JP6238956B2 - 新規化合物、その製造方法、及びその用途、並びに、新規微生物 - Google Patents
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Description
<1> 下記構造式(1)で表されることを特徴とする化合物である。
ノカルディア(Nocardia)属に属し、前記<1>に記載の化合物を生産する能力を有する微生物を培養する培養工程と、
前記培養工程で得られた培養物から前記<1>に記載の化合物を採取する採取工程とを含むことを特徴とする化合物の製造方法である。
<3> ノカルディア(Nocardia)属に属し、前記<1>に記載の化合物を生産する能力を有することを特徴とする微生物である。
<4> 前記<1>に記載の化合物の製造方法であって、
アセトニトリルの存在下で、下記構造式(9)で表される化合物と、ナトリウムチオメトキシドとを反応させた後、前記反応物と、メチル化剤とを反応させることを特徴とする化合物の製造方法である。
<6> 前記<1>に記載の化合物を含むことを特徴とする抗がん剤である。
<7> 前記<1>に記載の化合物を含むことを特徴とする抗ヘリコバクター・ピロリ剤である。
<8> がんを予防又は治療するための方法であって、個体に、前記<6>に記載の抗がん剤を投与することを特徴とする方法である。
<9> ヘリコバクター・ピロリによる感染症を予防又は治療するための方法であって、個体に、前記<7>に記載の抗ヘリコバクター・ピロリ剤を投与することを特徴とする方法である。
<10> ヘリコバクター・ピロリに起因する胃及び十二指腸障害を予防又は治療するための方法であって、個体に、前記<7>に記載の抗ヘリコバクター・ピロリ剤を投与することを特徴とする方法である。
本発明の化合物は、下記構造式(1)で表される化合物であり、本発明者らが分離した新規化合物である(以下、「インターベノリン(Intervenolin)」と称することがある)。
前記構造式(1)で表される化合物の物理化学的性質としては、次の通りである。
(1) 外観 : 淡黄色油状物
(2) 分子式 : C24H32N2OS2
(3) 高分解能質量分析(HRESI−MS)(m/z) :
実験値 451.1834 (M+Na)+
計算値 451.1848 (C24H32N2OS2Naとして)
(4) 紫外線吸収スペクトル :
メタノール溶液で測定した紫外線吸収のピークは、以下の通りである。
λmax nm(ε) :214.5(33,600)、242.5(37,700)、327.5(15,600)、341.0(17,900)
(5) 赤外線吸収スペクトル :
KBr錠剤法で測定した赤外線吸収のピークは、以下の通りである。
νmax(KBr)cm−1 : 2966, 2921, 1617, 1596, 1562, 1372, 1281, 1193, 1022, 761, 696
(6) プロトン核磁気共鳴スペクトル(400MHz, CDCl3) :
δ= 1.59(3H,s), 1.66(3H, s), 1.73(3H,s),2.08(4H,m), 2.23(3H,s), 2.31(3H,s), 2.70(3H,s), 3.54(2H,d,J=6.3), 5.06(1H,m), 5.10(1H,brt,J=6.3), 5.55(2H,s), 7.28(1H,d,J=8.2), 7.32(1H,t,J=7.6), 7.56(1H,ddd,J=8.2, 7.6, 1.6), 8.47(1H,dd,J=7.6, 1.6)
図1に、プロトン核磁気共鳴スペクトルのチャートを示した。
(7) 炭素13核磁気共鳴スペクトル(100MHz, CDCl3) :
δ= 11.4, 14.8, 15.1, 16.6, 17.7, 25.7, 26.4, 30.0, 39.5, 63.9, 115.6, 117.4, 118.4, 122.8, 123.7, 124.8, 126.8, 131.4, 131.9, 139.0, 141.1, 150.6, 161.2, 177.7
図2に、炭素13核磁気共鳴スペクトルのチャートを示した。
前記塩としては、薬理学的に許容され得る塩であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酢酸塩、クエン酸塩等の有機塩、塩酸塩、炭酸塩などが挙げられる。
前記構造式(1)で表される化合物は、その互変異性体であってもよい。
前記構造式(1)で表される化合物は、優れた抗がん作用、若しくは、優れた抗ヘリコバクター・ピロリ活性を有し、安全性の高い化合物である。そのため、前記構造式(1)で表される化合物は、例えば、後述する本発明の化合物含有組成物、本発明の抗がん剤、本発明の抗ヘリコバクター・ピロリ剤等の有効成分として好適に利用可能である。
本発明の化合物の製造方法の態様の1つは、培養工程と、採取工程とを少なくとも含み、必要に応じて更にその他の工程を含む。
前記培養工程は、ノカルディア(Nocardia)属に属し、前記構造式(1)で表される化合物を生産する能力を有する微生物を培養する培養工程である。
前記栄養培地に添加する栄養源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、市販されている大豆粉、小麦胚芽、押し麦、ペプトン、綿実粕、酵母エキス、肉エキス、コーン・スティープ・リカー、硫酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、尿素等の窒素源;トマトペースト、グリセリン、デンプン、グルコース、ガラクトース、デキストリン、バクトソイトン等の炭水化物、脂肪等の炭素源;などが挙げられる。
更に、食塩、炭酸カルシウム等の無機塩を培地に添加して使用することもでき、その他、必要に応じて微量の金属塩を培地に添加して使用することもできる。
これらの材料は、前記化合物生産菌が利用し、前記構造式(1)で表される化合物の生産に役立つものであればよく、公知の培養材料は全て用いることができる。
前記培養の温度としては、前記化合物生産菌の発育が実質的に阻害されずに、前記構造式(1)で表される化合物を生産し得る範囲であれば、特に制限はなく、使用する生産菌に応じて適宜選択することができるが、25℃〜35℃が好ましい。
前記培養のpHとしては、前記化合物生産菌の発育が実質的に阻害されずに、前記構造式(1)で表される化合物を生産し得る範囲であれば、特に制限はなく、使用する生産菌に応じて適宜選択することができ、例えば、pH6.0〜7.5などが挙げられる。
前記培養の期間としては、特に制限はなく、前記構造式(1)で表される化合物の蓄積に合わせて適宜選択することができる。
前記採取工程は、前記培養工程で得られた培養物から前記構造式(1)で表される化合物を採取する工程である。
前記構造式(1)で表される化合物は、上述した物理化学的性質を有するので、その性質に従って培養物から採取することができる。
なお、前記培養物として、前記菌体を用いる場合は、適当な有機溶媒を用いた抽出方法や、菌体破砕による溶出方法などにより、前記構造式(1)で表される化合物を菌体から抽出し、これを分離及び/又は精製に供してもよい。
前記吸着剤の市販品の具体例としては、アンバーライトXAD(ローム・アンド・ハース社製)、ダイヤイオン(登録商標)HP−20(三菱化学株式会社製)などが挙げられる。
前記クロマトグラフ法に用いる担体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イオン交換樹脂、ゲル濾過、シリカゲル、アルミナ、活性炭などが挙げられる。
前記クロマトグラフ法に用いる担体の市販品の具体例としては、アンバーライト(登録商標)CG50(シグマアルドリッチ株式会社製)等のイオン交換樹脂;トヨパール(登録商標)HW−40F(東ソー株式会社製)、セファデックス(登録商標)LH−20(GEヘルスケア社製)等のゲル濾過;CAPCELL PAK C18 UG120、CAPCELL PAK SG120(資生堂株式会社製)等のシリカゲル;などが挙げられる。
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本発明の化合物の製造方法の他の態様の1つは、化学合成により製造する方法である。前記化学合成による製造方法としては、アセトニトリルの存在下で、下記構造式(9)で表される化合物と、ナトリウムチオメトキシドとを反応させた後、前記反応物と、メチル化剤とを反応させる方法であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記構造式(2)で表される化合物は、例えば、以下のようにして製造することができる。
メチルマロン酸ジエチルを、テトラヒドロフラン(以下、「THF」と称することがある)と水との混合溶媒に溶解させ、0.25M水酸化カリウム水溶液を氷浴下で滴下する。滴下終了後、更に室温下で撹拌する。反応終了後、1N塩酸を加えpHを3に調整した後、酢酸エチルで抽出し、有機層を芒硝乾燥させ溶媒を留去することにより得ることができる。
なお、前記反応で得られた残渣は、精製することなく次の反応に使用してもよい。
