JP6188323B2 - 梁のピン連結構造 - Google Patents

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本発明は、コンクリート製の梁部の端部と、コンクリート製の構造部(梁や柱や壁等)の側部とを、ピン連結してある梁のピン連結構造に関する。
従来、梁のピン連結構造としては、コンクリート製の梁部の端部に、連結用鉄骨部材の一部を突出させて埋設しておき、その突出端部を、鉄骨の構造部(例えばI形鋼)に予め位置決めして一体化されたガセットプレート(フランジとウェブとにわたって位置決めされて溶接によって一体化してあるプレート)に対してボルト連結することで、ピン連結部を構成してあるものがあった(例えば、特許文献1参照)。
即ち、梁部と構造部との連結箇所は、鉄骨構造によって構成してあった。
特開平8−68113号公報(図2)
上述した従来の梁のピン連結構造によれば、梁部と構造部との連結の前に、構造部の梁取付対象部に、ガセットプレートを位置決めして溶接で固着しておく必要がある。
ガセットプレートの固着においては、予め、構造部に対して精度良く位置決めして作業を実施する必要があり、梁と構造部とのピン連結構造を形成するのに手間がかかる問題点があった。
また、構造部に対して梁部が斜めとなるような連結構造においては、ガセットプレートも梁部の長手方向に沿うように、構造部に対して斜めに取り付ける必要があり、位置決めや固着に、より多くの手間がかかることになる。
従って、本発明の目的は、上記問題点を解消し、梁と構造部とのピン連結構造を形成するのに手間を掛けずに簡単に実施できる梁のピン連結構造を提供するところにある。
本発明の第1の特徴構成は、コンクリート製の梁部の端部と、コンクリート製の構造部の側部とを、ピン連結してある梁のピン連結構造であって、前記梁部の端部に埋設されて付着力を確保する梁部埋設部と、前記構造部に埋設されて付着力を確保する構造部埋設部と、前記梁部埋設部と前記構造部埋設部との間に介在して前記梁部と前記構造部との間でせん断力を伝達する介在部とを備えたピン連結部材を、前記梁部と前記構造部とにわたって埋設してあり、前記ピン連結部材は、前記梁部と前記構造部とにわたる一枚の金属板で構成してあり、前記梁部と前記構造部との境界に、互いの相対変位を許容自在な緩衝層が介在されており、前記緩衝層に、前記金属板が挿入される切り込みが形成されており、前記切り込みは、前記金属板の板厚の倍以上の幅であり、前記切り込みに前記金属板が挿入されたときに、前記金属板と前記切り込みの縁部との間に空間が形成されるように構成されているところにある。
本発明の第1の特徴構成によれば、ピン連結部材を、梁部と構造部とにわたって埋設してあるから、梁部に対しては、ピン連結部材の梁部埋設部によって付着力が確保され、構造部に対しては、ピン連結部材の構造部埋設部によって付着力が確保され、安定した状態に埋設することができる。
そして、梁部と構造部との間に作用するせん断力は、介在部において伝達することができるから、梁部の重量を介在部を介して構造部に支持させることができる。一方、梁部と連結部との間に作用する曲げ力に対しては、介在部の変形によって吸収し、梁部と構造部との連結部を、実質的にピン連結構造とすることができる。
また、ピン連結部材を、梁部と構造部とにわたってコンクリート中に埋設するだけの手間で、梁部と構造部とのピン連結構造を形成することができるから、作業そのものが簡単な上、ピン連結部材の埋設設置対象は、コンクリートであるから、従来のように、ガセットプレートを芯材の決められた位置に高い精度で位置決めして溶接する等の必要が無く、より効率よくピン連結構造を形成することができる。よって、例えば、構造部に対して梁部を斜めに連結するような連結構造を形成する場合でも、ピン連結部材を構造部と梁部とにわたる状態にさえ配置すればよく、特に、大きな手間を掛けることなくピン連結構造を形成することができる。
更には、構造部の芯材(例えば、I形鋼)に溶接の熱歪みを残す虞もない。
以上の結果、構造部と梁部とのピン連結構造を、手間を掛けずに簡単に形成できるようになる。
しかも、緩衝層によって、梁部と構造部との相対変位を許容できる。
従って、例えば、構造部に対して梁部が上下に揺動するような連結部での曲げ変形が生じても、その動きを緩衝層によって許容でき、より好ましい状態のピン連結構造を構築することができる。
その結果、連結部での曲げ変形によって、構造部と梁部との突合せ面どうしが直接に押し当たって支圧破壊を生じたり、梁の曲げモーメントが柱に伝達されて柱の曲げ応力が増加するといった現象をより確実に防止できるようになる。
