JP6278474B2 - 骨疾患の予防又は治療用組成物 - Google Patents

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Description

本発明は、骨疾患の予防又は治療用組成物に関する。より詳細には、ルテインを有効成分として含有する骨疾患の予防又は治療用組成物に関する。
高齢化社会を迎えた日本の骨粗鬆症患者数は1000万人を超え、更年期女性の3人に1人、また高齢者の大部分が骨粗鬆症に罹患しているといわれており、骨粗鬆症患者数の増大は社会的・経済的に深刻な問題となっている。骨粗鬆症では、古い骨が新しい骨に置き換わる骨リモデリングの過程において、骨吸収量が骨形成量を上回る結果、骨量が減少する。すなわち、古くなった骨を破壊し骨のカルシウムを溶解する破骨細胞と、破壊された骨を修復して再生する骨芽細胞の2種類において、両者のバランスが崩れ、破骨細胞による骨の溶解(骨吸収)が骨芽細胞による骨の再生を上回ることにより、骨密度が減少するのである。そして、四肢を中心とした全身の骨塩量の減少に加えて、骨内部構造に変化をきたし、また骨の微細構造も崩壊するため、骨が脆弱化し、骨折により寝たきり状態となる高齢患者も多い。
同様にして歯を支える骨が破壊される疾患として歯周病が挙げられる。歯周病は歯槽骨と呼ばれる歯を支える骨が歯垢による細菌感染により吸収する疾患で、日本での患者数は2000万人を超える。歯を失う事により、食事と栄養補給を障害する主因となっている。さらに、骨粗鬆症が歯周病による骨の破壊を悪化させる因子ともなる。従って、全身を支えるための骨及び栄養補給を確保するための口腔の健康は生活の質の維持・向上に必須である。
上記のとおり、骨形成を上回る骨吸収の亢進は骨疾患の原因である。近年の研究により、骨吸収は、(1)インターロイキン刺激などによる骨芽細胞上での破骨細胞分化誘導因子(RANKL:receptor activator of NF−κB ligand)の発現促進、(2)RANKLを認識した破骨細胞前駆細胞(単球・マクロファージ系細胞)の成熟破骨細胞への分化(RANKL−RANKシグナル系)、及び(3)破骨細胞による骨の破壊という、大きく3つのプロセスを経ることが分かっている。
他方、骨形成を負に調節するスクレロスチン(sclerostin)及び骨形成促進タンパク(BMP:Bone Morphogenetic Protein)が、骨疾患のもう一方の原因となり得る骨形成能の低下に関与していることが報告されている。すなわち、骨軟化症の原因遺伝子であるSOSTはスクレロスチンをコードしており、スクレロスチンは骨形成促進タンパクの働きを阻害することが知られている(非特許文献1)。
従来、骨粗鬆症の治療は骨吸収の抑制あるいは骨形成を補助する薬剤が主流であった。現在最も普及している治療方法は、ビスホスホネート製剤、ホルモン剤(エストロゲン)、カルシウム製剤、ビタミンDやその誘導体等を服用し、全身性に骨代謝の改善を試みるものである(例えば、特許文献1)。しかし、これら薬剤の投薬においては、副作用を考慮して薬剤の投与量が制限されるため、短期間で顕著な効果を得ることができないという問題がある。とりわけ、これらの薬剤は、骨粗鬆症によって細くなった骨梁がそれ以上吸収されないよう維持したり、細くなった骨梁をやや回復させる程度の効果は望めても、いったん吸収されて失われた骨梁を新たに骨形成させる効果は望めないと考えられているため、骨粗鬆症の予防医療の推進には課題が多い。
一方、近年、歯周病の予防・治療に柑橘類に含まれるポリメトキシフラボノイド類やβ−クリプトキサンチンが有効であることが見出されている(特許文献2及び3)。しかしながら、これらの化合物が実質的な骨形成増強作用を有し、骨密度だけでなく皮質骨の割合をも増加させ得ることについては、本発明者の知る限り、報告はない。特に、ポリメトキシフラボノイド類やβ−クリプトキサンチンが、スクレロスチン及びBMPの発現へ何らかの影響を及ぼしていると報告された事実を、本発明者らは知らない。また、歯周病の治療に関しても、当該疾患は依然として歯科医院での治療が一般的であり、治療後は持続的なオーラルケアが必須となる等、その根本的な治療薬の開発に至っていないのが現状である。
従って、これら骨疾患に関しては生活習慣の改善など、その予防の重要性が認知されるとともに、より効果的で安全性の高い有効成分によって骨疾患を予防又は治療する試みが求められている。
日本国特許出願公開第2010−106042号 日本国特許第4662043号 日本国特許第5099617号 化学と生物、Vol.46、No.11、pp.786−790(2008)
以上のような背景の下に、本発明は、優れた予防又は治療効果を有する安全性の高い骨疾患予防又は治療用組成物を提供することを課題とするものである。
