JP2020070281A - 骨疾患の予防及び/又は治療用医薬組成物 - Google Patents

骨疾患の予防及び/又は治療用医薬組成物 Download PDF

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Abstract

【課題】 破骨細胞分化抑制作用と骨芽細胞分化促進作用を有し、骨と歯の代謝の調節に有用な薬剤や飲食物の提供。【解決手段】 アルテピリンC、又はバッカリン、又はドルパニンを有効成分として含有する、破骨細胞分化抑制剤、骨芽細胞分化促進剤、骨吸収抑制剤、骨形成促進剤、骨代謝調節剤、骨減少性疾患の予防及び/又は治療剤。【選択図】なし

Description

本発明は、グリーンプロポリス及びキク科バッカリス属植物から抽出された桂皮酸誘導体類の骨代謝調節作用に基づく各種骨疾患の予防又は治療剤または健康食品に関する。
骨減少性疾患は、外傷性骨折や疲労骨折等に代表される外因性疾患と、骨多孔症、骨粗鬆症、高カルシウム血症、高副甲状腺ホルモン血症、骨ページェット病、関節炎、リウマチ、乳ガンの骨転移、骨軟化症、悪性腫瘍その他の疾病に起因する骨組織の脆弱化、及び栄養障害による骨組織の脆弱化といった内因性の疾患とに大別される。本明細書中においては、「骨減少性疾患」という用語には、上述した外因性疾患及び内因性疾患以外に、歯周病による歯又は歯槽骨または歯周組織の吸収又は破壊及びそれに起因する疾患が含まれるものとする。骨芽細胞の分化促進、破骨細胞の分化抑制、骨形成の促進、骨吸収の抑制、歯や歯槽骨の成長・形成、歯槽骨並びに歯周組織の破壊の予防及び骨並びに歯の再生は、「骨減少性疾患」を予防、治療及び/又は改善させる原因に含まれる。
ヒトの骨は、骨芽細胞による骨形成と破骨細胞による骨吸収とを絶えず繰り返しつつ、恒常性を維持している。しかし、加齢や炎症等により、恒常性が維持できなくなり、骨吸収が過剰になると、骨粗鬆症や関節リウマチ等の病態が生じる。
骨粗鬆症や歯周病患者はどちらも1,000万人を超えており、社会的に大きな問題となっている。また、急速な高齢化により65才以上の人口が増加し、骨粗鬆症さらに患者が増加すの一途を辿ることが推測されている。また、骨粗鬆患者の増加に伴って、高齢者の骨折のも増加すると考えられる人体において骨は絶えず骨吸収と骨形成を繰り返しており、骨吸収に関与する細胞が破骨細胞、骨形成に関与する細胞が骨芽細胞である。骨の形成、維持、修復には、これらの細胞の形成と吸収のバランスに依存しており、そのバランスが崩れることにより、骨吸収が骨形成を上回り、骨粗鬆症などの骨代謝疾患がもたらされることが知られている。よって骨形成が骨吸収を下回らないことが骨量の維持・増強に重要であると考えられている。
骨吸収は破骨細胞によって行なわれるため、破骨細胞の分化や機能を抑制する化合物やホルモンが骨吸収抑制剤として用いられているの分化および活性化が顕著であるほど、骨吸収率は高くなる。一方、骨量を増加させる方法としてはカルシウム製剤やカルシウムの吸収を高めるビタミンD製剤などが主流である。骨形成は骨芽細胞によって行なわれるため、骨芽細胞の分化や機能を促進させる化合物やホルモンは骨形成促進剤として有用であり、副甲状腺ホルモン製剤などが実用化されている。骨減少性疾患をさらに効率的に予防や治療をするためには、骨吸収抑制作用と骨形成促進作用を併せ持つことが望ましいが、および活性化が顕著であるほど、骨形成率は高くなる。そのため、骨吸収率を減少させる骨吸収抑制作用を有し、骨形成率を高める骨形成促進作用を有する組成物が得られれば、骨粗鬆症に有効である。このような効果が報告されているものとして、特許文献1には、例えば、破骨細胞分化抑制作用に基づく骨吸収抑制作用と骨芽細胞分化促進作用に基づく骨形成促進作用を併せ持つ骨代謝改善剤として、トケイソウ科に属する植物に含まれるハルミンを有効成分とする骨代謝改善組成物(特許文献1参照)などが知られている。
