以下に添付図面を参照して、定着装置、画像形成装置、定着方法、及びプログラムの一の実施の形態を詳細に説明する。
(第1の実施の形態)
図1は、画像形成装置10の模式図である。画像形成装置10は、画像形成部51、定着装置40、及び主制御部50を備える。画像形成部51は、記録媒体にトナーによる画像を形成する。定着装置40は、画像形成部51によって記録媒体に転写されたトナーを該記録媒体に定着させる。主制御部50は、画像形成装置10全体を制御する。
画像形成部51は、無端の転写ベルトを備える。転写ベルトは、二次転写駆動ローラ22Bと転写ベルトテンションローラ22Aとによって内側から支持されている。転写ベルトは、これらの二次転写駆動ローラ22Bと転写ベルトテンションローラ22Aの回転に伴って所定方向(図1中、矢印H方向)に回転する。
転写ベルトの周囲には、転写ベルトの回転方向に沿って複数の現像ユニット2(2A、2B、2C、2D)が配置されている。現像ユニット2は、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラックの各色のトナーを予め貯留し、これらのトナーを、転写ベルトの回転に伴って搬送されてきた記録媒体に順次転写する。現像ユニット2は、公知の電子写真方式により画像形成を行う。
具体的には、現像ユニット2Aは、感光体29Aを備える。感光体29Aは図示を省略する駆動機構によって転写ベルトとは逆方向(図1中、矢印K方向)に回転される。感光体29Aの周囲には、感光体29Aの回転方向に沿って順に、帯電装置30A、現像ロール27A、転写ロール32A、クリーニングブレード33Aが配置されている。感光体29Aの外周面における帯電装置30Aと現像ロール27Aの間の領域には、露光装置4によって画像データに応じて変調された露光光が照射される。
貯留部26Aには、トナーカートリッジ25Aに貯留されたトナーが供給される。貯留部26Aにはセンサ28Aが設けられており、センサ28Aによって貯留部26Aに貯留されているトナー量が所定値以下となることが検知されると、トナーカートリッジ25Aに貯留されたトナーが貯留部26Aに供給される。現像装置26Aに設けられた現像ロール27Aによって、該貯留されたトナーが感光体29Aの表面に供給される。
現像ユニット2Aでは、感光体29Aの外周面が帯電装置30Aによって帯電された後に、露光装置4によって画像データに応じた露光光LAが照射されて、該画像データに応じた静電潜像が該感光体29Aに形成される。静電潜像が感光体29Aの回転に伴って現像ロール27Aの設けられた位置に達することで、静電潜像がトナーによって現像され、感光体29Aにトナー像が形成される。形成されたトナー像は、転写ロール32Aによって、転写ベルトによって搬送されてきた記録媒体12に転写される。感光体29A上の残留トナーは、クリーニングブレード33Aによって除去され、図示を省略する除電装置によって除電される。
現像ユニット2B、2C、2Dは、トナーカートリッジ25B、25C、25D、現像装置26B、26C、26D、トナー貯留部(図示省略)、センサ28B、28C、28D、現像ロール27B、27C、27D、感光体29B、29C、29D、帯電装置30B、30C、30D、転写ロール32B、32C、32D、及びクリーニングブレード33B、33C、33Dを備える。現像ユニット2B、2C、2Dは、貯留されているトナーの色が異なる以外は、現像ユニット2Aと同じ構成である。すなわち、これらの現像ユニット2(2A、2B、2C、2D)は、形成する画像の色が異なるのみであり、内部構成は同様である。
露光装置4は、各現像ユニット2で形成対象の色の画像データに基づいて変調した露光光(LA、LB、LC、LD)を、対応する各現像ユニット2の感光体(29A、29B、29C、29D)へ照射する。
