以下に、この発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
[実施の形態1]
図1は、実施の形態1に係るプリントヘッド及びプリントヘッドの点灯制御装置を適用した画像形成装置の全体の概要を示すものである。
<画像形成装置の全体の構成>
実施の形態1に係る画像形成装置1は、例えばカラー複写機として構成されたものである。画像形成装置1は、原稿6の画像を読み取る画像読取装置3と、画像データに基づいて記録媒体に画像を形成する画像形成手段の一例としての画像形成部2とを備える。画像読取装置3は、画像形成部2を収容した装置本体1aの上方に支持部4により支持された状態で配置されており、画像読取装置3と装置本体1aとの間には画像が形成された記録媒体を排出するための空間を形成している。
なお、画像読取装置3には、画像形成装置1及び画像読取装置2を操作する操作部としてのコントロールパネル110が設けられている。コントロールパネル110は、ユーザに操作メニューやメッセージ等を表示する表示部を兼ねるとともに表示した操作メニューに対する各種設定等を受け付けるタッチパネル111、及び複数の操作ボタン112を有している。
画像形成部2は、現像剤を構成するトナーで現像されるトナー像を形成する複数の作像装置10と、各作像装置10で形成されるトナー像をそれぞれ保持して最終的に記録媒体の一例としての記録用紙5に二次転写する二次転写位置まで搬送する中間転写装置20と、中間転写装置20の二次転写位置に供給すべき所要の記録用紙5を収容して搬送する給紙装置50と、中間転写装置20で二次転写された記録用紙5上のトナー像を定着させる定着装置40等を備えている。なお、装置本体1aは支持構造部材、外装カバー等で形成されている。
作像装置10は、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)及びブラック(K)の4色のトナー像をそれぞれ専用に形成する4つの作像装置10Y,10M,10C,10Kで構成されている。この4つの作像装置10(Y,M,C,K)は、装置本体1aの内部空間において1列に並べた状態となるよう配置されている。
各作像装置10(Y,M,C,K)は、図1に示されるように、回転する像保持体の一例としての感光体ドラム11を備えており、この感光体ドラム11の周囲に、次のような各装置が主に配置されている。主な装置とは、感光体ドラム11の像形成が可能な周面(像保持面)を所要の電位に帯電させる帯電手段の一例としての帯電装置12と、感光体ドラム11の帯電された周面に画像の情報(信号)に基づく光を照射して電位差のある(各色用の)静電潜像を形成する露光手段としての露光装置13と、その静電潜像を対応する色(Y,M,C,K)の現像剤のトナーで現像してトナー像にする現像手段としての現像装置14(Y,M,C,K)と、その各トナー像を中間転写装置20に転写する一次転写装置15と、一次転写後における感光体ドラム11の像保持面に残留して付着するトナー等の付着物を取り除いて清掃する図示しないドラム清掃装置16等である。
感光体ドラム11は、接地処理される円筒状又は円柱状の基材の周面に感光材料からなる光導電性層(感光層)を有する像保持面を形成したものである。この感光体ドラム11は、図示しない回転駆動装置から動力が伝達されて第1の方向である矢印Aで示す方向に回転するように支持されている。
帯電装置12は、感光体ドラム11に接触した状態で配置される接触型の帯電ロールで構成される。帯電装置12には帯電用電圧が供給される。帯電用電圧としては、現像装置14が反転現像を行うものである場合、その現像装置14から供給されるトナーの帯電極性と同じ極性の電圧又は電流が供給される。
露光装置13は、画像形成装置1に入力される画像の情報に応じて構成される光を、帯電された後の感光体ドラム11の周面に対して照射して静電潜像を形成するものである。露光装置13は、後に詳述するように、発光素子の一例としてのLED(Light Emitting Diode)素子を予め定められたピッチで感光体ドラム11の軸方向に沿って配列した発光手段の一例としてのLEDアレイ33と、このLEDアレイ33の各LED素子LDから出射された光を感光体ドラム11上にスポット状に結像するロッドレンズアレイ34とを備えている。露光装置13には、潜像形成時になると画像形成装置1に任意の手段で入力され、画像処理部で画像処理された画像の情報(信号)が送信される。
この固体走査型の露光装置13は、図2に示されるように、LEDプリントヘッド(LED Print Head)から構成されている。LEDプリントヘッド13は、感光体ドラム11の軸方向(第2の方向)に沿って長尺に形成された筐体31を備えており、当該筐体31の表面には、LEDアレイ33を備えたLED回路基板32が装着されている。また、このLED回路基板32の表面には、図3に示されるように、LEDアイレ33を構成する複数の発光ブロックの一例としてのLEDアレイチップ331〜33nが、長手方向に沿って一部が重なるよう千鳥状に配列されている。LEDアレイ33から出射された光束は、図2に示されるように、ロッドレンズアレイ34によって絞られ、感光体ドラム11の表面にドット形状に露光される。上記ロッドレンズアレイ34は、保持部材35に装着されており、当該保持部材35を介して板バネSによってLEDプリントヘッド13の筐体31に取り付けられている。
また、上記LED回路基板32は、図3に示されるように、LEDアレイ33を画像情報に応じて発光させるための駆動回路36と、補正パラメータを記憶するEEPROM等からなる記憶素子37と、LEDアレイ33に電圧を印加する電源回路38とを、LEDアレイ33の一端部に備えている。さらに、上記LED回路基板32には、後述する制御部100から画像データや制御信号が送られるワイヤーハーネス39が接続されている。なお、LED回路基板32の駆動回路36については、後に詳述する。LEDアレイ33としては、例えば、自己走査型のLEDアレイ(SLEDアレイ)が用いられる。
