ほとんどの光学系は、系内部の光学収差のみを考慮して設計される。精密な製造、入念な組み立て、および精選されたいくつかの調節可能なパラメータ(たとえば、フォーカス、ズーム、または球面収差補正)の包含と組み合わせられた光学面ジオメトリの入念な選択は、光学系が指定された公称レベルの性能を達成することを可能にする。しかしながら、光学収差源が光学系の外部に存在し、収差が未知で、経時的に変化してし得る場合、光学系の性能は著しく劣化し得る。ビーム走査撮像システムおよび収差源の精選されたいくつかの例が、それぞれ、図1および図2に示されている。補償光学(AO)は、性能を向上させるために、収差源によって引き起こされる波面歪みを低減するための手段を提供する。ほとんどのAOシステムでは、図3に示されるように、波面補正デバイス(多くの場合、可変形鏡または液晶空間光変調器)が、波面に影響を及ぼす数個から数千個の個々にアドレス指定可能なアクチュエータまたはセル(画素)を含む。光学系に統合された波面補正デバイスによって、波面への望ましくない歪みが補正され得るか、または、より好ましい波面形状が生成される。補償光学は、望遠鏡観測のために動的な大気収差を補正するため、網膜撮像のために人間および動物の眼の中の収差を補正するため、顕微鏡撮像のために標本誘発収差を補正するため、レーザー材料加工において標本誘発収差を補正するため、見通し線光通信のために大気収差を補正するため、および波面補正が所望される他の用途に、適用されている。補償光学の恩恵は一般的に、観測または撮像用途での分解能および信号強度の向上、ビーム照射用途でのより厳密な合焦とより高いパワー密度、またはデータ伝送用途での通信レートの向上である。
非特許文献1がまず、地球ベースの望遠鏡による天体観測のための補償光学の概念を説明した。今までの補償光学系の大半は、図4(A)に示されるように、波面センサ410と、補償光学素子420と、波面センサからの入力を取り込み、補償光学素子を好ましい波面補正形状に駆動する制御信号を生成するフィードバック制御システム430とを含むシステムを用いた、非特許文献1において提案された基本的なAOフレームワークを使用している。波面センサは、シャックハルトマン、ピラミッド、または他の波面センシング設計であり得る。AOの代替である、より最近の実装は、波面センサを使用しないが、その代わりに、図4(B)に示すように、性能を向上させるために、補償光学素子460のための波面補正値を生成する処理の一部として最適化システム450で実行される最適化アルゴリズムへの入力として、画像センサ440によって得られた測定信号の品質についての情報を使用する。波面補正値がアプリオリに知られていない場合、そして専用の波面センサを用いずに、このようにAOを実装することは、一般にセンサレスAOと呼ばれる。AOの第3の変形例は、図4(C)に示すように、開ループAOと呼ばれる開ループ制御システム480によって補償光学素子470に適用される、記憶または計算された制御信号を使用する。
AO−SLO事例によって教示されるAOシステムの収差の課題
これまでに取り組まれて来たシステム収差管理の課題が、補償光学走査型レーザー検眼鏡(AO−SLO)の文脈において説明される。人間の眼の中の周辺角膜および水晶体が、大きな瞳孔径での分解能を劣化させる波面歪みをもたらすことが昔から知られている。非特許文献2は、線広がり分析を使用して2.4mmの瞳孔径が最高光学分解能を与えることを発見している。より最近の非特許文献3における同様の発見によれば、従来の(非AO)走査型レーザー検眼鏡(SLO)撮像において、2.46mmの瞳孔サイズが最良の横方向分解能を提供し、4.6mmの瞳孔サイズが最良の軸方向分解能を提供する。より大きな瞳孔サイズに関連づけられる収差は、開口数が増大したことによって期待される分解能の向上および関連づけられる回折限界の向上よりも大きな程度で、分解能を左右し、劣化させる。補償光学素子は、分解能および撮像性能を著しく向上させるために、より大きな瞳孔径を回折限界でまたは回折限界近くで使用することを可能にするよう、周辺角膜および水晶体の収差を補正し得る。
非特許文献4は、レーザートモグラフィ用スキャナにおける深度分解能の2倍の向上を達成するために、6mmの瞳孔径での人間の眼の中の収差を補正するために、開ループで可変形鏡を使用することを教示する。さらに、非特許文献4は、可変形鏡の能動面を眼の入射瞳に結像するためにリレー構成におけるレンズのアフォーカル4f配列を使用することを教示する。レンズの追加のアフォーカル4f配列が、ガルバノメータ(ガルボ)スキャナの走査瞳を可変形鏡の能動面に結像する。この基本的な配列と、眼とAO素子とスキャナとの間の複数の4fリレーの使用とが、レーザー走査型眼科用撮像を実行するほぼすべてのAOシステムの標準になっているが、瞳孔面および4fリレーにおいて使用される特定の光学コンポーネントの順序は異なり得る。追加のガルバノメータが2D走査を実行するために使用される場合、関連づけられた追加の4fリレーが、他のスキャナ、補償光学素子、および瞳孔面との適切な瞳孔共役のために使用される。4f瞳孔リレーの設計は、撮像システム自体における軸外収差が著しい波面歪みをもたらし得るがゆえに難解である。複数の4fリレーが直列にカスケード接続される場合、収差が複合するので、問題は悪化する。
非特許文献5および関連する特許文献1において説明されるように、初期の点走査補償光学撮像システムは、軸外構成で球面鏡を使用して4f瞳孔リレーを実行し、主に像面の性能を最適化することに集中した。しかしながら今日では、非特許文献5および特許文献1において使用された瞳孔リレーの面内構成は、撮像性能を劣化させるかなりの残留非点収差を生成することが知られている。
非特許文献6は、4f瞳孔リレーにおける球面鏡上の小さな軸外ビーム角によってさえ、軸外非点収差がシステムにおける複数の連続した鏡の反射とともに蓄積することを教示する。非特許文献6は、第2の瞳孔リレーが第1の瞳孔リレーと比較して面外に構築されるようにオプティクスを設計することで非点収差が部分的に解消され得ることを教示する。非特許文献7は、軸外収差をさらに研究し、面外リレー構成をも使用することにより網膜(撮像)面と瞳孔面の両方における撮像性能を最適化するための、関連づけられた理論を展開する。非特許文献8は、瞳孔リレーの収差理論をより高い次元に拡張し、非特許文献9において説明される改善された眼科用AO撮像システムの基礎として使用される。
実際、収差、特に非点収差、を最小化するだけでなく、撮像面および瞳孔面における収差の両方を同時に最小化することの重要性が、非特許文献10および非特許文献11において、つかみどころのない杆状体モザイクの画像を公開した2つの別個のグループによって論証された。非特許文献11はまた、像面および瞳孔面の両方における走査位置に依存した波面収差をもたらすことに加えて、ビームゆらぎもまた、球面鏡ベースの4f瞳孔リレーシステムにおいて生じることを教示する。ビームゆらぎは、面外リレー構成によって改善され得る。
10年以上にわたって、AOベースのSLO撮像は、相対的に大きな球面錐体モザイクを分解することしかできなかったシステムから大きく進歩して、網膜の中の非常に小さな杆状体モザイクを分解できるまでになった。収差の詳細および瞳孔リレーの品質に細心の注意を払うことが、いっそう改善された撮像性能の大きな要因であった。しかしながら、最適化されたこれらの新たなAO撮像システムの、結果として生じたサイズは、高度に最適化された設計において使用される球面鏡コンポーネントの長い焦点距離に起因して極めて大きい。たとえば、先に述べた最適化された設計において、アフォーカル望遠鏡は、長さ1.5メートルを超え(非特許文献10)、また、長さ0.4メートル(非特許文献11)である。これは、長い焦点距離の鏡が軸外収差を低減するために使用されるからである。球面鏡ベースのAOシステムの大きなサイズは、AOシステムにおいて、複数のアフォーカルリレーをカスケード接続することが必要であるために、いっそう大きくなる。アフォーカルリレーそれぞれ自体も、かなりの長さを有する。
正のパワーを供給された鏡面および反射面が、AO−SLOシステムにおいて最も一般的に使用されている。ガラス面またはレンズ面からの小さな後方反射は重要であり、網膜から戻る低いレベルの光の測定に干渉し得るためである。ガラス面の後方反射はまた、波面センサによる波面測定を劣化させる迷光アーチファクトおよびゴースト画像を生成し得る。これらの理由のために、前出の非特許文献7において説明されたように、高性能AO−SLOシステムでは、鏡がレンズよりも好まれ、ほぼ排他的に使用されている。
非特許文献12は、AO−SLOシステムにおいて使用される複数のアフォーカル瞳孔リレーの全レンズベースの実装が、より複雑な面外球面鏡ベースの構成に匹敵するレベルの収差を達成し得ることを教示する。アフォーカル瞳孔リレーの長さは、0.5メートルオーダーである。波面測定に干渉するガラス面からの後方反射の問題は、ガラス面から反射した光は拒絶されるが眼から反射した光は波面センサを通過するように、波面センサの前に偏光ビームスプリッタおよび偏波器を導入し、かつ、眼の前に四分の一波長板を導入することによって対処される。像の検出および形成に干渉するレンズ面およびガラス面からの後方反射の問題は対処されない。非特許文献12は、杆状体モザイクの結果を示すが、画像の品質は、前述した非特許文献10の全鏡ベースの面外構成によって得られた画像ほど良好ではないように見える。
これまでの議論は、AO−SLOにフォーカスされているが、それは、この技術が補償光学系のうち最もよく論証され入念に分析されたものの1つだからである。異なる撮像モダリティまたは材料加工能力を使用する他のAOシステムもまた、論証されており、同じ軸外収差およびサイズの課題だけでなく、短パルスレーザーが使用された場合のガラス素子における分散に関連づけられた追加の課題にも直面している。
補償光学による顕微鏡撮像
高性能の顕微鏡対物レンズは、良好に制御され規定された撮像条件下での撮像時に最適な性能を達成する。名目上の撮像条件に対する小さな摂動は、結果として、信号強度の著しい低減と分解能の劣化をもたらし得る。名目上の撮像条件に対する有害な摂動は、異なる厚みのカバーガラスを使用すること、水浸撮像シナリオにおいて油浸対物レンズを使用すること、組織または他の標本の中を撮像すること、標本容器を通して撮像すること、または他の源によって、起こり得る。非特許文献13は、試料および標本が誘発する収差を分析し、屈折率が一致しない媒質を通した深撮像から生じる収差を補正するために共焦点顕微鏡または二光子顕微鏡において可変形鏡を使用することの潜在性を教示する。
非特許文献14は、補償光学による二光子撮像の最初の実験的な応用例を説明する。補償光学補正器、強誘導体液晶空間光変調器(FLCSLM)が、工業用レーザー走査型顕微鏡における走査メカニズムの前に設けられる。
特許文献2は、顕微鏡の対物レンズと試料との間の距離を変化させる必要なく、光軸(深度)方向に焦点の走査を実行するための、波面変換素子を含むレーザー走査型顕微鏡を教示する。深度走査中に生じる収差は、光軸方向の走査に起因した集光性能の劣化を最小化する波面変換素子を使用することによって解消される。波面変換素子は、所定の条件が満たされるよう、対物レンズの瞳孔位置と共役な位置に、または対物レンズの瞳孔位置と共役な位置の近くに配置される。さらに、光軸に垂直な方向に集光される位置を走査する走査型光学系における波面変換素子と2つのガルバノメータミラーの各々、そしてさらに、対物レンズの瞳孔位置は、介在する光学系により、互いに共役な関係で、またはほぼ共役な関係で、すべてが配置される。走査型光学系は、互いに共役な関係の波面変換素子のより近くに波面変換素子およびガルバノメータミラーを配置するための瞳孔照射レンズを含む。
非特許文献15は、二光子撮像システムにおける軸外収差を補正するために可変形鏡を使用することを教示する。対物レンズは、軸外放物面鏡であり、二光子標本の強度が可変形鏡の形状を最適化するために使用される。
非特許文献16は、共焦点顕微鏡における補償光学の最初の論証を説明する。非特許文献16は、可変形鏡と対物レンズとの間にリレーレンズを使用することを教示する。
非特許文献17は、多光子走査型顕微鏡における波面補正器として可変形鏡を使用することを論証する。非特許文献17は、DMの面を顕微鏡の対物レンズの入射瞳に直接結像させるために4f望遠鏡システムを使用することを教示する。
特許文献3は、顕微鏡の観察ビーム経路および/または照明ビーム経路における1つ以上の波面変調器の使用を教示する。特許文献3は、チューブレンズと対物レンズとの間に波面変調器を配置することを教示する。そのような変調器は、物体空間における焦点の変位および整形と可能な収差の補正とを実行するように光の位相および/または振幅を変化させるよう適合し得る。本発明の実施形態は、対物レンズから物体までの距離を変化させずに異なる深度に合焦することを可能にする。可能な使用分野は、共焦点顕微鏡、レーザーアシスト顕微鏡、従来の光学顕微鏡、および分析顕微鏡を含む。
特許文献4(前出の特許文献3の継続特許)は、波面変調器を瞳孔面に配置する、器具への設計変更が特許請求されている、追加の請求項を含むが、それを行う方法およびメカニズムは説明されていない。
特許文献5は、補償光学顕微鏡アーキテクチャ内の波面検出装置を教示する。本発明の実施形態は、多光子顕微鏡および共焦点顕微鏡の例を用いて蛍光撮像について説明される。波面センサは、標本における目的の深度を隔離するために、コヒーレンスゲーティングと呼ばれる干渉技法を使用する。可変形鏡は、伝わる光パルスの所望の波面を形成するために所定の形状に適合する。試料の走査は、試料保持デバイスの移動によって得られる。
顕微鏡において、上述された複数の瞳孔リレーをカスケード接続する従来のアプローチを使用することに関する課題が認識されている。特許文献6は、収差を補正するために波面変換素子を使用する走査型光学顕微鏡を教示する。波面変換素子が瞳孔と共役な位置に配置されることが所望されることを教示する特許文献7を引用して、特許文献6は、次の問題ゆえに瞳孔リレーシステムの実現が困難であることを強調する。第一の問題は、さまざまな対物レンズが顕微鏡観察において使用され、瞳孔位置が各々の対物レンズで異なることである。したがって、複数の対物レンズが観察を実行するために次から次へと切り替えられる場合、対物レンズの瞳孔を常に波面変換素子と共役な関係に保つことは困難である。さらに、波面変換素子は、レーザー走査部材の位置、そしてまた対物レンズの瞳孔の位置と、共役な関係で配置される必要がある。したがって、少なくとも2つの瞳孔リレー光学系が要求される。したがって、装置は、好ましくないことに大きなサイズで複雑なものになる。
補償光学は、光学収差を補正すること以外の理由のために顕微鏡において使用されている。特許文献8は、励起ビーム経路に制御可能な外部空間収差を導入する収差素子を含む分厚い組織における向上したバックグラウンド拒絶を提供するシステムを教示する。関連づけられた方法は、外部収差なしの分厚い組織の二光子励起蛍光を収集し、励起ビーム経路に外部収差パターンを導入し、導入された外部収差パターンを有する分厚い組織の二光子励起蛍光を収集し、外部収差なしの分厚い組織の収集された標準的な二光子励起蛍光から外部収差を有する二光子励起蛍光を差し引くステップを備える。可変形鏡が、ビームスキャナにリレーされ、ビームスキャナが次に、対物レンズの背面開口にリレーされる。可変形鏡は、対物レンズの背面開口の共役面に設けられる。
補償光学によるOCT撮像
AO−SLOと同様に、補償光学は、補償光学OCT(AO−OCT)のための光コヒーレンストモグラフィ(OCT)に適用されている。
特許文献9は、撮像される標本を提供する工程と、補償光学を使用して標本に関連づけられた収差を測定および補正する工程と、光コヒーレンストモグラフィによって標本を撮像する工程とを備える光学撮像方法を教示する。
特許文献10は、臨床での使用しやすさおよび縮小のために、近視、遠視、および乱視といった大きな眼鏡収差を補正するAO−OCTシステムに挿入される、バダル視力測定装置および回転シリンダを使用することを教示する。AO−SLOによる実現と同様に、望遠鏡内の球面鏡が、スキャナによって引き起こされる収差およびビーム変位を低減するために、直交するように(面外で)回転させられる。これは、AO位置決め誤差を大幅に低減させ、AO性能を向上させ、患者の眼における高次元の収差補正を可能にする。
特許文献11は、AO−SLOまたはAO−OCTのために使用され得る物体追跡システムを教示する。
特許文献12は、測定がOCTによって行われるデータ収集システムであって、これらの測定の品質がビーム経路内に能動光学素子を配列することによって向上し、システムがまた波面センサを含む、データ収集システムを教示する。
特許文献13は、AO−SLOまたはAO−OCTを教示する。
特許文献14は、走査型レーザー検眼鏡(SLO)モードおよび光コヒーレンストモグラフィ(OCT)モードで動作することができる光学コンポーネントのシステムを含む多機能光学装置を教示する。複数の走査デバイスが、光学コンポーネントのシステムにおいて瞳孔と共役に設置される。システムは、1つ以上の光学補償オプティクスに沿った光学追跡を含み得る。
特許文献15は、複数の測定用ビームを有し補償オプティクスを使用するSLOまたはOCTを用いて撮像し得る発明を教示し、補償オプティクスは、複数のビームが表面を走査したときに発生する反射ビームまたは後方散乱ビームにおける波面収差を検出するための波面収差検出器と、波面収差に基づいて複数のビームの各々における波面収差を補正するための単一の波面収差補正器とを含み、複数のビームは、異なる入射角で単一の波面収差補正器に入り、互いに重なり合う。一実施形態において、波面収差補正器は、複数のビームが互いに交差する単一の位置と光学的に共役な、リレーオプティクスの出射瞳が収集される位置に、配設される。
特許文献16は、可変形鏡および波面センサを使用するAO−SLOまたはAO−OCT撮像装置を教示する。瞳孔リレーオプティクスが使用され、特許文献16は、角膜、XYスキャナ、および波面センサが互いと光学的にほぼ共役になるようにリレーレンズが使用されることを教示する。
補償光学による材料加工および物体操作
非特許文献18および非特許文献19を含むさまざまな文献が、材料加工用途でのビーム整形のために補償光学を使用することを説明している。
補償光学は、材料加工において標本誘発収差を補正するために使用されている。非特許文献20は、3D光学メモリデバイスへの書き込み時に標本誘発収差を補償するためにSLMを使用することを教示する。非特許文献21は、レーザー加工の品質を向上するためにレーザー加工システムにおいてSLMを使用することを教示する。非特許文献22は、プラズマ発光ダイレクトレーザー書き込みシステムにおいてSLMを使用することを教示する。
補償光学は、光学操作のために使用されている。小さな物体を操作する1つの方法は、往々にして光ピンセットと呼ばれる、光トラッピングを使用することである。光ピンセットを使用するほとんどの方法は、非特許文献23、非特許文献24、および非特許文献25において教示されるようにガルボベースの走査メカニズムを含まない。
