JP2017051938A - 酸素還元触媒及びその製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】本発明は、酸素の酸化還元反応をより促進する酸素還元触媒及びその製造方法を提供することを目的とする。【解決手段】本発明の方法は、酸素還元触媒を製造する方法である。本発明の方法は、表面修飾された炭素担体を調製する工程、ペロブスカイト型酸化物前駆体を調製する工程、触媒前駆体を調製する工程、及び触媒前駆体を熱処理する工程を含み、好ましくは、この熱処理工程が、大気雰囲気で熱処理する第一の熱処理段階と、不活性雰囲気で熱処理する第二の熱処理段階とを含み、かつ第二の熱処理段階の温度が、第一の熱処理段階の温度より高い。【選択図】図2

Description

本発明は、酸素還元触媒及びその製造方法に関する。
電気エネルギーを蓄え、かつ効率的に使用する手段として空気電池が知られている。この空気電池では、電池容器内に正極活物質を配置する必要がないため、電池容器内の大部分の領域に負極活物質を配置することができる。したがって、この空気電池では、大きなエネルギー密度を実現することが可能である。
空気電池は、酸素を酸化/還元して取り込むための電極である空気極を有している。かかる空気極では、酸素の酸化還元反応が生じにくいため、空気電池を放充電する際に比較的高い過電圧が生じる。過電圧は、エネルギー損失の原因となる可能性がある。したがって、酸素の酸化還元反応を促進する触媒及びその製造方法が検討されている。
特許文献1の電極触媒の製造方法は、2種以上の金属の塩を含む水溶液と、有機溶媒と、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとを混合して逆ミセル溶液(a)を調製する工程、上記金属の塩の沈殿剤と、有機溶媒と、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとを混合して逆ミセル溶液(b)を調製する工程、並びに逆ミセル溶液(a)及び(b)を混合して、水酸化物を包含した逆ミセル溶液(c)を調製する工程を含む。また、特許文献1では、上記の各工程のミセル溶液のうち少なくとも一つの溶液が炭素微粒子を含み、これから水酸化物が担持されている炭素微粒子を作製し、この炭素微粒子を焼成して電極触媒を生成する技術が開示されている。
特許文献2の電極触媒の製造方法は、少なくとも1種の金属塩水溶液と、有機溶媒と、界面活性剤とを混合して逆ミセル溶液(a)を調製し、上記金属の塩の沈殿剤と、有機溶媒と、界面活性剤とを混合して逆ミセル溶液(b)を調製し、かつ逆ミセル溶液(a)及び(b)を混合して電極触媒前駆体を含有する逆ミセル溶液(c)を調製する工程を含む。また、特許文献2では、逆ミセル溶液が炭素微粒子を含み、これから電極触媒前駆体が担持されている炭素微粒子を作製し、この炭素微粒子を焼成して電極触媒を生成する技術が開示されている。
特開2003−288905号公報 特開2000−067877号公報
特許文献1及び2に記載の方法で製造された電極触媒と比較して、より高い酸素還元活性を有している酸素還元触媒を製造することができる余地がある。
したがって、本発明は、酸素の酸化還元反応をより促進する酸素還元触媒及びその製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、以下の手段により、上記課題を解決できることを見出した。
〈1〉硝酸、次亜塩素酸ナトリウム、及びクエン酸からなる群から選択される少なくとも1種の表面修飾剤と、溶媒と、炭素担体とを含有している溶液を撹拌して、表面修飾された炭素担体を調製する工程、
第一の金属元素の塩、第二の金属元素の塩、及び溶媒を含有している溶液を撹拌して、ペロブスカイト型酸化物前駆体を調製する工程、
上記ペロブスカイト型酸化物前駆体と、上記表面修飾された炭素担体とを含有している溶液を撹拌して、上記ペロブスカイト型酸化物前駆体を上記表面修飾された炭素担体に担持することによって、触媒前駆体を調製する工程、並びに
上記触媒前駆体を熱処理する工程を含む、
酸素還元触媒の製造方法。
〈2〉上記熱処理工程が、大気雰囲気で熱処理する第一の熱処理段階と、不活性雰囲気で熱処理する第二の熱処理段階とを含み、
上記第二の熱処理段階の温度が、上記第一の熱処理段階の温度より高い、
〈1〉項に記載の方法。
〈3〉上記第一の熱処理段階の温度が、150℃以上500℃以下であり、かつ
上記第二の熱処理段階の温度が、400℃以上800℃以下である、
〈1〉又は〈2〉項に記載の方法。
〈4〉上記第一の金属元素がLaであり、かつ上記第二の金属元素がMnである、〈1〉〜〈3〉項のいずれか一項に記載の方法。
〈5〉ペロブスカイト型酸化物相を含む酸化物粒子と、上記酸化物粒子が担持されている炭素担体とを含有している酸素還元触媒であって、
上記酸化物粒子の平均粒径が、5nm以上10nm以下であり、かつ
上記酸化物粒子において、上記ペロブスカイト型酸化物相のX線回折の最大ピーク高さが、上記ペロブスカイト型酸化物相以外の酸化物相のX線回折の最大ピーク高さの2.0倍以上である、
酸素還元触媒。
〈6〉上記ペロブスカイト型酸化物相が、La元素、Mn元素、及びO元素から構成されている、〈5〉項に記載の酸素還元触媒。
〈7〉〈5〉又は〈6〉項に記載の酸素還元触媒と、バインダーとを有している空気電池用空気極。
〈8〉〈7〉項に記載の空気電池用空気極を具備している空気電池。
本発明によれば、酸素の酸化還元反応をより促進する酸素還元触媒及びその製造方法を提供することができる。
図1(a)は、表面修飾されていない炭素担体の模式図であり、図1(b)は、硝酸処理で表面修飾された炭素担体の模式図であり、図1(c)は、次亜塩素酸ナトリウム又はクエン酸処理で表面処理された炭素担体の模式図である。 図2(a)は、炭素担体上で生じる第一の二電子還元反応を示す模式図であり、図2(b)は、第一の二電子還元反応、及びペロブスカイト型酸化物相を含む酸化物粒子上で生じる第二の二電子還元反応からなる逐次還元反応を示す模式図である。 図3(a)は、実施例1の酸素還元触媒のX線回折パターンを示す図であり、図3(b)は、透過型電子顕微鏡(TEM)によって分析した実施例1の酸素還元触媒のTEM像である。 図4は、実施例4の酸素還元触媒のX線回折パターンを示す図である。 図5(a)は、比較例1の酸素還元触媒のX線回折パターンを示す図であり、図5(b)は、透過型電子顕微鏡によって分析した比較例1の酸素還元触媒のTEM像であり、図5(c)は、エネルギー分散型X線分析装置付走査透過型電子顕微鏡(STEM−EDX)によって分析した比較例1の酸素還元触媒のHAADF−STEM像であり、図5(d)は、図5(c)の上方の囲み線部に関するEDX分析の図である。 図6(a)は、比較例2の酸素還元触媒のX線回折パターンを示す図であり、図6(b)は、透過型電子顕微鏡によって分析した比較例2の酸素還元触媒のTEM像である。 図7(a)は、実施例1〜3、並びに比較例1及び3の酸素還元触媒を用いて作製した空気電池用空気極に関して、CV測定(cyclic voltammetry)を行った際のI−V曲線を示し、図7(b)は、図7(a)の一部(囲み点線部)を拡大した図である。 図8は、ペロブスカイト型酸化物相を含む酸化物粒子上で、第一の二電子還元反応が生じにくいことを示す模式図である。
