JP7026185B2 - 新規化合物コッコキノン類、その製造方法、及びその用途、並びに新規微生物 - Google Patents
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Description
<1> 下記構造式(A)及び(B)のいずれかで表されることを特徴とする化合物である。
スタフィロトリクム(Staphylotrichum)属に属し、前記<1>に記載の化合物を生産する能力を有する微生物を培養する培養工程と、
前記培養工程で得られた培養物から前記<1>に記載の化合物を採取する採取工程とを含むことを特徴とする化合物の製造方法である。
<3> スタフィロトリクム(Staphylotrichum)属に属し、前記<1>に記載の化合物を生産する能力を有することを特徴とする微生物である。
<4> 前記<1>に記載の化合物を含むことを特徴とする化合物含有組成物である。
<5> 前記<1>に記載の化合物を含むことを特徴とする抗がん剤である。
本発明の化合物は、下記構造式(A)及び(B)のいずれかで表される化合物(以下、「コッコキノン(Coccoquinone)A」、「コッコキノンB」と称することがある)であり、本発明者らが見出した新規化合物である。
前記コッコキノンAの物理化学的性質は、次の通りである。
(1) 外観 : 赤色の粉状である。
(2) 分子式 : C22H20O9で表され、分子量は、428である。
(3) 高分解能質量分析(HRESIMS:正イオンモード) :
実験値は、m/z 429.1182(M+H)+であり、計算値は、m/z 429.1180(C22H21O9として)である。
(4) 紫外吸収スペクトル :
主なピークは、下記に示すとおりである。
(i)メタノール溶液で測定した場合
λmax nm (logε):223(4.41),265(4.17),293(4.38),316(4.06),455(3.88)
(ii)メタノール-HCl溶液で測定した場合
λmax nm (logε):223(4.41),292(4.40),322(3.91),453(3.90)
(iii)メタノール-NaOH溶液で測定した場合
λmax nm (logε):230(4.31),264(4.12),323(4.57),398(3.82),545(3.84)
(5) 薄層クロマトグラフィー :
TLCプレート(TLC Silica gel 60F254、メルク製)の薄層クロマトグラフィーにおいて、展開溶媒〔クロロホルム:メタノール:酢酸(10:1:0.03、体積比)〕で展開して測定したRf値は、0.64である。
(6) 高速液体クロマトグラフィー :
HPLCカラムとして、CAPCELLPAK UG120(粒子径 5μm、内径 4.6mm、長さ 250mm、資生堂株式会社製)を用い、溶媒として、0.1体積%酢酸を含む45体積%アセトニトリル水溶液を用い、前記溶媒の流速を1mL/分間としたときの保持時間は、10.9分間である。
(7) 赤外線吸収スペクトル :
赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)の主なピークは、下記に示すとおりである。
νmax cm-1 :770、1030、1095、1170、1260、1320、1400、1440、1620、1710、2920、3200
(8) プロトン核磁気共鳴スペクトル(600MHz, CD3OD/TMS)の主なピークは、下記に示すとおりである。
δ ppm: 1.99(s,3H)、2.05(m,1H)、2.08(s,3H)、2.18(m,1H)、2.40(m,1H)、2.48(m,1H)、3.71(m,1H)、4.44(dd,J=8.0,10.6 Hz,1H)、4.52(dd,J=7.4,10.6 Hz,1H)、6.49(d,J=2.4 Hz,1H)、7.08(d,J=2.4 Hz,1H)、7.18(s,1H)
(9) 炭素13核磁気共鳴スペクトル(150MHz, CD3OD/TMS)の主なピークは、下記に示すとおりである。
δ ppm: 20.9(q)、24.4(t)、29.9(q)、35.7(d)、42.3(t)、67.2(t)、109.1(d)、109.3(d)、110.0(d)、110.2(s)、110.3(s)、121.5(s)、134.7(s)、136.6(s)、164.8(s)、164.9(s)、166.3(s)、166.8(s)、173.1(s)、183.0(s)、191.0(s)、211.7(s)
前記コッコキノンBの物理化学的性質は、次の通りである。
(1) 外観 : 赤色の粉状である。
(2) 分子式 : C22H22O9で表され、分子量は、430である。
(3) 高分解能質量分析(HRESIMS:正イオンモード) :
実験値は、m/z 431.1338(M+H)+であり、計算値は、m/z 431.1337(C22H23O9として)である。
(4) 紫外吸収スペクトル :
主なピークは、下記に示すとおりである。
(i)メタノール溶液で測定した場合
λmax nm (logε):224(4.48),263(4.30),294(4.44),314(4.36),469(3.95)
(ii)メタノール-HCl溶液で測定した場合
λmax nm (logε):223(4.50),292(4.51),323(4.04),454(4.04)
(iii)メタノール-NaOH溶液で測定した場合
λmax nm (logε):230(4.44),263(4.26),323(4.79),397(3.94),544(3.96)
(5) 薄層クロマトグラフィー :
TLCプレート(TLC Silica gel 60F254、メルク製)の薄層クロマトグラフィーにおいて、展開溶媒〔クロロホルム:メタノール:酢酸(10:1:0.03、体積比)〕で展開して測定したRf値は、0.54である。
(6) 高速液体クロマトグラフィー :
HPLCカラムとして、CAPCELLPAK UG120(粒子径 5μm、内径 4.6mm、長さ 250mm、資生堂株式会社製)を用い、溶媒として、0.1体積%酢酸を含む45体積%アセトニトリル水溶液を用い、前記溶媒の流速を1mL/分間としたときの保持時間は、8.1分間である。
(7) 赤外線吸収スペクトル :
赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)の主なピークは、下記に示すとおりである。
