JP6280491B2 - リチウム空気二次電池の空気極の製造方法 - Google Patents

リチウム空気二次電池の空気極の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、鉛蓄電池又はリチウムイオン電池などの従来の二次電池よりも小型、軽量で、これらよりも遙かに大きい放電容量を実現できるリチウム空気二次電池に関する。更に、本発明は、該リチウム空気二次電池に使用する空気極の製造方法に関する。
正極活物質として空気中の酸素を用いるリチウム空気二次電池は、電池外部から常に酸素が供給され、電池内に大量の負極活物質である金属リチウムを充填することができる。このため、電池の単位重量当たりの放電容量の値を非常に大きくできることが報告されている。
これまでに非特許文献1に報告されているように、カーボン粉末を主体とするガス拡散型空気極(正極)に種々の触媒を添加して、放電容量、サイクル特性などの電池性能を改善することが試みられている。
非特許文献1では、カーボン粉末を主体とする前記正極について、カーボン単体(触媒未担持)、並びに、該カーボン単体に9種類の触媒を担持した系を検討し、空気極に含まれるカーボンの重量当たりで1000〜3000mAh/gの非常に大きな放電容量が得られている。しかしながら、空気極に粉末の原料を使用した場合、充放電を繰り返すと、空気極の強度が低下し、空気極の内部抵抗が上昇するため、著しい放電容量の低下が起こる。例えば、カーボン粉末単体の場合、2サイクルで容量維持率が約10%となり、著しい容量の減少が見られる。また、触媒を担持した場合でも、例えば、Coの場合、10サイクルで容量維持率が約65%となる。このように、非特許文献1のリチウム空気二次電池では著しい容量の減少が見られ、二次電池としての十分な特性は得られていない。また、ほとんどの場合で平均放電電圧は2.5V程度であり、一方、充電電圧は4.0〜4.5Vを示し、最も低いものでも3.9V程度である。このため、非特許文献1のリチウム空気二次電池は充放電のエネルギー効率は低い。
空気極の原料としてカーボンなどの粉末を用いず、金属多孔体を用いた空気極に関する開示が、非特許文献2にある。非特許文献2では、金属多孔体として金(Au)を検討しており、100サイクルで容量維持率が95%以上である非常に優れたサイクル性能を有するリチウム空気二次電池が報告されている。また、このリチウム空気二次電池の平均放電電圧は2.6V程度であり、充電電圧は3.5V程度である。このため、充放電に関しても高いエネルギー効率が得られている。しかしながら、空気極に金属を使用しているため、空気極の重量密度が高く、放電容量が300mAh/g程度しかない。また、高価な金(Au)を空気極に用いているため、電池コストが高いことも課題となる。
Aurelie Debart,et al.,Journal of Power Sources,Vol.174,pp.1177(2007). Zhangquan Peng,et al.,Science,Vol.337,pp.563(2012).
本発明は、高容量な二次電池として作動させることができ、しかも充放電サイクルを繰り返しても放電容量の低下が小さく、且つ、充放電の電圧差が小さいリチウム空気二次電池を提供することを目的とする。また、本発明は、前記リチウム空気二次電池に用いる空気極の製造方法を提供することを目的とする。
本発明は、リチウム空気二次電池の空気極(正極)の製造方法に関する
本発明のリチウム空気二次電池の空気極(正極)の製造方法は、
(i)ポリアクリロニトリルを含む高分子量体を、前記高分子量体に対する良溶媒に溶解し、高分子量体溶液を得る工程と、
(ii)前記高分子量体溶液に、前記高分子量体に対する貧溶媒を噴霧し、三次元網目構造を有する高分子共連続多孔体を析出させる工程と、
(iii)前記高分子共連続多孔体を熱処理して三次元網目構造を有するカーボン共連続多孔体を得る工程
を含む。
本発明は、触媒を含むリチウム空気二次電池の空気極(正極)の製造方法を包含する。当該製造方法は、上記工程(iii)の後に、
(iv)前記カーボン共連続多孔体を、界面活性剤水溶液中に浸漬させる工程と、
(v)前記カーボン共連続体に金属又は金属酸化物の前駆体を含有させる工程であって、前記カーボン共連続多孔体に前記金属酸化物の前駆体となる金属塩の水溶液を更に含有させる工程と、
(vi)前記金属又は金属酸化物前駆体を含むカーボン共連続多孔体を熱処理し、金属触媒又は金属酸化物触媒を含むカーボン共連続多孔体を得る工程
を更に含むことができ、且つ、
前記金属が、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、カドミウム(Cd)、パラジウム(Pd)、鉛(Pb)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、プラセオジム(Pr)、セリウム(Ce)、ニオブ(Nb)、イットリウム(Y)、タンタル(Ta)、及び、錫(Sn)からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属であることが好ましい。また、金属酸化物はこれらの金属の酸化物であることが好ましい。
上記の触媒を含むリチウム空気二次電池の空気極(正極)の別の製造方法は、以下の方法を包含する。この製造方法は、
上記工程(iii)の後に、
(vii)前記カーボン共連続体に金属又は金属酸化物の前駆体を含有させる工程であって、前記カーボン共連続多孔体を、前記金属又は金属酸化物の前駆体となる金属塩の水溶液に含浸させる工程と、
(viii)前記金属又は金属酸化物の前駆体を含むカーボン共連続多孔体を加熱処理し、金属触媒を含むカーボン共連続多孔体を得る工程と、
(ix)前記金属触媒を含むカーボン共連続多孔体を高温高圧の水に浸漬させ、付着水を含有する金属酸化物及びカーボン共連続多孔体の複合体を形成する工程
を更に含む。
この製造方法では、前記金属が、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、カドミウム(Cd)、パラジウム(Pd)、鉛(Pb)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、プラセオジム(Pr)、セリウム(Ce)、ニオブ(Nb)、イットリウム(Y)、タンタル(Ta)、及び、錫(Sn)からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属であることが好ましい。また、金属酸化物はこれらの金属の酸化物であることが好ましい。
上記の触媒を含むリチウム空気二次電池の空気極(正極)の別の製造方法は、以下の方法を包含する。この製造方法は、
前記工程(iii)の後に、
(vii)前記カーボン共連続体に金属又は金属酸化物の前駆体を含有させる工程であって、前記カーボン共連続多孔体を、前記金属又は金属酸化物の前駆体となる金属塩の水溶液に含浸させる工程、及び
(x)前記金属又は金属酸化物の前駆体を含むカーボン共連続多孔体を加熱処理し、付着水を含有する金属酸化物触媒を含むカーボン共連続多孔体を得る工程
を更に含む。
この製造方法では、金属又は金属酸化物が、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、カドミウム(Cd)、パラジウム(Pd)、鉛(Pb)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、プラセオジム(Pr)、セリウム(Ce)、ニオブ(Nb)、イットリウム(Y)、タンタル(Ta)、及び、錫(Sn)からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属、又は、これらの金属の酸化物であることが好ましい。
本発明のリチウム空気二次電池は、カーボン共連続多孔体を含む空気極(正極)を採用することで、従来よりも充放電サイクルを繰り返しても放電容量の低下が小さいリチウム空気二次電池となる。また、本発明のリチウム空気二次電池は、カーボン共連続多孔体を含む空気極(正極)に酸化ルテニウム(RuO)をはじめとする各種金属酸化物を電極触媒として担持することにより、従来よりも優れたサイクル特性やエネルギー効率などを発揮することができる。具体的には、充放電サイクルを繰り返しても放電容量の低下を抑え、かつ充放電の電圧差を小さくすることができる。更に、電池コストの削減が可能となる。
更に、上記のリチウム空気二次電池用の空気極(正極)は、従来のカーボン粉末にバインダーを添加して作製する空気極(正極)と異なり、バインダーが不要であるため、空気極(正極)の軽量化及びバインダー添加分のコストダウンが可能となる。