より進歩した光トラッピング機構は、非特許文献26のように、走査能力および/またはビームスプリッティング能力を含む。非特許文献26では、SLMは、対物レンズの近くに配置され、明らかに開口と共役ではない。SLMは、ガルボがビームの粗いステアリングを行うことができ、SLMがビームスプリッティングを実行して、複数のトラップおよびビームの細かいステアリングを生成することができるように、複数のトラップが形成されることを可能にする。装置において使用される可変形鏡は、トラッピングされた物体上の振動性けん引力を最適化することによって較正される。
図1は、本発明の実施形態を使用し得る多くの例示的な光学系および撮像モダリティのうちのいくつかを示す図の集合である。
図2は、本発明の実施形態を使用して補正され得る多くの可能な収差源のうちのいくつかを示す図の集合である。
図3は、本発明の実施形態において使用され得る多くの可能な補償光学技術のうちのいくつかを示す図の集合である。
図4は、補償光学制御方法を示すブロック図の集合である。
図5は、光学ビームステアリングコンポーネントおよび補償光学コンポーネントの相対的な順序がどのように変えられ得るかを示す追加の図を伴う、光学系において使用される瞳孔リレーの実現を示す図の集合である。
図6は、2つの別個の一軸走査鏡または単一の二軸走査鏡を有する瞳孔リレーシステムを示す図の集合である。
図7は、検出器が異なる位置に設けられた本発明の実施形態の可能なサブシステムレイアウトを示すブロック図の集合である。
図8は、本発明の実施形態において使用される発光源の可能な特性を示す図の集合である。
図9は、本発明の実施形態のために所望される、回転鏡が固定ビーム強度平面の位置をどのようにリレーまたは制御し得るかを示す図のセットである。
図10は、回転鏡の2つのペアが2つの方向に固定ビーム強度平面の位置をリレーまたは制御するためにどのようにアラインメントされ得るかを示す図である。
図11は、x軸およびy軸から見た、固定ビーム強度平面の位置をリレーまたは制御し得る2方向のビームステアリングシステムの図を示す図のペアである。
図12は、高速ステアリングミラー(FSM)、回転鏡、および並進鏡で構成されたシステムを含む、固定ビーム強度平面の位置をリレーまたは制御し得るシステムの別の可能な実現を示す図の集合である。
図13は、ビーム経路が示され、入力および出力ビームが示された、本発明のビーム照射モジュールの例示的な実現を示す図の集合である。
図14は、本発明の実施形態のビーム照射モジュールの例示的な実現における素子およびビーム経路を示す立体模型描画のセットである。
図15は、本発明の実施形態のビーム照射モジュールにおけるビームステアリングミラーの配置および向きを示す図の集合である。
図16は、本発明の実施形態のコントローラを示すブロック図のセットである。
図17は、本発明の実施形態の走査特性を示すグラフのセットである。
図18は、本発明の実施形態の例示的な走査パターンおよび走査軌跡を示すグラフのセットである。
図19は、レーザー走査型顕微鏡に統合されたビーム照射モジュールを示す本発明の実施形態のシミュレーションのZEMAXレイトレースを示す図である。
図20は、本発明のプロトタイプの実施形態のためのレンズの規定を示す図の集合である。
図21は、本発明の実施形態のプロトタイプを示す写真の集合である。
図22は、補償光学素子の最適化を示す本発明の実施形態を動作させるソフトウェアプログラムのスクリーンキャプチャである。
図23は、最適化された可変形鏡画像における信号強度の改善および分解能の改善を示す、最適化された平らな可変形鏡によって得られた標本の画像品質を示す、本発明の実施形態のプロトタイプによって得られた画像のペアである。
図24は、本発明の実施形態のOCTの実現を示す図のセットである。
図25は、OCT撮像の原理および本発明の実施形態の光路長の変化を示す図およびグラフのセットである。
図26は、OCTのために使用された場合の本発明の実施形態の光路長の変化の影響を示すグラフのセットである。
図27は、人間の眼の光学シミュレーションを示す図である。
図28は、補償光学素子が人間の眼の瞳孔と共役な、補償光学撮像システムの一部を示す図のセットである。
図29は、補償光学素子が人間の眼の中の瞳孔面外に設けられた、補償光学撮像システムの一部を示す図のセットである。
図30は、補償光学素子が人間の眼の中の瞳孔面内に設けられたシステムと瞳孔面外に設けられたシステムとにおいて光学レイアウトおよび撮像性能を比較した図およびグラフのセットである。
図31は、顕微鏡システムにおいて、補償光学素子が瞳孔面内に設けられた顕微鏡撮像システムと瞳孔面外に設けられた顕微鏡撮像システムとを比較する図およびグラフのセットである。
図32は、ビーム照射モジュールに対する補償光学素子が別の順序である本発明の実施形態の可能なシステムレイアウトを示すブロック図の集合である。
図33は、どのように標本伝達オプティクスにおける光学素子の調節が対物レンズの運動を適応させながら対物レンズの瞳孔と補償光学素子との適切な共役を維持し得るかを示す図である。
図34は、本発明の実施形態において組み合わせられ得る補償光学技術の多くの異なる組み合わせのうちのいくつかを示す図の集合である。
図35は、器具のアラインメントを補助するために本発明の実施形態において使用され得るビームアライメントモジュールの立体模型描画である。
図36は、本発明の実施形態の補償光学制御アルゴリズムを示すブロック図のセットである。
図37は、低減された基底系による補償光学制御を示すスクリーンキャプチャの画像である。
図38は、本発明の実施形態の、ビーム切り替え、モジュラー補償光学ユニット、およびモジュラー補償光学ユニットの複数のビーム入口ポートおよび出口ポートを示す図の集合である。
本発明の原理による例示的な実施形態の説明は、添付図面を参照して読まれるように意図されており、添付図面は、記載される説明全体の一部であるとみなされる。本明細書において開示される発明の実施形態の説明において、方向または向きへの言及はいずれも、単に説明をしやすくするためのものであり、本発明の範囲を限定することを意図したものではない。「下方の」、「上方の」、「水平な」、「垂直な」、「上部の」、「下部の」、「上の」、「下の」、「頂部」、および「底部」といった相対的な用語、ならびにそれらの派生語(たとえば、「水平に」、「下に」、「上に」、等)は、そのときに説明されている向き、または議論されている図の中に示されている向きについてのものと解釈されるべきである。これらの相対的な用語は、説明をしやすくするためのものにすぎず、明示的に示されない限り、装置が特定の向きで構築されるかまたは動作させられるということではない。「取り付けられた」、「装着された」、「接続された」、「結合された」、「相互接続された」といった用語、およびこれらと同等の用語は、そうでないと明確に説明されない限り、構造が直接的に、または介在する構造を通して間接的に固定されるまたは取り付けられる関係、ならびに、可動または固定状態で取り付けられるまたは関連していることを言う。さらに、本発明の特徴および恩恵は、例示された実施形態を参照して説明される。したがって、本発明は、単独でまたは特徴の他の組み合わせによって存在し得るいくつかの可能な非限定的組み合わせを示した例示的な実施形態に限定されるべきではないのは明らかである。本発明の範囲は、本明細書に添付される特許請求の範囲によって定義される。
本開示は、ベストモードまたは現在検討されている発明を実現するモードを説明する。この説明は、限定の意味で理解されるように意図されたものではない。本発明の利点および構成を当業者に助言するために添付図面を参照して説明することのみを目的とするものである。。図面のさまざまな図において、同一の参照番号は、同一または同様のパーツを指す。
補償光学の議論
補償光学(AO)は、光学収差の補正によって、光学撮像、材料の光学加工、光学形状測定、光学検査、および、システム、標本、または外部で誘発された光学収差が光学性能を劣化させる他の光学キャラクタリゼーションの性能を向上させることを可能にする。補償光学は当初、大気によってもたらされた収差を補償するために望遠鏡による天体撮像のために提案された。閉ループ制御システムにおいて、(往々にして波面補正器と呼ばれる)補償光学素子と波面センサとを使用することで、大気中の収差を測定し、補償光学素子上の補正形状をリアルタイムに生成して収差のレベルを低減し、画像品質を向上させることが可能である。画像品質は一般的に、信号強度および分解能を改善する。補償光学はまた、波面を優先的に整形または補正するために、レーザーキャビティ、レーザービーム整形、生物医学的撮像、顕微鏡検査、および材料加工において使用されている。環境の影響、熱的効果、生体内作用、標本ホルダーの材料および特性、標本自体、および他の収差源が、しばしば光学系または光学器具の性能を劣化させる。補償光学素子を光学系または光学器具に追加することによって、多くの場合、収差が補正され、性能を向上させることができる。
天体撮像において、収差源と光学的に共役な補償光学素子を設けることが望まれる、ということが一般的に理解される。収差源は、一般的には大気の乱流層である。(異なる補償光学素子が異なる乱流大気層と共役な)多層共役構成における複数の補償光学素子を使用することで、収差補正を改善でき、アイソプラナティックパッチのサイズの改善に関連する概念である補償光学補正の特定のセットによって即時に補正可能であるよりも広い視野の達成とが可能である。。アイソプラナティックパッチの定義は文献において異なるが、アイソプラナティックパッチによって、被写界位置の変化による波面の類似性が説明される。また、「理想的な」単数の波面補正器または複数の波面補正器によって収差を補正することに関し最もよく説明される。大きなアイソプラナティックパッチは、単一の理想的な補償光学補正または異なる補償光学素子での補正の単一のセットが広い視野にわたって波面を補正できるように、波面が被写界位置とともにゆっくりと変化することを暗示する。小さなアイソプラナティックパッチは、単一の補償光学補正または異なる補償光学素子での補正の単一のセットが狭い視野にわたって波面を補正することしかできないように、波面が被写界位置とともに急速に変化することを暗示する。しかしながら、アイソプラナティックパッチは、補償光学素子が、十分な空間周波数、ストローク、または時間的な動的性能とともに波面補正を生成する能力を有し得る場合または有し得ない場合に、補償光学系が実際にどれほど良好に機能するかを示さない。
良好に補正された(低収差の)対物レンズによる高開口数レーザー走査において、最も初期の文献は、対物レンズの瞳孔面と共役な面に補償光学素子を設けることを教示している。眼科用撮像において、補償光学素子は、眼の瞳孔と共役な面に最もよく設けられる。図5は、例示的な瞳孔リレー構成を示す。往々にして4f望遠鏡と呼ばれるアフォーカル4fリレー505は、瞳孔面と補償光学素子との間の共役を達成するための最も一般的な方法である。4fリレーは、レンズ510、軸外放物面鏡515、球面鏡520、レンズと鏡との組み合わせ、または他のオプティクスを使用し得る。4fリレーにより、ビームに対する波面摂動がしばしば、補償光学素子525から対物レンズ530の瞳孔面530へとリレーされる。4fリレーにより、相対的な光強度分布は、所望されるように2つの平面間で保たれる。本特許出願の議論の目的のために、4fリレーは、構成コンポーネントの焦点距離に依存して、ビーム直径を保つことができ、ビーム直径を拡大することもでき、またはビーム直径を縮小することもできる。補償光学走査システムはしばしば、補償光学補正に加えてビームステアリングを必要とする。4f望遠鏡で構成される追加の瞳孔リレーがしばしば、補償光学素子525からステアリングミラー540へと瞳孔をリレーするために補償光学走査システムに含まれる。ステアリングミラーが2つの自由度を有する場合、高速ステアリングミラー(FSM)によるケースのごとく、両方の回転軸は、1つの追加の4fリレーを使用する瞳孔面と一致し得る。しかしながら、FSMミラーはしばしば一軸ガルバノメータ駆動型ミラーほど高速ではない。結果的に、ほとんどのAOビーム走査撮像システムは、2つの別個のガルボ駆動型ミラーを使用する。x走査およびy走査を達成するために2つの別個のガルボ駆動型ミラーをごく近接させて配置することが、ある距離だけ回転軸が分離される、という結果を生じることがよく知られている。この距離は小さいものであり得るが、両方の軸を同一の共役瞳孔面内に精確に設けることが不可能であることを意味する。波面への小さな摂動が性能を劣化させ得る補償光学走査システムでは、2つの別個のガルボ駆動型ミラー540と550との間に追加の瞳孔リレー545を含むことが一般的である。実際、今までに論証された最も成功した補償光学走査システムは、4fリレーによって分離された別個のガルボ駆動型ミラーを使用する。x方向走査用ガルボミラー550とy方向走査用ガルボミラー540との間の4fリレーは、ビームの中心を走査鏡の各々と適切にアラインメントさせる。走査鏡540の1つと補償光学素子525との間の4fリレーは、補償光学素子での適切なビームステアリングを達成する。補償光学素子およびガルボミラーの順序は、図5(E)および図5(F)に示されるように変えることができる。4fリレーは、レンズ、鏡、またはレンズと鏡との組み合わせで構築され得る。良好な(回折限界の)軸外性能を有する単一の4fリレーを設計することが可能であり得る一方で、一般的に4fリレーは、ほとんどが正のパワーを有する光学素子で構成されるので、収差のバランスを完全にとることは困難または不可能である。複数の4fリレーをカスケード接続することは、正のパワーを供給された素子の収差要因が複合するという結果を生じる。結果として、一般的に実現されるように直列につながれた複数の4fリレーによって良好な(回折限界の)性能を達成することは困難である。結果、ほとんどの補償光学系は、大きなサイズという欠点を伴いながら、収差を低減するために長い作動距離のレンズまたはミラーを使用する。軸外球面鏡を使用する場合に示されたように、収差の複合を低減するために、不便な面外光学構成を使用することによって、さらなる改善が得られている。4fリレーを直列につなぐことは、補償光学素子を対物レンズの瞳孔面と共役させ、ビームを適切にステアリングするための一般的な方法である。しかしながら、4fリレーを直列につなぐと、レンズまたは鏡を使用する場合には大きなサイズと軸外収差についての問題が生じ、レンズを使用する場合には色収差および分散についての問題が生じる。ガラス素子の厚みまたは数の増加に伴って、分散が増加する。パルスは時間的に分散して広がるため、短パルスレーザーを使用する場合に分散が問題となる。本発明の実施形態は、従来技術の設計のこれらの著しい欠点に対処する。本発明の実施形態は、光学性能および撮像性能の向上のために、分散、色収差、および軸外収差が皆無かそれに近い、非常にコンパクトでフレキシブルな補償光学走査システムを可能にする。
本発明の実施形態の用途
本発明の実施形態は、補償光学走査システムである。走査光学系では、光が標本にわたって走査される。走査光学系は、撮像、加工、操作、またはキャラクタリゼーション用途の広い範囲に使用され得る。
図1は、本発明の実施形態によって使用され得るいくつかの撮像モダリティおよび撮像システムの例を示す。図示されていない他の撮像モダリティおよび撮像システムもまた本発明の実施形態によって使用され得ることが理解されるだろう。一般的な用途は、標本の特性について何かしらを学習する目的または標本の特性を測定する目的のために、標本にわたって光を走査する。たとえば、一実施形態において、補償光学走査システムは、標本の撮像を実行する。撮像は、共焦点、多光子、第二高調波、反射光、蛍光、散乱光、または走査される光のビームによって標本を撮像する任意の他の方法によって実行され得る。撮像は、動的なプロセスを撮像する時間に応じて、一次元(1D)、二次元(2D)、三次元(3D)、または1D、2D、または3Dであり得る。撮像は、波長選択的であり、蛍光撮像においてしばしば実行されるように、多色または多チャンネルであり得る。撮像のより一般的な形態は、標本についての分光情報を得ようとするものである。一実施形態において、補償光学走査システムは、標本の分光検査を実行する。しばしば、走査光学系は、標本についての材料固有の情報を得るために使用される。標本についての材料固有の情報とは、一般的に蛍光撮像による生体細胞のタイプ、または、一般的に光コヒーレンストモグラフィ(OCT)による標本の散乱特性などである。他の用途は、標本の形状またはプロファイルに関してのみである。一実施形態において、補償光学走査システムは、形状測定を実行する。一般的に、標本の撮像またはキャラクタリゼーションは、非破壊的で標本自体を変化させないことが所望される。しかしながら、しばしば、退色、加熱、または標本を変化させる他の現象が、撮像の副生成物として生じる。他の用途は、レーザー加工、切除、刺激、加熱、または光学操作におけるように、走査されたビームを用いて、特に標本を変更しようとし、または標本に影響を及ぼそうとする。一実施形態において、補償光学走査システムは、標本の加工を実行する。別の実施形態において、補償光学走査システムは、標本の操作を実行する。別の実施形態において、補償光学走査システムは、標本のプロファイリングを実行する。別の実施形態において、補償光学走査システムは、標本のうちのある領域の刺激を実行する。別の実施形態において、補償光学走査システムは、標本のうちのある領域の加熱を実行する。
図1(A)は、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)システムのための光学レイアウトを示す。一実施形態において、補償光学走査撮像システムは、光コヒーレンストモグラフィ(OCT)を実行する。OCTを実行する場合、本発明の実施形態は、干渉計110と、標本経路115と、標本145から干渉OCT信号を得るための参照経路120とをさらに備え得る。スキャナ135および対物レンズ140は、合焦した光のスポットが標本145にわたって走査されることを可能にする。OCTは、時間ドメイン、スペクトル/フーリエドメイン、または往々にして光学周波数ドメイン撮像(OFDI)と呼ばれるスイープ源/フーリエドメインを含む、さまざまな方法を使用して実行され得る。光コヒーレンス顕微鏡検査(OCM)と呼ばれるOCTもまた、高開口数対物レンズ150を使用して実行され得る。情報はA走査の相対的に長い深度範囲に沿って得られることが多いので、OCTでは低開口数対物レンズがしばしば被写界の十分な深度を提供するために使用される。高開口数対低開口数の定義はいくらか主観的である。本願の目的のために、高開口数は、工業用顕微鏡対物レンズにおいて一般的に見出される開口数のことを言う。図1(B)は、OCT干渉計に接続されるであろうOCMシステムの標本経路のための光学レイアウトを示す。コリメートされた光が、スキャナ155へ、そして走査レンズ160およびチューブレンズ165を通って、対物レンズ150へと向けられる。一実施形態において、補償光学走査システムは、光コヒーレンス顕微鏡検査(OCM)を実行する。OCM撮像を実行する場合、本発明の実施形態は、干渉計と、標本経路と、干渉OCT/OCM信号を得るための参照経路と、精細な分解能の標本データを得るための高開口数対物レンズ150とをさらに備え得る。OCTの1つの一般的な用途は、図1(C)に示されるように、眼170の撮像である。一実施形態において、補償光学走査システムは、眼170のOCTを実行する。網膜は、OCTによって撮像される眼の最も一般的な部位であるが、前眼部、水晶体、および角膜の撮像もまた実行され得る。
