JP6130248B2 - 新規化合物キノフラシン類、その製造方法、及びその用途、並びに新規微生物 - Google Patents

新規化合物キノフラシン類、その製造方法、及びその用途、並びに新規微生物 Download PDF

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Description

本発明は、新規化合物及びその製造方法、前記新規化合物を産生する能力を有する新規微生物、並びに前記新規化合物を含有する組成物、及び抗がん剤に関する。
がんは、DNA損傷などによって細胞死を起こすべき正常細胞が細胞死を免れた結果として、無制限に細胞増殖する特性を有する。前記がんは、日本人の死亡原因の約30%を占める疾病である。近年の目覚ましい細胞のがん化メカニズムの解明によって、がん細胞特異的な遺伝子をターゲットとする分子標的治療薬の開発が国内外を問わず精力的に行われている。
これまでに、細胞周期の制御やアポトーシスの誘導に関わる転写因子であるp53に結合することが知られているMurine double minute 2(以下、「MDM2」と称することがある)に着目し、該MDM2と、前記p53との結合を阻害する阻害剤が提案されている(例えば、非特許文献1及び2参照)。
しかしながら、がんは、臓器特異的性質、転移性の有無などの多様性を有するために、個々のがんに適した治療方法が必要であり、がん治療薬にも特異性、多様性が求められている。現在使用されているがん治療薬では、全てのがんに対応するには不十分であり、新たながん治療薬の開発が強く求められているのが現状である。
Yosup Rew et al, Structure−Based Design of Novel Inhibitors of the MDM2−p53 Interaction, J. Med. Chem., 55, 4936−4954(2012) Lyubomir T. Vassilev et al, In Vivo Activation of the p53 Pathway by Small−Molecule Antagonists of MDM2, SCIENCE, 303, 844−848(2004)
本発明は、従来における前記諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、優れた抗がん作用を有する新規化合物、及び該新規化合物の製造方法、前記新規化合物の生産菌である新規微生物、並びに、前記新規化合物を利用した、化合物含有組成物、及び抗がん剤を提供することを目的とする。
前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> 下記構造式(A)から(E)のいずれかで表されることを特徴とする化合物である。
<2> 前記<1>に記載の化合物の製造方法であって、
スタフィロトリクム(Staphylotrichum)属に属し、前記<1>に記載の化合物を生産する能力を有する微生物を培養する培養工程と、
前記培養工程で得られた培養物から前記<1>に記載の化合物を採取する採取工程とを含むことを特徴とする化合物の製造方法である。
<3> スタフィロトリクム(Staphylotrichum)属に属し、前記<1>に記載の化合物を生産する能力を有することを特徴とする微生物である。
<4> 前記<1>に記載の化合物を含むことを特徴とする化合物含有組成物である。
<5> 前記<1>に記載の化合物を含むことを特徴とする抗がん剤である。
本発明によれば、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、優れた抗がん作用を有する新規化合物、及び該新規化合物の製造方法、前記新規化合物の生産菌である新規微生物、並びに、前記新規化合物を利用した、化合物含有組成物、及び抗がん剤を提供することができる。
図1は、構造式(A)で表される化合物のプロトン核磁気共鳴スペクトルのチャートである。横軸:ppm単位。 図2は、構造式(A)で表される化合物の炭素13核磁気共鳴スペクトルのチャートである。横軸:ppm単位。 図3は、構造式(B)で表される化合物のプロトン核磁気共鳴スペクトルのチャートである。横軸:ppm単位。 図4は、構造式(B)で表される化合物の炭素13核磁気共鳴スペクトルのチャートである。横軸:ppm単位。 図5は、構造式(C)で表される化合物のプロトン核磁気共鳴スペクトルのチャートである。横軸:ppm単位。 図6は、構造式(C)で表される化合物の炭素13核磁気共鳴スペクトルのチャートである。横軸:ppm単位。 図7は、構造式(D)で表される化合物のプロトン核磁気共鳴スペクトルのチャートである。横軸:ppm単位。 図8は、構造式(D)で表される化合物の炭素13核磁気共鳴スペクトルのチャートである。横軸:ppm単位。 図9は、構造式(E)で表される化合物のプロトン核磁気共鳴スペクトルのチャートである。横軸:ppm単位。 図10は、構造式(E)で表される化合物の炭素13核磁気共鳴スペクトルのチャートである。横軸:ppm単位。
(新規化合物)
本発明の化合物は、下記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物(以下、「キノフラシン(Quinofuracin)AからE」と称することがある)であり、本発明者らが見出した新規化合物である。
前記構造式(A)から(E)で表される化合物の中でも、構造式(A)、(B)、(C)、及び(E)のいずれかで表される化合物が好ましく、構造式(A)、及び(B)のいずれかで表される化合物がより好ましい。前記好ましい化合物であると、膠芽腫細胞の増殖をより抑制することができる点で、有利である。
<構造式(A)で表される化合物(キノフラシンA)の物理化学的性質>
前記キノフラシンAの物理化学的性質は、次の通りである。
(1) 外観 : 赤色の粉状である。
(2) 分子式 : C263012で表され、分子量は、534である。
(3) 高分解能質量分析(HRESIMS:正イオンモード) :
実験値は、m/z 557.1614(M+Na)であり、計算値は、m/z 557.1629(C263012Naとして)である。
(4) 紫外吸収スペクトル :
主なピークは、下記に示すとおりである。
(i)メタノール溶液で測定した場合
λmax nm (logε):223 (4.38), 262 (4.16), 295 (4.27), 314 (4.23), 469 (3.78)
(ii)メタノール−NaOH溶液で測定した場合
λmax nm (logε):211 (4.63), 231 (4.29), 265 (4.10), 324 (4.60), 398 (3.79), 546 (3.82)
(iii)メタノール−HCl溶液で測定した場合
λmax nm (logε):224 (4.40), 253 (4.14, sh), 264 (4.18), 293 (4.40), 320 (3.92), 453 (3.90)
(5) 薄層クロマトグラフィー :
TLCプレート(TLC Silica gel 60F254、メルク製)の薄層クロマトグラフィーにおいて、展開溶媒〔クロロホルム:メタノール:酢酸(10:1:0.03、体積比)〕で展開して測定したRf値は、0.15である。
(6) 高速液体クロマトグラフィー :
HPLCカラムとして、CAPCELLPAK UG120(粒子径 5μm、内径 4.6mm、長さ 250mm、資生堂株式会社製)を用い、溶媒として、0.1体積%酢酸を含む40体積%アセトニトリル水溶液を用い、前記溶媒の流速を1mL/分間としたときの保持時間は、10.8分間である。
(7) 赤外線吸収スペクトル :
赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)の主なピークは、下記に示すとおりである。
νmax cm−1 :620、770、1070、1170、1210、1260、1400、1470、1620、2930、3430
(8) プロトン核磁気共鳴スペクトル(600MHz, CDOD/TMS) :
測定結果は、図1に示す通りである。
(9) 炭素13核磁気共鳴スペクトル(150MHz, CDOD/TMS) :
測定結果は、図2に示す通りである。
<構造式(B)で表される化合物(キノフラシンB)の物理化学的性質>
前記キノフラシンBの物理化学的性質は、次の通りである。
(1) 外観 : 赤色の粉状である。
(2) 分子式 : C283213で表され、分子量は、576である。
(3) 高分解能質量分析(HRESIMS:正イオンモード) :