本発明の第2の特徴構成は、前記金属板は、その厚み方向が前記梁部の幅方向に沿う姿勢で埋設してあり、前記梁部埋設部と前記構造部埋設部とには、その厚み方向に沿って突出する状態に複数のスタッドが設けてあるところにある。
本発明の第2の特徴構成によれば、ピン連結部材として、厚み方向が梁部の幅方向に沿う姿勢に配置した一枚の金属板であるから、上面視において場所を取らず、構造部及び梁部に埋設する上で、それぞれの鉄筋や芯材等との干渉を避け易く、設置性に富んでいる。また、ピン連結部材を構成する金属板は、縦長断面によって必要な断面積を確保でき、梁部と構造部との間のせん断力を支持することができる。
梁と連結梁の連結状況を示す平面図 図1中のII−II矢視説明図 図1中のIII−III矢視断面図 図1中のIV−IV矢視断面図 ピン連結部材を示す斜視図 梁と連結梁のピン連結の手順を示す平面視説明図 梁と連結梁のピン連結の手順を示す平面視説明図 梁と連結梁のピン連結の手順を示す平面視説明図 梁と連結梁のピン連結の手順を示す平面視説明図
以下に本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1、図2は、構造部1の一例である梁1Aの側部に対して、連結梁(梁部の一例)2の端部をピン連結してある『梁のピン連結構造』を示している。
梁1Aは、鉄筋コンクリート製であり、その両端部を一対の柱(不図示)に各別に剛接合してラーメン構造が形成されている。
梁1Aは、図3に示すように、横断面形状が矩形形状となるように形成してあり、断面内には、梁長手方向に沿って配置された複数の主筋3と、それを取り囲む状態に配置された複数のあばら筋4とを備えて構成されている。
主筋3は、矩形断面の上辺部と、下辺部とにおいて、梁の幅方向に間隔をあけて配置されている。
あばら筋4は、主筋3を取り囲む矩形形状に形成してあり、梁の長手方向に間隔をあけて配置されている。
尚、前記主筋3やあばら筋4の外方には、コンクリートCの所定の鉄筋かぶりが確保されている。
連結梁2は、基本断面構造は、梁1Aと同様で、図4に示すように、複数の主筋5とあばら筋6とを備えて構成されている。
但し、連結梁2は、平面視において、図1に示すように、梁1Aの軸芯Sに対して鋭角の交差角度θとなる配置で連結されるから、連結梁2の端面部2aは、梁1Aの側面1aに沿うように、連結梁2の軸芯Tに対して前記交差角度θと同じ角度で傾斜させてある。
あばら筋6は、連結梁2の端部側では、端面部2aに沿う状態で複数列設けてあり、それらから連結梁中央側に隣接するあばら筋6どうしは、徐々に連結梁2の幅方向に沿うように姿勢を変えて配置してある。
また、梁1Aと連結梁2とにわたって、一枚の金属板で構成されたピン連結部材7が埋設してある。
ピン連結部材7は、図1、図2に示すように、側面視において横長の長方形の一枚の金属板7Aで構成してあり、連結梁2の端部に埋設されて付着力を確保する連結梁埋設部(梁部埋設部に相当)7bと、前記梁1Aに埋設されて付着力を確保する梁埋設部(構造部埋設部に相当)7aと、連結梁埋設部7bと梁埋設部7aとの間に介在して連結梁2と梁1Aとの間でせん断力を伝達する介在部7cとを設けて構成してある。
前記一枚の金属板7Aは、その厚み方向が連結梁2の幅方向に沿う姿勢で埋設してあり、連結梁埋設部7bと梁埋設部7aとには、その厚み方向に沿って突出する状態に複数のスタッド8が設けてあり(図5参照)、コンクリートCへのアンカー効果を発揮できるように構成されている。
従って、梁埋設部7aは、梁1Aのあばら筋4どうしの間から梁1Aの断面中央側に挿入された状態で設置され、連結梁埋設部7bは、連結梁2の端面部2aから連結梁2の軸芯Tに沿って連結梁2の長手方向中央側に挿入された状態で設置されている。
また、連結梁2の端面部2aと、梁1Aの側面1aとの間には、例えば、スタイロフォーム等のシート材で構成された緩衝層9が介在させてある。
以上の構成により、梁1Aと連続梁2とは、前記介在部7cの変形が許容された状態で連結され、実質的に、ピン連結構造として機能する。従って、連続梁2の端部を梁1Aによって回転自在に支持することができ、連続梁2の曲げモーメントの全てが梁1Aに伝達することを防止できる。その結果、梁1Aの剛性を、最小限度に止めた部材設計が可能となる。
次に、梁1Aと連結梁2とのピン連結手順の一例について説明する。
[1]梁1Aと、連結梁2との一連の型枠Kを組み上げる(図6参照)。
[2]梁1Aの型枠K1内に、主筋3とあばら筋4とを組むと共に、連結梁2の型枠K2内に、主筋5とあばら筋6とを組む(図7参照)。
[3]型枠Kにおける梁空間V1と連結梁空間V2との境界に、緩衝層9を固定する。
