特に限定されず、重合性単量体の重合が進行する範囲において適宜選択することができる。重合温度としては、例えば、50℃以上150℃以下であることが好ましく、60℃以上130℃以下であることがより好ましい。さらに、重合時間も重合性単量体の重合が進行する範囲において適宜選択することができ、例えば、0.5〜5時間であることが好ましく、0.5〜3時間であることがより好ましい。
重合性単量体および重合開始剤の水系媒体への添加順序は特に限定されるものではなく、(1)重合開始剤を水系媒体に添加した後、重合性単量体(混合物)を添加する方法、(2)重合性単量体(混合物)を水系媒体に添加した後、重合性開始剤を添加する方法のどちらであってもよい。
第1段階の重合において、硬化剤を含まない場合には、簡便性の観点から、(1)重合開始剤を水系媒体に添加した後、重合性単量体(混合物)を添加する方法が好ましく、重合性単量体(混合物)を滴下しながら添加することがより好ましい。
一方、第1段階の重合において、硬化剤を単量体とともに分散させる際には、(2)重合性単量体(混合物)および硬化剤を水系媒体に添加した後、重合性開始剤を添加する方法が好ましい。硬化剤の分散性を良好にするために、硬化剤および第1の重合性単量体の混合物を水系媒体に添加した後、機械的エネルギーを付与して撹拌することが好ましく、ホモジナイザー、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機、高圧衝撃式分散機、アルティマイザーなどの分散機を用いることが好ましい。分散機としては市販品を用いることもでき、例えば、「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)を用いることができる。乳化重合の際には、界面活性剤を用いて第1の重合性単量体および硬化剤を乳化・分散させることが好ましい。
硬化剤を最内層のコア部に含有させる場合には、工程(A)において、硬化剤を第1の重合性単量体と共に水系媒体中に添加した後、第1の重合性単量体を重合させればよい。
(水系媒体)
「水系媒体」とは、少なくとも水が50質量%以上含有されたものをいい、水以外の成分としては、水に溶解する有機溶剤を挙げることができ、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、アセトン、メチルエチルケトン、ジメチルホルムアミド、メチルセルソルブ、テトラヒドロフランなどが挙げられる。これらのうち、樹脂を溶解しない有機溶剤であるメタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノールのようなアルコール系有機溶剤を使用することが好ましい。好ましくは、水系媒体として水のみを使用する。
水系媒体の使用量は、重合性単量体100質量部に対して、200〜3500質量部であることが好ましい。水系媒体の使用量を上記の範囲とすることで、水系媒体中において油相液を所望の粒径に乳化分散させることができる。
(界面活性剤)
乳化重合法による重合では、通常界面活性剤が用いられる。
界面活性剤としては、特に限定されるものではないが、たとえば、以下に示すイオン性界面活性剤が好ましいものとして使用できる。イオン性界面活性剤には、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、脂肪酸塩等があり、スルホン酸塩には、たとえば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、アリールアルキルポリエーテルスルホン酸ナトリウム、3,3−ジスルホンジフェニル尿素−4,4−ジアゾ−ビス−アミノ−8−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム、o−カルボキシベンゼン−アゾ−ジメチルアニリン、2,2,5,5−テトラメチル−トリフェニルメタン−4,4−ジアゾ−ビス−β−ナフトール−6−スルホン酸ナトリウム等がある。
硫酸エステル塩には、例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム等があり、脂肪酸塩には、オレイン酸ナトリウム、ラウリン酸ナトリウム、カプリン酸ナトリウム、カプリル酸ナトリウム、カプロン酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウム、ポリオキシエチレン−2−ドデシルエーテル硫酸ナトリウム等がある。
