以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照して説明する。図2A〜図2Cに示すように、本実施形態の液滴吐出状態検出装置103は、1以上のノズル列を構成する複数のノズルの各々から吐出されるインク液滴202に光ビーム203が衝突することにより発生する散乱光Sに基づいて、インク液滴202の吐出状態を検出するものである。この液滴吐出状態検出装置103は、光ビーム203を発光する発光素子204と、インク液滴202からの散乱光Sを受光し光ビーム203の光軸Lを介してビーム径φ2の両側に配置された一対の受光素子206,216と、を備えて構成される。そして、ノズル列のノズルと受光素子206,216と位置関係に基づいて、当該ノズルから吐出するインク液滴202からの散乱光Sを受光する受光素子を、一対の受光素子206,216から選択する。
ここで、受光素子で受光するインク液滴からの散乱光量に対する、ノズルと受光素子との位置関係について説明する。受光素子で受光するインク液滴からの散乱光量は、インク液滴を吐出するノズルと受光素子との距離および散乱光の散乱角度により決まり、距離に対しては2次関数として減衰し、散乱角度に対しては、対数の関数として減衰する傾向である。発光素子側のインク液滴、つまり、受光素子からの距離が大きい(以下、「受光素子から遠い」ということがある)ノズルから吐出されるインク液滴からの散乱光量は、距離による減衰率は大きいが、散乱角度による減衰率が小さく、距離による減衰率が主要因となる。一方、受光素子側のインク液滴、つまり、受光素子からの距離が小さい(以下、「受光素子から近い」ということがある)ノズルから吐出されるインク液滴からの散乱光量は、距離による減衰率は小さいが、散乱角度による減衰率が大きく、散乱角度が主要因となる。
また、受光素子で受光する散乱光以外の光ビームの一部や反射光などによるオフセット光量(ノイズ光量)を小さくするためには、光ビームと受光素子との距離を一定以上設ける必要がある。そのため、散乱角度が大きくなる受光素子側のインク液滴からの散乱光量は、発光素子側のインク液滴からの散乱光量に比べて小さくなる。
また、光ビームの光軸に傾きがある場合、光ビームから遠い(光ビームとの距離が他方より大きい)受光素子と、光ビームに近い(光ビームとの距離が他方より小さい)受光素子とができる。光ビームから遠い受光素子では、インク液滴からの散乱光量は小さくなり、光ビームから近い受光素子では、インク液滴からの散乱光量は大きくなる。
また、オフセット光量(ノイズ光量)は、光ビームと受光素子との距離により決まり、光ビームの光軸に傾きがある場合、ビームから近い受光素子では、オフセット光量が大きくなり、ビームから遠い受光素子では、オフセット光量が小さくなる。なお、光ビームの傾きによる光ビームのずれ量(光ビームが傾いていない場合に対するずれ量)は、インク液滴から受光素子までの距離により変わり、発光素子側のインク液滴では、受光素子までの距離が長いため光ビームのずれ量が大きくなる。一方、受光素子側のインク液滴では、受光素子からの距離が短いため光ビームのずれ量が小さくなる。したがって、受光素子側のノズルから吐出するインク液滴の検知に比べて、発光素子側のノズルから吐出するインク液滴の検知では、光ビームから近い受光素子では、オフセット光量がより大きくなる。一方、光ビームから遠い受光素子では、オフセット光量がより小さくなる。
以上を鑑みて、本願の一実施形態に係る液滴吐出状態検出装置103では、前述のように、光ビーム203のビーム径φ2の両側に、インク液滴202からの散乱光Sを検知する一対の受光素子206,216を設置している。そして、液滴吐出状態の検出対象のノズルと受光素子206,216との位置関係に対応して、散乱光Sを検知する受光素子206,216を選択的に変えるようにしている。したがって、発光素子204の傾きやレンズ(後述のコリメートレンズ205など)の傾きなどにより光ビーム203の光軸Lの傾きがある場合、整列したノズル列からずれたノズルがある場合なども、選択した受光素子206,216によって、インク液滴202からの散乱光Sをより精度よく検知することが可能となり、液滴吐出状態をより正確に検知することができる。
上記のような選択の一実施形態として、受光素子206,216から遠い発光素子204側のインク液滴202からの散乱光Sの検知を行う際には、光ビーム203から遠い受光素子(例えば受光素子216)を選択する。このような受光素子216で検知することで、オフセット光量は飽和限界値を越えることなく、インク液滴202からの散乱光量は検出可能な閾値以上となる。そのため、インク液滴202からの散乱光Sを精度よく検知することが可能となり、液滴吐出状態をより正確に検知することができる。
一方、受光素子206,216側(近い)のノズルからのインク液滴202の検知においては、光ビーム203から近い受光素子(例えば、受光素子206)を選択する。このような受光素子206で検知することで、オフセット光量は飽和限界値を越えることなく、インク液滴202からの散乱光量は検出可能な閾値以上となる。そのため、インク液滴202からの散乱光Sを精度よく検知することが可能となり、液滴吐出状態をより正確に検知することができる。
(実施例1)
以下、本願の実施例1に係る液滴吐出状態検出装置と、この液滴吐出状態検出装置を備えた画像形成装置について、図面を用いて説明するが、本願の趣旨を越えない限り、何ら本実施例の構成等に限定されるものではない。なお、各図中、同一又は相当する部分には同一の符号を付しており、その重複説明は適宜に簡略化または省略する。
[画像形成装置の構成]
本願の実施例1に係る画像形成装置の構成について、図1を参照して説明する。図1は、実施例1に係る液滴吐出記録方式の「画像形成装置」(以下、単に「インクジェット方式印刷装置」と呼ぶことがある)を側面方向から概略的に示す図である。
この図1に示すように、実施例1に係る液体吐出記録方式の画像形成装置は、給紙搬送ローラ101、給紙搬送従動ローラ102、液滴吐出状態検出装置103,113,・・・,1n3、記録媒体送り量検出エンコーダ(以下、「エンコーダ」と呼ぶ)104、従動ローラ105、走行プレート106、インクジェットヘッド100、110、…1n0を有するインクジェットヘッドアレイ107、排紙搬送ローラ108、および、排紙搬送従動ローラ109等を備えて構成される。図1に点線で示す液滴吐出状態検出装置103,113,・・・,1n3が、本願の液滴吐出状態検出装置である。
上記構成のインクジェット方式印刷装置では、記録媒体Wは、給紙モータ(図示せず)に連結された給紙搬送ローラ101と、給紙搬送従動ローラ102とにより、給紙部(図示せず)から、従動ローラ105上を搬送されて、走行プレート106へと搬送される。従動ローラ105は、記録媒体Wの所定距離の移動に応じて検出信号を出力するエンコーダ104を備え、記録媒体Wの搬送に伴って従動する。
走行プレート106に対向する位置にあるインクジェットヘッドアレイ107のインクジェットヘッド100,110,・・・,1n0より、走行プレート106に搬送された記録媒体Wにインク滴吐出を行う。その後、走行プレート106上を搬送された記録媒体Wは、排紙モータ(図示せず)に連結された排紙搬送ローラ108と、排紙搬送従動ローラ109とによって搬送され、インクジェット方式印刷装置の外へと排出される。なお、実施例1では、エンコーダ104は給紙搬送ローラ101と走行プレート106との間に搭載しているが、本願が実施例1の構成に限定されることはない。エンコーダ104は走行プレート106と排紙搬送ローラ108との間に搭載してもよい。
なお、本願において、液体吐出記録方式の「画像形成装置」(インクジェット方式印刷装置)は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体にインクを着弾させて画像形成を行う装置を意味する。また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること、つまり、単に液滴を媒体に着弾させることをも意味する。
