JP6252858B2 - リチウムイオン二次電池用正極及びリチウムイオン二次電池 - Google Patents

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Description

本発明は、リチウムイオン二次電池用正極及びリチウムイオン二次電池に関するものである。
リチウムイオン二次電池の正極は、集電体と、集電体に積層された正極活物質層とで構成されるのが一般的である。集電体は、導電性に優れる金属箔(例えばアルミニウム箔)からなるのが一般的である。
アルミニウムを集電体とするリチウムイオン二次電池において、短絡時の発熱要因の一つとしてアルミニウムの燃焼反応が挙げられる。そこで、リチウムイオン二次電池の安全性を高めるために、例えば正極に用いられる集電体にアルミニウムでなくステンレス鋼を使用することが考えられる。その理由はステンレス鋼がアルミニウムに比べて燃焼開始温度が高いため燃焼しにくく、かつ燃焼したときに発せられるエネルギーがステンレス鋼のほうがアルミニウムに比べて低いためである。
しかしながら、本発明者等が正極の集電体としてステンレス鋼を用いたところ、正極の集電体にアルミニウムを用いた場合に比べて、リチウムイオン二次電池の電池容量が減少することが判明した。
本発明は、このような事情に鑑みて為されたものであり、正極の集電体にアルミニウムを用いたリチウムイオン二次電池と同等の電池容量が示すことができるステンレス鋼製の集電体を具備するリチウムイオン二次電池用正極及びそれを有するリチウムイオン二次電池を提供することを目的とする。
上記課題を解決する本発明のリチウムイオン二次電池用正極は、ステンレス鋼製の集電体と、集電体に結着された正極活物質層と、を具備し、正極活物質層は、第1正極活物質と第2正極活物質と結着剤とを含み、第1正極活物質が、一般式:LiNiCoMn(0.2≦a≦1.7、b+c+d+e=1、0≦b<1、0≦c<1、0≦d<1、0≦e<1、DはLi、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、Zr、S、Si、Na、K、Alから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦2.1)で表されるリチウム含有酸化物であり、第2正極活物質が、一般式:LiFe1−hPO(MはMn、Co、Ni、Cu、Mg、Zn、V、Ca、Sr、Ba、Ti、Al、Si、B、Te及びMoから選ばれる少なくとも1の元素、1≦g≦2、0≦h<1、0≦i<1)で表されるリチウム鉄含有酸化物であることを特徴とする。
第1正極活物質の平均粒径D50は1μm〜20μmであり、第2正極活物質の平均粒径D50は0.1μm〜10μmであり、第1正極活物質の平均粒径D50は、第2正極活物質の平均粒径D50より大きいことが好ましい。
第1正極活物質と第2正極活物質の配合質量比は、95:5〜50:50であることが好ましい。
第1正極活物質は、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiNi0.6Co0.2Mn0.2、LiNi0.5Co0.2Mn0.3、LiNi0.8Co0.1Mn0.1及びLiNi0.75Co0.1Mn0.15から選ばれる少なくとも一種であり、第2正極活物質はLiFePO、LiMn0.75Fe0.25PO、LiFe2/3PO及びLiMn7/8Fe1/8POから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
本発明のリチウムイオン二次電池は上記リチウムイオン二次電池用正極を有することを特徴とする。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極を有するリチウムイオン二次電池は、ステンレス鋼製の集電体を具備するので、アルミニウム製の集電体を具備するリチウムイオン二次電池よりも短絡時の安全性に優れる。本発明のリチウムイオン二次電池用正極を有するリチウムイオン二次電池は、鉄を含む第2正極活物質を含有することで正極の集電体にステンレス鋼を用いても正極の集電体にアルミニウムを用いたリチウムイオン二次電池と同等の電池容量を示すことができる。そのため本発明のリチウムイオン二次電池は、安全性が高く、かつ高容量とすることができる。