別の実施形態において、補償光学走査システムは、共焦点撮像を実行する。共焦点撮像システムの例が図1(D)に示される。共焦点撮像を実行する場合、補償光学走査システムは、深度セクショニングされた蛍光撮像または反射撮像を達成するために、ビームスプリッタまたはダイクロイックミラー175、検出器180、および共焦点ピンホール185をさらに備え得る。往々にしてシングルモードファイバーまたはマルチモードファイバーの端部が共焦点ピンホールとして使用される。走査型レーザー検眼鏡(SLO)は、眼190を撮像するのに有用な共焦点撮像の変形例である。SLO撮像システムの例が図1(E)に示される。一実施形態において、補償光学走査システムは、SLOシステムである。本発明の実施形態はまた、非線形撮像モダリティによって使用され得る。多光子撮像システム/第二高調波撮像システムの例が図1(F)に示される。一実施形態において、補償光学走査システムは、二光子撮像を実行する。二光子撮像を実行する場合、撮像システムは、光路内にダイクロイックミラー194をさらに備えてもよく、検出器735が、弾道を測定し、標本からの散乱蛍光または発光を逓倍する。三光子撮像および他の多光子撮像もまた同様に実行できる。一実施形態において、補償光学走査システムは、多光子撮像を実行する。多光子撮像を実行する場合、補償光学撮像システムは、光路内にダイクロイックミラー194をさらに備えてもよく、検出器197が、弾道を測定し、標本からの散乱蛍光または発光を逓倍する。多くの多光子撮像システムはまた、第二高調波撮像のために使用され得る。一実施形態において、補償光学走査システムは、第二高調波撮像を実行する。別の実施形態では、補償光学走査システムは、蛍光撮像を実行する。より一般的には、本発明の実施形態は、光ビームが標本上または標本内を走査し、標本についての情報が標本から集光することによって得られる、広範囲の用途のために使用され得る。蛍光撮像および非線形撮像に加えて、より標準的な反射撮像および透過撮像が実行され得る。一実施形態において、補償光学走査システムは、反射撮像を実行する。別の実施形態において、補償光学走査システムは、透過撮像を実行する。ほとんどの撮像用途は、単一のスペクトル検出チャンネルまたは標本の特性を区別するのに十分な少数のスペクトルチャンネルを使用する。他の用途は、分光検査を使用して標本の領域をスペクトル分解しようとする。一実施形態において、補償光学走査システムは、分光検査を実行する。分光検査を実行する場合、補償光学走査システムは、標本からの光のスペクトル成分を分解するための分光計をさらに備え得る。
性能の向上を達成するために補償光学から恩恵を受け得る多くのレーザー走査用途が存在する。したがって、本発明の実施形態は、生物学的、医学的、産業、および研究の分野に関連する広範囲の標本に使用され得る。いくつかの例示的な標本は、生体試料、動物、動物の一部、人間、人間の一部、植物、植物の一部、組織、生きている組織、保存された組織、着色された組織、生体器官、生検試料、眼、眼の一部、脳、脳の一部、または皮膚を含む。他の例示的な標本は、機械コンポーネント、電気コンポーネント、光学コンポーネント、製造されたコンポーネント、コンポーネントのアセンブリ、材料試料、半導体コンポーネント、半導体材料試料、金属コンポーネント、ガラスコンポーネント、プラスチックコンポーネント、非生物有機試料、水晶試料、または鉱物試料を含む。より一般的には、本発明の実施形態によって使用され得る標本は、標本の特性によって特徴づけられるだろう。標本は、寸法特性に関して特徴づけられ得る。標本は、機械特性に関して特徴づけられ得る。標本は、光学特性に関して特徴づけられ得る。標本は、蛍光特性に関して特徴づけられ得る。標本は、反射特性に関して特徴づけられ得る。標本は、透過特性に関して特徴づけられ得る。標本は、屈折率に関して特徴づけられ得る。標本は、散乱特性に関して特徴づけられ得る。標本は、分散特性に関して特徴づけられ得る。標本は、分光特性に関して特徴づけられ得る。標本は、偏光特性に関して特徴づけられ得る。標本は、熱特性に関して特徴づけられ得る。
本発明の実施形態における収差源は、図2に示されるように、補償光学走査システムの内部または補償光学走査システムの外部の源に由来し得る。一実施形態において、収差は、図2(A)に示されるように、標本であるコンポーネント210の周りのパッケージ205に由来する。収差は、図2(B)に示されるように、標本220の上部のガラス窓またはカバーガラス215から生じ得る。収差は、図2(C)に示されるように、標本自体または試料自体225に由来し得る。収差は、図2(D)に示されるように、角膜235または水晶体240を含む眼230の一部に由来し得る。出現流体、ガラスのカバーガラス、または標本自体の間の境界面といった屈折率の不一致を伴う表面を通して集束光を合焦させることは、球面収差をもたらす。標本の不均質性が他の収差をもたらし得る。かくして、収差は、図2(E)および図2(F)に示されるように深度とともに、または、図2の(G)に示されるように横方向位置とともに、変化し得る。収差は、波面への歪みを引き起こす。本発明の一実施形態は、標本における収差を補償するために、補償光学素子を使用する。本発明の一実施形態は、パッケージ、カバーガラス、窓、チューブ、容器であり得る標本ホルダー、または、任意の他の材料、物体、流体、または標本および撮像システムと接触する面または標本と撮像システムとの間の面からの収差を補償するために、補償光学素子を使用する。撮像システム自体が、残留システム収差を有し得る。本発明の一実施形態は、撮像システム内の残留収差を補償するために補償光学素子を使用する。
概説
本発明の実施形態は、補償光学走査システムである。本発明の実施形態の模式図が図7に示される。本発明の一実施形態は、光を発生させるための発光源705であって、光が補償光学走査システムを通って標本710に向けられる、発光源705と、1つ以上の補償光学素子715であって、波面に影響を及ぼすか、強度に影響を及ぼすか、または光の波面と強度の両方に影響を及ぼす、補償光学素子715と、ビーム照射モジュール720であって、4つ以上の運動軸によって動作し、補償光学素子にまたは補償光学素子付近にビーム旋回軸点を作成することまたは適応させることによって補償光学素子715を優先的にインターフェースするように光の角度および位置を制御しながら、光を標本710にわたって走査する、ビーム照射モジュール720と、ビーム照射モジュール720における軸の運動軌跡を制御するためのコントローラ725と、標本伝達オプティクス730であって、光を適切に調整して標本710に向ける、標本伝達オプティクス730と、1つ以上の検出器735であって、標本710からの光を測定する、検出器735とを備える。
図7(A)は、検出器735が、標本伝達オプティクス730の後に設けられるか、または標本伝達オプティクス730とは別個である、例示的な実施形態を示す。検出器735が標本伝達オプティクス730の後に設けられる実施形態の一例は、薄い標本を撮像する場合、または、検出器が標本の周りに配列されるが、標本伝達オプティクス730と光路を共有しない場合に、往々にして使用されるように、検出器735が標本710から直接光を受け取る多光子撮像システムであろう。標本710の後の図7(A)における検出器735の位置付けは、光の経路を示すにすぎず、検出器735が実際に標本710および標本伝達オプティクス730に対し空間的に設けられる場所を示すものではない。他の実施形態および撮像モダリティもまた、検出器735が標本伝達オプティクス730と光路を共有しない構成を使用し得る。図7(B)は、検出器735が標本伝達オプティクス730の少なくとも一部から光を受け取る例示的な実施形態を示す。検出器735が標本伝達オプティクス730の少なくとも一部から光を受け取る例示的な実施形態は、顕微鏡の対物レンズ、患者インターフェースオプティクス、走査レンズ、または他の標本伝達オプティクス730を通して集光される、多光子撮像である。図7(C)は、検出器735が、ことによるとビーム照射モジュール720と検出器735との間の追加のコンポーネントによって、ビーム照射モジュール720から光を受け取る、例示的な実施形態を示す。検出器735がビーム照射モジュールから光を受け取る例示的な実施形態は、OCT、共焦点撮像、プロファイリング、または分光検査のある特定の構成であり得る。図示されていないが、検出器735は他の位置にあってもよい。検出器735は、光路に沿ったいずれの場所からでも光を受け取るかまたはピックオフするように設けることができ、または、光学的な光伝達システムとは別個に設けらることもできる。
図7に示すように、本発明の実施形態は、発光源705を含む。補償光学走査システムにおいて使用される発光源のタイプは、走査用途と両立するように選択される。撮像モダリティに依存して、発光源705は、ダイオード、レーザー、パルスレーザー、チューナブルレーザー、波長スイープレーザー、フェムトセカンドレーザー、ファイバーレーザー、垂直共振器面発光レーザー(VCSEL)、波長チューナブルVCSEL、プラズマ光源、ハロゲンランプ、水銀灯、白熱灯、またはスーパーコンティニウム光源によって、光を発生させ得る。本発明の実施形態において、他の発光源705が、可能であり、含まれる。
発光源705からの光伝達の要件は、用途に依存する。可能な発光源特性が図8に示される。たとえば、多光子撮像システムが発光源からのコリメートされたビームを優先的に使用し得る一方で、共焦点撮像システムまたはOCTシステムは、シングルモードファイバーまたはマルチモードファイバーから伝達された光を優先的に使用し得る。本発明は、発光源が点光源または狭面積エミッタからの光をコリメートするためのオプティクスを含む実施形態を含む。多くのケースにおいて、発光源からの光はコリメートされる。コリメートされた光または際立ってコリメートされた光は、数ある他の光源の中でも特に、チタンサファイアレーザーから発せられる。コリメートされた光を発する発光源805が図8(A)に示される。本発明の一実施形態において、発光源805からの光はコリメートされる。発光源から出てレンズを通過する、点光源から発せられた光は、集束ビームを形成し得る。本発明の別の実施形態では、図8(B)に示されるように、発光源810からの光は集束している。図8(C)に示されるように、点光源または狭面積エミッタからの光は、発散ビームを形成し得る。本発明の一実施形態において、発光源815からの光は発散している。OCTおよび共焦点撮像といった多くの用途のために、図8(D)に示されるように光が光ファイバーケーブルによって伝達されることが所望される。本発明の一実施形態において、発光源820からの光は、ファイバー結合される。さらに、OCTおよび共焦点撮像のいくつかの実現のケースのように、光ファイバーケーブル825がシングルモードであることが往々にして所望される。本発明の一実施形態において、発光源からの光は、シングルモードファイバーにファイバー結合される。発光源からの光は、非常に多くの形状と光強度分布を有し得、そのすべてが本発明の実施形態に含まれる。レーザー源または点光源からの光は、図8(E)に示されるように際立って円形のビーム横断面830を有することが一般的である。本発明の一実施形態において、発光源からの光は、際立って円形の横断面830を有するビームである。レーザー源または他の源からの光はしばしば、図8(F)に示されるように、一般的に光分布がガウス分布である。本発明の一実施形態において、発光源からの光は、光分布が際立ってガウス分布であるビームである。異なる用途は、発光源についての異なる性能仕様を要求する。本発明の実施形態は、発光源705が広帯域スペクトル成分を有する光を発生させ、(約2nmを超える)波長範囲にわたって発光する実施を含む。広帯域光源を使用することが多い用途は、OCT、多光子顕微鏡検査、共焦点顕微鏡検査、(アーク灯、白熱灯、またはLEDを使用する)蛍光顕微鏡検査、ある特定の分光検査の実施、および他のものを含む。広帯域光源は、スイープ光源、または、連続広帯域発光またはパルス広帯域発光を発する光源を含む。本発明の実施形態は、発光源705が狭帯域スペクトル成分を有する光を発生させ、(約2nm未満の)狭い波長範囲にわたって発光する実施を含む。狭帯域光源を使用することが多い用途は、(レーザー光源を使用する)共焦点撮像および蛍光撮像、ある特定のタイプの形状測定、ある特定のタイプの分光検査、および他のものである。
本発明の実施形態は、言い換えると波面補正器とも呼ばれる、補償光学素子を含む。本発明の実施形態において使用可能な多くの補償光学素子が存在し、その一部が図3に示される。本発明の実施形態は、可変形鏡305、310、315、320、325、330、および335、液晶空間光変調器340および345、液晶デバイス340および345、連続フェースシートを有する可変形鏡305、315、320、325、330、335、セグメント化された可変形鏡310、空間光変調器340および345、または、波面に影響を及ぼし得るか、強度に影響を及ぼし得るか、または光の波面と強度の両方に影響を及ぼし得る、他の能動アクチュエータおよびマルチアクチュエータまたはチャンネル光学素子である、補償光学素子を使用し得る。補償光学素子におけるアクチュエータの配列は、補償光学素子の設計に依存して異なり得る。一般的なアクチュエータレイアウトは、グリッドパターン、ハニカムパターン、同心円、放射状にアラインメントさせられたアクチュエータ、円形または弧形セグメントアクチュエータレイアウト、および他のものである。本発明の一実施形態において、補償光学素子715は、可変形鏡である。本発明の一実施形態において、補償光学素子715は、液晶空間光変調器である。
多くの補償光学系は、光学系におけるスキャナの場所に対するビーム旋回軸の場所の要件を適切に管理するために、図5に示された瞳孔リレーを使用する。従来の瞳孔リレーは、瞳孔の被写界の真のリレーを実行し、ステアリングミラーと補償光学素子と標本伝達オプティクスまたは標本自体との間の光学的リンケージとして、ほとんどの既存の補償光学系で使用される。本発明の好ましい実施形態は、異なるアプローチを使用する。レーザーベースの撮像システムにおけるビーム直径は0.5mm〜数cmオーダーであり、ビーム品質は一般的に極めて良好であるので、ビームの発散、および器具の経路長にわたる波面および強度分布の関連づけられた変化は、ごくわずかである。実際、多くの既存の二光子顕微鏡は、レーザー源から出て顕微鏡に入るコリメートされたビームが、実験室または設備現場に利用可能なレイアウトおよびスペースにとって何が好都合であるかに基づいて、設備毎に異なる距離を横断するように、工業用に利用可能な二光子顕微鏡(たとえば、Prairie TechnologiesのUltima(登録商標))とつながれた、工業用に利用可能なレーザー源(たとえば、CoherentのChameleon(登録商標))を使用して構築される。ビームは、品質を維持し、数cm〜数メートルのコリメートされた伝播にわたって際立って変化しないので、距離および平面の入念な制御は不要である。すなわち、高品質のレーザービームが、顕微鏡設備スケール(数cm〜数メートル)の距離にわたって本質的に固定された(変化しない)強度および波面とともに伝播する。この点を考慮して、図6に示されるように、1つのステアリングミラー605の瞳孔面が別のステアリングミラー610の瞳孔面に結像するように瞳孔リレー(アフォーカル4f望遠鏡)が使用される、標準的なAO構成に立ち戻ることが役立つ。瞳孔リレー(アフォーカル4f望遠鏡)615の第1の効果は、ビームがすべての入出ビーム角について常に鏡の中心に向けられるように、鏡面620に仮想旋回軸点を作成することである。瞳孔リレーの第2の効果は、光場を標本化し、第1のステアリングミラーにおける1つの瞳孔面605から第2のステアリングミラーにおける別の瞳孔面610へと光場をリレーすることである。このように、光学波面および強度分布は、たとえ波面が平らでなく、強度分布が複雑であっても、第1の瞳孔面605から第2の瞳孔面610へとリレーされる。走査型補償光学系のために、仮想旋回軸点を作成する第1の効果は必要である一方で、波面および強度分布をリレーする第2の効果は必ずしも必要とされない。ビームの直径が十分に大きく、際立ってコリメートされ、際立って平面の波面であり、際立ってガウス分布の強度分布である場合、ビームは、本質的に変化しない平らな鏡の反射間を伝播するだろう。したがって、瞳孔面を形式的にリレーすることは必要ではないが、むしろ、単にビームの仮想旋回軸点を作成することが望ましい。同一の推論が、第2の瞳孔リレー630によって一般的に実行されるように、第2の瞳孔面610から補償光学素子625の面へとリレーする場合に成立する。説明されたビームのように、数cm〜数メートルの伝播距離にわたり名目上際立って一定のままである強度分布および波面を有するビームを考慮する。図9は、従来の4f設計において使用されたであろうレンズまたは凹面鏡の代わりに回転鏡のペアを使用して、固定位置を有するが可変ビーム角を有する仮想旋回軸点を作成する方法を使用することが可能であることを示す。図9(B)に示されたニュートラルな(ゼロ)位置では、ビームは最初、左から右に伝播し、第1のステアリングミラー905に反射する。ビームは続いて、左上に伝播し、第2のステアリングミラー910に反射する。第2のステアリングミラーは、ビームを右の方へ伝播するように向け、ビームは、特定の場所で平面915と交わる。図9(A)に示されるようにステアリングミラーの角度を適切に調節することによって、同一の光学構成は、図9(B)に示されたニュートラルな位置の場合と同一の場所の平面915と交わる下向きのビーム角を作成し得る。同様に、図9(C)に示されたステアリングミラー角の異なるセットは、同一の場所の平面915と交わる上向きのビーム角を生成する。図9(D)は、図9(A)〜図9(C)に示された3つの構成を重ね合わせたものであり、ステアリングミラー角の適切な調節は、際立って固定されたビーム強度の平面915が旋回軸点の周りの調節可能なビーム角によって形成されることを可能にする、ということを示す。鏡への適切な角度を設定することは、すべてが同一の旋回軸点の周りを回転する中間ビーム角が生成されることを可能にする。この光学構造は、より従来の瞳孔リレー(アフォーカル4f望遠鏡)に代わって補償光学走査システムにおいてビームステアリングメカニズムと補償光学素子との間のリンケージとして使用される仮想旋回軸点を作成する要件を満足するために使用され得るが、軸外収差がなく、分散がなく、およびコンパクトなサイズである、という大きな利点を有する。図9(D)は、ビームが左から入ってきて、固定強度位置であるが可変角のビームが、平面915においてビームステアリングメカニズムの右に形成されている様子を示す。図9(E)は、同一の光学構造がまた、適切な角度に向けられた第1のステアリングミラー935と第2のステアリングミラー940とを使用することによって、固定ビーム強度位置であるが可変ビーム角の平面920からの光を受け、ビームステアリングメカニズムの右に、固定ビーム強度位置であるが可変ビーム角の第2の平面925を生成するために使用され得ることを示す。さらに、配列のフレキシビリティは、出力ビームの位置および角度の恣意的でプログラム可能な配置を可能にする。たとえば、図8(D)における平面945は、変化するビーム角に伴って変化するビーム位置を示す。ビーム位置およびビーム角は、鏡の作動開口内で完全にプログラム可能である。そして、ビーム位置およびビーム角は、同一点の周りを旋回てもしなくてもよく、走査中に恣意的なビーム位置およびビーム角軌跡を作成するように事前にプログラムされてもよく、またはその場で再計算されてもよい。図9(D)〜図9(E)に示された2つの基本的な機能は、補償光学走査システムにおけるコンパクトな走査メカニズムのためのビルディングブロックとして使用され得る。ほとんどのビーム走査システムは、標本にわたり、2つの方向XおよびYに走査する。図10は、2つの回転鏡で構成されたXビーム走査メカニズム1005を、これもまた2つの回転鏡で構成されたYビーム走査メカニズム1010と接続することが可能であることを示す。2つのビーム走査メカニズムは、直交(90度回転された)方向に向けられており、平面1015における同一の固定点に照射する。この例において、第2の回転鏡ペア1020および1025は、第1の回転鏡ペア1030および1035の出力が第2の回転鏡ペアへの入力となるように、平面1015における固定点と第1の回転鏡ペアとの間に収まる。図11は、ステアリングミラーをアクチュエートするために4つのガルバノメータ(ガルボ)を使用するx走査およびy走査を示す、この原理に基づいた例示的な構成を示す。鏡が他の相対的な順序および配列をとることも可能である。ビームのプログラム可能な位置および角度を生成する鏡とアクチュエータとの集合は、本特許出願において、ビーム照射モジュール720と呼ばれる。