[4]緩衝層9の幅中央部に、ピン連結部材7の介在部7cを挿入自在な切り込み9aを入れた状態で、その切り込み9aに介在部7cを挿入しながら、ピン連結部材7を、梁空間V1と連結梁空間V2とにわたって配置する。ピン連結部材7の仮固定は、主筋3,5や、あばら筋4,6に鉄筋棒等の添え材を介在させて溶接や結束線によって固定することで実施できる。この切り込み9aは、切り込み9aに金属板7Aが挿入されたときに、金属板7Aと切り込み9aの縁部との間に空間9aAが形成されるように構成されている。
[5]梁空間V1と連結梁空間V2とに、それぞれコンクリートCを打設する(図8参照)。両空間V1,V2へのコンクリート打設速度は、いずれの空間においても打設深度がほぼ同じとなるように設定することで、両空間V1,V2でのコンクリート圧の均衡を保つことができ、緩衝層9が何れかの空間に変位することを防止できる。よって、別途型枠を設置しなくても、緩衝層9によって両空間V1,V2の区画ができる。
[6]コンクリートの所定の養生期間の経過後、脱型する(図9参照)。
当該実施形態の梁のピン連結構造によれば、連結梁2からのせん断力をピン連結部材7の介在部7Cを介して梁1Aに支持させることができながら、梁1Aと連結梁2との間に作用する曲げ力に対しては、介在部の変形によって吸収し、梁1Aと連結梁2とを、実質的にピン連結することができる。
また、ピン連結部材7となる一枚の金属板7Aを、梁1Aと連結梁2とにわたってコンクリートC中に埋設するだけの手間で、ピン連結構造を簡単に形成することができる。
そして、一枚の金属板7Aの埋設設置対象は、コンクリートCであるから、埋設位置の融通性がよく、現場作業をより効率的に実施できる。
また、梁1Aと連結梁2との間には、緩衝層9を設けてあるから、両者の動きを、緩衝層9で無理なく受け止めることができ、ピン連結部としての動きをスムースに許容することができる。
〔別実施形態〕
以下に他の実施の形態を説明する。
〈1〉 ピン連結の対象となる構造部1と梁部2は、先の実施形態で説明したものに限るものではなく、次のような代替が可能である。
例えば、構造部1は、先の実施形態で説明した梁1Aに限らず、例えば、柱や壁であってもよく、それらを含めて構造部1と総称する。
また、これら構造部1と梁部2との構造形式であるコンクリート製とは、鉄筋コンクリート造に限らず、例えば、鉄骨鉄筋コンクリート造や、鉄骨コンクリート造等、コンクリートを使用する構造形式であればよく、それらを含めてコンクリート製と総称する。
〈2〉 ピン連結部材7は、先の実施形態で説明した一枚の金属板7Aに限るものではなく、例えば、2枚以上の金属板であったり、単数又は複数の金属棒状体であってもよく、それらを含めてピン連結部材7と総称する。
〈3〉 緩衝層9は、先の実施形態で説明したスタイロフォーム等のシート材によって構成してあることに限るものではなく、構造部1と梁部2との緩衝作用を期待できるものであれば採用することができる。
尚、上述のように、図面との対照を便利にするために符号を記したが、該記入により本発明は添付図面の構成に限定されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。
1 構造部
2 連結梁(梁部に相当)
7 ピン連結部材
7a 梁埋設部(構造部埋設部に相当)
7b 連結梁埋設部(梁部埋設部に相当)
7c 介在部
7A 一枚の金属板
8 スタッド
9 緩衝層

Claims (2)

  1. コンクリート製の梁部の端部と、コンクリート製の構造部の側部とを、ピン連結してある梁のピン連結構造であって、
    前記梁部の端部に埋設されて付着力を確保する梁部埋設部と、前記構造部に埋設されて付着力を確保する構造部埋設部と、前記梁部埋設部と前記構造部埋設部との間に介在して前記梁部と前記構造部との間でせん断力を伝達する介在部とを備えたピン連結部材を、前記梁部と前記構造部とにわたって埋設してあり、
    前記ピン連結部材は、前記梁部と前記構造部とにわたる一枚の金属板で構成してあり、
    前記梁部と前記構造部との境界に、互いの相対変位を許容自在な緩衝層が介在されており、
    前記緩衝層に、前記金属板が挿入される切り込みが形成されており、
    前記切り込みは、前記金属板の板厚の倍以上の幅であり、前記切り込みに前記金属板が挿入されたときに、前記金属板と前記切り込みの縁部との間に空間が形成されるように構成されている梁のピン連結構造。
  2. 前記金属板は、その厚み方向が前記梁部の幅方向に沿う姿勢で埋設してあり、前記梁部埋設部と前記構造部埋設部とには、その厚み方向に沿って突出する状態に複数のスタッドが設けてある請求項1に記載の梁のピン連結構造。
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