以下、本発明の実施形態を詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。また、図面の寸法比率は、説明の都合上変更されており、実際の比率と異なる場合がある。さらに、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
本発明において、「ペロブスカイト型酸化物」の表現は、第一及び第二の金属元素(A及びB)、並びに酸素元素(O)から構成されているペロブスカイト構造の格子を有する酸化物(ABOとしても言及される)を意味し、かつこの格子を構成している第一及び第二の金属元素の一部が別の金属元素で置換されているペロブスカイト型酸化物を含む。なお、このペロブスカイト構造の格子の一部には、欠陥(すなわち格子欠陥)が存在していてもよい。
《酸素還元触媒の製造方法》
〈表面修飾された炭素担体を調製する工程〉
酸素還元触媒を製造する本発明の方法は、硝酸、次亜塩素酸ナトリウム、及びクエン酸からなる群から選択される少なくとも1種の表面修飾剤と、溶媒と、炭素担体とを含有している溶液を撹拌して、表面修飾された炭素担体を調製する工程を含む。
一般的に、炭素担体の表面化学状態は、接着性、液中での分散性、及び大気中での分子の吸着性等に影響を及ぼすことが知られている。したがって、表面修飾された炭素担体には、種々の作用効果を発揮することが期待されている。
本発明の方法では、硝酸、次亜塩素酸ナトリウム、及びクエン酸からなる群から選択される少なくとも1種の表面修飾剤を用いることによって、炭素担体の表面を化学修飾して、炭素担体の表面に官能基を付与することができる。官能基は、活性点、例えばカチオン性の酸点及び/又はアニオン性の塩基点として機能してよい。
硝酸、次亜塩素酸ナトリウム、及びクエン酸からなる群から選択される少なくとも1種の表面修飾剤を用いて炭素担体の表面を修飾する工程としては、特に限定されることなく、公知の工程を挙げることができる。表面修飾された炭素担体を調製する工程としては、炭素担体を、溶媒、例えば水に分散させた分散液に、表面修飾剤を添加する工程、又は水に炭素担体及び表面修飾剤を添加する工程を挙げることができる。
硝酸、次亜塩素酸ナトリウム、及びクエン酸からなる群から選択される少なくとも1種の表面修飾剤と、溶媒と、炭素担体とを含有している溶液は、所定の温度及び時間で撹拌し、又は加熱還流してよい。これによって、炭素担体の表面修飾を、より容易に行うことができる。
また、硝酸、次亜塩素酸ナトリウム、及びクエン酸の使用においては、これらを独立に使用してよく、また、これらを組み合わせて使用してもよい。これらを組み合わせて用いた場合には、炭素担体の表面上に種々の官能基を導入することができる。これによって、種々のペロブスカイト型酸化物前駆体と表面修飾された炭素担体との組み合わせを、酸素還元活性の観点から、最適化することができる。
その他、表面修飾された炭素担体を調製する工程は、溶液と表面修飾された炭素担体とを遠心分離する段階、表面修飾された炭素担体を含有している溶液を濾過する段階、並びに/又は表面修飾された炭素担体を含有している溶液若しくはスラリーを減圧下で乾燥する段階をさらに含んでよい。
溶液を撹拌又は加熱還流する温度としては、特に限定されないが、表面修飾の反応を促進する観点から、例えば50℃以上、60℃以上、若しくは80℃以上、及び/又は150℃以下、130℃以下、若しくは100℃以下の温度を挙げることができる。
溶液を撹拌又は加熱還流する時間としては、特に限定されないが、1時間以上、若しくは24時間以上、及び/又は48時間以下、若しくは2時間以下の時間を挙げることができる。
溶液に含有されている表面修飾剤の濃度としては、炭素担体の表面を十分に表面修飾できれば特に限定されないが、0mol/L超、0.5mol/L以上、1.0mol/L以上、2.0mol/L以上、若しくは3.0mol/L以上、及び/又は50mol/L以下、30mol/L以下、10mol/L以下、7.0mol/L以下、若しくは5.0mol/L以下の濃度を挙げることができる。
溶液に含有されている表面修飾剤、例えば、硝酸の濃度としては、0.1mol/L以上1.0mol/L以下の濃度が好ましい。
溶液に含有されている表面修飾剤、例えば、次亜塩素酸ナトリウムの濃度としては、0.05mol/L以上5.0mol/L以下又は1.0mol/L以上5.0mol/L以下の濃度が好ましく、炭素担体表面に溶液を均一に浸透させる観点から2.0mol/L以上3.0mol/L以下の濃度がより好ましい。
溶液に含有されている表面修飾剤、例えば、クエン酸の濃度としては、0.26mol/L以上3mol/L以下の濃度が好ましい。
溶媒としては、炭素担体の表面を十分に表面修飾できれば特に限定されない。溶媒としては、例えば、有機溶媒、無機溶媒、極性溶媒、例えば水、非極性溶媒、プロトン性溶媒、若しくは非プロトン性溶媒、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。
また、溶液は、任意選択的に、pH調整剤を含有してよい。溶液のpHを調整することによって、炭素担体の表面修飾の反応を促進することができる。pH調整剤としては、特に限定されることなく、公知のpH調整剤を採用することができる。
炭素担体としては、その表面を十分に表面修飾することができる炭素担体であれば、特に限定されない。炭素担体としては、例えば、カーボンブラック、活性炭、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ、異元素ドープカーボン、メソポーラスカーボン、若しくはVGCF(気相成長法炭素繊維)等、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。炭素担体としては、幾何学的比表面積、及び電気化学的比表面積が高い炭素担体が好ましい。
かかる炭素担体としては、例えば、Cabot社製Vulcan(比表面積:242m/g)、ライオン社製ケッチェンブラック(比表面積:1320m/g)、Timcal社製C65(比表面積:65m/g)等の比表面積65m/g以上の炭素担体を挙げることができる。この中でも、比表面積の大きさ等の観点から、特にケッチェンブラックが好ましい。また、炭素担体の粒径は、上記ペロブスカイト型酸化物相を含む酸化物粒子を担持可能であれば、特に制限はない。
図1(a)〜(c)を参照して、表面修飾されていない炭素担体、又は表面修飾された炭素担体の表面状態の概略を説明する。
図1(a)は、表面修飾されていない炭素担体の模式図である。炭素担体の表面を化学修飾していない場合には、炭素担体の表面には、特徴的な官能基がほとんど存在していない。さらに、炭素担体の表面には、活性点、例えばカチオン性の酸点及び/又はアニオン性の塩基点等もほとんど存在していない。
図1(b)は、硝酸処理で表面修飾された炭素担体の模式図である。炭素担体の表面を硝酸処理で表面修飾した場合には、炭素担体の表面には、カルボキシラートイオン等が存在し、かつ活性点、例えばカチオン性の酸点及び/又はアニオン性の塩基点等が存在している。
