JP6259885B2 - フェノール樹脂発泡体 - Google Patents
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Description
フェノール樹脂発泡体は、通常、フェノール樹脂、発泡剤、酸触媒(硬化剤)、界面活性剤等を含む発泡性フェノール樹脂組成物を発泡、硬化させることによって製造される。
このようにして製造されたフェノール樹脂発泡体は独立気泡を有し、独立気泡中には発泡剤から発生したガスが含まれる。
フェノール樹脂発泡体に用いられる発泡剤としては、ブタンやペンタン等の炭化水素(例えば、特許文献1)、ジフルオロプロペン等のフッ素化不飽和炭化水素(例えば、特許文献2)等が知られている。
そこで、本発明は、より優れた断熱性を有する、フェノール樹脂発泡体を目的とする。
しかし、本発明者らが検討した結果、単に、ハロゲン化不飽和炭化水素を発泡剤として用いても、発泡性フェノール樹脂組成物を十分に発泡できなかった。
本発明者らは、さらに鋭意検討した結果、炭化水素とハロゲン化不飽和炭化水素とを併用すると、発泡性フェノール樹脂組成物を十分に発泡でき、かつフェノール樹脂発泡体の断熱性をより高められるとの知見を見出し、本発明に至った。
[1]フェノール樹脂と、発泡剤と、酸触媒と、界面活性剤とを含むフェノール樹脂発泡体であって、
平均気泡径が100μm以下であり、
密度が10〜100kg/m3であり、
pHが3以上5.2以下であり、
熱伝導率が0.022W/m・K以下であり、
前記発泡剤は、炭化水素及びハロゲン化不飽和炭化水素を併有し、
前記ハロゲン化不飽和炭化水素は1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン、又は1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンのいずれかであり、
前記炭化水素と前記ハロゲン化不飽和炭化水素との質量比は、炭化水素:ハロゲン化不飽和炭化水素=9.5:0.5〜5:5であるフェノール樹脂発泡体(ただし、フタル酸系化合物以外の可塑剤を含有するものを除く)。
[2]前記界面活性剤がひまし油アルキレンオキシド付加物、及びシリコーン系界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種の界面活性剤である[1]に記載のフェノール樹脂発泡体。
発泡性フェノール樹脂組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、フェノール樹脂、発泡剤、酸触媒及び界面活性剤以外の他の成分をさらに含んでもよい。
フェノール樹脂としては、レゾール型のものが使用される。
レゾール型フェノール樹脂は、フェノール化合物とアルデヒドとをアルカリ触媒の存在下で反応させて得られるフェノール樹脂である。
フェノール化合物としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、パラアルキルフェノール、パラフェニルフェノール、レゾルシノール及びこれらの変性物等が挙げられる。
アルデヒドとしては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、フルフラール、アセトアルデヒド等が挙げられる。
アルカリ触媒としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、脂肪族アミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン等)等が挙げられる。ただしフェノール化合物、アルデヒド、アルカリ触媒はそれぞれ上記のものに限定されるものではない。
フェノール化合物とアルデヒドとの割合は特に限定されない。好ましくは、フェノール化合物:アルデヒドのモル比で、1:1〜1:3であり、より好ましくは1:1.3〜1:2.5である。
発泡剤は、炭化水素及びハロゲン化不飽和炭化水素を併有する。
炭化水素とハロゲン化不飽和炭化水素とを発泡剤として併用することで、炭化水素のみを用いる場合に比べて、フェノール樹脂発泡体中の独立気泡の平均気泡径が小さくなり、得られる発泡体は熱伝導率も低くなり、断熱性に優れたものが得られる。
炭化水素としては、炭素数が4〜6の環状分子構造又は炭素数4〜6の鎖状分子構造を有するものが好ましく、例えば、イソブタン、ノルマルブタン、シクロブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、シクロペンタン、ネオペンタン等が挙げられる。これらの炭化水素は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
これらの炭化水素は、低温域(例えば、−80℃程度の冷凍庫用断熱材)から高温域(例えば200℃程度の加熱体用断熱材)までの広い温度範囲で優れた断熱性能を確保でき、比較的安価であり経済的にも有利である。