補償光学走査システムの本発明の実施形態は、光学系における適切な場所にビームの旋回軸の場所を生成するためのビーム照射モジュールを含む。ビーム照射モジュールは、ビームを適切に誘導するように鏡に影響を及ぼす4つ以上の運動軸を有する。本発明の一実施形態は、ビーム照射モジュールの少なくとも1つの軸が回転する配列を使用する。図11に示すように、本発明の一実施形態は、4つのガルバノメータ駆動型ミラーを備えるビーム照射モジュールを含む。ガルボの順序は、特定の撮像用途に最適化され得る。本発明の一実施形態は、2つのx軸ガルボがy軸ガルボに先行する光学レイアウトを使用する。別の実施形態では、2つのy軸ガルボが2つのx軸ガルボに先行する。別の実施形態では、第1のxおよびyガルボが第2のxおよびyガルボに先行するように、軸が分けられる。鏡とアクチュエータの他の構成もまた可能である。たとえば、図12(A)は、1つの外部旋回軸点1215に照射するための2つの高速ステアリングミラー(FSM)1205および1210で構成されたビーム照射モジュールを示す。図12(B)は、外部ビーム旋回軸点1230から光を受け、外部ビーム旋回軸点1235に照射する2つの高速ステアリングミラー(FSM)1220および1225で構成されたビーム照射モジュールを示す。FSMとガルボとを組み合わせることもまた可能である。本発明の一実施形態は、少なくとも1つの高速ステアリングミラー(FSM)を備えるビーム照射モジュールを含む。本発明の別のより特定の実施形態は、2つの高速ステアリングミラーを使用するビーム照射モジュールを備え、各々の高速ステアリングミラーは2つの回転軸を有するものである。MEMSミラー、ジンバル式ミラー、ピエゾ駆動チップチルト鏡、または他のチップチルト鏡メカニズムといった、他の二軸単一鏡ビームステアリング素子もまた、FSMによって説明されたように使用され得る。別の実施形態において、ビーム照射モジュールは、少なくとも1つのガルバノメータ駆動型ミラーを備える。アクチュエータおよび鏡の運動のすべてが回転でなくてはならないわけではない。目標を達成する、またはビームをプログラム可能な位置およびビーム角に照射することを達成するために、アクチュエータおよび鏡の回転移動および並進移動を組み合わせることが可能である。図12(C)は、外部ビーム旋回軸1250を生成するビーム照射モジュールを作成するために、第1の回転鏡1240が第2の並進鏡1245とどのように組み合わせられ得るかを示す。回転軸と並進軸の順序は、異なってもよい。図12(D)は、外部ビーム旋回軸1265を生成するビーム照射モジュールを作成するために、第1の並進鏡1255が第2の回転鏡1260とどのように組み合わせられ得るかを示す。より一般的には、本発明の一実施形態は、ビーム照射モジュールの少なくとも1つの並進する軸によって動作する。本発明の別の実施形態は、回転軸と並進軸の組み合わせまたは自由度を使用するビーム照射モジュールを備える。他のビームステアリングデバイスが可能である。本発明の一実施形態は、以下のリスト、すなわち、ステアリングミラー、音響光学偏向器、回転ポリゴン、電気光学ビーム偏光器、電気光学プリズム、熱光学プリズム、回折アレイ、機械的に走査される鏡、モーターによって駆動される機械的に走査される鏡、ステッピングモーターによって駆動される機械的に走査される鏡、ガルバノメータによって駆動される機械的に走査される鏡、MEMSミラー、音響光学変調器、または液晶デバイスのうちの少なくとも1つを備えるビーム照射モジュールによって動作する。
鏡の角度または位置は、所望のビーム照射出力を生成するように制御されなくてはならない。多くのアクチュエータは、アクチュエータに指令するための入力として位置指令が使用され、指令された位置を追跡するように制御システムが動作するように、関連づけられたフィードバック制御システムを有する。たとえば、ガルボシステムは、ガルボ角の位置を測定するために容量性エンコーダまたは光学エンコーダを使用し得る。測定された位置は、指令された位置と比較されて、位置誤差が生成される。位置誤差は、ガルボにおけるアクチュエータに適用される補正動作を生成するために、フィードバックコントローラ、たとえば、比例−微分−積分(PID)コントローラまたはフルステートフィードバックコントローラによって処理される。このように、鏡への指令は、アクチュエータおよびコントローラの帯域幅、加速度、および速度限界まで実行される。これらの局所化されたフィードバック制御システムは、アクチュエータの低レベル位置制御を管理する。MEMSデバイスおよびピエゾアクチュエータといった他のアクチュエータが、開ループ位置指令に対し良好に応答する。本発明の一実施形態は、ビーム照射モデルにおける少なくとも1つの軸のために閉ループ制御を使用する。本発明の別の実施形態は、ビーム照射モジュールにおける少なくとも1つの軸のために開ループ制御を使用する。しかしながら、局所化されたアクチュエータ制御スキームとは無関係に、本発明の実施形態における異なるアクチュエータと鏡との間の位置は、所望のビームステアリング効果を生成するように入念に協調させられなくてはならない。
ビームステアリングモジュールにおける異なる軸間の協調は、ビーム照射モジュールにおける軸の運動軌跡を制御するためのコントローラ725によって実行される。コントローラは、運動を協調させるための個々のアクチュエータへの位置指令を生成する。好ましい実施形態において、協調は、所望の位置指令を生成するためのコード、論理、または命令を実行し得るプロセッサまたは回路によって実行される。プロセッサは、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、特定用途向け集積回路(ASIC)、または、デジタル計算を実行し得る任意の他のプロセッサであり得る。非線形計算が実行されることができ、計算のアジャスタビリティおよびフレキシビリティがあり、しばしば多くの撮像システムにおいてすでに利用可能な予備のプロセッサ能力があるので、デジタルプロセッサが好ましい。しかしながら、アナログ回路もまた制御を実行するために使用され得る。ビーム照射モジュールにおける鏡のためのアクチュエータが開ループで制御されるか閉ループ(フィードバック)で制御されるかに依存して、コントローラはまた、ビーム照射モジュールにおける軸の各々のための運動軌跡を生成するプロセッサに加えて閉ループコントローラを備え得る。開ループアクチュエータ制御方法または閉ループアクチュエータ制御方法のいずれのケースにおいても、コントローラは、運動軌跡を生成し、ビーム照射モジュールにおける軸の運動軌跡を制御するためのものである。本発明の好ましい実施形態において、ビーム照射モジュールにおける自由度間の協調は、アクチュエータまたは能動素子への電子信号によって制御される。一実施形態において、任意の所与の走査軸のためのアクチュエータは、各々の個々の軸のための所望の出力指令が単一の入力パラメータによって決定されるように結合される。本発明の別の実施形態において、ビーム照射モジュールにおける自由度間の協調は、機械的リンケージによって制御される。撮像システムは一般的に、試料上でスポットを走査し、多くの走査軌跡が可能である。本発明の一実施形態は、光ビームが標本710上でラスタ走査パターン1705をトレースするようにさせる軌跡によって鏡を走査するためにビーム照射モジュール720を使用する。
本発明の実施形態は、標本伝達オプティクス730と呼ばれる、標本710に光を伝達するためのオプティクスを含む。ほとんどの標本は、対物レンズが標本にまたは標本の中に光を合焦することを必要とする。本発明の一実施形態は、顕微鏡の対物レンズを備える標本伝達オプティクスを含む。より一般的には、本発明の一実施形態は、標本における所望の分解能を達成する開口数(NA)による集束ビームの光を標本に向ける標本伝達オプティクスを使用する。他の標本は、生物学的な眼またはカメラシステムといった、それら標本独自のオプティクスまたは光学面を含む。生物学的な眼またはカメラシステムは、コリメートされたまたはほぼコリメートされたビームが標本への光の伝達のために好ましいように光の伝達の特性についての異なる要件を有する。本発明の一実施形態は、標本の光学特性が所望の撮像面に光を合焦するように旋回軸点が標本内の瞳孔面またはその付近に設けられて、際立ってコリメートされたビームの光を標本に向ける標本伝達オプティクスを使用する。より具体的には、本発明の一実施形態は、眼の中に向けられる際立ってコリメートされたビームを使用し、ビームの旋回軸点は、光が眼の中の網膜245またはその付近に合焦するように、眼の瞳孔またはその付近に設けられる。標本伝達オプティクスは、光を調整して標本に向けるために使用され、調整することは、ビームの適切なコリメーション、集束、または発散を生成すること、適切なビーム直径を生成すること、適切な開口数を生成すること、適切な強度プロファイルを生成すること、適切なスポットサイズを生成すること、適切なスポット形状を生成すること、適切な波面を生成すること、または標本と際立ってインタラクトするように光ビームに影響を及ぼす任意の他の手法のことを言う。
本発明の実施形態は、標本710からの光を検出するための検出器735を含む。本発明の一実施形態において、検出器735は、スペクトル/フーリエドメインOCTを実行するためのラインスキャンカメラである。本発明の別の実施形態では、検出器735は、アンバランスな検出を実現するためのハイスピードフォトダイオード、または、スイープ源/フーリエドメインOCTを実行するためのバランスのとれた検出を実現するための2つのハイスピードフォトダイオードを備える。本発明の別の実施形態において、検出器735は、光電子倍増管(PMT)またはアンバランシェフォトダイオードを備える。より具体的には、本発明の一実施形態は、二光子、多光子、または第二高調波撮像を実行するための光電子倍増管(PMT)またはアンバランシェフォトダイオードを備える検出器を使用する。本発明の別の実施形態は、共焦点撮像を実行するための光電子倍増管(PMT)、フォトダイオード、またはアンバランシェフォトダイオードを備える検出器735を使用する。本発明のさらなる別の実施形態では、検出器は、標本からの光のスペクトル成分を分解するための分光計である。本発明の別の実施形態は、フィルムにおいて使用されるように、光化学反応によって標本からの光における情報を記録する検出器を使用する。本発明の別の実施形態は、熱センサによって標本からの光における情報を記録する検出器を使用する。光ピンセットシステムにおいて、操作されている物体はしばしば、カメラ、たとえば、電荷結合素子(CCD)または相補型金属酸化膜半導体(CMOS)アレイによって監視される。操作されている物体に光学的な力を印加することおよびカメラによって物体の応答を監視することは、光トラッピング力の強さを示し得る。光トラッピング力の測定は、システムにおける収差に依存し、補償光学素子は、トラッピング力を最大化するように最適化され得る。本発明の一実施形態において、検出器735はカメラである。本発明の別の実施形態において、検出器735は波面センサである。本発明の別の実施形態において、検出器735は、標本からの光の強度を測定する。検出器735は、用途と一致するように光路に沿った異なる場所に設けることができる。または、検出器735は、標本に光を伝達する光学系とは別個に設けることもできる。
多光子顕微鏡検査の実施形態
本発明の実施形態は、補償光学多光子撮像のために使用され得る。図13〜図21は、二光子顕微鏡検査を実行する本発明の実施形態を教示し、図22および図23は、実験的な補償光学二光子の結果を示す。プロトタイプにおける発光源705は、図21(C)に示されるように、工業用に利用可能なチタンサファイアフェムトセカンドレーザー(ThorlabsのOctavius−2P)である。プロトタイプにおける補償光学素子715は、図21(B)に示されるように、140個のアクチュエータ、金めっき、グリッドアクチュエータレイアウト、静電アクチュエーション、および4.4mmの能動面積を有する、工業用に利用可能なMEMS可変形鏡(Boston MicromachinesのMulti−DM)2105である。図13に図示されたビーム照射モジュール720は、工業用に利用可能な4つのガルバノメータ(Cambridge Technologyの6210H X−Yスキャナ)を備える。X−Yスキャナの各々のペアは、ガルボ角位置の閉ループ制御を実行するガルボとともに売られているアナログコントローラによって制御される。アナログ電圧信号が、所望のガルボ位置角度を指令するためのコントローラへの入力として使用される。図13(A)に示されるように、光が、ビーム照射モジュール1305に入り、Xミラー1と表示された第1のステアリングミラー1310に反射する。光は続いて、Xミラー2と表示された第2のステアリングミラー1315へと伝わる。Xミラー1およびXミラー2は、X走査方向にビームの角度と位置を制御するように協働する。Xミラー2からの光は、Yミラー1と表示されたステアリングミラー1320へと伝わり、ステアリングミラー1320は、光を反射してYミラー2と表示されたステアリングミラー1325に向ける。Yミラー1およびYミラー2は、Y方向にビームの角度と位置を制御するように協働する。XおよびY方向が図示の便宜上選ばれたものであること、XおよびYの順序は交換可能であることに注意する。工業用X−Yスキャナキットは、小さな鏡と大きな鏡を有するガルボのペアを含むので、2つのキットは、小さな鏡を有する2つのガルボと大きな鏡を有する2つのガルボとを含む。小さな鏡を有するガルボの動的性能は、大きな鏡を有するガルボの性能とは異なる。したがって、ビーム照射モジュールにおいては、各々の走査軸内の鏡のサイズを一致させることが望ましい。示された特定の実施形態では、(図13においてXミラー1およびXミラー2と表示された)ビーム照射モジュールの第1のステージにおける2つの小さな鏡1310および1315と、(図13においてYミラー1およびYミラー2と表示された)ビーム照射モジュールの第2のステージにおける2つの大きな鏡1320および1325を使用することが望ましい。2つのガルボの動的性能が同様であると、2つのガルボが入力指令電圧軌跡に対し同様に応答するであろうから、ステージ内で鏡のサイズを一致させることは、ステージ内の走査が単純化されることを意味する。さらに、図14(B)に示されるように、Xミラー1およびXミラー2からのビームが軸外に向けられて、より大きなYミラー1およびYミラー2の表面が軸外ビームを受け取ることを要するのであるから、2つの大きな鏡の前に2つの小さな鏡を配置することは、有利である。Yミラー2から反射された光は、ビーム照射モジュールを出て、可変形鏡1330へと伝わる。可変形鏡1330は、ビームステアリングモジュールの出力へと光を反射する非常に反射する表面を有する。ステアリングミラーの角度を変化させることは、可変形鏡1330への入射ビーム角および可変形鏡1330からの反射ビーム角が変化させられることを可能にすると同時に、可変形鏡1330へのビームの軸合わせを維持することを可能にする。図13(B)に描かれた、方向1、方向2、および方向3と表示された出力光線は、可変形鏡1330へのコンパクトなインターフェースと標本上のビームの走査とを可能にするビームステアリングのこの原理を示す。図13(A)および図13(B)は、図13(B)および図13(D)のビームステアリングモジュールおよび補償光学素子アセンブリの等角図の斜視図を示す。図14(A)および図14(B)は、ステアリングミラーと可変形鏡の表面が、入力および出力ビームに対し示されているビームステアリングモジュール1405の立体模型図を示す。図15は、プロトタイプの実施形態のステアリングミラーの場所および角度を示す。
この実施形態のビーム照射モジュール720における軸の運動軌跡を制御するためのコントローラ725は、図16(A)に示されるように、PCコンピュータ1605(DellのデスクトップPC)上で実行されるソフトウェアコード、デジタルアナログコンバータ(DAC)ボード1610(National InstrumentsのPCIe−6323)、およびガルボ1615および1620のためのアナログコントローラを備える。PCコンピュータ1605は、中央処理装置1625(CPU)を含む。アルゴリズム1630が、撮像フィールド(撮像面)における所望の光学スポット軌跡の走査を達成するためにガルボの各々のためのミラー角度軌跡を生成するために、CPU1625によって実行される。ミラー角度軌跡は、コンピュータメモリにおいてアレイとして記憶される。走査を実行するために、デジタルデータとして表されたミラー角度軌跡が、4つのチャンネルCh1〜Ch4の各々でアナログ出力電圧として、16ビットのDAC分解能で、毎秒100,000標本の固定レートでDACボードによって出力される。Ch1〜Ch4の出力は、2つのガルボコントローラ1615および1620の入力へと電気配線1635によって接続される。2つのガルボコントローラ1615および1620の各々は、ビーム照射モジュール1660における4つのガルボ1640、1645、1650、および1655の2つのチャンネルのための閉ループ制御を実行する。図16(B)は、走査軌跡がどのように、第1のステップとして走査軌跡ジェネレータ1665によって撮像フィールド(撮像面)座標系を参照して生成されるかを示す。ビーム照射モジュールのジオメトリに基づいて、フィールドにおける所望の走査パターンを生成することが要求されるガルボ角のセットが、ミラー角度計算1670によって計算され得る。ミラー角度計算は、XおよびYフィールド位置を入力として受け取り、対応するX1ガルボ、X2ガルボ、Y1ガルボ、およびY2ガルボステアリングミラー指令角度を生成する。デジタルで表現され、コンピュータメモリに記憶された、X1ガルボ、X2ガルボ、Y1ガルボ、およびY2ガルボ指令は、DAC1675に送信され、Ch1、Ch2、Ch3、およびCh4から出力されるアナログ出力信号に変換される。
