JP6712203B2 - 摺動装置 - Google Patents

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Description

本発明は、軸部材および軸部材を支承する摺動部材を備える摺動装置に関するものであり、詳細には、合成樹脂製の軸部材と、裏金層上に合成樹脂および鱗片状黒鉛からなる摺動層とを備える摺動部材とを有する摺動装置に係るものである。
従来、互いに摺動接触する摺動面がともに樹脂組成物である二つの部材を組合わせた構造の摺動装置が用いられている。二つの部材のうちの一方は、回転動作あるいは往復動作を行う軸部材であり、他方は、この軸部材を支承する摺動層を有する摺動部材である。
軸部材として、強度を高めるために、合成樹脂にカーボン繊維、ガラス繊維、金属粒子、セラミックス粒子等の硬質粒子を含有させたものが従来より知られている(特許文献1、特許文献2参照)。
他方、摺動部材としては、合成樹脂に固体潤滑剤として鱗片状黒鉛を添加した樹脂組成物を有する摺動部材が、従来より用いられている(特許文献3)。天然黒鉛は、一般的に、その性状によって、鱗片状黒鉛、鱗状黒鉛、土壌黒鉛に分けられる。黒鉛化度は、鱗状黒鉛が100%と最も高く、次いで鱗片状黒鉛の99.9%であり、土壌黒鉛は28%と低い。従来、摺動部材用の固体潤滑剤としての黒鉛は、黒鉛化度が高い鱗状黒鉛または鱗片状黒鉛の天然黒鉛を機械的に粉砕した鱗片状粒子が用いられてきた。
この鱗片形状の黒鉛は、炭素原子が規則正しく網目構造を形成して平面状に広がるAB面(六角網面平面、ベーサル面)が多数積層し、AB面に垂直なC軸方向に厚みを有する結晶である。積層したAB面相互間のファンデルワールス力による結合力がAB面の面内方向の結合力に比べてはるかに小さいため、AB面間でせん断が起きやすい。そのため、この黒鉛は、AB面の広がりに対して積層の厚みが薄いため、全体としては薄板状を呈している。なお、鱗片状黒鉛粒子は、外力を受けた場合にAB面間のせん断が起こることにより固体潤滑剤として機能すると考えられている。
従来、黒鉛を合成樹脂の摺動層に添加する場合、AB面を摺動面に略平行にすることが行なわれている。例えば、引用文献4では、固体潤滑剤の相対C軸相対強度比を85%以上とする樹脂系コーティング層を設けた摺動部材が開示されている。
特開2001‐132757号公報 特開平5-179277号公報 特開2005-89514号公報 特開2008−95725号公報
互いに摺動する摺動面がともに樹脂組成物である軸部材と摺動部材とを組合わせた構造の摺動装置は、摺動面間に油の供給がなされていない条件(以下、「無潤滑条件」という)で運転がなされる場合も多く、無潤滑条件では摺動部材の摺動面と軸部材の表面とが直接、接触した摺動が起こる。摺動部材の摺動層に分散する鱗片状黒鉛粒子は、粒径が小さいもののみである場合、軸部材との摺動によって摺動層の摩耗が起きやすくなるが、粒径が大きいものを含むと摺動層の耐摩耗性が高くなる。特に特許文献4のように、摺動層に分散する鱗片状黒鉛粒子のAB面が摺動面に略平行に配向する場合、鱗片状黒鉛粒子の粒径が5μm未満と小さいもののみであると、鱗片状黒鉛粒子の摺動層からの脱落は抑制されるが、摺動層の摩耗は起きやすくなる。他方、粒径が5μm以上と大きいものを含むと、例えば軸部材からの負荷が小さい場合は、耐摩耗性は高いが、軸部材からの負荷が大きい場合、特に長軸長さが5μm以上である鱗片状黒鉛粒子の摺動層からの脱落が発生しやすく、ひいては摩耗が起きやすくなることが判明した。
したがって、本発明の目的は、摺動面がともに樹脂組成物である軸部材と摺動部材を組合わせた構造の摺動装置において、従来技術の上記欠点を克服して、無潤滑条件でも摺動部材の摺動面からの鱗片状黒鉛粒子の脱落が発生し難く、耐摩耗性に優れる摺動装置を提供することである。
本発明の一観点によれば、5〜50体積%の硬質粒子が分散された合成樹脂からなる軸部材と、この軸部材を支承(支持)する摺動部材とを備えた摺動装置が提供される。この摺動部材は、裏金層と、この裏金層上に設けられた摺動層とを備え、摺動層は、合成樹脂と、合成樹脂に分散された鱗片状黒鉛粒子からなり、鱗片状黒鉛粒子の体積の合計は、摺動層の体積の5〜50体積%を占める。鱗片状黒鉛粒子は平板部を有し、その断面組織は、黒鉛結晶のAB面が平板部の厚さ方向(すなわち、黒鉛結晶のAB面に対して垂直方向であるC軸方向)に複数積層し、鱗片状黒鉛粒子の平均粒径は5〜25μmであり、鱗片状黒鉛粒子は、屈曲部を有する屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子を含み、摺動層中の鱗片状黒鉛粒子の全体積に対する屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子の体積割合が20%以上である。
ここで、屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子とは、鱗片状黒鉛粒子のうち、長軸方向の長さが5μm以上であり、複数の平板部からなるものであり、複数の平板部のうち、断面組織内で、AB面に平行な方向の長さが最大である主平板部と、主平板部に隣接する少なくとも1つの側平板部とを有し、主平板部と側平板部とのなす屈曲角度の少なくとも1つが20°以上になっているものである。
本発明の摺動装置は、主に、摺動部材の摺動層中に分散する鱗片状黒鉛粒子が潤滑成分として作用する。上記のとおり、摺動層中に分散する鱗片状黒鉛粒子は、AB面(六角網面平面)が多数積層し、AB面に垂直方向であるC軸方向に厚みを有する結晶であり、AB面間でせん断が起きやすく平板状を呈しており、摺動面に黒鉛結晶のAB面からなる面が露出した場合、摺動方向に軸部材と摺動面では軸部材に対してAB面が接触するので、軸部材から摺動面に対して略平行に負荷が加わると、AB面間でせん断が容易に起こり、その結果、摺動面と軸部材表面との摩擦力が小さくなり、摺動層の摩耗量が少なくなる。
また、本発明の摺動装置の摺動部材は、軸部材との摺動時において、摺動層中に分散する、屈曲部を有する屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子によって、摺動面の鱗片状黒鉛粒子の脱落が防がれ耐摩耗性が向上する。
