JP2021187990A - 芳香族ポリカーボネート樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】高い表面硬度と優れた透明性を有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品を提供する。【解決手段】芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部あたり、表面硬度向上剤(B)25〜200重量部、溶融粘度調整剤(C)0.1〜6重量部を含む芳香族ポリカーボネート樹脂組成物であって、測定温度290℃、せん断速度1000sec−1における溶融粘度をηとしたとき、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)及び溶融粘度調整剤(C)から成る樹脂組成物の溶融粘度η3と芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の溶融粘度η1の比η3/η1が、0.02≦η3/η1≦0.95を満たすことを特徴とする、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。【選択図】なし
Description
本発明は、表面硬度のみならず透明性にも優れた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品に関する。
ポリカーボネート樹脂は、耐衝撃性、耐熱性、透明性、熱安定性等に優れた熱可塑性樹脂であることから、ガラスの代用として自動車や建材の窓部やディスプレイ部に利用されている。しかしながら、ポリカーボネート樹脂は表面硬度が低く、傷つきやすいという欠点があり、その用途は制限されている。
この欠点を改良するために、紫外線硬化型樹脂をポリカーボネート樹脂表面にコーティングする方法が提案されている。しかしながら、この方法ではポリカーボネート樹脂由来の柔軟性から、ディスプレイ用途などで要求される鉛筆硬度の要求を満たすことができないという問題があった。
一方、表面硬度と透明性に優れた成形体を得るために、ポリカーボネート樹脂とアクリル系の表面硬度向上剤とを含有する樹脂組成物が提案されている(特許文献1及び特許文献2参照)。
しかしながら、表面硬度向上剤を含有するポリカーボネート樹脂組成物は、表面硬度は高いが射出成形時に白化が発生して透明性が劣るという問題を抱えていた。
本発明は、前述の諸問題を解決した、すなわち高い表面硬度と優れた透明性を有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物及びその成形品を提供することを目的とする。
本発明者は、上記課題を解決するために鋭意研究を行った結果、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)及び表面硬度向上剤(B)を含有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物に、溶融粘度調整剤(C)を配合して溶融粘度を調整することにより、表面硬度のみならず透明性にも優れた芳香族ポリカーボネート樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち本発明は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部、表面硬度向上剤(B)25〜200重量部、溶融粘度調整剤(C)0.1〜6重量部を含む芳香族ポリカーボネート樹脂組成物であって、測定温度290℃、せん断速度1000sec−1における溶融粘度をηとしたとき、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)及び溶融粘度調整剤(C)から成る樹脂組成物の溶融粘度η3と芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の溶融粘度η1の比η3/η1が、0.02≦η3/η1≦0.95を満たすことを特徴とするものである。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物から得られた成形品は、高い表面硬度を有し、かつ透明性にも優れている。そのため、成形品表面の傷付きが敬遠され、かつ透明感を要望される用途、例えば表示ディスプレーカバー、電子機器保護カバー、照明カバー、自動車ヘッドランプカバー、自動車向けの窓部材又は建材向けの窓部材等の用途に好適に使用される。
以下に、実施の形態を詳細に説明する。ただし、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
なお、発明者は当業者が本発明を充分に理解するために以下の説明を提供するのであって、これらによって請求の範囲に記載の主題を限定することを意図するものではない。
本発明者は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)及び表面硬度向上剤(B)を含有する芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形加工した際に発生する白化に起因する透明性の低下が、溶融粘度調整剤(C)の配合により解決できることを見出した。
本発明の実施形態の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、表面硬度向上剤(B)及び溶融粘度調整剤(C)を含み、必要に応じてリン系酸化防止剤(D)及び/又は紫外線吸収剤(E)を含むことができる。
本発明の実施形態において、「芳香族ポリカーボネート樹脂(A)」は、芳香族化合物に基づくポリカーボネート樹脂であって、本発明が目的とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を得ることができる限り特に制限されることはない。そのような芳香族ポリカーボネート樹脂として、例えば、種々のジヒドロキシジアリール化合物とホスゲンとを反応させるホスゲン法、又はジヒドロキシジアリール化合物とジフェニルカーボネート等の炭酸エステルとを反応させるエステル交換法によって得られる重合体を例示できる。代表例は、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)から製造されたポリカーボネート樹脂を含む。
ジヒドロキシジアリール化合物として、ビスフェノールAの他に、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)オクタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル−3−メチルフェニル)プロパン、1,1−ビス(4−ヒドロキシ−3−t−ブチルフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3、5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジクロロフェニル)プロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類;1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル等のジヒドロキシジアリールエーテル類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド等のジヒドロキシジアリールスルフィド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホキシド等のジヒドロキシジアリールスルホキシド類;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等のジヒドロキシジアリールスルホン類を例示できる。これらは単独で又は組み合わせて使用できる。これらの他にも、ピペラジン、ジピペリジルハイドロキノン、レゾルシン、4,4’−ジヒドロキシジフェニル等を組み合わせて使用することができる。
更に、ジヒドロキシジアリール化合物と、例えば以下に示す3価以上の芳香族化合物とを組み合わせて使用してもよい。
3価以上のフェノール化合物として、例えば、フロログルシン、4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプテン、2,4,6−ジメチル−2,4,6−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ヘプタン、1,3,5−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−ベンゾール、1,1,1−トリ−(4−ヒドロキシフェニル)−エタン及び2,2−ビス−[4,4−(4,4´−ジヒドロキシジフェニル)−シクロヘキシル]−プロパン等を例示できる。
芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の粘度平均分子量は、10000〜100000であることが好ましく、12000〜30000であることがより好ましい。なお、このような芳香族ポリカーボネート樹脂(A)を製造する際には分子量調節剤、触媒等を必要に応じて使用することができる。