図17は、実験用装置の撮像フィールドにおいて使用される走査パターンの詳細を示す。ラスタ走査パターン1705は、図17(A)および図17(B)に示されるように、x方向に一定の速度で標本にわたり光学スポットを走査する左から右への撮像経路の反復連続からなる。光学スポットが標本にわたって走査されると、PMTから収集された光強度を読み取るA/Dコンバータが、標本からの信号を測定し、そのデータが、最終的な二光子画像におけるデータの行を生成するために使用される。撮像経路1710の各々の一定速度のx方向走査の終わりに、走査パターンは、新たな一定速度のx方向走査1710の始点にスポットを戻す敏速なフライバック運動または経路1715を定義する。フライバックと同時に、走査パターンは、隣接する次の行を走査するための、y方向における光学スポットの上方への小さな移動、行ステッピング移動1720を定義する。実際には、ガルバノメータは、限られた閉ループ動的帯域幅内で追跡することしかできず、滑らかでなく、達成可能な運動限界内の軌跡によって指令された場合、発振およびリンギング効果を受けやすい。図17Bは、プロトタイプの実施形態におけるラスタ走査のために使用される前方走査およびフライバック軌跡の詳細を示す。軌跡は、加速度の正弦半波プロファイルに基づいている。この軌跡は、よく研究されており、動的なシステムにおける加速度および速度の制約が存在する場合に振動および共振モードの望ましくない励起を低減するために、運動制御およびロボット工学の分野において使用される一般的な軌跡である。正弦半波加速度の時間に対する微分は、ジャークプロファイルであり、それは、値において限度内にとどめられる。正弦半波加速度プロファイルの時間に対する積分は、速度プロファイルである。速度プロファイルの時間に対する積分は、位置プロファイルであり、それは、フィールド参照フレームにおける運動経路として使用される。図17(C)は、撮像経路の走査軌跡を示し、上のグラフにはx方向走査のためのフライバックを、下のグラフには関連づけられた行ステッピング移動を示す。行ステッピング移動1720は、正弦半波の加速度プロファイルにも基づいている。撮像および最適化のための他の走査軌跡が可能であり、所望される。図17(D)は、フィールド位置に対し走査される一定速度の撮像の同心円を示し、各々の円は、小さな非撮像経路セグメントによって接合される。関連づけられたxおよびyフィールド位置およびフィールド速度が、図17(E)においてグラフ化されている。図17(F)は、ガルボ加速度および速度の制約に対し各々が最適である非撮像転回セグメントによって接合された放射状のクロスパターン撮像走査を示す。関連づけられたxおよびyフィールド位置およびフィールド速度が、図17の(G)に示される。フィールド参照面において定義された走査軌跡は、実行のためのガルボ座標系軌跡に変換される。
図18(A)の上部は、数値法によってレイトレーシング式を解くことにより決定されるx方向についての所望の出力角を生成するために要求されるガルボ角を示す。走査ジオメトリは、所望の出力ビーム位置および角度を生成するステアリングミラー角を計算するために使用されるZEMAXレイトレーシングソフトウェアおよび非線形ソルバ(オプティマイザ)によって定義された。図18(B)の下部は、数値法によってレイトレーシング式を解くことにより決定されるy方向についての所望の出力角を生成するために要求される、要求されたガルボ角を示す。これらのグラフは、要求されたガルボ角が撮像フィールド座標系における所望の走査角の入力から決定され得るように、較正曲線を表す。曲線は、図18(B)の上部に見られ得るように、際立って線形的に見え、一次多項式が線形回帰を使用して較正曲線データにフィッティングされる。図18(B)の下部は、較正データにおける残留フィッティング誤差と非線形性を示す。較正曲線において線形性が高い度合いであることは、小さな誤差はあるとしても、線形的な較正曲線によって本発明の実施形態を実行することが可能であることを示す。非線形性を適応させるためのより高い次元のフィッティングが、較正性能を向上させるために使用され得る。図18(C)は、一次、三次、および五次の多項式フィッティングについての残留誤差を示し、各々の増大する次元は、較正曲線性能の向上を示す。他のパラメータ表示および基底が、補間法または他の基底関数の選択を含む較正曲線を表すために使用され得る。線形的な較正は、各々のガルボに印加された電圧がVgalvo_x1=C1θx+C2,Vgalvo_x2=C3θx+C4,Vgalvo_y1=C5θy+C6,Vgalvo_y2=C7θy+C8であるように実験用プロトタイプにおいて使用された。Vは、下付き文字で示されたガルボへの指令電圧である。θxは、xフィールド位置である。θyは、yフィールド位置である。Cの奇数の添え字の係数は、スケーリングファクターである。Cの偶数の添え字の係数は、較正曲線のDCオフセット値である。ガルボのための切削架台内のガルボの絶対回転角度は制御されない(すなわち、ガルボ自体が位置決めねじと締結される前に切削架台の掘削孔内で回転し得る)ので、DCオフセット値は、鏡のすべてにビームをセンタリングし、可変形鏡にセンタリングされた出力ビームを生成する、アナログ出力電圧を求めることによって、決定された。スケーリングファクターのための電圧変換への角度は、レーザーをビーム照射モジュールに向け、ガルボへの電圧が変化したときにビーム照射モジュールの出力からの既知の距離のところに設けられた照射スクリーン上のスポットの場所を測定することによって、実験により決定された。
ビーム照射モジュール1905および可変形鏡1910は、図19(A)に示されるように、走査レンズ1915、チューブレンズ1920、対物レンズ1925と組み合わせられて、二光子顕微鏡の標本伝達オプティクス730を形成する。ビーム照射モジュールへのズームインは、図13〜図15において詳細に説明されたビーム照射モジュールの図を示す。ステアリングミラーは、図15(B)におけるZEMAXによってトレースされた光線によって軸外走査位置を作成するような角度にされる。図20は、二光子顕微鏡のレンズ規定およびレンズ間隔を示す。ロングパスダイクロイックミラー(680nm〜1600nm)2005は、励起経路に配置され、長い波長のレーザー源を標本へと通過させ、蛍光信号を、発光ダイクロイックフィルタを含むフィルタキューブ2010と発光バンドパスフィルタ2015とを通ってPMT検出器2020へと反射する。発光ダイクロイックフィルタおよび発光バンドパスフィルタは、撮像される標本の蛍光特性に基づいて選ばれる。対物レンズ2025は、工業用に利用可能な水浸対物レンズ(NikonのLWD 16X 0.8NA)である。検出器2020は、工業用に利用可能なPMT(HamamatusuのH7422PA)であった。本発明の実施形態の実験用プロトタイプの写真が、図21に示される。4つのガルボが、図21(A)において1〜4で示され、可変形鏡(DM)2105は、図21(B)に示される。実験用の機構が、図21(C)に示される。この装置は、収差を生成するカバーガラスに塗布された光学ジェルを有する顕微鏡のスライド上の紙の標本710を撮像するために使用された。ジェルの屈折率は、脳の組織と同様であり、ジェルの表面は、ファントムの脳の標本を作製するために特有のテクスチャを出した。図22は、プロトタイプを制御するためのソフトウェアからのスクリーンキャプチャを示す。標本2205の画像が示される。最適化された可変形鏡の形状2210が見られ得る。最適化の進行を示すグラフ2215が示される。可変形鏡に適用される基底関数の結果として生じる振幅が、グラフ2220において見られ得る。図23は、平らな可変形鏡2305および最適化された可変形鏡2310による標本の画像を示す。平らな鏡の画像2305は、ジェルからの収差を被る。最適化された鏡の画像2310は、可変形鏡を適切に整形することによってジェルによって生成された収差を補正することにより、信号を増大させ、および分解能を向上させることを示す。
補償光学集束アルゴリズムは、「Image based adaptive optics through optimisation of low spatial frequencies」by D.Debarre,M.Booth,and T.Wilson,Opt.Express 15,8176−8190(2007)および「Image−based adaptive optics for two−photon microscopy」by D.Debarre,E.Botcherby,T.Watanabe,S.Srinivas,M.Booth,and T.Wilson,Opt.Lett.34,2495−2497(2009)において提示されたアルゴリズムに基づいている。これらは、センサレス補償光学アルゴリズムおよび補償光学二光子最適化のための実現を教示し、論証している。
多光子撮像のために使用された同一の光学器具が発光フィルタおよび励起波長の適切な選択による第二高調波撮像のためにも使用され得ることに注意する。既製のオプティクスの代わりにカスタム設計されたオプティクスを使用することによって、本発明の実施形態のサイズを低減することもまた可能である。
OCT撮像の実施形態
本発明の実施形態は、補償光学OCT撮像のために使用され得る。図24は、往々にしてスイープ源/フーリエドメインOCT、または光学周波数ドメイン撮像(OFDI)と呼ばれる、スイープ源OCT(SS−OCT)検出を使用する補償光学OCT撮像システムを示す。図24(A)に示された同一の基本的な干渉計2405の設計が、異なる標本伝達オプティクスにインターフェースされ得る。図24(B)は、眼2410を撮像するのに適した標本伝達オプティクスを示す。図24(C)は、外部瞳孔を有するフォーカシング対物レンズまたは走査レンズ2420を含む標本2415を撮像するのに適した標本伝達オプティクスを示す。図24(D)は、顕微鏡の対物レンズ2425または走査レンズ内部の瞳孔を有する他の同様な対物レンズによる撮像に適した標本伝達オプティクスを示す。スイープ源OCTにおいて、波長スイープ光源2430は、図25(A)に示されるように、時間において狭くチューニングされた波長をスイープする発光による光を生成する。発光源2430からの光は、図24(A)に示されるように、第1のファイバーカプラー2435にファイバー結合される。光の一部は、スプリットされ、またはあるいは参照アーム2440と呼ばれる参照経路に向けられる。光の他の部分は、ファイバーカプラーにおいてスプリットされ、ビーム照射モジュール(BPM)、補償光学素子(AOE)、および標本オプティクス2445に向けられる。標本オプティクスからの光は、標本2410、2415、2450に向けられる。標本2410、2415、または2450から後方散乱または反射した光は、標本オプティクスによって収集され、光ファイバーを通って戻る。標本2410、2415、または2450から戻ってきた光の一部は、第1のファイバーカプラー2435を通過して第2のファイバーカプラー2455へと至り、ここで、それは、参照アーム2440からの光に干渉する。第2のファイバーカプラー2455からの光は、バランスのとれた検出器2460に向けられる。バランスのとれた検出器2460は、光を各々のチャンネルのための電気信号に変換し、チャンネルから信号を差し引き、電圧出力を生成する。電圧出力は、図25(A)に示されるように、インターフェログラム2505を形成するためにアナログデジタルコンバータ(A/D)2465によってデジタル化される。インターフェログラムは、アキシャル走査またはA走査2530と呼ばれる反射率対深度プロファイルを生成するためにフーリエ変換される。標本にわたって走査することおよび隣接A走査をアセンブルすることは、二次元横断面画像、B走査2535を形成し得る。ラスタ走査パターンで標本にわたる撮像スポットを走査することおよび隣接B走査をアセンブルすることは、三次元ボリューム測定データセット2540を形成し得る。往々にして、スペクトルドメインOCT(SD−OCT)と、時間ドメインOCT(TD−OCT)とを含む、スイープ源OCT以外のOCTの実現もまた可能であるということに注意すべきである。ここで、スペクトルドメインOCT(SD−OCT)は、広帯域光源および分光計を使用するスペクトル/フーリエドメインOCTとも呼ばれる。ここで、時間ドメインOCT(TD−OCT)は、広帯域光源、シングルポイント検出器、および参照アームにおける移動ミラーを使用するものである。OCTは、よく開発された分野であり、光ファイバーコンポーネントを使用するOCTシステム、バルク光コンポーネントを使用するOCTシステム、ドップラー測定のために使用されるOCT、偏光感受型測定のために使用されるOCT、および他のものを含む異なるOCT実現を教示する文献が多数存在する。任意の点走査OCT方法が、本発明の実施形態において使用され得る。しかしながら、本発明の実施形態においては、スイープ源検出方法における短時間の積分および効率的な標本化であるゆえに、スイープ源OCTが空間ドメインOCTおよび時間ドメインOCTよりも有効である。
OCTのために本発明の実施形態を使用する場合に生じる1つの課題は、走査中に生じる経路長の変化が存在することである。図25(E)は、軸上被写界位置および軸外被写界位置のためのビーム照射モジュールのレイトレーシングを示す。鏡の前方および後方への反射ゆえに、軸外走査位置のために導入された追加の光路長が存在する。さらに、図25(F)に示されるように、被写界位置に対する追加の光路長の変化の量は、鏡の間隔が異なるために、xおよびy軸について異なる。OCTにおけるインターフェログラムは、参照アームと標本アームとの間の経路長の差分の関数であり、ビーム照射モジュールにおける光路長の変化の第1の効果は、OCT画像に歪みを追加することである。図26(E)は、平らなミラーの反射のOCT B走査横断面画像2650から予期されるであろうものを示す。図26(F)は、軸外走査角でのより長い経路長に起因した画像2655への歪みを示す。経路長の変化の第2の効果は、インターフェログラムの形状を変えること、OCT機器の感度を潜在的に減じること、アキシャル分解能を劣化させること、および深度測定誤差を導入することである。これらの効果は、インターフェログラムを生成することに関連する式を見ることによってよりよく理解され得る。以下の式1を参照すると、kmは、標本点mでの波数であり、I[km]は、標本点mでの瞬時の光電流であり、ρ[km]は、標本点mでの検出器の応答であり、S[km]は、標本点mでの標本上の瞬時電力であり、RRは、参照ミラーの反射率であり、RSは、標本ミラーの反射率であり、zrは、参照ミラーの深度であり、zsは、標本アームミラーの深度である。式1は、J.A.Izatt and M.A.Choma,Section 2.7,W.Drexler and J.G.Fujimoto Ed.,「Optical Coherence Tomography:Technology and Applications」,2008から採用された。実際には、光電流Iは一般的に、A/Dデジタル化の前にトランスインピーダンス増幅器によって電圧に変換される。波長スイープ光源2510は、図25(A)における波長対時間のグラフに示されるように、時間において波長をチューニングする発光を生成する。光は、OCT干渉計2515の中を進む。OCT干渉計2515では、フォトダイオードが光強度を電流I[km]に変換する。電流I[km]は、検出器2520によって電圧出力信号に変換される。波長が時間においてスイープすると、A/Dコンバータ2525が、OCTインターフェログラム2505を生成するために検出器2520の出力をデジタル化する。
コサイン関数の中の項は、またはあるいはOCTフリンジと呼ばれるOCTインターフェログラムの位相を表す。位相が増大(または減少)すると、OCTフリンジは、2*πラジアン毎に生じる発振の完全な期間によって発振する。波長スイープは、開始波長数kstartと、終了波長数kendを有する。OCTフリンジにおける発振の数は、スイープにわたる合計位相差ΔΦの大きさに比例し、それは、
式2は、コサイン関数内の(zr−zs)乗算子の項が合計フリンジ位相を増大させるので、フリンジ周波数は、増大する撮像深度に伴って増大する(すなわち、スイープにわたるより多くの発振数が存在する)ことを示す。図26は、開始波長λstartから終了波長λendまでの波長スイープを有する標本アームにおける固定ミラー反射からの結果として生じたシミュレーションされたインターフェログラムを示す。これは、k=1/λが、開始波長数kstartおよび終了波長数kendと等しい。また、光学クロッキングまたは数値較正法によってスイープ源OCTにおいて一般的に実行されるように、インターフェログラムにおける標本点は、波数において等しく間隔をあけられる。図26(A)の上部は、浅い深度での鏡からのインターフェログラム2605を示す。図26(B)の下部は、深い深度からのインターフェログラム2610を示す。式1および式2から予期されるように、(zr−zs)項からの結果として生じたより大きな全位相ゆえに、深いミラーの反射のための発振数は、浅いミラーの反射のための発振数よりも多い。図26(A)は、標本アームにおける固定の経路長を有する固定ミラーのためのインターフェログラム2615を示す。図26(B)に示されるように、本発明の実施形態のケースにおいて、経路長が変化しながら、波長スイープ源がスイープしている場合、インターフェログラムへの影響は、インターフェログラムの開始部分が、開始光路長に関連づけられ、インターフェログラムの終了部分が終了光路長に関連づけられる。これは、固定ミラー条件と比較した場合に、インターフェログラム2620をチャープさせることとなる。図26(C)は、浅いフリンジ2605のためのOCT点広がり関数2625、深いフリンジ2610のためのOCT点広がり関数2635、およびチャープしたフリンジ2620のためのOCT点広がり関数2630を示す。図26(D)は、浅いフリンジ2605および重度にチャープしたフリンジ2645のためのOCT点広がり関数を示す。チャーピングは、フーリエ変換される際にOCTアキシャル点広がり関数に2つの影響を有する。第一に、反射の深い位置が、ある一般水準のまたは集約された光路長位置にシフトされることである。第二に、点広がり関数が、それが複数の深度からの情報を含むので、潜在的に広げられることである。これらの影響の両方は、OCT撮像性能に有害である。スイープ源OCTのケースにおいて、標本化レートは一般的に、現代のA/Dカードにより毎秒数億〜5億標本(MSPS)以上の速度で、非常に高速であり、1標本あたりナノ秒オーダーの短い標本化時間という結果を生じる。カメラが複数の波長を露光させ、数十キロヘルツ〜数百キロヘルツのレートで実行し、マイクロ秒オーダー、スイープ源OCTよりも大きな大きさのオーダーの積分時間という結果を生じるので、空間ドメインOCTのための積分時間ははるかにより長い。空間ドメインOCTのために、時間において変化するOCTインターフェログラムは、フリンジの制約を減じ、OCTの感度を妥協し得るフリンジウォッシュアウト効果という結果を生じる。フリンジウォッシュアウト効果は、より短い大きさのオーダーの積分時間ゆえに、スイープ源OCTによってさほど顕著ではない。それでもなお、本発明は、画像ベースのOCTの点走査OCTの任意の形態によって実現され得る。性能を向上させるための本発明の光路長の変化に対処するための方法が、次に説明される。