本発明の一具体例によれば、摺動部材の摺動層中の鱗片状黒鉛粒子の全体積に対する屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子の体積割合が25%以上であることが好ましい。摺動層中の鱗片状黒鉛粒子の全体積に対する屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子の体積割合が25%以上である場合は、摺動面から黒鉛粒子がさらに脱落し難くなり、耐摩耗性がさらに向上する。さらに、屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子の体積割合は30%以上であることが好ましい。
本発明の一具体例によれば、主平板部と側平板部とのなす屈曲角度の少なくとも1つが25°以上であることが好ましい。屈曲角度が25°以上である場合は、摺動面から黒鉛粒子がさらに脱落し難くなり、耐摩耗性がさらに向上する。さらに、少なくとも1つの屈曲角度が30°以上であることが好ましい。また、少なくとも1つの屈曲角度は150°以下であることが好ましい。
本発明の一具体例によれば、摺動部材の摺動層の合成樹脂は、PAI(ポリアミドイミド)、PI(ポリイミド)、PBI(ポリベンゾイミダゾール)、PA(ポリアミド)、フェノール、エポキシ、POM(ポリアセタール)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PE(ポリエチレン)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)およびPEI(ポリエーテルイミド)のうちから選ばれる1種または2種以上からなることができる。
本発明の一具体例によれば、摺動部材の摺動層は、球状黒鉛、MoS、WS、h−BNおよびPTFEから選ばれる1種または2種以上の固体潤滑剤1〜20体積%をさらに含むことができる。固体潤滑剤を含有することにより、摺動層の摺動特性を高めることができる。
本発明の一具体例によれば、摺動部材の摺動層は、CaF、CaCo、タルク、マイカ、ムライト、酸化鉄、リン酸カルシウムおよびMoC(モリブデンカーバイト)のうちから選ばれる1種または2種以上の充填材を1〜10体積%をさらに含むことができる。充填材を含有することにより、摺動層の耐摩耗性を高めることが可能となる。
本発明の一具体例によれば、摺動部材は、裏金層と摺動層との間に多孔質金属層をさらに有することができる。裏金層の表面に多孔質金属層を設けることにより、摺動層と裏金層の接合強度を高めることができる。すなわち、多孔質金属層の空孔部に摺動層を構成する組成物が含浸されることによるアンカー効果により裏金層と摺動層との接合力の強化が可能になる。
多孔質金属層は、Cu、Cu合金、Fe、Fe合金等の金属粉末を金属板や条等の表面上に焼結することにより形成することができる。多孔質金属層の空孔率は20〜60%程度であればよい。多孔質金属層の厚さは0.05〜0.5mm程度とすればよい。この場合、多孔質金属層の表面上に被覆される摺動層の厚さは0.05〜0.4mm程度となるようにすればよい。ただし、ここで記載した寸法は一例であり、本発明がこの値に限定されるものではなく、異なる寸法に変更するも可能である。
本発明の一具体例によれば、軸部材に用いられる合成樹脂は、PAI(ポリアミドイミド)、PI(ポリイミド)、PBI(ポリベンゾイミダゾール)、PA(ポリアミド)、PF(フェノール)、EP(エポキシ)、POM(ポリアセタール)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PE(ポリエチレン)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)およびPEI(ポリエーテルイミド)のうちから選ばれる1種または2種以上からなることができる。
本発明の一具体例によれば、軸部材に用いられる硬質粒子は、CF(炭素繊維)、GF(ガラス繊維)、BN、Al、SiC、SiO、AlNおよびTiOのうちから選ばれる1種または2種以上からなることができる。軸部材は、これら硬質粒子を含有することにより、軸部材の強度(剛性)が高くなる。硬質粒子の平均粒径は、1〜50μmとすることができる。
軸部材は、CaF、CaCo、タルク、マイカ、ムライト、酸化鉄、リン酸カルシウムおよびMoC(モリブデンカーバイト)のうちから選ばれる1種または2種以上の充填材1〜10体積%をさらに含むことができる。また、軸部材は、MoS、WS、h−BNおよびPTFEから選ばれる1種または2種以上の固体潤滑剤を5体積%以下をさらに含むことができる。
本発明の一例による摺動装置を示す図。 本発明の一例による摺動装置の摺動部材の断面を示す図。 本発明の一例による摺動装置の軸部材の断面を示す図。 屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子の一例の断面を示す図。 屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子の一例の断面を示す図。 屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子の一例の断面を示す図。 屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子の一例の断面を示す図。 鱗片状黒鉛粒子の長軸方向の長さを説明する図。 鱗片状黒鉛粒子の長軸方向の長さを説明する図。 鱗片状黒鉛粒子の長軸方向の長さを説明する図。 本発明による屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子の作用を説明する図。 本発明による屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子の作用を説明する図。 従来技術による非屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子の作用を説明する図。 本発明の他の例による摺動部材の断面を示す図。 本発明の摺動装置の一具体例の断面を示す図。