実験値は、m/z 599.1724(M+Na)であり、計算値は、m/z 599.1735(C283213Naとして)である。
(4) 紫外吸収スペクトル :
主なピークは、下記に示すとおりである。
(i)メタノール溶液で測定した場合
λmax nm (logε):223(4.37), 263 (4.11), 294 (4.23), 314 (4.09), 460 (3.75)
(ii)メタノール−NaOH溶液で測定した場合
λmax nm (logε):211 (4.67), 231 (4.29), 264 (4.10), 325 (4.55), 397 (3.74), 545 (3.78)
(iii)メタノール−HCl溶液で測定した場合
λmax nm (logε):224 (4.40), 253 (4.10, sh), 264 (4.13), 293 (4.35), 320 (3.88, sh), 453 (3.93)
(5) 薄層クロマトグラフィー :
TLCプレート(TLC Silica gel 60F254、メルク製)の薄層クロマトグラフィーにおいて、展開溶媒〔クロロホルム:メタノール:酢酸(10:1:0.03、体積比)〕で展開して測定したRf値は、0.39である。
(6) 高速液体クロマトグラフィー :
HPLCカラムとして、CAPCELLPAK UG120(粒子径 5μm、内径 4.6mm、長さ 250mm、資生堂株式会社製)を用い、溶媒として、0.1体積%酢酸を含む40体積%アセトニトリル水溶液を用い、前記溶媒の流速を1mL/分間としたときの保持時間は、15.2分間である。
(7) 赤外線吸収スペクトル :
赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)の主なピークは、下記に示すとおりである。
νmax cm−1 :630、780、1070、1170、1210、1260、1380、1450、1620、2930、3430
(8) プロトン核磁気共鳴スペクトル(600MHz, CDOD/TMS) :
測定結果は、図3に示す通りである。
(9) 炭素13核磁気共鳴スペクトル(150MHz, CDOD/TMS) :
測定結果は、図4に示す通りである。
<構造式(C)で表される化合物(キノフラシンC)の物理化学的性質>
前記キノフラシンCの物理化学的性質は、次の通りである。
(1) 外観 : 赤色の粉状である。
(2) 分子式 : C263012で表され、分子量は、534である。
(3) 高分解能質量分析(HRESIMS:正イオンモード) :
実験値は、m/z 557.1616(M+Na)であり、計算値は、m/z 557.1629(C263012Naとして)である。
(4) 紫外吸収スペクトル :
主なピークは、下記に示すとおりである。
(i)メタノール溶液で測定した場合
λmax nm (logε):223 (4.42), 261 (4.22), 290 (4.25), 314 (4.16), 455 (3.85)
(ii)メタノール−NaOH溶液で測定した場合
λmax nm (logε):212 (4.63), 237 (4.42), 258 (4.19), 290 (4.17, sh), 314 (4.34), 527 (3.91)
(iii)メタノール−HCl溶液で測定した場合
λmax nm (logε):225 (4.44), 253 (4.16, sh), 264 (4.23, sh), 288 (4.35), 319 (3.94), 448 (3.94)
(5) 薄層クロマトグラフィー :
TLCプレート(TLC Silica gel 60F254、メルク製)の薄層クロマトグラフィーにおいて、展開溶媒〔クロロホルム:メタノール:酢酸(10:1:0.03、体積比)〕で展開して測定したRf値は、0.16である。
(6) 高速液体クロマトグラフィー :
HPLCカラムとして、CAPCELLPAK UG120(粒子径 5μm、内径 4.6mm、長さ 250mm、資生堂株式会社製)を用い、溶媒として、0.1体積%酢酸を含む40体積%アセトニトリル水溶液を用い、前記溶媒の流速を1mL/分間としたときの保持時間は、15.4分間である。
(7) 赤外線吸収スペクトル :
赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)の主なピークは、下記に示すとおりである。
νmax cm−1 :650、770、1080、1170、1210、1280、1400、1470、1620、2930、3430
(8) プロトン核磁気共鳴スペクトル(600MHz, Pyridine− /TMS) :
測定結果は、図5に示す通りである。
(9) 炭素13核磁気共鳴スペクトル(150MHz, Pyridine− /TMS) :
測定結果は、図6に示す通りである。
<構造式(D)で表される化合物(キノフラシンD)の物理化学的性質>
前記キノフラシンDの物理化学的性質は、次の通りである。
(1) 外観 : 赤色の粉状である。
(2) 分子式 : C262813で表され、分子量は、548である。
(3) 高分解能質量分析(HRESIMS:正イオンモード) :
実験値は、m/z 571.1422(M+Na)であり、計算値は、m/z 571.1422(C262813Naとして)である。
(4) 紫外吸収スペクトル :
主なピークは、下記に示すとおりである。
(i)メタノール溶液で測定した場合
λmax nm (logε):223 (4.39), 263 (4.14), 290 (4.30), 314 (4.12), 460 (3.82)
(ii)メタノール−NaOH溶液で測定した場合
λmax nm (logε):211 (4.64), 232 (4.29), 263 (4.10), 324 (4.56), 397 (3.73), 542 (3.84)
(iii)メタノール−HCl溶液で測定した場合
λmax nm (logε):223 (4.41), 253 (4.09, sh), 265 (4.14), 293 (4.39), 321 (3.86), 453 (3.91)
(5) 薄層クロマトグラフィー :
TLCプレート(TLC Silica gel 60F254、メルク製)の薄層クロマトグラフィーにおいて、展開溶媒〔クロロホルム:メタノール:酢酸(10:1:0.03、体積比)〕で展開して測定したRf値は、0.11である。
(6) 高速液体クロマトグラフィー :
HPLCカラムとして、CAPCELLPAK UG120(粒子径 5μm、内径 4.6mm、長さ 250mm、資生堂株式会社製)を用い、溶媒として、0.1体積%酢酸を含む40体積%アセトニトリル水溶液を用い、前記溶媒の流速を1mL/分間としたときの保持時間は、4.2分間である。
(7) 赤外線吸収スペクトル :
赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)の主なピークは、下記に示すとおりである。
νmax cm−1 :620、770、1090、1160、1210、1260、1400、1470、1620、2930、3430
(8) プロトン核磁気共鳴スペクトル(600MHz, CDOD/TMS) :
測定結果は、図7に示す通りである。
(9) 炭素13核磁気共鳴スペクトル(150MHz, CDOD/TMS) :
測定結果は、図8に示す通りである。
<構造式(E)で表される化合物(キノフラシンE)の物理化学的性質>
前記キノフラシンEの物理化学的性質は、次の通りである。
(1) 外観 : 黄橙色の粉状である。
(2) 分子式 : C242212で表され、分子量は、502である。
(3) 高分解能質量分析(HRESIMS:正イオンモード) :
実験値は、m/z 503、1173(M+H)であり、計算値は、m/z 503.1184(C242312として)である。
(4) 紫外吸収スペクトル :
主なピークは、下記に示すとおりである。
(i)メタノール溶液で測定した場合
λmax nm (logε):222 (4.41), 251 (4.10, sh), 266 (4.20, sh), 287 (4.35), 317 (3.84), 442 (3.89)
(ii)メタノール−NaOH溶液で測定した場合
λmax nm (logε):212 (4.61), 240 (4.26, sh), 263 (4.32), 311 (4.03), 512 (3.84)
(iii)メタノール−HCl溶液で測定した場合
λmax nm (logε):223 (4.40), 251 (4.12, sh), 266 (4.21, sh), 287 (4.36), 318 (3.83), 443 (3.90)
