JP6599756B2 - 摺動部材 - Google Patents

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Description

本発明は、摺動部材に関するものであり、詳細には、裏金層と、合成樹脂および二硫化モリブデンからなる摺動層とを備えた摺動部材に係るものである。
合成樹脂に固体潤滑剤として二硫化モリブデンを添加した樹脂組成物を有する摺動部材が、従来より用いられている(例えば、特許文献1、特許文献2)。
この二硫化モリブデンは、特許文献1の図1に示されるように、モリブデン原子が規則正しく網目構造を形成して平面状に広がるB面(六角網面平面)が、硫黄原子が規則正しく網目構造を形成して平面状に広がるA面(六角網面平面)により挟まれたA面/B面/A面の構造が多数積層し、A面およびB面に垂直なC軸方向に厚みを有する層状結晶である。硫黄原子同士の結合力(ファンデルワールス力)は、モリブデン原子と硫黄原子との結合力に比べて小さいため、二硫化モリブデンは、外力を受けると硫黄原子による六角網面(A面)同士の間でせん断が起きやすい。そのため、二硫化モリブデンは、A面またはB面の広がりに対して積層方向の厚みが薄いため、全体としては薄板状を呈している。
特許文献1は、従来の摺動部材では、摺動層中に分散する二硫化モリブデン粒子の表面(A面およびB面に平行な方向の表面)が、摺動面に対して数°〜30°程度傾斜し配向していたため高面圧および高周速の摺動条件では、耐焼付性が不十分であるという問題を解決するため、特許文献1の図5に示すように摺動層中に分散する二硫化モリブデン粒子のA面およびB面に平行な方向の表面を、摺動層の表面に対して略平行に配向させた摺動部材を提案する。
特開2008−95725号公報 特開2010−151321号公報
特許文献1に記載された摺動部材は、冷凍圧縮機等のように変動荷重を支承する軸受部に用いると、摺動時に摺動面に露出する二硫化モリブデン粒子に割れが生じて摺動面からの脱落がおこり、摺動性能とりわけ耐摩耗性の低下が起こることが判明した。
冷凍圧縮機等のように軸受部の摺動部材の摺動面は、相手軸の回転による摺動面に対して平行な方向の負荷だけでなく、相手軸の表面からの摺動面に対して垂直方向に変動する負荷を同時に受ける。摺動面に露出するA面およびB面に平行な二硫化モリブデン粒子の表面(以下、「二硫化モリブデン粒子の主表面」という)が摺動面に対して平行に配向していると、相手軸からの摺動面に対して垂直方向の変動負荷により摺動面に露出する二硫化モリブデンの粒子には、二硫化モリブデン粒子の表面に対して略垂直方向の負荷がかかる。そうすると、硫黄原子による六角網面平面(A面)どうしの間でのせん断が起こらないで、A面に対して略垂直方向のせん断が生じ、粒子が薄板形状であるため、厚さ方向に割れが生じて、二硫化モリブデンの粒子の破断が生じる。このせん断片が摺動面と相手軸表面との間の隙間に侵入し、摺動面に傷をつける。また、摺動面の二硫化モリブデン粒子が脱落すると相手軸との摩擦抵抗が高くなり摩耗量が増加する。
したがって、本発明の目的は、上記の従来技術の欠点を克服して、摺動層に含有された二硫化モリブデン粒子の脱落が摺動時に起き難い樹脂系摺動部材を提供することである。
本発明の一観点によれば、裏金層と、この裏金層上に設けられた摺動層とを備える摺動部材が提供される。この摺動層は、合成樹脂と、この合成樹脂に分散された二硫化モリブデン粒子からなり、二硫化モリブデン粒子は合計で、摺動層の5〜50体積%を占め、二硫化モリブデン粒子の平均粒径は0.5〜10μmである。二硫化モリブデン粒子は、長軸と短軸との比の平均で表される平均アスペクト比S1が、3〜10であり、次式による「等方分散指数(S2)」が、0.85〜1.15となっている。等方分散指数(S2)は、