本発明のリチウムイオン二次電池用正極の一態様を模式的に表す断面図である。
<リチウムイオン二次電池用正極>
本発明のリチウムイオン二次電池用正極は、集電体と、集電体に結着された正極活物質層と、を具備する。
集電体は、ステンレス鋼製である。ステンレス鋼とは、鉄(Fe)を50質量%以上含む合金鋼である。
ステンレス鋼としては、オーステナイト系ステンレス鋼、マルテンサイト系ステンレス鋼、フェライト系ステンレス鋼、オーステナイト・フェライト系ステンレス鋼、析出硬化系ステンレス鋼が挙げられる。オーステナイト系ステンレス鋼としては、SUS201、SUS202、SUS301、SUS302、SUS303、SUS304、SUS305、SUS316、SUS317が挙げられる。マルテンサイト系ステンレス鋼としては、SUS403、SUS420が挙げられる。フェライト系ステンレス鋼としては、SUS405、SUS430、SUS430LXが挙げられる。オーステナイト・フェライト系ステンレス鋼としては、SUS329J1が挙げられる。析出硬化系ステンレス鋼としては、SUS630が挙げられる。中でも、SUS304、SUS316等のオーステナイト系ステンレス鋼を用いることがより好ましい。
ステンレス鋼の表面には一般的に不動態層が形成される。これはステンレス鋼中に含有されるクロムやモリブデンが空気中の酸素や水分と反応して酸化物や水酸化物の不動態層をステンレス鋼の表面に形成するためである。
集電体の形状としては、箔、シート、フィルム、線状、棒状、メッシュなどの形態をとることができる。集電体として、例えばステンレス鋼箔を好適に用いることができる。
集電体が、箔、シート又はフィルムの場合は、集電体の厚みは8μm〜100μmであることが好ましい。
正極活物質層は、第1正極活物質と、第2正極活物質と、結着剤とを含む。
第1正極活物質は、一般式:LiNiCoMn(0.2≦a≦1.7、b+c+d+e=1、0≦b<1、0≦c<1、0≦d<1、0≦e<1、DはLi、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、Zr、S、Si、Na、K、Alから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦2.1)で表されるリチウム含有酸化物である。
一般式:LiNiCoMn(0.2≦a≦1.7、b+c+d+e=1、0≦b<1、0≦c<1、0≦d<1、0≦e<1、DはLi、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、Zr、S、Si、Na、K、Alから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦2.1)において、b、c及びdの値は、上記条件を満足するものであれば特に制限はないが、0<b<1、0<c<1、0<d<1であるものが良く、また、b、c、dの少なくともいずれか一つが0<b<80/100、0<c<70/100、10/100<d<1の範囲であることが好ましく、10/100<b<68/100、12/100<c<60/100、20/100<d<68/100の範囲であることがより好ましく、25/100<b<60/100、15/100<c<50/100、25/100<d<60/100の範囲であることがさらに好ましく、1/3≦b≦50/100、20/100≦c≦1/3、30/100≦d≦1/3の範囲であることが特に好ましく、b=1/3、c=1/3、d=1/3、または、b=50/100、c=20/100、d=30/100であることが最も好ましい。
aは、0.5≦a≦1.5の範囲内が好ましく、0.7≦a≦1.3の範囲内がより好ましく、0.9≦a≦1.2の範囲内がさらに好ましく、1≦a≦1.1の範囲内が特に好ましい。
e、fについては一般式で規定する範囲内の数値であればよく、e=0、f=2を例示することができる。
第1正極活物質は、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiNi0.6Co0.2Mn0.2、LiNi0.5Co0.2Mn0.3、LiNi0.8Co0.1Mn0.1及びLiNi0.75Co0.1Mn0.15から選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