界面活性剤としては、ノニオン性界面活性剤を使用することも可能で、具体的には、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイドとポリエチレンオキサイドの組み合わせ、ポリエチレングリコールと高級脂肪酸とのエステル、アルキルフェノールポリエチレンオキサイド、高級脂肪酸とポリエチレングリコールのエステル、高級脂肪酸とポリプロピレンオキサイドのエステル、ソルビタンエステル、等がある。
これらの界面活性剤は1種単独で用いてもよいし、2種以上併用してもよい。
(分散安定剤)
分散した重合性単量体の液滴の凝集を防ぐために、分散安定剤が添加されてもよい。
分散安定剤としては、例えば、リン酸三カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸亜鉛、リン酸アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナ等のものがある。また、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、エチレンオキサイド付加物、高級アルコール硫酸ナトリウム等、一般に界面活性剤として使用されるものも分散安定剤として使用できる。
また、分散安定性の向上のための樹脂微粒子としては、粒径が0.5〜3μmのものが好ましく、具体的には、ポリメタクリル酸メチル樹脂微粒子、ポリスチレン樹脂微粒子、ポリスチレン−アクリロニトリル樹脂微粒子などが挙げられる。
(連鎖移動剤)
バインダー樹脂の分子量調整のために、公知の連鎖移動剤を用いることもできる。具体的には、オクチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、tert−ドデシルメルカプタン、n−オクチル−3−メルカプトプロピオン酸エステル、ターピノーレン、四臭化炭素、α−メチルスチレンダイマー等がある。
(重合開始剤)
重合工程においては、ラジカル重合開始剤の存在下で重合を行うことが好ましい。
重合性単量体を重合する際に用いられる重合開始剤としては、特に限定されるものではなく、公知の重合開始剤を使用することができる。乳化重合法で樹脂微粒子を形成する場合は水溶性ラジカル重合開始剤が使用可能である。水溶性ラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩、アゾビスアミノジプロパン酢酸塩、アゾビスシアノ吉草酸及びその塩、過酸化水素等がある。本実施形態では、乳化重合法を好適に使用するため、過硫酸カリウム(KPS)がより好ましい。
重合開始剤の添加量は、重合が進行するように適宜設定されるが、重合時の重合性単量体100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましい。
上記のようにして第1段階の重合により、(単層の)第1の樹脂微粒子分散液が調製される。
得られた樹脂微粒子の体積平均粒径は50〜300nmであることが好ましく、60〜200nmであることがより好ましい。
2.第2段階の重合(工程(B))
次いで、第2段階の重合を行う。第2段階の重合によってコア部の外に第2層目の樹脂層が形成される。多層樹脂微粒子が2層から構成される場合には、第2段階の重合で重合は終了となる。
この際用いられる第2の重合性単量体としては、上記バインダー樹脂の欄に記載した重合性単量体を用いることができる。また、第1段階の重合で用いられた第1の重合性単量体と、第2の重合性単量体とは、同一の種類であっても異なる種類であってもよいが、融着時の相溶性や生産性の観点からは同一の種類であることが好ましい。また、用いられる重合開始剤、界面活性剤、連鎖移動剤等も第1段階の重合と同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
第2段階の重合においても、第1の樹脂微粒子分散液への第2の重合性単量体、および重合開始剤の添加順序は特に限定されるものではなく、(1)重合開始剤を第1の樹脂微粒子分散液へ添加した後、第2の重合性単量体を添加する方法、(2)第2の重合性単量体を第1の樹脂微粒子分散液へ添加した後、重合開始剤を添加する方法のどちらであってもよい。
第2段階の重合において、硬化剤を含まない場合には、簡便性の観点から、(1)重合開始剤を第1の樹脂微粒子分散液へ添加した後、重合性単量体(混合物)を添加する方法が好ましく、重合性単量体(混合物)を滴下しながら添加することがより好ましい。
