JP2016080876A - 光学フィルム、円偏光板及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置 - Google Patents

光学フィルム、円偏光板及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は、広い帯域の光に対して実質的にλ/4の位相差を付与でき、湿度変動による光学性能の変動が抑制され、偏光板保護フィルムとしての機能をも持つ光学フィルムを提供することである。【解決手段】本発明の光学フィルムは、光波長550nmで測定したフィルム面内の位相差値Ro(550)が120〜160nm、光波長450nm及び550nmでそれぞれ測定したフィルム面内の位相差値の比Ro(450)/Ro(550)が0.65〜0.99の範囲内であり、セルロース誘導体を含有するフィルムであって、セルロース誘導体のグルコース骨格が有する置換基の一部が、芳香族環を有する置換基であり、その置換度が0.05〜0.6、極大吸収波長が220〜400nmの範囲内であり、グルコース骨格が有する置換基の総置換度が1.7〜3.0の範囲内であることを特徴とする。【選択図】図5

Description

本発明は、光学フィルム、円偏光板及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置に関する。特に、有機エレクトロルミネッセンス表示装置で反射防止部材として用いられる円偏光板に用いた場合に、可視光における広い帯域の光に対して、実質的にλ/4の位相差を付与することができ、更に、湿度変動による光学性能の変動が抑制され、偏光板保護フィルムとしての機能も併せ持つ光学フィルムと、当該光学フィルムを具備した円偏光板及び当該円偏光板を反射防止部材として具備した有機エレクトロルミネッセンス表示装置に関する。
近年、一般的な表示装置として普及している液晶表示装置に対し、表示性能や耐久性に関する要求が高くなっており、表示画像における良好なコントラストや色調バランスを広い視野角で得ることが求められている。これらの要求に対し、液晶表示装置の表示形式としては、VA(Vertical Alignment)方式、OCB(Optical Compensated Bend)方式、及びIPS(In−Plane Switching)方式等の液晶パネルが開発されており、従来のTN(Twist Nematic)の液晶方式に対して、幅広い視野角で優れた表示性能が達成されている。
一方、昨今では省電力への要望が高まるとともに、視野角及び表示性能に対する要求も一層高まりつつあり、新たな方式の表示装置として、有機エレクトロルミネッセンス(以下、有機ELと略記する。)を用いた表示装置、すなわち、有機EL表示装置が、新たな表示装置として注目されている。
有機EL表示装置は、光源自体が画素毎に独立してON/OFF駆動が可能であり、画像表示時に常時バックライトが点灯している液晶表示装置に対して消費電力が小さくなる。更に、画像表示の際に、画素毎の光の透過及び非透過を制御するため、液晶セルとその両面に設けられた偏光板が必須となる液晶表示装置に対し、有機EL表示装置では光源自体のON/OFFにより画像の形成が可能であるため、液晶表示装置のような構成が不要となり、非常に高い正面コントラストを得ることが可能となるとともに、視野角特性も非常に優れた表示装置とすることが期待されている。特に、B、G、Rそれぞれの色に発光する有機EL素子を用いることで、液晶表示装置においては必須であったカラーフィルターも不要となるため、有機EL表示装置では更に高いコントラストが得られるものとして期待されている。
一方、有機EL表示装置においては、発光層からの光を視認側に効率良く取り出すため、陰極を構成する電極層としては光反射性の高い金属材料を用いること、又は別途反射部材として金属板を設けることにより、鏡面を有する反射部材を光取り出し面とは反対側の面に設ける方式が、一般的となっている。
しかしながら、有機EL表示装置では、上述のように液晶表示装置と異なりクロスニコルに配置された偏光板を具備していないため、光取り出し用の反射部材に外光が反射して、写り込みが発生し、照度の高い環境下ではコントラストが大きく低下するという問題がある。
このような問題を解決するため、例えば、鏡面の外光反射防止に円偏光素子を使用する方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。特許文献1に記載されている円偏光素子は、吸収型直線偏光板と、1/4位相差フィルムとを、それぞれの光軸が45°又は135°で交差するように積層して形成されている。
しかし、従来の位相差板では、単色光に対しては、光線波長のλ/4又はλ/2の位相差に調整することは可能であるが、可視光域の光線が混在している合成波である白色光に対しては、各波長での偏光状態に分布が生じ、有色の偏光に変換されるという問題がある。これは、位相差板を構成する材料が、位相差について波長分散性を有することに起因している。
このような問題を解決するため、広い波長域の光に対して均一な位相差を与え得る広帯域位相差板について種々の検討がなされている。例えば、複屈折光の位相差がλ/4であるλ/4板と、複屈折光の位相差がλ/2であるλ/2板とを、それぞれの光軸が交差した状態で貼り合わせた位相差板が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。
しかしながら、上記提案されている位相差板を製造するには、2枚の高分子フィルムの光学的方向(光軸や遅相軸)を調節するという煩雑な工程が必要になるとともに、複数のフィルムを接着層で貼り合わせる必要があるため、薄型化が可能であるという有機EL表示装置の長所を損なう結果ともなるため、積層を必要としない単層構成による広帯域λ/4位相差板の開発が求められている。
また、液晶表示装置の場合と同様に、円偏光板に用いられる上記吸収型直線偏光板には、一般的に二色性色素を吸着させたポリビニルアルコール樹脂(以下、PVAと略記する。)を、高倍率で延伸して得られる偏光子が用いられ、このような偏光子フィルムは外部環境からの影響を非常に受けやすく、偏光子フィルムとともに、保護フィルムが必須となる。偏光子の保護フィルムとしては、偏光子として用いられるPVAとの接着性に優れ、かつ優れた全光透過率を有するセルロースエステル等のセルロース樹脂を用いた偏光板保護フィルムが広範に用いられている。したがって、偏光板は、偏光子の両面をこの偏光板保護フィルムで挟持した形態となるが、円偏光板を得るためには、これにλ/4位相差フィルムを更に積層させる必要がある。
しかしながら、偏光板保護フィルムにλ/4位相差フィルムを積層させると、偏光板保護フィルムが持つ僅かな位相差特性により、所望の光学特性であるλ/4の位相差からの乖離が生じ、構成部材の増加に伴い、厚膜化する原因ともなるため、偏光板保護フィルムとしての機能も果たしながら、広帯域λ/4板としても機能する光学フィルムの開発が求められているのが現状である。
単層構成で、広帯域λ/4位相差フィルムを得るための技術として、正の屈折率異方性を有する高分子のモノマー単位と、負の複屈折性を有するモノマー単位を共重合させた高分子フィルムを用い、一軸延伸によってλ/4位相差フィルムとする方法が開示されている(例えば、特許文献3参照。)。この一軸延伸した高分子フィルムは、波長分散が逆分散性を有するために、1枚の位相差フィルムで広帯域λ/4板を作製することが可能となる。しかし、偏光板保護フィルムとして求められる偏光子への接着性に問題があるとともに、全光透過率が十分に得られないという問題を抱えている。
また、液晶表示装置用の光学フィルムとしては、光学補償機能と偏光板保護フィルムとしての機能を兼ね備えた光学フィルムの検討が進められている。このようなフィルムとしては、セルロースエステルフィルムに所望の位相差を付与した光学フィルムが検討されており、例えば、VA方式の位相差フィルムとして、面内位相差Roが50nm程度、厚さ方向の位相差Rtが130nm程度の位相差フィルムをセルロースエステル樹脂を用いて製造した光学フィルムが開示されている(例えば、特許文献4参照。)。
しかしながら、セルロースエステル樹脂は、置換度を下げることにより、比較的位相差発現性が高まる一方で、波長分散特性は逆波長分散性が弱まる傾向にあり、置換度を上げると逆波長分散性は高まるものの、位相差発現性が低下するという特性を有している。そのため、単層で広帯域のλ/4板を得るためには膜厚を厚くせざるを得ないという問題があった。
その他の方法としては、セルロースエステル樹脂に位相差(リターデーション)上昇剤や波長分散調整剤等の様々な添加剤を加えることにより、位相差発現性や波長分散性を高める技術も検討されているが、添加剤を多量に添加すると、フィルム膜質が低下し、耐久性や透明性の劣化を引き起こすという問題があり、改善が求められていた。
そこで、セルロースエステル樹脂に特定の芳香族エステル基を導入することにより、セルロースエステル樹脂フィルムの波長分散特性を改善する技術が検討されている(例えば、特許文献5参照。)。特許文献5で提案されている方法によれば、セルロースエステル樹脂フィルムの位相差発現性を低下させることなく、波長分散特性を自由に制御することができるとされている。
また、同様な手段にて、大位相差を発現させるため大延伸が必要となり、特に異物付近の位相差ムラが発生しやすくなるという問題を改善することができるとしている(例えば、特許文献6参照。)。
特開平8−321381号公報 特開平10−68816号公報 国際公開第00/26705号 特開2007−47537号公報 特開2008−95026号公報 特開2013−210561号公報
本発明者は、特許文献5で提案している技術内容について詳細に検討を進めた結果、特許文献5に記載されているようなセルロースエステル樹脂の置換基を調整することで、位相差及び位相差の波長分散特性を調整して、広帯域λ/4位相差フィルムを製造し、これを有機EL表示装置用の円偏光板として用いた場合、使用環境の変化によって、表示画像の色調ムラや反射ムラ等が発生するという問題があることが判明した。有機EL表示装置の使用環境の中でも、特に、湿度が変動した場合において上記問題が発生しやすくなることが明らかになり、早急な改良が必要であることが判明した。
本発明は、上記問題・状況に鑑みてなされたものであり、その解決課題は、有機エレクトロルミネッセンス表示装置で反射防止部材として用いられる円偏光板に用いた場合に、可視光における広い帯域の光に対して、実質的にλ/4の位相差を付与することができ、更に、湿度変動による光学性能の変動が抑制され、偏光板保護フィルムとしての機能も併せ持つ光学フィルムと、当該光学フィルムを具備した円偏光板及び当該円偏光板を反射防止部材として具備した有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供することである。
本発明に係る上記課題を解決すべく、上記問題の原因等について検討した結果、セルロース誘導体のグルコース骨格が有する置換基が、後述する要件(a)〜(c)を満たすようにすることで、主にヒドロキシ基に水分子が配向することで発生する位相差の変動を効果的に抑制することが可能となり、可視光における広い帯域の光に対して、実質的にλ/4の位相差を付与することができ、更に、湿度変動による光学性能の変動が抑制され、偏光板保護フィルムとしての機能も併せ持つ光学フィルムを提供できることを見いだし、本発明に至った。
すなわち、本発明に係る課題は、以下の手段により解決される。
1.温度23℃、55%RHの環境下、光波長550nmで測定したフィルム面内の位相差値Ro(550)が120〜160nmの範囲内であり、光波長450nm及び550nmでそれぞれ測定したフィルム面内の位相差値Ro(450)とRo(550)との比の値Ro(450)/Ro(550)が0.65〜0.99の範囲内であり、セルロース誘導体を含有する光学フィルムであって、
前記セルロース誘導体のグルコース骨格が有する置換基が、下記要件(a)〜(c)を満たすことを特徴とする光学フィルム。
(a)グルコース骨格が有する置換基の一部が、芳香族環を有する置換基であり、かつ当該芳香族環を有する置換基の置換度が、グルコース骨格単位当たり0.05〜0.6の範囲内である。
(b)前記芳香族環を有する置換基の極大吸収波長が、220〜400nmの範囲内である。
(c)グルコース骨格が有する置換基の総置換度が、グルコース骨格単位当たり1.7〜3.0の範囲内である。
2.前記芳香族環を有する置換基が、芳香族アシル基又は芳香族カルバモイル基であることを特徴とする第1項に記載の光学フィルム。
3.前記セルロース誘導体に、前記芳香族環を有する置換基が導入される前のセルロース類が更に含有され、
前記セルロース誘導体が、前記セルロース誘導体及び前記セルロース類の総量に対して、20〜50質量%含有されていることを特徴とする第1項又は第2項に記載の光学フィルム。
4.前記セルロース誘導体のグルコース骨格が有する置換基のうち、前記芳香族環を有する置換基以外のその他の置換基が、炭素原子数2〜7の範囲内である無置換の脂肪族炭化水素基であることを特徴とする第1項から第3項までのいずれか一項に記載の光学フィルム。
5.長尺方向に対して斜め方向に延伸されることで、長尺方向に対して40〜50°の範囲内に遅相軸を有し、以下で定義される収縮率が10〜30%であることを特徴とする第1項から第4項までのいずれか一項に記載の光学フィルム。
収縮率(%)=(1−sin(π−θ))×100
(上記式中、θは、長尺方向に対する延伸方向の角度を示す。)
6.第1項から第5項までのいずれか一項に記載の光学フィルムと、長尺状偏光子とが貼合されていることを特徴とする円偏光板。
7.第6項に記載の円偏光板が具備されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
本発明の上記手段により、有機エレクトロルミネッセンス表示装置で反射防止部材として用いられる円偏光板に用いた場合に、可視光における広い帯域の光に対して、実質的にλ/4の位相差を付与することができ、更に、湿度変動による光学性能(色味性能、反射特性)の変動が抑制され、偏光板保護フィルムとしての機能も併せ持つ光学フィルムと、当該光学フィルムを具備した円偏光板及び当該円偏光板を反射防止部材として具備した有機エレクトロルミネッセンス表示装置を提供することができる。
本発明の効果の発現機構ないし作用機構については、明確にはなっていないが、以下のように推察している。
本発明者らは、上述のようなセルロースエステル樹脂の置換基を調整することで、位相差及び位相差の波長分散特性を調整することにより、広帯域のλ/4位相差フィルムを製造し、これを有機EL表示装置用の円偏光板として用いた際に、それを使用する環境によっては、表示画像の色調ムラや反射ムラ等が発生するという問題について、その要因の鋭意検討を行った。
前記特許文献5に記載されているような構成では、面内位相差をλ/4となるように調整し、波長分散特性を逆波長分散性とした場合には、セルロースエステル樹脂が、大きな面内位相差を発現させる位相差調整機能と、逆波長分散性とする波長分散調整機能との二つの機能を担保することになる。その結果、セルロースエステル樹脂自身が僅かに吸湿した場合でも、位相差変動及び波長分散変動が相乗的に発生することになると推測される。
光学フィルムのこのような吸湿による位相差変動の要因としては、セルロースエステル樹脂が有するヒドロキシ基に水分子が配位することで発生しやすいと推測される。水分子が、波長分散調整機能を担う芳香環を有するエステル基及び位相差発現性に寄与する非芳香環エステル基にそれぞれ配位することで、位相差変動及び波長分散変動が発生するものと考えられる。更に、有機EL表示装置は、上述のように非常にコントラストが高く画像性能が高いがゆえに、液晶表示装置では認識されない程度の僅かな位相差変動や波長分散変動でも、色ムラや反射ムラが認識されやすくなる環境にある。
上記の理由により、有機EL表示装置の円偏光板に用いられるλ/4フィルムを得るためには、前記特許文献5で開示されているような技術を採用した場合に、上記の問題が極めて顕在化しやすくなくものと考えられる。
本発明者らは、更に詳細な検討を進めた結果、セルロース誘導体に220〜400nmの範囲に極大吸収波長を有する芳香族環を有する置換基を、平均置換度として0.05〜0.6の範囲内で導入することで、位相差の波長分散性を、逆波長分散性を示すように調整するとともに、位相差発現性を低下させることなく、上述のように、主にヒドロキシ基に水分子が配向することで発生する位相差の変動を効果的に抑制することが可能となり、結果として、広帯域でλ/4の面内位相差を発現する光学フィルムを得ることができるとともに、この光学フィルムを有機EL表示装置に具備した場合においても、表示の際の色ムラや反射ムラを十分に抑制することができることを見いだしたものである。
斜め延伸における収縮倍率を説明する模式図 本発明のλ/4位相差フィルムの製造方法に適用可能な斜め延伸装置のレールパターンの一例を示した概略図 本発明の実施形態に係る製造方法の一例(長尺フィルム原反ロールから繰り出してから斜め延伸する例)を示す概略図 本発明の実施形態に係る製造方法の一例(長尺フィルム原反を巻き取らずに連続的に斜め延伸する例)を示す概略図 本発明の有機エレクトロルミネッセンス表示装置の構成の一例を示す概略断面図
