JP6229664B2 - 光学フィルムのロール体、その製造方法、偏光板及び表示装置 - Google Patents

光学フィルムのロール体、その製造方法、偏光板及び表示装置 Download PDF

Info

Publication number
JP6229664B2
JP6229664B2 JP2014551962A JP2014551962A JP6229664B2 JP 6229664 B2 JP6229664 B2 JP 6229664B2 JP 2014551962 A JP2014551962 A JP 2014551962A JP 2014551962 A JP2014551962 A JP 2014551962A JP 6229664 B2 JP6229664 B2 JP 6229664B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
film
group
optical film
range
roll body
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2014551962A
Other languages
English (en)
Other versions
JPWO2014091921A1 (ja
Inventor
真一郎 鈴木
真一郎 鈴木
村上 隆
隆 村上
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Konica Minolta Inc
Original Assignee
Konica Minolta Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Konica Minolta Inc filed Critical Konica Minolta Inc
Publication of JPWO2014091921A1 publication Critical patent/JPWO2014091921A1/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6229664B2 publication Critical patent/JP6229664B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B29WORKING OF PLASTICS; WORKING OF SUBSTANCES IN A PLASTIC STATE IN GENERAL
    • B29CSHAPING OR JOINING OF PLASTICS; SHAPING OF MATERIAL IN A PLASTIC STATE, NOT OTHERWISE PROVIDED FOR; AFTER-TREATMENT OF THE SHAPED PRODUCTS, e.g. REPAIRING
    • B29C55/00Shaping by stretching, e.g. drawing through a die; Apparatus therefor
    • B29C55/02Shaping by stretching, e.g. drawing through a die; Apparatus therefor of plates or sheets
    • B29C55/04Shaping by stretching, e.g. drawing through a die; Apparatus therefor of plates or sheets uniaxial, e.g. oblique
    • BPERFORMING OPERATIONS; TRANSPORTING
    • B29WORKING OF PLASTICS; WORKING OF SUBSTANCES IN A PLASTIC STATE IN GENERAL
    • B29CSHAPING OR JOINING OF PLASTICS; SHAPING OF MATERIAL IN A PLASTIC STATE, NOT OTHERWISE PROVIDED FOR; AFTER-TREATMENT OF THE SHAPED PRODUCTS, e.g. REPAIRING
    • B29C55/00Shaping by stretching, e.g. drawing through a die; Apparatus therefor
    • B29C55/02Shaping by stretching, e.g. drawing through a die; Apparatus therefor of plates or sheets
    • B29C55/10Shaping by stretching, e.g. drawing through a die; Apparatus therefor of plates or sheets multiaxial
    • B29C55/12Shaping by stretching, e.g. drawing through a die; Apparatus therefor of plates or sheets multiaxial biaxial

Landscapes

  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Mechanical Engineering (AREA)
  • Polarising Elements (AREA)
  • Shaping By String And By Release Of Stress In Plastics And The Like (AREA)
  • Shaping Of Tube Ends By Bending Or Straightening (AREA)
  • Storage Of Web-Like Or Filamentary Materials (AREA)
  • Physics & Mathematics (AREA)
  • Manufacture Of Macromolecular Shaped Articles (AREA)
  • General Physics & Mathematics (AREA)
  • Optics & Photonics (AREA)

Description

本発明は、光学フィルムのロール体、その製造方法、偏光板及び表示装置に関する。より詳しくは、斜め方向に延伸された薄膜の光学フィルムのロール体であって、ロール状での保管や輸送中の吸湿によっても、当該光学フィルムのロール体に巻きズレを発生しにくく、かつ保管中や輸送後に偏光板に用いても表示むらを生じない均一な光学値を有する光学フィルムのロール体、その製造方法、偏光板及び表示装置に関する。
円偏光板をロール・トゥ・ロールで製造するために、斜め方向に延伸された光学フィルムが提案されている(例えば、特許文献1参照。)。当該光学フィルムは斜め方向に延伸(簡単に、斜め延伸ともいう。)して所望の位相差を付与するため、フィルム面内の弾性率が斜め方向に最大値を有するという特徴を持っている。このような光学フィルムとしては、ポリカーボネートやシクロオレフィン樹脂が好ましく用いられている。一方、セルロースエステル樹脂もこのような用途に利用することが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。
上記斜め延伸された光学フィルムは、当該斜め方向に位相差等の光学的な異方性、及び弾性率等の機械的な異方性を有する。しかしながら、セルロースエステル樹脂を用いた光学フィルムは吸湿性の影響が他の樹脂に比較して大きく、通常の偏光板保護フィルムとして用いられている80〜100μm程度の膜厚の光学フィルムでは大きな問題とはならなかったが、膜厚50μm以下の薄膜の光学フィルムでは、長尺フィルムロール体での保管中あるいは輸送後に偏光板製造に用いると、均一な特性の偏光板が得にくく、表示むらが発生しやすいことがわかった。
その原因を調査した結果、長尺フィルムロール体の保管中の吸湿や輸送中の急激な吸湿の際に、特に斜め方向に異方性を有することによって巻き形状の劣化が発生し、ロール体内部の水分含有量にばらつきが生じて、光学特性に影響していることがわかった。
前記長尺フィルムロール体の巻き形状の劣化に対しては、光学フィルムにナーリングと呼ばれるエンボス加工を行うことで改善される技術が知られている(例えば、特許文献3参照。)。しかしながら、エンボスの凸部は巻き取った後の圧力により変形する場合が多く、そのためエンボス高さのばらつきが生じて、期待された効果が得られない場合があり、特に上記斜めに延伸された機械的な異方性を有する光学フィルムの場合は、エンボスの変形が左右や長手方向で一様ではなく、十分な効果が得られにくいことがわかった。
特開2006−224618号公報 特開2008−83307号公報 特開2012−30542号公報
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、セルロースエステルを含有し、フィルム面内の弾性率の最大値の方向が長手方向に対して傾斜している薄膜の光学フィルムのロール体であって、ロール状での保管や輸送中の吸湿によっても、当該光学フィルムのロール体に巻き形状の変形(巻きずれ)を発生しにくく、かつ保管中や輸送後に偏光板に用いても表示むらを生じない均一な光学値を有する光学フィルムのロール体、その製造方法、当該光学フィルムを具備した偏光板及び表示装置を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討する過程において、セルロースエステルを含有し、フィルム面内の弾性率の最大値の方向が長手方向に対して傾斜している薄膜の光学フィルムのロール体であって、当該光学フィルムの両端部に特定の高さのエンボス部を有し、かつ当該エンボス部の凸部のつぶれ耐性率(%)が両端のエンボス部とも50%以上である光学フィルムのロール体によって、ロール状での保管や輸送中の吸湿によっても、当該光学フィルムのロール体に巻き形状の変形(巻きずれ)を発生しにくく、かつ保管中や輸送後に偏光板に用いても表示むらを生じない均一な光学値を有する光学フィルムのロール体が得られることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明に係る上記課題は、以下の手段により解決される。
1.セルロースエステルを含有し、膜厚が15〜50μmの範囲内であり、フィルム長手方向に対して斜め方向に延伸され、エンボス部が形成された長尺の光学フィルムのロール体であって、
前記光学フィルムの23℃・55%RH下で測定したフィルム面内の弾性率の最大値の方向Aが長手方向に対して傾斜しており、当該最大値の方向Aの弾性率Eとそれに対して直交する方向Bの弾性率Eとの比の値が、1.4≦E/Eであり、かつ、
前記光学フィルムのロール体は、フィルム幅手方向の両端部からフィルム幅手長の5%以内の領域に、高さが1〜20μmの範囲内であるエンボス部を有し、
当該エンボス部の表面上の直径5mmの円領域に、1kgの荷重を加えた状態で23℃・55%RH下において10分間保存した後の当該エンボス部の凸部の高さをDとし、前記荷重を加える前の当該エンボス部の凸部の高さをDoとしたとき、下記式1で定義されるつぶれ耐性率(%)が、両端のエンボス部とも50%以上であることを特徴とする光学フィルムのロール体。
(式1) つぶれ耐性率(%)=D/Do×100(%)
2.前記つぶれ耐性率(%)が、70%以上であることを特徴とする第1項に記載の光学フィルムのロール体。
3.前記フィルム幅手方向の両端部のエンボス部をa及びa'としたときに、当該エンボス部a及びa'の前記つぶれ耐性率の差が、10%以内であることを特徴とする第1項又は第2項に記載の光学フィルムのロール体。
4.前記フィルム面内の弾性率の最大値の方向Aが、長手方向に対して、30〜60°方向の範囲内にあることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の光学フィルムのロール体。
5.前記フィルム面内の遅相軸が、長手方向に対して、30〜60°方向の範囲内にあることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の光学フィルムのロール体。
6.添加剤として、下記一般式(A)で表される構造を有する化合物を含有することを特徴とする第1項から第5項までのいずれか一項に記載の光学フィルムのロール体。
Figure 0006229664