また、本発明のリチウム空気二次電池の空気極(正極)の製造方法によれば、前記のような高性能なリチウム空気二次電池を構成するための空気極(正極)を容易且つ確実に得られる。
上記のような方法で製造した空気極(正極)を含むリチウム空気二次電池は、従来のものよりも電池性能が改善されるだけでなく、触媒の分散度が高まるので、空気極への触媒の担持量を削減することができる。
本発明に係るリチウム空気二次電池100の基本的な構成を示す図である。 本実施例で使用したリチウム空気二次電池セルの構造を示す断面図である。 実施例1に係るリチウム空気二次電池セル200の充放電曲線を示す図である。 実施例1〜4、比較例1に係るリチウム空気二次電池の放電容量のサイクル依存性を示す図である。
1.リチウム空気二次電池
以下に、図面を参照しつつ、本発明に係るリチウム空気二次電池について説明する。なお、以下の説明は、本発明の一実施形態を示す例示であり、本発明はこれに限定されない。
[リチウム空気二次電池の構成]
図1は、本発明のリチウム空気二次電池100の基本的な構成を示したものである。
図1に示すように本発明のリチウム空気二次電池100は、空気極1、負極2、及び、有機電解質(本明細書では非水電解質とも称する。)3を少なくとも含み、前記空気極1が正極として機能する。
本発明のリチウム空気二次電池の空気極1は、三次元網目構造を有するカーボン共連続多孔体を含む。また、負極2は、金属リチウム又はリチウム含有物質を含む。更に、有機電解質3は、正極と負極の間に配置される。以下にこれらの構成について説明する。なお、本明細書において、電解液とは、電解質が液体形態である場合をいう。従って、有機電解質が液体状態の場合、有機電解質は有機電解液と同義である。図1では有機電解質が液体状態の場合を示した。また、本発明のリチウム空気二次電池において、空気極と正極は同義である。
(I)空気極(正極)
本発明の空気極は、三次元網目構造を有するカーボン共連続多孔体を含む。一実施形態では、本発明の空気極は、カーボン共連続多孔体からなる単体の空気極である。
本発明のようなリチウム空気二次電池は、空気極において、電解液/電極(カーボン)/空気(酸素)の三相部分(三相界面サイト)で電極反応が進行する。電池の効率を上げるためには、電極反応を引き起こす三相界面サイトがより多く存在することが望ましい。このような観点から、カーボン共連続多孔体の比表面積はなるべく大きい方がよいと考えられる。
ここで、カーボン共連続多孔体は、カーボン粉末の焼結といった公知のプロセスで調製できるが、上述した通り、リチウム空気二次電池では、空気極の三相界面サイトを多量に電極表面に生成することが重要であり、使用する空気極(即ちカーボン共連続多孔体)は高比表面積であることが望ましい。例えば、本発明では、カーボン共連続多孔体の比表面積は300m/g以上が好ましく、500〜3000m/gであることがより好ましい。
カーボン共連続多孔体を焼結法で調製する場合、カーボンの焼結温度は1600℃程度と高温であり、この方法ではカーボン粉末同士の粒成長が急速に進むため、高比表面積のカーボン共連続多孔体の作製は困難である。そこで、本発明では、まず高分子共連続多孔体を予め調製し、これを不活性雰囲気で熱処理することで得られるカーボン共連続多孔体を用いる。本発明のリチウム空気二次電池の空気極は、ポリアクリロニトリルを含む材料から、後述するリチウム空気二次電池の空気極の製造方法により製造されるものが特に好ましい。
本発明におけるカーボン共連続多孔体は、例えば、平均孔径が0.1〜3μmであることが好ましく、0.1〜2μmであることが更に好ましい。ここで、平均孔径は、カーボン共連続多孔体を水銀圧入法により求めた値である。
本発明では、空気極には、バインダーなどの追加の材料を用いる必要がなく、コスト的に有利である。
本発明のリチウム空気二次電池100では、第二の実施形態として、更に高性能な二次電池として機能させるために、前記空気極1に、酸素還元(放電)及び酸素発生(充電)の両反応に対して高活性な遷移金属触媒又は遷移金属酸化物触媒を電極触媒として添加することができる。
遷移金属触媒又は遷移金属酸化物触媒は、リチウム空気二次電池に用いることができ、上記のカーボン共連続多孔体に担持することができるものであれば特に限定されない。
例えば、好ましい金属は、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、カドミウム(Cd)、パラジウム(Pd)、鉛(Pb)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、プラセオジム(Pr)、セリウム(Ce)、ニオブ(Nb)、イットリウム(Y)、タンタル(Ta)、及び、錫(Sn)からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属である。特に、ルテニウム(Ru)が好ましい。
また、好ましい金属酸化物は、例えばチタン(Ti)酸化物、バナジウム(V)酸化物、クロム(Cr)酸化物、マンガン(Mn)酸化物、鉄(Fe)酸化物、コバルト(Co)酸化物、ニッケル(Ni)酸化物、銅(Cu)酸化物、亜鉛(Zn)酸化物、モリブデン(Mo)酸化物、銀(Ag)酸化物、カドミウム(Cd)酸化物、パラジウム(Pd)酸化物、鉛(Pb)酸化物、ルテニウム(Ru)酸化物、ロジウム(Rh)酸化物、プラセオジム(Pr)酸化物、セリウム(Ce)酸化物、ニオブ(Nb)酸化物、イットリウム(Y)酸化物、タンタル(Ta)酸化物、錫(Sn)酸化物を例に挙げることができる。本発明では、特に、酸化ルテニウム(RuO)が好適である。酸化ルテニウム(RuO)は、本発明において特に優れた触媒性能を示すので好ましい。
本発明では、金属酸化物は、付着水を含むアモルファス状のものであることも好ましい。例えば、上述した遷移金属酸化物で付着水を含むものを例示することができる。より具体的には、酸化ルテニウム[(RuO)・nHO)、但し、nは1molのRuOに対に含まれるHOのモル数を表す)を例示することができる。本発明では、空気極のカーボン共連続多孔体上に、付着水を含む酸化ルテニウム(RuO・nHO)をナノサイズの微粒子として高分散で担持したものを空気極とし使用するので、優れた電池性能を示すことが可能となる。
本発明では、空気極1に含まれる触媒の含有量は、空気極の総重量に基づいて、0.1〜70重量%、好ましくは1〜30重量%である。
空気極に、遷移金属酸化物を電極触媒として添加することによって、電池性能は大きく向上する。即ち、空気極中に有機電解液が浸透し、同時に大気中の酸素ガスが供給され、上述したような電解液−電極−ガス(酸素)の三相界面サイトにおいて、前記電極触媒が高活性であれば、電極表面における酸素還元(放電)及び酸素発生(充電)がスムーズに進行し、電池性能は大きく向上することになる。
空気極上での電極反応は次のように表すことができる。
2Li+(1/2)O+2e → LiO (1)
2Li+O+2e → Li (2)
上式中のリチウムイオン(Li)は、負極2から電気化学的酸化により有機電解質3中に溶解し、この有機電解液中を空気極表面まで移動してきたものである。また、酸素(O)は、大気(空気)中から空気極内部に取り込まれたものである。なお、負極から溶解する材料(Li)、空気極で析出する材料(LiO)、及び空気(O)を図1の構成要素と共に示した。
空気極1の電極触媒として用いることができる金属酸化物は、種々の酸化状態を取ることができる。例えば、酸化ルテニウム(RuO)などは、ルテニウムが、+4、+3などの価数を有するイオンで存在しうる。また、これらの酸化物を合成する際の条件によっては、酸化ルテニウム等の酸化物内に酸素を取り込むことができる空孔(本明細書では酸素空孔とも称する)が存在する場合もある。
このような金属酸化物触媒は、正極活物質である酸素との相互作用が強いので、多くの酸素種を金属酸化物表面上に吸着でき、又は酸素空孔内に酸素種を吸蔵することができる。
このように、金属酸化物表面上に吸着された、又は酸素空孔内に吸蔵された酸素種は、上記式(1)及び式(2)の酸素源(活性な中間反応体)として酸素還元反応に使用され、上記反応が容易に進むようになる。また、式(1)及び式(2)の逆反応である充電反応に対しても、上記の金属酸化物は活性を有している。従って、電池の充電、つまり、空気極上での酸素発生反応も効率よく進行する。このように、酸化ルテニウムなどの金属酸化物は、電極触媒として有効に機能する。本発明では、このような金属酸化物の他、金属自体を触媒とすることもでき、このような金属も上記金属酸化物と同様に機能する。
本発明のリチウム空気二次電池では、上述した通り、電池の効率を上げるために、電極反応を引き起こす反応部位(上記の電解液/電極/空気(酸素)の三相部分)がより多く存在することが望ましい。このような観点から、本発明では、上述の三相部位が電極触媒表面にも多量に存在することが重要であり、使用する触媒は比表面積が高い方が好ましい。