本発明における表面硬度向上剤(B)としては、芳香族(メタ)アクリレート単位5〜80重量%及びメチルメタクリレート単位20〜95重量%からなり、重量平均分子量が5000〜30000である共重合体を使用することができる。尚、本明細書においては(メタ)アクリレートはアクリレート又はメタクリレートを意味する。
芳香族(メタ)アクリレートとしては、例えば、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレートを挙げることができる。これらは1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのうち、好ましくはフェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレートであり、より好ましくはフェニルメタクリレートである。
表面硬度向上剤(B)中の芳香族(メタ)アクリレート単位の含有率が5重量%以上であれば、透明性が維持され、80重量%以下であれば、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)との相容性が高過ぎず、成形体表面への移行性が低下しないため、表面硬度が低下しないので好ましい。また、芳香族(メタ)アクリレート単位の含有率が20〜70重量%の範囲であれば、更に透明性を維持しつつ高い表面硬度を発現することから、更に好ましい。
表面硬度向上剤(B)には、必要に応じて芳香族(メタ)アクリレート単位及びメチルメタクリレート単位以外の他の単量体単位を含有させてもよい。他の単量体単位を構成するその他の単量体としては、例えば、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等のメタクリレート;メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、プロピルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、グリシジルアクリレート等のアクリレート;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体;ブタジエン、イソプレン、ジメチルブタジエン等のジエン系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;酢酸ビニル、酪酸ビニル等のカルボン酸系ビニル単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のオレフィン系単量体;アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸等のエチレン系不飽和カルボン酸単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニル単量体;マレイミド、N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド、N−メチルマレイミド等のマレイミド系単量体;アリル(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、1,3−ブチレンジメタクリレート等の架橋剤を挙げることができる。これらのうち、好ましくはメタクリレート、アクリレート、シアン化ビニル単量体であり、表面硬度向上剤(B)の熱分解を抑制するという観点からより好ましくはアクリレートである。これらの単量体は1種又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
その他の単量体単位を含有する場合、表面硬度向上剤(B)の構成単量体は、芳香族(メタ)アクリレート単位5〜79.9重量%、メチルメタクリレート単位20〜94.9重量%及びその他の単量体単位0.1〜10重量%の範囲であることが好ましい。
表面硬度向上剤(B)を得るための単量体の重合方法としては、乳化重合法、懸濁重合法、溶液重合法、塊状重合法等の公知の方法を使用することができる。好ましくは懸濁重合法や塊状重合法であり、更に好ましくは懸濁重合法である。また、重合に必要な添加剤等は必要に応じて適宜添加することができ、例えば、重合開始剤、乳化剤、分散剤、連鎖移動剤が挙げられる。
上述の通り、表面硬度向上剤(B)の重量平均分子量は、5000〜30000である。重量平均分子量が5000〜30000の範囲において、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)との相容性が良好であり、表面硬度の向上効果に優れる。尚、好ましくは10000〜25000の範囲である。
表面硬度向上剤(B)の量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部あたり25〜200重量部であり、好ましくは40〜110重量部である。表面硬度向上剤(B)の量が、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部あたり25〜200重量部の場合、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の表面硬度及び透明性に優れる。
本発明にて使用される溶融粘度調整剤(C)は、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形加工する際に、ある種滑剤のように振る舞って芳香族ポリカーボネート樹脂(A)のせん断粘度を低下させることにより、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と表面硬度向上剤(B)との相分離が必要以上に発生するのを抑制することができる。
溶融粘度調整剤(C)としては、測定温度290℃、せん断速度1000sec−1における溶融粘度をηとしたとき、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)及び溶融粘度調整剤(C)から成組成物の溶融粘度η3と芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の溶融粘度η1の比η3/η1が、0.02≦η3/η1≦0.95を満たすように調整することができるものであれば、特に限定されるものではない。η3/η1のより好ましい範囲は0.02≦η3/η1≦0.70、更に好ましい範囲は0.02≦η3/η1≦0.40である。
溶融粘度調整剤(C)として使用可能な化合物として、代表的には、熱可塑性エラストマー、粘着付与樹脂、芳香族リン酸エステル系化合物、エポキシ化合物、シリコーン化合物、脂肪酸アミド系化合物、脂肪酸エステル系化合物、安息香酸エステル系化合物及びポリエーテル誘導体等が挙げられる。中でも、溶融粘度調整剤(C)として安息香酸エステル系化合物を用いることが好ましい。
又、溶融粘度調整剤(C)としては、測定温度290℃、せん断速度1000sec−1における溶融粘度をηとしたとき、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、表面硬度向上剤(B)及び溶融粘度調整剤(C)から成る組成物の溶融粘度η4と芳香族ポリカーボネート樹脂(A)及び表面硬度向上剤(B)から成る組成物の溶融粘度η2の比η4/η2が、0.45≦η4/η2≦1.15を満たすように調整することができるものであっても良い。η4/η2のより好ましい範囲は0.45≦η4/η2≦0.85、更に好ましい範囲は0.45≦η4/η2≦0.65である。
熱可塑性エラストマーとしては、ポリオレフィン系、ポリスチレン系、アクリル系、ポリアミド系、ポリエステル系及びポリウレタン系の熱可塑性エラストマー等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ポリエステル系熱可塑性エラストマー及びポリウレタン系熱可塑性エラストマーが好適であり、例えば、ポリエステル系熱可塑性エラストマーとしては東洋紡社製ペルプレン、東レ・デュポン社製ハイトレル等として商業的に入手可能である。又、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーとしては、BASF社製エラストラン、日本ミラクトラン社製ミラクトラン等として商業的に入手可能である。
粘着付与樹脂としては、分子量が数百から数千、軟化点が約60〜約150℃のオリゴマー等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂及びスチレン系樹脂が好適ある。ロジン系樹脂としては、荒川化学工業社製パインクリスタル等として商業的に入手可能である。又、テルペン系樹脂としては、ヤスハラケミカル社製テルペン樹脂YSレジンPXシリーズ、芳香族変性テルペン樹脂YSレジンTOシリーズ、テルペンフェノール樹脂YYSポリスターUシリーズ・Tシリーズ・Sシリーズ・Gシリーズ・Nシリーズ・Kシリーズ、水添テルペンフェノール樹脂YSポリスターUHシリーズとして商業的に入手可能である。スチレン系樹脂としては、ヤスハラケミカル社製スチレン樹脂YSレジンSXシリーズ、BASF社製JONCRYL ADF−1300等として商業的に入手可能である。