本発明の光学フィルムは、温度23℃、55%RHの環境下、光波長550nmで測定したフィルム面内の位相差値Ro(550)が120〜160nmの範囲内であり、光波長450nm及び550nmでそれぞれ測定したフィルム面内の位相差値Ro(450)とRo(550)との比の値Ro(450)/Ro(550)が0.65〜0.99の範囲内であり、セルロース誘導体を含有する光学フィルムであって、前記セルロース誘導体のグルコース骨格が有する置換基が、前記要件(a)〜(c)を満たすことを特徴とする。
この特徴は、請求項1から請求項7までの各請求項に共通する又は対応する技術的特徴である。
本発明においては、前記グルコース骨格が有する置換基の総置換度が、グルコース骨格単位当たり1.7〜3.0の範囲内であるため、湿度変化に起因する有機EL表示装置の色味変化や反射性能変化を抑制することができる。
ここで、セルロース誘導体は、ヒドロキシ基と水との相互作用により複屈折変化を引き起こしやすく、湿度変化に対する色味変化や反射性能変化を助長する。これに対しヒドロキシ基への置換基の置換度を増加させることで、セルロース誘導体の疎水性が向上し、湿度変化に対する色味変化や反射性能変化が改良されるものと推測している。
また、本発明においては、前記芳香族環を有する置換基の置換度が、グルコース骨格単位当たり0.05〜0.6の範囲内であるため、外光下における有機EL表示装置の色味変化や反射性能変化を抑制できる。
グルコース骨格単位当たりの、芳香族環を有する置換基の置換度が高いほど、十分な波長分散調整効果を得ることができるので、芳香族環を有する置換基を多く置換することで、グルコース骨格単位当たりのヒドロキシ基数を減らすことができ、ヒドロキシ基への水の配向を抑制することができる。これにより、湿度変化に対する有機EL表示装置の色味変化や反射性能変化を抑制することができる。
また、本発明においては、前記芳香族環を有する置換基が、芳香族アシル基又は芳香族カルバモイル基であることが、本発明の効果をより確実に得る観点から好ましい。
また、本発明においては、前記セルロース誘導体に、前記芳香族環を有する置換基が導入される前のセルロース類が更に含有され、前記セルロース誘導体が、前記セルロース誘導体及び前記セルロース類の総量に対して、20〜50質量%含有されていることが好ましい。これにより、位相差発現性を維持したまま、波長分散のバラツキを低減させることができる。
また、本発明においては、前記セルロース誘導体のグルコース骨格が有する置換基のうち、前記芳香族環を有する置換基以外のその他の置換基が、炭素原子数2〜7の範囲内である無置換の脂肪族炭化水素基であることが、より薄いフィルム膜厚で、外光下における有機EL表示装置の色味変化や反射性能変化を抑制できる観点から好ましい。
また、前記芳香族環を有する置換基の極大吸収波長が、200〜300nmの範囲内であることが、光学フィルムを偏光子と貼合して偏光板を製造する際に、紫外線硬化性接着剤又は紫外線硬化性の粘着剤が用いられた場合における接着性や粘着性を向上させることができるとともに、可視光における透明性を改善することができる観点から好ましい。
具体的には、極大吸収波長が、300nm以下の極大吸収を持つ場合、可視光に吸収端がかかることがなく、光学フィルムの着色性を防止することができる。また、紫外線硬化性の接着剤や粘着剤の多くは、波長として300〜400nmの範囲内で硬化が行われることが多いため、接着性や粘着性への影響を引き起こすことがなく、偏光子等の接着又は粘着させた層とも密着性を良化することができる。
以下、本発明とその構成要素、及び本発明を実施するための形態・態様について詳細な説明をする。なお、本発明において示す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味で使用する。
以下、本発明の光学フィルム、円偏光板及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置のそれぞれについて説明する。
《光学フィルム》
本発明の光学フィルムは、温度23℃、55%RHの環境下、光波長550nmで測定したフィルム面内の位相差値Ro(550)が120〜160nmの範囲内であり、光波長450nm及び550nmでそれぞれ測定したフィルム面内の位相差値Ro(450)とRo(550)との比の値Ro(450)/Ro(550)が0.65〜0.99の範囲内であり、セルロース誘導体を含有する光学フィルムであって、当該セルロース誘導体のグルコース骨格が有する置換基が、次の要件を満たすことを特徴とする。
(a)グルコース骨格が有する置換基の一部が、芳香族環を有する置換基であり、かつ当該芳香族環を有する置換基の置換度が、グルコース骨格単位当たり0.05〜0.6の範囲内である。
(b)芳香族環を有する置換基の極大吸収波長が、220〜400nmの範囲内である。
(c)グルコース骨格が有する置換基の総置換度が、グルコース骨格単位当たり1.7〜3.0の範囲内である。
本発明の光学フィルムは、長尺方向に対して遅相軸が40〜50°の範囲内の角度を有することが好ましい。このように長尺方向に対する遅相軸の角度を40〜50°の範囲内とする方法としては、例えば、製膜された延伸前のフィルムに対して、後述する斜め延伸を行う方法を挙げることができる。
また、本発明の光学フィルムにおいては、長尺状フィルムであり、厚さが20〜70μmの範囲内であることが好ましい。
また、本発明の光学フィルムは、樹脂成分として後述するセルロース誘導体を含有して構成されている。
なお、本発明において「光学フィルム」とは、透過光に対して所望の位相差を付与する光学的な機能を有するフィルムをいい、光学的機能としては、例えば、ある特定の波長の直線偏光を楕円偏光や円偏光に変換する、又は楕円偏光や円偏光を直線偏光に変換する機能等が挙げられる。また、特に「λ/4位相差フィルム」とは、所定の光の波長(通常、可視光領域)に対して、フィルムの面内位相差が約1/4となる特性を備えた光学フィルムをいう。
[光学フィルムの特性]
本発明の光学フィルムは、可視光の波長の範囲において円偏光を得るため、可視光の波長の範囲においておおむね波長の1/4の位相差を有する広帯域λ/4位相差フィルムであることが好ましい。
本発明の光学フィルムの面内位相差Ro(λ)及び膜厚方向の位相差Rt(λ)は、下記式(i)で表される。なお、λは各位相差を測定する波長(nm)を表す。本発明で用いる位相差の値は、例えば、Axometrics社製のAxoscanを用いて、23℃、55%RHの環境下で、各波長での複屈折率を測定することにより算出することができる。
式(i)
Ro(λ)=(nxλ−nyλ)×d
Rt(λ)=〔(nxλ+nyλ)/2−nzλ〕×d
上記式(i)において、λは測定に用いた光波長(nm)を表し、n、n、nは、それぞれ23℃、55%RHの環境下で測定され、nはフィルムの面内の最大の屈折率(遅相軸方向の屈折率)を表し、nはフィルム面内で遅相軸に直交する方向の屈折率を表し、nはフィルム面内に垂直な厚さ方向の屈折率を表し、dはフィルムの厚さ(nm)を表す。
ここで、光波長λ(nm)における光学フィルムの面内位相差をRo(λ)としたとき、本発明の光学フィルムでは、光波長550nmで測定したフィルム面内の位相差値Ro(550)が120〜160nmの範囲内で、光波長450nm及び550nmでそれぞれ測定したフィルム面内の位相差値Ro(450)とRo(550)との比の値Ro(450)/Ro(550)が0.65〜0.99の範囲内であることを特徴とする。
本発明で規定する位相差値Ro(550)は、120〜160nmの範囲内であることを特徴とし、好ましくは130〜150nmの範囲内であり、より好ましくは135〜145nmの範囲内である。本発明の光学フィルムにおいて、Ro(550)が120〜160nmの範囲内であれば、波長550nmにおける位相差がおおむね1/4波長となり、このような特性を備えた光学フィルムを用いて円偏光板を作製し、例えば、有機EL表示装置にこの円偏光板を具備することにより、室内照明の映り込みなどを防止でき、明所環境下での黒色表示特性が向上することになる。
また、本発明の光学フィルムにおいては、波長分散特性の指針であるフィルム面内の位相差値Ro(450)とRo(550)との比の値であるRo(450)/Ro(550)が、0.65〜0.99の範囲内であることを特徴とし、好ましくは0.70〜0.94の範囲内であり、より好ましくは0.75〜0.89の範囲内である。Ro(450)/Ro(550)が0.65〜0.99の範囲内であれば、位相差が適度な逆波長分散特性を発現し、長尺円偏光板を作製した場合には、広い帯域の光に対して反射防止効果が得られる。
一方、膜厚方向の位相差Rt(λ)は、光波長550nmで測定した位相差Rt(550)が60〜200nmの範囲内であることが好ましく、70〜150nmの範囲内であることがより好ましく、70〜100nmの範囲内であることが更に好ましい。Rt(550)が60〜200nmの範囲内であれば、大画面で斜めから見た時の色相の変化を防止することができる。
本発明の光学フィルムは、液晶表示装置に搭載しても良い。例えば、本発明の位相差範囲(Ro(550))で、反射型液晶表示装置に搭載しても良い。また位相差範囲(Ro(550))を120nm〜160nmより小さな領域とし、VAモードやIPSモード等の液晶表示装置用光学補償フィルムとして用いても、良好な性能を有する。
[セルロース誘導体]
本発明の光学フィルムを構成するセルロース誘導体においては、セルロース誘導体のグルコース骨格が有する置換基が、下記要件(a)〜(c)を満たすことを特徴とする。
本発明に係るセルロース誘導体のグルコース骨格が有する置換基の第一の要件(a)は、グルコース骨格が有する置換基の一部が、芳香族環を有する置換基であり、かつ当該芳香族環を有する置換基の置換度が、グルコース骨格単位当たり0.05〜0.6の範囲内であることである。
本発明に係るセルロース誘導体のグルコース骨格が有する置換基の第二の要件(b)は、前記芳香族環を有する置換基の極大吸収波長が、220〜400nmの範囲内であることである。
更に好ましくは、芳香族環を有する置換基の極大吸収波長が200〜300nmの範囲内である。
本発明に係るセルロース誘導体のグルコース骨格が有する置換基の第三の要件(c)は、グルコース骨格が有する置換基の総置換度が、グルコース骨格単位当たり1.7〜3.0の範囲内である。
更に好ましくは、水との配向を抑制することから2.4〜3.0である。
すなわち、本発明に係るセルロース誘導体は、セルロース誘導体を構成するグルコース骨格(β−グルコース環)の2位、3位及び6位のヒドロキシ基の一部が芳香族環を有する置換基で置換されたセルロース誘導体である。
更に、本発明に係るセルロース誘導体の詳細について説明する。
本発明に係るセルロース誘導体のグルコース骨格としては、下記一般式(1)で表されるグルコース骨格単位を有するセルロース誘導体である。
Figure 2016080876
上記一般式(1)において、Rはグルコース骨格の2位に位置する基であり、Rはグルコース骨格の3位に位置する基であり、Rはグルコース骨格の6位に位置する基である。R、R及びRは、前述の要件(a)〜(c)を満たす限り特に限定されず、各々水素原子又は置換基を表す。なお、本発明においてグルコース骨格とは、上記一般式(1)におけるR、R及びRを除いた部分をいうものとする。
また、本発明に係るセルロース誘導体は、重量平均分子量Mwが50000〜500000の範囲内のものが好ましく、より好ましくは100000〜300000の範囲内であり、更に好ましくは150000〜250000の範囲内である。
セルロース誘導体の重量平均分子量Mw、数平均分子量Mnは、それぞれゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定することができる。
[芳香族環を有する置換基]
本発明に係るセルロース誘導体は、芳香族環を有する置換基を有することを特徴とする。芳香族環を有する置換基としては、極大吸収波長が、220〜400nmの範囲内であれば特に限定されない。また、芳香族環を有する置換基としては、芳香族環に電子吸引性又は電子供与性の官能基が結合していても良い。波長分散性の改良には、電子供与性基を芳香族環に結合させることが好ましい。
ここで、本発明において、芳香族環を有する置換基の極大吸収波長は、日本分光社製のV−650を用いて220〜800nmまでの波長領域で測定するものとする。芳香族環を有する置換基は、いずれもメチル基を結合させた構造とし、メチレンクロリドに溶解し、最大の吸収極大の吸光度が1.0となるよう濃度調整して測定を行うものとする。
本発明に係るセルロース誘導体は、このような芳香族環を有する置換基を、置換度が、グルコース骨格単位当たり、0.05〜0.6となる範囲内で有する。ここでいう置換度とは、グルコース骨格単位における2位、3位及び6位の位置における多重結合を有する置換基の数の総和のセルロース誘導体全体における平均値を意味する。
芳香族環を有する置換基を、前記一般式(1)を用いて説明すると、R、R及びRとしては、例えば、R−CO−、R−NHCO−等として表すことができ、Rは芳香族基を表す。つまり、芳香族環を有する置換基としては、芳香族アシル基(R−CO−)又は芳香族カルバモイル基(R−NHCO−)であることが好ましい。
本発明に係る芳香族環を有する置換基において、芳香族基としては、芳香族炭化水素環基でも芳香族複素環基でも良く、より好ましくは芳香族炭化水素環基である。
芳香族炭化水素環基としては、例えば、炭素原子数が6〜24のものが好ましく、6〜12のものがより好ましく、6〜10のものが最も好ましい。芳香族炭化水素環基の具体例としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、アントリル基、ビフェニル基、ターフェニル基等が挙げられ、フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基が特に好ましい。
芳香族複素環基としては、酸素原子、窒素原子又は硫黄原子のうち少なくとも一つを含むものが好ましい。芳香族複素環の具体例としては、例えば、フラン、ピロール、チオフェン、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリダジン、トリアゾール、トリアジン、インドール、インダゾール、プリン、チアゾリン、チアジアゾール、オキサゾリン、オキサゾール、オキサジアゾール、キノリン、イソキノリン、フタラジン、ナフチリジン、キノキサリン、キナゾリン、シンノリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、テトラゾール、ベンズイミダゾール、ベンズオキサゾール、ベンズチアゾール、ベンゾトリアゾール、テトラザインデン等が挙げられる。芳香族複素環基としては、ピリジル基、チオフェニル基、トリアジニル基、キノリル基が特に好ましい。
芳香族アシル基の好ましい例としては、例えば、ベンゾイル基、フェニルベンゾイル基、4−メチルベンゾイル、4−チオメチルベンゾイル基、4−メトキシベンゾイル基、4−ヘプチルベンゾイル基、2,4,5−トリメトキシベンゾイル基、2,4,5−トリメチルベンゾイル基、3,4,5−トリメトキシベンゾイル基及びナフトイル基等が挙げられる。
また、芳香族アシル基の他の例としては、以下に示すカルボン酸からヒドロキシ基を除いた形の基が挙げられる。そのようなカルボン酸としては、例えば、2−チオフェンカルボン酸、3−チオフェンカルボン酸、4−チアゾールカルボン酸、2−チアゾールカルボン酸、2−フランカルボン酸、3−フランカルボン酸、4−オキサゾールカルボン酸、2−オキサゾールカルボン酸、2−ピロールカルボン酸、3−ピロールカルボン酸、3−イミダゾールカルボン酸、2−トリアゾールカルボン酸、1−ピロールカルボン酸、1−イミダゾールカルボン酸、1−ピラゾールカルボン酸、2−ピリジンカルボン酸、3−ピリジンカルボン酸、4−ピリジンカルボン酸、2−ピラジンカルボン酸、4−ピリミジンカルボン酸、2−ピリミジンカルボン酸、2−キノリンカルボン酸、2−キノキサリンカルボン酸、7−キノリンカルボン酸、9−カルバゾールカルボン酸、2−ベンゾチオフェンカルボン酸、2−ベンゾフランカルボン酸、2−インドールカルボン酸、2−ベンゾチアゾールカルボン酸、2−ベンゾオキサゾールカルボン酸、2−ベンゾイミダゾールカルボン酸等の化合物を挙げることができる。
また、これらの芳香族アシル基は、更に置換基を有していても良い。
芳香族カルバモイル基の好ましい例としては、例えば、フェニルカルバモイル基、ビフェニルカルバモイル基、4−メチルフェニルカルバモイル基、4−チオメチルフェニルカルバモイル基、4−メトキシカルバモイル基、4−ヘプチルカルバモイル基、2,4,5−トリメトキシカルバモイル基、2,4,5−トリメチルカルバモイル基、3,4,5−トリメトキシカルバモイル基及び1−ナフチルカルバモイル基等が挙げられる。