長いコヒーレント長のスイープ源レーザーは、本発明の実施形態の経路長の変化を対応させる長いOCT撮像範囲を可能にする。長いコヒーレンス長のスイープレーザーは、波長チューナブル垂直共振器面発光レーザー(VCSEL)、フーリエドメインモードロックレーザー(FDML)、および分散バランスFDMLレーザー、短共振器レーザー、および バーニア調整分布ブラッグ反射器(VT−DBR)レーザーに基づいた技術を含む。高速検出器および高いデジタル化レートと組み合わせられた長いコヒーレンス長のレーザーは、軸外走査位置に関連づけられたより長い光路長によって作成された画像歪みに対応するために十分な範囲を有するOCT画像の収集を可能にする。
標本形態学を表すための深度方向にデータを適切にアラインメントさせるためにデータをアキシャル方向にシフトする(フリンジをフーリエ変換した後の)OCT画像データに、較正が適用され得る。各々のA走査に適用されるシフトの量は、走査ジオメトリから予期される公称経路長変化の計算によって、または、図26(E)〜図26(F)に示されるように、既知の平らな鏡を撮像すること、OCT画像データにおける平らな表面を生み出す要求されたアキシャルシフトを決定することといった、実験的な方法によって、決定され得る。OCTインターフェログラムのチャーピングに関連づけられたOCTアキシャル分解能のわずかな劣化が許容可能であろうから、OCT画像データを単純にシフトすることは、多くの用途において十分である。最高のOCTアキシャル分解能性能が要求される用途では、OCTフリンジを数値補正することによってOCTインターフェログラムのチャーピングに関連づけられたOCT PSFの劣化の損失に対処することもまた有利であり得る。適切な較正は、文献「Ultra high−speed swept source OCT imaging of the anterior segment of human eye at 200 kHz with adjustable imaging range」by M.Gora,K.Karnowski,M.Szkulmowski,B.Kaluzny,R.Huber,A.Kowalczyk,and M.Wojtkowski,Opt.Express 17,14880−14894(2009)のSection 2.2および文献「Three−dimensional and high−speed swept−source optical coherence tomography for in vivo investigation of human anterior eye segments」by Y.Yasuno,V.Madjarova,S.Makita,M.Akiba,A.Morosawa,C.Chong,T.Sakai,K.Chan,M.Itoh,and T.Yatagai,Opt.Express 13,10652−10664(2005)のSection 2.2において教示されたもののように、よく確立され、OCTフリンジの再標本化および分散の補償に基づいたOCTにおいて実現される方法を使用して得られ得る。これらの方法において、ミラーの反射またはMZIが、OCTフリンジ、または、波数kにおいて等しく間隔をあけられ、適切に分散補償された較正を作成するために適用される数値法を生成するために使用される。本発明の実施形態のために、平らなミラーの表面が走査され得、較正が、A走査毎に得られる。較正の記憶は、名目上の較正への摂動が、ほぼ一定の速度で経路長が変化することに起因することを実現することによって、単純化され得る。したがって、走査における任意の1つの領域での速度のみが、知られ、記憶され、OCTフリンジ補正を計算するために使用される必要がある。
ビーム照射モジュールによって導入される経路長の変化に対処する別のアプローチは、参照アームと標本アームとの間の経路長が走査中に一致させられたままであるように、高速アクチュエータによって光路長を調節することである。この方法は、スイープ源OCTにおけるよりも顕著なフリンジウォッシュアウト効果を低減するために空間ドメインOCTを実行する場合に好ましい。経路長の変化は、高速かつフレキシブルな遅延線を使用することによって、または高速作動ミラーによって経路長を調節することにより、得られ得る。遅延線または高速作動ミラーは、ピエゾ、電磁気、または他のアクチュエーションによって作動させられ得る。能動ミラーの位置は、図25(F)に示すような計算またはシミュレーション、または他の方法によって、平らなミラーの反射からの較正により決定できる。
他のAOシステムの実施形態
本発明の他の実施形態が可能である。図1に示された撮像システムのいずれかは、示されたステアリングミラーをビーム照射モジュールおよび補償光学素子と置き換えることにより、本発明の実施形態によって実現され得る。図1(A)に示されたものと同様の汎用OCTのための撮像システムは、本発明の実施形態の補償光学OCT撮像システムを実現するために、ステアリングミラー135をビーム照射モジュールおよび補償光学素子と置き換えることができる。図1(B)に示されたものと同様の撮像システムは、適切な干渉計、検出器、および発光源と組み合わせられた場合、本発明の実施形態の補償光学OCM撮像システムを実現するために、ステアリングミラー155をビーム照射モジュール、補償光学素子、およびコントローラと置き換えることができるう。図1(C)に示されたものと同様の撮像システムは、適切な干渉計、発光源、および検出器と組み合わせられた場合、本発明の実施形態の眼を撮像するための補償光学OCT撮像システムを実現するために、ステアリングミラー172をビーム照射モジュール、補償光学素子と置き換えることができる。図1(D)に示されたものと同様の撮像システムは、適切な発光源および検出器と組み合わせられた場合、本発明の実施形態の補償光学コンフォーカル撮像システムを実現するために、ステアリングミラー177をビーム照射モジュール、補償光学素子、およびコントローラと置き換えることができる。図1(E)に示されたものと同様の撮像システムは、適切な発光源と組み合わせられた場合、本発明の実施形態の補償光学レーザー走査型検眼鏡撮像システムを実現するために、ステアリングミラー192をビーム照射モジュール、補償光学素子、およびコントローラと置き換えることができる。図1(F)に示されたものと同様の撮像システムは、適切な発光源と組み合わせられた場合、本発明の実施形態の補償光学多光子撮像システムまたは第二高調波撮像システムを実現するために、ステアリングミラー199をビーム照射モジュール、補償光学素子、およびコントローラと置き換えることができる。本発明の光ピンセットの実現もまた、光ピンセット構成におけるビームステアリングミラーをビーム照射モジュール、補償光学素子、およびコントローラと置き換えることによって実現され得る。光ピンセットにおいて、検出器はしばしば、デジタルカメラである。
補償光学素子の共役
光学系における補償光学素子の共役面を選択することは、一回の補償光学補正によって補正可能な広い視野を達成するために考慮すべき重要な事項である。ビームが標本にわたって走査されるときに光は異なる光路を横断するので、収差は、各々の被写界位置について変化し得る。収差の変化率および被写界位置と関連づけられた点広がり関数(PSF)は、収差源の特性および光学レイアウトの詳細に依存する。アイソプラナティックパッチは、PSFがどれだけ迅速に被写界位置を変化させるかの測度であり、往々にして、経路内の任意の2つの波面間の二乗平均平方根(RMS)波面差分がクリティカルな値未満である領域として定義されるが、アイソプラナティックパッチの別の定義が文献においても使用されている。本特許出願においては、即時の回折限界での視野の概念が、補償光学性能を評価および比較するために使用される。ここで、回折限界でのとは、0.8以上のストレールレシオとして定義される。即時のとは、一回の補償光学補正のみを使用することを示す。ある特定の用途において、撮像性能の著しい向上が見られるが、回折限界の性能には到達できていない。同様の視野における性能の向上、または、クリティカルな性能レベルでの視野のサイズの増加もまた有用であり、本発明の実施形態によって達成され得る。
ほとんどの補償光学撮像システムの文献および説明は、補償光学素子をシステムの瞳孔面と共役にすることを教示している。補償光学顕微鏡システムにおいて、補償光学素子はしばしば、顕微鏡の対物レンズの瞳孔面と共役である。これらのことは、文献「Adaptive optics via pupil segmentation for high−resolution imaging in biological tissues」by N.Ji,D.Milkie,and E.Daniel,Nature Methods,7,141−147(2009)、および文献「Image−based adaptive optics for two−photon microscopy」by D.Debarre,E.Botcherby,T.Watanabe,S.Srinivas,M.Booth,and T.Wilson,Opt.Lett.34,2495−2497(2009)、および他の文献において教示されている補償光学走査型レーザー検眼鏡および補償光学OCTシステムにおいて、補償光学素子はしばしば、眼の瞳孔と共役である。走査型光学系のために、補償光学素子を瞳孔と共役にすることは、撮像ビームにわたるアクチュエータの数を最大化し、走査の間に補償光学面と瞳孔面との両方における固定ビーム中心という結果を生じる。文献「Requirements for discrete actuator and segmented wavefront correctors for aberration compensation in two large populations of human eyes」by N.Doble,D.Miller,G.yoon,and D.Williams,Appl.Opt.46,4501−4514(2007)は、人間の眼の個体群における瞳孔にわたるアクチュエータの数およびストロークの要件を調査する。別の文献「Statistical variation of aberration structure and image quality in a normal population of healthy eyes」by L.Thibos,X.Hong,A.Bradley,and X.Cheng,J.Opt.Soc.Am.A 19,2329−2348(2002)は、眼の通常の個体群における収差のタイプおよび大きさを調査する。これらの文献の両方において、波面測定が、見通し線に沿って実行されるので、眼の単一の被写界位置しか調査されない。実際の補償光学撮像システムは、単一の点だけでなく拡大された視野にわたって撮像する。補償光学補正が可能な限り広い被写界に適用されることもまた望ましい。光学補償オプティクスの瞳孔共役は、シミュレーションまたは実験的な方法によって決定され得る。補償光学素子の共役の効果は、光学シミュレーションを通じて次に論証する。
眼のLiou−Brennanモデルは、今までに開発された人間の眼の最も精確なモデルの1つであり、眼に対する形態学的に同様の表面輪郭、レンズの勾配屈折率特性、眼と同様のオフセット瞳孔位置を含む。文献「Different Schematic Eyes and their Accuracy to the in vivo Eye:A Quantitative Comparison Study」by MS de Almeida and LA Carvalho,Brazilian Journal of Physics 37,pp.378−387(2007)において説明されているように、このモデルは、生理学的に得られた実験用データと一致することが示されている。図27(A)は、Liou−Brennanモデルに基づいた、人間の眼2705のモデルのZEMAXシミュレーションされたレイトレーシングを示すが、瞳孔は光軸に対して中心に配置されている。瞳孔径は4mmであり、これは、残留収差ゆえに、最適な横方向撮像分解能を生み出すことが予期される直径より大きい。
文献「Optical aberrations and alignment of the eye with age」by Esther Berrio,Juan Tabernero,Pablo Artal,Journal of Vision 10(14)(2010)において説明されているように、眼の加齢過程の研究によって、年齢に伴い増加する屈折誤差の主な原因は、角膜の変化よりもむしろ水晶体の変化に起因することが知られている。通常の若い眼において、角膜2710の収差は、水晶体2715における収差によってバランスをとられる。そのため、通常に加齢が進んだ眼における収差の源は、瞳孔面自体に存在するのでなく、角膜2710と水晶体2715との間の収差の不均衡に由来する。図27(B)は、4f望遠鏡を使用して眼の瞳孔面と共役な可変形鏡2720の従来の補償光学設計を示す。ここで、望遠鏡は、ZEMAXにおける第1の近軸レンズ表面2725および第2の近軸レンズ表面2730で構成される。近軸レンズ表面は、理想のレンズのように動作し、それら独自のいかなる収差も導入しない。位相誤差を導入し得る表面(ゼルニケフリンジ位相表面)は、水晶体2735のすぐ後に設けられ、角膜と水晶体レンズの後面との間の収差の追加の不均衡を作成するように動作する。このシミュレーションにおける可変形鏡2720からの光は、平らであり、収差がない。可変形鏡2720からのコリメートされた光は、アフォーカル望遠鏡システムの第1のレンズ2725に伝播し、集束ビームに合焦点させられ、集束ビームが今度は、第2のレンズ2730によって収集され、眼のモデル2705への照射のために再度コリメートされる。収差のない光は、眼のモデル2705に入り、眼に固有の収差の影響を受け、加えて、収差表面によって導入される収差の影響を受け、網膜に合焦する。収差表面2735は、非点収差位相誤差2740を生成するように構成される。網膜での光の波面分析2745は、眼の自然な収差と組み合わせられた収差源の支配的な形状を示す。
図28は、可変形鏡を眼の中の瞳孔と共役にするこの従来のアプローチについての追加の情報を示す。図28(A)は、システムにおける共役画像面を示す。図28(B)は、システムにおける共役瞳孔面を示し、可変形鏡が眼の瞳孔面に結像させられることが理解され得る。図28(C)は、主光線、周辺光線、補助光線が表示された眼の中の水晶体および可変形鏡のレイトレーシングにおけるズームを示す。期待されるように、主光線および補助光線は、相対的な順序および保存されたビーム直径によって正規化された間隔の、可変形鏡から眼の瞳孔へと結像させられる。しかしながら、収差の源の平面で、主光線および補助光線は重なり合い、交差する。これは、可変形鏡で適用された補正が、収差の源の平面でぼやけ、結果的にこの平面で導入された収差を補償する際にさほど有効でないことを意味する。
図29は、可変形鏡が今度は収差源の平面にほぼ設けられた平面と共役であるように、望遠鏡のレンズ間隔が調節されている別の設計を示しており、このとき、可変形鏡が収差源の平面にほぼ設けられた平面と共役である図29(A)は、共役画像面のレイトレーシングを示す。図29(B)は、可変形鏡と収差の源の近似平面との間の共役が見られ得る共役瞳孔面のレイトレースを示す。図29(C)は、主光線、周辺光線、および補助光線のレイトレースにおけるズームを示す。この別の構成において、主光線および補助光線は、可変形鏡で交差し、また、収差の源の平面でも交差する。これは、可変形鏡での補正形状が、収差源の平面において空間的に局所化され、2つ以上の被写界位置での収差を相殺する際に有効であることを意味する。
4.5度×4.5度の被写界サイズにわたり撮像することで、図30は、図28に示された瞳孔共役構成の性能と図29に示された収差源共役構成の性能とを比較する。これらのシミュレーションにおいて、可変形鏡(ゼルニケフリンジ位相)は、ゼルニケモード4〜27によってパラメータ化され、ZEMAX最適化が、(0,0)、(0,4.5)、(2.25,2.25)、(4.5,0)、および(4.5,4.5)の5つの被写界位置にわたるRMS波面誤差を同時に最小化するように可変形鏡の形状を最適化するために使用された。瞳孔共役構成のケースでは、可変形鏡の位置が、瞳孔共役を維持するために固定された。収差共役構成のケースでは、アフォーカル望遠鏡の第1のレンズに対する可変形鏡の位置が、変数として定義され、最適化中に変化することを可能にさせられた。収差共役構成のケースでは、可変形鏡の能動直径が、(4.5,4.5)の被写界位置において最も極端な光線の位置と一致するように強制された。2つの異なる構成において同一のゼルニケ項を使用することにより、可変形鏡の相対的な空間周波数補正能力は、公平に比較するために同一であり、すなわち、2つの鏡のアクチュエータカウントおよび影響関数は、補償光学素子の直径に対し、正規化された場合に同一である。結果は、同一の被写界サイズにわたって、収差源共役構成は、すべての被写界位置におけるストレールレシオに関し、瞳孔共役構成よりも優れた性能であることを示す。収差源共役構成が、4.5×4.5の視野全体にわたり回折限界性能(0.8より大きいストレールレシオ)を有する一方で、瞳孔共役システムは、視野全体にわたり限られた回折でない。これは、眼の中の収差が主に水晶体の後面付近の屈折誤差に起因する場合、補償光学素子の最適位置が、瞳孔面の外、瞳孔面と示された収差面との間のどこかにあることを意味する。この瞳孔外走査スキームが機能するために、ビーム径は、図31(E)に示すように、可変形鏡の能動直径よりも小さくなければならず、ビーム中心は、可変形鏡表面上を移動しなくてはならないことに注意すべきである。これは、ビームにわたるアクチュエータ密度がわずかに失われるという結果を生じるが、収差源との共役することには、アクチュエータ密度がわずかに失われることを上回る利点があることを示す。