S2=X1/Y1
により表される(各二硫化モリブデン粒子についてのX1/Y1の平均)。
ここで、X1は摺動層の摺動面に対して垂直方向の断面組織での二硫化モリブデン粒子の摺動面に対して平行方向の長さであり、Y1は、摺動層の摺動面に対して垂直方向の断面組織での二硫化モリブデン粒子の摺動面に対して垂直方向の長さを表す。
本発明では、「平均アスペクト比(S1)」を3〜10とする。平均アスペクト比が3未満であれば、二硫化モリブデン粒子の表面積が小さくなるので、合成樹脂との二硫化モリブデン粒子の接触面積が小さくなり、その結果、合成樹脂との密着性が小さくなると考えられる。そのために、二硫化モリブデン粒子が脱落しやすくなり、ひいては耐摩耗性が劣ると考えられる。アスペクト比が10を超えると、二硫化モリブデン粒子の長軸長さ(粒子の長さ)が長くなるために、等方的に分散しにくくなり、二硫化モリブデン粒子の主表面が摺動面に対して略平行となりやすくなる。そのために、垂直方向への負荷に対して厚さ方向の割れが生じやすくなり、ひいては、脱落が起きやすくなり耐摩耗性が劣ると考えられる。本発明は、二硫化モリブデン粒子の平均アスペクト比を3〜10とすることにより、二硫化モリブデン粒子と合成樹脂との密着性が向上し、且つ等方的に分散できるので、耐摩耗に優れた摺動層を得ることができる。
さらに、本発明では、摺動層内に分散する二硫化モリブデン粒子は、等方分散指数(S2)が0.85〜1.15である。上記の通り、本発明では、摺動層中に分散する二硫化モリブデン粒子は、その長軸方向が摺動層中で等方的に分散する、換言すれば、二硫化モリブデン粒子の長軸は、摺動層中で特定の方向を向くように配向しない、すなわち無配向となることが重要である。このため、摺動層が特定方向の負荷に対して強度が低くなってしまうことがない。このため、摺動層の摺動面に露出する二硫化モリブデン粒子に割れ(せん断)が生じ難くなり、摺動層の耐摩耗性が向上する。
樹脂層の強度を高めるために二硫化モリブデン粒子の等方分散指数S2は、0.85〜1.15が望ましく、より望ましくは0.9〜1.10である。
本発明の一具体例によれば、合成樹脂は、PAI、PI、PBI、PA、フェノール、エポキシ、POM(ポリアセタール)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PE(ポリエチレン)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)およびPEI(ポリエーテルイミド)のうちから選ばれる1種または2種以上からなることができ、それにより、摺動相の強度および摺動特性を高めることができる。
本発明の一具体例によれば、摺動層は、黒鉛、WS、h−BNおよびPTFEから選ばれる1種または2種以上の固体潤滑剤を1〜20体積%の範囲でさらに含むことができる。この固体潤滑剤を含有することにより、摺動層の摺動特性を高めることができる。
本発明の一具体例によれば、摺動層は、CaF、CaCo、タルク、マイカ、ムライト、酸化鉄、リン酸カルシウムおよびMoC(モリブデンカーバイト)のうちから選ばれる1種または2種以上の充填材を1〜10体積%の範囲でさらに含むことができる。この充填材を含有することにより、摺動層の耐摩耗性を高めることが可能となる。
本発明の一具体例によれば、摺動部材は、裏金層と摺動層との間に多孔質金属層をさらに有することができる。裏金層の表面に多孔質金属層を設けることにより、摺動層と裏金層の接合強度を高めることができる。すなわち、多孔質金属層の空孔部に摺動層を構成する組成物が含浸されることによるアンカー効果により裏金層と摺動層との接合力の強化が可能になる。