一方、第2段階の重合において、硬化剤を第2の重合性単量体とともに分散させる際には、(2)重合性単量体(混合物)を第1の樹脂微粒子分散液に添加した後、重合性開始剤を添加する方法が好ましい。硬化剤の分散性を良好にするために、硬化剤および第2の重合性単量体の混合物を第1の樹脂微粒子分散液に添加した後、機械的エネルギーを付与して撹拌することが好ましく、ホモジナイザー、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機、高圧衝撃式分散機、アルティマイザーなどの分散機を用いることが好ましい。分散機としては市販品を用いることもでき、例えば、「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)を用いることができる。乳化重合の際には、界面活性剤を用いて第2の重合性単量体および硬化剤を乳化・分散させることが好ましい。
また、好適な重合条件は、第1段階の重合と同様である。
上記のようにして第2段階の重合により、2層の樹脂微粒子分散液が調製される。
得られた樹脂微粒子の体積平均粒径は50〜400nmであることが好ましく、80〜250nmであることがより好ましい。
3.(必要により)第3段階以降の重合
多層樹脂微粒子が3層以上の場合には、第3段階以降の重合がさらに行われる。この際用いられる重合性単量体としては、上記バインダー樹脂の欄に記載した重合性単量体を用いることができる。また、用いられる重合性単量体は、第1段階の重合で用いられた第1の重合性単量体および第2の重合性単量体と、同一の種類であっても異なる種類であってもよいが、融着時の相溶性や生産性の観点からは同一の種類であることが好ましい。また、用いられる重合開始剤、界面活性剤、連鎖移動剤等も第1段階/第2段階の重合と同一であってもよいし、異なるものであってもよい。
また、重合の際の重合性単量体、重合開始剤の添加順序や、好適な分散方法、重合条件等は第1/第2段階の重合と同様であるので説明を割愛する。
(硬化剤の添加)
本実施の形態においては、最外層よりも内側の層に硬化剤が含まれる。したがって、硬化剤を含有させたい層を形成するときに硬化剤を重合性単量体とともに添加することによって、硬化剤が最外層よりも内側の層に含有された多層樹脂微粒子を形成することができる。そして、最外層を形成する際には、硬化剤は用いられない。硬化剤を含む層は、最外層よりも内側であれば1層でも、2層以上であってもよい。
本発明の実施形態においては、硬化剤が最内層に含まれる、および/または、硬化剤が最外層に隣接する層に含まれることが好ましい。これは、硬化剤が表面に露出しないため、保管時の硬化反応の進行による凝集物の発生を抑制することができ、保存安定性に優れるためである。
したがって、好適には、工程(1)において、(I)工程(A)において、硬化剤を第1の重合性単量体と共に水系媒体中に添加した後、第1の重合性単量体を重合する、および/または、(II)最外層を形成するための重合性単量体を重合する工程の直前の重合性単量体を重合する工程において、硬化剤を重合性単量体と共に水系媒体中に添加した後、重合性単量体を重合することが好ましい。
[凝集・融着工程]
次いで、水系媒体中に凝集剤を添加して前述の樹脂微粒子を凝集させる。
凝集性付与のために、凝集剤の添加前に、予め水酸化ナトリウム水溶液等の塩基を樹脂微粒子の分散液に加えて、pHを9〜12に調整しておくことが好ましい。
次いで、分散液に、凝集剤を添加する。添加温度および添加速度は特に限定されるものではないが、25〜35℃で5〜15分かけて撹拌しながら添加することが好ましい。
使用可能な凝集剤は特に限定されるものではないが、金属塩から選択されるものが好適に使用される。例えば、ナトリウム、カリウム、リチウム等のアルカリ金属の塩等の1価の金属の塩、例えば、カルシウム、マグネシウム、マンガン、銅等の2価の金属の塩、鉄、アルミニウム等の3価の金属の塩等がある。具体的な塩としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、硫酸銅、硫酸マグネシウム、硫酸マンガン等が挙げられ、これらの中で特に好ましくは2価の金属の塩である。2価の金属の塩を使用すると、より少量で凝集を進めることができる。これらは1種または2種以上を組み合わせて使用してもよい。
凝集剤の使用量は、分散液中の固形分全量100質量部に対して、5〜20質量部が適当である。
凝集させる際には、凝集剤を添加した後に分散液を放置する放置時間(加熱を開始するまでの時間)をできるだけ短くすることが好ましい。放置時間は、通常30分以内とされ、好ましくは10分以内であり、より好ましくは2〜6分である。凝集剤を添加する温度は特に限定されないが、バインダー樹脂のガラス転移温度以下であることが好ましい。
凝集の際には加熱、昇温することが好ましい。加熱温度は70〜95℃の範囲で行うことが好ましい。また、昇温速度としては1〜15℃/分の範囲で行うことが好ましい。