また、芳香族カルバモイル基の他の例としては、以下に示すカルバミン酸からヒドロキシ基を除いた形の基が挙げられる。そのようなカルバミン酸としては、例えば、2−チオフェンカルバミン酸、3−チオフェンカルバミン酸、4−チアゾールカルバミン酸、2−チアゾールカルバミン酸、2−フランカルバメート基、3−フランカルバメート基、4−オキサゾールカルバミン酸、2−オキサゾールカルバミン酸、2−ピロールカルバミン酸、3−ピロールカルバミン酸、3−イミダゾールカルバミン酸、2−トリアゾールカルバミン酸、1−ピロールカルバミン酸、1−イミダゾールカルバミン酸、1−ピラゾールカルバミン酸、2−ピリジンカルバミン酸、3−ピリジンカルバミン酸、4−ピリジンカルバミン酸、2−ピラジンカルバミン酸、4−ピリミジンカルバミン酸、2−ピリミジンカルバミン酸、2−キノリンカルバミン酸、2−キノキサリンカルバミン酸、7−キノリンカルバミン酸、2−ベンゾチオフェンカルバミン酸、2−ベンゾフランカルバミン酸、2−インドールカルバミン酸、2−ベンゾチアゾールカルバミン酸、2−ベンゾオキサゾールカルバミン酸、2−ベンゾイミダゾールカルバミン酸等を挙げることができる。
また、これらの芳香族カルバモイル基は、更に置換基を有していても良い。
[その他の置換基]
上記一般式(1)においては、前述の要件(a)〜(c)を満たす限りにおいては、上記の芳香族環を有する置換基以外の置換基を有していても良い。このような置換基として、R、R及びRが脂肪族アシル基である場合が挙げられる。
脂肪族アシル基は、−(C=O)RのRが脂肪族基である基をいう。脂肪族基部位は、直鎖、分岐及び環状の脂肪族基のいずれであっても良い。脂肪族アシル基の炭素原子数は、2〜20が好ましく、2〜12がより好ましく、2〜7が更に好ましい。なお、炭素原子数1の脂肪族アシル基(ホルミル基)は、合成上、セルロース誘導体に導入することが困難である。
前記脂肪族アシル基は無置換であることが好ましく、中でも、アセチル基、プロピオニル基又はブチリル基が好ましい。
なお、前記脂肪族アシル基の、脂肪族基部位は、置換基を1以上有していても良い。
本発明に係るセルロース誘導体は、公知の方法、例えば、「セルロースの事典」131〜164頁(朝倉書店、2000年)等に記載の方法を参考にして製造することができる。
なお、本発明において、グルコース骨格の置換基の置換度は、Cellulose Communication 6,73−79(1999)及びChrality 12(9),670−674に記載の方法を利用して、H−NMR又は13C−NMRにより、決定することができる。
[光学フィルムの各種添加剤]
本発明の光学フィルムには、様々な機能を付与する目的で、各種添加剤を含有させることができる。
本発明に適用可能な添加剤は、特に制限はなく、本発明の目的効果を損なわない範囲で、例えば、紫外線吸収剤、可塑剤、劣化抑制剤、マット剤、位相差上昇剤、波長分散改良剤等が用いることができる。
以下に、本発明の光学フィルムに適用可能な代表的添加剤について示す。
(紫外線吸収剤)
本発明の光学フィルムには、紫外線吸収剤を含有させることができる。
紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物等を挙げることができるが、着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物が好ましい。また、特開平10−182621号公報、特開平8−337574号公報に記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号公報に記載の高分子紫外線吸収剤も好ましく用いられる。本発明の光学フィルムを、位相差フィルムの他に、偏光板の保護フィルムとして用いる場合、紫外線吸収剤としては、偏光子や有機EL素子の劣化防止の観点から、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ有機EL素子の表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ない特性を備えていることが好ましい。
本発明に有用なベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2−(2′−ヒドロキシ−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−[2′−ヒドロキシ−3′−(3″,4″,5″,6″−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5′−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(2′−ヒドロキシ−3′−t−ブチル−5′−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−[3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−[3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネートの混合物等を挙げることができるが、これらに限定されない。
また、市販品として、「チヌビン(TINUVIN)109」、「チヌビン(TINUVIN)171」、「チヌビン(TINUVIN)326」、「チヌビン(TINUVIN)328」(以上、商品名、BASFジャパン社製)を好ましく使用できる。
紫外線吸収剤の添加量は、セルロース誘導体に対して0.1〜5.0質量%の範囲内であることが好ましく、0.5〜5.0質量%の範囲内であることが更に好ましい。
(可塑剤)
一般的に、セルロースエステルフィルムは、セルロースアセテートに比較して柔軟性に乏しく、フィルムに曲げ応力やせん断応力がかかると、フィルムに割れ等が生じ易い。また、光学フィルムとして加工する際に、切断部にひびが入りやすく、切り屑が発生しやすい。発生した切り屑は、光学フィルムを汚染し、光学的欠陥の原因となっていた。これらの問題点を改良すべく、光学フィルムに可塑剤を含有させることができる。
可塑剤として、具体的には、例えば、フタル酸エステル系、トリメリット酸エステル系、脂肪族二塩基酸エステル系、正リン酸エステル系、酢酸エステル系、ポリエステル・エポキシ化エステル系、リシノール酸エステル系、ポリオレフィン系、ポリエチレングリコール系化合物等を挙げることができる。
本発明の光学フィルムに使用できる可塑剤としては、常温、常圧、液状で、かつ沸点が200℃以上の化合物から選択することが好ましい。具体的な化合物名としては、例えば、脂肪族二塩基酸エステル系、フタル酸エステル系、ポリオレフィン系を挙げることができる。
可塑剤の添加量としては、セルロース誘導体に対して、0.5〜40.0質量%の範囲内であることが好ましく、1.0〜30.0質量%の範囲内であることがより好ましく、3.0〜20.0質量%の範囲内であることが特に好ましい。可塑剤の添加量が0.5質量%以上であると、可塑効果が十分で、加工適性が向上する。また、40質量%以下であると、長時間経時した場合における可塑剤の分離溶出を抑制でき、光学的ムラ、他部品への汚染等をより確実に抑制することができる。
(劣化抑制剤)
本発明の光学フィルムには、劣化防止剤、例えば、酸化防止剤、過酸化物分解剤、ラジカル重合禁止剤、金属不活性化剤、酸捕獲剤、アミン類等を含有させることができる。
劣化抑制剤については、例えば、特開平3−199201号公報、同5−197073号公報、同5−194789号公報、同5−271471号公報、同6−107854号公報等に記載がある。
劣化防止剤の添加量は、劣化防止剤の添加による効果が発現し、フィルム表面への劣化防止剤のブリードアウト(滲み出し)を抑制する観点から、光学フィルムの作製に用いるセルロース溶液(ドープ)の0.01〜1質量%の範囲内であることが好ましく、0.01〜0.2質量%の範囲内であることが更に好ましい。
特に好ましい劣化防止剤の例としては、ブチル化ヒドロキシトルエン(略称:BHT)、トリベンジルアミン(略称:TBA)を挙げることができる。
(マット剤微粒子)
本発明の光学フィルムには、マット剤として微粒子を含有させることができる。
当該マット剤微粒子としては、例えば、二酸化ケイ素、二酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、炭酸カルシウム、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成珪酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム及びリン酸カルシウム等を挙げることができる。これらのマット剤微粒子の中では、ケイ素を含むものが、濁度(ヘイズ)が低くなる点で好ましく、特に、二酸化ケイ素が好ましい。二酸化ケイ素の微粒子は、一次平均粒子サイズが1〜20nmの範囲内であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上であるものが好ましい。一次平均粒子サイズは、5〜16nmの範囲内のものが光学フィルムのヘイズを下げることができる観点から更に好ましい。見かけ比重は、90〜200g/リットルの範囲内であることが更に好ましく、100〜200g/リットルの範囲内であることが特に好ましい。見かけ比重が大きい程、高濃度の分散液を作ることが可能になり、ヘイズ、凝集物が良化するため好ましい。
これらの微粒子は、通常、平均粒子サイズが0.05〜2.0μmの範囲内となる二次粒子を形成する。これら二次粒子は、光学フィルム中では、一次粒子の凝集体として存在し、光学フィルム表面に0.05〜2.0μmの凹凸を形成させる。二次平均粒子サイズは0.05〜1.0μmの範囲内であることが好ましく、0.1〜0.7μmの範囲内であることが更に好ましく、0.1〜0.4μmの範囲内であることが特に好ましい。一次粒子及び二次粒子サイズは、光学フィルム中の微粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子に外接する円の直径をもって粒子サイズとした。また、場所を変えて粒子200個を観察し、その平均値をもって平均粒子サイズとする。
二酸化ケイ素の微粒子は、例えば、アエロジルR972、R972V、R974、R812、200、200V、300、R202、OX50、TT600(以上、日本アエロジル(株)製、商品名)等の市販品を使用することができる。酸化ジルコニウムの微粒子は、例えば、アエロジルR976及びR811(以上、日本アエロジル(株)製、商品名)で市販されており、使用することができる。
これらの中でも、アエロジル200V及びアエロジルR972Vが、一次平均粒子サイズが20nm以下であり、かつ見かけ比重が70g/リットル以上である二酸化ケイ素の微粒子であり、光学フィルムのヘイズを低く保ちながら、摩擦係数を下げる効果が大きいため特に好ましい。
前記マット剤微粒子は、以下の方法により調製して、光学フィルムに適用することが好ましい。すなわち、溶媒とマット剤微粒子を撹拌混合したマット剤微粒子分散液をあらかじめ調製し、このマット剤微粒子分散液を、別途用意したセルロース誘導体濃度が5質量%未満である各種添加剤溶液に添加して撹拌溶解した後、更にメインのセルロース誘導体ドープ液と混合する方法が好ましい。
マット剤微粒子の表面は疎水化処理が施されているため、疎水性を有する添加剤が添加されると、マット剤微粒子表面に添加剤が吸着され、これを核として、添加剤の凝集物が発生しやすい。したがって、相対的に親水的な添加剤をあらかじめマット剤微粒子分散液と混合した後、疎水的な添加剤を混合することにより、マット剤表面での添加剤の凝集を抑制することができ、ヘイズが低く、液晶表示装置に組み込んだ際の黒表示における光漏れが少ない光学フィルムを作製でき好ましい。
マット剤微粒子分散剤と添加剤溶液の混合、及びセルロース誘導体ドープ液との混合にはインラインミキサーを使用することが好ましい。本発明はこれらの方法に限定されないが、二酸化ケイ素微粒子を溶媒等と混合して分散するときの二酸化ケイ素の濃度は5〜30質量%の範囲内であることが好ましく、10〜25質量%の範囲内であることが更に好ましく、15〜20質量%の範囲内であることが特に好ましい。分散濃度が高い方が同量の添加量に対する濁度が低くなり、ヘイズや凝集物の発生を抑制することができるため好ましい。最終的なセルロース誘導体のドープ溶液中でのマット剤の添加量は0.001〜1.0質量%の範囲内であることが好ましく、0.005〜0.5質量%の範囲内であることが更に好ましく、0.01〜0.1質量%の範囲内であることが特に好ましい。
[セルロース類との混合]
芳香族環を有する置換基の導入は、波長分散調整効果が大きいが、単位置換基当たりの効果が大きく波長分散値にバラツキが生じやすいという課題が発生している。この問題を解決するため、芳香族環を有する置換基を導入したセルロース誘導体を、当該芳香族環を有する置換基を導入する前のセルロース類に混合して使用することにより、バラツキを少なくすることを検討した。検討の結果、所定の混合比率とすることにより、波長分散効果は低下し、位相差発現性は低下しない領域が存在することが判明した。ここで、本発明においてセルロース類とは、セルロース、又は、セルロースのグルコース骨格が所定の置換基を有するものをいい、例えばセルロースエステル等が挙げられる。
セルロース誘導体の、当該セルロース誘導体及びセルロース類の総量に対する混合比率は、20〜50質量%の範囲内であることが好ましい。
セルロース誘導体の、当該セルロース誘導体及びセルロース類の総量に対する混合比率が50質量%以下の場合は、波長分散値は50%となるが、位相差発現性の低下がない。これにより、波長分散のバラツキを半分にし、同等の位相差を発現することができる。すなわち、同じ膜厚を維持したまま波長分散値のバラツキを小さくすることができた。混合比率20質量%以上の場合には、目的の波長分散効果が十分であり、外光下における有機EL表示装置の色味変化や反射性能変化が十分となる。混合比率が20質量%未満の場合には、有機EL表示装置の色味変化や反射性能の湿度安定性が劣化する。
このような領域が存在する理由は分かっていないが、セルロース誘導体の芳香族環を有する置換基が、誘導体化前のセルロース類と混合されることにより、立体障害が緩和され配向が向上し、位相差が発現したと考えている。無置換のベンゼンとトリメチル置換のベンゼンを同じ割合で置換したセルロース誘導体を調製し、その配向係数を測定したところ、無置換ベンゼン>トリメチル置換ベンゼンであった。
《セルロース誘導体を有する光学フィルムの製造》
本発明の光学フィルムを製造する方法としては、特段の制限はなく、溶液流延法又は溶融流延法等が挙げられるが、溶液流延法により製造する方法が好ましい。
[溶液流延法]
本発明の光学フィルムは、溶液流延法によって製造することが好ましい態様である。溶液流延法は、セルロース誘導体を有機溶媒に溶解した溶液(ドープ)を用いて光学フィルムを製造する方法である。溶液流延法には、本発明で規定する特性を満たすセルロース誘導体及び各種添加剤等を有機溶媒に加熱溶解させてドープを調製する工程、調製したドープをベルト状又はドラム状の金属支持体上に流延する工程、流延したドープをウェブとして乾燥する工程、金属支持体から剥離する工程、剥離したウェブを延伸又は収縮する工程、更に乾燥する工程、仕上がったフィルムを巻き取る工程等が含まれる。
(ドープを調製する工程)
ドープの調製に用いられる有機溶媒は、炭素原子数が3〜12のエーテル類、炭素原子数が3〜12のケトン類、炭素原子数が3〜12のエステル類及び炭素原子数が1〜6のハロゲン化炭化水素類から選ばれることが好ましい。
エーテル類、ケトン類及びエステル類は、環状構造を有していても良い。エーテル類、ケトン類及びエステル類の官能基(すなわち、−O−、−CO−及び−COO−)のいずれかを二つ以上有する化合物も、有機溶媒として用いることができる。有機溶媒は、アルコール性ヒドロキシ基のような他の官能基を有していても良い。2種類以上の官能基を有する有機溶媒の場合、その炭素原子数はいずれかの官能基を有する溶媒の上記の好ましい炭素原子数の範囲内であることが好ましい。
炭素原子数が3〜12のエーテル類の例としては、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール等が挙げられる。
炭素原子数が3〜12のケトン類の例としては、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等が挙げられる。
炭素原子数が3〜12のエステル類の例としては、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテート、ペンチルアセテート等が挙げられる。
2種類以上の官能基を有する有機溶媒の例としては、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノール、2−ブトキシエタノール等が挙げられる。
ハロゲン化炭化水素類の炭素原子数は、1又は2であることが好ましく、1であることが最も好ましい。ハロゲン化炭化水素のハロゲンは、塩素であることが好ましい。ハロゲン化炭化水素の水素原子が、ハロゲンに置換されている割合は、25〜75モル%の範囲内であることが好ましく、30〜70モル%の範囲内であることがより好ましく、35〜65モル%の範囲内であることが更に好ましく、40〜60モル%に範囲内であることが特に好ましい。メチレンクロリドが、代表的なハロゲン化炭化水素である。