図1(c)は、次亜塩素酸ナトリウム又はクエン酸処理で表面修飾された炭素担体の模式図である。炭素担体の表面を次亜塩素酸ナトリウム又はクエン酸処理で表面修飾した場合には、炭素担体の表面には、次亜塩素酸イオン等が存在し、かつ活性点、例えばカチオン性の酸点及び/又はアニオン性の塩基点等が存在している。
〈ペロブスカイト型酸化物前駆体を調製する工程〉
酸素還元触媒を製造する本発明の方法は、第一の金属元素の塩、第二の金属元素の塩、及び溶媒を含有している溶液を撹拌して、ペロブスカイト型酸化物前駆体を調製する工程を含む。
ペロブスカイト型酸化物前駆体を調製する工程としては、特に限定されることなく、公知の工程を挙げることができる。ペロブスカイト型酸化物前駆体を調製する工程としては、例えばクエン酸錯体法の工程、逆均一沈殿法の工程、共沈法の工程、含浸法の工程、気相還元法の工程、水熱法の工程、固相反応法の工程、液相還元法の工程、逆ミセル法の工程、若しくはゾルゲル法の工程、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。
ペロブスカイト型酸化物前駆体の形態としては、特に限定されないが、例えば水酸化物の形態又は錯体の形態を挙げることができる。水酸化物の形態の場合には、ペロブスカイト型酸化物前駆体は、第一及び第二の金属元素のイオンと、水酸化物イオンとから構成されている複合体でよい。錯体の形態の場合には、ペロブスカイト型酸化物前駆体は、第一及び第二の金属元素のイオンに対して錯化剤が配位した複合体でよい。
(ペロブスカイト型酸化物前駆体を調製するためのクエン酸錯体法)
一実施形態としてクエン酸錯体法によって、ペロブスカイト型酸化物前駆体を調製する工程を説明する。クエン酸錯体法では、第一の金属元素の塩、第二の金属元素の塩、及び溶媒を含有している第一の溶液、錯化剤、例えばクエン酸及び溶媒、例えばアルコール溶媒を含有している第二の溶液を用いる。
第一の溶液の調製は、第一及び第二の金属元素の塩と、溶媒とを混合することによって、行う。第二の溶液の調製は、錯化剤と、溶媒とを混合することによって行う。これらの溶液の調製の順は、任意である。
そして、第一及び第二の溶液を所定の温度、例えば室温で十分に混合して、混合溶液を調製する。さらに、還流装置を用いることによって、所定の温度及び時間でこの混合溶液を加熱還流する。これによって、第一及び第二の金属元素のイオンに対して錯化剤としての錯化剤が配位した複合体を調製することができる。
なお、クエン酸合成法では、錯化剤、すなわち少なくとも一種の水酸基と少なくとも一種のカルボキシル基を有する有機酸を採用してよい。この有機酸としては、クエン酸、リンゴ酸、酒石酸、若しくはグリコール酸、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。
第一の溶液に含有されている第一及び第二の金属元素のmol比としては、特に限定されないが、1:1のmol比を挙げることができる。また、第一及び第二の金属元素の塩の濃度としては、特に限定されないが、それぞれ0.05mol/L以上、0.5mol/L以上、若しくは1.0mol/L以上、及び/又は20.0mol/L以下、10.0mol/L以下、5.0mol/L以下の濃度を挙げることができる。
第二の溶液に含有されている錯化剤、例えば錯化剤の濃度としては、特に限定されないが、第一及び第二の溶液を混合したときに、第一の溶液中の金属カチオンに対して錯化剤の濃度が0.5mol当量以上、1.0mol当量以上、若しくは1.5mol当量以上、及び/又は10.0mol当量以下、5.0mol当量以下、若しくは3.0mol当量以下となる濃度を挙げることができる。第二の溶液に含有されている錯化剤の濃度としては、余分な化合物や不純物を排除しつつ多くのペロブスカイト型酸化物前駆体を調製する観点から、2.0〜3.0mol当量となる濃度の範囲が好ましい。
第一及び第二の金属元素の塩としては、特に限定されないが、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩、炭酸塩、ハロゲン化物、シアン化物、又は硫化物などを挙げることができる。なお、ペロブスカイト型酸化物前駆体の調製に関して、ペロブスカイト構造の格子を構成している第一及び第二の金属元素を部分的に置換することを目的として、その他の異種金属元素の塩が、溶液にさらに含有されていてよい。
第一及び第二の金属元素の組み合わせとしては、特に限定されないが、La、Ni、Sc、Sr、Y、Eu、Sm、Gd、Nd、Ba及びCaからなる群から選択される少なくとも一種の元素と、Mn、Ga、Co、及びFeからなる群から選択される少なくとも一種の元素との組み合わせを挙げることができる。第一及び第二の金属元素、並びに異種金属元素に関しては、さらに、下記の本発明の酸素還元触媒に関する記載を参照することができる。
第一の溶液の溶媒としては、特に限定されないが、有機溶媒、例えばアルコール類、無機溶媒、例えば水、極性溶媒、非極性溶媒、プロトン性溶媒、若しくは非プロトン性溶媒又はこれらの組み合わせを挙げることができる。第二の溶液の溶媒としては、特に制限はないが、無機溶媒、例えば純水など、アルコール類若しくはグリコール類(ペッチーニ法)又はこれらの組み合わせを挙げることができる。
加熱還流の温度としては、特に限定されないが、50℃以上、70℃以上、若しくは90℃以上、及び/又は150℃以下、130℃以下、若しくは100℃以下の温度を挙げることができる。加熱還流の時間としては、1時間以上、2時間以上、若しくは3時間以上、又は24時間以下、12時間以下、若しくは6時間以下の時間を挙げることができる。
〈触媒前駆体を調製する工程〉
酸素還元触媒を製造する本発明の方法は、ペロブスカイト型酸化物前駆体と、表面修飾された炭素担体とを含有している溶液を撹拌して、ペロブスカイト型酸化物前駆体を表面修飾された炭素担体に担持することによって、触媒前駆体を調製する工程を含む。
ペロブスカイト型酸化物前駆体と、表面修飾された炭素担体とを含有している溶液を調製する手順としては、特に限定されないが、ペロブスカイト型酸化物前駆体を含有している溶液に表面修飾された炭素担体を適量で添加し、これを撹拌又は加熱還流する方法を挙げることができる。
この撹拌又は加熱還流を所定の時間及び温度で行うことによって、ペロブスカイト型酸化物前駆体を表面修飾された炭素担体に担持し、これによって、触媒前駆体を調製することができる。この撹拌又は加熱還流の時間及び温度としては、ペロブスカイト型酸化物前駆体を調製する工程の記載を参照することができる。
(炭素担体が表面修飾されていない場合について)
ところで、従来の表面修飾されていない炭素担体では、特徴的な官能基や活性点等がほとんど存在していない。したがって、この炭素担体に対して、例えば触媒成分としてのペロブスカイト型酸化物前駆体を含浸して担持した場合には、ペロブスカイト型酸化物前駆体と、炭素担体との間に、化学結合、例えば共有的、イオン的、及び/又は配位的な化学結合がほとんど形成されていない。
このため、かかる触媒前駆体を熱処理する場合には、炭素担体上を酸化物粒子及びその前駆体が比較的自由に移動して凝集し、かつ/又は酸化物粒子が比較的大きいサイズ、例えばμmオーダーのサイズに粒成長する可能性がある。このように、従来の方法では、凝集及び/又は粒成長を生じさせることなく、酸化物粒子を炭素担体に高分散で担持することは困難であった。