前記構造式(3)で表される化合物は、例えば、以下のようにして製造することができる。
前記構造式(2)で表される化合物を塩化メチレンに溶解させ、氷浴下で塩化オキサリルを滴下し、更にN,N−ジメチルホウムアミド(以下、「DMF」と称することがある)を数滴加える。室温下で3時間撹拌させた後、溶媒を留去する。
得られた残渣を塩化メチレンに溶解させ、アニリン、トリエチルアミンを塩化メチレンに溶解させたものに氷浴下で滴下する。更に室温下で6時間撹拌させた後、0.1N塩酸を加えて反応を停止させ、塩化メチレンで抽出後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、食塩水で洗浄する。合わせた有機層を芒硝乾燥し、溶媒を留去する。
得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製することにより、構造式(3)で表される化合物を2工程で得ることができる。
前記構造式(4)で表される化合物は、例えば、以下のようにして製造することができる。
前記構造式(3)で表される化合物をTHF:H2O:メタノール(4:1:1)の混合溶媒に溶解させ、水酸化ナトリウムを加える。室温下で1時間撹拌させた後、1N塩酸を加えpHを4に調整し、酢酸エチルで抽出する。得られた有機層は、芒硝乾燥後、溶媒を留去し、構造式(4)で表される化合物を得ることができる。
前記構造式(5)で表される化合物は、例えば、以下のようにして製造することができる。
前記構造式(4)で表される化合物とEaton’s試薬(80mL)の混合物を80℃で2.5時間撹拌する。反応溶液を室温まで戻し、氷浴下、10%炭酸水素ナトリウム水溶液をpHが7になるまで加える。生成した白色の固体を吸引濾過し、更に10%炭酸水素ナトリウム水溶液、水で洗浄し、構造式(5)で表される化合物を得ることができる。
前記構造式(6)で表される化合物は、例えば、以下のようにして製造することができる。
アルゴン雰囲気下、前記構造式(5)で表される化合物をDMFに溶解させ、イミダゾールを加える。更に氷浴下、tert−ブチルジメチルクロロシラン(以下、「TBSCl」と称することがある)を加え、室温下で2時間撹拌する。水を加えて反応を停止させ、酢酸エチルで抽出し有機層を分離する。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、食塩水で洗浄した後、有機層を芒硝乾燥し溶媒を留去する。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製し、構造式(6)で表される化合物を得ることができる。
前記構造式(7)で表される化合物は、例えば、以下のようにして製造することができる。
アルゴン雰囲気下、前記構造式(6)で表される化合物を塩化メチレンに溶解させ、2,6−ルチジンを加える。更に氷冷下、トリフルオロメタンスルホン酸無水物を滴下する。室温下で1時間撹拌させた後、0.1N塩酸で反応を停止させ、塩化メチレンで抽出する。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、食塩水で洗浄した後芒硝乾燥させ、溶媒を留去する。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製し、構造式(7)で表される化合物を得ることができる。
前記構造式(8)で表される化合物は、例えば、以下のようにして製造することができる。
アルゴン雰囲気下、前記構造式(7)で表される化合物と、Pd(PPh3)2Cl2及びゲラニルボロン酸ピナコールエステル誘導体を入れた混合物に、無水トルエンを加え室温下で30分撹拌する。そこに、無水エタノール(以下、「EtOH」と称することがある)、2M炭酸水素ナトリウム水溶液を順次加え、90℃で4時間撹拌する。食塩水を加えて反応を停止させ、酢酸エチルで抽出する。有機層を芒硝乾燥し、溶媒を留去する。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製し、構造式(8)で表される化合物を得ることができる。
前記反応において、前記Pd(PPh3)2Cl2は、(PPh3)4PdやPd(dppf)Cl2としてもよい。また、前記2M炭酸水素ナトリウム水溶液は、1M炭酸ナトリウム水溶液としてもよい。また、前記無水トルエンは、THF、1,4-ジオキサンとしてもよい。
前記構造式(9)で表される化合物は、例えば、以下のようにして製造することができる。
アルゴン雰囲気下、前記構造式(8)で表される化合物をTHFに溶解させ、リチウムt−ブトキシドのTHF 1M溶液を加え室温下で20分撹拌する。そこへ氷冷下、チオシアン酸クロロメチルを滴下し、更に室温下で3時間撹拌する。食塩水を加えて反応を停止させ、酢酸エチルで抽出する。有機層を芒硝乾燥後、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製し、構造式(9)で表される化合物を得ることができる。
前記構造式(1)で表される化合物は、例えば、以下のようにして製造することができる。
前記構造式(9)で表される化合物とナトリウムチオメトキシドの混合物にアセトニトリルを加え室温下で10分間撹拌する。ヨードメタンを加えて更に室温下で、20分間撹拌する。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を停止させ、酢酸エチルで抽出する。有機層を芒硝乾燥後、溶媒を留去する。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製し、構造式(1)で表される化合物を得ることができる。
前記各化合物が、前記各構造式で表される構造を有するか否かは、適宜選択した各種の分析方法により確認することができ、例えば、前記質量分析法、前記紫外分光法、前記赤外分光法、前記プロトン核磁気共鳴分光法、前記炭素13核磁気共鳴分光法等の分析方法などが挙げられる。
本発明の微生物は、ノカルディア(Nocardia)に属し、上述した本発明の化合物、即ちインターベノリン(Intervenolin)を生産する能力を有する。前記微生物は、インターベノリン(Intervenolin)を生産する能力を有し、そのために、上述した本発明の化合物の製造方法において、インターベノリン(Intervenolin)の生産菌として使用され得る微生物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
ML96−86F2株は、分断がわずかに認められる分枝した基生菌糸より、フック状若しくはらせん状の気菌糸を伸長する。成熟した胞子鎖は3個〜10個の柱筒状の胞子を連鎖する。胞子の大きさは約0.5μm〜0.7μm×0.7μm〜1.2μmで、胞子の表面は平滑である。
色の記載について[ ]内に示す標準は、コンティナー・コーポレーション・オブ・アメリカのカラー・ハーモニー・マニュアル(Container Corporation of Americaのcolor harmony manual)を用いた。
(a)オートミール寒天培地(ISP−培地3、30℃培養)
うす黄[1 ca, Pale Yellow]の発育上に、ピンク白[near grays, 5 ba, Shell Pink]の気菌糸を着生する。可溶性色素は認められない。
(b)スターチ・無機塩寒天培地(ISP−培地4、30℃培養)
うす黄茶[3 ea, Lt Melon Yellow]の発育上に、白[THE gray scale, a, White]の気菌糸を着生する。可溶性色素は認められない。
(c)グリセリン・アスパラギン寒天培地(ISP−培地5、30℃培養)
うす黄[3 ea, Lt Melon Yellow]〜うす赤茶[5 ec, Dusty Peach]の発育上に、白[The gray scale, a, White]の気菌糸を着生する。可溶性色素は赤味を帯びる。
(d)シュクロース・硝酸塩寒天培地(30℃培養)
うす黄[3 ca, Shell]の発育上に、白[The gray scale, a, White]の気菌糸を着生する。可溶性色素は認められない。
(a)生育温度範囲
グルコース・アスパラギン寒天培地(グルコース 1%、L−アスパラギン 0.05%、K2HPO4 0.05%、ひも寒天 2.6%、pH7.0)を用い、10℃、24℃、27℃、30℃、37℃、42℃及び50℃の各温度で試験した結果、10℃及び37℃以上での生育は認められず、24℃〜30℃の範囲で生育した。生育至適温度は27℃付近である。
細胞壁中の2,6−ジアミノピメリン酸は、LL−型である。
なお、前記菌体成分は、薄層クロマトグラフィーにより分析した。
細胞壁中の2,6−ジアミノピメリン酸はmeso−型である。
菌体成分としてミコール酸を含有する。
16S rRNA遺伝子の部分塩基配列(1,431bp)を決定し、DNAデータベースに登録された公知菌株のデータと比較した。
その結果、ML96−86F2株の塩基配列は以下に示すように、ノカルディア(Nocardia)属放線菌の16S rRNA遺伝子と高い相同性を示した。即ち、Nocardia anaemiae(98.8%)、N. pseudovaccinii(98.3%)、N. vinacea(98.3%)などである。なお、前記括弧内の数値は、塩基配列の相同値を表記した。