また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、樹脂、液体などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用いる。また、「用紙」とは、材質を紙に限定するものではなく、上述したOHPシート、布なども含み、インク滴が付着されるものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含むものの総称として用いている。さらに、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を3次元的に造形して形成された像も含まれるものである。
[液滴吐出状態検出装置の構成]
次に、上記インクジェット方式印刷装置で用いる液滴吐出状態検出装置103,113,・・・,1n3において、液滴吐出状態検出装置103の概略構成について、図2A〜図2Dを参照して説明する。図2Aは、インクジェットヘッド100と液滴吐出状態検出装置103とを側面方向から概略的に示したものである。また、図2Bは、液滴吐出状態検出装置103を上方(インクジェットヘッド100側)から俯瞰した概略図であって、1列1番目のノズル11からのインク液滴202の吐出位置に光ビーム203の光軸Lを合わせた場合を示す。また、図2Cは、液滴吐出状態検出装置103を上方(インクジェットヘッド100側)から俯瞰した概略図であって、1列n番目のノズル1nからのインク液滴202の吐出位置に光ビーム203の光軸Lを合わせた場合を示す。さらに、図2Dは、インクジェットヘッド100を上方から俯瞰した半断面図である。なお、他の液滴吐出状態検出装置113,・・・,1n3の構成等については、液滴吐出状態検出装置103と同様であるため、説明は省略する。
以下、実施例1の液滴吐出状態検出装置103の詳細を説明する。この実施例1の液滴吐出状態検出装置103は、発光手段としての発光部Aと、受光手段としての受光部Bと、移動手段としての移動機構210と、を備えている。図2Aに示すように、発光部Aと受光部Bとは、光ビーム203の光軸Lがインクジェットヘッド100のヘッドノズル面201のノズル(11,12,・・・,1X,・・・,1n)からのインク液滴202の吐出方向(図2BのX方向であって、点線矢印で示した方向)と垂直方向(図2BのZ方向)となる位置に配置する。また、液滴吐出状態検出装置103は、図2A〜図2Cに示すように、発光部A(発光素子204、コリメートレンズ205)を搭載した発光ユニット208、発光ユニット208を移動させる移動機構210、および、発光素子204の発光量を設定する発光駆動部209等を、さらに備えている。なお、図2B、図2Cでは、「●」にノズルの符号11,12,・・・,Mnを付しているが、この「●」は、実際には、各ノズルから吐出されるインク液滴202を示す。よって、ノズルはこのインク液滴202の延長線上に位置している。以降の実施例の図面でも同様である。
また、前述のとおり、図2Bは1列1番目のノズル11からのインク液滴202の吐出位置に光ビーム203の光軸Lを合せた場合を示しており、図2Cは1列n番目のノズル1nからのインク液滴202の吐出位置に光ビーム203の光軸Lを合せた場合を示している。発光部Aは、図2Bに示すように、光ビーム203の光軸Lが、記録媒体Wの搬送方向(図2BのY方向)に対して、角度θ30(0°≦θ30<360°)となる位置に配置する。この角度θ30は、0°≦θ30<360°の範囲で任意であるが、ノズルの配列方向(図2BのZ方向)に光ビーム203を射出することができる位置に発光部Aが配置されるよう設定されることがより好ましい。このように配置することにより、複数の液滴吐出状態検出装置103,113,・・・,1n3(nは1以上の整数)を、好適に配置することができる。
また、図2Dに示すように、インクジェットヘッド100のヘッドノズル面201に設けられたノズルは、M列(1,2,・・・,M)のノズル列からなり、各ノズル列は、n個(1,2,・・・,X,・・・,n)のノズルから構成される。なお、X,n,Mは1以上の整数を示す。以下、図2Dに示すように、1列1番目、2番目、・・・、X番目、・・・、n番目のノズル(図2Dの「〇」)を、それぞれノズル11,12,・・・,1X,・・・,1nと呼ぶ。また、2列1番目、2番目、・・・、X番目、・・・、n番目のノズルを、それぞれノズル21,22,・・・,2X,・・・,2nと呼ぶ。3列目以降も同様であり、最終列のM列1番目、2番目、・・・、X番目、・・・、n番目のノズルを、それぞれノズルM1,M2,・・・,・・・,MX,・・・,Mnと呼ぶ。
発光手段としての発光部Aは、光ビーム203を発光する半導体レーザを使用して構成する発光素子204と、発光素子204で発光した光ビーム203を平行光に絞ってビーム径φ1,φ2の光ビーム203にするコリメートレンズ205とで構成される。ここで、φ1,φ2は、ビーム径の長径または短径を示す。なお、発光素子204としては、半導体レーザに限定せず、例えば、LED(Light Emitting Diode)等を使用して構成することも可能である。発光素子204とコリメートレンズ205とは、発光ユニット208に搭載されている。
なお、ビーム径φ1,φ2のどちらを長径とするか、または双方を同径(φ1=φ2)とするかは、諸々の条件により変わる。諸々の条件としては、光ビーム203の波長と強度分布、各ノズル列の間隔、インク液滴202の形状とサイズ、発光素子204の種類と放射角、発光素子204とコリメートレンズ205との間隔、発光素子204とインク液滴202との間隔、インク液滴202と受光素子206,216との間隔、受光素子206,216の位置とサイズ、インクジェットヘッド100と印刷媒体(記録媒体W)との間隔などがある。実施例1では、図3に示すように、φ1はビーム径の短径を示し、φ2はビーム径の長径を示す。
ここで、図2B、図2Cに示すように、光ビーム203の光軸Lは、ノズル列に対して角度θ20(ただし、θ3≦θ20≦θ1)の関係にある。角度θ20は、ノズル列となす角度が0度で傾き0(傾きがない)の場合の光ビーム203の光軸L0と、ノズル列に対して傾いている場合の光ビーム203の光軸Lとがなす角度である。なお、θ1、θ3は、受光部Bの2つの受光素子206,216と光軸Lとがそれぞれなす角度であり、その詳細は後述する。ノズル列とのなす角度が0度で傾き0(傾きがない)の場合の光ビーム203の光軸L0と、ノズル列とのなす角度θ20でノズル列に対して傾いている場合の光ビームの光軸Lとによる、受光部B側での光軸L0,Lのずれ量をPとする。図2Bでは、1列1番のノズル11に光ビーム203の光軸Lを合わせた場合のずれ量PをP11と示し、図2Cでは、1列n番のノズル1nに光ビーム203の光軸Lを合わせた場合のずれ量PをP1nと示している。
移動機構210は、発光部Aから発光した光ビーム203の光軸Lと交差する方向に、発光部Aを搭載した発光ユニット208を移動する。この移動により、発光ユニット208の発光部Aから発光された光ビーム203が、各ノズルから吐出されたインク液滴202に照射されるように、位置合せを行う。移動機構210としては、例えば、駆動モータによりモータギアを駆動させ、このモータギアと連結されたスライダ杆を上下させることで、スライダ杆に支持された発光ユニット208を移動させるものを採用することができる。なお、モータギアとスライダ杆とは、例えば、スライダ杆の下端側に設けたラックと噛み合わされている。ただし、本願の移動機構210がこれに限定されることはなく、発光ユニット208を移動させることができる周知の移動機構を採用することができる。
なお、実施例1のように光ビーム203が平行光の場合、発光素子204から近いノズル11から、発光素子204から遠いノズル1nに向かって発光素子204からの距離が離れるに従い、回折の影響により光ビーム203の強度分布が広がり、ビーム最大強度が減衰する。そのため、実施例1では、発光駆動部209の制御により発光素子204の発光光量を増加させるとともに、移動機構210により発光ユニット208を移動して、インク液滴202の位置と光ビーム203の強度分布とを最適位置に設定している。すなわち、インク液滴202の中心と、光ビーム203の強度分布が最大となる位置とが一致する最適位置に発光ユニット208を移動している。以降の実施例2でも同様である。
