JP6256183B2 - シートベルト - Google Patents
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Description
シートベルト10は、複数の構成糸(後述の経糸と緯糸)からなる帯状の織物であり、発熱すべき第一部位1A,1Bと、発熱を要さない第二部位2A〜2Cに区分けされる(図1及び図2を参照)。そして本実施例では、シートベルト10を、乗物室内の壁体内から引出しつつ、シートバック6肩口からシート上の乗員CMに巻付ける(図1を参照)。この状態でシートベルト10の途中を、シートクッション4他側のバックル(図示省略)に係止して装着することでシート上の乗員CMを拘束できる。なお乗員CMとして、大柄な乗員(SAE規格におけるAM95に相当)から小柄な乗員(SAE規格におけるJF05に相当)にかけての体格を備えた乗員を想定できる。例えば本実施例では、大柄な乗員と小柄な乗員の中間の体格を備えた乗員CMを想定して下記の第一部位1A,1Bと第二部位2A〜2Cの形成位置を設定できる。
第一部位1A,1Bは、引出し状態を基準として乗員CMに対面可能な位置に形成される(図1を参照)。例えば本実施例の第一部位の一方(1A)は、乗員上半身に対面する位置(乗員肩口から乗員腰部にかけての部分)に形成される。また第一部位の他方(1B)は、乗員脚部に対面する位置に形成される。また第二部位2A〜2Cは、第一部位1A,1Bを除くシートベルト部分に形成される。例えば本実施例の第二部位の一つ(2A)は、引出し状態でリトラクタ内に配置する部分から一方の第一部位1Aまでの部分に形成される。また第二部位の一つ(2B)は、一対の第一部位1A,1Bの間(バックルとの係止箇所)に形成される。そして第二部位の一つ(2C)は、他方の第一部位1Bから先の部分(乗員脚部に非対面のシートベルト部分)に形成される。
ここで通電部材30は、可撓性を有する帯状の面材(正面視で略矩形)であり、配設前の状態でシートベルト10とは別体である(図2及び図3を参照)。この種の面材の材質として、軟質樹脂、布帛(織物,編物,不織布)、皮革(天然皮革,合成皮革)を例示できる。本実施例の通電部材30は、通電により発熱可能であり、例えば表面や内部に発熱可能な線材や配線が配設される。そして通電部材30の端部(長尺方向の端部)から延びる一対のケーブル32a,32bを電源(図示省略)に電気的につなげることで、通電部材30を通電状態とすることができる。そして本実施例では、後述するように一対の通電部材30を、それぞれ第一部位1A,1B内に並列して配設する(図1及び図2を参照)。各通電部材30は、各第一部位1A,1Bの長さ寸法に倣った長さ寸法を有する。また各通電部材30の幅寸法は、各第一部位1A,1Bの幅寸法よりも小さく(半分未満に)設定されて、後述する袋状の保持部14内に相対移動可能に収納される(図2を参照)。
本実施例では、図示しない織機と筬にて、シートベルト10(袋織組織を有する織物)を形成しつつ、後述する保持部14と規制部16を適宜の部位に形成する(図2及び図3を参照)。ここでシートベルト10の織組織として、各種の基本組織や変化組織を用いることができるが、典型的にはシートベルト10の延びる方向(長尺方向)の剛性に優れる組織(杉綾織組織など)が用いられる。またシートベルト10では、その長尺方向の強度が求められることが多く、典型的に長尺方向の織密度が、幅方向(短尺方向)の織密度よりも大きくなる。本実施例では、後述するように複数の経糸(表経糸21u,裏経糸21d)を整経したのち、これら経糸に緯糸22を適宜交絡させる(なお図3では、便宜上、一部の表経糸及び裏経糸にのみ符号を付す)。つぎに緯糸22の目を詰めながらシートベルト10(袋織組織を備えた織物)を織製する。
保持部14は、シートベルト10に対して通電部材30を相対移動可能に保持する部位であり、第一部位1A,1Bに形成される(図1〜図3を参照)。本実施例では、各第一部位1A等に、袋織組織をなす二重組織部(11a,12a)と一重組織部(13a)にて構成された袋状の保持部14を形成できる(図2及び図3を参照)。すなわち第一部位1A等の中央部分(各通電部材の配設箇所)に、一対の二重組織部(第一組織部11a,第二組織部12a)を形成する(図2を参照)。このとき表経糸21uと緯糸22を交絡させながら筬で緯糸22の目をつめることで第一組織部11aを形成する(図3を参照)。また同時に裏経糸21dと緯糸22を交絡させながら筬で緯糸22の目をつめることで第二組織部12aを形成する。