〔上記一般式(A)において、Qは、芳香族炭化水素環、非芳香族炭化水素環、芳香族複素環又は非芳香族複素環を表す。Wa及びWbは、それぞれ独立に、Qを構成する原子に結合する水素原子又は置換基であり、WaとWbとは互いに同じでも異なっていてもよく、WaとWbは互いに結合して環を形成してもよい。Rは、水素原子又は置換基を表す。mは、0〜2の整数を表し、mが2の場合、2つのRは互いに同じでも異なっていてもよい。nは、1〜10の整数を表し、nが2以上である場合、2以上のQ、L、Wa、Wb、R及びmのそれぞれは、互いに同一であっても異なっていてもよい。L及びLは、それぞれ独立に、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、O、(C=O)、(C=O)−O、NR、S、(O=S=O)及び(C=O)−NRからなる群より選ばれる2価の連結基であるか、それらの組合せか又は単結合を表す。Rは、水素原子又は置換基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、置換基を表す。〕
7.添加剤として、重量平均分子量(Mw)が350〜3000の範囲内であるジカルボン酸とジオールとの重縮合エステルを含有することを特徴とする第1項から第6項までのいずれか一項に記載の光学フィルムのロール体。
8.光学フィルムの巻き長が、1500〜8000mの範囲内であることを特徴とする第1項から第7項までのいずれか一項に記載の光学フィルムのロール体。
9.第1項から第8項までのいずれか一項に記載の光学フィルムのロール体を樹脂フィルムにアルミ蒸着された防湿フィルムで包んだ後、巻き軸部分を紐又はゴムバンドで留めたことを特徴とする光学フィルムのロール体。
10.第1項から第9項までのいずれか一項に記載の光学フィルムのロール体を製造する光学フィルムのロール体の製造方法であって、当該光学フィルムをフィルム幅手方向に延伸率として1〜50%の範囲内で予備延伸した後、フィルム長手方向に対して斜め方向に延伸し、その後フィルム幅手方向の両端部にエンボス部を形成することを特徴とする光学フィルムのロール体の製造方法。
11.フィルム幅手方向の両端部にエンボスローラーによって前記エンボス部を形成するときに、両側のエンボスローラーの表面温度に5〜20℃の範囲内の温度差をつけて当該エンボス部を形成することを特徴とする第10項に記載の光学フィルムのロール体の製造方法。
12.第1項から第9項までのいずれか一項に記載の光学フィルムのロール体から繰り出され光学フィルムを、偏光子の少なくとも一方の面に具備したことを特徴とする偏光板。
13.第12項に記載の偏光板を具備することを特徴とする表示装置。
本発明の上記手段により、セルロースエステルを含有し、フィルム面内の弾性率の最大値の方向が長手方向に対して傾斜している薄膜の光学フィルムのロール体であって、ロール状での保管や輸送中の吸湿によっても、当該光学フィルムのロール体に巻き形状の変形(巻きずれ)を発生しにくく、かつ保管中や輸送後に偏光板に用いても表示むらを生じない均一な光学値を有する光学フィルムのロール体、当該光学フィルムのロール体の製造方法、偏光板及び表示装置を提供することができる。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
フィルム長手方向に対して斜め延伸された光学フィルムは、通常斜め延伸テンターによって製造されるが、延伸する際の左右のフィルム走路長が異なることによって、当該斜め方向に機械的な異方性を有する。従ってフィルム幅手に平行な位置にある左右のフィルム端部の物性値が異なり、エンボス部をフィルムの両端に幅手方向又は長手方向に延伸された光学フィルムと同様の方法で形成しても、両端のエンボス部の強度が異なって形成されるものと推定される。さらに吸湿性の高いセルロースエステルを含有する薄膜の光学フィルムの長尺ロール体では、前記左右のエンボス部の強度の違いによって、吸湿と自重によってフィルムの左右や長手方向のエンボス部のつぶれに差が生じ、巻き形状の劣化が進行しやすいものと考えられる。
当該巻き形状が劣化すると、フィルム端部から当該ロール体内部への水分の浸透及び当該ロール体内部からの水分の放出に差が生じ、均一でないフィルムの伸び縮みや添加剤の染みだし等によって位相差等の光学特性にばらつきを生じやすい。特に斜め延伸する場合はλ/4板のような比較的大きい位相差を付与するため、より大きい影響を受けるものと推察される。
本発明の光学フィルムのロール体は、斜め延伸することによって左右のフィルム端部の物性値が異なる光学フィルムに、従来よりも高いつぶれ耐性率(%)を有するエンボス部を両端に形成することで、吸湿性の高いセルロースエステルを含有する薄膜の光学フィルムであっても、ロール体の巻き形状の劣化を防止することができ、ロール体端部からの吸湿及び放湿を均一化して、安定で均一な光学特性を有する光学フィルムのロール体を実現できたものと考えられる。
また、斜め延伸する前にフィルム幅手方向に予備延伸することや、左右のエンボス部の形成を温度を変えて行うことにより、強度の高いエンボス部を左右に均一に加工することができ、ロール体の巻き形状の劣化を改善し、より均一な光学特性を有する光学フィルムのロール体が得られることが分かった。
光学フィルムのロール体の一例を示す模式図 光学フィルムのエンボス部近傍の一例を示す部分断面図 つぶれ耐性率の測定におけるエンボス部の一例を示す部分断面図 エンボス部の凸部のつぶれ耐性率の測定方法の一例を示す模式図 本発明に用いる斜め延伸テンターの模式図 本発明の製造方法に用いるテンターのレールの軌道(レールパターン)を示す概略図 延伸装置の一例を示す模式図 延伸装置の一例を示す模式図 延伸装置の一例を示す模式図 延伸装置の他の一例を示す模式図 延伸装置の他の一例を示す模式図 エンボス加工装置の一例を示す模式図 光学フィルムのロール体の包装形態の模式図
本発明の光学フィルムのロール体は、セルロースエステルを含有し、膜厚が15〜50μmの範囲内であり、フィルム長手方向に対して斜め方向に延伸され、エンボス部が形成された長尺の光学フィルムのロール体であって、前記光学フィルムの23℃・55%RH下で測定したフィルム面内の弾性率の最大値の方向Aが長手方向に対して傾斜しており、当該最大値の方向Aの弾性率E とそれに対して直交する方向Bの弾性率E との比の値が、1.4≦E /E であり、かつ、前記光学フィルムのロール体は、フィルム幅手方向の両端部からフィルム幅手長の5%以内の領域に、高さが1〜20μmの範囲内であるエンボス部を有し、当該エンボス部の表面上の直径5mmの円領域に、1kgの荷重を加えた状態で23℃・55%RH下において10分間保存した後の当該エンボス部の凸部の高さをDとし、前記荷重を加える前の当該エンボス部の凸部の高さをDoとしたとき、前記式1で定義されるつぶれ耐性率(%)が、両端のエンボス部とも50%以上であることを特徴とする。この特徴は、請求項1から請求項13までの請求項に係る発明に共通する技術的特徴である。
本発明の実施態様としては、本発明の効果発現の観点から、前記つぶれ耐性率(%)が70%以上であることが好ましく、フィルム左右両端のエンボス部の前記つぶれ耐性率(%)の差が10%以内であることが、強度の高いエンボス部を左右に均一に形成することで、巻き形状の劣化をより改善することができるため、好ましい態様である。
フィルム面内の弾性率の最大値の方向Aは、長手方向に対して30〜60°方向の範囲内にあることが好ましく、当該フィルム面内の遅相軸も30〜60°方向の範囲内にあることが好ましい。当該遅相軸が上記範囲内の方向で傾斜していることによって、長手方向に透過軸(又は吸収軸)を有する偏光子とロール・トゥ・ロールで貼合することで、生産性よく円偏光板を製造できる。
また、前記一般式(A)で表される構造を有する化合物を添加剤として含有することは、当該化合物が、一つの化合物で位相差上昇剤と波長分散調整剤の両方の機能を併せ持つ特徴を有していることから、斜め延伸適性が高く、かつセルロースエステルと組み合わせたときの吸湿による耐染みだし性にも優れていることから、ロール体の保管中及び輸送後の光学特性の均一性に優れた効果を発現する。
同様に、添加剤として、重量平均分子量(Mw)が350〜3000の範囲内であるジカルボン酸とジオールとの重縮合エステルを含有することは、耐染みだし性に優れ、光学特性及び物性の向上及び安定化に寄与することができ、好ましい。
本発明の光学フィルムのロール体の巻き長は、1500〜8000mの範囲内であることが、最も荷重のかかる巻き芯部近傍でも前記エンボス部のつぶれ耐性率(%)を満たすことができ、生産性の観点からも好ましい。
本発明の光学フィルムのロール体は、樹脂フィルムにアルミ蒸着された防湿フィルムで包んだ後、巻き軸部分を紐又はゴムバンドで留めた形態であることが、保管中又は輸送中に適度な吸湿及び放湿が可能となり、光学フィルムの光学特性及び物性の均一性を高める上で好ましい態様である。
本発明の光学フィルムのロール体を製造する光学フィルムのロール体の製造方法は、フィルム幅手方向に延伸率として1〜50%の範囲内で予備延伸した後、フィルム長手方向に対して斜め方向に延伸し、その後フィルム幅手方向の両端部にエンボス部を形成することが、前記つぶれ耐性率(%)に優れたエンボス部を形成する観点から好ましい製造方法である。
また、フィルム幅手方向の両端部に、エンボスローラーによって前記エンボス部を形成するときに、両側のエンボスローラーの表面温度に5〜20℃の範囲内の温度差をつけて行うことは、斜め延伸によって左右で物性の異なるフィルムに、左右均一な強度を有するエンボス部を形成する上で好ましい実施態様である。
本発明の光学フィルムのロール体から繰り出された光学フィルムは、偏光板及び表示装置に好適に具備され得る。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本願において、「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
<本発明の光学フィルムのロール体の概要>
本発明の光学フィルムのロール体(以下、本発明の光学フィルムともいう。)は、セルロースエステルを含有し、膜厚が15〜50μmの範囲内であり、フィルム長手方向に対して斜め方向に延伸され、エンボス部が形成された長尺の光学フィルムのロール体であって、
前記光学フィルムの23℃・55%RH下で測定したフィルム面内の弾性率の最大値の方向Aが長手方向に対して傾斜しており、当該最大値の方向Aの弾性率Eとそれに対して直交する方向Bの弾性率Eとの比の値が、1.4≦E/Eであり、かつ、
前記光学フィルムのロール体は、フィルム幅手方向の両端部からフィルム幅手長の5%以内の領域に、高さが1〜20μmの範囲内であるエンボス部を有し、
当該エンボス部の表面上の直径5mmの円領域に、1kgの荷重を加えた状態で23℃・55%RH下において10分間保存した後の当該エンボス部の凸部の高さをDとし、前記荷重を加える前の当該エンボス部の凸部の高さをDoとしたとき、下記式1で定義されるつぶれ耐性率(%)が、両端のエンボス部とも50%以上であることを特徴とする。
(式1) つぶれ耐性率(%)=D/Do×100(%)
本発明では、光学フィルムのロール体の保存時の巻きずれや光学品質の劣化を効果的に防止する観点から、請求項1で示すように、フィルムの両端部に特定の強度のエンボス部を形成することを特徴としている。
本発明の光学フィルムのロール体は、長尺状の光学フィルムを、その長手方向(フィルムの幅手方向に対して直交する方向)に巻き取って得られるものである。
エンボス部とは、長尺状フィルムを巻き取る前に、巻き取られたフィルム同士の裏面と表面が完全に面同士密着するのを防止するために、フィルムに微小の連続した凹凸からなる一定の幅の文様をつけたものである。フィルムの一面(例えば上面)を凸状に突出させた際、当該フィルムの他面(例えば下面)に前記凸状に対応して相対的に凹状が形成される。
これにより、巻き取ったフィルム同士が完全に接着して、あるいは、部分的に接着してフィルムの表面の状態に影響を与え、故障を引き起こすのを防ぐ役割を果たす。また、特に本発明では、斜め延伸工程を活用し大きなリターデーションを発生させたフィルムが、ロール状で保存された場合に発生する巻き形状の劣化を防止し、光学性能の均一化を図ることができる。
図1は、光学フィルムのロール体の一例を示す模式図である。図1に示されるように、光学フィルムのロール体10は、巻芯12と、その周囲に、フィルムの長さ方向に巻き取られた長尺状の光学フィルム14とを有する。そして、ロール体10において、積層される光学フィルム14同士の密着を抑制するために、長尺状の光学フィルム14の幅手方向両端部には、エンボス部16が形成されている。
図2は、光学フィルムのエンボス部近傍の一例を示す断面図である。図2に示されるように、エンボス部16を構成する凸部16Aの高さDは、好ましくは1〜20μmの範囲内であり、より好ましくは2〜15μmの範囲内である。凸部16Aの高さDとは、フィルム面F(エンボスが形成されていない部分のフィルム面)から凸部16Aの頂点までの高さをいう。凸部16Aの高さが1μm未満であると、光学フィルム同士が密着しやすいため、好ましくない。一方、凸部16Aの高さが20μmを超えると、ロール体の幅手方向中央部がたわみやすく、光学フィルムとしての平面性が保ちにくい。エンボス部である凸部16Aは、光学フィルムの両端部からフィルム幅長の5%以内の領域に形成されることが、光学フィルムの有効面積を確保する観点から好ましい。
凸部16Aの幅wは、0.05〜5mm程度とすることができる。凸部16Aの幅wとは、エンボス部16の断面において、凸部16Aが、フィルム面Fと交わる2点間の距離として表される。凸部16Aと凸部16Aの間隔bは、0.1〜5mmの範囲であることが好ましく、0.5〜2mmの範囲であることがより好ましい。凸部16Aと凸部16Aの間隔bは、エンボス部16の断面において、2つの凸部16Aが、それぞれフィルム面Fと交わる点同士の距離で表される。
エンボス部16の幅Wは、光学フィルムの幅に対して0.12〜2.1%の範囲であることが好ましい。具体的には、エンボス部16の幅Wは、光学フィルムの幅の大きさにもよるが、5〜25mmの範囲とし、好ましくは10〜20mmの範囲とする。エンボス部16の幅Wが上記範囲内であれば、光学フィルムとして使用できる面積を確保しやすく、かつ光学フィルム同士の密着を防止することができる。
光学フィルムのロール体では、巻芯近傍の光学フィルムのエンボス部の凸部が、積層される光学フィルムの自重によってつぶれやすい。特に吸湿しやすいセルロースエステルフィルムの場合はエンボス部がつぶれやすく、当該エンボス部の凸部がつぶれると、積層される光学フィルムの巻き形状が劣化して光学フィルム同士が密着しやすくなり、当該光学フィルム同士の密着部分において、二つの問題が生じる。一つ目は、当該巻き形状が劣化すると、フィルム端部から当該ロール体内部への水分の浸透及び当該ロール体内部からの水分の放出に差が生じ、均一でないフィルムの伸び縮みよって位相差等の光学特性にばらつきが生じやすくなる。二つ目は、光学フィルムに含まれる添加剤(例えば可塑剤)の染みだしが生じやすくなり、光学フィルム同士の密着部分において添加剤の染みだしが生じると、光学フィルムに、添加剤(例えば可塑剤)の粗な部分と密な部分とが生じ、光学フィルムの光学特性の均一性が劣化する。
このようなエンボス部の凸部のつぶれは、光学フィルムの膜厚を薄くしたり、光学フィルムを高速で搬送しながらエンボス加工を行ったりしたときに特に生じやすい。特に、光学フィルムが斜め延伸されて、斜め方向に異方性を有する場合に、フィルムの左右両端部で物性が異なることによって、物性の低い部位はエンボス部の強度が低くなりやすい。
本発明の光学フィルムのロール体は、光学フィルムのエンボス部に力が加わっても、エンボス部の凸部がつぶれにくいこと、即ち、エンボス部が、高い強度(高い弾性率)を有することで、斜め延伸されて物性が面内で異方性を有する光学フィルムであっても、巻き形状の劣化を抑制するものである。具体的には、以下の方法で測定されるエンボス部の凸部のつぶれ耐性率(%)が、フィルムの左右の両端部において50%以上であることが必要であり、70%以上であることがさらに好ましい。
エンボス部の凸部のつぶれ耐性率(%)は、以下の方法で測定することができる。図3及び4は、エンボス部の凸部のつぶれ耐性率(%)の測定方法の一例を示す部分断面図である。
(1)光学フィルム14のエンボス部16を含む領域を切り出して、サンプルフィルム14Aを得る(図4参照)。そして、サンプルフィルム14Aのエンボス部16の凸部の高さD(図3における、荷重を加える前の凸部の高さD)を、厚さ測定機で測定する。厚さ測定機は例えば、定圧厚さ測定機(株式会社テクロックPG−02)を用いることができる。
(2)次いで、図4に示されるように、ステージ15上にサンプルフィルム14Aを配置する。そして、フィルム面に対して垂直に載置された直径5mmの金属製の円筒棒18Aと、その上に配置された分銅18Bとからなる合計1kgの分銅18を載せる。このようにして、エンボス部16の表面上の直径5mmの円領域に1kgの荷重を加えた状態で、23℃・55%RH下において10分間保存する。その後、荷重を除いた(分銅を除いた)ときの、エンボス部16の凸部の高さD(図3における荷重を加えた後の凸部の高さD)を、厚さ測定機で測定する。
(3)前記(1)で測定された荷重を加える前の凸部の高さDと、前記(2)で測定された荷重を加えた後の凸部の高さDとを、下記式1に当てはめて、つぶれ耐性率を算出する。
(式1) つぶれ耐性率(%)=D/D×100(%)
測定はエンボス部の場所を任意に変えて10回行い、つぶれ耐性率(%)の平均値を求める。
エンボス部の凸部のつぶれ耐性率(%)の調整は特に限定されるものではなく種々な方法を採用することができるが、エンボス加工条件で行うことが好ましい。具体的には、(1)エンボスローラーの表面温度、(2)バックローラーの表面温度、(3)エンボスローラーのローラー径、及び(4)バックローラーの材質のうち二以上を種々組み合わせて調整することができる。なかでも、(1)エンボスローラーの表面温度と、(2)バックローラーの表面温度を調整することが好ましく、さらに(3)エンボスローラー径を調整することがより好ましく、更に(4)バックローラーの材質を選択することが特に好ましい。エンボス部の凸部のつぶれ耐性率を高めるためには、例えば(1)エンボスローラーの表面温度を高くし、かつ(2)バックローラーの表面温度を高くすることが好ましい。
更に、本発明の光学フィルムのロール体は、あらかじめフィルム幅手方向に延伸率として1〜50%の範囲内で予備延伸した後、フィルム長手方向に対して斜め方向に延伸し、その後フィルム幅手方向の両端部にエンボス部を形成することが、つぶれ耐性率(%)に優れたエンボス部を形成する上で好ましい。
幅手方向に上記範囲内の予備延伸を行うことで、フィルム両端部の弾性率が高くなり、その後の斜め延伸による異方性を緩和することができ、エンボス部の強度を高めることができる。
また、フィルム幅手方向の両端部にエンボスローラーによって前記エンボス部を形成するときに、両側のエンボスローラーの表面温度に5〜20℃の範囲内の温度差をつけて行うことは、斜め延伸によって左右で機械的異方性を有するフィルムに、左右均一なエンボス部を形成することができ、巻き形状の劣化を防止する上で好ましい実施態様である。当該温度差は、フィルム左右での物性の差によって適宜決めることができるが、7〜15℃の範囲内の温度差であることがより好ましい。
前記左右のエンボスローラーに温度差をつけてエンボス部形成することで、前記フィルム幅手方向の両端部のエンボス部をa及びa'としたときに、当該エンボス部a及びa'の前記つぶれ耐性率の差が10%以内であることが、保管中や輸送中のロール体の巻き形状の劣化を抑制する効果を発現し、好ましい。前記つぶれ耐性率の差は、より好ましくは5%以内であり、3%以内であることがさらに好ましい。
本発明の光学フィルムは、フィルム面内の弾性率の最大値の方向A及び遅相軸が長手方向に対して傾斜しているが、特にフィルム面内の遅相軸が長手方向に対して、30〜60°方向の範囲内にある場合、ある特定の波長の直線偏光を円偏光に(又は、円偏光を直線偏光に)変換する円偏光板に好適に具備される。
実用的な円偏光板を製造するのに、本発明の光学フィルムはλ/4板であることが好ましい。λ/4板は所定の光の波長(通常、可視光領域)に対して、層の面内の位相差値Roが約1/4となるように設計されている。当該λ/4板は、波長590nmで測定したRo(590)が120〜160nmの範囲である。
「可視光の波長の範囲においておおむね1/4のリターデーション」とは、波長400から700nmにおいて長波長ほどリターデーションが大きく、波長450nmで測定した下記式(i)で表されるリターデーション値であるRo(450)と波長590nmで測定したリターデーション値であるRo(590)が、1<Ro(590)/Ro(450)≦1.6を満たすことが好ましい。さらには、1<Ro(590)/Ro(450)≦1.3を満たすことが好ましい。また、λ/4板として有効に機能するためには、Ro(450)が100〜125nmの範囲内であり、波長550nmで測定したリターデーション値であるRo(550)が125〜142nmの範囲内であり、Ro(590)が130〜152nmの範囲内の位相差フィルムであることがより好ましい。
なお、式(ii)はフィルム厚さ方向のリターデーション値Rtを求める式である。波長550nmで測定したリターデーション値Rtは、60〜100nmの範囲であることが好ましく、70〜90nmの範囲であることがより好ましい。
式(i):Ro=(n−n)×d
式(ii):Rt={(n+n)/2−n}×d
式中、nx、ny及びnは、23℃・55%RH、450nm、550nm、590nmの各々における屈折率nx(フィルムの面内の最大の屈折率、遅相軸方向の屈折率ともいう。)、ny(フィルム面内で遅相軸に直交する方向の屈折率)、n(フィルム厚さ方向の屈折率)であり、dはフィルムの厚さ(nm)である。
Ro、Rtは自動複屈折率計を用いて測定することができる。自動複屈折率計KOBRA−21AWR(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃・55%RHの環境下で、各波長での複屈折率測定によりRoを算出する。
λ/4板の遅相軸と偏光子の透過軸(又は吸収軸)との角度が実質的に45°になるように積層すると円偏光板が得られる。「実質的に45°」とは、40〜50°の範囲であることを意味する。λ/4板の面内の遅相軸と偏光子の透過軸との角度は、41〜49°の範囲であることが好ましく、42〜48°の範囲であることがより好ましく、43〜47°の範囲であることが更に好ましく、44〜46°の範囲であることが最も好ましい。従って、円偏光板をロール・トゥ・ロールで製造するには、本発明の光学フィルムの遅相軸の方向は、上記「実質的に45°」方向であることが好ましい。
また、本発明の光学フィルムは、斜め方向に延伸されていることから、23℃・55%RH下で測定したフィルム面内の弾性率の最大値の方向Aが長手方向に対して傾斜しており、当該最大値の方向Aの弾性率Eとそれに対して直交する方向Bの弾性率Eとの比の値が、1.4≦E/Eである特徴を有する。
当該弾性率の比の値(E/E)は、1.4以上であることが好ましく、1.4〜3.0の範囲内であることが、斜め延伸にかかるフィルムへの負荷と、弾性率を高くし強度の高いエンボス部を形成する本発明の目的とを両立する観点からより好ましく、1.6〜2.5の範囲内であることがさらに好ましい。
当該光学フィルムの弾性率の測定は、温度23℃、相対湿度55%RHの環境下で試料を24時間調湿し、JIS K7127に記載の方法に準じて、引っ張り試験器オリエンテック(株)製テンシロンRTA−100を使用して弾性率を求める。試験片の形状は1号形試験片で、試験速度は10mm/分の条件で、任意方向に対し0°から15°毎の方向に測定し、求めた弾性率のうち最大値のものを最大弾性率E及びその方向を最大値の方向Aとし、更にその方向Aに直交する方向Bの弾性率Eを求め、その比の値(E/E)を計算する。
本発明の光学フィルムは、上記位相差を付与するために、フィルム長手方向に対して斜め延伸されていることから、弾性率の最大値の方向Aは長手方向に対して傾斜しており、その傾斜角度は、フィルム長手方向に対して30〜60°方向の範囲内にあることが好ましく、上記リターデーションと同様に、「実質的に45°」方向であることが特に好ましい。「実質的に45°」とは40〜50°の範囲であることを意味する。角度は、41〜49°の範囲であることが好ましく、42〜48°の範囲であることがより好ましく、43〜47°の範囲であることが更に好ましく、44〜46°の範囲であることが最も好ましい。
本発明の光学フィルムの最大弾性率は、2.0GPa以上であることが好ましく、3.0〜8.0GPaの範囲が好ましく、3.5〜7.0GPaの範囲であることが、強度の高いエンボス部を形成し、巻き形状の安定化を達成する上でより好ましい。
本発明の光学フィルムの膜厚は、より薄膜の偏光板及び表示装置の需要が高まっていることから、15〜50μmの範囲内であり、20〜40μmの範囲内であることがより好ましい。この範囲内であれば、薄膜軽量であってかつ巻き形状の安定な光学フィルムのロール体を得ることができる。
本発明の光学フィルムのロール体における巻長は、生産性を考慮すると、1500〜8000mの範囲内であることが好ましく、より好ましくは2000〜6000mの範囲内である。本発明によれば、光学フィルムの幅手方向の両端部に、強度の高いエンボス部を有する。そのため、巻長が大きい光学フィルムのロール体においても、巻芯近傍の光学フィルムのエンボス部の凸部が、積層される光学フィルムの自重によっても、つぶされにくくい。
本発明のロール体における巻芯の径は、100〜250mm程度としうる。本発明の光学フィルムのロール体における、光学フィルムの幅は、1.2〜4m程度であり、好ましくは1.2〜2.5m程度である。
<光学フィルムの組成について>
本発明の光学フィルムは、セルロースエステルを含有し、更に光学特性及び物性向上のために添加剤を含有することが好ましい。
〈セルロースエステル〉
本発明の光学フィルムは、セルロースエステルを主成分として含有する。主成分とは、当該光学フィルム中のセルロースエステルの含有比率が55質量%以上、好ましくは70質量%以上であることをいう。
本発明に係るセルロースエステルは、炭素原子数が2〜4の範囲内であるアシル基を有することが好ましい。炭素原子数が2〜4の範囲内であるアシル基としては、アセチル基、プロピオニル基、及びブタノイル基を挙げることができる。
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位及び6位に遊離のヒドロキシ基を有している。セルロースエステルは、これらのヒドロキシ基の一部又は全部をアシル基によりアシル化した重合体(ポリマー)である。アシル基総置換度は、グルコース単位一つあたり、2位、3位及び6位に位置するセルロースのヒドロキシ基の全てがアシル化している割合(100%のアシル化は置換度3)を意味する。
好ましいアシル基の例としては、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ヘプタノイル基、ヘキサノイル基、オクタノイル基、デカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、イソブタノイル基、tert−ブタノイル基、シクロヘキサンカルボニル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などを挙げることができる。これらの中でも、アセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基、ドデカノイル基、オクタデカノイル基、tert−ブタノイル基、オレオイル基、ベンゾイル基、ナフチルカルボニル基、シンナモイル基などがより好ましく、特に好ましくはアセチル基、プロピオニル基、ブタノイル基(アシル基が炭素原子数2〜4である場合)である。
具体的なセルロースエステルとしては、セルロース(ジ、トリ)アセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースアセテートフタレート、セルロースアセテートベンゾエート及びセルロースフタレートから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
これらの中でより好ましいセルロースエステルは、セルロース(ジ、トリ)アセテート、セルロースプロピオネート、セルロースブチレート、セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートである。
セルローストリアセテートは、平均酢化度(結合酢酸量)54.0〜62.5%のものが好ましく用いられ、更に好ましいのは、平均酢化度が58.0〜62.5%のセルローストリアセテートである。
セルロースジアセテートは、平均酢化度(結合酢酸量)51.0〜56.0%が好ましく用いられる。市販品としては、(株)ダイセル製のL20、L30、L40、L50、イーストマンケミカルジャパン(株)製のCa398−3、Ca398−6、Ca398−10、Ca398−30、Ca394−60Sが挙げられる。
セルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートは、炭素原子数2〜4のアシル基を置換基として有し、アセチル基の置換度をXとし、プロピオニル基又はブチリル基の置換度をYとした時、下記式(I)及び(II)を同時に満たすものが好ましい。
式(I) 2.0≦X+Y≦2.95
式(II) 0≦X≦2.5
中でも1.9≦X≦2.5、0.1≦Y≦0.9であることが好ましい。
上記アシル基の置換度の測定方法は、ASTM−D817−96に準じて測定することができる。
セルロースエステルの重量平均分子量Mwは、弾性率を制御する観点から、80000〜300000の範囲内であることが好ましく、120000〜250000の範囲内であることがより好ましい。上記範囲内であると製膜時に延伸による弾性率の制御が行いやすく、フィルムの巻き形状の安定化や添加剤の耐染みだし性が向上する。
セルロースエステルの数平均分子量(Mn)は30000〜150000の範囲が、得られた光学フィルムの機械的強度が高く好ましい。さらに40000〜100000の数平均分子量のセルロースエステルが好ましく用いられる。
セルロースエステルの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)の値は、1.4〜3.0の範囲であることが好ましい。
セルロースエステルの重量平均分子量Mw、数平均分子量Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した。
測定条件は以下のとおりである。
溶媒: メチレンクロライド
カラム: Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製を3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度: 0.1質量%
検出器: RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ: L6000(日立製作所(株)製)
流量: 1.0ml/min
校正曲線: 標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)Mw=1000000〜500の13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
本発明で用いられるセルロースエステルの原料セルロースは、木材パルプでも綿花リンターでもよく、木材パルプは針葉樹でも広葉樹でもよいが、針葉樹の方がより好ましい。製膜の際の剥離性の点からは綿花リンターが好ましく用いられる。これらから作られたセルロースエステルは適宜混合して、あるいは単独で使用することができる。
例えば、綿花リンター由来セルロースエステル:木材パルプ(針葉樹)由来セルロースエステル:木材パルプ(広葉樹)由来セルロースエステルの比率が100:0:0、90:10:0、85:15:0、50:50:0、20:80:0、10:90:0、0:100:0、0:0:100、80:10:10、85:0:15、40:30:30で用いることができる。
本発明に係るセルロースエステルは、公知の方法により製造することができる。一般的には、原料のセルロースと所定の有機酸(酢酸、プロピオン酸など)と酸無水物(無水酢酸、無水プロピオン酸など)、触媒(硫酸など)と混合して、セルロースをエステル化し、セルロースのトリエステルができるまで反応を進める。トリエステルにおいてはグルコース単位の三個のヒドロキシ基は、有機酸のアシル酸で置換されている。同時に二種類の有機酸を使用すると、混合エステル型のセルロースエステル、例えばセルロースアセテートプロピオネートやセルロースアセテートブチレートを作製することができる。次いで、セルロースのトリエステルを加水分解することで、所望のアシル置換度を有するセルロースエステルを合成する。その後、濾過、沈殿、水洗、脱水、乾燥などの工程を経て、セルロースエステルができあがる。
本発明に係るセルロースエステルは、20mlの純水(電気伝導度0.1μS/cm以下、pH6.8)に1g投入し、25℃、1hr、窒素雰囲気下にて攪拌したときのpHが6〜7の範囲であり、電気伝導度が1〜100μS/cmの範囲であることが好ましい。
本発明に係るセルロースエステルは、具体的には特開平10−45804号公報に記載の方法を参考にして合成することができる。
〈添加剤〉
本発明の光学フィルムに含まれる添加剤の例には、可塑剤、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、リターデーション調整剤、帯電防止剤、及び剥離剤などが含まれ、好ましくは可塑剤である。
(リターデーション調整剤)
本発明の光学フィルムに含まれる添加剤として、下記一般式(A)で表される構造を有する化合物を用いることがリターデーションの調整の観点から好ましい。当該化合物は、1つの化合物で位相差上昇剤と波長分散調整剤の両方の機能を併せ持つ特徴を有していることから、斜め延伸適性が高く、かつセルロースエステルと組み合わせたときの吸湿による耐染みだし性にも優れていることから、ロール体の保管中及び輸送後の光学特性の均一性に優れた効果を有する。
Figure 0006229664
一般式(A)中のQは、芳香族炭化水素環、非芳香族炭化水素環、芳香族複素環又は非芳香族複素環を表す。
芳香族炭化水素環は、単環であっても縮合環であってもよいが、好ましくは単環である。芳香族炭化水素環の好ましい例には、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、フェナントレン環、ペリレン環、テトラセン環、ピレン環、ベンゾピレン環、クリセン環、トリフェニレン環、アセナフテン環、フルオランテン環、フルオレン環等が含まれ、好ましくはベンゼン環である。
非芳香族炭化水素環は、単環であっても縮合環であってもよいが、好ましくは単環である。非芳香族炭化水素環の好ましい例には、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘプタン環、シクロオクタン環、ノルボルネン環等が含まれ、好ましくはシクロヘキサン環又はシクロペンタン環である。
芳香族複素環は、単環であっても縮合環であってもよく、好ましくは単環である。芳香族複素環の好ましい例には、フラン環、ベンゾフラン環、チオフェン環、ベンゾチオフェン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、オキサジアゾール環、インドール環、カルバゾール環、トリアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリダジン環、ピリミジン環、トリアジン環、キノリン環、ペリミジン環、キナゾリン環、アズレン環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、ジベンゾカルバゾール環、ベンゾジフラン環、ベンゾジチオフェン環、フェナントロリン環、ベンゾチアゾール環、ベンゾオキサゾール環等が含まれ、好ましくはピリジン環、ベンゾチアゾール環又はベンゾオキサゾール環である。
非芳香族複素環は、単環であっても縮合環であってもよく、好ましくは単環である。非芳香族複素環の好ましい例には、テトラヒドロフラン環、テトラヒドロピラン環、ジオキソラン環、ジオキサン環、ピロリジン環、ピリドン環、ピリダジノン環、イミド環、ピペリジン環、ジヒドロピロール環、ジヒドロピリジン環、テトラヒドロピリジン環、ピペラジン環、モルホリン環、ピペリジン環等が含まれ、好ましくはピリドン環、イミド環又はピロリジン環である。
一般式(A)のWa及びWbは、それぞれ独立に、Qの環を構成する原子に結合する水素原子又は置換基であり、WaとWbとは互いに同じでも異なっていてもよく、WaとWbは互いに結合して環を形成してもよい。
好ましくは、WaとWbが互いに結合して環を形成しているか、又はWaとWbの少なくとも一方が環構造を有している。
Wa及びWbが表す置換基として、下記の例が挙げられる。
ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基等)、アルケニル基(ビニル基、アリル基等)、シクロアルケニル基(2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル基等)、アルキニル基(エチニル基、プロパルギル基等)、アリール基(フェニル基、p−トリル基、ナフチル基等)、ヘテロアリール基(2−ピロール基、2−フリル基、2−チエニル基、ピロール基、イミダゾリル基、オキサゾリル基、チアゾリル基、ベンゾイミダゾリル基、ベンゾオキサゾリル基、2−ベンゾチアゾリル基、ピラゾリノン基、ピリジル基、ピリジノン基、2−ピリミジニル基等)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基等)、アシル基(アセチル基、ピバロイルベンゾイル基等)、アシルオキシ基(ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基等)、アミノ基(アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基等)、アシルアミノ基(ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基等)、メルカプト基、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基等)、アリールチオ基(フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基等)、スルファモイル基(N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N′フェニルカルバモイル)スルファモイル基等)、スルホ基、カルバモイル基(カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基等)。
一般式(A)のRは、水素原子又は置換基を表す。置換基として特に制限は無く、下記の例が挙げられる。
ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等)、アルケニル基(ビニル基、アリル基等)、アルキニル基(エチニル基、プロパルギル基等)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基等)、アシルオキシ基(ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基等)、アルコキシカルボニル基(メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基等)、アリールオキシカルボニル基(フェノキシカルボニル基等)、アミノ基(アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基等)、アシルアミノ基(ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基等)、アルキルスルホニルアミノ基(メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基等)、メルカプト基、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基等)、スルファモイル基(N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基等)、スルホ基、アシル基(アセチル基等)、カルバモイル基(カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基等)、アリール基(フェニル基、p−トリル基、ナフチル基等)、ヘテロアリール基(2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基、2−ピリジル基等)等。
なかでも、Rは、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20)、アルケニル基(好ましくは炭素数3〜20)、アリール基(好ましくは炭素数6〜20)、ヘテロアリール基(好ましくは炭素数4〜20)、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜20)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜20)、アシル基、アシルオキシ基、シアノ基又はアミノ基が好ましく、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、シアノ基又はアルコキシ基がより好ましい。これらの置換基は、同様の置換基をさらに有していてもよい。
一般式(A)のmは、0〜2の整数を表し、好ましくは0である。mが2の場合、2つのRは互いに同じでも異なっていてもよい。
一般式(A)のnは、1〜10の整数を表し、好ましくは1である。nが2以上である場合、2以上のQ、L、Wa、Wb、R及びmのそれぞれは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
一般式(A)のL及びLは、それぞれ独立に、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、O、(C=O)、(C=O)−O、NR、S、(O=S=O)及び(C=O)−NRからなる群より選ばれる2価の連結基であるか、それらの組合せか又は単結合を表し、好ましくはO、(C=O)−O、O−(C=O)、(C=O)−NH又はNH−(C=O)である。
は、水素原子又は置換基を表す。Rで表される置換基の例には、アルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基等)、アリール基(フェニル基、p−トリル基、ナフチル基等)、ヘテロアリール基(2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基、2−ピリジル基等)、シアノ基等が含まれる。
一般式(A)のR及びRは、それぞれ独立に、置換基を表す。R及びRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。
及びRで表される置換基として、以下の例が挙げられる。
ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基等)、アルケニル基(ビニル基、アリル基等)、シクロアルケニル基(2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル基等)、アルキニル基(エチニル基、プロパルギル基等)、アリール基(フェニル基、p−トリル基、ナフチル基等)、ヘテロアリール基(2−フリル基、2−チエニル基、2−ピリミジニル基、2−ベンゾチアゾリル基、2−ピリジル基等)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基(メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基、tert−ブトキシ基、n−オクチルオキシ基、2−メトキシエトキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、2−メチルフェノキシ基、4−tert−ブチルフェノキシ基、3−ニトロフェノキシ基、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ基等)、アシルオキシ基(ホルミルオキシ基、アセチルオキシ基、ピバロイルオキシ基、ステアロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ基等)、アミノ基(アミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、アニリノ基、N−メチル−アニリノ基、ジフェニルアミノ基等)、アシルアミノ基(ホルミルアミノ基、アセチルアミノ基、ピバロイルアミノ基、ラウロイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基等)、アルキル及びアリールスルホニルアミノ基(メチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ基、p−メチルフェニルスルホニルアミノ基等)、メルカプト基、アルキルチオ基(メチルチオ基、エチルチオ基、n−ヘキサデシルチオ基等)、アリールチオ基(フェニルチオ基、p−クロロフェニルチオ基、m−メトキシフェニルチオ基等)、スルファモイル基(N−エチルスルファモイル基、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル基、N,N−ジメチルスルファモイル基、N−アセチルスルファモイル基、N−ベンゾイルスルファモイル基、N−(N’フェニルカルバモイル)スルファモイル基等)、スルホ基、アシル基(アセチル基、ピバロイルベンゾイル基等)、カルバモイル基(カルバモイル基、N−メチルカルバモイル基、N,N−ジメチルカルバモイル基、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル基、N−(メチルスルホニル)カルバモイル基等)等。
なかでも、R及びRは、アルキル基(好ましくは炭素数1〜20のアルキル基)、シクロアルキル基(好ましくは炭素数3〜20のシクロアルキル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜20のアリール基)、ヘテロアリール基(好ましくは炭素数4〜20のアリール基)であることが好ましく、アリール基又はシクロアルキル基であることがより好ましい。アリール基は、好ましくは置換又は無置換のフェニル基であり、より好ましくは置換基を有するフェニル基であり、さらに好ましくは4位に置換基を有するフェニル基である。シクロアルキル基は、好ましくは置換又は無置換のシクロヘキシル基であり、より好ましくは置換基を有するシクロヘキシル基であり、さらに好ましくは4位に置換基を有するシクロヘキシル基である。
及びRが表す置換基は、同様の置換基をさらに有していてもよい。
一般式(A)で表される構造を有する化合物は、好ましくは下記一般式(B)で表される構造を有する化合物である。
Figure 0006229664
一般式(B)のWa、Wb、R、m、L、L、R、R及びRは、一般式(A)におけるWa、Wb、R、m、L、L、R、R及びRとそれぞれ同様に定義される。
一般式(B)で表される構造を有する化合物は、下記一般式(C)で表される構造を有する化合物であることが好ましい。
Figure 0006229664
一般式(C)のWa、Wb、R、m、L、L、R、R及びRは、一般式(A)におけるWa、Wb、R、m、L、L、R、R及びRとそれぞれ同様に定義される。
一般式(C)のWaとWbが、互いに結合して環を形成する場合、形成された環は、好ましくは含窒素複素環である。そのような一般式(C)で表される構造を有する化合物の例には、以下の化合物(C1)〜(C6)が含まれる。
Figure 0006229664
〜Riiiは、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を表す。
例えば、上記化合物(C1)において、一般式(A)におけるQはベンゼン環であり、Waはベンゼン環に結合する酸素原子を含む基であり、Wbはベンゼン環に結合する窒素原子を含む基である。
一方、下記化合物(A0)において、一般式(A)におけるQに該当する環はナフタレン環である。
Figure 0006229664
以下に、一般式(A)、一般式(B)又は一般式(C)で表される構造を有する化合物の具体例を示すが、本発明で用いることができる化合物は、以下の例示化合物(A1)〜(A60)によって何ら限定されない。
Figure 0006229664
Figure 0006229664
Figure 0006229664
Figure 0006229664
Figure 0006229664
Figure 0006229664
Figure 0006229664
Figure 0006229664
Figure 0006229664
Figure 0006229664
Figure 0006229664
Figure 0006229664
Figure 0006229664
Figure 0006229664
Figure 0006229664
Figure 0006229664
Figure 0006229664
Figure 0006229664
Figure 0006229664
Figure 0006229664
上記本発明の化合物例において、幾何異性体(トランス体とシス体)が存在する場合については、いずれの異性体でもよいが、トランス体の方がシス体よりも高い位相差発現性を付与でき、好ましい。
一般式(A)、一般式(B)又は一般式(C)で表される構造を有する化合物は、公知の方法で合成することができる。例えば、上記例示化合物A5であれば、特開2008−107767号公報等を参照し、次のようにして合成することができる。
Figure 0006229664
2,5−ジヒドロキシ安息香酸3gをトルエン30mLに溶解し、塩化チオニル4.2mLを滴下して、2時間撹拌する。トルエン及び塩化チオニルを減圧下で留去した後、トルエン20mLを添加し、o−アミノチオフェノール2.4gのトルエン(5mL)溶液を滴下する。室温で12時間撹拌し、水及び酢酸エチルを添加して抽出を行う。得られた有機層から溶媒を減圧留去し、上記化合物(m)3.5gを得る。収率は75%である。
上記化合物(n)7.0gにテトラヒドロフラン45mLを加え、氷水冷浴で冷却する。これに、化合物(m)3.5gのテトラヒドロフラン(5mL)溶液とジメチルアミノピリジン2mgのテトラヒドロフラン(1mL)溶液とを順次滴下する。室温で3時間撹拌した後、水及び酢酸エチルを加えて、抽出を行う。有機層から溶媒を減圧留去し、得られた粗結晶をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/ヘプタン)で精製し、例示化合物A30を得る。収量は5.5gであり、収率は70%である。
本発明に用いられる一般式(A)で表される構造を有する化合物の含有量は、光学フィルムに求められる位相差発現性を付与し得る程度に、適宜設定される。具体的には、本発明に用いられる化合物の含有量は、セルロースエステルに対して1〜10質量%の範囲内であることが好ましく、2〜8質量%の範囲内であることがより好ましい。
化合物の含有量が1質量%以上であれば、光学フィルムに十分な位相差発現性を付与することができ、10質量%以下であれば、光学フィルムの耐染みだし性に優れる。
本発明に用いられる化合物に、他の位相差調整剤を組み合わせることもできる。
上記一般式(A)で表される構造を有する化合物と同様な効果を発現する化合物として、ピロール環、ピラゾール環、トリアゾール環、又はイミダゾール環を有する含窒素複素環化合物を用いることも好ましく、下記一般式(1)で表される構造を有する含窒素複素環化合物のうち、上記特定環構造を有する含窒素複素環化合物であることが好ましい。
当該含窒素複素環化合物は、セルロースエステルとのCH/π相互作用によって、セルロースエステルの水素結合性を制御し、1つの化合物で位相差上昇剤と波長分散調整剤の両方の機能を併せ持つ特徴を有しており、かつセルロースエステルと組み合わせたときの吸湿による耐染みだし性にも優れており、5000m以上の長尺ロール体を製造する際の巻き形状の乱れを抑制する効果が高い。特にロール体を固く巻くと貼り付き故障等が生じやすくなるために、比較的ゆるく巻く(ゆる巻きともいう。)際に巻き形状の乱れを抑制できる効果が高い。例えば、1,3,5−トリアジン系位相差上昇剤などは、CH/π相互作用が弱いために、耐染みだし性にやや劣り、ロール体の表面に滲みだした添加剤がフィルムの滑りを誘発し、ロール体の巻き形状の乱れを生じることがある。
CH/π相互作用とは、セルロースエステルのような水素結合供与性部位(例えば、ヒドロキシ基の水素原子)や水素結合受容性部位(例えば、エステル基のカルボニル酸素原子)と添加剤の相溶性に関わるものであり、樹脂の主鎖又は側鎖に存在する水素結合性部位と、添加剤の芳香族化合物のπ電子との間の結合相互作用である。このCH/π相互作用によって、上記耐染みだし性に優れるものである。
樹脂の水素結合性部位(セルロースエステルのCH)と添加剤のπを用いてCH/π相互作用を形成する場合、当然、添加剤のπ性は強い方がよい。このπ性の強さを端的に表す例としてNICS(nucleus−independent chemical shift)値という指標がある。
このNICS値は、磁気的性質による芳香族性の定量化に用いられる指標であり、環が芳香族であれば、その環電流効果によって環の中心が強く遮蔽化され、反芳香族なら逆に反遮蔽化される(J.Am.Chem.Soc.1996、118、6317)。NICS値の大小により、環電流の強さ、つまり環の芳香族性へのπ電子の寄与度を判断することができる。具体的には、環内部中心に直接配置した仮想リチウムイオンの化学シフト(計算値)を表し、この値が負に大きいほどπ性が強い。
NICS値の測定値に関していくつか報告されている。例えば、Canadian Journal of Chemistry.,2004,82,50−69(文献A)やThe Journal of Organic Chemistry.,2000,67,1333−1338(文献B)に測定値が報告されている。
具体的には、ベンゼン環(−7.98)やナフタレン環(−8.11)のような芳香族炭化水素よりも、ピロール環(−14.87)、チオフェン環(−14.09)フラン環(−12.42)、ピラゾール環(−13.82)、又はイミダゾール環(−13.28)などの5員の芳香族複素環、トリアゾール環(−13.18)、オキサジアゾール環(−12.44)又はチアゾール環(−12.82)などの6員の芳香族炭化水素環の方が、NICS値が大きくなり、このような芳香族5員環、又は芳香族6員環を有する化合物を用いることで、CH/π相互作用を強めることができるものと予測される(括弧内はNICS値を示す。)。
Figure 0006229664
前記一般式(1)において、A、A及びBは、それぞれ独立に、アルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、2−エチヘキシル基等)、シクロアルキル基(シクロヘキシル基、シクロペンチル基、4−n−ドデシルシクロヘキシル基等)、芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を表す。この中で、芳香族炭化水素環又は芳香族複素環が好ましく、特に、5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環であることが好ましい。
5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環の構造に制限はないが、例えば、ベンゼン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、1,2,3−トリアゾール環、1,2,4−トリアゾール環、テトラゾール環、フラン環、オキサゾール環、イソオキサゾール環、オキサジアゾール環、イソオキサジアゾール環、チオフェン環、チアゾール環、イソチアゾール環、チアジアゾール環、イソチアジアゾール環等が挙げられる。
、A及びBで表される5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環は、アルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等)、芳香族炭化水素環基(フェニル基、p−トリル基、ナフチル基等)などの置換基を有していてもよい。
前記一般式(1)において、A、A及びBは、ベンゼン環、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、1,2,3−トリアゾール環又は1,2,4−トリアゾール環を表すことが、光学特性の変動効果に優れ、かつ耐久性に優れた位相差フィルムが得られるために好ましい。
前記一般式(1)において、T及びTは、それぞれ独立に、ピロール環、ピラゾール環、イミダゾール環、1,2,3−トリアゾール環又は1,2,4−トリアゾール環を表す。これらの中で、ピラゾール環、トリアゾール環又はイミダゾール環であることが、湿度変動に対するリターデーションの変動抑制効果にも優れ、かつ耐久性に優れた樹脂組成物が得られるために好ましく、ピラゾール環であることが特に好ましい。T及びT2で表されるピラゾール環、1,2,3−トリアゾール環又は1,2,4−トリアゾール環、イミダゾール環は、互変異性体であってもよい。
さらに、当該含窒素複素環化合物は、下記一般式(2)で表される構造を有する化合物であることが特に好ましい。
Figure 0006229664