凝集粒子が所望の粒径になったところで、反応系内の各種の微粒子の凝集を停止させてもよい。凝集の停止は、反応系内における微粒子の凝集作用を抑制するために、凝集工程における微粒子の凝集作用が促進されるpH環境から脱する方向にpH調整することができる化合物からなる凝集停止剤を添加することにより、行われる。また、下記記載のように凝集と融着とが同時に進行する場合には、塩化ナトリウム水溶液等を添加して、凝集および融着を停止することができる。
上記で得られた凝集体を融着することによって樹脂粒子が得られる。凝集体の融着方法は特に限定されるものではないが、容易な操作で確実に融着が行われることから、融着は加熱により行われることが好ましい。
この融着工程における融着温度は、各層に含有されるバインダー樹脂のガラス転移温度Tg以上であることが好ましい。
また、凝集・融着時の最高温度が塗膜形成時の硬化温度よりも低いことが好ましい。凝集・融着時の最高温度をかような温度に設定することで、硬化剤が失活せず、塗膜形成時の加熱により、バインダー樹脂と架橋構造を形成することができ、塗膜の強度が一層向上する。凝集・融着時の最高温度は、塗膜形成時の硬化温度よりも10℃以上低いことが好ましい。
さらに、バインダー樹脂のTg以上の温度に到達した後、分散液の温度を一定時間保持することにより、融着を継続させる。これにより、粒子の成長(バインダー樹脂粒子および着色剤粒子の凝集)と、融着(粒子間の界面の消失)とを効果的に進行させることができる。保持時間としては、融合がされる程度行えばよく、融着時の最高温度で0.5〜10時間程度行えばよい。
融着は、樹脂粒子の体積基準メディアン径を測定し、4.5〜30μmになるまで行うことが好ましい。成長の停止は、塩化ナトリウム水溶液等を添加して行うことができる。体積基準メディアン径は、例えば、コールター・ベックマン社製コールターマルチサイザー3によって測定できる。
樹脂微粒子を得る工程(2)は、多層樹脂微粒子と、着色剤と、を凝集し、融着させる工程であることが好ましい。かような工程により、塗料に着色剤を簡便かつ安定的に配合することができる。また、多層樹脂微粒子とともに着色剤を水系媒体中に分散し昇温して凝集・融着させることがより好ましい。かような方法により、着色剤を樹脂粒子に均一に分散することができる。
着色剤を水系媒体中に分散させる際には、着色剤の水系媒体分散液を調製し、該分散液と、多層樹脂微粒子の水系媒体分散液とを用いて、凝集・融着を行うことが好ましい。
着色剤の水系媒体分散液を調製する際に用いられる水系媒体は上記で説明した通りであり、この水系媒体中には、分散安定性を向上させる目的で、界面活性剤や樹脂微粒子などが添加されていてもよい。
着色剤の分散は、機械的エネルギーを利用して行うことができ、このような分散機としては、特に限定されるものではなく、上記で挙げたように、低速せん断式分散機、高速せん断式分散機、摩擦式分散機、高圧ジェット式分散機、超音波分散機、あるいは、高圧衝撃式分散機アルティマイザーなどが挙げられ、具体的には例えば(株)スギノマシン製、HJP30006などを挙げることができる。
[冷却工程]
融合後に冷却し、融合粒子を得る。冷却の工程においては、0〜45℃まで冷却することが好ましい。
融合して得た融合粒子は、ろ過などの固液分離工程や、必要に応じて洗浄工程、乾燥工程を経て粉体塗料粒子とすることができる。
[濾過・洗浄工程]
この濾過・洗浄工程では、冷却された樹脂粒子の分散液から、水等の溶媒を用いて、樹脂粒子を固液分離して樹脂粒子を濾別する濾過処理と、濾別された樹脂粒子(ケーキ状の集合物)から界面活性剤などの付着物を除去する洗浄処理とが施される。具体的な固液分離および洗浄の方法としては、遠心分離法、アスピレータ、ヌッチェなどを使用する減圧濾過法、フィルタープレスなどを使用する濾過法などが挙げられ、これらは特に限定されるものではない。この濾過・洗浄工程においては適宜、pH調整や粉砕などを行ってもよい。このような操作は繰り返し行ってもよい。
[乾燥工程]
この乾燥工程では、洗浄処理された樹脂粒子に乾燥処理が施される。この乾燥工程で使用される乾燥機としては、オーブン、スプレードライヤー、真空凍結乾燥機、減圧乾燥機、静置棚乾燥機、移動式棚乾燥機、流動層乾燥機、回転式乾燥機、撹拌式乾燥機などが挙げられ、これらは特に限定されるものではない。なお、乾燥処理された粒子中のカールフィッシャー電量滴定法にて測定される水分量は、5質量%以下であることが好ましく、2質量%以下であることがより好ましい。
また、乾燥処理された粒子同士が、弱い粒子間引力で凝集して凝集体を形成している場合には、当該凝集体を解砕処理してもよい。ここに、解砕処理装置としては、ジェットミル、コーミル、ヘンシェルミキサー、コーヒーミル、フードプロセッサーなどの機械式の解砕装置を使用することができる。
[塗装物]