(炭素担体が表面修飾されている場合について)
これとは対照的に、本発明の方法では、炭素担体が表面修飾されている。上記したように、この炭素担体が有している官能基は、活性点、例えばカチオン性の酸点及び/又はアニオン性の塩基点等として機能してよい。
したがって、何らの原理によって限定されないが、本発明の方法では、ペロブスカイト型酸化物前駆体と、表面修飾された炭素担体と、溶媒とを含有している溶液を撹拌することによって、この炭素担体の表面上の官能基と、ペロブスカイト型酸化物前駆体とが化学結合、例えば共有的、イオン的、及び/又は配位的な化学結合を形成することができると考えられる。
このため、ペロブスカイト型酸化物前駆体が表面修飾された炭素担体に担持されている触媒前駆体を熱処理する場合には、炭素担体上で、酸化物粒子及びその前駆体が凝集することが抑制されると考えられる。したがって、ペロブスカイト型酸化物相を含む複数の酸化物粒子を、炭素担体上に、略均一のサイズで略均一に分散させることができると考えられる。
炭素担体上に担持されるペロブスカイト型酸化物前駆体の量は、熱処理後の炭素担体上に担持されるペロブスカイト型酸化物相を含む酸化物粒子の量を考慮して決定できる。炭素担体上に担持されるペロブスカイト型酸化物相を含む酸化物粒子の量に関しては、下記の本発明の酸素還元触媒の記載を参照することができる。
〈触媒前駆体を熱処理する工程〉
酸素還元触媒を製造する本発明の方法は、触媒前駆体を熱処理する工程を含む。
触媒前駆体を熱処理することによって、ペロブスカイト型酸化物前駆体をペロブスカイト型酸化物に転化する。これによって、ペロブスカイト型酸化物相を含む酸化物粒子と、この酸化物粒子が担持されている炭素担体とを含有している酸素還元触媒を製造することができる。
さらに、本発明者らは、粒径が小さく、かつペロブスカイト型酸化物相を比較的多く含む酸化物粒子を得るために、触媒前駆体を熱処理する下記の第一及び第二の熱処理段階を見出した。
(第一及び第二の熱処理段階)
触媒前駆体を熱処理する工程は、好ましくは、大気雰囲気で熱処理する第一の熱処理段階と、不活性雰囲気で熱処理する第二の熱処理段階とを含む。
第一の熱処理段階について:
触媒前駆体を大気雰囲気で熱処理する第一の熱処理段階では、ペロブスカイト型酸化物前駆体が担持されている炭素担体の表面上に存在している余分な化合物を除去する。余分な化合物としては、例えばペロブスカイト型酸化物前駆体の調製で用いた錯化剤、金属イオン及びそのカウンターアニオン、アルコール等の溶媒、又はその他の不純物を挙げることができる。かかる余分な化合物を炭素担体の表面上から除去することによって、上記の酸化物粒子へのかかる化合物の供給が抑制される。
さらに、何らの原理によって限定されないが、この炭素担体の表面上の官能基と化学結合を形成しているペロブスカイト型酸化物前駆体は、上記の第一の熱処理段階では、ほとんど除去されることがないと考えられる。
このため、ペロブスカイト型酸化物前駆体に関して、所定の第一及び第二の金属元素の組成比を維持し、かつ不純物の混入を抑制することができる。さらに、炭素担体が表面修飾されているため、ペロブスカイト型酸化物前駆体が、炭素担体の表面を移動することを抑制することができる。したがって、酸化物粒子に関して、ペロブスカイト型酸化物相の割合を高め、かつその粒成長を抑制することができる。
第一の熱処理段階の温度としては、150℃以上、200℃以上、300℃以上、若しくは350℃以上、及び/又は500℃以下、450℃以下、若しくは400℃以下の温度を挙げることができる。
第一の熱処理段階の温度が低すぎる場合には、炭素担体の表面上にある余分な化合物がほとんど除去されず、これによって、ペロブスカイト型酸化物相(例えば、LaMnO)の生成が少なくなり、かつ水酸化物相(例えば、La(OH))やそれ以外の酸化物相(例えば、La)等の不純物相の生成が多くなる可能性がある。また、第一の熱処理段階の温度が高過ぎる場合には、担体のカーボンが、焼失して、減少する可能性がある。
第一の熱処理段階の時間としては、特に限定されないが、1時間以上、3時間以上、若しくは7時間以上、及び/又は24時間以下、12時間以下、若しくは9時間以下の時間を挙げることができる。
第二の熱処理段階について:
触媒前駆体を不活性雰囲気で熱処理する第二の熱処理段階では、ペロブスカイト型酸化物前駆体をペロブスカイト型酸化物(相)に転化する。
ここで、本発明者らは、ペロブスカイト型酸化物前駆体が担持されている炭素担体を不活性雰囲気で熱処理することによって、ペロブスカイト型酸化物(相)の割合を高めることができる可能性があることを見出した。これは、なんらの原理によって限定されないが、炭素担体の炭素が、酸化物粒子及びその前駆体に含有されている酸素と反応し、酸素の量が調整され、これによって、ペロブスカイト型酸化物(相)以外の酸化物(相)の生成が抑制されるためと考えられる。
このように、ペロブスカイト型酸化物前駆体が表面修飾された炭素担体に担持されている触媒前駆体に対して、かかる第一及び第二の熱処理を行った場合には、粒径が小さく、かつペロブスカイト型酸化物相を比較的多く含む複数の酸化物粒子を、炭素担体上に、略均一のサイズで略均一に分散させることができる。したがって、本発明の方法によれば、酸素の酸化還元反応をより促進する酸素還元触媒を提供することができる。
第二の熱処理段階の不活性雰囲気としては、ペロブスカイト型酸化物の結晶相を効率よく析出させることができれば、特に限定されないが、不活性ガスの雰囲気、例えば、Ar、He、又はNの雰囲気を挙げることができる。
第二の熱処理段階の温度は、ペロブスカイト型酸化物の結晶相を効率よく析出させることができれば、特に限定されない。第二の熱処理段階の温度としては、400℃以上、450℃以上、若しくは500℃以上、及び/又は800℃以下、700℃以下、若しくは600℃以下の温度を挙げることができる。
なお、第二の熱処理段階の温度は、第一の熱処理段階の温度より高いことが好ましい。これによって、第一の熱処理段階において炭素担体の焼失を抑制しつつ炭素担体上の余分な化合物を除去し、第二の熱処理段階においてペロブスカイト型酸化物の結晶相を効率よく析出させることができる。
第二の熱処理段階の時間としては、特に限定されないが、1時間以上、3時間以上、若しくは7時間以上、及び/又は24時間以下、12時間以下、若しくは9時間以下の時間を挙げることができる。
さらに、酸素還元触媒を製造する本発明の方法について、下記の本発明の酸素還元触媒の記載を参照することができる。
《酸素還元触媒》
本発明の酸素還元触媒は、ペロブスカイト型酸化物相を含む酸化物粒子と、上記酸化物粒子が担持されている炭素担体とを含有している。
従来、酸素還元触媒としては、高い酸素還元活性を示す白金系の触媒が採用されている。しかしながら、白金等の貴金属は、希少かつ高価である。したがって、白金系の酸素還元触媒に代わる新たな酸素還元触媒として、ペロブスカイト型酸化物が注目されている。ペロブスカイト型酸化物では、格子の歪み及び欠陥、並びにAサイト及びBサイトの金属元素の置換等を制御することが可能であり、したがって、触媒活性の制御が比較的容易である。