前記ドープの調製には、メチレンクロリドとアルコール類との混合溶媒を用いることが好ましく、メチレンクロリドに対するアルコール類の比率は1〜50質量%の範囲内であることが好ましく、5〜40質量%の範囲内であることが好ましく、8〜30質量%の範囲内であることが特に好ましい。アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−ブタノールが好ましく、2種類以上のアルコールを混合して使用しても良い。
前記ドープは、0℃以上の温度(常温又は高温)条件下で、一般的な方法で、調製することができる。ドープの調製は、通常のソルベントキャスト法におけるドープの調製方法及び装置を用いて実施することができる。なお、一般的な方法の場合は、有機溶媒としてハロゲン化炭化水素(特に、メチレンクロリド)を用いることが好ましい。
前記ドープ中のセルロース誘導体の濃度は、5〜40質量%の範囲内であることが好ましく、10〜30質量%の範囲内であることが更に好ましい。有機溶媒(主溶媒)中には、上記した各種添加剤を添加しておいても良い。
前記ドープは、常温(0〜40℃)でセルロース誘導体と有機溶媒とを撹拌することにより調製することができる。高濃度の溶液は、加圧及び加熱条件下で撹拌しても良い。具体的には、セルロース誘導体と有機溶媒とを加圧容器に入れて密閉し、加圧下で溶媒の常温における沸点以上、かつ溶媒が沸騰しない範囲の温度に加熱しながら撹拌する。
加熱温度は、通常は40℃以上であり、好ましくは60〜200℃の範囲内であり、更に好ましくは80〜110℃の範囲内である。
各成分はあらかじめ粗混合してから容器に投入しても良い。また、順次容器に投入しても良い。容器は撹拌できる機構を備えている必要がある。窒素ガス等の不活性気体を注入して容器内を加圧することができる。また、加熱による溶媒の蒸気圧の上昇を利用して加圧しても良い。又は、容器を密閉後、各成分を加圧下で添加しても良い。
加熱する場合、容器の外周部より加熱する方法が好ましい。例えば、ジャケットタイプの加熱装置を用いることができる。また、容器の外部にプレートヒーターを設ける方法、配管して配管内に加熱した液体を循環させることにより容器全体を加熱することもできる。
容器内部に撹拌翼を設けて、これを用いて撹拌することが好ましい。撹拌翼は、容器の壁付近に達する長さのものが好ましい。撹拌翼の末端には、容器の壁の液膜を更新するため、掻取翼を設けることが好ましい。
容器には、圧力計、温度計等の計器類を設置しても良い。容器内で各成分を溶媒中に溶解する。調製したドープは冷却後容器から取り出すか、又は取り出した後、熱交換器等を用いて冷却する。
冷却溶解法により、溶液を調製することもできる。冷却溶解法では、通常の溶解方法では溶解させることが困難な有機溶媒中にも、セルロース誘導体を溶解させることができる。なお、通常の溶解方法でセルロース誘導体を溶解できる溶媒であっても、冷却溶解法を適用することにより、迅速で均一な溶液が得られる効果がある。
冷却溶解法では、最初に、室温で有機溶媒中にセルロース誘導体を撹拌しながら徐々に添加する。セルロース誘導体の量は、この混合物中に5〜40質量%の範囲内で含まれるように調整することが好ましい。セルロース誘導体の量は、10〜30質量%の範囲内であることが更に好ましい。更に、混合物中には前述の任意の添加剤を添加しておいても良い。
次に、混合物を−100〜−10℃(好ましくは−80〜−10℃、更に好ましくは−50〜−20℃、特に好ましくは−50〜−30℃)の範囲内で冷却する。冷却は、例えば、ドライアイス・メタノール浴(−75℃)や冷却したジエチレングリコール溶液(−30〜−20℃)中で実施できる。冷却により、セルロース誘導体と有機溶媒の混合物は固化する。
冷却速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることが更に好ましく、12℃/分以上であることが特に好ましい。冷却速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、冷却速度は、冷却を開始する時の温度と最終的な冷却温度との差を、冷却を開始してから最終的な冷却温度に達するまでの時間で割った値である。
更に、これを0〜200℃(好ましくは0〜150℃、更に好ましくは0〜120℃、より更に好ましくは0〜50℃)の範囲内に加温すると、有機溶媒中にセルロース誘導体が溶解する。昇温は、室温中に放置するだけでも良く、温浴中で加温しても良い。
加温速度は、4℃/分以上であることが好ましく、8℃/分以上であることが更に好ましく、12℃/分以上であることがより更に好ましい。加温速度は、速いほど好ましいが、10000℃/秒が理論的な上限であり、1000℃/秒が技術的な上限であり、そして100℃/秒が実用的な上限である。なお、加温速度は、加温を開始する時の温度と最終的な加温温度との差を、加温を開始してから最終的な加温温度に達するまでの時間で割った値である。
以上のようにして、均一な溶液が得られる。なお、溶解が不充分である場合は冷却、加温の操作を繰り返しても良い。溶解が充分であるかどうかは、目視により溶液の外観を観察するだけで判断することができる。
冷却溶解法においては、冷却時の結露による水分混入を避けるため、密閉容器を用いることが好ましい。また、冷却加温操作において、冷却時に加圧し、加温時に減圧すると、溶解時間を短縮することができる。加圧及び減圧を実施するためには、耐圧性容器を用いることが好ましい。
(ドープを流延する工程、ウェブを乾燥する工程)
上記のようにして調製したドープを、ドラム又はバンド上に流延し、溶媒を蒸発させてフィルムを形成する。流延前のドープは、固形分量が18〜35%の範囲内となるように濃度を調整することが好ましい。ドラム又はバンドの表面は、鏡面状態に仕上げておくことが好ましい。ドープは、表面温度が10℃以下のドラム又はバンド上に流延することが好ましい。
流延したドープをウェブとして乾燥する方法については、米国特許第2336310号明細書、同第2367603号明細書、同第2492078号明細書、同第2492977号明細書、同第2492978号明細書、同第2607704号明細書、同第2739069号明細書及び同第2739070号明細書の各文献、英国特許第640731号明細書及び同第736892号明細書の各文献、並びに特公昭45−4554号公報、同49−5614号公報、特開昭60−176834号公報、同60−203430号公報及び同62−115035号公報の各文献に記載がある。ドラム又はバンド上での乾燥は、流延膜に対し空気、窒素等の不活性ガスを送風することにより行うことができる。
調製したセルロース誘導体溶液(ドープ)を用いて2層以上の流延を行いフィルム化することもできる。この場合、流延前のドープは、固形分量が5〜40%の範囲内となるように濃度を調整することが好ましい。
(ウェブを延伸する工程)
上記のように乾燥して得たウェブをドラム又はバンドから剥離し、剥離したウェブを延伸する。
本発明の光学フィルムは、上記のとおり、光波長550nmで測定した面内位相差Ro(550)が120〜160nmの範囲内であることを特徴としており、上記のようにして形成したウェブを延伸することによって当該面内位相差Roを付与し得る。
本発明に適用が可能な延伸方法は、特に限定されず、例えば、複数のローラーに周速差をつけ、その間で、複数のローラー間での周速差を利用して縦方向に延伸する方法、ウェブの両端をクリップやピンで固定し、クリップやピンの間隔を進行方向に従って広げて縦方向に延伸する方法、同様に横方向に広げて横方向に延伸する方法、又は縦横同時に広げて縦横両方向に延伸する方法を、単独又は組み合わせて採用することができる。
すなわち、製膜方向に対して横方向に延伸しても、縦方向に延伸しても、両方向に延伸しても良く、更に両方向に延伸する場合は同時延伸であっても、逐次延伸であっても良い。なお、いわゆるテンター方式の場合、リニアドライブ方式でクリップ部分を駆動すると滑らかな延伸が行うことができ、破断等の危険性が減少できるので好ましい。
延伸工程としては、通常、幅手方向(TD方向)に延伸し、搬送方向(MD方向)に収縮させる場合が多いが、収縮させる際、斜め方向に搬送させると主鎖方向を合わせ易くなるため、位相差発現効果は更に大きい。収縮率は搬送させる角度によって決めることができる。
図1は、斜め延伸における収縮倍率を説明する模式図である。
図1において、光学フィルムFを斜め延伸方向12に斜め延伸する際に、光学フィルムFは、斜め屈曲されることでMに収縮する。すなわち、光学フィルムFを把持した把持具が屈曲角度θで屈曲せずにそのまま進行する場合、所定の時間で長さM′だけ進行するはずである。しかしながら、実際には、屈曲角度θで屈曲し、M(ただし、M=M′)だけ進行する。このとき、フィルムの入り方向(延伸方向(TD方向)11と直交する方向)には、把持具はMだけ進行しているため、光学フィルムFは、長さM(ただし、M=M−M)だけ収縮したこととなる。
このとき、収縮率(%)は、
収縮率(%)=(M−M)/M×100
で表される。屈曲角度をθとすると、
=M×sin(π−θ)
となり、収縮率は、
収縮率(%)=(1−sin(π−θ))×100
で表される。
また、図1において、光学フィルムFは、搬送方向(MD方向)13に搬送され、遅相軸14を有する。
長尺円偏光板の生産性を考慮すると、本発明の光学フィルムは、搬送方向に対する配向角が45±2°であることが、偏光フィルムとのロールtoロールでの貼合が可能となり好ましい。
(斜め延伸装置による延伸)
次いで、45°の方向に延伸する斜め延伸方法について、更に説明する。本発明の光学フィルムの製造方法において、延伸する光学フィルムに斜め方向の配向を付与する方法として、斜め延伸装置を用いることが好ましい。
本発明に適用可能な斜め延伸装置としては、レールパターンを多様に変化させることにより、フィルムの配向角を自在に設定でき、フィルムの配向軸をフィルム幅方向にわたって左右均等に高精度に配向させることができ、かつ、高精度でフィルム厚さやリターデーション値を制御できるフィルム延伸装置であることが好ましい。
図2は、本発明の光学フィルムの製造に適用可能な斜め延伸装置のレールパターンの一例を示した概略図である。なお、ここに示す図2は一例であって、本発明にて適用可能な斜め延伸装置はこれに限定されるものではない。
一般的に、斜め延伸装置においては、図2に示されるように、長尺のフィルム原反の繰出方向D1は、延伸後の延伸フィルムの巻取方向D2と異なっており、繰出角度θiを成している。繰出角度θiは0°超90°未満の範囲で、所望の角度に任意に設定することができる。なお、本明細書において、長尺とは、フィルムの幅に対し、少なくとも5倍程度以上の長さを有するものをいい、好ましくは10倍又はそれ以上の長さを有するものをいう。
長尺のフィルム原反は、斜め延伸装置入口(図中Aの位置)において、その両端を左右の把持具(テンター)によって把持され、把持具の走行に伴い走行される。左右の把持具は、斜め延伸装置入口(図中Aの位置)で、フィルムの進行方向(繰出方向D1)に対して略垂直な方向に相対している左右の把持具Ci、Coは、左右非対称なレールRi、Ro上を走行し、延伸終了時の位置(図中Bの位置)で、テンターで把持したフィルムを解放する。
このとき、斜め延伸装置入口(図中Aの位置)で相対していた左右の把持具は、左右非対称なレールRi、Ro上を走行するにつれて、Ri側を走行する把持具Ciは、Ro側を走行する把持具Coに対して進行する位置関係となる。
すなわち、斜め延伸装置入口(フィルムの把持具による把持開始位置)Aで、フィルムの繰出方向D1に対して略垂直な方向に相対していた把持具Ci、Coが、フィルムの延伸終了時の位置Bにある状態で、該把持具Ci、Coを結んだ直線がフィルムの巻取方向D2に対して略垂直な方向に対して角度θLだけ傾斜している。
以上の方法に従って、フィルム原反が斜め延伸されることとなる。ここで略垂直とは、90±1°の範囲にあることを示す。
上記のように構成される斜め延伸装置について更に詳しく説明する。
本発明の光学フィルムの製造に適用される斜め延伸装置は、フィルム原反を、延伸可能な任意の温度に加熱し、斜め延伸する装置である。この斜め延伸装置は、加熱ゾーンと、フィルムを搬送するための把持具が走行する左右で一対のレールと、該レール上を走行する多数の把持具とを備えている。斜め延伸装置の入口部に順次供給されるフィルムの両端を、把持具で把持し、加熱ゾーン内にフィルムを導き、斜め延伸装置の出口部で把持具からフィルムを開放する。把持具から開放されたフィルムは巻芯に巻き取られる。一対のレールは、それぞれ無端状の連続軌道を有し、斜め延伸装置の出口部でフィルムの把持を開放した把持具は、外側を走行して順次入口部に戻されるようになっている。
なお、斜め延伸装置のレールパターンは左右で非対称な形状となっており、製造すべき長尺延伸フィルムに与える配向角、延伸倍率等に応じて、そのレールパターンは手動で、又は自動で調整できるようになっている。本発明で用いられる斜め延伸装置では、各レール部及びレール連結部の位置を自由に設定し、レールパターンを任意に変更できることが好ましい(図2中の○部は連結部の一例を示している。)。
本発明において、斜め延伸装置の把持具は、前後の把持具と一定間隔を保って、一定速度で走行する。把持具の走行速度は適宜選択できるが、通常、1〜100m/分である。左右一対の把持具の走行速度の差は、走行速度の通常1%以下、好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.1%以下である。これは、延伸工程出口でフィルムの左右に進行速度差があると、延伸工程出口においてシワや寄りが発生するため、左右の把持具の速度差は、実質的に同速度であることが求められるためである。一般的な斜め延伸装置等では、チェーンを駆動するスプロケットの歯の周期、駆動モーターの周波数等に応じ、秒以下のオーダーで発生する速度ムラがあり、しばしば数%のムラを生ずるが、これらは本発明で述べる速度差には該当しない。
本発明に適用可能な斜め延伸装置において、特にフィルムの搬送が斜めになる箇所には、把持具の軌跡を規制するレールにしばしば大きい屈曲率が求められる。急激な屈曲による把持具同士の干渉、又は局所的な応力集中を避ける目的から、屈曲部では把持具の軌跡が曲線を描くようにすることが好ましい。
本発明において、長尺フィルム原反は斜め延伸装置入口(図中Aの位置)において、その両端を左右の把持具によって順次把持されて、把持具の走行に伴い走行される。斜め延伸装置入口(図中Aの位置)で、フィルム進行方向(繰出方向D1)に対して略垂直な方向に相対している左右の把持具は、左右非対称なレール上を走行し、予熱ゾーン、延伸ゾーン、熱固定ゾーンを有する加熱ゾーンを通過する。
予熱ゾーンとは、加熱ゾーン入口部において、両端を把持した把持具の間隔が一定の間隔を保ったまま走行する区間をさす。
延伸ゾーンとは、両端を把持した把持具の間隔が開きだし、所定の間隔になるまでの区間をさす。延伸ゾーンでは、上記のような斜め延伸が行われるが、必要に応じて斜め延伸前後において縦方向又は横方向に延伸しても良い。斜め延伸の場合、屈曲時に遅相軸とは垂直の方向であるMD方向(進相軸方向)への収縮を伴う。
熱固定ゾーンとは、延伸ゾーンより後の把持具の間隔が再び一定となる期間において、両端の把持具が互いに平行を保ったまま走行する区間をさす。熱固定ゾーンを通過した後に、ゾーン内の温度がフィルムを構成する樹脂のガラス転移温度Tg以下に設定される区間(冷却ゾーン)を通過しても良い。このとき、冷却によるフィルムの縮みを考慮して、あらかじめ対向する把持具間隔を狭めるようなレールパターンとしても良い。
各ゾーンの温度は、フィルムを構成する樹脂のガラス転移温度Tgに対し、予熱ゾーンの温度はTg〜Tg+30℃の範囲内で、延伸ゾーンの温度はTg〜Tg+30℃の範囲内で、冷却ゾーンの温度はTg−30℃〜Tgの範囲内で設定することが好ましい。
なお、幅方向の厚さムラを制御するために、延伸ゾーンにおいて幅方向に温度差をつけても良い。延伸ゾーンにおいて幅方向に温度差をつけるには、温風を恒温室内に送り込むノズルの開度を幅方向で差をつけるように調整する方法や、ヒーターを幅方向に並べて加熱制御する等の公知の手法を用いることができる。
予熱ゾーン、延伸ゾーン、収縮ゾーン及び冷却ゾーンの長さは適宜選択でき、延伸ゾーンの長さに対して、予熱ゾーンの長さは通常100〜150%の範囲内であり、固定ゾーンの長さは通常50〜100%の範囲内である。
延伸工程における延伸倍率(W/W0)は、好ましくは1.3〜3.0の範囲内であり、より好ましくは1.5〜2.8の範囲内である。延伸倍率がこの範囲にあると幅方向厚さムラを小さくすることができる。斜め延伸装置の延伸ゾーンにおいて、幅方向で延伸温度に差をつけると幅方向厚さムラを更に改善することが可能になる。なお、W0は延伸前のフィルムの幅、Wは延伸後のフィルムの幅を表す。
本発明において適用可能な斜め延伸方法としては、上記図2に示した方法のほかに、図3(a)〜(c)及び図4(a)、(b)に示す延伸方法を挙げることができる。
図3は、本発明に適用可能な製造方法の一例(長尺フィルム原反ローラーから繰り出してから斜め延伸する例)を示す概略図であり、一旦ロール状に巻き取られた長尺フィルム原反を繰り出して斜め延伸するパターンを示す。図4は、本発明に適用可能な他の製造方法の一例(長尺フィルム原反を巻き取らずに連続的に斜め延伸する例)を示す概略図であり、長尺フィルム原反を巻き取ることなく連続的に斜め延伸工程を行うパターンを示す。
図3に示す構成では、斜め延伸装置15、フィルム繰り出し装置16、搬送方向変更装置17及び巻取り装置18等が設けられている。また、図4に示す構成では、斜め延伸装置15、搬送方向変更装置17、巻取り装置18及び剥離・乾燥工程出口19等が設けられている。