芳香族リン酸エステル系化合物としては、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシレニルホスフェート、1,3−フェニレン ビス(ジフェニルホスフェート)、1,3−フェニレン ビス(ジキシレニルホスフェート)、ビスフェノールA ビス(ジフェニルホスフェート)、4,4`−ビス(ジフェニルホスホリル)−1,1’−ビフェニル等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、1,3−フェニレン ビス(ジキシレニルホスフェート)及び4,4‘−ビス(ジフェニルホスホリル)−1,1’−ビフェニルが好適である。1,3−フェニレンビス(ジキシレニルホスフェート)としては、大八化学工業社製PX−200、PX−202等として商業的に入手可能である。4,4‘−ビス(ジフェニルホスホリル)−1,1’−ビフェニルとしては、ADEKA社製アデカスタブFP−900L等として商業的に入手可能である。
エポキシ化合物としては、3’,4’−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)−1−ブタノールの1,2−エポキシ−4−(2−オキシラニル)シクロヘキサン付加物等の脂環式エポキシ化合物、エポキシ化大豆油、エポキシ価アマニ油等のエポキシ化植物油、エポキシ基含有アクリルポリマー、エポキシ基含有アクリル・スチレン系ポリマー、エポキシ基含有アクリル・エチレン系ポリマー等のエポキシ基含有ポリマー等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、エポキシ化大豆油及びエポキシ基含有アクリル・スチレン系ポリマーが好適である。エポキシ化大豆油としては、日油社製ニューサイザー510R、ADEKA社製アデカスタブO−130P等として商業的に入手可能である。エポキシ基含有アクリル・スチレン系ポリマーとしては、日油社製マープルーフGシリーズ、東亞合成社製ARUFON UG−4000シリーズ等として商業的に入手可能である。
シリコーン化合物としては、ポリエーテル変性、アルキル変性等の非反応性シリコーンオイル、カルボキシル変性、アミノ変性、エポキシ変性等の反応性シリコーンオイル、シリコーンレジン中間体、シリコーンレジン、シルセスキオキサン等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、メチル基及びフェニル基を含有するシリコーン化合物が好適である。メチル基及びフェニル基を含有するシリコーン化合物としては、ダウ・東レ社製DOWSIL RSNシリーズ、3037 Intermediate、3074 Intermediate等として商業的に入手可能である。
脂肪酸アミド系化合物としては、オレイン酸アミド、パルミチン酸アミド、ステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重縮合物等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、エチレンビスステアリン酸アミド及びエチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重縮合物が好適である。エチレンビスステアリン酸アミドとしては、日油社製アルフローHシリーズとして商業的に入手可能である。エチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重縮合物としては、共栄社化学社製ライトアマイドWHシリーズとして商業的に入手可能である。
脂肪酸エステル系化合物としては、ベヘニルベヘネート、オクチルドデシルベヘネート、ステアリルステアレート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレート、グリセリンジステアレート、グリセリントリステアレート、ペンタエリスリトールモノパルミテート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート、ミツロウ等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、グリセリンモノステアレート、ステアリルステアレート、ベヘニルベヘネート、エチレングリコールジステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート及びミツロウが好適である。グリセリンモノステアレートとしては理研ビタミン社製リケマールS−100A等として商業的に入手可能である。ステアリルステアレートとしては理研ビタミン社製リケマールSL−800、日油社製ユニスターM−9676等として商業的に入手可能である。ベヘニルベヘネートとしては、日油社製ユニスターM−2222SL等として商業的に入手可能である。エチレングリコールジステアレートとしては、日油社製ユニスターE−275等として商業的に入手可能である。ペンタエリスリトールテトラステアレートとしては、日油社製ユニスターH−476、コグニス社製ロキシオールVPG861等として商業的に入手可能である。ミツロウとしては、三木化学工業社製ミツロウゴールデンブランド等として商業的に入手可能である。
安息香酸エステル系化合物としては、グリセリルトリベンゾエート、トリメチロールプロパントリベンゾエート、イソノニルベンゾエート、1-メチル-2-(2-フェニルカルボニルオキシプロポキシ)エチルベンゾエート、2,2,4-トリメチル-1,3-ペンタンジオールジベンゾエート、n-ヘキシルベンゾエート等が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、トリメチロールプロパントリベンゾエートが好適である。トリメチロールプロパントリベンゾエートとしては、ADEKA社製アデカサイザーPN−7000等として商業的に入手可能である。
ポリエーテル誘導体としては、下記式(1)で表される化合物を使用することができる。
式(1):
R−(X’−O)m−(Y’−O)n−R’
(式中、R及びR’は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアルカノイル基、炭素数2〜30のアルケノイル基又はグリシジル基を示し、X’は、炭素数2〜5の直鎖アルキレン基又は分岐アルキレン基を示し、Y’は、炭素数2〜5の直鎖アルキレン基又は分岐アルキレン基を示し、X’とY’は同一であっても異なっていても良く、m及びnは、各々独立して、3〜60を示し、m+nは6〜120を示す。)
式(1):
R−(X’−O)m−(Y’−O)n−R’
(式中、R及びR’は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアルカノイル基、炭素数2〜30のアルケノイル基又はグリシジル基を示し、X’は、炭素数2〜5の直鎖アルキレン基又は分岐アルキレン基を示し、Y’は、炭素数2〜5の直鎖アルキレン基又は分岐アルキレン基を示し、X’とY’は同一であっても異なっていても良く、m及びnは、各々独立して、3〜60を示し、m+nは6〜120を示す。)
ポリエーテル誘導体としては、X’及びY’が同一の場合は、ポリエチレングリコール、ポリトリメチレングリコール、ポリ(2−メチル)エチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ポリ(2−エチル)エチレングリコール、ポリ(2,2−ジメチル)エチレングリコール等が挙げられる。X及びYが異なる場合は、エチレングリコール単位と(2−メチル)エチレングリコール単位からなる共重合体、エチレングリコール単位とテトラメチレングリコール単位からなる共重合体、(2−メチル)エチレングリコール単位とテトラメチレングリコール単位からなる共重合体等が挙げられる。これらの中でも、ポリテトラメチレングリコール、エチレングリコール単位と(2−メチル)エチレングリコール単位からなる共重合体及び(2−メチル)エチレングリコール単位とテトラメチレングリコール単位からなる共重合体が好適である。ポリテトラメチレングリコールとしては、保土谷化学社製PTG−1000SN、PTG−2000SN等として商業的に入手可能である。エチレングリコール単位と(2−メチル)エチレングリコール単位からなる共重合体としては、日油社製ユニルーブ50DE−25、ユニルーブ75DE−25等として商業的に入手可能である。(2−メチル)エチレングリコール単位とテトラメチレングリコール単位からなる共重合体としては、日油社製ポリセリンDCB−1000、ポリセリンDCB−2000等として商業的に入手可能である。