図1に本発明による摺動装置1の一例を概略的に示す。摺動装置1は、軸部材2および軸部材2を支承する摺動部材3を備える。摺動部材3は、裏金層4および摺動層5を有する。
本発明の摺動装置1の具体的形態として、円柱形状の軸部材2を円筒形状の摺動部材3が支承する摺動装置とすることができる(図9参照)。この場合は、円筒形状の摺動部材3の内面に摺動層5が形成される。しかし、本発明による摺動装置はこの形態に限定されず、軸部材2および摺動部材3が平板である形態、その他いずれの形態であってもよい。
図2に本発明による摺動部材3の一例の断面を概略的に示す。摺動部材3は、裏金層4上に摺動層5が設けられている。摺動層5は、合成樹脂6と5〜50体積%の鱗片状黒鉛粒子7とからなる。鱗片状黒鉛粒子7の断面組織は、黒鉛結晶のAB面が平板部の厚さ方向(黒鉛結晶のC軸方向)に複数積層したものである。鱗片状黒鉛粒子7の平均粒径は5〜25μmである。
鱗片状黒鉛粒子7は、屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子71およびそれ以外の非屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子72とからなる。なお、非屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子72には、屈曲部を有さない平板形状の粒子のみならず、屈曲部を有するものの上記に記載した屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子の要件を満足しない鱗片状黒鉛粒子も含まれる。
摺動層5中の鱗片状黒鉛粒子7の全体積に対する屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子71の体積割合は20%以上であり、好適には25%以上であり、より好適には30%以上である。
なお、摺動層5と裏金層4との間に多孔質金属層8を設けてもよい。多孔質金属層8を設けた摺動部材の一例の断面を図8に概略的に示す。
屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子71は、長軸方向の長さ10が5μm以上(後述する)であり、複数の平板部からなり、その複数の平板部のうち、断面組織内で、AB面に平行な方向の長さが最大であるものを主平板部711、主平板部の一端あるいは両端に隣接する平坦部を側平板部712、713とすると、主平板部と側平板部とのなす屈曲角度9のうちの少なくとも1つが20°以上になっている。
屈曲角度9は以下のとおり定義する。主平板部の表面により形成される平面上に側平板部が位置して、主平板部の延長上に側平板部が一直線上にならぶときを基準として、その基準の平面からの側平板部(側平板部の表面)の傾きを屈曲角度9とする。すなわち、主平板部の延長上に側平板部が一直線上にならぶとき屈曲角度は0°であり、側平板部が主平板部の折り重なると屈曲角度は概ね180°であり、側平板部が側平板部に垂直に屈曲するとき屈曲角度は90°である。なお、主平板部のどちら側に傾くかは問わない。
図4A〜図4Dに、屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子71の具体例の概略断面図を示す。
図4Aの屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子71は、主平板部711と、主平板部711の一端(紙面では右端)に隣接する1つの側平板部712とからなり、主平板部711と側平板部712との間に20°以上の屈曲角度9を有している。
図4Bも、主平板部711と1つの側平板部712からなる屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子71を示すが、屈曲角度9が90°超である。
図4Cの屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子71は、主平板部711と、主平板部711の両端に隣接する2つの側平板部712、713からなり、主平板部711と側平板部712または側平板部713との屈曲角度9の少なくとも一方が20°以上を有している。
図4Dの屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子71も、主平板部711と、2つの側平板部712、713からなるが、側平板部712、713の他端に、他の平板部713、714が隣接している。
屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子71は、上記の具体例に限定されず、上記要件を満足する限り、様々な形態が可能である。なお、平板部は厳密に平面でなくてもよく、わずかな湾曲があってもよい。
次に図5を用いて、鱗片状黒鉛粒子7の長軸方向の長さ10(以下、「長軸長さ」ともいう)を説明する。長軸長さ10は、主平板部711の(AB面の)表面により形成される平面上での屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子71の各平板部の投影の全体が有する長さである。すなわち、主平板部の表面により形成される平面の方向(すなわち、「長軸方向」)における鱗片状黒鉛粒子の最大長さである。
図5Aは、図4Aに示した屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子71の長軸長さ10を示している。主平板部711の一方(紙面左側)の端部と、側平板部712の反対方向(紙面右側)の端部との長軸方向距離が長軸長さ10である。
図5Bは、図4Bに示した屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子71の長軸長さ10を示している。主平板部711の一方(紙面左側)の端部と、主平板部711の反対方向(紙面右側)の端部(すなわち、側平板部712の紙面右側端部)との長軸方向距離が長軸長さ10である。
