ところで、通水溝路には、排水管に向けた水の流れを良くするために、所定の勾配を有する底部(以下、勾配底部)が形成されることもある。こうした勾配底部は、排水管の位置に応じて適宜設計されることから、施工現場でモルタルやコンクリート等により形成される。しかしながら、上記した従来の断面倒コ字形の溝路部材(図11参照)は、金属製であることから、モルタルやコンクリート等との接着性が低く、前記した勾配底部を形成することが難しい。もし仮に、金属製の溝路部材により構成される通水溝路に、モルタル等によって勾配底部を形成すると、溝路部材と接触する勾配底部の境界縁に罅や割れ等が生じ易く、さらには勾配底部が部分的に破損してしまう虞もある。また、こうした溝路部材は、予め設定された標準サイズのもののみが供給されることから、前記した勾配が予め設けられたものが供給されることは無い。このように、従来の金属製の溝路部材により構成される通水溝路には、勾配底部を形成できないという問題がある。
一方、上記した型枠を用いてコンクリート製の通水溝路を形成する従来構成にあっては、上記した勾配底部を一体的に形成できることから、上記した金属製の溝路部材のような問題を生じ難い。しかし、この場合には、型枠の設置作業や、コンクリートの打設後に該型枠を取り外す作業を用することから、施工作業が繁雑化し、作業性の改善効果に限界がある。
また、通水溝路は溝蓋により被覆されることから、U字溝による通水溝路や型枠を用いて形成されたコンクリート製の通水溝路の場合には、溝蓋を支持するための上記支持枠が必要である。この支持枠は別部材であることから、U字溝等の上に位置決めして固定しなければならず、そのための設置作業を必要とする。この設置作業も、施工作業が繁雑化する一因となっている。
本発明は、U字溝等のコンクリート製のものに比して運搬や施工の際の作業性を向上できると共に、モルタル等により勾配底部を形成した場合にも該勾配底部の割れや破損等が発生することを抑制できる溝路構成装置を提案するものである。
本発明は、通水溝路の左右両側に長手方向に沿って対向状に配設され、該通水溝路の上端から基底まで垂直状に延成されて該通水溝路の左右の側壁を夫々構成する左右の垂直側板部を備えると共に、一方の垂直側板部の下端部から通水溝路の内側に水平状に設けられた水平内縁部と、他方の垂直側板部の下端部から通水溝路の外側に水平状に設けられた水平外縁部とを備え、該水平内縁部および水平外縁部が所定の固定手段を介して基盤に位置固定される左右一対の側板と、左右の側板の上部に、長手方向に所定間隔をおいて差し渡され、溝蓋を支承する複数の乗載梁とを備えていることを特徴とする溝路構成装置である。
ここで、側板としては、スチール鋼やステンレス鋼等の金属製のものが好適に用いられ、垂直側板部はスチール鋼板などの金属薄板からなるものが好適である。乗載梁としては、スチール鋼やステンレス鋼等の金属製のものが好適に用いられる。また、上記の固定手段としては、コンクリート製の基盤に打ち込んで固定するアンカーボルトやビス、さらには前記基盤に設置された鉄筋と水平内縁部および水平外縁部とを直接的または間接的に溶接する手段等が適用できる。また、乗載梁に支承した溝蓋を固定するロック手段を備えた構成が好適に用い得る。
かかる構成によれば、左右一対の側板により通水溝路の側壁を形成できることから、溝底の施工によって通水溝路を形成することができ、該通水溝路の施工作業を効率化できる。通常、施工の際には、通水溝路の両側にコンクリートやモルタル等を打設する作業を行うことから、これと一緒に前記した溝底の施工を行うことができ、上記した従来のU字溝や溝路部材を用いる場合とほぼ同レベルの作業性によって施工可能と言える。さらに、側板は、板状であり、上記したU字溝に比して薄肉であることから、本発明の溝路構成装置は軽量となるため、運搬や施工の際における取扱い性に優れている。特に、側板が金属薄板からなるものである場合には、上記したU字溝に比して極めて軽量となるため、前記取扱い性が大きく向上し、作業効率を改善する効果が極めて高い。
また、通水溝路の内側に設けられた水平内縁部は、これのみで溝底を形成するものでなく、両側の垂直側板部の下端部間における空隙を、部分的に減少させるだけである。そのため、両側の側板間には、比較的大きく下方開口する空隙が存在する。施工の際には、こうした下方開口した空隙を埋める溝底の施工によって、該空隙を介して上記した勾配底部を形成することができる。これにより、勾配底部は、下方開口した空隙を埋めるコンクリートやモルタルによって一体的に形成されることから、しっかりとした堅固なものとなり得る。さらに、水平内縁部は、上述した従来構成の断面倒コ字形の溝路部材に比して、勾配底部との接触面積も小さい。こうしたことから、金属製の溝路構成装置により構成される通水溝路に、モルタル等により勾配底部を容易に形成できると共に、該勾配底部に、金属とモルタル等との低い接着性を要因とする割れや破損等が発生することを可及的に抑制できる。尚、勾配底部は、施工現場で形成することから、該施工現場に応じた勾配を適宜設定して形成できる。
