JP6278722B2 - レンズ用組成物及びレンズ - Google Patents
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Description
本発明のレンズ用組成物(以下、本発明のレンズ用組成物を「本発明の組成物」ともいう。)は、リン系化合物と、環状オレフィン系樹脂とを含む。本発明者らによる検討の結果、環状オレフィン系樹脂とともにリン系化合物を含む組成物から得られたレンズは、波長450nm以下という短波長のレーザー光学系で使用しても、耐光性の低下が抑制される点が見出された。そのメカニズムは明らかではないが、以下のように推察される。すなわち、環状オレフィン系樹脂を含むレンズへの光照射によって生じる耐光性の低下は、環状オレフィン系樹脂中に含まれる極微量の残存金属(残渣触媒等)によって、レンズの光劣化が促進されることが一因であると考えられるところ、本発明の組成物から得られるレンズにおいては、残存金属にリン系化合物が配位し、残存金属によって生じ得る光劣化の促進が抑制されているため、レンズの耐光性の低下が抑制されるものと考えられる。
本発明におけるリン系化合物は、その構造にリン原子を含むものであれば特に限定されず、縮合リン酸エステル、ヒンダードヒドロキシフェニル基を有する3価のリン化合物、及び1分子中にリン原子を1個含む5価のリン化合物からなる群より選択される少なくとも1種等が挙げられる。以下、これらの各リン系化合物について説明するが、これらのリン系化合物のなかでも、高耐熱性、低揮発性、環状オレフィン系樹脂との良好な相溶性を有する等の観点から、本発明におけるリン系化合物は、縮合リン酸エステルが好ましい。
本発明における縮合リン酸エステルは、特に限定されないが、芳香族環を有する縮合リン酸エステル等が挙げられる。縮合リン酸エステルは、1種単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明におけるヒンダードヒドロキシフェニル基を有する3価のリン化合物(以下、単に「3価のリン化合物」ともいう。)は、1種単独で使用しても2種以上を組み合わせて使用してもよい。
本発明における5価のリン化合物は、1分子中にリン原子を1個含む限り、特に限定されず、下記式(IV)で表されるリン酸エステル及びホスフィンオキシドからなる群より選ばれる1種以上であってもよい。
本発明における環状オレフィン系樹脂は、環状オレフィンに由来する構造単位を主鎖に含む重合体又は共重合体であれば、特に限定されない。例えば、環状オレフィンの付加重合体又はその水素添加物、環状オレフィンとα−オレフィンとの付加共重合体又はその水素添加物等を挙げることができる。環状オレフィン系樹脂は、1種単独で使用することも、2種以上を併用することもできる。
R9とR10、R11とR12は、一体化して2価の炭化水素基を形成してもよく、
R9又はR10と、R11又はR12とは、互いに環を形成していてもよい。
また、nは、0又は正の整数を示し、
nが2以上の場合には、R5〜R8は、それぞれの繰り返し単位のなかで、それぞれ同一でも異なっていてもよい。)
炭素数2〜20のα−オレフィンは、特に限定されるものではない。例えば、特開2007−302722と同様のものを挙げることができる。また、これらのα−オレフィンは、1種単独でも2種以上を同時に使用してもよい。これらのなかでは、エチレンの単独使用が最も好ましい。
一般式(b)で示される環状オレフィンについて説明する。一般式(b)におけるR1〜R12は、それぞれ同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、及び、炭化水素基からなる群より選ばれるものである。一般式(b)で示される環状オレフィンの具体例としては、特開2007−302722と同様のものを挙げることができる。
本発明の組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法を採用できる。例えば、環状オレフィン系樹脂、リン系化合物、あるいはさらに、必要に応じ配合される樹脂等を、一括で、又は逐次に溶融混練する方法が挙げられる。溶融混練する方法としては、例えば、樹脂組成物をブレンドした後、一軸若しくは二軸のスクリュー押出機、バンバリーミキサー、ロール、各種ニーダー等で溶融混練する方法等が挙げられる。溶融混練における温度については、環状オレフィン系樹脂、リン系化合物、及び、必要に応じ配合される樹脂等が溶融していれば特に限定はないが、通常160℃〜350℃、好ましくは180℃〜320℃の温度範囲で実施するのが一般的である。
本発明の組成物を公知の方法(射出成形法等)で成形することにより、本発明の組成物からなるレンズを得ることができる。該レンズは、波長450nm以下の短波長のレーザー光学系で使用されるレンズとして好適に使用できる。波長450nm以下のレーザー光学系で使用されるレンズとしては、レーザー光波長405nmを標準とする、ブルーレイディスクやHD−DVDのピックアップレンズ等が挙げられる。
環状オレフィン系樹脂として、商品名:TOPAS(登録商標)5013L−10(TOPAS Advanced Polymers社製、メルトインデックス(270℃、荷重2.16kg)70g/10min、Tg134℃)を用いた。環状オレフィン系樹脂と、各種リン系化合物と、エラストマーと、を表1記載の割合で使用し、これらを、二軸押出機(日本製鋼所製、商品名:TEX30)を用いて、シリンダー温度260℃にて溶融混練し、ペレット化を実施して、実施例1〜11の組成物を得た。