ハロゲン化不飽和炭化水素としては、フッ素化炭化水素、塩素化炭化水素、塩素化フッ素化炭化水素、臭素化フッ素化不飽和炭化水素、ヨウ素化フッ素化不飽和炭化水素等が挙げられる。
ハロゲン化不飽和炭化水素としては、発泡剤として公知のものを用いることができ、典型的には、沸点−28〜80℃のものが挙げられる。
ハロゲン化不飽和炭化水素の熱伝導率は、0.013W/m・K以下が好ましく、0.011W/m・K以下がより好ましい。
ハロゲン化不飽和炭化水素の炭素数は、2〜6が好ましく、2〜5がより好ましい。
これらのハロゲン化不飽和炭化水素は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
これらのフッ素化不飽和炭化水素は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
LBA)、1−クロロ−2,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233yd)(E及びZ異性体)、1−クロロ−1,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233zb)(E及びZ異性体)、2−クロロ−1,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xe)(E及びZ異性体)、2−クロロ−2,2,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xc)、2−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233xf)(SynQuest Laboratories社製、製品番号:1300−7−09)、3−クロロ−1,2,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1233ye)(E及びZ異性体)、3−クロロ−1,1,2−トリフルオロプロペン(HCFO−1233yc)、3,3−ジクロロ−3−フルオロプロペン、1,2−ジクロロ−3,3,3−トリフルオロプロペン(HCFO−1223xd)(E及びZ異性体)、2−クロロ−1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブテン(E及びZ異性体)、及び2−クロロ−1,1,1,3,4,4,4−ヘプタフルオロ−2−ブテン(E及びZ異体)等が挙げられる。
これらの塩素化フッ素化不飽和炭化水素は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
予めハロゲン化炭化水素の標準ガスを用いて、ガスクロマトグラフ−質量分析計(GC/MS)での以下の測定条件における保持時間を求める。次に、上下の面材を剥がしたフェノール樹脂発泡体のサンプル1.6gを粉砕用ガラス容器に分取し、テトラヒドロフラン(THF)80mLを添加する。サンプルが溶媒に浸る程度に押しつぶした後、ホモジナイザーで1分30秒間粉砕抽出し、この抽出液を孔径0.45μmのメンブランフィルターでろ過し、ろ液をGC/MSに供する。ハロゲン化不飽和炭化水素の種類は、事前に求めた保持時間とマススペクトルから同定を行う。また、他のハロゲン化炭化水素の種類は、保持時間とマススペクトルによって同定を行う。発泡剤成分の検出感度を各々標準ガスによって測定し、上記GC/MSで得られた各ガス成分の検出エリア面積と検出感度より、組成(質量比)を算出する。
・GC/MS測定条件
使用カラム:DB−5ms(アジレントテクノロジー社)60m、内径0.25mm、膜厚1μm
カラム温度:40℃(10分)−10℃/分−200℃
注入口温度:200℃
インターフェイス温度:230℃
キャリアガス:He 1.0mL/分
スプリット比:20:1
測定方法:走査法 m/Z=11〜550
酸触媒は、フェノール樹脂の重合を開始させるために使用される。
酸触媒としては、ベンゼンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、キシレンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、フェノールスルホン酸等の有機酸、硫酸、リン酸等の無機酸等が挙げられる。これらの酸触媒は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
界面活性剤は、気泡径(セル径)の微細化に寄与する。
界面活性剤としては、特に限定されず、整泡剤等として公知のものを使用できる。例えば、ひまし油アルキレンオキシド付加物、シリコーン系界面活性剤、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。これらの界面活性剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
