以下に、本発明に係るコンバインの実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、或いは実質的に同一のものが含まれる。
図1は、コンバイン1を示す概略側面図(一部断面)である。図2は、コンバイン1を示す概略平面図(一部透視)である。図3は、コンバイン1の内部構造を示す説明図である。なお、詳細には、図3は、脱穀搬送系を示す概略側断面図である。
コンバイン1は、走行しながら穀稈を刈り取って脱穀するものである。なお、以下では、図1および図2に示すように、コンバイン1の前進方向を「前」、コンバイン1の後退方向を「後」とし、前後方向と直交する方向を左右方向とする。また、左右方向において、コンバイン1の前方に向かって右側を「右」とし、コンバイン1の前方に向かって左側を「左」とする。
図1および図2に示すように、コンバイン1は、走行装置3と、刈取装置4と、脱穀装置5とを備える。走行装置3は、コンバイン1の機体フレーム2の下方に設けられ、左右一対のクローラによってコンバイン1を走行させる。刈取装置4は、機体フレーム2の前方に設けられ、圃場の穀稈を収穫する。脱穀装置5は、機体フレーム2の上方左側に設けられ、穀稈を脱穀し、脱穀した穀粒を選別する。
脱穀装置5で選別した穀粒は、脱穀装置5の右側に設けられたグレンタンク6に貯留される。貯留された穀粒は、排出筒7によって外部へ排出される。また、機体フレーム2の上方右側には、オペレータが搭乗する操縦席8が設けられ、さらに、操縦席8の下方には、エンジンE(図3参照)を搭載するエンジンルーム9が設けられる。
図1および図3に示すように、刈取装置4は、主枠となる刈取フレーム10を備える。刈取フレーム10は、刈取後フレーム11と、刈取後フレーム11の先端部において左右方向に延在する刈取伝動ケース12と、刈取伝動ケース12に設けられた刈取縦フレーム13とを備える。また、刈取後フレーム11の基部は、筒体24の右側に偏倚した部分に取り付けられる。なお、筒体24には、機体フレーム2に設けられた左右一対の懸架台20,20に回動可能に軸支された回転軸21が内装される。
また、刈取装置4は、分草杆15と、引起装置16と、刈刃装置17と、搬送装置18とをさらに備える。分草杆15は、刈取装置4の前側に設けられ、圃場面に植立した穀稈(植立穀稈)を分草する。引起装置16は、分草杆15の後側に設けられ、倒伏状態の植立穀稈を引き起こす。刈刃装置17は、引起装置16の後側に設けられ、植立穀稈の株元を切断する。搬送装置18は、引起装置16および刈刃装置17の後側に設けられ、刈り取った穀稈(刈取穀稈)を脱穀装置5の前方に設けられた脱穀部搬送装置35へ向けて搬送する。また、搬送装置18は、刈取穀稈の株元側を搬送する株元搬送装置18aと、穂先側を搬送する穂先搬送装置18bとを備える。
刈取縦フレーム13の中間部には、後方へ向けて延出する刈取横フレーム14が設けられる。刈取横フレーム14の後側には、左右方向に延在する支軸25に基部が回転自在に支持された手扱ぎ規制部材26と、手扱ぎ規制部材26の開閉状態を検知する手扱ぎセンサ27とが設けられる。
なお、通常の刈取り作業時には、手扱ぎ規制部材26は、支軸25を中心に時計まわりに回動され、刈取横フレーム14の後側と、挟持杆33の前側に取り付けられた補助挟扼杆33a上方の空間とを覆う規制状態となる。手扱ぎセンサ27は、手扱ぎ規制部材26が規制状態の場合にOFFとなる。一方、手扱ぎ作業時には、手扱ぎ規制部材26は、支軸25を中心に反時計まわりに回動され、刈取横フレーム14の後側と、補助挟扼杆33a上方の空間とを開放する非規制状態となる。手扱ぎセンサ27は、手扱ぎ規制部材26が非規制状態の場合にONとなる。
図1および図3に示すように、脱穀装置5には、上部に、穀稈の脱穀を行う脱穀部30が設けられ、下部に、脱穀した穀粒の選別を行う選別部31が設けられる。脱穀部30の前壁および後壁には、扱ぎ胴5D(図6参照)の回転軸が軸支され、脱穀部30の左壁には、扱ぎ胴5Dに沿って扱ぎ口32が形成される。また、脱穀部30には、扱ぎ口32に沿って穀稈の株元を挟持して後側へ搬送する脱穀部搬送装置35が設けられる。また、選別部31には、唐箕5Gと、一番回収部5Iと、二番回収部5Jとが前側から順に設けられる。なお、唐箕5G、一番回収部5Iおよび二番回収部5Jについては、図6を用いて後述する。
また、図1および図3に示すように、脱穀部搬送装置35の上部には、挟持杆33が設けられ、挟持杆33の下方には、フィードチェン34が設けられる。なお、挟持杆33は、脱穀部30の上部カバー30aに取り付けられ、スプリングなどの付勢手段によってフィードチェン34へ向けて付勢される。
図3に示すように、フィードチェン34は、第1スプロケット36、第2スプロケット37および第3スプロケット38に掛け回される。第1スプロケット36は、チェンレール39の前側に回転自在に設けられる。第2スプロケット37は、チェンレール39の前側に設けられ、前側ギヤボックス50(図4参照)に支持される。第3スプロケット38は、チェンレール39の後側に設けられ、後側ギヤボックス80(図5参照)に支持される。なお、チェンレール39は、懸架台20,20に回転自在に支持された支持フレーム22に取り付けられる。
また、図2および図3に示すように、操縦席8に設けられたサイドパネル40の前側には、油圧式無段変速装置を操作して、機体の走行速度を変更する変速操作部(たとえば、主変速レバー)41が設けられる。また、変速操作部41の後側には、植立穀桿の倒伏状態などに応じてトランスミッションの有段式の副変速装置を切り換える副変速レバー42が設けられる。また、副変速レバー42のグリップ部には、脱穀スイッチ43と、刈取スイッチ44とが設けられる。さらに、操縦席8の前側には、エンジンEの回転速度を変更する操作を受け付ける、アクセルダイヤルやアクセルペダルなどの回転速度操作部45が設けられる。
エンジンEの回転動力は、機体フレーム2の前側に設けられた油圧式無段変速装置と、脱穀装置5に設けられたカウンタ軸101(図7参照)へ伝達される。なお、エンジンEの回転動力を伝達する動力伝達経路において、エンジンEの出力軸100(図7参照)とカウンタ軸101との間には、脱穀スイッチ43の操作によって接続/接続解除状態となる脱穀クラッチが設けられる。