図5Cは、図4Cに示した屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子71の長軸長さ10を示している。側平板部713の一方(紙面左側)の端部と、側平板部712の反対方向(紙面右側)の端部との長軸方向距離が長軸長さ10である。
以下、屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子71が脱落し難く、摺動層の耐摩耗性を向上させる理由について説明する。
図7に従来の摺動装置の摺動部材の屈曲部を有さない平板形状の鱗片状黒鉛粒子73が摺動層の摺動面に露出した図を示す。無潤滑条件で硬質粒子が分散された合成樹脂からなる軸部材との回転あるいは往復摺動が起きる状況では、摺動部材の摺動層の表面付近には、摺動層の表面に対して略平行な方向の外力11が作用する。このような外力を受けると、合成樹脂6及び黒鉛粒子73は、摺動層の表面に対して略平行に弾性変形するが、黒鉛粒子73の弾性変形量に対して合成樹脂6の弾性変形量が大きい。鱗片状黒鉛粒子の長軸方向の長さが大きく(長軸方向の長さが5μm以上)、且つ平板形状の鱗片状黒鉛粒子の平板表面が摺動面に対して略平行に配向すると、特に界面付近での黒鉛粒子73と合成樹脂6の弾性変形量の差が大きくなり、せん断が起こる。外力方向が平板表面に略平行となるので、せん断は鱗片状黒鉛粒子73の平板表面と合成樹脂との界面付近で起こり易くなり、さらに、軸部材の表面に露出する硬質粒子と接触することで摺動面から掘り起こされて摺動時に鱗片状黒鉛粒子が摺動面から脱落し易くなる。
他方、屈曲部を有し複数の平板部からなる屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子71の場合には、図6Aおよび図6Bに示すように、鱗片状黒鉛粒子の平板部の一部(例えば、主平板部711)が摺動面に略平行に配位して摺動面に露出しても、屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子のその他の平板部(例えば、図6Aの側平板部712、または図6Bの712および713)は、摺動層表面、すなわち外力11の方向と異なる方向を向くこととなる。その他の平板部は外力と略平行方向を向かないために、合成樹脂6との界面付近では、合成樹脂との弾性変形量の差が小さくせん断が生じにくい。その他の平板部(例えば側平板部)は両面から合成樹脂によって保持されるので、摺動面からの脱落が防がれる。このように、屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子は、複数の平板部を有するので、平板部の全てが同時に外力方向に略平行な方向を向くことは無く、摺動層の合成樹脂に裏表両表面が接して保持される平板部が存在する。このため、摺動部材の摺動層が長軸方向の長さの大きな(長軸方向の長さが5μm以上)屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子を有していても、摺動時に摺動面から脱落し難い。
長軸方向の長さが5μm未満の鱗片状黒鉛粒子は、屈曲部を有していても、摺動面に対して略平行に加わる負荷に対する耐摩耗性が低い。長軸方向の長さが5μm以上であると、摺動面に対して略平行に加わる負荷に対する耐摩耗性が高くなるので、合成樹脂に長軸方向の長さが5μm以上である屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子が分散することにより、摺動層の摺動面に対して略平行に負荷が加わった場合でも、上記の理由により摺動面の黒鉛粒子の脱落や耐摩耗低下が防がれる。
屈曲部を有さない鱗片状黒鉛粒子を合成樹脂に分散させた摺動層を有する従来の摺動部材では、摺動層の摺動面に対して略平行に負荷が加わった場合、摺動面の黒鉛粒子が脱落し、この黒鉛粒子の脱落部が起点となって、摺動層の摩耗が起きやすくなる。
鱗片状黒鉛粒子7(屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子71を含む全鱗片状黒鉛粒子)の平均粒径は、5〜25μmとすることが好ましい。鱗片黒鉛粒子の平均粒径が5μm未満であると、摺動層中に鱗片黒鉛粒子どうしの凝集部が形成されやすく、摺動層の強度が低くなる場合がある。鱗片黒鉛粒子の平均粒径が25μmを超えると、摺動時に摺動層に加わる負荷により摺動層中の鱗片状黒鉛粒子にせん断が起こり、摺動層の強度が低くなる場合がある。
摺動層中の鱗片状黒鉛粒子の全体積に対する屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子71の体積割合が25%以上であることが好ましい。摺動層中の鱗片状黒鉛粒子の全体積に対する屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子の体積割合が25%以上である場合は、25体積%未満である場合よりも耐摩耗性がさらに向上する。これは、摺動層中に分散する外力11に対して略平行を向かない平板部を有する屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子71の体積割合が多くなることにより、摺動面から黒鉛粒子が脱落し難くなり、耐摩耗性が向上すると考えられる。さらに、屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子71の体積割合は30%以上であることが好ましい。
さらに、屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子71の屈曲角度は、少なくとも1つが25°以上であることが好ましい。屈曲角度が25°以上である場合は、25°未満である場合よりも耐摩耗性がさらに向上する。これは、摺動層が軸部材から摺動層の表面に略平行な外力11を受けた場合、外力方向11と鱗片状黒鉛粒子の平板部の一部(例えば、主平板部711)が略平行に向いても、鱗片状黒鉛粒子のその他の平板部(例えば、側平板部712、または712および713)がさらに外力11と異なる方向を向くようになるために、合成樹脂に保持されやすくなり、摺動面から黒鉛粒子が脱落し難くなり、耐摩耗性が向上すると考えられる。さらに、屈曲角度は少なくとも1つが30°以上であることが好ましく、また、150°以下であることが好ましい。