第2正極活物質は、一般式:LiFe1−hPO(MはMn、Co、Ni、Cu、Mg、Zn、V、Ca、Sr、Ba、Ti、Al、Si、B、Te及びMoから選ばれる少なくとも1の元素、0≦h<1、0≦i<1、1≦g≦2)で表されるリチウム鉄含有酸化物である。
第2正極活物質はLiFePO、LiMn0.75Fe0.25PO、LiFe2/3PO及びLiMn7/8Fe1/8POから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
又上記リチウム鉄含有酸化物は、その表面を導電性物質で被覆されたものを採用するのが好ましい。例えば上記リチウム鉄含有酸化物は表面が炭素材料で被覆又は被着されたものを採用するのが好ましい。
第2正極活物質としては、安全性の面からは特にLiFePOが好ましい。その理由は次のとおりである。LiFePOは放電時に比較的平坦な放電曲線を示す。そうすると、仮に、リチウムイオン二次電池の正極と負極が短絡して急激な放電が生じたとしても、LiFePOの存在箇所では放電に伴う急激な電位差が生じない。そのため、電極内の他の箇所からの電荷移動を誘起しにくく、過電流の発生を抑制することができる。その結果、リチウムイオン二次電池の発熱を好適に抑制することができる。
下記実施例において説明するが、第1正極活物質のみを正極活物質として用いたリチウムイオン二次電池は、正極用集電体にステンレス鋼箔を用いるとアルミニウム箔を正極用集電体として用いたリチウムイオン二次電池に比べて電池容量が著しく下がる。電池容量が下がるのは、ステンレス鋼箔を正極用集電体に用いるとアルミニウム箔を正極用集電体に用いるよりも、正極活物質層と正極用集電体との間の界面抵抗が大きくなるためではないかと推測される。
しかしながら第1正極活物質のみでなく、上記第2正極活物質を正極活物質層に含むことにより、ステンレス鋼を正極用集電体に用いてもなぜ電池容量が著しく下がらなくなるのか明確にはわからないが、以下のように推測している。
ステンレス鋼箔の表面では、Fe2+とFe3+との間でFeの価数が変化する電位において、ステンレス鋼に含まれるFeの価数が変化して界面抵抗が変わることが推測される。上記リチウム含有酸化物からなる第1正極活物質のみを含む正極活物質層では、正極活物質層とステンレス鋼箔からなる正極用集電体との間の界面抵抗が上がりそのため電池の内部抵抗が上がって容量が出にくくなると推測される。
本発明では、上記リチウム鉄含有酸化物からなる第2正極活物質が正極活物質層に更に含まれる。上記リチウム鉄含有酸化物は、Fe2+とFe3+との間でFeの価数が変化する。そのため上記第2正極活物質が正極活物質層に含まれると、上記リチウム鉄含有酸化物内のFeの価数も変化するため、Fe2+とFe3+との間でFeの価数が変化する電位付近の充放電時間を長く取ることができる。
界面抵抗が上がることによって電池の容量が取り出しにくくなっても、充放電時間を長くすることにより本来あるべき容量が取り出せるようになる。そのため、第1正極活物質と第2正極活物質とをあわせて正極活物質層に含むことにより、正極活物質層と正極用集電体との間の界面抵抗が上がっても正極活物質層全体が有する本来あるべき容量をとり出せると推測される。
ここで、上記第2正極活物質を上記第1正極活物質と組み合わせると、安全性が向上する。上記第1正極活物質と比較して、上記第2正極活物質は、示差走査熱量測定(DSC)による発熱開始温度が高く、発熱量が小さいため熱的な安定性が高い。又、上記第1正極活物質に対して上記第2正極活物質は低電位かつ一定の電位でLiの挿入及び脱離がおこるため、瞬間的な大電流が流れたときに、第1正極活物質により生じる過電流を第2正極活物質により緩和させることで、リチウムイオン二次電池の熱暴走が抑制される。
正極活物質層における第1正極活物質と第2正極活物質の配合量は、本発明のパラメータを満足する値であればよい。あえて本発明の正極活物質層における第1正極活物質と第2正極活物質の配合質量比を挙げると、95:5〜50:50であることが好ましい。更に好ましい配合質量比は、85:15〜55:45であり、より好ましい配合質量比は80:20〜60:40である。
また、あえて本発明の正極活物質層における第1正極活物質と第2正極活物質の合計配合量を挙げると、50質量%〜99質量%の範囲内が好ましく、60質量%〜98質量%の範囲内がより好ましく、70質量%〜97質量%の範囲内が特に好ましい。