このペロブスカイト型酸化物及び炭素担体に関する触媒に関して、本発明者らは、酸素還元反応、すなわち四電子還元反応(O+2HO+4e→4OH)が、下記の第一の二電子還元反応(1)及び第二の二電子還元反応(2)から構成されていることを知見した:
+HO+2e→ HO +OH (1)
HO +HO+2e→ 3OH (2)
また、本発明者らは、第一の二電子還元反応は主に炭素担体で生じ、第二の二電子還元反応は主にペロブスカイト型酸化物相を含む酸化物粒子上で生じることを見出した。具体的には、想定されるこれらの反応機構を図2に示している。
図2(a)では、炭素担体100の表面上で、第一の二電子還元反応によりヒドロペルオキシドイオン(HO )が生成している。また、図2(b)では、生成したヒドロペルオキシドイオンが、ペロブスカイト型酸化物相を含む酸化物粒子200の表面上で、第二の二電子還元反応により還元されて、ヒドロキシルイオン(OH)が生成している。
かかる酸素還元触媒は、高い酸素還元活性を示す。本発明者らは、この酸素還元活性をより向上させる構成及び方法を検討した。
これに関して、本発明の酸素還元触媒では、ペロブスカイト型酸化物相を含む酸化物粒子の平均粒径が、5nm以上10nm以下である。
ペロブスカイト型酸化物相を含む酸化物粒子の平均粒径がナノオーダー、例えば、5nm以上10nm以下のサイズであることによって、かかる酸化物粒子は、高い比表面積を有し、かつ量子サイズ効果を発揮することができる。すなわち、高い比表面積は、触媒反応、特に第二の二電子還元反応の発生確率を上昇させ、かつ量子サイズ効果は、かかる反応を促進することができる。
したがって、本発明の酸素還元触媒は、従来のペロブスカイト型酸化物を含む酸素還元触媒と比較して、より高い酸素還元活性を実現することができる。
ペロブスカイト型酸化物相を含む酸化物粒子の平均粒径としては、5nm以上、6nm以上、若しくは7nm以上、及び/又は10nm以下、9nm以下、若しくは8nm以下の平均粒径を挙げることができる。
なお、本発明において「平均粒径」とは、特に断りのない限り、走査型電子顕微鏡(SEM)、及び走査透過電子顕微鏡(STEM)等の手段を用い、かつ無作為に選択した10個以上の粒子の円相当径(Heywood径)を測定した際に、それらの測定値の算術平均値をいうものである。
〈X線回折のピーク比〉
さらに、本発明の酸素還元触媒では、酸化物粒子においてペロブスカイト型酸化物相のX線回折の最大ピーク高さが、ペロブスカイト型酸化物相以外の酸化物相のX線回折の最大ピーク高さの2.0倍以上である。
一般的に、ある化合物の相のX線回折のピーク高さ(強度)は、その化合物の濃度と、その化合物に固有の比例定数との積として表すことができる。すなわち、X線回折のピーク高さ及び濃度の間には、一定の比例関係が存在している。これによれば、これらの化合物の含有量の比を、これらの化合物の相のピーク高さの比によって、間接的に知ることができることを理解されたい。
これに関して、酸化物粒子中にペロブスカイト型酸化物相が一定の割合以上で存在していることによって、酸素の酸化還元反応をより促進することができる。
酸化物粒子においてペロブスカイト型酸化物相のX線回折の最大ピーク高さとしては、ペロブスカイト型酸化物相以外の酸化物相のX線回折の最大ピーク高さに対して、2.0倍以上、3.0倍以上、5.0倍以上、又は10.0倍以上のピーク高さを挙げることができる。
以下、本発明の酸素還元触媒の構成要素について説明する。
〈ペロブスカイト型酸化物相を含む酸化物粒子〉
ペロブスカイト型酸化物相を含む酸化物粒子は、炭素担体上に担持されている。
ペロブスカイト型酸化物の構造の格子を構成している第一及び第二の金属元素の組み合わせは、反応中間体としてのヒドロペルオキシドイオン(HO )を還元する活性の高い組み合わせ、すなわち上述の第二の二電子還元反応が生じる組み合わせであれば、特に限定されない。ペロブスカイト型酸化物の構造の格子を構成している第一及び第二の金属元素の組み合わせとしては、例えば、酸素の酸化還元反応をより促進する観点から、La及びMnの組み合わせが好ましい。
また、上記の格子を構成しているLaは、希土類金属元素(Sc、Y、ランタノイド、アクチノイド)やアルカリ土類金属元素(Sr)等により部分的又は全体的に置換されてもよい。さらに、上記の格子を構成しているMnは、3d遷移金属元素(Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni)等により部分的又は全体的に置換されてもよい。ペロブスカイト型酸化物としては、具体的には、LaMnO、CaMnO、La1−xSrFe1−yCoを挙げることができる。これらの金属元素の置換によって、本発明の酸素還元触媒の酸素還元活性をより向上することができる。なお、いずれの場合にも、ペロブスカイト型酸化物中に、不可避的不純物や上記特性に悪影響を与えないドーパントを含んでもよいこと、かつ格子欠陥、例えば酸素元素の欠陥が存在してもよいことを理解されたい。
酸素還元触媒に含まれるペロブスカイト型酸化物相を含む酸化物粒子の量としては、酸素還元触媒に関してこの酸化物粒子の全質量及び炭素担体の全質量を足した総質量に対して、5質量%以上、30質量%以上、若しくは40質量%以上、及び/又は50質量%以下、60質量%以下、若しくは95質量%以下を挙げることができる。
かかる酸化物粒子の量が多すぎる場合には、相対的に炭素担体の割合が小さくなるため、電子伝導性が低下し、これによって第一の二電子還元反応が生じにくくなる可能性がある。一方、かかる酸化物粒子の量が少なすぎる場合には、第二の二電子還元反応が十分に生じず、第一の二電子還元反応で生成したヒドロペルオキシドイオン(HO )等の攻撃により炭素担体が酸化されて分解し、酸素還元触媒の耐久性及び反応速度の低下が生じる可能性がある。
〈炭素担体〉
炭素担体には、ペロブスカイト型酸化物相を含む酸化物粒子が担持されている。炭素担体及びその原材料等に関しては、上記の酸素還元触媒を製造する本発明の方法の記載を参照することができる。
なお、金属担体、例えば、Ni担体や、導電性ペロブスカイト型酸化物担体、例えば、LaNiO担体に関して、高い酸素還元活性を有している酸素還元触媒を得ることは困難である。これは、何らの原理によって限定されないが、上記の二電子還元反応、又は四電子還元反応が生じにくいためと考えられる。
その他、本発明の酸素還元触媒に関して、上記の酸素還元触媒を製造する本発明の方法の記載をさらに参照することができる。
《空気電池用空気極》
本発明の空気電池用空気極は、酸素還元触媒と、バインダーとを有している。
本発明の空気電池用空気極は、高い酸素還元活性を有している酸素還元触媒を採用することによって、従来の空気極よりも過電圧を小さくすることができる。
バインダーとしては、特に限定されることなく、PTFE(ポリテトラフロオロエチレン)、若しくはPVdF(ポリフッ化ビニリデン)等、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。
バインダーの量としては、電極厚み、酸素透過性、電子伝導性、及びイオン伝導性を最適化し、かつ三相界面を形成することができれば、特に限定されない。バインダーの量としては、例えば、酸素還元触媒及びバインダーの総質量に対して、5〜75質量%の範囲の量を挙げることができる。