次に、摺動層5に含まれる鱗片状黒鉛粒子7の全体積に対する屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子71の体積割合の測定方法について説明する。摺動層5の摺動面に垂直な方向の複数箇所の断面を電子顕微鏡を用い倍率1000倍(他倍率も可)で電子像を撮影する。一般的な画像解析手法(例えば、解析ソフト:Image−Pro Plus(Version4.5);(株)プラネトロン製)を用いて、撮影画像中の鱗片黒鉛粒子7を、屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子71と、それ以外の非屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子72に区分する。撮影画像中の全鱗片状黒鉛粒子7の合計面積と全屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子71の合計面積を測定し、鱗片状黒鉛粒子7に対する屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子71の面積割合を算出する。この面積割合は、体積割合に相当する。
上記に説明した摺動部材について、製造工程に沿いながら以下に詳細に説明する。
(1)原材料黒鉛粒子の準備
鱗片状黒鉛粒子の原材料としては、予め屈曲部を有する鱗片状黒鉛粒子を準備する。この鱗片状黒鉛粒子は、平板形状の鱗片状黒鉛粒子に小さな衝撃負荷を加える処理を施すことで、平板形状であった鱗片状黒鉛粒子に屈曲部が形成される。本製造方法は、集電体用の球状化黒鉛粒子の製造技術(国際公開第2012/137770号参照)を応用し製造されたものである。従来技術では、鱗片状黒鉛粒子にジェットミル、ピンミルなどで小さな衝撃負荷を加えながら粉砕する処理を複数回施すことで球状化した黒鉛粒子を製造する。本発明の原材料として用いる屈曲部を有する鱗片状黒鉛粒子は、球状化に至る前に、小さな衝撃負荷を加える処理を完了させる。屈曲化処理に使用する平板形状の鱗片状黒鉛粒子は、天然鱗片状黒鉛粒子および人造鱗片状黒鉛粒子のいずれを用いてもよい。尚、過度な粉砕処理を行うと、屈曲角度が150°以上となり、鱗片状黒鉛粒子内にクラックが発生し易くなる。また、平板形状の鱗片状黒鉛粒子に、小さな衝撃負荷を加える処理によって、局部的せん断による小さな平板形状の鱗片状黒鉛粒子や、処理が十分に行われず屈曲部が全く形成されない、あるいは平板面が多少湾曲している平板形状の鱗片状黒鉛粒子も発生する。本発明では、鱗片状黒鉛粒子として、このような平板形状の鱗片状黒鉛粒子を含むことができるので、安価な摺動部材を提供できる。しかし、摺動部材の価格は高くなるが、上記の製造方法により得られた鱗片状黒鉛粒子から、平板形状の鱗片状黒鉛粒子を除去することもできる。鱗片状黒鉛粒子は、レーザー回折式粒度測定装置により測定される長軸方向の平均粒径が5〜30μmであり、また、粒子の平板部の平均厚さが0.2〜3.5μmであるものを用いることが好ましい。
(2)合成樹脂粒子の準備
原材料である合成樹脂粒子は、鱗片状黒鉛粒子の平均粒径の50〜150%の平均粒径を有するものを用いることが好ましい。合成樹脂としては、PAI、PI、PBI、PA、フェノール、エポキシ、POM、PEEK、PE、PPSおよびPEIのうちから選ばれる1種または2種以上からなるものを用いることができる。
(3)混合
鱗片状黒鉛粒子の体積割合が5〜50体積%となるように、準備した鱗片状黒鉛粒子と合成樹脂粒子との割合を調整する。この鱗片状黒鉛粒子および合成樹脂粒子を有機溶剤で希釈しロールミルを用いて混合して組成物を作製する。
ロールミルのロール間のギャップは、鱗片状黒鉛粒子の平均粒径の450〜550%程度に相当する間隔に設定して、有機溶剤中に樹脂粒子、鱗片状黒鉛粒子や他充填材粒子を均質分散させる。上記の間隔に設定することで屈曲部を有する鱗片状黒鉛粒子の形状が維持されたまま混合することができる。
従来は、ロールミルのロール間のギャップは、鱗片状黒鉛粒子の平均粒径の300〜400%程度に相当する間隔に設定していた。しかし、ここでは、ロール間のギャップを450〜550%と通常よりも広くする。ロール間のギャップが450%よりも小さくなると、ロール間のギャップ量が狭すぎて、鱗片状黒鉛粒子に過度な負荷が加わり、局部的なせん断が発生して割れが生じる場合がある。また550%よりも大きくすると均質に分散させ難くなる場合がある。
上記した合成樹脂粒子の平均粒径が、鱗片状黒鉛粒子の平均粒径の50〜150%である関係は、ロール間のギャップを通過するときに鱗片黒鉛粒子に過度な負荷が加わりせん断が発生することを防ぐために好適である。摺動層に、固体潤滑剤や充填材をさらに含有させる場合、これら固体潤滑剤や充填材の粒子は、鱗片状黒鉛粒子の平均粒径の50%以下の平均粒径を有するものが好ましい。
合成樹脂粒子と鱗片状黒鉛粒子との混合方法は、上記実施形態で示したロールミルを用いた混合方法に限定されないで、他の混合機を使用するか、または、他の混合条件で調整することも可能である。
(4)裏金
裏金層としては、Fe合金、Cu、Cu合金等の金属板を用いることができる。裏金層表面、すなわち摺動層との界面となる側に多孔質金属層を形成してもよい。多孔質金属層は裏金層と同じ組成を有することも、異なる組成または材料を用いることも可能である。
(5)被覆工程
混合後の組成物は、裏金層の一方の表面、あるいは裏金層上の多孔質金属層に塗布され、組成物を塗布した裏金は、組成物の厚さを均一とするため、所定の一定の間隙を有するロール間に通される。
(7)圧延工程
組成物を被覆した裏金層(あるいは、裏金層および多孔質多孔質金属層)は、厚さを均一とするため所定の一定間隙を有するロール間に通される。
(8)乾燥焼成工程
圧延工程を終えた後、組成物中に残存する有機溶剤の乾燥および合成樹脂の焼成のための加熱を施して、摺動部材が得られる。
