第1の実施の形態
以下、図面を参照して本発明の第1の実施の形態について説明する。図1乃至図4は本発明の第1の実施の形態を示す図である。
まず、図1乃至図3により、本実施の形態によるプラスチックボトルの概要について説明する。なお、本明細書中、「上」および「下」とは、それぞれプラスチックボトル10を正立させた状態(図1)における上方および下方のことをいう。
図1乃至図3に示すプラスチックボトル10は、射出成形により得られるプリフォームを準備し、このプリフォームに対して二軸延伸ブロー成形を施すことにより作製される。このようなプラスチックボトル10は、例えば450ml〜650mlの容積をもつ軽量のボトルからなっている。
プラスチックボトル10は、口部11と、口部11下方に連結された肩部12と、肩部12下方に連結された胴部20と、胴部20下方に連結された底部30とを備えている。
このうち口部11は、外ねじ13と、外ねじ13の下方に位置するカブラ16と、カブラ16の下方に位置するサポートリング17とを有している。外ねじ13には、プラスチックボトル10の軸線に対して平行にベントスロット14が形成されている。ベントスロット14は、プラスチックボトル10内に充填する内容液として炭酸飲料を用いたり、仮に内容液が腐敗して内圧が上昇したりした場合、開栓時に内部の圧力を逃がし、キャップ飛びを防止する役割を果たす。したがって、内容液として炭酸を含まないもの、例えば水等を用いる場合には、必ずしもベントスロット14を設けなくても良い。
また、胴部20は、全体として円筒形状を有しており、複数の水平方向溝22〜24と、各水平方向溝22〜24間に設けられた円筒面25とを有している。胴部20は、肩部12の直下から底部30の直上まで全体にわたり、水平方向溝22〜24と円筒面25とを交互に繰り返し配置した構造をもっている。このように、胴部20は、各水平方向溝22〜24および円筒面25のみから構成されている。
複数の水平方向溝22〜24は、少なくとも3種類の深さの水平方向溝を含んでいる。具体的には、水平方向溝22〜24は、最大の深さをもつ第1水平方向溝22と、中間の深さをもつ第2水平方向溝23と、最小の深さをもつ第3水平方向溝24とを含んでいる。
これら水平方向溝22〜24は、それぞれ胴部20の円周方向全周にわたって延びており、その上下方向の幅は、それぞれ円周方向全周にわたって均一である。なお、胴部20に形成された第1水平方向溝22同士は、互いに同一形状をもち、第2水平方向溝23同士は、互いに同一形状をもち、第3水平方向溝24同士は、互いに同一形状をもっている。
この場合、胴部20には、肩部12側から底部30側に向けて、第2水平方向溝23、第3水平方向溝24、第3水平方向溝24、第3水平方向溝24、第2水平方向溝23、第2水平方向溝23、第2水平方向溝23、第1水平方向溝22、第1水平方向溝22、第2水平方向溝23、および第3水平方向溝24がこの順に形成されている。
これらの第1水平方向溝22、第2水平方向溝23および第3水平方向溝24は、胴部20の上下方向中央部を基準として(位置関係及び間隔の両方とも)上下非対称に配置されている。
なお、胴部20に形成された水平方向溝22〜24のうち、肩部12の近傍に設けられた最も上方に位置する第2水平方向溝23は、主として、胴部20のうち比較的変形しやすい部分である肩部12周辺領域の強度を高める役割を果たす。
また、上方から2番目乃至4番目に位置する3本の第3水平方向溝24は、主として、胴部20のうち上半部の領域の強度を高め、この部分が水平方向に凹むことを防止する役割を果たす。また、この3本の第3水平方向溝24は、補助的に、上下方向に収縮することにより減圧を吸収する機能も発揮する。なお、第3水平方向溝24の深さが(例えば第1水平方向溝22又は第2水平方向溝23程度に)大きすぎないことにより、プラスチックボトル10の容量が減少することを防止することができる。