(5) 薄層クロマトグラフィー :
TLCプレート(TLC Silica gel 60F254、メルク製)の薄層クロマトグラフィーにおいて、展開溶媒〔クロロホルム:メタノール:酢酸(10:1:0.03、体積比)〕で展開して測定したRf値は、0.25である。
(6) 高速液体クロマトグラフィー :
HPLCカラムとして、CAPCELLPAK UG120(粒子径 5μm、内径 4.6mm、長さ 250mm、資生堂株式会社製)を用い、溶媒として、0.1体積%酢酸を含む40体積%アセトニトリル水溶液を用い、前記溶媒の流速を1mL/分間としたときの保持時間は、6.0分間である。
(7) 赤外線吸収スペクトル :
赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)の主なピークは、下記に示すとおりである。
νmax cm−1 :650、770、950、1070、1160、1190、1250、1320、1390、1470、1630、2930、3430
(8) プロトン核磁気共鳴スペクトル(600MHz, Pyridine− /TMS) :
測定結果は、図9に示す通りである。
(9) 炭素13核磁気共鳴スペクトル(150MHz, Pyridine− /TMS) :
測定結果は、図10に示す通りである。
化合物が、前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される構造を有するか否かは、適宜選択した各種の分析方法により確認することができ、例えば、前記質量分析法、前記紫外分光法、前記赤外分光法、前記プロトン核磁気共鳴分光法、前記炭素13核磁気共鳴分光法等の分析方法などが挙げられる。なお、前記各分析方法による測定値には、多少の誤差が生じることがあるが、当業者であれば、化合物が前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される構造を有することは容易に同定することが可能である。
前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物は、塩の態様であってもよい。
前記塩としては、薬理学的に許容され得る塩であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酢酸塩、クエン酸塩等の有機塩、塩酸塩、炭酸塩などが挙げられる。
前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物は、その互変異性体であってもよい。
前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物の製造方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、後述する本発明の製造方法により製造することが好ましい。
<用途>
前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物は、後述する試験例で示されるように、優れた抗がん作用を有し、安全性の高い化合物である。そのため、前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物は、例えば、後述する本発明の化合物含有組成物、抗がん剤などの有効成分として好適に利用可能である。
(化合物の製造方法)
本発明の化合物の製造方法は、培養工程と、採取工程とを少なくとも含み、必要に応じてさらにその他の工程を含む。
<培養工程>
前記培養工程は、スタフィロトリクム(Staphylotrichum)属に属し、前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物を生産する能力を有する微生物を培養する工程である。
前記微生物としては、スタフィロトリクム(Staphylotrichum)属に属し、上述した本発明の化合物、即ち前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物を生産する能力を有する微生物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、スタフィロトリクム ボニネンセ(Staphylotrichum boninense)PF1444株(受託番号NITE BP−1450、詳細は後述する本発明の微生物の項目に記す)が挙げられる。前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物を生産できるその他の菌株についても、常法によって、自然界より分離することが可能である。なお、前記スタフィロトリクム ボニネンセ(Staphylotrichum boninense)PF1444株を含め、前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物の生産菌を、放射線照射やその他の変異処理に供することにより、前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物の生産能を高めることも可能である。更に、遺伝子工学的手法による前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物の生産も可能である。
前記微生物が前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物を生産する能力を有することを分析する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、該微生物の培養物、好ましくは、液体培養後の培養上清中又は固体培養後の固体培地中の成分の、抗がん作用を分析する方法、各種分析法により前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物を検出する方法などが挙げられる。
前記培養は、前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物を生産する生産菌(以下、単に「化合物生産菌」と称することがある)を栄養培地(以下、単に「培地」と称することがある)中に接種し、前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物の生産に良好な温度で培養することによって行われる。
前記栄養培地としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、従来子嚢菌類の培養に利用されている公知のものを使用することができ、液体培地であってもよく、固体(寒天、玄米など)培地であってもよい。
前記栄養培地に添加する栄養源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、市販されている米、玄米、大豆粉、小麦胚芽、押し麦、ペプトン、綿実粕、酵母エキス、肉エキス、コーン・スティープ・リカー、硫酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、尿素等の窒素源;トマトペースト、グリセリン、デンプン、グルコース、ガラクトース、デキストリン、バクトソイトン等の炭水化物、脂肪等の炭素源;などが挙げられる。
更に、食塩、炭酸カルシウム等の無機塩を培地に添加して使用することもでき、その他、必要に応じて微量の金属塩を培地に添加して使用することもできる。
これらの材料は、前記化合物生産菌が利用し、前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物の生産に役立つものであればよく、公知の培養材料は全て用いることができる。
前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物の生産のための種母培養液としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、液体培地、平板培地、斜面培地、半斜面培地などの培地上で前記化合物生産菌を培養した生育物などを使用することができる。
前記培養の方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、振とう培養、静置培養、タンク培養などが挙げられる。
前記培養の温度としては、前記化合物生産菌の発育が実質的に阻害されずに、前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物を生産し得る範囲であれば、特に制限はなく、使用する生産菌に応じて適宜選択することができるが、20℃〜35℃が好ましい。