さらに、本発明の構成は、壁やサッシ等の建造障害物の片側に近接する通水溝路に好適に適用できる。こうした通水溝路は、建造障害物との隙間が極めて狭いことから、該隙間でアンカー等の固定手段を用いることができない。しかし、本発明の構成によれば、建造障害物側に、水平内縁部が設けられた一方の垂直側板部を設置することによって、溝路の内側から、該水平内縁部を所定の固定手段により基盤に位置固定する作業を行うことができる。一方、建造障害物と反対側では、溝路の外側から、水平外縁部を固定手段により基盤に位置固定する作業を行うことができる。したがって、本発明の溝路構成装置によれば、建造障害物の片側に近接する通水溝路を形成する場合にあっても、水平内縁部と水平外縁部とを固定手段を介して容易かつ堅固に位置固定することができ、所望の通水溝路を安定して施工できる。
また、本発明の溝路構成装置は、溝蓋を支持する機能を備えており、左右の側壁の間隔(通水溝路の溝幅)と略等しい幅の溝蓋を直接設置できることから、上述したU字溝等のように溝蓋の支持枠を別途必要としない。そのため、この支持枠を別途必要とする従来構成に比して、該支持枠に要するコストを削減できる。
上述した本発明の溝路構成装置にあって、一方の垂直側板部の下端から通水溝路の内側に水平状に突設された水平内縁部と、他方の垂直側板部の下端から通水溝路の外側に水平状に突設された水平外縁部とを備え、該水平内縁部および水平外縁部が所定の固定手段を介して基盤に位置固定される左右一対の側板を備えている構成が提案される。
かかる構成は、一方の側板が垂直側板部と水平内縁部とを備え、他方の側板が垂直側板部と水平外縁部とを備えた構成であり、本構成によれば、上述した本発明の作用効果が適正に発揮され得る。
ここで、水平内縁部としては、長手方向に亘って垂直側板部の下端から突設された構成や、長手方向で複数突設された構成が好適に用いられる。さらに、こうした水平内縁部は、短尺状に突設されて、左右方向の幅が比較的短い構成が好適である。又は、水平内縁部は、長手方向の幅が比較的細い板状とした構成が好適である。これら構成によれば、両側の垂直側板部間で下方開口する空隙が可及的に大きくなると共に、水平内縁部と勾配底部との接触面積も小さくなることから、該勾配底部での割れや破損等の発生を抑制する効果が向上する。尚、水平外縁部にあっても同様の構成が好適である。
上述した本発明の溝路構成装置にあって、一方の垂直側板部の下端部から両側板部間を横断して他方の垂直側板部外側に至るまでの長さとなるように突出した細幅状突縁部を、長手方向に沿って複数設け、該細幅状突縁部の両側板部間の部位を水平内縁部とし、他方の垂直側板部から外側に突出している部位を水平外縁部とし、該水平内縁部および水平外縁部が所定の固定手段を介して基盤に位置固定される左右一対の側板を備えている構成が提案される。
かかる構成にあって、水平内縁部は細幅状突縁部により構成されていることから、両側の垂直側板部間には、比較的大きく下方開口する空隙が複数に分かれて存在する。そして、各水平内縁部と勾配底部との接触面積が小さくなることから、該勾配底部での割れや破損等の発生を抑制する効果が向上する。
上述した本発明の溝路構成装置にあって、左右の側板の、少なくとも長手方向の両端部で、該側板の下部に差し渡されて固定された保持梁を備えている構成が提案される。
かかる構成によれば、乗載梁により定まる左右の側板の間隔を、保持梁により保持でき、側板の上部と下部とで該間隔を安定して保持することができる。これにより、運搬や施工の際にも左右の側板の間隔を保持でき、該間隔の変化を可及的に抑制できることから、通水溝路を所定の溝幅により安定かつ容易に形成することができる。
本発明の溝路構成装置によれば、上述したように、U字溝等のコンクリート製に比して軽量で運搬や施工時における取扱い性に優れることから、該運搬や施工の作業効率を大きく向上できる。また、水の流れを導くための勾配底部を、両側の垂直側板部間で下方開口する空隙を埋めるモルタル等と一体的に形成でき、加えて水平内縁部との接触面積を小さくできることから、該勾配底部に割れや破損等が生じることを可及的に抑制できる。これにより、勾配底部が高い耐久性を発揮し、溝路内の水流を安定的に維持することができる。さらに、壁際や窓際などに設ける通水溝路に好適に用いることができ、水平内縁部と水平外縁部とを固定手段を介して基盤に安定かつ堅固に位置決め固定できる。
本発明にかかる実施例1〜実施例5を、添付図面を用いて以下に説明する。