(式中Aはピラゾール環を表し、Ar及びArはそれぞれ芳香族炭化水素環又は芳香族複素環を表し、置換基を有してもよい。Rは水素原子、アルキル基、アシル基、スルホニル基、アルキルオキシカルボニル基、又はアリールオキシカルボニル基を表し、qは1〜2の整数を表し、n及びmは1〜3の整数を表す。)
Ar及びArで表される芳香族炭化水素環又は芳香族複素環は、それぞれ一般式(1)で挙げた5員若しくは6員の芳香族炭化水素環又は芳香族複素環であることが好ましい。また、Ar及びArの置換基としては、前記一般式(1)で表される構造を有する化合物で示したのと同様な置換基が挙げられる。
の具体例としては、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子等)、アルキル基(メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、2−エチルヘキシル基等)、アシル基(アセチル基、ピバロイルベンゾイル基等)、スルホニル基(例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基等)、アルキルオキシカルボニル基(例えば、メトキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(例えば、フェノキシカルボニル基等)等が挙げられる。
qは1〜2の整数を表し、n及びmは1〜3の整数を表す。
前記一般式(1)又は(2)で表される構造を有する化合物の分子量は特に制限はないが、小さいほど樹脂との相溶性に優れ、大きいほど環境湿度の変化に対する光学値の変動抑制効果が高いため、150〜2000であることが好ましく、200〜1500であることがより好ましく、300〜1000であることがより好ましい。
前記一般式(1)又は(2)で表される構造を有する化合物は、適宜量を調整して光学フィルムに含有することができるが、添加量としては光学フィルム中に、0.1〜10質量%含むことが好ましく、特に、1〜5質量%含むことが好ましく、2〜5質量%含むことが特に好ましい。添加量はセルロースエステルの種類、当該化合物の種類によって異なるものであるが、本発明の光学フィルムの所望のリターデーション値によって添加量の最適値を決定することができる。
〈可塑剤〉
可塑剤の例には、ポリエステル(本願では、重縮合エステルともいう。)、多価アルコールエステル、多価カルボン酸エステル(フタル酸エステルを含む)、グリコレート化合物、及び脂肪酸エステルやリン酸エステルなどが含まれる。これらは、単独で用いても、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
本発明の光学フィルムに好ましい可塑剤は、ジカルボン酸とジオールを反応させて得られる繰り返し単位を含む重縮合エステルである。
当該重縮合エステルを構成するジカルボン酸は、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸又は脂環式ジカルボン酸であり、好ましくは芳香族ジカルボン酸である。ジカルボン酸は、一種類であっても、二種類以上の混合物であってもよい。
当該重縮合エステルを構成するジオールは、芳香族ジオール、脂肪族ジオール又は脂環式ジオールであり、好ましくは脂肪族ジオールであり、より好ましくは炭素数1〜4のジオールである。ジオールは、一種類であっても、二種類以上の混合物であってもよい。
なかでも、当該重縮合エステルは、少なくとも芳香族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、炭素数1〜4のジオールとを反応させて得られる繰り返し単位を含むことが好ましく、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジカルボン酸とを含むジカルボン酸と、炭素数1〜4のジオールとを反応させて得られる繰り返し単位を含むことがより好ましい。
当該重縮合エステルの分子の両末端は、封止されていても、封止されていなくてもよいが、フィルムの透湿性を低減する観点からは、封止されていることが好ましい。
当該重縮合エステルは、下記一般式(I)又は(II)で表される構造を有する化合物であることが好ましい。下記式において、nは1以上の整数である。
一般式(I)
B−(G−A)−G−B
一般式(II)
C−(A−G)−A−C
一般式(I)及び(II)のAは、炭素原子数3〜20(好ましくは4〜12)のアルキレンジカルボン酸から誘導される2価の基、炭素原子数4〜20(好ましくは4〜12)のアルケニレンジカルボン酸から誘導される2価の基、又は炭素原子数8〜20(好ましくは8〜12)のアリールジカルボン酸から誘導される2価の基を表す。
Aにおける炭素原子数3〜20のアルキレンジカルボン酸から誘導される2価の基の例には、1,2−エタンジカルボン酸(コハク酸)、1,3−プロパンジカルボン酸(グルタル酸)、1,4−ブタンジカルボン酸(アジピン酸)、1,5−ペンタンジカルボン酸(ピメリン酸)、1,8−オクタンジカルボン酸(セバシン酸)などから誘導される2価の基が含まれる。Aにおける炭素原子数4〜20のアルケニレンジカルボン酸から誘導される2価の基の例には、マレイン酸、フマル酸などから誘導される2価の基が含まれる。Aにおける炭素原子数8〜20のアリールジカルボン酸から誘導される2価の基の例には、1,2−ベンゼンジカルボン酸(フタル酸)、1,3−ベンゼンジカルボン酸、1,4−ベンゼンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸などのナフタレンジカルボン酸などから誘導される2価の基が含まれる。
Aは、一種類であっても、二種類以上が組み合わされてもよい。なかでも、Aは、炭素原子数4〜12のアルキレンジカルボン酸と炭素原子数8〜12のアリールジカルボン酸との組み合わせが好ましい。
一般式(I)及び(II)のGは、炭素原子数2〜20(好ましくは2〜12)のアルキレングリコールから誘導される2価の基、炭素原子数6〜20(好ましくは6〜12)のアリールグリコールから誘導される2価の基、又は炭素原子数4〜20(好ましくは4〜12)のオキシアルキレングリコールから誘導される2価の基を表す。
Gにおける炭素原子数2〜20のアルキレングリコールから誘導される2価の基の例には、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,2−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールペンタン)、2−n−ブチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール(3,3−ジメチロールヘプタン)、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、及び1,12−オクタデカンジオール等から誘導される2価の基が含まれる。
Gにおける炭素原子数6〜20のアリールグリコールから誘導される2価の基の例には、1,2−ジヒドロキシベンゼン(カテコール)、1,3−ジヒドロキシベンゼン(レゾルシノール)、1,4−ジヒドロキシベンゼン(ヒドロキノン)などから誘導される2価の基が含まれる。Gにおける炭素原子数が4〜12のオキシアルキレングリコールから誘導される2価の基の例には、ジエチレングルコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコールなどから誘導される2価の基が含まれる。
Gは、一種類であっても、二種類以上が組み合わされてもよい。なかでも、Gは、炭素原子数2〜12のアルキレングリコールであることが好ましい。
一般式(I)のBは、芳香環含有モノカルボン酸又は脂肪族モノカルボン酸から誘導される1価の基である。
芳香環含有モノカルボン酸から誘導される1価の基における芳香環含有モノカルボン酸は、分子内に芳香環を含有するカルボン酸であり、芳香環がカルボキシ基と直接結合したものだけでなく、芳香環がアルキレン基などを介してカルボキシ基と結合したものも含む。芳香環含有モノカルボン酸から誘導される1価の基の例には、安息香酸、パラターシャリブチル安息香酸、オルソトルイル酸、メタトルイル酸、パラトルイル酸、ジメチル安息香酸、エチル安息香酸、ノルマルプロピル安息香酸、アミノ安息香酸、アセトキシ安息香酸、フェニル酢酸、3−フェニルプロピオン酸などから誘導される1価の基が含まれる。
脂肪族モノカルボン酸から誘導される1価の基の例には、酢酸、プロピオン酸、ブタン酸、カプリル酸、カプロン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸、オレイン酸などから誘導される1価の基が含まれる。なかでも、アルキル部分の炭素原子数が1〜3であるアルキルモノカルボン酸から誘導される1価の基が好ましく、アセチル基(酢酸から誘導される1価の基)がより好ましい。
一般式(II)のCは、芳香環含有モノアルコール又は脂肪族モノアルコールから誘導される1価の基である。
芳香環含有モノアルコールは、分子内に芳香環を含有するアルコールであり、芳香環がOH基と直接結合したものだけでなく、芳香環がアルキレン基などを介してOH基と結合したものも含む。芳香環含有モノアルコールから誘導される1価の基の例には、ベンジルアルコール、3−フェニルプロパノールなどから誘導される1価の基が含まれる。
脂肪族モノアルコールから誘導される1価の基の例には、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、ペンタノール、イソペンタノール、ヘキサノール、イソヘキサノール、シクロヘキシルアルコール、オクタノール、イソオクタノール、2−エチルヘキシルアルコール、ノニルアルコール、イソノニルアルコール、tert−ノニルアルコール、デカノール、ドデカノール、ドデカヘキサノール、ドデカオクタノール、アリルアルコール、オレイルアルコールなどから誘導される1価の基が含まれる。なかでも、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールなどの炭素原子数1〜3のアルコールから誘導される1価の基が好ましい。
当該重縮合エステルの重量平均分子量は、350〜3000の範囲であることが好ましく、400〜1500の範囲であることがより好ましい。重量平均分子量が上記範囲内であれば、本発明に係る重縮合エステルの光学フィルムからの耐染みだし性を満たし、目的の効果を得ることができる。重量平均分子量は前記ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定することができる。
当該重縮合エステルの具体例を、以下に示す。まず、「芳香族基」で両末端を封止した重縮合エステルの具体例を示す。
Figure 0006229664
Figure 0006229664
Figure 0006229664
Figure 0006229664
Figure 0006229664
次に、「脂肪族基」で両末端を封止した重縮合エステルの具体例を、以下に示す。
Figure 0006229664
P−1:アジピン酸/フタル酸/エタンジオール(1/1/2 モル比)からなる縮合物(重量平均分子量950)の両末端のアセチルエステル化体
P−2:コハク酸/フタル酸/エタンジオール/(1/1/2 モル比)からなる縮合物(重量平均分子量2500)の両末端のアセチルエステル化体
P−3:グルタル酸/イソフタル酸/1,3−プロパンジオール(1/1/2 モル比)からなる縮合物(重量平均分子量1300)の両末端のアセチルエステル化体
P−4: コハク酸/グルタル酸/アジピン酸/テレフタル酸/イソフタル酸/エタンジオール/1,2−プロパンジオール(1/1/1/1/1/3/2 モル比)からなる縮合物(数平均分子量3000)の両末端のプロピルエステル化体
P−5: コハク酸/フタル酸/エタンジオール/(1/1/2 モル比)からなる縮合物(重量平均分子量2100)の両末端のブチルエステル化体
P−6: アジピン酸/テレフタル酸/1,2−プロパンジオール(1/1/2 モル比)からなる縮合物(数平均分子量2500)の両末端の2−エチルヘキシルエステル化体
P−7: コハク酸/テレフタル酸/ポリ(平均重合度5)プロピレンエーテルグリコール/1,2−プロパンジオール(2/1/1/2モル比)からなる縮合物(重量平均分子量3500)の両末端の2−エチルヘキシルエステル化体
P−8:アジピン酸/フタル酸/1,2−プロパンジオール(3/1/3 モル比)からなる縮合物(重量平均分子量490)の両末端が安息香酸エステル化体
多価アルコールエステル化合物は、2価以上の脂肪族多価アルコールと、モノカルボン酸とのエステル化合物(アルコールエステル)であり、好ましくは2〜20価の脂肪族多価アルコールエステルである。多価アルコールエステル化合物は、分子内に芳香環又はシクロアルキル環を有することが好ましい。
脂肪族多価アルコールの好ましい例には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ジブチレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、トリメチロールエタン、キシリトール等が含まれる。なかでも、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ソルビトール、トリメチロールプロパン、キシリトールなどが好ましい。
モノカルボン酸は、特に制限はなく、脂肪族モノカルボン酸、脂環式モノカルボン酸又は芳香族モノカルボン酸等でありうる。フィルムの透湿性を高め、かつ揮発しにくくするためには、脂環式モノカルボン酸又は芳香族モノカルボン酸が好ましい。モノカルボン酸は、一種類であってもよいし、二種以上の混合物であってもよい。また、脂肪族多価アルコールに含まれるOH基の全部をエステル化してもよいし、一部をOH基のままで残してもよい。
脂肪族モノカルボン酸は、炭素数1〜32の直鎖又は側鎖を有する脂肪酸であることが好ましい。脂肪族モノカルボン酸の炭素数はより好ましくは1〜20であり、さらに好ましくは1〜10である。脂肪族モノカルボン酸の例には、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、2−エチル−ヘキサン酸、ウンデシル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、ペンタデシル酸、パルミチン酸、ヘプタデシル酸、ステアリン酸、ノナデカン酸、アラキン酸、ベヘン酸、リグノセリン酸、セロチン酸、ヘプタコサン酸、モンタン酸、メリシン酸、ラクセル酸等の飽和脂肪酸;ウンデシレン酸、オレイン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等の不飽和脂肪酸等が含まれる。なかでも、セルロースアセテートとの相溶性を高めるためには、酢酸、又は酢酸とその他のモノカルボン酸との混合物が好ましい。
脂環式モノカルボン酸の例には、シクロペンタンカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、シクロオクタンカルボン酸などが含まれる。
芳香族モノカルボン酸の例には、安息香酸;安息香酸のベンゼン環にアルキル基又はアルコキシ基(例えばメトキシ基やエトキシ基)を1〜3個を導入したもの(例えばトルイル酸など);ベンゼン環を2個以上有する芳香族モノカルボン酸(例えばビフェニルカルボン酸、ナフタリンカルボン酸、テトラリンカルボン酸など)が含まれ、好ましくは安息香酸である。
多価アルコールエステル化合物の具体例は、特開2006−113239号公報段落〔0058〕〜〔0061〕記載の化合物が挙げられる。
多価カルボン酸エステル化合物は、2価以上、好ましくは2〜20価の多価カルボン酸と、アルコール化合物とのエステル化合物である。多価カルボン酸は、2〜20価の脂肪族多価カルボン酸であるか、3〜20価の芳香族多価カルボン酸又は3〜20価の脂環式多価カルボン酸であることが好ましい。
多価カルボン酸の例には、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸のような3価以上の芳香族多価カルボン酸又はその誘導体、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、シュウ酸、フマル酸、マレイン酸、テトラヒドロフタル酸のような脂肪族多価カルボン酸、酒石酸、タルトロン酸、リンゴ酸、クエン酸のようなオキシ多価カルボン酸などが含まれ、フィルムからの揮発を抑制するためには、オキシ多価カルボン酸が好ましい。
アルコール化合物の例には、直鎖もしくは側鎖を有する脂肪族飽和アルコール化合物、直鎖もしくは側鎖を有する脂肪族不飽和アルコール化合物、脂環式アルコール化合物又は芳香族アルコール化合物などが含まれる。脂肪族飽和アルコール化合物又は脂肪族不飽和アルコール化合物の炭素数は、好ましくは1〜32であり、より好ましくは1〜20であり、さらに好ましくは1〜10である。脂環式アルコール化合物の例には、シクロペンタノール、シクロヘキサノールなどが含まれる。芳香族アルコール化合物の例には、ベンジルアルコール、シンナミルアルコールなどが含まれる。
多価カルボン酸エステル化合物の分子量は、特に制限はないが、300〜1000の範囲であることが好ましく、350〜750の範囲であることがより好ましい。多価カルボン酸エステル系可塑剤の分子量は、ブリードアウトを抑制する観点では、大きいほうが好ましく;透湿性やセルロースアセテートとの相溶性の観点では、小さいほうが好ましい。
多価カルボン酸エステル化合物の例には、トリエチルシトレート、トリブチルシトレート、アセチルトリエチルシトレート(ATEC)、アセチルトリブチルシトレート(ATBC)、ベンゾイルトリブチルシトレート、アセチルトリフェニルシトレート、アセチルトリベンジルシトレート、酒石酸ジブチル、酒石酸ジアセチルジブチル、トリメリット酸トリブチル、ピロメリット酸テトラブチル等が含まれる。
多価カルボン酸エステル化合物は、フタル酸エステル化合物であってもよい。フタル酸エステル化合物の例には、ジエチルフタレート、ジメトキシエチルフタレート、ジメチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジオクチルフタレート、ジシクロヘキシルフタレート、ジシクロヘキシルテレフタレート等が含まれる。
グリコレート化合物の例には、アルキルフタリルアルキルグリコレート類が含まれる。アルキルフタリルアルキルグリコレート類の例には、メチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルプロピルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート、オクチルフタリルオクチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、エチルフタリルメチルグリコレート、エチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルメチルグリコレート、ブチルフタリルエチルグリコレート、プロピルフタリルブチルグリコレート、ブチルフタリルプロピルグリコレート、メチルフタリルオクチルグリコレート、エチルフタリルオクチルグリコレート、オクチルフタリルメチルグリコレート、オクチルフタリルエチルグリコレート等が含まれ、好ましくはエチルフタリルエチルグリコレートである。
エステル化合物には、脂肪酸エステル化合物、クエン酸エステル化合物やリン酸エステル化合物などが含まれる。
脂肪酸エステル化合物の例には、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、及びセバシン酸ジブチル等が含まれる。クエン酸エステル化合物の例には、クエン酸アセチルトリメチル、クエン酸アセチルトリエチル、及びクエン酸アセチルトリブチル等が含まれる。リン酸エステル化合物の例には、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェート、トリオクチルホスフェート、及びトリブチルホスフェート等が含まれ、好ましくはトリフェニルホスフェートである。
なかでも、ポリエステル化合物、グリコレート化合物、リン酸エステル化合物が好ましく、ポリエステル化合物が特に好ましい。
可塑剤の含有量は、セルロースアセテートに対して好ましくは1〜20質量%の範囲であり、より好ましくは1.5〜15質量%の範囲である。可塑剤の含有量が上記範囲内であると、可塑性の付与効果が発現でき、光学フィルムからの可塑剤の耐染みだし性にも優れる。
〈紫外線吸収剤〉
本発明の光学フィルムは、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。紫外線吸収剤は400nm以下の紫外線を吸収することで、耐久性を向上させることを目的としており、特に波長370nmでの透過率が10%以下であることが好ましく、より好ましくは5%以下、更に好ましくは2%以下である。
本発明で好ましく用いられる紫外線吸収剤は、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤であり、特に好ましくはベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、である。
例えば、5−クロロ−2−(3,5−ジ−sec−ブチル−2−ヒドロキシルフェニル)−2H−ベンゾトリアゾール、(2−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、2−ヒドロキシ−4−ベンジルオキシベンゾフェノン、2,4−ベンジルオキシベンゾフェノン等があり、また、チヌビン109、チヌビン171、チヌビン234、チヌビン326、チヌビン327、チヌビン328等のチヌビン類があり、これらはいずれもBASFジャパン社製の市販品であり好ましく使用できる。
この他、1,3,5トリアジン環を有する化合物等の円盤状化合物も紫外線吸収剤として好ましく用いられる。
本発明の光学フィルムは紫外線吸収剤を二種以上含有することが好ましい。
また、紫外線吸収剤としては高分子紫外線吸収剤も好ましく用いることができ、特に特開平6−148430号記載のポリマータイプの紫外線吸収剤が好ましく用いられる。
紫外線吸収剤の添加方法は、メタノール、エタノール、ブタノール等のアルコールやメチレンクロライド、酢酸メチル、アセトン、ジオキソラン等の有機溶媒あるいはこれらの混合溶媒に紫外線吸収剤を溶解してからドープに添加するか、又は直接ドープ組成中に添加してもよい。
無機粉体のように有機溶剤に溶解しないものは、有機溶剤とセルロースエステル中にディゾルバーやサンドミルを使用し、分散してからドープに添加する。
紫外線吸収剤の使用量は、紫外線吸収剤の種類、使用条件等により一様ではないが、光学フィルムの乾燥膜厚が15〜50μmの場合は、光学フィルムに対して0.5〜10質量%の範囲が好ましく、0.6〜4質量%の範囲が更に好ましい。
〈酸化防止剤〉
酸化防止剤は劣化防止剤ともいわれる。高湿高温の状態に液晶画像表示装置などがおかれた場合には、光学フィルムの劣化が起こる場合がある。
酸化防止剤は、例えば、光学フィルム中の残留溶媒量のハロゲンやリン酸系可塑剤のリン酸等により光学フィルムが分解するのを遅らせたり、防いだりする役割を有するので、前記光学フィルム中に含有させるのが好ましい。
このような酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール系の化合物が好ましく用いられ、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、1,6−ヘキサンジオール−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、2,4−ビス−(n−オクチルチオ)−6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−1,3,5−トリアジン、2,2−チオ−ジエチレンビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、N,N′−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−イソシアヌレイト等を挙げることができる。
特に、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、ペンタエリスリチル−テトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕、トリエチレングリコール−ビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕が好ましい。また、例えば、N,N′−ビス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニル〕ヒドラジン等のヒドラジン系の金属不活性剤やトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)フォスファイト等のリン系加工安定剤を併用してもよい。
これらの化合物の添加量は、セルロースエステルに対して質量割合で1ppm〜1.0%の範囲が好ましく、10〜1000ppmの範囲が更に好ましい。
〈微粒子(マット剤)〉
光学フィルムは、表面の滑り性を高めるため、必要に応じて微粒子(マット剤)をさらに含有してもよい。
微粒子は、無機微粒子であっても有機微粒子であってもよい。無機微粒子の例には、二酸化珪素(シリカ)、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウムなどが含まれる。なかでも、二酸化珪素や酸化ジルコニウムが好ましく、得られるフィルムのヘイズの増大を少なくするためには、より好ましくは二酸化珪素である。
二酸化珪素の微粒子の例には、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600、NAX50(以上日本アエロジル(株)製)、シーホスターKE−P10、KE−P30、KE−P50、KE−P100(以上日本触媒(株)製)などが含まれる。なかでも、アエロジルR972V、NAX50、シーホスターKE−P30などが、得られるフィルムの濁度を低く保ちつつ、摩擦係数を低減させるため特に好ましい。
微粒子の一次粒子径は、5〜50nmの範囲であることが好ましく、7〜20nmの範囲であることがより好ましい。一次粒子径が大きいほうが、得られるフィルムの滑り性を高める効果は大きいが、透明性が低下しやすい。そのため、微粒子は、粒子径0.05〜0.3μmの範囲の二次凝集体として含有されていてもよい。微粒子の一次粒子又はその二次凝集体の大きさは、透過型電子顕微鏡にて倍率50万〜200万倍で一次粒子又は二次凝集体を観察し、一次粒子又は二次凝集体100個の粒子径の平均値として求めることができる。
微粒子の含有量は、低置換度成分を含むセルロースアセテート全体に対して0.05〜1.0質量%の範囲であることが好ましく、0.1〜0.8質量%の範囲であることがより好ましい。
<光学フィルムのロール体の製造方法>
本発明の光学フィルムのロール体の製造方法は、(1)セルロースエステルと、添加剤とを溶剤に溶解させてドープを調製する工程、(2)ドープを無端の金属支持体上に流延する工程、(3)流延したドープから溶媒を蒸発させてウェブを得る工程、(4)ウェブを金属支持体から剥離する工程、(5)ウェブを乾燥後、斜め延伸してフィルムを得る工程、(6)フィルムの幅手方向の両端部にエンボス加工を施す工程、(7)フィルムを巻き取る工程、を経て製造することができる。(5)の工程は幅手方向又は長手方向への延伸(予備延伸)を含む工程である。
また、本発明の光学フィルムのロール体の製造方法は、(1)セルロースエステルと、添加剤とを溶剤に溶解させてドープを調製する工程、(2)ドープを無端の金属支持体上に流延する工程、(3)流延したドープから溶媒を蒸発させてウェブを得る工程、(4)ウェブを金属支持体から剥離する工程、(5′)ウェブを乾燥する工程、(6)フィルムの幅手方向の両端部にエンボス加工を施す工程、(7)フィルムを巻き取る工程、その後(5)フィルムを繰り出して、斜め延伸する工程、(6′)フィルムの幅手方向両端部をトリミングして、両端部にエンボス加工を施す工程、(7′)フィルムを巻き取る工程、としてもよい。
(1)ドープを調製する工程
溶解釜において、セルロースエステルと、添加剤とを溶剤に溶解させてドープを調製する。
ドープに含まれる溶剤は、1種類でも2種以上を組み合わせたものでもよい。生産効率を高める観点では、セルロースエステルの良溶剤と貧溶剤を組み合わせて用いることが好ましい。良溶剤とは、セルロースエステルを単独で溶解する溶剤をいい、貧溶剤とは、セルロースエステルを膨潤させるか、又は単独では溶解しないものをいう。そのため、良溶剤及び貧溶剤は、セルロースエステルの平均アシル基置換度によって異なる。
良溶剤の例には、ジクロロメタン等の有機ハロゲン化合物、ジオキソラン類、アセトン、酢酸メチル、及びアセト酢酸メチルなどが含まれ、好ましくはジクロロメタン又は酢酸メチルなどである。
貧溶剤の例には、メタノール、エタノール、n−ブタノール、シクロヘキサン、及びシクロヘキサノン等が含まれる。ロール体を構成する光学フィルムにおける添加剤の染み出しを抑制するためには、メタノール又はエタノールが好ましい。