溶融粘度調整剤(C)の量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部あたり0.1〜6重量部であり、好ましくは0.2〜5重量部、更に好ましくは0.5〜3重量部である。溶融粘度調整剤(C)の量が0.1〜6重量部の場合、芳香族ポリカーボネート樹脂のせん断粘度を低下させることにより、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)と表面硬度向上剤(B)との相分離が必要以上に発生するのを抑制することができるため、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の透明性に優れる。
本発明の実施形態の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、さらに、リン系酸化防止剤(D)を含むことができる。
本発明の実施形態の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、リン系酸化防止剤(D)が、下記式(2)で表される亜リン酸エステル化合物、下記式(3)で表される亜リン酸エステル化合物、下記式(4)で表される亜リン酸エステル化合物及び下記式(5)で表される亜リン酸エステル化合物から選択される少なくとも1種の化合物を含むことが好ましい。
リン系酸化防止剤(D)は、例えば、下記式(2)で表される化合物を含むことが好ましい。
式(2)において、R1は、炭素数1〜20のアルキル基であるが、さらには、炭素数1〜10のアルキル基であることが好ましい。
式(2)で表される化合物としては、例えば、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト等が挙げられる。これらの中でも、特にトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイトが好適であり、例えば、BASF社製イルガフォス168として商業的に入手可能である。
リン系酸化防止剤(D)は、例えば、下記式(3)で表される化合物を含むことが好ましい。
式(3):
(式中、R2、R3、R5及びR6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を示す。R4は、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。Xは、単結合、硫黄原子又は式:−CHR7−(ここで、R7は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を示す)で表される基を示す。Aは、炭素数1〜8のアルキレン基又は式:*−COR8−(ここで、R8は、単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を示し、*は、酸素側の結合手であることを示す)で表される基を示す。Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を示し、もう一方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。)
式(3)において、R2、R3、R5及びR6は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基、炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基、炭素数7〜12のアラルキル基又はフェニル基を示す。
ここで、炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基、i−オクチル基、t−オクチル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。炭素数5〜8のシクロアルキル基としては、例えば、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等が挙げられる。炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基としては、例えば、1−メチルシクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−メチル−4−i−プロピルシクロヘキシル基等が挙げられる。炭素数7〜12のアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、α−メチルベンジル基、α,α−ジメチルベンジル基等が挙げられる。
R2、R3及びR5は、それぞれ独立して、炭素数1〜8のアルキル基、炭素数5〜8のシクロアルキル基又は炭素数6〜12のアルキルシクロアルキル基であることが好ましい。特に、R2及びR5は、それぞれ独立して、t−ブチル基、t−ペンチル基、t−オクチル基等のt−アルキル基、シクロヘキシル基又は1−メチルシクロヘキシル基であることが好ましい。特に、R3は、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基等の炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、メチル基、t−ブチル基又はt−ペンチル基であることがさらに好ましい。
R6は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基であることが好ましく、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、t−ペンチル基等の炭素数1〜5のアルキル基であることがさらに好ましい。
式(3)において、R4は、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、R2、R3、R5及びR6の説明にて例示したアルキル基が挙げられる。特に、R4は、水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがさらに好ましい。
式(3)において、Xは、単結合、硫黄原子又は式:−CHR7−で表される基を示す。ここで、式:−CHR7−中のR7は、水素原子、炭素数1〜8のアルキル基又は炭素数5〜8のシクロアルキル基を示す。炭素数1〜8のアルキル基及び炭素数5〜8のシクロアルキル基としては、例えば、それぞれR2、R3、R5及びR6の説明にて例示したアルキル基及びシクロアルキル基が挙げられる。特に、Xは、単結合、メチレン基、又はメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基等で置換されたメチレン基であることが好ましく、単結合であることがさらに好ましい。
式(3)において、Aは、炭素数1〜8のアルキレン基又は式:*−COR8−で表される基を示す。炭素数1〜8のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン基等が挙げられ、好ましくはプロピレン基である。また、式:*−COR8−におけるR8は、単結合又は炭素数1〜8のアルキレン基を示す。R8を示す炭素数1〜8のアルキレン基としては、例えば、前記Aの説明にて例示したアルキレン基が挙げられる。R8は、単結合又はエチレン基であることが好ましい。また、式:*−COR8−における*は、酸素側の結合手であり、カルボニル基がフォスファイト基の酸素原子と結合していることを示す。
式(3)において、Y及びZは、いずれか一方がヒドロキシル基、炭素数1〜8のアルコキシ基又は炭素数7〜12のアラルキルオキシ基を示し、もう一方が水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。炭素数1〜8のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、t−ブトキシ基、ペンチルオキシ基等が挙げられる。炭素数7〜12のアラルキルオキシ基としては、例えば、ベンジルオキシ基、α−メチルベンジルオキシ基、α,α−ジメチルベンジルオキシ基等が挙げられる。炭素数1〜8のアルキル基としては、例えば、R2、R3、R5及びR6の説明にて例示したアルキル基が挙げられる。
式(3)で表される化合物としては、例えば、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−〔3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−2,4,8,10−テトラ−t−ブチルジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロポキシ]−4,8−ジ−t−ブチル−2,10−ジメチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン、6−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]−4,8−ジ−t−ブチル−2,10−ジメチル−12H−ジベンゾ[d,g][1,3,2]ジオキサホスホシン等が挙げられる。2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−〔3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピンとしては、住友化学社製スミライザーGPとして商業的に入手可能である。