νmax cm-1 :770、1030、1125、1170、1260、1310、1400、1415、1625、1715、2920、3200
(8) プロトン核磁気共鳴スペクトル(600MHz, CD3OD/TMS)の主なピークは、下記に示すとおりである。
δ ppm: 1.10(d,J=6.2 Hz,3H)、1.37(m,2H)、1.77(m,1H)、2.10(m,1H)、3.73(m,1H)、3.77(m,1H)、4.46(dd,J=7.9,10.3 Hz,1H)、4.51(dd,J=7.2,10.3 Hz,1H)、6.50(d,J=2.4 Hz,1H)、7.14(d,J=2.4 Hz,1H)、7.21(s,1H)
(9) 炭素13核磁気共鳴スペクトル(150MHz, CD3OD/TMS)の主なピークは、下記に示すとおりである。
δ ppm: 20.8(q)、23.4(q)、26.4(t)、36.0(d)、38.1(t)、67.4(t)、68.3(d)、109.2(d)、109.4(d)、109.8(s)、110.0(s)、110.7(s)、122.3(s)、134.5(s)、136.6(s)、164.8(s)、165.1(s)、166.4(s)、168.1(s)、173.1(s)、183.4(s)、190.7(s)
前記塩としては、薬理学的に許容され得る塩であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、酢酸塩、クエン酸塩等の有機塩、塩酸塩、炭酸塩などが挙げられる。
前記構造式(A)及び(B)のいずれかで表される化合物は、その互変異性体であってもよい。
前記構造式(A)及び(B)のいずれかで表される化合物は、後述する試験例で示されるように、優れた抗がん作用を有し、安全性の高い化合物である。そのため、前記構造式(A)及び(B)のいずれかで表される化合物は、例えば、後述する本発明の化合物含有組成物、抗がん剤などの有効成分として好適に利用可能である。
本発明の化合物の製造方法は、培養工程と、採取工程とを少なくとも含み、必要に応じてさらにその他の工程を含む。
前記培養工程は、スタフィロトリクム(Staphylotrichum)属に属し、前記構造式(A)及び(B)のいずれかで表される化合物の少なくともいずれかを生産する能力を有する微生物を培養する工程である。
前記スタフィロトリクム ボニネンセ(Staphylotrichum boninense)PF1444株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8)に、ブダペスト条約に基づく国際寄託の申請をし、NITE BP-1450として受託された(受託日:2012年11月6日)ものであり、その形態学的性質等は、特開2015-13825号公報に記載されている。
前記栄養培地に添加する栄養源としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、市販されている米、玄米、大豆粉、小麦胚芽、押し麦、ペプトン、綿実粕、酵母エキス、肉エキス、コーン・スティープ・リカー、硫酸アンモニウム、硝酸ナトリウム、尿素等の窒素源;トマトペースト、グリセリン、デンプン、グルコース、ガラクトース、デキストリン、バクトソイトン等の炭水化物、脂肪等の炭素源;などが挙げられる。
更に、食塩、炭酸カルシウム等の無機塩を培地に添加して使用することもでき、その他、必要に応じて微量の金属塩を培地に添加して使用することもできる。
これらの材料は、前記化合物生産菌が利用し、前記構造式(A)及び(B)のいずれかで表される化合物の少なくともいずれかの生産に役立つものであればよく、公知の培養材料は全て用いることができる。
前記培養の温度としては、前記化合物生産菌の発育が実質的に阻害されずに、前記構造式(A)及び(B)のいずれかで表される化合物の少なくともいずれかを生産し得る範囲であれば、特に制限はなく、使用する生産菌に応じて適宜選択することができるが、20℃~35℃が好ましい。
前記培養液のpHとしては、前記化合物生産菌の発育が実質的に阻害されずに、前記構造式(A)及び(B)のいずれかで表される化合物の少なくともいずれかを生産し得る範囲であれば、特に制限はなく、使用する生産菌に応じて適宜選択することができる。
前記培養の期間としては、特に制限はなく、前記構造式(A)及び(B)のいずれかで表される化合物の少なくともいずれかの蓄積に合わせて適宜選択することができる。
前記採取工程は、前記培養工程で得られた培養物から前記構造式(A)及び(B)のいずれかで表される化合物の少なくともいずれかを採取する工程である。
前記構造式(A)及び(B)のいずれかで表される化合物は、上述した物理化学的性質を有するので、その性質に従って培養物から採取することができる。
なお、前記培養物として、前記菌体を用いる場合は、適当な有機溶媒を用いた抽出方法や、菌体破砕による溶出方法などにより、前記構造式(A)及び(B)のいずれかで表される化合物の少なくともいずれかを菌体から抽出し、これを分離及び/又は精製に供してもよい。
前記クロマトグラフ法に用いる担体としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、イオン交換樹脂、ゲル濾過、シリカゲル、アルミナ、活性炭などが挙げられる。
前記クロマトグラフ法に用いる担体の市販品の具体例としては、アンバーライト(登録商標)CG50(シグマアルドリッチ株式会社製)等のイオン交換樹脂;トヨパール(登録商標)HW-40F(東ソー株式会社製)、セファデックス(登録商標)LH-20(GEヘルスケア社製)等のゲル濾過;CAPCELL PAK UG120(資生堂株式会社製)等のシリカゲル;などが挙げられる。
なお、前記採取工程における前記構造式(A)及び(B)で表される化合物の精製の程度としては、特に制限はなく、粗精製物であってもよいし、粗精製物を精製したものであってもよい。
前記その他の工程としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、洗浄工程、精製工程などが挙げられる。
前記洗浄工程は、前記培養工程で得られた培養物、又は前記採取工程で得られた前記構造式(A)及び(B)のいずれかで表される化合物の少なくともいずれかを洗浄する工程である。前記洗浄の方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択して行うことができる。
