以下、本実施の形態1を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、本実施の形態1に係る画像形成装置1の全体構成を概略的に示す図である。図2は、本実施の形態1に係る画像形成装置1の制御系の主要部を示す。図1,2に示す画像形成装置1は、電子写真プロセス技術を利用した中間転写方式のカラー画像形成装置である。すなわち、画像形成装置1は、像担持体の一例としての感光体ドラム413上に形成されたY(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色トナー像を中間転写ベルト421に一次転写し、中間転写ベルト421上で4色のトナー像を重ね合わせた後、用紙Sに二次転写することにより、画像を形成する。
また、画像形成装置1には、YMCKの4色に対応する感光体ドラム413を中間転写ベルト421の走行方向に直列配置し、中間転写ベルト421に一回の手順で各色トナー像を順次転写させるタンデム方式が採用されている。
図2に示すように、画像形成装置1は、画像読取部10、操作表示部20、画像処理部30、画像形成部40、用紙搬送部50、定着部60および制御部100を備える。
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)101、ROM(Read Only Memory)102、RAM(Random Access Memory)103等を備える。CPU101は、ROM102から処理内容に応じたプログラムを読み出してRAM103に展開し、展開したプログラムと協働して画像形成装置1の各ブロックの動作を集中制御する。このとき、記憶部72に格納されている各種データが参照される。記憶部72は、例えば不揮発性の半導体メモリ(いわゆるフラッシュメモリ)やハードディスクドライブで構成される。本実施の形態では、記憶部72は、画像形成部40により実行される印刷ジョブに関する画像形成情報を記憶する。画像形成情報は、例えば印刷枚数および入力画像の画像面積率等の情報を含む。
制御部100は、通信部71を介して、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)等の通信ネットワークに接続された外部の装置(例えばパーソナルコンピューター)との間で各種データの送受信を行う。制御部100は、例えば、外部の装置から送信された画像データを受信し、この画像データ(入力画像データ)に基づいて用紙Sに画像を形成させる。通信部71は、例えばLANカード等の通信制御カードで構成される。
図1に示すように、画像読取部10は、ADF(Auto Document Feeder)と称される自動原稿給紙装置11および原稿画像走査装置12(スキャナー)等を備えて構成される。
自動原稿給紙装置11は、原稿トレイに載置された原稿Dを搬送機構により搬送して原稿画像走査装置12へ送り出す。自動原稿給紙装置11により、原稿トレイに載置された多数枚の原稿Dの画像(両面を含む)を連続して一挙に読み取ることが可能となる。
原稿画像走査装置12は、自動原稿給紙装置11からコンタクトガラス上に搬送された原稿またはコンタクトガラス上に載置された原稿を光学的に走査し、原稿からの反射光をCCD(Charge Coupled Device)センサー12aの受光面上に結像させ、原稿画像を読み取る。画像読取部10は、原稿画像走査装置12による読取結果に基づいて入力画像データを生成する。この入力画像データには、画像処理部30において所定の画像処理が施される。
図2に示すように、操作表示部20は、例えばタッチパネル付の液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)で構成され、表示部21および操作部22として機能する。表示部21は、制御部100から入力される表示制御信号に従って、各種操作画面、画像の状態、各機能の動作状況等の表示を行う。操作部22は、テンキー、スタートキー等の各種操作キーを備え、ユーザーによる各種入力操作を受け付けて、操作信号を制御部100に出力する。
画像処理部30は、入力画像データに対して、初期設定またはユーザー設定に応じたデジタル画像処理を行う回路等を備える。例えば、画像処理部30は、制御部100の制御下で、階調補正データ(階調補正テーブル)に基づいて階調補正を行う。また、画像処理部30は、入力画像データに対して、階調補正の他、色補正、シェーディング補正等の各種補正処理や、圧縮処理等を施す。これらの処理が施された画像データに基づいて、画像形成部40が制御される。
図1に示すように、画像形成部40は、入力画像データに基づいて、Y成分、M成分、C成分、K成分の各有色トナーによる画像を形成するための画像形成ユニット41Y、41M、41C、41K、中間転写ユニット42等を備える。
Y成分、M成分、C成分、K成分用の画像形成ユニット41Y、41M、41C、41Kは、同様の構成を有する。図示および説明の便宜上、共通する構成要素は同一の符号で示し、それぞれを区別する場合には符号にY、M、C、またはKを添えて示すこととする。図1では、Y成分用の画像形成ユニット41Yの構成要素についてのみ符号が付され、その他の画像形成ユニット41M、41C、41Kの構成要素については符号が省略されている。
画像形成ユニット41は、露光装置411、現像装置412、感光体ドラム413、帯電装置414およびドラムクリーニング装置415等を備える。
感光体ドラム413は、例えばドラム状の金属基体の外周面に、有機光導電体を含有させた樹脂よりなる感光層が形成された有機感光体よりなる。感光層を構成する樹脂として、例えばポリカーボネート樹脂、シリコーン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、塩化ビニル樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
制御部100は、感光体ドラム413を回転させる駆動モーター(図示略)に供給される駆動電流を制御することにより、感光体ドラム413を一定の周速度で回転させる。
帯電装置414は、例えば帯電チャージャーであり、コロナ放電を発生させることにより、光導電性を有する感光体ドラム413の表面を一様に負極性に帯電させる。
露光装置411は、例えば半導体レーザーで構成され、感光体ドラム413に対して各色成分の画像に対応するレーザー光を照射する。その結果、感光体ドラム413の表面のうちレーザー光が照射された画像領域には、背景領域との電位差により各色成分の静電潜像が形成される。
現像装置412は、二成分逆転方式の現像装置であり、感光体ドラム413の表面に各色成分の現像剤を付着させることにより静電潜像を可視化してトナー像を形成する。
なお、現像剤は、トナーと当該トナーを帯電するためのキャリアーとが混成されている。本実施の形態では、トナーは、負極性に帯電される。また、トナーとしては、特に限定されず、バインダー樹脂中に着色剤や必要に応じて、荷電制御剤や離径剤等を含有させ、滑剤Gを添加させたものを用いることができる。また、トナーは、粒径が3〜15[μm]程度のものが好ましい。