特願2008-558102
従来では、骨吸収抑制剤としてはエストロゲン製剤、ビスフォスフォネート、ビタミンD、カルシトニンなどの薬剤が臨床使用応用されてきた。また、最近、骨形成促進剤としてカルシウム製剤やビタミンD製剤に加えて副甲状腺ホルモン製剤が実用化されて一定の成果を上げている。しかしながら、その作用、副作用、コストなどの面でが、これらによる治療法は充分とはいえず、より優れた新たな治療薬が求められている。
本発明の目的は、これまでにも食に供された経験があり、破骨細胞分化抑制作用及び骨形成促進作用を有し、骨粗鬆症骨減少性疾患の予防及び/又はおよび改善に有用な有効成分のための組成物又はその使用方法を提供することにある。
本発明者らは、破骨細胞分化抑制作用および骨形成促進作用を有する有効成分について、種々の素材から探索を重ねた結果、グリーンプロポリスから抽出されたアルテピリンC(artepillin C)、バッカリン(baccharin)、ドルパニン(drupanin)などの桂皮酸誘導体が、破骨細胞への分化を抑制するとともに、し、さらに骨芽細胞の分化骨形成を促進することを見出し、本発明を完成した。
本発明は、桂皮酸誘導体であるアルテピリンC、又はバッカリン、又はドルパニンを少なくとも1種以上含有する破骨細胞分化抑制剤及び/又は骨芽細胞分化促進剤および骨形成促進剤、骨粗鬆症の予防および骨代謝改善剤である。
また、本発明は、桂皮酸誘導体であるアルテピリンC、又はバッカリン、又はドルパニンを少なくとも1種以上含有する骨吸収抑制剤及び/又は骨形成促進剤であり、本発明は、桂皮酸誘導体を含有する飲食品である骨代謝調節剤である。
すなわち、
本発明は以下のとおりである。
[1] アルテピリンC、又はバッカリン、又はドルパニンからなる群から選ばれる化合物を少なくとも1種以上含有する、破骨細胞分化抑制剤、及び/又は骨芽細胞分化促進剤。
[2] アルテピリンC、又はバッカリン、又はドルパニンからなる群から選ばれる化合物を少なくとも1種以上含有する、骨吸収抑制剤及び/又は骨形成促進剤。
[3] アルテピリンC、又はバッカリン、又はドルパニンからなる群から選ばれる化合物を少なくとも1種以上含有する、骨減少性疾患を予防及び/又は治療するための医薬組成物。
[4] アルテピリンC、又はバッカリン、又はドルパニンからなる群から選ばれる化合物を少なくとも1種以上含有する、骨代謝調節用医薬製剤。
[5] アルテピリンC、又はバッカリン、又はドルパニンからなる群から選ばれる化合物を少なくとも1種以上含有する、骨減少性疾患を予防及び/又は改善用機能性食品。
[6] 骨減少性疾患を予防及び/又は治療するための方法であって、上記方法は、
上記骨減少性疾患を患っている対象者に、アルテピリンC、又はバッカリン、又はドルパニンからなる群から選ばれる化合物を少なくとも1種以上含有する医薬組成物又は骨代謝調節用医薬製剤を投与するステップを含む、方法。
本発明の骨代謝改善剤は、アルテピリンC、又はバッカリン、又はドルパニンを含有し、破骨細胞への分化抑制作用により骨吸収を抑制し、さらに骨芽細胞の分化促進作用により、骨形成を促し、様々な骨減少性疾患を予防及び/又は改善できる。
本発明の機能性食品は、グリーンプロポリスの抽出成分であるアルテピリンC、又はバッカリン、又はドルパニンを含有し、経口摂取することにより破骨細胞への分化抑制、骨芽細胞の分化を促進し、骨粗鬆症を予防及び/又は改善できる。
