JP6267174B2 - 摺動部材 - Google Patents

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Description

本発明は、摺動部材に関するものであり、詳細には、裏金層と、合成樹脂および黒鉛からなる摺動層とを備えた摺動部材に係るものである。
合成樹脂に固体潤滑剤として鱗片状の黒鉛を添加した樹脂組成物を有する摺動部材が、従来より用いられている(特許文献1)。天然黒鉛は、一般的に、その性状によって、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛、土壌黒鉛に分けられる。黒鉛化度は、鱗状黒鉛が100%と最も高く、次いで鱗片状黒鉛の99.9%であり、土壌黒鉛は28%と低い。従来、摺動部材用の固体潤滑剤としての黒鉛は、黒鉛化度が高い鱗状黒鉛または鱗片状黒鉛の天然黒鉛を機械的に粉砕した鱗片状粒子が用いられてきた。
この鱗片形状の黒鉛は、炭素原子が規則正しく網目構造を形成して平面状に広がるAB面(六角網面平面、ベーサル面)が多数積層し、AB面に垂直なC軸方向に厚みを有する結晶である。積層したAB面相互間のファンデルワールス力による結合力がAB面の面内方向の結合力に比べてはるかに小さいため、AB面間でせん断が起きやすい。そのため、この黒鉛は、AB面の広がりに対して積層の厚みが薄いため、全体としては薄板状を呈している。なお、鱗片状黒鉛粒子は、外力を受けた場合にAB面間のせん断が起こることにより固体潤滑剤として機能すると考えられている。
近年、鱗片状黒鉛粒子を含有する樹脂組成物を用いた摺動部材では、鱗片状黒鉛粒子の形状が薄板状であり脆いことに起因して、摺動面となる樹脂組成物の表面を機械加工した際に鱗片状黒鉛粒子が割れて脱落してしまい、摺動層の表面の粗さが悪くなり、その結果として耐焼付性が悪くなるという問題が生じている。この問題を解決するため、合成樹脂に球状化天然黒鉛粒子を含有させ、機械加工後の表面粗さを小さくできるとする摺動材料が、たとえば特許文献2に提案されている。
ここで、球状化黒鉛粒子は、天然の鱗片状黒鉛粒子を原材料とし、鱗片状黒鉛粒子に小さな負荷を繰り返し加えて、折り曲げることにより球状に造粒したものである。(特許文献3、特許文献4)
特開2005-89514号公報 国際公開第2012074107号 国際公開第2012/137770号 特開2008−24588号公報
特許文献2の合成樹脂に天然黒鉛を球状化した黒鉛粒子を含有させた樹脂組成物を用いた摺動部材は、冷凍圧縮機等のように変動荷重を支承する軸受部に用いると、摺動時に摺動面に露出する黒鉛粒子に割れが生じて摺動面からの脱落がおこり摺動性能の低下が起こることが判明した。
上記の通り、球状化黒鉛粒子は、天然の鱗片状黒鉛粒子に小さな負荷を繰り返し加えて、折り曲げることにより球状に造粒したものである。この球状化黒鉛粒子の内部組織は、黒鉛結晶のAB面(六角網面平面)が粒子表面から中心方向に向けて粒子表面の丸みに沿って曲線状に複数積層した構造であり、黒鉛粒子の表面は黒鉛結晶のAB面となっている。しかし、造粒時に天然の鱗片状黒鉛粒子に大きな負荷をかけると、AB面間でせん断がおこり小さい鱗片状に粉砕されてしまうので、印加する負荷は小さくせざるを得ない。このため、球状化粒子の内部で、造粒前の鱗片状黒鉛粒子の表面どうしの接触が不十分となる箇所が生じ、鱗片状黒鉛粒子の表面間に空隙が形成されやすい。(特許文献3の図5(C)や特許文献4の図3〜図6参照)
この球状化天然黒鉛粒子は、摺動部材の合成樹脂に球形状が維持された状態で分散させた場合、黒鉛粒子内には空隙が存在するために、摺動面の露出する黒鉛粒子が負荷を受けると黒鉛粒子に割れが生じ、摺動面から脱落し、相手軸表面との間の隙間に侵入して摺動面に損傷が発生するという問題がある。
したがって、本発明の目的は、従来技術の上記欠点を克服して、摺動時に摺動層が含有する黒鉛粒子の脱落が起き難い樹脂系摺動部材を提供することである。
本発明の一観点によれば、裏金層と、この裏金層上に設けられた摺動層とを備える摺動部材が提供される。この摺動層は、合成樹脂と、この合成樹脂に分散された黒鉛粒子からなり、黒鉛粒子は合計で、摺動層の5〜50体積%を占め、黒鉛粒子の平均粒径は5〜50μmである。黒鉛粒子のうち、上記平均粒径の50%以上の粒径を有する黒鉛粒子は、長軸と短軸との比の平均で表される平均アスペクト比が、2〜7である長球状の粒子であり、この平均粒径の50%以上の粒径を有する長球状の黒鉛粒子の体積の合計は、摺動層内の黒鉛粒子の全体積に対して60体積%以上の比率を有する。この長球状の黒鉛粒子の断面組織は、黒鉛結晶のAB面が粒子表面から中心方向に向けて粒子表面の丸みに沿って曲線状に複数積層しており、この長球状の黒鉛粒子の断面組織内には空隙が存在しない。