リン系酸化防止剤(D)は、例えば、下記式(4)で表される化合物を含むことが好ましい。
式(4)で表される化合物としては、例えば、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト、フェニルビスフェノールAペンタエリスリトールジフォスファイト等が挙げられる。ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイトとしては、ADEKA社製のアデカスタブPEP−36が商業的に入手可能である。
リン系酸化防止剤(D)は、例えば、下記式(5)で表される化合物を含むことが好ましい。
(式中、R11〜R18は、それぞれ独立に、炭素数1〜3のアルキル基又はアルケニル基を示す。R11とR12、R13とR14、R15とR16、R17とR18とは、互いに結合して環を形成していても良い。R19〜R22は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜20のアルキル基を示す。d〜gは、それぞれ独立して、0〜5の整数である。X1〜X4は、それぞれ独立に、単結合又は炭素原子を示す。X1〜X4が単結合である場合、R11〜R22のうち、当該単結合に繋がった官能基は一般式(5)から除外される)
式(5)で表される化合物の具体例としては、例えばビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイトが挙げられる。これは、Dover Chemical社製Doverphos S−9228、ADEKA社製アデカスタブPEP−45として商業的に入手可能である。
本発明の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、リン系酸化防止剤(D)として以下のいずれかを含むことが好ましい。
式(2)で表される亜リン酸エステル化合物である、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト
式(3)で表される亜リン酸エステル化合物である、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン
式(4)で表される亜リン酸エステル化合物である、3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン
式(5)で表される亜リン酸エステル化合物である、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト
式(2)で表される亜リン酸エステル化合物である、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト
式(3)で表される亜リン酸エステル化合物である、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−[3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ]ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサホスフェピン
式(4)で表される亜リン酸エステル化合物である、3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン
式(5)で表される亜リン酸エステル化合物である、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト
リン系酸化防止剤(D)の量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、0.01〜0.5重量部であり、0.03〜0.2重量部が好ましい。リン系酸化防止剤(D)の量が0.01〜0.5重量部の場合、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の熱安定性を向上させることができるため、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の色相に優れる。
本発明の実施形態の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、さらに、紫外線吸収剤(E)を含むことができる。
紫外線吸収剤(E)は、本発明が目的とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を得られる限り特に制限されることはないが、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、シュウ酸アニリド系化合物、シアノアクリレート系化合物、サリシレート系化合物及びベンゾフェノン系化合物から選択される1種もしくは2種以上の紫外線吸収剤(E)を含むことが好ましい。
ベンゾトリアゾール系化合物としては、例えば、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)−5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール、2−(3,5−ジ−t−ペンチル−2−ヒドロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノール、2−(2−ヒドロキシ−4−オクチルオキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3,5−ジ(1,1−ジメチルベンジル)フェニル]−2H−ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス[6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール]などが挙げられる。これらの中でも、2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール等が好適である。2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾールとしては、BASF社製のTINUVIN 329、シプロ化成社製シーソーブ709等として商業的に入手可能である。2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノールとしては、BASF社製のTINUVIN 234等として商業的に入手可能である。
トリアジン系化合物としては、例えば、2,4−ジフェニル−6−(2−ヒドロキシフェニル−4−ヘキシルオキシフェニル)1,3,5−トリアジン、2−[4,6−ビス(2,4−ジメチルフェニル)−1,3,5−トリアジン−2−イル]−5−(オクチルオキシ)フェノール、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]フェノール等が挙げられる。この中でも、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]フェノールが好適である。2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]フェノールとしては、BASF社製のTINUVIN 1577等として商業的に入手可能である。
シュウ酸アニリド系化合物としては、例えば、クラリアントジャパン社製Sanduvor VSU等として商業的に入手可能である。
シアノアクリレート系化合物としては、例えば、BASF社製Uvinul3030等として商業的に入手可能である。
サリシレート系化合物としては、例えば、シプロ化成社製シーソーブ201、ケミソーブ21等として商業的に入手可能である。
ベンゾフェノン系化合物としては、例えば、シプロ化成社製シーソーブ102、ケミソーブ11、BASF社製Uvinul3049等として商業的に入手可能である。
紫外線吸収剤(E)の量は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、0.05〜3重量部であり、0.1〜1重量部が好ましい。紫外線吸収剤(E)の量が0.05〜3重量部の場合、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の耐光性を向上させることができるため、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を屋外で使用した際の色相安定性に優れる。
さらに、実施の形態に係る芳香族ポリカーボネート樹脂組成物には、本発明における効果を損なわない範囲で、例えば、熱安定剤、他の酸化防止剤、着色剤、離型剤、軟化剤、帯電防止剤、衝撃性改良剤等の各種添加剤、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)及び表面硬度向上剤以外のポリマー等が適宜配合されていてもよい。