上方から5番目乃至7番目に位置する3本の第2水平方向溝23は、主として、変形しやすい部分である胴部20の中央部周辺の強度を高める役割を果たす。また、この2本の第2水平方向溝23は、補助的に、上下方向に収縮することにより減圧を吸収する機能も発揮する。
上方から8番目乃至9番目に位置する2本の第1水平方向溝22は、主として、プラスチックボトル10の内部が減圧した際、上下方向に収縮することにより、減圧を吸収する機能を発揮する。また、この2本の第1水平方向溝22は、変形しやすい部分である胴部20の中央部周辺の強度を高める役割も果たしている。
上方から10番目に位置する第2水平方向溝23とは、主として、胴部20のうち下半部の領域の強度を高め、この部分が水平方向に凹むことを防止する役割を果たす。また、この第2水平方向溝23は、補助的に、上下方向に収縮することにより減圧を吸収する機能も発揮する。
底部30の近傍に設けられた、最も下方に位置する第3水平方向溝24は、主として、胴部20のうち比較的変形しやすい部分である底部30周辺領域の強度を高める役割を果たす。
各水平方向溝22〜24間に形成された複数の円筒面25は、肩部12の直下から底部30の直上までいずれも均一な径を有している。これにより、プラスチックボトル10を自動販売機内で横向きに収納した際、隣接する他のプラスチックボトル10に対して広い面積で接触させることができるので、自動販売機内で胴部20が変形することを防止することができる。
一方、図2に示すように、底部30は、中央に位置する円形状の凹部31と、この凹部31から放射状に延びる放射状リブ32とを有している。なお、図2において、放射状リブ32の本数は7本であるが、これに限らず、例えば5本〜11本の範囲で設定しても良い。このように放射状リブ32を配置したことにより、底部30の強度を高め、底部30に変形が生じにくくし、プラスチックボトル10の接地安定性を高めるようになっている。
次に、図3(a)〜(c)を用いて、水平方向溝22〜24の形状について更に説明する。なお、図3(a)は、第1水平方向溝22の垂直断面図であり、図3(b)は、第2水平方向溝23の垂直断面図であり、図3(c)は、第3水平方向溝24の垂直断面図である。
図3(a)に示すように、第1水平方向溝22は、複数の水平方向溝22〜24の中で最大の深さdaをもつとともに最大の上下方向幅waを有している。
図3(b)に示すように、第2水平方向溝23は、第1水平方向溝22と第3水平方向溝24との中間の深さdbをもつとともに中間の上下方向幅wbを有している。なお、第2水平方向溝23の深さdbは、第1水平方向溝22の深さdaの20%〜90%とすることが好ましい。また、第2水平方向溝23の上下方向幅wbは、第1水平方向溝22の上下方向幅waの20%〜90%とすることが好ましい。
図3(c)に示すように、第3水平方向溝24は、複数の水平方向溝22〜24の中で最小の深さdcをもつとともに最小の上下方向幅wcを有している。なお、第3水平方向溝24の深さdcは、第1水平方向溝22の深さdaの5%〜70%とすることが好ましい。また、第3水平方向溝24の上下方向幅wcは、第1水平方向溝22の上下方向幅waの5%〜70%とすることが好ましい。
これら水平方向溝22〜24は、図3(a)〜(c)に示すように、それぞれ断面において垂直な平坦面からなる底面41と、底面41に連接する内側湾曲面42と、内側湾曲面42に連接するとともに円筒面25に対して傾斜する側面43と、側面43と円筒面25とを連結する外側湾曲面44とを有している。
この場合、底面41の上下方向の長さLxは、水平方向溝22〜24の間で全て同一となっている。底面41の上下方向の長さLxを全て同一にしたことにより、側壁荷重時の応力を全体的に平均化し、より安定的に形状を維持することが可能となる。