前記精製工程は、前記採取工程で得られた前記構造式(A)及び(B)のいずれかで表される化合物の少なくともいずれかを精製する工程である。前記精製の方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択して行うことができ、例えば、前記採取工程に記載した方法と同様の方法が挙げられる。
本発明の微生物は、スタフィロトリクム(Staphylotrichum)属に属し、上述した本発明の化合物、即ち前記構造式(A)及び(B)のいずれかで表される化合物の少なくともいずれかを生産する能力を有する。前記微生物は、前記構造式(A)及び(B)のいずれかで表される化合物の少なくともいずれかを生産する能力を有し、そのために、上述した本発明の化合物の製造方法において、前記構造式(A)及び(B)のいずれかで表される化合物の少なくともいずれかの生産菌として使用され得る微生物であれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
ポテトデキストロース寒天培地、2%麦芽寒天培地、オートミール寒天培地、及びコーンミール寒天培地を用いて、PF1460株を25℃で2週間培養し、巨視的および微視的形態観察を行った。
その結果、各培地で黄色系~黄土色系の色調を示し、ビロード状~羊毛状のコロニーを形成した。栄養菌糸上から直立した柄の先端部から分岐した分生子柄が形成され、柄基部には厚壁でやや膨らんだ柄足細胞が認められた。分生子柄は直立した柄の先端部に形成され、無色で分岐し、各々の分岐先端部から1個のアレウロ型分生子が形成される様子が観察された。分生子はアレウロ型分生子で、球形~亜球形、厚壁、無色~明褐色、1細胞であった。
28S rDNA-D1/D2遺伝子の塩基配列(603bp)を決定し、国際塩基配列データベースBLASTに登録された公知菌株のデータと比較した。その結果、PF1460株の28S rDNA-D1/D2遺伝子の塩基配列は以下に示すように、子嚢菌類の1種である、複数のStaphylotrichum coccosporumの28S rDNA-D1/D2遺伝子の塩基配列と相同率99.6%~100%の高い相同性を示した。即ち、Staphylotrichum coccosporumNBRC33272株(AB625574、100%)、Staphylotrichum coccosporumTFR27株(KF729586、99.8%)、Staphylotrichum coccosporumCBS364.58T株(AB625572、99.8%)、Staphylotrichum coccosporumJCM17911株(AB625571、99.8%)、Staphylotrichum coccosporumNBRC31817株(AB625573、99.6%)である。なお、Staphylotrichum coccosporum以外では、Staphylotrichum boninensePF1444株(LC004917、99.1%)、Staphylotrichum boninenseJCM17908株(AB625568、99.1%)、Staphylotrichum boninenseJCM17909株(AB625569、99.1%)、Staphylotrichum boninenseJCM17910株(AB625570、99.1%)、Farrowia longicolleaMUCL38846株(AF286408、98.6%)、Retroconis fusiformisLCF37株(FJ867941、98.2%)である。なお、括弧内は、国際塩基配列データベースのアクセッション番号と、塩基配列の相同率とをこの順で表記した。
ITS-5.8S rDNA遺伝子の塩基配列(602bp)を決定し、国際塩基配列データベースBLASTに登録された公知菌株のデータと比較した。その結果、PF1444株のITS-5.8S rDNA遺伝子の塩基配列は以下に示すように、子嚢菌類の1種である、複数のStaphylotrichum coccosporumのITS-5.8S rDNA遺伝子の塩基配列と相同率97.5%~100%の高い相同性を示した。即ち、Staphylotrichum coccosporumNBRC33272株(AB625586、100%)、Staphylotrichum coccosporumCON4032株(JX969624、99.0%)、Staphylotrichum coccosporumNBRC31817株(AB625585、98.9%)、Staphylotrichum coccosporumCBS364.58T株(AB625584、98.6%)、Staphylotrichum coccosporumJCM17911株(AB625583、97.5%)である。なお、Staphylotrichum coccosporum以外では、fungal sp.ARIZ L488cla株(FJ612837、99.3%)、Staphylotrichum sp.Eis-7株(AB728546、98.6%)、Staphylotrichum sp.Amy-4株(AB728536、98.6%)、Staphylotrichum boninenseJCM17910株(AB625582、96.1%)、Staphylotrichum boninensePF1444株(LC004918、95.7%)、Staphylotrichum boninenseJCM17908株(AB625580、95.7%)、である。なお、括弧内は、国際塩基配列データベースのアクセッション番号と、塩基配列の相同率とをこの順で表記した。
なお、前記PF1460株は、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(〒292-0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2-5-8 122号室)に寄託申請し、2015年4月21日に国内寄託され、その後、2016年2月23日にブダペスト条約に基づく国際寄託への移管請求が受領され、受託番号NITE BP-02037として国際寄託されている。
<化合物含有組成物>
