以下、本発明の実施の形態について図を参照して説明する。図1A,図1Bは、本発明の実施の形態におけるリチウム空気二次電池の構成を示す構成図である。図1Bは、図1Aの空気極101の一部を拡大して示している。
このリチウム空気二次電池は、一般的なよく知られたリチウム空気二次電池と同様に、正極でありガス拡散型の空気極101と、リチウムを含んで構成された負極102と、空気極101と負極102とに挾まれて配置された電解質103とを備える。空気極101の一方の面は大気に曝され、他方の面は電解質103と接する。また、負極102の電解質103の側の面は、電解質103と接する。なお、電解質103は、電解液または固体電解質のいずれであってもよい。電解液とは、電解質が液体形態である場合をいう。また、固体電解質とは、電解質がゲル形態または固体形態である場合をいう。
上述した基本構成に加え、本発明の実施の形態では、図1Bに示すように、空気極101が、多孔体からなる担体111および担体111の全域にわたって連続に担持された三次元網目構造のカーボンによるカーボン共連続多孔体112から構成されている。カーボン共連続多孔体112は、一体構造とされている。また、図1Bに示す例では、空気極101に担持された触媒113を備えている。触媒113は、担体111およびカーボン共連続多孔体112の表面に付着している。
空気極101においては、電解液/電極(カーボン)/空気(酸素)の三相部分(三相界面サイト)で電極反応が進行する。電池の効率を上げるためには、電極反応を引き起こす三相界面サイトがより多く存在することが望ましい。このような観点から、カーボン共連続多孔体112の比表面積はなるべく大きい方がよいと考えられる。
カーボン共連続多孔体112は、カーボン粉末の焼結といった公知のプロセスで調製できるが、上述した通り、リチウム空気二次電池では、空気極101の三相界面サイトを多量に電極表面に生成することが重要であり、使用する空気極101を構成するカーボン共連続多孔体112は、高比表面積であることが望ましい。例えば、カーボン共連続多孔体112の比表面積は、30m2/g以上が好ましく、100m2/g以上であることがより好ましい。
カーボン共連続多孔体112を焼結法で調製(作製)する場合、カーボンの焼結温度は1600℃程度と高温であり、この方法ではカーボン粉末同士の粒成長が急速に進むため、高比表面積のカーボン共連続多孔体112の作製は困難である。
これに対し、まず高分子共連続多孔体が担持された担体111を予め調製し、これを不活性雰囲気で熱処理することで得られるカーボン共連続多孔体112が担持された担体111は、高比表面積のカーボン共連続多孔体112が得られるようになる。例えば、ポリアクリロニトリルから、後述する製造方法によりカーボン共連続多孔体112を作製することができる。
担体111は、例えば、平均孔径が0.1〜3μmであることが好ましく、0.1〜2μmであることが更に好ましい。ここで、平均孔径は、水銀圧入法により求めた値である。
空気極101には、カーボン粉末を用いた場合のようなバインダーなどの追加の材料を用いる必要がなく、コスト的に有利である。
本発明のリチウム空気二次電池は、空気極101に、酸素還元(放電)および酸素発生(充電)の両反応に対して高活性な遷移金属触媒または遷移金属酸化物触媒を触媒113として加えることで、更に高性能な二次電池として機能させることができる。
遷移金属または遷移金属酸化物は、触媒113として用いることができ、カーボン共連続多孔体112に付着させることができるものであれば特に限定されない。
例えば、触媒113は、チタン(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、モリブデン(Mo)、銀(Ag)、カドミウム(Cd)、パラジウム(Pd)、鉛(Pb)、ルテニウム(Ru)、ロジウム(Rh)、プラセオジム(Pr)、セリウム(Ce)、ニオブ(Nb)、イットリウム(Y)、タンタル(Ta)、および、錫(Sn)の少なくとも1つの金属から構成することができる。特に、Ruが好ましい。
また例えば、触媒113は、上述した金属の酸化物から構成してもよい。特に、酸化ルテニウム(RuO2)が好適である。RuO2は、特に優れた触媒性能を示すので好ましい。
触媒113とする金属酸化物は、水和物としたアモルファス状のものであることも好ましい。例えば、上述した遷移金属酸化物の水和物であればよい。より具体的には、酸化ルテニウム(IV)水和物[RuO2・nH2O]であればよい。なお、nは、1molのRuO2に対するH2Oのモル数である。
例えば、空気極101のカーボン共連続多孔体112上に、酸化ルテニウム水和物(RuO2・nH2O)をナノサイズの微粒子として高分散で付着させた(添加した)ものを空気極101として使用することで、優れた電池性能を示すことが可能となる。空気極101に含まれる触媒113の含有量は、空気極101の総重量に基づいて、0.1〜70重量%、好ましくは1〜30重量%である。
空気極101に、遷移金属酸化物を触媒113として添加することによって、電池性能は大きく向上する。空気極101中に電解質103の電解液が浸透し、同時に大気中の酸素ガスが供給され、上述したような電解液−電極−ガス(酸素)の三相界面が形成される。この三相界面サイトにおいて、触媒113が高活性であれば、電極表面における酸素還元(放電)および酸素発生(充電)がスムーズに進行し、電池性能は大きく向上することになる。
空気極101上での電極反応は次のように表すことができる。
2Li++(1/2)O2+2e- → Li2O・・・(1)
2Li++O2+2e- → Li2O2・・・(2)
上式中のリチウムイオン(Li+)は、負極102から電気化学的酸化により電解質103中に溶解し、この有機電解液中を空気極101表面まで移動してきたものである。また、酸素(O2)は、大気(空気)中から空気極101内部に取り込まれたものである。なお、負極102から溶解する材料(Li+)、空気極101で析出する材料(Li2O2)、および空気(O2)を図1の構成要素と共に示している。
空気極101の触媒113として用いることができる金属酸化物は、種々の酸化状態をとることができる。例えば、酸化ルテニウム(RuO2)などは、ルテニウムが、+4、+3などの価数を有するイオンで存在しうる。また、これらの酸化物を合成する際の条件によっては、酸化ルテニウム等の酸化物内に酸素を取り込むことができる空孔(本明細書では酸素空孔とも称する)が存在する場合もある。
このような触媒113は、正極活物質である酸素との相互作用が強いので、多くの酸素種を自身の表面に吸着でき、または酸素空孔内に酸素種を吸蔵することができる。
このように、触媒113を構成する金属酸化物表面上に吸着された、または酸素空孔内に吸蔵された酸素種は、上記式(1)および式(2)の酸素源(活性な中間反応体)として酸素還元反応に使用され、上記反応が容易に進むようになる。また、式(1)および式(2)の逆反応である充電反応に対しても、上記の金属酸化物は活性を有している。従って、電池の充電に対応する空気極101上での酸素発生反応も効率よく進行する。このように、酸化ルテニウムなどの金属酸化物は、触媒113として有効に機能する。このような金属酸化物の他、金属自体を触媒113とすることもでき、金属も上記金属酸化物と同様に機能する。
リチウム空気二次電池では、上述した通り、電池の効率を上げるために、電極反応を引き起こす反応部位(上記の電解液/電極/空気(酸素)の三相部分)がより多く存在することが望ましい。このような観点から、上述の三相部位が触媒113の表面にも多量に存在することが重要であり、触媒113は比表面積が高い方が好ましい。金属または金属酸化物による触媒113の比表面積は、0.1〜1000m2/g、好ましくは1〜500m2/gであればよい。なお、比表面積は、公知のN2吸着によるBET法により求めた比表面積である。