貧溶剤は、一種類でも、二種類以上の混合物であってもよい。貧溶剤が二種類以上の貧溶剤の混合物である場合、添加剤のSP値(溶解度パラメーター)との差の絶対値が大きい貧溶剤の含有割合が最も多いことが好ましい。
良溶剤と貧溶剤を組み合わせて用いる場合、セルロースエステルの溶解性を高めるためには、良溶剤が貧溶剤よりも多いことが好ましい。良溶剤と貧溶剤の混合比率は、良溶剤が70〜98質量%の範囲であり、貧溶剤が2〜30質量%の範囲であることが好ましい。
ドープにおけるセルロースエステルの濃度は、乾燥負荷を低減するためには高いほうが好ましいが、セルロースエステルの濃度が高すぎるとろ過しにくい。そのため、ドープにおけるセルロースエステルの濃度は、好ましくは10〜35質量%の範囲であり、より好ましくは15〜25質量%の範囲である。
セルロースエステルを溶剤に溶解させる方法は、例えば加熱及び加圧下で溶解させる方法、セルロースエステルに貧溶剤を加えて膨潤させた後、良溶剤をさらに加えて溶解させる方法、及び冷却溶解法などでありうる。
なかでも、常圧における沸点以上に加熱できることから、加熱及び加圧下で溶解させる方法が好ましい。具体的には、常圧下で溶剤の沸点以上であり、かつ加圧下で溶剤が沸騰しない範囲の温度に加熱しながら攪拌溶解すると、ゲルやママコと呼ばれる塊状未溶解物の発生を抑制できる。
加熱温度は、セルロースエステルの溶解性を高める観点では、高いほうが好ましいが、高過ぎると、圧力を高める必要があり、生産性が低下する。このため、加熱温度は、45〜120℃の範囲であることが好ましく、60〜110℃の範囲がより好ましく、70℃〜105℃であることがさらに好ましい。
得られるドープには、例えば原料であるセルロースエステルに含まれる不純物などの不溶物が含まれることがある。このような不溶物は、得られるフィルムにおいて輝点異物となりうる。このような不溶物等を除去するために、得られたドープをさらに濾過することが好ましい。
(2)ドープを無端状の金属支持体上に流延する工程
ドープを、加圧ダイのスリットから無端状の金属支持体(例えばステンレスベルトや回転する金属ドラムなど)上に流延させる。
ダイは、口金部分のスリット形状を調整でき、膜厚を均一に調整しやすい加圧ダイが好ましい。加圧ダイの例には、コートハンガーダイ、T−ダイなどが含まれる。金属支持体の表面は、鏡面加工されていることが好ましい。
流延は、複数のドープを調製して、支持体としての平滑なバンド上あるいはドラム上に前記複数のドープを流延して製膜することもできる。
この場合、2種以上のドープを同時に支持体上に流延してもよいし、別々に支持体上に流延してもよい。別々に流延する逐次流延法の場合は、支持体側のドープを先に流延して支持体上である程度乾燥させた後に、その上に重ねて流延することができる。また、3種以上のドープを使用する場合、同時流延(共流延ともいう。)と逐次流延を適宜組み合せて流延し、積層構造のフィルムを作製することもできる。共流延若しくは逐次流延によって製膜されるこれらの方法は、乾燥されたフィルム上に塗布する方法とは異なり、積層構造の各層の境界が不明確になり、断面の観察で積層構造が明確には分かれないことがあるという特徴があり、各層間の密着性を向上させる効果がある。
共流延としては、公知の共流延方法を用いることができる。例えば、金属支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させながらフィルムを作製してもよく、例えば特開昭61−158414号、特開平1−122419号、特開平11−198285号の各公報などに記載の方法が適応できる。また、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延することによってもフィルム化することでもよく、例えば特公昭60−27562号、特開昭61−94724号、特開昭61−947245号、特開昭61−104813号、特開昭61−158413号、特開平6−134933号の各公報に記載の方法で実施できる。
(3)流延したドープから溶媒を蒸発させてウェブを得る工程
ドープ膜を金属支持体上で加熱して溶剤を蒸発させて、ウェブを得る。
ドープ膜の乾燥は、40〜100℃の範囲の雰囲気下で行うことが好ましい。ドープ膜を40〜100℃の範囲の雰囲気下で乾燥させるためには、40〜100℃の範囲の温風をウェブ上面に当てたり、赤外線などで加熱したりすることが好ましい。
溶媒を蒸発させる方法としては、ドープ膜の表面に風を当てる方法、ベルトの裏面から液体により伝熱させる方法、輻射熱により表裏から伝熱する方法などがあるが、乾燥効率が高いことから、ベルトの裏面から液体により伝熱させる方法が好ましい。
得られるウェブの面品質や透湿性、剥離性などを高める観点から、流延後、30〜120秒以内で、ウェブを金属支持体から剥離することが好ましい。
(4)ウェブを金属支持体から剥離する工程
得られたウェブを、金属支持体上の剥離位置で剥離する。金属支持体上の剥離位置における温度は、好ましくは10〜40℃の範囲であり、さらに好ましくは11〜30℃の範囲である。
金属支持体上の剥離位置で剥離する際のウェブの残留溶媒量は、乾燥条件や金属支持体の長さなどにもよるが、50〜120質量%の範囲とすることが好ましい。残留溶媒量が多いウェブは、柔らか過ぎて平面性を損ないやすく、剥離張力による流延方向(MD方向)のシワやスジが発生し易い。そのような流延方向(MD方向)のシワやスジを抑制できるように、剥離位置でのウェブの残留溶媒量が設定されうる。
ウェブの残留溶媒量は、後述する式で定義される。
金属支持体からウェブを剥離する際の剥離張力は、通常、300N/m以下としうる。
(5)ウェブを乾燥後、延伸してフィルムを得る工程
金属支持体から剥離して得られたウェブを乾燥させる。ウェブの乾燥は、ウェブを、上下に配置した多数のローラーにより搬送しながら乾燥させてもよいし、ウェブの両端部をクリップで固定して搬送しながら乾燥させてもよい。
ウェブの乾燥方法は、熱風、赤外線、加熱ローラー及びマイクロ波等で乾燥する方法であってよく、簡便であることから熱風で乾燥する方法が好ましい。ウェブの乾燥温度は、40〜250℃程度、好ましくは40〜160℃程度としうる。
ウェブの延伸により、所望のリターデーションを有する光学フィルムを得る。光学フィルムのリターデーションは、ウェブに掛かる張力の大きさを調整することで制御することができる。
ウェブの延伸には、幅手方向(TD方向)、ドープの流延方向(MD方向)、及び斜め方向の延伸があるが、本発明では少なくとも後述する斜め方向の延伸をすることが必要である。
ウェブの延伸は、一軸延伸であっても、二軸延伸であってもよい。二軸延伸は、好ましくは斜め方向及び幅手方向(TD方向)への延伸である。二軸延伸は、逐次二軸延伸であっても同時二軸延伸であってもよい。
逐次二軸延伸には、延伸方向の異なる延伸を順次行う方法や、同一方向の延伸を多段階に分けて行う方法などが含まれる。
同時二軸延伸には、一方向に延伸し、もう一方の方向の張力を緩和して収縮させる態様も含まれる。
延伸率は、得られる光学フィルムの厚みや、求められるリターデーション値にもよるが、最終的には、斜め方向に50〜150%の範囲で延伸することが、フィルム面内の弾性率の最大値の方向Aの弾性率Eとそれに対して直交する方向Bの弾性率Eとの比の値を、1.4≦E/Eとするために好ましく、より好ましくは60〜120%の範囲内である。上記範囲内であれば、当該弾性率の比の関係を満たし、かつ延伸による破断等もなく、均一な光学特性を付与することができる。
また、本発明の光学フィルムのロール体の製造方法では、斜め延伸する前に予備延伸として、幅手方向(TD方向)に延伸率が1〜50%の範囲内で延伸することが、弾性率を高めることができ、つぶれ耐性率(%)の高いエンボス部を形成する観点から好ましい実施態様である。より好ましくは、5〜30%の範囲内であり、当該範囲で予備延伸することによって、弾性率を高め、エンボス部のつぶれ耐性率(%)を向上することができる。
ウェブの延伸温度は、好ましくは120℃〜200℃の範囲とし、より好ましくは150℃〜200℃の範囲とし、さらに好ましくは150℃〜190℃の範囲である。
ウェブの延伸方法は、特に制限されず、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を広げて延伸するテンター延伸法などが好ましく、斜め延伸するには斜め延伸テンターを用いることが好ましい。
延伸開始時のウェブの残留溶媒は、好ましくは20質量%以下とし、より好ましくは15質量%以下である。
フィルムに残留する溶剤量を低減するために、延伸後に得られるフィルムを、さらに乾燥させる。乾燥温度は、110〜190℃の範囲であることが好ましく、120〜170℃の範囲であることがより好ましい。乾燥温度が低すぎると、溶剤を十分に蒸発除去させにくい。フィルムの乾燥方法は、例えばフィルムを搬送させながら、熱風を当てる方法などで行うことができる。
<斜め延伸テンターによる延伸>
本発明の光学フィルムのロール体は、フィルム長手方向に対して斜め延伸された光学フィルムであることを特徴とする。
長尺の未延伸フィルムを斜め延伸するには、斜め延伸可能な装置(斜め延伸テンター)を用いることが好ましい。本発明に用いられる斜め延伸テンターはレールパターンを多様に変化させることにより、フィルムの配向角を自在に設定でき、さらに、フィルムの配向軸をフィルム幅手方向に渡って左右均等に高精度に配向させることができ、かつ、高精度でフィルム厚さやリターデーションを制御できるフィルム延伸装置であることが好ましい。ここで配向角とはフィルム中の樹脂分子の延伸によって配向する方向である。
図5は、本発明の斜め延伸フィルムの製造方法に用いられる斜め延伸可能なンターの模式図である。但し、これは一例であって本発明はこれに限定されるものではない。
テンター入り口側のガイドローラー108−1によって方向を制御された未延伸フィルム100は、右側のフィルム保持開始点102−1、左側のフィルム保持開始点102−2の位置で把持具(クリップつかみ部ともいう)によって担持され、テンター104にて右側のフィルム保持手段の軌跡103−1、左側のフィルム保持手段の軌跡103−2で示される斜め方向に搬送、延伸され、右側のフィルム保持終了点105−1、左側のフィルム保持終了点105−2によって把持を解放され、テンター出口側のガイドローラー108−2によって搬送を制御されて斜め延伸フィルム106が形成される。図中、未延伸フィルムは、フィルムの送り方向107−1に対して、フィルムの延伸方向109の角度(配向角θという。)で斜め延伸される。ここで配向角θは、本発明でいうフィル面内の弾性率の最大値を示す方向Aの、フィルム長手方向に対する角度を規定するものとなる。
本発明では、斜め延伸テンターの入口部に最も近いガイドローラー108−1の主軸位置と斜め延伸テンターの入り口部の把持具との距離X、Xは、20〜100cmの範囲であることが好ましく、該距離を保つことによってフィルムをつかむ際にフィルムの平面を保ち、長手方向の配向角θやリターデーションといった光学特性を安定させることができる。好ましくは20〜60cmの範囲、さらに好ましくは20〜40cmの範囲である。ここで、Xは、ガイドローラー108−1の主軸位置と右側のフィルム保持開始点102−1にある把持具(クリップつかみ部)の距離であり、Xは、ガイドローラー108−1の主軸位置と左側のフィルム保持開始点102−2にある把持具(クリップつかみ部)の距離である。
、XはX=Xでも、X≠Xでもどちらでもよいが、好ましくはX=Xである。本発明では、X、Xは共に上記20〜100cmの範囲にあることが好ましい。
斜め延伸テンターの入口部に最も近いガイドローラー108−1の主軸位置と斜め延伸テンターの入り口部の把持具との距離が100cmより短めであると、斜め延伸フィルムの配向角θの均一性が保て好ましい。配向角θとは、長手方向を0°としたときの、前記配向角である。
斜め延伸テンターの入口部に最も近いガイドローラー108−1の主軸位置と斜め延伸テンターの把持具との距離を上記範囲とするためには、ガイドローラー及びクリップつかみ部を位置調整が可能な機構とすること、把持具の搬送方向の長さを1〜5インチ(1インチは2.54cm)とすること、斜め延伸テンターの入口部に最も近いガイドローラー108−1の直径を1〜20cmの範囲とすること、斜め延伸テンターの入口部近傍に更にローラーを設置可能な機構とすること、等が挙げられる。
本発明の斜め延伸する光学フィルムの製造は、上記斜め延伸可能なテンターを用いて行うことが好ましいが、このテンターは、長尺フィルムを、オーブンによる加熱環境下で、その進行方向(フィルム幅手方向の中点の移動方向)に対して斜め方向に拡幅する装置である。このテンターは、オーブンと、フィルムを搬送するための把持具が走行する左右で一対のレールと、該レール上を走行する多数の把持具とを備えている。フィルムローラーから繰り出され、テンターの入口部に順次供給されるフィルムの両端を、把持具で把持し、オーブン内にフィルムを導き、テンターの出口部で把持具からフィルムを開放する。把持具から開放されたフィルムは巻芯に巻き取られる。一対のレールは、それぞれ無端状の連続軌道を有し、テンターの出口部でフィルムの把持を開放した把持具は、外側を走行して順次入口部に戻されるようになっている。
なお、テンターのレール形状は、製造すべき延伸フィルムに与える配向角θ、延伸率等に応じて、左右で非対称な形状となっており、手動で又は自動で微調整できるようになっている。本発明においては、長尺の光学フィルムを延伸し、配向角θが延伸後の巻取り方向に対して、好ましくは10°〜80°の範囲内で任意の角度に設定できるようになっている。本発明において、テンターの把持具は、前後の把持具と一定間隔を保って、一定速度で走行するようになっている。
把持具の走行速度は適宜選択できるが、通常、10〜100m/分の範囲である。左右一対の把持具の走行速度の差は、走行速度の通常1%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下である。これは、延伸工程出口でフィルムの左右に進行速度差があると、延伸工程出口におけるシワ、寄りが発生するため、左右の把持具の速度差は、実質的に同速度であることが求められるためである。一般的なテンター装置等では、チェーンを駆動するスプロケットの歯の周期、駆動モータの周波数等に応じ、秒以下のオーダーで発生する速度ムラがあり、しばしば数%のムラを生ずるが、これらは本発明で述べる速度差には該当しない。
また、本発明に用いられる斜め延伸テンターでは、各レール部及びレール連結部の位置を自由に設定できることが好ましく、したがって、任意の入り口幅及び出口幅を設定すると、これに応じた延伸率にすることができる。(図6の○部は連結部の一例である。)
本発明に用いられる斜め延伸テンターにおいて、把持具の軌跡を規制するレールには、しばしば大きい屈曲率が求められる。急激な屈曲による把持具同士の干渉、あるいは局所的な応力集中を避ける目的から、屈曲部では把持具の軌跡が円弧を描くようにすることが望ましい。
図6は、本発明の製造方法に用いるテンターのレールの軌道(レールパターン)を示している。未延伸フィルムのテンター入口での進行方向DR1は、延伸後のフィルムのテンター出側での進行方向DR2と異なっており、これにより、比較的大きな配向角θをもつ延伸フィルムにおいても広幅で均一な光学特性を得ることが可能となっている。繰出し角度θiは、テンター入口での進行方向D1と延伸後のフィルムのテンター出側での進行方向DR2とのなす角度である。本発明の光学フィルムのロール体においては、好ましくは30°〜60°の範囲の方向に配向角θを持つフィルムを製造するため、繰出し角度θiは、30°<θi<60°で設定されることが好ましく、より好ましくは35°<θi<55°で設定される。繰出し角度θiを前記範囲とすることにより、得られるフィルムの幅手方向の光学特性のバラツキが良好となる(小さくなる)。
光学フィルムは、テンター入口(符号aの位置)において、その両端(両側)を左右の把持具によって順次把持されて、把持具の走行に伴い走行される。テンター入口(符号aの位置)で、フィルム進行方向(DR1)に対して略垂直な方向に相対している左右の把持具CL、CRは、左右非対称なレール上を走行し、予熱ゾーン、延伸ゾーン、冷却ゾーンを有するオーブンを通過する。ここで、略垂直とは、前述の向かい合う把持具CL、CR同士を結んだ直線とフィルム繰出し方向DR1とがなす角度が、90±1°以内にあることを示す。
前記したように、本発明の斜め延伸フィルムの延伸後のフィルムにおいて、弾性率を調整するには、斜め延伸時において、延伸ゾーンにおける斜め延伸時のフィルム温度が幅手方向に勾配を持つように調整する方法や、予熱ゾーンにおける予熱温度又は保持ゾーンにおける保持温度、冷却ゾーンにおける冷却温度が幅手方向に勾配を持つように調整する方法をとることが好ましい。
予熱ゾーンとは、オーブン入口部において、両端を把持した把持具の間隔が一定の間隔を保ったまま走行する区間をさす。延伸ゾーンとは、両端を把持した把持具の間隔が開きだし、再び一定となるまでの区間をさす。保持ゾーンとは、延伸ゾーンより後の把持具の間隔が再び一定となる期間において、ゾーン内の温度がフィルムを構成するセルロースエステルのガラス転移温度Tg(℃)以上に設定される区間をさす。また、冷却ゾーンとは、延伸ゾーンより後の把持具の間隔が再び一定となる期間において、ゾーン内の温度がフィルムを構成するセルロースエステルのガラス転移温度Tg(℃)以下に設定される区間をさす。
各ゾーンの温度は、セルロースエステルのガラス転移温度Tgに対し、予熱ゾーンの温度はTg〜(Tg+30)℃、延伸ゾーンの温度はTg〜(Tg+30)℃、保持ゾーンの温度はTg〜(Tg+30)℃、冷却ゾーンの温度はTg〜(Tg+30)℃に設定することが好ましい。
なお、フィルム温度が幅手方向に勾配を持つようにするには、予熱ゾーン、又は延伸ゾーン、保持ゾーン、冷却ゾーンにおいて温風を恒温室内に送り込むノズルの開度を幅手方向で差を付けるように調整する方法や、ヒーターを幅手方向に並べて加熱制御するなどの公知の手法を用いることができる。
延伸ゾーンにおける斜め延伸時のフィルム温度の幅手方向への勾配は、好ましくは0.5〜10.0℃の範囲、より好ましくは1.0〜5.0℃の範囲、最も好ましくは1.5〜3.0℃の範囲である。0.5〜10.0℃の範囲内であれば、温度勾配の効果認められ、フィルム幅手方向の弾性率を均一にする効果が得られ、更にフィルム幅手方向に均一なリターデーション値Roが得られる。予熱ゾーンにおける予熱温度、保持ゾーンにおける保持温度、及び冷却ゾーンにおける冷却温度の幅手方向への勾配は、好ましくは0.5〜10.0℃の範囲、より好ましくは1.0〜5.0℃の範囲、最も好ましくは1.5〜3.0℃の範囲である。0.5〜10.0℃の範囲内であれば、温度勾配の効果認められ、フィルム幅手方向の弾性率を均一にする効果が得られ、更にフィルム幅手方向に均一なリターデーション値Roが得られる。
また、弾性率を均一にする効果を得るには、本発明に係る斜め延伸をする前に幅手方向への延伸を行う場合、フィルム残留溶媒を幅手方向へ勾配を持つように調整する方法や、延伸温度を幅手方向へ勾配を持つように調整する方法を採用することが好ましい。
上記フィルム残留溶媒の幅手方向への勾配は、好ましくは0.5〜20.0質量%の範囲、より好ましくは2.0〜15.0質量%の範囲、最も好ましくは4.0〜12質量%の範囲の差を設けることである。0.5〜20.0質量%の範囲内であれば、残量溶媒の勾配の効果が認められ、フィルム幅手方向の弾性率を均一にする効果が得られ、かつフィルム幅手方向に均一なリターデーション値Roが得られる。
本発明においては、上記残留溶媒量は下記式で定義される。
残留溶媒量(質量%)={(M−N)/N}×100
なお、Mはウェブ又はフィルムの延伸前の時点で採取した試料の質量で、NはMを115℃で1時間の加熱後の質量である。
フィルム残留溶媒を幅手方向へ勾配を持たせるには、乾燥条件の調整で行うことができ、上記温風を恒温室内に送り込むノズルの開度調整や、ヒーターを幅手方向に並べて加熱制御する手法によって行うことができる。
予熱ゾーン、延伸ゾーン及び冷却ゾーンの長さは適宜選択でき、延伸ゾーンの長さに対して、予熱ゾーンの長さが通常100〜150%、固定ゾーンの長さが通常50〜100%である。
さらに、前記延伸フィルムのシワ、寄りの発生を解決するために、延伸時にフィルムの支持性を保ち、揮発分率が5体積%以上の状態を存在させて延伸した後、収縮させながら揮発分率を低下させることも好ましい。フィルムの支持性を保つとは、フィルムの膜性を損なうことなく両側縁を把持することを意味する。揮発分率については、延伸操作工程において常に5体積%以上の状態を維持していてもよいし、延伸操作工程の一部の区間に限って揮発分率が5体積%以上の状態を維持してもよい。後者の場合、入り口位置を起算点として全延伸区間の50%以上の区間、揮発分率が12体積%以上の状態となっていることが好ましい。いずれにせよ、延伸前に揮発分率が12体積%以上の状態を存在させておくことが好ましい。ここで、揮発分率(単位;体積%)とは、フィルムの単位体積あたりに含まれる揮発成分の体積を表し、揮発成分体積をフィルム体積で除した値とする。
延伸工程における延伸率R(((W−W0)/W0)×100)は、好ましくは50〜150%の範囲、より好ましくは60〜120%の範囲である。延伸率がこの範囲にあると幅手方向厚みムラが小さくなるので好ましい。斜め延伸テンターの延伸ゾーンにおいて、幅手方向で延伸温度に差を付けると幅手方向厚みムラをさらに良好なレベルにすることが可能になる。なお、W0は延伸前のフィルムの幅、Wは延伸後のフィルムの幅をあらわす。
テンターの入口に最も近いガイドローラーは、フィルムの走行を案内する従動ローラーであり、不図示の軸受部を介してそれぞれ回転自在に軸支されている。ローラーの材質は公知のものを用いることが可能であるが、フィルムの傷つきを防止するためにセラミックコートを施したり、アルミニウム等の軽金属にクロームメッキを施す等、軽量化を図るのが好適である。このローラーは、フィルムの走行時の軌道を安定させるために設けられるものである。
また、このローラーの上流側のローラーのうちの1本は、ゴムローラーを圧接させてニップすることが好ましい。このようなニップローラーにすることで、フィルムの流れ方向における繰出張力の変動を抑えることが可能だからである。
テンターの入口に最も近いガイドローラーの両端(左右)の一対の軸受部には、当該ローラーにおいてフィルムに生じている張力を検出するための第1張力検出装置、第2フィルム張力検出装置がそれぞれ設けられている。フィルム張力検出装置としては、例えばロードセルを用いることができる。ロードセルとしては、引張又は圧縮型の公知のものを用いることができる。ロードセルは、着力点に作用する荷重を起歪体に取り付けられた歪ゲージにより電気信号に変換して検出する装置である。
ロードセルは斜め延伸テンターの入口に最も近いガイドローラーの左右の軸受部に設置されることにより、走行中のフィルムがローラーに及ぼす力、即ちフィルムの両側縁近傍に生じているフィルム進行方向における張力を左右独立に検出するものである。なお、ローラーの軸受部を構成する支持体に歪ゲージを直接取り付けて、該支持体に生じる歪に基づいて荷重、即ちフィルム張力を検出するようにしてもよい。発生する歪とフィルム張力との関係は、あらかじめ計測され、既知であるものとする。
上述したようなフィルム張力検出装置を設けて、斜め延伸テンターの入口に最も近いガイドローラーにおけるフィルムの両側縁近傍の張力を検出するようにしたのは、フィルムの位置及び方向が、フィルム延伸装置の入口部の位置及び方向に対してズレが生じている場合、このズレ量に応じて、斜め延伸テンターの入口に最も近いガイドローラーにおけるフィルムの両側縁近傍の張力に差を生じることになるため、この張力差を検出することによって、当該ズレの程度を判別するためである。フィルムの位置及び方向が、フィルム延伸装置の入口部の位置及び方向との関係で適正であれば、ローラーに作用する荷重は左右で粗均等になり、互いの位置がズレていれば左右のフィルム張力に差が生じるのである。
従って、斜め延伸テンターの入口に最も近いガイドローラーにおける左右のフィルム張力差が等しくなるように、フィルムの位置及び角度を、適切に調整すれば、フィルム延伸装置の入口部における把持具による把持が安定し、把持具外れ等の障害の発生を少なくでき、更に、フィルム延伸装置による斜め延伸後のフィルムの幅手方向における物性を安定させることができる。
配向角の微調整や製品バリエーションに対応するために斜め延伸テンター入口でのフィルム進行方向と斜め延伸テンター出口でのフィルム進行方向とがなす角度の調整が必要となる。その際、製膜及び斜め延伸を連続して行うことが、生産性や収率の点で好ましい。製膜工程、斜め延伸工程、巻取工程を連続して行う場合、製膜工程と巻取工程でのフィルムの進行方向が一致していることが、工程の幅を小さくできる点で好ましい。そのような工程とするには、製膜したフィルムを斜め延伸テンター入口に導くためにフィルムの搬送方向を変更する、及び/又は斜め延伸テンター出口から出たフィルムを巻取装置方向に戻すためにフィルムの搬送方向を変更する方法が必要となる。フィルムの搬送方向を変更する装置としては、エアーフローローラーなどを用いるなど公知の方法を実施することができる。斜め延伸テンター出口以降の装置(ワインダー装置、アキューム装置、ドライブ装置など)は横方向にスライドできる構造が好ましい。
上記種々な本発明に係る斜め延伸の製造パターンについて、図7A〜C及び図8A、Bに示した。
図中、フィルム繰り出し装置110、搬送方向変更装置111、巻き取り装置112、製膜装置113を各々示した。
フィルム繰り出し装置110、は、斜め延伸テンター入口に対して所定角度で前記フィルムを送り出せるように、スライド及び旋回可能となっているか、フィルム繰り出し装置110はスライド可能となっており、搬送方向変更装置111により斜め延伸テンター入口に前記フィルムを送り出せるようになっていることが好ましい。前記フィルム繰り出し装置、搬送方向変更装置をこのような構成とすることにより、より製造装置全体の幅を狭くすることが可能となるほか、フィルムの送り出し位置及び角度を細かく制御することが可能となり、膜厚、光学値のバラツキが小さく、かつ弾性率の均一性に優れた斜め延伸フィルムを得ることが可能となる。また、前記フィルム繰り出し装置、搬送方向変更装置を移動可能とすることにより、前記左右のクリップのフィルムへの噛込み不良を有効に防止することができる。
巻き取り装置112は、斜め延伸テンター出口に対して所定角度でフィルムを引き取れるように形成することにより、フィルムの引き取り位置及び角度を細かく制御することが可能となり、膜厚、光学値のバラツキが小さく、かつ弾性率の均一性に優れた斜め延伸フィルムを得ることが可能となる。そのため、フィルムのシワの発生を有効に防止することができるとともに、フィルムの巻き取り性が向上するため、フィルムを長尺で巻き取ることが可能となる。本発明において、延伸後のフィルムの引取り張力T(N/m)は、100N/m<T<300N/mの範囲、好ましくは150N/m<T<250N/mの範囲で調整する。
前記引取張力が100N/m<T<300N/mの範囲であれば、フィルムのたるみや皺が発生しにくく、リターデーション、配向軸の幅手方向のプロファイル、弾性率の均一性も高く、幅手方向の配向角のバラツキや、幅収率(幅手方向の取り効率)がよい。
また、本発明においては、上記引取張力Tの変動を±5%未満、好ましくは±3%未満の精度で制御することが好ましい。上記引取張力Tの変動が±5%未満であると、幅手方向及び流れ方向の光学特性のバラツキ、弾性率の均一性が高くなる。上記引取張力Tの変動を上記範囲内に制御する方法としては、テンター出口部の最初のローラーにかかる荷重、すなわちフィルムの張力を測定し、その値を一定とするように、一般的なPID制御方式により引取ローラーの回転速度を制御する方法が挙げられる。前記荷重を測定する方法としては、ローラーの軸受部にロードセルを取り付け、ローラーに加わる荷重、すなわちフィルムの張力を測定する方法が挙げられる。ロードセルとしては、引張型や圧縮型の公知のものを用いることができる。
延伸後のフィルムは、把持具による把持が開放され、テンター出口から排出され、フィルムの両端(両側)がトリミングされた後に、順次巻芯(巻取りローラー)に巻き取られて、延伸フィルムのロール体にすることができる。
また、必要に応じて、巻取ローラーに巻き取る前に、テンターの把持具で把持されていたフィルムの両端をトリミングしてもよい。また、巻き取る前に、フィルム同士のブロッキングを防止する目的で、マスキングフィルムを重ねて同時に巻き取ってもよいし、延伸フィルムの少なくとも一方、好ましくは両方の端にテープ等を張り合わせながら巻き取ってもよい。マスキングフィルムとしては、上記フィルムを保護することができるものであれば特に制限されず、例えばポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルムなどがあげられる。
本発明の製造方法により得られた斜め延伸フィルムは、配向角θが巻取り方向に対して、好ましくは30°〜60°の範囲に傾斜しており、少なくとも1300mmの幅において、幅手方向の、面内リターデーションRoのバラツキが4nm以下、配向角θのバラツキが1.0°以下であることが好ましい。
本発明の斜め延伸フィルムの面内リターデーションRoのバラツキは、幅手方向の少なくとも1300mmにおいて、4nm以下、好ましくは3nm以下であることが好ましい。面内リターデーションRoのバラツキを、上記範囲にすることにより、液晶表示装置用の位相差フィルムとして用いた場合に表示品質を良好なものにすることが可能になる。