SLEDアレイ33は、図4に示されるように、感光体ドラム11の軸方向(第2の方向)である主走査方向に沿って1200dpi(dot per inch)の解像度でLED素子を配列している。また、LEDアレイ33は、感光体ドラム11の回転方向(第1の方向)である副走査方向に沿って2400dpiの解像度を有している。1つのLEDアレイチップ33nには、例えば、256個のLED素子が直線状に配列されている。この実施の形態では、A3ノビに対応して1200dpiの解像度で光書き込みが行えるようになっており、約21.1μm毎に15360個のLED素子が精度良く配列されている。
現像装置14(Y,M,C,K)はいずれも、開口部と現像剤の収容室が形成された筐体の内部に、現像剤を保持して感光体ドラム11と向き合う現像領域まで搬送する現像ロールと、現像剤を攪拌しながら現像ロールに供給するよう搬送する2つのスクリューオーガー等の攪拌搬送部材と、現像ロールに保持される現像剤の量(層厚)を規制する層厚規制部材などを配置して構成されたものである。この現像装置14には、その現像ロールと感光体ドラム11の間に現像用のバイアス電圧が図示しない電源装置から供給される。また、現像ロールや攪拌搬送部材は、図示しない回転駆動装置からの動力が伝達されて所要の方向に回転する。上記4色の現像剤(Y,M,C,K)としては、例えば、非磁性トナーと磁性キャリアを含む二成分現像剤が使用される。
一次転写装置15は、感光体ドラム11の周面に接触して回転するとともに一次転写用電圧が供給される一次転写ロールを備えた接触型の転写装置である。一次転写用電圧としては、トナーの帯電極性と逆の極性を示す直流の電圧が図示しない電源装置から供給される。
ドラム清掃装置16は、一部が開口する容器状の本体と、一次転写後の感光体ドラム11の周面に所要の圧力で接触するように配置され残留トナー等の付着物を取り除いて清掃する清掃板と、清掃板により取り除かれた付着物を回収する回収装置等で構成されている。
中間転写装置20は、図1に示されるように、各作像装置10(Y,M,C,K)の上方の位置に存在するように配置される。この中間転写装置20は、感光体ドラム11と一次転写装置15(一次転写ロール)の間となる一次転写位置を通過しながら矢印Bで示す方向に回転する中間転写ベルト21と、中間転写ベルト21をその内面から所望の状態に保持して回転自在に支持する複数のベルト支持ロール22〜24と、ベルト支持ロール23に支持されている中間転写ベルト21の外周面(像保持面)側に配置されて中間転写ベルト21上のトナー像を記録用紙5に二次転写させる転写手段の一例としての二次転写装置25と、二次転写装置25を通過した後に中間転写ベルト21の外周面に残留して付着するトナー、紙粉等の付着物を取り除いて清掃するベルト清掃装置26とで主に構成されている。
中間転写ベルト21としては、例えばポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂等の合成樹脂にカーボンブラック等の抵抗調整剤などを分散させた材料で製作される無端状のベルトが使用される。また、ベルト支持ロール22は従動ロールとして構成され、ベルト支持ロール23は駆動ロール及び二次転写のバックアップロールとして構成され、ベルト支持ロール24は張力付与ロールとして構成されている。
二次転写装置25は、図1に示されるように、中間転写装置20におけるベルト支持ロール23に支持されている中間転写ベルト21の外周面部分である二次転写位置において、中間転写ベルト21の周面に接触して回転するとともに二次転写用電圧が供給される二次転写ロールからなる接触型の転写装置である。また、二次転写ロール25又は中間転写装置20の支持ロール23には、トナーの帯電極性と逆極性又は同極性を示す直流の電圧が二次転写用電圧として供給される。
定着装置40は、表面温度が予め定められた温度に保持されるよう加熱手段によって加熱されるロール形態又はベルト形態の加熱用回転体41と、この加熱用回転体41に所要の圧力で接触して回転するロール形態又はベルト形態の加圧用回転体42などを配置して構成されたものである。この定着装置40では、加熱用回転体41と加圧用回転体42が接触する接触部が所要の定着処理(加熱及び加圧)を行う定着処理部となる。
給紙装置50は、作像装置10(Y,M,C,K)の下方側の位置に存在するように配置される。この給紙装置50は、所望のサイズ、種類等の記録用紙5を積載した状態で収容する複数(又は単数)の用紙収容体511,512,513と、用紙収容体511,512,513から記録用紙5を1枚ずつ送り出す送出装置52,53とで主に構成されている。用紙収容体51は、例えば、装置本体1aの正面(使用者が操作時に向き合う側面)側に引き出すことができるように取り付けられている。
給紙装置50と二次転写装置25との間には、給紙装置50から送り出される記録用紙5を二次転写位置まで搬送する複数の用紙搬送ロール対54,55や搬送ガイド材で構成される給紙搬送路56が設けられている。給紙搬送路56において二次転写位置の直前の位置に配置される用紙搬送ロール対55は、例えば記録用紙5の搬送時期を調整するロール(レジストロール)として構成されている。さらに、定着装置40の用紙搬送方向に沿った下流側には、記録用紙5を排出収容部57へと排出する排出ロール対58が配置されている。
画像形成装置1は、片面に画像が形成された記録用紙5をその表裏を反転させた状態で再び用紙搬送ロール対55まで搬送する両面用搬送路59を備えている。この両面用搬送路59は、複数の用紙搬送ロール対60,61や搬送ガイド材で構成されている。
<画像形成装置の基本的な動作>
以下、画像形成装置1による基本的な画像形成動作について説明する。