また、水平方向溝22〜24の開き角Rxは、水平方向溝22〜24の間で全て同一となっている。水平方向溝22〜24の開き角Rxを全て同一にしたことにより、垂直荷重時に応力の局所集中が生じづらく、均一に負荷が掛かる為、容器全体の剛性が増す。
なお、水平方向溝22〜24の開き角Rxとは、図3(a)〜(c)に示すように、その垂直断面において上下の側面43によって形成される角度をいう。この水平方向溝22〜24の開き角Rxは、例えば40°〜90°(40°以上90°以下をいう。他の箇所においても同様)の範囲の所定角度としても良く、55°〜65°の範囲の所定角度とすることが更に好ましい。水平方向溝22〜24の開き角Rxをこの範囲にした場合、減圧時に上下方向の変形が容易であり、且つ垂直荷重、側壁荷重時の強度が優れているという効果が得られる。
また胴部20の円筒面25におけるプラスチックボトル10の厚みは、これに限定されるものではないが、例えば50μm〜250μm程度に薄くすることができる。さらに、プラスチックボトル10の重量についても、これに限定されるものではないが、10g〜20gとすることができる。このようにプラスチックボトル10の肉厚を薄くすることにより、プラスチックボトル10の軽量化を図ることができる。
このようなプラスチックボトル10は、合成樹脂材料を射出成形して製作したプリフォームを二軸延伸ブロー成形することにより作製することができる。なおプリフォーム、すなわちプラスチックボトル10の材料としては熱可塑性樹脂、特にPE(ポリエチレン)、PP(ポリプロピレン)、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PEN(ポリエチレンナフタレート)を使用する事が好ましい。
また、プラスチックボトル10は、2層以上の多層成形ボトルとして形成することもできる。すなわち押し出し成形または射出成形により、例えば、中間層をMXD6、MXD6+脂肪酸塩、PGA(ポリグリコール酸)、EVOH(エチレンビニルアルコール共重合体)又はPEN(ポリエチレンナフタレート)等のガスバリア性及び遮光性を有する樹脂(中間層)として3層以上からなるプリフォームを押出成形後、吹込成形することによりガスバリア性及び遮光性を有する多層ボトルを形成しても良い。なお、このような中間層は、プラスチックボトル10のうち少なくとも胴部20内に設けることが好ましい。また底部30において、底部30の中央部を除く領域に中間層を設けることが好ましい。ケース落下等の衝撃を受けた際この部分がデラミ(層間剥離)を起こすおそれがあるからである。ガスバリア性及び遮光性を有する為に、多層にするだけでなく熱可塑性樹脂同士をブレンドしたブレンドボトルを形成しても良い。
次にこのような構成からなる本実施の形態の作用について説明する。
まず、空のプラスチックボトル10を準備し、このプラスチックボトル10内に例えば飲料等の内容液を充填する。続いて、口部11を図示しないキャップにより閉栓する。プラスチックボトル10を閉栓した後、内容液の比重が変化したり、内容液がプラスチックボトル10の空寸部(ヘッドスペース)に存在する酸素を吸収したりするため、プラスチックボトル10の内部が減圧された状態となる。このようにプラスチックボトル10の内部に負圧が生じると、プラスチックボトル10の内方に向かって応力が発生する。
これに対して本実施の形態においては、胴部20に複数の水平方向溝22〜24が形成されている。これら水平方向溝22〜24は、プラスチックボトル10の内部が減圧された際、それぞれ上下方向に変形する。
すなわち、図4(a)〜(b)に示すように、プラスチックボトル10の内部が減圧された際、水平方向溝22〜24は上下方向に圧縮されるように変形する。なお、図4(a)はプラスチックボトル10の内部が減圧される前の水平方向溝22〜24の垂直断面図であり、図4(b)はプラスチックボトル10の内部が減圧された後の水平方向溝22〜24の垂直断面図である。