本発明の斜め延伸フィルムの配向角θのバラツキは、幅手方向の少なくとも1300mmにおいて、1.0°以下、好ましくは0.80°以下であることが好ましい。配向角θのバラツキが1.0°以下であれば、延伸フィルムを偏光板と貼り合せて円偏光板を得、これを液晶表示装置に据え付けても、光漏れの発生がなく、コントラストを低下させない。
本発明の斜め延伸フィルムの面内リターデーション値Roは、用いられる表示装置の設計によって最適値が選択される。
(6)フィルムの幅手方向両端部にエンボス加工を施す工程
延伸後に得られたフィルムの幅手方向両端部にエンボス加工を施す。図9は、エンボス加工装置20の一例を示す模式図である。図9に示されるように、エンボス加工装置は、エンボスローラー22と、フィルム14を介してエンボスローラー22と対向配置されたバックローラー24とを有する。
エンボスローラー22のローラー径は、30〜60cmの範囲であることが好ましく、30〜50cmの範囲であることがより好ましい。エンボスローラーのローラー径が60cm超であると、(エンボスローラーの内部に配置される)熱源とエンボスローラーの表面との距離が大きすぎるため、エンボスローラーの表面において温度ムラが生じることがある。そのため、形成されるエンボス部に弾性率が高い部分と低い部分とが生じ、弾性率が低い部分がつぶれやすい。一方、エンボスローラーのローラー径が30cm未満であると、回転軸がブレやすく;形成されるエンボスの凸部の高さがばらつきやすい。設定した高さよりも高く形成されたエンボス部は、つぶれやすい傾向がある。
エンボスローラーは温度調整機構を設けて、適宜その温度を調整することができる。例えば、エンボスローラー内部に温度調整用のエアを送風したり、温度制御されたローラーを前記エンボスローラーの内側もしくは外側から押し当てて温度制御することができる。あるいはエンボスローラー全体を恒温槽内に設置することができる。クラウンローラーもしくは剥離ローラーを温度制御することもできる。あるいは紫外線硬化樹脂組成物を塗布した後の乾燥部で温度制御されたフィルムをエンボスローラーへと導くことも好ましい。
エンボスローラーの好ましい例としては、内部に熱源が組み込まれた構造を有する回転ローラーが挙げられる。例えば、ローラー内部にシーズヒーターと熱媒を組み込み発熱させてローラーシェルを加熱する装置などが挙げられ、ローラーに組み込んだ熱伝対と制御盤によって温度を制御することができる。
バックローラーの材質は、エンボス部が形成されたフィルムを均一に冷却させるためなどから、金属製であることが好ましい。金属の種類は、例えばSUS、チタン、ステンレス、クロム、銅などが好ましい。金属製のバックローラーは、例えばゴム製のバックローラーよりも、フィルムを均一に冷却しやすいため、セルロースエステルを均一に結晶化させやすく、高い強度(高い弾性率)を有するエンボス部を形成することができる。
エンボスローラー22とバックローラー24との間のクリアランスは、1μm〜30μm程度とし、好ましくは1〜15μm程度としうる。エンボスローラー22とバックローラー24とによるニップ圧は、100〜10000Pa程度としうる。ニップ圧は好ましくは、500〜4000Paの範囲であり、1000〜3000Paであることがより好ましい。
そして、エンボスローラー22とバックローラー24とで、フィルム14の幅手方向両端部をニップして、フィルムの幅手方向両端部にエンボス加工を施す。
エンボスローラー22の表面温度は、150〜350℃の範囲とすることが好ましく、160〜300℃の範囲とすることがより好ましく、180〜250℃の範囲とすることがさらに好ましく、180〜220℃の範囲にすることが特に好ましい。
エンボスローラー22の表面温度が150〜350℃の範囲内であれば、フィルムを十分に溶融させることができ、冷却しても、セルロースエステルを十分に結晶化させることができ、強度の高いエンボス部を形成しやすい。また、フィルムが溶融しすぎることもなく、フィルムの溶融物のエンボスローラーへの貼り付きを防ぐことができる。
また、光学フィルムの材料組成によっては、フィルムのガラス転移温度(Tg)が異なるため、エンボスローラー22の表面温度は、フィルムのガラス転移温度(Tg)に対して、(Tg+20℃)〜(Tg+50℃)の範囲にすることが好ましい。
本発明の光学フィルムのロール体の製造方法は、フィルム幅手方向の両端部にエンボスローラーによって前記エンボス部を形成するときに、両側のエンボスローラーの表面温度に5〜20℃の範囲内の温度差をつけて当該エンボス部を形成することが好ましい。本発明の光学フィルムは斜め延伸されることにより、フィルム幅手方向の両端部の弾性率に異方性があることから、弾性率差をキャンセルしエンボス部の凸部のつぶれ耐性率(%)を均等にするために、弾性率の低い端部には高温なエンボスローラーでエンボス部を形成し、弾性率の高い端部には、エンボスローラーの表面温度を5〜20℃の範囲内低い温度で設定したエンボスローラーでエンボス部を形成することが好ましい。表面温度差は、より好ましくは7〜15℃の範囲である。
バックローラー24の表面温度は、エンボスローラー22の表面温度にもよるが、30〜100℃の範囲とすることが好ましく、50〜80℃の範囲とすることがより好ましい。バックローラーの表面温度が30〜100℃の範囲内であると、フィルムが急速に冷却されず、セルロースエステルを均一に結晶化させしやすく、弾性率の高いエンボス部が得られる。また、フィルムに含まれるセルロースエステルを冷却しやすく、結晶化させやすいだけでなく、フィルムの熱膨張を抑制して、エンボス部付近のフィルムの表裏面の波打ちを防止することができる。エンボス部付近のフィルムの表裏面の波打ちが生じると、フィルム同士が貼りつきやすく、フィルムが裂けやすくなる。
エンボス加工時のフィルムの搬送速度は、30〜120m/分の範囲であることが好ましく、40〜120m/分の範囲であることがより好ましく、60〜100m/分であることがさらに好ましい。フィルムの搬送速度が40〜120m/分の範囲であると、生産性が高くでき、エンボスローラーの圧力や、エンボスローラーやバックローラーの熱がフィルムに均一に伝わりやすく、それにより、フィルムに含まれるセルロースエステルを均一に結晶化させて、強度の高いエンボス部が得られる。
つまり、つぶれにくいエンボス部を形成するためには、(1)エンボスローラーでセルロースエステルを十分に溶融させて、2)バックローラーで溶融したセルロースエステルをゆっくりと冷却して結晶化させることが重要と考えられる。そのためには、(1)エンボスローラーの表面温度、(2)バックローラーの表面温度、(3)エンボスローラーのローラー径、4)バックローラーの材質、5)フィルムの搬送速度、及び6)ニップ圧のうち少なくとも二以上を種々組み合わせて調整することが好ましい。なかでも、(1)エンボスローラーの表面温度と(2)バックローラーの表面温度を、それぞれ前述の範囲に調整することが好ましく、さらに(3)エンボスローラー径を前述の範囲に調整することがより好ましく、さらに(4)バックローラーの材質を選択することが特に好ましい。
(7)フィルムを巻き取る工程
得られた長尺状の光学フィルムを、巻き取り機を用いて、フィルムの長さ方向(幅手方向に対して垂直方向)に巻き取る。
巻き取り方法は、特に制限されず、定トルク法、定テンション法、テーパーテンション法などでありうる。
光学フィルムを巻き取る際の、巻き取り張力は、50〜170N程度としうる。
巻き長は前述の通り、1500〜8000mの範囲内であることが、形成したエンボス部のつぶれを避けることができ、生産性が向上する。
(溶融製膜法)
本発明の光学フィルムのロール体の製造方法は、前記溶液流延製膜法に限られるものではなく、溶融製膜法によって製膜しても良い。溶融製膜法は、樹脂及び可塑剤などの添加剤を含む組成物を、流動性を呈する温度まで加熱溶融し、その後、流動性のセルロースエステルを含む溶融物を流延する成形方法である。
加熱溶融する成形法としては、更に詳細には、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法などに分類できる。これらの成形法の中では、機械的強度及び表面精度などの点から、溶融押出し法が好ましい。溶融押出し法に用いる複数の原材料は、通常、あらかじめ混錬してペレット化しておくことが好ましい。
ペレット化は、公知の方法を適用することができ、例えば、乾燥セルロースアシレートや可塑剤、その他添加剤をフィーダーで押出し機に供給し、1軸や2軸の押出し機を用いて混錬し、ダイからストランド状に押出し、水冷又は空冷し、カッティングすることで得ることができる。
添加剤は、押出し機に供給する前に混合しておいてもよく、あるいはそれぞれ個別のフィーダーで供給してもよい。なお、微粒子や酸化防止剤等の少量の添加剤は、均一に混合するため、事前に混合しておくことが好ましい。
ペレット化に用いる押出し機は、剪断力を抑え、樹脂が劣化(分子量低下、着色、ゲル生成等)しないように、ペレット化可能でなるべく低温で加工する方式が好ましい。例えば、2軸押出し機の場合、深溝タイプのスクリューを用いて、同方向に回転させることが好ましい。混錬の均一性から、噛み合いタイプが好ましい。
以上のようにして得られたペレットを用いてフィルム製膜を行う。もちろんペレット化せず、原材料の粉末をそのままフィーダーに投入して押出し機に供給し、加熱溶融した後、そのままフィルム製膜することも可能である。
上記ペレットを1軸や2軸タイプの押出し機を用いて、押出す際の溶融温度としては200〜300℃の範囲内とし、リーフディスクタイプのフィルターなどで濾過して異物を除去した後、Tダイからフィルム状に流延し、冷却ローラーと弾性タッチローラーでフィルムをニップし、冷却ローラー上で固化させる。
供給ホッパーから押出し機へ導入する際は、真空下又は減圧下や不活性ガス雰囲気下で行って、酸化分解等を防止することが好ましい。
押出し流量は、ギヤポンプを導入するなどして安定に行うことが好ましい。また、異物の除去に用いるフィルターは、ステンレス繊維焼結フィルターが好ましく用いられる。ステンレス繊維焼結フィルターは、ステンレス繊維体を複雑に絡み合った状態を作り出した上で圧縮し、接触箇所を焼結して一体化したもので、その繊維の太さと圧縮量により密度を変え、濾過精度を調整できる。
可塑剤や微粒子などの添加剤は、あらかじめ樹脂と混合しておいてもよいし、押出し機の途中で練り込んでもよい。均一に添加するために、スタチックミキサーなどの混合装置を用いることが好ましい。
冷却ローラーと弾性タッチローラーでフィルムをニップする際のタッチローラー側のフィルム温度は、フィルムのTg以上、Tg+110℃以下の範囲内とすることが好ましい。このような目的で使用する弾性体表面を有する弾性タッチローラーとしては、公知の弾性タッチローラーを使用することができる。弾性タッチローラーは、挟圧回転体ともいい、市販されているものを用いることもできる。
冷却ローラーからフィルムを剥離する際は、張力を制御してフィルムの変形を防止することが好ましい。
また、上記のようにして得られたフィルムは、冷却ローラーに接する工程を通過した後、前記延伸操作により延伸処理を施す。
延伸する方法は、公知のローラー延伸機やテンターなどを好ましく用いることができる。延伸温度は、通常フィルムを構成する樹脂のTg〜(Tg+60)℃の温度範囲で行われることが好ましい。
巻き取る前に、製品となる幅に端部をスリットして裁ち落とし、巻き中の貼り付きやすり傷防止のために、前記エンボス部を両端に施す。なお、フィルム両端部のクリップの把持部分は通常、フィルムが変形しており製品として使用できないので切除されて、再利用される。
〈本発明の光学フィルムのロール体の包装形態〉
本発明の光学フィルムのロール体は、樹脂フィルム、なかでも好ましくは樹脂フィルムにアルミ蒸着された防湿フィルムで包んだ後、巻き軸部分を紐若しくはゴムバンドで留めた保管形態にすることが好ましい。
図10に示す本発明の光学フィルムのロール体の包装形態(210)の具体例では、筒状の巻芯(201) にロール状に巻き取られた光学フィルムフィルムの周面及び左右両
側面の全体が、シート状の包装材料(203) により覆われており、包装材料(203) のロール周方向の両端部が互いに重ね合わせられ、これら包装材料(203) 端部同士の接合部分にガムテープ(204) が貼り付けられて、包装材料(203) 端部同士の接触部分に実質的に隙間がなく、内部へのゴミ等の侵入を防ぐようにするとともに、ロール状フィルムの左右両端部より外側に突出した巻芯(201) の両端部(201a)、(201a)の周面と包装材料(203) の左右両端部との接合部分は紐又はゴムバンド(205) で留められて、巻芯両端部(201a)、(201a)の周面と包装材料(203) の左右両端部との間に実質的にわずかな隙間があり、緩い密閉状態となされているものである形態が好ましい。従来のように、左右両端部をガムテープで何重にも留めて、実質的に隙間がなく内部を密閉状態とするよりも、巻き軸部分を紐若しくはゴムバンドで留めた形態であることが、保管中又は輸送中にロール体の適度な吸湿及び放湿が可能となり、光学フィルムの光学特性及び物性の均一性を高める上で好ましい態様である。
このような包装材料(203) としては、ポリエチレン及びポリプロピレンなどのポリオレフィン系合成樹脂のフィルム、またポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系合成樹脂のフィルムなどが挙げられる。また、包装材料(203) の厚さは、透湿性を維持する観点から10μm以上であることが好ましく、また剛性など取り扱い上の観点から100μm以下であることが好ましい。また、包装材料(203) の透湿性は、包装材料(203) を構成する合成樹脂フィルムの厚さにより変化するため、合成樹脂フィルムの厚さを調整することで、包装材料(203) の透湿性を適宜調整することができる。
ここで、この包装材料(203) の透湿度が、JIS Z0208で規定される1日あたりの透湿度が10g/m以下であれば、巻き形状の劣化や異物故障を防止でき、それに起因した傷発生が生じにくくなるので、好ましい。
なお、本発明の光学フィルムのロール体の包装形態(200)においては、光学フィルムのロール体 を、JIS Z 0208で規定される1日あたりの透湿度が5g/m 以下である包装材料(203) により包装することが好ましく、さらに、透湿度が1g/m以下である包装材料(203) により包装することがより好ましい。その理由は、フィルムの保管及び輸送などの物流状態における保管時の劣化(巻き形状の劣化、フィルム同士の貼り付き故障の発生及び異物故障)をより一層抑えることができるからである。
なお、JIS Z 0208で規定される1日あたりの透湿度が5g/m以下、ないし1g/m 以下である包装材料(203) としては、例えばポリエチレン及びポリプロピレンなどのポリオレフィン系合成樹脂フィルムと、ポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系合成樹脂フィルムとが積層された複合材料、またこれらのフィルムに、アルミニウムなどの金属が蒸着されるか、もしくは金属の薄膜が接合されて積層されている複合材料などが挙げられる。これらの複合材料よりなる包装材料(203) の厚さは、透湿性を維持する観点から1μm以上であることが好ましく、また剛性など取り扱い上の観点から50μm以下であることが好ましい。そして、包装材料(203) の透湿性は、複合材料の厚さにより変化するため、厚さを調整することで、包装材料(203) の透湿性を適宜調整することができる。
特に、ポリエチレン及びポリプロピレンなどのポリオレフィン系合成樹脂フィルムと、ポリエチレンテレフタレート及びポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系合成樹脂フィルムとが積層された複合材料、またこれらのフィルムに、アルミニウムなどの金属が蒸着されるか、もしくは金属の薄膜が接合されて積層されている複合材料は、高い透湿防止性が得られるうえに、材料が軽量であるため、取り扱い上、特に好ましく利用することができる。
上記包装材料(203)は、本発明の光学フィルムのロール体を少なくとも1重に巻くことで、前記効果を発現することができるが、二重以上巻いてもよい。
上記、包装形態で包装された本発明の光学フィルムのロール体は、倉庫における長期保管やトラック、又は船舶による輸送中でも、巻き形状の劣化がなく、均一な光学特性を有する光学フィルムを提供することができる。
〈光学フィルムの特性〉
(表面粗さ)
本発明の光学フィルム表面の算術平均粗さRaとしては、おおむね1.3〜4.0nmの範囲内であり、好ましくは1.6〜3.5nmの範囲内である。
(寸法変化率)
本発明の光学フィルムを、有機EL画像表示装置に具備した場合、使用する環境雰囲気、例えば、高湿環境下での吸湿による寸法変化により、ムラや位相差値の変化、及びコントラストの低下や色むらといった問題を発生させない為に、本発明の光学フィルムの寸法変化率(%)は、0.5%未満であることが好ましく、更に、0.3%未満であることが好ましく、最も好ましくは0.1%未満である。
(故障耐性)
本発明の光学フィルムでは、フィルム中の故障(以下、欠点ともいう)が少ないことが好ましく、ここでいう欠点とは、溶液流延法により製膜において、乾燥工程での溶媒の急激な蒸発に起因して発生するフィルム中の空洞(発泡欠点)や、製膜原液中の異物や製膜中に混入する異物に起因するフィルム中の異物(異物欠点)をいう。
具体的にはフィルム面内に、直径5μm以上の欠点が1個/10cm四方以下であることが好ましい。更に好ましくは0.5個/10cm四方以下であり、特に好ましくは0.1個/10cm四方以下である。
上記欠点の直径とは、欠点が円形の場合はその直径を示し、円形でない場合は欠点の範囲を下記方法により顕微鏡で観察して決定し、その最大径(外接円の直径)とする。
欠点の範囲は、欠点が気泡や異物の場合は、欠点を微分干渉顕微鏡の透過光で観察したときの影の大きさで測定する。また、欠点が、ローラー傷の転写や擦り傷など、表面形状の変化を伴う場合には、欠点を微分干渉顕微鏡の反射光で観察して大きさを確認する。
なお、反射光で観察する場合に、欠点の大きさが不明瞭であれば、表面にアルミや白金を蒸着して観察する。かかる欠点頻度にて表される品位に優れたフィルムを生産性よく得るには、ポリマー溶液を流延直前に高精度濾過することや、流延機周辺のクリーン度を高くすること、また、流延後の乾燥条件を段階的に設定し、効率よくかつ発泡を抑えて乾燥させることが有効である。
欠点の個数が1個/10cm四方より多いと、例えば、後工程での加工時などでフィルムに張力がかかると、欠点を起点としてフィルムが破断して生産性が低下する場合がある。また、欠点の直径が5μm以上になると、偏光板観察などにより目視で確認でき、光学部材として用いたとき輝点が生じる場合がある。
(破断伸度)
また、本発明の光学フィルムは、JIS−K7127−1999に準拠した測定において、少なくとも一方向(TD方向又はMD方向)の破断伸度が、4%以上であることが好ましく、より好ましくは10%以上である。
破断伸度の上限は、特に限定されるものではないが、延伸を高延伸率で行うことにより破断伸度は低下する傾向にあり、本発明のように好ましくはTD方向に予備延伸を行った後、斜め延伸を行うことにより、破断伸度は30%以下であることが好ましく、さらには20%以下であることが好ましい。
(全光線透過率)
本発明の光学フィルムは、その全光線透過率が90%以上であることが好ましく、より好ましくは93%以上である。また、現実的な上限としては、99%程度である。かかる全光線透過率にて表される優れた透明性を達成するには、可視光を吸収する添加剤や共重合成分を導入しないようにすることや、ポリマー中の異物を高精度濾過により除去し、フィルム内部の光の拡散や吸収を低減させることが有効である。また、製膜時のフィルム接触部(冷却ローラー、カレンダーローラー、ドラム、ベルト、溶液製膜における塗布基材、搬送ローラーなど)の表面粗さを小さくしてフィルム表面の表面粗さを小さくすることによりフィルム表面の光の拡散や反射を低減させることが有効である。
<偏光板>
本発明の光学フィルムのロール体から繰り出された長尺状の光学フィルムは、斜め延伸することによって遅相軸の角度(即ち配向角θ)が長手方向に対して好ましくは「実質的に45°」方向にあり、透過軸(又は吸収軸)が長手方向にある長尺状の偏光子とロール・トゥ・ロールで貼合することで、長尺状の円偏光板を形成することができる。
当該円偏光板は、当該光学フィルムのエンボス部を除去するステップと、エンボス部が除去された光学フィルムと偏光子とを貼合するステップと、を経て製造されることが好ましい。
当該円偏光板は、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置に具備することができるが、一例として有機エレクトロルミネッセンス画像表示装置に適用することにより、有機エレクトロルミネッセンス発光体の金属電極の鏡面反射を遮蔽する効果を発現する(以下、有機エレクトロルミネッセンスを有機ELと簡単にいう。)。
当該円偏光板は、偏光子を本発明の光学フィルムと保護フィルムとによって挟持されることが好ましい。このような保護フィルムとしては、他のセルロースエステル含有フィルムが好適に用いられ、例えば、市販のセルロースエステルフィルム(例えば、コニカミノルタタック KC8UX、KC5UX、KC4UX、KC8UCR3、KC4SR、KC4BR、KC4CR、KC4DR、KC4FR、KC4KR、KC8UY、KC6UY、KC4UY、KC4UE、KC8UE、KC8UY−HA、KC2UA、KC4UA、KC6UAKC、2UAH、KC4UAH、KC6UAH、以上コニカミノルタアドバンストレイヤー(株)製、フジタックT40UZ、フジタックT60UZ、フジタックT80UZ、フジタックTD80UL、フジタックTD60UL、フジタックTD40UL、フジタックR02、フジタックR06、以上富士フイルム(株)製)が好ましく用いられる。保護フィルムの厚さは、特に制限されないが、10〜200μm程度とすることができ、好ましくは10〜100μmの範囲であり、より好ましくは10〜70μmの範囲である。
偏光子は、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、その例には、ポリビニルアルコール系偏光フィルムが含まれる。ポリビニルアルコール系偏光フィルムには、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと、二色性染料を染色させたものとがある。
偏光子は、ポリビニルアルコールフィルムを一軸延伸した後、染色するか;あるいはポリビニルアルコールフィルムを染色した後、一軸延伸して、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理をさらに行って得ることができる。偏光子の膜厚は、5〜30μmの範囲が好ましく、5〜15μmの範囲であることがより好ましい。
ポリビニルアルコールフィルムとしては、特開2003−248123号公報、特開2003−342322号公報等に記載のエチレン単位の含有量1〜4モル%、重合度2000〜4000、ケン化度99.0〜99.99モル%のエチレン変性ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。また、特開2011−100161号公報、特許第4691205号公報、特許第4804589号公報に記載の方法で、偏光子を作製し本発明の光学フィルムと貼り合わせて偏光板を作製することが好ましい。
本発明の光学フィルムと偏光子との貼り合わせは、特に限定はないが、当該光学フィルムを鹸化処理した後、完全鹸化型のポリビニルアルコ−ル系接着剤を用いて行うことができる。また、活性エネルギー線硬化性接着剤などを用いて貼り合わせることもできるが、得られる接着剤層の弾性率が高く、偏光板の変形を抑制しやすい点などから、光硬化性接着剤を用いる貼り合わせであることが好ましい。
光硬化性接着剤の好ましい例としては、特開2011−028234号公報に開示されているような、(α)カチオン重合性化合物、(β)光カチオン重合開始剤、(γ)380nmより長い波長の光に極大吸収を示す光増感剤、及び(δ)ナフタレン系光増感助剤の各成分を含有する光硬化性接着剤組成物が挙げられる。ただし、これ以外の光硬化性接着剤が用いられてもよい。
以下、光硬化性接着剤を用いた偏光板の製造方法の一例を説明する。偏光板は、(1)光学フィルムの偏光子を接着する面を易接着処理する前処理工程、(2)偏光子と光学フィルムとの接着面のうち少なくとも一方に、下記の光硬化性接着剤を塗布する接着剤塗布工程、(3)得られた接着剤層を介して偏光子と光学フィルムとを貼り合せる貼合工程、及び4)接着剤層を介して偏光子と光学フィルムとが貼り合わされた状態で接着剤層を硬化させる硬化工程、を含む製造方法によって製造することができる。(1)の前処理工程は、必要に応じて実施すればよい。
(前処理工程)
前処理工程では、光学フィルムの、偏光子との接着面に易接着処理を行う。偏光子の両面にそれぞれ光学フィルムを接着させる場合は、それぞれの光学フィルムの、偏光子との接着面に易接着処理を行う。易接着処理としては、コロナ処理、プラズマ処理等が挙げられる。
(接着剤塗布工程)
接着剤塗布工程では、偏光子と光学フィルムとの接着面のうち少なくとも一方に、上記光硬化性接着剤を塗布する。偏光子又は光学フィルムの表面に直接光硬化性接着剤を塗布する場合、その塗布方法に特別な限定はない。例えば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーター等、種々の塗工方式が利用できる。また、偏光子と光学フィルムの間に、光硬化性接着剤を流延させた後、ローラー等で加圧して均一に押し広げる方法も利用できる。
(貼合工程)
こうして光硬化性接着剤を塗布した後、貼合工程に供される。この貼合工程では、例えば、先の塗布工程で偏光子の表面に光硬化性接着剤を塗布した場合、そこに光学フィルムが重ね合わされる。先の塗布工程で光学フィルムの表面に光硬化性接着剤を塗布した場合は、そこに偏光子が重ね合わされる。また、偏光子と光学フィルムの間に光硬化性接着剤を流延させた場合は、その状態で偏光子と光学フィルムとが重ね合わされる。偏光子の両面に光学フィルムを接着する場合であって、両面とも光硬化性接着剤を用いる場合は、偏光子の両面にそれぞれ、光硬化性接着剤を介して光学フィルムが重ね合わされる。そして通常は、この状態で両面(偏光子の片面に光学フィルムを重ね合わせた場合は、偏光子側と光学フィルム側、また偏光子の両面に光学フィルムを重ね合わせた場合は、その両面の光学フィルム側)からロール等で挟んで加圧することになる。ロールの材質は、金属やゴム等を用いることが可能である。両面に配置されるローラーは、同じ材質であってもよいし、異なる材質であってもよい。
(硬化工程)
硬化工程では、未硬化の光硬化性接着剤に活性エネルギー線を照射して、エポキシ化合物やオキセタン化合物を含む接着剤層を硬化させる。それにより、光硬化性接着剤を介して重ね合わせた偏光子と光学フィルムとを接着させる。偏光子の片面に光学フィルムを貼合する場合、活性エネルギー線は、偏光子側又は光学フィルム側のいずれから照射してもよい。また、偏光子の両面に光学フィルムを貼合する場合、偏光子の両面にそれぞれ光硬化性接着剤を介して光学フィルムを重ね合わせた状態で、いずれか一方の光学フィルム側から活性エネルギー線を照射し、両面の光硬化性接着剤を同時に硬化させるのが有利である。
活性エネルギー線としては、可視光線、紫外線、X線、電子線等を用いることができ、取扱いが容易で硬化速度も十分であることから、一般的には、電子線又は紫外線が好ましく用いられる。
電子線の照射条件は、前記接着剤を硬化しうる条件であれば、任意の適切な条件を採用できる。例えば、電子線照射は、加速電圧が好ましくは5〜300kVの範囲内であり、さらに好ましくは10〜250kVの範囲内である。加速電圧が5kV未満の場合、電子線が接着剤まで届かず硬化不足となるおそれがあり、加速電圧が300kVを超えると、試料を通る浸透力が強すぎて電子線が跳ね返り、透明光学フィルムや偏光子にダメージを与えるおそれがある。照射線量としては、5〜100kGyの範囲内、さらに好ましくは10〜75kGyの範囲内である。照射線量が5kGy未満の場合は、接着剤が硬化不足となり、100kGyを超えると、透明光学フィルムや偏光子にダメージを与え、機械的強度の低下や黄変を生じ、所定の光学特性を得ることができない。
紫外線の照射条件は、前記接着剤を硬化しうる条件であれば、任意の適切な条件を採用できる。紫外線の照射量は積算光量で50〜1500mJ/cmの範囲内であることが好ましく、100〜500mJ/cmの範囲内であるのがさらに好ましい。
以上のようにして得られた偏光板において、接着剤層の厚さは、特に限定されないが、通常0.01〜10μmの範囲内であり、好ましくは0.5〜5μmの範囲内である。
<表示装置>
本発明の光学フィルムを具備した偏光板は、種々の表示装置に用いることができる。 液晶表示装置の場合は、TN(Twisted Nematic)方式、STN(Super Twisted Nematic)方式、IPS(In−Plane Switching)方式、OCB(Optically Compensated Birefringence)方式、VA(Vertical Alignment)方式(MVA;Multi−domain Vertical AlignmentやPVA;Patterned Vertical Alignmentも含む)、HAN(Hybrid Aligned Nematic)等に好ましく用いることができる。コントラストを高めるためには、VA(MVA、PVA)方式が好ましい。