ML96−86F2株の細胞壁中の2,6−ジアミノピメリン酸はmeso−型であり、菌体成分としてミコール酸を含有する。
ML96−86F2株の16S rRNA遺伝子の部分塩基配列を解析し、公知菌株のデータと比較したところ、ノカルディア属放線菌と高い相同性を示した。
なお、前記ML96−86F2株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(〒292−0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に寄託申請し、2012年11月15日に国内寄託され、その後、2013年12月2日にブダペスト条約に基づく国際寄託への移管請求が受領され、受託番号NITE BP−01464として国際寄託されている。
<化合物含有組成物>
本発明の化合物含有組成物は、前記構造式(1)で表される化合物を少なくとも含み、必要に応じて、更にその他の成分を含む。
前記その他の成分としては、特に制限はなく、薬理学的に許容され得る担体の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、添加剤、補助剤、水などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記化合物含有組成物は、前記構造式(1)で表される化合物を含むため、優れた抗がん作用、優れた抗ヘリコバクター・ピロリ活性を有し、安全性が高く、例えば、医薬組成物、抗がん剤、抗ヘリコバクター・ピロリ剤などに好適に利用可能である。
なお、前記化合物含有組成物は、単独で使用されてもよいし、他の成分を有効成分とする医薬と併せて使用されてもよい。また、前記化合物含有組成物は、他の成分を有効成分とする医薬中に、配合された状態で使用されてもよい。
本発明の抗がん剤は、前記構造式(1)で表される化合物を少なくとも含み、必要に応じて、更にその他の成分を含む。
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記化合物含有組成物で記載したその他の成分と同様のものが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記抗がん剤は、前記構造式(1)で表される化合物を含むため、優れた抗がん作用を有し、安全性が高く、胃がん、大腸がん、前立腺がん、肺がん、膵がん、乳がんなどの幅広いがんの予防剤又は治療剤として好適に利用可能である。これらの中でも、胃がん、大腸がんに特に好適に利用可能である。
なお、前記抗がん剤は、単独で使用されてもよいし、他の成分を有効成分とする医薬と併せて使用されてもよい。また、前記抗がん剤は、他の成分を有効成分とする医薬中に、配合された状態で使用されてもよい。
また、後述する試験例で示すように、本発明の前記構造式(1)で表される化合物は、正常間質細胞の存在下で、よりがん細胞の増殖を抑制することができる。
本発明の抗ヘリコバクター・ピロリ剤は、前記構造式(1)で表される化合物を少なくとも含み、必要に応じて、更にその他の成分を含む。
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記化合物含有組成物で記載したその他の成分と同様のものが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記抗ヘリコバクター・ピロリ剤は、前記構造式(1)で表される化合物を含むため、優れた抗ヘリコバクター・ピロリ活性を有し、安全性が高く、胃潰瘍や十二指腸潰瘍などのヘリコバクター・ピロリに起因する胃及び十二指腸障害の予防剤又は治療剤として好適に利用可能である。
なお、前記抗ヘリコバクター・ピロリ剤は、単独で使用されてもよいし、他の成分を有効成分とする医薬と併せて使用されてもよい。また、前記抗ヘリコバクター・ピロリ剤は、他の成分を有効成分とする医薬中に、配合された状態で使用されてもよい。
また、前記抗ヘリコバクター・ピロリ剤を個体に投与することにより、ヘリコバクター・ピロリに起因する胃及び十二指腸障害の発生の予防、又はヘリコバクター・ピロリに起因する胃及び十二指腸障害を患う個体を治療することができる。したがって、本発明は、個体に、前記抗ヘリコバクター・ピロリ剤を投与することを特徴とする、ヘリコバクター・ピロリに起因する胃及び十二指腸障害の予防又は治療方法にも関する。
前記化合物含有組成物、抗がん剤、及び抗ヘリコバクター・ピロリ剤の剤型としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、固形剤、半固形剤、液剤などが挙げられる。これらの剤型の前記化合物含有組成物、抗がん剤、及び抗ヘリコバクター・ピロリ剤は、常法に従い製造することができる。
前記固形剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、内用剤として用いられる場合、例えば、錠剤、チュアブル錠、発泡錠、口腔内崩壊錠、トローチ剤、ドロップ剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、顆粒剤、散剤、丸剤、ドライシロップ剤、浸剤などが挙げられる。
前記固形剤が、外用剤として用いられる場合、例えば、坐剤、パップ剤、プラスター剤などが挙げられる。
前記半固形剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、内用剤として用いられる場合、例えば、舐剤、チューインガム剤、ホイップ剤、ゼリー剤などが挙げられる。
前記半固形剤が、外用剤として用いられる場合、例えば、軟膏剤、クリーム剤、ムース剤、インヘラー剤、ナザールジェル剤などが挙げられる。
前記液剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、内用剤として用いられる場合、例えば、シロップ剤、ドリンク剤、懸濁剤、酒精剤などが挙げられる。
前記液剤が、外用剤として用いられる場合、例えば、液剤、点眼剤、エアゾール剤、噴霧剤などが挙げられる。
前記化合物含有組成物、抗がん剤、及び抗ヘリコバクター・ピロリ剤の投与方法、投与量、投与時期、及び投与対象としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記投与方法としては、例えば、局所投与法、経腸投与法、非経口投与法などが挙げられる。
前記投与量としては、特に制限はなく、投与対象個体の年齢、体重、体質、症状、他の成分を有効成分とする医薬や薬剤の投与の有無など、様々な要因を考慮して適宜選択することができる。
前記投与対象となる動物種としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒト、サル、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、トリなどが挙げられるが、これらの中でもヒトに好適に用いることができる。
なお、下記試験例のデータは、同様な結果が得られた2回又は3回の独立した実験の代表的なものである。統計解析は、スチューデントのt検定を用いた。
<構造式(1)で表される化合物の製造>
−種培養液の調製−
種培地として、2質量%ガラクトース、2質量%デキストリン、1質量%Bacto(登録商標) Soytone(BD Biosciences社製)、0.5質量%コーンスティープリカー、0.2質量%硫酸アンモニウム、0.2質量%炭酸カルシウムを含む液体培地(pH7.2)を使用した。
スラント上に生育させたML96−86F2菌体を1白金耳かきとり、前記種培地に接種し、30℃、220rpmで8日間振とう培養し、種培養液を得た。
生産培地として、前記非特許文献2を参照し、1質量%グルコース、2質量%コーンスターチ、0.5質量%小麦胚芽、0.5質量%NZアミンタイプA(和光純薬工業社製)、0.5質量%酵母抽出物、0.4質量%炭酸カルシウム、0.0001質量%塩化コバルトを含む液体培地(pH6.7)を用いた。
前記生産培地に、前記種培養液を2%植菌し、25℃、220rpmで11日間振とう培養した。
前記インターベノリン(Intervenolin)生産菌ML96−86F2株の培養液10Lを濾過して菌体を分離した後、前記菌体が十分に浸る量のメタノールを加えて撹拌した。これを濾過して菌体を除き、前記メタノール抽出液を減圧下にてメタノールを留去し、水を加えて1Lにした。
ここに等量の酢酸エチルを加えて撹拌し、酢酸エチル層を回収し、減圧下にて酢酸エチルを留去し、抽出物1gを得た。
次に、前記抽出物を、ヘキサン:酢酸エチル=1:1で充填したシリカゲルカラムに載せ、ヘキサン:酢酸エチル=1:1、ヘキサン:酢酸エチル=1:3、メタノールで順次溶出した。
前記ヘキサン:酢酸エチル=1:1で溶出した粗精製物58.3mgをHPLCクロマトグラフィー(CAPCELL PAK C18 UG120 5μm, 20×250mm、株式会社資生堂製)で80体積%メタノールの溶液で分離し、インターベノリン(Intervenolin)を3.9mg得た。