本発明者らは、ホウレン草等の農作物に豊富に含まれるカロテノイドであって、従来は主として眼病の予防や治療効果について研究がなされてきたルテインが、破骨細胞の分化・生存を抑制して骨吸収を抑制する作用を有し、骨粗鬆症や歯周病などの骨疾患の予防又は治療に有用であることを見出した。さらに、本発明者らは、ルテインが実質的で有意な骨形成増強作用を有しており、皮質骨の割合を増加させて骨強度を向上させ得ることを見出した。ルテインが、骨吸収の抑制と骨形成の促進という、骨疾患の治療において重要な2つの有用な薬理作用を同時に示したことは、驚嘆に値した。
すなわち、本発明は、一つの側面は、
(1)ルテイン及び医薬として許容される担体を含む、骨疾患の予防又は治療用組成物;
(2)前記骨疾患が、骨破壊を伴う疾患である、上記(1)に記載の組成物;及び
(3)前記骨疾患が、骨粗鬆症、歯周病、骨軟化症、関節リウマチによる骨破壊、又はがんの骨転移による骨破壊である、上記(1)に記載の組成物
に関する。
そして、本発明の好適な態様は、
(4)前記骨疾患が、患者の骨吸収を抑制することで予防又は治療される、上記(1)に記載の組成物;
(5)前記骨疾患が、患者における破骨細胞分化誘導因子(RANKL)の発現を抑制することで予防又は治療される、上記(1)に記載の組成物;
(6)前記骨疾患が、患者における破骨細胞の分化を抑制することで予防又は治療される、上記(1)に記載の組成物;及び
(7)前記骨疾患が、患者における成熟破骨細胞のアポトーシスを誘導することで予防又は治療される、上記(1)に記載の組成物
に関する。
さらに、本発明の別の好適な態様は、
(8)前記骨疾患が、患者の骨形成を増強することで予防又は治療される、上記(1)に記載の組成物;
(9)前記骨疾患が、患者におけるスクレロスチンの発現を減少することで予防又は治療される、上記(1)に記載の組成物;
(10)前記骨疾患が、患者における骨形成促進タンパク(BMP)の発現を増強することで予防又は治療される、上記(1)に記載の組成物;及び
(11)患者の皮質骨の割合を増加させるための、上記(1)に記載の組成物
に関する。
また、本発明の別の側面及び関連する態様は、
(12)骨疾患の予防又は治療用のための、ルテインの使用;
(13)前記骨疾患が、骨破壊を伴う疾患である、上記(12)に記載の使用;
(14)前記骨疾患が、骨粗鬆症、歯周病、骨軟化症、関節リウマチによる骨破壊、又はがんの骨転移による骨破壊である、上記(12)に記載の使用;
(15)前記骨疾患が、患者の骨吸収を抑制することで予防又は治療される、上記(12)に記載の使用;
(16)前記骨疾患が、患者における破骨細胞分化誘導因子(RANKL)の発現を抑制することで予防又は治療される、上記(12)に記載の使用;
(17)前記骨疾患が、患者における破骨細胞の分化を抑制することで予防又は治療される、上記(12)に記載の使用;
(18)前記骨疾患が、患者における成熟破骨細胞のアポトーシスを誘導することで予防又は治療される、上記(12)に記載の使用;
(19)前記骨疾患が、患者の骨形成を増強することで予防又は治療される、上記(12)に記載の使用;
(20)前記骨疾患が、患者におけるスクレロスチンの発現を減少することで予防又は治療される、上記(12)に記載の使用;
(21)前記骨疾患が、患者における骨形成促進タンパク(BMP)の発現を増強することで予防又は治療される、上記(12)に記載の使用;及び
(22)患者の皮質骨の割合を増加させるための、上記(12)に記載の使用に関する。
更なる、本発明の側面及び関連する態様は、
(23)骨疾患の治療方法であって、そのような処置が必要な患者に対して予防又は治療有効量のルテインを投与することを含む、前記方法;
(24)前記骨疾患が、骨破壊を伴う疾患である、上記(23)に記載の方法;
(25)前記骨疾患が、骨粗鬆症、歯周病、骨軟化症、関節リウマチによる骨破壊、又はがんの骨転移による骨破壊である、上記(23)に記載の方法;
(26)患者の骨吸収を抑制する方法であって、そのような処置が必要な患者に対して骨吸収抑制量のルテインを投与することを含む、前記方法;
(27)前記骨吸収の抑制が、患者における破骨細胞分化誘導因子(RANKL)の発現を抑制することを含む(26)に記載の方法;
(28)前記骨吸収の抑制が、患者における破骨細胞の分化を抑制することを含む、上記(26)に記載の方法;
(29)前記骨吸収の抑制が、患者における成熟破骨細胞のアポトーシスを誘導することを含む、上記(26)に記載の方法;
(30)患者の骨形成を増強する方法であって、そのような処置が必要な患者に対して骨形成増強量のルテインを投与することを含む、前記方法;
(31)前記骨形成の増強が、患者におけるスクレロスチンの発現を減少することを含む、上記(30)に記載の方法;
(32)前記骨形成の増強が、患者における骨形成促進タンパク(BMP)の発現を増強することを含む、上記(30)に記載の方法;及び