また、画像形成部51には、記録媒体12を貯留した給紙トレイ10が設けられている。給紙トレイ10に貯留されている記録媒体12は、給紙ローラ14や搬送ローラ18によって搬送され、転写ベルトに供給される(図1中、矢印G方向参照)。転写ベルトに供給された記録媒体12は、転写ベルト12によって搬送され、現像ユニット2によって順次各色のトナーが転写される。
画像形成装置10の筐体11には、UI(ユーザインタフェース)部6が設けられている。UI部6は、ユーザからの各種操作指示を受け付けると共に、各種画像を表示する。UI部6には、タッチパネル等がある。
筐体11の外側には第3検出部49が設けられている。第3検出部49は、定着装置40の外側の環境温度を検出する。本実施の形態では、第3検出部49は、画像形成装置10の外側の温度を検出可能な位置(すなわち、筐体11の外周面)に設置されている場合を説明する。なお、第3検出部49は、定着装置40の外側に設けられていればよく、画像形成装置10の筐体11の内側で、且つ定着装置40の外側に設けられていてもよい。第3検出部49には、公知の温度検知装置を用いる。第3検出部49には、熱を直接検知するサーミスタを用いることが好ましい。
定着装置40は、画像形成部51によってトナーによるトナー像を転写された記録媒体12に該トナー像を定着させる。これによって、記録媒体12は、トナー像による画像の形成された状態となる。画像形成された記録媒体12は、図示を省略する搬送ローラや排紙ローラ39等によって、画像形成装置の外部へと排出される(図1中、矢印I、矢印J参照)。
定着装置40は、定着機構部40Aと、定着制御部40Bと、を備える。定着機構部40Aは、画像形成部51によって記録媒体12に転写されたトナー像を、該記録媒体12に定着させる機構を備える。定着制御部40Bは、定着機構部40Aを制御する。
図2は、画像形成装置10の機能ブロック図である。画像形成装置10の主制御部50は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、及びRAM(Random Access Memory)などを含んで構成されるコンピュータであり、画像形成部51、UI部6、定着装置40等を制御する。
主制御部50は、通信部52、画像形成制御部54、記憶部56、及びI/O部58を備える。通信部52は、外部装置とネットワーク等の通信回線を介して通信する通信インターフェースである。画像形成制御部54は、外部装置等から受け付けた画像データに応じた画像を形成するように、画像形成部51を制御する。また、画像形成制御部54は、定着装置40へ駆動開始信号を送信したり、定着装置40の記録媒体12を搬送するための図示を省略する搬送機構等の制御も行う。記憶部56は、各種データを記憶する。I/O部58は、UI部6に各種画像データを表示すると共に、UI部6からのユーザの操作指示による指示信号を受け付ける。
定着装置40の定着制御部40Bは、主制御部50と信号授受可能に接続されている。
定着装置40は、主制御部50の制御によって、定着装置40への電力供給開始、及び電力供給遮断等が制御される。このため、定着装置40は、主制御部50の制御によって電力供給が開始されることで、定着装置40の各部に電力が供給される。また、定着装置40は、主制御部50の制御によって電力供給が遮断されることで、主制御部50の各部への電力供給が遮断される。
図3及び図4は、定着装置40を示す模式図である。なお、図4は、図3における定着装置40を、定着装置40へ搬送される記録媒体12の搬送方向(図3中、矢印I方向)の上流側から見たときの模式図である。
定着機構部40Aは、加熱ローラ43と加圧ローラ45とを備える。加熱ローラ43及び加圧ローラ45は、円筒状の部材であり、表面がゴム等の弾性体による弾性層によって覆われている。加熱ローラ43及び加圧ローラ45は、長尺方向(図4中、矢印Y方向)が略平行となるように配置され、且つ外周面が互いに接触するように配置されている。加熱ローラ43の内部には、加熱部42が設けられている。加熱部42は、加熱ローラ43に熱を加える。