得られたインターベノリン(Intervenolin)の物理化学的性質は、以下のとおりであった。前記物理化学的性質、及び前記非特許文献2を参考にし、前記インターベノリン(Intervenolin)が、下記構造式(1)で表される構造を有する新規化合物であることが確認された。
(1) 外観 : 淡黄色油状物
(2) 分子式 : C24H32N2OS2
(3) 高分解能質量分析(HRESI−MS)(m/z) :
実験値 451.1834 (M+Na)+
計算値 451.1848 (C24H32N2OS2Naとして)
(4) 紫外線吸収スペクトル :
メタノール溶液で測定した紫外線吸収のピークは、以下の通りであった。
λmax nm(ε) :214.5(33,600)、242.5(37,700)、327.5(15,600)、341.0(17,900)
(5) 赤外線吸収スペクトル :
KBr錠剤法で測定した赤外線吸収のピークは、以下の通りであった。
νmax(KBr)cm−1 : 2966, 2921, 1617, 1596, 1562, 1372, 1281, 1193, 1022, 761, 696
(6) プロトン核磁気共鳴スペクトル(400MHz, CDCl3) :
δ= 1.59(3H,s), 1.66(3H, s), 1.73(3H,s),2.08(4H,m), 2.23(3H,s), 2.31(3H,s), 2.70(3H,s), 3.54(2H,d,J=6.3), 5.06(1H,m), 5.10(1H,brt,J=6.3), 5.55(2H,s), 7.28(1H,d,J=8.2), 7.32(1H,t,J=7.6), 7.56(1H,ddd,J=8.2, 7.6, 1.6), 8.47(1H,dd,J=7.6, 1.6)
図1に、プロトン核磁気共鳴スペクトルのチャートを示した。
(7) 炭素13核磁気共鳴スペクトル(100MHz, CDCl3) :
δ= 11.4, 14.8, 15.1, 16.6, 17.7, 25.7, 26.4, 30.0, 39.5, 63.9, 115.6, 117.4, 118.4, 122.8, 123.7, 124.8, 126.8, 131.4, 131.9, 139.0, 141.1, 150.6, 161.2, 177.7
図2に、炭素13核磁気共鳴スペクトルのチャートを示した。
前記製造例1で得られた構造式(1)で表される化合物のIn vitroの抗がん活性を以下のようにして試験した。
本細胞増殖試験1では、比較として、前記非特許文献2に記載されている下記化合物2種(CJ−13,136及びCJ−13,217)についても同様に試験した。
ヒト胃がん細胞MKN−74(理研セルバンク)を、10%FBS(GIBCO社製)、100units/mLのペニシリンG(Invitrogen社製)、100μg/mLのストレプトマイシン(Invitrogen社製)を添加したDMEMで、37℃、5% CO2で培養した。
前記がん細胞に、Green fluorescence protein(GFP)発現ベクターpEGFP−C1(BD Biosciences社製)を、Lipofectamine試薬(Invitrogen社製)を用いて遺伝子導入し、安定的にGFPを発現した細胞をクローニングした。
ヒト胃由来の正常間質細胞Hs738((CRL−7869)、ATCC)は、10%FBS、100units/mLのペニシリンG(Invitrogen社製)、100μg/mLのストレプトマイシン(Invitrogen社製)、5μg/mLのインスリン、5μg/mLのトランスフェリン(和光純薬工業社製)、1.4μMのヒドロコルチゾン(Sigma社製)、5mg/mLのbasic−FGF(Pepro Tech社製)を添加したDMEMで、37℃、5% CO2で培養した。
前記ヒト胃由来の正常間質細胞Hs738を、1%透析血清、5μg/mLのインスリン、5μg/mLのトランスフェリン(和光純薬工業社製)、1.4μMのヒドロコルチゾン(Sigma社製)を含むDMEMで5×104個/mLに分散させ、96ウェルプレートに0.1mL/ウェルずつ撒き、各評価サンプル(構造式(1)で表される化合物、CJ−13,136、CJ−13,217)を各濃度で加え、37℃、5% CO2で2日間培養した。
次に、前記ヒト胃がん細胞MKN−74を、DMEMで5×105個/mLに分散させ、前記ヒト胃由来の正常間質細胞Hs738を培養したプレートに、10μL/ウェルずつ撒き、更に37℃、5% CO2で3日間共培養した。
1%透析血清、5μg/mLのインスリン、5μg/mLのトランスフェリン(和光純薬工業社製)、1.4μMのヒドロコルチゾン(Sigma社製)を含むDMEMのみを96ウェルプレートに0.1mL/ウェルずつ撒き、各評価サンプル(構造式(1)で表される化合物、CJ−13,136、CJ−13,217)を各濃度で加え、37℃、5% CO2で2日間維持した。
次に、前記ヒト胃がん細胞MKN−74を、DMEMで5×105個/mLに分散させ、前記プレートに、10μL/ウェルずつ撒き、更に37℃、5% CO2で3日間共培養した。
前記共培養試験、及び単独培養試験における細胞増殖率の測定は、以下のようにして行った。
前記プレートのウェルから培地を除去し、細胞溶解液(10mM Tris−HCl[pH 7.4]、150mM NaCl、0.9mM CaCl2、1% Triton X−100)を0.1mL/ウェルずつ加え細胞を溶解し、GFPの蛍光強度を、励起波長485nm、蛍光波長538nmで測定し、下記式から、細胞増殖率を算出した。
細胞増殖率(%)=(評価サンプルありの蛍光強度/評価サンプルなしの蛍光強度)×100
−細胞の調製−
ヒト胃がん細胞MKN−7(理研セルバンク)を、10%FBS(GIBCO社製)、100units/mLのペニシリンG(Invitrogen社製)、100μg/mLのストレプトマイシン(Invitrogen社製)を含むDMEMで、37℃、5% CO2で培養した。
前記がん細胞に、Green fluorescence protein(GFP)発現ベクターpEGFP−C1(BD Biosciences社製)を、Lipfectamine試薬(Invitrogen社製)を用いて遺伝子導入し、安定的にGFPを発現した細胞をクローニングした。
ヒト胃由来の正常間質細胞Hs738((CRL−7869)、ATCC)は、10%FBS、100units/mLのペニシリンG(Invitrogen社製)、100μg/mLのストレプトマイシン(Invitrogen社製)、5μg/mLのインスリン、5μg/mLのトランスフェリン(和光純薬工業社製)、1.4μMのヒドロコルチゾン(Sigma社製)、5mg/mLのbasic−FGF(Pepro Tech社製)を添加したDMEMで、37℃、5% CO2で培養した。
前記ヒト胃由来の正常間質細胞Hs738を、1%透析血清、5μg/mLのインスリン、5μg/mLのトランスフェリン(和光純薬工業社製)、1.4μMのヒドロコルチゾン(Sigma社製)を含むDMEMで5×104個/mLに分散させ、96ウェルプレートに0.1mL/ウェルずつ撒き、評価サンプル(構造式(1)で表される化合物)を各濃度で加え、37℃、5% CO2で2日間培養した。
次に、前記ヒト胃がん細胞MKN−7を、DMEMで5×105個/mLに分散させ、前記ヒト胃由来の正常間質細胞Hs738を培養したプレートに、10μL/ウェルずつ撒き、更に37℃、5% CO2で3日間共培養した。
1%透析血清、5μg/mLのインスリン、5μg/mLのトランスフェリン(和光純薬工業社製)、1.4μMのヒドロコルチゾン(Sigma社製)を含むDMEMのみを96ウェルプレートに0.1mL/ウェルずつ撒き、評価サンプル(構造式(1)で表される化合物)を各濃度で加え、37℃、5% CO2で2日間維持した。
次に、前記ヒト胃がん細胞MKN−7を、DMEMで5×105個/mLに分散させ、前記プレートに、10μL/ウェルずつ撒き、更に37℃、5% CO2で3日間共培養した。
前記共培養試験、及び単独培養試験における細胞増殖率の測定は、前記細胞増殖試験1と同様にして行った。
−細胞の調製−
ヒト大腸がん細胞HCT−15(ATCC)を、10%FBS(GIBCO社製)、100units/mLのペニシリンG(Invitrogen社製)、100μg/mLのストレプトマイシン(Invitrogen社製)を含むDMEMで、37℃、5% CO2で培養した。
前記がん細胞に、Green fluorescence protein(GFP)発現ベクターpEGFP−C1(BD Biosciences社製)を、Lipfectamine試薬(Invitrogen社製)を用いて遺伝子導入し、安定的にGFPを発現した細胞をクローニングした。
ヒト大腸由来の正常間質細胞CCD−18Co((CRL−1459)、ATCC)は、10%FBS、100units/mLのペニシリンG(Invitrogen社製)、100μg/mLのストレプトマイシン(Invitrogen社製)、5μg/mLのインスリン、5μg/mLのトランスフェリン(和光純薬工業社製)、1.4μMのヒドロコルチゾン(Sigma社製)、5mg/mLのbasic−FGF(Pepro Tech社製)を添加したDMEMで、37℃、5% CO2で培養した。