IRGAFOS(登録商標) 168:トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、BASF社製
SUMILIZER(登録商標) GP:2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、住友化学株式会社製
SANKO−EPOCLEAN:9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン10−オキシド、三光株式会社製
トリシクロヘキシルホスフィンオキシド:和光純薬工業株式会社製
トリフェニルリン酸:大八化学工業株式会社製
トリ(パラクレジル)リン酸:東京化成工業株式会社製
PX−200:1,3フェニレンビス(ジ−2,6キシレニルホスフェート)、大八化学工業株式会社製
エラストマー1:セプトン2104(株式会社クラレ社製、スチレン含有量65質量%、メルトインデックス(270℃、荷重2.16kg)1.2g/10min)
エラストマー2:セプトン8007L(株式会社クラレ社製、スチレン含有量30質量%、メルトインデックス(270℃、荷重2.16kg)3.1g/10min)
エラストマー3:ハイブラーKL7350(株式会社クラレ社製、スチレン含有量50質量%、メルトインデックス(270℃、荷重2.16kg)40.9g/10min)
環状オレフィン系樹脂:TOPAS(登録商標)5013L−10(ノルボルネンとエチレンとの共重合体である環状オレフィン系樹脂、TOPAS Advanced Polymers社製、メルトインデックス(270℃、荷重2.16kg)70g/10min、Tg134℃)
各試験片について、反ゲート側の末端部から40mmまでの箇所を切り出し、40mm×70mm×2mmのLED試験用試験片を得た。反ゲート側の末端部(ゲート側から70mm)の中心部分に白色LED(光束20lm)を有するガイドプレートを装着した。次いで、白色LEDを光源とする光(成分として、405nmの光を含む)を各LED試験用試験片に直接照射し、かつ、60℃×90%湿度の条件で湿熱恒温槽に1週間暴露させた後、LEDを消灯し、かつ、70℃にて恒温槽内の水蒸気を除去した後にLED試験用試験片を回収した。実施例1から7及び比較例1に関しては、LED試験後の各LED試験用試験片にハロゲン球(12V100W HAL−L、OLYMPUS社製)を光源とする光を照射して各試験片の曇りを目視により観察し、実施例8から11に関しては、倍率200倍の顕微鏡を使用し、ハロゲン球(12V100W HAL−L、OLYMPUS社製)を光源とする光を照射して試験片の白点を目視により観察し、下記の判定基準に従って判定した。その結果を表1に示す。
(判定基準)
(判定基準)
○:試験片のLED照射部に曇り又は白点が発生しなかった。
×:試験片のLED照射部に曇り又は白点が発生した。
各試験片について、耐熱性試験(110℃、1000時間)を行った。耐熱性試験前後の各試験片の黄色度(DIN6167)を、YKB−Gardnar GmbH製色差計color−sphereを使用して測定した。耐熱性試験後の各試験片の黄色度から、耐熱性試験前の各試験片の黄色度を引いた値ΔYIを計算し、その結果を表1に示す。
実施例及び比較例の組成物のガラス転移点(Tg)を、DSC法(JIS K 7121記載の方法)によって昇温速度10℃/分の条件で測定した。その結果を表1に示す。
各試験片について、温度85℃、湿度85%環境中で16時間暴露した後、試験片の内部を、レーザー顕微鏡を用いて倍率200倍でクラック発生の有無を目視で観察し、下記の判断基準に従って判定した。その結果を表1に示す。
(判断基準)
○:クラックが発生しなかった。
×:クラックが発生した。
リン系化合物の種類及び割合を表2記載の通りに設定し、実施例1〜11と同様にして、実施例12〜14の組成物を調製し、実施例12〜14の試験片を得た。なお、比較例2においては、リン系化合物を含まない点以外は、実施例12〜14と同条件で組成物を射出成形し、試験片を得た。なお、表2中、「リンの価数」とは、各種リン系化合物中のリン原子の価数を指す。「組成」の列において、カッコ内の数字は、使用した各成分の添加量(単位:質量部)を指す。
各試験片に対して、70℃×7Wh/mm2の条件で、波長405nmのレーザー光を照射した。倍率200倍の顕微鏡を使用して各試験片の白点を目視により観察し、下記の判定基準に従って判定した。その結果を表2に示す。
(判定基準)
○:白点のサイズが相対的に小さく、白点が試験片のごく一部にのみ観察された。
△:白点のサイズが相対的に大きく、白点が試験片の一部にのみ観察された。
×:白点のサイズが相対的に大きく、白点が試験片の全体に観察された。
Claims (3)
- リン系化合物と、環状オレフィン系樹脂とを含み、
前記リン系化合物の量は、環状オレフィン系樹脂100質量部に対して、0.5質量部超2.0質量部以下であり、
前記リン系化合物は、下記一般式(III)で表される亜リン酸エステル類、下記一般式(IV)で表されるリン酸エステル及び下記一般式(IV)で表されるホスフィンオキシドからなる群より選ばれる1種以上を含む、波長450nm以下のレーザー光学系で使用されるレンズ用組成物。
- エラストマーをさらに含む請求項1に記載のレンズ用組成物。
- 請求項1又は2に記載のレンズ用組成物からなるレンズ。
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