(9)測定
鱗片状黒鉛粒子の平均粒径の測定は、摺動部材の摺動面に垂直方向の断面を電子顕微鏡を用いて電子像を1000倍で撮影して行なう。具体的には、鱗片状黒鉛粒子の平均粒径は、得られた電子像を一般的な画像解析手法(例えば、解析ソフト:Image−Pro Plus(Version4.5);(株)プラネトロン製)を用いて面積を測定し、それを円と想定した場合の平均直径に換算して求める。ただし、電子像の撮影倍率は1000倍に限定されず、他の倍率に変更することができる。
鱗片状黒鉛粒子は、断面組織が、黒鉛結晶のAB面が平板形状の厚さ方向(C軸方向)に複数積層している組織となっていることは、摺動部材の摺動面に垂直方向の断面において、複数個(例えば20個)の鱗片状黒鉛粒子を電子顕微鏡を用いて倍率2000倍で電子像を撮影し、撮影画像中の鱗片状黒鉛粒子の断面組織が、平板形状の厚さ方向に複数積層している層状部が形成されていることを観察することにより確認できる。
また、屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子は、断面組織が、各平板部の黒鉛結晶のAB面が各平板部の厚さ方向(C軸方向)に複数積層している組織となっていることが、上記観察方法によって確認できる。
鱗片状黒鉛粒子の長軸方向の長さは、摺動部材の摺動面に対して垂直方向の断面を電子顕微鏡を用いて電子像を1200倍で撮影した画像を、上記の解析手法を用いて求める。
屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子の屈曲角度は、摺動部材の摺動面に対して垂直方向の断面を電子顕微鏡を用いて電子像を1200倍で撮影した画像を、上記の像解析手法を用い、AB面に平行な方向の長さが最大である主平板部を決定し、主平板部の2つの表面のうち長さが長い方を平板面とし、平板面を延長した仮想線を引き、側平板部と成す屈曲角度を求める。なお、屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子の主平板部の2つの表面の長さが同じであった場合には、いずれか一方の表面を主平板部とする。
上記方法によって、摺動層に含まれる鱗片状黒鉛粒子の全体積に対する屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子の体積割合が20%以上であることも確認できる。
なお、摺動層中に分散する長軸方向の長さが5μm以上である鱗片状黒鉛粒子は、全て屈曲角度が20°以上、好ましくは20°〜150°である屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子であることが合成樹脂に保持されやすいために望ましい。しかし、上記したように摺動部材を安価に製造するために長軸方向の長さが5μm以上である鱗片状黒鉛粒子のうち体積割合で35%未満が屈曲部を有さない鱗片状黒鉛粒子であることは許容される。また、摺動層中に分散する長軸方向の長さが5μm未満である鱗片状黒鉛粒子は屈曲の有無に関わらず、小さいために脱落しにくく、また脱落が起こったとしても摺動層に損傷が発生しにくいために本発明の作用には影響しない。
図3に本発明による摺動装置1の軸部材2の一例の断面を概略的に示す。軸部材2は、合成樹脂12と、この合成樹脂12に分散された硬質粒子13からなる。硬質粒子13は、軸部材2の5〜50体積%を占めることができる。軸部材の製造工程としては、合成樹脂と硬質粒子を混合後、ペレット化を行い、射出成型にて円柱状や平板状等の所定の形状に成型できる。
軸部材2の合成樹脂12は、PAI(ポリアミドイミド)、PI(ポリイミド)、PBI(ポリベンゾイミダゾール)、PA(ポリアミド)、PF(フェノール)、EP(エポキシ)、POM(ポリアセタール)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PE(ポリエチレン)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)およびPEI(ポリエーテルイミド)のうちから選ばれる1種または2種以上からなることができる。
軸部材2の合成樹脂12に分散された硬質粒子13は、CF(炭素繊維)、GF(ガラス繊維)、BN、Al、SiC、SiO、AlNおよびTiOのうちから選ばれる1種または2種以上からなることができる。硬質粒子13の平均粒径は1〜50μm程度とすることができる。
軸部材2は、CaF、CaCo、タルク、マイカ、ムライト、酸化鉄、リン酸カルシウムおよびMoC(モリブデンカーバイト)のうちから選ばれる1種または2種以上の充填材1〜10体積%をさらに含むことができる。また、軸部材2は、MoS、WS、h−BNおよびPTFEから選ばれる1種または2種以上の固体潤滑剤を5体積%以下をさらに含むことができる。
本発明による摺動装置の実施例1〜7、および比較例8〜12を以下に示すとおり作製した。実施例1〜7および比較例8〜12の軸部材及び摺動部材の摺動層の組成は、表1に示すとおりである。
実施例1〜7および比較例8〜12の軸部材は、表1に示す樹脂(EP、PF)と硬質粒子(CF(カーボン繊維)、SiO粒子)を混合し、ペレット化し、このペレットを射出成型機を用い円柱形状に成形した。
実施例1〜7および比較例8〜11の原材料として用いた鱗片状黒鉛粒子は、平板形状の鱗片状黒鉛粒子に上記した小さな衝撃負荷を加える処理を施すことで、平板形状であった鱗片状黒鉛粒子に屈曲部が形成されたものを用い、比較例12は、平板形状の鱗片状黒鉛粒子を用いた。これら鱗片状黒鉛粒子は、平面状に広がるAB面(六角網面平面)が多数積層しC軸方向に厚みを有する組織となっている。
実施例1〜7および比較例8〜12の原材料である合成樹脂(PAI、PI)粒子は、平均粒径が、原材料である鱗片状黒鉛粒子の平均粒径に対して125%であるものを用いた。実施例5〜7の原材料として用いた固体潤滑剤(球状黒鉛、PTFE)は平均粒径が、原材料である鱗片状黒鉛粒子の平均粒径に対して100%のものを用い、充填材(CaCo)の粒子は、平均粒径が鱗片状黒鉛粒子の平均粒径に対して25%のものを用いた。