加熱部42は、ヒータ42Aとヒータ42Bから構成されている。本実施の形態では、ヒータ42A及びヒータ42Bは、ハロゲンヒータである場合を説明するが、ハロゲンヒータに限られない。また、本実施の形態では、ヒータ42A及びヒータ42Bからなる加熱部42は、これらのハロゲンヒータの点灯率を制御することで、加熱温度を制御される。なお、加熱部42の制御方法は、点灯率の制御に限られない。
加熱ローラ43及び加圧ローラ45は、図示を省略する駆動機構を備え、互いに逆方向に回転する(図3中、矢印O方向、及び矢印P方向参照)。画像形成部51によってトナー像を転写された記録媒体12は、定着装置40に搬送される。定着装置40に搬送されてきた記録媒体12が、図示を省略する搬送機構によって定着機構部40Aに向かって搬送されて(図3中、矢印I方向)、これらの加熱ローラ43及び加圧ローラ45の接触領域(ニップ領域と称される場合もある)に至る。すると、記録媒体12は、加熱ローラ43及び加圧ローラ45の回転駆動によって挟持搬送される。これにより、記録媒体12には、加熱ローラ43と加圧ローラ45との接触領域において加熱ローラ43によって熱が加えられると共に、加熱ローラ43と加圧ローラ45によって圧力が加えられる。この加熱及び加圧によって、画像形成部51によって記録媒体12上に転写されたトナー像が記録媒体12上に定着される。
このため、加熱ローラ43の温度は、記録媒体12上のトナーを該記録媒体12に定着させることの可能な温度(以下、目標温度と称する)に調整される必要がある。後述する加熱制御部は、加熱ローラ43を目標温度に加熱させるための制御を行う。
定着機構部40Aは、第1検出部46を備える。第1検出部46は、温度測定対象の加熱ローラ43から放射される赤外線量に応じた加熱ローラ温度を検出する。第1検出部46は、例えば、サーモパイルである。
また、定着機構部40Aは、第2検出部44を備える。第2検出部44は、加圧ローラ45の外周面に接触配置されている。第2検出部44は、加熱ローラ43に接触配置された加圧ローラ45から発せられる熱に応じた加圧ローラ温度を検出する。第2検出部44は、例えば、サーミスタである。
図5は、定着装置40の機能ブロック図である。定着装置40における定着制御部40Bは、取得部62A、取得部62B、取得部62C、記憶制御部62M、電力遮断時間算出部62G、タイマ62L、予測温度算出部62I、決定部62J、記憶部62K、及び加熱制御部62Eを含む。
取得部62Aは、第1検出部46による加熱ローラ温度の検出結果を取得する。取得部62Bは、第2検出部44による加圧ローラ温度の検出結果を取得する。取得部62Cは、画像形成装置10の環境温度を検知する第3検出部49による環境温度の検出結果を取得する。
記憶制御部62Mは、取得部62Aで取得された加熱ローラ温度、取得部62Bで取得された加圧ローラ温度、取得部62Cで取得された環境温度を、定着装置40に電力供給が開始されてからの経過時間に対応づけて順次記憶部62Kへ記憶する制御を行う。なお、記憶制御部62Mは、定着装置40に電力供給が開始されてから遮断されるまでの期間、この記憶制御を行う。本実施の形態では、取得部62A、取得部62B、及び取得部62Cは、各々、予め定めた時間毎に(例えば、0.5秒毎)、第1検出部46、第2検出部44、及び第3検出部49から各々の検出結果を取得する。そして、記憶制御部62Mはこれらの検出結果を、定着装置40に直前に電力供給が開始された時間を基準時間「0」とし、この基準時間からの経過時間に対応づけて、温度推移情報63Mとして記憶部62Kに記憶する。
すなわち、温度推移情報63Mは、第1検出部46(定着装置40)への電力供給が前回開始されてから遮断されるまでの経過時間と、第1検出部46で検出された加熱ローラ温度と、第2検出部44で検出された加圧ローラ温度と、第3検出部49で検出された環境温度と、を対応づけたテーブルである。