本発明の光学フィルムを具備した偏光板(円偏光板)は、上記液晶表示装置の内部又は表面部位に配置されることで、視認性が向上する効果もあり好ましい。中でも、視認側の偏光板(円偏光板)として配置することで当該視認性向上の効果が発現しやすく、好ましい実施態様である。
また、本発明の光学フィルムを具備した偏光板(円偏光板)は、有機EL画像表示装置に特に好ましく用いることができる。有機EL表示装置の構成を下記に示すが、これに限定されるものではない。
ガラスやポリイミド等を用いた基板上に順に金属電極、TFT、有機発光層、透明電極(ITO等)、絶縁層、封止層を有する有機EL素子上に、偏光子を本発明の光学フィルムと保護フィルムによって挟持した本発明に係る偏光板(円偏光板)を設けて、有機EL画像表示装置を構成する。この場合、本発明の光学フィルムを有機EL素子側に配置することが必要である。
一般に、有機EL画像表示装置は、透明基板上に金属電極と有機発光層と透明電極とを順に積層して発光体である素子(有機EL素子)を形成している。ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、あるいはこのような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体や、またあるいはこれらの正孔注入層、発光層、及び電子注入層の積層体等、種々の組み合わせをもった構成が知られている。
有機EL画像表示装置は、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、有機発光層に正孔と電子と注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物資を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。途中の再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、このことからも予想できるように、電流と発光強度は印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
有機EL画像表示装置においては、有機発光層での発光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明であることが必要であり、通常、酸化インジウムスズ(ITO)などの透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いていることが好ましい。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg−Ag、Al−Liなどの金属電極を用いている。
本発明の光学フィルムを有する円偏光板は、画面サイズが20インチ以上、即ち対角線距離が50.8cm以上の大型画面からなる有機EL画像表示装置に適用することができる。
このような構成の有機EL画像表示装置において、有機発光層は、厚さ10nm程度ときわめて薄い膜で形成されている。このため、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機EL画像表示装置の表示面が鏡面のように見える。
電圧の印加によって発光する有機発光層の表面側に透明電極を備えるとともに、有機発光層の裏面側に金属電極を備えてなる有機EL素子を含む有機EL画像表示装置において、透明電極の表面側(視認側)に円偏光板を設けることで、それを通過する光が、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して、円偏光板によって再び直線偏光となるため、この直線偏光は、偏光板の偏光方向と直交しているので、偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
実施例1
<実施例に用いるセルロースエステル>
セルロースエステル1:アセチル基置換度(アシル基の総置換度)2.88、重量平均分子量Mw=220000、数平均分子量Mn=90000、Mw/Mn=2.4
セルロースエステル2:アセチル基置換度(アシル基の総置換度)2.35、重量平均分子量Mw=215000、数平均分子量Mn=100000、Mw/Mn=1.5
セルロースエステル3:アセチル基置換度1.50、プロピオニル基置換度0.90、総アシル基置換度2.40、重量平均分子量Mw=160000、数平均分子量Mn=100000、Mw/Mn=2.2
<光学フィルムのロール体101の作製>
〈インライン添加液の調製〉
10質量部のアエロジル972V(日本アエロジル社製、一次粒子の平均径16nm、見掛け比重90g/リットル)と、90質量部のメタノールとをディゾルバーで30分間撹拌混合した後、マントンゴーリンで分散させて、微粒子分散液を得た。
得られた微粒子分散液に、88質量部のジクロロメタンを撹拌しながら投入し、ディゾルバーで30分間撹拌混合して、希釈した。得られた溶液をアドバンテック東洋社製ポリプロピレンワインドカートリッジフィルターTCW−PPS−1Nで濾過して、微粒子分散希釈液を得た。
15質量部のチヌビン928(BASFジャパン社製)と、100質量部のジクロロメタンとを密閉容器に投入し、加熱攪拌して完全に溶解させた後、ろ過した。得られた溶液に、36質量部の前記微粒子分散希釈液を撹拌しながら加えて30分間さらに撹拌した後、6質量部のセルロースエステル1(アセチル基置換度(アシル基の総置換度)2.88、Mw=220000、Mn=90000、Mw/Mn=2.4)を撹拌しながら加えて60分間さらに撹拌した。得られた溶液を、日本精線(株)製ファインメットNFで濾過して、インライン添加液を得た。濾材は、公称濾過精度20μmのものを用いた。
〈ドープの調製〉
下記成分を密閉容器に投入し、加熱及び撹拌しながら完全に溶解させた。得られた溶液を安積濾紙(株)製の安積濾紙No.24で濾過して、主ドープを得た。
(主ドープの組成)
セルロースエステル1(アセチル基置換度(アシル基の総置換度)2.88、Mw=220000、Mn=90000、Mw/Mn=2.4)
100質量部
添加剤1:一般式(A)で表される構造を有する化合物(例示化合物A5)
5質量部
添加剤2:ポリエステル化合物(アジピン酸/テレフタル酸/エチレングリコール(モル比50/50/100)からなる重縮合エステルの末端アセチル基封止物:例示化合物(23)のm=1、n=1、重量平均分子量1000)
10質量部
ジクロロメタン 430質量部
メタノール 40質量部
100質量部の主ドープと、2.5質量部のインライン添加液とを、インラインミキサー(東レ静止型管内混合機 Hi−Mixer、SWJ)で十分に混合してドープを得た。
得られたドープを、ベルト流延装置を用いてステンレスバンド支持体上に、ドープ温度35℃、幅1.8mの条件で、均一に流延させた。ステンレスバンド支持体上で、得られたドープ膜中の溶剤を、残留溶剤量が100%になるまで蒸発させてウェブを得た後、ステンレスバンド支持体からウェブを剥離した。得られたウェブを、35℃でさらに乾燥させた後、幅1.6mとなるようにスリットした。
その後、ウェブを、テンターによって幅手方向(TD方向)に10%予備延伸した。延伸開始時の残留溶媒量は40質量%であり、延伸温度は160℃とした。
次いで、図5で示す斜め延伸テンター(ウェブの走路長は左側が短いテンター)にて長手方向(図5のフィルムの送り方向107)に対して斜め45°方向に100%延伸した。延伸開始時のウェブの残留溶剤量は20%であり、延伸温度は180℃とした。
上記斜め方向の延伸率は、式「斜め方向の延伸率(%)={(延伸工程後のウェブの幅−延伸工程前のウェブの幅)/延伸工程前のウェブの幅}」×100で求めた。
その後、得られたフィルムを、乾燥装置内を多数のローラーで搬送させながら125℃で15分間乾燥させた後、2.4m幅にスリットし、幅方向両端部に、凸部の高さが10μm、凸部の幅wが100μm、凸部同士の間隔が1000μmのエンボス部(エンボス部の幅W:15mm)を形成した。エンボス加工は、以下の条件で行った。
(エンボス加工条件)
エンボスローラー:
材質:ステンレス製
ローラー径:30cm
表面温度:長手方向に対して右エンボスローラー 180℃
長手方向に対して左エンボスローラー 190℃
バックローラー:
材質:金属製(ステンレス製)
温度:60℃
フィルムの搬送速度:90m/分
搬送張力:120N/m
エンボスローラーとバックローラーとのクリアランス:27μm
エンボスローラーとバックローラーとによるニップ圧:1000Pa
このようにして得られた、幅2.4m、長さ4000m、膜厚15μmの長尺状の光学フィルムを、長さ方向に巻き取って光学フィルムのロール体101を得た。
<光学フィルムのロール体102〜130の作製>
光学フィルムのロール体101の作製において、表1に記載のように、斜め延伸を行うときの延伸率、フィルム長手方向に対する延伸の角度、光学フィルムの膜厚、エンボス部の凸部の高さ、及び左右のエンボスローラーの温度をそれぞれ変化させてエンボス部を形成した以外は同様にして、幅2.4m、長さ4000m、の長尺状の光学フィルムを、長手方向に巻き取って光学フィルムのロール体102〜130を作製した。
≪光学フィルムのロール体の評価≫
〈耐エンボスつぶれ率(%)の測定〉
光学フィルム左右両端部のエンボス部凸部のつぶれ耐性率を、図3及び図4で示す測定方法で行った。下記符号は図3及び図4中の符号である。
(1)光学フィルム14のエンボス部16を含む領域を切り出して、サンプルフィルム14Aを得る(図4参照)。そして、サンプルフィルム14Aのエンボス部16の凸部の高さD(図3における、荷重を加える前の凸部の高さD)を、厚さ測定機で測定する。厚さ測定機は、定圧厚さ測定機(株式会社テクロックPG−02)を用いた。
(2)次いで、図4に示されるように、ステージ15上にサンプルフィルム14Aを配置する。そして、フィルム面に対して垂直に載置された直径5mmの金属製の円筒棒18Aと、その上に配置された分銅18Bとからなる合計1kgの分銅18を載せる。このようにして、エンボス部16の表面上の直径5mmの円領域に1kgの荷重を加えた状態で、23℃・55%RH下において10分間保存する。その後、荷重を除いた(分銅を除いた)ときの、エンボス部16の凸部の高さD(図3における荷重を加えた後の凸部の高さD)を、厚さ測定機で測定する。
(3)前記(1)で測定された荷重を加える前の凸部の高さDと、前記(2)で測定された荷重を加えた後の凸部の高さDとを、下記式1に当てはめて、つぶれ耐性率を算出する。
(式1) つぶれ耐性率(%)=D/D×100(%)
測定はエンボス部の場所を任意に変えて10回行い、つぶれ耐性率(%)の平均値を求めた。
〈光学フィルム面内の弾性率の測定〉
光学フィルム面内の弾性率の測定は、温度23℃、相対湿度55%RHの環境下で試料を24時間調湿し、JIS K7127に記載の方法に準じて、引っ張り試験器オリエンテック(株)製テンシロンRTA−100を使用して弾性率を求めた。試験片の形状は1号形試験片で、試験速度は10mm/分の条件で、任意方向に対し0°から15°毎の方向に測定し、求めた弾性率のうち最大値のものを最大弾性率及びその方向を最大値の方向Aとし、更にその方向Aに直交する方向Bの弾性率をそれぞれ求め、さらにその比(B/A)を計算した。
〈光学フィルム面内の遅相軸の角度、及びリターデーション値Roの測定〉
光学フィルム面内の遅相軸の角度測定は、作製した光学フィルムを23℃・55%RHで調湿し、その後遅相軸の方向を自動複屈折率計KOBRA−21AWR(王子計測機器(株)製)により求めた。遅相軸の方向は、フィルム長手方向を0°としてフィルム面内の遅相軸の角度を決定した。
また、自動複屈折率計KOBRA−21AWR(王子計測機器(株)製)を用いて、23℃・55%RHの環境下で、下記各波長での複屈折率測定によりリターデーション値Roを測定したところ、いずれの光学フィルムも、波長450nmで測定したRo(450)が100〜125nmの範囲内であり、波長550nmで測定したRo(550)が125〜142nmの範囲内であり、Ro(590)が130〜152nmの範囲内であり、λ/4板である位相差フィルムであった。
式(i):Ro=(n−n)×d
式中、nx及びnyは、23℃・55%RH、450nm、550nm、590nmの各々における屈折率nx(フィルムの面内の最大の屈折率、遅相軸方向の屈折率ともいう。)、ny(フィルム面内で遅相軸に直交する方向の屈折率)であり、dはフィルムの厚さ(nm)である。
〈光学フィルムのロール体の巻きずれの評価〉
作製した光学フィルムのロール体を、厚さ30μmのポリエチレン樹脂フィルムにアルミニウムが蒸着されている防湿フィルムを用いて包装し、巻き芯端部を輪ゴム留めした。(図10参照。)
包装された光学フィルムのロール体を、30〜40℃、65〜85%RHの倉庫で、コア(巻芯)の長さ方向が水平になるように架台に乗せ1ヶ月間保管した。そして、1ヶ月経過後のロール体の巻きの状態を、目視観察し、下記のように評価した。
◎:ロールの表面に皺等の変化や巻きずれは認められない
○:ロールの表面に僅かに皺が認められるが、巻きずれは認められない
△:ロールの表面に弱い皺が認められ、1cm未満の巻きずれが認められる
×:ロールの表面〜内部に強い皺が有り、1cm以上の巻きずれが認められる
〈有機EL表示装置の表示むらの評価〉
(円偏光板の作製)
作製した光学フィルムのロール体を、厚さ30μmのポリエチレン樹脂フィルムにアルミニウムが蒸着されている防湿フィルムを用いて包装し、巻き芯端部を輪ゴム留めし、30〜40℃、65〜85%RHの倉庫で、コア(巻芯)の長さ方向が水平になるように架台に乗せ1ヶ月間保管した。
保管後の光学フィルムのロール体から繰り出した光学フィルムのエンボス部をスリットして除去した後、下記手順によって偏光子と貼り合わせて円偏光板を作製した。
(1)偏光子の調製
特許第4691205号実施例1を参考にして下記偏光子を作製した。
非晶性PET基材に7μm厚のPVA層が製膜された積層体を延伸温度130℃の空中補助延伸によって延伸積層体を作製し、次に、延伸積層体をヨウ素、ヨウ化カリウムによって染色して着色積層体を作製し、さらに着色積層体を延伸温度65度のホウ酸水中延伸によって総延伸倍率が5.94倍になるように非晶性PET基材と一体に延伸された3μm厚のPVA層を含む光学フィルム積層体(偏光子)を得た。非晶性PET基材は偏光子を光学フィルムと貼り合わせた後剥離して、PVA層(偏光膜)のみ使用した。
(2)光硬化性接着剤の調製
下記成分を混合した後、脱泡して、光硬化性接着剤を調製した。なお、トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェートは、50%プロピレンカーボネート溶液として配合し、下記にはトリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェートの固形分量を表示した。
(光硬化性接着剤の組成)
3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート:45質量部
エポリードGT−301(ダイセル化学社製の脂環式エポキシ樹脂):40質量部
1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル:15質量部
トリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート:2.3質量部
9,10−ジブトキシアントラセン:0.1質量部
1,4−ジエトキシナフタレン:2.0質量部
(3)円偏光板及び有機EL画像表示装置の作製
保管した光学フィルムのロール体101から繰り出した光学フィルム上に、上記調製した光硬化性接着剤を、マイクログラビアコーターを用いて乾燥厚みが5μmになるように塗布して、光硬化性接着剤層を形成した。塗布は、グラビアローラ#300、回転速度140%/ライン速度の条件で行った。
同様に、保護フィルムとしてコニカミノルタタックKC4UY(コニカミノルタアドバンストレイヤー(株)製)上に、上記調製した光硬化性接着剤を、乾燥厚み5μmとなるように塗布して光硬化性接着剤層を形成した。
上記作製した偏光子の一方の面に、光硬化性接着剤層が形成された光学フィルムを配置し、他方の面に、光硬化性接着剤層が形成された保護フィルムを配置して、光学フィルム/光硬化性接着剤層/偏光子/光硬化性接着剤層/保護フィルムの積層物を得た。得られた積層物を、ローラー機で長手方向を合わせるようにして、ロール・トゥ・ロールで貼り合わせた。貼り合わせた結果、光学フィルムの遅相軸は偏光子の吸収軸に対して45°斜め方向に貼合された。
貼り合わせた積層物の両面側から、電子線を照射して、光硬化性接着剤層を硬化させて円偏光板201を得た。ライン速度は20m/min、加速電圧は250kV、照射線量は20kGyとした。
次いで、特開2010−20925号公報の実施例に記載されている方法に準じて、同公報の図8に記載された構成からなる有機EL素子を作製した。有機EL素子の基板とは反対側の面に、上記作製した円偏光板を切り出して、当該円偏光板の光学フィルム101側が有機EL素子面になるように、アクリル系粘着剤を介して貼付け、有機EL画像表示装置を作製した。
同様にして光学フィルムのロール体102〜130を用いて、それぞれ円偏光板及び有機EL画像表示装置を作製した。なお、遅相軸が長手方向に対して45°方向にない光学フィルムは、光学フィルムを毎葉に切り出して偏光子の吸収軸に対して45°斜め方向に貼合して円偏光板を作製した。
以上作製した有機EL画像表示装置を、23℃・55%RHの暗室内で点灯し表示むらを観察した。
◎ :全くむらが観察されない
○ :極く弱いむらが表示装置の端部に観察される
△ :弱いむら表示装置の端部に明らかに観察される
× :表示装置の端部から中央にかけてむらが観察される
××:全面で強度のむらが観察される
以上の評価結果を表1に示した。
Figure 0006229664
表1の結果から、光学フィルムの膜厚、フィルム面内の弾性率の最大値の方向Aとそれに対して直交する方向Bの弾性率の比、エンボス部の凸部の高さが本発明の範囲内であり、つぶれ耐性率(%)が、両端のエンボス部とも50%以上である、本発明の光学フィルムのロール体101〜104、106、107、109〜122は、保管中の巻きずれ、及び保管後の表示むらに優れていることが分かる。
それに対し、膜厚が60μmである比較例の光学フィルムのロール体105は、自重によってエンボス部がつぶれやすくなるため、巻きずれがみられ、表示むらが発生している。また、エンボス部の凸部の高さが範囲外である光学フィルムのロール体108は、ロール体の幅手方向中央部がたわみやすく、光学フィルムとしての平面性が保ちにくいため、巻きずれ、表示むらともに劣化がみられた。
さらに、弾性率の比の値E/Eが1.4未満である光学フィルムのロール体120、左右エンボス部のつぶれ耐性率(%)が低い光学フィルムのロール体121〜127は、巻きずれ及び表示むらが劣位にあることが明らかである。
なお、左右のエンボスつぶれ耐性率(%)の差を15%になるように調整した、本発明の光学フィルムのロール体111は、巻きずれはみられなかったが、巻き形状にやや凹凸が観察された。
また、本発明の光学フィルムのロール体113に対して、斜め延伸の角度を20°及び70°に設定した本発明の光学フィルムのロール体116及び119は、有機EL画像表示装置の表示を目視で観察した結果、コントラストがやや低く観察された。
実施例2
実施例1の光学フィルムのロール体102の作製において、幅手方向(TD方向)への予備延伸の倍率を表2に記載の条件で行った以外は同様にして、光学フィルムのロール体201〜206を作製した。
作製した光学フィルムのロール体に対して、実施例1で行った巻きずれ及び表示むらの評価に加えて下記ヘイズ評価を行った。
(ヘイズ)
得られた光学フィルムを、23℃・55%RH下で5時間以上調湿した。次いで、得られた光学フィルムのヘイズを、JIS K−7136に準拠して、23℃・55%RHの条件下で、ヘイズメーター(濁度計)(型式:NDH 2000、日本電色(株)製)にて測定し、以下の基準で評価した。
〇:ヘイズが0.5%未満
△:ヘイズが0.5%〜1.0%未満
×:ヘイズが1.0%以上
以上の評価結果を表2に示した。
Figure 0006229664
表2の結果から、光学フィルムのロール体203及び204のように、TD方向への予備延伸の倍率を10〜30%の範囲内で行うことによって、予備延伸なしで斜め延伸した光学フィルムのロール体201及び予備延伸の倍率が低い光学フィルムのロール体202に対して、巻きずれ及び表示むらがより改善されることが分かる。
光学フィルムのロール体205及び206の評価結果から、予備延伸の延伸率を高くしていくと、ヘイズの上昇や破断等が生じることが分かった。
実施例3
実施例1の光学フィルムのロール体102の作製において、膜厚、及びエンボスローラーの温度を調整して左右エンボス部の平均つぶれ耐性率(%)を変化させて、表3記載の光学フィルムのロール体301〜306を作製した。
それぞれの光学フィルムのロール体に対して、下記A〜Cの包装形態(図10参照。)で、30〜40℃、65〜85%RHの倉庫で、コア(巻芯)の長さ方向が水平になるように2ヶ月間保管した。そして、2ヶ月経過後のロール体の巻きの状態を、実施例1と同様に目視観察し、巻きずれの評価、及びそれぞれの光学フィルムのロール体より光学フィルムを繰り出して、実施例1と同様にして円偏光板及び有機EL画像表示装置を作製し、表示むらを評価した。
包装形態A::厚さ50μmのポリエチレン樹脂フィルムにアルミニウムが蒸着されている防湿フィルム包装材料を用いて光学フィルムのロール体を包装し、巻き芯端部を輪ゴム留めした。
当該包装材料のJIS Z208に規定される塩化カルシウム−カップ法に基づく温度40℃及び湿度90%RHの環境下で24時間保持された透湿度は、0.5g/mであった。
包装形態B:厚さ50μmのポリエチレン樹脂フィルムにアルミニウムが蒸着されている包装材料を用いて光学フィルムのロール体を包装し、巻き芯端部をビニールテープ(ガムテープ)で二重に留めて包装内部を密閉状態にした。
包装形態C:厚さ50μmのポリエチレン樹脂フィルムを包装材料として用いて光学フィルムのロール体を包装し、巻き芯端部を輪ゴム留めした。
当該包装材料の、上記条件による透湿度は5.0g/mであった。
以上の評価結果を表3に示した。
Figure 0006229664
表3より、包装形態Aを採用した光学フィルムのロール体301及び302は、巻きずれと表示むらが、他の包装形態B及びCに対して優れていることが分かる。
透湿度の低い包装材料を用いるが、巻き芯端部の包装留め部分から適度な湿度の出入りがある包装形態Aの方が、良好な保管状態となることが確認された。
実施例4
実施例1の光学フィルムのロール体102の作製において、添加剤1として、一般式(A)で表される構造を有する化合物A36、下記位相差調整剤a、位相差調整剤b、位相差調整剤c、及びエチルセルロース(置換度2.8)、及び添加剤2としてジカルボン酸とジオールの重縮合エステルとして表4記載の組成の重縮合エステルを作製し、実施例1と同質量部用いた以外は同様にして、光学フィルムのロール体401〜412を作製した。その際、光学フィルムのロール体の包装形態は、実施例1の包装形態を採用した。
〈添加剤2:重縮合エステルの合成〉
(光学フィルム401に使う重縮合エステルの合成)
エチレングリコール310g、テレフタル酸415g、アジピン酸365g、酢酸300g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.21gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中230℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。15時間脱水縮合反応させ、反応終了後200℃で未反応のエチレングリコールを減圧留去することにより、重縮合エステルを得た。酸価0.10、数平均分子量1000であった。
(光学フィルム402に使う重縮合エステルの合成)
エチレングリコール310g、アジピン酸730g、酢酸300g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.21gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四つ口フラスコに仕込み、窒素気流中230℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温する。15時間脱水縮合反応させ、反応終了後200℃で未反応のエチレングリコールを減圧留去することにより、重縮合エステルを得た。酸価0.10、数平均分子量1000であった。
Figure 0006229664
作製した光学フィルムのロール体を用いて、実施例1と同様にして巻きずれと表示むらの評価を行った。
以上の評価結果を表4に示した。
Figure 0006229664
表4の結果から、本発明に係る好ましい位相差調整剤である一般式(A)で表される構造を有する化合物、又は当該一般式(A)で表される構造を有する化合物と本発明に係る好ましい重縮合エステルを含有する光学フィルムのロール体401、402、409及び411は、巻きずれと表示むらが優位にある、より好ましい結果を示すことが分かる。
また、光学フィルムのロール体401の作製において、一般式(A)で表される構造を有する化合物A36の代わりに、A1、A15、A40、A55、及びA60を使用して同様に確認したところ、光学フィルムのロール体401と同様な結果を再現した。
実施例5
実施例1の光学フィルムのロール体102の作製において、セルロースエステルとして、セルロースエステル1、3及び下記セルロースエステル4、添加剤1として、下記化合物1及び2、一般式(1)又は(2)で表される構造を有する下記化合物3〜10、及び添加剤2としてジカルボン酸とジオールの重縮合エステルとして例示化合物P−8を、実施例1と同質量部用い、膜厚30μm、巻き長を6000mとした以外は同様にして、光学フィルムのロール体501〜514を作製した。その際、光学フィルムのロール体の包装形態は、実施例1の包装形態を採用した。
セルロースエステル4:アセチル置換度2.30、ベンゾエート置換度0.4、総アシル置換度2.70、重量平均分子量Mw=200000、数平均分子量Mn=12000、Mw/Mn=1.6
Figure 0006229664
作製した光学フィルムのロール体501〜514に対して、実施例1で行った巻きずれ及び表示むらの評価に加えて下記巻き形状の評価を行った。
〈光学フィルムのロール体の巻き形状:巻き取り品質の評価〉
上記作製した6000m巻のロールの外観を目視観察し、光学フィルムロールの巻き取り品質(ゆる巻きに起因する馬の背状故障、凹凸状の変形故障)について目視観察を行い、下記の基準に従って、巻き取り品質の評価を行った。
◎:光学フィルムロールに、ゆる巻きに起因する馬の背状故障、凹凸状の変形故障の発生は全く認められない
○:光学フィルムロールに、ゆる巻きに起因する馬の背状故障、凹凸状の変形故障の発生はほぼ認められない
△:光学フィルムロールに、ゆる巻きに起因する馬の背状故障又は凹凸状の変形故障の発生がごく弱く見られるが、実用上問題の無い品質である
×:光学フィルムロールに、ゆる巻きに起因する馬の背状故障又は凹凸状の変形故障の発生が見られ、実用上懸念される品質である
上記評価の結果を、下記表5に示す。
Figure 0006229664
表5の結果から、添加剤1として一般式(1)又は(2)で表される構造を有するピラゾール環、トリアゾール環、又はイミダゾール環を有する含窒素複素環化合物を含有する光学フィルムのロール体507〜514は、表示むら及び巻きずれに加えて、巻き形状:巻き取り品質にも優れていることが分かる。
産業上の利用の可能性
本発明の光学フィルムのロール体は、フィルム面内の弾性率の方向が長手方向に対して傾斜しており、保管途中や輸送中の吸湿によっても当該ロール体に巻きズレを発生しにくく、かつ保管中や輸送後でも均一な光学値を有するため、偏光板用保護フィルムや、液晶表示装置などの表示装置用光学フィルムとして用いることに優れた適性を有する。
10 光学フィルムのロール体
12 巻芯
14 光学フィルム
14A サンプルフィルム
15 ステージ
16 エンボス部
18A 円筒棒
18B 分銅
18 重り
20 エンボス加工装置
22 エンボスローラー
24 バックローラー
100 未延伸フィルム
102−1 右側のフィルム保持開始点
102−2 左側のフィルム保持開始点
103−1 右側のフィルム保持手段の軌跡
103−2 左側のフィルム保持手段の軌跡
104 テンター
105−1 右側のフィルム保持終了点
105−2 左側のフィルム保持終了点
106 斜め延伸フィルム
107 フィルムの送り方向
108−1 テンター入り口側のガイドローラー
108−2 テンター出口側のガイドローラー
109 フィルムの延伸方向
DR1 繰出し方向
DR2 巻取り方向
θi 繰出し角度(繰出し方向と巻取り方向のなす角度)
CR、CL 把持具
Wo 延伸前のフィルムの幅
W 延伸後のフィルムの幅
110 フィルム繰り出し装置
111 搬送方向変更装置
112 巻き取り装置
113 製膜装置
201 巻芯
201a 巻芯の両端部
203 包装材料
204 ガムテープ
205 紐又はゴムバンド
210 光学フィルムのロール体の包装形態