多孔質金属層は、Cu、Cu合金、Fe、Fe合金等の金属粉末を金属板や条等の表面上に焼結することにより形成することができる。多孔質金属層の空孔率は20〜60%程度であればよい。多孔質金属層の厚さは50〜500mm程度とすればよい。この場合、多孔質金属層の表面上に被覆される摺動層の厚さは0.05〜0.4mm程度となるようにすればよい。ただし、ここで記載した寸法は一例であり、本発明がこの値の限定されるものではなく、異なる寸法に変更するも可能である。
本発明の一例による摺動部材の断面を示す図。 長球状二硫化モリブデン粒子のアスペクト比(S1)および等方分散指数(S2)を説明する図。 本発明の他の例による摺動部材の断面を示す図。
図1に本発明による摺動部材1の一例の断面を概略的に示す。摺動部材1は、裏金層2上に、摺動層3が設けられている。摺動層3は、合成樹脂4と5〜50体積%の二硫化モリブデン粒子5とからなる。二硫化モリブデン粒子5の平均粒径は、0.5〜10μmである。また、二硫化モリブデン粒子5の平均短軸長さ(平均厚み)は0.1μm以上である。二硫化モリブデン粒子5の長軸と短軸の比の平均で表されるアスペクト比(S1)は、3〜10である。
アスペクト比(S1)は、図2に示すように、各二硫化モリブデン粒子5の長軸の長さ(L)と短軸の長さ(S)の比(長軸の長さ(L)/短軸の長さ(S))の平均として求められる。さらに、摺動層3内に分散する二硫化モリブデン粒子5は、次式による等方分散指数(S2)が、0.85〜1.15となっている(各二硫化モリブデン粒子についての平均値)。
S2=X1/Y1
ここで、図2に示すように、X1は(摺動層の摺動面に対して垂直方向の断面組織での)長球状の二硫化モリブデン粒子の摺動面に対して平行方向の長さであり、Y1は(摺動層の摺動面に対して垂直方向の断面組織での)長球状の二硫化モリブデン粒子の摺動面に対して垂直方向の長さである。
合成樹脂4は、PAI、PI、PBI、PA、フェノール、エポキシ、POM(ポリアセタール)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PE(ポリエチレン)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)およびPEI(ポリエーテルイミド)のうちから選ばれる1種または2種以上からなることができる。摺動層3は、黒鉛、WS、h−BNおよびPTFEから選ばれる1種または2種以上の固体潤滑剤1〜20体積%をさらに含むことができる。摺動層3は、CaF、CaCo、タルク、マイカ、ムライト、酸化鉄、リン酸カルシウムおよびMoC(モリブデンカーバイト)のうちから選ばれる1種または2種以上の充填材1〜10体積%をさらに含むことができる。
なお、摺動層3と裏金層2との間に多孔質金属層6を設けてもよい。多孔質金属層6を設けた摺動部材の一例の断面を図3に概略的に示す。
上記に説明した摺動部材について、製造工程に沿いながら以下に詳細に説明する。
(1)原材料二硫化モリブデン粒子の準備
原材料として二硫化モリブデン粒子を準備する。この原材料の二硫化モリブデン粒子は、レーザー回折式粒度測定装置により測定される二硫化モリブデン粒子の主平面に平行方向の平均粒径が1〜20μmであり、また粒子の平均短軸方向長さ(厚み)が、光学式3次元形状測定器(例えば、zygo社製のNewview5022)を用いて複数個の粒子厚みを測定し平均化した値が0.1μm以上である薄板状(鱗片状)のものを用いることが好ましい。
(2)合成樹脂粒子の準備
原材料として合成樹脂粒子を準備する。原材料合成樹脂粒子は、二硫化モリブデン粒子の平均径の200%の平均粒径を有するものを用いることが好ましい。合成樹脂としては、PAI、PI、PBI、PA、フェノール、エポキシ、POM(ポリアセタール)、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、PE(ポリエチレン)、PPS(ポリフェニレンサルファイド)およびPEI(ポリエーテルイミド)のうちから選ばれる1種または2種類以上からなるもの等を用いることができる。