図3は、フィルム繰り出し装置16から繰り出されるフィルムに対して斜め延伸を行う構成であり、図3(a)〜(c)は、フィルム繰り出し装置16の向き及び搬送方向変更装置17が設けられる位置をそれぞれ変更したものである。フィルム繰り出し装置16は、斜め延伸装置15入口に対して所定角度でフィルムを送り出せるように、スライド及び旋回可能に構成されている。また、フィルム繰り出し装置16は、図3(c)に示すように、スライド可能に構成され、搬送方向変更装置17により斜め延伸装置15入口にフィルムを送り出すように構成されていても良い。
図4は、剥離・乾燥工程出口19から搬送されてくるフィルムに対して直接的に斜め延を行う構成であり、図4(a)、(b)は、搬送方向変更装置17が設けられる位置を変更したものである。
フィルム繰り出し装置16又は剥離・乾燥工程出口19及び搬送方向変更装置17をこれらのような配置することにより、より製造装置全体の幅を狭くすることが可能となる他、フィルムの送り出し位置及び角度を細かく制御することが可能となる。これにより、膜厚及び光学値のバラツキが小さい長尺延伸フィルムを得ることが可能となる。なお、フィルム繰り出し装置16又は剥離・乾燥工程出口19及び搬送方向変更装置17を移動可能とすることにより、左右のクリップのフィルムへの噛込み不良を有効に防止することができる。
巻取り装置18は、斜め延伸装置15出口に対して所定角度でフィルムを引き取れるように配置されることにより、フィルムの引き取り位置及び角度を細かく制御することが可能となり、膜厚及び光学値のバラツキが小さい長尺延伸フィルムを得ることが可能となる。そのため、フィルムのシワの発生を有効に防止することができるとともに、フィルムの巻取り性が向上するため、フィルムを長尺で巻き取ることが可能となる。本発明において、延伸後のフィルムの引取り張力T(N/m)は、100N/m<T<300N/m、好ましくは150N/m<T<250N/mの範囲内で調整することである。
また、本発明の光学フィルムを製造する方法においては、上記のようにして巻き取ったフィルムを更に乾燥する乾燥工程、当該乾燥工程後にフィルムを再び巻き取る巻取工程を更に行うものとしても良い。
[溶融流延法]
本発明の光学フィルムは、上記説明した溶液流延法の他に、溶融流延法によって製造しても良い。溶融流延法は、セルロース誘導体及び可塑剤等の添加剤を含む組成物を、流動性を呈する温度まで加熱溶融し、その後、流動性を有する溶融物として流延する成形方法である。
加熱溶融する成形法としては、例えば、溶融押出成形法、プレス成形法、インフレーション法、射出成形法、ブロー成形法、延伸成形法等に分類することができる。これらの成形法の中では、機械的強度及び表面精度等の点から、溶融押出し法が好ましい。
溶融押出し法に用いられる複数の原材料は、通常、あらかじめ混錬してペレット化しておくことが好ましい。ペレット化は、公知の方法で行うことができ、例えば、乾燥セルロース誘導体や可塑剤、その他添加剤をフィーダーで押出機に供給し、一軸や二軸の押出機を用いて混錬し、ダイからストランド状に押し出し、水冷又は空冷し、カッティングすることで得ることができる。
添加剤は、押出機に供給する前に混合しておいても良いし、それぞれ個別のフィーダーで供給しても良い。なお、マット剤微粒子や酸化防止剤等の少量の添加剤は、均一に混合するため、事前に混合しておくことが好ましい。
ペレット化に用いる押出機は、剪断力を抑え、樹脂が劣化(分子量低下、着色、ゲル生成等)しないように、ペレット化可能でなるべく低温で加工する方式が好ましい。例えば、二軸押出機の場合、深溝タイプのスクリューを用いて、同方向に回転させることが好ましい。混錬の均一性から、噛み合いタイプが好ましい。
以上のようにして得られたペレットを用いてフィルム製膜を行う。もちろん、ペレット化せず、原材料の粉末をそのままフィーダーに投入して押出機に供給し、加熱溶融した後、そのままフィルム製膜することも可能である。
上記ペレットを一軸や二軸タイプの押出機を用いて、押し出す際の溶融温度としては200〜300℃の範囲内とし、リーフディスクタイプのフィルター等で濾過して異物を除去した後、Tダイからフィルム状に流延し、冷却ローラーと弾性タッチローラーでフィルムをニップし、冷却ローラー上で固化させる。
供給ホッパーから押出機へ導入する際は、真空下又は減圧下や不活性ガス雰囲気下で行って、酸化分解等を防止することが好ましい。
押出し流量は、ギヤポンプを導入する等して安定に行うことが好ましい。また、異物の除去に用いるフィルターは、ステンレス繊維焼結フィルターが好ましく用いられる。ステンレス繊維焼結フィルターは、ステンレス繊維体が複雑に絡み合った状態を作り出した上で圧縮し、接触箇所を焼結して一体化したもので、その繊維の太さと圧縮量により密度を変え、濾過精度を調整できる。
可塑剤や微粒子等の添加剤は、あらかじめ樹脂と混合しておいても良いし、押出機の途中で練り込んでも良い。均一に添加するために、スタチックミキサー等の混合装置を用いることが好ましい。
冷却ローラーと弾性タッチローラーでフィルムをニップする際のタッチローラー側のフィルム温度は、フィルムのTg〜Tg+110℃の範囲内とすることが好ましい。このような目的で使用する弾性体表面を有する弾性タッチローラーとしては、公知の弾性タッチローラーを使用することができる。弾性タッチローラーは、挟圧回転体ともいい、市販されているものを用いることもできる。
冷却ローラーからフィルムを剥離する際は、張力を制御してフィルムの変形を防止することが好ましい。
上記のようにして得られたフィルムは、冷却ローラーに接する工程を通過した後、延伸操作により延伸及び収縮処理を施すことができる。延伸及び収縮する方法は、上記のような公知のローラー延伸装置や斜め延伸装置等を好ましく用いることができる。延伸温度は、通常フィルムを構成する樹脂のTg〜Tg+60℃の温度範囲で行われることが好ましい。
巻き取る前に、製品となる幅に端部をスリットして裁ち落とし、巻き中の貼り付きや擦り傷防止のために、ナール加工(エンボッシング加工)を両端に施しても良い。ナール加工の方法は凸凹のパターンを側面に有する金属リングを加熱や加圧により加工することができる。なお、フィルム両端部のクリップの把持部分は通常、フィルムが変形しており製品として使用できないので切除されて、再利用される。
本発明の光学フィルムは、遅相軸と、後述する偏光子の透過軸との角度が実質的に45°になるように積層することにより、円偏光板とすることができる。なお、本発明でいう「実質的に45°」とは、40〜50°の範囲内であることをいう。
上記した本発明の光学フィルムの面内の遅相軸と偏光子の透過軸との角度とは、41〜49°の範囲内であることが好ましく、42〜48°の範囲内であることがより好ましく、43〜47°の範囲内であることが更に好ましく、44〜46°の範囲内であることが特に好ましい。
《円偏光板》
本発明の円偏光板は、長尺状の保護フィルム、長尺状の偏光子及び長尺状の本発明の光学フィルムをこの順に有する長尺ロールを断裁して作製される。本発明の円偏光板は、本発明の光学フィルムを用いて作製されるため、後述する有機EL表示装置等に適用することにより、可視光の全波長において、有機EL素子の金属電極の鏡面反射を遮蔽する効果を発現し得る。その結果、観察時の映り込みを防止することができるとともに、黒色表現を向上させることができる。
また、本発明の円偏光板は、紫外線吸収機能を備えていることが好ましい。視認側に配置される保護フィルムが紫外線吸収機能を備えていると、偏光子と有機EL素子の両方に対して紫外線に対する保護効果を発現でき、好ましい。更に、有機EL素子の発光体側(視認側と反対側)に配置される本発明の光学フィルムが紫外線吸収機能を備えていると、後述する有機EL表示装置に用いた場合に、より有機EL素子の劣化を抑制し得る。
また、本発明の円偏光板は、遅相軸の角度(すなわち配向角θ)を長手方向に対して「実質的に45°」となるように調整した本発明の光学フィルムを用いることにより、一貫した製造ラインにより接着剤層の形成、及び、偏光子と、位相差フィルムとしての本発明の光学フィルム光学フィルムとの貼り合わせが可能となる。具体的には、偏光膜を延伸して偏光子を作製する工程を終えた後、続いて行われる乾燥工程中又は乾燥工程後に、偏光子と光学フィルムを貼合する工程を組み込むことで、それぞれを連続的に供給することができる。更に、偏光子と光学フィルムの貼合後にロール状態で巻き取ることにより、次工程に一貫した製造ラインで繋げることができる。また、偏光子と光学フィルムを貼合する際に、同時に保護フィルムも供給し、連続的に貼合することもできる。性能及び生産効率の観点からは、偏光子に光学フィルムと保護フィルムとを同時に貼合する方が好ましい。すなわち、偏光膜を延伸して偏光子を作製する工程を終えた後、続いて行われる乾燥工程中又は乾燥工程後に、両側の面にそれぞれ保護フィルムと光学フィルムを接着剤により貼合し、巻き取ることでロール状態の円偏光板を得ることも可能である。
本発明の円偏光板は、偏光子を本発明の光学フィルムと保護フィルムによって挟持されてなることが好ましく、該保護フィルムの視認側に硬化層が積層されることがより好ましい。
当該円偏光板は、液晶表示装置や有機EL表示装置に具備することができるが、一例として有機EL表示装置に適用することにより、有機EL発光体の金属電極の鏡面反射を遮蔽する効果を発現する。
[保護フィルム]
本発明の円偏光板は、偏光子を本発明の光学フィルムと保護フィルムとによって挟持されて構成されていることが好ましい。
このような保護フィルムとしては、他のセルロースエステル含有フィルムが好適に用いられ、例えば、市販のセルロースエステルフィルムを用いることができる。例えば、コニカミノルタタックKC8UX、KC5UX、KC4UX、KC8UCR3、KC4SR、KC4BR、KC4CR、KC4DR、KC4FR、KC4KR、KC8UY、KC6UY、KC4UY、KC4UE、KC8UE、KC8UY−HA、KC2UA、KC4UA、KC6UAKC、2UAH、KC4UAH、KC6UAH(以上、コニカミノルタ(株)製)、フジタックT40UZ、フジタックT60UZ、フジタックT80UZ、フジタックTD80UL、フジタックTD60UL、フジタックTD40UL、フジタックR02、フジタックR06(以上、富士フイルム(株)製)等が好ましく用いられる。保護フィルムの厚さは、特に制限されないが、10〜200μmの範囲内とすることができ、好ましくは10〜100μmの範囲内であり、より好ましくは10〜70μmの範囲内である。
[偏光子]
偏光子は、一定方向の偏波面の光だけを通す素子であり、その例には、ポリビニルアルコール系偏光フィルムが挙げられる。ポリビニルアルコール系偏光フィルムには、ポリビニルアルコール系フィルムにヨウ素を染色させたものと、二色性染料を染色させたものとがある。
偏光子は、ポリビニルアルコールフィルムを一軸延伸した後、染色するか、又はポリビニルアルコールフィルムを染色した後、一軸延伸して、好ましくはホウ素化合物で耐久性処理を更に行って得ることができる。偏光子の膜厚は、5〜30μmの範囲内であることが好ましく、5〜15μmの範囲内であることがより好ましい。
ポリビニルアルコールフィルムとしては、例えば、特開2003−248123号公報、特開2003−342322号公報等に記載の、エチレン単位の含有量1〜4モル%、重合度2000〜4000、ケン化度99.0〜99.99モル%のエチレン変性ポリビニルアルコールが好ましく用いられる。また、特開2011−100161号公報、特許第4691205号公報、特許第4804589号公報に記載の方法で、偏光子を作製し本発明の光学フィルムと貼り合わせて偏光板を作製することが好ましい。
[光硬化性接着剤]
本発明の光学フィルムと偏光子との貼り合わせは、特に限定はないが、当該光学フィルムをケン化処理した後、完全ケン化型のポリビニルアルコール系接着剤を用いて行うことができる。また、活性光線硬化性接着剤等を用いて貼り合わせることもできるが、得られる接着剤層の弾性率が高く、偏光板の変形を抑制しやすい点などから、光硬化性接着剤を用いることが好ましい。
光硬化性接着剤の好ましい例としては、特開2011−028234号公報に開示されているような、(α)カチオン重合性化合物、(β)光カチオン重合開始剤、(γ)380nmより長い波長の光に極大吸収を示す光増感剤、及び(δ)ナフタレン系光増感助剤の各成分を含有する光硬化性接着剤組成物が挙げられる。ただし、これ以外の光硬化性接着剤が用いられても良い。
[円偏光板の製造方法]
以下、光硬化性接着剤を用いた円偏光板の製造方法の一例を説明する。円偏光板は、(1)光学フィルムの偏光子を接着する面を易接着処理する前処理工程、(2)偏光子と光学フィルムとの接着面のうち少なくとも一方に、下記の光硬化性接着剤を塗布する接着剤塗布工程、(3)得られた接着剤層を介して偏光子と光学フィルムとを貼り合わせる貼合工程、及び(4)接着剤層を介して偏光子と光学フィルムとが貼り合わされた状態で接着剤層を硬化させる硬化工程、を含む製造方法によって製造することができる。(1)の前処理工程は、必要に応じて実施すれば良い。
(前処理工程)
前処理工程では、光学フィルムの、偏光子との接着面に易接着処理を行う。偏光子の両面にそれぞれ光学フィルムを接着させる場合は、それぞれの光学フィルムの、偏光子との接着面に易接着処理を行う。易接着処理としては、例えば、コロナ処理、プラズマ処理等が挙げられる。
(接着剤塗布工程)
接着剤塗布工程では、偏光子と光学フィルムとの接着面のうち少なくとも一方に、上記光硬化性接着剤を塗布する。偏光子又は光学フィルムの表面に直接光硬化性接着剤を塗布する場合、その塗布方法に特別な限定はない。例えば、ドクターブレード、ワイヤーバー、ダイコーター、カンマコーター、グラビアコーター等、種々の塗工方式が利用できる。また、偏光子と光学フィルムの間に、光硬化性接着剤を流延させた後、ローラー等で加圧して均一に押し広げる方法も利用できる。
(貼合工程)
光硬化性接着剤を塗布した後、貼合工程を行う。貼合工程では、例えば、先の接着剤塗布工程で偏光子の表面に光硬化性接着剤を塗布した場合、そこに光学フィルムを重ね合わせる。先の接着剤塗布工程で光学フィルムの表面に光硬化性接着剤を塗布した場合は、そこに偏光子を重ね合わせる。また、偏光子と光学フィルムの間に光硬化性接着剤を流延させた場合は、その状態で偏光子と光学フィルムとを重ね合わせる。偏光子の両面に光学フィルムを接着する場合であって、両面とも光硬化性接着剤を用いる場合は、偏光子の両面にそれぞれ、光硬化性接着剤を介して光学フィルムを重ね合わせる。そして、通常は、重ね合わせた状態で両側(偏光子の片面に光学フィルムを重ね合わせた場合は偏光子側と光学フィルム側、偏光子の両面に光学フィルムを重ね合わせた場合はその両面の光学フィルム側)からローラー等で挟んで加圧する。ローラーの材質は、例えば、金属やゴム等を用いることが可能である。両面に配置されるローラーは、同じ材質であっても良いし、異なる材質であっても良い。
(硬化工程)
硬化工程では、未硬化の光硬化性接着剤に活性エネルギー線を照射して、エポキシ化合物やオキセタン化合物を含む接着剤層を硬化させる。それにより、光硬化性接着剤を介して重ね合わせた偏光子と光学フィルムとを接着させる。偏光子の片面に光学フィルムを貼合する場合、活性エネルギー線は、偏光子側又は光学フィルム側のいずれから照射しても良い。また、偏光子の両面に光学フィルムを貼合する場合、偏光子の両面にそれぞれ光硬化性接着剤を介して光学フィルムを重ね合わせた状態で、いずれか一方の光学フィルム側から活性エネルギー線を照射し、両面の光硬化性接着剤を同時に硬化させるのが有利である。
活性エネルギー線としては、例えば、可視光線、紫外線、X線、電子線等を用いることができ、取扱いが容易で硬化速度も十分であることから、一般的には、電子線又は紫外線が好ましく用いられる。
電子線の照射条件は、光硬化性接着剤を硬化し得る条件であれば、任意の適切な条件を採用できる。例えば、電子線照射は、加速電圧が好ましくは5〜300kVの範囲内であり、更に好ましくは10〜250kVの範囲内である。加速電圧が5kV以上であると、電子線が光硬化性接着剤に到達して十分に硬化させることができ、加速電圧が300kV以下であると、試料を通る浸透力が強くなり過ぎず、電子線が跳ね返ることによる光学フィルムや偏光子へのダメージをより確実に抑制することができる。照射線量としては、5〜100kGyの範囲内、更に好ましくは10〜75kGyの範囲内である。照射線量が5kGy以上であると、光硬化性接着剤を十分に硬化させることができ、100kGy以下であると、光学フィルムや偏光子にダメージを与えることがなく、機械的強度の低下や黄変の発生を抑制し、所定の光学特性を得ることができる。
紫外線の照射条件は、光硬化性接着剤を硬化し得る条件であれば、任意の適切な条件を採用できる。例えば、紫外線の照射量は、積算光量で50〜1500mJ/cmの範囲内であることが好ましく、100〜500mJ/cmの範囲内であることが更に好ましい。
以上のようにして得られた円偏光板において、接着剤層の層厚は、特に限定されないが、通常0.01〜10μmの範囲内であり、好ましくは0.5〜5μmの範囲内である。
《有機EL表示装置》
本発明の有機EL表示装置は、上記の本発明の円偏光板を具備して作製される。