なお、キャリアーとしては、一般に使用されている公知のキャリアー、例えば、バインダー型キャリアーやコート型キャリアーを用いることができる。また、キャリアーは、粒径が15〜100[μm]程度のものが好ましい。
本実施の形態では、トナーには、潤滑性を有する滑剤が添加されている。滑剤は、トナーの帯電極性とは逆極性に帯電されており、トナーよりも粒径が小さくなっている。本実施の形態では、滑剤は、正極性に帯電される。
滑剤としては、脂肪酸金属塩、シリコーンオイル、フッ素系樹脂等が挙げられ、これらは単独または2種類以上を混合して用いることができる。滑剤としては、特に脂肪酸金属塩が好ましい。脂肪酸としては、直鎖状の炭化水素が好ましく、例えば、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸等が好ましく、ステアリン酸がより好ましい。金属としては、リチウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、セリウム、チタン、鉄などが挙げられる。これらの中で、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸鉄等が好ましく、特に、ステアリン酸亜鉛が最も好ましい。
現像装置412は、感光体ドラム413と現像領域を介して対向するよう配置された現像スリーブ412Aを備えている。現像スリーブ412Aは、現像装置412内の現像部412B内に配置されている。現像部412B内には、現像装置412内のトナー収容部からトナーおよびトナーに添加された滑剤が供給される。
現像スリーブ412Aには、例えば帯電装置414の帯電極性と同極性の直流現像バイアス、または交流電圧に帯電装置414の帯電極性と同極性の直流電圧が重畳された現像バイアスが印加される。その結果、露光装置411によって形成された静電潜像にトナーを付着させる反転現像が行われる。
ドラムクリーニング装置415は、感光体ドラム413の表面に当接され、弾性体よりなる平板状のドラムクリーニングブレード415A等を有し、中間転写ベルト421に転写されずに感光体ドラム413の表面に残留するトナーを除去する。
中間転写ユニット42は、中間転写ベルト421、一次転写ローラー422、複数の支持ローラー423、二次転写ローラー424およびベルトクリーニング装置426等を備える。
中間転写ユニット42は、無端状ベルトで構成され、複数の支持ローラー423にループ状に張架される。複数の支持ローラー423のうちの少なくとも一つは駆動ローラーで構成され、その他は従動ローラーで構成される。例えば、K成分用の一次転写ローラー422よりもベルト走行方向の下流側に配置されるローラー423Aが駆動ローラーであることが好ましい。これにより、一次転写ニップにおけるベルトの走行速度を一定に保持しやすくなる。駆動ローラー423Aが回転することにより、中間転写ベルト421は矢印A方向に一定速度で走行する。
中間転写ベルト421は、導電性および弾性を有するベルトであり、表面に体積抵抗率が8〜11[logΩ・cm]である高抵抗層を有する。中間転写ベルト421は、制御部100からの制御信号によって回転駆動される。なお、中間転写ベルト421については、導電性および弾性を有するものであれば、材質、厚さおよび硬度を限定しない。
一次転写ローラー422は、各色成分の感光体ドラム413に対向して、中間転写ベルト421の内周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、一次転写ローラー422が感光体ドラム413に圧接されることにより、感光体ドラム413から中間転写ベルト421へトナー像を転写するための一次転写ニップが形成される。
二次転写ローラー424は、駆動ローラー423Aのベルト走行方向下流側に配置されるバックアップローラー423Bに対向して、中間転写ベルト421の外周面側に配置される。中間転写ベルト421を挟んで、二次転写ローラー424がバックアップローラー423Bに圧接されることにより、中間転写ベルト421から用紙Sへトナー像を転写するための二次転写ニップが形成される。
一次転写ニップを中間転写ベルト421が通過する際、感光体ドラム413上のトナー像が中間転写ベルト421に順次重ねて一次転写される。具体的には、一次転写ローラー422に一次転写バイアスを印加し、中間転写ベルト421の裏面側、つまり、一次転写ローラー422と当接する側にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は中間転写ベルト421に静電的に転写される。
その後、用紙Sが二次転写ニップを通過する際、中間転写ベルト421上のトナー像が用紙Sに二次転写される。具体的には、二次転写ローラー424に二次転写バイアスを印加し、用紙Sの裏面側、つまり、二次転写ローラー424と当接する側にトナーと逆極性の電荷を付与することにより、トナー像は用紙Sに静電的に転写される。トナー像が転写された用紙Sは定着部60に向けて搬送される。
ベルトクリーニング装置426は、二次転写後に中間転写ベルト421の表面に残留する転写残トナーを除去する。なお、二次転写ローラー424に代えて、二次転写ローラーを含む複数の支持ローラーに、二次転写ベルトがループ状に張架された構成、つまり、いわゆるベルト式の二次転写ユニットを採用しても良い。
定着部60は、用紙Sの定着面、つまりトナー像が形成されている面側に配置される定着面側部材を有する上側定着部60A、用紙Sの裏面、つまり定着面の反対の面側に配置される裏面側支持部材を有する下側定着部60B、および加熱源60C等を備える。定着面側部材に裏面側支持部材が圧接されることにより、用紙Sを挟持して搬送する定着ニップが形成される。
定着部60は、トナー像が二次転写され、搬送されてきた用紙Sを定着ニップで加熱、加圧することにより、用紙Sにトナー像を定着させる。定着部60は、定着器F内にユニットとして配置される。また、定着器Fには、エアを吹き付けることにより、定着面側部材または裏面側支持部材から用紙Sを分離させるエア分離ユニットが配置されていても良い。
用紙搬送部50は、給紙部51、排紙部52および搬送経路部53等を備える。給紙部51を構成する3つの給紙トレイユニット51a〜51cには、坪量やサイズ等に基づいて識別された用紙S(規格用紙、特殊用紙)が予め設定された種類毎に収容される。搬送経路部53は、レジストローラー体53a等の複数の搬送ローラーを有する。
給紙トレイユニット51a〜51cに収容されている用紙Sは、最上部から一枚ずつ送出され、搬送経路部53により画像形成部40に搬送される。このとき、レジストローラー対53aが配設されたレジストローラー部により、給紙された用紙Sの傾きが補正されるとともに搬送タイミングが調整される。そして、画像形成部40において、中間転写ベルト421のトナー像が用紙Sの一方の面に一括して二次転写され、定着部60において定着工程が施される。画像形成された用紙Sは、排紙ローラー52aを備えた排紙部52により機外に排紙される。