図1のように、壁際、窓際(サッシ際)、敷地境界線等のように建造障害物51の片側に近接する位置に、左右横幅が比較的狭い通水溝路1が設けられ、該通水溝路1に縦目グレーチング5が溝蓋として設置される。縦目グレーチング5は、その横幅が通水溝路1の溝幅とほぼ同じであり、所定個数が一列状に配されることによって該通水溝路1の上部開口を被覆する。
縦目グレーチング5は、図2のように、通水溝路1の長手方向に沿って所定間隔で並列された複数のメインバー6と、各メインバー6の長手方向の両端に差し渡された二本のサイドバー(図示せず)と、両サイドバー間に所定間隔で各メインバー6に直交状に差し渡されたクロスバー7とによって構成されるものである。
通水溝路1は、図1のように、上記した縦目グレーチング5を支持する溝路構成装置10により形成される。溝路構成装置10は、左右一対の側板11a,11bと、両側板11a,11bの上部に差し渡された複数の乗載梁12とを備えてなる。
ここで、左右一対の側板11a,11bは、図1〜4のように、通水溝路1の左右両側で長手方向に沿って対向状に配設されるものであり、該通水溝路1の長手方向に沿った略長尺板状に夫々形成されている。そして、側板11a,11bは、通水溝路1の上端から基底まで垂直状に延成された略長方形状の垂直側板部14を夫々備えている。これら左右の垂直側板部14,14によって、通水溝路1の左右の側壁が構成される(図1参照)。さらに、一方の側板11aは、その垂直側板部14の下端から通水溝路1の内側に屈曲形成された水平内縁部15を備えている。この水平内縁部15は、垂直側板部14の長手方向に亘って形成されており、垂直側板部14の下端から直角状に屈曲されて、水平方向に延出されてなる。そして、水平内縁部15は、その左右方向の横幅寸法が、通水溝路1の左右方向間隔よりも短い。具体的には、水平内縁部15の横幅寸法が、通水溝路1の間隔に対して約1/3となっている。これにより、左右の側板11a,11bの下端間では、水平内縁部15と他方の側板11b(垂直側板部14)との間で比較的大きく下方開口している。また、他方の側板11bは、その垂直側板部14の下端から通水溝路1の外側に屈曲形成された水平外縁部16を備えている。この水平外縁部16は、通水溝路1に対して屈曲形成される方向が通水溝路1の外側となる以外は前記水平内縁部15と寸法形状が同一である。すなわち、左右の側板11a,11bは、同一の寸法形状であり、所定間隔(通水溝路1の間隔)で並行に配される。
尚、こうした側板11a,11bは、長尺矩形状のスチール鋼の薄板から形成することができ、該薄板の一方の長辺に沿った端部を屈曲加工することによって形成できる。
さらに、側板11a,11bの上部には、長手方向で所定間隔をおいて複数の乗載梁12が差し渡されている。乗載梁12は、所定長さの角パイプにより構成されており、その外周をなす四面の一面が、水平方向に沿った上面となるように配設される。そして、この上面が、側板11a,11bの上端から、上記した縦目グレーチング5の厚みに略相当する高さ間隔をおいた下方に位置するように、乗載梁12が側板11a,11bに差し渡されて固定される。側板11a,11bの各垂直側板部14には、互いに対向する部位に、乗載梁12の端部を嵌入する複数の嵌入口18が板厚方向に貫通形成されている。そして、左右の垂直側板部14の、互いに対向する嵌入口18に、乗載梁12の両端を夫々嵌入して垂直側板部14と溶接することにより、該乗載梁12が固定される。ここで、乗載梁12は、その両端が垂直側板部14の外面から突出しないように、嵌入口18に嵌入されて溶接される。こうした乗載梁12は、その長さ寸法が、左右の垂直側板部14に固定された状態で、該垂直側板部14の間隔が通水溝路1の間隔と等しくなるように設定されている。このように乗載梁12が複数配設されることによって、左右の側板11a,11bと複数の乗載梁12とからなる溝路構成装置10が形成される。
尚、乗載梁12は、スチール鋼製の角パイプにより構成されており、長尺の角パイプを前記した所定の長さ寸法に切断することにより形成される。
さらに、側板11a,11bの下端部には、その長手方向の両端部で、保持梁21が差し渡されて固定される。左右の側板11a,11bを構成する垂直側板部14には、その長手方向の両端部の下端に、板厚方向に貫通する貫通孔22が夫々形成されている。左右の貫通孔22は、互いに対向する位置に形成されており、前記した保持梁21の端部を夫々嵌入する。そして、保持梁21を嵌入した状態で、保持梁21の下面が、水平内縁部15および水平外縁部16上に位置するように、貫通孔22が形成されている。保持梁21は、片方の端部を、側板11aの貫通孔22に嵌入して水平内縁部15に乗載すると共に、他方の端部を、側板11bの内側から貫通孔22を貫通させて水平外縁部16に乗載した状態で、両端部を水平内縁部15と水平外縁部16とに夫々溶接する。これにより、保持梁21が側板11a,11bに差し渡して固定される。こうした保持梁21は、左右の側板11a,11bに固定された状態で、左右の垂直側板部14を上記の乗載梁12により決められた間隔で平行に保持するように、長さ寸法や固定位置などが定められている。このように側板11a,11bの長手方向の両端部に保持梁21を配設することによって、左右の垂直側板部14の間隔を、通水溝路1の間隔に安定して保つことができる。