前記4つの作像装置10(Y,M,C,K)を使用して、4色(Y,M,C,K)のトナー像を組み合わせて構成されるフルカラー画像を形成するときの画像形成動作を説明する。
画像形成装置1は、画像形成動作(プリント)の要求の指令情報を受けると、4つの作像装置10(Y,M,C,K)、中間転写装置20、定着装置40等が始動する。
そして、各作像装置10(Y,M,C,K)においては、まず各感光体ドラム11が矢印Aで示す方向に回転し、各帯電装置12が各感光体ドラム11の表面を所要の極性(実施の形態1ではマイナス極性)及び電位にそれぞれ帯電させる。続いて、LEDプリントヘッド13が、帯電後の感光体ドラム11の表面に対し、画像形成装置1に入力される画像の情報を各色成分(Y,M,C,K)に変換して得られる画像の信号に基づいて光を照射し、その表面に所要の電位差で構成される各色成分の静電潜像をそれぞれ形成する。
続いて、各現像装置14(Y,M,C,K)が、感光体ドラム11に形成された各色成分の静電潜像に対し、所要の極性(マイナス極性)に帯電された対応する色(Y,M,C,K)のトナーをそれぞれ供給して静電的に付着させて現像を行う。この現像により、各感光体ドラム11に形成された各色成分の静電潜像は、その対応する色のトナーでそれぞれ現像された4色(Y,M,C,K)のトナー像として顕像化される。
続いて、各作像装置10(Y,M,C,K)の感光体ドラム11上に形成された各色のトナー像が一次転写位置まで搬送されると、一次転写装置15が、その各色のトナー像を中間転写装置20の矢印Bで示す方向に回転する中間転写ベルト21に対して順番に重ね合わせるような状態で一次転写させる。
また、一次転写が終了した各作像装置10では、ドラム清掃装置16が感光体ドラム11の表面に残留するトナー等の付着物を掻き取るように除去して感光体ドラム11の表面を清掃する。これにより、各作像装置10は次の作像動作が可能な状態にされる。
続いて、中間転写装置20では、中間転写ベルト21の回転により一次転写されたトナー像を保持して二次転写位置まで搬送する。一方、給紙装置50では、作像動作に合わせて所要の記録用紙5を給紙搬送路56に送り出す。給紙搬送路56では、レジストロールとしての用紙搬送ロール対55が記録用紙5を転写時期に合わせて二次転写位置に送り出して供給する。
二次転写位置においては、二次転写装置25が、中間転写ベルト21上のトナー像を記録用紙5に一括して二次転写させる。また、二次転写が終了した中間転写装置20では、ベルト清掃装置26が、二次転写後の中間転写ベルト21の表面に残留したトナー等の付着物を取り除いて清掃する。
続いて、トナー像が二次転写された記録用紙5は、中間転写ベルト21と二次転写ロール25から剥離された後に定着装置40まで搬送される。定着装置40では、必要な定着処理(加熱及び加圧)をして未定着のトナー像を用紙5に定着させる。最後に、定着が終了した後の記録用紙5は、排出ロール対58により装置本体1aの上部に配置された排出収容部57に排出される。
また、記録用紙5の両面に画像を形成する場合は、片面に画像が形成された用紙5を第2の排出ロール対58により排出収容部57へと搬送し、排出ロール対58が用紙5の後端を保持している間に、排出ロール対58の回転方向を排出方向から逆方向へと切り替えるとともに、片面に画像が形成された用紙5をその表裏を反転した状態で図示しない切替部材によって両面用搬送路59へと送り出す。両面用搬送路59では、記録用紙5を搬送ロール対60,61により用紙搬送ロール対55まで搬送し、用紙搬送ロール対55が記録用紙5を転写時期に合わせて二次転写位置に送り出して供給する。
そして、片面の画像形成時と同様に、二次転写位置において中間転写ベルト21から裏面にトナー像が二次転写された記録用紙5は、定着装置40により定着処理を受けた後、図示しない切替部材を介して排出ロール対58により、筐体1aの上部に配置された排出収容部57に排出される。
以上の動作により、4色のトナー像を組み合わせて構成されるフルカラー画像が形成された記録用紙5が出力される。なお、モノクロの画像を形成する場合は、ブラックの作像装置10Kのみにより画像形成が行われる。
<プリントヘッドの発光制御装置の構成>
図5は画像形成装置1のプリントヘッドの発光制御装置を示すブロック図である。
100は画像形成装置1の動作を制御するCPU(Central Processing Unit)やROM( Read Only Memory)あるいはRAM(Random Access Memory)等の電子部品からなる制御部であり、LEDプリントヘッド13を含めた画像形成装置1の諸動作を統括的に制御する。
36は露光装置13のLED回路基板32に設けられた駆動回路を示している。駆動回路36とSLEDアレイ33との間には、レベルシフト回路80及び発光電流制限抵抗RIDを備えている。また、LED回路基板32には、EEPROM37が配置されている。
SLEDアレイ33は、120個のSLEDアレイチップ331〜33120を直列に配列して構成されている。これら各SLEDアレイチップ331〜33120には、上述したように、それぞれ128個の発光サイリスタが直線状に並べられており、さらに、これら発光サイリスタを点灯させるためのスイッチ素子として機能する128個の転送サイリスタが設けられている。