本発明では、金属又は金属酸化物触媒の比表面積は、0.1〜1000m/g、好ましくは1〜500m/gである。
本明細書において、比表面積は、N吸着によるBET法により求めた比表面積である。
触媒を担持した空気極は、後述するリチウム空気二次電池の空気極の製造方法により製造することができる。
(II)負極
本発明のリチウム空気二次電池は、負極に負極活物質を含む。この負極活性物質は、リチウム空気二次電池の負極材料として用いることができる材料であれば特に制限されない。例えば、金属リチウムを挙げることができる。或いは、リチウムイオンを吸蔵及び放出することができる物質である、リチウムと、シリコン又はスズとの合金、或いはLi2.6Co0.4Nなどのリチウム窒化物を例として挙げることができる。
なお、上記のシリコン又はスズの合金を負極として用いる場合、負極を合成する時にリチウムを含まないシリコン又はスズなどを用いるときには、空気電池の作製に先立って、化学的手法又は電気化学的手法(例えば、電気化学セルを組んで、リチウムとシリコン又はスズとの合金化を行う方法)によって、シリコン又はスズが、リチウムを含む状態にあるように処理しておく必要がある。具体的には、作用極にシリコン又はスズを含み、対極にリチウムを用い、有機電解液中で還元電流を流すことによって合金化を行う等の処理をしておくことが好ましい。
放電時の負極(金属リチウム)2の反応は以下のように表すことができる。
Li→Li+e…(3)
本発明のリチウム空気二次電池の負極は、公知の方法で形成することができる。例えば、リチウム金属を負極とする場合には、複数枚の金属リチウム箔を重ねて所定の形状に成形することで、負極を作製すればよい。
(III)電解質
本発明のリチウム空気二次電池は、電解質を含む。この電解質は、空気極(正極)及び負極間でリチウムイオンの移動が可能な物質であればよい。例えば、リチウムイオンを含む金属塩を溶解した非水溶媒を使用できる。具体的には、リチウムイオンを含む金属塩として、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(LiTFSI)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)などのリチウムイオンを含む金属塩を挙げることができる。また、非水溶媒としては、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸メチルエチル(MEC)、炭酸メチルプロピル(MPC)、炭酸メチルイソプロピル(MIPC)、炭酸メチルブチル(MBC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸エチルプロピル(EPC)、炭酸エチルイソプロピル(EIPC)、炭酸エチルブチル(EBC)、炭酸ジプロピル(DPC)、炭酸ジイソプロピル(DIPC)、炭酸ジブチル(DBC)、炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)、炭酸1,2−ブチレン(1,2−BC)などの炭酸エステル系溶媒、1,2−ジメトキシエタン(DME)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)などのエーテル系溶媒、γ−ブチロタクトン(GBL)などのラクトン系溶媒、又は、ジメチルスルホキシド(DMSO)などのスルホキシド系溶媒、並びに、これらの中からの二種類以上を混合した溶媒[例えば炭酸エチレン(EC)及び炭酸ジメチル(DMC)(体積比1:1)の混合溶媒、EC及び炭酸ジエチル(DEC)などのような混合溶媒]を挙げることができる。
本発明のリチウム空気二次電池の他の電解質として、リチウムイオンを通す固体電解質(例えば、Li2SやP25を含む硫化物系固体電解質など)、リチウムイオンを通すポリマー電解質(例えば、ポリエチレンオキシド系、具体的には、例えば、上記有機電解液とポリエチレンオキシドをコンポジット化した物質など)等を挙げることができる。但し、本発明は、これらに限定されず、リチウム空気二次電池で使用される公知のリチウムイオンを通す固体電解質又はリチウムイオンを通すポリマー電解質であれば好適に使用することができる。
(IV)他の要素
本発明のリチウム空気二次電池は、上記構成要素に加え、セパレータ、電池ケース、金属メッシュ(例えばチタンメッシュ)などの構造部材、その他のリチウム空気二次電池に要求される要素を含むことができる。これらは、従来公知のものを使用することができる。
本発明のリチウム空気二次電池は、以下に示す空気極の製造方法により得られる空気極、負極及び電解質を、所望のリチウム空気二次電池の構造に基づいた他の必要な要素と共に、ケースなどの適切な容器内に適切に配置することで作製することができる。これらのリチウム空気二次電池の製造手順は、従来から知られている方法を適用することができる。
2.リチウム空気二次電池に用いる空気極の製造方法
本発明の第二は、リチウム空気二次電池に用いる空気極の製造方法である。
(A)第一の製造方法
本発明の空気極の製造方法の第一の側面(第一の製造方法)は、三次元網目構造を有するカーボン共連続多孔体を含む空気極の製造方法である。この方法は、以下の工程を含む。
(i)ポリアクリロニトリルを含む高分子量体を、前記高分子量体に対する良溶媒に溶解し、高分子量体溶液を得る工程と、
(ii)前記孔分子量体溶液に、前記高分子量体に対する貧溶媒を噴霧し、三次元網目構造を有する高分子共連続多孔体を析出させる工程と、
(iii)前記高分子共連続多孔体を熱処理して三次元網目構造を有するカーボン共連続多孔体を得る工程。
(a) 工程(i)
工程(i)では、三次元網目構造を有するカーボン共連続多孔体の原料となるポリアクリロニトリルを含む高分子量体溶液を調製する。
本発明において、「ポリアクリロニトリルを含む高分子量体」、又は「高分子量体」とは、ポリアクリロニトリルを85重量%以上、より好ましくは90重量%以上含むポリマーと定義する。従って、本発明では、ポリアクリロニトリルを含む高分子量体又は高分子量体は、ポリアクリロニトリル単体の場合を包含する。
ポリアクリロニトリルを含む高分子量体に含まれる、ポリアクリロニトリル以外の成分は、特に限定されないが、例えば、メチルアクリレート、酢酸ビニル等を挙げることができる。ポリアクリロニトリルの分子量は限定されないが、平均分子量が、例えば、1万〜500万が好ましく、2万〜400万がより好ましい。
工程(i)では、まず、ポリアクリロニトリルを含む高分子量体を、当該高分子量体に対する良溶媒に溶解させて、ポリアクリロニトリルを含む高分子量体の溶液を得る。
ここで、ポリアクリロニトリルを含む高分子量体に対する良溶媒とは、ポリアクリロニトリルを含む高分子量体を溶かす能力を有する溶媒のことを意味する。具体的には、前記良溶媒1リットル(L)に対してポリアクリロニトリルを含む高分子量体が10g以上、より好ましくは15g以上を溶解すことができる溶媒を意味する。ポリアクリロニトリルを含むに対する良溶媒は、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、N−メチルピロリドン(NMP)等であり、これらから2種類以上を混合した溶媒であってもよい。
本工程では、ポリアクリロニトリルを含む高分子量体を、上記良溶媒に加え、必要に応じて加温しながら、攪拌等の適宜必要な手法を用いて溶媒に溶解する。
本工程での溶液は、ポリアクリロニトリルを含む高分子量体の濃度が、5〜300g/L、好ましくは、10〜160g/Lである。
(b) 工程(ii)
工程(ii)は、高分子量体溶液から高分子共連続多孔体を析出させる工程である。
工程(ii)では、前記高分子量体溶液に、当該高分子量体溶液に対する貧溶媒を噴霧し、三次元網目構造を有する高分子共連続多孔体を析出させる。
本明細書において、高分子量体溶液に対する貧溶媒とは、高分子量体を溶かす能力の小さい溶媒のことを意味する。具体的には、前記貧溶媒1Lに対して高分子量体が1g以上、より好ましくは0.8g以上が溶けない溶媒を意味する。高分子量体に対する貧溶媒は、例えば、水、アセトニトリル、エチレングリコール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、グリセリン等であり、これらから2種類以上を混合した溶媒であってもよい。
本工程は、例えば、工程(i)で得られた高分子量体の良溶媒溶液を、シャーレ−のような適切な容器に取り、容器内の溶液に上記貧溶媒を噴霧することで実施される。噴霧は、高分子量体が良溶媒から全て析出するまで実施されることが好ましい。