タイマ62Lは、定着装置40への電力供給が開始されてからの経過時間をカウントし、電力供給が遮断されると計測値をリセット(計測値を「0」と)する。そして、定着装置40への電力供給が開始されると、該開始からの経過時間の計測を開始する。記憶制御部62Mは、取得部62A、取得部62B、及び取得部62Cの各々で取得された各温度(加熱ローラ温度、加圧ローラ温度、環境温度)を、これらの温度取得時のタイマ62Lによって計測された経過時間に対応づけて、温度推移情報63Mを更新していく。
電力遮断時間算出部62Gは、定着装置40への電力供給が開始されたときに、定着装置40への電力供給が遮断されてから電力供給が今回開始されるまでの時間である電力遮断時間を算出する。電力遮断時間算出部62Gは、予備電源等から常時電力を供給されることで常時動作する内部時計を備えており、定着装置40への電力供給が遮断されたときの日時を内部メモリに格納する。そして、定着装置40への電力供給が開始されたときに、内部メモリに格納されている、遮断されたとき(遮断されたときの日時)から、現在日時(電力供給が開始された時)までの時間を算出することで、電力遮断時間を算出する。
なお、電力遮断時間算出部62Gは、定着装置40への電力供給が開始されて、電力遮断時間を算出した後に、該内部メモリに格納されている、電力供給が遮断されたときの時刻をクリアする。このため、電力遮断時間算出部62Gは、定着装置40への電力供給が再開されたときに、電力供給が遮断されたときから電力供給が今回開始されたときまでの経過時間を、電力遮断時間として算出する。
ここで、赤外線量に応じた加熱ローラ温度を検出する第1検出部46は、電力供給が開始されてから一定の期間(以下、第1期間と称する)は、安定して加熱ローラ温度を検出することができない。この第1期間は、第1検出部46の種類等によって異なる。
そこで、本実施の形態では、予測温度算出部62Iが、定着装置40に電力供給が開始されたときの、加熱ローラ43の加熱ローラ温度の予測温度を算出する。なお、定着装置40に電力供給が開始されることで、定着装置40に備えられた装置各部である第1検出部46にも電力供給が開始される。すなわち、予測温度算出部62Iは、第1検出部46に電力供給が開始されたときに、第1検出部46が安定して加熱ローラ温度を検出することができる状態であると仮定したときに第1検出部46で測定される加熱ローラ43の加熱ローラ温度を予測し、予測結果を予測温度として算出する。
具体的には、予測温度算出部62Iは、第1検出部46への電力供給が開始されたときに、記憶部62Kに格納されている温度推移情報63Mを読取る。なお、異なる時期に作成された複数の温度推移情報63Mが格納されている場合には、予測温度算出部62Iは、最も直前に作成された温度推移情報63Mを読取る。
図6は、温度推移情報63Mの一例を示す模式図である。なお、説明を簡略化するために、図6に示す例では、経過時間と、加熱ローラ温度と、の関係のみを示した。図6は、温度推移情報63Mによって示される、定着装置40(第1検出部46)への電力供給が開始されてから遮断されるまでの経過時間と、第1検出部46で検出された加熱ローラ43の加熱ローラ温度と、の関係を示す線図である。図6に示すように、定着装置40への電力供給が開始されることで、後述する加熱制御部62Eの制御によって加熱ローラ43が目標温度に向かって上昇し始める。そして、定着装置40への電力供給開始からの経過時間に対応する、第1検出部46による測定結果である加熱ローラ温度が、随時、温度推移情報63Mに格納されていく。
予測温度算出部62Iは、第1検出部46への電力供給が開始されたときに、記憶部62Kに格納されている温度推移情報63Mを読取り、電力遮断時間算出部62Gによって算出された電力遮断時間と、該温度推移情報63Mにおける電力供給が遮断された時に検出された加熱ローラ温度と、から予測温度を算出する。
