JP2012158579A - 骨粗鬆症の予防及び改善する食品、医薬品動物用飼料 - Google Patents

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一良 矢澤
Satoru Shintani
悟 新谷
Yoshiki Mukushiro
義樹 椋代
Seiji Kondo
誠二 近藤
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Abstract

【課題】本発明は、医薬・飼料・食品として安仝である郁金、苦楝皮、醋延胡索を有効成分として、骨粗鬆症を治療および予防する剤または組成物を提供することを課題とする。
【解決手段】本発明により郁金、苦楝皮、醋延胡索を有効成分とする骨粗鬆症剤および組成物が提供される。さらにはこれらからなる、飲食用組成物、医薬用組成物、動物用飼料が提供される。
【選択図】なし

Description

本発明は郁金、苦楝皮、醋延胡索を含有することを特徴とした骨代謝改善剤に関する。本発明における骨代謝改善剤とは、骨粗鬆症の予防、骨粗鬆症の進行・進展の防止、及び/又は骨粗鬆症患者における骨の状態の改善のため、更には骨の健康状態を維持するために、ヒト若しくはヒト以外の動物に与えられる医薬品(動物用治療薬も含む)用、飲食品用、及び飼料用またはペットフードの組成物を意味する。
骨は骨吸収と骨形成を繰り返しており、骨形成に関与する細胞が骨芽細胞であり、骨吸収に関与する細胞が破骨細胞である。骨の成長、維持および修復は、これらの細胞の形成と吸収の速度バランスに依存しており、そのバランスが崩れることにより、骨吸収が骨形成を上回り、骨粗鬆症などの骨密度が減少する骨疾患がもたらされる。よって骨形成が骨吸収を下回らないことが骨密度の維持や増強に重要である。
骨粗鬆症は代謝疾患、内分泌障害、加齢等により骨吸収と骨形成のバランスが崩れたために骨量が減少し、骨の粗鬆化をきたす疾病である。症状は厳しい腰背痛と骨の粗鬆化に起因する骨折を呈し、老人の場合これを契機に寝たきりとなり、生活の質を低下させ、死亡に至ることもある。抗骨粗鬆症剤としては、腰背痛の緩和作用、骨吸収抑制作用、骨形成促進作用を有する薬剤が考えられ、カルシトニン、ビタミンD、カルシウム剤、ビタミンK、ビスホスホネート、エストロゲン、選択的エストロゲン受容体調節薬(SERM)、イプリフラボンなどが使用されているが、臨床上、薬効や副作用の点において十分に満足できる薬剤は未だなく、効果が高く副作用の少ない抗骨粗鬆症剤が望まれている。また、骨粗鬆症を予防する食品としては、大豆イソフラボン、ビタミンK高産生納豆菌などが使用されている。また、カゼインフォスフォペプチドをはじめとして、骨の材料として必要なカルシウムの腸管吸収促進作用を持つ物質が知られている。しかし、これらのカルシウム吸収促進作用を有する物質は、消化管から体内へのカルシウム吸収を促進するものであり、骨へのカルシウム沈着を促進するものではない。そのため、骨代謝の改善や骨強化に十分な効果を得られない場合がある。従って骨に対して直接働きかける食品成分が望まれている。
郁金、苦楝皮、醋延胡索はいくつかの用途が提案されている。しかしながら骨疾患に対して有用な効果があることは全く知られていない。本発明は、食習慣があり安全である郁金、苦楝皮、醋延胡索を有効成分として、骨代謝を改善する剤または組成物を提供することを課題とする。
本発明者らは、郁金、苦楝皮、醋延胡索が骨代謝改善に有用である破骨細胞形成抑制効果を有することを見出し、それを基に本発明を完成するに至った。
郁金、苦楝皮、醋延胡索が上記効果を有し、骨代謝改善に有用であるということは全く知られていなかった。
即ち本発明が提供するのは以下の通りである。
[1]郁金、苦楝皮、醋延胡索を有効成分とする骨代謝改善剤。
[2]郁金、苦楝皮、醋延胡索を含有する組成物を有効成分とする骨代謝改善剤。
[3][1]または[2]に記載の骨代謝改善剤からなる破骨細胞分化抑制剤。
[4]「1]〜[3]に記載の骨代謝改善剤を含有する飲食用組成物。
[5][1]〜[3]に記載の骨代謝改善剤を含有する医薬用組成物。
[6]骨疾患の改善または予防を目的とした[1]〜[5]に記載の剤または組成物。
[7]骨疾患が骨粗鬆症である[6]に記載の剤または組成物。
本発明の骨代謝改善剤、またはこれを含有する組成物は、破骨細胞の分化抑制をすることから、骨吸収の抑制が期待できる。従って、骨粗鬆症をはじめとする骨吸収を伴う骨疾患の治療、改善および予防に有用である。さらに、食経験のある材料から本発明の剤または組成物を製造することが可能であるので、摂取しても安全である。
本明細書の骨代謝改善剤は、郁金、苦楝皮、醋延胡索を有効成分として含有する骨代謝改善効果を有する剤および組成物である。上記の化合物の含有量は限定されないが、骨代謝改善効果を発揮できる範囲で含まれていれば良い。