(3)混合
二硫化モリブデン成分が5〜50体積%となるように合成樹脂粒子と二硫化モリブデン粒子の割合を調整する。二硫化モリブデン粒子と合成樹脂粒子とを有機溶剤で、二硫化モリブデン及び合成樹脂粒子を合わせた固形分が40〜50%の割合となるように希釈し、粘度が60000〜100000mPa・sとなる組成物を作製する。この希釈液をロールミルで混合する。なお、従来の二硫化モリブデン粒子や他の充填剤粒子を含有する樹脂組成物の希釈液の粘度は、通常は、最大でも15000mPa・s程度になされていた。
ロールミルで混合する際、ロールミルのロール間の隙間は、二硫化モリブデン粒子の平均粒径の400%程度に設定する。ただし、合成樹脂粒子と二硫化モリブデン粒子の混合方法は、この実施形態で示したロールミルを用いた混合方法に限定されない。他の混合機を用いたり混合条件を調整することによっても、本発明の構成を満たすことも可能である。
(4)裏金
裏金層としては、Fe合金、Cu、Cu合金等の金属板を用いることができる。裏金層表面、すなわち摺動層との界面となる側に多孔質金属層を形成してもよい。多孔質金属層は裏金層と同じ組成を有することも、異なる組成または材料を用いることも可能である。
(5)被覆工程
混合後の組成物は、金属製の裏金層の一方の表面に塗布され、あるいは裏金層上の多孔質金属層に塗布され、組成物を塗布した裏金は、組成物の厚さを均一とするため、所定の一定隙間を有するロール間に通される。
混合後の組成物の粘度は、樹脂摺動部材の摺動層中での二硫化モリブデン粒子の等方(無配向)分散に密接に関係するために、この二硫化モリブデン粒子の等方分散は、この被覆工程にて形成されることが判明した。
組成物の裏金層表面への塗布を容易にするために、混合工程後の組成物を、さらに有機溶剤で粘度が15000mPa・sとなるように希釈した後に被覆工程を実施したところ、完成した摺動部材は、摺動層中に分散する二硫化モリブデン粒子の多くは、長軸が摺動面に対して略平行な方向を向くように分散し、摺動層の強度が低いものとなった。組成物の粘度が低い(有機溶剤の割合が多い)場合、組成物中の薄板状の二硫化モリブデン粒子は、組成物を塗布した裏金層がロール隙間を通過するときに、その長軸が摺動面に対して平行な方向を向くように有機溶剤とともに流動しやすくなるからである。
他方、組成物の粘度が60000mPa・s以上であると、被覆工程で鱗片状の二硫化モリブデン粒子が流動しにくいので、この鱗片状の二硫化モリブデン粒子は、その長軸の向く方向が、樹脂摺動部材の摺動層中において等方的に分散する。具体的には、組成物の粘度が60000mPa・s以上であると、摺動層に分散する鱗片状の二硫化モリブデン粒子は、等方分散指数(S2)が0.85〜1.15となる。さらに組成物に粘度が70000mPa・s以上であると等方分散指数が0.9〜1.1となり、より摺動層の強度が高くなる。
(6)乾燥・焼成工程
組成物を被覆した裏金層(あるいは、裏金層および多孔質多孔質金属層)は、組成物中の有機溶剤を乾燥させるための加熱、組成物中の樹脂を焼成するための加熱を施して摺動部材が得られる。これらの加熱条件は、使用した樹脂に対して一般に用いられる条件を採用できる。
(7)測定
摺動部材の摺動面に垂直方向の断面を、電子顕微鏡を用いて電子像を2000倍で複数個所、例えば任意の位置3個所を撮影し、二硫化モリブデン粒子の平均粒径を測定した。具体的には、二硫化モリブデン粒子5の平均粒径は、得られた電子像を一般的な画像解析手法(解析ソフト:Image−Pro Plus(Version4.5);(株)プラネトロン製)を用いて、各二硫化モリブデン粒子の面積を測定し、それを円と想定した場合の平均直径に換算して求めた。