粉体塗料は、例えば、静電粉体スプレー又は摩擦帯電塗装機等による静電粉体塗装により被塗布物に塗布することができる。すなわち本発明の他の一実施形態は、上記粉体塗料を被塗布物に塗布して得られる塗装物である。
塗装の際の焼付条件(塗膜形成温度)は、硬化剤がバインダー樹脂と反応して架橋構造を形成できる温度であることが好ましい。上記塗膜形成温度は特に限定されるものではないが、粉体塗料製造時の樹脂粒子融着温度以上であることが好ましく、100〜200℃であることがより好ましい。
また、本実施形態の粉体塗料は、小粒径の樹脂微粒子内に硬化剤を均一に分散させることで、硬化が均一になるだけでなく、硬化剤の存在が一部にかたよることがなくなるため、硬化時の塗膜の収縮による欠陥が起きず、塗膜強度に優れた塗膜を得ることができる。
粉体塗料は、従来から使用されている基材に塗装することができる。該基材としては、例えば、鉄鋼、亜鉛、アルミニウム、銅、及びスズ等の金属素材、これらの金属に表面処理を施したもの、並びにこれらの金属素材に必要に応じてプライマーや中塗り塗装を施した下地塗装膜;耐熱性樹脂;ガラス;セラミックス等が挙げられる。
また、適用される分野としては、例えば、車両関係、家電関係、建築関係、道路関係、及び事務用機器等に適用することができる。
以下、本発明の具体的な実施例を比較例と対比して説明する。実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いる場合があるが、特に断りがない限り、「質量部」あるいは「質量%」を表す。
<測定方法>
(多層樹脂微粒子、着色剤粒子等の体積平均粒径)
多層樹脂微粒子、着色剤粒子等の平均粒径または体積平均粒子径は、レーザー回析式粒度分布測定装置(マイクロトラック社製、UPA−150)で測定した。
<実施例1>
〔粉体塗料1の作製〕
以下のようにして粉体塗料1を作製した。
(多層樹脂微粒子1の作製)
(1)樹脂粒子1Hの作製
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、アニオン系界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム7.08質量部をイオン交換水3,010質量部に溶解させて界面活性剤溶液を作製した。そして、この界面活性剤溶液を窒素気流下で230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、反応容器内の温度を80℃に昇温させた。
次いで、界面活性剤溶液に、重合開始剤である過硫酸カリウム(KPS)9.2質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた重合開始剤溶液を投入し、反応容器内の温度を75℃にした。その後、
が混合されてなる混合液〔a1〕を1時間かけて滴下し、更に、75℃で2時間撹拌して重合することにより樹脂粒子1Hが分散されてなる樹脂粒子分散液〔1H〕を作製した。樹脂粒子分散液〔1H〕を構成する粒子の体積平均粒径は110nmであった。
(2)樹脂粒子1HMの作製
撹拌装置を取り付けたフラスコ内に、
を投入し、更に、εカプロラクタムブロックイソシアネート(硬化剤)(ベスタゴンB−1530(エボニック社製))163.8質量部を添加し、90℃に加熱して上記の化合物が混合されてなる混合液〔a2〕を調製した。
一方、撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム1.6質量部をイオン交換水2,700質量部に溶解させた界面活性剤溶液を作製し、これを98℃に加熱し、この界面活性剤溶液に上記の樹脂粒子分散液〔1H〕を固形分換算で28質量部添加した後、混合液〔a2〕を投入した。更に、循環経路を有する機械式分散装置「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)により2時間混合分散を行って分散液(乳化液)を調製した。
次いで、この乳化液に、過硫酸カリウム(KPS)5.1質量部をイオン交換水240質量部に溶解させた開始剤溶液とイオン交換水750質量部を添加し、この反応系を98℃で2時間撹拌することにより重合を行い、樹脂粒子1H表面に樹脂が被覆された複合構造を有する樹脂粒子1HMが分散されてなる樹脂粒子分散液〔1HM〕を作製した。樹脂粒子分散液〔1HM〕を構成する粒子の体積平均粒径は175nmであった。
(3)多層樹脂微粒子1の作製
前記の樹脂粒子分散液〔1HM〕に、過硫酸カリウム(KPS)7.4質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加して、温度を80℃に調整した後、