(33)患者の皮質骨の割合を増加させる方法であって、そのような処置が必要な患者に対して皮質骨割合増加量のルテインを投与することを含む、前記方法
に関する。
本発明によれば、破骨細胞の分化を抑制して骨吸収を抑制するという新規に見出されたルテインの作用によって、骨粗鬆症や歯周病などの骨破壊を特徴とする骨疾患に対する予防あるいは症状改善効果が得られる。特に、当該ルテインの作用は、破骨細胞分化誘導因子(RANKL)発現を制御して破骨細胞の分化を抑制するとともに、破骨細胞前駆細胞に作用して成熟破骨細胞への分化を抑制し、併せて成熟破骨細胞の生存を阻害するというメカニズムを有するため、より効果的に骨疾患を予防あるいは治療することが可能となる。
さらに、本発明によれば、骨芽細胞の分化と石灰化を促進して骨形成を増強するという新規に見出されたルテインの作用によって、骨粗鬆症や歯周病などの骨破壊を特徴とする骨疾患に対する予防あるいは症状改善効果が得られる。特に当該ルテインの作用は、骨細胞等でのスクレロスチンの発現・分泌を抑制して、スクレロスチンによる骨形成因子(例えばBMP等)の発現阻害作用を解除し、骨芽細胞の成熟と石灰化を促すというメカニズムを有するため、いっそう効果的に骨疾患を予防あるいは治療することが可能となる。
また、ルテインは、農作物に由来し、従来より食品として摂取されてきた安全性の高い天然成分であるため、副作用等のおそれも少ないという利点を有する。それゆえ、医薬としての用途のみならず、成長期の子どもの骨量を増やすこと等目的として、骨疾患の予防のための食品や食品材料、飲料、サプリメント製品の開発においても有用である。
図1は、破骨細胞形成抑制のルテイン依存性を示すグラフである。 図2は、骨吸収活性抑制のルテイン依存性を示すグラフである。 図3は、骨芽細胞におけるRANKL遺伝子発現抑制のルテイン依存性を示すグラフである。 図4は、破骨細胞前駆細胞の分化誘導抑制のルテイン依存性を示すグラフである。 図5は、ルテイン添加に伴う成熟破骨細胞の生存数を示すグラフである。 図6aは、β-カロテン存在下における破骨細胞形成を示すグラフである。 図6bは、β-カロテン存在下における骨芽細胞のRANKL遺伝子発現を示すグラフである。 図7は、歯槽骨におけるLPS誘導性骨吸収活性抑制のルテイン依存性を示すグラフである。 図8は、ルテインによる破骨細胞形成・分化抑制の作用機構を示す模式図である。 図9は、骨芽細胞の石灰化に及ぼすルテインの効果を示す。アリザリンレッド染色により培養細胞(培養14日目)へのカルシウム沈着(色調の濃い部分)が視覚化されている。 図10は、骨芽細胞の石灰化に及ぼすルテインの効果を示すグラフである。図10のデータは、図9でのアリザリンレッド陽性(石灰化)エリアを画像解析により定量して得た。 図11は、骨形成関連遺伝子発現に対するルテインの効果を示すグラフである。 図12は、雄性マウスにおけるルテインの大腿骨骨密度に対する作用を示すグラフである。解析は、DEXA(Dual Energy X-ray Absorptiometory)を用いて行われた。 図13は、雄性マウスにおけるルテインの大腿骨遠位部に対する効果を示すグラフ及び写真である。解析は、Micro−CTを用いて行われた。 図14は、雄性マウスにおけるルテインの大腿骨骨幹部に対する作用を示すグラフ及び写真である。ルテインにより皮質骨の割合が有意に増加していたことが示されている。解析は、Micro−CTを用いて行われた。 図15は、ルテインによる骨芽細胞の分化・石灰化の作用機構を示す模式図である。
以下、本発明の実施形態について説明する。本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施することができる。
本発明において有効成分として使用されるルテインは、キサントフィル類に分類されるカロテノイドであり、以下の構造式を有する。
Figure 0006278474
当該ルテインは、ホウレン草やブロッコリー等の緑黄色野菜、豆類、マリーゴールドの花弁、クロレラ、その他陸上植物の葉、花弁などから抽出することができる。ルテインを含む抽出物は、これらの植物を、そのまま或いは必要に応じて、乾燥、細切、破砕、粉砕、圧搾、煮沸或いは発酵処理したものを溶媒で抽出処理することにより取得することができる。
抽出処理において用いられる溶媒としては、例えば、極性有機溶媒、水と極性有機溶媒の混合液等の極性溶媒を挙げることができる。また、当該極性有溶媒としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール、アセトン、酢酸エチル、ヘキサン、ジクロロメタン、クロロホルム、エーテルなどの単独あるいは2 種以上の組み合わせを挙げることができる。上記極性溶媒の中で、人体への安全性と取扱性の観点から、好ましくはエタノール、プロパノール、アセトン、ヘキサン又はこれらの混合物が挙げられる。