空気極集電体の材料としては、酸素透過性及び電子伝導性など空気電池の空気極として機能し得る支持体、例えば発泡金属、金属メッシュ、カーボンペーパーなどの多孔体や、アニオン電解質膜を挙げることができる。金属の材料としては、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、鉄、又はチタンを挙げることができる。空気極集電体へのスラリーの塗布方法としては、ディップコート法、スプレーコート法、ロールコート法、ドクターブレード法、グラビアコート法、若しくはスクリーン印刷法、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。
空気電池用空気極を製造する方法としては、特に限定されることなく、公知の方法を採用することができる。空気電池用空気極を製造する方法としては、例えば、酸素還元触媒と、バインダーとを物理混合し、この混合物を圧延して自立膜の電極体を形成する方法を採用することができる。
また、空気電池用空気極を製造する方法としては、例えば、上記の混合物を含むスラリーを、任意の塗布方法により空気極集電体に塗布し、乾燥させ、必要に応じて、圧延することで電極体を形成する方法を採用することができる。空気と対向する側の電極体の表面には、電解液の漏液を防止するために疎水処理などを施すことが好ましい。
その他、本発明の空気電池用空気極に関して、上記の酸素還元触媒を製造する本発明の方法の記載、及び上記の本発明の酸素還元触媒の記載を参照することができる。
《空気電池》
本発明の空気電池は、空気電池用空気極を具備している。また、本発明の空気電池は、負極集電体、負極活物質、電界質、及び任意選択的なその他の構成要素をさらに有している。
(負極活物質)
負極活物質としては、金属触媒、合金材料、若しくは炭素材料、又はこれらの組み合わせを挙げることができる。負極活物質としては、アルカリ金属、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等;アルカリ土類金属、例えば、マグネシウム、カルシウム等;第13族元素、例えば、アルミニウム等;遷移金属、例えば、亜鉛、鉄、ニッケル、チタン等;白金族元素、例えば、白金等;若しくはこれらの金属を含有している合金;又は炭素材料、例えば、グラファイト等を挙げることができる。
また、負極活物質としては、効率的な充放電を行う観点から、例えば、AB型希土類系合金(LaNiなど)及びBCC合金(Ti−Vなど)のような水素吸蔵合金、白金、亜鉛、鉄、アルミニウム、マグネシウム、リチウム、ナトリウム及びカドミウムのような金属を挙げることができる。
(負極集電体)
負極集電体の材料としては、銅、ステンレス、アルミニウム、ニッケル、鉄、チタン、若しくはカーボン、又はそれらの組み合わせを挙げることができる。また、負極集電体の形状としては、箔状、板状、メッシュ状等が例示される。
(電解質)
電解質は、空気極及び負極との間でイオンの伝導を行うものである。電界質としては、液体電解質、固体電解質、ゲル状電解質、ポリマー電解質、又はそれらの組み合わせを挙げることができる。液体電解質及びゲル状電解質としては、水系電解液及び非水系電解液を用いることができる。
水系電解液としては、アルカリ水溶液や、酸水溶液などが例示され、負極活物質の種類に応じて適宜選択することができる。アルカリ水溶液としては、水酸化カリウム水溶液や水酸化ナトリウム水溶液等を挙げることができる。
酸水溶液としては、塩酸水溶液、硝酸水溶液、硫酸水溶液等を挙げることができる。このうち、水系電解液としては、高アルカリ水溶液が好ましく、その濃度としては、例えば、8M以上のKOHが好ましい。
非水系電解液としては、例えば、非プロトン性の有機溶媒又はイオン液体を挙げることができる。
有機溶媒としては、プロピレンカーボネート(PC)、エチレンカーボネート(EC)およびフルオロエチレンカーボネート(FEC)などの環状カーボネート、γ−ブチロラクトン(GBL)などの環状エステル、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)およびエチルメチルカーボネート(EMC)などの鎖状カーボネート、又はそれらの組み合わせを挙げることができる。
イオン液体としては、N,N−ジエチル−N−メチル−N−(2−メトキシエチル)アンモニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(DEMETFSA)、N−メチル−N−プロピルピペリジニウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)アミド(PP13TFSA)、又はそれらの組み合わせを挙げることができる。
また、有機溶媒とイオン性液体とを組み合わせてもよい。また、有機溶媒やイオン性液体には支持塩を溶解させてもよい。支持塩としては、例えばリチウム空気電池の場合にはLiPF、LiBF、LiN(CFSO、LiCFSOを挙げることができる。
非水系電解液としては、ポリマーを添加してゲル化して用いることもできる。非水電解液のゲル化の方法としては、例えば、非水系電解液に、ポリエチレンオキシド(PEO)、ポリアクリルニトリル(PAN)、ポリビニリデンフルオライド(PVdF)またはポリメチルメタクリレート(PMMA)などのポリマーを添加する方法を挙げることができる。
(その他の構成要素)
その他の構成要素として、セパレータを用いてもよい。セパレータは、上記した空気極と負極活物質層との間に配置される。セパレータの材料としては、ポリエチレン及びポリプロピレンの多孔膜を挙げることができる。
上記セパレータは、単数層であっても良く、複数層であっても良い。また、ニッケルのような公知の充電専用電極(正極)を更に有していてもよい。なお、充電はメカニカルチャージ方式で行ってもよい。
その他、本発明の空気電池に関して、上記の酸素還元触媒を製造する本発明の方法の記載、上記の本発明の酸素還元触媒の記載、及び上記の本発明の空気電池用空気極の記載を参照することができる。
《酸素還元触媒のその他の用途》
上記の本発明の酸素還元触媒又は本発明の方法で製造された酸素還元触媒は、上記の用途以外の用途としても有用である。これらの酸素還元触媒の用途としては、特に限定されることなく、例えば、固体高分子型燃料電池(PEFC)、固体酸化物型燃料電池(SOFC)、又は排ガス浄化触媒を挙げることができる。
以下に示す実施例を参照して本発明を更に詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例によって限定されるものでないことは、言うまでもない。
《実施例1》
〈表面修飾された炭素担体を調製する工程〉
表面修飾剤としての次亜塩素酸ナトリウム(0.112g)と、溶媒としての純水(20g)と、炭素担体としてのカーボンブラック(1g)とを含有している溶液を調製した。この溶液を、90℃で1時間にわたって加熱還流した。そして、この溶液を、遠心分離し、吸引濾過し、かつ100℃で1時間にわたって真空乾燥し、これによって、粉末状の表面修飾されたカーボンブラック(約1g)を得た。
〈ペロブスカイト型酸化物前駆体を調製する工程:クエン酸錯体法〉
(第一の溶液の調製)