多核破骨細胞形成に対するアルテピリンC、バッカリン、ドルパニンの抑制作用を示すTRAP染色写真である。 破骨細胞分化に対するアルテピリンC、バッカリン、ドルパニンの抑制作用を示すTRAP活性のグラフある。 破骨細胞の分化マーカー遺伝子の発現の発現に対するアルテピリンC、バッカリン、ドルパニンによる抑制作用を示すグラフである。 骨芽細胞分化に対するアルテピリンC、バッカリン、ドルパニンの促進作用を示すALP活性のグラフである。 骨芽細胞分化に対するアルテピリンCとバッカリンの促進作用を示す石灰化染色写真である。 骨芽細胞の分化マーカー遺伝子発現に対するバッカリンの促進作用を示すグラフである。
本発明の破骨細胞分化抑制剤又は骨芽細胞分化促進剤、又は骨吸収抑制剤、又は骨形成促進剤又は骨減少性疾患予防及び/又は治療剤は、アルテピリンC、又はバッカリン、又はドルパニンを有効成分として含有する。アルテピリンCは下記の式(1)に示す構造式を有し、正式な化合物名は4ヒドロキシ3,5ジプレニル桂皮酸である。バッカリンは下記の式(2)に示す構造式を有し、正式な化合物名は3−プレニル−4−(ジヒドロジヒドロシナモイルオキシ)桂皮酸である。ドルパニンは、下記の式(3)に示す構造式を有し、4−ヒドロキシ−3−(3-メチル-2-ブテニル)桂皮酸である。
Figure 2020070281
Figure 2020070281
Figure 2020070281
アルテピリンC、又はバッカリン、又はドルパニンは、精製された化合物であってよく、合成された化合物でもよい。また、上記化合物はグリーンプロポリスやキク科バッカリス属植物の抽出物に含まれた形態であってもよい。グリーンプロポリスの抽出物からの上記化合物の精製は、例えば、アセトン、ヘキサン、エーテル、酢酸エチル、クロロホルム、ブタノール、プロパノール、メタノール、エタノール等の有機溶媒を用いて抽出し、液液分配、クロマトグラフィーなど汎用的な分画技術を用いることができ、さらに疎水性相互作用を利用したクロマトグラフィーにより分離、精製することができる。グリーンプロポリス乾燥体1 kgから1〜10 g程度のアルテピリンC、又はバッカリン、又はドルパニンを分離、精製することができる。疎水性相互作用を利用したクロマトグラフィーとして、オクタデシルシリル化シリカゲル(ODS)であるコスモシールC18(ナカライテスク)等を用いたクロマトグラフィーが挙げられる。
キク科バッカリス属に属する植物(学名:バッカリス・ドラクンクリフォリア)(Baccharis dracunculifolia)は、南アメリカを中心に生育しており、生植物として入手しても良く、抽出エキスとして加工された形態として入手することも可能である。
また、上述した植物から単離された任意の化合物に化学的処理を施して、上記化合物を合成してもよく、植物から単離した化合物を用いずに化学合成により得てもよい。さらに、上記化合物は、存在可能な水和物又は塩であってもよい。
<実施形態1:医薬組成物>
本発明によれば、
上記化学式(1)〜(3)で示される化合物であるアルテピリンC、又はバッカリン、又はドルパニンを含有する、骨減少性疾患を予防及び/又は治療する医薬組成物が提供される。
アルテピリンC、又はバッカリン、又はドルパニンは単独で使用してもよく、任意の割合で配合してもよい。
医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤、コーティング剤等を含んでいてもよい。また、着色料、香料、防腐剤などを含んでいてもよい。