次に、図3を参照し、本実施の形態1に係る現像装置412周辺および制御部100について説明する。
図3に示すように、制御部100は、露光装置411による露光後の感光体ドラム413の表面電位である露光電位Viと、現像バイアスVdcの直流成分と、帯電装置414に帯電された後の感光体ドラム413の表面電位である帯電電位Voとを制御することで現像装置412の現像条件を制御する。露光電位Viは、本発明の「第1表面電位」に対応し、帯電電位Voは、本発明の「第2表面電位」に対応する。
制御部100は、印刷ジョブ開始時における画像安定化の際、画像形成条件を設定する制御を実行する。詳しくは、制御部100は、環境やトナーの劣化度合いの違いがあっても、画像濃度、画質等を一定に保つ必要があるので、現像バイアスや転写電圧等を調整し、その調整の結果、適切な画像形成条件を決定する。
例えば、高温高湿環境下やトナーが劣化したようなときの場合には、トナーの帯電量が小さくなるので、制御部100は、感光体ドラム413の画像領域と現像スリーブ412Aとの電位差、つまり、現像バイアスVdcに対する露光電位Viの電位差(以下、「画像部電位差」という)を小さくする。また、低温低湿環境下やトナーが初期状態の時の場合には、トナーの帯電量が大きくなるので、制御部100は、画像部電位差を大きくする。画像部電位差は、本発明の「第1電位差」に対応する。
また、制御部100は、転写電圧についても、トナーの帯電量や環境条件により、中間転写ベルト421の電気抵抗が変化するので、その変化に応じた転写電圧に設定する。
次に、本実施の形態の画像形成装置1における滑剤の供給回収の一連の動作について説明する。図4Aは、トナーTおよび滑剤Gの移動を説明する図であり、図4Bは、現像スリーブ412Aと、感光体ドラム413の対向部分の拡大図である。図5Aは、現像スリーブ412Aに滑剤Gが回収される様子を説明する図であり、図5Bは、現像スリーブ412Aと、感光体ドラム413の対向部分の拡大図である。
なお、本実施の形態1では、感光体ドラム413の露光電位Viは、−100[V]になるように設定される。また、感光体ドラム413の帯電電位Voは、−750[V]に設定される。また、現像バイアスVdcは、画像形成時において−500[V]に設定される。これらの電圧値は、実施の形態に応じて適宜設定してよい。
また、以下の説明では、感光体ドラム413の背景領域P2と現像スリーブ412Aとの電位差、つまり、現像バイアスVdcに対する帯電電位Voの電位差を背景部電位差とする。背景部電位差は、本発明の「第2電位差」に対応する。
まず、感光体ドラム413上への滑剤Gの供給について説明する。
図4Aおよび図4Bに示すように、印刷ジョブが開始されると、キャリアーCと混成されたトナーTは、現像バイアスVdcが印加された現像スリーブ412A上に担持され、現像スリーブ412Aの回転により感光体ドラム413に対向する位置に移動する。
画像領域P1においては、画像部電位差が+400[V]であるので、現像スリーブ412Aから感光体ドラム413に向かう方向には、正方向の電界が働いている。そのため、負極性に帯電したトナーTは、感光体ドラム413側に移動する。このとき、当該トナーTに添加された滑剤GもトナーTとともに感光体ドラム413上に移動する。
感光体ドラム413上に移動したトナーTおよび滑剤Gは、感光体ドラム413の回転により一次転写ローラー422との間で中間転写ベルト421を挟んだ位置に移動する。一次転写ローラー422には、正極性の転写電圧が印加されているので、負極性のトナーTが中間転写ベルト421上に移動する。なお、本実施の形態では、転写電圧は、500[V]に設定されるが、実施の形態に応じて適宜設定することができる。
このとき、滑剤Gは、正極性であるため、一次転写ローラー422と感光体ドラム413との間に発生する電界により、感光体ドラム413側に押し付けられる。これにより、滑剤Gは、トナーTから離脱して感光体ドラム413上にとどまる。また、感光体ドラム413と中間転写ベルト421が接触しているので、非接触である感光体ドラム413と現像スリーブ412A間よりも大きな電界が形成されることで、よりトナーTから滑剤Gが離脱しやすい。このようにして、感光体ドラム413上に滑剤Gが供給される。
一方、背景領域P2においては、背景部電位差が−250[V]であるので、現像スリーブ412Aから感光体ドラム413に向かう方向には、負方向の電界が働いている。そのため、負極性に帯電したトナーTは、感光体ドラム413側に移動しない。しかし、正極性に帯電した滑剤Gは、トナーTから離脱して、感光体ドラム413側に移動する。また、現像スリーブ412A上で、トナーTから離脱している滑剤Gも、感光体ドラム413側に移動する。
ところで、低面積率の画像、つまり、背景領域P2の割合が多い画像を連続して形成すると、感光体ドラム413に滑剤Gが過度に供給される。滑剤Gが感光体ドラム413に過度に供給されると、現像部412B内の滑剤Gの量が不足するので、感光体ドラム413に供給される滑剤Gの量が低下し、感光体ドラム413上にトナーTが残留しやすくなり、スリヌケや粒状ノイズ等が発生しやすい。
しかし、本実施の形態では、制御部100は、トナー像の面積率が第1所定面積率より小さい低面積率の画像を形成するとき、感光体ドラム413のトナー像形成領域とは異なるパッチ画像形成領域にパッチ画像を形成する制御を実行する。制御部100がパッチ画像を形成する制御を実行することで、現像部412B内のトナーが感光体ドラム413に供給され、それに伴い、新たなトナーTおよびトナーTに添加された滑剤Gが現像部412B内に供給される。そのため、現像部412B内の滑剤Gが不足するのが抑制され、ひいてはスリヌケや粒状ノイズ等を発生しにくくすることができる。
なお、第1所定面積率は、用紙Sの印刷領域に対する画像領域の割合が、白色の背景領域の割合よりも小さい面積率であって、トナー像を形成する画像部電位差の範囲内において、例えば、5000枚等、比較的多くの枚数を印刷しても、スリヌケ、粒状ノイズ等の問題が発生しない程度の面積率のことをいい、実験等で適宜設定することができる。
また、制御部100は、パッチ画像を形成するとき、印刷ジョブにおけるトナー像の面積率に応じて、パッチ画像を形成する際の画像部電位差を変更する制御を実行する。これにより、形成されるパッチ画像のトナー量が調節され、現像部412B内に新たに供給される滑剤の量を調節することができる。なお、このときの画像部電位差は、記憶部72等に予め記憶された、トナー像の面積率に関連付けた、例えば、後述する表2のようなテーブルから求めてもよく、実験等により適宜設定することができる。
次に、現像スリーブ412Aによる感光体ドラム413上の滑剤Gの回収について説明する。