本発明の化合物含有組成物は、前記構造式(A)及び(B)のいずれかで表される化合物の少なくともいずれかを少なくとも含み、必要に応じて、更にその他の成分を含む。
前記構造式(A)及び(B)のいずれかで表される化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分としては、特に制限はなく、薬理学的に許容され得る担体の中から目的に応じて適宜選択することができ、例えば、添加剤、補助剤、水などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記化合物含有組成物は、前記構造式(A)及び(B)のいずれかで表される化合物の少なくともいずれかを含むため、優れた抗がん作用を有し、安全性が高いものであり、例えば、医薬組成物、抗がん剤などとして好適に利用可能である。
なお、前記化合物含有組成物は、単独で使用されてもよいし、他の成分を有効成分とする医薬と併せて使用されてもよい。また、前記化合物含有組成物は、他の成分を有効成分とする医薬中に、配合された状態で使用されてもよい。
本発明の抗がん剤は、前記構造式(A)及び(B)のいずれかで表される化合物の少なくともいずれかを少なくとも含み、必要に応じて、更にその他の成分を含む。
前記構造式(A)及び(B)のいずれかで表される化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、前記化合物含有組成物で記載したその他の成分と同様のものが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
前記抗がん剤は、前記構造式(A)及び(B)のいずれかで表される化合物の少なくともいずれかを含むため、優れた抗がん作用を有し、安全性が高く、各種のがんの予防剤又は治療剤として好適に利用可能である。これらの中でも、膠芽腫に特に好適に利用可能である。
なお、前記抗がん剤は、単独で使用されてもよいし、他の成分を有効成分とする医薬と併せて使用されてもよい。また、前記抗がん剤は、他の成分を有効成分とする医薬中に、配合された状態で使用されてもよい。
また、後述する試験例で示すように、本発明の前記構造式(A)及び(B)のいずれかで表される化合物は、野生型p53タンパク質の発現量に依存した特異的ながん細胞の増殖抑制効果を有する。
前記化合物含有組成物、及び抗がん剤の剤形としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、固形剤、半固形剤、液剤などが挙げられる。これらの剤形の前記化合物含有組成物、及び抗がん剤は、常法に従い製造することができる。
前記固形剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、内用剤として用いられる場合、例えば、錠剤、チュアブル錠、発泡錠、口腔内崩壊錠、トローチ剤、ドロップ剤、硬カプセル剤、軟カプセル剤、顆粒剤、散剤、丸剤、ドライシロップ剤、浸剤などが挙げられる。
前記固形剤が、外用剤として用いられる場合、例えば、坐剤、パップ剤、プラスター剤などが挙げられる。
前記半固形剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、内用剤として用いられる場合、例えば、舐剤、チューインガム剤、ホイップ剤、ゼリー剤などが挙げられる。
前記半固形剤が、外用剤として用いられる場合、例えば、軟膏剤、クリーム剤、ムース剤、インヘラー剤、ナザールジェル剤などが挙げられる。
前記液剤としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、内用剤として用いられる場合、例えば、シロップ剤、ドリンク剤、懸濁剤、酒精剤などが挙げられる。
前記液剤が、外用剤として用いられる場合、例えば、液剤、点眼剤、エアゾール剤、噴霧剤などが挙げられる。
前記化合物含有組成物、及び抗がん剤の投与方法、投与量、投与時期、及び投与対象としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
前記投与方法としては、例えば、局所投与法、経腸投与法、非経口投与法などが挙げられる。
前記投与量としては、特に制限はなく、投与対象個体の年齢、体重、体質、症状、他の成分を有効成分とする医薬や薬剤の投与の有無など、様々な要因を考慮して適宜選択することができる。
前記投与対象となる動物種としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒト、サル、ブタ、ウシ、ヒツジ、ヤギ、イヌ、ネコ、マウス、ラット、トリなどが挙げられるが、これらの中でもヒトに好適に用いることができる。
<構造式(A)及び(B))のいずれかで表される化合物の製造>
-種母培養液の調製-
100mLの三角フラスコにTS培地(2.0%可溶性スターチ(和光純薬工業株式会社製)、1.0%グルコース(和光純薬工業株式会社製)、0.5%ポリペプトン(和光純薬工業株式会社製)、0.6%小麦胚芽(日清ファルマ株式会社製)、0.3%酵母エキス(和光純薬工業株式会社製)、0.2%大豆粕(昭和産業株式会社製)、0.2% CaCO3(和光純薬工業株式会社製)、pH7.0(NaOHで調整))を20mL入れ、121℃で20分間殺菌した。次いで、スタフィロトリクム コッコスポラム(Staphylotrichum coccosporum)PF1460株を接種し、25℃で3日間~6日間、ロータリーシェーカーで振とう(220rpm)培養し、この培養液を種母培養液とした。
500mLの三角フラスコに、一晩水に浸し、翌朝1時間水を切った玄米(あきたこまち)80gと、オートミール(クエーカーオーツ社製)2gとを混合したものを入れ、121℃で20分間殺菌し、以下の培養に用いる培地(以下、「プロダクション培地」と称することがある)とした。
前記プロダクション培地に前記種母培養液を3mL接種し、25℃で14日間、静置培養した。なお、前記培養は、500mLの三角フラスコを5本用いて行った。
前記培養後、各三角フラスコにアセトン水(67体積%)を160mL分注して抽出し、サンプル調製液とした。