摺動層中に分散する長球状の黒鉛粒子の断面(内部)組織は、「黒鉛結晶のAB面(六角網面平面)」が粒子表面から中心方向に向けて粒子表面の丸みに沿って曲線状に複数積層している。そのために、摺動層の摺動面に露出する長球状黒鉛粒子の表面は、黒鉛結晶のAB面で構成されることとなる。
上記の通り、黒鉛結晶は、AB面(六角網面平面)が多数積層し、AB面に垂直方向であるC軸方向に厚みを有する結晶であり、積層したAB面相互間の結合力(ファンデルワールス力)は、AB面の面内方向の結合力に比べてはるかに小さいため、AB面間でせん断が起きやすい。摺動面に黒鉛結晶のAB面からなる面が露出した場合、摺動方向に相手軸と摺動面では相手軸に対してAB面が接触するので、相手軸から負荷が小さい場合でも、AB面間でせん断が容易に起こり、その結果、摺動面と相手軸表面との摩擦力が小さくなり、摺動層の摩耗量が少なくなる。
さらに、長球状の黒鉛粒子は、断面組織内には空隙が存在しないため、摺動面に露出する長球状の黒鉛粒子が相手軸から負荷を受けても、長球状の黒鉛粒子には割れが生じることがない。そのため、長球状黒鉛粒子が摺動面から脱落したり、または長球状黒鉛粒子の割れに伴う破片が発生して、相手軸表面との間の隙間に侵入して摺動面に損傷が発生する問題がおこらない。
本発明の一具体例によれば、平均粒径の50%以上の粒径を有する長球状の黒鉛粒子の平均アスペクト比は、3〜7であることが好ましい。
黒鉛粒子の平均粒径の50%以上の粒径を有する長球状の黒鉛粒子の平均アスペクト比(S1)が3以上であると、平均アスペクト比が2以上3未満である場合よりも、さらに、耐摩耗性が向上する。これは、長球状の黒鉛粒子の表面積が大きくなることにより、合成樹脂との黒鉛粒子の接触面積が大きくなり、合成樹脂との密着性が大きくなるためと考えられる。さらに、長球状の黒鉛粒子の平均アスペクト比(S1)は、3.5以上とすることが好ましい。
本発明の一具体例によれば、平均粒径の50%以上の粒径を有する長球状の黒鉛粒子は、等方分散指数S2が、0.9〜1.1であることが好ましい。この等方分散指数S2は、
S2=X1/Y1
により定義される。ここで、X1は、摺動層の摺動面に対して垂直方向の断面組織における長球状の黒鉛粒子の摺動面に平行方向の長さであり、Y1は、摺動層の摺動面に対し垂直方向の断面組織における長球状の黒鉛粒子の摺動面に垂直方向の長さである。
平均粒径の50%以上の粒径を有する大きな長球状の黒鉛粒子は、上記の通り平均アスペクト比(S1)が2〜7であり粒子の形状は異方性を有するが、等方分散指数S2が、0.9〜1.1であれば、長球状の黒鉛粒子の長軸方向は、摺動層中で方向性を有さずに等方すなわち無配向に分散するので、摺動層の強度がさらに向上する。
摺動層内に分散する平均粒径の50%以上の粒径を有する大きな長球状の黒鉛粒子のうちで、その長軸が特定の方向を向くものの割合が大きくなると、摺動層は強度の異方性を有するようになる。例えば、摺動層の長球状の黒鉛粒子の長軸が摺動層の摺動面に平行方向に向く割合が大きいと、摺動層は、摺動面に平行な方向の負荷に対しては弱くなり、耐摩耗性が低くなる。本発明によれば、長球状の黒鉛粒子は、その長軸の向く方向が摺動層内で等方に分散する。換言すれば、黒鉛粒子は、長軸が摺動層内で特定の方向を向くようには配向しない、すなわち無配向となる。このため、摺動層が特定方向の負荷に対して強度が低くなってしまうことがない。摺動層の強度を高めるためには、長球状の黒鉛粒子の等方(無配向)分散指数(S2)は、0.85〜1.15が望ましく、さらには0.9〜1.10がより望ましい。
本発明の一具体例によれば、合成樹脂は、PAI、PI、PBI、PA、フェノール、エポキシ、POM(ポリアセタール)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PE(ポリエチレン)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)およびPEI(ポリエーテルイミド)のうちから選ばれる1種または2種以上からなることができる。
本発明の一具体例によれば、摺動層は、MoS、WS、h−BNおよびPTFEから選ばれる1種または2種以上の固体潤滑剤1〜20体積%をさらに含むことができる。