具体的には、予測温度算出部62Iは、温度推移情報63Mにおける、電力供給が遮断されたとき(図6中、T2参照)に検出された加熱ローラ温度(図6中、第TA参照)を読取る。そして、予測温度算出部62Iは、読取った加熱ローラ温度(図6中、TA参照)に収束し始めたときの経過時間(図6中、T1参照)を求める。さらに、予測温度算出部62Iは、この経過時間(図6中、T1参照)から、電力遮断時間算出部62Gで算出された電力遮断時間(図6中、P参照)を減算した経過時間(図6中、T3参照)に対応する加熱ローラ温度(図6中、TB参照)を、予測温度として算出する。
図5に戻り、なお、このように、予測温度算出部62Iは、温度推移情報63Mから直接予測温度を算出してもよいが、本実施の形態では、温度推移情報63Mから温度予測情報63Nを作成し、この温度予測情報63Nから予測温度を算出する。
具体的には、予測温度算出部62Iは、作成部62Hを含む。予測温度算出部62Iは、作成部62Hが温度推移情報63Mに基づいて作成した温度予測情報63Nを用いて、予測温度を算出する。
図7、図8、及び図9は、温度予測情報63Nの一例を示す模式図である。
上述したように、温度推移情報63Mは、第1検出部46(定着装置40)への電力供給が開始されてからの経過時間と、第1検出部46で検出された加熱ローラ温度と、第2検出部44で検出された加圧ローラ温度と、第3検出部49で検出された環境温度と、を対応づけたテーブルである。作成部62Hは、第1検出部46への電力供給が開始されたときに、記憶部62Kに格納されている温度推移情報63Mを読取る。
作成部62Hは、温度推移情報63Mにおける、電力供給が遮断されたとき(図6中、T2参照)に検出された加熱ローラ温度を読取り、該加熱ローラ温度に収束し始めたときの経過時間(図6中、T1参照)を求める。そして、作成部62Hは、該温度推移情報63Mに示される、該収束し始めたときの経過時間(図6中、T1参照)から経過時間「0」までの加熱ローラ温度と経過時間との関係を示す線図を、該収束し始めたときの経過時間(図6中、T1参照)を原点(経過時間「0」)として、経過時間方向に反転させることで、温度予測情報63Nを作成する。このため、図7〜図9の線図に示される温度予測情報63Nが作成される。
ここで、本実施の形態では、作成部62Hは、加圧ローラ温度及び環境温度の各々を、予め定めた温度域毎に区切り、該温度域毎に加熱ローラ温度と経過時間との関係を示す温度予測情報63Nを作成する。すなわち、作成部62Hは、複数の温度予測情報63Nを作成する。
なお、加圧ローラ温度を複数の温度域に区切るための温度範囲と、環境温度を複数の温度域に区切るための温度範囲とは、異なる値であってもよい。
また、加圧ローラ温度及び環境温度の各々の温度域の区切り方は、加圧ローラ45及び環境温度の変動に応じた加熱ローラ43の温度変動の挙動に応じて、加熱ローラ43がある特定の温度挙動を示す挙動パターンごとに、加圧ローラ温度及び環境温度の各々の温度域の区切りを設ければよい。加圧ローラ温度及び環境温度の各々の温度域の区切り方は、予め設定して記憶部62Kに記憶しておけばよい。また、この温度域の区切り方は、ユーザによる図示を省略する操作部の操作指示等によって適宜変更可能としてもよい。
詳細には、まず、作成部62Hは、温度推移情報63Mに示される、第2検出部44によって検出された加圧ローラ温度を予め定めた温度域毎に区切る。本実施の形態では、作成部62Hは、温度推移情報63Mに示される、第2検出部44によって検出された加圧ローラ温度を、100℃以上の温度域、60℃以上100℃未満の温度域、60℃未満の温度域、の3つの温度域に区切る。
また、作成部62Hは、温度推移情報63Mに示される、第3検出部49によって検出された環境温度を、予め定めた温度域に区切る。本実施の形態では、作成部62Hは、温度推移情報63Mに示される、第3検出部49によって検出された環境温度を、15℃未満の温度域、15℃以上28℃未満の温度域、28℃以上の温度域、の3つの温度域に区切る。
そして、作成部62Hは、温度推移情報63Mから、加圧ローラ温度及び環境温度の温度域毎に、加熱ローラ温度と経過時間との関係を示す温度予測情報63Nを作成する。