前記貧溶媒を高分子量体の良溶媒溶液に噴霧する手法は特に制限されないが、貧溶媒に圧力を加え、霧状にして噴射するスプレーや、貧溶媒に超音波を当てることにより、霧化させる超音波霧化器、貧溶媒を加熱し蒸気にする加湿器等を挙げることができる。本発明では、貧溶媒を噴霧する際に、貧溶媒の液滴の大きさを制御して、析出させる高分子量体共連続多孔体の孔径、気孔率、比表面積等を自由に制御することが可能である。例えば、液滴の大きさは0.5μm〜10μmが好ましい。
従来から知られている高分子共連続多孔体の作製方法は、まず、貧溶媒と良溶媒の混合溶媒にポリアクリロニトリルのようなポリマーを加え、この溶液を加熱し、ポリマーを溶解させる。次いで、得られた溶液を冷却して、該ポリマーの共連続多孔体を析出させるというものであった。このような、従来の製造方法では、ポリマーを溶解するため、比較的高温で溶液を加熱する工程が必要であり、溶媒が揮発し、ポリマー溶液の濃度を一定に制御することが困難であった。そのため、析出する共連続多孔体の孔径、気孔率、比表面積等を自由に制御できなかった。これに対し、本発明の製造方法は、高温での加熱の必要性がなく、析出させる高分子共連続多孔体の孔径などの特性を自由に制御できるだけでなく、製造工程も容易である。
(c) 工程(iii)
工程(iii)は、工程(ii)で調製した高分子共連続多孔体を加熱して、カーボン共連続多孔体を得る工程である。
本工程では、前記高分子共連続多孔体を不活性ガス雰囲気中で800℃〜1500℃、より好ましくは、900℃〜1400℃で焼成し、カーボン化させる。ここで不活性ガスは、前記高分子共連続多孔体が燃焼しないガスであれば特に限定されないが、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、水素ガス、二酸化炭素ガス、一酸化炭素ガス等を挙げることができる。本発明では、カーボン材料に対し賦活効果を有し、カーボン共連続多孔体の高比表面積化が期待できる二酸化炭素ガス又は一酸化炭素ガスがより好ましい。
本発明においては、カーボン共連続多孔体は、カーボン粉末を焼結するといった公知の方法を用いて調製することもできるが、このような方法では、カーボンの焼結温度が1600℃程度と高温である。このため、焼結法では、カーボン粉末同士の粒成長が急速に進み、高い比表面積を有するカーボン共連続多孔体の作製が困難となる。そこで、本発明では、上述の通り、まず高分子共連続多孔体を作製し、その後、これを不活性雰囲気で熱処理してカーボン共連続多孔体を作製することが好ましい。
(B)第二の製造方法
本発明の空気極は、上述した通り、遷移金属触媒又は遷移金属酸化物触媒を更に含むことができる。第二の製造方法は、上記カーボン共連続多孔体を製造した後に、このような触媒を上記カーボン共連続多孔体に担持させるものである。
(B−1)第一の実施形態
第一の実施形態の、触媒を担持した空気極の製造方法は、上述の手順で得られたカーボン共連続多孔体を、触媒の前駆体となる金属塩の水溶液に含浸させ、金属塩を含むカーボン共連続多孔体を調製し、次いで金属塩を含むカーボン共連続多孔体を加熱処理することを含む。なお、本実施形態で使用する金属塩の好ましい金属は、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、カドミウム(Cd)、パラジウム(Pd)、鉛(Pb)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、プラセオジム(Pr)、セリウム(Ce)、ニオブ(Nb)、イットリウム(Y)、タンタル(Ta)、及び、錫(Sn)からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属である。特に、ルテニウム(Ru)が好ましい。
遷移金属酸化物をカーボン共連続多孔体に担持する手法は、従来から知られている方法を用いることができる。例えば、前記カーボン共連続多孔体を遷移金属塩化物や遷移金属硝酸塩の水溶液に含浸させ蒸発乾固した後、高温高圧化の水(HO)中で水熱合成する手法、前記カーボン共連続多孔体に前記水溶液を含浸させアルカリ水溶液を滴下する沈殿法、前記カーボン共連続多孔体を遷移金属アルコキシド溶液に含浸させ、加水分解するゾルゲル法などに代表される液相法を用いることができる。これらの各手法の条件は公知であり、これらの公知の条件を適用できる。本発明では、液相法が本発明では望ましい。
上記の液相法で担持される金属酸化物は、多くの場合、結晶化が進んでいないためアモルファス状態である。このアモルファス状態の前駆体を、不活性ガス中、500℃程度の高温で熱処理を行い、結晶性の金属酸化物を得ることができる。このような結晶性の金属酸化物は、本発明のリチウム空気二次電池100の空気極1の電極触媒として用いた場合においても高い性能を示す。
一方、上記のアモルファス状の前駆体を100〜200℃程度の比較的低温で乾燥した場合には、前記前駆体粉末は、アモルファス状態を維持しつつ、粒子中には付着水が存在する。付着水を含む金属酸化物は、形式的に、Me・nHO(但し、Meは上記金属を意味し、x及びyはそれぞれ金属酸化物分子中に含まれる金属及び酸素の数を表し、nは1モルの金属酸化物に対するHOのモル数)と表すことができる。本発明では、このような低温乾燥により得られた、付着水を含む金属酸化物を触媒として用いることができる。
このアモルファス状の金属酸化物(付着水を含む金属酸化物を含む)は、焼結がほとんど進んでいないため、大きな表面積を有し、粒子径も30nm程度と非常に小さい値を示す。これは触媒として好適であり、本発明の電極触媒として用いた場合にも、優れた電池性能を得ることができる。
上述のとおり、結晶性の金属酸化物は本発明において高い活性を示すが、上記のような高温での熱処理で結晶化させた金属酸化物は、その表面積が著しく低下することがあり、粒子の凝集により粒子径も100nm程度(なお、本明細書において粒子径(平均粒径)は、走査型電子顕微鏡(SEM)等で拡大し、10μm四方(10μm×10μm)あたりの粒子の直径を計測して、平均値を求めた値である)となることがある。
また、特に高温で熱処理を行った金属酸化物触媒は、粒子が凝集するため、カーボン共連続多孔体表面に高分散で触媒を担持させることが困難なことがある。そのため、十分な触媒効果を得るために、空気極中に金属酸化物を大量に添加しなければならない場合があり、コスト的に不利となることがある。
そこで、本発明では、以下に説明する手法で金属触媒又は金属酸化物触媒を高分散で、カーボン共連続多孔体に担持する方法(第二の実施形態〜第四の実施形態)を考案した。なお、以下の方法では、触媒は金属酸化物に限らず、金属単体又は複数の金属の組み合わせであってもよい。
(B−2)第二の実施形態
リチウム空気二次電池用空気極の製造方法の第二の実施形態は、上記工程(i)〜(iii)に加えて、以下の工程(iv)〜(vi)を含む。
(iv)前記カーボン共連続多孔体を、界面活性剤水溶液中に浸漬させる工程、
(v)前記カーボン共連続体に金属又は金属酸化物の前駆体を含有させる工程であって、前記カーボン共連続多孔体に前記金属酸化物の前駆体となる金属塩の水溶液を更に含有させる工程、及び
(vi)前記金属又は金属酸化物前駆体を含むカーボン共連続多孔体を熱処理し、金属触媒又は金属酸化物触媒を含むカーボン共連続多孔体を得る工程。
本発明では、前記金属は、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、カドミウム(Cd)、パラジウム(Pd)、鉛(Pb)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、プラセオジム(Pr)、セリウム(Ce)、ニオブ(Nb)、イットリウム(Y)、タンタル(Ta)、及び、錫(Sn)からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属であり、金属酸化物は、上記金属の酸化物である。本発明では、特にルテニウム(Ru)又は酸化ルテニウム(RuO)が好ましい。
(d) 工程(iv)
工程(iv)は、カーボン共連続多孔体を、界面活性剤を加えた水溶液中に浸漬させる。界面活性剤は、空気極上に金属又は遷移金属酸化物を高分散で担持するためのものである。界面活性剤のように、分子内にカーボン表面に吸着する疎水基と遷移金属イオンが吸着する親水基を有していれば、カーボン共連続多孔体に遷移金属酸化物前駆体である金属イオンを高い分散度で吸着することができる。