また、油圧式無段変速装置に伝達された回転動力は、油圧式無段変速装置によって増減速され、トランスミッションへ伝達される。トランスミッションに伝達された回転動力は、走行装置3および刈取装置4へ伝達される。なお、トランスミッションと刈取装置4との間の動力伝達経路には、刈取スイッチ44の操作によって接続/接続解除状態となる刈取クラッチが設けられる。
刈取装置4に伝達された回転動力は、前側ギヤボックス50へ伝達される。前側ギヤボックス50に伝達された回転動力は、第2スプロケット37を介してフィードチェン34へ伝達される。フィードチェン34に伝達された回転動力は、フィードチェン34において穀桿を挟持する作用面側を前側から後側へ向けて駆動する。なお、刈取装置4と前側ギヤボックス50との間の動力伝達経路には、動力伝達経路の接続/接続解除状態を切り換える前側クラッチ60を構成するテンションアーム62(図4参照)などが設けられる。
一方、カウンタ軸101に伝達された回転動力は、後側ギヤボックス80へ伝達される。後側ギヤボックス80に伝達された回転動力は、第3スプロケット38を介してフィードチェン34へ伝達される。フィードチェン34に伝達された回転動力は、フィードチェン34において穀桿を挟持する作用面側を前側から後側へ向けて駆動する。なお、後側ギヤボックス80には、動力伝達経路の接続/接続解除状態を切り換える後側クラッチ90を構成する爪クラッチ85(図5参照)などが設けられる。
また、脱穀部搬送装置35では、通常の刈取り作業時、すなわち、手扱ぎセンサ27がOFFとなった状態で、かつ、後側センサ89がON、すなわち、後述する爪クラッチ85の接続が解除された状態の場合には、エンジンEの回転動力は、前側伝動部FDを介してフィードチェン34へ伝達される。
このように、後側センサ89がONとなった場合に、エンジンEの回転動力を前側伝動部FDを介してフィードチェン34へ伝達するため、後側センサ89が断線などによって作動不良に陥った場合に、エンジンEの回転動力を、前側伝動部FDと後側伝動部BDとから同時にフィードチェン34へ伝達する、いわゆる同時駆動による機器の破損を防止することができる。なお、この場合には、前側センサ54はOFFとなる。
一方、手扱ぎ作業時、すなわち、手扱ぎセンサ27がONとなった状態で、かつ、前側センサ54がON、すなわち、後述するテンションアーム62が下方へ移動してベルト61の張力が弛緩状態の場合には、エンジンEの回転動力は、後側伝動部BDを介してフィードチェン34へ伝達される。このように、前側センサ54がONとなった場合に、エンジンEの回転動力を後側伝動部BDを介してフィードチェン34へ伝達するため、前側センサ54が断線などによって作動不良に陥った場合に、エンジンEの回転動力を、前側伝動部FDと後側伝動部BDとから同時にフィードチェン34へ伝達する、いわゆる同時駆動による機器の破損を防止することができる。なお、この場合には、後側センサ89はOFFとなる。
次に、図4および図5を参照してフィードチェン34の伝動系について説明する。図4は、前側伝動部FDを示す概略側面図である。図5は、後側伝動部BDを示す概略側面図である。図4に示すように、前側伝動部FDは、前側ギヤボックス50と、前側クラッチ60とを備える。なお、前側伝動部FDは、フィードチェン34の刈取装置4側に設けられ、エンジンEからの回転動力をフィードチェン34へ伝達する(図3参照)。また、前側ギヤボックス50および前側クラッチ60は、懸架台20と脱穀部30の前壁とを連結する連結プレート23に取り付けられる。
前側ギヤボックス50には、前側クラッチ60を介してエンジンEの回転が入力される入力軸51と、前側ギヤボックス50の内部で増減速された回転を出力する出力軸52と、前側クラッチ60のテンションアーム62の基部を回転自在に支持する支軸53と、テンションアーム62の回動を検出する前側センサ54とが設けられる。なお、入力軸51には、前側クラッチ60のベルト61が巻回されるプーリ51aが支持され、出力軸52には、フィードチェン34が巻回される第2スプロケット37が支持される。
また、前側ギヤボックス50が取り付けられた状態では、前側ギヤボックス50の上部に入力軸51が位置し、下部に出力軸52が位置し、入力軸51と出力軸52との間に支軸53が位置し、支軸53の下方に前側センサ54が位置する。これにより、懸架台20と脱穀部30の前壁との間に形成された空間を有効に利用可能となり、テンションアーム62の回動を正確に検出することができる。
また、前側クラッチ60の上部には、回転軸21に支持されたプーリ21aに伝達されたエンジンEの回転動力を前側ギヤボックス50の入力軸51に支持されたプーリ51aへ伝動するために、プーリ21aとプーリ51aとの間にベルト61が巻回される。プーリ21aに巻回されたベルト61の外周部には、ベルトカバー64が設けられる。ベルトカバー64は、懸架台20の上部に取り付けられたブラケット28にボルトなどによって着脱自在に取り付けられる。これにより、ベルト61上へのフィードチェン34に受け渡される穀桿に混在している藁屑などの堆積を抑制し、ベルト61のスリップを防止することができるとともに、ベルトカバー64を容易に着脱することができる。
また、プーリ51aに巻回されたベルト61の外周部には、ベルト61の蛇行を防止するために、ベルトストッパ55が設けられる。また、ベルト61の下方には、ベルト61の張力を緊張状態、すなわち、プーリ21aに伝達されたエンジンEの回転動力をプーリ51aへ伝達する状態と、ベルト61の張力を弛緩状態、すなわち、プーリ21aに伝達されたエンジンEの回転動力をプーリ51aへ伝達しない状態とに切り換えるテンションアーム62が設けられる。
テンションアーム62は、ベルト61を押圧するローラ62aと、ローラ62aを回転自在に支持するアーム62bとを備える。ローラ62aは、プーリ21aとプーリ51aの中間部に位置するベルト61の部位を下方から上方へ押圧する位置に配置される。また、アーム62bの後側は、前側ギヤボックス50の支軸53に回転自在に支持される。アーム62bには、前側センサ54によって検知される平面カムとしての検出体63が取り付けられる。検出体63の後側は、支軸53に外嵌される。また、検出体63の前側には、長穴63aが形成され、検出体63が支軸53を中心に回動することで、使用時に発生するベルト61の長さ変化などに応じて検出体63の位置を調整することができる。