尚、保持梁21は、細長いスチール鋼製板材により構成されており、長尺の板材を所定長さ寸法に切断することにより形成される。
こうした溝路構成装置10は、左右の側板11a,11bが長さ1000mm、高さ200mm、板厚3mm、水平内縁部15および水平外縁部16が左右方向幅30mmのものを適用し、側板11a,11bの間隔(通水溝路1の間隔)が100mmとする。そして、乗載梁12が、一辺の長さ25mmのものを適用し、側板11a,11bの長さ方向に300mmの間隔で四個配設される。尚、側板11a,11bとしては、長さが200mm〜2000mm、高さが50mm〜500mm、板厚が1.5mm〜4.5mm、側板11a,11bの間隔が50mm〜200mm、水平内縁部15および水平外縁部16の幅が10mm〜100mmのものを適用できる。ここで、水平内縁部15および水平外縁部16の左右方向幅(横幅)としては、通水溝路1の間隔に対して1/5〜1/2となるように設定したものが適用される。
次に、上記した本実施例1の溝路構成装置10を用いて形成される通水溝路1について説明する。
上述したように建造障害物51の片側に近接する通水溝路1は、溝路構成装置10を地盤の所定深さ位置に一列状に埋設して構築される。ここで、溝路構成装置10は、図1のように、建造障害物51側に、水平内縁部15を備えた側板11aが位置し、建造障害物51と逆側に、水平外縁部16を備えた側板11bが位置するように配設される。
通水溝路1を形成する建造障害物51の片側には、図5のように、上記した溝路構成装置10を埋め込む細長い予備溝41が形成され、その溝底をコンクリート等により整地してコンクリート基盤31が設けられる。そして、コンクリート基盤31上に、所定の嵩上げ部材32を配して、溝路構成装置10を設置する深さ位置を調整する。この嵩上げ部材32により決まる深さ位置が、通水溝路1の基底位置を示す。こうして設置された嵩上げ部材32に、水平内縁部15および水平外縁部16を乗載するようにして、溝路構成装置10を配置される。これにより、溝路構成装置10は、その上端位置が地面と略等しくなる深さ位置(基底の位置)に配置される。次に、水平内縁部15と水平外縁部16とに夫々形成された複数の挿通孔25を介して、所定のアンカーボルト35をコンクリート基盤31に夫々打ち込むことにより、溝路構成装置10をコンクリート基盤31に位置決め固定する。
ここで、図12のように、従来構成の断面倒コ字形の溝路部材bにより、上述と同様に建造障害物kの片側に近接する通水溝路aを構築する場合には、該建造障害物kと溝路部材bとの隙間が狭いことから、該隙間を介した作業を行うことができず、建造障害物k側のアンカー部fを介して基盤hにアンカーボルトgを打ち込むことができない。これは、アンカーボルトgの打ち込み作業に用いる所定の電動工具を、建造障害物kと溝路部材bとの隙間に進入させることができないためである。そのため、建造障害物kと逆側のアンカー部fを介したアンカーボルトgのみで基盤hに位置固定しなければならず、左右両側を固定する場合(図11参照)に比して、固定強さが低下する。また、従来構成の溝路部材bでは、建造障害物kと通水溝路aとの間に該アンカー部fを埋設するための間隔を要することから、該通水溝路aを建造障害物kにこれ以上近接させることができないという問題もある。
こうした従来構成に対して、本実施例1の溝路構成装置10は、図1,5のように建造障害物51側に水平内縁部15を配するようにしていることから、水平内縁部15を介してアンカーボルト35をコンクリート基盤31に打ち込む作業を容易かつ確実に行うことができる。これは、アンカーボルト35の打ち込み作業に用いる所定の電動工具を水平内縁部15の直上まで進入するスペースを、左右の側板11a,11bの間で確保できるためである。一方、水平外縁部16は、建造障害物51と逆側に配されることから、電動工具の進入スペースを容易に確保でき、アンカーボルト35の打ち込み作業にも問題を生じない。また、本実施例1の溝路構成装置10によれば、上記の従来構成(図12参照)に比して、建造障害物51に可及的に近接した通水溝路1を構築できる。