ここにいう郁金、苦楝皮、醋延胡索とは、漢方薬の素材である。
本発明の骨代謝改善剤、またはこれを含有する各種組成物は、郁金、苦楝皮、醋延胡索を含む材料であれば、そのまま用いることができるが、好ましくは、より摂取に適した形の組成物や、郁金、苦楝皮、醋延胡索の含有量の高い組成物、もしくは精製物とした上で有効成分として用いるほうが好ましい。また、前述の方法により得られた郁金、苦楝皮、醋延胡索を含む抽出物や粗精製物もしくは精製物は、所望により任意の食品もしくは医薬品で用いられる製剤化処理を行うこともできる。その場合の製剤化処理は限定されないが、例えば食用油脂や乳化剤などの助剤を用いた乳化処理、粉末化、増粒などが挙げられる。そのようにして得られた製剤は、吸収性や、摂取の容易さ、取り扱いの容易さの観点から有利である。
本発明でいう骨代謝改善作用とは、生体内で骨吸収を抑制する作用のことをいう。骨吸収の抑制は、骨粗鬆症をはじめとする骨量の減少を伴う疾患の予防に有用である。本明細書で提供する剤および組成物は、破骨細胞の分化を抑制し、骨吸収の抑制を介して生体内の骨代謝を改善することができる。この骨代謝改善作用は骨粗鬆症などの骨量が減少する疾患の予防や改善に有用である。
骨代謝改善作用は、評価物質を直接動物に投与して評価することもできるが、培養細胞を用いて骨吸収を抑制する作用に関連する破骨細胞形成抑制活性や培養破骨細胞による骨吸収抑制活性を評価する方法もある。破骨細胞形成抑制活性は、骨髄細胞、脾臓細胞、マクロファージなどの細胞を用いて評価することもできる。これら細胞を用いた評価では、破骨細胞を分化させる作用を有するRANKLやM−CSFを添加した培地を用いて破骨細胞の分化抑制を評価する方法や、骨芽細胞と共培養してプロスタグランジンE、副腎皮質ホルモン、インターロイキン−1、活性型ビタミンDや、リポポリサッカライドなどの破骨細胞分化刺激試薬を添加した培地を用いて破骨細胞の分化抑制を評価する方法が挙げられる。これらの培養法において、破骨細胞形成抑制の評価は、破骨細胞に特異的に発現する酒石酸耐性酸フォスファターゼ(TRAP)の発現により評価することができる。具体的にはTRAPにより発色する基質を用いた染色法による破骨細胞数のカウント法、もしくはTRAPにより発色する基質を用いた比色法などが挙げられる。これらのうち少なくとも1種の測定において、サンプルの活性が一般に溶媒対照と比較し、低い値を示す場合、そのサンプルを「破骨細胞分化抑制活性あり」と評価する。
本発明の飲食用組成物は、上記の骨代謝改善剤を含有する組成物であり、これらを一般的な食品に混合したものである。また、公知の食品として適当な担体や助剤などを使用してカプセル剤、錠剤、顆粒剤など服用しやすい形態にしたものでもよい。ここに言う飲食用とは、例えば、一般食品、保健機能食品(特定保健用食品、栄養機能食品)、健康食品、栄養補助食品、ペットフードなどである。ここにいう一般食品とは、飲料、乳製品、発酵乳、乳酸菌飲料、加工乳、コーヒー飲料、ジュース、アイスクリーム、飴、ビスケット、ウェハース、ゼリー、スープ、麺類、を含むがそれに限定されるものではない。好ましくは飲料、乳製品、加工乳、発酵乳、乳酸菌飲料、ウェハース、ゼリーを含む。
本発明の医薬用組成物は、上記の骨代謝改善剤を含有する組成物であり、上記剤そのものであってもよいし、所望により医薬的に許容される担体を含有する組成物であってもよい。その用途は限定されず、例えば一般用医薬品(OTC)など容易に入手可能な医薬品又は医薬部外品などが挙げられる。医薬用組成物の形態は限定されず、例えば、丸薬剤、液剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤、カプセル錠剤、トローチ剤、シロップ剤、ドライシロップ剤などである。好ましくはカプセル剤、液剤、エリクシル、錠剤、カシェ、座薬などとするほうが良い。また医薬的に許容される担体とは、経口、経腸、経皮、および皮下投与のために好適である任意の材料であり、例えば水、ゼラチン、アラビアガム、ラクトース、微結晶性セルロース、スターチ、ナトリウムスターチグリコレート、燐酸水素カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、タルク、コロイド性二酸化ケイ素、などが挙げられる。
本発明は、骨粗鬆症をはじめとする骨疾患に対して骨密度を改善する効果のある物質を含有させても良い。骨密度改善効果のある物質としては、今まで公知の物質を用いることができるが、例えば、ガラクトオリゴ糖、フラクトオリゴ糖、ラクトスクロースなどのオリゴ糖類、ビタミンK、ビタミンD、ビタミンC、葉酸などのビタミン類、カルシウム、マグネシウム、鉄、マンガン、亜鉛、などのミネラル類、ダイジン、グリシチン、ゲニスチン、ダイゼイン、グリシテイン、ゲニステインなどの大豆イソフラボン、大豆胚軸抽出物、カゼインホスホペプチドなどのペプチド類、またはザクロ等の抽出物、グルコサミン、コンドロイチン、およびコラーゲンを単独又はそれらを組み合わせることが好ましい。またその形態は限定されず、飲食用組成物、医薬用組成物を含む。これらの含有量は限定されないが、骨疾患に対して効果が発揮できる範囲で含まれていれば良い。