触媒113を添加した空気極101は、後述するリチウム空気二次電池の空気極101の製造方法により製造することができる。
次に、負極102について説明する。負極102は負極活性物質から構成する。この負極活性物質は、リチウム空気二次電池の負極材料として用いることができる材料であれば特に制限されない。例えば、金属リチウムを挙げることができる。あるいは、リチウムイオンを吸蔵および放出することができる物質である、リチウムと、シリコンまたは錫との合金、あるいはLi2.6Co0.4Nなどのリチウム窒化物を例として挙げることができる。
なお、シリコンまたは錫の合金を負極102として用いる場合、負極102を作成する時にリチウムを含まないシリコンまたは錫などを用いることもできる。しかし、この場合には、リチウム空気二次電池の作製に先立って、化学的手法または電気化学的手法(例えば、電気化学セルを組んで、リチウムとシリコンまたは錫との合金化を行う方法)によって、シリコンまたは錫が、リチウムを含む状態にあるように処理しておく必要がある。
具体的には、作用極にシリコンまたは錫を含み、対極にリチウムを用い、有機電解質中で還元電流を流すことによって合金化を行うなどの電気化学的な処理をしておくことが好ましい。
金属リチウムから構成した負極102における放電時の反応は、以下のように表すことができる。
Li→Li++e-…(3)
一方、充電時の負極102においては、式(3)の逆反応であるリチウムの析出反応が起こる。
負極102は、公知の方法で形成することができる。例えば、リチウム金属を負極102とする場合には、複数枚の金属リチウム箔を重ねて所定の形状に成形することで、負極102を作製すればよい。
次に、電解質103について説明する。電解質103は、空気極101(正極)および負極102間でリチウムイオンの移動が可能な物質であればよい。例えば、リチウムイオンを含む金属塩を溶解した非水溶媒(有機溶媒)を電解質103とすればよい。具体的には、リチウムイオンを含む金属塩としては、リチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド(LiTFSI)、過塩素酸リチウム(LiClO4)、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6)などのリチウムイオンを含む金属塩を挙げることができる。
また、非水溶媒としては、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸メチルエチル(MEC)、炭酸メチルプロピル(MPC)、炭酸メチルイソプロピル(MIPC)、炭酸メチルブチル(MBC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸エチルプロピル(EPC)、炭酸エチルイソプロピル(EIPC)、炭酸エチルブチル(EBC)、炭酸ジプロピル(DPC)、炭酸ジイソプロピル(DIPC)、炭酸ジブチル(DBC)、炭酸エチレン(EC)、炭酸プロピレン(PC)、炭酸1,2−ブチレン(1,2−BC)などの炭酸エステル系溶媒、1,2−ジメトキシエタン(DME)、テトラエチレングリコールジメチルエーテル(TEGDME)などのエーテル系溶媒、γ−ブチロタクトン(GBL)などのラクトン系溶媒、またはジメチルスルホキシド(DMSO)などのスルホキシド系溶媒、あるいはこれらの中から2種類以上を混合した溶媒を挙げることができる。2種類以上を混合した溶媒としては、例えば炭酸エチレン(EC)および炭酸ジメチル(DMC)(体積比1:1)の混合溶媒、ECおよび炭酸ジエチル(DEC)などのような混合溶媒を挙げることができる。
また、電解質103を構成する他の材料として、リチウムイオンを通す固体電解質(例えば、Li2SやP2S5を含む硫化物系固体電解質など)、リチウムイオンを通すポリマー電解質(例えば、ポリエチレンオキシド系、具体的には、例えば、上記有機電解液とポリエチレンオキシドをコンポジット化した物質など)等を挙げることができる。ただし、電解質103を構成する材料は、これらに限定されず、リチウム空気二次電池で使用される公知のリチウムイオンを通す固体電解質またはリチウムイオンを通すポリマー電解質であれば好適に使用することができる。
なお、リチウム空気二次電池は、上記構成に加え、セパレータ、電池ケース、金属メッシュ(例えばチタンメッシュ)などの構造部材、また、リチウム空気二次電池に要求される要素を含むことができる。これらは、従来公知のものを使用することができる。
次に、製造方法について説明する。本発明のリチウム空気二次電池は、後述する空気極製造方法により得られる空気極と負極と電解質とを、所望のリチウム空気二次電池の構造に基づいた他の必要な要素と共に、ケースなどの適切な容器内に適切に配置することで作製することができる。これらのリチウム空気二次電池の製造手順は、従来知られている方法を適用することができる。
以下、空気極101の作製について説明する。
[製造方法1]
はじめに、製造方法1について説明する。
まず、ポリアクリロニトリルを、ポリアクリロニトリルに対する良溶媒に溶解して高分子量体溶液を作製する(第1工程)。
次に、多孔体からなる担体111に上記高分子量体溶液を塗布する(第2工程)。
次に、高分子量体溶液を塗布した担体111をポリアクリロニトリルに対する貧溶媒に晒すことで、担体111の全域にわたって連続に担持された三次元網目構造を有する高分子共連続多孔体を析出させる(第3工程)。
次に、担体111に担持された高分子共連続多孔体を熱処理することで、三次元網目構造のカーボン共連続多孔体112からなる空気極101を得る(第4工程)。
この後、上述したように作製した空気極101と、リチウムを含んで構成された負極102と、空気極101と負極102とに挾まれて配置された電解質103とから構成されたリチウム空気二次電池を作製する(第5工程)。
以下各工程について、より詳細に説明する。
第1工程では、三次元網目構造を有するカーボン共連続多孔体112の原料となる高分子量体の溶液を作製すればよく、この高分子量体は、全てポリアクリロニトリルである必要はない。高分子量体は、ポリアクリロニトリルを85重量%以上、より好ましくは90重量%以上含むポリマーであればよく、高分子量体は、ポリアクリロニトリル以外の例えば、メチルアクリレート、酢酸ビニルなどの成分が含まれていてもよい。このように、ポリアクリロニトリル以外の成分も含まれている高分子量体を用いる場合、第1工程では、高分子量体の良溶媒を用いればよい。ポリアクリロニトリルの分子量は限定されないが、平均分子量が、例えば、1万〜500万が好ましく、2万〜400万がより好ましい。
ここで、良溶媒とは、対象とする高分子量体を溶解する能力を有する(高分子量体の溶解度が大きい)溶媒を示す。具体的には、良溶媒1リットル(L)に対してポリアクリロニトリルが10g以上、より好ましくは15g以上溶解する溶媒を意味する。ポリアクリロニトリルに対する良溶媒は、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド(DMA)、N−メチルピロリドン(NMP)などであり、これらから2種類以上を混合した溶媒であってもよい。
第1工程では、ポリアクリロニトリルを上記良溶媒に加え、必要に応じて加温しながら、攪拌などの適宜必要な手法を用いて溶媒に溶解する。第1工程で作製する高分子量体溶液は、ポリアクリロニトリルの濃度が、5〜300g/L、好ましくは、10〜160g/Lであればよい。
第2工程では、第1工程で作製した高分子量体溶液を担体111に塗布し、三次元網目構造を有する高分子共連続多孔体の前駆体を担体111に担持させる。ここで、担体111は、上記高分子量体溶液を付着する能力を有する材料から構成する。具体的には、1gの担体111に対して上記高分子量体溶液が0.001g以上、より好ましくは0.05g以上付着する材料から担体111を構成する。