この固体潤滑剤を含有することにより、摺動層の摺動特性を高めることができる。
本発明の一具体例によれば、摺動層は、CaF、CaCo、タルク、マイカ、ムライト、酸化鉄、リン酸カルシウムおよびMoC(モリブデンカーバイト)のうちから選ばれる1種または2種以上の充填材を1〜10体積%をさらに含むことができる。この充填材を含有することにより、摺動層の耐摩耗性を高めることが可能となる。
本発明の一具体例によれば、摺動部材は、裏金層と摺動層との間に多孔質金属層をさらに有することができる。裏金層の表面に多孔質金属層を設けることにより、摺動層と裏金層の接合強度を高めることができる。すなわち、多孔質金属層の空孔部に摺動層を構成する組成物が含浸されることによるアンカー効果により裏金層と摺動層との接合力の強化が可能になる。
多孔質金属層は、Cu、Cu合金、Fe、Fe合金等の金属粉末を金属板や条等の表面上に焼結することにより形成することができる。多孔質金属層の空孔率は20〜60%程度であればよい。多孔質金属層の厚さは50〜500mm程度とすればよい。この場合、多孔質金属層の表面上に被覆される摺動層の厚さは0.05〜0.4mm程度となるようにすればよい。ただし、ここで記載した寸法は一例であり、本発明がこの値の限定されるものではなく、異なる寸法に変更するも可能である。
本発明の一例による摺動部材の断面を示す図。 長球状黒鉛粒子のアスペクト比(S1)および等方分散指数(S2)を説明する図。 本発明の他の例による摺動部材の断面を示す図。
図1に本発明による摺動部材1の一例の断面を概略的に示す。摺動部材1は、裏金層2上に、摺動層3が設けられている。摺動層3は、合成樹脂4と5〜50体積%の黒鉛粒子5とからなる。黒鉛粒子5の平均粒径は、5〜50μmであり、黒鉛粒子5の全体積に対して60体積%以上のものは、黒鉛粒子5の平均粒径の50%以上の粒径を有し、且つ、黒鉛粒子5の長軸と短軸の比の平均で表させるアスペクト比(S1)が、2〜7である長球状の粒子である。長球状の黒鉛粒子5の断面(内部)組織は、「黒鉛結晶のAB面」が粒子表面から中心方向に向けて粒子表面の丸みに沿って曲線状に複数積層しており、長球状の黒鉛粒子5の断面組織中には空隙が存在しない。
なお、摺動層3と裏金層2との間に多孔質金属層6を設けてもよい。多孔質金属層6を設けた摺動部材の一例の断面を図3に概略的に示す。
本明細書で用いる「長球状」の語は、幾何学的に厳密な長球形を意味するものではなく、広い意味で、一方向に長く延びており(すなわち上記アスペクト比を有する)、角ばって不定形な形状を有さないことを表わす。
また、長球状の黒鉛粒子5の組織内に「空隙がない」ことは、摺動層3の摺動面に垂直方向の断面において、複数個(例えば、20個)の黒鉛粒子を電子顕微鏡を用い倍率2000倍で電子像を撮影し、撮影画像中の長球状の黒鉛の粒子の断面組織内に空隙が形成されていないことを観察することにより確認できる。ただし、長球状の黒鉛の粒子の断面組織内に幅0.1μm以下の細線状の空隙の形成は許容されるが、この幅0.1μm以下の細線状の空隙は、その総面積が、黒鉛粒子の断面組織中での面積率が2%以下に限定される。
摺動層3内に分散する黒鉛粒子の平均粒径の50%以上の径を有する長球状の黒鉛粒子5は、次式による等方分散指数(S2)が、0.85〜1.15となっていることが好ましい。
S2=X1/Y1
ここで、図2に示すように、X1は(摺動層の摺動面に対して垂直方向の断面組織での)長球状の黒鉛粒子の摺動面に対して平行方向の長さであり、Y1は(摺動層の摺動面に対して垂直方向の断面組織での)長球状の黒鉛粒子の摺動面に対して垂直方向の長さである。
さらに、等方分散指数(S2)は、0.9〜1.1とすることが好ましい。
摺動層3に含まれる黒鉛粒子5のうち平均粒径の50%以上の粒径を有するものは、長球状の黒鉛粒子5のみであり、鱗片状黒鉛粒子は存在しない。
また、平均粒径の50%以上の粒径を有する長球状の黒鉛粒子5以外に摺動層3に含有される黒鉛粒子5は、黒鉛粒子5の全体積に対して40体積%未満であり、それには、平均粒径の50%未満の粒径を有する長球状の黒鉛粒子(アスペクト比2〜7で、粒子の内部に空隙が無となっている)の他には、原材料である球状化黒鉛粒子に含まれる不可避の鱗片状黒鉛粒子と、この球状黒鉛粒子の内部の空隙をなくすための混合工程で発生する不可避の鱗片状黒鉛粒子等がある。この鱗片状黒鉛粒子は、摺動層3が含有する黒鉛粒子5の全体積に対する割合で最大20%が摺動層3に含有されることは許容される。なお、不可避の鱗片状黒鉛粒子は、粒径が2μm以下である。