前記培養液のpHとしては、前記化合物生産菌の発育が実質的に阻害されずに、前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物を生産し得る範囲であれば、特に制限はなく、使用する生産菌に応じて適宜選択することができる。
前記培養の期間としては、特に制限はなく、前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物の蓄積に合わせて適宜選択することができる。
<採取工程>
前記採取工程は、前記培養工程で得られた培養物から前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物を採取する工程である。
前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物は、上述した物理化学的性質を有するので、その性質に従って培養物から採取することができる。
前記培養物としては、前記培養工程で得られ、前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物を含むものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、菌体、液体培養後の培養上清、固体培養後の固体培地、及びこれらの混合物などが挙げられる。
なお、前記培養物として、前記菌体を用いる場合は、適当な有機溶媒を用いた抽出方法や、菌体破砕による溶出方法などにより、前記構造式(A)で表される化合物を菌体から抽出し、これを分離及び/又は精製に供してもよい。
前記採取の方法としては、特に制限はなく、微生物の生産する代謝物を採取するのに用いられる方法を適宜選択することができ、例えば、溶媒抽出法、各種吸着剤に対する吸着親和性の差を利用する方法、クロマトグラフ法などが挙げられる。これらの方法を単独又は適宜組み合せて、場合によっては反復使用することにより、分離及び/又は精製された前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物を採取することができる。
前記溶媒抽出法に用いる溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、エタノール、メタノール、アセトン、ブタノール、アセトニトリルなどが挙げられる。
前記吸着剤としては、特に制限はなく、公知の吸着剤の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ポリスチレン系吸着樹脂などが挙げられる。
前記クロマトグラフ法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、薄層クロマトグラフ法、順相あるいは逆相カラムを用いた分取用高速液体クロマトグラフ(分取用HPLC)法などが挙げられる。
前記クロマトグラフ法に用いる担体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イオン交換樹脂、ゲル濾過、シリカゲル、アルミナ、活性炭などが挙げられる。
前記クロマトグラフ法に用いる担体の市販品の具体例としては、アンバーライト(登録商標)CG50(シグマアルドリッチ株式会社製)等のイオン交換樹脂;トヨパール(登録商標)HW−40F(東ソー株式会社製)、セファデックス(登録商標)LH−20(GEヘルスケア社製)等のゲル濾過;CAPCELL PAK UG120(資生堂株式会社製)等のシリカゲル;などが挙げられる。
前記吸着剤や前記クロマトグラフ法における担体から前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物を溶出させる方法としては、特に制限はなく、該吸着剤や該担体の種類や性質等に応じて適宜選択することができる。例えば、ポリスチレン系吸着樹脂の場合には、溶出溶媒として、含水アルコール、含水アセトン等を用いて溶出する方法などが挙げられる。
以上のようにして前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物を製造することができる。
なお、前記採取工程における前記構造式(A)から(E)で表される化合物の精製の程度としては、特に制限はなく、粗精製物であってもよいし、粗精製物を精製したものであってもよい。
<その他の工程>
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、洗浄工程、精製工程などが挙げられる。
前記洗浄工程は、前記培養工程で得られた培養物、又は前記採取工程で得られた前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物を洗浄する工程である。前記洗浄の方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択して行うことができる。
前記精製工程は、前記採取工程で得られた前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物を精製する工程である。前記精製の方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択して行うことができ、例えば、前記採取工程に記載した方法と同様の方法が挙げられる。
(微生物)
本発明の微生物は、スタフィロトリクム(Staphylotrichum)属に属し、上述した本発明の化合物、即ち前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物を生産する能力を有する。前記微生物は、前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物を生産する能力を有し、そのために、上述した本発明の化合物の製造方法において、前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物の生産菌として使用され得る微生物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
このような微生物の中でも、特に、福岡県にてサンプリングした土壌より分離された子嚢菌で、PF1444株の菌株番号が付された微生物を使用することが好ましい。前記PF1444株の菌学的性状は、以下の通りである。
1.形態学的性質
ポテトデキストロース寒天培地、2%麦芽寒天培地、オートミール寒天培地、及びLCA培地(三浦培地)を用いて、PF1444株を25℃で、2週間〜7週間培養し、巨視的、及び微視的形態観察を行った。
コロニー性状、及び形態観察の結果、大きさは、65mm〜70mm程度、白色〜黄色系でビロード状〜羊毛状のコロニーを形成し(2週間培養)、栄養菌糸上から直立した柄の先端部から分岐した分生子柄が形成され、柄基部にはT字〜L字型の柄足細胞が認められた。分生子柄先端部の分生子形成細胞からアレウロ型で球形〜亜球形〜洋梨形、厚壁、無色〜明褐色、1細胞の分生子が形成される様子が観察された。
2.28S rDNA−D1/D2遺伝子解析
28S rDNA−D1/D2遺伝子の塩基配列(603bp)を決定し、国際塩基配列データベースBLASTAに登録された公知菌株のデータと比較した。その結果、PF1444株の28S rDNA−D1/D2遺伝子の塩基配列は以下に示すように、子嚢菌類の1種である、複数のStaphylotrichum boninenseの28S rDNA−D1/D2遺伝子の塩基配列と相同率100%の相同性を示した。即ち、Staphylotrichum boninenseJCM17910株(AB625570、100%)、Staphylotrichum boninenseJCM17909株(AB625569、100%)、Staphylotrichum boninenseJCM17908T株(AB625568、100%)である。なお、Staphylotrichum boninense以外では、Staphylotrichum coccosporumNBRC33272株(AB625574、99.1%)、Staphylotrichum coccosporumCBS364.58T株(AB625572、98.9%)、Staphylotrichum coccosporumJCM17911株(AB625571、98.9%)、Staphylotrichum coccosporumNBRC31817株(AB625573、98.8%)、Humicola fuscoatraNBRC9530株(AB625576、98.4%)、Chaetomium sphaeraleMUCL40089株(AF286407、98.4%)である。なお、括弧内は、国際塩基配列データベースのアクセッション番号と、塩基配列の相同率とをこの順で表記した。