担体111は、シート状、フォーム状、網目状、ハニカム状、ファイバー状、不織布状、織布状等で用いることができる。更に、担体111は、電気伝導性を有することが好ましく、具体的には、10S/m以上、より好ましくは102S/m以上の電気伝導性を有するとよい。担体111は、例えば、カーボンシート、ポーラス金属、金属メッシュ、金属シート等を用いることができ、耐腐食性が強く、更に軽量であるカーボンシートが特に好ましい。
第3工程では、高分子量体溶液に、ポリアクリロニトリル高分子量体)に対する貧溶媒を噴霧し、担体111に三次元網目構造を有する高分子共連続多孔体を析出させる。ここで、貧溶媒とは、対象とする高分子量体を溶かす能力の小さい(溶解度が小さい)溶媒のことを意味する。
具体的には、溶媒1Lに対して高分子量体が1g以上、より好ましくは0.8g以上が溶けない溶媒が貧溶媒である。ここで用いる貧溶媒は、例えば、水、アセトニトリル、エチレングリコール、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、グリセリンなどであり、これらから2種類以上を混合した溶媒であってもよい。
第3工程は、例えば、第2工程で得られた高分子量体溶液が塗布された担体111を、上記貧溶媒に晒すことで実施される。具体的には高分子量体溶液の10倍以上、より好ましくは100倍以上の貧溶媒で洗浄すればよい。洗浄する時間は、高分子共連続多孔体が良溶媒から全て析出され、更に良溶媒が高分子共連続多孔体から貧溶媒中に全て拡散するまで実施すればよい。
良溶媒による高分子量体溶液に貧溶媒を晒す手法は特に制限されないが、貧溶媒に圧力を加えて霧状にして噴射する方法、貧溶媒を注ぎ込む方法、貧溶媒中に浸漬させる方法などがある。良溶媒による高分子量体溶液の中に貧溶媒を拡散させる時間を制御することで、析出させる高分子量体共連続多孔体の孔径、気孔率、比表面積などを自由に制御することが可能である。拡散させる速度が速いほど、高比表面積化が可能となり、良溶媒による高分子量体溶液に対して短時間に多量の貧溶媒を晒すことが好ましい。例えば、流水で洗浄する場合、高分子量体溶液1gに対して毎分1L以上の流水で洗浄すればよい。
従来知られている高分子共連続多孔体の作製方法では、まず、貧溶媒と良溶媒の混合溶媒にポリアクリロニトリルのようなポリマーを加え、この溶液を加熱し、ポリマーを溶解させる。次いで、得られた溶液を冷却してポリマーの共連続多孔体を析出させていた。
このような、従来の製造方法では、ポリマーを溶解するために比較的高温で溶液を加熱する工程が必要であり、溶媒が揮発し、ポリマー溶液の濃度を一定に制御することが容易ではなかった。このため、析出する共連続多孔体の孔径、気孔率、比表面積などを自由に制御できなかった。
これに対し、本発明における製造方法は、高温での加熱の必要性がなく、析出させる高分子共連続多孔体の孔径などの特性を自由に制御できるだけでなく、製造工程も容易である。
ところで、担体111を使用せず、高分子量体共連続多孔体のみを析出させることも可能である。例えば、第1工程で得られた高分子量体の良溶媒溶液を、シャーレ−のような適切な容器にとり、容器内の溶液に貧溶媒を噴霧することで、高分子量体共連続多孔体のみを析出させることができる。しかし、担体111を使用しない場合、平坦な高分子量体共連続多孔体を得るためには、スプレーなどを用いて、均一かつ徐々に高分子量体共連続多孔体を析出させる必要がある。このため、貧溶媒を高分子量体溶液中に拡散させる速度に限界があり、担体111を使用しない場合と比較して、高比表面積化に限界がある。
また、担体111を使用しない場合であっても、第4工程を実施することで、カーボン共連続多孔体112の作製が可能である。しかし、カーボン共連続多孔体112は脆性が高いため、脆いといった問題を有する。このため、カーボン共連続多孔体単体では、圧力を加えると容易に破断する。本発明では、機械強度の高い担体111を用いることで、カーボン共連続多孔体112の脆性に対する問題を解決している。
第4工程では、高分子共連続多孔体が担持された担体111を、不活性または還元性の雰囲気中で800℃〜1500℃、より好ましくは、900℃〜1400℃で焼成し、カーボン化させる。
ここで、不活性または還元性の雰囲気に用いるガスは、高分子共連続多孔体が燃焼しないガスであれば特に限定されないが、例えば、窒素ガス、アルゴンガス、水素ガス、二酸化炭素ガス、一酸化炭素ガスなどを挙げることができる。例えば、カーボン材料に対し賦活効果を有し、カーボン共連続多孔体112の高比表面積化が期待できる二酸化炭素ガスまたは一酸化炭素ガスがより好ましい。
カーボン共連続多孔体112は、カーボン粉末を焼結するといった公知の方法を用いて調製することもできるが、このような方法では、カーボンの焼結温度が1600℃程度と高温である。このため、焼結法では、カーボン粉末同士の粒成長が急速に進み、高い比表面積を有するカーボン共連続多孔体112の作製が困難となる。このため、上述したように、まず高分子共連続多孔体を作製し、この後、高分子共連続多孔体を不活性または還元性の雰囲気で熱処理してカーボン共連続多孔体112を作製することが好ましい。
[製造方法2]
次に、製造方法2について説明する。
空気極101は、前述したように、遷移金属または遷移金属酸化物による触媒113を更に含むとよい。製造方法2では、製造方法1で説明したように、カーボン共連続多孔体112が担持された担体111を作製した後に、触媒113をカーボン共連続多孔体112が担持された担体111に更に担持させる。
製造方法2では、前述した第4工程において、以下の第6工程,第7工程,第8工程を加える。
第6工程では、カーボン共連続多孔体112が担持された担体111を界面活性剤の水溶液に浸漬し、カーボン共連続多孔体112および担体111の表面に界面活性剤を付着させる。
次に、第7工程では、金属塩の水溶液を用いて界面活性剤が付着したカーボン共連続多孔体112および担体111の表面に界面活性剤により金属塩を付着させる。
次に、第8工程では、金属塩が付着したカーボン共連続多孔体112および担体111に対する熱処理により、金属塩を構成する金属または金属の酸化物からなる触媒113をカーボン共連続多孔体112および担体111に担持させる。
なお、上記金属は、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、モリブデン、銀、カドミウム、パラジウム、鉛、ルテニウム、ロジウム、プラセオジム、セリウム、ニオブ、イットリウム、タンタル、および錫の少なくとも1つであればよい。特に、ルテニウムが好ましい。
ところで、遷移金属酸化物をカーボン共連続多孔体112に担持するためには、従来知られている方法を用いることができる。例えば、カーボン共連続多孔体112が担持された担体111を、遷移金属塩化物や遷移金属硝酸塩の水溶液に含浸させて蒸発乾固した後、高温高圧化の水(H2O)中で水熱合成する方法がある。また、カーボン共連続多孔体112が担持された担体111に、遷移金属塩化物や遷移金属硝酸塩の水溶液を含浸させ、ここにアルカリ水溶液を滴下する沈殿法がある。また、カーボン共連続多孔体112が担持された担体111に遷移金属アルコキシド溶液に含浸させ、これを加水分解するゾルゲル法などがある。これらの液相法による各方法の条件は公知であり、これらの公知の条件を適用できる。本発明では、液相法が望ましい。
上記の液相法で担持される金属酸化物は、多くの場合、結晶化が進んでいないためアモルファス状態である。アモルファス状態の前駆体を、不活性の雰囲気で、500℃程度の高温で熱処理を行うことで、結晶性の金属酸化物を得ることができる。このような結晶性の金属酸化物は、空気極101の触媒113として用いた場合においても高い性能を示す。