また、等方分散指数(S2)は、樹脂摺動部材の摺動面に垂直方向の断面を、電子顕微鏡を用いて電子像を2000倍で複数か所、例えば任意の位置3か所を撮影し、摺動層中の二硫化モリブデン粒子の摺動面に対して平行方向の長さ(X1)と、摺動面に対して垂直方向の長さ(Y1)を測定し、それら各長さの比(X1/Y1)の平均値を算出して求めた(図2参照)。
同様に、樹脂摺動部材の摺動面に垂直方向の断面を、電子顕微鏡を用いて電子像を2000倍で複数か所、例えば任意の位置3か所を撮影し、二硫化モリブデン粒子のアスペクト比(S1)を測定し、平均値を算出した。二硫化モリブデン粒子のアスペクト比(S1)は、上記測定方法にて測定した二硫化モリブデン粒子の長軸の長さ(L)と短軸の長さ(S)(図2参照)の平均として求めた。なお、二硫化モリブデン粒子の長軸は電子像中の長さが最大である位置での長さであり、二硫化モリブデン粒子の短軸の長さ(S)は、長軸の長さ(L)の方向に直行する方向での長さが最大である位置での長さである。
なお、二硫化モリブデンの平均アスペクト比(S1)および等方分散指数(S2)の測定では、平均粒径が0.2μm以上である二硫化モリブデン粒子を測定対象とする。0.2μm未満の二硫化モリブデン粒子は、摺動時に摺動面からの脱落が起こったとしても、摺動特性への影響は小さい。
また、粒子の平均短軸長さ(平均厚み)においては、樹脂摺動部材の摺動面に垂直方向の断面を、電子顕微鏡を用いて電子像を2000倍で複数個所、例えば任意の位置3か所を撮影し、粒子の短軸の平均長さ(S)(図2参照)を粒子の平均厚みとして求めた。
本発明による裏金層および摺動層を有する摺動部材の実施例1〜10、および比較例11〜18を以下に示すとおり作製した。実施例1〜10および比較例11〜18の摺動部材の摺動層の組成は、表1に示すとおりである。
実施例1〜10、比較例11〜18の原材料として用いた二硫化モリブデン粒子は、表1に示すとおりであり、平均粒径が0.2〜30μm、平均短軸長さ(厚み)が0.02μm以上である。
実施例1〜10および比較例11〜18の原材料である合成樹脂(PAI、PI)粒子は、平均粒径が、表2に示す原材料である二硫化モリブデン粒子の平均粒径に対して200%であるものを用いた。
実施例7の原材料として用いた固体潤滑剤(PTFE、Gr)粒子は、平均粒径が原材料である二硫化モリブデン粒子の平均粒径に対して200%のものを用い、充填剤(CaF)の粒子は、平均粒径が原材料である二硫化モリブデン粒子の平均粒径に対して150%のものを用いた。
上記の原材料を用いて、表1に示す組成となるように、合成樹脂および二硫化モリブデン、(No.7については、さらに固体潤滑剤および充填剤)を有機溶剤で希釈し、表1の「粘度」欄に示す粘度の組成物を準備し、次に、ロールミルを用いて組成物の混合を行った。
次に混合後の組成物をFe合金製の裏金層の一方の表面に塗布したのち、ロールにて裏金層の一方の表面上に組成物が所定の厚さとなるように被覆した。なお、実施例1〜9及び比較例11〜18の裏金層はFe合金を用い、実施例10は表面にCu合金の多孔質焼結部を有するFe合金を用いた。
次に、組成物中の溶剤を乾燥する加熱、組成物の合成樹脂の焼成する加熱を施して摺動部材を作製した。作製された実施例1〜10および比較例11〜18の摺動部材の摺動層の厚さは0.3mmであり、裏金層の厚さは1.7mmであった。
作製された実施例の摺動部材は、上記に説明した測定方法により、摺動層中に分散する二硫化モリブデン粒子の平均粒径および平均短軸長さの測定を行い、その結果をそれぞれ表1の「平均粒径」欄および「平均短軸長さ」欄に示した。