第一の金属塩としてのLa(NO(7.882g)と、第二の金属塩としてのMn(NO(5.225g)と、溶媒としての純水(100g)とを含有している第一の溶液を調製した。
(第二の溶液の調製)
クエン酸(13.99g)と、純水(100g)とを含有している第二の溶液を調製した。
(ペロブスカイト型酸化物前駆体の調製)
第一及び第二の溶液を混合した。この混合溶液を、還流装置によって70℃で2時間撹拌した。これによって、クエン酸が金属塩混合物に配位したペロブスカイト型酸化物前駆体を含む溶液を得た。
〈触媒前駆体を調製する工程〉
ペロブスカイト型酸化物前駆体を調製した溶液と、上記の表面修飾された炭素担体とを混合した。この混合溶液を室温で1時間にわたって十分に撹拌し、蒸発乾固し、触媒前駆体としてのペロブスカイト型酸化物前駆体が担持された炭素担体を得た。
〈触媒前駆体を熱処理する工程〉
(第一の熱処理段階:大気雰囲気)
上記の触媒前駆体を、電気炉を用いて大気雰囲気及び400℃で、9時間にわたって焼成した。
(第二の熱処理段階:不活性雰囲気)
第一の熱処理段階の後に、上記の触媒前駆体を、管状炉を用いて不活性雰囲気(N雰囲気)及び600℃で、4時間にわたって焼成した。これによって、ペロブスカイト型酸化物相を含む酸化物粒子と、この酸化物粒子が担持されている炭素担体とを含有している酸素還元触媒を得た。
《実施例2〜3》
表面修飾剤としてクエン酸(1g)又は1mol/Lの希硝酸(100g)を用いたことを除き、実施例2(クエン酸を採用)及び3(希硝酸を採用)の酸素還元触媒を、実施例1の酸素還元触媒と同様にして得た。
《実施例4》
第一の熱処理段階の温度及び時間を、150℃及び4時間にし、第二の熱処理段階の温度を700℃にしたことを除き、実施例4の酸素還元触媒を、実施例1の酸素還元触媒と同様にして得た。
《比較例1〜2:表面修飾されていない炭素担体を採用した場合》
炭素担体としてのカーボンブラックを表面修飾せず、かつ第一及び第二の熱処理条件を変更したことを除き、比較例1〜2の酸素還元触媒を、実施例1の酸素還元触媒と同様にして得た。
《比較例3:表面修飾されていない炭素担体とペロブスカイト型酸化物相を含む酸化物粒子とを物理混合した場合》
実施例1のペロブスカイト型酸化物前駆体の調製の工程で得た、ペロブスカイト型酸化物前駆体を含む溶液を純水で洗浄し、そして、100℃で1時間にわたって乾燥し、これによって、ペロブスカイト型酸化物前駆体の乾固物を得た。この乾固物を600℃で4時間にわたって焼成し、これによって、ペロブスカイト型酸化物相を含む酸化物粒子の粉体を得た。この粉体と、炭素担体としてのカーボンブラック(表面修飾処理なし)とを、乳鉢によって物理混合し、これによって、酸素還元触媒を得た。
《比較例4:表面修飾されていない炭素担体のみを採用した場合》
炭素担体としてのカーボンブラックを酸素還元触媒とした。
《比較例5:ペロブスカイト型酸化物相を含む酸化物粒子のみを採用した場合》
比較例3のペロブスカイト型酸化物相を含む酸化物粒子の粉体を、酸素還元触媒として採用した。
実施例1〜4及び比較例1〜5の酸素還元触媒の作製条件を、下記の表1に示している。
《評価》
〈XRD分析及びTEM分析による評価〉
実施例1及び4、並びに比較例1〜2の酸素還元触媒に関して、X線回折分析(XRD)を行い、さらに実施例1、及び比較例1〜2の酸素還元触媒に関して、透過電子顕微鏡法分析(TEM)を行った。結果を、図3〜6に示している。
(実施例1の評価)
図3(a)は、実施例1の酸素還元触媒のX線回折パターンを示す図であり、図3(b)は、透過型電子顕微鏡(TEM)によって分析した実施例1の酸素還元触媒のTEM像である。なお、図3(b)の左下には、10nmのスケールバーを記載している。
図3(a)からは、いずれもペロブスカイト型酸化物相であるLaMnOとLaMnO3−δとが存在していることが分かる。さらに、この図3(a)からは、この酸化物粒子では、ペロブスカイト型酸化物相のX線回折の最大ピーク高さ(2θ=32°付近)が見られる一方で、ペロブスカイト型酸化物相以外の酸化物相のX線回折の最大ピーク高さに関して、特徴的なピークは見られないことが分かる。
これらの事実によれば、実施例1の酸素還元触媒中にペロブスカイト型酸化物相を含む酸化物粒子が存在し、かつこの酸化物粒子の大部分は、ペロブスカイト型酸化物相から構成されていることが分かる。これは、特に大気雰囲気の熱処理によって、炭素担体の表面上から余分な化合物が除去され、かつペロブスカイト型酸化物(相)の形成が容易になったためと考えられる。
また、図3(a)からは、X線回折パターンにおいて、ペロブスカイト型酸化物のピーク幅がブロードであることが分かる。一般的に、X線回折パターンのピーク幅と粒子の粒径との間には、相関関係が存在している。即ち、粒子の粒径が小さい場合には、ピーク幅がブロードになり、粒子の粒径が大きい場合には、ピーク幅がシャープになる。
これらの事実によれば、図3(a)からは、粒径が非常に小さく、かつその大部分がペロブスカイト型酸化物相で構成されている酸化物粒子が、複数存在していることが理解される。
また、図3(b)からは、修飾された炭素担体上に、5nm以上10nm以下の粒径の酸化物粒子が、略均一に分散して存在していることが分かる。これは、炭素担体を表面修飾したことによって、熱処理の工程等において、酸化物粒子及びその前駆体が凝集することなく、炭素担体の表面上に分散したためと考えられる。なお、酸化物粒子の粒径が小さいことが、図3(b)からも明らかであることが理解される。
(実施例4の評価)
図4は、実施例4の酸素還元触媒のX線回折パターンを示す図である。図4からは、X線回折パターンにおいて、ペロブスカイト型酸化物等のピーク幅が、図3(a)のX線回折パターンと同様にブロードであることが分かる。すなわち図4からは、酸化物粒子の粒径が小さいことが理解される。
さらに図4からは、この酸化物には、ペロブスカイト型酸化物相の他に、複数の他の酸化物相が含まれていることも分かる。これは、第一の熱処理段階(大気雰囲気の熱処理)の温度が低いことによって、炭素担体の表面上にある余分な化合物(不純物等)がほとんど除去されず、これによって、ペロブスカイト型酸化物相以外の酸化物相が生成したためと考えられる。
この酸化物粒子では、ペロブスカイト型酸化物相のX線回折の最大ピーク高さ(2θ=32°付近)が、ペロブスカイト型酸化物相以外の酸化物相のX線回折の最大ピーク高さ(2θ=28°付近)の2.0倍以上である。
(比較例1の評価)
図5(a)は、比較例1の酸素還元触媒のX線回折パターンを示す図であり、図5(b)は、透過型電子顕微鏡(TEM)によって分析した比較例1の酸素還元触媒のTEM像である。なお、図5(b)の左下には、50nmのスケールバーを記載している。
図5(a)からは、LaMnOが存在していることが分かる。また、図5(a)からは、X線回折パターンにおいて、ペロブスカイト型酸化物のピーク幅がシャープであることが分かる。
これらの事実によれば、図5(a)からは、酸化物粒子の粒径が比較的大きく、かつ酸化物粒子の大部分がペロブスカイト型酸化物相で構成されていることが理解される。
図5(b)からは、非修飾の炭素担体上に、50nm〜100nm程度の比較的大きな粒径の酸化物粒子が、凝集して存在していることが分かる。これは、炭素担体が表面修飾されていなかったため、この炭素担体上を酸化物粒子及びその前駆体が比較的自由に移動し、これによって、凝集及び/又は粒成長が生じたと考えられる。酸化物粒子の粒径が比較的大きいことが、図5(b)からも明らかであることが理解される。