受光手段としての受光部Bは、フォトダイオード等を使用して構成する一対の受光素子206,216で構成する。受光部Bの一対(2つ)の受光素子206,216は、光ビーム203の光軸Lを介して、それぞれの受光面207,217が、光ビーム203のビーム径φ2内に入らないように、光ビーム203のビーム径φ2から外れた位置(ビーム径φ2の両側)にそれぞれ配置する。さらに、受光素子206,216での出力電圧が、後述のようにオフセット光の限界値(飽和限界値)を超えることのない位置に配置する。但し、受光部Bの各受光素子206,216は、ビーム径φ2に隣接する位置にそれぞれ配置することが好ましい。その際に、一対の受光素子206,216は、光ビーム203の光軸Lを介して対称位置、すなわち、光ビーム203の光軸Lから等距離の位置に配置することが好ましい。
受光部Bの一方の受光素子206は、光ビーム203の光軸Lに対して角度θ1開いた位置で、且つ、光軸Lの垂直方向に対してθ2(0≦θ2≦θ1)の角度をもった位置に配置する。角度θ1は、液滴吐出状態の検知対象のノズルからのインク液滴202の吐出位置から受光素子206への方向と、光ビーム203の光軸Lとがなす角度である。角度θ2は、光軸Lの垂直方向と受光素子206の受光面207とがなす角度である。
ここで、角度θ1の詳細を説明する。図2Bでは、角度θ1を「θ11N,θ11F」と表示している。θ11Nは、一列目のノズル列1の1番目のノズル11から受光素子206のノズル列1側に近い端面への方向と、光軸Lとがなす角度を表す。θ11Fは、一列目のノズル列1の1番目のノズル11から受光素子206のノズル列1側より遠い端面への方向と、光軸Lとがなす角度を表している。また、図2Cでは、角度θ1を「θ1nN,θ1nF」と表示している。θ1nNは、一列目のノズル列1のn番目のノズル1nから受光素子206のノズル列1側に近い端面への方向と、光軸Lとがなす角度を表す。θ1nFは、一列目のノズル列1のn番目のノズル1nから受光素子206のノズル列1側より遠い端面への方向と、光軸Lとがなす角度を表している。
受光部Bの他方の受光素子216は、光ビーム203の光軸Lに対して角度θ3開いた位置で、且つ、光軸Lの垂直方向に対してθ4(0≦θ4≦θ3)の角度をもった位置に配置する。角度θ3は、ノズルからのインク液滴202の吐出位置から受光素子216への方向と、光ビーム203の光軸Lとがなす角度である。角度θ4は、光軸Lの垂直方向と受光素子216の受光面217とがなす角度である。
ここで、角度θ3の詳細を説明する。図2Bでは、角度θ3を「θ31N,θ31F」と表示している。θ31Nは、一列目のノズル列1の1番目のノズル11から受光素子216のノズル列1側に近い端面への方向と、光軸Lとがなす角度を表す。θ31Fは、一列目のノズル列1の1番目のノズル11から受光素子216のノズル列1側より遠い端面への方向と、光軸Lとがなす角度を表している。また、図2Cでは、角度θ3を「θ3nN,θ3nF」と表示している。θ3nNは、一列目のノズル列1のn番目のノズル1nから受光素子216のノズル列1側に近い端面への方向と、光軸Lとがなす角度を表す。θ3nFは、一列目のノズル列1のn番目のノズル1nから受光素子216のノズル列1側より遠い端面への方向と、光軸Lとがなす角度を表している。
以上のような構成の実施例1の画像形成装置は、インクジェットヘッド100のヘッドノズル面201の各ノズル(11,12,・・・,1X,・・・,1n,21,22,・・・,2n,・・・,M1,M2,・・・,Mn)からインク液滴202を吐出する。そのインク液滴202に光ビーム203が衝突することで散乱光Sが発生する。
そして、画像形成装置に備えられた実施例1の液滴吐出状態検出装置103は、この散乱光Sのうち、2つの受光素子206,216の各受光面207,217に到達して得られた受光光量を、各受光素子206,216において光−電圧変換する。このように光−電圧変換した出力電圧Vを計測することで、散乱光Sの受光データを取得し、その受光データを基に、インク液滴202の吐出の有無、インク液滴202の吐出ずれ等の液滴吐出状態を検出する。こうして検出された液滴吐出状態を、液滴吐出状態検出データとして使用する。
次に、光ビーム203の光軸Lとノズル列とがなす角度が0度で、光軸Lに傾きがない場合(すなわち、図2B等で示す光軸L0)の光ビーム203の強度分布と受光素子206,216との関係について図3を用いて説明する。図3の紙面上側の図が、光ビーム203の強度分布を示しており、横軸が上述した図2B、図2CのY方向を、縦軸が光の強度をそれぞれ示している。図3の紙面下側の図が、光ビーム203の断面を示している。この図3に示すように、光ビーム203の強度はY方向の位置により変わり、光軸L(光軸L0)の位置で最も強度が強く、Y方向でビーム径の端に行くに従い強度は低下する。図3に、斜線で示す光ビーム203の一部の周辺光が、後述のオフセット光として受光素子206(受光素子216)に入射する。なお、図3に示す強度分布は一例であり、発光素子204、コリメートレンズ205、さらには絞り部材(後述の実施例2、3参照)の各特性と位置、発光素子204やコリメートレンズ205からインク液滴202までの距離(図2A等に示すZ方向での距離)などの条件により変わる。
図4は、ノズルからのインク液滴202の吐出位置から受光素子206(受光素子216)への方向と、光ビーム203の光軸L(光軸L0)とがなす角度θ1(角度θ3)、および、受光素子206(受光素子216)の出力電圧Vの関係を示した図である。以下、θ1(θ3)を、単に受光素子206(受光素子216)と光軸Lとがなす角度と呼ぶ。この図4において、横軸は受光素子206(受光素子216)と光軸Lとがなす角度θ1(角度θ3)を示し、縦軸は、受光素子206(受光素子216)での「オフセット光+散乱光」による出力電圧V(V1(V3))を示す。
この図4に示すように、散乱光Sによる出力電圧Vは角度依存性をもっており、角度θ1(角度θ3)が大きくなるに従い、すなわち、ノズルと受光部Bとの距離が小さく(近く)なるに従い、散乱光Sによる出力電圧Vは小さくなる。但し、角度θ1min(角度θ3min)は、下記(1)または(2)の理由により、インク液滴202を吐出しない状態においても飽和状態(飽和限界値)Vmaxとなるため、散乱光Sを検出できなくなる。ここで、角度θ1min(角度θ3min)は、下記(1)および(2)の条件に該当しない場合での受光素子206(受光素子216)と光軸Lとがなす最小角度を表す。
(1)光ビーム203のビーム径φ2内に受光素子206(受光素子216)がある場合。
(2)受光素子206(受光素子216)の出力がオフセット光の飽和限界値以上となる位置に受光素子206(受光素子216)がある場合。
液滴吐出状態検出装置103では、ビーム径φ2外にも光ビーム203の周辺光があり、また、記録媒体W、インクジェットヘッド100、その他の周辺部品等からの反射光などのノイズ光(以下、「オフセット光」と呼ぶ)がある。そのため、このオフセット光が受光素子206(受光素子216)に射する。このオフセット光が増大すると、インク液滴202を吐出しない状態においても、受光素子206(受光素子216)の出力電圧Vは飽和状態(飽和限界値)Vmaxとなり(図4では「飽和出力電圧」と表示)、散乱光Sを検出できなくなる。このときのオフセット光の値を、「オフセット光飽和値」とする。このため、受光素子206(受光素子216)と光軸Lとがなす角度θ1(角度θ3)は、上記(1)および(2)の条件に該当しない「θ1>θ1min(θ3>θ3min)」でなければならない。
なお、図4では、出力電圧Vを、角度θ1(角度θ3)に対して右下がりの曲線で示しているが、インク液滴202の形状とサイズによっては、波動形状の右下がりの曲線となる。また、光ビーム203の光軸Lとノズル列のなす角度が0度(傾きなし)においては、受光素子206と受光素子216とは、光ビーム203の光軸L(図2B等の光軸L0)からの距離が同一であるため、受光するオフセット光(例えば、図3に斜線で示す光ビーム203の一部である周辺光)は同一となる。
次に、角度θ1(角度θ3)と受光素子206(受光素子216)へ入射するインク液滴202からの散乱光量との関係について、図5を参照して説明する。図5(a)は1列1番目のノズル11に光ビーム203の光軸L0を合せた場合(図2B参照)を示しており、図5(b)は1列n番目のノズル1nに光ビーム203の光軸L0を合せた場合(図2C参照)を示している。