一方、上記のアモルファス状の前駆体を100〜200℃程度の比較的低温で乾燥した場合に得られる前駆体粉末は、アモルファス状態を維持しつつ、水和物の状態となる。金属酸化物の水和物は、形式的に、MexOy・nH2O(ただし、Meは上記金属を意味し、xおよびyはそれぞれ金属酸化物分子中に含まれる金属および酸素の数を表し、nは1モルの金属酸化物に対するH2Oのモル数)と表すことができる。このような低温乾燥により得られた、金属酸化物の水和物を触媒113として用いることができる。
アモルファス状の金属酸化物(水和物)は、焼結がほとんど進んでいないため、大きな表面積を有し、粒子径も30nm程度と非常に小さい値を示す。これは、触媒113として好適であり、これを用いることで、優れた電池性能を得ることができる。
上述の通り、結晶性の金属酸化物は高い活性を示すが、上記のような高温での熱処理で結晶化させた金属酸化物は、表面積が著しく低下することがあり、粒子の凝集により粒子径も100nm程度となることがある。なお、この粒子径(平均粒径)は、走査型電子顕微鏡(SEM)などで拡大観察し、10μm四方(10μm×10μm)あたりの粒子の直径を計測して、平均値を求めた値である。
また、特に高温で熱処理を行った金属酸化物による触媒113は、粒子が凝集するため、カーボン共連続多孔体112の表面に高分散で触媒113を添加させることが困難なことがある。十分な触媒効果を得るためには、空気極101中に金属酸化物を大量に添加しなければならない場合があり、高温の熱処理による触媒作製は、コスト的に不利となることがある。
この問題を解消するために、製造方法2では、前述の第6工程〜第8工程に示すように、界面活性剤を用いる。
製造方法2の第6工程で用いる界面活性剤は、空気極101上に金属または遷移金属酸化物を高分散で担持するためのものである。界面活性剤のように、分子内にカーボン表面に吸着する疎水基と遷移金属イオンが吸着する親水基を有していれば、カーボン共連続多孔体112に遷移金属酸化物前駆体である金属イオンを高い分散度で吸着させることができる。
上述した界面活性剤としては、分子内にカーボン表面に吸着する疎水基とルテニウムイオンが吸着する親水基を有していれば特に限定されないが、非イオン系の界面活性剤が好ましい。例えば、エステル型の界面活性剤として、ラウリン酸グリセリン、モノステアリン酸グリセリン、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどがある。また、エーテル型の界面活性剤として、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコールなどがある。
また、エステルエーテル型の界面活性剤として、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンヘキシタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステルポリエチレングリコールなどがある。また、アルカノールアミド型の界面活性剤として、ラウリン酸ジエタノールアミド、オレイン酸ジエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、コカミドDEAなどがある。また、高級アルコールの界面活性剤として、セタノール、ステアリルアルコール、オレイルアルコールなどがある。また、ポロキサマー型の界面活性剤として、ポロキサマージメタクリレートなどを挙げることができる。
製造方法2の第6工程における界面活性剤の水溶液の濃度は、0.1〜20g/Lであることが好ましい。また、浸漬時間、浸漬温度等の浸漬条件は、例えば、室温〜50℃の溶液に、1〜48時間浸漬することが含まれる。
製造方法2の第7工程では、第6工程における界面活性剤を含有する水溶液に、触媒113として機能する金属塩を更に溶解するか、または金属塩の水溶液を加えることを含む。あるいは、上述の界面活性剤を含有する水溶液とは別に、触媒113として機能する金属塩を溶解させた水溶液を調製し、これに、界面活性剤を含浸した(付着させた)カーボン共連続多孔体112が担持された担体111を浸漬してもよい。
また、金属塩が溶解した水溶液を、界面活性剤を付着させたカーボン共連続多孔体112が担持された担体111に含浸させてもよい。必要に応じて、得られた金属塩を含む(付着した)カーボン共連続多孔体112にアルカリ性水溶液を滴下してもよい。これらのことによって、金属または金属酸化物前駆体をカーボン共連続多孔体112に付着させることができる。
製造方法2の第7工程における金属塩の添加量は、0.1〜100mmol/Lとなる量であることが好ましい。また、浸漬時間、浸漬温度などの浸漬条件は、例えば、室温〜50℃の溶液に、1〜48時間浸漬することが含まれる。
より具体的には、金属としてルテニウムを例にとって説明すれば、例えば、ルテニウム金属塩(例えば、塩化ルテニウムなどのハロゲン化ルテニウムなど)を、界面活性剤を含有し、カーボン共連続多孔体112が担持された担体111に含浸している水溶液に加える。次いで、得られたルテニウム金属塩を含むカーボン共連続多孔体112が担持された担体111にアルカリ性水溶液を滴下することで、金属または金属酸化物前駆体としての水酸化ルテニウムを、カーボン共連続多孔体112および担体111に担持させることができる。
上述した酸化ルテニウムによる触媒113の担持量は、金属塩水溶液中の金属塩(例えば塩化ルテニウム)の濃度により調整できる。
また、上述のアルカリ性水溶液に使用するアルカリは、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物、アンモニア水、アンモニウム水溶液、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)水溶液等を挙げることができる。これらのアルカリ清水溶液の濃度は、0.1〜10mol/Lであることが好ましい。
製造方法2における第8工程では、カーボン共連続多孔体112の表面に付着させた金属または金属酸化物の前駆体(金属塩)を、熱処理により、金属自体または金属酸化物に転化する。
具体的には、前駆体が付着したカーボン共連続多孔体112が担持された担体111を、室温(25℃程度)〜150℃、より好ましくは50℃〜100℃で1〜24時間乾燥させ、次いで100〜600℃、好ましくは110〜300℃で熱処理すればよい。
製造方法2における第8工程では、アルゴン、ヘリウム、窒素などの不活性雰囲気や還元性雰囲気で熱処理することで、金属自体を触媒113として表面に付着させたカーボン共連続多孔体112が担持された担体111を含む空気極101を製造することができる。また、酸素を含むガス中(酸化性雰囲気)で熱処理することで、金属酸化物を触媒113として表面に付着させたカーボン共連続多孔体112が担持された担体111を含む空気極101を製造することができる。
また、上述の還元条件下での熱処理を行い、一度、金属自体を触媒113として付着させたカーボン共連続多孔体112が担持された担体111を作製し、次いで、これを酸化性雰囲気で熱処理することで、金属酸化物を触媒113として付着させたカーボン共連続多孔体112が担持された担体111による空気極101を製造することもできる。
別法として、金属または金属酸化物の前駆体(金属塩)が付着したカーボン共連続多孔体112が担持された担体111を、室温〜150℃、より好ましくは50℃〜100℃で乾燥させ、カーボン共連続多孔体112上に金属自体を触媒113として付着させ、金属/カーボン共連続多孔体112/担体111の複合体を作製してもよい。
製造方法2では、金属または金属酸化物による触媒113の付着量(含有量)は、カーボン共連続多孔体112が担持された担体111および触媒113の総重量に基づいて、0.1〜70重量%、好ましくは1〜30重量%である。
製造方法2によれば、カーボン共連続多孔体112および担体111の表面に、金属または金属酸化物による触媒113を高分散させた空気極101を製造することができ、電気特性の優れたリチウム空気二次電池が構成できるようになる。
[製造方法3]