第1正極活物質に比べて第2正極活物質のほうが単位質量当たりの電池容量が低いため電池容量の点からは、第1正極活物質の配合質量は第2正極活物質の配合質量より多い方が好ましい。第1正極活物質と第2正極活物質の配合質量比が上記範囲であれば、高容量な電池とすることができる。
第1正極活物質はその形状が特に制限されるものではないが、平均粒径D50でいうと、第1正極活物質の平均粒径D50は1μm〜20μmであることが好ましく、さらに好ましくは2μm〜15μmであり、より好ましくは3μm〜10μmである。1μm未満では、電極を製造した際に集電体との密着性が損なわれやすいなどの不具合を生じることがある。20μmを超えると電極の大きさに影響を与えたり、二次電池を構成するセパレータを損傷するなどの不具合を生じることがある。なお、本明細書における平均粒径D50は、一般的なレーザー回折式粒度分布測定装置で計測した場合のD50の値を意味する。
第2正極活物質はその形状が特に制限されるものではないが、第2正極活物質の平均粒径D50は0.1μm〜10μmであることが好ましく、さらに好ましくは0.5μm〜8μmであり、より好ましくは1μm〜5μmである。
第1正極活物質の平均粒径D50は、第2正極活物質の平均粒径D50より大きいことが好ましい。第1正極活物質の平均粒径D50が第2正極活物質の平均粒径D50より大きいと、第1正極活物質の周囲に第2正極活物質が配置されやすい。そのため、短絡時の過電流を抑制しやすい。
又第1正極活物質と第2正極活物質とは正極活物質層の中で偏らずお互いに分散して存在することが好ましい。そのため、第1正極活物質の平均粒径D50に比べて第2正極活物質の平均粒径D50を小さくして、第1正極活物質同士の間に第2正極活物質が存在する状態となっているのが好ましい。
結着剤は、正極活物質を集電体に繋ぎ止める機能を有する。結着剤として、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)及びフッ素ゴム等の含フッ素樹脂、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレンビニルアルコール及びポリ酢酸ビニル系樹脂等の熱可塑性樹脂、ポリアクリレート及びポリアクリル酸ナトリウム等のアクリル樹脂、ポリイミド及びポリアミドイミド等のイミド系樹脂、アルコキシシリル基含有樹脂、ポリウレタン、カルボキシメチルセルロース(CMC)並びにスチレンブタジエンコポリマー(SBR)等のゴムを用いることができる。
結着剤の配合量は、本発明のパラメータを満足する値であればよい。あえて本発明の正極活物質層における結着剤の配合量を挙げると、0.5〜10質量%の範囲内が好ましく、1〜7質量%の範囲内がより好ましく、2〜5質量%の範囲内が特に好ましい。結着剤の配合量が少なすぎると正極活物質を集電体に良好に結着できないおそれがある。また、結着剤の配合量が多すぎると、正極活物質層における正極活物質の量が減少するため、好ましくない。
正極活物質層は必要に応じて更に導電助剤を有してもよい。
導電助剤として、炭素質微粒子であるカーボンブラック、黒鉛、アセチレンブラック(AB)、ケッチェンブラック(登録商標)(KB)、気相法炭素繊維(VGCF)等を単独でまたは二種以上組み合わせて使用することができる。導電助剤の使用量については、特に限定的ではないが、例えば、正極に含有される活物質100質量部に対して、1質量部〜30質量部程度とすることができる。
ここで図1に本発明のリチウムイオン二次電池用正極の一態様を模式的に表す断面図を示す。図1に示すように、このリチウムイオン二次電池用正極は、集電体1と、集電体1の表面に形成された正極活物質層5とからなる。正極活物質層5は、第1正極活物質2と、第2正極活物質3と、結着剤4とからなる。結着剤4によって第1正極活物質2と第2正極活物質3とは集電体1の表面に結着している。
図1においては、第1正極活物質2及び第2正極活物質3は粉末形状であり、第1正極活物質2の平均粒径D50より第2正極活物質3の平均粒径D50のほうが小さい。又第1正極活物質2と第2正極活物質3とは正極活物質層5の中にそれぞれが偏って存在せず適度に分散されている。