前述のように、インク液滴202からの散乱光Sは、角度依存性のある波形状の分布である。散乱光Sはインク液滴202に入射する光の波長、インク液滴202の成分と形状とサイズにより、波形の減衰率、振幅の高さ、振幅の幅が変わる。インク液滴202に入射する光の波長およびインク液滴202の成分が同じで、同程度の形状およびサイズである場合、散乱光量は散乱角度に依存して変わり、散乱角度が大きくなるに従い、すなわち、ノズルと受光部Bとの距離が小さく(近く)なるに従い、散乱光量は減衰する。そして、受光素子206(受光素子216)へ入射する散乱光Sによる出力電圧Vが、散乱光量の検出可能な閾値VSmin以下となると、インク液滴202からの散乱光Sを検知不可となる。
図5(a)に示すように、受光部Bからの距離が大きい(遠い)1列1番目のノズル11からのインク液滴202の吐出位置に光ビーム203の光軸Lを合せた場合は、インク液滴202から受光素子206(受光素子216)への散乱光Sの入射角度がθ11(θ31)である。VS11(VS31)が、散乱光Sの入射角度θ11(θ31)がθ11N〜θ11F(θ31N〜θ31F)の範囲にあるときの受光素子206(受光素子216)に入射する散乱光Sによる出力電圧である。受光素子206(受光素子216)に入射する散乱光Sによる出力電圧VS11(VS31)は、散乱光量の検出可能な閾値VSmin以上となり、インク液滴202からの散乱光Sを検知可能である。
一方、図5(b)に示すように、受光部Bからの距離が小さい(近い)1列n番目のノズル1nからのインク液滴202の吐出位置に光ビーム203の光軸Lを合せた場合は、インク液滴202から受光素子206(受光素子216)への散乱光Sの入射角度がθ1n(θ3n)である。VS1n(VS3n)が、散乱光Sの入射角度θ1n(θ3n)がθ1nN〜θ1nF(θ3nN〜θ3nF)の範囲にあるときの受光素子206(受光素子216)に入射する散乱光Sによる出力電圧である。受光素子206(受光素子216)に入射する散乱光Sによる出力電圧VS1n(VS3n)は、散乱光量の検出可能な閾値VSmin以上となり、インク液滴202からの散乱光Sを検知可能である。
以上、ノズル列に対する光ビーム203の光軸L(光軸L0)が傾き0の場合は、受光素子206と受光素子216とは、光軸L(光軸L0)から等距離の位置であって、角度θ1と角度θ3とが同じ(線対称)位置にある。そして、図4、図5(a)、(b)に示すように、1列1番目または1列n番目のノズル11,1nからのインク液滴202の吐出位置に光ビーム203の光軸Lを合せた場合は、受光素子206および受光素子216のいずれもオフセット光の飽和状態(飽和限界値)Vmax以下で、散乱光量の検出可能な閾値VSmin以上となる。したがって、受光素子206および受光素子216のいずれを選択してもよい。なお、使用環境やオフセット光のばらつき等により、受光素子206,216での検出値に個体差が生じることがあるが、オフセット光の影響がより少ない受光素子206,216を選択することが好ましい。
次に、光ビーム203の光軸Lが受光素子206側に角度θ20で傾いている場合について説明する。この状態では、光軸L(光軸L0)が傾いていない場合に比べて、受光素子206では光ビーム203から近く(距離が短く)なり、受光素子216では光ビーム203から遠く(距離が長く)なる。これにより、角度θ1に比べて角度θ3が大きくなる。光ビーム203の光軸Lが受光素子206側に角度θ20で傾いている場合の光ビーム203の強度分布とインク液滴202の位置との関係について、図6を参照して説明する。この図6は、光ビーム203の光軸Lが受光素子206側に角度θ20で傾いている場合の、光ビーム203の強度分布と受光素子206(受光素子216)との関係を示す図である。図6(a)は、1列1番目のノズル11からのインク液滴202の吐出位置に光ビーム203の光軸Lを合せた場合(図2B参照)を示しており、図6(b)は、1列n番目のノズル1nからのインク液滴202の吐出位置に光ビーム203の光軸Lを合せた場合(図2C参照)を示している。図6(a)、図6(b)の紙面上側の図が、光ビーム203の強度分布を示しており、横軸が上述した図2B、図2CのY方向を、縦軸が光の強度をそれぞれ示している。各図の斜線で示す周辺光などが、オフセット光として受光素子206(受光素子216)に入射する。図6(a)、図6(b)の紙面下側の図が、光ビーム203の断面を示している。なお、図6(a)、図6(b)に示す強度分布は一例であり、発光素子204、コリメートレンズ205、さらには絞り部材(後述の実施例2、3参照)の各特性と位置、発光素子204やコリメートレンズ205からインク液滴202までの距離(図2A等に示すZ方向)などの条件により変わる。
この場合、移動機構210により、発光ユニット208を移動することにより、光ビーム203が移動し、各ノズル(ノズル11,1n)からのインク液滴202の吐出位置に光ビーム203の光軸Lを合わせることができる。なお、図6(a)に示すP11は、図2Bにおいて1列1番のノズル11に光軸Lを合わせた場合の該光軸Lと傾き0の光軸L0とのずれ量Pを示している。また、図6(b)に示すP1nは、図2Cにおいて1列n番のノズル1nに光ビーム203の光軸Lを合わせた場合の該光軸Lと傾き0の光軸L0とのずれ量Pを示している。
図7は、光ビーム203の光軸Lが受光素子206側に角度θ20で傾いている場合の受光素子206(受光素子216)と光ビーム203の光軸Lとがなす角度θ1(角度θ3)と、受光素子206(受光素子216)での「オフセット光+散乱光」による出力電圧V(V1(V3))との関係を示した図である。図7(a)は、1列1番目のノズル11からのインク液滴202の吐出位置に光ビーム203の光軸Lを合せた場合(図2B参照)を示しており、図7(b)は1列n番目のノズル1nからのインク液滴202の吐出位置に光ビーム203の光軸Lを合せた場合(図2C参照)を示している。
図7(a)に示すように、受光部Bからの距離が大きい(遠い)位置関係にある1列1番目のノズル11からのインク液滴202の吐出位置に光ビーム203の光軸Lを合せた場合は、光ビーム203から近い受光素子206では、角度θ1がθ1minより小さくなる。そのため、受光素子206の出力電圧V(V1)がオフセット光の飽和状態(飽和限界値)Vmaxとなり、散乱光を検知不可となる。また、光ビーム203から遠い受光素子216では、角度θ3がθ3minより大きくなる。そのため、受光素子216の出力電圧V(V3)がオフセット光の飽和状態(飽和限界値)Vmax以下となり、インク液滴202からの散乱光Sを検知可能である。
一方、図7(b)に示すように、受光部Bからの距離が小さい(近い)位置関係にある1列n番目のノズル1nからのインク液滴202の吐出位置に光ビーム203の光軸Lを合せた場合は、光ビーム203から近い受光素子206では、角度θ1がθ1minより大きくなる。そのため、受光素子206の出力電圧V(V1)がオフセット光の飽和状態(飽和限界値)Vmax以下となり、散乱光Sを検知可能である。また、光ビーム203から遠い受光素子216では、角度θ3がθ3minより大きくなる。そのため、受光素子216の出力電圧V(V3)がオフセット光の飽和状態(飽和限界値)Vmax以下となり、インク液滴202からの散乱光Sを検知可能である。
なお、図7(a)、(b)においても、上述した図4と同様に、出力電圧Vを、角度θ1(角度θ3)に対して右下がりの曲線で示しているが、インク液滴202の形状とサイズによっては、波動形状の右下がりの曲線となる。また、光ビーム203の光軸Lが角度θ20で傾いている場合では、受光素子206と受光素子216とは、光ビーム203の光軸L(図2B等の光軸L0)からの距離が異なるため、受光するオフセット光(例えば、図6(a)、(b)に斜線で示す光ビーム203の一部である周辺光)も異なる。
次に、光ビーム203の光軸Lが受光素子206側に角度θ20で傾いている場合の角度θ1(角度θ3)と受光素子206(受光素子216)へ入射するインク液滴202からの散乱光量との関係について、図8を参照して説明する。図8(a)は1列1番目のノズル11からのインク液滴202の吐出位置に光ビーム203の光軸Lを合せた場合(図2B参照)を示しており、図8(b)は1列n番目のノズル1nからのインク液滴202の吐出位置に光ビーム203の光軸Lを合せた場合(図2C参照)を示している。