前記サンプル調製液を減圧下で濃縮乾固した。これに400mLの脱イオン水を加えて懸濁し、等量の酢酸エチルで溶出した。得られた溶出画分を減圧下で濃縮乾固し、280mgの抽出物を得た。次いで、前記抽出物を15gのシリカゲル(ワコーゲルC-200、和光純薬工業株式会社製)でカラムクロマトグラフィーを行い、クロロホルムとメタノールの濃度勾配溶出を行った。4体積%メタノールを含むクロロホルム溶出画分及び10体積%メタノールを含むクロロホルム溶出画分をそれぞれ濃縮乾固し、粗精製物を得た。
4体積%メタノールを含むクロロホルム溶出画分より得られた粗精製物はメタノールに溶解し、高速液体クロマトグラフィー(カラム:CAPCELL PAK UG120、粒子径 5μm、内径 30mm、長さ 250mm、資生堂株式会社製)に供し、0.1体積%酢酸を含む40体積%アセトニトリル水溶液で溶出した。
得られた溶出画分を濃縮乾固し、赤色粉末のコッコキノンAを6.3mg単離精製した。
得られた溶出画分を濃縮乾固し、赤色粉末のコッコキノンBを1.5mg単離精製した。
得られたコッコキノンAの物理化学的性質は、次の通りであり、これらのことから、前記コッコキノンAが、下記構造式(A)で表される構造を有する新規化合物であることが確認された。
(1) 外観 : 赤色の粉状である。
(2) 分子式 : C22H20O9で表され、分子量は、428である。
(3) 高分解能質量分析(HRESIMS:正イオンモード) :
実験値は、m/z 429.1182(M+H)+であり、計算値は、m/z 429.1180(C22H21O9として)である。
(4) 紫外吸収スペクトル :
主なピークは、下記に示すとおりである。
(i)メタノール溶液で測定した場合
λmax nm (logε):223(4.41),265(4.17),293(4.38),316(4.06),455(3.88)
(ii)メタノール-HCl溶液で測定した場合
λmax nm (logε):223(4.41),292(4.40),322(3.91),453(3.90)
(iii)メタノール-NaOH溶液で測定した場合
λmax nm (logε):230(4.31),264(4.12),323(4.57),398(3.82),545(3.84)
(5) 薄層クロマトグラフィー :
TLCプレート(TLC Silica gel 60F254、メルク製)の薄層クロマトグラフィーにおいて、展開溶媒〔クロロホルム:メタノール:酢酸(10:1:0.03、体積比)〕で展開して測定したRf値は、0.64である。
(6) 高速液体クロマトグラフィー :
HPLCカラムとして、CAPCELLPAK UG120(粒子径 5μm、内径 4.6mm、長さ 250mm、資生堂株式会社製)を用い、溶媒として、0.1体積%酢酸を含む45体積%アセトニトリル水溶液を用い、前記溶媒の流速を1mL/分間としたときの保持時間は、10.9分間である。
(7) 赤外線吸収スペクトル :
赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)の主なピークは、下記に示すとおりである。
νmax cm-1 :770、1030、1095、1170、1260、1320、1400、1440、1620、1710、3200
(8) プロトン核磁気共鳴スペクトル(600MHz, CD3OD/TMS)の主なピークは、下記に示すとおりである。
δ ppm: 1.99(s,3H)、2.05(m,1H)、2.08(s,3H)、2.18(m,1H)、2.40(m,1H)、2.48(m,1H)、3.71(m,1H)、4.44(dd,J=8.0,10.6 Hz,1H)、4.52(dd,J=7.4,10.6 Hz,1H)、6.49(d,J=2.4 Hz,1H)、7.08(d,J=2.4 Hz,1H)、7.18(s,1H)
(9) 炭素13核磁気共鳴スペクトル(150MHz, CD3OD/TMS)の主なピークは、下記に示すとおりである。
δ ppm: 20.9(q)、24.4(t)、29.9(q)、35.7(d)、42.3(t)、67.2(t)、109.1(d)、109.3(d)、110.0(d)、110.2(s)、110.3(s)、121.5(s)、134.7(s)、136.6(s)、164.8(s)、164.9(s)、166.3(s)、166.8(s)、173.1(s)、183.0(s)、191.0(s)、211.7(s)
得られたコッコキノンBの物理化学的性質は、次の通りであり、これらのことから、前記コッコキノンBが、下記構造式(B)で表される構造を有する新規化合物であることが確認された。
(1) 外観 : 赤色の粉状である。
(2) 分子式 : C22H22O9で表され、分子量は、430である。
(3) 高分解能質量分析(HRESIMS:正イオンモード) :
実験値は、m/z 431.1338(M+H)+であり、計算値は、m/z 431.1337(C22H23O9として)である。
(4) 紫外吸収スペクトル :
主なピークは、下記に示すとおりである。
(i)メタノール溶液で測定した場合
λmax nm (logε):224(4.48),263(4.30),294(4.44),314(4.36),469(3.95)
(ii)メタノール-HCl溶液で測定した場合
λmax nm (logε):223(4.50),292(4.51),323(4.04),454(4.04)
(iii)メタノール-NaOH溶液で測定した場合
λmax nm (logε):230(4.44),263(4.26),323(4.79),397(3.94),544(3.96)
(5) 薄層クロマトグラフィー :
TLCプレート(TLC Silica gel 60F254、メルク製)の薄層クロマトグラフィーにおいて、展開溶媒〔クロロホルム:メタノール:酢酸(10:1:0.03、体積比)〕で展開して測定したRf値は、0.54である。
(6) 高速液体クロマトグラフィー :
HPLCカラムとして、CAPCELLPAK UG120(粒子径 5μm、内径 4.6mm、長さ 250mm、資生堂株式会社製)を用い、溶媒として、0.1体積%酢酸を含む45体積%アセトニトリル水溶液を用い、前記溶媒の流速を1mL/分間としたときの保持時間は、8.1分間である。
(7) 赤外線吸収スペクトル :
赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)の主なピークは、下記に示すとおりである。
νmax cm-1 :770、1030、1125、1170、1260、1310、1400、1415、1625、1715、2920、3200