図5Aおよび図5Bに示すように、感光体ドラム413の画像が形成された部分は、一回転して再度現像スリーブ412Aと対向する位置に移動する。このとき、当該部分、つまり、露光電位Viに対して、現像バイアスVdcが小さいので、感光体ドラム413から現像スリーブ412Aに向けて負方向の電界が働く。そのため、正極性に帯電した滑剤Gが、現像スリーブ412A側に移動する。
画像領域P1においては、感光体ドラム413から現像スリーブ412Aに向かう方向に負方向の電界が働いているので、正極性に帯電した滑剤Gは、現像スリーブ412A側に移動する。このようにして、感光体ドラム413上の滑剤Gが現像スリーブ412Aに回収される。
また、背景領域P2においては、感光体ドラム413から現像スリーブ412Aに向かう方向に正方向の電界が働いているので、正極性に帯電した滑剤Gは、感光体ドラム413にとどまり、現像スリーブ412Aに回収されない。
ところで、高面積率の画像、つまり、画像領域P1の割合が多い画像を連続して形成すると、感光体ドラム413上の滑剤Gが現像スリーブ412Aに過度に回収される。滑剤Gが現像部412Bに過度に回収されると、トナーTの帯電量が低下して、カブリトナー等の品質問題が発生しやすい。
しかし、本実施の形態では、制御部100は、トナー像の面積率が第2所定面積率より大きい高面積率の画像を形成するとき、トナー像形成領域とは異なる背景画像形成領域に感光体ドラム413に白色の画像である背景画像を形成する制御を実行する。この背景領域P2と現像スリーブ412Aとの間には、トナーTが移動しないような電界が形成されるので、トナーTと帯電極性が逆となる滑剤Gが、感光体ドラム413側に移動しやすくなるとともに、感光体ドラム413から現像スリーブ412Aに滑剤Gが回収されにくい。そのため、現像部412B内に滑剤Gの量が多くなり過ぎるのが抑制され、ひいてはカブリトナー等の品質問題が発生するのを抑制することができる。
なお、第2所定面積率は、用紙Sの印刷領域に対する画像領域P1の割合が白色の背景領域P2の割合よりも高い面積率であって、トナー像を形成する画像部電位差の範囲内において、例えば、4000枚等の比較的多くの枚数を印刷しても、カブリ、画質の低下等の問題が発生しない程度の面積率のことをいい、実験等で適宜設定することができる。
制御部100は、背景画像を形成するとき、印刷ジョブにおけるトナー像の面積率に応じて、背景部電位差を変更する制御を実行する。これにより、現像部412B内から感光体ドラム413に排出される滑剤の量を調節することができる。なお、このときの背景部電位差は、記憶部72等に予め記憶された、トナー像の面積率に関連付けたテーブルから求めてもよく、実験等により適宜設定することができる。
制御部100は、印刷開始時に設定した画像部電位差と、印刷ジョブで入力されたトナー像の面積率から、印刷ジョブにおける印刷枚数の規定枚数を決定する。そして、制御部100は、当該規定枚数に印刷枚数が達した場合、上記したパッチ画像または背景画像を形成する制御を実行する。そのため、適正なタイミングでパッチ画像及び背景画像を形成することができる。
印刷枚数の規定枚数は、印刷開始時に設定した画像部電位差と、トナー像の面積率との関係でこれより多く印刷すると、スリヌケ、粒状ノイズやカブリトナー等の問題が発生する枚数である。規定枚数は、記憶部72等に予め記憶された画像部電位差とトナー像の面積率とを関連付けた、例えば、後述する表1のようなテーブルから求めてもよいし、画像部電位差毎に設定された枚数を、電位差の変化量で補正することで求めてもよく、実験等により適宜設定することができる。
図6は、本実施の形態1における制御部100における現像部412B内の滑剤量制御の動作例を示すフローチャートである。図6における処理は、制御部100が印刷ジョブの実行指示を受け付けたときに実行される。
まず、制御部100は、印刷ジョブが開始されると、画像形成条件を設定する(ステップS101)。次に、制御部100は、ステップS101にて設定した画像形成条件を記憶部72に格納する(ステップS102)。次に、制御部100は、記憶部72に記憶される画像形成情報から印刷ジョブにおけるトナー像の面積率を算出する(ステップS103)。
次に、制御部100は、トナー像の面積率が低面積率(例えば、10%以下)又は高面積率(例えば、60%以上)であるか否かについて判定する(ステップS104)。判定の結果、トナー像の面積率が低面積率又は高面積率である場合(ステップS104、YES)、制御部100は、ステップS101で設定した画像部電位差と、ステップS103で算出したトナー像の面積率から、印刷ジョブ中での印刷枚数の規定枚数を決定する(ステップS105)。
次に、制御部100は、印刷ジョブにおける印刷枚数をカウントアップする(ステップS106)。次に、制御部100は、印刷枚数が規定枚数以上であるか否かについて判定する(ステップS107)。判定の結果、印刷枚数が規定枚数以上である場合(ステップS107、YES)、制御部100は、トナー像の面積率が低面積率であるか否かについて判定する(ステップS108)。
判定の結果、トナー像の面積率が低面積率である場合(ステップS108、YES)、制御部100は、パッチ画像を形成する(ステップS109)。より詳細に、制御部100は、トナー像の面積率に応じてパッチ画像形成における画像部電位差を変更する制御を実行する。
一方、トナー像の面積率が低面積率でない、つまり、高面積率である場合(ステップS108、NO)、制御部100は、背景画像を形成する(ステップS110)。より詳細に、制御部100は、トナー像の面積率に応じて背景画像形成における背景部電位差を変更する制御を実行する。
ステップS109,S110の後、制御部100は、印刷枚数の値をリセットして、当該値を0に設定する(ステップS120)。その後、処理は、ステップS106の前に戻る。
ステップS107の判定に戻って、印刷枚数が規定枚数未満である場合(ステップS107、NO)、制御部100は、印刷制御を実行する(ステップS121)。最後に、制御部100は、実行中の印刷ジョブが終了したか否かについて判定する(ステップS122)。判定の結果、実行中の印刷ジョブが終了した場合(ステップS122、YES)、画像形成装置1は、図6における処理を終了する。一方、実行中の印刷ジョブが終了していない場合(ステップS122、NO)、処理はステップS106の前に戻る。
ステップS104の判定に戻って、トナー像の面積率が低面積率又は高面積率でない場合(ステップS104、NO)、制御部100は、印刷制御を実行し(ステップS130)、画像形成装置1は、図6における処理を終了する。
以上、詳しく説明したように、本実施の形態1における画像形成装置1は、滑剤が供給される感光体ドラム413と、感光体ドラム413上にトナー像を形成することで、感光体ドラム413から滑剤を回収する現像部412Bと、印刷ジョブにおけるトナー像の面積率、およびトナー像を形成する際の現像部412Bの現像条件に基づいて、現像部412B内の滑剤の量を制御する制御部100とを備える。