2.ITS−5.8S rDNA遺伝子解析
ITS−5.8S rDNA遺伝子の塩基配列(599bp)を決定し、国際塩基配列データベースBLASTAに登録された公知菌株のデータと比較した。その結果、PF1444株のITS−5.8S rDNA遺伝子の塩基配列は以下に示すように、子嚢菌類の1種である、複数のStaphylotrichum boninenseのITS−5.8S rDNA遺伝子の塩基配列と相同率99.5%〜100%の高い相同性を示した。即ち、Staphylotrichum boninenseJCM17909株(AB625581、100%)、Staphylotrichum boninenseJCM17908T株(AB625580、99.5%)、Staphylotrichum boninenseJCM17910株(AB625582、99.5%)である。なお、Staphylotrichum boninense以外では、Fungal.spARIZ B362株(FJ612994、100%)、Fungal.sp229c4c株(EU563611、100%)、Staphylotrichum coccosporumNBRC31817株(AB625585、96.1%)、Staphylotrichum coccosporumNBRC33272株(AB625586、96.1%)、Staphylotrichum coccosporumCBS364.58T株(AB625584、95.6%)である。なお、括弧内は、国際塩基配列データベースのアクセッション番号と、塩基配列の相同率とをこの順で表記した。
以上の結果より、前記PF1444株は、スタフィロトリクム(Staphylotrichum)属に属するものと考えられる。そこで、前記PF1444株をスタフィロトリクム ボニネンセ(Staphylotrichum boninense)PF1444株とした。
なお、前記PF1444株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(〒292−0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8)に寄託申請し、NITE BP−1450として受託された(受託日:平成24年(2012年)11月6日)。
なお、他の菌にも見られるように、前記PF1444株は、性状が変化し易いが、例えば、前記PF1444株に由来する突然変異株(例えば、自然変異株や、紫外線、エックス線、放射線、薬品等の変異処理により取得できる人工変異株)、形質接合体、遺伝子組換体などであっても、前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物を生産する能力を有するものは、本発明の微生物に含まれる。
(化合物含有組成物、抗がん剤)
<化合物含有組成物>
本発明の化合物含有組成物は、前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物を少なくとも含み、必要に応じて、更にその他の成分を含む。
前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記化合物含有組成物における前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記化合物含有組成物は、前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物そのものであってもよい。
−その他の成分−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、薬理学的に許容され得る担体の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、添加剤、補助剤、水などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記添加剤又は前記補助剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、殺菌剤、保存剤、粘結剤、増粘剤、固着剤、結合剤、着色剤、安定化剤、pH調整剤、緩衝剤、等張化剤、溶剤、酸化防止剤、紫外線防止剤、結晶析出防止剤、消泡剤、物性向上剤、防腐剤などが挙げられる。
前記殺菌剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム等のカチオン性界面活性剤などが挙げられる。
前記保存剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、パラオキシ安息香酸エステル類、クロロブタノール、クレゾールなどが挙げられる。
前記粘結剤、増粘剤、固着剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、デンプン、デキストリン、セルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルデンプン、プルラン、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸アンモニウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、グアーガム、ローカストビーンガム、アラビアゴム、キサンタンガム、ゼラチン、カゼイン、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレングリコール、エチレン・プロピレンブロックポリマー、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
前記結合剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、エチルセルロース、シェラック、リン酸カルシウム、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
前記着色剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酸化チタン、酸化鉄などが挙げられる。
前記安定化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、トラガント、アラビアゴム、ゼラチン、ピロ亜硫酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、チオグリコール酸、チオ乳酸などが挙げられる。
前記pH調整剤又は前記緩衝剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウムなどが挙げられる。
前記等張化剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、塩化ナトリウム、ブドウ糖などが挙げられる。
前記化合物含有組成物における前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物の効果を損なわない範囲内で、目的に応じて適宜選択することができる。
−用途−
前記化合物含有組成物は、前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物を含むため、優れた抗がん作用を有し、安全性が高いものであり、例えば、医薬組成物、抗がん剤などとして好適に利用可能である。
なお、前記化合物含有組成物は、単独で使用されてもよいし、他の成分を有効成分とする医薬と併せて使用されてもよい。また、前記化合物含有組成物は、他の成分を有効成分とする医薬中に、配合された状態で使用されてもよい。
<抗がん剤>
本発明の抗がん剤は、前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物を少なくとも含み、必要に応じて、更にその他の成分を含む。
前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記抗がん剤における前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記抗がん剤は、前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物そのものであってもよい。