本実施形態で使用できる界面活性剤は、分子内にカーボン表面に吸着する疎水基とルテニウムイオンが吸着する親水基を有していれば特に限定されないが、非イオン系の界面活性剤が好ましい。例えば、エステル型のものとして、ラウリン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル等、エーテル型のものとして、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール等、エステルエーテル型のものとして、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヘキシタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルポリエチレングリコール等、アルカノールアミド型のものとして、ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、コカミドDEA等、高級アルコールのものとして、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール等、ポロキサマー型のものとして、ポロキサマージメタクリレート等を挙げることができる。
本工程での界面活性剤の水溶液の濃度は、0.1〜20g/Lであることが好ましい。また、浸漬時間、浸漬温度等の浸漬条件は、例えば、室温〜50℃の溶液に、1〜48時間浸漬することが含まれる。
(e) 工程(v)
工程(v)では、界面活性剤を含浸させたカーボン共連続多孔体に、遷移金属塩の水溶液を含浸させる。
本工程では、上述の界面活性剤を含有する水溶液に、触媒として機能する金属塩を更に溶解するか、又は、当該金属塩の水溶液を加えることを含む。或いは、上述の界面活性剤を含有する水溶液とは別に、触媒として機能する金属塩を溶解した水溶液を調製し、これに、界面活性剤を含浸したカーボン共連続多孔体を更に含浸してもよい。必要に応じて、得られた金属塩を含むカーボン共連続多孔体にアルカリ性水溶液を滴下してもよい。これらの手法によって、金属又は金属酸化物前駆体をカーボン共連続多孔体内部に含有することができる。
本工程での金属塩の添加量は、0.1〜100mmol/Lとなる量であることが好ましい。また、浸漬時間、浸漬温度等の浸漬条件は、例えば、室温〜50℃の溶液に、1〜48時間浸漬することが含まれる。
より具体的には、金属としてルテニウムを例にとって説明すれば、例えば、ルテニウム金属塩(例えば、塩化ルテニウムなどのハロゲン化ルテニウム等)を、界面活性剤を含有し、カーボン共連続多孔体を含浸している水溶液に加える。次いで、得られたルテニウム金属塩を含むカーボン共連続多孔体にアルカリ性水溶液を滴下することで、金属又は金属酸化物前駆体としての水酸化ルテニウムを担持することができる。
本実施形態の触媒(例えば酸化ルテニウム)の担持量は、金属塩水溶液中の金属塩(例えば塩化ルテニウム)の濃度により調整できる。
また、上述のアルカリ性水溶液に使用するアルカリは、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア水、アンモニウム水溶液、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液等を挙げることができる。これらのアルカリ清水溶液の濃度は、0.1〜10mol/Lであることが好ましい。
(f) 工程(vi)
工程(vi)では、熱処理により、カーボン共連続多孔体上に担持した金属又は金属酸化物前駆体を金属自体又は金属酸化物に転化する。
具体的には、金属又は金属酸化物前駆体を含有するカーボン共連続多孔体を、室温〜150℃、より好ましくは50℃〜100℃で、1〜24時間乾燥させ、次いで100〜600℃、好ましくは110〜300℃で熱処理することを含む。
本工程では、アルゴン、ヘリウム、窒素などの不活性雰囲気中で熱処理する(還元条件下での熱処理)ことで金属自体を触媒として含むカーボン共連続多孔体を含む空気極を製造することができる。また、酸素を含む雰囲気下で熱処理する(酸化条件下での熱処理)ことで金属酸化物を触媒として含むカーボン共連続多孔体を含む空気極を製造することができる。本発明では、上述の還元条件下での熱処理を行い、一度金属自体を触媒として含むカーボン共連続多孔体を調製し、次いでこれを上述の酸化条件下で熱処理することで、金属酸化物を触媒として含むカーボン共連続多孔体空気極を製造することもできる。
別法として、金属又は金属酸化物の前駆体を含有するカーボン共連続多孔体を室温〜150℃、より好ましくは50℃〜100℃で乾燥させ、カーボン共連続多孔体上に金属自体を触媒として担持し、金属/カーボン共連続多孔体の複合体を調製することもできる。
本実施形態では、金属触媒又は金属酸化物触媒の含有量は、カーボン共連続多孔体及び触媒の総重量に基づいて、0.1〜70重量%、好ましくは1〜30重量%である。
本実施形態の製造方法によれば、カーボン共連続多孔体上に金属触媒又は金属酸化物触媒を高分散させた空気極を製造することができ、電気特性の優れたリチウム空気二次電池を提供できる空気極を得ることができる。
(B−3)第三の実施形態
リチウム空気二次電池用空気極の製造方法の第三の実施形態は、上記工程(i)〜(iii)に加えて、以下の工程(vii)〜(ix)を含む。
(vii)前記カーボン共連続体に金属又は金属酸化物の前駆体を含有させる工程であって、前記カーボン共連続多孔体を、前記金属又は金属酸化物の前駆体となる金属塩の水溶液に含浸させる工程、
(viii)前記金属又は金属酸化物の前駆体を含むカーボン共連続多孔体を加熱処理し、金属触媒を含むカーボン共連続多孔体を得る工程、及び
(ix)前記金属触媒を担持したカーボン共連続多孔体を高温高圧の水に浸漬させ、付着水を含有する金属酸化物及びカーボン共連続多孔体の複合体を形成する工程
を更に含む。
(g) 工程(vii)
工程(vii)は、金属又は金属酸化物の前駆体となる金属塩の水溶液をカーボン共連続多孔体上に担持する。担持の手法は、触媒として機能する金属塩を溶解した水溶液を別途調製し、これに、カーボン共連続多孔体を含浸すればよい。これらの手法によって、金属又は金属酸化物前駆体をカーボン共連続多孔体内部に含有することができる。含浸の条件等は、上記工程第一の実施形態で説明したとおり、従来のものと同じである。
(h) 工程(viii)
工程(viii)では、金属又は金属酸化物の前駆体を含有するカーボン共連続多孔体を、熱処理して金属触媒を担持したカーボン共連続多孔体を得る。
この工程は、上記工程(vi)において、還元雰囲気下で金属自体の触媒を担持したカーボン共連続多孔体の製造手順で説明した通りの手順を採用することができる。或いは、上記工程(vi)で別法として説明した、金属又は金属酸化物の前駆体を含有するカーボン共連続多孔体を低温(室温〜150℃、より好ましくは50℃〜100℃)で加熱処理(乾燥)することによる、金属自体の触媒を担持したカーボン共連続多孔体の製造手順に従って、本工程を実施することもできる。
本発明では、金属自体を触媒として担持したカーボン共連続多孔体を含む空気極は、高活性を示すが、触媒が金属であるため、腐食に弱く、長期安定性に欠ける場合がある。このような場合、金属触媒を以下に示す工程(ix)により、加熱処理し、付着水を含む金属酸化物とすることで、長期安定性を実現することができる。
(i) 工程(ix)
工程(ix)では、付着水を含有する金属酸化物及びカーボン共連続多孔体の複合体を形成する。
具体的には、上記工程(viii)で得られた金属触媒を担持したカーボン共連続多孔体を、高温高圧の水に浸漬させ、付着水を含有する金属酸化物及びカーボン共連続多孔体の複合体に転化する。
例えば、金属触媒を含むカーボン共連続多孔体の複合体を100℃〜250℃、より好ましくは、150℃〜200℃の水に浸漬させて金属を酸化させ、付着水を含有した金属酸化物とカーボン共連続多孔体の複合体を得ることができる。
大気圧下(0.1MPa)での水の沸点は100℃であるため、大気圧下では通常100℃以上の水に浸漬させることはできないが、金属触媒を含むカーボン共連続多孔体を密閉容器に封入し、容器内圧力を、例えば、10〜50MPa、好ましくは25MPa程度まで上昇させる。それに伴い水の沸点が上昇し、100℃〜250℃の水に浸漬させることができる。
(B−4)第四の実施形態
リチウム空気二次電池用空気極の製造方法の第四の実施形態は、上記工程(i)〜(iii)に加えて、以下の工程(vii)及び(x)を含む。
(vii)前記カーボン共連続体に金属又は金属酸化物の前駆体を含有させる工程であって、前記カーボン共連続多孔体を、前記金属又は金属酸化物の前駆体となる金属塩の水溶液に含浸させる工程、及び
(x)前記金属又は金属酸化物の前駆体を含むカーボン共連続多孔体を加熱処理し、付着水を含有する金属酸化物触媒を含むカーボン共連続多孔体を得る工程。
(g) 工程(vii)
工程(vii)は、上記第三の実施形態で説明したとおりである。
(j) 工程(x)
工程(x)では、上記工程(vii)で得られた金属又は金属酸化物の前駆体を含むカーボン共連続多孔体を低温で加熱処理する。