駆動回路36は、順次発光手段としての転送信号発生部71と、発光信号生成手段としてのPWM DATA GEN回路からなる発光信号データ生成部72と、補正メモリ73と、クロック発生手段としてのPLL(Phase Locked Loop)回路からなるクロック生成部74と、発光信号生成手段としてのPWM(Pulse Width Modulation)回路からなる発光信号波形生成部75と、クロック生成部74で生成されるクロックの周波数(PLL設定値)とパルス幅を定める定数(Width)を複数組(図示例では、2組)格納したクロック変更部76とを有している。この実施の形態に係るクロック変更部76は、クロックの周波数(PLL設定値)とパルス幅を定める整数からなる定数(Width)を複数組(図示例では、2組)格納した設定回路77と、ライン同期信号(Lsync)を計数する計数回路(カウンタ)78と、設定回路77に記憶されたクロックの周波数(PLL設定値)とパルス幅を定める定数(Width)のいずれか一組を選択して出力する選択回路(セレクタ)79とを備えている。
この実施の形態では、クロック変更部76に格納されたクロックの周波数(PLL設定値)とパルス幅を定める定数(Width)として、第1のPLL設定値である275.17MHzと第1のパルス幅を定める定数(Width)であるWidth1と、第2のPLL設定値である241.80MHzと第2のパルス幅を定める定数(Width)であるWidth2との二組の値を用いている。これら第1及び第2のパルス幅を定める定数Width1、Width2は、クロックの周波数を変更したとき、発光信号波形生成部75で生成される発光信号のパルス幅が同一又は予め定められた範囲(例えば、3%)内となるよう設定することが望ましい。なお、クロック変更部76に格納されたクロックの周波数(PLL設定値)は、200MHz〜400MHzに設定されている。また、クロック変更部76に格納されたパルス幅を定める定数(Width)は、0〜255の範囲に設定されている。
発光信号データ生成部72及び発光信号波形生成部75で用いるクロックの周波数とパルス幅は、クロック変更部76によって任意に設定可能であるが、クロックの周波数を変更することに伴ってクロックのパルス幅が大きく変化すると、画質に影響が現れる虞れがある。そのため、クロックの周波数を変更したことに伴うクロックのパルス幅の変動は、略ゼロか又は予め定められた範囲(例えば、3%)以内とすることが望ましい。
転送信号発生部71は、制御部100から入力されるライン同期信号Lsyncを基準にしてSLEDを構成する各SLEDアレイチップ331〜33120の各転送サイリスタに対して転送信号を発生する。発光信号データ生成部72は、制御部100から入力されるライン同期信号(Lsync)に同期して、制御部100から入力される画像データVDATAを、LEDプリントヘッド13を構成する各SLEDアレイチップ331〜33120内の各発光サイリスタに対応した発光データ(PWM DATA)に変換して出力する。補正メモリ43は、各発光サイリスタの発光量のばらつきを補正する光量補正値を格納しており、この光量補正値を発光信号データ生成部72に出力している。そして、発光信号データ生成部72では、設定回路77から読み出されたパルス幅を定める定数(Width)と、補正メモリ73から読み出された光量補正値を用いてパルス幅を決定する発光データを作成している。さらに、クロック生成部74は、設定回路77から出力される第1及び第2のPLL設定値信号のいずれかに応じた周波数のクロックPWM CLKを生成し、各発光信号波形生成部75に出力する。発光信号波形生成部75は、SLEDアレイチップ331〜33120に対応する数(本実施の形態では120個)だけ設けられている。発光信号波形生成部75では、発光信号データ生成部72から出力されてくるパルス幅を定める定数(Width1,2)を含むPWM DATAと、クロック生成部74から出力されてくるクロックPWM CLKを用いてパルス幅変調し、対応するSLEDアレイチップ331〜33120にPWM信号からなる発光信号を出力している。
また、制御部100と転送信号発生部71、発光信号データ生成部72、補正メモリ73、クロック生成部74、EEPROM37との間では、シリアルデータにより双方向通信を行うことが可能となっている。ここで、補正メモリ73に格納される光量補正値は、予めEEPROM37に格納されており、例えば電源投入時等において、EEPROM37から読み出され補正メモリ73に記憶される。
また、駆動回路36に設けられた発光信号波形生成部75と対応する各SLEDアレイチップ331〜33120との間には、両者の間に流れる発光電流値を制限するための発光電流制限抵抗(RID)が接続されている。
そして、駆動回路36に設けられた転送信号発生部71と各SLEDアレイチップ331〜33120との間に設けられるレベルシフト回路80は、駆動回路36の転送信号発生部71から出力される転送信号のレベルをシフトさせる機能を有している。
図6は、LPHプリントヘッド13の駆動回路36、レベルシフト回路80及びSLEDアレイ33の構成を示した等価回路図である。なお、SLEDアレイ33は、上述したように120個のSLEDアレイチップ331〜33120を直列に配置することによって構成されているが、図6においては、これらのうち一つのSLEDアレイチップ33を代表的に示している。
SLEDアレイチップ33は、128個の転送サイリスタS1〜S128、発光素子の一例としての128個の発光サイリスタL1〜L128、128個のダイオードD1〜D128、128個の抵抗R1〜R128、更には第1及び第2の信号線Φ1,Φ2に過剰な電流が流れるのを防止する2個の転送電流制限抵抗R1A、R2Aを備えている。なお、他のSLEDアレイチップ33も同様の構成に構成されている。
SLEDアレイチップ33において、各転送サイリスタS1〜S128のアノード端子A1〜A128は、電源ライン82に接続されている。この電源ライン82には、図示しない電源回路より電源電圧VDD(=3.3V)が供給される。