次に、製造方法3について説明する。製造方法3では、製造方法1で説明したように、カーボン共連続多孔体112が担持された担体111を作製した後に、触媒113をカーボン共連続多孔体112が担持された担体111に更に担持させる。
製造方法3では、前述した第4工程において、以下の第6工程,第7工程,第8工程を加える。
第6工程では、カーボン共連続多孔体112および担体111を金属塩の水溶液に浸漬してカーボン共連続多孔体112および担体111の表面に金属塩を付着させる。
次に、第7工程では、金属塩が付着したカーボン共連続多孔体112および担体111に対する熱処理により、金属塩を構成する金属からなる触媒113をカーボン共連続多孔体112および担体111に担持させる。
次に、第8工程では、触媒113が担持されたカーボン共連続多孔体112および担体111を高温高圧の水に作用させることで触媒113を金属酸化物の水和物とする。
なお、上記金属は、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、モリブデン、銀、カドミウム、パラジウム、鉛、ルテニウム、ロジウム、プラセオジム、セリウム、ニオブ、イットリウム、タンタル、および錫の少なくとも1つであればよい。特に、ルテニウムが好ましい。
製造方法3における第6工程では、最終的に触媒113とする金属または金属酸化物の前駆体となる金属塩の水溶液を、カーボン共連続多孔体112が担持された担体111の表面に付着(担持)させる。例えば、上記金属塩を溶解した水溶液を別途調製し、この水溶液をカーボン共連続多孔体112および担体111に含浸させればよい。含浸の条件等は、前述したように従来と同じである。
製造方法3における第7工程は、製造方法2の第8工程と同様であり、不活性雰囲気または還元性雰囲気による加熱処理を実施すればよい。また、製造方法2の第8工程の別法として説明した、前駆体が付着したカーボン共連続多孔体112を低温(室温〜150℃、より好ましくは50℃〜100℃)で加熱処理(乾燥)することで、カーボン共連続多孔体112および担体111に金属を付着させてもよい。
金属自体を触媒として用いた空気極101は、高活性を示すが、触媒が金属であるため、腐食に弱く、長期安定性に欠ける場合がある。これに対し、金属を以下に詳述する製造方法3の第8工程により、加熱処理して金属酸化物の水和物とすることで、長期安定性を実現することができる。
製造方法3の第8工程では、金属酸化物の水和物が、カーボン共連続多孔体112および担体111に付着した状態とする。具体的には、製造方法3の第7工程で得られた、金属が付着したカーボン共連続多孔体112および担体111を、高温高圧の水に浸漬させ、付着している金属を、金属酸化物の水和物からなる触媒113に転化する。
例えば、金属が付着したカーボン共連続多孔体112および担体111を、100℃〜250℃、より好ましくは、150℃〜200℃の水に浸漬させ、付着している金属を酸化させて金属酸化物の水和物とすればよい。
大気圧下(0.1MPa)での水の沸点は100℃であるため、大気圧下では通常100℃以上の水に浸漬させることはできないが、所定の密閉容器を用い、この密閉容器内の圧力を、例えば、10〜50MPa、好ましくは25MPa程度まで上昇させることで、密閉容器内では、水の沸点が上昇し、100℃〜250℃の液体状の水を実現することができる。このようにして得た高温の水に、金属が付着したカーボン共連続多孔体112および担体111を浸漬すれば、金属を金属酸化物の水和物とすることができる。
[製造方法4]
次に、製造方法4について説明する。製造方法4では、製造方法1で説明したように、カーボン共連続多孔体112が担持された担体111を作製した後に、触媒113をカーボン共連続多孔体112が担持された担体111に更に担持させる。
製造方法4では、前述した第4工程において、以下の第6工程,第7工程を加える。
第6工程では、カーボン共連続多孔体112および担体111を金属塩の水溶液に浸漬してカーボン共連続多孔体112および担体111の表面に金属塩を付着させる。
次に、第7工程では、金属塩が付着したカーボン共連続多孔体112および担体111を高温高圧の水に作用させることで、金属塩を構成する金属による金属酸化物の水和物からなる触媒113をカーボン共連続多孔体112および担体111に担持させる。
なお、上記金属は、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、亜鉛、モリブデン、銀、カドミウム、パラジウム、鉛、ルテニウム、ロジウム、プラセオジム、セリウム、ニオブ、イットリウム、タンタル、および錫の少なくとも1つであればよい。特に、ルテニウムが好ましい。
製造方法4における第6工程は、製造方法3における第6工程と同様であり、ここでは説明を省略する。
製造工程4における第7工程は、カーボン共連続多孔体112の表面に付着させた前駆体(金属塩)を、比較的低温の熱処理により、金属酸化物の水和物に転化する。
具体的には、前駆体が付着したカーボン共連続多孔体112および担体111を、100〜200℃程度の比較的低温で乾燥する。これにより、前駆体は、前駆体のアモルファス状態を維持しつつ、粒子中には水分子が存在する水和物となる。このような低温乾燥により得られた、金属酸化物の水和物を触媒113として用いる。
製造方法4により作製される空気極101では、金属酸化物の水和物が、カーボン共連続多孔体112上にナノサイズの微粒子の状態で、高分散で担持されうる。従って、このようなカーボン共連続多孔体112が担持された担体111を空気極101とした場合、優れた電池性能を示すことが可能となる。
上記の各製造方法で得られたカーボン共連続多孔体112が担持された担体111および、触媒113が付着した(担持した)カーボン共連続多孔体112が担持された担体111は、公知の手順で所定の形状に成形して空気極101とすることができる。
例えば、触媒未担持および触媒担持カーボン共連続多孔体112を板状体またはシートに加工し、得られたカーボン共連続多孔体112を打ち抜き刃、レーザーカッタなどなどにより所望の直径(例えば23mm)の円形に切り抜いて空気極101とすればよい。
以下、実施例を用いてより詳細に説明する。はじめに、実際に用いた電池の構成について図2を用いて説明する。図2は、リチウム空気二次電池のより詳細な構成例を示す断面図である。このリチウム空気二次電池は、空気極201,負極202,電解質203,セパレータ204,空気極支持体205、空気極固定用リング206,負極固定用リング207,負極固定用座金208,負極支持体209,固定ねじ210,Oリング211,空気極端子221,負極端子222を備える。
空気極201,負極202,電解質203,セパレータ204は、円筒形状の空気極支持体205に収容されている。空気極支持体205は、円筒内中央部に仕切り251があり、仕切り251により空気極201が配置される第1領域205aと、負極202およびセパレータ204が配置される第2領域205bとに区画されている。また、仕切り251は中央部が開口しており、開口部により第1領域205aと第2領域205bが連通している。
液状の電解質203は、仕切り251の開口に配置され、空気極201および塩橋となるセパレータ204に挟まれている。セパレータ204には電解質203が含浸している。なお、セパレータ204の周囲にも電解質203は配置されている。電解質203は、1mol/Lのリチウムビストリフルオロメタンスルホニルイミド/炭酸プロピレン[(CF3SO2)2NLi/PC]溶液である。
また、空気極201は、ポリテトラフルオロエチレン (PTFE)より構成された空気極固定用リング206と仕切り251とに挟まれて、空気極支持体205の円筒内の第1領域205aに固定されている。空気極固定用リング206の開口内において、空気極101と空気との接触する電極の有効面積は、2cm2とされている。一方、セパレータ204は、PTFEより構成された負極固定用リング207と仕切り251とに挟まれて、空気極支持体205の円筒内の第2領域205bに固定されている。このようにして、液状の電解質203が、仕切り251の開口において空気極201とセパレータ204との間に封入されている。