このように構成した本実施の形態1によれば、トナー像の面積率および現像条件に基づいて、現像部412B内の滑剤の量を制御するので、現像部412B内および感光体ドラム413上の滑剤の量を適正量に制御することができる。また、制御部100が印刷開始時に画像部電位差を適正な値に調節するので、環境やトナーの劣化度合いの違いによって、現像部412B内の滑剤の量が変動するのを抑制することができる。
また、低面積率の画像を連続して形成するときに、制御部100がパッチ画像を形成する制御を実行するので、現像部412B内における滑剤の量が不足するのを抑制することができ、ひいてはスリヌケや粒状ノイズの発生を抑制することができる。
また、制御部100がトナー像の面積率および現像条件において求めた規定枚数に印刷枚数が達した場合に、パッチ画像を形成するので、パッチ画像を適正なタイミングで形成することができる。そのため、無駄なパッチ画像を形成することがないので、トナーの消費量を低減することができる。
また、高面積率の画像を連続して形成するときに、制御部100が背景画像を形成する制御を実行するので、現像部412B内に滑剤の量が多くなり過ぎるのを抑制することができ、ひいてはカブリトナーや画質の低下等が発生するのを抑制することができる。また、現像部412Bから感光体ドラム413にトナーとともに供給される滑剤の量が多くなり過ぎないので、感光体ドラム413とドラムクリーニングブレード415Aのトルクが増えるのを抑制され、ドラムクリーニングブレード415Aがめくれたり、摩耗したりするのを抑制できる。
制御部100がトナー像形成領域とは異なるパッチ画像形成領域または背景画像形成領域にパッチ画像または背景画像を形成するので、印刷動作を中断する必要がない。そのため、時間あたりの印刷枚数が減ることがなくなり、印刷効率を向上させることができる。
次に、本実施の形態2について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、前述した形態1と略同様の構成要素については、同一の符号を付し、説明を省略することとする。
図7は、本実施の形態2に係る現像装置412周辺および制御部100を示す図である。
図7に示すように、現像装置412は、形態1の構成の他に、ドラムクリーニングブレード415Aの、感光体ドラム413の回転方向の下流側に配置された滑剤塗布部430を備えている。また、現像装置412に収容されているトナーには、滑剤が添加されていない。なお、以下の説明では、感光体ドラム413の回転方向を単に「回転方向」という。
滑剤塗布部430は、滑剤棒431と、ブラシ432と、ブレード433とを備えている。
滑剤棒431は、滑剤の材料を圧縮成型等で棒状に形成されており、感光体ドラム413とは離れた位置に配置されている。
ブラシ432は、滑剤棒431と感光体ドラム413の間に回転可能に配置されており、それぞれに当接している。ブラシ432は、回転することで、滑剤棒431より滑剤を掻き取り、当該滑剤をブラシ432内に保持する。そして、ブラシ432は、保持した滑剤を感光体ドラム413上に供給する。
ブレード433は、ゴム状の均しブレードであり、滑剤棒431およびブラシ432の回転方向の下流側に配置されている。ブレード433は、感光体ドラム413上に供給された滑剤を、感光体ドラム413に押し付けるように構成されている。このブレード433に滑剤が押し付けられることで、感光体ドラム413上に滑剤が塗布される。
制御部100は、ブラシ432の回転速度を変動させる制御を実行する。より詳細には、制御部100は、滑剤の感光体ドラム413への供給量を増やしたい場合には、ブラシ432の感光体ドラム413に対する移動速度を大きくし、滑剤の感光体ドラム413への供給量を減らしたい場合には、ブラシ432の感光体ドラム413に対する移動速度を小さくする。このようにブラシ432の回転速度を変動させることで、感光体ドラム413に供給される滑剤の量を変動させることが可能となっている。
なお、ブラシ432の回転速度は、記憶部72に予め記憶されたトナー像の面積率および背景部電位差等と関連付けたテーブルから求めてもよいし、実験等で適宜設定することができる。
制御部100は、印刷ジョブにおける印刷枚数が規定枚数に達した場合、感光体ドラム413のトナー像形成領域とは異なる背景画像形成領域に背景画像を形成する制御を実行する。これにより、現像部412B内の滑剤を、感光体ドラム413上に排出することが可能となっている。
以上のように構成された本実施の形態2に係る制御部100を備えた画像形成装置1における滑剤の供給回収の一連の動作について説明する。
まず、感光体ドラム413、ブラシ432が回転を開始することで、感光体ドラム413に滑剤が供給される。感光体ドラム413の滑剤が供給された部分は、感光体ドラム413の回転により、上述した形態1と同様に、現像スリーブ412Aに対向する部分に移動する。
ここで、当該部分では、画像部電位差により、感光体ドラム413から現像スリーブ412Aに向かう方向に負方向の電界がかかっているので、正極性に帯電した滑剤が現像スリーブ412Aに回収される量が多くなる。現像スリーブ412Aに回収される滑剤の量が多くなると、現像部412B内の滑剤の量が増加し、カブリトナー等の品質問題が発生する。
しかし、本実施の形態2では、制御部100が背景画像を形成する制御を実行するので、上述した形態1と同様に、感光体ドラム413から現像スリーブ412Aに滑剤Gが回収されにくい。そのため、現像部412B内に滑剤の量が多くなり過ぎるのが抑制され、ひいてはカブリトナー等の品質問題が発生するのを抑制することができる。
図8は、本実施の形態2における制御部100における現像部412B内の滑剤量制御の動作例を示すフローチャートである。図8における処理は、制御部100が印刷ジョブの実行指示を受け付けたときに実行され、その後、制御部100は、感光体ドラム413やブラシ432を回転させる。
ステップS101からステップS103までの処理は、図6の処理と同様であり、制御部100は、ステップS103の後、ステップS105の処理に遷移する。ステップS105からステップS107までの処理は、図6の処理と同様であり、ステップS107でYESと判定した場合、背景画像を形成する(ステップS110)。より詳細に、制御部100は、画像面積率に応じて背景画像形成における背景部電位差を変更する制御を実行する。
次に、制御部100は、ブラシ432の回転速度を変更する(ステップS111)。具体的に、制御部100は、滑剤の感光体ドラム413への供給量を増やしたい場合には、ブラシ432の回転速度を大きくし、滑剤の感光体ドラム413への供給量を減らしたい場合には、ブラシ432の回転速度を小さくする。その後、制御部100は、ステップS120の処理に遷移する。ステップS120以降およびステップS107でNOと判定した場合の処理は、図6の処理と同様である。
以上のように構成によれば、制御部100が画像部電位差およびトナー像の面積率に基づいて、現像部412B内の滑剤の量を制御するので、現像部412B内および感光体ドラム413上の滑剤の量を適正量に制御することができる。