より詳細には、本発明の有機EL表示装置は、本発明の光学フィルムを用いた円偏光板と、有機EL素子とを備える。そのため、本発明の有機EL表示装置は、観察時の映り込みが防止されており、黒色表現が向上されている。有機EL表示装置の画面サイズは特に限定されず、20インチ以上とすることができる。
図5は、本発明の有機EL表示装置の構成の概略的な説明図である。なお、本発明の有機EL表示装置の構成は、図5に示されるものに何ら限定されるものではない。
図5に示されるように、有機EL表示装置Aは、有機EL素子B上に円偏光板Cを積層して構成されている。有機EL素子Bは、ガラスやポリイミド等を用いた透明基板101上に順に金属電極102、TFT103、有機発光層104、透明電極(ITO等)105、絶縁層106、封止層107及びフィルム108(省略可)を積層して構成されている。このように構成される有機EL素子Bの厚さは1μm程度である。また、円偏光板Cは、偏光子110が上記した本発明の光学フィルムである位相差フィルム109と保護フィルム111によって挟持されて構成されている。また、円偏光板Cの保護フィルム111上には、硬化層112が積層されていることが好ましい。これにより、有機EL表示装置Aの表面のキズを防止できるとともに、円偏光板Cによる反りを防止することができる。更に、円偏光板Cの硬化層112上には、反射防止層113が積層されていても良い。
一般に、有機EL表示装置は、透明基板上に、金属電極、有機発光層及び透明電極を順に積層されて発光体である素子(有機EL素子)が構成されている。ここで、有機発光層は、種々の有機薄膜の積層体であり、例えばトリフェニルアミン誘導体等からなる正孔注入層と、アントラセン等の蛍光性の有機固体からなる発光層との積層体や、このような発光層とペリレン誘導体等からなる電子注入層の積層体、又はこれらの正孔注入層、発光層及び電子注入層の積層体等、種々の組み合わせをもった構成が知られている。
有機EL表示装置は、透明電極と金属電極とに電圧を印加することによって、有機発光層に正孔と電子とが注入され、これら正孔と電子との再結合によって生じるエネルギーが蛍光物資を励起し、励起された蛍光物質が基底状態に戻るときに光を放射する、という原理で発光する。途中の再結合というメカニズムは、一般のダイオードと同様であり、このことからも予想できるように、電流と発光強度は印加電圧に対して整流性を伴う強い非線形性を示す。
有機EL表示装置においては、有機発光層からの発光光を取り出すために、少なくとも一方の電極が透明であることが必要であり、通常、酸化インジウムスズ(ITO)等の透明導電体で形成した透明電極を陽極として用いていることが好ましい。一方、電子注入を容易にして発光効率を上げるには、陰極に仕事関数の小さな物質を用いることが重要で、通常Mg−Ag、Al−Li等の金属電極を用いている。
本発明の円偏光板は、画面サイズが20インチ以上、すなわち対角線距離が50.8cm以上の大型画面からなる有機EL表示装置に適用することができる。
このような構成の有機EL表示装置において、有機発光層は、厚さ10nm程度と極めて薄い膜で形成されている。そのため、有機発光層も透明電極と同様、光をほぼ完全に透過する。その結果、非発光時に透明基板の表面から入射し、透明電極と有機発光層とを透過して金属電極で反射した光が、再び透明基板の表面側へと出るため、外部から視認したとき、有機EL表示装置の表示面が鏡面のように見える。
このような有機EL表示装置の透明電極の表面側(視認側)には円偏光板が設けられ、円偏光板は、外部から入射して金属電極で反射してきた光を偏光する作用を有するため、その偏光作用によって金属電極の鏡面を外部から視認させないようにすることができる。
すなわち、有機EL表示装置に入射する外部光は、偏光子により直線偏光成分のみが透過し、この直線偏光は本発明の光学フィルムにより円偏光となる。
この円偏光は、透明基板、透明電極、有機薄膜を透過し、金属電極で反射して、再び有機薄膜、透明電極、透明基板を透過して直線偏光となる。そして、この直線偏光は、偏光子の偏光方向と直交しているので、円偏光板を透過できない。その結果、金属電極の鏡面を完全に遮蔽することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量%」を表す。また、以下に示す置換度、置換基数は、いずれも平均値を表す。
また、以下の各実施例で示す芳香族環を有する置換基について、220〜800nmまでの波長領域における極大吸収波長を、日本分光社製のV−650にて測定した。芳香族環を有する置換基は、いずれもメチル基を結合させた構造とし、メチレンクロリドに溶解し、最大の吸収極大の吸光度が1.0となるよう濃度調整し測定を行った。
[実施例1]
《セルロース誘導体A−1の合成》
メカニカルスターラー、温度計、冷却管及び滴下ロートを装着した3Lの三ツ口フラスコに、アセチル基置換度が2.4のセルロースアセテート(イーストマンケミカル製「CA−394−60s」、重量平均分子量Mw:160000)を250g、ピリジンを114mL、アセトンを3000mL、それぞれ添加し、室温で撹拌した。ここに、13gのベンゾイルクロリドをゆっくりと滴下し、添加した後、更に50℃にて8時間撹拌した。反応後、室温に戻るまで放冷し、反応溶液を激しく撹拌しながらメタノール20Lへ投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引濾過により濾別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた白色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することにより目的のセルロース誘導体A−1を得た。
上記合成したセルロース誘導体A−1のグルコース骨格が有する置換基の置換度について、Cellulose Communication 6,73−79(1999)及びChrality 12(9),670−674に記載の方法に準じて、H−NMR及び13C−NMRにより測定し、その平均値を求めた結果、芳香族環を有する置換基であるベンゾイル基の置換度は0.1であり、アセチル基の置換度は2.4であり、総置換度は2.5であった。
上記合成したセルロース誘導体A−1の重量平均分子量Mwを、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定した結果、165000であった。具体的な測定条件を以下に示す。
溶媒:メチレンクロライド
カラム:Shodex K806、K805、K803G(昭和電工(株)製のカラムを3本接続して使用した)
カラム温度:25℃
試料濃度:0.1質量%
検出器:RI Model 504(GLサイエンス社製)
ポンプ:L6000(日立製作所(株)製)
流量:1.0mL/min
校正曲線:標準ポリスチレンSTK standard ポリスチレン(東ソー(株)製)でMwが500〜1000000の範囲内にある13サンプルによる校正曲線を使用した。13サンプルは、ほぼ等間隔に用いる。
《セルロース誘導体A−10の合成》
メカニカルスターラー、温度計、冷却管及び滴下ロートを装着した3Lの三ツ口フラスコに、アセチル基置換度が1.5、プロピオニル基置換度が0.9のセルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル製、重量平均分子量Mw:170000)250g、ピリジンを114mL、アセトンを3000mLそれぞれ添加し、室温で撹拌した。ここに、13gのベンゾイルクロリドをゆっくりと滴下し、添加した後、更に50℃にて8時間撹拌した。反応後、室温に戻るまで放冷し、反応溶液を激しく撹拌しながらメタノール10Lへ投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引濾過により濾別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた白色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することにより目的のセルロース誘導体A−10を得た。
上記セルロース誘導体A−1の場合と同様の方法で、セルロース誘導体A−10のグルコース骨格が有する置換基の置換度について求めた結果、芳香族環を有する置換基であるベンゾイル基の置換度は0.1であり、アセチル基の置換度は1.5であり、プロピオニル基の置換度は0.9であり、総置換度は2.5であった。
また、上記セルロース誘導体A−1と同様の方法で、セルロース誘導体A−10の重量平均分子量Mwを求めた結果、172000であった。
《セルロース誘導体A−2〜A−5、A−7〜A−9、A−11〜A−13の合成》
上記セルロース誘導体A−1の合成において、原料のセルロースエステルの種類及び量、その他の反応条件等を適宜変更して、表1に記載の置換度となるようにした以外は同様にして、セルロース誘導体A−2〜A−5、A−7〜A−9、A−11〜A−13を得た。
また、上記セルロース誘導体A−1と同様の方法で、セルロース誘導体A−2〜A−5、A−7〜A−9、A−11〜A−13の重量平均分子量Mwを求めた結果、それぞれ、セルロース誘導体A−2は163000、セルロース誘導体A−3は162000、セルロース誘導体A−4は156000、セルロース誘導体A−5は155000、セルロース誘導体A−7は151000、セルロース誘導体A−8は172000、セルロース誘導体A−9は173000、セルロース誘導体A−11は171000、セルロース誘導体A−12は174000、セルロース誘導体A−13は180000であった。
《位相差フィルムA1の作製》
(微粒子分散液の調製)
微粒子(アエロジル R812 日本アエロジル(株)製) 11質量部
エタノール 89質量部
以上をディゾルバーで50分間撹拌混合した後、マントンゴーリン分散機を用いて分散を行い、微粒子分散液を調製した。
(微粒子添加液1の調製)
溶解タンクにジメチルクロライドを50質量部入れ、ジメチルクロライドを十分に撹拌しながら上記調製した微粒子分散液50質量部をゆっくりと添加した。更に、二次粒子の粒径が、所定の大きさとなるようにアトライターにて分散を行った。これを日本精線(株)製のファインメットNFで濾過して、微粒子添加液1を調製した。
(ポリエステルの調製)
1,2−プロピレングリコール251g、無水フタル酸278g、アジピン酸91g、安息香酸610g、エステル化触媒としてテトライソプロピルチタネート0.191gを、温度計、撹拌器、緩急冷却管を備えた2Lの四ツ口フラスコに仕込み、窒素気流中230℃になるまで、撹拌しながら徐々に昇温した。15時間脱水縮合反応させ、反応終了後200℃で未反応の1,2−プロピレングリコールを減圧留去することにより、可塑剤としてのポリエステルを得た。酸価0.10mgKOH/g、数平均分子量450であった。
(ドープの調製)
始めに、加圧溶解タンクに下記に示すジメチルクロライドとエタノールを添加した。有機溶媒の入った加圧溶解タンクに、上記合成したセルロース誘導体A−1及びポリエステルを撹拌しながら投入した。これを加熱し、撹拌しながら、完全に溶解した。次いで、微粒子添加液1を添加した後、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、ドープを調製した。
〈ドープの組成〉
ジメチルクロライド 340質量部
エタノール 64質量部
セルロース誘導体A−1 100質量部
ポリエステル(可塑剤) 5質量部
微粒子添加液1 2質量部
(製膜)
上記調製したドープを、ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)した後、ステンレスベルト支持体上からフィルムを剥離した。
剥離した原反フィルムを、加熱しながらテンターを用いて、幅手方向(TD方向)にのみ一軸延伸し、搬送方向(MD方向)には収縮しないように搬送張力を調整した。
次いで、乾燥ゾーンを多数のローラーを介して搬送させながら乾燥を終了させ、ロール状の原反フィルムを作製した。フィルムの延伸率は10%、厚さは略100μmとした。
(延伸工程)
この原反フィルムを、図2に記載の構成からなる斜め延伸装置を用いて、搬送方向に対して、フィルムの光学遅相軸が45°となるよう斜め方向に延伸することでロール状の位相差フィルムA1(本発明の光学フィルム)を作製した。
なお、延伸条件としては、斜め延伸率100%、収縮率20%とし、光波長550nmでのフィルム面内の位相差値Ro(550)、Ro(450)/Ro(550)を測定した。
《位相差フィルムA2〜A15の作製》
上記位相差フィルムA1の作製において、セルロース誘導体A−1に代えて、それぞれセルロース誘導体A−2〜A−5、A−7〜A−13を用いた以外は同様にして、位相差フィルムA2〜A5、A7〜A13を作製した。
また、位相差フィルムA1の作製において、セルロース誘導体A−1に代えて、セルロースエステルA−6(アセチル基置換度:1.6、重量平均分子量Mw:150000のセルロースアセテート)を用いた以外は同様にして、位相差フィルムA6を作製した。
また、位相差フィルムA1の作製において、可塑剤としてのポリエステルを添加しなかった以外は同様にして、位相差フィルムA14を作製した。
また、位相差フィルムA1の作製において、セルロース誘導体A−1に代えて、セルロースエステルA−15(イーストマンケミカル製「CA−394−60s」、アセチル基置換度:2.4、重量平均分子量Mw:160000)を用い、可塑剤としてのポリエステルを添加しなかった以外は同様にして、位相差フィルムA15を作製した。
《円偏光板A1〜A15の作製》
厚さ120μmのポリビニルアルコールフィルムを、一軸延伸(温度110℃、延伸倍率5倍)した。これをヨウ素0.075g、ヨウ化カリウム5g、水100gからなる水溶液に60秒間浸漬し、次いでヨウ化カリウム6g、ホウ酸7.5g、水100gからなる68℃の水溶液に浸漬した。これを水洗、乾燥して偏光子を得た。
上記作製した各位相差フィルムA1〜A15の遅相軸と、偏光子の吸収軸とが45°となるように、紫外線硬化性接着剤を用いて貼合し、偏光子の裏面側には保護フィルム(コニカミノルタタックKC4UY、厚さ40μm、コニカミノルタ(株)製)を水糊によって貼り合わせ、円偏光板A1〜A15を作製した。
《有機EL表示装置A1〜A15の作製》
3mm厚の50インチ(127cm)用無アルカリガラスを用いて、特開2010−20925号公報の実施例に記載されている方法に準じて、特開2010−20925号公報の図8に記載された構成からなる有機ELセルを作製した。
上記作製した各円偏光板A1〜A15の位相差フィルムの表面に接着剤を塗工した後、有機ELセルの視認側に貼合することで有機EL表示装置A1〜A15を作製した。
《有機EL表示装置A1〜A15の評価》
上記作製した各有機EL表示装置A1〜A15について、以下の評価を行った。評価結果を表1に示す。
(1)黒の色味の評価
23℃、55%RHの低湿環境下で、各有機EL表示装置の最表面から5cm高い位置での照度が1000Lxとなる条件下で、有機EL表示装置に黒画像を表示した。
各有機EL表示装置の正面位置(面法線に対し0°)と、面法線に対し40°の斜め角度からの黒画像の色味を比較観察し、観測位置による黒の色味への影響の有無を一般モニター10人により以下の基準に従って評価した。なお、△以上であれば、黒の色味の観測位置違いの視認性としては実用上可と判断した。
◎:9人以上のモニターが、表示された黒の色味に観測位置による影響はなしと判定した
○:7〜8人のモニターが、表示された黒の色味に観測位置による影響はなしと判定した
△:5〜6人のモニターが、表示された黒の色味に観測位置による影響はなしと判定した
×:4人以下のモニターが、表示された黒の色味に観測位置による影響はなしと判定した
(2)反射性能の評価
上記有機EL表示装置の作製において、有機ELセルを作製した段階で、当該有機ELセルの視認側表面にマジックインキで赤、青、緑の線を付与した以外は同様にして、評価用の有機EL表示装置を作製した。
作製した赤、青、緑の線を有する有機EL表示について、23℃、55%RHの常湿環境下で、各有機EL表示装置の最表面から5cm高い位置での照度が1000Lxとなる条件下で、有機EL表示装置に付したマジックインキの線の視認性(反射性能)を、一般モニター10人により以下の基準に従って評価した。なお、△以上であれば、反射性能としては実用上可と判断した。ここでいう反射性能とは、円偏光板の表面の反射でなく、円偏光板の内部に入った有機ELセルにおける反射をいう。
◎:9人以上のモニターが、マジックインキの線はいずれの色も見えないと判定した
◎○:8人のモニターが、マジックインキの線はいずれの色も見えないと判定した
○:7人のモニターが、マジックインキの線はいずれの色も見えないと判定した
△:5〜6人のモニターが、マジックインキの線のうち2本の色が見えないと判定した
×:4人以下のモニターが、マジックインキの線のうち2本の色が見えないと判定した
(3)湿度安定性の評価1:黒の色味安定性
23℃、20%RHの低湿環境下で、各有機EL表示装置の最表面から5cm高い位置での照度が1000Lxとなる条件下で、有機EL表示装置に黒画像を表示した。次いで、23℃、80%RHの高湿環境下で、同様に黒画像を表示した。