図8(a)に示すように、受光部Bからの距離が大きい(遠い)1列1番目のノズル11からのインク液滴202の吐出位置に光ビーム203の光軸Lを合せた場合は、インク液滴202から受光素子206(受光素子216)への散乱光Sの入射角度がθ11(θ31)である。VS11(VS31)が、散乱光Sの入射角度θ11(θ31)がθ11N〜θ11F(θ31N〜θ31F)の範囲にあるときの受光素子206(受光素子216)に入射する散乱光Sによる出力電圧である。光ビーム203から近い受光素子206では、角度θ1が小さくなり、散乱光Sの入射角度θ11も小さくなる。よって、受光素子206に入射する散乱光Sによる出力電圧VS11は、散乱光量の検出可能な閾値VSmin以上となり、インク液滴202からの散乱光Sを検知可能である。また、光ビーム203から遠い受光素子216では、角度θ3が大きくなり、散乱光Sの入射角度θ31も大きくなる。よって、受光素子216に入射する散乱光Sによる出力電圧VS31は小さくなるが、散乱光量の検出可能な閾値VSmin以上となり、インク液滴202からの散乱光Sを検知可能である。
一方、図8(b)に示すように、受光部Bからの距離が小さい(近い)1列n番目のノズル1nからのインク液滴202の吐出位置に光ビーム203の光軸Lを合せた場合は、インク液滴202から受光素子206(受光素子216)への散乱光Sの入射角度がθ1n(θ3n)である。VS1n(VS3n)が、散乱光Sの入射角度θ1n(θ3n)がθ1nN〜θ1nF(θ3nN〜θ3nF)の範囲にあるときの受光素子206(受光素子216)に入射する散乱光Sによる出力電圧である。光ビーム203から近い受光素子206では、角度θ1が小さくなり、散乱光Sの入射角度θ1nも小さくなる。よって、受光素子206に入射する散乱光Sによる出力電圧VS11は、散乱光量の検出可能な閾値VSmin以上となり、インク液滴202からの散乱光Sを検知可能である。また、光ビーム203から遠い受光素子216では、角度θ3が大きくなり、散乱光Sの入射角度θ3nも大きくなる。よって、受光素子216に入射する散乱光Sによる出力電圧VS31は小さくなり、散乱光量の検出可能な閾値VSminより小さくなるため、インク液滴202からの散乱光Sを検知不可となる。
以上、図7(a)、図8(a)より、受光部Bからの距離が大きい(遠い)1列1番目のノズル11からのインク液滴202の吐出位置に光ビーム203の光軸Lを合せた場合は、オフセット光の飽和状態(飽和限界値)Vmax以下で、散乱光量の検出可能な閾値VSmin以上となる受光素子216で検知することにより、インク液滴202からの散乱光Sを検知することが可能となる。言い換えると、受光部Bから遠く発光部A側に位置する1列1番目のノズル11では、光ビーム203から遠い受光素子216で検知する。この受光素子216では、オフセット光量は飽和限界値を越えることなく、インク液滴202からの散乱光量は検出可能な閾値以上となるため、インク液滴202からの散乱光Sをより精度よく検知することが可能となり、インク液滴202の吐出状態をより正確に検知することができる。
また、図7(b)、図8(b)より、受光部Bからの距離が小さい(近い)1列n番目のノズル1nからのインク液滴202の吐出位置に光ビーム203の光軸Lを合せた場合は、オフセット光の飽和状態(飽和限界値)Vmax以下で、散乱光量の検出可能な閾値VSmin以上となる受光素子206で検知することにより、インク液滴202からの散乱光Sを検知することが可能となる。言い換えると、受光部B側に位置する1列n番目のノズル1nでは、光ビーム203から近い受光素子206で検知する。この受光素子206では、オフセット光量は飽和限界値を越えることなく、インク液滴202からの散乱光量は検出可能な閾値以上となるため、インク液滴202からの散乱光Sをより精度よく検知することが可能となり、インク液滴202の吐出状態をより正確に検知することができる。
以上のように、インク液滴202の吐出状態の検出対象のノズルと受光部Bとの距離、および、光ビーム203と受光素子206,216との距離に基づいて、当該ノズルから吐出するインク液滴202からの散乱光Sを受光する受光素子206,216を決定する。例えば、1列目のノズル列1の場合、1番目からn番目までのノズル(11〜1n)のうち、受光部Bからの距離が所定値より大きい(遠い)1番目からX−1番目までのノズル11〜1(X−1)では、オフセット光の飽和状態(飽和限界値)Vmax以下で、散乱光量の検出可能な閾値VSmin以上となる受光素子216(光ビーム203から遠い)で検知することとする。また、受光部Bからの距離が所定値以下(近い)のX番目からn番目までのノズル1X〜1nでは、オフセット光の飽和状態(飽和限界値)Vmax以下で、散乱光量の検出可能な閾値VSmin以上となる受光素子206(光ビーム203から近い)で検知することとする。なお、X、すなわち、受光部BからのノズルXの距離が所定値より大きい(遠い)か所定値以下(近い)かは、インク液滴に202入射する光の波長とインク液滴202の成分と形状とサイズ、発光素子204からノズルまでの距離、ノズル間隔、ノズルから受光素子206までの距離、光ビーム203と受光素子206位置関係、θ20,θ1,θ2,θ4,θ3などにより変わる。「所定値」とは、具体的には、光ビーム203から遠い受光素子216での出力電圧が、オフセット光の飽和状態(飽和限界値)Vmaxを超えたとき、または、散乱光量の検出可能な閾値VSmin未満となったときの、該ノズルからのインク液滴202の吐出位置と受光素子216との距離である。この「所定値」までのノズル(X−1番目まで)の液滴吐出状態は、受光素子216で検知し、それ以降のノズル(X番目以降)の液滴吐出状態は受光素子206で検知する。
また、ノズル列1の外側(ノズル列2と反対側)、ノズル列1とノズル列2との中間、ノズル列2とノズル列3との中間、・・・、ノズル列X−1とノズル列Xとの中間、ノズル列Xとノズル列X+1との中間、・・・、ノズル列M−1とノズル列Mとの中間、および、ノズル列Mの外側(ノズル列M−1と反対側)に、受光素子を「M+1」個設置する。これにより、各ノズル列の両側に一対ずつ受光素子が配置されることとなり、諸々の条件に応じて何れかの一方の受光素子を検出用の受光素子として選択することで、各ノズル列についてインク液滴202からの散乱光Sを精度よく検知可能となる。なお、ノズル列間に配置した受光素子の光軸Lの垂直方向に対する角度θ2または角度θ4は、θ2,θ4=0度とすることで、1つの受光素子で、その両側に位置する2列のノズル列での検知を低コストで実施することができる。さらに、適宜の駆動手段を用いて、検知を行うノズル列に対応させて、受光素子の角度θ2,θ4を変更できるように構成すれば、各ノズル列に対する受光素子の検知精度を、より向上させることが可能となる。
また、ノズル列1とノズル列2、ノズル列3とノズル列4、・・・、ノズル列X−1とノズル列X、・・・、および、ノズル列M−1とノズル列Mの各2列が近接している場合には、各2列で2個の受光素子を使用することとする。よって、ノズル列1の外側(ノズル列2と反対側)、ノズル列2とノズル列3との中間、・・・、ノズル列X−2とノズル列X−1との中間、ノズル列X+1とノズル列X+2との中間、・・・、ノズル列M−2とノズル列M−1との中間、および、ノズル列Mの外側(ノズル列M−1と反対側)に、受光素子を「M/2+1」個設置する。この場合も、各ノズル列の両側に一対ずつ受光素子が配置されることとなり、諸々の条件に応じて何れかの一方の受光素子を選択することで、各ノズル列についてインク液滴202からの散乱光Sを検知可能となる。また、受光素子の設置個数を少なくして、低コストの製品とすることができる。また、この場合も、受光素子の光軸Lの垂直方向に対する角度θ2,θ4=0度として低コストを図ってもよいし、検知するノズル列に対応して、角度θ2,θ4を適宜変更できるようにして検知精度の向上を図ってもよい。
以上、実施例1に係る液滴吐出状態検出装置では、発光手段から発光する光ビームを介して、ビーム径の両側に一対の受光素子を設置している。そのため、発光素子の傾きやレンズの傾きなどによりビームの傾きがある場合や、整列したノズル列からずれたノズルがある場合も、いずれかの受光素子を用いて、インク液滴の吐出状態をより精度よく検出することが可能となる。また、このようにインク液滴の吐出状態をより精度よく検出可能な液滴吐出状態検出装置を備える実施例1に係る画像形成装置では、画像形成装置の停止および画像品質の低下を良好に抑えることができる。
次に、本願での受光素子の選択手順を、図9のフローチャートを参照して具体的に説明する。図9および以降の説明では、実施例1に係る液滴吐出状態検出装置103における1列目のインク列1の1番目からn番目までのノズル11〜1nでの受光素子206または受光素子216の選択手順を例として示す。