テンションアーム62が、支軸53を中心に時計まわりに回動してベルト61の張力が緊張状態となった場合には、前側センサ54の検出端子と検出体63とが非接触となり、前側センサ54がOFFとなる。一方、テンションアーム62が、支軸53を中心に反時計まわりに回動してベルト61の張力が弛緩状態となった場合には、前側センサ54の検出端子と検出体63とが接触して、前側センサ54がONとなる。なお、アーム62bの後側は、スプリング71と前側連結部材75とを介して前側モータ70の出力軸70aに連結される。
通常の刈取り作業時、すなわち、手扱ぎセンサ27(図3参照)がOFFとなった状態で、かつ、後述する後側センサ89(図5参照)がONの場合には、前側モータ70の出力軸70aを時計まわりに回転させて、テンションアーム62のアーム62bの後端部を下方に移動させてローラ62aをベルト61へ向けて移動させ、ベルト61の張力を緊張状態とする。なお、この場合、前側センサ54はOFFとなり、プーリ21aへ伝達されたエンジンEの回転動力は、ベルト61を介してプーリ51aへ伝達され、プーリ51aへ伝達された回転動力は、前側ギヤボックス50の内部で増減速され、第2スプロケット37を介してフィードチェン34へ伝達される。これにより、フィードチェン34が駆動する。
一方、手扱ぎ作業時、すなわち、手扱ぎセンサ27がONとなった状態の場合は、前側モータ70の出力軸70aを反時計まわりに回転させて、テンションアーム62のアーム62bの後端部を上方に移動させてローラ62aをベルト61から下方へ移動させ、ベルト61の張力を弛緩状態とする。なお、この場合、前側センサ54はONとなり、プーリ21aへ伝達されたエンジンEの回転動力は、ベルト61を介してプーリ51aには伝達されない。
また、前側連結部材75は、前側第1〜6ロッド72a〜72fを備える。前側モータ70の出力軸70aに支持された前側第1ロッド72aと、連結プレート23に設けられた支軸29に回転自在に外嵌された中空回転軸77に設けられた前側第3ロッド72cとは、前側第2ロッド72bを介して連結される。また、前側第3ロッド72cの下部には、連結プレート23へ向けて延出するストッパ74が設けられる。これにより、前側モータ70の出力軸70aが所定の範囲を超えて時計まわりに回転した場合には、ストッパ74が連結プレート23の後端部に係合して過度な張力がベルト61に作用することを防止することができる。さらに、中空回転軸77の外周部に設けられた前側第4ロッド72dと、スプリング71の下部に係合した前側第6ロッド72fとは、前側第5ロッド72eを介して連結される。
なお、前側モータ70の負荷を低減するために、スプリング71の収縮方向を示す仮想線Lが、前側モータ70の出力軸70aを時計まわりに回転させた場合には支軸29の前側を通過するように設定する。また、仮想線Lが、前側モータ70の出力軸70aを反時計まわりに回転させた場合には支軸29の後側を通過するように設定する。このように、支軸29に発生するスプリング71の収縮力に起因するモーメントの方向を時計まわりから反時計まわりに切り換えることが負荷の低減に好適となる。また、前側第1ロッド72aの下部の穴を上下に長い長穴とすることも好適となる。
また、図5に示すように、後側伝動部BDは、後側ギヤボックス80と、後側クラッチ90とを備える。なお、後側伝動部BDは、フィードチェン34(図3参照)の排塵ケース側に設けられ、エンジンEからの回転動力をフィードチェン34へ伝達する。また、後側ギヤボックス80と、後側クラッチ90とは、脱穀装置5の選別部31(図3参照)の後側に取り付けられる。また、後側クラッチ90とは、後側ギヤボックス80に内装された爪クラッチ85と、爪クラッチ85の接続/接続解除状態を操作するシフタ軸86と、シフタ軸86を回動させるワイヤ91、スプリング93、後側連結部材94および後側モータ97とを総称したものである。
後側ギヤボックス80には、カウンタ軸に伝達された回転動力が入力される入力軸81と、後側ギヤボックス80の内部で増減速された回転を出力する出力軸82が設けられる。なお、入力軸81には、カウンタ軸からの回転動力を伝達するベルトが巻回されるプーリ81aが支持される。また、出力軸82には、フィードチェン34が巻回される第3スプロケット38が支持される。
また、選別部31の後側に後側ギヤボックス80を取り付けた状態において、後側ギヤボックス80の前側に出力軸82が位置し、後側に入力軸81が位置する。これにより、選別部31の後側の空間を有効に利用して後側クラッチ90を配設することができる。また、後側ギヤボックス80の中間部には、後側ギヤボックス80に内装された爪クラッチ85の接続/接続解除状態を操作するシフタ軸86が設けられる。シフタ軸86には、アーム87が取り付けられ、アーム87の下部には、ワイヤ91の先端部を取り付ける第1ピン87aと、シフタ軸86を中心にアーム87を前側へ向けてスプリング83の後側を係合する第2ピン87bとが設けられる。さらに、アーム87の後側には、後側センサ89によって検知され、上方へ向けて延出する延出部87cが形成される。
後側ギヤボックス80の上部後側には、部品点数を削減するために、後側センサ89とワイヤチューブ91aの先端部を支持する支持プレート88が着脱自在に取り付けられる。ワイヤチューブ91aの先端部は、支持プレート88の左前端部に取り付けられる。また、後側センサ89は、支持プレート88の前端部に取り付けられる。また、支持プレート88の左前端部は、選別部31の後側において、ワイヤ91のキンクを防止しながらワイヤ91を効率的に配置するために、ワイヤチューブ91aの右前端部よりもワイヤチューブ91aの後部が左側に位置するように、前後方向に対して一定の傾斜角をもって形成されるのが好ましい。