プラスチックボトル10の内部が減圧された際(図4(b))、水平方向溝22〜24の開き角Ryは、減圧される前(図4(a))の開き角Rxと比べて小さくなる(Rx>Ry)。また、水平方向溝22〜24の上下方向幅wyは、減圧される前の上下方向幅wx(wa、wb、wc)と比べて小さくなる(wx>wy)。一方、水平方向溝22〜24の底面41の長さLyは、減圧される前(図4(a))の底面41の長さLxと比べてほとんど変化しない(Lx=Ly)。
このように水平方向溝22〜24が上下方向に変形するので、プラスチックボトル10が高さ方向に減縮する。この結果、プラスチックボトル10の体積が全体として減少し、ボトルの減圧分を吸収することができる。一方、プラスチックボトル10には、外観上大きな変形は生じない。具体的には、密閉したプラスチックボトル10に内容物を充填し、この充填した内容物をプラスチックボトル10の容量の2%抜き取った際に、胴部20の高さが1%以上低くなることが好ましい。
その後、内容液が充填されたプラスチックボトル10は、横向きにされた状態で自動販売機内に収容される。この場合、胴部20は水平方向溝22〜24によって補強されているので、自動販売機内で胴部20に変形が生じることが防止される。
また、本実施の形態においては、胴部20は、各水平方向溝22〜24および円筒面25のみから構成されているので、胴部20に減圧吸収パネルを設ける必要が無い。このため、減圧吸収パネルによってプラスチックボトル10の容量が大きく減少することもない。
とりわけ、本実施の形態によれば、胴部20にそれぞれ異なる深さを有する複数の水平方向溝22〜24が形成されている。このことにより、胴部20のうち変形しやすい部分の強度を重点的に高めるとともに、プラスチックボトル10の内部が減圧した際にその減圧を吸収することができる。また、水平方向溝22〜24を設けたことに伴ってプラスチックボトル10の容量が大きく減少することがなく、その容量を確保することができる。
なお、本実施の形態においては、胴部20は、それぞれ3種類の深さの水平方向溝22〜24を含んでいる。しかしながら、これに限られるものではなく、胴部20は、少なくとも3種類の深さの水平方向溝を含んでいれば良く、4種類以上の深さの水平方向溝を含んでいても良い。
次に本実施の形態の具体的実施例について説明する。
(実施例)
まず、図1乃至図4に示す構成からなる、容量615mlのプラスチックボトル10を作製した。
この場合、射出成形により18.3gおよび28gのPET単層プリフォームを作製し、このプリフォームに対して二軸延伸ブロー成形することにより容量615mlのプラスチックボトル10を作製した。
得られたプラスチックボトル10に水を600ml充填し、ゴム栓付のキャップにてキャッピングを行った。
その後、注射器を用いて、内容物である水を12.3mL(容量の2%)だけ抜き取り、抜き取った前後でプラスチックボトル10の全高を測定して比較した(表1)。なお、表中、全高収縮量(率)とは、プラスチックボトル10に充填された水を抜き取る前後でその全高が収縮した量(割合)を示している。
また、プラスチックボトル10の内圧を測定したまま、内容物である水を抜き取ることにより、負圧最低到達点を測定した(表2)。なお、負圧最低到達点とは、プラスチックボトル10に充填された水を抜き取ることにより、プラスチックボトル10を大気圧(約101kPa)から徐々に減圧していった際に、ボトル内の圧力波形がピークとして確認された圧力をいう。一般に、負圧最低到達点に達した場合、プラスチックボトル10の外観には、陥没変形、楕円変形、屈曲変形等の大きな変形が生じる。
(比較例)
他方、比較例として、図8および図9に示す、容量615mlのプラスチックボトル10を作製した。図8および図9に示すプラスチックボトル100は、口部111と、肩部112と、胴部120と、底部130とを備え、胴部120は水平方向溝123によって、上半部121と下半部122とに区画されている。