上記の原材料を用いた表1に示す組成物を有機溶剤で希釈し組成物を準備し、次に、ロールミルを用いて組成物の混合を行った。なお、ロールミルのロール間のギャップは、実施例1〜7および比較例9〜11は、原材料として用いた鱗片状黒鉛粒子の平均径に対する比率を500%に設定した。また比較例8、12は比率を300%に設定した。
次に混合後の組成物をFe合金製の裏金層の一方の表面に塗布したのち、ロールにて組成物が所定の厚さとなるように被覆した。なお、実施例1〜5及び比較例8〜12の裏金層としてはFe合金を用い、実施例6、7は表面にCu合金の多孔質焼結部を有するFe合金を用いた。
次に、実施例1〜7および比較例8〜12については、圧延工程を実施し、その後組成物の有機溶剤の乾燥および合成樹脂の焼成を施して摺動部材を作製した。作製された実施例1〜7および比較例8〜12の摺動部材の摺動層の厚さは0.3mmであり、裏金層の厚さは1.7mmであった。
作製した各摺動部材について、上記に説明した測定方法による黒鉛粒子の平均粒径の測定を行い、その結果を表1の「平均粒径」欄に示した。また、上記に説明した測定方法により、摺動層中の鱗片状黒鉛粒子の全体積に対する屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子の体積割合の測定を各屈曲角度(20°〜25°、25°〜30°、30°以上)に分類して行い、その結果を表1の「体積割合(%)」欄の「20°〜25°」、「25°〜30°」、「30°以上」欄に示し、「体積割合(%)」欄の「合計」欄には、これら全ての屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子の体積割合を示す。なお、側平板部を2つ有し2つの屈曲角度を有する屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子については、屈曲角度が大きい方の値を屈曲角度とした。
さらに、各実施例および各比較例について、摺動部材を摺動層が内側になるようにして円筒形状に形成し、また軸部材を円柱形状に成形し(図9参照)、表2に示す条件で摺動試験を行った。各実施例および各比較例の摺動試験後の摺動層の摩耗量を表1の「摩耗量」欄に示す。
また、各実施例および各比較例は、摺動試験後の摺動面を、形状測定器(粗さ測定器)を用いて鱗片状黒鉛粒子の脱落の有無を確認した。摺動面に深さが10μm以上の鱗片状黒鉛粒子(及び黒鉛粒子周囲の合成樹脂)の脱落部(凹部)が確認された場合には「有」、確認されなかった場合には「無」とし、表1の「黒鉛脱落の有無」欄に結果を示した。
表1に示す結果から分かるとおり、実施例1〜7では摺動試験後の摺動層の摺動面には鱗片状黒鉛粒子の脱落はなかったが、比較例8〜10、12では脱落が発生した。実施例1〜7において鱗片状黒鉛粒子の脱落が防がれた理由は、上記のように、摺動層中の屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子が外力と略平行を向かない平板部を有することにより軸部材の表面に露出する硬質粒子から摺動層の摺動面の合成樹脂に加わる負荷に伴う黒鉛粒子と合成樹脂の弾性率の差異によるせん断が緩和され、軸部材の表面に露出する硬質粒子により屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子が掘り起こされ難くなる効果によると考えられる。また、実施例1〜7では、比較例8〜12に対して摺動試験後の摺動層の摩耗量が少なくなった。この理由は、上記のように実施例1〜7は、鱗片状黒鉛粒子の脱落が防がれたため鱗片状黒鉛粒子の脱落部を起点とした摩耗が起こらなかったことによると考えられる。
さらに、屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子の体積割合が25%以上である実施例3〜7は、体積割合が25%未満である実施例1、2よりも摩耗量が少なくなる結果となった。これは、上記で説明したように屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子の体積割合が多くなることにより、摺動時に摺動面から脱落し難くなり、ひいては耐摩耗がよくなるからと考えられる。但し、実施例3と実施例4〜7の結果から、屈曲角度が大きい屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子の体積割合が多いほうが、摩耗量が少なくなることが理解できる。
また、実施例7は、実施例4〜6よりも摩耗量が少なくなる結果となったが、これは屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子の体積割合が最も多く、且つ屈曲角度が30°以上の体積割合が25%以上であるために、さらに鱗片状黒鉛粒子が合成樹脂に強固に保持されることによると考えられる。
比較例8は、上記の原材料である屈曲部を有する鱗片状黒鉛粒子と合成樹脂粒子の混合時のロールギャップ比率を従来の300%と設定したために屈曲部を有する鱗片状黒鉛粒子にせん断が発生し、摺動層に含まれる鱗片状黒鉛粒子の全体積に対する屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子の体積割合が5.3%と低すぎるため、摺動層の表面の長軸長さが5μm以上である鱗片状黒鉛粒子の脱落が発生し、摺動層の摩耗量が多くなったと考えられる。
比較例9は、摺動層に含まれる鱗片状黒鉛粒子が3体積%と少ないため、摺動層と軸部材との摩擦力を低くする効果が不十分となり、摺動層の摩耗量が多くなったと考えられる。
比較例10は、摺動層に含まれる鱗片状黒鉛粒子が60体積%と多いため、摺動層の強度が低くなり、摺動層の摩耗量が多くなったと考えられる。
比較例11は、摺動層中に分散する鱗片状黒鉛粒子の平均粒径の影響を確認するための比較材である。具体的には、比較例11では、実施例に対し原材料の鱗片状黒鉛粒子は、平均粒径が小さいものを用い、摺動層中に分散する鱗片状黒鉛粒子の平均粒径が3μmとなるようにした。表1の「体積割合」に示す比較例11の括弧付の値は、屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子(長軸長さが5μm以上)の体積割合ではなく、摺動層に分散する鱗片状黒鉛粒子のうち、