上記に説明した摺動部材1について、製造工程に沿いながら以下に詳細に説明する。
(1)原材料黒鉛粒子の準備
黒鉛粒子の原材料として、鱗片状天然黒鉛を造粒した球状黒鉛粒子を用いることができる。この球状黒鉛粒子は、黒鉛結晶のAB面が粒の表面から内部に向かって粒子表面の丸みに沿って曲線状に複数積層した組織となっており、粒子の内部には空隙が形成されている。この原材料の球状黒鉛粒子は、レーザー回折式粒度測定装置により測定される平均粒径が7〜60μmで、円形度が0.92以上であるものを用いることが好ましい。ここで、円形度は、次式で表される。
円形度=(投影粒子形状と同一の面積を有する円の周囲長)/(投影粒子形状の周囲長)
投影粒子形状が真円をなす場合には円形度は1となる。投影粒子形状は、光学顕微鏡や走査型電子顕微鏡などを用いて得られた撮影画像から求めることができる。
なお、原材料の球状黒鉛粒子の円形度が0.92未満のものを用いた場合、後述する混合工程での空隙を無くす処理の際に、黒鉛粒子の表面には不均質に負荷が加わりやすくなり、黒鉛粒子の表面が局部的に変形してせん断したり、内部に割れが生じて新たな空隙が形成されやすくなる。
(2)合成樹脂粒子の準備
原材料である合成樹脂粒子は、球状黒鉛粒子の平均径の50〜150%の平均粒径を有するものを用いることが好ましい。合成樹脂としては、PAI、PI、PBI、PA、フェノール、エポキシ、POM、PEEK、PE、PPSおよびPEIのうちから選ばれる1種または2種以上からなるものを用いることができる。
(3)混合
黒鉛成分が5〜50体積%となるように、準備した球状黒鉛粒子と合成樹脂粒子との割合を調整する。この球状黒鉛粒子および合成樹脂粒子を有機溶剤で希釈し、粘度が55000〜100000mPa・sとなる組成物を作製する。この希釈液をロールミルで混合することにより、混合時に、ほぼ球状であった黒鉛粒子に長球形状が付与され、同時に、黒鉛粒子の内部組織中の空隙が消滅する。
この理由は、以下のように考えられる。
従来の黒鉛粒子や他の充填材粒子を含有する樹脂組成物の希釈液の粘度は、通常は、最大でも15000mPa・s程度になされていた。しかし、ここでは、希釈した組成物の粘度を55000〜100000mPa・sと通常よりも大きくする。このことにより、ロールミルによる混合時に、黒鉛粒子と樹脂粒子とが同時にロールミルのロール間のギャップ(間隙)を通過する頻度が高くなる。黒鉛粒子と樹脂粒子とが同時にロールギャップを通過するときに、黒鉛粒子に負荷が加わることにより黒鉛粒が変形するが、ロールから黒鉛粒子へ加わる負荷は、黒鉛粒子に接した樹脂粒子が変形することにより緩和されることで、黒鉛粒子の表面に局部的に過度な負荷が加わることが防がれ、黒鉛粒子をせん断させることなく変形させられる。黒鉛粒子は、合成樹脂の粒子とともにロールミルのロールギャップを通過する毎に徐々に変形し長球形状が付与され、同時に、粒子の内部の空隙がなくなる。
しかし、組成物の粘度が100000mPa・sを超えると、溶剤の濃度が低すぎて、樹脂粒子と黒鉛粒子とを均質に分散させ難くなるため好ましくない。
ロールミルのロール間のギャップは、球状黒鉛粒子の平均粒径の150%〜250%に相当する間隔に設定する。従来技術においては、摺動部材である黒鉛粒子や他の充填材粒子を含有する樹脂組成物をロールミルを用いて混合する場合、混合は、単に有機溶剤中に樹脂粒子と黒鉛粒子や他充填材粒子を均質分散させることを目的としており、ロールミルのロール間のギャップは、原材料である樹脂粒子や黒鉛粒子の粒径よりもかなりに大きな間隔(例えば、黒鉛粒子の平均粒径の400%程度)になされていた。
なお、球状黒鉛粒子のみを有機溶剤で希釈した組成物をロールミルに通しても、球状黒鉛粒子を変形させることはできない。この場合、球状黒鉛粒子にせん断や割れが発生してしまい変形させることはできない。これは、ロール間のギャップを球状黒鉛粒子が通過するとき、球状黒鉛粒子のロール表面との接触部や球状黒鉛粒子どうしの接触部に局部的に大きな負荷が加わりせん断や割れが生じるためと考えられる。
上記した合成樹脂粒子の平均粒径が、球状黒鉛粒子の平均粒径の50〜150%である関係は、ロール間のギャップを通過するときに黒鉛粒子に過度な負荷が加わりせん断が発生しまうことを防ぐために好適である。摺動層中に、さらに、固体潤滑剤や充填材を含有させる場合、これら固体潤滑剤や充填材の粒子は、球状黒鉛粒子の平均粒径の50%以下の平均粒径を有するものを用いることが好ましい。
合成樹脂粒子と黒鉛粒子の混合方法は、上記実施形態で示したロールミルを用いた混合方法に限定されないで、他の混合機を用いたり、他の混合条件を調整することも可能である。