まず、ステップS1では1列1番目のノズル11からのインク液滴202の吐出状態の検知を行うため、Xに1を代入する。次に、ステップS2では、移動機構210を駆動して、1列X番目のノズル1X(1回目は1列1番目のノズル11)からのインク液滴202の吐出位置に光ビーム203の光軸Lが照射される位置に、発光ユニット208を移動する。
ステップS3では、1列X番目のノズル1Xからインク液滴202が吐出したタイミングで、受光素子206および受光素子216で散乱光Sを受光し測定値を得る。この測定値に基づいて、「オフセット光+散乱光S」による出力電圧V1,V3、および、散乱光Sによる出力電圧VS1X,VS3Xを算出する。この出力電圧VS1X,VS3Xは、出力電圧V1,V3から、予め測定したオフセット光による出力値を差し引いた値である。より詳細には、例えば、受光素子206,216からの電流値を、電流−電圧変換回路により電圧に変換して、適宜の倍率:n倍に増幅し、「オフセット光+散乱光S」による出力電圧V1,V3を取り出す。また、この出力電圧V1,V3から、ACカップリング等により、DC成分であるオフセット光を取り除いて、散乱光Sによる出力電圧VS1X,VS3Xを取り出す。散乱光Sによる出力電圧VS1X,VS3Xは、適宜の倍率:m倍に増幅する。ステップS4では、受光素子206の「オフセット光+散乱光S」による出力電圧V1と、飽和状態(飽和限界値)の出力電圧Vmax(以下、「飽和出力電圧Vmax)と呼ぶ)との大小を判断する。Vmax≧V1(ステップS4での判断がYes)の場合は、ステップS5Aに進む。Vmax<V1(ステップS4での判断がNo)の場合は、受光素子206では散乱光Sを検知不可のためステップS5Bに進む。
ステップS5Aでは、受光素子216の「オフセット光+散乱光S」による出力電圧V3と、飽和出力電圧Vmaxとの大小を判断する。Vmax≧V3(ステップS5Aでの判断がYes)の場合はステップS6Aに進む。Vmax<V3は(ステップS5Aでの判断がNo)の場合は受光素子216では散乱光Sを検知不可のためステップS6Bに進む。
ステップS5B(受光素子206での散乱光Sの検知不可)では、受光素子216の「オフセット光+散乱光」による出力電圧V3と、飽和出力電圧Vmaxとの大小を判断する。Vmax≧V3(ステップS5Bでの判断がYes)の場合はステップS6Cに進む。Vmax<V3(ステップS5Bでの判断がNo)の場合は受光素子206,216とも散乱光Sを検知不可のためステップS9Kに進む。
ステップS6Aでは、受光素子206の散乱光Sによる出力電圧VS1Xと、散乱光量の検出可能な閾値VSminとの大小を判断する。VSmin≦VS1X(ステップS6Aでの判断がYes)の場合は、受光素子206では散乱光Sを検知可能のためステップS7Aに進む。VSmin>VS1X(ステップS6Aでの判断がNo)の場合は、受光素子206では散乱光Sを検知不可のためステップS7Bに進む。
ステップS6B(受光素子216での散乱光Sの検知不可)では、受光素子206の散乱光Sによる出力電圧VS1Xと、散乱光量の検出可能な閾値VSminとの大小を判断する。VSmin≦VS1X(ステップS6Bでの判断がYes)の場合は、受光素子206では散乱光Sを検知可能のため、ステップS9F(受光素子206に決定)に進む。VSmin>VS1X(ステップS6Bでの判断がNo)の場合は受光素子206,216とも散乱光Sを検知不可のため、ステップS9G(エラー処理)に進む。
ステップS6C(受光素子206での散乱光Sの検知不可)では、受光素子216の散乱光Sによる出力電圧VS3Xと、散乱光量の検出可能な閾値VSminとの大小を判断する。VSmin≦VS3X(ステップS6Cでの判断がYes)の場合は、受光素子216では散乱光Sを検知可能のため、ステップS9Hに進む。VSmin>VS3X(ステップS6Cでの判断がNo)の場合は、受光素子206,216とも散乱光Sを検知不可のため、ステップS9J(エラー処理)に進む。
ステップS7Aでは、受光素子216の散乱光Sによる出力電圧VS3Xと、散乱光量の検出可能な閾値VSminとの大小を判断する。VSmin≦VS3X(ステップS7Aでの判断がYes)の場合はステップS8Aに進む。VSmin>VS3X(ステップS7Aでの判断がNo)の場合は受光素子206では散乱光Sを検知可能のため、ステップS9C(受光素子206に決定)に進む。
ステップS7B(受光素子206での散乱光Sの検知不可)では、受光素子216の散乱光Sによる出力電圧VS3Xと、散乱光量の検出可能な閾値VSminとの大小を判断する。VSmin≦VS3X(ステップS7Bでの判断がYes)の場合は、受光素子216では散乱光Sを検知可能のためステップS9D(受光素子216に決定)に進む。VSmin>VS3X(ステップS7Bでの判断がNo)の場合は受光素子206,216とも散乱光Sを検知不可のためステップS9E(エラー処理)に進む。
ステップS8Aでは、受光素子206の「オフセット光+散乱光」による出力電圧V1と、受光素子216での「オフセット光+散乱光」の出力電圧V3との大小を判断する。V1≧V3(ステップS8Aでの判断がYes)の場合は受光素子216のほうが「オフセット光+散乱光」の裕度が高い(オフセット光による影響が少ない)ので、ステップS9A(受光素子216に決定)に進む。V1<V3(ステップS8Aでの判断がNo)の場合は受光素子206のほうが「オフセット光+散乱光」の裕度が高いので、ステップS9B(受光素子206に決定)に進む。
ステップS9A、ステップS9D、ステップS9Hでは、吐出状態の検知を受光素子216で行うことに決定し、ステップS10Aに進む。ステップS9B、ステップS9C、ステップS9Fでは、吐出状態の検知を受光素子206で行うことに決定し、ステップS10Aに進む。ステップS9E、ステップS9G、ステップS9J、ステップS9Kでは、受光素子206,216とも吐出状態の検知不可であるため、エラー処理を行って、ステップS10Aに進む。エラー処理としては、例えば、画像形成装置へのエラー通知などを行う。なお、エラー通知を受けた画像形成装置では、エラー対策として、ユーザからの設定に基づいて、例えば、次の(1)〜(4)のような処理を実施することで、画像品質の低下を抑制することができる。(1)画像形成装置の作動を停止して、エラーメッセージを表示し、ユーザからの指示を待つ。(2)ヘッドクリーニングを実行する。(3)ヘッドクリーニングの実行後、液滴吐出状態検知処理を再度実行する。(4)ヘッドクリーニング、液滴吐出状態検知処理の再度の実行後、さらに、テスト印字を実行する。
ステップS10Aでは、X番目のノズルがn番目のノズルかを判断する。X=n(ステップS10Aの判断がYes)の場合は、すべてのノズルについて検知する受光素子が決定したので、処理を終了する。X=nでない(ステップS10Aの判断がNo)場合は、検知対象のノズルを変えるため、ステップS10Bに進む。
ステップS10Bでは、ノズルを変えて、当該ノズルについて検知する受光素子を選択するため、XにX+1を代入して(Xをカウントアップ)、ステップS2に戻り、当該ノズルに対して、ステップS2以降のステップを実行する。
なお、図9では、受光素子の選択についての処理フローを示しているが、受光素子の選択と同時に、インク液滴の吐出検知を行うようにすることも可能である。
(実施例2)
次に、本願の実施例2に係る液滴吐出状態検出装置の概略構成について、図10A〜図10Dを参照して説明する。図10Aは、インクジェットヘッド100と実施例2の液滴吐出状態検出装置103Aとを側面方向から概略的に示したものである。また、図10Bは、液滴吐出状態検出装置103Aを上方から俯瞰した概略図であって、1列1番目のノズル11に光ビーム203の光軸Lを合わせた場合を示す。また、図10Cは、液滴吐出状態検出装置103を上方から俯瞰した概略図であって、1列n番目のノズル1nに光ビーム203の光軸Lを合わせた場合を示す。さらに、図10Dは、インクジェットヘッド100を上方から俯瞰した半断面図である。