Claims (13)

  1. セルロースエステルを含有し、膜厚が15〜50μmの範囲内であり、フィルム長手方向に対して斜め方向に延伸され、エンボス部が形成された長尺の光学フィルムのロール体であって、
    前記光学フィルムの23℃・55%RH下で測定したフィルム面内の弾性率の最大値の方向Aが長手方向に対して傾斜しており、当該最大値の方向Aの弾性率Eとそれに対して直交する方向Bの弾性率Eとの比の値が、1.4≦E/Eであり、かつ、
    前記光学フィルムのロール体は、フィルム幅手方向の両端部からフィルム幅手長の5%以内の領域に、高さが1〜20μmの範囲内であるエンボス部を有し、
    当該エンボス部の表面上の直径5mmの円領域に、1kgの荷重を加えた状態で23℃・55%RH下において10分間保存した後の当該エンボス部の凸部の高さをDとし、前記荷重を加える前の当該エンボス部の凸部の高さをDoとしたとき、下記式1で定義されるつぶれ耐性率(%)が、両端のエンボス部とも50%以上であることを特徴とする光学フィルムのロール体。
    (式1) つぶれ耐性率(%)=D/Do×100(%)
  2. 前記つぶれ耐性率(%)が、70%以上であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルムのロール体。
  3. 前記フィルム幅手方向の両端部のエンボス部をa及びa'としたときに、当該エンボス部a及びa'の前記つぶれ耐性率の差が、10%以内であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光学フィルムのロール体。
  4. 前記フィルム面内の弾性率の最大値の方向Aが、長手方向に対して、30〜60°方向の範囲内にあることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の光学フィルムのロール体。
  5. 前記フィルム面内の遅相軸が、長手方向に対して、30〜60°方向の範囲内にあることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の光学フィルムのロール体。
  6. 添加剤として、下記一般式(A)で表される構造を有する化合物を含有することを特徴とする請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の光学フィルムのロール体。
    Figure 0006229664
    〔上記一般式(A)において、Qは、芳香族炭化水素環、非芳香族炭化水素環、芳香族複素環又は非芳香族複素環を表す。Wa及びWbは、それぞれ独立に、Qを構成する原子に結合する水素原子又は置換基であり、WaとWbとは互いに同じでも異なっていてもよく、WaとWbは互いに結合して環を形成してもよい。Rは、水素原子又は置換基を表す。mは、0〜2の整数を表し、mが2の場合、2つのRは互いに同じでも異なっていてもよい。nは、1〜10の整数を表し、nが2以上である場合、2以上のQ、L、Wa、Wb、R及びmのそれぞれは、互いに同一であっても異なっていてもよい。L及びLは、それぞれ独立に、アルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、O、(C=O)、(C=O)−O、NR、S、(O=S=O)及び(C=O)−NRからなる群より選ばれる2価の連結基であるか、それらの組合せか又は単結合を表す。Rは、水素原子又は置換基を表す。R及びRは、それぞれ独立に、置換基を表す。〕
  7. 添加剤として、重量平均分子量(Mw)が350〜3000の範囲内であるジカルボン酸とジオールとの重縮合エステルを含有することを特徴とする請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載の光学フィルムのロール体。
  8. 光学フィルムの巻き長が、1500〜8000mの範囲内であることを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の光学フィルムのロール体。
  9. 請求項1から請求項8までのいずれか一項に記載の光学フィルムのロール体を樹脂フィルムにアルミ蒸着された防湿フィルムで包んだ後、巻き軸部分を紐又はゴムバンドで留めたことを特徴とする光学フィルムのロール体。
  10. 請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の光学フィルムのロール体を製造する光学フィルムのロール体の製造方法であって、当該光学フィルムをフィルム幅手方向に延伸率として1〜50%の範囲内で予備延伸した後、フィルム長手方向に対して斜め方向に延伸し、その後フィルム幅手方向の両端部にエンボス部を形成することを特徴とする光学フィルムのロール体の製造方法。
  11. フィルム幅手方向の両端部にエンボスローラーによって前記エンボス部を形成するときに、両側のエンボスローラーの表面温度に5〜20℃の範囲内の温度差をつけて当該エンボス部を形成することを特徴とする請求項10に記載の光学フィルムのロール体の製造方法。
  12. 請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の光学フィルムのロール体から繰り出され光学フィルムを、偏光子の少なくとも一方の面に具備したことを特徴とする偏光板。
  13. 請求項12に記載の偏光板を具備することを特徴とする表示装置。
JP2014551962A 2012-12-13 2013-11-26 光学フィルムのロール体、その製造方法、偏光板及び表示装置 Active JP6229664B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2012272089 2012-12-13
JP2012272089 2012-12-13
PCT/JP2013/081744 WO2014091921A1 (ja) 2012-12-13 2013-11-26 光学フィルムのロール体、その製造方法、偏光板及び表示装置