本発明の実施形態の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、表面硬度向上剤(B)及び溶融粘度調整剤(C)を混合し、必要に応じて、リン系酸化防止剤(D)、紫外線吸収剤(E)、各種添加剤、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)及び表面硬度向上剤(B)以外のポリマー等を混合することにより製造することができる。本発明が目的とする芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を得ることができる限り、その製造方法は特に制限されることはなく、各成分の種類及び量を適宜調整することができる。成分の混合方法も特に制限されることはなく、例えば、タンブラー、及びリボンブレンダー等の公知の混合機にて混合する方法や、押出機にて溶融混練する方法を例示できる。これらの方法により、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを容易に得ることができる。
芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のペレットの形状及び大きさには特に限定がなく、一般的な樹脂ペレットが有する形状及び大きさであればよい。例えば、ペレットの形状としては、楕円柱状、円柱状等が挙げられる。ペレットの大きさとしては、長さが2〜8mm程度であることが好適であり、楕円柱状の場合、断面楕円の長径が2〜8mm程度、短径が1〜4mm程度であることが好適であり、円柱状の場合、断面円の直径が1〜6mm程度であることが好適である。なお、得られたペレット1つずつがこのような大きさであってもよく、ペレット集合体を形成する全てのペレットがこのような大きさであってもよく、ペレット集合体の平均値がこのような大きさであってもよく、特に限定はない。
本発明の実施形態の成形品は、上記の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形して得ることができる。
本発明が目的とする表面硬度のみならず透明性にも優れた成形品を得ることができる限り、成形品の製造方法は特に限定されることはなく、例えば、公知の射出成形法、圧縮成形法等により芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を成形する方法が挙げられる。
本発明に係る成形品は、例えば、表示ディスプレーカバー、電子機器保護カバー、照明カバー、自動車ヘッドランプカバー、自動車向けの窓部材又は建材向けの窓部材等として好適である。
以上のように、本発明の例示として、実施の形態を説明した。しかしながら、本発明における技術は、これに限定されず、適宜、変更、置き換え、付加、省略などを行った実施の形態にも適用可能である。
以下に、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、特にことわりがない限り、「部」及び「%」はそれぞれ重量基準である。
使用した原料の詳細は以下のとおりである。
1.芳香族ポリカーボネート樹脂(A):
1−1.ビスフェノールAとホスゲンから合成されたポリカーボネート樹脂
(住化ポリカーボネート社製 SDポリカ200−3、粘度平均分子量
28500、以下「A1」と略記)
1−2.ビスフェノールAとホスゲンから合成されたポリカーボネート樹脂
(住化ポリカーボネート社製 SDポリカ200−30、粘度平均分子量
17500、以下「A2」と略記)
1.芳香族ポリカーボネート樹脂(A):
1−1.ビスフェノールAとホスゲンから合成されたポリカーボネート樹脂
(住化ポリカーボネート社製 SDポリカ200−3、粘度平均分子量
28500、以下「A1」と略記)
1−2.ビスフェノールAとホスゲンから合成されたポリカーボネート樹脂
(住化ポリカーボネート社製 SDポリカ200−30、粘度平均分子量
17500、以下「A2」と略記)
2.表面硬度向上剤(B):
2−1.芳香族(メタ)アクリレート単位及びメチルメタクリレート単位の共重合体
(三菱ケミカル製 メタブレンH−880、重量平均分子量10000、
以下「B1」と略記)
2−1.芳香族(メタ)アクリレート単位及びメチルメタクリレート単位の共重合体
(三菱ケミカル製 メタブレンH−880、重量平均分子量10000、
以下「B1」と略記)
3.溶融粘度調整剤(C):
3−1.熱可塑性エラストマー
3−1−1.ポリエステル系熱可塑性エラストマー
(東洋紡社製 ペルプレン P−150M、以下「C1」と略記)
3−1.熱可塑性エラストマー
3−1−1.ポリエステル系熱可塑性エラストマー
(東洋紡社製 ペルプレン P−150M、以下「C1」と略記)
3−2.粘着付与樹脂
3−2−1.ロジン系樹脂
(荒川化学社製 パインクリスタル KR120、以下「C2」と略記)
3−2−2.テルペン系樹脂
(ヤスハラケミカル社製 YSレジン PX1250、以下「C3」と略記)
3−2−1.ロジン系樹脂
(荒川化学社製 パインクリスタル KR120、以下「C2」と略記)
3−2−2.テルペン系樹脂
(ヤスハラケミカル社製 YSレジン PX1250、以下「C3」と略記)
3−3.芳香族リン酸エステル系化合物
3−3−1.1,3−フェニレン ビス(ジキシレニルホスフェート)
(大八化学工業製 PX−200、以下「C4」と略記)
3−3−2.4,4‘−ビス(ジフェニルホスホリル)−1,1’−ビフェニル
(ADEKA社製 アデカスタブ FP−900L、以下「C5」と略記)
3−3−1.1,3−フェニレン ビス(ジキシレニルホスフェート)
(大八化学工業製 PX−200、以下「C4」と略記)
3−3−2.4,4‘−ビス(ジフェニルホスホリル)−1,1’−ビフェニル
(ADEKA社製 アデカスタブ FP−900L、以下「C5」と略記)
3−4.エポキシ化合物
3−4−1.エポキシ化大豆油
(日油社製 ニューサイザー 510R、以下「C6」と略記)
3−4−2.エポキシ基含有アクリル・スチレン系ポリマー
(日油社製 マープルーフ G0105SA、以下「C7」と略記)
3−4−1.エポキシ化大豆油
(日油社製 ニューサイザー 510R、以下「C6」と略記)
3−4−2.エポキシ基含有アクリル・スチレン系ポリマー
(日油社製 マープルーフ G0105SA、以下「C7」と略記)
3−5.シリコーン化合物
3−5−1.メチル基及びフェニル基を含有するシリコーン化合物
(ダウ・東レ社製 DOWSIL 3074 Intermediate、
以下「C8」と略記)
3−5−1.メチル基及びフェニル基を含有するシリコーン化合物
(ダウ・東レ社製 DOWSIL 3074 Intermediate、
以下「C8」と略記)
3−6.脂肪酸アミド系化合物
3−6−1.エチレンビスステアリン酸アミド
(日油社製 アルフロー H−50TF、以下「C9」と略記)
3−6−1.エチレンビスステアリン酸アミド
(日油社製 アルフロー H−50TF、以下「C9」と略記)
3−7.脂肪酸エステル系化合物
3−7−1.ステアリルステアレート
(日油社製 ユニスター M−9676、以下「C10」と略記)
3−7−2.ベヘニルベヘネート
(日油社製 ユニスター M−2222SL、以下「C11」と略記)
3−7−3.エチレングリコールジステアレート
(日油社製 ユニスター E−275、以下「C12」と略記)
3−7−4.ペンタエリスリトールテトラステアレート
(日油社製 ユニスター H−476、以下「C13」と略記)
3−7−1.ステアリルステアレート
(日油社製 ユニスター M−9676、以下「C10」と略記)
3−7−2.ベヘニルベヘネート
(日油社製 ユニスター M−2222SL、以下「C11」と略記)
3−7−3.エチレングリコールジステアレート
(日油社製 ユニスター E−275、以下「C12」と略記)
3−7−4.ペンタエリスリトールテトラステアレート
(日油社製 ユニスター H−476、以下「C13」と略記)
3−8.安息香酸エステル系化合物
3−8−1.トリメチロールプロパントリベンゾエート
(ADEKA社製 アデカサイザー PN−7000、以下「C14」と略記)
3−8−1.トリメチロールプロパントリベンゾエート
(ADEKA社製 アデカサイザー PN−7000、以下「C14」と略記)
3−9.ポリエーテル誘導体
3−9−1.ポリテトラメチレングリコール
(保土谷化学社製 PTG−1000SN、以下「C15」と略記)
3−9−1.ポリテトラメチレングリコール
(保土谷化学社製 PTG−1000SN、以下「C15」と略記)
4−2.以下の式で表される、2,4,8,10−テトラ−t−ブチル−6−〔3−(3−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)プロポキシ〕ジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン
(住友化学製 スミライザーGP、以下「D2」と略記)
4−3.以下の式で表される、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト(IUPAC名:3,9−ビス[2,4−ビス(α,α−ジメチルベンジル)フェノキシ]−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン)