具体的には、工程(vii)で調製した金属又は金属酸化物の前駆体を含むカーボン共連続多孔体を、100〜200℃程度の比較的低温で乾燥する。このようにすることで、前記前駆体は、前駆体のアモルファス状態を維持しつつ、粒子中には付着水が存在する。本発明では、このような低温乾燥により得られた、付着水を含む金属酸化物を触媒として用いることができる。
本発明によれば、付着水を含む金属酸化物がカーボン共連続多孔体上にナノサイズの微粒子の状態で、高分散で担持されうる。従って、このようなカーボン共連続多孔体を空気極の材料として用いた場合、優れた電池性能を示すことが可能となる。
上記の各実施形態で得られたカーボン共連続多孔体及び触媒を担持したカーボン共連続多孔体は、公知の手順で所定の形状に成形して空気極とすることができる。例えば、触媒未担持及び触媒担持カーボン共連続多孔体を板状体又はシートに加工し、得られたカーボン共連続多孔体を打ち抜き刃、レーザーカッター等により所望の直径(例えば23mm)の円形に切り抜き、空気極とすればよい。
以下に添付図面を参照して、本発明に係るリチウム空気二次電池の実施例を詳細に説明する。なお、本発明は下記の実施例に示したものに限定されるものではなく、その要旨を変更しない範囲において適宜変更して実施できるものである。また、以下の実施例において、平均粒径(平均粒子径)は、走査型電子顕微鏡(SEM)等で拡大し、10μm四方(10μm×10μm)あたりの粒子の直径を計測して、平均値を求めた。また、平均孔径は、カーボン共連続多孔体を水銀圧入法により求めた。
(実施例1)
本実施例は、三次元網目構造を有するカーボン共連続多孔体を空気極1として使用する例である。
空気極1の電極として用いる三次元網目構造を有するカーボン共連続多孔体を以下のようにして合成した。
市販のポリアクリロニトリル(平均分子量15万、Sigma−Aldrich製)をジメチルスルホキシド(DMSO)溶媒に85mg/mlの濃度で加え、50℃で撹拌した。完全に溶解させた後、適当量をシャーレ等の容器に取り出し、これに霧吹きを使用して、貧溶媒である水を噴霧した。これにより、溶解できなくなったポリアクリロニトリルが貧溶媒(水)の液滴の周りに析出しポリアクリロニトリル共連続多孔体(白色固体)を形成した。この時、ポリアクリロニトリルのDMSO溶液中に含まれるポリアクリロニトリルを完全に析出させるため、ポリアクリロニトリルのDMSO溶液に対して3倍の水(貧溶媒)を噴霧した。得られたポリアクリロニトリル共連続多孔体は、ポリアクリロニトリルのDMSO溶液が残留しないように、振とう器を用いてメタノールによる洗浄を24時間行った。その後、室温で真空乾燥を一晩行った。次に、ポリアクリロニトリル共連続多孔体を、アルゴン雰囲気中230℃で60分乾燥した。その後、二酸化炭素雰囲気で、1000℃まで4℃/minの昇温速度で加熱し、ポリアクリロニトリル共連続多孔体をカーボン化した。得られた、カーボン共連続多孔体をX線回折(XRD)測定、走査型電子顕微鏡(SEM)観察、BET比表面積測定を行い、評価した。本発明で作製したカーボン共連続多孔体はXRD測定よりカーボン(C,PDFカードNo.01−071−4630)単相であることを確認した。また、SEM観察により、粒子同士が連続に連なった、平均孔径が1μmの共連続多孔体であることを確認した。また、BET法によりカーボン共連続多孔体の比表面積を測定したところ、1500m/gであった。
このようなカーボン共連続多孔体を用いて空気極1を調製し、この空気極1を用いたリチウム空気二次電池セルを以下のようにして作製した。
このカーボン共連続多孔体を打ち抜き刃、レーザーカッター等により直径23mmの円形に切り抜き、ガス拡散型の空気極1を得た。
図2に、本実施例で用いた円柱形のリチウム空気二次電池セル200の断面図を示す。
空気極1は、PTFEで被覆された空気極支持体10の凹部に配置し、空気極固定用PTFEリング8で固定した。なお、空気極1と空気極支持体10が接触する部分は、電気的接触をとるためにPTFE被覆はされていない。また、空気極1と空気との接触する電極の有効面積は2cmである。
次に、空気極1の大気が接触する面とは逆面にリチウム二次電池用のセパレータ5を凹部の底面に配置した。負極固定用座金7に負極2である厚さ150μmの4枚の金属リチウム箔(有効面積:2cm)を同心円上に重ねて圧着した。負極固定用PTFEリング6を、空気極1を設置する凹部と対向する逆の凹部に配置し、中央部に金属リチウムが圧着された負極固定用座金7をさらに配置した。Oリング9は、図2に示すようにセットした。セルの内部に、有機電解液3である1mol/Lのリチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド/炭酸プロピレン[(CFSONLi/PC]溶液を充填し、負極支持体11を被せて、セル固定用ねじ12で、セル全体を固定した。なお、電池の作製は、露点が−60℃以下の乾燥空気中で行った。
そして、このような構成をしたリチウム空気二次電池セル200の電池性能を測定した。なお、電池性能の測定試験には、正極及び負極端子4及び13を用いた。
電池のサイクル試験は、市販の充放電測定システム(BioLogic社製、VMP−3)を用いて、空気極1の有効面積当たりの電流密度で0.1mA/cmを通電し、開回路電圧から電池電圧が、2.0Vに低下するまで測定を行った。また、充電は、同電流密度で、電池電圧が4.2Vに増加するまで行った。充放電容量はカーボン共連続多孔体からなる空気極1の重量当たりの値(mAh/g)で表した。初回の放電及び充電曲線を図3に示す。図3では、放電を破線で示し、充電を実線で示した。なお、電池の充放電試験は、通常の生活環境下で行った。
図3より、カーボン共連続多孔体を空気極に用いたときの平均放電電圧は2.7Vであり、放電容量は800mAh/gであることがわかる。なお、本明細書において、平均放電電圧は、電池の放電容量(本実施例では800mAh/g)の1/2の放電量(本実施例では400mAh/g)の時の電池電圧をいう。
また、初回の充電容量は、放電容量とほぼ同様の700mAh/gであり、可逆性に優れていることがわかる。
放電容量のサイクル依存性を図4及び表2に示す。本実施例(実施例1)のリチウム空気二次電池は、後述する粉末カーボンを用いた空気極について評価した比較例1に比べて放電容量(mAh/g)の減少の傾きは緩やかになり、充放電サイクルを100回繰り返してもサイクル試験が可能であった。
また、この充電時の電圧については、図3より、およそ3.3Vに平坦部分が見られ、従来の報告より低い値を示すことが分かった。
充放電電圧の推移を以下の表1に示す。本実施例(実施例1)では、充放電において若干の過電圧の増加が見られるが、ほぼ安定した電圧を示すことが分かった。このように、カーボン共連続多孔体は、リチウム空気二次電池の空気極として非常に優れた安定性を有していることが分かった。
(実施例2)
本実施例は、遷移金属酸化物を含むカーボン共連続多孔体を空気極として用いたリチウム空気二次電池を例示する。
カーボン共連続多孔体に遷移金属酸化物を担持する手法を用いてガス拡散型の空気極を調製した。以下では、代表として、酸化ルテニウム(RuO)を担持する製造方法を示すが、ルテニウム(Ru)を任意の遷移金属に変えることで、遷移金属酸化物を担持することができる。なお、触媒として用いた遷移金属酸化物は、表2に示すとおりである。
カーボン共連続多孔の評価法、並びに電極と電池の作製法及びこれらの評価法は、実施例1と同様にして行った。カーボン共連続多孔体は、実施例1に示した最初のプロセスと同様に作製した。次に、市販の塩化ルテニウム(RuCl;フルヤ金属社製)を蒸留水に溶解し、作製したカーボン共連続多孔体を含浸させ、塩化ルテニウムを担持した。次いで、塩化ルテニウムを含有するカーボン共連続多孔体に、徐々にアンモニア水(28%)をpH7.0になるまで滴下し、水酸化ルテニウムを析出させた。析出物は、塩素が残留しないように、蒸留水による洗浄を5回繰り返した。そして、得られた水酸化ルテニウムを含有したカーボン共連続多孔体をアルゴン雰囲気中500℃で6時間熱処理し、酸化ルテニウム(RuO)を含有したカーボン共連続多孔体を作製した。作製した酸化ルテニウム(RuO)を含有したカーボン共連続多孔体をX線回折(XRD)測定、熱重量・示差熱(TG−DTA分析)、透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行い、評価した。XRD測定より酸化ルテニウム(RuO,PDFファイルNo.40−1290)のピークを観察することが出来、担持された触媒は酸化ルテニウム単相であることを確認した。また、TG−DTA測定により、カーボン共連続多孔体及び酸化ルテニウム(RuO)には付着水が含まれていないことを確認した。TEMにより酸化ルテニウム(RuO)はカーボン共連続多孔体の表面に平均粒径100nmの粒子状で析出しているのが観察された。