(8) プロトン核磁気共鳴スペクトル(600MHz, CD3OD/TMS)の主なピークは、下記に示すとおりである。
δ ppm: 1.10(d,J=6.2 Hz,3H)、1.37(m,2H)、1.77(m,1H)、2.10(m,1H)、3.73(m,1H)、3.77(m,1H)、4.46(dd,J=7.9,10.3 Hz,1H)、4.51(dd,J=7.2,10.3 Hz,1H)、6.50(d,J=2.4 Hz,1H)、7.14(d,J=2.4 Hz,1H)、7.21(s,1H)
(9) 炭素13核磁気共鳴スペクトル(150MHz, CD3OD/TMS)の主なピークは、下記に示すとおりである。
δ ppm: 20.8(q)、23.4(q)、26.4(t)、36.0(d)、38.1(t)、67.4(t)、68.3(d)、109.2(d)、109.4(d)、109.8(s)、110.0(s)、110.7(s)、122.3(s)、134.5(s)、136.6(s)、164.8(s)、165.1(s)、166.4(s)、168.1(s)、173.1(s)、183.4(s)、190.7(s)
前記コッコキノンA及びBのそれぞれについて、がん細胞の増殖阻害作用を以下の方法で検討した。
前記がん細胞として、ヒト野生型p53タンパク質の発現量をテトラサイクリンの濃度によって調節できるヒト膠芽腫細胞株LNZTA3細胞(ATCCより入手)を使用した。
前記LNZTA3細胞を、1μg/mL、又は0.004μg/mLのテトラサイクリンを含む、1体積%FBS(シグマアルドリッチ社製)、1体積%グルコースを含むOpti-MEM(ライフテクノロジーズジャパン株式会社製)を用いて1×105細胞/mLに調製し、これを96穴プレートの1穴あたり100μLずつ播種し、37℃、5%CO2の雰囲気下で24時間培養して細胞を完全に接着させた。
なお、前記LNZTA3細胞は、培地中のテトラサイクリンの含有量が1μg/mLではヒト野生型p53タンパク質の発現量が少なく、0.004μg/mLではヒト野生型p53タンパク質の発現量が多くなる。
また、比較対照としては、前記LNZTA3細胞を接着させた96穴プレートにおいて、コッコキノンA及びBを添加せず、3日間、37℃、5%CO2雰囲気下で培養した。
3日間培養後、MTT法を用いてLNZTA3細胞の細胞増殖を測定した。コッコキノンA及びBのいずれかを添加した穴の吸光度を「A」とし、比較対照の穴の吸光度を「B」とし、細胞は入っていないが培地及びMTT試薬は入っているブランクの穴の吸光度を「C」として、下記式(1)により、細胞生存率(%)を算出した。
細胞生存率(%)=(A-C)/(B-C)×100 ・・・式(1)
結果を図1及び図2に示す。
図1及び図2の結果から明らかなように、コッコキノンA及びBはいずれもがん細胞増殖抑制効果を示し、また、野生型p53タンパク質の発現量に依存して特異的な細胞増殖抑制効果を示すことがわかった。
<構造式(A)で表される化合物の製造>
-種母培養液の調製-
100mLの三角フラスコにTS培地(2.0%可溶性スターチ(和光純薬工業株式会社製)、1.0%グルコース(和光純薬工業株式会社製)、0.5%ポリペプトン(和光純薬工業株式会社製)、0.6%小麦胚芽(日清ファルマ株式会社製)、0.3%酵母エキス(和光純薬工業株式会社製)、0.2%大豆粕(昭和産業株式会社製)、0.2% CaCO3(和光純薬工業株式会社製)、pH7.0(NaOHで調整))を20mL入れ、121℃で20分間殺菌した。次いで、スタフィロトリクム ボニネンセ(Staphylotrichum boninense)PF1444株を接種し、25℃で3日間~6日間、ロータリーシェーカーで振とう(220rpm)培養し、この培養液を種母培養液とした。
500mLの三角フラスコに、一晩水に浸し、翌朝1時間水を切った玄米(あきたこまち)80gと、オートミール(クエーカーオーツ社製)2gとを混合したものを入れ、121℃で20分間殺菌し、以下の培養に用いる培地(以下、「プロダクション培地」と称することがある)とした。
前記プロダクション培地に前記種母培養液を3mL接種し、25℃で14日間、静置培養した。なお、前記培養は、500mLの三角フラスコを50本用いて行った。
前記培養後、各三角フラスコにアセトン水(67体積%)を160mL分注して抽出し、サンプル調製液とした。
前記サンプル調製液を減圧下で濃縮乾固した。これに3Lの脱イオン水を加えて懸濁し、1,500mLの合成吸着剤(ダイヤイオン(登録商標)HP20、三菱化学株式会社製)に付し、4,500mLの脱イオン水で洗浄した後、4,500mLの25体積%メタノール水、4,500mLの50体積%メタノール水、4,500mLの75体積%メタノール水、4,500mLの100体積%メタノールで順次溶出した。目的化合物を含む100体積%メタノール溶出画分を減圧下で濃縮乾固し、4gの粗精製物を得た。
得られた粗精製物4gのうちを1gをメタノールに溶解し、中圧液体クロマトグラフィー(カラム:SNAP KP-C18-HS Cartridge、120g、バイオタージ社製))に供し、0.1体積%酢酸水-メタノールの濃度勾配溶出を行った。得られた溶出画分を減圧下で濃縮乾固し、101mgの粗精製物を得た。
この粗精製物をメタノールに溶解し、高速液体クロマトグラフィー(カラム:CAPCELL PAK UG120、粒子径 5μm、内径 30mm、長さ 250mm、資生堂株式会社製)に供し、0.1体積%酢酸を含む40体積%アセトニトリル水溶液で溶出した。得られた溶出画分を減圧下で濃縮乾固し、17.3mgの粗精製物を得た。
次いで、前記粗精製物を10gのシリカゲル(ワコーゲルC-200、和光純薬工業株式会社製)でカラムクロマトグラフィーを行い、クロロホルム、2体積%メタノールを含むクロロホルム、4体積%メタノールを含むクロロホルム、10体積%メタノールを含むクロロホルムで順次溶出した。
コッコキノンAを含む4体積%メタノールを含むクロロホルムの溶出画分を濃縮乾固し、赤色粉末のコッコキノンAを8.1mg単離精製した。
得られたコッコキノンAの物理化学的性質は、次の通りであり、これらのことから、スタフィロトリクム ボニネンセ(Staphylotrichum boninense)PF1444株によっても、前記コッコキノンAを製造することができることが確認された。