図10A〜図10Dに示すように、実施例2の液滴吐出状態検出装置103Aは、実施例1と同様の基本構成に加え、新たに絞り手段としての絞り部材801を設けている。そのため、実施例1と同様の構成については、同一の符号を付し、その重複説明は適宜に簡略化または省略する。以降の実施例でも同様である。実施例2で用いる絞り部材801は、光ビーム203の照射方向を基準として、コリメートレンズ205より下流側に設けられている。絞り部材801は、発光素子204が発光した光ビーム203を絞る部材である。なお、発光素子204、コリメートレンズ205、絞り部材801は発光ユニット208に搭載される。絞り部材801としては、例えば、アパーチャやスリットなどが挙げられるが、本願の絞り手段がこれらに限定されることはなく、周知のものを用いることができる。
発光部Aの発光素子204で発光した光ビーム203は、絞り部材801により、ビーム径φ3,φ4の平行光に絞られる。ここで、φ3,φ4は、ビーム径の長径または短径を示す。なお、ビーム径φ3およびφ4のどちらを長径とするか、または双方を同径(φ3=φ4)とするか、またはビーム形状を矩形にするかは、諸々の条件により変わる。諸々の条件としては、光ビーム203の波長と強度分布、各ノズル列の間隔、インク液滴202の形状とサイズ、発光素子204の種類と放射角、発光素子204とコリメートレンズ205との間隔、発光素子204とインク液滴202との間隔、インク液滴202と受光素子206,216との間隔、受光素子206,216の位置とサイズ、インクジェットヘッド100と印刷媒体(記録媒体W)との間隔などがある。
受光部Bの2つの受光素子206,216は、それぞれの受光面207,217が、光ビーム203のビーム径φ4内に入らないように、光ビーム203のビーム径φ4から外れた位置(ビーム径φ4の両側)にそれぞれ配置する。さらに、受光素子206,216での出力電圧が、後述のようにオフセット光の限界値(飽和限界値)を超えることのない位置に配置する。但し、受光部Bの各受光素子206,216は、ビーム径φ4に隣接する位置にそれぞれ配置することが好ましい。その際に、一対の受光素子206,216は、光ビーム203の光軸Lを介して対称位置、すなわち、光ビーム203の光軸Lから等距離の位置に配置することが好ましい。
また、受光部Bの一方の受光素子206は、光ビーム203の光軸Lに対して角度θ5開いた位置で、且つ、光軸Lの垂直方向に対してθ6(0≦θ6<θ5)の角度をもった位置に配置する。角度θ5、角度θ6は、実施例1の角度θ1、角度θ2に相当する。また、受光部Bの他方の受光素子216は、光ビーム203の光軸Lに対して角度θ7開いた位置で、且つ、光軸Lの垂直方向に対してθ8(0≦θ8<θ7)の角度をもった位置に配置する。角度θ7、角度θ8は、実施例1の角度θ3、角度θ4に相当する。
受光素子206(受光素子216)と光軸Lとがなす角度θ5(角度θ7)は、上記(1)および(2)の条件に該当しない角度「θ5>θ5min(θ7>θ7min)」でなければならない。なお、角度θ5min(角度θ7min)は、受光素子206(受光素子216)と光軸Lとがなす最小角度を表す。
図10B,図10Cでは、角度θ5を「θ51N,θ51F,θ5nN,θ5nF」と表示し、角度θ7を「θ71N,θ71F,θ7nN,θ7nF」と表示している。図10Bに示すθ51N(θ71N)は、一列目のノズル列1の1番目のノズル11から受光素子206(受光素子216)のノズル列1側に近い端面への方向と、光軸Lとがなす角度を表す。θ51F(θ71F)は、一列目のノズル列1の1番目のノズル11から受光素子206(受光素子216)のノズル列1側より遠い端面への方向と、光軸Lとがなす角度を表している。また、図10Cに示すθ5nN(θ7nN)は、一列目のノズル列1のn番目のノズル1nから受光素子206(受光素子216)のノズル列1側に近い端面への方向と、光軸Lとがなす角度を表す。θ5nF(θ7nF)は、一列目のノズル列1のn番目のノズル1nから受光素子206(受光素子216)のノズル列1側より遠い端面への方向と、光軸Lとがなす角度を表している。
以上のように、実施例2では、実施例1の構成例に加え、新たに設けた絞り部材801により、光ビーム203を絞ることにより、光ビーム203のビーム径φ3,φ4を小さくすることができる。すなわち、実施例2の光ビーム203のビーム径φ3およびφ4は、実施例1の光ビーム203のビーム径φ1およびφ2より小さいこととなる(φ4<φ2、φ3<φ1)。その結果、受光素子206(受光素子216)と光軸Lとがなす角度θ5(角度θ7)を、実施例1の角度θ1(角度θ3)より小さくすることができる。
次に、実施例2の液滴吐出状態検出装置103Aを適用した場合の、受光素子206(受光素子216)と光ビーム203の光軸Lとがなす角度θ5(角度θ7)と、受光素子206(受光素子216)の出力電圧Vとの関係について、図11を参照して説明する。この図11において、横軸は受光素子206(受光素子216)と光軸Lとがなす角度θ5(角度θ7)を示し、縦軸は、受光素子206(受光素子216)への散乱光Sによる出力電圧V(V5(V7))を示す。
この図11に示すように、散乱光Sによる出力電圧Vは角度依存性をもっており、角度θ5(角度θ7)が大きくなるに従い、散乱光Sによる出力電圧Vは小さくなる。そのため、角度θ5(角度θ7)がθ5<θ1(θ7<θ3)の条件では、散乱光Sによる受光光量が大きくなる。したがって、図11に示すように、受光素子206(受光素子216)において光−電圧変換された角度θ5(角度θ7)での出力電圧V5(V7)は、実施例1における角度θ1(角度θ3)での出力電圧V1(V3)より大きいものとなる(V1<V5,V3<V7)。
以上、実施例2の液滴吐出状態検出装置103Aでは、上記実施例1と同様に、インク液滴の吐出状態を、より精度よく検出することが可能となる。また、この液滴吐出状態検出装置103Aを備えた画像形成装置では、画像形成装置の停止および画像品質の低下を良好に抑えることができる。さらに、実施例2の液滴吐出状態検出装置103Aを上述の構成とすることにより、光ビーム203のビーム径が細くなるため、受光素子206と光ビーム203の光軸Lとがなす角度θ5(角度θ7)を小さくすることができる。これにより、記録媒体W、インクジェットヘッド100等での光ビーム203の反射光、外乱光などのノイズ光N(オフセット光)による受光素子206(受光素子216)の受光光量に対する、インク吐出時に光ビーム203がインク液滴202に入射することで生ずる散乱光Sによる受光素子206(受光素子216)での受光光量が大きくなる。その結果、SN比が大きくなり、散乱光Sの検出精度が向上し、インク液滴202の吐出状態の検知がより確実となる。
また、実施例2では、発光素子204から発光する光ビーム203を絞り部材801で絞ることにより、発光素子204やコリメートレンズ205での収差の影響を小さくできるため、光ビーム203の光強度のばらつき、波面ズレなどが抑えられる。そのため、光ビーム203がインク液滴202と衝突することで発生する散乱光Sにおいても、光強度のばらつき、波面ズレなどが抑えられる。その結果、受光素子206,216の受光光量のばらつきや変化などが抑えられ、検出精度が向上してインク液滴202の吐出状態の検知が確実となる、という効果がある。
(実施例3)
次に、本願の実施例3に係る液滴吐出状態検出装置の概略構成について、図12A〜図12Dを参照して説明する。図12Aは、インクジェットヘッド100と実施例3の液滴吐出状態検出装置103Bとを側面方向から概略的に示したものである。また、図12Bは、液滴吐出状態検出装置103Bを上方から俯瞰した概略図であって、1列1番目のノズル11に光ビーム203の光軸Lを合わせた場合を示す。また、図12Cは、液滴吐出状態検出装置103Bを上方から俯瞰した概略図であって、1列n番目のノズル1nに光ビーム203の光軸Lを合わせた場合を示す。さらに、図12Dは、インクジェットヘッド100を上方から俯瞰した半断面図である。