正極は、上記第1正極活物質と第2正極活物質と結着剤と必要に応じて導電助剤とを含む正極活物質層形成用組成物を調製し、さらにこの組成物に適当な溶媒を加えてペースト状の液にしてから、集電体の表面に塗布後、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成することができる。
正極活物質層形成用組成物を含むペースト状の液の塗布方法としては、ロールコート法、ディップコート法、ドクターブレード法、スプレーコート法、カーテンコート法などの従来から公知の方法を用いればよい。
粘度調整のための溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)、メタノール、メチルイソブチルケトン(MIBK)などが使用可能である。
<リチウムイオン二次電池>
本発明のリチウムイオン二次電池は、本発明の正極を備えている。本発明のリチウムイオン二次電池において、負極、セパレータ及び電解液は公知のものを用いることができる。
負極は、負極用集電体と、集電体の表面に結着させた負極活物質層とを有する。負極活物質層は、負極活物質、結着剤を含み、必要に応じて導電助剤を含む。結着剤、導電助剤は正極で説明したものと同様である。
負極用集電体の材料として、例えば、ステンレス鋼、チタン、ニッケル、アルミニウム、銅などの金属材料または導電性樹脂を挙げることができる。特に、電気伝導性、加工性、価格の面から、負極用集電体の材料としては、銅またはステンレス鋼が好ましい。負極用集電体の形態は、箔、シート、フィルム、線状、棒状、メッシュなどの形態をとることができる。集電体として、例えば、銅箔、ニッケル箔、アルミニウム箔、ステンレス鋼箔などの金属箔を好適に用いることができる。集電体が、箔、シート又はフィルムの場合は、集電体の厚みは8μm〜100μmであることが好ましい。
負極活物質としては、リチウムを吸蔵、放出可能な炭素系材料、リチウムと合金化可能な元素、リチウムと合金化可能な元素を有する元素化合物、あるいは高分子材料などを用いることができる。
炭素系材料としては、例えば、難黒鉛化性炭素、人造黒鉛、コークス類、グラファイト類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物焼成体、炭素繊維、活性炭あるいはカーボンブラック類が挙げられる。ここで、有機高分子化合物焼成体とは、フェノール類やフラン類などの高分子材料を適当な温度で焼成して炭素化したものをいう。
リチウムと合金化可能な元素としては、例えば、Na、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Ti、Ag、Zn、Cd、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、Biが挙げられる。特に、リチウムと合金化可能な元素としては、珪素(Si)又は錫(Sn)が好ましい。
リチウムと合金化可能な元素を有する元素化合物としては、例えば、ZnLiAl、AlSb、SiB、SiB、MgSi、MgSn、NiSi、TiSi、MoSi、CoSi、NiSi、CaSi、CrSi、CuSi、FeSi、MnSi、NbSi、TaSi、VSi、WSi、ZnSi、SiC、Si、SiO、SiO(0<x≦2)、SnO(0<w≦2)、SnSiO、LiSiOあるいはLiSnOが挙げられる。リチウムと合金化反応可能な元素を有する元素化合物としては珪素化合物又は錫化合物が好ましい。珪素化合物としては、SiO(0.5≦x≦1.5)が好ましい。錫化合物としては、例えば、スズ合金(Cu−Sn合金、Co−Sn合金等)が好ましい。
高分子材料としては、ポリアセチレン、ポリピロールなどが使用できる。
セパレータは正極と負極とを隔離し、両極の接触による電流の短絡を防止しつつ、リチウムイオンを通過させるものである。セパレータとしては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレン、あるいはポリエチレンなどの合成樹脂製の多孔質膜、又はセラミックス製の多孔質膜が挙げられる。
電解液は溶媒とこの溶媒に溶解された電解質とを含んでいる。