他のルテインの製造方法に関して、日本国特許出願公開番号第2007−46015号は、超臨界又は亜臨界状態の二酸化炭素による植物からの抽出を記載しており、そのような方法は本発明においても利用できる。或いは、ルテインは和光純薬工業株式会社などからの市販品としても入手可能である。
後述の実施例に示すとおり、ルテインは骨吸収を抑制するという作用を示す。また、ルテインは、骨形成を直接的に促進するという作用を示す。したがって、ルテインを有効成分として含有する組成物は骨疾患の予防又は治療用として用いることができる。本発明において、骨疾患としては、骨代謝の不全、骨破壊の亢進、及び/又は骨形成能の低下等に関連して発症する疾患であればよく、骨粗鬆症、歯周病、がんの骨転移、慢性関節リウマチ、変形性関節症、骨軟化症、副甲状腺機能亢進症、ペジェット病等を挙げることができる。本発明における「予防又は治療」は、骨代謝の不全や骨破壊の亢進等に関連した症状の発生を抑制する又は進行を維持又は抑止できればよく、また、予防と治療とを明確に区別されなくてもよい。
本発明の骨疾患の予防又は治療用組成物は、液体、固体、粉末又はゲル状等のいずれの形態であってもよく、医薬として用いられる場合の形態としては、例えば、錠剤、丸剤、散剤、カプセル剤(軟カプセル剤、硬カプセル剤)、顆粒剤、トローチ剤、チュアブル剤、内服液剤や、注射剤(血管内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与など)、あるいは坐剤などが挙げられる。錠剤には、必要に応じて、通常の剤皮を施すこともでき、例えば、糖衣錠、フィルムコーティング錠等とすることができ、さらに二層錠、多層錠としてもよい。また、顆粒剤や散剤も通常の剤皮を施すことができる。
また、本発明の骨疾患の予防又は治療用組成物には、適用される形態に基づき使用可能な周知の医薬として許容される通常の担体、結合剤、安定化剤、賦形剤、希釈剤、pH緩衝剤、崩壊剤、可溶化剤、溶解補助剤、等張剤などの各種調剤用配合成分を含むことができる。担体としては、例えば、乳糖、白糖、ブドウ糖、澱粉、結晶セルロース等の賦形剤、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ゼラチン、トラガント、アラビアゴム、アルギン酸ナトリウム等の結合剤、例えば、澱粉、カルボキシメチルセルロース、炭酸カルシウム等の崩壊剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、タルク、ステアリン酸などの滑沢剤が使用できる。
本発明の骨疾患の予防又は治療用組成物は、経口的又は非経口的に投与することができ、例えば、上記のように粉末、顆粒、錠剤、カプセル剤、シロップ剤、懸濁液等の剤型で経口的に投与することができ、又は、例えば、練り歯磨、口腔内軟膏剤、含嗽剤溶液等の口腔内使用剤として投与することもでき、或いは、乳剤、懸濁液等の剤型にしたものを注射剤として非経口投与することができる。骨疾患が歯周病である場合には、口腔内使用剤が好ましい。
本発明の骨疾患予防又は治療用組成物は、対象となる患者の性別、年齢、体重、症状、又はその他の要因に応じて適切な投与量で投与することができる。好ましい成人1人当りの1日投与量は、有効成分量として、例えば、0.02〜200mg/体重Kg/日であり、好ましくは0.2〜20mg/体重Kg/日である。任意の投与計画に従って投与され得る前記骨疾患予防又は治療用組成物の投与期間は、年齢、症状に応じて任意に定めることができる。例えば、持続投与、1日に3回、1日に2回、1日1回、2日に1回、3日に1回、1週間に1回、又は任意の期間および間隔で投与され得る。骨吸収抑制量、骨形成増強量及び皮質骨割合増加量についても、上記の用量及び用法が適用できる。
本発明の骨疾患の予防又は治療用組成物は、従来用いられている他の骨粗鬆症治療用薬剤と併用することもできる。併用しうる薬剤としては、エストロゲン製剤、ビスホスホネート製剤、活性型ビタミンD3製剤、カルシウム製剤、カルシトニン製剤、メナテトレノン(ビタミンK2)、イプリフラボン、蛋白同化ホルモン、β−クリプトキサンチンなどを挙げることができる。
同様に、鎮痛・消炎・抗炎症薬と併用することもできる。かかる鎮痛・消炎・抗炎症薬としては、イブプロフェンピコノール、インドメタシン、ウフェナマート、ケトプロフェン、グリチルレチン酸、ジクロフェナクナトリウム、スプロフェン、ピロキシカム、フェルビナク、ブフェキサマク、フルルビプロフェン、ペンダザック、ジフェンヒドラミン、ラウリル硫酸ジフェンヒドラミン、アムシノニド、吉草酸酢酸プレドニゾロン、吉草酸ジフルコルトロン、吉草酸デキサメタゾン、吉草酸ベタメタゾン、酢酸ジフロラゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、ジフルプレドナート、ジプロピオン酸ベタメタゾン、デキサメタゾン、トリアムシノロンアセトニド、ハルシノニド、ピバル酸フルメタゾン、フランカルボン酸モメタゾン、フルオシノニド、フルオシノロンアセトニド、フルドロキシコルチド、プレドニゾロン、プロピオン酸アルクロメタゾン、プロピオン酸クロベタゾール、プロピオン酸デキサメタゾン、プロピオン酸デプロドン、プロピオン酸ベクロメタゾン、酪酸クロベタゾン、酪酸ヒドロコルチゾン、酪酸プロピオン酸ヒドロコルチゾン、酪酸プロピオン酸ベタメタゾン、酢酸プレドニゾロンなどを挙げることができる。