(Dover Chemical社製 Doverphos S−9228、
以下「D3」と略記)
以下「D3」と略記)
4−4.以下の式で表される、ビス(2,4−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジフォスファイト(IUPAC名:3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5,5]ウンデカン)
(ADEKA製 アデカスタブPEP−36、以下「D4」と略記)
5.紫外線吸収剤(E):
5−1.2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール
(BASF社製 TINUVIN 329、以下「E1」と略記)
5−2.2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]フェノール
(BASF社製 TINUVIN 1577、以下「E2」と略記)
5−3.ペンタエリスリトールテトラキス(3,3−ジフェニル−2−シアノアクリレート)
(BASF社製 Uvinul 3030、以下「E3」と略記)
5−4.2−エチル2’−エトキシ−オキサルアニリド
(クラリアントジャパン社製 Sanduvor VSU、以下「E4」と略記)
5−1.2−(2−ヒドロキシ−5−t−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール
(BASF社製 TINUVIN 329、以下「E1」と略記)
5−2.2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(ヘキシル)オキシ]フェノール
(BASF社製 TINUVIN 1577、以下「E2」と略記)
5−3.ペンタエリスリトールテトラキス(3,3−ジフェニル−2−シアノアクリレート)
(BASF社製 Uvinul 3030、以下「E3」と略記)
5−4.2−エチル2’−エトキシ−オキサルアニリド
(クラリアントジャパン社製 Sanduvor VSU、以下「E4」と略記)
(実施例1〜27及び比較例1〜3)
前記各原料を、表1〜表3に示す割合にて一括してタンブラーに投入し、10分間乾式混合した後、二軸押出機(東芝機械社製 TEM−37SS)を用いて、溶融温度260℃にて溶融混練し、実施例1〜27及び比較例1〜3の各々の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。溶融粘度の測定用ペレットとして、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)及び表面硬度向上剤(B)、及び、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)及び溶融粘度調整剤(C)も、表1〜表3に示す割合にて一括してタンブラーに投入し、10分間乾式混合した後、二軸押出機(東芝機械社製 TEM−37SS)を用いて、溶融温度260℃にて溶融混練し、ペレットを得た。
前記各原料を、表1〜表3に示す割合にて一括してタンブラーに投入し、10分間乾式混合した後、二軸押出機(東芝機械社製 TEM−37SS)を用いて、溶融温度260℃にて溶融混練し、実施例1〜27及び比較例1〜3の各々の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物のペレットを得た。溶融粘度の測定用ペレットとして、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)及び表面硬度向上剤(B)、及び、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)及び溶融粘度調整剤(C)も、表1〜表3に示す割合にて一括してタンブラーに投入し、10分間乾式混合した後、二軸押出機(東芝機械社製 TEM−37SS)を用いて、溶融温度260℃にて溶融混練し、ペレットを得た。
得られたペレットを用い、以下の方法にしたがって、各評価用試験片を作製して評価に供した。その結果を表1〜表3に示す。
(溶融粘度の測定方法)
得られたペレット及び芳香族ポリカーボネート樹脂(A)のペレットを100℃で6時間以上乾燥した後、キャピラリレオメータ(島津製作所社製、フローテスタCFT−500)を用い、測定温度290℃、せん断速度100sec−1〜3000sec−1の範囲で溶融粘度を測定した。せん断速度1000sec−1における芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の溶融粘度をη1、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)及び表面硬度向上剤(B)の溶融粘度をη2、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)及び溶融粘度調整剤(C)の溶融粘度をη3、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の溶融粘度をη4、とした。
得られたペレット及び芳香族ポリカーボネート樹脂(A)のペレットを100℃で6時間以上乾燥した後、キャピラリレオメータ(島津製作所社製、フローテスタCFT−500)を用い、測定温度290℃、せん断速度100sec−1〜3000sec−1の範囲で溶融粘度を測定した。せん断速度1000sec−1における芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の溶融粘度をη1、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)及び表面硬度向上剤(B)の溶融粘度をη2、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)及び溶融粘度調整剤(C)の溶融粘度をη3、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物の溶融粘度をη4、とした。
(試験片の作製)
得られたペレットを100℃で6時間以上乾燥した後、射出成形機(ファナック社製、ROBOSHOT S2000i100B)を用い、シリンダ温度290℃、金型温度60℃、射出圧力100MPa以上で、72mm×72mm×厚さ2mmの成形体を、幅5mmのサイドゲートで作製した。
得られたペレットを100℃で6時間以上乾燥した後、射出成形機(ファナック社製、ROBOSHOT S2000i100B)を用い、シリンダ温度290℃、金型温度60℃、射出圧力100MPa以上で、72mm×72mm×厚さ2mmの成形体を、幅5mmのサイドゲートで作製した。
(平行光線透過率の測定)
得られた試験片のゲートからの距離40mm〜50mmの範囲が含まれるようにJIS K7136に準拠して全光線透過率及び拡散透過率を測定し、全光線透過率から拡散透過率を引くことで、平行光線透過率を算出した。全光線透過率及び拡散透過率の測定には、ヘーズメーター(村上色彩技術研究所社製、HM150)を用いた。平行光線透過率が55%以上であれば、良好である。
得られた試験片のゲートからの距離40mm〜50mmの範囲が含まれるようにJIS K7136に準拠して全光線透過率及び拡散透過率を測定し、全光線透過率から拡散透過率を引くことで、平行光線透過率を算出した。全光線透過率及び拡散透過率の測定には、ヘーズメーター(村上色彩技術研究所社製、HM150)を用いた。平行光線透過率が55%以上であれば、良好である。
(透明性の評価)
得られたペレットを100℃で6時間以上乾燥した後、射出成形機(ファナック社製、ROBOSHOT S2000i100B)を用い、シリンダ温度280℃、金型温度80℃、透明性評価用試験片(50×90×3、2、1mm(3厚み)の3段プレート)を作製した。得られた試験片に発生した白筋を目視で確認した。以下の基準により、透明性を評価した。
◎:白筋の発生がほとんど無く、透明性に優れる。
○:白筋の発生が若干あるものの、使用可能である
×:白筋が多く発生し、使用不可である。
得られたペレットを100℃で6時間以上乾燥した後、射出成形機(ファナック社製、ROBOSHOT S2000i100B)を用い、シリンダ温度280℃、金型温度80℃、透明性評価用試験片(50×90×3、2、1mm(3厚み)の3段プレート)を作製した。得られた試験片に発生した白筋を目視で確認した。以下の基準により、透明性を評価した。
◎:白筋の発生がほとんど無く、透明性に優れる。
○:白筋の発生が若干あるものの、使用可能である
×:白筋が多く発生し、使用不可である。
(表面硬度の評価)
前記、透明性を評価した試験片の2mm厚みの部分を用いて、JISK5600−5−4に従い鉛筆硬度測定機(東洋精機社製、鉛筆引掻塗膜硬さ試験機)にて、試験片表面に擦り傷が観察されない鉛筆硬度を求めた。鉛筆硬度が、HB以上を良好とした。
前記、透明性を評価した試験片の2mm厚みの部分を用いて、JISK5600−5−4に従い鉛筆硬度測定機(東洋精機社製、鉛筆引掻塗膜硬さ試験機)にて、試験片表面に擦り傷が観察されない鉛筆硬度を求めた。鉛筆硬度が、HB以上を良好とした。