(4)裏金
裏金層としては、Fe合金、Cu、Cu合金等の金属板を用いることができる。裏金層表面、すなわち摺動層との界面となる側に多孔質金属層を形成してもよいが、多孔質金属層は裏金層と同じ組成を有することも、異なる組成または材料を用いることも可能である。
(5)被覆工程
混合後の組成物は、裏金層の一方の表面、あるいは裏金層上の多孔質金属層に塗布され、組成物を塗布した裏金は、組成物の厚さを均一とするため、所定の一定の間隙を有するロール間に通される。
混合後の組成物の粘度は、摺動部材の摺動層中での長球状の黒鉛粒子の長軸方向の等方(無配向)分散にも密接に関係し、この長球状の黒鉛粒子の等方分散は、この被覆工程での条件設定が重要であることが判明した。
組成物の裏金層表面への塗布を容易にするために、混合工程後の組成物を、さらに有機溶剤で粘度が15000mPa・sとなるように希釈した後に被覆工程を実施したところ、完成した摺動部材は、摺動層中に分散する球状黒鉛粒子の多くは、長軸が摺動面に対して略平行な方向を向くように分散し、摺動層の強度が低いものとなった。組成物の粘度が低い(有機溶剤の割合が多い)場合、組成物を塗布した裏金層がロール間を通過するときに、組成物中の長球状の黒鉛粒子が、その長軸が摺動面に対して平行な方向を向くように有機溶剤とともに流動しやすくなるからである。
他方、組成物の粘度が55000mPa・s以上であると、被覆工程で長球状の黒鉛粒子が流動しにくいので、この長球状の黒鉛粒子は、その長軸の向く方向が、摺動部材の摺動層中において無配向すなわち等方に分散する。具体的には、組成物の粘度が55000mPa・s以上であると、摺動層の分散する長球状の黒鉛粒子は、等方分散指数(S2)が0.85〜1.15となり、さらに組成物に粘度が60000mPa・s以上であると等方分散指数が0.9〜1.1となり、摺動層の強度がより大きくなる。
(6)乾燥・焼成工程
組成物を被覆した裏金層(あるいは、裏金層および多孔質多孔質金属層)は、組成物中の有機溶剤を乾燥させるための加熱、組成物中の樹脂を焼成するための加熱を施して摺動部材が得られる。これらの加熱条件は、使用した樹脂に対して一般に用いられる条件を採用できる。
(7)測定
黒鉛粒子5の平均粒径は、摺動部材の摺動面に垂直方向の断面を、電子顕微鏡を用いて電子像を200倍で撮影し、黒鉛粒子5の平均粒径を測定した。具体的には、黒鉛粒子5の平均粒径は、得られた電子像を一般的な画像解析手法(解析ソフト:Image−Pro Plus(Version4.5);(株)プラネトロン製)を用いて、各黒鉛粒子5の面積を測定し、それを円と想定した場合の平均直径に換算して求める。
黒鉛粒子5の全体積に対して60%体積%以上のものが、平均粒径の50%以上であることは、上記の手法で得られた電子像を、上記の画像解手法を用い、電子像中の黒鉛粒子5の全面積に対する平均粒径の50%以上の径を有する黒鉛粒子5による面積の割合が60%以上となることで確認できた。なお、この面積割合の値は、体積割合の値に等しい。
平均粒径の50%以上である粒径を有する長球状の黒鉛粒子5のアスペクト比(S1)は、上記の手法で得られた電子像を、上記の像解析手法を用い、平均粒径50%以上である径を有する黒鉛粒子5を対象として測定された各黒鉛粒子5の長軸の長さ(L)と短軸の長さ(S)の比(長軸の長さ(L)/短軸の長さ(S))の平均として求める。(図2参照)。なお、黒鉛粒子5の長軸の長さ(L)は、上記電子像中の黒鉛粒子5の長さが最大となる位置での長さを示し、黒鉛粒子5の短軸の長さ(S)は、この長軸の長さ(L)の方向に直行する方向での長さが最大となる位置での長さを示す。
平均粒径の50%以上の径を有する長球状の黒鉛粒子は、断面組織が、「黒鉛結晶のAB面」が粒子表面から中心方向に向けて粒子表面の丸みに沿って曲線状に複数積層している組織となっていることは、摺動部材の摺動面に垂直方向の断面において、複数個(例えば20個)の黒鉛粒子を電子顕微鏡を用いて倍率2000倍で電子像を撮影し、撮影画像中の長球状の黒鉛粒子の断面組織が、粒子表面から中心方向に向けて粒子表面の丸みに沿った層状部が形成されていることが観察されることで確認できた。
原材料として球状化天然黒鉛粒子を用い、この黒鉛粒子を、上記の混合工程で黒鉛粒子の内部組織中の空隙を無くす処理を施しても、長球状の黒鉛粒子の一部は、上記の観察方法により内部に、幅(組織中の黒鉛結晶のAB面に垂直方向の幅)が0.1μm以下の細線状の空隙が、空隙の総面積が黒鉛粒子の断面組織中での面積率で2%以下で形成される場合があったが、このような細線状の空隙を有する長球状の黒鉛粒子であれば、完全に空隙の無い長球状の黒鉛粒子と同等の摺動性能を有する。