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPWO2014091921A1 JPWO2014091921A1 (ja) 2017-01-05
JP6229664B2 true JP6229664B2 (ja) 2017-11-15

Family

ID=50934215

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2014551962A Active JP6229664B2 (ja) 2012-12-13 2013-11-26 光学フィルムのロール体、その製造方法、偏光板及び表示装置

Country Status (4)

Country Link
JP (1) JP6229664B2 (ja)
KR (1) KR101721783B1 (ja)
CN (1) CN104870352B (ja)
WO (1) WO2014091921A1 (ja)

Families Citing this family (18)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
TWI572600B (zh) * 2013-01-10 2017-03-01 Konica Minolta Inc 樹脂組成物、三唑化合物、光學薄膜、偏光板、光學透鏡、圓偏光板、及圖像顯示裝置
JP6428621B2 (ja) * 2013-08-12 2018-11-28 コニカミノルタ株式会社 セルロースアシレートフィルム、偏光板及び液晶表示装置
JP6502059B2 (ja) * 2014-10-24 2019-04-17 住友化学株式会社 偏光板ロール
JP6370190B2 (ja) * 2014-10-24 2018-08-08 住友化学株式会社 偏光板ロール
CN105563997B (zh) * 2014-11-11 2017-11-17 苏州莫立克新型材料有限公司 一种改善拉伸膜抗撕裂性能的方法
JP6376597B2 (ja) * 2014-12-11 2018-08-22 日東電工株式会社 偏光膜製造用の積層体
WO2016181756A1 (ja) * 2015-05-13 2016-11-17 コニカミノルタ株式会社 タッチパネル付き液晶表示装置及びその製造方法
CN104999681B (zh) * 2015-08-04 2017-03-29 中国乐凯集团有限公司 一种纤维素酯薄膜的制备方法
WO2018100895A1 (ja) * 2016-12-01 2018-06-07 コニカミノルタ株式会社 フィルムロールの梱包体
KR102175657B1 (ko) * 2017-02-28 2020-11-06 후지필름 가부시키가이샤 열가소성 수지 필름 및 열가소성 수지 필름의 제조 방법
JP7020483B2 (ja) * 2017-05-23 2022-02-16 日本ゼオン株式会社 フィルムロール及びその製造方法
JP2018124579A (ja) * 2018-04-27 2018-08-09 日東電工株式会社 偏光膜製造用の積層体
CN109230728A (zh) * 2018-09-27 2019-01-18 明尼苏达矿业制造特殊材料(上海)有限公司 防跑偏装置
TW202035380A (zh) * 2018-12-11 2020-10-01 日商Dic股份有限公司 液晶組成物及顯示元件、以及化合物
JP7427897B2 (ja) * 2019-09-27 2024-02-06 コニカミノルタ株式会社 フィルムロール及びその製造方法
JP2021075363A (ja) * 2019-11-08 2021-05-20 住友化学株式会社 乾燥したフィルムロールの製造方法
CN115243890B (zh) * 2020-03-27 2024-08-20 三井化学株式会社 层叠体、使用其的辊体和包装体
WO2021250904A1 (ja) * 2020-06-12 2021-12-16 コニカミノルタ株式会社 フィルムおよびその製造方法、ロール体およびその製造方法

Family Cites Families (17)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US4029264A (en) * 1976-05-03 1977-06-14 Union Carbide Corporation Cling film roll having a nodulose leading edge portion and the method and apparatus for producing it
JPS61147135A (ja) * 1984-12-20 1986-07-04 Mitsubishi Electric Corp 感湿材料の製造方法
JPH0933721A (ja) * 1995-07-25 1997-02-07 Arisawa Mfg Co Ltd 表示装置用の半透過偏光板及びその製造方法並びに表示装置
SE9600933D0 (sv) * 1996-03-11 1996-03-11 Atlas Copco Tools Ab Power nutrunner
JP2002086554A (ja) * 2000-07-10 2002-03-26 Fuji Photo Film Co Ltd ポリマーフィルムの延伸方法、偏光膜、偏光板および位相差膜の製造方法、および液晶表示装置
JP2003176068A (ja) * 2001-12-07 2003-06-24 Konica Corp 光学フィルムの巻き取り方法
JP2006224618A (ja) 2005-02-21 2006-08-31 Jsr Corp フィルム加工方法
JP2008083307A (ja) 2006-09-27 2008-04-10 Konica Minolta Opto Inc 偏光板、偏光板の製造方法、及び液晶表示装置
JP2010070309A (ja) * 2008-09-18 2010-04-02 Fujifilm Corp 光学フィルム及びその製造方法
JP5325733B2 (ja) * 2009-03-31 2013-10-23 富士フイルム株式会社 セルロース組成物を含む光学フィルム、位相差板、偏光板、ならびに液晶表示装置
JP2010274615A (ja) * 2009-06-01 2010-12-09 Konica Minolta Opto Inc 光学フィルムの製造方法、光学フィルム、偏光板及び液晶表示装置
JP5267375B2 (ja) * 2009-08-06 2013-08-21 コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 光学フィルム
JP2012027372A (ja) * 2010-07-27 2012-02-09 Toyo Kohan Co Ltd 位相差フィルム製造方法
JP5598141B2 (ja) * 2010-08-02 2014-10-01 コニカミノルタ株式会社 エンボス形成装置及びそのエンボス形成装置により製造されたフィルム
JP5569323B2 (ja) * 2010-10-08 2014-08-13 コニカミノルタ株式会社 長尺延伸フィルムの製造方法、及び長尺偏光板の製造方法
WO2012056665A1 (ja) * 2010-10-27 2012-05-03 コニカミノルタオプト株式会社 光学フィルムの製造方法、光学フィルム、光学フィルムを用いた偏光板、及び表示装置
KR101302289B1 (ko) * 2012-03-19 2013-09-03 코니카 미놀타 어드밴스드 레이어즈 인코포레이티드 광학 필름의 롤체 및 그것을 사용한 편광판의 제조 방법

Also Published As

Publication number Publication date
KR20150054988A (ko) 2015-05-20
KR101721783B1 (ko) 2017-03-30
CN104870352A (zh) 2015-08-26
WO2014091921A1 (ja) 2014-06-19
CN104870352B (zh) 2017-03-22
JPWO2014091921A1 (ja) 2017-01-05

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6229664B2 (ja) 光学フィルムのロール体、その製造方法、偏光板及び表示装置
JP6623737B2 (ja) 光学フィルムの製造方法および製造装置
JP6617494B2 (ja) 斜め延伸フィルムの製造方法
JP6935840B2 (ja) 斜め延伸フィルムの製造方法
WO2015159679A1 (ja) 偏光板、偏光板の製造方法、液晶表示装置及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置
JPWO2015076101A1 (ja) 偏光板およびこれを用いた液晶表示装置
JP6923048B2 (ja) 斜め延伸フィルムの製造方法
WO2014068893A1 (ja) 位相差フィルム、円偏光板、及び画像表示装置
JPWO2014175136A1 (ja) 光学フィルム、円偏光板及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置
JP6699655B2 (ja) 斜め延伸フィルムの製造方法
US9718933B2 (en) Optical film, and polarizing plate and liquid crystal display device employing same
WO2014049954A1 (ja) 位相差フィルム、該位相差フィルムを用いて作製した長尺円偏光板および有機elディスプレイ
KR101862974B1 (ko) 광학 필름의 제조 방법
KR102085413B1 (ko) 긴 광학 필름, 그 제조 방법, 편광판 및 표시 장치
TW201514005A (zh) 偏光板及液晶顯示裝置
WO2013136977A1 (ja) λ/4位相差フィルムとその製造方法、円偏光板及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置
WO2016132893A1 (ja) 長尺斜め延伸フィルムの製造方法
WO2014087593A1 (ja) 位相差フィルム、円偏光板、及び画像表示装置
JP2016080876A (ja) 光学フィルム、円偏光板及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置

Legal Events

Date Code Title Description
A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20170620

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20170808

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20170919

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20171002

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6229664

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150