が混合されてなる混合液〔a3〕を1時間かけて滴下し、この滴下終了後、80℃に維持したままで2時間にわたって加熱、撹拌して重合を行った。その後、反応系を28℃に冷却して、樹脂粒子1HMの表面に樹脂が被覆された複合構造を有する多層樹脂微粒子1が分散されてなる多層樹脂微粒子1分散液を調製した。多層樹脂微粒子1の体積平均粒径は220nmであった。
(粉体塗料粒子の形成(塩析/融着(会合・融着)工程)
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を備えた反応容器に、
を投入し、液温を30℃に調整した。その後、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10.0に調整した。
上記反応系を撹拌させておき、この状態で塩化マグネシウム・6水和物60質量部をイオン交換水60質量部に溶解してなる水溶液を10分間かけて上記反応系に添加した。添加後、3分間放置した後、昇温を開始して、この系を60分間かけて90℃まで昇温させて、樹脂粒子の会合を行って粒子を成長させた。粒子の成長は「マルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)」を用いて会合粒子の粒径測定を行うことで確認した。そして、体積基準メディアン径(D50)が5.5μmになった時、塩化ナトリウム40.2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解させてなる水溶液を反応系に添加して粒子の成長を停止させ、30℃まで冷却した。
生成した粉体塗料粒子分散液をろ過し、35℃のイオン交換水で繰り返し洗浄した後、40℃の温風で乾燥して、「粉体塗料1」を作製した。
<実施例2>
〔粉体塗料2の作製〕
以下のようにして粉体塗料2を作製した。
(多層樹脂微粒子2の作製)
(1)樹脂粒子2Hの作製
撹拌装置を取り付けたフラスコ内に、
を添加し、90℃に加熱して、上記の化合物が混合されてなる混合液〔b1〕を調製した。一方、撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム1.6質量部をイオン交換水2,700質量部に溶解させた界面活性剤溶液を作製し、これを98℃に加熱し、この界面活性剤溶液に混合液〔b1〕を投入した。更に、循環経路を有する機械式分散装置「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)により2時間混合分散を行って分散液(乳化液)を調製した。
次いで、この乳化液に、過硫酸カリウム(KPS)5.1質量部をイオン交換水240質量部に溶解させた開始剤溶液とイオン交換水750質量部を添加し、この反応系を98℃で2時間撹拌することにより重合を行い、硬化剤を含有する樹脂粒子2Hが分散されてなる樹脂粒子分散液〔2H〕を作製した。樹脂粒子分散液〔2H〕を構成する粒子の体積平均粒径は128nmであった。
(2)多層樹脂微粒子2の作製
前記の樹脂粒子分散液〔2H〕に、過硫酸カリウム(KPS)7.4質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた開始剤溶液を添加して、温度を80℃に調整した後、
が混合されてなる混合液〔b2〕を1時間かけて滴下し、この滴下終了後、80℃に維持したままで2時間にわたって加熱、撹拌して重合を行った。その後、反応系を28℃に冷却して、樹脂粒子2Hの表面に樹脂が被覆された複合構造を有する多層樹脂微粒子2が分散されてなる多層樹脂微粒子2分散液を調製した。多層樹脂微粒子2の体積平均粒径は175nmであった。
実施例1の(粉体塗料粒子の形成(塩析/融着(会合・融着)工程)において、「多層樹脂微粒子1分散液」の代わりに「多層樹脂微粒子2分散液」を使用した以外は同様にして「粉体塗料2」を作製した。
<実施例3>
実施例1の(2)樹脂粒子1HMの作製において、εカプロラクタムブロックイソシアネートを218.4質量部にした以外は同様にして粉体塗料3を作製した。
<比較例1>
〔粉体塗料4の作製〕
実施例1の(1)樹脂粒子1Hの作製と同様にして樹脂粒子1Hを作製した。
(2)樹脂粒子4HMの作製
撹拌装置を取り付けたフラスコ内に、
を添加し、90℃に加熱して上記の化合物が混合されてなる混合液〔c1〕を調製した。
一方、撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム1.6質量部をイオン交換水2,700質量部に溶解させた界面活性剤溶液を作製し、これを98℃に加熱し、この界面活性剤溶液に上記の樹脂粒子分散液〔1H〕を固形分換算で28質量部添加した後、混合液〔c1〕を投入した。更に、循環経路を有する機械式分散装置「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)により2時間混合分散を行って分散液(乳化液)を調製した。