溶媒として、例えば、環状エステル類、鎖状エステル類、エーテル類が使用できる。環状エステル類として、例えば、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ガンマブチロラクトン、ビニレンカーボネート、2−メチル−ガンマブチロラクトン、アセチル−ガンマブチロラクトン、ガンマバレロラクトンが使用できる。鎖状エステル類として、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、エチルメチルカーボネート、プロピオン酸アルキルエステル、マロン酸ジアルキルエステル、酢酸アルキルエステルが使用できる。エーテル類として、例えば、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、1、4−ジオキサン、1、2−ジメトキシエタン、1、2−ジエトキシエタン、1、2−ジブトキシエタンが挙げられる。
また上記溶媒に溶解させる電解質として、例えば、LiClO、LiAsF、LiPF、LiBF、LiCFSO、LiN(CFSO等のリチウム塩が挙げられる。
電解液として、例えば、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ジメチルカーボネートなどの溶媒にLiClO、LiPF、LiBF、LiCFSOなどのリチウム塩を0.5mol/lから1.7mol/l程度の濃度で溶解させた溶液を使用することができる。
上記リチウムイオン二次電池は車両に搭載することができる。上記リチウムイオン二次電池は、高容量でかつ安全性が高いため、そのリチウムイオン二次電池を搭載した車両は、出力及び安全性の面で高性能となる。
車両としては、電池による電気エネルギーを動力源の全部又は一部に使用する車両であればよく、例えば、電気自動車、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、ハイブリッド鉄道車両、電動フォークリフト、電気車椅子、電動アシスト自転車、電動二輪車が挙げられる。
以上、本発明のリチウムイオン二次電池用正極及びリチウムイオン二次電池の実施形態を説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。本発明の要旨を逸脱しない範囲において、当業者が行い得る変更、改良等を施した種々の形態にて実施することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明する。
<ラミネート型リチウムイオン二次電池作製>
[正極用集電体の準備]
正極用集電体として、厚み20μmのアルミニウム箔及び厚み10μmのオーステナイト系のSUS304のステンレス鋼箔を準備した。
[正極活物質層の作製準備]
第1正極活物質として平均粒径D50が6μmのLiNi0.5Co0.2Mn0.3と、第2正極活物質として表面をカーボンコートした平均粒径D50が2μmのLiFePOを準備した。又導電助剤として平均粒径D50が80nmのアセチレンブラック(AB)と、結着剤としてポリフッ化ビニリデン(PVDF)とを準備した。
(実施例1のラミネート型リチウムイオン二次電池)
84.6質量%のLiNi0.5Co0.2Mn0.3と9.4質量%のLiFePOと3質量%のABと3質量%のPVDFとを、混合し、正極活物質層形成用組成物を作成した。
この正極活物質層形成用組成物を適量のN−メチル−2−ピロリドン(NMP)に分散させて、スラリーを作製した。スラリー中の配合割合は、正極活物質全体を100としたときにLiNi0.5Co0.2Mn0.3は90、LiFePOは10である。
ステンレス鋼箔からなる集電体に上記スラリーをのせ、ドクターブレードを用いてスラリーが膜状になるように集電体に塗布した。スラリーを塗布したステンレス鋼箔を80℃で20分間乾燥してNMPを揮発により除去することによって、ステンレス鋼箔の表面に正極活物質層を形成した。その後、ロ−ルプレス機により、ステンレス鋼箔とステンレス鋼箔上の正極活物質層を強固に密着接合させた。ここで、正極活物質層の目付けは20mg/cmとした。接合物を120℃で6時間、真空乾燥機で加熱し、所定の形状(25mm×30mmの矩形状)に切り取り、厚さ70μm程度の実施例1の正極とした。