眼の中では、収差源の一般的な領域を設け、収差源と共益する、または、補償光学素子を収差源とほぼ共役にすることが可能である。これは、収差源が瞳孔面の近くに位置し、収差源と焦点面との間に十分な距離があるからである。顕微鏡ベースの撮像システムにおいては、収差源は一般的に、焦点面の非常に近くにあり、標本および撮像面に隣接している、接している、または近くにある標本自体または材料または光学インターフェースに起因する。したがって、顕微鏡システムにおいて、補償光学素子を収差源と完全に共役にすることは必ずしも可能ではない。図31(A)〜図31(C)は、レンズのための設計形態が米国特許第6501603号明細書において説明されたレンズ規定から導出される顕微鏡の対物レンズを示す。図31(A)は、顕微鏡の対物レンズにおける最後のレンズから出て標本の中に合焦する光線のズームした図を示す。対物レンズは水浸型であり、対物レンズの光学性能のZEMAXシミュレーションは、対物レンズの最後のガラス素子に続く水の層を含む。水の層の後には、ゼルニケ位相表面と、光学焦点が存在する水の最後の層の前の薄い水の層とが交互に続く。ゼルニケ位相表面は、標本の深度を通って生じる標本誘発光学収差のより現実的な影響をシミュレートする(すなわち、収差が、単一平面に含まれない)。ゼルニケ位相表面によって導入される位相誤差の形状は図31(A)に示され、山から谷までの収差の1つの波についてともに導入する。標本によって導入された収差を補正する可変形鏡の能力は、ゼルニケ項4〜20を使用してゼルニケ位相表面により可変形鏡を定義し、可変形鏡の移送補正の形状を0.0度、2.5度、および5.0度の入力角の被写界位置にわたる二乗平均平方根(RMS)波面誤差を同時に最小化するように最適化することによって、比較される。図31(B)に示された、補償光学素子が対物レンズの瞳孔と共役な構成が、図31(C)に示された、補償光学素子が15mmだけ瞳孔面から遠くにシフトされた構成と比較される。補償光学素子は、50mmの焦点距離を有する近軸レンズ表面で構成された望遠鏡によって、顕微鏡の対物レンズにおける領域と共役になる。図31(B)は、瞳孔共役構成についての最適な補償光学補正を示す。図31(C)は、瞳孔外共役補償光学補正についての最適な補償光学補正を示す。0.0、2.5、および5.0度の被写界位置についての結果として生じるストレールレシオは、瞳孔共役構成については0.758、0.887、0.702であり、瞳孔外共役構成については0.805、0.926、0.837である。同一の被写界サイズにわたって、瞳孔外共役構成は、瞳孔共役構成よりも性能が優れており、瞳孔外共役構成によって得られるより大きな回折限界での視野を示す。
補償光学素子の瞳孔外共役によるより広い回折限界視野が、人間の眼の中の撮像および拡大された被写界サイズにわたる収差生成標本を通じた二光子撮像の例とシミュレーションによって、論証されている。しかしながら、瞳孔面外に補償光学素子を配置することがビームにわたる有効アクチュエータ数を減じるということを実現することが重要である。図31(D)は、補償光学素子をシステムの瞳孔面と共役させる場合に達成されるように、補償光学素子の能動面積と等しく、かくしてビームにわたるアクチュエータの個数を最大化するビームサイズを示す。瞳孔面外に補償光学素子を配置するケースにおいて、図31(E)に示すようにビーム中心位置が走査角の関数に応じて移動しなくてはならないので、ビームサイズは、補償光学素子の能動面積よりも小さくなければならない。所与の補償光学素子のために、これは、ビームにわたるアクチュエータの個数を必ず減じ、それは、波面補正に潜在的に悪い影響を及ぼす。広い被写界サイズのために、より広い視野にわたる改善された補正の瞳孔面外に補償光学素子を配置することによって提供される利点は、ビームにわたるより低い空間周波数補正の欠点を上回る。所望の視野のサイズが狭くなると、視野にわたる波面の変換の大きさもまた減少し、アイソプラナティズムの影響は、さほど顕著ではなくなるので、ビームにわたるアクチュエータの数を増大させることは、瞳孔面外に、また収差面により共役であるように補償光学素子を移動させることよりも性能に対しより利点があり得る。単一点の視野の限界において、波面は、視野にわたりまったく変化せず、最良の補償光学性能が、システムの瞳孔面に補償オプティクスを共役させることによりビームにわたるアクチュエータの数を最大化することによって得られ得る。本発明の一実施形態において、補償光学素子715は、システムの瞳孔面と共役である。本発明の別の実施形態において、補償光学素子715は、補償光学補正を向上させるために瞳孔面外の平面と共役になる。補償光学補正を向上させることは、拡大された視野にわたる特定のストレールレシオへ撮像すること、または同様のサイズの視野にわたり撮像することであるが、その視野内のストレールレシオを改善することによって構成し得る。図28(C)に見られ得るように、ビーム旋回軸点は、補償光学素子のところに設けられる。図29(C)および図31(C)において見られ得るように、ビーム旋回軸点は、補償光学素子の近くに設けられるが、補償光学素子のところではない。それは、ビーム照射モジュールが4つ以上の運動軸によって動作し、補償光学素子のところで、または補償光学素子の近くにビーム旋回軸点を作成することまたは対応させることによって、補償光学素子を優先的にインターフェースするために光の角度および位置を制御するという意味に近い。
補償光学素子の順序
ビーム照射モジュールと補償オプティクスの順序を変化させながら依然として必要不可欠な機能を保存することが可能である。一実施形態において、ビーム照射モジュール3215は、図32(A)に示されるように、システムにおいて補償光学素子3205の前に設けられる。この実施形態は一般的に、補償光学素子3205と標本伝達オプティクス3210との間の共役がビーム照射モジュール3215内の経路長の変化によって影響を及ぼされないので、好ましい。別の実施形態では、光学系における補償光学素子3220は、図32(B)に示されるように、ビーム照射モジュール3225の前に設けられる。この構成では、ビーム照射モジュール3225の光路長の小さな変化が、補償光学素子と共役な平面における位置依存性のアキシャルシフトを引き起こし得る。別の実施形態は、軸のグループ3235が補償光学素子3240の前に設けられ、軸のグループ3245が補償光学素子3240の後に設けられるように、ビーム照射モジュールの軸をスプリットする。この構成はまた、補償光学素子と意図された共役面との間の共役に影響を及ぼす光路長の変化に悪影響を受ける。補償光学走査システムの一実施形態において、ビーム照射モジュール720は、光ビームの中心が、主に、補償光学素子715の中心とアラインメントさせられたまま、補償光学素子715に対する光ビームの角度がビームステアリング動作中に変化させられるように、光を補償光学素子に向ける。補償光学走査システムの別の実施形態では、ビーム照射モジュール720は、補償光学素子715から光を受け取り、光ビームの中心が、主に、撮像システムにおける所望の瞳孔面の中心とアラインメントさせられたまま、所望の瞳孔面に対する光ビームの角度がビームステアリング動作中に変化させられるように、光を向ける。
合焦および共役の制御
顕微鏡では、対物レンズが、試料の異なる高さおよびサイズに対応するためだけでなく、標本において目的とする面に合焦するために、並進可能であることが一般的である。一実施形態は、図33に示されるように、標本内に焦点を調節するための手段を備える。より具体的には、本発明の実施形態は、撮像システムが標本伝達オプティクスの一部として顕微鏡の対物レンズ、走査レンズ、または対物レンズを並進させることにより焦点を調節するための手段を備えるケースを含む。対物レンズの位置が変化する場合、ビームアラインメントおよび補償光学素子との瞳孔共役を維持することがさらに望ましい。本発明の実施形態は、コントローラの運動軌跡が、標本伝達オプティクスの瞳孔と光ビームの適切なアラインメントを維持しながら、焦点の変化に対応するように変化するケースを含む。本発明の実施形態はまた、標本伝達オプティクス内の光学素子が、標本伝達オプティクスの瞳孔と光ビームの適切なアラインメントを維持しながら、焦点の変化に対応するように移動するケースを含む。いずれかの光学素子の位置を移動させることなく焦点に影響を及ぼすこともまた可能である。本発明の実施形態は、デフォーカスモードが標本内の焦点位置制御を達成するために補償オプティクスによって生成されるケースを含む。
分解能、視野、被写界深度、および他のものに関連するさまざまな理由のために、標本伝達オプティクスまたは対物レンズを変化させることが所望され得る。本発明の実施形態は、異なる瞳孔位置を有する異なる対物レンズが、ビーム照射モジュールにおける走査軌跡を調節することによって、標本伝達オプティクスにおける光学要素を調節することまたは変化させることによって、またはビーム照射モジュールにおける走査軌跡と標本伝達オプティクスにおける光学素子の両方を調節することによって、対応させられ得るケースを含む。
走査しながら対物レンズから出てくる光を監視することによって、光学アラインメントの品質を推測し、評価することが可能である。本発明の実施形態は、較正が、対物レンズの瞳孔位置を学習する代わりに、対物レンズによって実行されるケースを含む。さらに、本発明の実施形態は、標本伝達オプティクスにおける素子が、異なる対物レンズの瞳孔径、異なる対物レンズの瞳孔の場所、または異なる対物レンズの瞳孔径および瞳孔場所を対応させるように変化可能または調節可能であるケースを含む。1つの可能な実現において、ズームビームエキスパンダが、異なる瞳孔サイズに対応するために標本伝達オプティクスにおいて使用される。
オプションのエンハンスメントおよび別のの実施形態
異なる補償光学技術および補償光学設計は、異なる性能特性を有する。
一実施形態において、補償光学素子の数は2つ以上であり、補償光学素子の組み合わせが、波面補正、強度補正、または波面補正と強度補正の両方の範囲を増大させるために使用される。一実施形態において、補償光学素子の数は2つ以上である。いずれか1つの補償光学素子のみを使用する場合よりも好ましい補正を達成するために2つ以上の補償光学素子は、、異なる補正範囲、アクチュエータまたは画素についての異なる配列、アクチュエータまたは画素についての異なる間隔、または異なる時間的応答を有する。一実施形態において、2つ以上の補償光学素子は、図34に示されるように、ウーハーツイーター構成で使用される。4f望遠鏡が2つの補償光学素子間で使用され得るか、または2つの補償光学素子が互いにごく近接して設けられ得る。一実施形態において、液晶空間光変調器が、可変形鏡の反射面の近くに搭載される。この配列は、それによって可変形鏡と液晶空間光変調器とがほぼ同一平面と共役であることを可能にするので、所望され得る。一実施形態において、液晶空間光変調器は、大きな振幅の収差を補正するが、遅速動的性能に限定されない一方で、可変形鏡は、より小さな振幅の収差を補正するが、高速動的性能によって動作する。本発明の別の実施形態において、2つ以上のビーム照射モジュール720は、複数の補償光学素子715をカスケード接続するために使用され、各々のビーム照射モジュール720は、4つ以上の運動軸によって動作する。
光学性能が分散によって影響を受ける用途のために、本発明の実施形態は、システムにおける分散を補償するために分散補償ユニットを含み得る。本発明の一実施形態は、分散補償ユニットを含み、分散補償ユニットは、分散補償ミラー(DCM)、プリズム、ガラスウェッジ、グレーティング、または能動可変形鏡または空間光変調器による能動分散補償のいずれか1つ以上で構成される。
ある特定の撮像モダリティにおいて2つのビームによるパラレルな撮像を実行することが可能である。2つのビームは、2つの近くにスペースを置かれた光ファイバーチップから、または、異なる伝播角度を有する2つのビームから発生し得る。本発明の実施形態は、パラレルなスポット撮像を実行するために複数のビームが撮像システムを通過するケースを含む。
ビーム照射モジュール720によるビームステアリング方法は、コリメートされたビームによって示されている。しかしながら、同一の方法は、ビームが鏡の限界内にとどまる限り、集束または発散ビームのために機能する。本発明の一実施形態は、ビーム照射モジュール720において集束または発散ビームを使用する。
補償光学走査システムのセットアップおよびアラインメント中、発光源からのビームはしばしば、光学系の意図された光軸と精確にアラインメントさせられる必要がある。アラインメントは、時間および温度にわたってドリフトし得る。図35に示されるように、ビーム位置を監視することおよびセンサを使用することによってアラインメントの品質を決定することが可能である。本発明の実施形態は、1つ以上の位置センシング検出器または角度センシング検出器が、発光源からのビーム照射モジュールとの入来ビームのアラインメントの精度と、能動軸の走査軌跡を調節することによってミスアラインメントを補正するためにビームアラインメントについて使用される情報とを決定するために使用される。さらに、図35に示されているように、ビーム照射モジュールにおける能動ミラーの1つ以上を、通常の撮像経路からアラインメント検出器に光を向けるように変化させることによって、ビームの位置およびアラインメントを監視するためのセンサが光路に含まれ得る。本発明の一実施形態は、CCDアレイ、CMOSアレイ、または位置センシングダイオード(PSD)といった、1つ以上の1Dまたは2D検出器を含み、または、ビーム位置を測定し得る任意の他の検出器が、ビームアラインメントの品質をチェックするための小さなビームスプリッタまたは追加のミラーによって、またはそれらなしで、ビーム位置を監視するために使用され得る。
補償光学制御
補償光学系では、点光源(ガイド星)からの光が光学収差を推定するために使用されることが一般的である。本発明の一実施形態は、標本または標本内の点光源からの光における収差を測定するための波面センサを含む。この実施形態において、撮像システムは、図36(A)に示されるように、波面センサによって得られた収差についての情報を使用することにより、適切な補償光学補正を決定し得る。波面センサを使用する場合、実際に一般的に使用される可変形鏡を調節するためのアルゴリズムは、波面を測定するステップ3605と、補償光学補正値を計算するステップ3610と、その補正値を補償光学素子に適用するステップ3615とを実行することである。ほとんどの補償光学系は、波面センサに入るビームが標本に向けられる励起ビームと共線的であるように、スキャナの前に波面センサを配置する。前出の非特許文献9において教示されたように、波面センサのためのガイド星を生成するために、ダイクロイックミラーまたはビームスプリッタおよびビーコンのための光源が、本発明の実施形態の発光源705とビーム照射モジュール720との間に設けられ得る。あるいは、波面センサは、ビーム照射モジュール720およびダイクロイックミラー、または、標本伝達オプティクス730の一部として適切な瞳孔リレーとともに含まれるビームスプリッタの後に設けられ得る。ビーム照射モジュールの後に波面センサを設けることの利点は、瞳孔との波面センサの共役がビームステアリング位置によって変化しないことである。しかし、励起ビームは、波面センサ測定に有意なチルトモードを導入しないように正確にセンタリングされなくてはならない。ビーム照射モジュールの前に波面センサを設けることの利点は、チルトモードが走査の間に導入されないことである。しかし、共役面との波面センサの共役に影響を及ぼす走査中の小さな経路長変化が存在し得る。
適切な補償光学補正値を決定するための他の方法が存在する。波面センサレス補償オプティクスとしばしば呼ばれる1つの技法は、画像からの情報または標本信号のみを使用して補償光学コンポーネントを最適化する。センサレス補償光学のためのアルゴリズムを教示する文献は、「Image based adaptive optics through optimisation of low spatial frequencies」by D.Debarre,M.Booth,and T.Wilson,Opt.Express15,8176−8190(2007)、「Image−based adaptive optics for two−photon microscopy」by D.Debarre,E.Botcherby,T.Watanabe,S.Srinivas,M.Booth,and T.Wilson,Opt.Lett.34,2495−2497(2009)、および他に「Adaptive optics via pupil segmentation for high−resolution imaging in biological tissues」by N.Ji,D.Milkie,and E.Daniel,Nature Methods,7,141−147(2009)を含む。波面センサレス補償光学制御では、図36(B)に示されるように、補償光学素子と信号との間の入力/出力データを得るために補償光学素子を摂動するインタラクティブループがしばしば存在する。この内部ループは、補償光学素子に形状(基底関数、または往々にしてモードと呼ばれる)を適用するステップ3620と、信号応答を測定し記憶するステップ3625とで構成される。内部ループの結果は、補償光学補正を計算するステップ3630において使用され、補償光学素子に補正を適用するステップ3635がそれに続く。本発明の一実施形態は、波面センサレス補償光学最適化方法を使用することにより適切な補償光学補正を決定する。多くの波面センサレス方法は、基底関数とも呼ばれる一連の形状、またはモードを最適化処理の一部として補法光学素子に適用する。補正の品質は、検出器により標本から帰ってくる光の測定に関連づけられたメトリックを計算することによって評価され得る。本発明の実施形態は、補償光学最適化方法が一連の補償光学形状を生成し、その形状を撮像システムに適用し、検出器からの光の測定に基づいてメトリック値を計算することにより形状のインパクトを評価し、画像または信号品質を改善するために補償光学素子を更新するケースを含む。前出の文献(Debarre,2007、Debarre,2009、Ji,2009)において教示されているように、メトリックは普通、信号品質、コントラスト、または空間周波数成分の測定値である。最適化アルゴリズムは、ニュートン法、準ニュートン法、勾配降下、共役勾配、遺伝的アルゴリズム、シミュレーテッドアニーリング、ヒルクライミング、多項式補間、または数値最適化の分野において知られている他の最適化アルゴリズムを含む、最適化の分野において知られている多くの最適化アルゴリズムのうちのいずれか1つであり得る。補償オプティクスの最適化は、ゾーナル制御方法またはモーダル制御方法によって実行され得る。ゾーナル方法において、補償光学アクチュエータまたは画素の局所的な領域は、別個に制御される。モーダル制御方法では、複数のアクチュエータまたは画素が、基底形状のセットと同時に制御される。モーダル技法を使用する場合、本発明の一実施形態は、最適化アルゴリズムの集束レートを改善するために際立って直交である補償光学モード形状のプロファイルを使用する。収差補正のある特定のモードは、画像品質を改善しない。たとえば、ピストンは、波面の絶対位相を変化させるが、結果として生じる点広がり関数(PSF)は変化させない。チップおよびチルトは、ビームをステアリングするが、画像品質に影響を及ぼさない。したがって、補償光学素子を制御するモードからピストン、チップ、およびチルトを取り除くことが往々にして所望される。本発明の実施形態は、補償光学形状のプロファイルが、ピストン、チップ、およびチルトモードの部分を含むことを回避するために生成されるケースを含む。いくつかの環境において、ある特定のモードの形状は、他のものよりも重要である。最適化は、図37に示されているように、モードのサブセットに対し実行され得る。基底振幅を示すグラフ3705によって示されているように、3つの基底形状(モード)のみが最適化において使用される。集束グラフ3710は、最適化アルゴリズムのプログレスを示す。平らな可変形鏡3715による標本の画像は、最適化された可変形鏡3720による標本の画像と比較される。平らな可変形鏡3715による標本の画像と比較すると、最適化された可変形鏡3720による標本の画像は、信号の増大と分解能の向上を示す。