次いで、この乳化液に、過硫酸カリウム(KPS)5.1質量部をイオン交換水240質量部に溶解させた開始剤溶液とイオン交換水750質量部を添加し、この反応系を98℃で2時間撹拌することにより重合を行った。その後、冷却して樹脂粒子1H表面に硬化剤を含有する樹脂が被覆された複合構造を有する多層樹脂微粒子4が分散されてなる多層樹脂微粒子4分散液を作製した。
実施例1の(粉体塗料粒子の形成(塩析/融着(会合・融着)工程)において、「多層樹脂微粒子1分散液」の代わりに「多層樹脂微粒子4分散液」を使用した以外は同様にして「粉体塗料4」を作製した。
<比較例2>
〔粉体塗料5の作製〕
(1)樹脂粒子5Hの作製
撹拌装置を取り付けたフラスコ内に、
を投入し、更に、εカプロラクタムブロックイソシアネート36.4質量部を添加し、90℃に加熱して上記の化合物が混合されてなる混合液〔d1〕を調製した。
一方、撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、ドデシル硫酸ナトリウム1.6質量部をイオン交換水2,700質量部に溶解させた界面活性剤溶液を作製し、これを98℃に加熱し、混合液〔d1〕を投入した。更に、循環経路を有する機械式分散装置「クレアミックス(CLEARMIX)」(エム・テクニック(株)製)により2時間混合分散を行って分散液(乳化液)を調製した。
次いで、この乳化液に、過硫酸カリウム(KPS)5.1質量部をイオン交換水240質量部に溶解させた開始剤溶液とイオン交換水750質量部を添加し、この反応系を98℃で2時間撹拌することにより重合を行い、樹脂粒子分散液〔5H〕を作製した。
実施例1の(粉体塗料粒子の形成(塩析/融着(会合・融着)工程)において、「多層樹脂微粒子1分散液」の代わりに「樹脂粒子分散液〔5H〕」を使用した以外は同様にして「粉体塗料5」を作製した。
<比較例3>
〔粉体塗料6の作製〕
(1)樹脂粒子5H’の作製
比較例2の樹脂粒子5Hの作製において、εカプロラクタムブロックイソシアネートを97.08質量部にした以外は同様にして樹脂粒子分散液5H’を作製した。
(2)樹脂粒子6Hの作製
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を取り付けた反応容器に、アニオン系界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウム7.08質量部をイオン交換水3,010質量部に溶解させて界面活性剤溶液を作製した。そして、この界面活性剤溶液を窒素気流下で230rpmの撹拌速度で撹拌しながら、反応容器内の温度を80℃に昇温させた。
次いで、界面活性剤溶液に、重合開始剤である過硫酸カリウム(KPS)9.2質量部をイオン交換水200質量部に溶解させた重合開始剤溶液を投入し、反応容器内の温度を75℃にした。その後、
が混合されてなる混合液〔e1〕を1時間かけて滴下し、更に、75℃で2時間撹拌して重合することにより樹脂粒子6Hが分散されてなる樹脂粒子分散液〔6H〕を作製した。
(粉体塗料粒子の形成(塩析/融着(会合・融着)工程)
撹拌装置、温度センサ、冷却管、窒素導入装置を備えた反応容器に、
を投入し、液温を30℃に調整した。その後、5モル/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加してpHを10.0に調整した。
上記反応系を撹拌させておき、この状態で塩化マグネシウム・6水和物60質量部をイオン交換水60質量部に溶解してなる水溶液を10分間かけて上記反応系に添加した。添加後、3分間放置した後、昇温を開始して、この系を60分間かけて90℃まで昇温させて、樹脂粒子の会合を行って粒子を成長させた。粒子の成長は「マルチサイザー3(ベックマン・コールター社製)」を用いて会合粒子の粒径測定を行うことで確認した。そして、体積基準メディアン径(D50)が5.5μmになった時、塩化ナトリウム40.2質量部をイオン交換水1000質量部に溶解させてなる水溶液を反応系に添加して粒子の成長を停止させ、30℃まで冷却した。
生成した粉体塗料粒子分散液をろ過し、35℃のイオン交換水で繰り返し洗浄した後、40℃の温風で乾燥して、「粉体塗料6」を作製した。
なお、上記粉体塗料1〜6において、バインダー樹脂の含有量は、粉体塗料100質量%に対して粉体塗料1、2、4〜6が65.5質量%、粉体塗料3が61.3質量%であった。
<評価方法>
・硬化時の塗膜収縮性(塗膜外観)
粉体塗料を35%RH、40℃下で1週間放置後評価を行った。