ワイヤチューブ91aの後端部は、下側支持プレート92に取り付けられる。ワイヤ91の後端部は、スプリング93および後側連結部材94を介して後側モータ97の出力軸97aに接続される。なお、後側モータ97は、選別部31の下部後側に設けられたモータブラケット98に取り付けられ、また、下側支持プレート92は、モータブラケット98の上部に連結された部材である。
後側モータ97の出力軸97aに上部が支持された第1ロッド95aと、スプリング93に上部が係合された第2ロッド95bとは、連結ピンを介して連結される。なお、第2ロッド95bの上端部は、スプリング93のキンクを防止するために、三角形状に形成されてスプリング93の内部に挿入される。
通常の刈取作業時、すなわち、手扱ぎセンサ27(図3参照)がOFFとなった状態の場合は、後側モータ97の出力軸97aを時計まわりに回転させて、ワイヤ91を下方へ移動させてアーム87を介してシフタ軸86を回転させ、爪クラッチ85を解除状態とする。なお、この場合、後側センサ89はONとなり、エンジンEの回転動力は、前側ギヤボックス50の内部で増減速されて第2スプロケット37を介してフィードチェン34に伝達される。これにより、フィードチェン34が駆動する。
一方、手扱ぎ作業時、すなわち、手扱ぎセンサ27がONとなった状態で、かつ、前側センサ54がON、すなわち、ベルト61の張力が弛緩状態となった状態の場合には、後側モータ97の出力軸97aを反時計まわりに回転させて、ワイヤ91を上方へ移動させ、スプリング83の収縮力によってアーム87を介してシフタ軸86を初期位置に戻し、爪クラッチ85を接続状態とする。なお、この場合、後側センサ89はOFFとなり、エンジンEの回転動力は、後側ギヤボックス80の内部で増減速され、第3スプロケット38を介してフィードチェン34に伝達される。これにより、フィードチェン34が駆動する。また、前側センサ54および後側センサ89が故障などした場合に爪クラッチ85の破損を防止するために、爪クラッチ85に代えてワンウェイクラッチとしてもよい。
ここで、図6を参照して脱穀装置5について詳細に説明する。図6は、脱穀装置5(唐箕5Gおよびシーブ5Lを含む)を示す概略側断面図である。図6に示すように、脱穀装置5は、上述した脱穀部30および選別部31を備える。脱穀部30は、処理室5Aと、処理室5Aの後側に設けられた排塵処理室5Bとを含んで構成される。脱穀部30には、前後方向に延在する回転軸を中心に回転可能な円柱形状の扱ぎ胴5Dが配設される。扱ぎ胴5Dは、回転動作により、脱穀部30内に搬送されてきた穀稈の先端部(穂先)から穀粒を脱穀する。なお、処理室5Aには、前後方向に延在する回転軸を中心に回転可能な処理胴5Cが配設される。また、排塵処理室5Bには、前後方向に延在する回転軸を中心に回転可能な排塵処理胴5Eが配設される。
選別部31は、脱穀部30の下方に支点5Faを中心に揺動可能に設けられた選別棚5Fと、選別棚5Fの下方に設けられた唐箕5Gと、唐箕5Gの後側に設けられた副唐箕5Hと、一番回収部5Iおよび二番回収部5Jと、選別棚5Fの後側に設けられた排塵ファン5Kとを含んで構成される。選別部31は、脱穀部30において脱粒された穀粒を含む被処理物(扱ぎ胴5Dが脱穀したもの)から枝梗などの夾雑物を除去して穀粒を回収する。すなわち、選別部31は、選別棚5Fの揺動動作と、唐箕5Gおよび副唐箕5Hによる送風と、排塵ファン5Kによる吸引とにより、脱穀部30から送られてきた被処理物から穀粒を選別する。
また、脱穀装置5には、処理室5Aおよび排塵処理室5Bの下方に、脱穀した穀粒を所定の開度に設定された隙間から落下選別するシーブ5Lと、選別した穀粒をさらに落下選別する選別網5Mとが設けられる。シーブ5Lおよび選別網5Mでは、比重の重い穀粒が下方へ通過する。また、被処理物のうち軽量なもの(夾雑物)は、唐箕5Gおよび副唐箕5Hによる送風および排塵ファン5Kによる吸引により、シーブ5Lの上方を後側へ移動する。なお、唐箕5Gおよび副唐箕5Hの風量調節およびシーブ5Lの開度調節は、後述する制御装置200が制御する。
また、脱穀装置5には、シーブ5Lおよび選別網5Mを通過した穀粒を一番回収部5Iおよび二番回収部5Jで回収する。回収した穀粒は、上述したグレンタンク6へ搬送され、貯留される。なお、脱穀装置5を通過して穀粒が扱ぎ取られた穀稈(排藁)は、脱穀部搬送装置35(図1参照)の後側に設けられた排藁搬送装置により、さらに後側に設けられた排藁切断装置113(図7参照)へ搬送される。排藁切断装置113は、排藁搬送装置に投入された排藁を切断し、たとえば、圃場に排出する。
次に、図7を参照してエンジンEからフィードチェン34に至る動力伝達経路について説明する。図7は、コンバイン1の動力伝達経路の一部を示す模式図である。図7に示すように、エンジンEの出力軸100には、エンジン出力プーリ100aが設けられる。エンジン出力プーリ100aからは、走行装置3、刈取装置4、脱穀装置5および排出筒7を駆動する動力(回転動力)が出力される。なお、図7には、主に脱穀装置5およびフィードチェン34(図3参照)の変速装置115を駆動するための動力伝達経路を図示している。
コンバイン1(図1参照)には、エンジン出力プーリ100aを介して、脱穀装置5へ回転動力を伝達する上述したカウンタ軸である脱穀動力伝達軸101が設けられる。また、脱穀動力伝達軸101には、入力プーリ101a、処理胴出力プーリ101b、扱ぎ胴出力プーリ101cおよび唐箕出力プーリ101dが設けられる。なお、エンジン出力プーリ100aと入力プーリ101aとの間には、動力伝達ベルトが掛け回される。
処理胴5Cおよび排塵処理胴5Eは、処理胴出力プーリ101bから伝達される回転動力によって駆動される。処理胴出力プーリ101bには、動力伝達ベルトを介して、処理胴駆動軸102に設けられた処理胴駆動プーリ102aが連結される。処理胴駆動軸102からの回転動力は、ベベルギヤなどを介して処理胴5Cおよび排塵処理胴5Eへ伝達され、処理胴5Cおよび排塵処理胴5Eを回転させる。このように、処理胴5Cおよび排塵処理胴5Eは、エンジンEの回転動力が直接伝達されるため、コンバイン1の走行速度に関わらず、一定の回転速度で駆動される。