このうち上半部121には、円周方向全周に延びる複数の円周方向溝135が設けられている。また胴部120の下半部122には、垂直方向に延びる柱状リブ137と、柱状リブ137間に形成され、垂直方向に延びる減圧吸収パネル136とが設けられている。また胴部120の下半部122の下方部には円周方向に延びる補強リブ124が設けられている。
この場合、射出成形により18.3gおよび28gのPET単層プリフォームを作製し、このプリフォームに対して二軸延伸ブロー成形することにより容量615mlのプラスチックボトル100を作製した。
得られたプラスチックボトル100に水を600ml充填し、ゴム栓付のキャップにてキャッピングを行った。
その後、注射器を用いて、内容物である水を12.3mL(容量の2%)だけ抜き取り、抜き取った前後でプラスチックボトル100の全高を測定して比較した(表1)。
また、プラスチックボトル100の内圧を測定したまま、内容物である水を抜き取ることにより、負圧最低到達点を測定した(表2)。
表1に示すように、実施例のプラスチックボトル10においては、密閉した容器に充填した内容物をその容量の2%だけ抜き取った際、プラスチックボトル10の全高が1%以上低くなることが判明した。一方、比較例のプラスチックボトル100においては、密閉した容器に充填した内容物をその容量の2%抜き取った際に、プラスチックボトル10の全高が1%未満しか低くならなかった。
また、表2に示すように、実施例によるプラスチックボトル10は、比較例によるプラスチックボトル100よりも負圧最低到達点が低かった。すなわち、実施例によるプラスチックボトル10は、内部が負圧になっても大変形(陥没変形、楕円変形、屈曲変形等)が生じにくい形状であることが確認できた。
このように、実施例によるプラスチックボトル10は、比較例によるプラスチックボトル100と比べて、内部が減圧された際に大きな変形が生じることなく、高さ方向により大きく減縮した。このため、プラスチックボトル10の体積が全体として減少し、その減圧分を吸収することができると考えられる。
なお、上記については、プラスチックボトルの重量が18.3gのものと28gのものとの両方について当てはまる。
第2の実施の形態
次に、図5乃至図7を参照して本発明の第2の実施の形態によるプラスチックボトルの構成について説明する。図5乃至図7に示す第2の実施の形態は、胴部20が、少なくとも3種類の開き角をもつ複数の水平方向溝27〜29を含む点が異なるものであり、他の構成は上述した第1の実施の形態と略同一である。図5乃至図7において、第1の実施の形態と同一部分には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
図5に示すプラスチックボトル10Aにおいて、複数の水平方向溝27〜29と、各水平方向溝27〜29間に設けられた円筒面25とを有している。胴部20は、肩部12の直下から底部30の直上まで全体にわたり、水平方向溝27〜29と円筒面25とを交互に繰り返し配置した構造をもっている。このように、胴部20は、各水平方向溝27〜29および円筒面25のみから構成されている。
複数の水平方向溝27〜29は、少なくとも3種類の深さの水平方向溝を含んでいる。具体的には、水平方向溝27〜29は、最大の深さをもつ第1水平方向溝27と、中間の深さをもつ第2水平方向溝28と、最小の深さをもつ第3水平方向溝29とを含んでいる。
また、複数の水平方向溝27〜29は、少なくとも3種類の開き角の水平方向溝を含んでいる。すなわち、水平方向溝27〜29のうち、第2水平方向溝28が最大の開き角R2をもち、第1水平方向溝27が中間の開き角R1をもち、第3水平方向溝29が最小の開き角R3をもっている。
これら水平方向溝27〜29は、それぞれ胴部20の円周方向全周に延びており、その深さ、開き角および上下方向の幅は、それぞれ円周方向全周にわたって均一である。