本発明の組成物は、ヒトをはじめとする哺乳動物に投与することにより、骨粗鬆症をはじめとする骨疾患を処置、改善または予防することができる。具体的には、閉経、加齢、不動化、ステロイド剤の使用、および免疫抑制剤の使用による骨粗鬆症の他、慢性関節リウマチ、歯槽膿漏、歯根膜炎、変形関節炎などが挙げられる。
以下に本発明をより詳細に説明する為に実施例を挙げるが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。
各生薬(便宜的に番号をふった7種類、h33、h51、h131、h194、h203、h232、およびh266の生薬。これら7生薬は400種の生薬から、マウス骨髄系細胞株RAW264.7細胞からRANKL(receptor activator NF−κB ligand)添加により分化させた破骨細胞、及びヒト扁平上皮癌細胞株HSC2、3、4、SAS細胞を使って、最終濃度各1μg/mlで癌細胞に対して効果がなく、かつ、破骨細胞に対して増殖抑制効果あるいはアポトーシス誘導効果があった一次スクリーニング通過生薬である。)の、破骨細胞に対する増殖・分化抑制効果、およびアポトーシス誘導効果をin vitro実験で確認した。破骨細胞は全て20ng/mlマウス組み換え型RANKL(和光純薬工業)、20μMPD98059(同)、および10%ウシ胎児血清(FBS、ハイクローン社)存在下のα−modified Eagle’s medium(D−MEM、シグマ社)培地中で、37℃、5%CO2、湿度100%の条件下で培養した。細胞の増殖は、48穴細胞培養用プレート(ベクトン・ディッキンソン社)にRAW264.7細胞を5万個/wellの濃度で播種し、上述の培養条件で3日間培養した。培地交換と同時に、h33、h51、h131、h194、h203、h232、およびh266の生薬1μg/mlあるいは、陽性コントロールとしてビスホスホネートの一種であるアレンドロン酸(和光純薬工業)10μMを添加し、さらに3日間培養した。培養終了後、4%パラホルムアルデヒド液(同)で細胞を固定し、クリスタルバイオレッド染色(同)、および、酒石酸耐性酸性ホスファターゼ活性染色(TRAP染色)にて、破骨細胞の増殖および分化を検討した。その結果、h33、h51、h194、h203は、非特異的に破骨細胞を死滅させた。一方、h131、h232、およびh266(郁金、苦楝皮、および醋延胡索)は、細胞の増殖およびTRAP陽性の細胞を緩やかに抑制した(図1)。
さらに、h131、h232、およびh266(郁金、苦楝皮、および醋延胡索)の破骨細胞に対するアポトーシス誘導効果を、アポトーシス特異的タンパク分解酵素であるカスパーゼ3/7の活性で検証した。すなわち、96穴細胞培養用プレート(ベクトン・ディッキンソン社)にRAW264.7細胞を1万個/wellの濃度で播種し、上述の培養条件および生薬を添加し培養した。カスパーゼ3/7の活性は、Caspase−glo3/7キット(プロメガ社)および、GloMax−Multi Detection System(同)によって測定した。その結果、h131、h232、およびh266(郁金、苦楝皮、および醋延胡索)はいずれも濃度依存的にカスパーゼ3/7の活性を促進し、アポトーシスを誘導していることが明らかになった(図2)。
破骨細胞に対する増殖・分化抑制効果を示す図であり、クリスタルバイオレッド染色(左)、および、酒石酸耐性酸性ホスファターゼ活性染色(TRAP染色:右)にて、破骨細胞の増殖および分化を検討した。 破骨細胞に対するアポトーシス誘導効果を示す図であり、アポトーシス特異的タンパク分解酵素であるカスパーゼ3/7の活性で検証した。

Claims (8)

  1. 郁金、苦楝皮、醋延胡索を有効成分として含有する骨代謝改善剤。
  2. 郁金、苦楝皮、醋延胡索の水溶性画分を含有する組成物を有効成分として含有する骨代謝改善剤。
  3. [1]または[2]に記載の骨代謝改善剤からなる破骨細胞形成抑制剤。
  4. [1]〜[3]に記載の骨代謝改善剤を含有する飲食用組成物。
  5. [1]〜[3]に記載の骨代謝改善剤を含有する医薬用組成物。
  6. [1]〜[3]に記載の骨代謝改善剤を含有する動物用飼料。
  7. 骨疾患の改善または予防を目的とした[1]〜[6]に記載の剤または組成物。
  8. 骨疾患が骨粗鬆症である[7]に記載の剤または組成物。
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