表1〜表3に、各実施例及び比較例の原料及び配合割合、評価結果を併せて示す。
表1〜3より、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)に表面硬度向上剤(B)及び溶融粘度調整剤(C)を所定の配合割合で配合してなる、実施例1〜27に係る芳香族ポリカーボネート樹脂組成物は、表面硬度のみならず透明性にも優れていた。
これに対して、比較例1のポリカーボネート樹脂組成物は、溶融粘度調整剤(C)の量が多いので分解した。
比較例2のポリカーボネート樹脂組成物は、溶融粘度調整剤(C)の量が少ないので、透明性に劣っていた。
比較例3のポリカーボネート樹脂組成物は、溶融粘度調整剤(C)の量が多いので白濁し、透明性に劣っていた。
本発明のポリカーボネート樹脂組成物から得られた成形品は、高い表面硬度を有し、かつ透明性にも優れている。そのため、成形品表面の傷付きが敬遠され、かつ透明感を要望される用途、例えば表示ディスプレーカバー、電子機器保護カバー、照明カバー、自動車ヘッドランプカバー、自動車向けの窓部材又は建材向けの窓部材等の用途に好適に使用される。
Claims (22)
- 芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部あたり、表面硬度向上剤(B)25〜200重量部、溶融粘度調整剤(C)0.1〜6重量部を含む芳香族ポリカーボネート樹脂組成物であって、
測定温度290℃、せん断速度1000sec−1における溶融粘度をηとしたとき、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)及び溶融粘度調整剤(C)から成る樹脂組成物の溶融粘度η3と芳香族ポリカーボネート樹脂(A)の溶融粘度η1の比η3/η1が、0.02≦η3/η1≦0.95を満たすことを特徴とする、芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。 - 測定温度290℃、せん断速度1000sec−1における溶融粘度をηとしたとき、芳香族ポリカーボネート樹脂(A)、表面硬度向上剤(B)及び溶融粘度調整剤(C)から成る樹脂組成物の溶融粘度η4と芳香族ポリカーボネート樹脂(A)及び表面硬度向上剤(B)から成る樹脂組成物の溶融粘度η2の比η4/η2が、0.45≦η4/η2≦1.15を満たす、請求項1に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 表面硬度向上剤(B)が、芳香族(メタ)アクリレート単位5〜80重量%及びメチルメタクリレート単位20〜95重量%からなる共重合体であり、かつ当該共重合体の重量平均分子量が5000〜30000である、請求項1又は2に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 溶融粘度調整剤(C)が、熱可塑性エラストマー、粘着付与樹脂、芳香族リン酸エステル系化合物、エポキシ化合物、シリコーン化合物、脂肪酸アミド系化合物、脂肪酸エステル系化合物、安息香酸エステル系化合物及びポリエーテル誘導体からなる群から選択された1種以上である、請求項1〜3のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 熱可塑性エラストマーが、ポリエステル系熱可塑性エラストマー及びポリウレタン系熱可塑性エラストマーから選択された1種以上である、請求項4記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 粘着付与樹脂が、ロジン系樹脂、テルペン系樹脂及びスチレン系樹脂から選択された1種以上である、請求項4記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 芳香族リン酸エステル系化合物が、1,3−フェニレン ビス(ジキシレニルホスフェート)及び4,4‘−ビス(ジフェニルホスホリル)−1,1’−ビフェニルから選択された1種以上である、請求項4記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- エポキシ化合物が、エポキシ化大豆油及びエポキシ基含有アクリル・スチレン系ポリマーから選択された1種以上である、請求項4記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- シリコーン化合物が、メチル基及びフェニル基を含有するシリコーン化合物である、請求項4記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 脂肪酸アミド系化合物が、エチレンビスステアリン酸アミド及びエチレンジアミン・ステアリン酸・セバシン酸重縮合物から選択された1種以上である、請求項4記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 脂肪酸エステル系化合物が、グリセリンモノステアレート、ステアリルステアレート、ベヘニルベヘネート、エチレングリコールジステアレート、ペンタエリスリトールテトラステアレート及びミツロウから選択された1種以上である、請求項4記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 安息香酸エステル系化合物が、トリメチロールプロパントリベンゾエートである、請求項4記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- ポリエーテル誘導体が、下記式(1)で表される、請求項4記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
式(1):
R−(X’−O)m−(Y’−O)n−R’
(式中、R及びR’は、それぞれ独立して水素原子、炭素数1〜30のアルキル基、炭素数1〜30のアルカノイル基、炭素数2〜30のアルケノイル基又はグリシジル基を示し、X'は、炭素数2〜5の直鎖アルキレン基又は分岐アルキレン基を示し、Y’は、炭素数2〜5の直鎖アルキレン基又は分岐アルキレン基を示し、X’とY’は同一であっても異なっていても良く、m及びnは、各々独立して、3〜60を示し、m+nは6〜120を示す。) - ポリエーテル誘導体が、ポリテトラメチレングリコール、エチレングリコール単位と(2−メチル)エチレングリコール単位からなる共重合体及び(2−メチル)エチレングリコール単位とテトラメチレングリコール単位からなる共重合体から選択された1種以上である、請求項13記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、更にリン系酸化防止剤(D)を0.01〜0.5重量部含有する、請求項1〜14のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 前記リン系酸化防止剤(D)が、下記式(2)、(3)、(4)及び(5)で表される亜リン酸エステル化合物から選択される少なくとも1種以上の化合物を含む、請求項16に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
式(2):
式(3):
式(4):
式(5):
- 芳香族ポリカーボネート樹脂(A)100重量部に対して、更に紫外線吸収剤(E)を0.05〜3重量部含有する、請求項1〜17のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 紫外線吸収剤(E)が、ベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物、シュウ酸アニリド系化合物、シアノアクリレート系化合物、サリシレート系化合物及びベンゾフェノン系化合物から選択される1種もしくは2種以上の紫外線吸収剤である、請求項18に記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
- 下記方法で測定される平行光線透過率が55%以上である、請求項1〜19のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物。
方法:芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を用いて、射出成形法により、シリンダ温度290℃、金型温度60℃、射出圧力100MPa以上で、72mm×72mm×厚さ2mmの成形体を、幅5mmのサイドゲートで作製する。ゲートからの距離40mm〜50mmの範囲が含まれるようにJIS K7136に準拠して全光線透過率及び拡散透過率を測定し、全光線透過率から拡散透過率を引くことで、平行光線透過率を算出する。 - 請求項1〜20のいずれかに記載の芳香族ポリカーボネート樹脂組成物を含む、成形品。
- 成形品が、表示ディスプレーカバー、電子機器保護カバー、照明カバー、自動車ヘッドランプカバー、自動車向けの窓部材又は建材向けの窓部材である、請求項21記載の成形品。
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