等方分散指数は、摺動部材1の摺動面に対して垂直方向の断面を電子顕微鏡を用いて電子像を200倍で撮影した画像を、上記画像解析手法を用い、摺動層3中の平均粒径の50%以上の粒径を有する各長球状の黒鉛粒子5の摺動面に対して平行方向の長さ(X1)と、摺動面に対して垂直方向の長さ(Y1))を測定し、それら各長さの比(X1/Y1)の平均値を算出して求めた。
本発明による裏金層および摺動層を有する摺動部材の実施例1〜10、および比較例11〜17を以下に示すとおり作製した。実施例1〜10および比較例11〜17の摺動部材の摺動層の組成は、表1に示すとおりである。
また、表2には、実施例、比較例の原材料として用いた球状黒鉛粒子および鱗片状黒鉛粒子を上記に説明した方法で測定した平均粒径および円形度を示す。
実施例1〜10および比較例11、13〜17において原材料として用いた球状黒鉛粒子は、鱗片状天然黒鉛を球状に造粒したもので、粒子の内部組織は黒鉛結晶のAB面が粒の表面から内部に向かって粒子表面の丸みに沿って曲線状に複数積層した組織となっており、粒の内部には約10%程度の空隙が形成されていた。
比較例12では原材料として鱗片状黒鉛粒子を用いた。鱗片状黒鉛粒子は、平面状に広がるAB面(六角網面平面)が多数積層しAB面に垂直方向であるC軸方向に厚みを有する組織となっており、AB面の広がりに対して積層の厚みが薄いため、粒子の形状は薄板状を呈している。この鱗片状黒鉛粒子は、断面組織内には空隙がない。
実施例1〜10および比較例11〜17の原材料である合成樹脂(PAI、PI)粒子は、平均粒径が、表2に示す原材料である黒鉛粒子の平均粒径に対して125%であるものを用いた。実施例5、6の原材料として用いた固体潤滑剤(MoS、PTFE)は粒子の平均粒径が、表2に示す原材料である黒鉛粒子の平均粒径に対して30%のものを用い、充填材(CaCo)の粒子は、粒子の平均粒径が黒鉛粒子の平均粒径に対して25%のものを用いた。
上記の原材料を用いた表1に示す組成物を有機溶剤で希釈し、表2の「粘度」欄に示す粘度の組成物を準備し、次に、ロールミルを用いて組成物の混合と球状黒鉛粒子の内部空隙を消滅させる処理(処理時間1時間)を同時に行った。なお、ロールミルのロール間のギャップは、各実施例および各比較例で用いた黒鉛粒子の平均径に対する比率が表2の「ロール間のギャップ(%)」欄に示す値となるようにした。
次に混合後の組成物をFe合金製の裏金層の一方の表面に塗布したのち、ロールにて裏金層の一方の表面上に組成物が所定の厚さとなるように被覆した。なお、実施例1〜8及び比較例11〜17の裏金層はFe合金を用い、実施例9は表面にCu合金の多孔質焼結部を有するFe合金を用いた。
次に、組成物中の溶剤を乾燥する加熱、組成物の合成樹脂の焼成する加熱を施して摺動部材を作製した。作製された実施例1〜10および比較例11〜17の摺動部材の摺動層の厚さは0.3mmであり、裏金層の厚さは1.7mmであった。
作製された実施例の摺動部材は、上記に説明した測定方法による摺動層中に分散する黒鉛粒子の平均粒径の測定を行い、その結果を表1の「平均粒径」欄に示した。また、上記に説明した測定方法による摺動層中に分散する黒鉛粒子のうち平均粒径の50%以上の粒径を有する長球状の黒鉛粒子5の平均アスぺクト比(S1)の測定行い、その結果を表1の「アスペクト比(S1)」欄に示した。上記に説明した測定方法による摺動層中に分散する黒鉛粒子のうち平均粒径の50%以上の粒径を有する黒鉛粒子の等方分散指数(S2)の測定を行い、その結果を表1の「分散指数(S2)」欄に示し、摺動層に分散する全体の黒鉛粒子5に対する平均粒径の50%以上の粒径を有し、平均アスペクト比が2〜7である長球状の黒鉛粒子5の割合を、表1の「割合(%)」欄に示した。
なお、比較例11〜15の摺動層中の分散する黒鉛粒子は、発明の長球状の黒鉛粒子の構成を満足しないが、実施例と同様の方法で平均アスペクト比(S1)、等方分散指数(S2)を測定した結果を表1に示す。
また、上記に説明した測定方法により、摺動層3に分散する黒鉛粒子5の全粒子の平均粒径に対して50%以上の粒径を有する黒鉛粒子の断面組織内の空隙の有無を確認した。その結果を表1の「空隙有無」欄に示す。なお、実施例3、8、10では、長球状の黒鉛粒子5の一部において、断面組織内に幅0.1μm以下で黒鉛結晶の層状組織に沿った細線状の空隙が、この空隙を有する長球状の黒鉛粒子5の断面の全面積に対する面積比率で2%以下確認されたものを含んだが、内部組織に空隙が無と評価し、表1の「空隙有無」欄に結果を示した。