なお、比較例1の酸素還元触媒に関しては、エネルギー分散型X線分析装置付走査透過型電子顕微鏡(STEM−EDX)による分析を、さらに行った。結果を図5(c)(HAADF−STEM像)及び図5(d)(EDX分析の図)に示している。図5(c)及び(d)からは、図5(b)のペロブスカイト型酸化物相を含む酸化物粒子200が、ランタン及びマンガンを含有していることが分かる。
(比較例2の評価)
図6(a)は、比較例2の酸素還元触媒のX線回折パターンを示す図であり、図6(b)は、透過型電子顕微鏡によって分析した比較例2の酸素還元触媒のTEM像である。なお、図6(b)の左下には、5nmのスケールバーを記載している。
図6(a)からは、図5(a)と略同一のX線回折パターンを読み取ることができる。したがって、図6(a)からは、酸化物粒子の粒径が比較的大きく、かつ酸化物粒子の大部分がペロブスカイト型酸化物相で構成されていることが理解される。
図6(b)からは、不活性雰囲気及び大気雰囲気の順で熱処理を行った比較例2の酸素還元触媒に関して、酸化物粒子のみが存在していることが分かる。すなわち、炭素担体が、ほとんど焼失したことが理解される。したがって、第一及び第二の熱処理工程を、大気雰囲気及び不活性雰囲気の順で行うのが好ましいことが理解される。
〈CV測定による評価〉
空気電池用空気極を作製し、これを用いてCV(Cyclic Voltammetry)測定を行い、I−V曲線をプロットした。結果を図7に示している。
(作用電極としての空気電池用空気極の作製)
実施例1〜3、又は比較例1若しくは3〜5の酸素還元触媒と、バインダーとしてのPTFEとを物理混合し、これを圧延し、これによってシート状の空気電池用空気極を作製した。ここで、酸素還元触媒及びPTFEの質量比は、80:20であった。
(カウンター電極及び参照電極)
カウンター電極にはPtメッシュ(2cm×2cm)を採用し、参照電極にはHg/HgO電極を採用した。
(CV測定条件)
スキャンレート10mV/secにて、−0.5Vから0.8V(vs.Hg/HgO)の範囲で3サイクル行い、酸化還元電流(ORR(Oxygen Reduction Reaction)電流)を計測した。
図7(a)は、実施例1〜3、並びに比較例1及び3〜5の酸素還元触媒を用いて作製した空気電池用空気極に関して、CV測定を行った際のI−V曲線を示し、図7(b)は、図7(a)の一部(囲み点線部)を拡大した図である。
図7(a)からは、比較例4(表面修飾されていない炭素担体のみ)の酸素還元触媒の電位が−0.05V付近に存在し、実施例1〜3、並びに比較例1及び3の酸素還元触媒と比較して、非常に低いことが分かる(図7(b)を参照)。これは、第一の二電子還元反応(O+HO+2e→ HO +OH)が生じる一方で、第二の二電子還元反応(HO +HO+2e→ 3OH)が生じにくいためと考えられる。
また、図7(a)及び(b)からは、比較例5(ペロブスカイト型酸化物相を含む酸化物粒子のみ)の酸素還元触媒では、反応それ自体が進行していないことが分かる。これは、第一の二電子還元反応が生じにくく、これによって、この反応で生じるヒドロペルオキシドイオン(HO )をさらに還元する第二の二電子還元反応が逐次的に生じないためと考えられる。
これを図8に示している。図8は、ペロブスカイト型酸化物相を含む酸化物粒子上で、第一の二電子還元反応が生じにくいことを示す模式図である。
図7(b)からは、比較例1(表面修飾されていない炭素担体)又は3(物理混合)の酸素還元触媒の電位と比較して、実施例1〜3(修飾炭素担体)の酸素還元触媒の電位は、約0.4V以上高いことが分かる。これは、ペロブスカイト型酸化物相を含む酸化物粒子の粒径がナノオーダーのサイズ、特に5nm以上10nm以下のサイズであることによって、第二の二電子還元反応が促進されたためと考えられる。
実施例3(硝酸処理)、実施例2(クエン酸処理)、及び実施例1(次亜塩素酸処理)の順に、これらの酸素還元触媒を採用した空気電池用空気極の電位が高いことが分かる。特に実施例3の酸素還元触媒は、比較例1及び3の酸素還元触媒と比較して、非常に大きな電流密度(mA/cm)を達成していることが分かる。
したがって、実施例1〜3の酸素還元触媒は、高い酸素還元活性を示し、これによって、空気電池の空気極で生じていた過電圧を抑制することができる。これは、空気電池の性能が、従来よりも向上したことを示している。
本発明の好ましい実施形態を詳細に記載したが、特許請求の範囲から逸脱することなく、本発明の方法で採用される、装置又は薬品、そのメーカー及び等級、製造ラインの位置及び配置等について変更が可能であることを当業者は理解する。
100 炭素担体
200 ペロブスカイト型酸化物相を含む酸化物粒子

Claims (8)

  1. 硝酸、次亜塩素酸ナトリウム、及びクエン酸からなる群から選択される少なくとも1種の表面修飾剤と、溶媒と、炭素担体とを含有している溶液を撹拌して、表面修飾された炭素担体を調製する工程、
    第一の金属元素の塩、第二の金属元素の塩、及び溶媒を含有している溶液を撹拌して、ペロブスカイト型酸化物前駆体を調製する工程、
    前記ペロブスカイト型酸化物前駆体と、前記表面修飾された炭素担体とを含有している溶液を撹拌して、前記ペロブスカイト型酸化物前駆体を前記表面修飾された炭素担体に担持することによって、触媒前駆体を調製する工程、並びに
    前記触媒前駆体を熱処理する工程を含む、
    酸素還元触媒の製造方法。
  2. 前記熱処理工程が、大気雰囲気で熱処理する第一の熱処理段階と、不活性雰囲気で熱処理する第二の熱処理段階とを含み、
    前記第二の熱処理段階の温度が、前記第一の熱処理段階の温度より高い、
    請求項1に記載の方法。
  3. 前記第一の熱処理段階の温度が、150℃以上500℃以下であり、かつ
    前記第二の熱処理段階の温度が、400℃以上800℃以下である、
    請求項1又は2に記載の方法。
  4. 前記第一の金属元素がLaであり、かつ前記第二の金属元素がMnである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
  5. ペロブスカイト型酸化物相を含む酸化物粒子と、前記酸化物粒子が担持されている炭素担体とを含有している酸素還元触媒であって、
    前記酸化物粒子の平均粒径が、5nm以上10nm以下であり、かつ
    前記酸化物粒子において、前記ペロブスカイト型酸化物相のX線回折の最大ピーク高さが、前記ペロブスカイト型酸化物相以外の酸化物相のX線回折の最大ピーク高さの2.0倍以上である、
    酸素還元触媒。
  6. 前記ペロブスカイト型酸化物相が、La元素、Mn元素、及びO元素から構成されている、請求項5に記載の酸素還元触媒。
  7. 請求項5又は6に記載の酸素還元触媒と、バインダーとを有している空気電池用空気極。
  8. 請求項7に記載の空気電池用空気極を具備している空気電池。
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