Al基板上に厚さ100μmの粉体塗料粒子層を形成後、180℃のホットプレート上で20分加熱し、硬化時の塗膜収縮性を目視観察した。判断基準は以下の通り。
○:塗膜外観に問題なし(塗膜収縮は見られない)
△:一部塗膜収縮が見られる。
×:全体的に塗膜収縮が見られる。
・長期保管性
サンプル管に粉体塗料試料を0.5g計量し、タッピングデンサーで600回タッピングを行った。その後サンプル管を35%RH、55℃下で3日間放置した。次いで48メッシュの篩上に試料を入れ、10秒振動後、メッシュ上に残存した試料の質量を記録した。初めの試料の質量とメッシュ上に残存した試料の質量比率から粉体塗料の凝集率(質量%)を算出した。判断基準は以下の通り。
○:0%以上10%未満(長期保管性良好)
△:10%以上50%未満(使用上問題なし)
×:50%以上(長期保管性に問題あり)
・強度
粉体塗料を35%RH、40℃下で1週間放置後評価を行った。
Al基板上に厚さ100μmの粉体塗料粒子層を形成後、180℃のホットプレート上で20分加熱し、24時間室温に放置後、JIS K 5600−5−4:1999に規定される方法に準じて、鉛筆引っかき試験を行った。判断基準は以下の通り。
◎:3H (極めて良好)
○:2H (良好)
△:H (使用上問題なし)
×:F (問題あり)
結果を下記表1に示す。
上記表1に記載のとおり実施例1〜3の粉体塗料は、硬化時の塗膜収縮性(塗膜外観)、長期保管性に優れ、塗膜強度も良好であった。一方、最外層に硬化剤が含まれる比較例1および2の粉体塗料は、硬化時の塗膜収縮性、長期保管性が悪く、また、塗膜強度も劣るものであった。硬化剤含有樹脂粒子と、硬化剤非含有樹脂粒子を混合し、凝集融着した粉体塗料である比較例3では、さらに塗膜強度に劣る結果となった。
本出願は、2013年11月18日に出願された日本特許出願番号2013−238108号に基づいており、その開示内容は、参照され、全体として、組み入れられている。

Claims (12)

  1. 樹脂粒子から少なくとも構成される粉体塗料であって、
    前記樹脂粒子は、多層樹脂微粒子を含む凝集体の融着物であり、
    前記多層樹脂微粒子は、最外層よりも内側の層に硬化剤を含む、粉体塗料。
  2. 前記凝集体は、着色剤を含む、請求項1に記載の粉体塗料。
  3. 前記樹脂粒子の体積基準メディアン径が4.5〜30μmである、請求項1または2に記載の粉体塗料。
  4. 前記多層樹脂微粒子の体積平均粒径が80〜300nmである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の粉体塗料。
  5. 樹脂粒子から少なくとも構成される粉体塗料の製造方法であって、
    最外層よりも内側の層に硬化剤を含む多層樹脂微粒子を得る工程(1)と、
    得られた多層樹脂微粒子を凝集し、融着させることにより樹脂粒子を得る工程(2)と、を含み、
    前記凝集・融着時の最高温度が塗膜形成時の硬化温度よりも低い、粉体塗料の製造方法。
  6. 前記工程(1)が、
    第1の重合性単量体を水系媒体に添加して第1の重合性単量体を重合することによって樹脂微粒子分散液を調製する工程(A)と、該樹脂微粒子分散液中に第2の重合性単量体を添加して第2の重合性単量体を重合することによって樹脂微粒子分散液を調製する工程(B)と、を有し、必要により、さらに樹脂微粒子分散液中に重合性単量体を添加して該重合性単量体を重合する工程を繰り返す、請求項5に記載の粉体塗料の製造方法。
  7. 前記工程(A)において、硬化剤を前記第1の重合性単量体と共に水系媒体中に添加した後、第1の重合性単量体を重合する、請求項6に記載の粉体塗料の製造方法。
  8. 最外層を形成するための重合性単量体を重合する工程の直前の重合性単量体を重合する工程において、硬化剤を重合性単量体と共に水系媒体中に添加した後、重合性単量体を重合する、請求項6または7に記載の粉体塗料の製造方法。
  9. 前記工程(2)が、多層樹脂微粒子と、着色剤と、を凝集し、融着させる工程である、
    請求項5〜8のいずれか1項に記載の粉体塗料の製造方法。
  10. 前記融着が加熱により行われる、請求項5〜9のいずれか1項に記載の粉体塗料の製造方法。
  11. 前記工程(2)が、得られた多層樹脂微粒子とともに着色剤を水系媒体中に分散した後、昇温して、多層樹脂微粒子および着色剤を凝集し、融着させることにより樹脂粒子を得る工程である、請求項5〜10のいずれか1項に記載の粉体塗料の製造方法。
  12. 請求項1〜4のいずれか1項に記載の粉体塗料を被塗布物に塗布して得られることを特徴とする塗装物。

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