また、上記に説明した測定方法により、摺動層中に分散する二硫化モリブデン粒子の平均アスペクト比(S1)および等方分散指数(S2)の測定行い、その結果を表1の「アスペクト比(S1)」欄および「分散指数(S2)」欄に示した。
各実施例および各比較例に対して、表2に示す条件で摺動試験を行った。各実施例および各比較例の摺動試験後の摺動層の摩耗量を表1の「摩耗量」欄に示す。また、各実施例および各比較例は、摺動試験後の摺動部材を摺動面に対して垂直方向に切断した複数箇所(例えば3箇所)の断面組織を、電子顕微鏡を用い倍率1000倍で電子像を撮影し、撮影画像中の摺動面付近の二硫化モリブデン粒子の脱落の有無を目視で確認し評価した。その結果は、二硫化モリブデン粒子の脱落が確認された場合には「有」、脱落がなかった場合には「無」とし、表1の「脱落有無」欄に示した。
実施例1〜10は、比較例11〜18に対して、摺動試験後の摺動層の摩耗量が少なく、また、摺動面からの二硫化モリブデン粒子の脱落はなかった。さらに、実施例1〜7は、二硫化モリブデン粒子5の等方分散指数(S2)が0.90〜1.10となり、特に、摩耗量が少なくなった。
また、実施例8と実施例9を比較すると、二硫化モリブデン粒子の平均短軸長さが0.1μm以上である実施例8の方が、耐摩耗に優れた結果となった。これは、実施例8の平均短軸長さが、実施例9の平均短軸長さ0.08μmに対してより厚いために、略垂直方向からの負荷に対しての変形抵抗が少なくなり、結果的に耐摩耗が優れたと考えられる。
また、同じ組成である実施例3と実施例10を比較すると、実施例3の方が耐摩耗に優れた結果となった。これは、実施例3の等方分散指数(S2)が0.95と、より等方的に分散しているために、耐摩耗性が優れていると考えられる。
比較例11は、二硫化モリブデン粒子を含む組成物を有機溶剤で希釈する際に、従来技術の粘度である15000mPa・sとなるよう希釈した。そのため、分散指数(S2)が2.15となり、摺動面に対して二硫化モリブデン粒子の主平面が略平行となった。このため比較例11の摺動部材は、摺動試験において摺動層の表面に露出する二硫化モリブデン粒子が相手軸から略垂直方向からの負荷を受けると、垂直方向のせん断が生じて、厚さ方向に貫通する割れが生じることとなると考えられる。このせん断片は、摺動面と相手軸との間に侵入し、摺動面に傷をつける。また、これに伴い、摺動面の二硫化モリブデン粒子が脱落して相手軸との摩擦抵抗が高くなり、摩耗が促進されたと考えられる。
比較例12は、二硫化モリブデン粒子を含む組成物を有機溶剤により、粘度が50000mPa・sになるように希釈したため、分散指数(S2)が1.23と摺動面に対して二硫化モリブデン粒子の主平面がやや平行となり、配向性をもつようになった。このため比較例12の摺動部材は、摺動試験において摺動層の表面に露出する二硫化モリブデン粒子が相手軸から略垂直方向からの負荷を受けると、垂直方向のせん断が生じて、厚さ方向に貫通する割れが生じ、このせん断片が摺動面と相手軸との間に侵入し、摺動面に傷をつけたと考えられる。また、これに伴い、摺動面の二硫化モリブデン粒子が脱落して相手軸との摩擦抵抗が高くなり、摩耗が促進されたと考えられる。
比較例13は、表1に示すように摺動層に含まれる二硫化モリブデン粒子の平均粒径が0.2μm、かつ平均短軸長さが0.02μmと下限よりも小さいため、二硫化モリブデン粒子と合成樹脂との密着性が低下し、脱落が生じやすくなったために、摩耗が促進されたと考えられる。