各実施例および各比較例に対して、表3に示す条件で摺動試験を行った。各実施例および各比較例の摺動試験後の摺動層の摩耗量を表1の「摩耗量」欄に示す。また、各実施例および各比較例は、摺動試験後の摺動部材を摺動面に対して垂直方向に切断した複数箇所(例えば5箇所)の断面組織を電子顕微鏡を用い倍率200倍で電子像を撮影し、撮影画像中の摺動面付近の黒鉛粒子の脱落の有無を目視で確認し評価した。その結果は、黒鉛粒子の脱落が確認された場合には「有」、脱落がなかった場合には「無」とし、表1の「脱落有無」欄に示した。
表1に示す結果から分かるとおり、実施例1〜10は、比較例11〜17に対して、摺動試験後の摺動層の摩耗量が少なく、また、摺動面からの長球状の黒鉛粒子の脱落はなかった。さらに、実施例1〜6は、長球状の黒鉛粒子5の等方分散指数(S2)が0.90〜1.10となり、特に、摩耗量が少なくなった。
また、長球状の黒鉛粒子5のアスペクト比(S1)が3以上である実施例1〜7、9は、アスペクト比(S1)が3未満である実施例8、10よりも摩耗量が少なくなる結果となったが、これは、上記で説明したように長球状の黒鉛粒子の表面積が大きくなることにより、合成樹脂との接触面積が増大して合成樹脂による保持が大きくなったためと考えられる。
また、上記のように実施例3、8、10では、長球状の黒鉛粒子5の一部において、断面組織内に幅0.1μm以下で黒鉛結晶の層状組織に沿った細線状の空隙が、この空隙を有する長球状の黒鉛粒子5の断面組織の全面積に対する面積率で2%以下確認されたものを含んだが、これら実施例では、摺動試験後の摺動面からの長球状の黒鉛粒子5の脱落は観察されなかった。
比較例11は、表2に示すように実施例と同じく、原材料である黒鉛粒子として内部に空隙を有する球状化黒鉛粒子を用いたが、黒鉛粒子を含む組成物を有機溶剤で粘度が15000mPa・sとなるよう希釈したため、混合工程で原材料である球状化黒鉛粒子の変形量が少なくなり、その結果、摺動層の分散黒鉛粒子は、平均アスペクト比(S1)が小さくなり、断面組織内には、原材料である球状化黒鉛粒子の内部に形成されていた空隙が、ほぼそのまま残った。このため、比較例11の摺動部材は、摺動試験において、摺動層の表面に露出する黒鉛粒子が相手軸の表面からの負荷を受けると、黒鉛粒子に割れが生じたり、内部空隙が潰されて座屈が起こり、粒の表面積が小さくなり、黒鉛粒子の合成樹脂による保持が十分でなくなることにより、黒鉛粒子、または黒鉛粒子のせん断片が摺動面から脱落し、相手軸表面との間の空隙に侵入して摺動面の摩耗が促進されたと考えられる。
比較例12は、表2に示すように実施例とは異なり、原材料である黒鉛粒子として鱗片状黒鉛粒子を用いた。比較例12において摺動層の摩耗量が増加した理由は以下のように考えられる。 薄板状である鱗片状黒鉛粒子を含有する比較例12の摺動部材では、摺動層において鱗片状黒鉛粒子の一部は、平面状に広がるAB面が摺動面に平行に配向するが、大部分の鱗片状黒鉛粒子は、AB面が摺動層の表面に対して傾斜して分散するため、摺動層の表面に露出する黒鉛粒子の薄板状粒子のエッジ面(薄板状粒子の厚み方向の側面)が露出する。このエッジ面は相手軸表面との摩擦力が高いため、摺動層の摩耗量が多くなる。さらに、鱗片状黒鉛粒子の形状が薄板状であり脆いことに起因し、摺動時に、摺動面に露出する鱗片状黒鉛粒子に割れが生じて脱落しやすく、脱落した鱗片状黒鉛粒子のせん断片が、摺動面と相手軸との間の空隙に侵入することにより、摺動層の摩耗量が増加する。
比較例13は、表1に示すように摺動層に含まれる黒鉛粒子の平均粒径の50%以上の粒径を有する黒鉛粒子の平均アスペクト比(S1)が1.7と小さく、また、黒鉛粒子の断面組織内に空隙を有するので、本発明の構成を満たさない。この理由は、表2に示すように、混合工程を施すための有機溶剤で希釈した組成物の粘度が50000mPa・sと実施例よりも低いことが関係する。比較例13は組成物中の有機溶剤の割合が多いため、混合工程でロールミルのロール間のギャップを黒鉛粒子が通るときに同時に合成樹脂の粒子が通過する頻度が低くなり、その結果、原材料である球状黒鉛粒子の変形が不十分となるので、表1に示すように平均アスペクト比(S1)が、実施例よりも低くなり、黒鉛粒子の内部の断面組織内に空隙が残ったと考えられる。