賦形剤としては例えば乳糖、ブドウ糖、コーンスターチ、ソルビット、結晶セルロースなどが、滑沢剤としては例えばタルク、ステアリン酸マグネシウム、ポリエチレングリコール、硬化植物油などが、結合剤としては例えばジメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、メチルセルロース、エチルセルロース、アラビアゴム、ゼラチン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリビニルピロリドンなどが、崩壊剤としては例えばデンプン、アルギン酸ナトリウム、ゼラチン末、炭酸カルシウム、クエン酸カルシウム、デキストリンなどが、それぞれあげられる。使用する際の形態は特に限定されず、カプセル状、粉末、粒状、タブレット状、液状などの形態とでき、また、外用剤としてクリーム、ペースト状、ジェルなどの形態で用いることもできる。
<実施形態2:飲食用組成物>
本発明のグリーンプロポリス由来、または、キク科バッカリス属植物由来、または、合成により得られたアルテピリンC、又はバッカリン、又はドルパニンは、骨代謝調節用のサプリメントとして用いることができ、あるいは、飲食物に混合してまたは飲食用組成物として用いることもできる。
サプリメントとして用いる場合、錠剤や顆粒の形態で用いることができ、他の有用成分と混合してもよい。
飲食用組成物として用いる場合、健康飲食品、特定保健用飲食品、栄養機能飲食品、健康補助飲食品等として供することが可能である。これらの飲食品は、骨代謝を改善する機能性食品として供することができ、特定保健用飲食品やその他のサプリメント、健康飲食品等には、骨吸収を抑制する、骨形成を促進する、骨粗鬆症を予防または改善する等の機能を表示することができる。
飲食用組成物は、固形物、液状、粉末、顆粒状、ペースト状等の種々の形態であり、具体的には、例えば、清涼飲料、乳酸飲料、嗜好飲料、コーヒー、緑茶、紅茶、ウーロン茶などの飲料品;キャンディー、チョコレート、ビスケット類、菓子パン類、ケーキ、餅菓子、米菓類などの菓子類;果実飲料、野菜飲料、ジャム類、ペースト類などの野菜・果実加工品;日本酒、焼酎、ワイン、中国酒、ウイスキー、ウオッカ、ブランデー、ジン、ラム、酒、ビール、清涼アルコール飲料、果実酒、リキュールなどのアルコ−ル飲料;ヨーグルト、アイスクリーム、バター、チーズ、練乳、粉乳のなどの乳製品;ドレッシング、マヨネーズ、てんぷら油、サラダ油などの油脂加工品;しょうゆ、ソース、酢、みりん、ドレッシングタイプ調味料などの調味料;粉末ジュース、粉末スープ、インスタントコーヒー、即席麺類、即席カレー、即席味噌汁、調理済み食品、調理済み飲料、調理済みスープなどの乾燥飲食品、小麦粉加工品、でんぷん類加工品などの穀物加工品等が挙げられる。例えば飴、クッキー、チューインガム、ビスケットのような固形物として用いても、あるいは清涼飲料水、牛乳、ヨーグルト、シロップのような液状でもよい。飲食物とする場合、クエン酸、乳酸、カゼインなど、通常飲食物に使用される添加剤を配合することができる。
医薬組成物は、経口で投与してもよく、また静注、筋注、皮下投与、直腸投与、経皮投与等の非経口で投与してもよい。
アルテピリンC、又はバッカリン、又はドルパニンを含有する医薬組成物薬剤、サプリメントまたはあるいは飲食物等の飲食用組成物におけるアルテピリンC、又はバッカリン、又はドルパニン含有量は、その剤型に応じて異なるが、通常アルテピリンC、又はバッカリン、又はドルパニンが、全組成物中の0.01〜50重量%、好ましくは0.01〜20重量%程度含まれていればよい。アルテピリンC、又はバッカリン、又はドルパニンの場合の摂取量は、摂取者の年齢、性別、体重、症状の種類、症状の程度などを考慮して適宜増減できるが、一日当たりの摂取量が0.01〜300mg/kgになるように、各投与形態に合わせて設定するのが好ましい。医薬組成物、飲食要素生物、生体適合性材料のいずれの形態においても、1日1回または数回に分けて投与、又は摂取すればよい。