扱ぎ胴5Dは、扱ぎ胴出力プーリ101cから伝達される回転動力によって駆動される。扱ぎ胴出力プーリ101cには、動力伝達ベルトを介して、扱ぎ胴駆動軸103に設けられた扱ぎ胴駆動プーリ103aが連結される。扱ぎ胴駆動軸103からの回転動力は、減速ギヤやベベルギヤなどを介して扱ぎ胴5Dへ伝達され、扱ぎ胴5Dを回転させる。このように、扱ぎ胴5Dにおいても、エンジンEの回転動力が直接伝達されるため、コンバイン1の走行速度に関わらず、一定の回転速度で駆動される。
副唐箕5Hおよび唐箕5Gは、唐箕出力プーリ101dから伝達される回転動力によって駆動される。唐箕出力プーリ101dには、動力伝達ベルトを介して、副唐箕駆動軸104に設けられた副唐箕駆動プーリ104aおよび唐箕駆動軸105に設けられた唐箕駆動プーリ105aが連結される。なお、唐箕駆動軸105には、唐箕5Gの回転速度を変更する唐箕変速装置が設けられる場合がある。この場合、唐箕5Gは、エンジンEの回転動力が唐箕変速装置を介して伝達されるため、所定の回転速度で駆動される。
一番回収部5Iおよび二番回収部5Jは、回収部出力プーリ101eから伝達される回転動力によって駆動される。回収部出力プーリ101eには、動力伝達ベルトを介して、一番回収部駆動軸106に設けられた一番回収部駆動プーリ106aおよび二番回収部駆動軸107に設けられた二番回収部出力プーリ107aが連結される。一番回収部5Iおよび二番回収部5Jは、回収部出力プーリ101eを介して、エンジンEの回転動力が伝達されるため、一定の回転速度で駆動される。
選別棚5Fは、回収部出力プーリ101eからカウンタ軸108を介して伝達される回転動力によって駆動される。カウンタ軸出力プーリ108aには、動力伝達ベルトを介して、選別棚駆動軸109に設けられた選別棚駆動プーリ109aが連結される。また、カウンタ軸出力プーリ108bには、動力伝達ベルトを介して、ギヤボックス110の変速入力プーリ111aが連結される。
ギヤボックス110の変速入力プーリ111aに入力された回転動力は、ギヤボックス入力軸111、入力ギヤ111b、排塵ファン出力ギヤ112aおよび排塵ファン駆動軸112を介して、排塵ファン5Kへ伝達される。これにより、排塵ファン5Kが駆動される。また、排塵ファン5Kにおいても、エンジンEの回転動力が直接伝達されるため、コンバイン1の走行速度に関わらず、一定の回転速度で駆動される。
なお、ギヤボックス入力軸111に設けられた入力プーリ111cには、動力伝達ベルトを介して、穀稈(排藁)を切断する排藁切断装置113のカッタ駆動プーリ113aが連結される。また、ギヤボックス110の出力軸114は、動力伝達ベルトを介して、フィードチェン34の搬送速度を変更するためのフィードチェン変速装置115が連結される。
上述したように構成されたコンバイン1は、操縦席8に設けられた制御装置によって各種機器が制御される。次に、図8を参照して制御装置について説明する。図8は、コンバイン1の制御系の一例を示すブロック図である。なお、図8には、脱穀動作における駆動制御に関する機器のみを示している。図8に示すように、制御装置200は、入力側に回転速度操作部(たとえば、アクセルダイヤル)45が接続され、出力側にエンジンEが接続され、回転速度操作部45からの操作入力に基づいて、エンジンEを制御する。また、制御装置200は、エンジンEを介して走行装置3、刈取装置4、脱穀装置5および排出筒7などを駆動制御する。
また、制御装置200には、手扱ぎスイッチ(たとえば、手扱ぎレバー)201、唐箕風量設定ダイヤル202およびシーブ開度設定ダイヤル203が入力側に接続される。また、制御装置200には、唐箕風量調節モータ204およびシーブ開度調節モータ205が出力側に接続される。手扱ぎスイッチ201は、操縦席8(図2参照)の付近に設けられ、フィードチェン34に対して手動で穀稈を供給する手扱ぎモードへ移行させるために操作される。制御装置200は、手扱ぎモードの有効条件を満たした状態で、手扱ぎスイッチ201がONとなった場合に、コンバイン1(図1参照)を非手扱ぎモードから手扱ぎモードへ切り換える。この場合、制御装置200は、オペレータが操作する唐箕風量設定ダイヤル202およびシーブ開度設定ダイヤル203の設定値に基づいて、唐箕風量調節モータ204およびシーブ開度調節モータ205を駆動する。これにより、唐箕5G(図6参照)の風量およびシーブ5L(図6参照)の開度を調節することができる。なお、唐箕風量調節モータ204およびシーブ開度調節モータ205は、共にエンジンEの回転速度の変動に連動する。これにより、唐箕5Gおよびシーブ5Lは、共にエンジンEの回転速度の変動に連動するようになる。たとえば、手扱ぎモードのように、非手扱ぎモードと比べてエンジンEの回転速度が低速となる場合は、唐箕風量は弱くなり、シーブ開度は広くなる。なお、このような制御態様の他、たとえば、シーブ開度はシーブ開度設定ダイヤル203の設定値のまま、唐箕風量のみエンジンEの回転速度の変動に連動するような制御態様としてもよい。
また、制御装置200には、前側クラッチモータ206と、後側クラッチモータ207とが出力側に接続される。前側クラッチモータ206は、前側クラッチ60(図4参照)を、接続/接続解除するように駆動する。後側クラッチモータ207は、後側クラッチ90(図5参照)を、接続/接続解除するように駆動する。また、制御装置200には、前側クラッチセンサ208と、後側クラッチセンサ209とが入力側に接続される。前側クラッチセンサ208は、前側クラッチ60の接続状態を検知するために設けられ、前側クラッチ60が接続解除状態の場合にONとなる。また、後側クラッチセンサ209は、後側クラッチ90の接続状態を検知するために設けられ、後側クラッチ90が接続解除状態の場合にONとなる。また、制御装置200には、緊急停止スイッチ210が入力側に接続される。緊急停止スイッチ210は、脱穀装置5(図1参照)の外側面に設けられる。手扱ぎモードにおいて、制御装置200は、緊急停止スイッチ210が操作されると、エンジンEを緊急停止する。さらに、制御装置200には、モニタ211が出力側に接続される。モニタ211は、操縦席8に設けられ、コンバイン1に関する各種情報を表示する。
なお、制御装置200は、唐箕ポジションセンサおよびシーブポジションセンサが入力側に接続され、コンビネーションメータが出力側に接続されるように構成されてもよい。このように構成されることで、唐箕ポジションセンサおよびシーブポジションセンサの検出値をコンビネーションメータに表示させて確認することができる。