また、候補薬剤としての上記抗生物質としては、塩酸オキシテトラサイクリン、塩酸テトラサイクリン、ゲンタマイシン、フラジオマイシン、エリスロマイシン、ピマリシン、硫酸ブレオマイシン、合成ペニシリン、合成セファロスポリン、バンコマイシンなどを挙げることができる。
別の側面において、ルテインは、破骨細胞の分化・生存を抑制することによって骨吸収を抑制するという作用を示すので、骨吸収抑制剤として用いることができる。また、当該骨吸収抑制剤は、後述の実施例に示すとおり、
1)骨芽細胞に作用し、破骨細胞分化誘導因子(RANKL:receptor activator of NF−κB ligand)の発現を抑制する;
2)破骨細胞前駆細胞(マクロファージ)に作用し、成熟破骨細胞への分化を抑制する(RANKシグナルを抑制し、分化と多核化を抑制する);
3)成熟破骨細胞に作用し、その細胞生存を阻害する(アポトーシス誘導を促す)
という3つの作用点により、破骨細胞の形成抑制作用を発揮する。図8に当該作用機構の模式図を示す。従って、ルテインは、破骨細胞分化誘導因子(RANKL)発現抑制剤、破骨細胞分化抑制剤、及び成熟破骨細胞のアポトーシス誘導剤としても作用し得る。
更なる別の側面において、ルテインは、未分化間葉系幹細胞からの骨芽細胞への分化を促進することによって骨形成を増強するという作用を示すので、骨形成増強剤として用いることができる。また、当該骨形成増強剤は、後述の実施例に示す通り、
1)骨芽細胞に作用し、骨形成因子の働きを阻害するSOST遺伝子産物であるスクレロスチンの発現・分泌を減少ないし抑制する;
2)スクレロスチンの発現・分泌を減少ないし抑制することにより、骨形成促進タンパク(BMP:Bone Morphogenetic Protein)等の発現及び機能を増強し、未分化間葉系幹細胞からの骨芽細胞への分化を促進する;
3)さらに、BMP等の発現及び機能を増強することにより、成熟骨芽細胞の石灰化を促進する
という3つの作用点により、骨形成増強作用を発揮する。図15に当該作用機構の模式図を示す。従って、ルテインは、スクレロスチン発現抑制剤、BMP発現促進剤、及び骨芽細胞石灰化促進剤としても作用し得る。
かかる破骨細胞分化誘導因子(RANKL)発現抑制剤、破骨細胞分化抑制剤及び成熟破骨細胞のアポトーシス誘導剤、並びに、スクレロスチン発現抑制剤、BMP発現促進剤及び骨芽細胞石灰化促進剤は、医薬品だけではなく、例えば、食品添加物、栄養補助食品、オーラルケア用の健康補助食品、オーラルケア用の添加物、栄養剤、治療用食品、栄養補給食品、健康食品等の任意の種類及び形態の食品又は食品材料に添加又は配合することができる。例えば、ヨーグルト、ドリンクヨーグルト、ジュース、牛乳、豆乳、酒類、コーヒー、紅茶、煎茶、ウーロン茶、スポーツ飲料等の各種飲料や、プリン、クッキー、パン、ケーキ、ゼリー、煎餅などの焼き菓子、羊羹などの和菓子、冷菓、チューインガム等のパン・菓子類や、うどん、そば等の麺類や、かまぼこ、ハム、魚肉ソーセージ等の魚肉練り製品や、みそ、しょう油、ドレッシング、マヨネーズ、甘味料等の調味類や、チーズ、バター等の乳製品や、豆腐、こんにゃく、その他佃煮、餃子、コロッケ、サラダ等の各種総菜へ添加又は配合として使用することができる。
所望の場合には、本発明の破骨細胞分化誘導因子(RANKL)発現抑制剤、破骨細胞分化抑制剤及び成熟破骨細胞のアポトーシス誘導剤、並びに、スクレロスチン発現抑制剤、BMP発現促進剤及び骨芽細胞石灰化促進剤は、少なくとも1種のカルシウム摂取もしくは吸収促進剤又は骨代謝改善剤と組み合わせて用いられてもよい。かかるカルシウム摂取もしくはカルシウムの吸収促進剤としては、炭酸カルシウム等のカルシウム塩、DFAIII(ツイントース)、FOS(フラクトオリゴ糖)、CPP(カゼインホスホペプチド)、ビタミンD等が挙げられる。骨代謝改善剤としては、炭酸カルシウム等のカルシウム塩、ビタミンD、ビタミンK、大豆イソフラボン、コラーゲン、MBP(乳塩基性タンパク質)等が挙げられる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
以下の実施例では、ルテインの骨代謝調節作用を実証するために、骨吸収(骨の破壊)への作用、骨形成(新しい骨を造る)への作用を培養系ないし実験動物で検討した。