図7は、第2検出部44によって検知された加圧ローラ温度が100℃以上であったときの、経過時間と加熱ローラ温度との関係を、環境温度の温度域毎に示した温度予測情報63Nである(図7中、線図Q1〜線図Q3参照)。
図8は、第2検出部44によって検知された加圧ローラ温度が60℃以上100℃未満であったときの、経過時間と加熱ローラ温度との関係を、環境温度の温度域毎に示した温度予測情報63Nである(図8中、線図Q4〜線図Q6参照)。
図9は、第2検出部44によって検知された加圧ローラ温度が60℃未満であったときの、経過時間と加熱ローラ温度との関係を、環境温度の温度域毎に示した温度予測情報63Nである(図9中、線図Q7〜線図Q9参照)。
図5に戻り、予測温度算出部62Iは、作成部62Hによって作成された、加圧ローラ温度及び環境温度の温度域毎の温度予測情報63Nの内、温度推移情報63Mにおける、電力供給が遮断されたときに、検出された加圧ローラ温度及び環境温度を温度域とする温度予測情報63Nを読取る。
そして、予測温度算出部62Iは、読取った温度予測情報63Nにおける、電力遮断時間算出部62Gによって算出された電力遮断時間と同じ経過時間に対応する加熱ローラ温度を、予測温度として算出する。
例えば、作成部62Hが、図7〜図9に示す、線図Q1〜線図Q9によって表される複数の温度予測情報63Nを作成したとする。予測温度算出部62Iは、これらの温度予測情報63Nの内、温度推移情報63Mにおける、電力供給が遮断されたときに、検出された加圧ローラ温度及び環境温度に対応する温度予測情報63Nを読取る。例えば、予測温度算出部62Iは、図7の線図Q1によって示される温度予測情報63Nを読取ったとする。線図Q1によって示される温度予測情報63Nは、環境温度15℃未満であり且つ加圧ローラ温度が100℃以上であったときの、加熱ローラ温度と経過時間との関係を示す線図である。
そして、電力遮断時間算出部62Gによって算出された電力遮断時間が350秒であったとする。この場合、予測温度算出部62Iは、線図Q1によって示される温度推移情報63Mにおける、経過時間350秒に対応する加熱ローラ温度としての40℃を、加熱ローラ温度の予測温度として算出する。
図5に戻り、決定部62Jは、第1検出部46が安定して温度検出可能な状態となるまでに要する第1期間内に、予測温度算出部62Iで算出された予測温度から目標温度となるように加熱部42を制御するための加熱部制御値を決定する。
記憶部62Kは、加熱ローラ43を加熱する加熱部42の温度と、加熱部42の加熱部制御値であるヒータ点灯率と、を対応づけた加熱制御情報を予め記憶している。加熱制御情報に示される加熱部42の加熱部温度は、安定して温度検出可能な状態であるときの第1検出部46が検出した加熱ローラ43の加熱ローラ温度である。また、加熱制御情報に示される加熱部制御値は、対応する加熱部温度(加熱ローラ温度)にある加熱ローラ43を第1期間内に目標温度とするための加熱部制御値を示す。
図10及び図11は、加熱制御情報の一例を示す図である。図10及び図11に示す例では、加熱制御値として、ヒータ点灯率を示した。なお、本実施の形態では、加熱制御部62Eは、ヒータ点灯率を制御することで、加熱部42の温度を制御する場合を説明する。このため、加熱部制御情報にはヒータ点灯率を用いた場合を示した。しかし、他の制御値(例えば、印加電圧値や電圧印加時間の制御等)によって加熱部42の温度を制御する場合には、他の制御値と、加熱部温度と、を対応づけた加熱制御情報を予め記憶部62Kに記憶すればよい。
図10及び図11に示すように、加熱部42のヒータ点灯率が高くなるほど、加熱部42によって加熱された加熱ローラ43の温度は高くなる。
図5に戻り、決定部62Jは、予測温度算出部62Iで算出された予測温度と同じ加熱部温度に対応するヒータ点灯率を、記憶部62Kに格納されている加熱制御情報から読取ることで、加熱部制御値を決定する。