また、制御部100が、画像部電位差およびトナー像の面積率に基づいて背景画像を形成する制御を実行するので、現像部412B内に滑剤の量が多くなり過ぎるのを抑制することができ、ひいてはカブリトナーや画質の低下等が発生するのを抑制することができる。また、現像部412Bから感光体ドラム413にトナーとともに供給される滑剤の量が多くなり過ぎないので、感光体ドラム413とドラムクリーニングブレード415Aのトルクが増えるのを抑制され、ドラムクリーニングブレード415Aがめくれたり、摩耗したりするのを抑制できる。
なお、前記した実施の形態2では、制御部100が背景画像を形成する制御を実行していたが、これに限定されず、パッチ画像を形成する制御を実行してもよい。このような構成であっても、トナーとともに滑剤を感光体ドラム413上に排出することができる。また、背景画像形成時の方が、滑剤が現像部412Bから感光体ドラム413上に移動しやすいことを考慮すると、制御部100は、滑剤を排出する際には、背景画像を形成する制御を実行するのが好ましい。
また、前記した実施の形態では、制御部100が一定枚数印刷した後におけるトナー像形成領域が形成された後から、その次のトナー像形成領域が形成される前のタイミングで、パッチ画像および背景画像を形成する制御を実行していたが、本発明はこれに限定されない。例えば、制御部100が一定枚数印刷した後、印刷ジョブを中断して当該制御を実行してもよい。
また、制御部100が、印刷指示された枚数、そのトナー像の面積率および画像部電位差を基に感光体ドラム413上の滑剤の量の変化を予測可能な場合、印刷動作前に当該制御を実行してもよい。この場合、印刷される画像と、パッチ画像との面積率の合計が一定値以上にすることで、印刷動作中に現像部412B内の滑剤の量が減少するのを抑制することができる。
また、前記した実施の形態では、画像部電位差とトナー像の面積率から規定枚数を決定していたが、本発明はこれに限定されず、例えば、設定した画像形成条件における背景部電位差および画像部電位差と、トナー像の面積率から規定枚数を決定してもよい。
また、前記した実施の形態では、現像条件の制御を、画像部電位差および背景部電位差を変更する制御としていたが、本発明はこれに限定されない。例えば、現像条件の制御を、感光体ドラム413と現像スリーブ412Aの距離を変更する制御や感光体ドラム413に対する現像スリーブ412Aの速度比を変更する制御としてもよい。
その他、上記実施の形態は、何れも本発明の実施するにあたっての具体化の一例を示したものに過ぎず、これらによって本発明の技術的範囲が限定的に解釈されてはならないものである。すなわち、本発明はその要旨、またはその主要な特徴から逸脱することなく、様々な形で実施することができる。
本発明は、画像形成装置を含む複数のユニットで構成される画像形成システムに適用できる。複数のユニットには、例えば後処理装置、ネットワーク接続された制御装置等の外部装置が含まれる。
最後に、本実施の形態1における各評価実験の結果について説明する。
[第1の評価実験]
第1の評価実験では、感光体ドラム210の表面電位と、現像バイアスとの電位差を変動させたときの感光体ドラム210上の滑剤Gの量の変化について確認した。図9は、第1の評価実験に係る評価装置を示す図であり、図10は、第1の評価実験の実験結果を示す図である。
図9に示すように、第1の評価実験に係る評価装置200として、感光体ドラム210、転写ローラー220および現像スリーブ230からなる評価装置200を用いた。評価条件としては、下記のように設定した。
(1)感光体ドラム
感光体ドラム210としては、外径100[mm]、長さ100[mm]のアルミニウム製の円筒部材の表面にポリカーボネート樹脂からなる厚さ25[μm]の感光層を設けたものを用いた。感光体ドラム210は、400[mm/秒]で矢印a方向に回転する。
(2)転写ローラー
転写ローラー220としては、表面に導電性のゴム層を設けたものを用いた。転写ローラー220は、感光体ドラム210に接触し、感光体ドラム210に従動回転する。
(3)現像スリーブ
現像スリーブ230としては、外径50[mm]のアルミニウム製の円筒部材を用いた。現像スリーブ230は、感光体ドラム210と300[μm]離れて対向配置され、600[mm/秒]で矢印b方向に回転する。
(4)トナー
トナーTには、滑剤Gとしてステアリン酸亜鉛を添加したものを用いた。
以上の評価装置200において、感光体ドラム210をGNDに接続し、転写ローラー220の転写電圧を500[V]とし、現像スリーブ230には、周波数10000[Hz]、振幅900[V]の交流電圧を重畳した現像バイアスを、感光体ドラム210が1回転する間の一定時間印加した。また、現像スリーブ230の周面には、260[g/m2]のトナーを保持させた。
このような評価装置200において、現像スリーブ230を回転させた状態で、感光体ドラム210を1回転させると、感光体ドラム210上にトナー像が形成され、当該トナー像が転写ローラー220に転写される。転写後に、感光体ドラム210上には、トナー像から離脱した滑剤Gが付着している。その後、感光体ドラム210を清掃せず、転写ローラー220上のトナーTを清掃し、同様の動作を繰り返すことで、実機での現像から転写後の状態を再現可能となる。
以上の評価装置200を用いて、現像バイアスの直流成分を変えた状態で、転写後のトナーTの清掃までを繰り返し5回行った後に感光体ドラム210上に供給された滑剤Gの量を調べた。現像バイアスは、−200〜−800[V]の範囲とした。つまり、感光体ドラム210と現像スリーブ230との電位差を200〜800[V]の範囲とした。また、滑剤Gの量としては、X線光電子分光分析装置を用いて求められるステアリン酸亜鉛に対する亜鉛の比率で代用した。
図10に、第1の評価実験の実験結果を示す。図10において、破線L1は、感光体ドラム210上のトナーTの量を示し、実線L2は、感光体ドラム210上の滑剤Gの量を示している。これによれば、感光体ドラム210と現像スリーブ230との電位差が小さくなるほど、感光体ドラム210上の滑剤Gの量が増えていることが確認できた。また、当該電位差を小さくするほど、感光体ドラム210上のトナーTの量が減っていることが確認できた。
ところで、トナーTより径の小さい滑剤GがトナーTに付着して感光体ドラム210側に移動することを考慮すれば、画像部電位差を大きくすると、感光体ドラム210上のトナーTの量が増えることに伴い、感光体ドラム210上に供給される滑剤Gの量も増えるとも考えられる。しかしながら、図10の結果から、実際は、画像部電位差を大きくすることで、感光体ドラム210上のトナーTの量が増加するが、感光体ドラム210上の滑剤Gの量は減少する。