また、奇数番目の転送サイリスタS1、S3、…、S127のカソード端子K1、K3、…、K127の各々は、第1の信号線Φ1に接続され、第1の信号線Φ1には転送電流制限抵抗R1Aが接続されている。また、偶数番目の転送サイリスタS2、S4、…、S128のカソード端子K2、K4、…、K128の各々は、第2の信号線Φ2に接続され、第2の信号線Φ2には、転送電流制限抵抗R2Aが接続されている。これにより、奇数番目の転送サイリスタS1、S3、…、S127のカソード端子K1、K3、…、K127には、駆動回路36の転送信号発生部71からレベルシフト回路80を通して出力される第1の転送信号CK1が、転送電流制限抵抗R1Aを介して入力される。一方、偶数番目の転送サイリスタS2、S4、…、S128のカソード端子(出力端)K2、K4、…、K128には、駆動回路36の転送信号発生部71からレベルシフト回路80を通して出力される第2の転送信号CK2が、転送電流制限抵抗R2Aを介して入力される。そして、転送サイリスタS1〜S128は、第1の転送信号CK1及び第2の転送信号CK2を切り替えることにより順次オン状態となる。
さらに、各転送サイリスタS1〜S128のゲート端子G1〜G128は、各転送サイリスタS1〜S128のそれぞれに対応して設けられた抵抗R1〜R128を介して電源ライン83に各々接続されている。なお、電源ライン83は接地されている。
また、各転送サイリスタS1〜S128のゲート端子G1〜G128と、対応する各発光サイリスタL1〜L128のゲート端子とは、各々接続されている。更に、各転送サイリスタS1〜S128のゲート端子G1〜G128には、ダイオードD1〜D128のカソード端子が接続されている。そして、転送サイリスタS1〜S128のゲート端子G1〜G128には、次段のダイオードD2〜D128のアノード端子が各々接続されている。これに対し、ダイオードD1のアノード端子は、転送電流制限抵抗R2A及びレベルシフト回路80を介して駆動回路36の転送信号発生部71に接続されており、第2の転送信号CK2が入力されるようになっている。
一方、各発光サイリスタL1〜L128のアノード端子は、電源ライン82に接続され、電源電圧VDDが供給されるようになっている。これに対し、各発光サイリスタL1〜L128のカソード端子は、SLEDアレイチップ33の外部に設けられた発光電流制限抵抗RIDを介して駆動回路36の発光信号波形生成部75に接続されており、この発光信号波形生成部75より発光信号ΦIが入力されるようになっている。
なお、SLEDアレイチップ33は、半導体基板にpnpn構造を形成し、形成されたpnpn層に対しエッチング等を施して加工することで、各転送サイリスタS1〜S128、各発光サイリスタL1〜L128、各ダイオードD1〜D128、各抵抗R1〜R128を得ている。
また、駆動回路36に設けられた転送信号発生部71は、第1の転送信号CK1を作成するのに用いられる第1の抵抗転送信号CK1Rを出力するスリーステートバッファB1R、同じく第1の転送信号CK1を作成するのに用いられる第1の容量転送信号CK1Cを出力するスリーステートバッファB1Cを備えている。更に、転送信号発生部71は、第2の転送信号CK2を作成するのに用いられる第2の抵抗転送信号CK2Rを出力するスリーステートバッファB2R、同じく第2の転送信号CK2を作成するのに用いられる第2の容量転送信号CK2Cを出力するスリーステートバッファB2Cを備えている。なお、これらスリーステートバッファB1R、B1C、B2R、B2Cは、H(1:高電位出力状態)、L(0:低電位出力状態)の2状態に加え、High−Z(以下の説明ではHizと表記する)の状態をとる3状態出力回路にて構成されている。ここで、Hizの状態とは、出力がハイインピーダンスとなることにより、実質的にオープン状態であることを意味する。したがって、3状態出力回路は、Hizの状態において、出力電位を実質的に制約しないようになっている。
一方、レベルシフト回路80には、奇数番目の転送サイリスタS1、S3、…、S127のカソード端子K1、K3、…、K127が、転送電流制限抵抗R1Aを介して接続されている。レベルシフト回路80のこの部位には、スリーステートバッファB1Rに繋がる抵抗R1Bが接続された信号線と、スリーステートバッファB1Cに繋がるコンデンサC1が接続された信号線とに分岐した並列回路が形成されている。
また、レベルシフト回路80には、偶数番目の転送サイリスタS2、S4、…、S128のカソード端子K2、K4、…、K128及びダイオードD1のアノード端子が、転送電流制限抵抗R2Aを介して接続されている。レベルシフト回路80のこの部位には、スリーステートバッファB2Rに繋がる抵抗R2Bが接続された信号線と、スリーステートバッファB2Cに繋がるコンデンサC2が接続された信号線とに分岐した並列回路が形成されている。
<プリントヘッドの発光制御装置の動作>
次に、画像形成動作におけるLPHの駆動(発光動作)について、図7に示すタイミングチャートを参照しながら説明する。なお、図7に示すタイミングチャートについては、すべての発光サイリスタが光書き込みを行う(発光する)場合について表記している。
まず、制御部100から駆動回路36に図示しないリセット信号が入力されることによって、駆動回路36の転送信号発生部71では、トライステートバッファB1Rをハイレベル「H」(以下、単に「H」と表記する)とすることにより第1の抵抗転送信号CK1Rが「H」として出力され、トライステートバッファB1Cを「H」とすることにより第1の容量転送信号CK1Cが「H」として出力される。その結果、レベルシフト回路80は、第1の転送信号CK1が「H」に設定される。その際、コンデンサC1は、「H」として出力される第1の容量転送信号CK1Cにより充電される。ここで、第1の容量転送信号CK1Cの電位は3.3Vに設定されているため、コンデンサC1の両端電位は3.3V(=VDD)となる。