本発明のアルテピリンC、又はバッカリン、又はドルパニンを含有する医薬組成物、サプリメントまたは飲食物等の飲食用組成物は、ヒトを含む哺乳動物を対象とする。ヒト以外の哺乳動物としては、サルなどの霊長類、ラット、マウスなどのげっ歯類、ヒツジ、ブタ、ウシ、ネコ、イヌ等が挙げられる。
<実施形態3:生体適合性素材>
本願発明によれば、
アルテピリンC、又はバッカリン、又はドルパニンより選択される少なくとも1つの化合物を含有する、生体適合性素材が提供される。
この生体適合性素材を用いることで、骨減少性疾患の患部に直接接触させることが可能になる。
「生体適合性」とは、生体組織や細胞に対して炎症反応、免疫反応、中毒反応といった負の反応を引き起こさないか、そのような反応が小さいことを意味する。「生体適合性素材」には、生分解性素材や非生分解性素材が含まれる。「生分解性素材」は、生体内で分解され得る素材や生体内で吸収され得る素材であり、例えば、コラーゲン、アテロコラーゲン、ヒアルロン酸、ハイドロキシアパタイト、TCP、ポリ乳酸(PLLA)、ポリグリコール酸(PGA)、PLGA、ポリエチレングリコール(PEG)、MPCポリマー、アガロースゲルを挙げることができる。「非生分解性素材」は、生体内で分解及び吸収されない、又は、実質的に分解及び吸収されない素材であり、例えば、チタン、チタン合金、ステンレス、セラミックスが挙げられる。また、生体適合性素材は、細胞の足場材(スキャフォールド)であってもよく、更には、所望の細胞が接着した足場材(例えば、細胞シート、細胞塊)であってもよい。生体適合性素材として非生分解性素材を用いる場合、非生分解性素材は、その表面に、例えば、上記化合物を含有する上記生分解性素材が付着していてもよい。生体適合性素材は、当業者にとって公知の方法により、徐放性を有していてもよい。
生体適合性素材は、骨減少性疾患の患部に埋設することができ、骨及び歯(歯槽骨を含む)の形成又は再生、歯周組織の再生、骨折部位の修復に利用することができ、インプラント歯の埋入の前処理に利用することもできる。
<実施形態4:骨減少性疾患を予防又は治療するための方法>
本願発明によれば、
骨減少性疾患を予防又は治療するための方法であって、上記方法は、
上記骨減少性疾患を患っている対象者に、アルテピリンC、又はバッカリン、又はドルパニンを含有する医薬組成物又は骨代謝調節用医薬製剤を投与するステップを含む、
方法が提供される。
上記医薬組成物を患者に投与する場合には、投与量は、患者の症状の重篤さ、年齢、体重、PSA値、尿流量及び健康状態等の諸条件によって異なる。一般的には、上述した用量及び用法で、1日1回若しくはそれ以上の回数にわたって投与すればよく、以上のような諸条件に応じて、投与の回数及び量を適宜増減すればよい。
上記医薬組成物又は骨代謝調節用医薬製剤の1日当たりの投与量、投与期間及び投与回数は、上述した治療薬と同様であってもよい。上記医薬組成物又は骨代謝調節用医薬製剤の投与は、医師による判断により終了してもよいし、患者の自己判断で終了してもよい。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる:例えば、ヒト及び動物の多くの硬組織(骨や歯)減少性疾患(骨粗鬆症、関節リウマチ、歯周病、ページェット病、がんの骨転移等)の予防・治療のための、食品組成物、健康食品、医薬組成物、衛生用品とその方法;骨折、事故、手術、その他要因による硬組織(骨や歯)減少・欠損部位における骨形成・骨再生の誘導剤、促進剤とその方法;インプラント歯埋入前処理としての歯槽骨形成・歯槽骨再生促進剤とその方法;歯周病における歯槽骨・歯周組織の破壊の予防・再生剤とその方法;上記組成物を用いて作成した骨・歯・歯周組織再生促進用細胞とその使用、作成方法が挙げられる。
<実施例1> 破骨細胞分化試験