この理由を以下に述べる。前述したように、転写後に感光体ドラム210上に残った滑剤Gは、再度現像スリーブ230まで運ばれる。このとき、画像部電位差により、感光体ドラム210上の滑剤Gが現像スリーブ230側に移動する力が働くので、一部の滑剤Gが現像スリーブ230に回収される。画像部電位差が大きいと、滑剤Gが現像スリーブ230側に移動する力が大きくなるので、現像スリーブ230側に移動する滑剤Gの量が増加し、結果として感光体ドラム210上の滑剤Gの量が減少するからである。
このように、現像スリーブ230の位置で、感光体ドラム210への滑剤Gの供給や、感光体ドラム210からの滑剤Gの回収が起こっていることから、画像部電位差の大きさによって、感光体ドラム210上の滑剤Gの量が決まってくると考えられる。そのため、トナー像の面積率に応じて、画像部電位差を変動させることで、現像部内の滑剤の量を正確に調節することができる。
[第2の評価実験]
第2の評価実験では、感光体ドラム320上の滑剤Gが現像スリーブ330に回収されるかについて確認した。図11Aは、第2の評価実験に係る第1の評価装置300を示す図であり、図11Bは、第2の評価実験に係る第2の評価装置301を示す図である。
第2の評価実験に係る評価装置として、図11Aに示す滑剤塗布部310および感光体ドラム320からなる第1の評価装置300と、図11Bに示す感光体ドラム320および現像スリーブ330からなる第2の評価装置301とを用いた。評価条件としては、下記のように設定した。
(1)第1の評価装置
滑剤塗布部310としては、ステアリン酸亜鉛を圧縮成型により棒状に固めた滑剤棒311と、ポリエステル製のブラシ312と、ポリウレタン製のゴムブレード313とから構成されたものを用いた。ブラシ312は、300[mm/秒]で矢印c方向に回転する。また、感光体ドラム320は、第1の評価実験と同じ条件のものを用いた。
(2)第2の評価装置
第2の評価装置301としては、第1の評価装置300において、実験した後の状態から、滑剤塗布部310を取り外して、感光体ドラム320に現像スリーブ330のみを300[μm]の距離で対向配置させたものを用いた。現像スリーブ330としては、第1の評価実験と同じ条件のものを用いた。
以上の第1の評価装置300および第2の評価装置301において、感光体ドラム320をGNDに接続し、現像スリーブ330には、現像バイアスVdc200[V]、周波数10000[Hz]、振幅900[V]を印加した。また、現像スリーブ330の周面には、260[g/m2]のトナーTを保持させた。
以上のような第1の評価装置300を用いて、ブラシ312および感光体ドラム320を一定時間回転させ、感光体ドラム320上に滑剤Gを供給し、滑剤をゴムブレード313で感光体ドラム320上に固定化する。このときの感光体ドラム320上の滑剤Gの量を、X線光電子分光分析装置で測定した。
また、第2の評価装置301を用いて、現像スリーブ330を回転させながら感光体ドラム320を10回転させ、そのときの感光体ドラム320上の滑剤の量をX線光電子分光分析装置で測定した。
その結果、第1の評価装置300における感光体ドラム320上の滑剤の量が、0.5[at%]であったのに対し、第2の評価装置301における感光体ドラム320上の滑剤の量が、0.21[at%]であることを確認した。つまり、現像スリーブ330により感光体ドラム320上の滑剤が回収されていることを確認した。
[第3の評価実験]
第3の評価実験では、低面積率の画像を印刷したときのスリヌケと粒状ノイズの発生状況について確認した。評価装置としては、図1および図2に示す画像形成装置1を用いた。評価条件としては、下記のように設定した。
(1)感光体ドラム
感光体ドラム413としては、アルミニウムよりなるドラム上の金属基体の外周面にポリカーボネート樹脂よりなる厚さ25[μm]の感光層が形成された直径80[mm]の有機感光体を用いた。感光体ドラム413は、400[mm/秒]で回転する。
(2)現像装置
現像装置412としては、回転速度600[mm/秒]で回転駆動される現像スリーブ412Aを備え、この現像スリーブ412Aに感光体ドラム413の表面電位と同極性の現像バイアスが印加され、二成分現像剤によって反転現像が行われるものを用いた。
(3)中間転写ベルト
中間転写ベルト421としては、導電性を付与したポリイミド樹脂からなる無端状のベルトを用いた。また、当該中間転写ベルト421を介して感光体ドラム413に圧接し、トナーの帯電極性とは逆極性の一次転写バイアスが印加される一次転写ローラー422を設けた。
(4)ドラムクリーニングブレード
ドラムクリーニングブレード415Aとしては、ウレタンゴムよりなる反発弾性率が50[%](25[℃]、)、JISA硬度が70[°]、厚さが2[mm]、自由長が10[mm]、幅が324[mm]のものを用いた。そして、ドラムクリーニングブレード415Aは、感光体ドラム413に対する当接荷重を20[N/m]、当接角15[°]となるように設定した。
(5)トナー
二成分現像剤を構成するトナーは、乳化重合法により製造された体積平均粒径が6.5[μm]のトナー粒子よりなり、負帯電性を有するものである。そのトナー粒子に滑剤Gとして、ステアリン酸亜鉛をトナーに対して0.2重量部添加したものを用いた。
以上の画像形成装置1において、感光体ドラム413の帯電電位Voを−750[V]、感光体ドラム413の露光電位Viを−100[V]とした。また、現像スリーブ412Aには、画像部電位差が400Vとなるように、周波数10000[Hz]、振幅900[V]、直流成分−500[V]の現像バイアスを印加した。
以上のような画像形成装置1を用いて、温度10[℃]、相対湿度20[%]の低温低湿環境にて印刷枚数5000枚までの実写テストを実施することにより、スリヌケと粒状ノイズやカブリトナーの発生状況を確認した。また、用紙として、画像パターンとして粒状ノイズが発生しやすい図12に示す縦帯チャートS1を使用した。
縦帯チャートS1は、長辺が延びる方向の中央部における図示右寄りの部分に配置された黒色のクロ部S11と、長辺が延びる方向におけるクロ部S11の両側に配置された白色のシロ部S12とから構成された紙である。縦帯チャートS1は、短辺が延びる方向に搬送される。
表1にトナー像面積率1〜6[%]の画像を印刷したときのスリヌケと粒状ノイズの発生状況を示す。
表1において、項目「印刷枚数(枚)」の「○」は、スリヌケ、粒状ノイズが発生しなかったことを示し、同項目の「×」は、スリヌケ、粒状ノイズが発生したことを示す。
表1の結果から、低面積率の画像では、面積率によってスリヌケや粒状ノイズの発生状況が異なり、面積率が小さいほど、印刷枚数が少ない時点から発生していることを確認できる。一方、面積率が6[%]になると、5000枚までの印刷枚数では、スリヌケや粒状ノイズが発生していないことを確認できる。
[第4の評価実験]
第4の評価実験では、第3の評価実験とは画像部電位差を変えたときのスリヌケと粒状ノイズの発生状況について確認した。また、第4の評価実験では、高面積率の画像を形成する場合におけるカブリ、画質の低下の発生状況についても確認した。