界面活性剤は、気泡径の小さい気泡を形成しやすい点で、ひまし油アルキレンオキシド付加物及びシリコーン系界面活性剤のいずれか一方又は両方を含むことが好ましく、熱伝導率をより低く、難燃性をより高くできる点で、シリコーン系界面活性剤を含むことがより好ましい。
ひまし油アルキレンオキシド付加物としては、ひまし油EO付加物、ひまし油PO付加物が好ましい。
ジメチルポリシロキサンとポリエーテルとの共重合体の構造は、特に限定されず、例えば、シロキサン鎖の両方の末端にポリエーテル鎖が結合したABA型、複数のシロキサン鎖と複数のポリエーテル鎖が交互に結合した(AB)n型、分岐状のシロキサン鎖の末端のそれぞれにポリエーテル鎖が結合した枝分かれ型、シロキサン鎖に側基(末端以外の部分に結合する基)としてポリエーテル鎖が結合したペンダント型等が挙げられる。
ポリオキシアルキレンにおけるオキシアルキレン基の炭素数は、2又は3が好ましい。
ポリオキシアルキレンを構成するオキシアルキレン基は、1種でもよく2種以上でもよい。
ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体の具体例としては、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシエチレン共重合体、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシプロピレン共重合体、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレン共重合体等が挙げられる。
発泡性フェノール樹脂組成物中、発泡剤:界面活性剤で表される質量比は、例えば、1:1〜6:1が好ましい。発泡剤と界面活性剤との質量比が上記範囲内であれば、発泡剤をフェノール樹脂中に均一に分散して、微細な気泡を形成できる。発泡剤の比率が上記下限値未満では、発泡性フェノール樹脂組成物中の発泡剤の含有量が少なくなりすぎて、発泡性フェノール樹脂組成物の発泡が不十分になるおそれがある。発泡剤の比率が上記上限値超では、界面活性剤の量が少なくなりすぎて、発泡性フェノール樹脂組成物中の発泡剤の分散性が低下するおそれがある。
フェノール樹脂発泡体の厚み方向における中央部から試料約0.02〜0.05gを白金るつぼに採取し、詳細な試料の質量を精秤する。次に、試料を入れた白金るつぼに炭酸ナトリウムを0.5g±0.1gを加え、以下の灰化・融解条件にて融解した。融解物の冷却後、白金るつぼ内の融解物を純水に溶解して50mlメスフラスコに移し入れ、純水を用いて50mlに定容して試料溶液を作成する。
この試料溶液を用いて以下のICP測定条件にて測定し、検量線より、試料溶液中のSi含有量を算出する。
そして、下記式より、フェノール樹脂発泡体中のSiの濃度(μg/g)を算出した。
[フェノール樹脂発泡体中のSiの濃度(μg/g)=試料溶液のSiの濃度(μg/mL)×50(mL)/精秤した試料の質量(g)]
<灰化・融解手順>
試料を入れた白金るつぼを350℃に設定したマッフル炉にて約15分間加熱し、乾燥する。次に、マッフル炉を650℃に昇温して約3時間加熱し、さらに800℃に昇温して約1時間加熱して試料を灰化する。次に、マッフル炉を910℃に昇温して約1時間加熱し、試料と炭酸ナトリウムを融解させる。
<ICP測定条件>
測定装置:SIIナノテクノロジーSPS5100
測定元素:Si(波長:288.158nm)
高周波出力:1.2kw
キャリアガス流量:0.9L/min
プラズマ流量:15L/min
補助流量:1.5L/min
<検量線作成方法>
純水のみのブランク(0ppm)と、標準試料として検量線用標準液(製品名:和光純薬工業(株)社製 けい素標準液)を希釈し、0.5ppm、2ppm、20ppm、50ppmに調整し、Siの波長ピーク強度を得る。ブランク及び標準試料の濃度とピーク強度をプロットして最小二乗法により近似曲線(直線あるいは二次曲線)を求め、これを定量用の検量線とする。
発泡性フェノール樹脂組成物は、フェノール樹脂、発泡剤、酸触媒及び界面活性剤以外の成分(任意成分)を含有してもよい。任意成分としては、発泡核剤、尿素、充填剤(充填材)、可塑剤、架橋剤、有機溶媒、アミノ基含有有機化合物、着色剤等が挙げられる。
発泡性フェノール樹脂組成物中の発泡核剤の含有量は、発泡剤に対して、0.05〜5mol%が好ましい。
ただし、発泡核剤は、発泡剤に予め分散され、発泡性フェノール樹脂組成物に配合されるのが通常である。発泡核剤を発泡剤に分散するには、加圧条件下で発泡核剤を発泡剤に注入する必要があり、製造工程が煩雑となる。本発明は、発泡核剤を用いなくても均一かつ微細な気泡を形成できるため、発泡核剤を発泡剤に分散する設備や煩雑な工程等を必要とせず、フェノール樹脂発泡体を容易に製造できる。