上記二つの環境下で、各有機EL表示装置の正面位置(面法線に対し0°)と、面法線に対し40°の斜め角度からの黒画像の色味を比較観察し、湿度による黒の色味への影響の有無を一般モニター10人により以下の基準に従って評価した。なお、△以上であれば、黒の色味の湿度安定性としては実用上可と判断した。
◎:9人以上のモニターが、表示された黒の色味に湿度影響はなしと判定した
○:7〜8人のモニターが、表示された黒の色味に湿度影響はなしと判定した
△:5〜6人のモニターが、表示された黒の色味に湿度影響はなしと判定した
×:4人以下のモニターが、表示された黒の色味の湿度影響はなしと判定した
(4)湿度安定性の評価2:反射性能安定性
上記有機EL表示装置の作製において、有機ELセルを作製した段階で、当該有機ELセルの視認側表面にマジックインキで赤、青、緑の線を付与した以外は同様にして、評価用の有機EL表示装置を作製した。
作製した赤、青、緑の線を有する有機EL表示について、23℃、20%RHの低湿環境下で、各有機EL表示装置の最表面から5cm高い位置での照度が1000Lxとなる条件下で、有機EL表示装置に付したマジックインキの線の視認性(反射性能)を評価した。次いで、23℃、80%RHの高湿環境下で、同様にマジックインキの線の視認性(反射性能)を、一般モニター10人により以下の基準に従って評価した。なお、△以上であれば、反射性能の湿度安定性としては実用上可と判断した。ここでいう反射性能とは、円偏光板の表面の反射でなく、円偏光板の内部に入った有機ELセルにおける反射をいう。
◎:9人以上のモニターが、マジックインキの線の視認性に湿度影響はなしと判定した
○:7〜8人のモニターが、マジックインキの線の視認性に湿度影響はなしと判定した
△:5〜6人のモニターが、マジックインキの線の視認性に湿度影響はなしと判定した
×:4人以下のモニターが、マジックインキの線の視認性に湿度影響はなしと判定した
Figure 2016080876
表1に記載の結果より明らかなように、本発明で規定する構成からなる位相差フィルムを有する円偏光板を具備した本発明の有機EL表示装置は、比較例の有機EL表示装置に対し、観測位置違いによる黒の色味の視認性及び反射性能に優れており、湿度環境が大きく変化しても、黒の色味安定性及び反射性能安定性に優れていることが分かる。
すなわち、芳香族環を有する置換基の置換度がグルコース骨格単位当たり、0.05〜0.6の範囲内であるセルロース誘導体を用いた光学フィルムを有する有機EL表示装置は、黒の色味の視認性及び反射性能に優れ、その湿度変動が小さい。芳香族環を有する置換基の置換度が0.05未満であるセルロース誘導体A−5、A−6、A−15を用いた有機EL表示装置A5、A6、A15は黒の色味の視認性及び反射性能の湿度依存性が大きいことが分かる。芳香族環を有する置換基の置換度が0.6超であるセルロース誘導体A−3を用いた有機EL表示装置A3は黒の色味の視認性及び反射性能に劣ることが分かる。
[実施例2]
《セルロース誘導体A−16の合成》
メカニカルスターラー、温度計、冷却管及び滴下ロートを装着した3Lの三ツ口フラスコに、アセチル基置換度が2.4のセルロースアセテート(イーストマンケミカル製「CA−394−60s」、重量平均分子量Mw:160000)を250g、ピリジンを114mL、アセトンを3000mL、それぞれ添加し、室温で撹拌した。ここに、26gのベンゾイルクロリドをゆっくりと滴下し、添加した後、更に50℃にて8時間撹拌した。反応後、室温に戻るまで放冷し、反応溶液を激しく撹拌しながらメタノール20Lへ投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引濾過により濾別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた白色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することにより目的のセルロース誘導体A−16を得た。
上記実施例1のセルロース誘導体A−1の場合と同様の方法で、セルロース誘導体A−16のグルコース骨格が有する置換基の置換度について求めた結果、芳香族環を有する置換基であるベンゾイル基の置換度は0.2であり、アセチル基の置換度は2.4であり、総置換度は2.6であった。
また、上記実施例1のセルロース誘導体A−1の場合と同様の方法で、セルロース誘導体A−16の重量平均分子量Mwを求めた結果、165000であった。
《位相差フィルムA16の作製》
(ドープの調製)
始めに、加圧溶解タンクに下記に示すジメチルクロライドとエタノールを添加した。有機溶媒の入った加圧溶解タンクに、上記合成したセルロース誘導体A−16、当該セルロース誘導体A−16の合成に用いたセルロースアセテート及びポリエステルを撹拌しながら投入した。これを加熱し、撹拌しながら、完全に溶解した。次いで、微粒子添加液1を添加した後、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、ドープを調製した。なお、ポリエステル及び微粒子添加液1は、上記実施例1における位相差フィルムA1の作製と同様の方法で調製した。
〈ドープの組成〉
ジメチルクロライド 340質量部
エタノール 64質量部
セルロース誘導体A−16の合成に用いたセルロースアセテート 80質量部
セルロース誘導体A−16 20質量部
ポリエステル(可塑剤) 5質量部
微粒子添加液1 2質量部
(製膜)
上記調製したドープを、ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)した後、ステンレスベルト支持体上からフィルムを剥離した。
剥離した原反フィルムを、加熱しながらテンターを用いて、幅手方向(TD方向)にのみ一軸延伸し、搬送方向(MD方向)には収縮しないように搬送張力を調整した。
次いで、乾燥ゾーンを多数のローラーを介して搬送させながら乾燥を終了させ、ロール状の原反フィルムを作製した。フィルムの延伸率は10%、膜厚は略100μmとした。
(延伸工程)
この原反フィルムを、図2に記載の構成からなる斜め延伸装置を用いて、搬送方向に対して、フィルムの光学遅相軸が45°となるよう斜め方向に延伸することでロール状の位相差フィルムA16を作製した。
なお、延伸条件としては、斜め延伸率100%、収縮率19%とし、光波長550nmでのフィルム面内の位相差値Ro(550)、Ro(450)/Ro(550)を測定した。
《位相差フィルムA17〜A28の作製》
上記位相差フィルムA16の作製において、使用するセルロース誘導体の種類及びセルロース誘導体の混合比率を表2に記載のとおりに変更した以外は同様にして、位相差フィルムA17〜A28を作製した。
《円偏光板A16〜A28の作製》
上記作製した各位相差フィルムA16〜A28を用いて、上記実施例1における円偏光板A1〜A15の作製と同様にして、円偏光板A16〜A28を作製した。
《有機EL表示装置A16〜A28の作製》
上記作製した各円偏光板A16〜A28を用いて、上記実施例1における有機EL表示装置A1〜A15の作製と同様にして、有機EL表示装置A16〜A28を作製した。
《有機EL表示装置A16〜A28の評価》
上記作製した各有機EL表示装置A16〜A28について、実施例1と同様に、黒の色味の評価、反射性能の評価、湿度安定性の評価として黒の色味安定性及び反射性能安定性の評価を行った。評価結果を表2に示す。
Figure 2016080876
表2に記載の結果より明らかなように、本発明で規定する構成からなる位相差フィルムを有する円偏光板を具備した本発明の有機EL表示装置は、比較例の有機EL表示装置に対し、観測位置違いによる黒の色味の視認性及び反射性能に優れており、湿度環境が大きく変化しても、黒の色味安定性及び反射性能安定性に優れていることが分かる。その中でも、混合比率が20〜50質量%の位相差フィルムA16、A17、A24〜A26を使用した有機EL表示装置は、Ro(450)/Ro(550)の値を増大させることなく、Ro(550)の値を増大させられることが分かる。これにより、膜厚を薄くすることが可能である。
[実施例3]
《セルロース誘導体B−1の合成》
メカニカルスターラー、温度計、冷却管及び滴下ロートを装着した3Lの三ツ口フラスコに、アセチル基置換度が2.4のセルロースアセテート(イーストマンケミカル製「CA−394−60s」、重量平均分子量Mw:160000)を250g、ピリジンを114mL、アセトンを3000mL、それぞれ添加し、室温で撹拌した。ここに、10gのフェニルイソシアネートをゆっくりと滴下し、添加した後、更に50℃にて8時間撹拌した。反応後、室温に戻るまで放冷し、反応溶液を激しく撹拌しながらメタノール20Lへ投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引濾過により濾別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた白色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することにより目的のセルロース誘導体B−1を得た。
上記実施例1のセルロース誘導体A−1の場合と同様の方法で、セルロース誘導体B−1のグルコース骨格が有する置換基の置換度について求めた結果、芳香族環を有する置換基であるフェニルカルバモイル基の置換度は0.1であり、アセチル基の置換度は2.4であり、総置換度は2.5であった。
また、上記実施例1のセルロース誘導体A−1の場合と同様の方法で、セルロース誘導体B−1の重量平均分子量Mwを求めた結果、166000であった。
《セルロース誘導体B−9の合成》
メカニカルスターラー、温度計、冷却管及び滴下ロートを装着した3Lの三ツ口フラスコに、アセチル基置換度が1.5、プロピオニル基置換度が0.9のセルロースアセテートプロピオネート(イーストマンケミカル製、重量平均分子量Mw:170000)250g、ピリジンを114mL、アセトンを3000mL、それぞれ添加し、室温で撹拌した。ここに、20gのフェニルイソシアネートをゆっくりと滴下し、添加した後、更に50℃にて8時間撹拌した。反応後、室温に戻るまで放冷し、反応溶液を激しく撹拌しながらメタノール10Lへ投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引濾過により濾別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた白色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することにより目的のセルロース誘導体B−9を得た。
上記実施例1のセルロース誘導体A−1の場合と同様の方法で、セルロース誘導体B−9のグルコース骨格が有する置換基の置換度について求めた結果、芳香族環を有する置換基であるフェニルカルバモイル基の置換度は0.2であり、アセチル基の置換度は1.5であり、プロピオニル基の置換度は0.9であり、総置換度は2.6であった。
また、上記実施例1のセルロース誘導体A−1の場合と同様の方法で、セルロース誘導体B−9の重量平均分子量Mwを求めた結果、175000であった。
《セルロース誘導体B−2〜B−5、B−7、B−8、B−10〜B−13の合成》
上記セルロース誘導体B−1の合成において、原料のセルロースエステルの種類及び量、その他の反応条件等を適宜選択して、表3に記載の置換度となるようにした以外は同様にして、セルロース誘導体B−2〜B−5、B−7、B−8、B−10〜B−13を得た。
また、上記実施例1のセルロース誘導体A−1の場合と同様の方法で、セルロース誘導体B−2〜B−5、B−7、B−8、B−10〜B−13の重量平均分子量Mwを求めた結果、それぞれ、セルロース誘導体B−2は165000、セルロース誘導体B−3は164000、セルロース誘導体B−4は158000、セルロース誘導体B−5は157000、セルロース誘導体B−7は153000、セルロース誘導体B−8は174000、セルロース誘導体B−10は174000、セルロース誘導体B−11は173000、セルロース誘導体B−12は176000、セルロース誘導体B−13は182000であった。
《位相差フィルムB1の作製》
(ドープの調製)
始めに、加圧溶解タンクに下記に示すジメチルクロライドとエタノールを添加した。有機溶媒の入った加圧溶解タンクに、上記合成したセルロース誘導体B−1及びポリエステルを撹拌しながら投入した。これを加熱し、撹拌しながら、完全に溶解した。次いで、微粒子添加液1を添加した後、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、ドープを調製した。なお、ポリエステル及び微粒子添加液1は、上記実施例1における位相差フィルムA1の作製と同様の方法で調製した。
〈ドープの組成〉
ジメチルクロライド 340質量部
エタノール 64質量部
セルロース誘導体B−1 100質量部
ポリエステル(可塑剤) 5質量部
微粒子添加液1 2質量部
(製膜)
上記調製したドープを、ステンレスベルト支持体上で、流延(キャスト)した後、ステンレスベルト支持体上からフィルムを剥離した。
剥離した原反フィルムを、加熱しながらテンターを用いて、幅手方向(TD方向)にのみ一軸延伸し、搬送方向(MD方向)には収縮しないように搬送張力を調整した。
次いで、乾燥ゾーンを多数のローラーを介して搬送させながら乾燥を終了させ、ロール状の原反フィルムを作製した。フィルムの延伸率は10%、膜厚は略100μmとした。
(延伸工程)
この原反フィルムを、図2に記載の構成からなる斜め延伸装置を用いて、搬送方向に対して、フィルムの光学遅相軸が45°となるよう斜め方向に延伸することでロール状の位相差フィルムB1を作製した。
なお、延伸条件としては、斜め延伸率100%、収縮率35%とし、光波長550nmでのフィルム面内の位相差値Ro(550)、Ro(450)/Ro(550)を測定した。
《位相差フィルムB2〜B15の作製》
上記位相差フィルムB1の作製において、セルロース誘導体B−1に代えて、それぞれセルロース誘導体B−2〜B−5、B−7〜B−13を用いた以外は同様にして、位相差フィルムB2〜B5、B7〜B13を作製した。
また、位相差フィルムB1の作製において、セルロース誘導体B−1に代えて、セルロースエステルB−6(アセチル基置換度:1.6、重量平均分子量Mw:150000のセルロースアセテート)を用いた以外は同様にして、位相差フィルムB6を作製した。
また、位相差フィルムB1の作製において、可塑剤としてのポリエステルを添加しなかった以外は同様にして、位相差フィルムB14を作製した。
また、位相差フィルムB1の作製において、セルロース誘導体B−1に代えて、セルロースエステルB−15(イーストマンケミカル製「CA−394−60s」、アセチル基置換度:2.4、重量平均分子量Mw:160000)を用い、可塑剤としてのポリエステルを添加しなかった以外は同様にして、位相差フィルムB15を作製した。
《円偏光板B1〜B15の作製》
上記作製した各位相差フィルムB1〜B15を用いて、上記実施例1における円偏光板A1〜A15の作製と同様にして、円偏光板B1〜B15を作製した。
《有機EL表示装置B1〜B15の作製》
上記作製した各円偏光板B1〜B15を用いて、実施例1における有機EL表示装置A1〜A15の作製と同様にして、有機EL表示装置B1〜B15を作製した。
《有機EL表示装置B1〜B15の評価》
上記作製した各有機EL表示装置B1〜B15について、実施例1と同様に、黒の色味の評価、反射性能の評価、湿度安定性の評価として黒の色味安定性及び反射性能安定性の評価を行った。評価結果を表3に示す。
Figure 2016080876
表3に記載の結果より明らかなように、本発明で規定する構成からなる位相差フィルムを有する円偏光板を具備した本発明の有機EL表示装置は、比較例の有機EL表示装置に対し、観測位置違いによる黒の色味の視認性及び反射性能に優れており、湿度環境が大きく変化しても、黒の色味安定性及び反射性能安定性に優れていることが分かる。
すなわち、芳香族環を有する置換基の置換度がグルコース骨格単位当たり、0.05〜0.6の範囲内であるセルロース誘導体を用いた光学フィルムを有する有機EL表示装置は、黒の色味性及び反射性能に優れ、その湿度変動が小さい。芳香族環を有する置換基の置換度が0.05未満であるセルロース誘導体B−5、B−6、B−15を用いた有機EL表示装置B5、B6、B15は黒の色味の視認性及び反射性能の湿度依存性が大きいことが分かる。芳香族環を有する置換基の置換度が0.6超であるセルロース誘導体B−3を用いた有機EL表示装置B3は黒の色味の視認性及び反射性能に劣ることが分かる。
[実施例4]
《セルロース誘導体B−16の合成》
メカニカルスターラー、温度計、冷却管及び滴下ロートを装着した3Lの三ツ口フラスコに、アセチル基置換度が2.4のセルロースアセテート(イーストマンケミカル製「CA−394−60s」、重量平均分子量Mw:160000)を250g、ピリジンを114mL、アセトンを3000mL、それぞれ添加し、室温で撹拌した。ここに、20gのフェニルイソシアネートをゆっくりと滴下し、添加した後、更に50℃にて8時間撹拌した。反応後、室温に戻るまで放冷し、反応溶液を激しく撹拌しながらメタノール20Lへ投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引濾過により濾別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた白色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することにより目的のセルロース誘導体B−16を得た。