図12A〜図12Dに示すように、実施例3の液滴吐出状態検出装置103Bは、実施例2の絞り部材801を、収束部材802に代えたこと以外は、実施例2の液滴吐出状態検出装置103Aと同様の基本構成を有している。この収束部材802は、光ビーム203の光束を平行光から収束光に収束させるものである。なお、これらの図および以降の説明において、φ6は光ビーム203のビーム径の長径を示し、φ5はビーム径の短径を示す。ビーム径φ5およびφ6のどちらを長径とするか、または双方を同径(φ5=φ6)とするか、またはビーム形状を矩形にするかは、諸々の条件により変わる。諸々の条件としては、光ビーム203の波長と強度分布、各ノズル列の間隔、インク液滴202の形状とサイズ、発光素子204の種類と放射角、発光素子204とコリメートレンズ205との間隔、発光素子204とインク液滴202との間隔、インク液滴202と受光素子206,216との間隔、受光素子206,216の位置とサイズ、インクジェットヘッド100と印刷媒体(記録媒体W)との間隔などがある。なお、実施例3では、光ビーム203の光束を平行光から収束光に収束させるため、収束部材802を用いているが、本願がこれに限定されることはない。他の異なる実施形態として、例えば、発光素子204とコリメートレンズ205との距離を遠ざけることで、光ビーム203の光束を平行光から収束光に収束させてもよく、より低コストでの実施が可能となる。
受光部Bの2つの受光素子206,216は、それぞれの受光面207,217が、光ビーム203のビーム径φ6内に入らないように、光ビーム203のビーム径φ6から外れた位置にそれぞれ配置する。但し、受光部Bの各受光素子206,216は、ビーム径φ6に隣接する位置にそれぞれ配置することが好ましい。
また、受光部Bの一方の受光素子206は、光ビーム203の光軸Lに対して角度θ9開いた位置で、且つ、光軸Lの垂直方向に対してθ10(0≦θ10<θ9)の角度をもった位置に配置する。角度θ9、角度θ10は、実施例1の角度θ1、角度θ2に相当する。また、受光部Bの他方の受光素子216は、光ビーム203の光軸Lに対して角度θ11開いた位置で、且つ、光軸Lの垂直方向に対してθ12(0≦θ12<θ11)の角度をもった位置に配置する。角度θ11、角度θ12は、実施例1の角度θ3、角度θ4に相当する。
受光素子206(受光素子216)と光軸Lとがなす角度θ9(角度θ11)は、上記(1)および(2)の条件に該当しない角度「θ9>θ9min(θ11>θ11min)」でなければならない。なお、角度θ9min(角度θ11min)は、受光素子206(受光素子216)と光軸Lとがなす最小角度を表す。
図12B,図12Cでは、角度θ9を「θ91N,θ91F,θ9nN,θ9nF」と表示し、角度θ7を「θ111N,θ111F,θ11nN,θ11nF」と表示している。図12Bに示すθ91N(θ111N)は、一列目のノズル列1の1番目のノズル11から受光素子206(受光素子216)のノズル列1側に近い端面への方向と、光軸Lとがなす角度を表す。θ91F(θ111F)は、一列目のノズル列1の1番目のノズル11から受光素子206(受光素子216)のノズル列1側より遠い端面への方向と、光軸Lとがなす角度を表している。また、図12Cに示すθ9nN(θ11nN)は、一列目のノズル列1のn番目のノズル1nから受光素子206(受光素子216)のノズル列1側に近い端面への方向と、光軸Lとがなす角度を表す。θ9nF(θ11nF)は、一列目のノズル列1のn番目のノズル1nから受光素子206(受光素子216)のノズル列1側より遠い端面への方向と、光軸Lとがなす角度を表している。
また、実施例3では、収束部材802により、光ビーム203を収束光とすることにより、光ビーム203のビーム径φ5,φ6を小さくすることができる。すなわち、実施例3の光ビーム203のビーム径φ5およびφ6は、実施例1の光ビーム203のビーム径φ1およびφ2より小さいこととなる(φ6<φ2、φ5<φ1)。その結果、受光素子206(受光素子216)と光軸Lとがなす角度θ9(角度θ11)を、実施例1の角度θ1(角度θ3)より小さくすることができる。
以上、実施例3の液滴吐出状態検出装置103Bを上述の構成とすることで、実施例1、実施例2と同様に、光ビームの光軸に傾きが等ある場合でも、インク液滴の吐出状態を、より精度よく検出することが可能となる。これを備えた画像形成装置では、画像形成装置の停止および画像品質の低下を良好に抑えることができる。さらに、実施例3では、光ビーム203を平行光から収束光にしていることで、以下のような効果を得ることができる。
ここで、前述したように、光ビーム203を平行光とした実施例1、2では、回折の影響による光ビーム203のビーム最大強度の減衰への対応策として、発光素子204の発光光量を増加させている。また、移動機構210により発光ユニット208を移動して、インク液滴202の中心と、光ビーム203の強度分布が最大となる位置とが一致する最適位置に移動している。
これに対して、実施例3では、光ビーム203を平行光から収束光にすることにより、平行光の場合に比べて、ノズル11から1nに向かって、各ノズルから吐出されたインク液滴202への光ビーム203の入射光量が増加する。そのため、実施例1、2のような対応策を行わなくても受光素子206(受光素子216)での散乱光Sの受光光量を増加させることができる。したがって、ノイズ光N(オフセット光)による受光素子206(受光素子216)の受光光量に対する、散乱光Sによる受光素子206(受光素子216)での受光光量が大きくなる。その結果、SN比が大きくなり、散乱光Sの検出精度が向上し、インク液滴202の吐出状態の検知がより確実となる。
また、収束部材802での光ビーム203の収束率を変えることで、回折光の影響が変化し、受光素子206,216からの距離に応じて、各ノズルから吐出されたインク液滴202での散乱光量が変化する。これを考慮して、収束部材802での光ビーム203の収束率を最適値、すなわち、各ノズルから吐出されたインク液滴202での散乱光量の最低値が高くなる収束率にする。より具体的には、例えば、ある収束率(αとする)での散乱光量の最低値がAであり、他の収束率(βとする)での散乱光量の最低値がBであったとする。この場合、最低値Aと最低値Bとで、より大きい値の収束率を採用する。例えば、最低値A>最低値Bならば、収束率αを最適値として採用する。これにより、インク液適202への入射光量を増加させることができるので、発光光量の増加を抑えながら受光光量は同程度にすることができる。したがって、収束光とした場合は、散乱光Sの検出精度を同程度に保ちつつ、平行光に比べ、発光素子204での発光光量を下げることが可能となる。その結果、発光素子204の温度上昇等を抑制して耐久性を向上させることが可能となるとともに、発光素子204の消費電力コストを下げる効果も期待できる、という効果がある。
以上説明した各実施例は、本願の好適な実施例であり、上記実施例のみに本願の範囲を限定するものではなく、本願の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更を施した形態での実施が可能である。
例えば、上述した各実施例の画像形成装置や液滴吐出状態検出装置を構成する各部における制御動作は、ハードウェア、または、ソフトウェア、あるいは、双方の複合構成を用いて実行することも可能である。
なお、ソフトウェアを用いて処理を実行する場合には、処理シーケンスを記録したプログラムを、専用のハードウェアに組み込まれているコンピュータ内のメモリにインストールして実行させることが可能である。あるいは、各種処理が実行可能な汎用コンピュータにプログラムをインストールして実行させることが可能である。
例えば、プログラムは、記録媒体としてのハードディスクやROM(Read Only Memory)に予め記録しておくことが可能である。あるいは、プログラムは、リムーバブル記録媒体に、一時的、あるいは、永続的に格納(記録)しておくことが可能である。このようなリムーバブル記録媒体は、いわゆるパッケージソフトウエアとして提供することが可能である。なお、リムーバブル記録媒体としては、フロッピー(登録商標)ディスク、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、MO(Magneto optical)ディスク、DVD(Digital Versatile Disc)、磁気ディスク、半導体メモリなどが挙げられる。
なお、プログラムは、上述したようなリムーバブル記録媒体からコンピュータにインストールすることになる。また、ダウンロードサイトから、コンピュータに無線転送することになる。また、ネットワークを介して、コンピュータに有線で転送することになる。
また、上記各実施例における画像形成装置や液滴吐出状態検出装置は、上記各実施例で説明した処理動作に従って時系列的に実行されるのみならず、処理を実行する装置の処理能力、あるいは、必要に応じて並列的にあるいは個別に実行するように構築することも可能である。