尚、本実施例1の構成にあっても、仮に、建造障害物51側に水平外縁部16が配された場合には、上述した従来構成と同様に、該建造障害物51との隙間に前記電動工具を進入できないことから、水平外縁部16を介してアンカーボルト35を打ち込むことができない。これは、仮に、左右の側板の両方に水平外縁部を設けた構成とした場合にも、同様に生じる問題である。こうした問題は、建造障害物に近接する通水溝路を形成する場合に共通することから、アンカーボルトによる固定以外にも、コンクリート釘(ビス)の打ち込み作業、コンクリート基盤上に配設した鉄筋との溶接作業などを行う場合にも同様に生じ得る。いずれにせよ、本実施例1の構成によれば、建造障害物51側に水平内縁部15を配することにより、上述したように固定作業を容易かつ確実に行い得ることから、前記の問題を解決できる。
また、コンクリート基盤31には、位置決めした溝路構成装置10の各挿通孔25直下に、下穴42を夫々形成する。これにより、アンカーボルト35を比較的容易に打ち込むことができる。こうした下穴42についても、所定の電動工具による作業を必要とすることから、上述したように該電動工具の進入スペースが確保できることによって容易に形成できる。
こうして溝路構成装置10を位置決め固定すると、該溝路構成装置10の外側からモルタルを流し込んでいき、図1のように、溝路構成装置10を埋設する。この際に、溝路構成装置10とコンクリート基盤31との間にもモルタルを流し込むことにより、側板11aの水平内縁部15と側板11bの下端との間で大きく下方開口する空隙24(図5参照)がモルタルにより埋まる。さらに、左右の側板11a,11b間にも、左右の垂直側板部14の下端部を埋めるようにモルタルを流し込み、長手方向の一方向へ傾斜する勾配底部39を形成する。勾配底部39は、所定場所に設けられた排水管(図示せず)に向かって水流を生じ易くするものであり、図6のように、比較的緩やかな勾配に設定されている。こうした勾配底部39は、左右の垂直側板部14間に位置する水平内縁部15の上側に形成され、該水平内縁部15が埋め込まれた状態で形成される。ここで、勾配底部39は、側板11aの水平内縁部15と側板11bの下端との間で下方開口する空隙24(図2,5参照)を介して、溝路構成装置10とコンクリート基盤31との間に流し込まれたモルタルにより一体的に形成される。そして、側板11aの水平内縁部15と側板11bの下端との間隔は、該水平内縁部15の横幅に比して広く(約2倍)、前記下方開口する空隙24が大きいことから、勾配底部39が、水平内縁部15の上側で安定的にしっかりしたものに形成される。さらに、モルタルと金属(スチール鋼)との接着性は低いものの、水平内縁部15の横幅が狭いことから、勾配底部39の形成に対する影響も少ない。こうしたことから、モルタルと金属との境界で発生が懸念される割れ等を、可及的に抑制することができ、該割れ等により生じた破片が通水溝路1の水流を妨害したり、通水溝路1の先に設けられた排水管が詰まってしまうことなどを抑制することができる。すなわち、上述した従来の、断面倒コ字形の金属製溝路部材により通水溝路を形成する構成では、モルタルにより勾配底部を形成した場合に、溝路部材との境界で勾配底部に割れ等が発生し易いという問題が生じるが、本実施例1では、こうした問題の発生を可及的に抑制することができる。
上述したように、溝路構成装置10を埋め込んで形成した通水溝路1は、その左右の側壁が、該溝路構成装置10を構成する左右の垂直側板部14によって形成される。そして、溝路構成装置10の乗載梁12によって、上記した縦目グレーチング5を支承し、該縦目グレーチング5を図示しないロック手段により溝路構成装置10に固定することにより、通水溝路1の上部開口を被覆して、施工を完了する(図1参照)。
本実施例1の溝路構成装置10は、スチール鋼製の側板11a,11bと乗載梁12とにより構成したものであり、上記したコンクリート製のU字溝に比して軽量であることから、該U字溝により通水溝路を形成する従来構成に比して、運搬や施工時における取扱い性に優れる。また、型枠を用いてコンクリート製の通水溝路を形成する従来構成に比して、型枠の設置や取り外し作業などを必要としないことから、施工作業の作業性を向上できる。さらに、U字溝により通水溝路を形成する従来構成や、型枠を用いてコンクリート製の通水溝路を形成する従来構成では、溝蓋(グレーチング)を支持する支持枠を別に配設する必要があることに対して、本実施例1の構成では、溝路構成装置10が縦目グレーチング5を支承する機能を備えていることから、前記支持枠にかかる作業を削減できる。このように本実施例1の構成によれば、運搬作業や施工作業の作業性を向上することができ、これら作業に要するコストと時間とを削減することができる。