先ず、骨吸収へのルテインの作用について、細胞培養および骨器官培養系におけるルテインの破骨細胞分化と骨吸収活性への影響を検証した。ここで、骨吸収を司る細胞は、破骨細胞であり、単球・マクロファージ系の前駆細胞から分化するが、その分化は、骨芽細胞の細胞表面に発現している破骨細胞分化誘導因子(RANKL:receptor activator of NF−κB ligand)によって調節されている(図8参照)。骨吸収因子であるインターロイキン−1(IL-1)は、骨芽細胞に作用してRANKLの発現を亢進し、破骨細胞の形成を促して、骨吸収活性を発揮する。従って、骨吸収へのルテインの作用を調べるにあたり、破骨細胞分化への影響、骨吸収への影響、骨芽細胞におけるRANKL発現への影響等を解析した(実施例1〜5、及び比較例1)。
さらに、マウス歯周病評価系を用いて、ルテインの歯周病予防効果についても検討を行った(当該歯周病への有効性評価は、特許第4662043号等に記載の手法に基づくものである)。すなわち、マウスから歯槽骨を採取して器官培養し、TLR4リガンドであるリポポリサッカライド(LPS)により惹起される歯槽骨破壊(歯槽骨の炎症性骨吸収)に対するルテインの抑制作用を解析した(実施例6)。
次に、骨形成へのルテインの作用を検証した。すなわち、骨形成は成熟骨芽細胞の石灰化により完成されるが、成熟骨芽細胞は前骨芽細胞から分化し、前骨芽細胞は未分化間葉系幹細胞から分化する。それらの段階のいずれにもBMP等の骨形成因子が促進作用を示す。これに反して、SOST遺伝子産物であるスクレロスチンは、BMPやWnt等の骨形成シグナルを阻害し、骨形成を負に調節する(図15参照)。従って、骨形成へのルテインの作用を調べるにあたり、骨芽細胞の石灰化への影響、スクレロスチン及びBMPの発現への影響、並びに骨密度及び皮質骨の割合への影響等を解析した(実施例7〜9)。
実施例1:破骨細胞形成に及ぼすルテインの作用
6週齢ddyマウスより骨髄細胞を常法により採取し、24ウェルプレートに骨髄細胞を2×10個/well及び初代骨芽細胞を1×10個/wellの細胞濃度で播種し、終濃度2ng/mLのIL−1を含む0.5mLの10%(v/v)FBS/PR(−)αMEMを用いて、5%CO−95%Air気相下、37℃にて7日間共存培養した。3日目および5日目において、0.4mlの培養液交換を行った。この培養系に、3〜30μMの濃度範囲のルテインをIL−1と共に添加した。培養後、細胞は破骨細胞のマーカー酵素である酒石酸抵抗性酸性ホスファターゼ(以下、TRAP)液にて染色後、室温で乾燥させた。3核以上のTRAP陽性多核細胞を破骨細胞として計測し、破骨細胞形成数として評価した。得られた結果を図1に示す。IL−1により誘導される破骨細胞形成がルテイン添加により用量依存的に抑制され、30μMのルテイン存在下では、ほぼ完全に抑制されたことが分かった。
実施例2:骨吸収活性に及ぼすルテインの作用
生後5日齢のddy系仔マウスより頭頂骨を採取し、24ウェルプレートを用い、1mg/mlBSA/BGJb培地(ペニシリン(50mg/L)及びストレプトマイシン(100mg/L)含有)にて37℃、24時間培養した。その後、同培地にIL−1(2ng/mL)を添加した培地及び、IL−1と共にルテインを3〜30μM添加した培地を5日間培養した。培養後、培養上清中のカルシウム濃度を測定した。培養液のみの場合のカルシウム濃度を差引き、カルシウム濃度の上昇分を頭頂骨から遊出したカルシウムと判定し、骨吸収活性の指標とした。得られた結果を図2に示す。
図2に示されるとおり、IL−1のみの存在下では培養上清のカルシムが上昇し、骨吸収活性の亢進が観察されたのに対し、ルテインを添加した場合には、IL−1により惹起される骨吸収活性が有意に抑制された。骨器官培養系における骨吸収は、破骨細胞の形成、骨マトリックス(1型コラーゲン等)の分解、破骨細胞による骨ミネラルの溶解、という複数のステップからなり、器官としての骨破壊を検出することができる。当該結果から、ルテインが、骨吸収因子による骨の破壊を改善する効果を示すことが明らかになった。
実施例3:骨芽細胞のRANKL発現に及ぼすルテインの作用
次に、ルテインの骨吸収抑制作用のメカニズムを解明するために、骨芽細胞におけるRANKL遺伝子の発現に及ぼす影響を検討した。生後1日齢の新生仔マウスの頭頂骨を酵素処理して骨芽細胞を採取し、初代培養により増殖させ、骨吸収因子IL−1の刺激により発現するRANKL遺伝子を発現をRT−PCR法により解析を行った。得られた結果を図3に示す。骨芽細胞にIL−1のみを作用させた場合には、3時間後において、RANKL遺伝子の亢進が観察された。一方、IL−1と共にルテイン(30μM)を共存添加したところ、RANKL遺伝子の発現が抑制が観測された。従って、ルテインは、骨芽細胞に作用し、破骨細胞分化に必須な因子であるRANKL遺伝子の発現を負に調節することが明らかになった。
実施例4:破骨細胞前駆細胞へのルテインの作用