マウスマクロファージ様RAW264細胞(理研より入手)は、破骨細胞分化誘導因子(RANKL)存在下で培養することで破骨細胞へと分化する。破骨細胞の初期分化マーカーである酒石酸耐性酸ホスファターゼ(TRAP)活性の測定と染色によって、破骨細胞分化の評価を行った。
RAW264細胞を10%胎児血清を含むαMEM培地を用いて3,000細胞/ウェルで96ウェルプレートに播種し、RANKL(50 ng/mL)の存在下で、アルテピリンC、又はバッカリン、又はドルパニンを最終濃度が10、30、100 μMになるように添加して72時間培養した。培養後、10%ホルマリン及びエタノールにて細胞を固定後、定法によりTRAP活性を測定後、TRAP染色を行った。
結果
RANKLによって破骨細胞分化を誘導するとTRAP染色によって赤色に染まり、核を複数持つ多核破骨細胞の形成が多数認められるが(図1a)、アルテピリンC、又はバッカリン、又はドルパニンを添加した場合、多核破骨細胞の形成が明らかに減少した(図1b-d)。
また、破骨細胞のマーカー酵素である酒石酸耐性酸ホスファターゼ(TRAP)の活性はRANKL添加によって著しく誘導されるが、アルテピリンC、又はバッカリン、又はドルパニンを添加した場合、いずれにおいても、TRAP活性の有意な抑制作用が認められた(図2)。
このことは、アルテピリンC、バッカリン、ドルパニンが破骨細胞の分化を抑制することを示しており、破骨細胞による骨吸収をアルテピリンC、バッカリン、ドルパニンが抑制することを示している。
<実施例2> 破骨細胞関連遺伝子発現解析
RAW264細胞を、実施例1と同様の密度になるように6ウェルプレートに播種したのち、RANKL(50 ng/mL)とアルテピリンC、又はバッカリン、又はドルパニンを最終濃度が10、30、100 μMになるように添加して72時間培養した。TRIzol(ライフテクノロジーズ・ジャパン)を用いて、Total RNAを抽出後、定法によりcDNAを作製して、リアルタイムRT-PCR法により、破骨細胞の初期の分化のマーカーである酒石酸耐性酸フォスファターゼ(Trap)および、後期の分化のマーカーであるカテプシンK(Ctsk)の遺伝子発現について解析した。
結果
RANKLによって破骨細胞分化を誘導するとマーカー遺伝子であるTrapおよびCtskの遺伝子発現が著しく上昇するが、アルテピリンC、又はバッカリン、又はドルパニンを添加した条件では、TrapおよびCtskの遺伝子発現が抑制された(図3)。
このことは、アルテピリンC、バッカリン、ドルパニンは、遺伝子レベルでも破骨細胞の初期および後期の分化を抑制することを示している。
<実施例3> 骨芽細胞分化試験
マウス頭蓋骨由来繊維芽細胞MC3T3-E1細胞(理研より入手)を5,000細胞/ウェルとなるように96ウェルマルチウェルプレートに播種し、10%牛胎児血清を含むαMEM培地を用いて2日間培養した。各ウェルにアルテピリンC、又はバッカリン、又はドルパニンを最終濃度が10、30、100 μMになるように添加してさらに6日間培養後、メタノールで細胞を固定した。骨芽細胞の初期分化マーカー酵素として知られるアルカリフォスファターゼ(ALP)活性を定法により測定した。
結果
コントロールと比較して、アルテピリンC、バッカリン、ドルパニンを添加して培養すると、ALP活性の上昇が認められた(図4)。このことは、アルテピリンC、バッカリン、ドルパニンが骨芽細胞の初期分化を促進することを示している。
<実施例4> 骨芽細胞石灰化試験