多くの撮像モダリティは、共焦点、多光子、および他のものといった、深度セクショニング撮像モダリティである。セクショニング撮像モダリティのために、標本における特定の焦点深度で収差を劣化させる画像を補正することが望ましい。このケースにおいて、補償光学素子を制御する基本的なセットからいずれかのデフォーカスモードを取り除くことが望ましい。本発明の実施形態は、補償光学補正のプロファイルがデフォーカスモードの一部を含むことを回避するために生成されるケースを含む。標本における特定の領域についての最適化された補償光学状態を考慮すると、近くの領域が同様の収差を有することがあり得る。したがって、集束を達成するために要求される時間を短縮するために近くの領域についての状態によって補償オプティクスを初期化することが可能である。1つ以上の領域からの適切な補償光学補正についての情報は、標本における新たな領域についての推定を改善する目的と組み合わせられ得る。本発明の実施形態は、標本内の第1の場所または複数の場所についての適切な補償光学補正についての情報が、標本内の新たな場所のための適切な補償光学補正を推定するために使用されるケースを含む。
OCT撮像を実行する場合、OCTフリンジ内に含まれる周波数および位相情報は、標本から入ってくる光の経路長についての情報を含む。OCTフリンジに符号化された情報は、波面を推定するために使用され得る。共焦点または多光子撮像において、ブラインドコンボリュージョンのような方法は、点広がり関数、物体、および波面を推定するために使用され得る。本発明の一実施形態は、補償光学素子715の補正を決定するための最適化処理の一部として、OCTデータから、またはブラインドデコンボリュージョンといった画像処理方法から推定された波面を使用する。
光ピンセットシステムにおいて、補償オプティクスは、文献「Holographic optical tweezers aberration correction using adaptive optics without a wavefront sensor」by KD.Wulff,DG.Cole,RL.Clark,RD Leonardo,J Leach,J Cooper,G Gibson,MJ Padgett,Proc.SPIE 6326,Optical Trapping and Optical Micromanipulation III,63262Y(2006)および「Combined holographic−mechanical optical tweezers:Construction,optimization,and calibration」,by RDL Hanes,MC Jenkins,and SU.Egelhaaf,Rev.Sci.Instrum.80,083703(2009)において教示されたもののようなアルゴリズムを使用して最適化され得る。
ビームの切り替え
図38(A)は、x軸に沿って見たビーム照射モジュールの図を示す。図38(B)は、y軸に沿って見た同一のビーム照射モジュールの図を示す。3つの異なる入力ビーム3805、3810、および3815は、ステアリングミラー3820と完全に一致した点でそれらが交差するように、照準を定められる。入来ビーム間の角度は、ステアリングミラー3820の回転が、入力ビーム3805、3810、または3815のうちどれが光学系を通過するかを選択することを可能にするのに十分小さい。入来ビーム3805、3810、および3815間の角度が非常に小さい場合には、非能動ビームの意図されない部分も光学系を通過することが可能である。光学系を通るビームの意図されない透過は、ビーム間の角度が、鏡3825でのビームエッジ間の距離が鏡面よりも大きいほど十分に大きいことを保証することによって、防止され得る。光学系を通るビームの意図されない透過は、光学系内のフィールドストップが意図されないビームの透過をブロックするのに十分な程度にビーム間の角度が大きいことを保証することにより、防止され得る。入力ビーム間の切り替えの能力は、複数の撮像モードを実行する際に所望され得る。単一の設備が、発光源と他の関連するシステムとを切り替えることにより、異なる撮像モダリティを実行し得る。たとえば、組み合わせられた二光子撮像システムおよびOCT撮像システムは、850nmあたりにセンタリングされたチタンサファイアレーザーと、850nm、1050nm、1310nmあたりセンタリングされたOCTシステムとを使用する。チタンサファイアレーザー3830からの光は、ビーム照射モジュール3840に向けられたビーム3835を生成する。OCTシステムからの光は、光ファイバーケーブル3845によって伝達され、これもまたビーム照射モジュール3840に向けられるビーム3850にコリメートされる。ビーム照射モジュールは、標本伝達オプティクス3855を通る光を標本3860に向けるために2つの入力ビームの切り替えを可能にする。二光子撮像モードにおいて、励起光は、ロングパスフィルタ3865を通過する一方で、標本からの蛍光発光は、ロングパスフィルタ3865に反射し、PMT検出器3870に向けられる。OCT撮像モードにおいて、850nm、1050nm、または1310nmあたりにセンタリングされた光は、標本に向かう方向でロングパスフィルタ3860を通過し、また後方散乱し反射した標本3860からの光を、ロングパスフィルタを通過させ、ビーム照射モジュールを通ってOCT干渉計に戻す。マルチモーダル撮像システムを使用することで、標本についての追加の情報が集められることができ、機器が、コンパクトな設置における異なる撮像モダリティのために時間共有されることができる。
モジュラー補償光学素子
先に説明されたビームステアリングモジュールおよび補償光学素子の基本的な概念は、他の機器への適合のためのモジュラー補償光学ユニットとして考慮され得る。モジュラー補償光学ユニットは、それ自体の光学系と統合されたユーザ向けスタンドアロンモジュールとして、相手先商標製品製造会社(OEM)モジュールとして、または統合システムの一部として、売られ得る。モジュラー補償光学ユニットのビームステアリングモジュールおよび補償光学素子部の一実施形態が、図13〜図15に示される。図38(D)に示されるように、モジュラー補償光学ユニットの一実施形態は、1つ以上の入口ポートであって、図38(A)に示すように、1つ以上の光学ビームがモジュラー補償光学ユニットに入ることを可能にする入口ポートと、1つ以上の出力ポートであって、光学ビームが透過または終端し得る1つ以上のビーム経路に沿って設けられた出力ポートと、1つ以上の補償光学素子であって、波面に影響を及ぼすか、強度に影響を及ぼすか、または光ビームの波面と強度の両方に影響を及ぼす、補償光学素子と、ビームステアリング素子のセットであって、光ビームがその周りを旋回させられる少なくとも1つの有効回転点を優先的に作成するために、光の角度および/または光の横断位置、光の伝播経路に影響を及ぼす4つ以上の運動軸を作成する、ビームステアリング素子と、優先的な経路に沿って光ビームを向けるようにビームステアリング素子の軌跡を制御するための手段とで構成される。入口ポートおよび出力ポートは、物理ポートまたは単純に異なる光学経路であり得る。軌跡を制御するための手段は、コントローラ725について先に議論された軌跡を制御するためのすべての手段を含む。
図38(D)において、モジュラー補償光学ユニット3875の実施形態は、第1のビーム3880および第2のビーム3885から光を受け取り、光学サブシステム3887に光を向ける。
光学系では、光ビームを調整すること、またはある特定の光学素子を汚染から保護すること、またはこれらのある特定の素子へのアクセスを制限することが望まれ得る。この目的を達成するために、モジュラー補償光学ユニット3875の一実施形態の入口ポート3890および出力ポート3895の1つ以上は、光学窓、光学フィルタ、バンドパスフィルタ、ノッチフィルタ、ロングパスフィルタ、ショートパスフィルタの任意の組み合わせを含む。このリストは、これらのポートで使用できる光学素子の完全なリストとみなされるべきではない。これらは、使用され得る一般的な素子の例である。これらの素子は、固定されていても、取り外し可能であってもよい。モジュラー補償光学ユニットの一実施形態において、1つ以上の光学フィルタは取り外し可能である。
モジュラー補償光学ユニット3875の一実施形態の補償光学素子は、1つ以上の可変形鏡を含み得る。モジュラー補償光学ユニットの一実施形態は、可変形鏡である補償光学素子を備える。モジュラー補償光学ユニットの実施形態の可変形鏡は、連続フェースシートまたはセグメント化されたフェースシート、静電気アクチュエータ、ピエゾ電気アクチュエータ、ユニモルフピエゾアクチュエータ、バイモルフピエゾアクチュエータ、空気圧式アクチュエータ、またはフェースシートを変形させるための他の同等な手段を備え得る。これらの可変形鏡素子の例が図3に示される。モジュラー補償光学ユニットの一実施形態における可変形鏡は、MEMs型構造、膜型構造、層状ピエゾ型構造、チップ/チルト/ピストンまたはチップ/チルト素子型構造、または、鏡面の形状、鏡面の向き、鏡面の形状と鏡面の向きを繰り返し変えることができる他の型の構造のものであり得る。
モジュラー補償光学ユニット3875の実施形態の補償光学素子は、1つ以上の空間光変調器を含み得る。モジュラー補償光学ユニットの一実施形態は、空間光変調器である補償光学素子を使用する。空間光変調器は、液晶素子に基づいてもよく、または、強度の変調、位相の変調、または位相と強度の両方の変調のための他の方法に基づいてもよい。例が図3に示される。空間光変調器は、補償光学素子の前または後の光学ビームに対し引き起こされる波面収差または強度変動を補償するために使用され得る。光学系を通って伝播するビームの波面および強度は、ビームがそれを通って進む媒質によって影響を受け得る。これらの媒質は、ガス、液体、光学窓、ガラス素子、組織、フィルタ、レンズ、鏡、屈折光学素子、能動または受動クリスタルを含むが、これに限定されない。モジュラー補償光学ユニットの一実施形態は、波面収差、または強度変動、または波面収差および強度変動を補償するために補償光学素子を使用する。ここで、波面収差、または強度変動、または波面収差および強度変動は、少なくとも1つの出力ポート3895に向かって透過し、少なくとも1つの出力ポート3895の中を透過した後に、ガス、液体、光学窓、ガラス素子、組織、フィルタ、レンズ、鏡、屈折光学素子、能動または受動クリスタルを備える光学媒質または光学素子を通って伝播することによって、光学ビームに対して引き起こされる。
光学ビームにおける波面または強度変動の量に依存して、補正され得るこれらの変動の大きさを増大させるために、2以上の補償光学素子が使用され得る。補償光学素子は、互いに本質的に同様であってもそうでなくてもよい。それらが変動を静的に補償するために使用されてもよく、または補償は時間的に変えられてもよい。たとえば、モジュラー補償光学ユニットの一実施形態では、異なる設計による2つ以上の補償光学素子が使用され得る。1つの補償光学素子のみを使用するよりも好ましい補正を達成するために、2つ以上の補償光学素子は、異なる補正範囲、または異なるアクチュエータ配列、または異なる間隔、または異なる時間的応答、またはこれらのパラメータの任意の組み合わせを有する。
多くの補償光学系は、光学系におけるビーム旋回軸の場所の要件を適切に管理するために、図6に示される光学リレーを使用する。モジュラー補償光学ユニットは、光学系における適切な場所にビームの旋回軸の場所を生成するためのビーム照射モジュールを含む。ビーム照射モジュールは、ビームを適切に誘導するように鏡に影響を及ぼす4つ以上の運動軸を有する。モジュラー補償光学ユニットの一実施形態は、運動軸が少なくとも1つの回転軸を備えるケースを含む。モジュラー補償光学ユニットの一実施形態は、運動軸が少なくとも1つの並進軸を備えるケースを含む。モジュラー補償光学ユニットの一実施形態は、運動軸が回転軸と並進軸との組み合わせを備えるケースを含む。モジュラー補償光学ユニットの一実施形態は、少なくとも1つのガルバノメータ駆動型ミラーを備えるビームステアリング素子を使用する。モジュラー補償光学ユニットの一実施形態は、4つのガルバノメータ駆動型ミラーを備えるビームステアリング素子を使用する。モジュラー補償光学ユニットの一実施形態は、少なくとも1つの高速ステアリングミラーを備えるビームステアリング素子を使用し、高速ステアリングミラーは2つの回転軸を有する。モジュラー補償光学ユニットの一実施形態は、2つの高速ステアリングミラーを備えるビームステアリング素子を使用し、2つの高速ステアリングミラーは2つの回転軸を有する。モジュラー補償光学ユニットの一実施形態は、少なくとも1つの共振走査ミラーを備えるビームステアリング素子を使用する。モジュラー補償光学ユニットの一実施形態は、ステアリングミラー、音響光学偏向器、回転ポリゴン、電気光学ビーム偏光器、電気光学プリズム、熱光学プリズム、または回折アレイを、単独でまたは任意の組み合わせで備えるビームステアリング素子を使用する。
モジュラー補償光学ユニットの一実施形態は、アクチュエータまたは能動素子への電子信号によって制御される複数の運動軸間の協調によって動作する。モジュラー補償光学ユニットの一実施形態は、機械的リンケージによって制御されるこれらの運動軸間の協調によって動作する。光のビームを向けるために運動軸を制御しようとすることに伴って、軌跡が変化する。モジュラー補償光学ユニットの実施形態のうちの一実施形態は、少なくとも1つの出力ポートにおいて、または、少なくとも1つの出力ポートによって光ビームを受け取る光学系内の定義された平面で、それがラスタ走査パターンをトレースするように、光ビームの経路を変える運動軸の軌跡を制御するための手段によって動作する。モジュラー補償光学ユニットの一実施形態は、光ビームの中心が、主に、補償光学素子の中心に整列されたままで、補償光学素子に対する光ビームの入射角が運動軸の軌跡を制御する手段によって変えられるように光ビームを補償光学素子に向けるために、ビームステアリング素子を使用する。モジュラー補償光学ユニットの一実施形態は、補償光学素子から光を受け取り、光ビームの回転の見かけの中心が、主に、定義された平面に位置する点に対してアラインメントさせられたまま光ビームの角度が運動軸の軌跡によって変えられるように光ビームを向けるために、ビームステアリング素子を使用する。ここで、定義された平面は、ビーム経路に沿ってビームステアリング素子の後に配置される。
前述したように、複数の補償光学素子は、波面の変動、または強度の変動、または波面と強度の変動を補償することを要求され得る。モジュラー補償光学素子の一実施形態は、各々のビーム照射モジュールが4つ以上の運動軸によって動作するような2つ以上のビーム照射モジュールが複数の補償光学素子をカスケード接続するために使用されるケースを含む。
補償光学走査システムのモジュラー補償光学ユニットの一実施形態は、4f光学リレーが、組み込まれた補償光学素子の能動エリアを補償走査システムからの光ビームを受け取る光学系と一致させるために使用されるケースを含む。モジュラー補償光学ユニットの一実施形態は、4f光学リレーが、補償光学走査システムを少なくとも1つの出力ポートから光ビームを受け取る光学系にインターフェースすることを可能にするために、少なくとも1つの出口ポートの前の、実質的に少なくとも1つの出口ポートでの、または少なくとも1つの出口ポートの後の、共役面へ補償光学素子上に入射する波面をリレーするために使用されるケースを含む。図6は、1つの平面から別の平面に波面をリレーするために使用され得る典型的な4fリレーを示す。
モジュラー補償光学ユニットの一実施形態は、4f光学リレーが反射光学素子、屈折光学素子または反射光学素子と屈折光学素子との組み合わせを備えるケースを含む。モジュラー補償光学ユニットの一実施形態は、4f光学リレーが可変倍率を有するケースを含む。モジュラー補償光学ユニットの一実施形態は、1つ以上の4f光学リレーが、補償光学走査システムを補償光学走査システムの少なくとも1つの出力ポートから光ビームを受け取る光学系にインターフェースするために使用され得るケースを含み、ここで、4f光学リレーは、光学系における瞳孔面と補償光学走査システムの第1の光学素子との間の短い距離に関連する空間の制約を克服するのに役立つ。
多くの走査型レーザーシステムは、パルスレーザーを光源として要求する用途で使用される。短パルスレーザーは、比較的高いピーク電力によるシステムへの光学エネルギーの短いバーストを入力する能力を提供する。光学波長範囲は実質的に、CWレーザーよりも広く、所望の波長で、または所望の波長付近でセンタリングされる。パルスレーザーから発せられる波長スペクトルは、用途合わせて、ある特定の動作パラメータ限界内で調整し得る。ビーム終端点でのパルス持続時間が実質的にほぼある特定の値であることを要求する用途である場合には、分散補償素子または分散補償システムが、光学材料が光パルスの持続時間に悪影響を及ぼし、それによる光スペクトルを補償するために必要とされる。補償光学走査システムのモジュラー補償光学ユニットの一実施形態は、分散補償素子または分散補償システムが、分散補償素子または分散補償システムの前にビームによって「見られた」光学材料によって引き起こされる光ビームにおける分散を補償するために、または、分散補償素子または分散補償システムの後にビームによって「見られる」であろう光学材料によって引き起こされる光ビームにおける分散を予め補償するために、使用され得るケースを含む。モジュラー補償光学ユニットの一実施形態は、分散補償素子または分散補償システムが、独立した分散補償素子として、または、組み合わせで、所望の分散補償量を達成するために、マルチレイヤ絶縁ミラー、光学プリズム、回折光学素子、ホログラフィック光学素子、液晶光学素子、プログラム可能な回折光学素子、プログラム可能なパルスシェーパーを含み得るが、これに限定されないケースを含む。
本発明は、説明されたいくつかの実施形態に関しある長さおよびある特性とともに説明されている。しかし、それが任意のそのような詳細または実施形態または任意の特定の実施形態に限定されるべきであることを意図したものではない。従来技術を鑑みてそのような特許請求の範囲の最も広い可能な解釈を提供するように、したがって、意図された本発明の範囲を有効に含むように、添付の特許請求の範囲に関連して解釈されるべきである。さらに、現時点で予見されていない本発明の実質的でない
変更がそれでもなお本発明の均等物を表し得るにもかかわらず、権能を付与する説明が利用可能とするために、発明者によって予見された実施形態の観点から本発明を説明したものである。