こうして第一組織部11aと第二組織部12aを重ね合わせて織り出すことにより、第一部位1A等の中央部分に、それぞれ一対の二重組織部(11a,12a)を織製することができる。そして第一組織部11aと第二組織部12aの端部(シートベルト10の短尺方向の端部)を、一重組織部としての第三組織部13a(表経糸21uと裏経糸21dと緯糸22の一重織物)で閉じる。また第一部位1A等の中央(一対の通電部材の間に相当する箇所)を第三組織部13aで閉じる。こうすることで第一部位1A等に袋状の保持部14(袋織組織)を一対形成して、その内部に、各通電部材30を保持する。そして保持部14の幅寸法W1(二重組織部11a,12aの短尺方向の寸法)を通電部材30の寸法W2よりも大きく設定することで、通電部材30を保持部14内で相対移動可能に保持できる(図2を参照)。なお本実施例では、保持部14の長さ寸法(二重組織部11a,12aの長尺方向の寸法)を通電部材30の寸法W2よりも大きく設定することもできる。
規制部16は、シートベルト10の延びる方向(長尺方向)に通電部材30が移動することを規制する部位であり、第二部位2A〜2Cに形成される(図1及び図2を参照)。本実施例では、専ら第三組織部13a(一重組織部で構成された面状の規制部16)にて第二部位2B等を形成する(図2を参照)。また本実施例では、第二部位2B等の一部(各ケーブルの配索位置)に、通電部材30よりも幅狭とされた二重組織部(11a,12a)が一対形成される。このように本実施例では、第二部位2B等を、一対のケーブル32a,32bが配索される部分を除いて第三組織部13a(面状の規制部16)にて形成する。こうすることで規制部16にて、各保持部14の端部(長尺方向の端部)が部分的に又は全体的に閉じ状態とされて、第一部位1A等内の通電部材30が第二部位(2B等)側に移動することを規制できる。そして一対のケーブル32a,32bを、それぞれ二重組織部(11a,12a)内に配置しつつシートベルト10外に配索できる。
図1を参照して、シートベルト10を引出しつつ、シートバック6肩口からシート上の乗員CMに巻付ける。このとき本実施例では、保持部14にて、第一部位1A等に対して通電部材30が相対移動可能に保持されることで、シートベルト10の柔軟性を極力維持することができる(図2を参照)。そして第一部位1A等内の各通電部材30を通電により発熱させることで乗員を加温することができる(図2及び図3を参照)。また本実施例では、第二部位(2A〜2C)が、引出し状態でリトラクタ内に配置する部分と、乗員に非対面のシートベルト部分に形成される(図1を参照)。そして第二部位2B等の規制部16にて、第一部位1A等内の通電部材30が第二部位側に移動することを規制できる(図2を参照)。このため本実施例によれば、各通電部材30の移動を規制して第二部位2A〜2Cが極力発熱しない構成としたことで、シートの省電力化に資する構成となる。
ここで通電部材とシートベルト(保持部,規制部)の構成は、上述の構成のほか、各種の構成を取り得る。例えば変形例1のシートベルト10Aでは、通電部材30Aが櫛状の面状部材であり、基部30a(幅広)と、複数の櫛部30b〜30e(幅狭)を有する(図4を参照)。基部30aは、シートベルト10Aの短尺方向に向けて幅広の略矩形の部位である。また複数の櫛部30b〜30eは、シートベルト10Aの長尺方向に向けて長尺な帯状の部位(正面視で略矩形)である。そして本実施例では、複数の櫛部30b〜30eが、それぞれその根元で基部30aに連結しつつシートベルト10Aの短尺方向に等間隔で並列する。
また変形例2のシートベルト10Bでは、第一部位1A等において、線状の通電部材30Bを連続S字状(正面視)に屈曲させて配置する(図5を参照)。また通電部材30Bの両端(直線状)を、第二部位2Bを通じて外部に配索する。ここで線状の通電部材30として、典型的に比抵抗(体積抵抗率とも呼ぶ)が100〜10-12Ω・cmの線材を用いることができる。「比抵抗(体積抵抗率)」とは、どのような材料が電気を通しにくいかを比較するために用いられる物性値であり、例えば「JIS C 2525 7.2C」に準拠して測定できる。この種の線材として、金属や合金などの線材、炭素繊維のフィラメント、メッキ線材を例示できる。なおメッキ線材は、非導電性又は導電性の線材(芯材)と、金属又は合金のメッキ層を有する。