評価条件としては、現像スリーブ412Aに印加される現像バイアスVdcの直流成分を、実施例1では、画像部電位差が200Vとなるように−300[V]とし、実施例2では、実験3と同様に画像部電位差が400[V]となるように−500「V」とし、実施例3では、画像部電位差が600[V]となるように−700[V]とした。その他の評価条件は、第3の評価実験と同様の条件とした。
表2に、各実施例における、トナー像の面積率を変えたときの品質問題が発生したときの印刷枚数を示す。
表2において、項目「トナー像の面積率」の例えば「1000枚」は、1000枚印刷したときに、品質問題が発生したことを示す。
表2の結果から、低面積率、つまりトナー像の面積率1〜5[%]の画像の場合、実施例1、つまり、画像部電位差が200[V]のときでは、実施例2、つまり、画像部電位差を400[V]のときと比較して、印刷枚数が少なくなっており、スリヌケ、粒状ノイズの品質問題が発生しやすいことが確認できる。
一方、実施例3、つまり、画像部電位差が600[V]のときでは、実施例2と比較して、スリヌケ、粒状ノイズの品質問題が発生しにくく、特に、トナー像の面積率が5[%]のときは、当該品質問題が発生していないことが確認できる。
これらのことから、低面積率の画像でのスリヌケ、粒状ノイズの発生には、画像部電位差が影響することが確認できる。より詳細に、画像部電位差が小さいと、現像スリーブ412Aが感光体ドラム413から滑剤Gを回収する力が小さく、スリヌケ、粒状ノイズが発生しやすい。また、画像部電位差が大きいと、現像スリーブ412Aが感光体ドラム413から滑剤Gを回収する力が大きく、スリヌケ、粒状ノイズが発生しにくい。
一方、高面積率の画像の場合、画像部電位差の影響を受ける。具体的に、実施例1の場合、実施例2と比較して、現像部412Bへの滑剤の回収が少なく、現像部412B中の滑剤量が少なくなるので、カブリトナーが発生しにくく、印刷枚数が多くなることを確認した。また、実施例3の場合、実施例2と比較して、現像部412Bへの滑剤の回収が多く、現像部412B中の滑剤量が多くなるので、カブリトナーが発生しやすく、印刷枚数が少なくなることを確認した。
また、現像バイアスを変動させるときに、それに応じて感光体ドラム413の帯電電位Voを変動させて、背景部電位差を一定になるように制御することが望ましい。理由としては、背景部電位差を異ならせると、背景部電位差のときの、感光体ドラム413への滑剤の排出量が異なってくるので、現像部412B中の滑剤量にも影響してくるからである。
また、表1の結果からわかるように、低面積率の画像を印刷する場合、トナー像の面積率が6[%]時に、5000枚までスリヌケ、粒状ノイズが発生しないことから、印刷枚数に対してトナー像の面積率が一定以上であれば、スリヌケや粒状ノイズが発生しないと考えられる。そのため、印刷開始時に、トナー像形成領域におけるトナー像に加えて、パッチ画像を形成することで、印刷動作全体としてトナー像の割合を確保しておけば、現像部412B中の滑剤量の低下を抑制することが可能となる。そして、必要なパッチ画像におけるトナー像の面積率を算出する際、画像部電位差を考慮して算出することで、より効率よく現像部412B中の滑剤量を制御することができる。
なお、滑剤が感光体ドラム413に供給される量や、現像部412Bに回収される量は、画像部電位差、背景部電位差、トナーの量、感光体ドラム413と現像スリーブ412Aの距離や感光体ドラム413に対する現像スリーブ412Aの速度比等の現像条件および滑剤の種類などによっても変動するので、上述した実験結果はこの限りではない。
次に、本実施の形態2における評価実験の結果について説明する。
[第5の評価実験]
第5の評価実験では、本実施の形態2において、画像部電位差を変動させることによるカブリの発生する印刷枚数の変化について確認した。評価装置としては、図1および図2に示す画像形成装置1に、図11に示す滑剤塗布部430を備えたものを用いた。評価条件としては、下記のように設定した。
(1)滑剤棒
滑剤棒431としては、ステアリン酸亜鉛を圧縮成型により棒状に固めたものを用いた。
(2)ブラシ
ブラシ432としては、ポリエステル製のものを用い、回転速度を300[mm/秒]とした。
(3)ブレード
ブレード433としては、ポリウレタン製の均しブレードを用いた。
以上の画像形成装置1において、感光体ドラム413の帯電電位Voを−750[V]、感光体ドラム413の露光電位Viを−100[V]とした。また、現像スリーブ412Aには、周波数10000[Hz]、振幅900[V]の現像バイアスを印加した。また、画像部電位差が200[V]、400[V]、600[V]となるように、現像バイアスVdcの直流成分を、−300[V]、−500[V]、−700[V]に変動させた。
また、滑剤塗布方式では、低面積率の画像を連続して印刷する場合に現像部412B中に滑剤が回収されやすく、背景部にカブリトナーが発生しやすいことが知られているので、トナー像の面積率を5[%]に設定した。
以上のような画像形成装置1を用いて、温度10[℃]、相対湿度20[%]の低温低湿環境にて印刷枚数5000枚までの実写テストを実施することにより、各画像部電位差におけるカブリトナーが発生する印刷枚数を確認した。また、用紙として、画像パターンとして粒状ノイズが発生しやすい図12に示す縦帯チャートS1を使用した。
表3に、各画像部電位差におけるカブリトナーが発生する印刷枚数の実験結果を示す。
表3に示す結果から、画像部電位差に応じてカブリトナーが発生する印刷枚数が異なることが確認できた。具体的に、画像部電位差が200[V]のとき、画像部電位差が400[V]のときと比較して、感光体ドラム413から滑剤を回収する力が弱く、現像部412B中の滑剤量の増加が少ないので、その結果、カブリトナーが発生するのが遅くなることが確認できる。
一方、画像部電位差が600[V]のとき、画像部電位差が400[V]のときと比較して、感光体ドラム413から滑剤を回収する力が強く、現像部412B中の滑剤量の増加が大きいので、その結果、カブリトナーが発生するのが早くなることが確認できる。
ところで、滑剤塗布部430では、ブラシ432により感光体ドラム413上に供給された滑剤がブレード433を通過することで、感光体ドラム413上に固定化される。しかし、滑剤は、ブレード433部分を1回通過するだけでは固定化が十分ではないので、現像スリーブ412Aにより現像部412Bに回収される。一般に、高面積率のトナー像の場合、ドラムクリーニングブレード415Aで滑剤が研磨回収されるが、低面積率のトナー像の場合、ドラムクリーニングブレード415Aで回収される滑剤が少ないので、現像部412Bによる滑剤の回収がより顕著なものとなる。
表3の結果から、現像部412Bに回収される滑剤量は、トナー像の面積率と画像部電位差を考慮することで、効率よく制御することが可能となる。そして、トナー像の面積率と画像部電位差から現像部412B中の滑剤量の変化を予測して上述した制御を実行することで、カブリトナー等の品質問題を未然に防ぐことが可能となる。