(1) 外観 : 赤色の粉状である。
(2) 分子式 : C22H20O9で表され、分子量は、428である。
(3) 高分解能質量分析(HRESIMS:正イオンモード) :
実験値は、m/z 429.1182(M+H)+であり、計算値は、m/z 429.1180(C22H21O9として)である。
(4) 紫外吸収スペクトル :
主なピークは、下記に示すとおりである。
(i)メタノール溶液で測定した場合
λmax nm (logε):223(4.41),265(4.17),293(4.38),316(4.06),455(3.88)
(ii)メタノール-HCl溶液で測定した場合
λmax nm (logε):223(4.41),292(4.40),322(3.91),453(3.90)
(iii)メタノール-NaOH溶液で測定した場合
λmax nm (logε):230(4.31),264(4.12),323(4.57),398(3.82),545(3.84)
(5) 薄層クロマトグラフィー :
TLCプレート(TLC Silica gel 60F254、メルク製)の薄層クロマトグラフィーにおいて、展開溶媒〔クロロホルム:メタノール:酢酸(10:1:0.03、体積比)〕で展開して測定したRf値は、0.64である。
(6) 高速液体クロマトグラフィー :
HPLCカラムとして、CAPCELLPAK UG120(粒子径 5μm、内径 4.6mm、長さ 250mm、資生堂株式会社製)を用い、溶媒として、0.1体積%酢酸を含む45体積%アセトニトリル水溶液を用い、前記溶媒の流速を1mL/分間としたときの保持時間は、10.9分間である。
(7) 赤外線吸収スペクトル :
赤外線吸収スペクトル(KBr錠剤法)の主なピークは、下記に示すとおりである。
νmax cm-1 :770、1030、1095、1170、1260、1320、1400、1440、1620、1710、3200
(8) プロトン核磁気共鳴スペクトル(600MHz, CD3OD/TMS)の主なピークは、下記に示すとおりである。
δ ppm: 1.99(s,3H)、2.05(m,1H)、2.08(s,3H)、2.18(m,1H)、2.40(m,1H)、2.48(m,1H)、3.71(m,1H)、4.44(dd,J=8.0,10.6 Hz,1H)、4.52(dd,J=7.4,10.6 Hz,1H)、6.49(d,J=2.4 Hz,1H)、7.08(d,J=2.4 Hz,1H)、7.18(s,1H)
(9) 炭素13核磁気共鳴スペクトル(150MHz, CD3OD/TMS)の主なピークは、下記に示すとおりである。
δ ppm: 20.9(q)、24.4(t)、29.9(q)、35.7(d)、42.3(t)、67.2(t)、109.1(d)、109.3(d)、110.0(d)、110.2(s)、110.3(s)、121.5(s)、134.7(s)、136.6(s)、164.8(s)、164.9(s)、166.3(s)、166.8(s)、173.1(s)、183.0(s)、191.0(s)、211.7(s)
<1> 下記構造式(A)及び(B)のいずれかで表されることを特徴とする化合物である。
スタフィロトリクム(Staphylotrichum)属に属し、前記<1>に記載の化合物を生産する能力を有する微生物を培養する培養工程と、
前記培養工程で得られた培養物から前記<1>に記載の化合物を採取する採取工程とを含むことを特徴とする化合物の製造方法である。
<3> スタフィロトリクム(Staphylotrichum)属に属し、前記<1>に記載の化合物を生産する能力を有する微生物が、受託番号NITE BP-02037のスタフィロトリクム コッコスポラム(Staphylotrichum coccosporum)PF1460株である前記<2>に記載の化合物の製造方法である。
<4> 前記<1>に記載の化合物が、構造式(A)で表される化合物であり、
前記構造式(A)で表される化合物を生産する能力を有する微生物が、受託番号NITE BP-1450のスタフィロトリクム ボニネンセ(Staphylotrichum boninense)PF1444株である前記<2>に記載の化合物の製造方法である。
<5> スタフィロトリクム(Staphylotrichum)属に属し、前記<1>に記載の化合物を生産する能力を有することを特徴とする微生物である。
<6> 受託番号NITE BP-02037のスタフィロトリクム コッコスポラム(Staphylotrichum coccosporum)PF1460株である前記<5>に記載の微生物である。
<7> 前記<1>に記載の化合物を含むことを特徴とする化合物含有組成物である。
<8> 前記<1>に記載の化合物を含むことを特徴とする抗がん剤である。
NITE BP-1450
Claims (8)
- 下記の物理化学的性質(A1)~(A9)により同定される化合物、及び
下記の物理化学的性質(B1)~(B9)により同定される化合物のいずれかであることを特徴とする化合物。
(A1) 外観 : 赤色の粉状である。
(A2) 分子式 : C22H20O9で表され、分子量は、428である。
(A3) HRESIMS、及び正イオンモードによる高分解能質量分析 :
実験値は、m/z 429.1182(M+H)+であり、計算値は、C22H21O9としてm/z 429.1180である。
(A4) 紫外吸収スペクトル :
主なピークは、下記に示すとおりである。
(i)メタノール溶液で測定した場合
λmax nm (logε):223(4.41),265(4.17),293(4.38),316(4.06),455(3.88)
(ii)メタノール-HCl溶液で測定した場合
λmax nm (logε):223(4.41),292(4.40),322(3.91),453(3.90)
(iii)メタノール-NaOH溶液で測定した場合
λmax nm (logε):230(4.31),264(4.12),323(4.57),398(3.82),545(3.84)
(A5) 薄層クロマトグラフィー :
TLCプレートの薄層クロマトグラフィーにおいて、体積比10:1:0.03でクロロホルム、メタノール、及び酢酸を含む展開溶媒で展開して測定したRf値は、0.64である。
(A6) 高速液体クロマトグラフィー :