前記ヒト大腸由来の正常間質細胞CCD−18Coを、1%透析血清、5μg/mLのインスリン、5μg/mLのトランスフェリン(和光純薬工業社製)、1.4μMのヒドロコルチゾン(Sigma社製)を含むDMEMで5×104個/mLに分散させ、96ウェルプレートに0.1mL/ウェルずつ撒き、評価サンプル(構造式(1)で表される化合物)を各濃度で加え、37℃、5% CO2で2日間培養した。
次に、前記ヒト大腸がん細胞HCT−15を、DMEMで5×105個/mLに分散させ、前記ヒト大腸由来の正常間質細胞CCD−18Coを培養したプレートに、10μL/ウェルずつ撒き、更に37℃、5% CO2で3日間共培養した。
1%透析血清、5μg/mLのインスリン、5μg/mLのトランスフェリン(和光純薬工業社製)、1.4μMのヒドロコルチゾン(Sigma社製)を含むDMEMのみを96ウェルプレートに0.1mL/ウェルずつ撒き、評価サンプル(構造式(1)で表される化合物)を各濃度で加え、37℃、5% CO2で2日間維持した。
次に、前記ヒト大腸由来の正常間質細胞CCD−18Coを、DMEMで5×105個/mLに分散させ、前記プレートに、10μL/ウェルずつ撒き、更に37℃、5% CO2で3日間共培養した。
前記共培養試験、及び単独培養試験における細胞増殖率の測定は、前記細胞増殖試験1と同様にして行った。
図3Aは、前記細胞増殖試験1において、評価サンプルとして、構造式(1)で表される化合物を用いた場合の結果を示し、図3Bは、前記細胞増殖試験1において、評価サンプルとして、CJ−13,136を用いた場合の結果を示し、図3Cは、前記細胞増殖試験1において、評価サンプルとして、CJ13,217を用いた場合の結果を示し、図3Dは、前記細胞増殖試験2の結果を示し、図3Eは、前記細胞増殖試験3の結果を示す。図3Aから図3E中、「●」は、共培養試験(co)の結果を示し、「○」は、単独培養試験(mo)の結果を示す。
図3Aから図3Eにおける値は、2連の平均値を示し、標準誤差(SE)は、10%以下であった。
一方、図3Bに示したように、前記CJ−13,136は、ヒト胃がん細胞MKN−74のみの培養ではその増殖をIC50 0.22μg/mLで阻害するが、胃間質細胞と共培養したときは、ヒト胃がん細胞MKN−74の増殖をIC50 0.005μg/mLとより低濃度で強く阻害した。また、図3Cに示したように、前記CJ−13,217は、ヒト胃がん細胞MKN−74のみの培養ではその増殖をIC50 0.03μg/mLで阻害するが、胃間質細胞と共培養したときは、ヒト胃がん細胞MKN−74の増殖をIC50 0.006μg/mLとより低濃度で強く阻害した。
このようにCJ−13,136及びCJ−13,217は、構造式(1)で表される化合物よりも低濃度でヒト胃がん細胞MKN−74の増殖を阻害したが、後述する急性毒性試験で示すように、構造式(1)で表される化合物よりも極めて毒性が強かった。
また、図3Eに示したように、前記構造式(1)で表される化合物は、ヒト大腸がんHCT−15細胞のみの培養ではその増殖をIC50 1.6μg/mLで阻害するが、大腸間質細胞と共培養したときは、ヒト大腸がんHCT−15細胞の増殖をIC50 0.21μg/mLとより低濃度で強く阻害した。
前記製造例1で得られた構造式(1)で表される化合物のIn vivoの抗がん活性を以下のようにして試験した。
BALB/c nu/nuヌードマウス(雌、5週齢、チャールズリバー社製)をSPF条件下にて飼育した。
培養したヒト胃がん細胞MKN−74をトリプシン処理し、培養ディッシュから剥がした前記ヒト胃がん細胞MKN−74(8×106個)を0.3mLの10%FBSを含むDMEMに分散し、0.5mLのgrowth factor−reduced Matrigel(BD Biosciences社製)と混合した。
前記混合した細胞液0.1mL(がん細胞1×106個)を前記マウスの左鼠脛部に皮下接種した。
前記構造式(1)で表される化合物を静脈内に所定の期間投与し、皮下にできた腫瘍を切り出し、その重量を測定した。なお、前記構造式(1)で表される化合物の投与量は、投与日あたりの量として、12.5mg/kgとした。
また、腫瘍体積は、前記非特許文献1を参照し、以下の式から算出した。
腫瘍体積(mm3)=(長径×短径2)/2
なお、対照として、構造式(1)で表される化合物に代えて、生理食塩水を投与したもの(vehicle)も同様にして試験した。
試験例2−1−1において、ヒト胃がん細胞MKN−74を単独で使用していた点を、ヒト胃がん細胞MKN−74及びヒト胃由来の正常間質細胞Hs738とした以外は、試験例2−1−1と同様にして試験した。
なお、細胞液、及びマウスへの細胞液の接種は、以下のようにして行った。
培養したヒト胃がん細胞MKN−74及びヒト胃由来の正常間質細胞Hs738のそれぞれについて、トリプシン処理し、培養ディッシュから剥がした。前記ヒト胃がん細胞MKN−74(8×106個)と、前記ヒト胃由来の正常間質細胞Hs738(8×106個)とを0.3mLの10%FBSを含むDMEMに分散し、0.5mLのgrowth factor−reduced Matrigel(BD Biosciences社製)と混合した。
前記混合した細胞液0.1mL(がん細胞1×106個、及び間質細胞1×106個の混合)を前記マウスの左鼠脛部に皮下接種した。
試験例2−1−1において、ヒト胃がん細胞MKN−74をヒト大腸がん細胞HCT−15に代え、また、構造式(1)で表される化合物の投与量を25mg/kgとしたものを追加した以外は、試験例2−1−1と同様にして試験した。
試験例2−1−2において、ヒト胃がん細胞MKN−74をヒト大腸がん細胞HCT−15に代え、ヒト胃由来の正常間質細胞Hs738をヒト大腸由来の正常間質細胞CCD−18Coに代え、また、構造式(1)で表される化合物の投与量を25mg/kgとしたものを追加した以外は、試験例2−1−2と同様にして試験した。
図4Aは、前記試験例2−1−1における腫瘍体積の変化を示し、図4Bは、前記試験例2−1−1における腫瘍重量(腫瘍接種から21日目)を示し、図4Cは、前記試験例2−1−2における腫瘍体積の変化を示し、図4Dは、前記試験例2−1−2における腫瘍重量(腫瘍接種から21日目)を示し、図4Eは、前記試験例2−2−1における腫瘍体積の変化を示し、図4Fは、前記試験例2−2−1における腫瘍重量(腫瘍接種から21日目)を示し、図4Gは、前記試験例2−2−2における腫瘍体積の変化を示し、図4Hは、前記試験例2−2−2における腫瘍重量(腫瘍接種から21日目)を示す。
図4A、図4C、図4E、及び図4G中、「○」は、「vehicle」の結果を示し、「●」は、「構造式(1)で表される化合物の投与量が12.5mg/kg」の結果を示し、「■」は、「構造式(1)で表される化合物の投与量が25mg/kg」の結果を示す。また、図4A、図4C、図4E、及び図4G中、「矢印」は、構造式(1)で表される化合物を投与した日を示す。
図4B、図4D、図4F、及び図4H中、「白」は、「vehicle」の結果を示し、「黒」は、「構造式(1)で表される化合物の投与量が12.5mg/kg」の結果を示し、「グレー」は、「構造式(1)で表される化合物の投与量が25mg/kg」の結果を示す。
図4Aから図4H中の値は、マウス5匹の平均値と標準偏差(SD)を表し、*は、P<0.05、**は、P<0.01を示す。
また、図4Eから図4Fに示されるように、ヒト大腸がん細胞HCT−15単独、並びにヒト大腸がん細胞HCT−15と、ヒト大腸由来の正常間質細胞CCD−18Coとを一緒に移植した腫瘍のいずれもが、構造式(1)で表される化合物 25mg/kgの静脈内投与によって有意に抑制された。
ICRマウス(雌、4週齢、チャールズリバー社製)をSPF条件下にて飼育した。
評価サンプルとして、前記構造式(1)で表される化合物を静脈内投与し、2週間マウスを観察した。2週間の観察期間中、死亡あるいは重篤な毒性が認められた投与量の2分の1量を本実験における最大耐容量(MTD)とした。
また、比較として、前記CJ−13,136を静脈内投与したもの、前記CJ−13,217を腹空内投与したものについても同様にして試験した。
一方、前記CJ−13,136を静脈内投与した場合のMTDは2.5mg/kgであり、前記CJ−13,217を腹空内投与した場合のMTDは3mg/kgであった。
したがって、前記CJ−13,136、及び前記CJ−13,217は、前記構造式(1)で表される化合物よりも低濃度で胃がん細胞の増殖を阻害するものの、極めて毒性が強いことが分かった。
前記製造例1で得られた構造式(1)で表される化合物(Intervenolin)の抗菌活性を以下のようにして試験した。
なお、比較として、クラリスロマイシン(Clarithromycin)、及びアンピシリン(ABPC)についても同様に試験した。
前記製造例1で得られた構造式(1)で表される化合物のヘリコバクター・ピロリ菌に対する最小発育阻害濃度(MIC)の測定を行った。