また、負極202は、負極固定用リング207の内部で、負極固定用座金208が積層され、この上に金属から構成された負極支持体209が被せられている。負極202は、厚さ150μmの4枚の金属リチウム箔が同心円上に重ねられて構成され、負極固定用座金208に圧着されている。負極202は、有効面積が2cm2とされている。負極支持体209は、固定ねじ210により空気極支持体205に固定されている。また、空気極支持体205と負極支持体209との間には、Oリング211が配置されている。
固定ねじ210により空気極支持体205の側に押しつけられている負極支持体209により、負極固定用座金208を介し、負極202がセパレータ204の方向に押圧され、セパレータ204に圧接されている。これら構成としたリチウム空気二次電池は、露点が−60℃以下の乾燥空気中で作製した。
なお、空気極支持体205は、金属から構成されているが、図示していないが、PTFEに被覆され、電解質203,セパレータ204などと絶縁分離されている。なお、空気極201と空気極支持体205が接触する部分は、電気的接触をとるためにPTFEによる被覆を施さない。また、金属から構成された固定ねじ210も、図示していないが、PTFEに被覆され、空気極支持体205と負極支持体209とが、電気的に分離された状態としている。
[実施例1]
はじめに、実施例1について説明する。実施例1は、三次元網目構造を有するカーボン共連続多孔体が担持された担体を空気極として使用する例である。空気極の電極として用いる三次元網目構造を有するカーボン共連続多孔体が担持された担体を以下のようにして合成した。
市販されているポリアクリロニトリル(平均分子量15万;Sigma−Aldrich製)を、ポリアクリロニトリルの良溶媒であるジメチルスルホキシド(DMSO)溶媒に85mg/mlの濃度で加え、50℃で攪拌して溶解させた。完全に溶解させた後、適当量の溶液を市販されているカーボンシート(東レ製)上に取り出し、へらを使用してカーボンシート上に均一に塗布した。
以上のようにしてカーボンシート上に塗布した塗膜を、ポリアクリロニトリルの貧溶媒である水を2L/minの流量で15分間晒した。この処理により、溶解できなくなったポリアクリロニトリルが貧溶媒である水の液滴の周りに析出し、白色のポリアクリロニトリル共連続多孔体(固体)がカーボンシート上に形成された。この後、室温で真空乾燥を一晩行った。以上のことにより、ポリアクリロニトリル共連続多孔体を担持したカーボンシート(担体)を得た。
次に、ポリアクリロニトリル共連続多孔体を担持したカーボンシートを、窒素雰囲気中230℃で60分配置する結晶化処理を施した。この後、二酸化炭素雰囲気において、1000℃まで4℃/minの昇温速度で加熱し、カーボンシートに担持されているポリアクリロニトリル共連続多孔体をカーボン化(炭化)した。
炭化により得られたカーボン共連続多孔体を担持したカーボンシートを、X線回折(XRD)測定、走査型電子顕微鏡(SEM)観察、BET比表面積測定を行い、評価した。作製したカーボン共連続多孔体が担持されたカーボンシートは、XRD測定より、カーボン(C,PDFカードNo.01−071−4630)単相であることを確認した。また、SEM観察により、カーボンシートを形成しているカーボン繊維上に、粒子同士が連続に連なり平均孔径が1μmとなっている共連続多孔体が担持されていることが確認された。また、BET法により、カーボン共連続多孔体の比表面積を測定したところ、150m2/gであった。平均孔径は、カーボン共連続多孔体112が担持された担体111を水銀圧入法により求めた。これは、以下の各実施例においても同様である。
このカーボン共連続多孔体が担持されたカーボンシートを、打ち抜き刃、レーザーカッタなどにより直径23mmの円形に切り抜き、ガス拡散型の空気極を得た。
得られた実施例1の空気極により構成したリチウム空気二次電池セルの電池性能を測定した。なお、電池性能の測定試験においては、空気極端子221よび負極端子222を用いた。
電池のサイクル試験は、市販の充放電測定システム(BioLogic社製、VMP−3)を用い、空気極の有効面積当たりの電流密度で0.1mA/cm2を通電し、開回路電圧から電池電圧が、2.0Vに低下するまで測定を行った。また、充電は、同電流密度で、電池電圧が4.2Vに増加するまで行った。充放電容量は、実施例1の空気極の重量当たりの値(mAh/g)で表した。初回の放電および充電曲線を図3に示す。図3において、放電を破線で示し、充電を実線で示した。なお、電池の充放電試験は、通常の生活環境下(常温大気圧下)で行った。
図3に示すように、実施例1の空気極によりリチウム空気二次電池セルの平均放電電圧は2.7Vであり、放電容量は950mAh/gであることが分かる。なお、平均放電電圧は、電池の放電容量(本実施例では950mAh/g)の1/2の放電量(本実施例では475mAh/g)の時の電池電圧とする。また、初回の充電容量は、放電容量とほぼ同様の850mAh/gであり、可逆性に優れていることが分かる。また、充電時の電圧については、図3より、およそ3.5Vに平坦部分が見られ、従来の報告より低い値を示すことが分かった。
充放電電圧の推移を以下の表1に示す。表1は、比較例2の説明の後に示している。実施例1では、充放電において若干の過電圧の増加が見られるが、ほぼ安定した電圧を示すことが分かった。このように、カーボン共連続多孔体が担持されたカーボンシートは、リチウム空気二次電池の空気極として非常に優れた安定性を有していることが分かった。
放電容量のサイクル依存性を図4および表2に示す。表2に示すように、比較例2の説明の後に示している実施例1のリチウム空気二次電池は、後述する粉末カーボンを用いた空気極によるリチウム空気二次電池について評価した比較例1に比較し、放電容量(mAh/g)の減少の傾きは緩やかになり、充放電サイクルを100回繰り返してもサイクル試験が可能であった。
[実施例2]
次に、実施例2について説明する。実施例2では、触媒として遷移金属酸化物を含むカーボン共連続多孔体が担持されたカーボンシートを空気極として用いた。
カーボン共連続多孔体が担持されたカーボンシートに遷移金属酸化物を担持する手法を用いてガス拡散型の空気極を調製した。以下では、代表として、RuO2からなる触媒を担持する製造方法を示すが、Ruを任意の遷移金属に変えることで、遷移金属酸化物を担持することができる。なお、触媒として用いた遷移金属酸化物は、表2,表3に示す通りである。
カーボン共連続多孔が担持されたカーボンシートの評価法、並びに電極と電池の作製法およびこれらの評価法は、実施例1と同様にして行った。カーボン共連続多孔体が担持されたカーボンシートは、実施例1に示した最初のプロセスと同様に作製した。
カーボン共連続多孔体が担持されたカーボンシートを作製した後、市販の塩化ルテニウム(RuCl3;フルヤ金属社製)を蒸留水に溶解し、この水溶液に作製したカーボン共連続多孔体が担持されたカーボンシートを含浸させ、これらに塩化ルテニウムを担持させた。
次いで、塩化ルテニウムを担持したカーボン共連続多孔体およびカーボンシートに、徐々にアンモニア水(28%)をpH7.0になるまで滴下し、水酸化ルテニウムを析出させた。析出物は、塩素が残留しないように、蒸留水による洗浄を5回繰り返した。このようにして得られた水酸化ルテニウムが付着(担持)したカーボン共連続多孔体およびカーボンシートを、アルゴン雰囲気中500℃で6時間熱処理し、RuO2による触媒が付着した、カーボン共連続多孔体が担持されたカーボンシートを作製した。