また、図示しないが、制御装置200には、エンジン自動調整スイッチ、脱穀クラッチ検出センサ、脱穀用ポテンショメータ、走行用ポテンショメータ、車速センサ、駐車ブレーキセンサ、搬送穀稈検出センサ、刈取穀稈検出センサ、刈取駆動状態検出センサ、規制部材位置検出センサ、選別棚5F(図6参照)の流量センサ、排藁層厚センサおよび搬送穀稈層厚センサなどが接続される。また、図示しないが、制御装置200には、フィードチェンクラッチモータ、フィードチェン変速モータ、手扱ぎモードランプ、刈取クラッチモータおよび警報ブザーなどが接続される。
エンジン自動調整スイッチは、回転速度操作部45の操作パネルに設けられ、コンバイン1の駆動状態に応じて、エンジンEの定格回転速度(定格回転数)を調整するために入切操作されるスイッチである。すなわち、制御装置200は、エンジン自動調整スイッチの入操作を検出すると、エンジンEの定格回転速度を自動で調整する一方で、エンジン自動調整スイッチの切操作を検出すると、エンジンEの定格回転数の自動調整を解除する。脱穀クラッチ検出センサは、脱穀クラッチによる接続および接続解除を検出する。脱穀用ポテンショメータは、脱穀操作レバーの操作位置(刈取位置および脱穀位置を含む所定の位置)を検出する。刈取位置は、刈取装置4(図1参照)による穀稈の刈り取りを行うとともに、脱穀装置5(図1参照)による脱穀を行うための操作位置となる。脱穀位置は、脱穀装置5による脱穀を行うための操作位置となる。
走行用ポテンショメータは、走行操作レバーの操作位置(前進位置、後退位置および中立位置を含む所定の位置)を検出する。なお、走行操作レバーは、エンジンEの動力を変速する油圧式無段変速機を操作するためのレバーであり、油圧式無段変速機は、HST(Hydro Static Transmission)と呼ばれる静油圧式の無段変速機として構成される。前進位置は、コンバイン1を前進させるための操作位置となる。前進位置としては、コンバイン1の車速を低速とする低速位置、コンバイン1の車速を中速とする中速位置およびコンバイン1の車速を高速とする高速位置などがある。後退位置は、コンバイン1を後退させるための操作位置となる。中立位置は、コンバイン1の走行を停止させるための操作位置となる。このため、走行操作レバーが前進位置、中立位置および後退位置などに操作されることで、油圧式無段変速機は、エンジンEの動力を、コンバイン1が前進方向に駆動する動力として出力したり、コンバイン1の走行を停止させる制動力として出力したり、コンバイン1が後退方向に駆動する動力として出力したりすることができる。
車速センサは、コンバイン1の走行速度を検出する。駐車ブレーキセンサは、操縦席8の足元に設けられた駐車ブレーキのブレーキ操作の有無を検出する。なお、駐車ブレーキは、オペレータによりブレーキ操作が行われると、走行操作レバーを中立位置に戻し、走行装置3を制動することで、コンバイン1の走行を停止させる。搬送穀稈検出センサは、フィードチェン34によって搬送される穀稈を検出する。刈取穀稈検出センサは、刈取装置4によって刈り取られた刈取穀稈を検出する。刈取駆動状態検出センサは、刈取装置4の駆動状態を検出する。規制部材位置検出センサは、手扱ぎ規制部材26(図3参照)の位置を検出する。なお、規制部材位置検出センサは、ノーマルオープンまたはノーマルクローズのマイクロスイッチやプッシュスイッチなどでもよく、特に限定されない。流量センサは、選別棚5F上方を移動する脱穀部30(図3参照)によって分離された夾雑物および穀粒の量を検出する。排藁層厚センサは、排藁搬送装置によって搬送される排藁の層の厚さを検出する。また、搬送穀稈層厚センサは、フィードチェン34によって搬送される穀稈の層の厚さを検出する。
フィードチェンクラッチモータは、フィードチェンクラッチの駆動源として設けられる。フィードチェン変速モータは、フィードチェン34の回転駆動源として設けられる。手扱ぎモードランプは、手扱ぎモードであることをオペレータに報知するために、操縦席8に設けられる。刈取クラッチモータは、刈取クラッチの駆動源として設けられる。警報ブザーは、コンバイン1に関する各種警報を発するために設けられる。
制御装置200では、接続された各種センサおよび各種スイッチからの入力に基づいて、各種モードへ移行したり、各種制御を実行したりすることができる。たとえば、制御装置200は、走行用ポテンショメータまたは車速センサの検出結果から、コンバイン1が走行停止または低速走行を行うと判定すると、エンジンEの回転速度をアイドリング時における回転速度(アイドリング回転速度)とするアイドリング回転制御を実行する。なお、このとき、制御装置200は、脱穀クラッチ検出センサの検出結果から、脱穀クラッチが接続状態であると判定すると、アイドリング回転制御を実行しない。
また、制御装置200は、走行用ポテンショメータまたは車速センサの検出結果に基づいて、フィードチェン変速モータを制御して、フィードチェン34の搬送速度を変更するフィードチェン変速制御を実行する。すなわち、制御装置200は、走行用ポテンショメータまたは車速センサの検出結果から、コンバイン1が停止または低速走行を行うと判定すると、フィードチェン変速モータを制御して、フィードチェン34の搬送速度を低速とする。一方で、制御装置200は、走行用ポテンショメータまたは車速センサの検出結果から、コンバイン1が低速走行よりも高速で走行すると判定すると、フィードチェン変速モータを制御して、フィードチェン34の搬送速度を高速とする。
また、制御装置200は、所定の条件が満たされると、コンバイン1を所定のモードに切り換えるモード切換制御を実行する。たとえば、制御装置200は、各種センサおよび各種スイッチなどからの入力によって、コンバイン1を手扱ぎ作業が可能となるような「手扱ぎモード」に切り換えるモード切換制御を実行する。上述したように、手扱ぎモードとは、フィードチェン34に対して作業者が刈り取った穀稈を手動で供給する手扱ぎ作業に対応するモードである。なお、以下では、手扱ぎモード以外の各種モードを「非手扱ぎモード」という場合がある。