一方、駆動回路36の転送信号発生部71では、トライステートバッファB2Rをローレベル「L」(以下、単に「L」と表記する)とすることにより第2の抵抗転送信号CK2Rが「L」として出力され、トライステートバッファB2Cを「L」とすることにより第2の容量転送信号CK2Cが「L」として出力される。レベルシフト回路80では、これを受けて、第2の転送信号CK2が「L」に設定され、出力される。その結果、転送サイリスタS1〜S128のゲート端子には、ゲート電圧が印加されることがなく、SLEDアレイチップ33のすべての転送サイリスタS1〜S128がオフの状態とされるとともに、すべての発光サイリスタL1〜L128がオフの状態に設定される(図7(a))。なお、この状態では、制御部100から駆動回路36に画像データVDATAが入力されていないことから、発光信号ΦIは「H」に設定されている(図7(H))。
(2)次に、図7(A)に示されるように、リセット信号に続いて、制御部100から駆動回路36の転送信号発生部71に出力されるライン同期信号Lsyncが所定時間だけ「H」になることで、SLEDアレイ33(各SLEDアレイチップ)の動作が開始される。その際、ライン同期信号Lsyncは、図5に示されるように、クロック変更部76のカウンタ78にも入力されており、計数回路78から選択信号が選択回路79に出力される。選択回路79は、計数回路78から出力される選択信号に応じて設定回路77に格納された第1及び第2のPLL設定値1,2及びパルス幅を定める定数Width1,2のうち、いずれかの組のPLL設定値及びパルス幅を定める定数Widthを選択して出力する。この実施の形態では、奇数番目のラインに対応したライン同期信号Lsyncが入力されると、第1のPLL設定値1及びパルス幅を定める定数Width1を選択し、偶数番目のラインに対応したライン同期信号Lsyncが入力されると、第2のPLL設定値2及びパルス幅を定める定数Width2を選択する。なお、選択回路79は、必ずしも1ライン毎にPLL設定値及びパルス幅を定める定数Widthを切り替える必要はなく、複数ライン毎にPLL設定値及びパルス幅を定める定数Widthを切り替えるように構成しても良い。
そして、このライン同期信号Lsyncの立下りに同期して、転送信号発生部71では、図7(E)(F)に示されるように、トライステートバッファB2C及びトライステートバッファB2Rを「H」とすることにより、第2の容量転送信号CK2C及び抵抗転送信号CK2Rを「H」に設定する。そして、レベルシフト回路80では、これを受けて、図7(G)に示されるように、第2の転送信号CK2が「H」に設定される(図7(b))。
(3)次に、図7(C)に示されるように、転送信号発生部71において、トライステートバッファB1Rを「L」に設定することにより第1の抵抗転送信号CK1Rを「L」にすると(図7(c))、レベルシフト回路80では、コンデンサC1に蓄積された電荷が抵抗R1Bに向う方向に流れ、図7(D)に示されるように、やがて、第1の転送信号CK1の電位がGNDになる。
(4)これに続いて、図7(B)に示されるように、転送信号発生部71のトライステートバッファB1Cを「L」にすることにより第1の容量転送信号CK1Cを「H」から「L」に切り替えると(図7(d))、第1の転送信号CK1の電位は、コンデンサC1に電荷が蓄積されているため、GND電位から約−3.3Vとなる。また、SLEDアレイチップ33における第1の転送サイリスタS1のゲート端子G1の電位(Vg1)は、Vg1=CK2電位−Vf=約1.9Vとなる。ここで、第2の転送信号CK2電位は約3.3V、VfはAlGaAsからなるダイオードD1の順方向電圧であって約1.4Vである。さらに、Φ1電位=G1電位(Vg1)−Vf=0.5Vとなる。このとき、発光信号ΦIの電位は0Vであるため、発光信号ΦIと第1の転送信号CK1との間に約3.8V(=3.3V+0.5V)の電位差が生じる。
なお、上述したように、LEDアレイチップ33では、ダイオードD1〜D128、転送サイリスタS1〜S128、発光サイリスタL1〜L128が、基板が同じpnpn層を用いて形成されている。したがって、各ダイオードD1〜D128の順方向電圧Vfが約1.4Vとなっている場合、転送サイリスタS1〜S128及び発光サイリスタL1〜L128の順方向電圧Vfも約1.4Vとなる。
この状態において、ゲート電極G1→第1の信号線Φ1→第1の転送信号CK1のルートで、第1の転送サイリスタS1にゲート電流が流れ始める。その際に、転送信号発生部71のトライステートバッファB1Rをハイインピーダンス(Hiz)にすることで、電流の逆流防止を行う((図7(d))。
そして、第1の転送サイリスタS1に流れるゲート電流により、当該第1の転送サイリスタS1がオンし始め、ゲート電流が徐々に増加する。それと共に、レベルシフト回路80のコンデンサC1に電流が流れ込むことで、第1の転送信号CK1の電位も徐々に上昇してGNDに近付く。
(5)次に、所定時間(第1の転送信号CK1電位がGND近傍になる時間)が経過した後、駆動回路36のトライステートバッファB1Rを「L」に設定し、第1の抵抗転送信号CK1Rをハイインピーダンス(Hiz)から「L」に切り替える(図7(e))。すると、SLEDアレイチップ33における第1の転送サイリスタS1のゲート端子G1電位が上昇することによって第1の転送サイリスタS1がオン状態となり第1の信号線Φ1電位の上昇及び第1の転送信号CK1電位の上昇が生じ、これに伴いレベルシフト回路80の抵抗側に電流が流れ始める。その一方で、転送信号電位が上昇するのに従い、レベルシフト回路80のコンデンサC1に流れ込む電流は徐々に減少する。
そして、第1の転送サイリスタS1が完全にターンオンし、定常状態になると、第1の転送サイリスタS1のオン状態を保持するための電流がレベルシフト回路80の抵抗R1Bに流れるが、コンデンサC1には流れなくなる。なお、第1の転送信号CK1電位は、CK1=(3.3―Vf)×R1B/(R1A+R1B)である。そして、トライステートバッファB1Rを「L」に設定する際、図7(B)に示されるように、駆動回路36のトライステートバッファB1Cをハイインピーダンス(Hiz)に設定する。