また保持部と規制部は、線状の部材で構成することができる。例えば変形例3のシートベルト10Cでは、一対の通電部材30(面状)を第一部位1A等に並列して配置する(図6を参照)。また各通電部材30の長尺方向の途中に、保持部14A(複数の線材で構成された保持部)を適宜の間隔をあけて複数配置する。そして各保持部14Aを、各通電部材30をその幅方向(短尺方向)に跨がせつつ、保持部14Aの両端を、各通電部材30の外方で第一部位1A等に固定する。こうすることで保持部14Aにて、シートベルト10Cに対して通電部材30を相対移動可能に保持できる。
また変形例4では、面状のシートベルト10Dと、被覆部材60を使用する(図7を参照)。被覆部材60は、シートベルト10Dの短尺方向に倣った幅寸法の面材であり、その長さ寸法が、第一部位1A等よりも大きく設定される(被覆部材60の端部側が第二部位側にはみ出す寸法に設定される)。なお被覆部材60の素材として、布帛(織物,編物,不織布)や皮革(天然皮革,合成皮革)を例示でき、例えばシートベルト10Dよりも熱伝導性に優れる面材(織密度の低い織物等)であることが望ましい。
またシートベルトの形成方法(通電部材の配置方法)は、上述の構成のほか、各種の構成を取り得る。例えば変形例5では、複数の経糸を筬40の歯の間に通しつつ整経したのち、これら経糸に緯糸を適宜交絡させる(図8を参照)。つぎに筬40を移動させて緯糸の目を詰めながらシートベルト(袋織の織物)を織製する。ここで筬40は、シートベルトよりも大きな幅寸法の略矩形(中空)の部材であり、複数の歯42a〜42h(線状)が等間隔で配置する。なお筬40の歯の本数は、典型的にシートベルト10の経糸の配置本数に応じて設定できる。
ここで通電部材30の変化後の形状は、各種の維持部材50を用いて維持することができる(図9を参照)。例えば変形例6では、通電部材30をロール状に変形させたのち、その状態を維持部材50(詳細後述)にて維持する。すなわち通電部材30をロール状としたのち、その周囲に輪状の維持部材50を嵌装する。この状態でシートベルトを織製したのち、維持部材50を除去して、通電部材30を第一部位内で元の状態(平面状)に戻す。このように本変形例では、維持部材50にて、通電部材30の変化後の状態を好適に維持することにより、シートベルトをスムーズに製造することができる。
この種の維持部材50として、例えばシートベルトの構成糸よりも低融点の部材(接着材や輪材や紐材等)を用いることができる。そしてシートベルトを織製ののち、各種の後処理(染色工程、洗い工程(水洗い処理,スチーム処理等)、コーティング工程など)を行う。このとき例えば加熱処理(染色工程時の加熱処理等)により、低融点の維持部材50を溶融させて除去することで、通電部材30がその復元力により自然と第一状態に戻ることとなる。ここでシートベルトの構成糸(材質)として、植物系及び動物系の天然繊維、熱可塑性樹脂又は熱硬化性樹脂からなる化学繊維及びこれらの混繊糸を例示できる。そして維持部材50の融点は、シートベルトの構成糸の融点よりも20℃以下であることが好ましい。例えばポリエチレンテレフタレートの構成糸を用いる場合、240℃以下の融点を有する維持部材50(例えばポリアミド系、ポリエステル系、ポリエチレン系の繊維)を用いることができる。
4 シートクッション
6 シートバック
8 ヘッドレスト
10 シートベルト
1A,1B 第一部位
2A〜2C 第二部位
11a 第一組織部(二重組織部)
12a 第二組織部(二重組織部)
13a 第三組織部(一重組織部)
14 保持部
16 規制部
30 通電部材
32a,32b ケーブル
CM 乗員
Claims (1)
- 通電可能な面状又は線状の通電部材を備えて乗物用シート上の乗員を拘束可能なシートベルトにおいて、
前記シートベルトが、前記通電部材を配置すべき第一部位と、前記第一部位に隣接する第二部位とに区分けされるとともに、前記シートベルトに対する前記通電部材の相対移動を許容しつつ前記通電部材を保持する保持部と、前記シートベルトの延びる方向に前記通電部材が移動することを規制する規制部とを有し、
前記第一部位に前記保持部を設けて前記通電部材を保持するとともに、前記第二部位に前記規制部を設けて、前記第一部位に配置する前記通電部材が前記第二部位側に移動することを規制する構成とし、
前記シートベルトが、一重組織部と二重組織部からなる袋織組織を有する織物であり、
前記第一部位に、前記袋織組織で構成された袋状の前記保持部を形成してその内部に前記通電部材を保持するとともに、
前記第二部位に、前記二重組織部を閉じ状態とする前記一重組織部で構成された面状の前記規制部を形成することにより、前記第一部位内に配置する前記通電部材が前記第二部位側に移動することを規制する構成としたシートベルト。
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