MC3T3-E1細胞は骨芽細胞に分化すると、カルシウムを沈着して石灰化を引き起こす。マウス頭蓋骨由来繊維芽細胞MC3T3-E1細胞(理研より入手)を5,000細胞/ウェルとなるように96ウェルマルチウェルプレートに播種し、10%牛胎児血清を含むαMEM培地を用いて2日間培養した。各ウェルに分化誘導剤であるアスコルビン酸(50 μg/mL)およびβグリセロフォスフェート(10 mM)とともにアルテピリンC、又はバッカリン、又はドルパニンを最終濃度が10、30、100 μMになるように添加してさらに12日間培養後、メタノールで細胞を固定した。石灰化により沈着したカルシウムをアリザリンレッド染色法にて染色した。
結果
コントロール(図5a)と比較して、アルテピリンC (図5b)、バッカリン(図5c)を添加して培養した細胞は、アリザリンレッド染色によって赤色に染色される面積が明らかに増加した。このことは、アルテピリンC 、バッカリン骨芽細胞の後期分化も促進されて石灰化が誘導されることを示しており、骨芽細胞による骨形成をアルテピリンC とバッカリンが促進することを示している。
<実施例5> 骨芽細胞関連遺伝子発現解析
MC3T3-E1細胞を、実施例3と同様の密度になるように6ウェルプレートに播種したのち、バッカリンを最終濃度が10、30、100 μMになるように添加して6日間培養した。TRIzol(ライフテクノロジーズ・ジャパン)を用いて、Total RNAを抽出後、定法によりcDNAを作製して、リアルタイムRT-PCR法により、骨芽細胞の初期の分化のマーカーであるアルカリフォスファターゼ(Alpl)と後期の分化のマーカーであるオステオカルシン(Osteocalcin)の遺伝子発現について解析した。
結果
コントロールと比較して、バッカリンを添加した条件では、AlplおよびOsteocalcinの遺伝子発現が増加した(図6)。
このことは、バッカリンが遺伝子レベルでも骨芽細胞の初期および後期の分化を促進することを示している。
以上、本発明を実施例に基づいて説明した。この実施例はあくまで例示であり、種々の変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
ブラジル産グリーンプロポリス由来の桂皮酸誘導体であるアルテピリンC、バッカリン、ドルパニンは、破骨細胞の分化を抑制したことから、骨吸収抑制作用があることが示された。また、アルテピリンCとバッカリン(baccharin)、は、骨芽細胞の分化を促進して石灰化も亢進させることから、骨形成促進作用があることが示された。したがって、骨減少性のヒトおよび動物の多くの硬組織(骨や歯)減少性疾患(骨粗鬆症、関節リウマチ、歯周病、ページェット病、がんの骨転移等)の予防・治療等に有用である。また、骨折、事故、手術、その他要因による硬組織(骨や歯)減少・欠損部位における骨形成・骨再生の誘導・促進、さらには歯周病における歯槽骨・歯周組織の破壊の予防や再生にも有用である。

Claims (5)

  1. アルテピリンC、又はバッカリン、又はドルパニンからなる群から選ばれる化合物を少なくとも1種以上含有する、破骨細胞分化抑制剤、及び/又は骨芽細胞分化促進剤。
  2. アルテピリンC、又はバッカリン、又はドルパニンからなる群から選ばれる化合物を少なくとも1種以上含有する、骨吸収抑制剤及び/又は骨形成促進剤。
  3. アルテピリンC、又はバッカリン、又はドルパニンからなる群から選ばれる化合物を少なくとも1種以上含有する、骨減少性疾患を予防及び/又は治療するための医薬組成物。
  4. アルテピリンC、又はバッカリン、又はドルパニンからなる群から選ばれる化合物を少なくとも1種以上含有する、骨代謝調節用医薬製剤。
  5. アルテピリンC、又はバッカリン、又はドルパニンからなる群から選ばれる化合物を少なくとも1種以上含有する、骨減少性疾患を予防及び/又は改善用機能性食品。
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