作製したRuO2からなる触媒が付着したカーボン共連続多孔体が担持されたカーボンシートを、XRD測定、熱重量・示差熱(TG−DTA)分析、透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行い、評価した。
XRD測定より。酸化ルテニウム(RuO2,PDFファイルNo.40−1290)のピークが観察され、担持された触媒は、酸化ルテニウム単相であることが確認された。また、TG−DTA測定により、カーボン共連続多孔体が担持されたカーボンシートおよびRuO2は水和物となっていないことを確認した。TEM観察により、RuO2による触媒は、カーボン共連続多孔体の表面に平均粒径100nmの粒子状で析出しているのが観察された。なお、平均粒径(平均粒子径)は、SEMなどで拡大し、10μm四方(10μm×10μm)あたりの粒子の直径を計測して、平均値を求めた。これは、以下の各実施例においても同様である。
上述した実施例2の、RuO2を触媒とした担持したカーボン共連続多孔体が担持されたカーボンシートを空気極に用いたリチウム空気二次電池の、放電容量および充放電電圧のサイクル依存性を図4,表1,表2,表3に示す。
図4に示すように,実施例2では、放電容量は、初回で1320mAh/gを示し、実施例1のような触媒を用いていない場合よりも大きい値であった。また、実施例2では、充放電のサイクルを繰り返しても、安定した挙動を示すことが分かった。また、表1に示すように、充放電電圧についても、実施例1よりも過電圧の減少が見られ、充放電のエネルギー効率の改善が達成された。また、充放電電圧について、サイクルを繰り返しても顕著な過電圧の増加は見られず、実施例2のリチウム空気二次電池は、安定に作動することが確認された。
上述した実施例2における特性の向上は、非常に大きな活性を有したRuO2を電極触媒として用いることにより、酸素還元(放電)および酸素発生(充電)の両反応が、空気極においてスムーズに行われたことによると考えられる。
表2,表3に、実施例2における触媒を構成する金属酸化物を、酸化チタン、酸化バナジウム、酸化クロム、酸化マンガン、酸化鉄、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、酸化亜鉛、酸化モリブデン、酸化銀、酸化カドミウム、酸化パラジウム、酸化鉛、酸化ルテニウム、酸化ロジウム、酸化プラセオジム、酸化セリウム、酸化ニオブ、酸化イットリウム、酸化タンタル、酸化錫とした場合の、放電容量および充放電電圧のサイクル依存性を示す。
実施例2の代表例としたRuO2の場合と同様に、いずれの金属酸化物を用いた場合であっても、放電容量は、初回で1000mAh/g程度を示し、実施例1のような触媒用いていない場合よりも大きい値であった。これらの金属酸化物の例の場合も、RuO2の場合と同様に、触媒として効率的に機能したことにより電池特性が改善されたものと考えられる。
[実施例3]
次に、実施例3について説明する。実施例3は、金属酸化物の水和物を触媒として用いたカーボン共連続多孔体が担持されたカーボンシートにより空気極を構成している。触媒としては、酸化ルテニウムの水和物(RuO2・nH2O)を用いた。RuO2・nH2Oは、実施例2に示したプロセスで、最後の500℃で6時間の熱処理を行わないことで合成した。カーボン共連続多孔の評価法や、電極や電池の作製法および評価法は、実施例1と同様にして行った。
XRD測定より、得られたRuO2・nH2Oは、アモルファスであることが確認された。RuO2・nH2Oの水分子の量は、TG−DTA測定よりn=0.5であることが分かった。TEM観察により、RuO2・nH2Oによる触媒は、カーボン共連続多孔体の表面に平均粒径50nmの粒子状で析出しているのが観察された。
RuO2・0.5H2Oを空気極の電極触媒として用いた実施例3のリチウム空気二次電池の放電容量および充放電電圧のサイクル依存性を図4,表1,表3に示す。
図4に示すように実施例3における放電容量は、初回で1460mAh/gを示し、実施例2のような水和物となっていないRuO2を触媒とした場合よりも大きい値であった。また、サイクルを繰り返しても、安定した挙動を示すことが分かった。
上記のような実施例3における特性向上は、RuO2・0.5H2Oよりなる電極触媒が非常に大きな表面積を有しているため、放電時の酸化リチウムの析出サイトが増加したことが考えられる。また、酸素の吸着能が向上し、効率的に触媒として機能したためであると考えられる。
[実施例4]
次に、実施例4について説明する。実施例4は、ルテニウム金属を触媒として含むカーボン共連続多孔体、または、酸化ルテニウムを触媒として含むカーボン共連続多孔体が担持されたカーボンシートを空気極に用いたリチウム空気二次電池の例である。
空気極の製造方法として、カーボン共連続多孔体が担持されたカーボンシートに金属RuまたはRuO2を付着させる手法に以下の方法を用いた。
カーボン共連続多孔の評価法、電極、電池の作製法、およびこれらの評価法は、実施例1と同様にして行った。カーボン共連続多孔体は、実施例1に示した最初のプロセスと同様に作製した。
次に、界面活性剤であるポロキサマーのブロック共重合体のポロキサマージメタクリレート(Pluronic−F127、Aldrich製)を5mg/mlの濃度で蒸留水に溶解させ、この溶液にカーボン共連続多孔体が担持されたカーボンシートを浸漬させ、振とう器で24時間攪拌し、多孔体の細孔内に界面活性剤を分散させた。
次に、上記溶液に、0.1mol/Lの塩化ルテニウム(RuCl3;フルヤ金属社製)水溶液を加えて振とう器で24時間攪拌し、多孔体内部に塩化ルテニウム塩を含浸させた。この後、カーボン共連続多孔体が担持されたカーボンシートを50℃で蒸発乾固し、窒素雰囲気中300℃で熱処理して界面活性剤を除去し、金属Ruが付着したカーボン共連続多孔体を得た。
XRD測定により、得られた金属Ruは、ルテニウム金属単相(Ru,PDFカードNo.01−070−0274)であることを確認した。TEM観察により、カーボン共連続多孔体の孔内まで、Ruからなる触媒が、平均粒径2nmで均一に析出していることが確認された。
次に、上記のようにして得られた金属Ruを、空気中において300℃で12時間加熱した。XRD測定より、得られたRuO2は、アモルファスであることを確認した。また、TEM観察により、Ruによる触媒が付着したカーボン共連続多孔体と同様に、孔内までRuO2からなる触媒が、平均粒径5nmで均一に析出していることが確認された。
上述した製造法で作製した金属RuおよびRuO2を、空気極の電極触媒として用いたリチウム空気二次電池の、放電容量および充放電電圧のサイクル依存性を図4,表1,表3に示す。
図4に示すように実施例4の放電容量は、金属Ruに関しては、初回で2640mAh/gを示し、RuO2に関しては、初回で2170mAh/gを示した。これは、金属RuおよびRuO2共に、実施例3のような本発明の製造方法を用いていないRuO2を触媒とした場合よりも大きい値であった。また、金属RuおよびRuO2共に、100回のサイクル試験後も高い放電容量を示した。
なお、金属Ruを含むカーボン共連続多孔体が担持されたカーボンシートは、触媒が金属であるため、金属ルテニウムが電解液にルテニウムイオンの形で溶出しやすく、腐食に弱い。このため、RuO2と比較すると、長期安定性が低下した。ただし、図4から明らかなように、従来法で得られるルテニウム触媒を含むカーボン共連続多孔体が担持されたカーボンシートよりも放電容量は優れている。
また、表1に示すように、充放電電圧についても、実施例3よりも過電圧の減少が見られ、充放電のエネルギー効率が改善されていることが分かる。また、充放電電圧についても、サイクルを繰り返しても顕著な過電圧増加は見られず、安定に作動することを確認した。