鱗片状黒鉛粒子の長軸長さが1.5μm以上であり、且つ、
屈曲部を有し、屈曲角度が20°以上である鱗片状黒鉛粒子の体積割合を示す。
比較例11は、摺動層の表面に黒鉛粒子の脱落部は観察されなかったが、これは、鱗片状黒鉛粒子の平均粒径が小さいために、摺動時に摺動面からの鱗片状黒鉛粒子の脱落が起き難く、且つ、脱落が起こったとしても粒径が小さいと摺動層の摺動面に損傷が起き難いからである。しかし、比較例11は、実施例1〜7に対して摺動層中に分散する鱗片状黒鉛粒子の平均粒径が小さいため摺動層の摩耗量が多くなった。
比較例12は、原材料に平板形状の鱗片状黒鉛粒子を用いたため、摺動層は屈曲部含有黒鉛粒子を含まない。摺動層の表面の長軸長さが5μm以上の鱗片状黒鉛粒子の脱落が発生し、摺動層の摩耗量が多くなったと考えられる。なお、この比較例12は、ロールギャップ比率を従来の300%と狭く設定して鱗片状黒鉛粒子と合成樹脂粒子を混合したが、平板形状の鱗片状黒鉛粒子に屈曲部は形成されなかった。
1:摺動装置
2:軸部材
3:摺動部材
4:裏金層
5:摺動層
6:摺動部材の合成樹脂
7:鱗片状黒鉛粒子
71:屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子
711:主平板部
712、713:側平板部
72:非屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子
8:多孔質金属層
9:屈曲角度
10:長軸方向の長さ
11:外力
12:軸部材の合成樹脂
13:硬質粒子

Claims (11)

  1. 軸部材と、該軸部材を支承する摺動部材とを備える摺動装置であって、
    前記軸部材は、合成樹脂と、該合成樹脂中に分散された硬質粒子からなり、前記硬質粒子の体積は、前記軸部材の体積の5〜50体積%であり、
    前記摺動部材は、裏金層と、該裏金層上に設けられた摺動層とを備え、該摺動層は、合成樹脂と、該合成樹脂中に分散された鱗片状黒鉛粒子とからなり、前記鱗片状黒鉛粒子の体積の合計は、前記摺動層の体積の5〜50体積%を占め、
    前記鱗片状黒鉛粒子は平板部を有し、前記鱗片状黒鉛粒子の断面組織は、炭素原子が網目構造を形成して平面状に広がる黒鉛結晶のAB面が前記平板部の厚さ方向に複数積層しており、
    前記鱗片状黒鉛粒子の平均粒径は5〜25μmであり、
    前記鱗片状黒鉛粒子は、屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子を含み、前記摺動層中の前記鱗片状黒鉛粒子の全体積に対する前記屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子の体積割合が20%以上であり、
    前記屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子は、
    長軸方向の長さが5μm以上であり、
    複数の平板部からなり、該複数の平板部のうち、断面組織内で、前記AB面に平行な方向の長さが最大である主平板部と、該主平板部に隣接する少なくとも1つの側平板部とが、前記主平板部と前記側平板部とのなす屈曲角度の少なくとも1つが20°以上になっている、摺動装置。
  2. 前記摺動層中の前記鱗片状黒鉛粒子の全体積に対する前記屈曲部含有鱗片状黒鉛粒子の体積割合が25%以上である、請求項1に記載された摺動装置。
  3. 前記主平板部と前記側平板部とのなす屈曲角度の少なくとも1つが25°以上である、請求項1または請求項2に記載された摺動装置。
  4. 前記合成樹脂が、PAI、PI、PBI、PA、フェノール、エポキシ、POM、PEEK、PE、PPS、及びPEIから選ばれる1種または2種以上からなる、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された摺動装置。
  5. 前記摺動層が、球状黒鉛、MoS、WS、h−BN、及びPTFEから選ばれる1種または2種以上の固体潤滑剤を1〜20体積%をさらに含む、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された摺動装置。
  6. 前記摺動層が、CaF、CaCo、タルク、マイカ、ムライト、酸化鉄、リン酸カルシウム、及びMoCから選ばれる1種または2種以上の充填材を1〜10体積%さらに含む、請求項1から請求項5までのいずれか1項に記載された摺動装置。
  7. 前記裏金層と前記摺動層との間に、多孔質金属層をさらに有する、請求項1から請求項6までのいずれか1項に記載された摺動装置。
  8. 前記軸部材の前記合成樹脂が、PAI、PI、PBI、PA、フェノール、エポキシ、POM、PEEK、PE、PPSおよびPEIのうちから選ばれる1種または2種以上である請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載された摺動装置。
  9. 前記硬質粒子が、炭素繊維、ガラス繊維、BN、Al、SiC、SiO、AlN、およびTiOのうちから選ばれる1種または2種以上からなる請求項1から請求項8までのいずれか1項に記載された摺動装置。
  10. 前記軸部材が、CaF、CaCo、タルク、マイカ、ムライト、酸化鉄、リン酸カルシウムおよびMoCのうちから選ばれる1種または2種以上を1〜10体積%さらに含む請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載された摺動装置。
  11. 前記軸部材が、MoS、WS、h−BNおよびPTFEから選ばれる1種または2種以上を5体積%以下さらに含む請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載された摺動装置。
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