この酸化ルテニウム(RuO)を担持したカーボン共連続多孔体を空気極1に用いたリチウム空気二次電池の放電容量及び充放電電圧のサイクル依存性を図4並びに表1及び表2に示す。
図4に示すように本実施例(実施例2)では、放電容量は、初回で1100mAh/gを示し、実施例1のような酸化ルテニウム(RuO)を担持していないカーボン共連続多孔を用いた場合よりも大きい値であった。また、本実施例のリチウム空気二次電池の空気はサイクルを繰り返しても、安定した挙動を示すことが分かった。また、表1に示すように充放電電圧についても、実施例1よりも過電圧の減少が見られ、充放電のエネルギー効率の改善が達成された。また、充放電電圧についても、サイクルを繰り返しても顕著な過電圧の増加は見られず、本実施例のリチウム空気二次電池の空気は安定に作動することを確認した。上記のような特性の向上は、非常に大きな活性を有した酸化ルテニウム(RuO)を電極触媒として用いることにより、酸素還元(放電)及び酸素発生(充電)の両反応が空気極においてスムーズに行われたことによると考えられる。
表2に酸化チタン(Ti)、酸化バナジウム(V)、酸化クロム(Cr)、酸化マンガン(Mn)、酸化鉄(Fe)、酸化コバルト(Co)、酸化ニッケル(Ni)、酸化銅(Cu)、酸化亜鉛(Zn)、酸化モリブデン(Mo)、酸化銀(Ag)、酸化カドミウム(Cd)、酸化パラジウム(Pd)、酸化鉛(Pb)、酸化ルテニウム(Ru)、酸化ロジウム(Rh)、酸化プラセオジム(Pr)、酸化セリウム(Ce)、酸化ニオブ(Nb)、酸化イットリウム(Y)、酸化タンタル(Ta)、酸化錫(Sn)[括弧内は使用した酸化物の金属を示した]を担持したカーボン共連続多孔体を空気極1に用いたリチウム空気二次電池の放電容量及び充放電電圧のサイクル依存性を示す。代表例として上述した酸化ルテニウム(RuO)同様、放電容量は、初回で1000mAh/g程度を示し、実施例1のような触媒を担持していないカーボン共連続多孔体よりも大きい値であった。これらの酸化物の例の場合も、酸化ルテニウム(RuO)同様、遷移金属酸化物が触媒として効率的に機能したことにより電池特性が改善されたものと考えられる。
(実施例3)
本実施例は、付着水を含有する金属酸化物を触媒として含むカーボン共連続多孔体を用いた空気極の例である。
ガス拡散型の空気極1の電極触媒として、付着水を含有した酸化ルテニウム(RuO・nHO)を用いた。
この付着水を含有した酸化ルテニウム(RuO・nHO;但し、nは1molのRuOに含まれるHOのモル数を表す。)は、実施例2に示したプロセスで、最後の500℃で6時間の熱処理を行わないことで合成した。カーボン共連続多孔の評価法や、電極や電池の作製法及び評価法は、実施例1と同様にして行った。XRD測定より、得られた酸化ルテニウム(RuO・nHO)はアモルファスであることを確認した。酸化ルテニウム(RuO-・nHO)に含まれる付着水は、TG−DTA測定よりn=0.5であることが分かった。TEMにより酸化ルテニウム(RuO・nHO)はカーボン共連続多孔体の表面に平均50nmの粒子状で析出しているのが観察された。
この付着水を含有した酸化ルテニウム(RuO・0.5HO)を空気極1の電極触媒として用いたリチウム空気二次電池の放電容量及び充放電電圧のサイクル依存性を図4並びに表1及び表2に示す。
図4に示すように本実施例(実施例3)の放電容量は、初回で1200mAh/gを示し、実施例2のような付着水を含有しない酸化ルテニウム(RuO)よりも大きい値であった。また、サイクルを繰り返しても、安定した挙動を示すことが分かった。
上記のような特性向上は、電極触媒である付着水を含有した酸化ルテニウム(RuO・0.5HO)が非常に大きな表面積を有しているため、放電時の酸化リチウムの析出サイトが増加したことや、酸素の吸着能が向上し、効率的に触媒として機能したためであると考えられる。
(実施例4)
本実施例は、ルテニウム金属を触媒として含むカーボン共連続多孔体、又は、酸化ルテニウムを触媒として含むカーボン共連続多孔体を空気極に用いたリチウム空気二次電池の例である。
ガス拡散型の空気極1の製造方法として、カーボン共連続多孔体にルテニウム(Ru)又は酸化ルテニウム(RuO)を担持する手法に以下の方法を用いた。
カーボン共連続多孔の評価法、並びに、電極と電池の作製法、及びこれらの評価法は、実施例1と同様にして行った。カーボン共連続多孔体は、実施例1に示した最初のプロセスと同様に作製した。
次に、界面活性剤であるポロキサマーのブロック共重合体のポロキサマージメタクリレート(Pluronic−F127、Aldrich製)を5mg/mlの濃度で蒸留水に溶解させ、この溶液にカーボン共連続多孔体を浸漬させ、振とう器で24時間攪拌して、多孔体の細孔内に界面活性剤を分散させた。次いで前記溶液に、0.1mol/Lの塩化ルテニウム(RuCl;フルヤ金属社製)水溶液を加えて振とう器で24時間攪拌して多孔体内部に塩化ルテニウム塩を含浸させた。この後、カーボン共連続多孔体を50℃で蒸発乾固し、アルゴン雰囲気中300℃で熱処理し、界面活性剤を除去して、ルテニウム金属(Ru)を担持したカーボン共連続多孔体を得た。XRD測定により、得られたルテニウムはルテニウム金属単相(Ru,PDFカードNo.01−070−0274)であることを確認した。TEM観察を行ったところ、カーボン共連続多孔体の孔内までルテニウム(Ru)が平均粒径2nmで均一に析出していることを確認した。
次に、上記のようにして得られたルテニウム(Ru)金属を空気中で、300℃で12時間加熱した。
XRD測定より、得られた酸化ルテニウム(RuO)はアモルファスであることを確認した。
TEM観察を行ったところ、前記ルテニウム(Ru)を担持したカーボン共連続多孔体カーボン共連続多孔体と同様、孔内まで酸化ルテニウム(RuO)が平均粒径5nmで均一に析出していることを確認した。
この製造法で作製したルテニウム(Ru)及び酸化ルテニウム(RuO)を、空気極1の電極触媒として用いたリチウム空気二次電池の放電容量及び充放電電圧のサイクル依存性を図4並びに表1及び表2に示す。
図4に示すように本実施例(実施例4)の放電容量は、ルテニウム(Ru)に関しては初回で2200mAh/gを示し、酸化ルテニウム(RuO)に関しては、初回で1800mAh/gを示した。これは、ルテニウム(Ru)及び酸化ルテニウム(RuO)共に、実施例3のような本発明の製造方法を用いていない酸化ルテニウム(RuO)よりも大きい値であった。また、サイクルに関しても、ルテニウム(Ru)及び酸化ルテニウム(RuO)共に、安定した作動をすることを確認した。なお、ルテニウム(Ru)金属を担持したカーボン共連続多孔体は、触媒が金属であるため、金属ルテニウムが電解液にルテニウムイオンの形で溶出しやすく、腐食に弱い。このため、酸化ルテニウム(RuO)と比較すると、長期安定性が低下した(但し、図4から明らかなように、従来法で得られるルテニウム触媒を担持したカーボン共連続多孔体よりも放電容量は優れている。)。
また、表1に示すように、充放電電圧についても、実施例3よりも過電圧の減少が見られ、充放電のエネルギー効率が改善されていることがわかる。また、充放電電圧についても、サイクルを繰り返しても顕著な過電圧増加は見られず、安定に作動することを確認した。
本発明の製造方法により、電極触媒であるルテニウム(Ru)及び酸化ルテニウム(RuO)が、比表面積の大きなカーボン共連続多孔体上に高分散で担持できたこと、並びに、低温加熱処理による酸化ルテニウムの比表面積の増加、そして、このような大きな比表面積に伴う放電時の酸化リチウムの析出サイト増加、及び酸素の吸着能の向上が実現される。上記のような特性の向上は、このような本発明の製造方法に基づく各種の改善が理由と考えられる。
(実施例5)
本実施例は、付着水を含有する酸化ルテニウム(高温高圧の水中から調製するもの)を触媒として含むカーボン共連続多孔体を空気極に用いたリチウム空気二次電池の例である。
ガス拡散型の空気極1の製造方法として、カーボン共連続多孔体に付着水を含有する酸化ルテニウム(RuO・nHO;但し、nは1molのRuOに含まれるHOのモル数を表す。)を担持する手法に以下の方法を用いた。
カーボン共連続多孔の評価法、並びに、電極と電池の作製法、及びこれらの評価法は、実施例1と同様にして行った。カーボン共連続多孔体は、実施例1に示した最初のプロセスと同様に作製した。
次に、ルテニウム(Ru)を高分散担持したカーボン共連続多孔体は実施例4と同様に作製した。
水熱合成用の密閉容器に、実施例4と同様に作製して得られたルテニウム(Ru)金属を担持したカーボン共連続多孔体及び蒸留水を入れ、自生圧下、180℃で24時間加熱した。