負極は以下のように作製した。黒鉛粉末97質量部と、導電助剤としてアセチレンブラック1質量部と、結着剤として、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)1質量部、カルボキシメチルセルロース(CMC)1質量部とを混合し、この混合物を適量のイオン交換水に分散させてスラリーを作製した。このスラリーを負極用集電体である厚み20μmの銅箔にドクターブレードを用いて膜状になるように塗布し、スラリーを塗布した集電体を乾燥後プレスし、接合物を120℃で6時間、真空乾燥機で加熱し、所定の形状(25mm×30mmの矩形状)に切り取り、厚さ60μm程度の負極とした。
上記の実施例1の正極及び上記負極を用いて、ラミネート型リチウムイオン二次電池を作製した。詳しくは、正極及び負極の間に、セパレータとしてポリプロピレン樹脂からなる矩形状シート(27×32mm、厚さ25μm)を挟装して極板群とした。この極板群を二枚一組のラミネートフィルムで覆い、三辺をシールした後、袋状となったラミネートフィルムに電解液を注入した。電解液として、エチレンカーボネート(EC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、をEC:EMC:DMC=30:30:40(体積比)で混合した溶媒にLiPFを1モル/lとなるように溶解した溶液を用いた。その後、残りの一辺をシールすることで、四辺が気密にシールされ、極板群及び電解液が密閉された実施例1のラミネート型リチウムイオン二次電池を得た。なお、正極及び負極は外部と電気的に接続可能なタブを備え、このタブの一部はラミネート型リチウムイオン二次電池の外側に延出している。以上の工程で、実施例1のラミネート型リチウムイオン二次電池を作製した。
(実施例2のラミネート型リチウムイオン二次電池)
75.2質量%のLiNi0.5Co0.2Mn0.3と18.8質量%のLiFePOと3質量%のABと3質量%のPVDFとを、混合して用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例2のラミネート型リチウムイオン二次電池を作製した。実施例2のラミネート型リチウムイオン二次電池におけるスラリー中の配合割合は、正極活物質全体を100としたときにLiNi0.5Co0.2Mn0.3は80、LiFePOは20である。
(実施例3のラミネート型リチウムイオン二次電池)
65.8質量%のLiNi0.5Co0.2Mn0.3と28.2質量%のLiFePOと3質量%のABと3質量%のPVDFとを、混合して用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例3のラミネート型リチウムイオン二次電池を作製した。実施例3のラミネート型リチウムイオン二次電池におけるスラリー中の配合割合は、正極活物質全体を100としたときにLiNi0.5Co0.2Mn0.3は70、LiFePOは30である。
(実施例4のラミネート型リチウムイオン二次電池)
56.4質量%のLiNi0.5Co0.2Mn0.3と37.6質量%のLiFePOと3質量%のABと3質量%のPVDFとを、混合して用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例4のラミネート型リチウムイオン二次電池を作製した。実施例4のラミネート型リチウムイオン二次電池におけるスラリー中の配合割合は、正極活物質全体を100としたときにLiNi0.5Co0.2Mn0.3は60、LiFePOは40である。
(比較例1のラミネート型リチウムイオン二次電池)
94質量%のLiNi0.5Co0.2Mn0.3と3質量%のABと3質量%のPVDFとを、混合して用いたこと以外は、実施例1と同様にして比較例1のラミネート型リチウムイオン二次電池を作製した。比較例1のラミネート型リチウムイオン二次電池におけるスラリー中の配合割合は、正極活物質全体を100としたときにLiNi0.5Co0.2Mn0.3は100である。
(比較例2のラミネート型リチウムイオン二次電池)
正極用集電体としてアルミニウム箔を用いた以外は比較例1と同様にして比較例2のラミネート型リチウムイオン二次電池を作製した。
(比較例3のラミネート型リチウムイオン二次電池)
正極用集電体としてアルミニウム箔を用いた以外は実施例1と同様にして比較例3のラミネート型リチウムイオン二次電池を作製した。
(比較例4のラミネート型リチウムイオン二次電池)
正極用集電体としてアルミニウム箔を用いた以外は実施例2と同様にして比較例4のラミネート型リチウムイオン二次電池を作製した。