(6)第1の転送サイリスタS1が完全にターンオンした状態で、図7(H)に示されるように、制御部100から出力された画像データVDATAに基づいて作成され発光信号波形生成部75から出力される発光信号ΦIが「L」に設定される(図7(f))。このとき、ゲート端子G1の電位>ゲート端子G2の電位(ゲート端子G1の電位−ゲート端子G2の電位=Vf=1.4V)であるため、第1の転送サイリスタS1とゲート端子同士が接続された第1の発光サイリスタL1の方が、第2の転送サイリスタS2とゲート端子同士が接続された第2の発光サイリスタL2よりも早くオンするため、第1の発光サイリスタL1が発光する。なお、第1の発光サイリスタL1がオンするのに伴って、第1の信号線Φ1の電位が上昇し、第1の信号線Φ1の電位=ゲート端子G2の電位=1.9Vとなるため、後段の発光サイリスタL2〜L128がオンすることはない。すなわち、128個の発光サイリスタL1〜L128の中で、最もゲート電圧の高い第1の発光サイリスタL1のみがオン(発光)することになる。
(7)次に、図7(F)に示されるように、転送信号発生部71のスリーステートバッファB2Rを「L」に設定することで第2の抵抗転送信号CK2Rを「L」にすると(図7(g))、図7(c)の場合と同様に電流が流れ、レベルシフト回路80のコンデンサC2の両端に電圧が発生する。図7(g)の終了直前の定常状態において、ゲート端子G2の電位が1.9Vであるため、各点の電位は図7(c)の場合とは若干異なるが、動作上影響はない。これは、図7(g)の終了直前の定常状態では、第2の信号線Φ2の電位=ゲート端子G2の電位−Vf=1.9−1.4=約0.5V程度であるため、第2の転送サイリスタS2にもゲート電流が流れるのであるが、この量がわずかであるために第2の転送サイリスタS2がターンオンしないからである。
(8)これに続いて、図7(E)に示されるように、転送信号発生部71のスリーステートバッファB2Cを「L」に設定することで第2の容量転送信号CK2Cを「L」にすると(図7(h))、第1の転送サイリスタS1の後段に位置する第2の転送サイリスタS2にゲート電流が流れ、第2の転送サイリスタS2がオンする。すなわち、この状態では、隣接する第1及び第2の転送サイリスタS1、S2が同時にオンしていることになる。なお、スリーステートバッファB2Cを「L」にするのに合わせて、転送信号発生部71では、スリーステートバッファB2Rを「Hiz」に設定し、第2の抵抗転送信号CK2Rを「Hiz」にすることで、電流の逆流防止を行う。
また、スリーステートバッファB2Cを「L」にするまでの間に、発光信号波形生成部75から出力される発光信号ΦIが「H」に設定され(図7(H))、第1の発光サイリスタL1はオフ(非発光)となる。発光信号ΦIのパルス幅(「L」の期間)は、駆動回路36の発光信号データ生成部72及び発光信号波形生成部75によって決定される。
(9)そして、図7(B)、(C)に示すように、転送信号発生部71のスリーステートバッファB1C、B1Rを同時に「H」に設定することで第1の容量転送信号CK1C、第1の抵抗転送信号CK1Rを同時にHにすると(図7(i))、第1の転送信号CK1が「H」となる。第1の転送信号CK1が「H」となることにより第1の転送サイリスタS1のカソード電位が上昇して第1の転送サイリスタS1はターンオフし、抵抗R1を介して放電を行うことによってゲート端子G1の電位は徐々に下降する。その際、第2の転送サイリスタS2のゲート端子G2の電位は3.3Vになり、第2の転送サイリスタS2は完全にターンオンする。
(10)第2の転送サイリスタS2が完全にオンした状態で、図7(H)に示すように、発光信号ΦIが「L」となると、発光信号ΦIが「L」となっている間だけ第2の発光サイリスタL2のゲート端子に電流が流れ、第2の発光サイリスタL2が発光する。したがって、発光信号端子IDからの画像データに対応した発光信号をL/Hにすることで、発光サイリスタを発光/非発光させることが可能となる。なお、この場合、第1の転送サイリスタS1のゲート端子G1電位は、すでに第2の転送サイリスタS2のゲート端子G2より低くなっているため、第1の発光サイリスタL1がオンすることはない。
また、図7(B)に示されるように、転送信号発生部71のトライステートバッファB1Cがハイインピーダンス(Hiz)に設定されているので(図7(e)〜(h))、第1の転送信号CK1のCK1電位=(3.3―Vf)×RIB/(R1A+R1B)ではあるが、レベルシフト回路80のコンデンサC1はあまり充電されずに、コンデンサC1には大きな電位差が生じることはない。このため、転送信号CK1C、CK1Rを同時に「H」にした際に(図7(i))、転送信号CK1に大きなスパイク電位が生じることが抑制できるので、抵抗R1Bを通って駆動回路36に瞬間的に大きな電流が流れることはなく、駆動回路36に過大な負荷がかかることを抑制することができる。
すなわち、図7(i)での転送信号CK1C、CK1Rを同時に「H」にする前に、転送信号CK1CがLに設定されていると、レベルシフト回路80のコンデンサC1の両端には、第1の転送電位CK1と同じ電位、具体的には、(3.3―Vf)×RIB/(R1A+R1B)が発生する。この状態で、転送クロックCK1C、CK1Rを同時にHにすると(図7(i))、抵抗R1Bを通って駆動回路36に瞬間的に流れる大きな電流が発生して、駆動回路36に過大な負荷がかかってしまうことになる。
これに対し、この実施の形態では、図7(i)での転送信号CK1C、CK1Rを同時にHにする前において、駆動回路36のトライステートバッファB1Rがハイインピーダンス(Hiz)に設定されているので、コンデンサC1には電流が流れ込まなくなり、大きな電位差が生じることはない。このため、転送信号CK1において大きなスパイク電位の発生が抑制されるので、駆動回路に大きな電流が流れ込むことを防止することができる。