Helicobacter pylori JCM12093株、及びH. pylori JCM12095株を、HP培地(ブレインハートインフュージョンブロス培地(ベクトン・ディッキンソン社製)に10%ウシ胎仔血清(ライフテクノロジー社製)を添加)で37℃、微好気培養条件下(微好気条件(N2:O2:CO2=85:5:10))で144時間静置培養した。培養終了後、培養液をHP培地で懸濁し、ヘリコバクター・ピロリ菌が2×106CFU/mL〜9×106CFU/mLになるよう希釈した。
各試験サンプル(構造式(1)で表される化合物、クラリスロマイシン、アンピシリン)は、HP培地でそれぞれ256mg/Lに調製した。ここから、2倍段階希釈を行い、0.125mg/Lまで11段階の希釈を行った。
前記各濃度の試験サンプルを含むHP培地50μL/ウェルに、前記の希釈した各菌液をそれぞれ50μL/ウェル添加し、37℃、微好気培養条件下(微好気条件(N2:O2:CO2=85:5:10))で144時間静置培養した。
培養終了後、各菌の増殖の有無を濁度にて目視して判定し、各菌株のMICを求めた。結果を表3に示した。
前記製造例1で得られた構造式(1)で表される化合物の黄色ブドウ球菌及び大腸菌に対する最小発育阻害濃度(MIC)の測定を行った。
Staphylococcus aureus FDA209P株、及びEscherichia coli K−12株を、普通ブイヨン培地(ポリペプトン(日本製薬社製)1%、細菌用魚エキス(極東製薬工業社製)1%、塩化ナトリウム0.2%)で、37℃で一晩振盪培養した。培養終了後、普通ブイヨン培地で、各細菌が2×106CFU/mL〜9×106CFU/mLになるよう希釈した。
各試験サンプル(構造式(1)で表される化合物、クラリスロマイシン、アンピシリン)は、普通ブイヨン培地でそれぞれ256mg/Lに調製した。ここから、2倍段階希釈を行い、0.0078mg/Lまで15段階の希釈を行った。
前記各濃度の試験サンプルを含む普通ブイヨン培地50μL/ウェルに、前記の希釈した各菌液をそれぞれ50μL/ウェル添加し、37℃で一晩静置培養した。
培養終了後、各菌の増殖の有無を濁度にて目視して判定し、各菌株のMICを求めた。結果を表3に示した。
前記製造例1で得られた構造式(1)で表される化合物の腸球菌に対する最小発育阻害濃度(MIC)の測定を行った。
Enterococcus faecalis JCM5803株を、ハートインフュージョンブロス培地(ベクトン・ディッキンソン社製)で、37℃で一晩振盪培養した。培養終了後、ハートインフュージョンブロス培地で希釈し、各細菌が2×104CFU/mL〜9×104CFU/mLになるよう希釈した。
各試験サンプル(構造式(1)で表される化合物、クラリスロマイシン、アンピシリン)は、ハートインフュージョンブロス培地でそれぞれ256mg/Lに調製した。ここから、2倍段階希釈を行い、0.125mg/Lまで11段階の希釈を行った。
前記各濃度の試験サンプルを含むハートインフュージョンブロス培地50μL/ウェルに、前記の希釈した各菌液をそれぞれ50μL/ウェル添加し、37℃で18時間静置培養した。
培養終了後、菌の増殖の有無を濁度にて目視して判定し、菌株のMICを求めた。結果を表3に示した。
前記製造例1で得られた構造式(1)で表される化合物のインフルエンザ菌に対する最小発育阻害濃度(MIC)の測定を行った。
Haemophilus influenzae T−196株、及びH. influenzae ARD476株を、HI培地(Muller Hinton培地(ベクトン・ディッキンソン社製)に5%フィルズエンリッチメント(ベクトン・ディッキンソン社製)を添加)で、37℃、5%炭酸ガス含有好気条件下で一晩静置培養した。
培養終了後、培養液をHI培地で懸濁し、各インフルエンザ菌が2×106CFU/mL〜9×106CFU/mLになるよう希釈した。
各試験サンプル(構造式(1)で表される化合物、クラリスロマイシン、アンピシリン)は、HI培地でそれぞれ256mg/Lに調製した。ここから、2倍段階希釈を行い、0.125mg/Lまで11段階の希釈を行った。
前記各濃度の試験サンプルを含むHI培地50μL/ウェルに、前記の希釈した各菌液をそれぞれ50μL/ウェル添加し、37℃、5%炭酸ガス含有好気条件下で18時間静置培養した。
培養終了後、各菌の増殖の有無を濁度にて目視して判定し、各菌株のMICを求めた。結果を表3に示した。
<構造式(1)で表される化合物の製造>
以下のようにして、化学合成により、前記構造式(1)で表される化合物を製造した。
メチルマロン酸ジエチル(22.0g、126mmol)を、テトラヒドロフラン(以下、「THF」と称することがある)140mLと、水150mLとの混合溶媒に溶解させ、0.25Mの水酸化カリウム水溶液628mLを氷浴下で滴下した。滴下終了後、更に室温下で2時間撹拌させた。反応終了後、1N塩酸を加えpHを3に調整した。酢酸エチルで抽出し、有機層を芒硝乾燥させ溶媒を留去した。得られた残渣(17.8g)は精製することなく次の反応に使用した。
前記構造式(2)で表される化合物の物理化学的性質としては、次の通りであった。
(1) 外観 : 無色油状物
(2) 分子式 : C6H10O4
(3) 高分解能質量分析(HRESI−MS)(m/z) :
実験値 169.0471 (M+Na)+
計算値 169.0471 (C6H10O4Naとして)
(4) 赤外線吸収スペクトル :
KBr錠剤法で測定した赤外線吸収のピークは、以下の通りであった。
νmax(KBr)cm−1 : 3258−3251, 2990, 2946, 1738, 1620
(5) プロトン核磁気共鳴スペクトル(400MHz, CDCl3) :
δ= 1.26(3H,t,J=7.1), 1.43(3H,d,J=7.1), 3.46(1H,q,J=7.3), 4.20(2H,q,J=7.3), 10.61(1H,br s)
(6) 炭素13核磁気共鳴スペクトル(100MHz, CDCl3) :
δ= 13.47, 13.92, 45.89, 61.71, 169.85, 175.88
前記構造式(2)で表される化合物(17.0g、116mmol)を塩化メチレン200mLに溶解させ、氷浴下で塩化オキサリル(19.6mL、232mmol)を滴下し、更にN,N−ジメチルホウムアミド(以下、「DMF」と称することがある)を数滴加えた。室温下で3時間撹拌させた後、溶媒を留去した。
得られた残渣(13.0g)を塩化メチレン50mLに溶解させ、アニリン(6.6mL、71.8mmol)、トリエチルアミン(13.4mL、86.1mmol)を塩化メチレン100mLに溶解させたものに氷浴下で滴下した。更に室温下で6時間撹拌させた後、0.1N塩酸50mLを加えて反応を停止させ、塩化メチレンで抽出後、飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、食塩水で洗浄した。合わせた有機層を芒硝乾燥し、溶媒を留去した。
得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製し、構造式(3)で表される化合物(11.3g、82%)を2工程で得た。
前記構造式(3)で表される化合物の物理化学的性質としては、次の通りであった。
(1) 外観 : 黄色粉体
(2) 融点 : 62℃〜63℃
(3) 分子式 : C12H15O3N
(4) 高分解能質量分析(HRESI−MS)(m/z) :
実験値 244.0943 (M+Na)+
計算値 244.0944 (C12H15O3NNaとして)
(5) 赤外線吸収スペクトル :
KBr錠剤法で測定した赤外線吸収のピークは、以下の通りであった。
νmax(KBr)cm−1 : 3257, 2985, 2890, 1745, 1654, 749, 691
(6) プロトン核磁気共鳴スペクトル(400MHz, CDCl3) :
δ= 1.30(3H,t,J=7.3), 1.54(3H,d,J=7.3), 3.44(1H,q,J=7.3), 4.25(2H,q,J=7.3), 7.11(1H,t,J=7.5), 7.32(2H,t,J=7.5), 7.53(1H,t,J=7.5), 8.64(1H,br)
(7) 炭素13核磁気共鳴スペクトル(100MHz, CDCl3) :
δ= 14.04, 15.46, 47.43, 61.92, 119.87, 124.44, 128.97, 137.58, 166.94, 172.84
前記構造式(3)で表される化合物(15.2g、68.7mmol)をTHF:H2O:メタノール(4:1:1)の混合溶媒200mLに溶解させ、水酸化ナトリウム(3.30g、82.4mmol)を加えた。室温下で1時間撹拌させた後、1N塩酸を加えpHを4に調整し、酢酸エチル(200mL)で抽出した。得られた有機層は、芒硝乾燥後、溶媒を留去し、構造式(4)で表される化合物(12.6g、95%)を得た。
前記構造式(4)で表される化合物の物理化学的性質としては、次の通りであった。
(1) 外観 : 白色粉体
(2) 融点 : 153℃〜155℃
(3) 分子式 : C10H11O3N
(4) 高分解能質量分析(HRESI−MS)(m/z) :
実験値 216.0633 (M+Na)+