−その他の成分−
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記化合物含有組成物で記載したその他の成分と同様のものが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記抗がん剤における前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物の効果を損なわない範囲内で、目的に応じて適宜選択することができる。
−用途−
前記抗がん剤は、前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物を含むため、優れた抗がん作用を有し、安全性が高く、各種のがんの予防剤又は治療剤として好適に利用可能である。これらの中でも、膠芽腫に特に好適に利用可能である。
なお、前記抗がん剤は、単独で使用されてもよいし、他の成分を有効成分とする医薬と併せて使用されてもよい。また、前記抗がん剤は、他の成分を有効成分とする医薬中に、配合された状態で使用されてもよい。
また、後述する試験例で示すように、本発明の前記構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物は、野生型p53タンパク質の発現量に依存した特異的ながん細胞の増殖抑制効果を有する。
<剤形>
前記化合物含有組成物、及び抗がん剤の剤形としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、固形剤、半固形剤、液剤などが挙げられる。これらの剤形の前記化合物含有組成物、及び抗がん剤は、常法に従い製造することができる。
−固形剤−
前記固形剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、内用剤として用いられる場合、例えば、錠剤、チュアブル錠、発泡錠、口腔内崩壊錠、トローチ剤、ドロップ剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、顆粒剤、散剤、丸剤、ドライシロップ剤、浸剤などが挙げられる。
前記固形剤が、外用剤として用いられる場合、例えば、坐剤、パップ剤、プラスター剤などが挙げられる。
−半固形剤−
前記半固形剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、内用剤として用いられる場合、例えば、舐剤、チューインガム剤、ホイップ剤、ゼリー剤などが挙げられる。
前記半固形剤が、外用剤として用いられる場合、例えば、軟膏剤、クリーム剤、ムース剤、インヘラー剤、ナザールジェル剤などが挙げられる。
−液剤−
前記液剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、内用剤として用いられる場合、例えば、シロップ剤、ドリンク剤、懸濁剤、酒精剤などが挙げられる。
前記液剤が、外用剤として用いられる場合、例えば、液剤、点眼剤、エアゾール剤、噴霧剤などが挙げられる。
<投与>
前記化合物含有組成物、及び抗がん剤の投与方法、投与量、投与時期、及び投与対象としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記投与方法としては、例えば、局所投与法、経腸投与法、非経口投与法などが挙げられる。
前記投与量としては、特に制限はなく、投与対象個体の年齢、体重、体質、症状、他の成分を有効成分とする医薬や薬剤の投与の有無など、様々な要因を考慮して適宜選択することができる。
前記投与対象となる動物種としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒト、サル、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、トリなどが挙げられるが、これらの中でもヒトに好適に用いることができる。
以下に本発明の製造例、及び試験例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの製造例、及び試験例に何ら限定されるものではない。また、以下の製造例、及び試験例中、「%」は、特に明記のない限り「質量%」を表す。
(製造例1)
<構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物の製造>
−種母培養液の調製−
100mLの三角フラスコにTS培地(2.0%可溶性スターチ(和光純薬株式会社製)、1.0%グルコース(和光純薬株式会社製)、0.5%ポリペプトン(和光純薬株式会社製)、0.6%小麦胚芽(日清ファルマ株式会社製)、0.3%酵母エキス(和光純薬株式会社製)、0.2%大豆粕(昭和産業株式会社製)、0.2% CaCO(和光純薬株式会社製)、pH7.0(NaOHで調整))を20mL入れ、121℃で20分間殺菌した。次いで、スタフィロトリクム ボニネンセ(Staphylotrichum boninense)PF1444株を接種し、25℃で3日間〜6日間、ロータリーシェーカーで振とう(220rpm)培養し、この培養液を種母培養液とした。
−培養工程−
500mLの三角フラスコに、一晩水に浸し、翌朝1時間水を切った玄米(あきたこまち)80gと、オートミール(クエーカーオーツ社製)2gとを混合したものを入れ、121℃で20分間殺菌し、以下の培養に用いる培地(以下、「プロダクション培地」と称することがある)とした。
前記プロダクション培地に前記種母培養液を3mL接種し、25℃で14日間、静置培養した。なお、前記培養は、500mLの三角フラスコを25本用いて行った。
−採取工程−
前記培養後、各三角フラスコにアセトン水(67体積%)を160mL分注して抽出し、サンプル調製液とした。
前記サンプル調製液を減圧下で濃縮乾固した。これに2Lの脱イオン水を加えて懸濁し、等量の酢酸エチルで溶出した。得られた溶出画分を減圧下で濃縮乾固し、5gの抽出物を得た。次いで、前記抽出物を250gのシリカゲル(ワコーゲルC−200、和光純薬工業株式会社製)でカラムクロマトグラフィーを行い、クロロホルムとメタノールの濃度勾配溶出を行った。得られた溶出画分を濃縮乾固し、粗精製物を得た。
−精製工程−
得られた粗精製物をメタノールに溶解し、高速液体クロマトグラフィー(カラム:CAPCELL PAK UG120、粒子径 5μm、内径 30mm、長さ 250mm、資生堂株式会社製)に供し、0.1体積%酢酸を含む30体積%、及び40体積%アセトニトリル水溶液で溶出した。
得られた溶出画分を濃縮乾固し、赤色粉末のキノフラシンAを30mg、赤色粉末のキノフラシンBを5mg、赤色粉末のキノフラシンCを10mg、赤色粉末のキノフラシンDを60mg、黄橙色粉末のキノフラシンEを25mg、をそれぞれ単離精製した。
−構造式(A)で表される化合物(キノフラシンA)の物理化学的性質−
得られたキノフラシンAの物理化学的性質は、次の通りであり、これらのことから、前記キノフラシンAが、下記構造式(A)で表される構造を有する新規化合物であることが確認された。
(1) 外観 : 赤色の粉状である。
(2) 分子式 : C263012で表され、分子量は、534である。
(3) 高分解能質量分析(HRESIMS:正イオンモード) :
実験値は、m/z 557.1614(M+Na)であり、計算値は、m/z 557.1629(C263012Naとして)である。
(4) 紫外吸収スペクトル :
主なピークは、下記に示すとおりである。
(i)メタノール溶液で測定した場合
λmax nm (logε):223 (4.38), 262 (4.16), 295 (4.27), 314 (4.23), 469 (3.78)
(ii)メタノール−NaOH溶液で測定した場合
λmax nm (logε):211 (4.63), 231 (4.29), 265 (4.10), 324 (4.60), 398 (3.79), 546 (3.82)
(iii)メタノール−HCl溶液で測定した場合
λmax nm (logε):224 (4.40), 253 (4.14, sh), 264 (4.18), 293 (4.40), 320 (3.92), 453 (3.90)
(5) 薄層クロマトグラフィー :
TLCプレート(TLC Silica gel 60F254、メルク製)の薄層クロマトグラフィーにおいて、展開溶媒〔クロロホルム:メタノール:酢酸(10:1:0.03、体積比)〕で展開して測定したRf値は、0.15である。