また、上述したように、本実施例1の溝路構成装置10によれば、モルタル等による勾配底部39を容易かつ堅固に形成でき、該勾配底部39に割れや破損等が生じることを抑制できる。これにより、勾配底部39により生じさせる溝路内の水流を比較的長期に亘って安定的に維持することができる。また、本実施例1の構成は、窓際、サッシ際、敷地境界線際等のように建造障害物51の片側に近接する場所に通水溝路1を形成する場合に好適に用いることができ、上述したように、該建造障害物51と通水溝路1との隙間が極めて狭い場合にも、水平内縁部15および水平外縁部16を介して安定かつ堅固に位置決め固定することができる。さらに、本実施例1の溝路構成装置10は、側板11aの垂直側板部14が垂直状に形成され、水平内縁部15を備えた側板11aの垂直側板部14によって、その建造障害物51側の最外位置が規定される。そのため、建造障害物51に可及的に近接した位置に溝路構成装置10を設置して、通水溝路1を形成することができる。これは、建造障害物51と通水溝路1との間隙に制限を設ける必要がないことを意味し、通水溝路1の設置自由度を向上できるという優れた利点を有する。
尚、本実施例1の構成にあって、縦目グレーチング5により本発明にかかる溝蓋が構成されている。また、コンクリート基盤31により、本発明の基盤が構成される。また、水平内縁部15と水平外縁部16とをコンクリート基盤31に固定するアンカーボルト35によって、本発明にかかる固定手段が実現されている。
実施例2の溝路構成装置60は、図7のように、一方の側板61aが、垂直側板部14の下端から長手方向で所定間隔をおいて突設された複数(三個)の水平内縁部65を備え、他方の側板61bが、垂直側板部14の下端から長手方向で所定間隔をおいて突設された複数(三個)の水平外縁部66を備えたものである。各水平内縁部65と各水平外縁部66とは、長手方向で、互いに対向する位置に夫々設けられている。そして、各水平内縁部65および水平外縁部66には、挿通孔25が夫々形成されている。
ここで、水平内縁部65は、略矩形板状に形成されており、その左右方向の横幅が左右の垂直側板部14,14の間隔よりも短く、該間隔に対して約1/3としている。そして、水平内縁部65は、長手方向で複数突設されていることから、その長手方向の幅が、垂直側板部14より相当に短い。この水平内縁部65が複数設けられたことにより、左右の側板61a,61b間に比較的大きく下方開口する空隙64が存在する。また、本実施例2にあっては、水平外縁部66は、水平内縁部65と同じ寸法形状に形成されている。
こうした水平内縁部65および水平外縁部66は、矩形状のスチール鋼の薄板を垂直側板部14の下端に、溶接等により接合することにより形成することができる。または、長尺矩形状のスチール鋼の薄板から形成することもでき、例えば、該薄板の下辺に矩形状に突出する部位を形成し、該部位を屈曲加工することによって形成できる。
また、本実施例2には、左右の垂直側板部14,14の下端部に、その長手方向の両端部で保持梁68が差し渡されて固定されている。ここで、左右の垂直側板部14,14には、その下端部に、保持梁68を嵌合する凹部69が夫々形成されている。左右の凹部69は互いに対向する位置に形成されており、保持梁68の両端部が夫々嵌合される。そして、嵌合された状態で、保持梁68の両端部が左右の垂直側板部14と夫々溶接される。この保持梁68は、上述した実施例1と同様に、左右の垂直側板部14,14の間隔を、通水溝路1の間隔に保つ。
尚、本実施例2の構成にあって、複数の水平内縁部65と水平外縁部66とを長手方向で夫々複数設けたこと、および保持梁68の構成が異なること以外は、上述した実施例1と同様であることから、同じ構成要素には同じ符号を記し、その説明を省略している。また、実施例1と同じ通水溝路1を形成する場合には、水平内縁部65および水平外縁部66は、その横幅が30mm、長手方向の幅が60mmとしている。尚、水平内縁部65および水平外縁部66は、その横幅が通水溝路1の間隔に対して1/5〜1/2に設定でき、その長手方向の幅および設置個数は適宜設定可能である。
実施例2の溝路構成装置60にあっても、上述した実施例1と同様に、建造障害物51の片側に近接する通水溝路1を構築できる。ここで、建造障害物51側に、水平内縁部65を備えた側板61aが位置し、建造障害物51と逆側に、水平外縁部66を備えた側板61bが位置するように配設される(図示せず)。そして、各水平内縁部65および各水平外縁部66をアンカーボルト35によってコンクリート基盤31に夫々打ち込むことによって、溝路構成装置60が該コンクリート基盤31に位置決め固定される(図示せず)。本実施例2の溝路構成装置60によれば、上述した実施例1と同様に、各水平内縁部65を介してアンカーボルト35をコンクリート基盤31に打ち込む作業を容易かつ確実に行うことができる。