計算値 216.0631 (C10H11O3NNaとして)
(5) 赤外線吸収スペクトル :
KBr錠剤法で測定した赤外線吸収のピークは、以下の通りであった。
νmax(KBr)cm−1 : 3327, 3287−2555, 2985, 2941, 1742, 1646, 756, 693
(6) プロトン核磁気共鳴スペクトル(400MHz, DMSO−d6) :
δ= 1.21(3H,d,J=7.1), 3.42(1H,q,J=7.1), 6.99(1H,t,J=7.5), 7.25(2H,t,J=7.5), 7.55(1H,t,J=7.5), 10.19(1H, s)
(7) 炭素13核磁気共鳴スペクトル(100MHz, DMSO−d6) :
δ= 14.19, 47.34, 119.27, 123.47, 128.94, 139.34, 168.97, 172.34
前記構造式(4)で表される化合物(12.6g、65.2mmol)とEaton’s試薬(80mL)の混合物を80℃で2.5時間撹拌した。反応溶液を室温まで戻し、氷浴下、10%炭酸水素ナトリウム水溶液をpHが7になるまで加えた。生成した白色の固体を吸引濾過し、更に10%炭酸水素ナトリウム水溶液、水で洗浄し、構造式(5)で表される化合物(10.2g、89%)を得た。
前記構造式(5)で表される化合物の物理化学的性質としては、次の通りであった。
(1) 外観 : 白色粉体
(2) 融点 : >260℃
(3) 分子式 : C10H9O2N
(4) 高分解能質量分析(HRESI−MS)(m/z) :
実験値 176.0705 (M+H)+
計算値 176.0706 (C10H10O2Nとして)
(5) 赤外線吸収スペクトル :
KBr錠剤法で測定した赤外線吸収のピークは、以下の通りであった。
νmax(KBr)cm−1 : 3148−2520, 1644, 1611, 1502, 1478, 747
(6) プロトン核磁気共鳴スペクトル(400MHz, DMSO−d6) :
δ= 1.92(3H,s), 7.03(1H,ddd,J=8.0, 7.1, 0.8), 7.17(1H,brd,J=8.0), 7.33(1H,ddd,J=8.2, 7.1, 1.3), 7.86(1H,dd,J=8.2, 0.8),11.04(1H,br)
(7) 炭素13核磁気共鳴スペクトル(100MHz, DMSO−d6) :
δ= 9.76, 105.83, 114.90, 117.11, 120.78, 123.17, 129.42, 137.59, 160.21, 164.44
アルゴン雰囲気下、前記構造式(5)で表される化合物(750mg、4.28mmol)をDMF(20mL)に溶解させ、イミダゾール(350mg、5.13mmol)を加えた。更に氷浴下、tert−ブチルジメチルクロロシラン(以下、「TBSCl」と称することがある。710mg、4.71mmol)を加え、室温下で2時間撹拌させた。水を加えて反応を停止させ、酢酸エチルで抽出し有機層を分離した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、食塩水で洗浄した後、有機層を芒硝乾燥し溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製し、構造式(6)で表される化合物(1.1g、89%)を得た。
前記構造式(6)で表される化合物の物理化学的性質としては、次の通りであった。
(1) 外観 : 無色結晶
(2) 融点 : 177℃〜178℃
(3) 分子式 : C16H23O2NSi
(4) 高分解能質量分析(HRESI−MS)(m/z) :
実験値 290.1574 (M+H)+
計算値 290.1571 (C16H24O2NSiとして)
(5) 赤外線吸収スペクトル :
KBr錠剤法で測定した赤外線吸収のピークは、以下の通りであった。
νmax(KBr)cm−1 : 3057, 2955, 1654, 1609, 1572, 1434, 1159, 1032, 826, 812, 751, 697
(6) プロトン核磁気共鳴スペクトル(400MHz, CDCl3) :
δ= 0.22(6H,s), 1.11(9H,s), 2.18(3H,s), 7.17(1H,ddd,J=8.2, 7.1, 1.1), 7.39(1H,dd,J=8.2, 1.1), 7.45(1H,ddd,J=8.2, 7.1, 1.4), 7.73(1H,dd,J=8.2, 1.4), 11.77(1H, br)
(7) 炭素13核磁気共鳴スペクトル(100MHz, CDCl3) :
δ= −3.16, 11.09, 18.68, 25.92, 114.86, 115.70, 118.10, 121.55, 123.26, 129.69, 136.87, 157.39, 166.20
アルゴン雰囲気下、前記構造式(6)で表される化合物(450mmg、1.55mmol)を塩化メチレン(5mL)に溶解させ、2,6−ルチジン(0.36mL、3.1mmol)を加えた。更に氷冷下、トリフルオロメタンスルホン酸無水物(0.38mL、2.33mmol)を滴下した。室温下で1時間撹拌させた後、0.1N塩酸で反応を停止させ、塩化メチレンで抽出した。有機層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液、食塩水で洗浄した後芒硝乾燥させ、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)で精製し、構造式(7)で表される化合物(790mg、92%)を得た。
前記構造式(7)で表される化合物の物理化学的性質としては、次の通りであった。
(1) 外観 : 白色粉末
(2) 融点 : 101℃〜102℃
(3) 分子式 : C17H22O4NF3SSi
(4) 高分解能質量分析(HRESI−MS)(m/z) :
実験値 422.1062 (M+H)+
計算値 422.1064 (C17H23O4NF3SSiとして)
(5) 赤外線吸収スペクトル :
KBr錠剤法で測定した赤外線吸収のピークは、以下の通りであった。
νmax(KBr)cm−1 : 2960, 2936, 1605, 1571, 1501, 1416, 1199, 1134, 1047, 895, 823, 808, 766, 664, 601
(6) プロトン核磁気共鳴スペクトル(600MHz, CDCl3) :
δ= 0.24(6H,s), 1.13(9H,s), 2.32(3H,s), 7.52(1H,ddd,J=8.2, 7.5, 1.0), 7.68(1H,ddd,J=8.2, 7.5, 1.4), 7.93(1H,brd,J=8.2), 7.98(1H,brd,J=8.2)
(7) 炭素13核磁気共鳴スペクトル(150MHz, CDCl3) :
δ= −3.19, 10.88, 18.69, 25.83, 111.02, 118.64(q, 320.7 Hz), 122.61, 123.81, 126.24, 128.66, 130.15, 144.71, 155.05, 160.50
アルゴン雰囲気下、前記構造式(7)で表される化合物(1.0g、2.37mmol)と、Pd(PPh3)2Cl2(174mg、0.237mmol)及びゲラニルボロン酸ピナコールエステル誘導体(1.88g、7.11mmol)を入れた混合物に、無水トルエン(25mL)を加え室温下で30分撹拌させた。そこに、無水エタノール(以下、「EtOH」と称することがある)(10mL)、2M炭酸水素ナトリウム水溶液(12mL)を順次加え、90℃で4時間撹拌した。食塩水を加えて反応を停止させ、酢酸エチルで抽出した。有機層を芒硝乾燥し、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1)で精製し、構造式(8)で表される化合物(490mg、70%)を得た。
前記構造式(8)で表される化合物の物理化学的性質としては、次の通りであった。
(1) 外観 : 白色粉体
(2) 融点 : 199℃〜201℃
(3) 分子式 : C20H25ON
(4) 高分解能質量分析(HRESI−MS)(m/z) :
実験値 296.2010 (M+H)+
計算値 296.2009 (C20H26ONとして)
(5) 赤外線吸収スペクトル :
KBr錠剤法で測定した赤外線吸収のピークは、以下の通りであった。
νmax(KBr)cm−1 : 2921, 1638, 1607, 1590, 1554, 1497, 1475, 1445, 1392, 1358, 1257, 998, 757, 692, 608, 566, 431
(6) プロトン核磁気共鳴スペクトル(400MHz, CDCl3) :
δ= 1.60(3H,s), 1.69(6H,s), 2.12(4H,m), 2.16(3H,s), 3.50(2H,d,J=7.1), 5.09(1H,m), 5.31(1H,t,J=6.6), 7.26(1H,ddd,J=8.2, 7.1, 0.9), 7.35(1H,brd,J=8.2), 7.50(1H,ddd,J=8.2, 7.1, 1.4), 8.36(1H,dd,J=8.2, 1.4),9.49(1H,br)