比較例14は、表1に示すように摺動層に含まれる二硫化モリブデン粒子のアスペクト(S1)が15と大きいために、等方的に分散しにくく、等方分散指数(S2)が1.29と摺動面に対して二硫化モリブデン粒子の主平面が略平行となった。このため摺動層に表面に露出する二硫化モリブデン粒子が相手軸から略垂直方向からの負荷を受けると、垂直方向のせん断が生じて、厚さ方向に貫通する割れが生じ、このせん断片が摺動面と相手軸との間に侵入し、摺動面に傷をつけ、これに伴い摺動面の二硫化モリブデン粒子が脱落して相手軸との摩擦抵抗が高くなり、摩耗が促進されたと考えられる。
比較例15は、表1に示すように摺動層に含まれる二硫化モリブデン粒子のアスペクト比(S1)が2.4と3未満であるために、二硫化モリブデン粒子の表面積が小さくなり、合成樹脂との二硫化モリブデン粒子の接触面積が小さくなることで、合成樹脂との密着性が小さくなるために、二硫化モリブデン粒子が脱落しやすくなり、ひいては摩耗が促進されたと考えられる。
比較例16は、表1に示すように摺動層に含まれる二硫化モリブデン粒子の平均粒径が30μmと上限よりも大きいために、相手軸からの負荷に対して割れやすくなったことにより、このせん断片が摺動面と相手軸との間に侵入し、摺動面に傷をつけ、これに伴い摺動面の二硫化モリブデン粒子が脱落して相手軸との摩擦抵抗が高くなり、摩耗が促進されたと考えられる。
比較例17は表1に示すように摺動層に含まれる二硫化モリブデン粒子の量が3体積%と少ないため、摺動層と相手軸表面との摩擦力を低くする効果が不十分となり、摺動層の摩耗量が多くなったと考えられる。
比較例18は表1に示すように摺動層に含まれる二硫化モリブデン粒子の量が60体積%と多いため、摺動層の強度が低くなり、摺動層の摩耗量が多くなったと考えられる。
1:摺動部材、 2:裏金層、 3:摺動層、 4:合成樹脂、 5:二硫化モリブデン粒子、 6:多孔質金属層

Claims (5)

  1. 裏金層と、該裏金層上に設けられた摺動層とを備える摺動部材であって
    前記摺動層は、合成樹脂と、該合成樹脂中に分散された二硫化モリブデン粒子とからなり、前記二硫化モリブデン粒子の体積の合計は、前記摺動層の5〜50体積%を占め、前記二硫化モリブデン粒子の平均粒径は0.5〜10μmであり、
    前記二硫化モリブデン粒子は、長軸と短軸との比の平均で表される平均アスペクト比が3〜10であり、かつ前記摺動層中に分散する前記二硫化モリブデン粒子は、等方分散指数S2が、0.85〜1.15となっており、前記等方分散指数S2は、
    S2=X1/Y1
    により表され、
    ここで、X1は、前記摺動層の摺動面に対して垂直方向の断面組織での、前記二硫化モリブデン粒子の前記摺動面に対して平行方向の長さであり、
    Y1は、前記摺動層の摺動面に対して垂直方向の断面組織での、前記二硫化モリブデン粒子の前記摺動面に対して垂直方向の長さである、摺動部材。
  2. 前記合成樹脂が、PAI、PI、PBI、PA、フェノール、エポキシ、POM、PEEK、PE、PPS、及びPEIから選ばれる1種または2種以上からなる、請求項1に記載された摺動部材。
  3. 前記摺動層が、黒鉛、WS、h−BN、及びPTFEから選ばれる1種または2種以上の固体潤滑剤を1〜20体積%の範囲でさらに含む、請求項1または請求項2に記載された摺動部材。
  4. 前記摺動層が、CaF、CaCo、タルク、マイカ、ムライト、酸化鉄、リン酸カルシウム、及びMoCから選ばれる1種または2種以上の充填材を1〜10体積%の範囲でさらに含む、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載された摺動部材。
  5. 前記裏金層と前記摺動層との間に、多孔質金属層をさらに有する、請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載された摺動部材。
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