(11)以降、他の発光サイリスタL3〜L128に対しても、同様の制御を行うことによって順次発光させることができる。そして、最後の発光サイリスタL128が消灯した後、次のリセット信号(RST)が入力され、その後次のライン同期信号Lsyncが入力されて、同様のプロセスにて発光サイリスタL1〜L128の点灯がなされる。
(12)このとき、次の2ライン目のライン同期信号Lsyncが入力されると、図5に示されるように、このライン同期信号Lsyncが計数回路78によってカウントされ、選択回路79によって設定回路77に格納された2組のクロック周波数とパルス幅を定める定数(Width)のうち、第2のクロック周波数とパルス幅を定める定数Width2に切り替えられ、出力される。そのため、2ライン目の発光信号ΦIは、第2のクロック周波数とパルス幅を定める定数Width2に基いて決定される周波数及びパルス幅に切り替えられる。
その後、同様に、奇数番目のラインに対しては、発光信号データ生成部72及び発光信号波形生成部75において発光信号ΦIを生成するにあたり、第1のクロック周波数とパルス幅を定める定数Width1に基いて決定されるクロックが用いられ、偶数番目のラインに対しては、発光信号データ生成部72及び発光信号波形生成部75において発光信号ΦIを生成するにあたり、第2のクロック周波数とパルス幅を定める定数Width2に基いて決定されるクロックが用いられる。
このように、上記実施の形態では、クロック切替部76によって1ラインの画像を露光する毎に使用されるクロックの周波数が切り替られるため、単一のクロックを使用した場合に比較して、電磁波障害(EMI)のレベルを低減することが可能となる。
また、上記実施の形態では、駆動回路36の発光信号データ生成部72及び発光信号波形生成部75で用いるクロックの周波数を変更することによって、発光信号ΦIのパルス幅が変化する。図8はクロックの周波数を2倍に変更した場合を示すものであり、そのままの状態ではパルス幅が1/2となる。
そこで、上記実施の形態では、クロックの周波数変更に伴って、パルス幅を決定する定数Widthを併せて変更することにより、クロックの周波数変更に伴うパルス幅の変動を小さく押さえている。図8(a)に示す例においては、クロックの周波数を2倍に変更した場合に、パルス幅を2倍とすることにより、基本的にパルス幅の変動をゼロにすることが可能となる。
但し、クロックの周波数を整数倍に設定した場合には、クロックの高調波が重なり電磁波障害(EMI)のレベルを十分低減することができない虞れがある。そこで、クロックの周波数として電磁波障害(EMI)のピークが異なる周波数を選択することが望ましく、これにより十分な電磁波障害(EMI)レベルの低減が可能となる。
また、図8(b)は、従来のスペトラム拡散クロックジェネレータ(SSCG)を用いた場合のクロックを模式的に示した図である。このように、スペトラム拡散クロックジェネレータ(SSCG)を用いてクロックの周波数を変動させた場合には、ライン同期信号Lsyncの周期とスペトラム拡散クロックジェネレータ(SSCG)によるクロックの変調周期とが近い値である場合に、副走査方向の濃淡筋が目立ちやすくなる虞れがある。
図9は本発明者がクロックとして第1のPLL設定値である275.17MHzのものと、第2のPLL設定値である241.80MHzのものとを使用した場合における電磁波障害(EMI)のノイズレベルを実際に測定した値を示すグラフである。
この図9から明らかなように、クロックの周波数として275.17MHzと241.80MHzを採用した場合には、電磁波障害(EMI)のノイズレベルのピークが互いに異なり、電磁波障害(EMI)のレベルを低減することが可能であることが判る。
実施の形態2
図10はこの発明の実施の形態2に係るプリンタヘッドの発光制御装置を示す回路図である。
この実施の形態2では、クロック切替手段76の設定回路77がクロック周波数とパルス幅を定める定数Widthの組合せとして、4組のクロック周波数(PLL設定値1〜PLL設定値4)とパルス幅を定める定数(Width1〜Width4)を備えている。そして、選択回路79は、ライン同期信号Lsyncがカウンタ78に入力される毎に、選択回路79によって4組のクロック周波数(PLL設定値1〜PLL設定値4)及びパルス幅を定める定数(Width1〜Width4)を順次切り替えるように構成されている。なお、4組のクロック周波数(PLL設定値1〜PLL設定値4)及びパルス幅を定める定数(Width1〜Width4)を切り替える順序は、第1〜第4の順であっても良いし、ランダムに変更するように構成しても良い。
そのため、この実施の形態2では、発光信号データ生成部72及び発光信号波形生成部75において発光信号ΦIを生成するにあたり、4種類の周波数が異なるクロックを使用することができ、電磁波障害(EMI)のレベルを実施の形態1に比較して更に低減することが可能となる。
実施の形態3
図11はこの発明の実施の形態3に係るプリンタヘッドの発光制御装置を示す回路図である。
この実施の形態3では、クロック発生手段としてのPLL回路からなるクロック生成部74として、異なる周波数のクロックを生成する第1及び第2のクロック生成部741、742を備えている。これら第1及び第2のクロック生成部741、742から出力されるクロックは、計数回路91にライン同期信号Lsyncが入力される毎に、選択回路92によって切り替えられる。
本実施の形態3では、第1及び第2のクロック生成部741、742を備えることにより、クロック周波数の変更に伴ってクロック生成部741、742が安定するのに要する待ち時間を短縮することができ、高解像度の露光装置13に対応することが可能となる。