さらに、上述した実施例1と同様に、位置決め固定した溝路構成装置60をモルタルにより埋設し、両側の側板61a,61b間で下方開口する空隙64を埋めて、勾配底部を形成する。この勾配底部は、比較的広く下方開口する空隙64を介してコンクリート基盤上に埋め込まれたモルタルと一体的かつ堅固に形成される。ここで、本実施例2の溝路構成装置60は、左右方向の横幅が短い水平内縁部65が複数設けられたものであることから、両側の側板61a,61b間で下方開口する空隙64が上述した実施例1よりも大きくなっている。そして、各水平内縁部65と勾配底部(モルタル)との接触面積も、上述した実施例1に比して小さくなる。こうしたことから、モルタルと金属との境界で発生が懸念される割れや破損等を、可及的に抑制することができる。
また、本実施例2の溝路構成装置60は、実施例1と同様に、スチール鋼製であることから、コンクリート製のU字溝に比して、運搬や施工時における取り扱い性に優れると共に、溝枠を支持するための支持枠を必要としない。そのため、従来構成に比して、本実施例2の構成は、運搬作業や施工作業の作業性を向上できる。
このように、本実施例2の溝路構成装置60は、上述した実施例1と同様の作用効果を奏するものである。
実施例3の溝路構成装置70は、図8のように、左右の垂直側板部14,14の下端部に断面L字形のアングル73が夫々に複数配設され、該アングル73の水平方向に突出する部位により、水平内縁部75または水平外縁部76が構成されている。そして、一方の側板71aには、垂直側板部14の下端部に複数配設されたアングル73によって水平内縁部75が長手方向で複数形成され、他方向の側板71bには、垂直側板部14の下端部に複数配設されたアングル73によって水平外縁部76が長手方向で複数形成されている。ここで、水平内縁部75と水平外縁部76とは、上述した実施例2と同様の寸法形状となるように形成されている。これにより、左右の側板71a,71bで下方開口する空隙74が、実施例2と同様に広くなっている。また、アングル73は、スチール鋼またはステンレス鋼からなり、各垂直側板部14,14に夫々溶接されている。
尚、本実施例3の構成にあって、垂直側板部14の下端部に複数配設したアングル73によって水平内縁部75または水平外縁部76を構成するようにした以外は、上述した実施例2と同じ構成であり、同じ構成要素には同じ符号を記し、その説明を省略している。また、実施例1と同じ通水溝路1を形成する場合には、水平内縁部75および水平外縁部76の横幅が30mm、長手方向の幅が60mmとなるように、アングル73の寸法形状が設定されている。そして、本実施例3では、アングル73が、各垂直側板部14の長手方向に夫々三個設けられている。
実施例3の溝路構成装置70にあっても、上述した実施例1,2と同様に、建造障害物51の片側に近接する通水溝路1を構築できる。また、上記した下方開口する空隙74を介して勾配底部を形成し、該勾配底部で発生が懸念される割れや破損等を、可及的に抑制することができる。さらに、従来構成に比して、運搬作業や施工作業の作業性を向上できる。このように本実施例3の構成によれば、上述した実施例1,2と同様の作用効果を奏し得る。
実施例4の溝路構成装置80は、図9のように、一方の側板81aの垂直側板部14の下端に、細幅状突縁部83が長手方向に沿って複数突設され、各細幅状突縁部83の先端部が、他方の側板81bの垂直側板部14から外側に突出するように設けられている。一方の側板81aに設けられた各細幅状突縁部83は、左右の垂直側板部14,14間を横断し、他方の側板81bの垂直側板部14から外側に突出する長さに設定されている。こうした各細幅状突縁部83は、左右の垂直側板部14,14間の部位により水平内縁部85を構成し、他方の側板81bの垂直側板部14から突出する先端部により水平外縁部86を構成する。これにより、細幅状突縁部83の配設個数に応じて、長手方向で水平内縁部85と水平外縁部86とが複数個設けられる。尚、細幅状突縁部83は、スチール鋼またはステンレス鋼等の矩形状薄板により構成されている。
ここで、左右の垂直側板部14,14には、その下端に、細幅状突縁部(矩形状薄板)83を嵌合する凹部89が長手方向に複数形成されており、左右で互いに対向する位置に各凹部89が形成されている。一方の側板81aを構成する垂直側板部14には、各凹部89に、細幅状突縁部(矩形状薄板)83の一端が嵌合されて溶接されている。そして、各細幅状突縁部(矩形状薄板)83の先端寄り部位が、他方の側板81bを構成する垂直側板部14の凹部89に嵌合されて溶接されており、各細幅状突縁部(矩形状薄板)83の先端部が該垂直側板部14の外側に突出する。