上記実施例1のセルロース誘導体A−1の場合と同様の方法で、セルロース誘導体B−16のグルコース骨格が有する置換基の置換度について求めた結果、芳香族環を有する置換基であるフェニルカルバモイル基の置換度は0.2であり、アセチル基の置換度は2.4であり、総置換度は2.6であった。
また、上記実施例1のセルロース誘導体A−1の場合と同様の方法で、セルロース誘導体B−16の重量平均分子量Mwを求めた結果、166000であった。
《位相差フィルムB16の作製》
(ドープの調製)
始めに、加圧溶解タンクに下記に示すジメチルクロライドとエタノールを添加した。有機溶媒の入った加圧溶解タンクに、上記合成したセルロース誘導体B−16、当該セルロース誘導体B−16の合成に用いたセルロースアセテート及びポリエステルを撹拌しながら投入した。これを加熱し、撹拌しながら、完全に溶解した。次いで、微粒子添加液1を添加した後、安積濾紙(株)製の安積濾紙No.244を使用して濾過し、ドープを調製した。なお、ポリエステル及び微粒子添加液1は、上記実施例1における位相差フィルムA1の作製と同様の方法で調製した。
〈ドープの組成〉
ジメチルクロライド 340質量部
エタノール 64質量部
セルロース誘導体B−16の合成に用いたセルロースアセテート 80質量部
セルロース誘導体B−16 20質量部
ポリエステル(可塑剤) 5質量部
微粒子添加液1 2質量部
上記調製したドープを用いて、上記実施例2における位相差フィルムA16の作製と同様にして、位相差フィルムB16を作製した。
作製した位相差フィルムB16に対し、光波長550nmでのフィルム面内の位相差値Ro(550)、Ro(450)/Ro(550)を測定した。
《位相差フィルムB17〜B28の作製》
上記位相差フィルムB16の作製において、セルロース誘導体の種類、及びセルロース誘導体の混合比率を表4に記載のとおりに変更した以外は同様にして、位相差フィルムB17〜B28を作製した。
《円偏光板B16〜B28の作製》
上記作製した各位相差フィルムB16〜B28を用いて、上記実施例1における円偏光板A1〜A15の作製と同様にして、円偏光板B16〜B28を作製した。
《有機EL表示装置B16〜B28の作製》
上記作製した各円偏光板B16〜B28を用いて、上記実施例1における有機EL表示装置A1〜A15の作製と同様にして、有機EL表示装置B16〜B28を作製した。
《有機EL表示装置の評価》
上記作製した各有機EL表示装置B16〜B28について、実施例1と同様に、黒の色味の評価、反射性能の評価、湿度安定性の評価として黒の色味安定性及び反射性能安定性の評価を行った。評価結果を表4に示す。
Figure 2016080876
表4に記載の結果より明らかなように、本発明で規定する構成からなる位相差フィルムを有する円偏光板を具備した本発明の有機EL表示装置は、比較例の有機EL表示装置に対し、観測位置違いによる黒の色味の視認性、反射性能に優れており、湿度環境が大きく変化しても、黒の色味安定性及び反射性能安定性に優れていることが分かる。その中でも、混合比率が20〜50質量%の位相差フィルムB16、B17、B24〜B26を使用した有機EL表示装置は、Ro(450)/Ro(550)の値を増大させることなく、Ro(550)の値を増大させられることが分かる。これにより、膜厚を薄くすることが可能である。
[実施例5]
《セルロース誘導体C−1〜C−5の合成》
上記実施例1のセルロース誘導体A−8の合成において、ベンゾイルクロリドに代えて、4−チオメチルベンゾイルクロリド(セルロース誘導体C−1)、4−メトキシベンゾイルクロリド(セルロース誘導体C−2)、2,4,5−トリメチルベンゾイルクロリド(セルロース誘導体C−3)、4−ピリジルカルボン酸クロリド(セルロース誘導体C−4)、4−メトキシシンナモイルクロリド(セルロース誘導体C−5)をそれぞれ用い、表5に記載の置換度となるように原料の添加量を適宜変更した以外は同様にして、セルロース誘導体C−1〜C−5を合成した。
上記実施例1のセルロース誘導体A−1の場合と同様の方法で、セルロース誘導体C−1〜C−5のグルコース骨格が有する置換基の置換度について求めた結果、芳香族環を有する置換基の置換度はいずれも0.15であり、アセチル基の置換度は1.5であり、プロピオニル基の置換度は0.9であり、総置換度は2.55であった。
また、上記実施例1のセルロース誘導体A−1の場合と同様の方法で、セルロース誘導体C−1〜C−5の重量平均分子量Mwを求めた結果、それぞれ、セルロース誘導体C−1は158000、セルロース誘導体C−2は161000、セルロース誘導体C−3は163000、セルロース誘導体C−4は162000、セルロース誘導体C−5は159000であった。
《セルロース誘導体C−7〜C−11の合成》
上記実施例3のセルロース誘導体B−1の合成において、フェニルイソシアネートに代えて、4−チオメチルフェニルイソシアネート(セルロース誘導体C−7)、4−メトキシフェニルイソシアネート(セルロース誘導体C−8)、2,4,5−トリメチルフェニルイソシアネート(セルロース誘導体C−9)、4−フェノキシ−フェニルイソシアネート(セルロース誘導体C−10)、1−ナフチルイソシアネート(セルロース誘導体C−11)をそれぞれ用い、表5に記載の置換度となるように原料の添加量を適宜変更した以外は同様にして、セルロース誘導体C−7〜C−11を合成した。
上記実施例1のセルロース誘導体A−1の場合と同様の方法で、セルロース誘導体C−7〜C−11のグルコース骨格が有する置換基の置換度について求めた結果、芳香族環を有する置換基の置換度はいずれも0.15であり、アセチル基の置換度は2.4であり、総置換度は2.55であった。
また、上記実施例1のセルロース誘導体A−1の場合と同様の方法で、セルロース誘導体C−7〜C−11の重量平均分子量Mwを求めた結果、それぞれ、セルロース誘導体C−7は165000、セルロース誘導体C−8は171000、セルロース誘導体C−9は170000、セルロース誘導体C−10は171000、セルロース誘導体C−11は170000であった。
《セルロース誘導体C−12の合成》
上記実施例3のセルロース誘導体B−1の合成において、原料の量及びその他の反応条件等を適宜変更して、表5に記載の置換度となるようにした以外は同様にして、セルロース誘導体C−12を合成した。
また、上記実施例1のセルロース誘導体A−1の場合と同様の方法で、セルロース誘導体C−12の重量平均分子量Mwを求めた結果、165000であった。
《位相差フィルムC1〜C5、C7〜C12の作製》
上記実施例1の位相差フィルムA1の作製において、セルロース誘導体A−1に代えて、それぞれセルロース誘導体C−1〜C−5、C−7〜C−12を用いた以外は同様にして、位相差フィルムC1〜C5、C7〜C12を作製した。
《位相差フィルムC6の作製》
上記実施例1の位相差フィルムA1の作製において、セルロース誘導体A−1に代えて、(アセチル基置換度1.5、プロピオニル基置換度0.9、(イーストマンケミカル製、重量平均分子量Mw:170000)のセルロースアセテートプロピオネート)を用いた以外は同様にして、位相差フィルムC6を作製した。
《位相差フィルムC13の作製》
上記実施例1の位相差フィルムA1の作製において、セルロース誘導体A−1に代えて、セルロースエステル(イーストマンケミカル製「CA−394−60s」、アセチル基置換度:2.4、重量平均分子量Mw:160000)を用いた以外は同様にして、位相差フィルムC13を作製した。
《円偏光板C1〜C13の作製》
上記作製した各位相差フィルムC1〜C13を用いて、上記実施例1における円偏光板A1〜A15の作製と同様にして、円偏光板C1〜C13を作製した。
《有機EL表示装置C1〜C13の作製》
上記作製した円偏光板C1〜C13を用いて、上記実施例1における有機EL表示装置A1〜A15の作製と同様にして、有機EL表示装置C1〜C13を作製した。
《有機EL表示装置C1〜C13の評価》
上記作製した有機EL表示装置C1〜C13について、実施例1と同様に、湿度安定性の評価として黒の色味安定性及び反射性能安定性の評価を行った。評価結果を表5に示す。
Figure 2016080876
表5に記載の結果より明らかなように、セルロース誘導体中の芳香族環を有する置換基が、いずれの置換基であっても優れた効果を発現することが分かる。
[実施例6]
《位相差フィルムA29、A30の作製》
上記実施例1の位相差フィルムA1の作製において、延伸工程の収縮率を表6に記載の条件に変更した以外は同様にして、位相差フィルムA29、A30を作製した。
《位相差フィルムA31、A32の作製》
上記実施例1の位相差フィルムA10の作製において、延伸工程の収縮率を表6に記載の条件に変更した以外は同様にして、位相差フィルムA31、A32を作製した。
《円偏光板A29〜A32の作製》
上記作製した各位相差フィルムA29〜A32を用いて、上記実施例1における円偏光板A1〜A15の作製と同様にして、円偏光板A29〜A32を作製した。
《有機EL表示装置A29〜A32の作製》
上記作製した各円偏光板A29〜A32を用いて、上記実施例1における有機EL表示装置A1〜A15の作製と同様にして、有機EL表示装置A29〜A32を作製した。
《有機EL表示装置A29〜A32の評価》
上記作製した各有機EL表示装置A29〜A32について、上記実施例1と同様に、黒の色味の評価及び反射性能評価を行った。評価結果を表6に示す。
Figure 2016080876
表6に記載の結果より明らかなように、延伸時の収縮率が10〜30%の範囲内である光学フィルムを有する有機EL表示装置は、収縮率が10〜30%の範囲内にない光学フィルムを有する有機EL表示装置よりも、黒の色味の視認性及び反射性能が優れていることが分かる。
[実施例7]
《セルロース誘導体D−1の合成》
針葉樹サルファイト法パルプ(α−セルロース含量96.5%、ヘミセルロース含有量1.7モル%)100質量部に氷酢酸50質量部を散布して前処理活性化させた後、氷酢酸470質量部、無水酢酸265質量部及び硫酸8.3質量部の混合物を添加し、常法によりエステル化を行った。その後、酢酸95質量部、水33質量部を加え、加水分解を行い、酢酸カルシウム5.7質量部を加えて系内の硫酸を中和した。これにより、アセチル基の置換度2.4、粘度平均重合度180のセルロースアセテートを得た。
次に、メカニカルスターラー、温度計、冷却管及び滴下ロートを装着した3Lの三ツ口フラスコに、先に合成したアセチル基の置換度が2.4のセルロースアセテートを250g、ピリジンを114mL、アセトンを3000mL、それぞれ添加し、室温で撹拌した。ここに、78gのベンゾイルクロリドをゆっくりと滴下し、添加した後、更に50℃にて8時間撹拌した。反応後、室温に戻るまで放冷し、反応溶液を激しく撹拌しながらメタノール20Lへ投入すると、白色固体が析出した。白色固体を吸引濾過により濾別し、大量のメタノールで3回洗浄を行った。得られた白色固体を60℃で終夜乾燥した後、90℃で6時間真空乾燥することにより目的のセルロース誘導体D−1を得た。
上記実施例1のセルロース誘導体A−1の場合と同様の方法で、セルロース誘導体D−1のグルコース骨格が有する置換基の置換度について求めた結果、芳香族環を有する置換基であるベンゾイル基の置換度は0.6であり、アセチル基の置換度は2.4であり、総置換度は3.0であった。
また、上記実施例1のセルロース誘導体A−1の場合と同様の方法で、セルロース誘導体D−1の重量平均分子量Mwを求めた結果、164000であった。
《セルロース誘導体D−2〜D−5の合成》
上記セルロース誘導体D−1の合成において、合成に用いた無水酢酸を、得られるセルロースエステルが表7に記載の置換基(置換度は、全て2.4。)を有するものとなるように変更し、セルロース誘導体D−2〜D−5を合成した。
また、上記実施例1のセルロース誘導体A−1の場合と同様の方法で、セルロース誘導体D−2〜D−5の重量平均分子量Mwを求めた結果、それぞれ、セルロース誘導体D−2は168000、セルロース誘導体D−3は170000、セルロース誘導体D−4は171000、セルロース誘導体D−5は172000であった。
《位相差フィルムD1〜D5の作製》
上記実施例1の位相差フィルムA1の作製において、セルロース誘導体A−1に代えて、それぞれセルロース誘導体D−1〜D−5をそれぞれ用いた以外は同様にして、位相差フィルムD1〜D5を作製した。
《円偏光板D1〜D5の作製》
上記作製した各位相差フィルムD1〜D5を用いて、上記実施例1における円偏光板A1〜A15の作製と同様にして、円偏光板D1〜D5を作製した。
《有機EL表示装置D1〜D5の作製》
上記作製した円偏光板D1〜D5を用いて、上記実施例1における有機EL表示装置D1〜D5の作製と同様にして、有機EL表示装置D1〜D5を作製した。
《有機EL表示装置D1〜D5の評価》
上記作製した有機EL画像表示装置D1〜D5について、実施例1と同様に、黒の色味の評価、反射性の評価、湿度安定性の評価として黒の色味安定性及び湿度安定性の評価を行った。評価結果を表7に示す。
Figure 2016080876
表7に記載の結果より明らかなように、グルコース骨格が有する、その他の置換基を、炭素原子数2〜7の範囲内である無置換の脂肪族炭化水素基とすることにより、観測位置違いによる黒の色味の視認性及び反射性能が更に向上することが分かる。また、上記その他の置換基が炭素原子数1のアシル基(ホルミル基)であるセルロース誘導体は、合成することができなかった。
11 延伸方向
12 斜め延伸方向
13 搬送方向
14 遅相軸
15 斜め延伸装置
16 フィルム繰り出し装置
17 搬送方向変更装置
18 巻取り装置
19 剥離・乾燥工程出口
101 透明基板
102 金属電極
103 TFT
104 有機発光層
105 透明電極
106 絶縁層
107 封止層
108 フィルム
109 λ/4位相差フィルム
110 偏光子
111 保護フィルム
112 硬化層
113 反射防止層
A 有機EL表示装置
B 有機EL素子
C 円偏光板
Ci、Co 把持具
D1 繰出方向
D2 巻取方向
F 光学フィルム
Ri、Ro レール
θ 屈曲角度
θi 屈曲角度(繰出し角度)
θL 角度
Wo 延伸前のフィルムの幅
W 延伸後のフィルムの幅

Claims (7)

  1. 温度23℃、55%RHの環境下、光波長550nmで測定したフィルム面内の位相差値Ro(550)が120〜160nmの範囲内であり、光波長450nm及び550nmでそれぞれ測定したフィルム面内の位相差値Ro(450)とRo(550)との比の値Ro(450)/Ro(550)が0.65〜0.99の範囲内であり、セルロース誘導体を含有する光学フィルムであって、
    前記セルロース誘導体のグルコース骨格が有する置換基が、下記要件(a)〜(c)を満たすことを特徴とする光学フィルム。
    (a)グルコース骨格が有する置換基の一部が、芳香族環を有する置換基であり、かつ当該芳香族環を有する置換基の置換度が、グルコース骨格単位当たり0.05〜0.6の範囲内である。
    (b)前記芳香族環を有する置換基の極大吸収波長が、220〜400nmの範囲内である。
    (c)グルコース骨格が有する置換基の総置換度が、グルコース骨格単位当たり1.7〜3.0の範囲内である。
  2. 前記芳香族環を有する置換基が、芳香族アシル基又は芳香族カルバモイル基であることを特徴とする請求項1に記載の光学フィルム。
  3. 前記セルロース誘導体に、前記芳香族環を有する置換基が導入される前のセルロース類が更に含有され、
    前記セルロース誘導体が、前記セルロース誘導体及び前記セルロース類の総量に対して、20〜50質量%含有されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の光学フィルム。
  4. 前記セルロース誘導体のグルコース骨格が有する置換基のうち、前記芳香族環を有する置換基以外のその他の置換基が、炭素原子数2〜7の範囲内である無置換の脂肪族炭化水素基であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか一項に記載の光学フィルム。
  5. 長尺方向に対して斜め方向に延伸されることで、長尺方向に対して40〜50°の範囲内に遅相軸を有し、以下で定義される収縮率が10〜30%であることを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか一項に記載の光学フィルム。
    収縮率(%)=(1−sin(π−θ))×100
    (上記式中、θは、長尺方向に対する延伸方向の角度を示す。)
  6. 請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の光学フィルムと、長尺状偏光子とが貼合されていることを特徴とする円偏光板。
  7. 請求項6に記載の円偏光板が具備されていることを特徴とする有機エレクトロルミネッセンス表示装置。
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