この場合、胴部20には、肩部12側から底部30側に向けて、第2水平方向溝28、第3水平方向溝29、第3水平方向溝29、第3水平方向溝29、第2水平方向溝28、第2水平方向溝28、第2水平方向溝28、第1水平方向溝27、第1水平方向溝27、第2水平方向溝28および第3水平方向溝29がこの順に形成されている。
これらの第1水平方向溝27、第2水平方向溝28および第3水平方向溝29は、胴部20の上下方向中央部を基準として(位置関係及び間隔の両方とも)上下非対称に配置されている。
なお、胴部20に形成された水平方向溝27〜29のうち、肩部12の近傍に設けられた最も上方に位置する第2水平方向溝28は、主として、胴部20のうち比較的変形しやすい部分である肩部12周辺領域の強度を高める役割を果たす。
また、上方から2番目乃至4番目に位置する3本の第3水平方向溝29は、主として、胴部20のうち上半部の領域の強度を高め、この部分が水平方向に凹むことを防止する役割を果たす。また、この3本の第3水平方向溝29は、補助的に、上下方向に収縮することにより減圧を吸収する機能も発揮する。なお、第3水平方向溝29の深さが(例えば第1水平方向溝27又は第2水平方向溝28程度に)大きすぎないことにより、プラスチックボトル10Aの容量が減少することを防止することができる。
上方から5番目乃至7番目に位置する3本の第2水平方向溝28は、主として、変形しやすい部分である胴部20の中央部周辺の強度を高める役割を果たす。また、この2本の第2水平方向溝28は、補助的に、上下方向に収縮することにより減圧を吸収する機能も発揮する。
上方から8番目乃至9番目に位置する2本の第1水平方向溝27は、主として、プラスチックボトル10Aの内部が減圧した際、上下方向に収縮することにより、減圧を吸収する機能を発揮する。また、この2本の第1水平方向溝27は、変形しやすい部分である胴部20の中央部周辺の強度を高める役割も果たしている。
上方から10番目に位置する第2水平方向溝28とは、主として、胴部20のうち下半部の領域の強度を高め、この部分が水平方向に凹むことを防止する役割を果たす。また、この第2水平方向溝28は、補助的に、上下方向に収縮することにより減圧を吸収する機能も発揮する。
底部30の近傍に設けられた、最も下方に位置する第3水平方向溝29は、主として、胴部20のうち比較的変形しやすい部分である底部30周辺領域の強度を高める役割を果たす。
次に、図6(a)〜(c)を用いて、水平方向溝27〜29の形状について更に説明する。なお、図6(a)は、第1水平方向溝27の垂直断面図であり、図6(b)は、第2水平方向溝28の垂直断面図であり、図6(c)は、第3水平方向溝29の垂直断面図である。
図6(a)に示すように、第1水平方向溝27は、複数の水平方向溝27〜29の中で最大の深さdaをもつとともに第2水平方向溝28と第3水平方向溝29との中間の上下方向幅waを有している。また、第1水平方向溝27は、第2水平方向溝28と第3水平方向溝29との中間の開き角R1をもっている。
図6(b)に示すように、第2水平方向溝28は、第1水平方向溝27と第3水平方向溝29との中間の深さdbをもつとともに最大の上下方向幅wbを有している。また、第2水平方向溝28は、複数の水平方向溝27〜29の中で最大の開き角R2をもっている。なお、第2水平方向溝28の深さdbは、第1水平方向溝27の深さdaの20%〜90%とすることが好ましい。また、第2水平方向溝28の上下方向幅wbは、第1水平方向溝27の上下方向幅waの100%〜200%とすることが好ましい。
図6(c)に示すように、第3水平方向溝29は、複数の水平方向溝27〜29の中で最小の深さdcをもつとともに最小の上下方向幅wcを有している。また、第3水平方向溝29は、複数の水平方向溝27〜29の中で最小の開き角R3をもっている。なお、第3水平方向溝29の深さdcは、第1水平方向溝27の深さdaの5%〜70%とすることが好ましい。また、第3水平方向溝29の上下方向幅wcは、第1水平方向溝27の上下方向幅waの30%〜100%とすることが好ましい。