(比較例5のラミネート型リチウムイオン二次電池)
正極用集電体としてアルミニウム箔を用いた以外は実施例3と同様にして比較例5のラミネート型リチウムイオン二次電池を作製した。
(比較例6のラミネート型リチウムイオン二次電池)
正極用集電体としてアルミニウム箔を用いた以外は実施例4と同様にして比較例6のラミネート型リチウムイオン二次電池を作製した。
<ラミネート型リチウムイオン二次電池の電池容量測定>
実施例1〜4及び比較例1〜6のラミネート型リチウムイオン二次電池の電池容量を測定した。充電は、25℃において0.33Cレート、電圧4.5VでCCCV充電、CV時間3時間(定電流定電圧充電)をした。放電の際は3.0Vまで、0.33CレートでCCCV放電、CV時間3時間(定電流定電圧放電)を行った。この時の放電容量を測定し、電池容量とした。結果を表1に示す。なお表1において、ステンレス鋼箔容量/アルミニウム箔容量(%)は、集電体がステンレス鋼箔の電池容量[mAh/g]÷集電体がアルミニウム箔の電池容量[mAh/g]×100で求めた値である。
Figure 0006252858
表1に見られるように第1正極活物質の配合割合が100である比較例1及び比較例2の結果では、比較例1のステンレス鋼箔を用いた電池の電池容量は比較例2のアルミニウム箔を集電体に用いた電池の電池容量に比べて94.8%にまで下がってしまう。それに対して、正極活物質層に上記第2正極活物質を入れた電池である実施例1〜4及び比較例3〜6においては、実施例1〜4の集電体にステンレス鋼箔を用いた電池の電池容量は、比較例3〜6の集電体にアルミニウム箔を用いた電池と同等の電池容量が出せることがわかった。
ステンレス鋼製の集電体を具備し、鉄を含む第2正極活物質を含むことで、安全性が高く、アルミニウムを集電体に用いた電池と電池容量が同等のリチウムイオン二次電池とすることができることがわかった。
1:集電体、2:第1正極活物質、3:第2正極活物質、4:結着剤、5:正極活物質層。

Claims (5)

  1. ステンレス鋼製の集電体と、
    該集電体に結着された正極活物質層と、を具備し、
    該正極活物質層は、第1正極活物質と第2正極活物質と結着剤とを含み、
    前記第1正極活物質が、一般式:LiNiCoMn(0.2≦a≦1.7、b+c+d+e=1、0≦b<1、0≦c<1、0≦d<1、0≦e<1、DはLi、Cr、Cu、Zn、Ca、Mg、Zr、S、Si、Na、K、Alから選ばれる少なくとも1の元素、1.7≦f≦2.1)で表されるリチウム含有酸化物であり、
    前記第2正極活物質が、一般式:LiFe1−hPO(MはMn、Co、Ni、Cu、Mg、Zn、V、Ca、Sr、Ba、Ti、Al、Si、B、Te及びMoから選ばれる少なくとも1の元素、1≦g≦2、0≦h<1、0≦i<1)で表されるリチウム鉄含有酸化物であることを特徴とするリチウムイオン二次電池用正極。
  2. 前記第1正極活物質の平均粒径D50は1μm〜20μmであり、前記第2正極活物質の平均粒径D50は0.1μm〜10μmであり、前記第1正極活物質の平均粒径D50は、前記第2正極活物質の平均粒径D50より大きい請求項1に記載のリチウムイオン二次電池用正極。
  3. 前記第1正極活物質と前記第2正極活物質の配合質量比は、95:5〜50:50である請求項1又は2に記載のリチウムイオン二次電池用正極。
  4. 前記第1正極活物質は、LiCo1/3Ni1/3Mn1/3、LiNi0.6Co0.2Mn0.2、LiNi0.5Co0.2Mn0.3、LiNi0.8Co0.1Mn0.1及びLiNi0.75Co0.1Mn0.15から選ばれる少なくとも一種であり、前記第2正極活物質はLiFePO、LiMn0.75Fe0.25PO、LiFe2/3PO及びLiMn7/8Fe1/8POから選ばれる少なくとも一種である請求項1〜3のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用正極。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のリチウムイオン二次電池用正極を有するリチウムイオン二次電池。
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