次に、図9および図10を参照して制御装置200による手扱ぎモードにおけるエンジンEの回転駆動制御、唐箕5Gおよびシーブ5Lの駆動制御について説明する。図9は、手扱ぎモードにおけるエンジンEの回転速度制御の説明図である。図10は、手扱ぎモードにおける唐箕風量およびシーブ開度制御の説明図である。
コンバイン1では、作業者が手刈りした穀稈をコンバイン1の脱穀装置5を用いて脱穀する、いわゆる手扱ぎ作業を行う場合がある。手扱ぎ作業では、作業者は、フィードチェン34に対して、刈り取った穀稈を手動で供給する。このため、コンバイン1は、手扱ぎ作業時には、手扱ぎ作業に対応する手扱ぎモードに切り換えられる。手扱ぎモードでは、エンジンEの回転速度が手扱ぎモード以外の非手扱ぎモードにおける定格回転速度よりも低速、かつ、アイドリング時の回転速度よりも高速な一定速度(以下、これを「手扱ぎ速度」という場合がある)に設定される。なお、手扱ぎ速度、すなわち、手扱ぎモードにおけるエンジンEの回転速度としては、たとえば、各定格回転速度の7割程度が好ましい。
図9に示すように、非手扱ぎモードから手扱ぎモードへ移行する(手扱ぎモードOFFから手扱ぎモードONとなる)場合、制御装置200は、フィードチェン変速モータを含むフィードチェン変速装置115へ信号を出力し、エンジンEの回転速度が手扱ぎ速度となるように回転速度制御を行う。また、手扱ぎモードでは、制御装置200は、エンジンEの回転速度を手扱ぎ速度に維持する制御を行う。
このような制御を行うことで、手扱ぎモードにおけるエンジンEの回転速度が非手扱ぎモードの定格回転速度よりも低速でアイドリング回転速度よりも高速な一定速度(手扱ぎ速度)に維持される。これにより、たとえば、アイドリング状態のような低速回転速度の場合には回転速度を高めることで、扱ぎ残しといった脱穀性能の低下を防止することができる。また、たとえば、非手扱ぎモードのような高速回転速度の場合には回転速度を低めることで、手扱ぎ作業における安全性を向上させることができる。
上述したように、唐箕5Gは、エンジンEの回転速度に対応付けられた風量(規定風量)で、脱穀装置5で脱穀された被処理物を送風選別する。唐箕5Gは、唐箕風量設定ダイヤル202によって規定風量が予め定められる。たとえば、唐箕風量設定ダイヤル202によって、規定風量を「弱」〜「強」にかけて5段階に切り換えることができるとすると、規定風量を「3」に設定した場合、規定風量は3段目に割り当てられた範囲で増減する。
また、上述したように、シーブ5Lは、エンジンEの回転速度に対応付けられた開度(規定開度)で、脱穀装置5で脱穀された被処理物を落下選別する。なお、シーブ5Lの開度とは、シーブ5Lの各パネルが傾斜することで形成される隙間の大きさの度合である。また、シーブ5Lは、シーブ開度設定ダイヤル203によって規定開度が予め定められる。たとえば、シーブ開度設定ダイヤル203によって、規定開度を「狭」〜「広」にかけて5段階に切り換えることができるとすると、規定開度を「3」に設定した場合、規定開度は3段目に割り当てられた範囲で増減する。
図9および図10に示すように、制御装置200は、手扱ぎモード(手扱ぎモードON)では、唐箕5Gを、唐箕風量設定ダイヤル202で設定され、エンジンEの回転速度(すなわち、手扱ぎ速度)に対応付いた規定風量よりも、たとえば、一段強い風量とする制御を行う。また、シーブ5Lを、シーブ開度設定ダイヤル203で設定され、エンジンEの回転速度(すなわち、手扱ぎ速度)に対応付いた規定開度よりも、たとえば、一段狭い開度とする制御を行う。
このような制御を行うことで、手扱ぎモードに対応する脱穀性能を得ることができる。すなわち、通常の刈取り作業時の脱穀に最適化されていた唐箕風量およびシーブ開度だけでは十分な選別能力を得られなかった手扱ぎモードにおいて、選別能力の低下を抑えることができる。これにより、手扱ぎモードにおける穀粒の選別不良を防止することができる。
また、図9に示すように、制御装置200は、手扱ぎモードが解除された(手扱ぎモードONから手扱ぎモードOFFとなる)場合、明示的な操作によってエンジンEの回転速度が定格回転速度へ復帰するまでの期間(Tb)、エンジンEを手扱ぎ速度とする制御を維持する。また、制御装置200は、エンジンEの回転速度が復帰するまでの期間(Tb)、唐箕風量を規定風量よりも一段強い風量とする制御およびシーブ開度を規定開度よりも一段狭い開度とする制御を継続する。したがって、制御装置200は、唐箕5Gおよびシーブ5Lを、手扱ぎモードONから手扱ぎモードOFFを経て、エンジンEの回転速度が復帰するまでの期間(Ta+Tb)、規定風量よりも強い風量および規定開度よりも狭い開度とする制御を行う。
このような制御を行うことで、手扱ぎモードが解除されても、エンジン回転速度、唐箕風量およびシーブ開度を、即座には変更せず、たとえば、変速操作部41を操作するなどの明示的な操作によって回転復帰が指示されるまで手扱ぎモードの状態に維持する。したがって、手扱ぎモードにおいて脱穀された穀粒を確実に選別することができる。これにより、手扱ぎモードにおける穀粒の選別不良を防止することができる。
次に、図11および図12を参照して制御装置200による手扱ぎモードにおける前側モータ70および後側モータ97の駆動制御について説明する。図11および図12は、手扱ぎモードにおけるフィードチェン34の駆動制御の説明図(その1〜2)である。
図11に示すように、制御装置200は、手扱ぎモードが開始される(手扱ぎモードOFFから手扱ぎモードONになる)と、前側クラッチモータ206を、前側クラッチ60を接続解除する駆動制御を行う。これにより、前側モータ70がONからOFFとなり、前側モータ70からフィードチェン34への動力伝達が遮断される。そして、制御装置200は、前側クラッチセンサ208によって前側クラッチ60の接続解除状態が検知(前側クラッチセンサ208ON)された時点(Pa)、厳密には、前側クラッチセンサ208ONの後、後側クラッチモータ207を、後側クラッチ90を接続する駆動制御を行う。なお、図11には、前側クラッチセンサ208ONで即座に後側クラッチ90を接続する例を図示している。