このように配設される細幅状突縁部83は、その長手方向の幅が、垂直側板部14の長さ寸法に比して相当に細い寸法である。そのため、左右の側板81a,81b間で下方開口する空隙84が比較的大きくなる。尚、本実施例4では、三個の細幅状突縁部83が設けられていることから、前記空隙84が複数に分かれている。
また、本実施例4の構成では、上述した実施例1〜3と異なり、左右の側板81a,81aの下部に保持梁を備えていない。これは、上記の細幅状突縁部83が、左右の垂直側板部14,14の下端に溶接されていることから、保持梁と同じ効果を発揮できるためである。
尚、本実施例4の構成にあって、左右の垂直側板部14を横断する細幅状突縁部83によって水平内縁部85および水平外縁部86を構成するようにした以外は、上述した実施例2と同様の構成であることから、同じ構成要素には同じ符号を記し、その説明を省略している。また、実施例1と同じ通水溝路1を形成する場合には、水平内縁部85は、その横幅が100mm、長手方向の幅が60mmとし、水平外縁部86は、その横幅が30mm、長手方向の幅が60mmとしている。
実施例4の溝路構成装置80にあっても、上述した実施例1〜3と同様に、建造障害物51の片側に近接する通水溝路1を構築できる。また、上記した下方開口する空隙84を介して勾配底部を形成することにより、該勾配底部を堅固に形成できると共に、モルタルと金属(水平内縁部85)との接触面積も小さい。これにより、勾配底部で発生が懸念される割れや破損等を、可及的に抑制することができる。さらに、従来構成に比して、運搬作業や施工作業の作業性を向上できる。このように本実施例4の構成によれば、上述した実施例1〜3と同様の作用効果を奏し得る。
また、本実施例4では、左右の垂直側板部14,14の下端部に設けた凹部89に細幅状突縁部(矩形状薄板)83が溶接された構成であるが、これ以外の構成として、該凹部89を設けずに、左右の垂直側板部14,14の下端に細幅状突縁部(矩形状薄板)83を当接して溶接するようにしても良い。
実施例5の溝路構成装置90は、図10のように、一方の側板部91aが、その垂直側板部14の下端から他方の垂直側板部14まで突出する水平内縁部95を長手方向で複数備えている。一方の垂直側板部14から突設された各水平内縁部95は、その先端部が他方の側板部91bの垂直側板部14に接合されていても良いし、接合されていなくとも良い。水平内縁部95は、細幅矩形状の薄板により形成されており、該薄板の一端が、側板部91aの垂直側板部14の下端に設けられた凹部99に嵌合されて溶接されてなる。
他方の側板部91bには、その垂直側板部14の下端部に、断面L字形のアングル73が長手方向で複数配設されており、該アングル73により水平外縁部96が構成されている。こうした水平外縁部96は、長手方向で、上記水平内縁部95と対向する位置に設けられる。
こうした溝路構成装置90は、その水平内縁部95が、細幅矩形状の薄板から形成され、該薄板の長手方向の幅が垂直側板部14の長さ寸法に比して相当に細い寸法である。そのため、左右の側板91a,91b間で下方開口する空隙94が比較的大きくなる。尚、本実施例5では、三個の水平内縁部95が設けられていることから、前記空隙94が二つに分かれている。
また、本実施例5の構成にあっては、上述した実施例4と同様に、保持梁を備えず、上記の水平内縁部95により保持梁の効果が発揮され得る。
尚、本実施例5の構成にあって、水平内縁部95が細幅矩形状の薄板から形成されている以外は、上述した実施例3と同様の構成であることから、同じ構成要素には同じ符号を記し、その説明を省略している。また、実施例1と同じ通水溝路1を形成する場合には、水平内縁部95は、その横幅が100mm、長手方向の幅が60mmとしている。そして、水平外縁部96の横幅が30mm、長手方向の幅が60mmとなるように、アングル73の寸法形状が設定されている。
実施例5の溝路構成装置90にあっても、上述した実施例1〜4と同様に、建造障害物51の片側に近接する通水溝路1を構築できる。また、上記した下方開口する空隙94を介して勾配底部を形成することにより、該勾配底部を堅固に形成できると共に、モルタルと金属(水平内縁部95)との接触面積も小さい。これにより、勾配底部で発生が懸念される割れや破損等を、可及的に抑制することができる。さらに、従来構成に比して、運搬作業や施工作業の作業性を向上できる。このように本実施例5の構成によれば、上述した実施例1〜4と同様の作用効果を奏し得る。
本発明にあっては、上述した実施例に限定されるものではなく、上述の実施例以外の構成についても本発明の趣旨の範囲内で適宜変更して実施可能である。