ルテインの骨吸収抑制作用のメカニズムとして、破骨細胞前駆細胞への作用について、RAW264.7細胞を用いて検討を行なった。マクロファージ系細胞株であるRAW264.7細胞は、可溶性RANKL(sRANKL)の添加により破骨細胞に分化・成熟することが知られている。RAW264.7を、0.1mLの10%(v/v)FBS/PR(−)αMEMに懸濁し、4X10個/wellの細胞濃度で播種し、5%CO−95%Air気相下、37℃にて5日間共存培養した。培養3日目に培養液を交換した。培養開始時より、ヒトsRANKL(100ng/ml)を加えて、破骨細胞に分化誘導した。実施例1と同様の手順でTRAP陽性多核細胞を破骨細胞として計測し、破骨細胞形成数として評価した。一方、sRANKLと共にルテイン(3〜30μM)を共存添加したところ、sRANKLによる破骨細胞分化がルテイン添加により用量依存的に抑制され、30μMのルテイン存在下では、ほぼ完全に抑制されたことが分かった。得られた結果を図4に示す。この結果から、ルテインが破骨細胞前駆細胞に作用してRANKLの受容体であるRANKのシグナルを負に調節することを示しているものと理解できる。
実施例5:成熟破骨細胞の生存におけるルテインの作用
マウスより採取した大腿骨および脛骨の骨髄細胞にマクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)を処理し、マクロファージへと分化させ、この初代マクロファージ培養系に、可溶性RANKLを添加すると破骨細胞に分化することが知られている。本実施例では、マウス骨髄細胞にM−CSFを5日間添加して得た初代マクロファージに、M−CSFと共に可溶性RANKL(sRANKL)を3日間併用添加して成熟破骨細胞に分化させた。その後、M−CSFとsRANKLと共にルテイン(30μM)を添加し、培養2日後の成熟破骨細胞数を調べて、破骨細胞の生存へのルテインの影響を検討した。その結果、図5に示すように、ルテイン添加群において、成熟破骨細胞数が有意に減少した。これは、ルテインが成熟破骨細胞に作用し、その細胞生存を阻害する、すなわちアポトーシス誘導を促すことを示している。
比較例1:破骨細胞形成に及ぼすβ-カロテンの作用
比較例として、ルテインと同じくカロテノイドであり、ルテインに類似した構造を有するβ-カロテンについて、破骨細胞形成に及ぼす作用を検証した。β-カロテンは、以下の構造式で表される。
Figure 0006278474
実施例1と同様の手順で、マウス骨芽細胞と骨髄細胞の共存培養系にルテインに換えてβ-カロテン(2.5〜10μM)をIL−1と共に添加した結果、IL−1により誘導される破骨細胞形成はβ-カロテンにより抑制されなかった(図6a)。さらに、実施例3と同様の手順で、骨芽細胞におけるRANKL発現に及ぼすβ-カロテンの影響を検討した。骨芽細胞にIL−1のみを作用させた場合には3時間後において、RANKL遺伝子の亢進が観察され、これにIL−1と共にβ-カロテン(10μM)を共存添加した場合でも、RANKL遺伝子の発現はほとんど変化せず、ルテインの場合のような発現抑制は観測されなかった(図6b)。従って、類似の構造を有する他のカロテノイド類のうちでも、ルテインの奏する骨吸収抑制作用は選択的かつ強力であることが示唆された。
実施例6:歯槽骨破壊に対するルテインの作用
特許第4662043号等に記載の公知の手法に従い、歯槽骨器官培養におけるLPS誘導性骨吸収活性に及ぼすルテインの影響を検討した。歯槽骨にLPSを添加すると炎症性の歯槽骨破壊が発症する。具体的には、マウスから歯槽骨を採取して器官培養し、TLR4リガンドであるリポポリサッカライド(LPS)により惹起される歯槽骨破壊(歯槽骨の炎症性骨吸収)に対するルテインの抑制作用を解析した。LPSの濃度は1μg/mL、ルテインの濃度は3〜30μMを用いた。骨吸収活性は、実施例2と同様にカルシウム濃度の差から算出した。結果を図7に示す。ルテインの添加により、骨吸収活性が有意に抑制され、LPSによる歯槽骨の破壊が有意に改善されることが明らかとなった。したがって、ルテインは歯周病への改善効果を有すると認められる。
以上の実施例より、ルテインが破骨細胞の分化を抑制して骨吸収を抑制することが明らかになった。そのメカニズムとしては、図8に示すように、ルテインが骨芽細胞に作用してRANKL遺伝子の発現を負に制御すること、一方、破骨細胞前駆細胞に作用してRANKLの受容体であるRANKのシグナルを負に調節することが示唆された。さらに、成熟破骨細胞の生存を阻害することが明らかとなった。従って、ルテインは、骨粗鬆症や歯周病のように、骨破壊を主因とする疾患に対して、予防・改善効果を発揮することが実証された。
実施例7:骨芽細胞の石灰化に及ぼすルテインの作用