これら水平方向溝27〜29は、図6(a)〜(c)に示すように、断面において垂直な平坦面からなる底面41と、底面41に連接する内側湾曲面42と、内側湾曲面42に連接するとともに円筒面25に対して傾斜する側面43と、側面43と円筒面25とを連結する外側湾曲面44とを有している。
この場合、底面41の上下方向の長さLxは、水平方向溝27〜29の間で全て同一となっている。底面41の上下方向の長さLxを全て同一にしたことにより、側壁荷重時の応力を全体的に平均化し、より安定的に形状を維持することが可能となる。
なお、水平方向溝27〜29の開き角R1〜R3は、45°〜150°とすることが好ましい。具体的には、第1水平方向溝27の開き角R1は、例えば55°〜65°の範囲の所定角度とすることが好ましい。第2水平方向溝28の開き角R2は、例えば70°〜150°の範囲の所定角度とすることが好ましく、70°〜130°の範囲の所定角度とすることが更に好ましい。また、第3水平方向溝29の開き角R3は、例えば45°〜55°の範囲の所定角度とすることが好ましい。水平方向溝27〜29の開き角R1〜R3をこの範囲にした場合、減圧時に上下方向の変形が容易であり、且つ垂直荷重、側壁荷重時の強度が優れているという効果が得られる。
本実施の形態によるプラスチックボトル10Aにおいて、水平方向溝27〜29は、プラスチックボトル10Aの内部が減圧された際、それぞれ上下方向に変形する。
すなわち、図7(a)〜(b)に示すように、水平方向溝27〜29が上下方向に圧縮されるように変形する。なお、図7(a)はプラスチックボトル10Aの内部が減圧される前の水平方向溝27〜29の垂直断面図であり、図7(b)はプラスチックボトル10Aの内部が減圧された後の水平方向溝27〜29の垂直断面図である。
プラスチックボトル10Aの内部が減圧された際(図7(b))、水平方向溝27〜29の開き角Ryは、減圧される前(図7(a))の開き角Rx(R1〜R3)と比べて小さくなる(Rx>Ry)。また、水平方向溝27〜29の上下方向幅wyは、減圧される前の上下方向幅wx(wa、wb、wc)と比べて小さくなる(wx>wy)。一方、水平方向溝27〜29の底面41の長さLyは、減圧される前(図7(a))の底面41の長さLxと比べてほとんど変化しない(Lx=Ly)。
このように水平方向溝27〜29が上下方向に変形するので、プラスチックボトル10Aが高さ方向に減縮する。この結果、プラスチックボトル10Aの体積が全体として減少し、ボトルの減圧分を吸収することができる。一方、プラスチックボトル10Aには、外観上大きな変形は生じない。具体的には、密閉したプラスチックボトル10Aに内容物を充填し、この充填した内容物をプラスチックボトル10Aの容量の2%抜き取った際に、胴部20の高さが1%以上低くなることが好ましい。
とりわけ、本実施の形態によれば、胴部20にそれぞれ異なる深さを有する複数の水平方向溝27〜29が形成されている。このことにより、胴部20のうち変形しやすい部分の強度を重点的に高めるとともに、プラスチックボトル10Aの内部が減圧した際にその減圧を吸収することができる。また、水平方向溝27〜29を設けたことに伴ってプラスチックボトル10の容量が大きく減少することがなく、その容量を確保することができる。
なお、本実施の形態においては、胴部20は、それぞれ3種類の深さおよび3種類の開き角の水平方向溝27〜29を含んでいる。しかしながら、これに限らず、水平方向溝27〜29が全て同一の深さを有するとともに、少なくとも3種類の開き角を有していても良い。すなわち、本実施の形態において、胴部20は、少なくとも3種類の開き角の水平方向溝を含んでいれば良い。例えば、胴部20は、それぞれ4種類以上の開き角をもつ水平方向溝を含んでいても良い。