比較例14は、表1に示すように比較例14の摺動層に含まれる黒鉛粒子のうち、黒鉛粒子の平均粒径の50%以上の粒径を有する黒鉛粒子の平均アスペクトが2.7であるが、黒鉛粒子の断面組織内に空隙が形成されており、本発明の構成を満たさない。これは、比較例14は表2に示すように原材料の球状黒鉛粒子の円形度が低い(円形度0.89)ものを用いたので、混合工程で黒鉛粒子の表面には不均質に負荷が加わりやすくなり黒鉛粒子の表面が局部的に変形してせん断したり、表面に割れが生じて内部に伝播することで新たな空隙が形成されやすくなったためと考えられる。
比較例15は、表1に示すように比較例15の摺動層に含まれる黒鉛粒子の平均粒径の50%以上の粒径を有する黒鉛粒子の平均アスペクト比(S1)が1.5と小さく、また、黒鉛粒子の断面組織内に空隙を有するので、本発明の構成を満たさない。この理由は、表2に示すように、混合工程で用いるロールミルのロール間のギャップが、原材料である黒鉛粒子の平均粒径の400%に相当する広い隙間であったので、ロールミルのロール間のギャップを黒鉛粒子が通るときに黒鉛粒子へ加えられる負荷が小さく、その結果、原材料である球状黒鉛粒子の変形が不十分となったので、表1に示すように平均アスペクト比(S1)が、実施例よりも低くなり、黒鉛粒子の内部の断面組織内に空隙が残ったと考えられる。
比較例13〜15の摺動部材は、摺動層に表面に露出する黒鉛粒子が内部に空隙を有するので、摺動試験において、相手軸の表面からの負荷を受けると、黒鉛粒子に割れが生じたり、内部空隙が潰されて座屈が起こるなどにより粒の表面積が小さくなり、黒鉛粒子、または黒鉛粒子のせん断片が摺動面から脱落し、相手軸表面との間の隙間に侵入して摺動面の摩耗が促進されたと考えられる。
比較例16は、表1に示すように摺動層に含まれる黒鉛粒子の量が2体積%と少ないため、摺動層と相手軸表面との摩擦力を低くする効果が不十分となり、摺動層の摩耗量が多くなったと考えられる。
比較例17は、表1に示すように摺動層に含まれる黒鉛粒子の量が60体積%と多いため、摺動層の強度が低くなり、摺動層の摩耗量が多くなったと考えられる。
1:摺動部材、 2:裏金層、 3:摺動層、 4:合成樹脂、 5:黒鉛粒子、 6:多孔質金属層

Claims (6)

  1. 裏金層と、該裏金層上に設けられた摺動層とを備える摺動部材であって
    前記摺動層は、合成樹脂と、該合成樹脂中に分散された黒鉛粒子とからなり、前記黒鉛粒子の体積の合計は、前記摺動層の5〜50体積%を占め、前記黒鉛粒子の平均粒径は5〜50μmであり、
    前記黒鉛粒子のうち、前記平均粒径の50%以上の粒径を有する黒鉛粒子は、長軸と短軸との比の平均で表される平均アスペクト比が〜7である長球状の粒子であり、かつ前記平均粒径の50%以上の粒径を有する長球状の黒鉛粒子の体積の合計は、前記摺動層内の黒鉛粒子の全体積に対して60体積%以上の比率を有し、
    前記長球状の黒鉛粒子の断面組織は、黒鉛結晶のAB面が粒子表面から中心方向に向けて粒子表面の丸みに沿って曲線状に複数積層しており、前記長球状の黒鉛粒子の断面組織内には空隙が無い、摺動部材。
  2. 前記平均粒径の50%以上の粒径を有する長球状の黒鉛粒子は、等方分散指数S2が、0.9〜1.1であり、前記等方分散指数S2が
    S2=X1/Y1
    により表され、ここで
    X1は、前記摺動層の摺動面に対して垂直方向の断面組織での、前記長球状の黒鉛粒子の前記摺動面に対して平行方向の長さであり、
    Y1は、前記摺動層の摺動面に対して垂直方向の断面組織での、前記長球状の黒鉛粒子の前記摺動面に対して垂直方向の長さである、請求項1に記載された摺動部材。
  3. 前記合成樹脂が、PAI、PI、PBI、PA、フェノール、エポキシ、POM、PEEK、PE、PPS、及びPEIから選ばれる1種または2種以上からなる、請求項1または請求項に記載された摺動部材。
  4. 前記摺動層が、MoS、WS、h−BN、及びPTFEから選ばれる1種または2種以上の固体潤滑剤を1〜20体積%をさらに含む、請求項1から請求項までのいずれか1項に記載された摺動部材。
  5. 前記摺動層が、CaF、CaCo、タルク、マイカ、ムライト、酸化鉄、リン酸カルシウム、及びMoCから選ばれる1種または2種以上の充填材を1〜10体積%さらに含む、請求項1から請求項までのいずれか1項に記載された摺動部材。
  6. 前記裏金層と前記摺動層との間に、多孔質金属層をさらに有する、請求項1から請求項までのいずれか1項に記載された摺動部材。
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