上述した本発明の製造方法により、電極触媒である金属RuおよびRuO2が、比表面積の大きなカーボン共連続多孔体上に高分散で担持されるようになり、また低温加熱処理により酸化ルテニウムの比表面積が増加する。このような大きな比表面積に伴い、放電時の酸化リチウムの析出サイト増加、および酸素の吸着能の向上が実現される。上記のような特性の向上は、このような本発明の製造方法に基づく各種の改善が理由と考えられる。
[実施例5]
次に、実施例5について説明する。実施例5は、高温高圧の水中から調製した酸化ルテニウム水和物を触媒として含むカーボン共連続多孔体を空気極に用いたリチウム空気二次電池の例である。
実施例5における空気極の製造方法として、カーボン共連続多孔体が担持されたカーボンシートに、RuO2・nH2Oからなる触媒を更に担持する手法に以下の方法を用いた。
カーボン共連続多孔が担持されたカーボンシートの評価法、電極,電池の作製法、およびこれらの評価法は、実施例1と同様にして行った。カーボン共連続多孔体が担持されたカーボンシートは、実施例1に示した最初のプロセスと同様に作製した。
次に、Ruからなる触媒を高分散担持したカーボン共連続多孔体を、実施例4と同様に作製した。
次に、水熱合成用の密閉容器に、実施例4と同様に作製して得られた金属Ruを担持したカーボン共連続多孔体および蒸留水を収容し、自生圧下(12〜20MPa程度)、180℃で24時間加熱した。
上述の処理の後で密閉容器より取り出したカーボン共連続多孔体が担持されたカーボンシートを、室温で真空乾燥した。XRD測定より、得られた酸化ルテニウムは、水和物(RuO2・nH2O)のアモルファスであることが確認された。RuO2・nH2Oの水分子の量は、TG−DTA測定よりn=0.7であることが分かった。
TEM観察を行ったところ、Ruからなる触媒を含むカーボン共連続多孔体が担持されたカーボンシートと同様、孔内までRuO2・nH2Oからなる触媒が平均粒径4nmで均一に析出していることが確認された。
上述した製造法で作製した実施例4におけるRuO2・0.7H2Oを空気極の電極触媒として用いたリチウム空気二次電池の、放電容量および充放電電圧のサイクル依存性を図4,表1,表3に示す。
図4に示すように実施例5におけるリチウム空気二次電池セルの放電容量は、初回で2420mAh/gを示した。これは、実施例4のような高温高圧水を用いず、空気中で酸化させて作製したRuO2を触媒とした場合よりも大きい値であった。また、充放電のサイクルに関しても、安定した作動をすることを確認した。
また、表1に示すように、充放電電圧についても、実施例3よりも過電圧の減少が見られ、充放電のエネルギー効率が改善されていることが分かる。また、充放電電圧についても、サイクルを繰り返しても顕著な過電圧増加は見られず、安定に作動することを確認した。
なお、実施例4のような空気中での熱処理による酸化ではなく、高温高圧水を使用したことにより、酸化温度の低温化および水和物とすることが可能となった。このため、これらにより触媒(触媒粒子)の比表面積の増加、および触媒活性が向上し、実施例4のような高温高圧水を用いず、空気中で酸化させて作製したRuO2を触媒とした場合よりも大放電容量が実現したと考えられる。
[比較例1]
次に、比較例1について説明する。比較例1は、カーボン(ケッチェンブラックEC600JD)およびRuO2を用いたリチウム空気二次電池セルを製造して評価した。
空気極用の電極として公知であるカーボン(ケッチェンブラックEC600JD)とRuO2を用い、リチウム空気二次電池セルを以下のようにして作製した。
RuO2粉末、ケッチェンブラック粉末(ライオン製)およびポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粉末(ダイキン製)を50:30:20の重量比で、らいかい機を用いて十分に粉砕および混合し、混合物をロール成形してシート状電極(厚さ:0.5mm)を作製した。このシート状電極を直径23mmの円形に切り抜き、チタンメッシュ上にプレスしてガス拡散型の空気極を得た。また、RuO2は、市販試薬(高純度化学研究所製)を用いた。また、作製したリチウム空気二次電池セルのサイクル試験の条件は、実施例1と同様である。
比較例2に係るリチウム空気二次電池の放電容量に関するサイクル性能を、実施例1〜4の結果とともに、図4,表1,表3に示す。
図4に示すように,比較例1の初回放電容量は,910mAh/gであり、実施例1よりも小さな値を示した。また、充放電サイクルを繰り返すと、実施例1〜4とは異なり、放電容量の極端な減少が見られ、20サイクル後の容量維持率は、初期の約20%であった。
また、充放電電圧のサイクル依存性を実施例1〜4の結果とともに、表1に示した。表1に示されているように、比較例1による充放電過電圧は、実施例1〜4よりも高い値であるとともに、サイクルを繰り返すと明らかに過電圧が増加し、20回目で充放電が困難となった。なお、測定後に空気極を観察したところ、空気極の一部が崩れて電解液中に分散しており、空気極の電極構造が破壊されている様子が見られた。
以上の比較例1の結果より、本発明のようにRuO2を含有したカーボン共連続多孔体が担持されたカーボンシートを含む空気極は、公知の材料よりも、容量および電圧に関してサイクル特性に優れており、リチウム空気二次電池用空気極として有効であることが確認された。
[比較例2]
比較例2は、RuO2を含むカーボン共連続多孔体を空気極として用いたリチウム空気二次電池を例示する。比較例2では、担体を用いず、カーボン共連続多孔体を単体で用いた。
RuO2を含むカーボン共連続多孔の評価法、電極と電池の作製法、およびこれらの評価法は、実施例2と同様にして行った。RuO2を含むカーボン共連続多孔体は、実施例2に示したプロセスで、ポリアクリロニトリルを溶解させたジメチルスルホキシド溶液をカーボンシートに塗布し、流水で晒す工程の代わりに、ポリアクリロニトリルを溶解させたジメチルスルホキシド溶液を適当量シャーレ等の容器に取り出し、これに霧吹きを使用して、貧溶媒である水を噴霧する工程を行うことで作製した。
比較例2に係るリチウム空気二次電池の放電容量に関するサイクル性能を、実施例1〜4および比較例1の結果とともに図4,表3に示す。
図4に示すように比較例2の初回放電容量は910mAh/gであり、実施例1よりも小さな値を示した。充放電サイクルを繰り返すと、放電容量の20サイクル後の容量維持率は初期の約50%であった。
また、比較例2における充放電電圧のサイクル依存性を、実施例1〜4および比較例1の結果とともに、表1に示した。
表1からも分かるように、比較例2による充放電過電圧は、実施例1〜4よりも高い値であるとともに、サイクルを繰り返すと明らかに過電圧が増加し、75回目で充放電が困難となった。なお、測定後に空気極を観察したところ、空気極が割れていた。測定時に評価用セルから圧力が印加されたことにより破断したものと考えられる。この破断により、カーボン粒子同士の導電パスが切断され、サイクル特性が実施例1〜4より低くなっていると考えられる。
以上の結果より、本発明のようにカーボン共連続多孔体が担持された担体により構成した空気極によるリチウム空気二次電池は、公知の材料を用いた場合よりも、容量および電圧に関してサイクル特性に優れており、リチウム空気二次電池用空気極として有効であることが確認された。
以上に説明したように、本発明によれば、多孔体からなる担体および担体の全域にわたって連続に担持された三次元網目構造のカーボン共連続多孔体から空気極を構成したので、リチウム空気二次電池の充放電サイクル性能およびエネルギー効率を高くすると共に放電容量を高くすることができる。本発明によれば、充放電サイクル性能に優れたリチウム空気二次電池を作製することができ、作製したリチウム空気二次電池は、様々な電子機器の駆動源として有効利用することができる。
なお、本発明は以上に説明した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で、当分野において通常の知識を有する者により、多くの変形および組み合わせが実施可能であることは明白である。