加熱制御部62Eは、加熱部42の加熱制御を行う。本実施の形態では、加熱制御部62Eは、第1検出部46への電力供給が開始されてから、第1検出部46が安定して温度検知可能な状態となるまでの第1期間内は、決定部62Jで決定された加熱制御値によって特定されるヒータ点灯率となるように、加熱部42を制御する(以下、第1定着温度制御と称する場合がある)。
そして、加熱制御部62Eは、第1期間の経過後は、第1検出部46によって検出された加熱ローラ温度に応じた目標温度となるように、加熱部42を制御する(以下、第2定着温度制御と称する場合がある)。詳細には、加熱制御部62Eは、第1期間の経過後は、取得部62Aで取得した第1検出部46の加熱ローラ温度に応じて、記憶部62Kに格納されている加熱制御値によって示される該加熱ローラ温度と同じ加熱部温度に対応するヒータ点灯率となるように、加熱部42を制御する。
次に、定着装置40で実行する記憶処理、及び温度制御処理を説明する。図12は、定着装置40の定着制御部40Bが実行する記憶処理の手順を示すフローチャートである。
定着装置40では、図示を省略する電源スイッチがユーザによって操作されることで、画像形成装置10の装置各部へ電力が供給されると共に、定着装置40への電力供給が開始されると、図12に示す記憶処理を実行する。なお、定着装置40への電力供給開始によって、定着装置40に設けられた装置各部への電力供給が開始される。
まず、記憶制御部62Mが、定着装置40への電力供給開始からの経過時間を記憶部62Kに記憶する(ステップS100)。記憶制御部62Mは、電力供給開始からの経過時間を、タイマ62Lの計測値を読取ることで取得し、記憶部62Kに記憶する。
次に、記憶制御部62Mは、ステップS100で記憶した経過時間に取得部62Cで取得した環境温度を、該経過時間に対応づけて記憶部62Kに記憶する(ステップS102)。
次に、記憶制御部62Mは、ステップS100で記憶した経過時間に取得部62Bで取得した加圧ローラ温度を、該経過時間に対応づけて記憶部62Kに記憶する(ステップS104)。次に、記憶制御部62Mは、ステップS100で記憶した経過時間に取得部62Aで取得した加熱ローラ温度を、該経過時間に対応づけて記憶部62Kに記憶する(ステップS106)。
ステップS100〜ステップS106の処理によって、ステップS100で記憶した経過時間と、該経過時間に取得された加熱ローラ温度、加圧ローラ温度、及び環境温度と、を対応づけた温度推移情報63Mが記憶部62Kに順次格納される。
次に、記憶制御部62Mは、第1検出部46への電力供給が遮断されたか否かを判断する(ステップS108)。ステップS108で否定判断すると(ステップS108:No)、上記ステップS100へ戻る。一方、ステップS108で肯定判断すると(ステップS108:Yes)、本ルーチンを終了する。
次に、定着装置40で実行する温度制御処理を実行する。図13は、定着装置40の定着制御部40Bが実行する温度制御処理の手順を示すフローチャートである。なお、図12に示す記憶処理は、図13に示す温度制御処理中に割り込み処理される。
図示を省略する電源スイッチがユーザによって操作されることで、画像形成装置10の装置各部へ電力が供給されると共に、定着装置40の装置各部(第1検出部46)への電力供給が開始(ステップS200)されると、電力遮断時間算出部62Gが、電力遮断時間を算出する(ステップS202)。
次に、作成部62Hが、記憶部62Kに格納されている温度推移情報63Mに基づいて、温度推移情報63Mに示される加圧ローラ温度及び環境温度の各々を、予め定めた温度域毎に区切り、温度域毎の加熱ローラ温度と経過時間との関係を示す温度予測情報63Nを作成する(ステップS204)。温度予測情報63Nの作成方法については、上述したため、ここでは説明を省略する。
次に、予測温度算出部62Iが、予測温度を算出する(ステップS206)。詳細には、予測温度算出部62Iは、上記ステップS204で作成部62Hによって作成された、加圧ローラ温度及び環境温度の温度域毎の温度予測情報63Nの内、温度推移情報63Mに示される電力供給が遮断されたときに、検出された加圧ローラ温度及び環境温度を温度域とする温度予測情報63Nを読取る。そして、予測温度算出部62Iは、読取った温度予測情報63Nにおける、上記ステップS202で算出された電力遮断時間と同一の経過時間に対応する加熱ローラ温度を、予測温度として読取ることで、該予測温度を算出する。