無機フィラーとしては、例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化アンチモン等の金属の水酸化物や酸化物、亜鉛等の金属粉末;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム、炭酸亜鉛等の金属の炭酸塩;炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等のアルカリ金属炭酸水素塩;炭酸水素カルシウム、炭酸水素マグネシウム等のアルカリ土類金属炭酸水素塩;硫酸カルシウム、硫酸バリウム、珪酸カルシウム、マイカ、タルク、ベントナイト、ゼオライト、シリカゲル等が挙げられる。ただし、酸触媒として強酸を使用する場合、金属粉末、炭酸塩は、ポットライフの調整に影響がない範囲で添加する必要がある。これらの無機フィラーは、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
養生の雰囲気は、アルカリ性揮発物の雰囲気であることが必要である。アルカリ性揮発物としては、アルカリ性の揮発物であれば特に限定はなく、アルカノールアミン、アンモニア等が挙げられる。コスト、安全性の理由から、アンモニアが好ましい。
アルカリ性揮発物の雰囲気の濃度としては、アルカリ性揮発物の種類にもよるが、初期濃度として3質量%以上であることが好ましい。3質量%以下であると養生の効果が十分にみられないことがあるため好ましくない。
このような雰囲気下において、pHが3以上7未満となるように養生することが好ましく、4以上6未満がより好ましく、5以上6未満となるよう養生することが最も好ましい。pHが7以上であると、フェノール樹脂発泡体や面材にアンモニア臭が付き、好ましくない。
具体的には、一例として、容積7.5m3の養生庫の中に、幅910mm、長さ1820mm、厚み20mmの発泡体30枚を、30mmのスペーサーを間に挟み積み上げ、25%のアンモニア水約2Lを個別容器に入れたものと一緒に密封することにより、好ましい濃度を達成することができる(初期濃度として8.8質量%)。
発泡性フェノール樹脂組成物は、フェノール樹脂、発泡剤、酸触媒、界面活性剤及び必要に応じて任意成分を混合することにより調製される。
各成分の混合順序は特に限定されないが、例えば、フェノール樹脂に界面活性剤、必要に応じて任意成分を加え混合し、得られた混合物に、発泡剤、酸触媒を添加し、この組成物をミキサーに供給して攪拌して、発泡性フェノール樹脂組成物を調製する。
発泡性フェノール樹脂組成物を発泡させ、硬化させることにより、本発明のフェノール樹脂発泡体を製造できる。
フェノール樹脂発泡体は、公知の製造方法により製造される。例えば、発泡性フェノール樹脂組成物を任意の型枠に入れ、型枠内の発泡性フェノール樹脂組成物を30〜95℃で加熱して、フェノール樹脂発泡体を製造できる。
面材としては、特に制限されず、ガラス繊維不織布、スパンボンド不織布、アルミニウム箔張不織布、金属板、金属箔、合板、珪酸カルシウム板、石膏ボードおよび木質系セメント板の中から選ばれる少なくとも1種が好適である。
面材は、フェノール樹脂発泡体の片面に設けてもよく、両面に設けてもよい。両面に設ける場合、各面材は、同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。
フェノール樹脂発泡体を製造する際に面材を設ける方法としては、例えば、連続走行するコンベアベルト上に面材を配置し、該面材上に発泡性フェノール樹脂組成物を吐出し、その上に他の面材を積層した後、加熱炉を通過させて発泡成形する方法が挙げられる。これにより、シート状のフェノール樹脂発泡体の両面に面材が積層した面材付きフェノール樹脂発泡体が得られる。
面材は、発泡成形の後、接着剤を用いてフェノール樹脂発泡体に貼り合わせて設けられてもよい。
独立気泡率は、JIS K7138−2006に準拠して測定される。
フェノール樹脂発泡体の脆性(JIS A 9511:2003)は、20%以下であることが好ましく、10〜18%がより好ましい。
pHは、以下の方法で測定される。フェノール樹脂発泡体を乳鉢で250μm(60メッシュ)以下に粉砕してサンプルとする。サンプル0.5gを200mLの共栓付三角フラスコに量り取る。共栓付三角フラスコに純水100mLを加え、密栓する。マグネチックスターラーを用いて、共栓付三角フラスコ内を23℃±5℃で7日間撹拌して、試料液とする。得られた試料液のpHをpHメーターで測定し、その値をpHとする。
フェノール樹脂発泡体の熱伝導率は、平均気泡径、独立気泡率が大きく寄与するが、発泡剤の種類および組成;レゾール樹脂を合成する際のフェノールとホルマリンの比、硬化剤の量(樹脂の硬化速度、架橋度、架橋後の伸長粘度);界面活性剤の種類等により調整できる。例えば、上記のとおり、平均気泡径が小さいほど、フェノール樹脂発泡体の熱伝導率が低い傾向がある。また、界面活性剤がシリコーン系界面活性剤、特に末端が−OHであるポリエーテル鎖を有するものである場合、他の界面活性剤を用いる場合に比べて、熱伝導率が低い傾向がある。