(6) 高速液体クロマトグラフィー :
HPLCカラムとして、CAPCELLPAK UG120(粒子径 5μm、内径 4.6mm、長さ 250mm、資生堂株式会社製)を用い、溶媒として、0.1体積%酢酸を含む40体積%アセトニトリル水溶液を用い、前記溶媒の流速を1mL/分間としたときの保持時間は、10.8分間である。
(7) 赤外線吸収スペクトル :
赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)の主なピークは、下記に示すとおりである。
νmax cm−1 :620、770、1070、1170、1210、1260、1400、1470、1620、2930、3430
(8) プロトン核磁気共鳴スペクトル(600MHz, CDOD/TMS) :
測定結果は、図1に示す通りである。
(9) 炭素13核磁気共鳴スペクトル(150MHz, CDOD/TMS) :
測定結果は、図2に示す通りである。
−構造式(B)で表される化合物(キノフラシンB)の物理化学的性質−
得られたキノフラシンBの物理化学的性質は、次の通りであり、これらのことから、前記キノフラシンBが、下記構造式(B)で表される構造を有する新規化合物であることが確認された。
(1) 外観 : 赤色の粉状である。
(2) 分子式 : C283213で表され、分子量は、576である。
(3) 高分解能質量分析(HRESIMS:正イオンモード) :
実験値は、m/z 599.1724(M+Na)であり、計算値は、m/z 599.1735(C283213Naとして)である。
(4) 紫外吸収スペクトル :
主なピークは、下記に示すとおりである。
(i)メタノール溶液で測定した場合
λmax nm (logε):223 (4.37), 263 (4.11), 294 (4.23), 314 (4.09), 460 (3.75)
(ii)メタノール−NaOH溶液で測定した場合
λmax nm (logε):211 (4.67), 231 (4.29), 264 (4.10), 325 (4.55), 397 (3.74), 545 (3.78)
(iii)メタノール−HCl溶液で測定した場合
λmax nm (logε):224 (4.40), 253 (4.10, sh), 264 (4.13), 293 (4.35), 320 (3.88, sh), 453 (3.93)
(5) 薄層クロマトグラフィー :
TLCプレート(TLC Silica gel 60F254、メルク製)の薄層クロマトグラフィーにおいて、展開溶媒〔クロロホルム:メタノール:酢酸(10:1:0.03、体積比)〕で展開して測定したRf値は、0.39である。
(6) 高速液体クロマトグラフィー :
HPLCカラムとして、CAPCELLPAK UG120(粒子径 5μm、内径 4.6mm、長さ 250mm、資生堂株式会社製)を用い、溶媒として、0.1体積%酢酸を含む40体積%アセトニトリル水溶液を用い、前記溶媒の流速を1mL/分間としたときの保持時間は、15.2分間である。
(7) 赤外線吸収スペクトル :
赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)の主なピークは、下記に示すとおりである。
νmax cm−1 :630、780、1070、1170、1210、1260、1380、1450、1620、2930、3430
(8) プロトン核磁気共鳴スペクトル(600MHz, CDOD/TMS) :
測定結果は、図3に示す通りである。
(9) 炭素13核磁気共鳴スペクトル(150MHz, CDOD/TMS) :
測定結果は、図4に示す通りである。
−構造式(C)で表される化合物(キノフラシンC)の物理化学的性質−
得られたキノフラシンCの物理化学的性質は、次の通りであり、これらのことから、前記キノフラシンCが、下記構造式(C)で表される構造を有する新規化合物であることが確認された。
(1) 外観 : 赤色の粉状である。
(2) 分子式 : C263012で表され、分子量は、534である。
(3) 高分解能質量分析(HRESIMS:正イオンモード) :
実験値は、m/z 557.1616(M+Na)であり、計算値は、m/z 557.1629(C263012Naとして)である。
(4) 紫外吸収スペクトル :
主なピークは、下記に示すとおりである。
(i)メタノール溶液で測定した場合
λmax nm (logε):223 (4.42), 261 (4.22), 290 (4.25), 314 (4.16), 455 (3.85)
(ii)メタノール−NaOH溶液で測定した場合
λmax nm (logε):212 (4.63), 237 (4.42), 258 (4.19), 290 (4.17, sh), 314 (4.34), 527 (3.91)
(iii)メタノール−HCl溶液で測定した場合
λmax nm (logε):225 (4.44), 253 (4.16, sh), 264 (4.23, sh), 288 (4.35), 319 (3.94), 448 (3.94)
(5) 薄層クロマトグラフィー :
TLCプレート(TLC Silica gel 60F254、メルク製)の薄層クロマトグラフィーにおいて、展開溶媒〔クロロホルム:メタノール:酢酸(10:1:0.03、体積比)〕で展開して測定したRf値は、0.16である。
(6) 高速液体クロマトグラフィー :
HPLCカラムとして、CAPCELLPAK UG120(粒子径 5μm、内径 4.6mm、長さ 250mm、資生堂株式会社製)を用い、溶媒として、0.1体積%酢酸を含む40体積%アセトニトリル水溶液を用い、前記溶媒の流速を1mL/分間としたときの保持時間は、15.4分間である。
(7) 赤外線吸収スペクトル :
赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)の主なピークは、下記に示すとおりである。
νmax cm−1 :650、770、1080、1170、1210、1280、1400、1470、1620、2930、3430
(8) プロトン核磁気共鳴スペクトル(600MHz, Pyridine− /TMS) :
測定結果は、図5に示す通りである。
(9) 炭素13核磁気共鳴スペクトル(150MHz, Pyridine− /TMS) :
測定結果は、図6に示す通りである。
−構造式(D)で表される化合物(キノフラシンD)の物理化学的性質−
得られたキノフラシンDの物理化学的性質は、次の通りであり、これらのことから、前記キノフラシンDが、下記構造式(D)で表される構造を有する新規化合物であることが確認された。
(1) 外観 : 赤色の粉状である。
(2) 分子式 : C262813で表され、分子量は、548である。
(3) 高分解能質量分析(HRESIMS:正イオンモード) :
実験値は、m/z 571.1422(M+Na)であり、計算値は、m/z 571.1422(C262813Naとして)である。
(4) 紫外吸収スペクトル :
主なピークは、下記に示すとおりである。
(i)メタノール溶液で測定した場合
λmax nm (logε):223 (4.39), 263 (4.14), 290 (4.30), 314 (4.12), 460 (3.82)
(ii)メタノール−NaOH溶液で測定した場合
λmax nm (logε):211 (4.64), 232 (4.29), 263 (4.10), 324 (4.56), 397 (3.73), 542 (3.84)
(iii)メタノール−HCl溶液で測定した場合
λmax nm (logε):223 (4.41), 253 (4.09, sh), 265 (4.14), 293 (4.39), 321 (3.86), 453 (3.91)
(5) 薄層クロマトグラフィー :
TLCプレート(TLC Silica gel 60F254、メルク製)の薄層クロマトグラフィーにおいて、展開溶媒〔クロロホルム:メタノール:酢酸(10:1:0.03、体積比)〕で展開して測定したRf値は、0.11である。
(6) 高速液体クロマトグラフィー :
HPLCカラムとして、CAPCELLPAK UG120(粒子径 5μm、内径 4.6mm、長さ 250mm、資生堂株式会社製)を用い、溶媒として、0.1体積%酢酸を含む40体積%アセトニトリル水溶液を用い、前記溶媒の流速を1mL/分間としたときの保持時間は、4.2分間である。
(7) 赤外線吸収スペクトル :
赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)の主なピークは、下記に示すとおりである。
νmax cm−1 :620、770、1090、1160、1210、1260、1400、1470、1620、2930、3430
(8) プロトン核磁気共鳴スペクトル(600MHz, CDOD/TMS) :
測定結果は、図7に示す通りである。
(9) 炭素13核磁気共鳴スペクトル(150MHz, CDOD/TMS) :
測定結果は、図8に示す通りである。
−構造式(E)で表される化合物(キノフラシンE)の物理化学的性質−
得られたキノフラシンEの物理化学的性質は、次の通りであり、これらのことから、前記キノフラシンEが、下記構造式(E)で表される構造を有する新規化合物であることが確認された。
(1) 外観 : 黄橙色の粉状である。
(2) 分子式 : C242212で表され、分子量は、502である。
(3) 高分解能質量分析(HRESIMS:正イオンモード) :
実験値は、m/z 503、1173(M+H)であり、計算値は、m/z 503.1184(C242312として)である。
(4) 紫外吸収スペクトル :
主なピークは、下記に示すとおりである。
(i)メタノール溶液で測定した場合
λmax nm (logε):222 (4.41), 251 (4.10, sh), 266 (4.20, sh), 287 (4.35), 317 (3.84), 442 (3.89)
(ii)メタノール−NaOH溶液で測定した場合
λmax nm (logε):212 (4.61), 240 (4.26, sh), 263 (4.32), 311 (4.03), 512 (3.84)
(iii)メタノール−HCl溶液で測定した場合
λmax nm (logε):223 (4.40), 251 (4.12, sh), 266 (4.21, sh), 287 (4.36), 318 (3.83), 443 (3.90)
(5) 薄層クロマトグラフィー :
TLCプレート(TLC Silica gel 60F254、メルク製)の薄層クロマトグラフィーにおいて、展開溶媒〔クロロホルム:メタノール:酢酸(10:1:0.03、体積比)〕で展開して測定したRf値は、0.25である。
(6) 高速液体クロマトグラフィー :
HPLCカラムとして、CAPCELLPAK UG120(粒子径 5μm、内径 4.6mm、長さ 250mm、資生堂株式会社製)を用い、溶媒として、0.1体積%酢酸を含む40体積%アセトニトリル水溶液を用い、前記溶媒の流速を1mL/分間としたときの保持時間は、6.0分間である。
(7) 赤外線吸収スペクトル :
赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)の主なピークは、下記に示すとおりである。
νmax cm−1 :650、770、950、1070、1160、1190、1250、1320、1390、1470、1630、2930、3430
(8) プロトン核磁気共鳴スペクトル(600MHz, Pyridine− /TMS) :
測定結果は、図9に示す通りである。
(9) 炭素13核磁気共鳴スペクトル(150MHz, Pyridine− /TMS) :
測定結果は、図10に示す通りである。
(試験例1)
前記キノフラシンAからEのそれぞれについて、がん細胞の増殖阻害作用を以下の方法で検討した。
−LNZTA3細胞を用いた検討−
前記がん細胞として、ヒト野生型p53タンパク質の発現量をテトラサイクリンの濃度によって調節できるヒト膠芽腫細胞株LNZTA3細胞(ATCCより入手)を使用した。
前記LNZTA3細胞を、1μg/mL、又は0.004μg/mLのテトラサイクリンを含む、1体積%FBS(シグマアルドリッチ社製)、1体積%グルコースを含むOpti−MEM(ライフテクノロジーズジャパン株式会社製)を用いて1×10細胞/mLに調製し、これを96穴プレートの1穴あたり100μLずつ播種し、37℃、5%COの雰囲気下で24時間培養して細胞を完全に接着させた。
なお、前記LNZTA3細胞は、培地中のテトラサイクリンの含有量が1μg/mLではヒト野生型p53タンパク質の発現量が少なく、0.004μg/mLではヒト野生型p53タンパク質の発現量が多くなる。
前記LNZTA3細胞を接着させた96穴プレートにおいて、前記キノフラシンAからEのそれぞれについて、終濃度が、0.79μg/mL、1.57μg/mL、3.13μg/mL、6.25μg/mL、12.5μg/mL、25μg/mL、50μg/mL、又は100μg/mLになるように添加し、3日間、37℃、5%CO雰囲気下で培養した。
また、比較対照としては、前記LNZTA3細胞を接着させた96穴プレートにおいて、キノフラシンAからEを添加せず、3日間、37℃、5%CO雰囲気下で培養した。
3日間培養後、MTT法を用いてLNZTA3細胞の細胞増殖を測定した。キノフラシンAからEのいずれかを添加した系の吸光度を「A」とし、比較対照の系の吸光度を「B」として、下記式(1)により、細胞増殖阻害率(%)を算出した。
細胞増殖阻害率(%)={(B−A)/B}×100 ・・・式(1)
次に、前記細胞増殖阻害率より、LNZTA3細胞の細胞増殖を50%抑制する濃度(IC50値)を判定した。結果を表1に示す。
表1の結果から明らかなように、キノフラシンAからEはいずれもがん細胞増殖抑制効果を示し、また、野生型p53タンパク質の発現量に依存して特異的な細胞増殖抑制効果を示すことがわかった。
また、キノフラシンAからEの中でも、キノフラシンA、B、C、及びDの細胞増殖抑制効果が高く、特に、キノフラシンA、及びBの細胞増殖抑制効果が高いことがわかった。
本発明の態様としては、例えば、以下のものなどが挙げられる。
<1> 下記構造式(A)から(E)のいずれかで表されることを特徴とする化合物である。
<2> 前記<1>に記載の化合物の製造方法であって、
スタフィロトリクム(Staphylotrichum)属に属し、前記<1>に記載の化合物を生産する能力を有する微生物を培養する培養工程と、
前記培養工程で得られた培養物から前記<1>に記載の化合物を採取する採取工程とを含むことを特徴とする化合物の製造方法である。
<3> スタフィロトリクム(Staphylotrichum)属に属し、前記<1>に記載の化合物を生産する能力を有する微生物が、受託番号NITE BP−1450のスタフィロトリクム ボニネンセ(Staphylotrichum boninense)PF1444株である前記<2>に記載の化合物の製造方法である。
<4> スタフィロトリクム(Staphylotrichum)属に属し、前記<1>に記載の化合物を生産する能力を有することを特徴とする微生物である。
<5> 受託番号NITE BP−1450のスタフィロトリクム ボニネンセ(Staphylotrichum boninense)PF1444株である前記<4>に記載の微生物である。
<6> 前記<1>に記載の化合物を含むことを特徴とする化合物含有組成物である。
<7> 前記<1>に記載の化合物を含むことを特徴とする抗がん剤である。
NITE BP−1450
本発明の構造式(A)から(E)のいずれかで表される化合物は、優れた抗がん作用を有し、安全性の高い化合物であるため、医薬組成物、抗がん剤、などの有効成分として好適に利用可能である。

Claims (5)

  1. 下記構造式(A)から(E)のいずれかで表されることを特徴とする化合物。
  2. 請求項1に記載の化合物の製造方法であって、
    スタフィロトリクム(Staphylotrichum)属に属し、請求項1に記載の化合物を生産する能力を有する微生物である受託番号NITE BP−1450のスタフィロトリクム ボニネンセ(Staphylotrichum boninense)PF1444株を培養する培養工程と、
    前記培養工程で得られた培養物から請求項1に記載の化合物を採取する採取工程とを含むことを特徴とする化合物の製造方法。
  3. スタフィロトリクム(Staphylotrichum)属に属し、請求項1に記載の化合物を生産する能力を有し、受託番号NITE BP−1450のスタフィロトリクム ボニネンセ(Staphylotrichum boninense)PF1444株であることを特徴とする微生物。
  4. 請求項1に記載の化合物を含むことを特徴とする化合物含有組成物。
  5. 請求項1に記載の化合物を含むことを特徴とする抗がん剤。
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