取り出したカーボン共連続多孔体を、室温で真空乾燥した。XRD測定より、得られた酸化ルテニウムは付着水を有するアモルファスであることを確認した。酸化ルテニウム(RuO・nHO)に含まれる付着水は、TG−DTA測定よりn=0.7であることが分かった。
TEM観察を行ったところ、前記ルテニウム(Ru)を担持したカーボン共連続多孔体カーボン共連続多孔体と同様、孔内まで酸化ルテニウム(RuO・nHO)が平均粒径4nmで均一に析出していることを確認した。
この製造法で作製した酸化ルテニウム(RuO・0.7HO)を、空気極1の電極触媒として用いたリチウム空気二次電池の放電容量及び充放電電圧のサイクル依存性を図4並びに表1及び表2に示す。
図4に示すように本実施例(実施例5)の放電容量は、初回で2000mAh/gを示した。これは、実施例4のような高温高圧水を用いず、空気中で酸化させて作製した酸化ルテニウム(RuO)よりも大きい値であった。また、サイクルに関しても、安定した作動をすることを確認した。
また、表1に示すように、充放電電圧についても、実施例3よりも過電圧の減少が見られ、充放電のエネルギー効率が改善されていることがわかる。また、充放電電圧についても、サイクルを繰り返しても顕著な過電圧増加は見られず、安定に作動することを確認した。
なお、実施例4のような空気中での熱処理による酸化ではなく、高温高圧水を使用したことにより、酸化温度の低温化及び付着水の含有が可能となった。そのため、これらにより付着水含有酸化ルテニウムの比表面積の増加、及び触媒活性が向上し、実施例4のような高温高圧水を用いず、空気中で酸化させて作製した酸化ルテニウム(RuO)よりも大放電容量が実現したと考えられる。
(比較例1)
比較例として、カーボン(ケッチェンブラックEC600JD)及び酸化ルテニウム(RuO)を用いたリチウム空気二次電池セルを製造して評価した。
空気極1用の電極として公知であるカーボン(ケッチェンブラックEC600JD)と酸化ルテニウム(RuO)を用いて、リチウム空気二次電池セルを以下のようにして作製した。
酸化ルテニウム(RuO)粉末、ケッチェンブラック粉末(ライオン製)及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末(ダイキン製)を50:30:20の重量比で、らいかい機を用いて十分に粉砕及び混合し、ロール成形して、シート状電極(厚さ:0.5mm)を作製した。このシート状電極を直径23mmの円形に切り抜き、チタンメッシュ上にプレスすることにより、ガス拡散型の空気極1を得た。また、酸化ルテニウム(RuO)は市販試薬(高純度化学研究所製)を用いた。電池のサイクル試験の条件は、実施例1と同様である。
本比較例に係るリチウム空気二次電池の放電容量に関するサイクル性能を、実施例1〜4の結果とともに図4、並びに表1及び表2に示す。
図4に示すように本比較例1の初回放電容量は900mAh/gであり、実施例1よりも大きな値を示した。しかしながら、充放電サイクルを繰り返すと、実施例1〜4とは異なり、放電容量の極端な減少が見られ、20サイクル後の容量維持率は初期の約20%であった。
また、充放電電圧のサイクル依存性を実施例1〜4の結果とともに、表1に示した。
表1からも分かるように本比較例1による充放電過電圧は、実施例1〜4よりも低い値であるとともに、サイクルを繰り返すと明らかに過電圧が増加し、20回目でサイクルが困難となった。なお、測定後に空気極を観察したところ、空気極の一部が崩れて電解液中に分散しており、空気極の電極構造が破壊されている様子が見られた。
以上の結果より、本発明のように酸化ルテニウム(RuO)を含有したカーボン共連続多孔体を含む空気極は、公知の材料よりも、容量及び電圧に関してサイクル特性に優れており、リチウム空気二次電池用空気極として有効であることが確認された。
酸化ルテニウム(RuO)などの遷移金属酸化物を担持した三次元網目構造を有するカーボン共連続多孔体を用いることにより、充放電サイクル性能に優れたリチウム空気二次電池を作製することができ、様々な電子機器の駆動源として有効利用することができる。
1 空気極(正極)
2 負極
3 有機電解液
4 空気極(正極)端子
5 セパレータ
6 負極固定用PTFEリング
7 負極固定用座金
8 空気極(正極)固定用PTFEリング
9 Oリング
10 空気極(正極)支持体(PTFE被覆)
11 負極支持体
12 セル固定用ねじ(PTFE被覆)
13 負極端子
100 リチウム空気二次電池
200 リチウム空気二次電池セル。

Claims (4)

  1. リチウム空気二次電池の空気極の製造方法であって、
    (i)ポリアクリロニトリルを含む高分子量体を、前記高分子量体に対する良溶媒に溶解し、高分子量体溶液を得る工程と、
    (ii)前記高分子量体溶液に、前記高分子量体に対する貧溶媒を噴霧し、三次元網目構造を有する高分子共連続多孔体を析出させる工程と、
    (iii)前記高分子共連続多孔体を熱処理して三次元網目構造を有するカーボン共連続多孔体を得る工程
    を含むことを特徴とするリチウム空気二次電池の空気極の製造方法。
  2. 前記工程(iii)の後に、
    (iv)前記カーボン共連続多孔体を、界面活性剤水溶液中に浸漬させる工程と、
    (v)前記カーボン共連続体に金属又は金属酸化物の前駆体を含有させる工程であって、前記カーボン共連続多孔体に前記金属酸化物の前駆体となる金属塩の水溶液を含有させる工程と、
    (vi)前記金属又は金属酸化物前駆体を含むカーボン共連続多孔体を熱処理し、金属触媒又は金属酸化物触媒を含むカーボン共連続多孔体を得る工程
    を更に含み、
    前記金属又は金属酸化物が、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、カドミウム(Cd)、パラジウム(Pd)、鉛(Pb)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、プラセオジム(Pr)、セリウム(Ce)、ニオブ(Nb)、イットリウム(Y)、タンタル(Ta)、及び、錫(Sn)からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属、又はこれらの金属酸化物である、請求項に記載のリチウム空気二次電池の空気極の製造方法。
  3. 前記工程(iii)の後に、
    (vii)前記カーボン共連続体に金属又は金属酸化物の前駆体を含有させる工程であって、前記カーボン共連続多孔体を、前記金属又は金属酸化物の前駆体となる金属塩の水溶液に含浸させる工程と、
    (viii)前記金属又は金属酸化物の前駆体を含むカーボン共連続多孔体を加熱処理し、金属触媒を含むカーボン共連続多孔体を得る工程と、
    (ix)前記金属触媒を担持したカーボン共連続多孔体を高温高圧の水に浸漬させ、付着水を含有する金属酸化物及びカーボン共連続多孔体の複合体を形成する工程
    を更に含み、
    前記金属又は金属酸化物が、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、カドミウム(Cd)、パラジウム(Pd)、鉛(Pb)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、プラセオジム(Pr)、セリウム(Ce)、ニオブ(Nb)、イットリウム(Y)、タンタル(Ta)、及び、錫(Sn)からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属、又は、これらの金属の酸化物である、請求項に記載のリチウム空気二次電池の空気極の製造方法。
  4. 前記工程(iii)の後に、
    (vii)前記カーボン共連続体に金属又は金属酸化物の前駆体を含有させる工程であって、前記カーボン共連続多孔体を、前記金属又は金属酸化物の前駆体となる金属塩の水溶液に含浸させる工程と、
    (x)前記金属又は金属酸化物の前駆体を含むカーボン共連続多孔体を加熱処理し、付着水を含有する金属酸化物触媒を含むカーボン共連続多孔体を得る工程と、
    を更に含み、
    前記金属又は金属酸化物が、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、カドミウム(Cd)、パラジウム(Pd)、鉛(Pb)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、プラセオジム(Pr)、セリウム(Ce)、ニオブ(Nb)、イットリウム(Y)、タンタル(Ta)、及び、錫(Sn)からなる群から選ばれる少なくとも1種の金属、又は、これらの金属の酸化物である、請求項に記載のリチウム空気二次電池の空気極の製造方法。
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