以下の実施例1〜5、9は、参考例である。
後述の実施例及び比較例で用いた測定方法を以下に示す。
<平均気泡径>
フェノール樹脂発泡体の厚さ方向のほぼ中央から試験片を切出した。試験片の厚さ方向の切断面を50倍拡大で撮影した。撮影された画像に、長さ9cmの直線を4本引いた。
この際、ボイド(2mm2以上の空隙)を避けるように直線を引いた。各直線が横切った気泡の数(JIS K6400−1:2004に準じて測定したセル数)を直線毎に計数し、直線1本当りの平均値を求めた。気泡の数の平均値で1800μmを除し、求められた値を平均気泡径とした。
JIS A 9511:2009に従い、測定した。
フェノール樹脂発泡体を乳鉢で250μm(60メッシュ)以下に粉砕してサンプルとした。サンプル0.5gを200mLの共栓付三角フラスコに量り取った。共栓付三角フラスコに純水100mLを加え、密栓した。マグネチックスターラーを用いて、共栓付三角フラスコ内を23℃±5℃で7日間撹拌して、試料液とした。得られた試料液のpHをpHメーターで測定し、その値をpHとした。
JIS A 9511:2009に準拠してフェノール樹脂発泡体の熱伝導率を測定した。同じ試料について2回測定し、その平均値を求めた。
液状レゾール型フェノール樹脂(旭有機材工業株式会社製、商品名:PF−339)100質量部と、界面活性剤(シリコーン系界面活性剤、東レ・ダウコーニング社製「品番SH193」、ポリエーテル鎖の末端:−OH)4質量部と、ホルムアルデヒドキャッチャー剤(尿素)4質量部とを混合した後、20℃で8時間放置した。
得られた混合物108質量部と、表1の組成の発泡剤10.5質量部と、酸触媒(パラトルエンスルホン酸とキシレンスルホン酸の混合物)15.0質量部とを混合して発泡性フェノール樹脂組成物を調製した。
この発泡性フェノール樹脂組成物を300mm×300mm×45mmの型枠に入れ、これを70℃の乾燥機中で300秒間加熱して発泡成形した。その後、成形物を型枠から取り出し、85℃の乾燥機に入れ、5時間養生して硬化させてフェノール樹脂発泡体を作製した。
上記で得られたフェノール樹脂発泡体を、30mmのスペーサーを発泡体の底に挟んで養生庫の床から底上げし、温度を40℃以上に保って24時間養生した。このとき、養生庫内にアンモニア水(25%)約2Lを個別容器に入れたものと一緒に密封した。
表中、「HC」は炭化水素を表し、「AH」はハロゲン化不飽和炭化水素を表す。
なお、実施例4、5は参考例である。
シリコーン系界面活性剤をポリエーテル鎖の末端が−OR(式中、Rはアルキル基)(東レ・ダウコーニング社製「品番SF2936F」)にしたこと以外は、実施例6と同様にしてフェノール樹脂発泡体を作製した。
シリコーン系界面活性剤をひまし油EO付加物(付加モル数34)にしたこと以外は、実施例6と同様にしてフェノール樹脂発泡体を作製した。
炭化水素のみを含有する発泡剤を用いた比較例1〜3は、熱伝導率が0.022W/m・K超であった。
ハロゲン化不飽和炭化水素の割合が本願発明の上限値超である比較例4〜7は、発泡が不十分であった。
これらの結果から、本発明を適用することで、熱伝導率が低い(即ち、より断熱性に優れる)フェノール樹脂発泡体を得られることが確認できた。
Claims (2)
- フェノール樹脂と、発泡剤と、酸触媒と、界面活性剤とを含むフェノール樹脂発泡体であって、
平均気泡径が100μm以下であり、
密度が10〜29.6kg/m3であり、
pHが3以上5.2以下であり、
熱伝導率が0.022W/m・K以下であり、
前記発泡剤は、炭化水素及びハロゲン化不飽和炭化水素を併有し、
前記ハロゲン化不飽和炭化水素は1−クロロ−3,3,3−トリフルオロプロペンであり、
前記炭化水素と前記ハロゲン化不飽和炭化水素との質量比は、炭化水素:ハロゲン化不飽和炭化水素=9.5:0.5〜5:5であり、
前記発泡剤の含有量が、前記フェノール樹脂100質量部に対して3〜15質量部であり、
前記界面活性剤は、アルキレンオキシドの付加モル数がひまし油1モルに対し20モル超60モル未満であるひまし油アルキレンオキシド付加物、及びジメチルポリシロキサンとポリエーテルとの共重合体であるシリコーン系界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種の界面活性剤であり、
前記界面活性剤の含有量が、前記フェノール樹脂100質量部に対して1〜10質量部であるフェノール樹脂発泡体(ただし、フタル酸系化合物以外の可塑剤を含有するものを除く)。 - 前記界面活性剤が前記シリコーン系界面活性剤を含む請求項1に記載のフェノール樹脂発泡体。
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