(7) 炭素13核磁気共鳴スペクトル(100MHz, CDCl3) :
δ= 10.38, 16.41, 17.77, 25.76, 26.37, 31.01, 39.55, 115.45, 117.08, 117.20, 123.01, 123.50, 123.75, 126.13, 131.01, 132.26, 138.71, 142.00, 147.25, 177.90
アルゴン雰囲気下、前記構造式(8)で表される化合物(940mg、3.19mmol)をTHF(6mL)に溶解させ、リチウムt−ブトキシドのTHF 1M溶液(3.56mL、3.56mmol)を加え室温下で20分撹拌させた。そこへ氷冷下、チオシアン酸クロロメチル(0.93mL、11.9mmol)を滴下し、更に室温下で3時間撹拌させた。食塩水を加えて反応を停止させ、酢酸エチルで抽出した。有機層を芒硝乾燥後、得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製し、構造式(9)で表される化合物(592mg、51%)を得た。
前記構造式(9)で表される化合物の物理化学的性質としては、次の通りであった。
(1) 外観 : 黄色油状物
(2) 分子式 : C22H26O2N2S
(3) 高分解能質量分析(HRESI−MS)(m/z) :
実験値 367.1656 (M+Na)+
計算値 367.1658 (C22H26O2N2NaSとして)
(4) 赤外線吸収スペクトル :
KBr錠剤法で測定した赤外線吸収のピークは、以下の通りであった。
νmax(KBr)cm−1 : 2921, 2029, 1617, 1598, 1553, 1487, 1372, 1278, 1096, 982, 759, 692, 560, 436
(5) プロトン核磁気共鳴スペクトル(600MHz, CDCl3) :
δ= 1.59(3H,s), 1.66(3H,s), 1.83(3H,s), 2.07−2.14(4H,m), 2.21(3H,s), 3.59(2H,d,J=5.8), 5.03(1H,m), 5.09(1H,t,J=5.1), 5.66(2H,s), 7.39(1H,dd,J=8.3, 7.2), 7.45(1H,d,J=8.3), 7.68(1H,ddd,J=8.2, 7.2, 1.4), 8.45(1H,dd,J=8.2, 1.4)
(6) 炭素13核磁気共鳴スペクトル(150MHz, CDCl3) :
δ= 11.41, 16.64, 17.74, 25.72, 26.32, 30.00, 39.45, 56.23, 114.22, 117.87, 118.53, 123.53, 123.61, 124.65, 127.45, 132.07, 132.40, 140.04, 140.32, 141.77, 148.58, 177.78
前記構造式(9)で表される化合物(590mg、1.61mmol)とナトリウムチオメトキシド(124mg、1.77mmol)の混合物にアセトニトリル(10mL)を加え室温下で10分間撹拌した。ヨードメタン(1.3mL、3.22mmol)を加えて更に室温下で、20分間撹拌させた。飽和炭酸水素ナトリウム水溶液を加えて反応を停止させ、酢酸エチルで抽出した。有機層を芒硝乾燥後、溶媒を留去した。得られた残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:1)で精製し、構造式(1)で表される化合物(292mg、42%)を得た。
前記構造式(1)で表される化合物の物理化学的性質としては、次の通りであった。
(1) 外観 : 淡黄色油状物
(2) 分子式 : C24H32N2OS2
(3) 高分解能質量分析(HRESI−MS)(m/z) :
実験値 451.1848 (M+Na)+
計算値 451.1848 (C24H32N2OS2Naとして)
(4) 赤外線吸収スペクトル :
KBr錠剤法で測定した赤外線吸収のピークは、以下の通りであった。
νmax(KBr)cm−1 : 2964, 2923, 1617, 1597, 1562, 1371, 1283, 1192, 916, 758, 696
(5) プロトン核磁気共鳴スペクトル(600MHz, CDCl3) :
δ= 1.58(3H,s), 1.65(3H, s), 1.73(3H,s),2.03−2.11(4H,m), 2.23(3H,s), 2.30(3H,s), 2.69(3H,s), 3.53(2H,d,J=5.8), 5.05(1H,m), 5.10(1H,t,J=6.5), 5.55(2H,s), 7.27(1H,d,J=8.6), 7.31(1H,t,J=8.6,7.1), 7.55(1H,ddd,J=8.6, 7.1, 1.7), 8.47(1H,dd,J=8.3, 1.7)
(6) 炭素13核磁気共鳴スペクトル(150MHz, CDCl3) :
δ= 11.37, 14.79, 15.03, 16.55, 17.70, 25.67, 26.39, 30.02, 39.49, 63.86, 115.56, 117.35, 118.47, 122.75, 123.70, 124.83, 126.84, 131.33, 131.82, 138.99, 141.10, 150.46, 161.18, 177.63
本製造例2で得られた前記構造式(1)で表される化合物の物理化学的性質は、前記製造例1で得られた前記構造式(1)で表される化合物の物理化学的性質と同様であった。
したがって、前記構造式(1)で表される化合物を化学合成により製造できることが示された。
<1> 下記構造式(1)で表されることを特徴とする化合物である。
ノカルディア(Nocardia)属に属し、前記<1>に記載の化合物を生産する能力を有する微生物を培養する培養工程と、
前記培養工程で得られた培養物から前記<1>に記載の化合物を採取する採取工程とを含むことを特徴とする化合物の製造方法である。
<3> ノカルディア(Nocardia)属に属し、前記<1>に記載の化合物を生産する能力を有する微生物が、受託番号NITE BP−01464のノカルディア エスピー(Nocardia sp.)ML96−86F2株である前記<2>に記載の化合物の製造方法である。
<4> ノカルディア(Nocardia)属に属し、前記<1>に記載の化合物を生産する能力を有することを特徴とする微生物である。
<5> 受託番号NITE BP−01464のノカルディア エスピー(Nocardia sp.)ML96−86F2株である前記<4>に記載の微生物である。
<6> 前記<1>に記載の化合物の製造方法であって、
アセトニトリルの存在下で、下記構造式(9)で表される化合物と、ナトリウムチオメトキシドとを反応させた後、前記反応物と、メチル化剤とを反応させることを特徴とする化合物の製造方法である。
<8> 前記<1>に記載の化合物を含むことを特徴とする抗がん剤である。
<9> 前記<1>に記載の化合物を含むことを特徴とする抗ヘリコバクター・ピロリ剤である。
<10> がんを予防又は治療するための方法であって、個体に、前記<8>に記載の抗がん剤を投与することを特徴とする方法である。
<11> ヘリコバクター・ピロリによる感染症を予防又は治療するための方法であって、個体に、前記<9>に記載の抗ヘリコバクター・ピロリ剤を投与することを特徴とする方法である。
<12> ヘリコバクター・ピロリに起因する胃及び十二指腸障害を予防又は治療するための方法であって、個体に、前記<9>に記載の抗ヘリコバクター・ピロリ剤を投与することを特徴とする方法である。
Claims (8)
- 下記構造式(1)で表されることを特徴とする化合物。
- 請求項1に記載の化合物の製造方法であって、
ノカルディア(Nocardia)属に属し、請求項1に記載の化合物を生産する能力を有する微生物を培養する培養工程と、
前記培養工程で得られた培養物から請求項1に記載の化合物を採取する採取工程とを含むことを特徴とする化合物の製造方法。 - ノカルディア(Nocardia)属に属し、請求項1に記載の化合物を生産する能力を有する微生物が、受託番号NITE BP−01464のノカルディア エスピー(Nocardia sp.)ML96−86F2株である請求項2に記載の化合物の製造方法。
- ノカルディア(Nocardia)属に属し、請求項1に記載の化合物を生産する能力を有する、受託番号NITE BP−01464のノカルディア エスピー(Nocardia sp.)ML96−86F2株であることを特徴とする微生物。
- 請求項1に記載の化合物の製造方法であって、
アセトニトリルの存在下で、下記構造式(9)で表される化合物と、ナトリウムチオメトキシドとを反応させた後、前記反応物と、メチル化剤とを反応させることを特徴とする化合物の製造方法。
- 請求項1に記載の化合物を含むことを特徴とする化合物含有組成物。
- 請求項1に記載の化合物を含むことを特徴とする抗がん剤。
- 請求項1に記載の化合物を含むことを特徴とする抗ヘリコバクター・ピロリ剤。
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