このような制御を行うことで、手扱ぎモード開始時において、エンジンEからの回転動力をフィードチェン34に対して前側(前側モータ70)および後側(後側モータ97)の2箇所から同時に伝達する、いわゆる同時駆動によるフィードチェン34を含む機器の破損を防止することができる。
さらに、図11に示すように、制御装置200は、手扱ぎモード(手扱ぎモードON)において、緊急停止スイッチ210が操作された時点(Pb)で、後側クラッチモータ207を、後側クラッチ90を接続解除する駆動制御を行う。これにより、後側モータ97がONからOFFとなり、後側モータ97からフィードチェン34への動力伝達が遮断される。
このような制御を行うことで、手扱ぎモード中に緊急停止スイッチ210を操作した場合に、後側からの回転動力が遮断され、フィードチェン34を即座に停止させることができる。また、フィードチェン34と扱ぎ胴5Dとは、略一体的に構成される場合がある。このような場合、緊急停止スイッチ210を操作してフィードチェン34(および扱ぎ胴5D)を停止しても、扱ぎ胴5Dが慣性によって回転し、これに伴い、フィードチェン34が動いてしまうことがある。ところが、後側からの回転動力が遮断されることで、このような連れまわりによるフィードチェン34の動作を確実に止めることができる。
図12に示すように、制御装置200は、手扱ぎモードが解除される(手扱ぎモードONから手扱ぎモードOFFとなる)と、後側クラッチモータ207を、後側クラッチ90を接続解除する駆動制御を行う。これにより、後側モータ97がONからOFFとなり、後側モータ97からフィードチェン34への動力伝達が遮断される。そして、制御装置200は、後側クラッチセンサ209によって後側クラッチ90の接続解除状態が検知(後側クラッチセンサ209ON)された時点(Pc)、厳密には、後側クラッチセンサ209ONの後、前側クラッチモータ206を、前側クラッチ60を接続する駆動制御を行う。なお、図12には、後側クラッチセンサ209ONで即座に前側クラッチ60を接続する例を図示している。
このような制御を行うことで、手扱ぎモード解除時において、エンジンEからの回転動力をフィードチェン34に対して前側(前側モータ70)および後側(後側モータ97)の2箇所から同時に伝達する、いわゆる同時駆動によるフィードチェン34を含む機器の破損を防止することができる。
また、前側クラッチセンサ208が前側クラッチ60の接続解除状態を検知(前側クラッチセンサON)するとともに、後側クラッチセンサ209が後側クラッチ90の接続解除状態を検知(後側クラッチセンサON)した場合には、フィードチェン34が駆動することはない。この場合、制御装置200は、モニタ211に、フィードチェン34が動かない旨の警告を表示する制御を行うようにしてもよい。これにより、オペレータへの警告が可能となり、安全上の補助機能として用いることができる。
また、制御装置200が、手扱ぎモード中に、刈取装置4の非作業位置への上昇に伴いフィードチェン34が駆動停止する、いわゆるピタトマル(登録商標)が作動する制御を行うように構成してもよい。このような制御を行うことで、圃場内の複数箇所をまわりながら手扱ぎ作業を行う場合、一旦、手扱ぎモードONにしておけば、刈取装置4を上昇させるだけでフィードチェン34による穀稈の搬送が停止する。これにより、圃場内を移動するたびに手扱ぎスイッチをON操作する必要がなくなり、作業にかかる負担を軽減することができる。また、圃場内の移動中はフィードチェン34が停止しているため、安全性を向上させることができる。
また、制御装置200が、手扱ぎモード(手扱ぎモードON)で、唐箕5Gを、唐箕風量設定ダイヤル202で設定された規定風量よりも、たとえば、一段弱い風量とする制御を行い、シーブ5Lを、シーブ開度設定ダイヤル203で設定された規定開度よりも、たとえば、一段広い開度とする制御を行うように構成してもよい。手扱ぎ作業では、通常の刈取り作業に比べて脱穀される穀稈の量が少ない。このため、制御装置200が、唐箕風量を弱く、シーブ開度を広くする制御を行うことで、唐箕風量およびシーブ開度を調節しない場合に比べて、手扱ぎモードにおける選別性能の低下を抑えることができる。
また、制御装置200が、手扱ぎモード(手扱ぎモードON)で、上述した搬送穀稈層厚センサをONにし、搬送穀稈層厚センサからの検出信号に基づいて穀稈の層厚制御を行う構成としてもよい。このような制御を行うことで、唐箕風量およびシーブ開度を手扱ぎ作業の度に毎回調節しなくても、穀稈の層厚が安定するため、略一律の唐箕風量およびシーブ開度とすることができる。これにより、手扱ぎモードにおいて穀粒を適切に選別することができる。
また、フィードチェン34のいずれかの端部近傍に、フィードチェン34の開閉を検知する開閉センサを設け、制御装置200は、開閉センサがフィードチェン34の開状態を検知すると脱穀装置5を駆動させない制御を行うように構成してもよい。これにより、メンテナンス後などに、フィードチェン34が開状態のままで脱穀装置5を駆動するなどの不具合を防止することができる。また、開閉センサを、フィードチェン34の終端部近傍に設ける構成とすることで、開閉センサの検知精度を向上させることができる。
また、挟持杆33とフィードチェン34との間に介在するフィードチェン34のガイドピンが通過する位置に、フィードチェン34の開状態を検知する開閉センサを設け、制御装置200は、開閉センサがフィードチェン34の開状態を検知すると脱穀装置5を駆動させない制御を行うように構成してもよい。これにより、メンテナンス後などに、フィードチェン34が開状態のままで脱穀装置5を駆動するなどの不具合を防止することができる。また、ガイドピンが通過する位置、すなわち、脱穀装置5における脱穀位置の前側に開閉センサを取り付けることで、脱穀による開閉センサの埃溜まりや、開閉センサの破損などを抑えることができる。
さらなる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。このため、本発明のより広範な態様は、以上のように表しかつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。したがって、添付の特許請求の範囲およびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。