ルテインによる骨形成への影響を初代骨芽細胞培養系において評価した。実験は、新生仔マウスの頭頂骨を酵素処理することにより骨芽細胞を採取し、初代培養により骨芽細胞を得て実施した。培養系に24ウェルプレートの5×10個/wellの細胞濃度で骨芽細胞を播種し、10%FBS/αMEMにAA(アスコルビン酸)50μg/mL、β-GP(ベータグリセロリン酸)10mM、DEX(デキサメサゾン)10−8M)を添加し、5%CO-95%Air気相下、37℃にて2週間培養した。ルテインは3〜30μMの濃度範囲において添加した。処理後14日目にアルカリフォスファターゼ(ALP)染色およびアリザリン染色(カルシウム沈着の検出)を行った。骨芽細胞の石灰化に及ぼすルテインの作用は、アリザリン染色による骨結節形成により評価した。骨結節形成された石灰化エリアは画像解析により定量した。
アリザリンレッド染色による骨形成評価の結果、骨芽細胞においてルテインの添加により石灰化結節の形成が顕著に上昇した(図9)。また、石灰化エリアを画像解析により定量したところ、ルテインは、用量依存的に石灰化エリアを上昇させていた(図10)。従って、ルテインは、骨形成を増強することが明らかとなった。
実施例8:スクレロスチン及びBMPの発現に及ぼすルテインの作用
BMPは未分化間葉系幹細胞からの骨芽細胞への分化を促進し、結果的に骨形成を高めるサイトカインとして見出されている。一方、スクレロスチン(SOST)は主として骨細胞から産生され、骨組織でWntやBMPのシグナルを阻害することにより骨減少を誘導するタンパクである(図15)。そこで、ルテインの骨形成促進作用における作用機構を明らかにするため、骨芽細胞の分化と骨形成に関連する各種遺伝子の発現について、RT−PCR法により検討した。実験は、24ウェルプレートに初代骨芽細胞を5×10個/wellの細胞濃度で、10%FBS/αMEM/PSにて播種し、37℃、5%CO-95%Air気相下で対照群およびルテイン存在下、AA,β-GP,DEXを実施例7と同様の濃度で添加し、14日間培養することで実施した。培養後に細胞からフェノール抽出法によりRNAを回収し、遺伝子解析を行った。抽出したRNAにランダムプライマー、逆転写酵素を添加した後、熱処理により反応させcDNAを得た。RT反応により得たcDNAを鋳型としてPCR用buffer、dATP,dGTP,dCTP,dTTP混合液、各種センスプライマーおよびアンチセンスプライマーを加え、taqDNAポリメラーゼにて反応させ、反応終了後、PCR産物はアガロースゲルにて電気泳動を行い、エチジウムブロマイド染色にて解析した。RT−PCR法は”J Immunol.2006,177:1879−85.”に記載の方法に準じた方法により実施した。その結果、石灰化誘導条件下、培養2週間において、BMP2のmRNA発現が上昇し、ルテインによりBMP2発現が増強することを見出した(図11左)。この変化は培養1週間では認められなかった。また、石灰化誘導条件下、上昇したSOSTの発現がルテインにより減少することが明らかとなった(図11右)。従って、ルテインは成熟・石灰化期において、BMP2の発現を上昇すると共に、BMP2のシグナル阻害を減弱することで骨形成を増強すると考えられた。
実施例9:骨密度及び皮質骨の割合に及ぼすルテインの作用
ルテイン粉末を餌に混ぜてルテイン含有餌を作成し、In vivoにおける骨形成に対する効果を検討した。成長期の雄性マウスに対してルテインを添加した粉末飼料を4週間摂取させ、その後、マウスより大腿骨を採取し、DEXAおよび3D−μCTを用いて骨組織の解析を行なった。その結果、DEXAによる大腿骨の骨密度測定では、ルテイン摂取群において総骨密度が増加した(図12)。さらに、3D−μCTによる大腿骨遠位部および骨幹皮質骨の解析を行った。得られたCTデータについて、3次元画像解析ソフトにより、大腿骨の遠位部海綿骨および骨幹部皮質骨の画像解析と骨定量を行った。その結果、ルテイン群において、海綿骨量であるBV/TV(図13)および皮質骨の割合であるCv/Av(図14)が増加した。これらDEXA及び3D−μCTは”J Pharmacol Sci. 2011, 115:89−93.”に記載の方法に準じて解析を行った。以上の結果より、In vitroIn vivo実験においてルテインは骨形成を促進することが示唆され、骨粗鬆症などの骨疾患の予防や治療に有効であることが示された。

Claims (4)

  1. ルテインを有効成分として含む、骨軟化症を予防又は治療するための医薬。
  2. 前記骨軟化症が、患者の骨形成を増強することで予防又は治療される、請求項1に記載の医薬。
  3. 前記骨軟化症が、患者におけるスクレロスチンの発現を減少することで予防又は治療される、請求項1に記載の医薬。
  4. 前記骨軟化症が、患者における骨形成促進タンパク(BMP)の発現を増強することで予防又は治療される、請求項1に記載の医薬。
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