粒子径 5μm、内径 4.6mm、及び長さ 250mmのHPLCカラムを用い、溶媒として、0.1体積%酢酸を含む45体積%アセトニトリル水溶液を用い、前記溶媒の流速を1mL/分間としたときの保持時間は、10.9分間である。
(A7) 赤外線吸収スペクトル :
KBr錠剤法による赤外線吸収スペクトルの主なピークは、下記に示すとおりである。
νmax cm-1 :770、1030、1095、1170、1260、1320、1400、1440、1620、1710、2920、3200
(A8) 600MHz、及びCD3OD/TMS条件下におけるプロトン核磁気共鳴スペクトルの主なピークは、下記に示すとおりである。
δ ppm: 1.99(s,3H)、2.05(m,1H)、2.08(s,3H)、2.18(m,1H)、2.40(m,1H)、2.48(m,1H)、3.71(m,1H)、4.44(dd,J=8.0,10.6 Hz,1H)、4.52(dd,J=7.4,10.6 Hz,1H)、6.49(d,J=2.4 Hz,1H)、7.08(d,J=2.4 Hz,1H)、7.18(s,1H)
(A9) 150MHz、及びCD3OD/TMS条件下における炭素13核磁気共鳴スペクトルの主なピークは、下記に示すとおりである。
δ ppm: 20.9(q)、24.4(t)、29.9(q)、35.7(d)、42.3(t)、67.2(t)、109.1(d)、109.3(d)、110.0(d)、110.2(s)、110.3(s)、121.5(s)、134.7(s)、136.6(s)、164.8(s)、164.9(s)、166.3(s)、166.8(s)、173.1(s)、183.0(s)、191.0(s)、211.7(s)
(B1) 外観 : 赤色の粉状である。
(B2) 分子式 : C22H22O9で表され、分子量は、430である。
(B3) HRESIMS、及び正イオンモードによる高分解能質量分析 :
実験値は、m/z 431.1338(M+H)+であり、計算値は、C22H21O9としてm/z 431.1337である。
(B4) 紫外吸収スペクトル :
主なピークは、下記に示すとおりである。
(i)メタノール溶液で測定した場合
λmax nm (logε):224(4.48),263(4.30),294(4.44),314(4.36),469(3.95)
(ii)メタノール-HCl溶液で測定した場合
λmax nm (logε):223(4.50),292(4.51),323(4.04),454(4.04)
(iii)メタノール-NaOH溶液で測定した場合
λmax nm (logε):230(4.44),263(4.26),323(4.79),397(3.94),544(3.96)
(B5) 薄層クロマトグラフィー :
TLCプレートの薄層クロマトグラフィーにおいて、体積比10:1:0.03でクロロホルム、メタノール、及び酢酸を含む展開溶媒で展開して測定したRf値は、0.54である。
(B6) 高速液体クロマトグラフィー :
粒子径 5μm、内径 4.6mm、及び長さ 250mmのHPLCカラムを用い、溶媒として、0.1体積%酢酸を含む45体積%アセトニトリル水溶液を用い、前記溶媒の流速を1mL/分間としたときの保持時間は、8.1分間である。
(B7) 赤外線吸収スペクトル :
KBr錠剤法による赤外線吸収スペクトルの主なピークは、下記に示すとおりである。
νmax cm-1 :770、1030、1125、1170、1260、1310、1400、1415、1625、1715、2920、3200
(B8) 600MHz、及びCD3OD/TMS条件下におけるプロトン核磁気共鳴スペクトルの主なピークは、下記に示すとおりである。
δ ppm: 1.10(d,J=6.2 Hz,3H)、1.37(m,2H)、1.77(m,1H)、2.10(m,1H)、3.73(m,1H)、3.77(m,1H)、4.46(dd,J=7.9,10.3 Hz,1H)、4.51(dd,J=7.2,10.3 Hz,1H)、6.50(d,J=2.4 Hz,1H)、7.14(d,J=2.4 Hz,1H)、7.21(s,1H)
(B9) 150MHz、及びCD3OD/TMS条件下における炭素13核磁気共鳴スペクトルの主なピークは、下記に示すとおりである。
δ ppm: 20.8(q)、23.4(q)、26.4(t)、36.0(d)、38.1(t)、67.4(t)、68.3(d)、109.2(d)、109.4(d)、109.8(s)、110.0(s)、110.7(s)、122.3(s)、134.5(s)、136.6(s)、164.8(s)、165.1(s)、166.4(s)、168.1(s)、173.1(s)、183.4(s)、190.7(s) - 請求項1に記載の化合物の製造方法であって、
スタフィロトリクム(Staphylotrichum)属に属し、請求項1に記載の化合物を生産する能力を有する微生物を培養する培養工程と、
前記培養工程で得られた培養物から請求項1に記載の化合物を採取する採取工程とを含むことを特徴とする化合物の製造方法。 - スタフィロトリクム(Staphylotrichum)属に属し、請求項1に記載の化合物を生産する能力を有する微生物が、受託番号NITE BP-02037のスタフィロトリクム コッコスポラム(Staphylotrichum coccosporum)PF1460株である請求項2に記載の化合物の製造方法。
- 請求項1に記載の化合物が、前記物理化学的性質(A1)~(A9)により同定される化合物であり、
前記物理化学的性質(A1)~(A9)により同定される化合物を生産する能力を有する微生物が、受託番号NITE BP-1450のスタフィロトリクム ボニネンセ(Staphylotrichum boninense)PF1444株である請求項2に記載の化合物の製造方法。 - スタフィロトリクム(Staphylotrichum)属に属し、請求項1に記載の化合物を生産する能力を有することを特徴とする微生物。
- 受託番号NITE BP-02037のスタフィロトリクム コッコスポラム(Staphylotrichum coccosporum)PF1460株である請求項5に記載の微生物。
- 請求項1に記載の化合物を含むことを特徴とする化合物含有組成物。
- 請求項1に記載の化合物を含むことを特徴とする抗がん剤。
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