次に、加熱制御部62Eが、加熱部制御値を決定する(ステップS208)。ステップS208では、加熱制御部62Eは、ステップS206で算出された予測温度と同じ加熱部温度に対応するヒータ点灯率を、記憶部62Kに格納されている加熱制御情報から読取ることで、加熱部制御値を決定する。
次に、加熱制御部62Eが、第1定着温度制御を実行する(ステップS210)。ステップS210では、加熱制御部62Eは、ステップS208で決定された加熱部制御値によって特定されるヒータ点灯率となるように、加熱部42を制御する。次に、加熱制御部62Eは、上記ステップS200で電力供給が開始されてから、第1検出部46が安定して温度検知可能な状態となるまでの第1期間を経過したか否かを判断する(ステップS212)。
ステップS212で否定判断すると(ステップS212:No)、上記ステップS210へ戻り、ステップS212で肯定判断すると(ステップS212:Yes)、ステップS214へ進む。
ステップS214では、加熱制御部62Eが、第2定着温度制御を実行する(ステップS214)。ステップS214では、加熱制御部62Eが、取得部62Aで第1検出部46から取得した加熱ローラ温度を読取る。そして、加熱制御部62Eは、加熱部42(すなわち加熱ローラ43)が、読取った加熱ローラ温度から目標温度となるように、加熱部42を制御する。
次に、加熱制御部62Eが、定着装置40(第1検出部46)への電力供給が遮断されたか否かを判断する(ステップS216)。ステップS216で否定判断すると(ステップS216:No)、上記ステップS214へ戻る。一方、ステップS216で肯定判断すると(ステップS216:Yes)、本ルーチンを終了する。
以上説明したように、本実施の形態の定着装置40では、第1検出部46が、加熱ローラ43から放射される赤外線量に応じた加熱ローラ温度を検出する。記憶制御部62Mは、第1検出部46への電力供給が開始されてから遮断されるまでの経過時間と加熱ローラ温度とを対応づけた温度推移情報63Mを記憶部63Kへ記憶する制御を行う。電力遮断時間算出部62Gは、第1検出部46への電力供給が開始されたときに、第1検出部46への電力供給が遮断されてから電力供給が今回開始されるまでの電力遮断時間を算出する。第1検出部46への電力供給が開始されたときに、電力遮断時間、及び温度推移情報における電力供給が遮断された時に検出された加熱ローラ温度から、加熱ローラの現在の予測温度を算出する。決定部62Jは、第1検出部46が安定して温度検出可能な状態となるまでに要する第1期間内に、加熱ローラ43が予測温度から予め定めた目標温度となるように加熱部42を制御するための加熱部制御値を決定する。加熱制御部62Eは、第1検出部46への電力供給が開始されてから第1期間内は、加熱部制御値に応じて加熱部42を制御する。
このように、本実施の形態の定着装置40では、直前の電力供給が遮断されていた電力遮断時間と、電力供給が遮断される前の電力供給されていたときに第1検出部46で検出された加熱ローラ温度と経過時間との関係を示す温度推移情報と、を用いて、電力供給が開始されたときの加熱ローラ43の予測温度を算出する。そして、第1期間は、算出された予測温度に応じて、目標温度となるように加熱部42を制御する。
このため、本実施の形態の定着装置40では、第1検出部46が安定して温度検知可能となる第1期間を経過する前から、第1検出部46による加熱ローラ温度の検知結果の予測温度を求め、この予測温度に応じて加熱部42の制御を開始することができる。また、電力供給が遮断される前の第1検出部46による検出結果である加熱ローラ温度を用いて、予測温度を算出するため、加熱ローラ43の温度制御の信頼性向上を図ることができる。
従って、本実施の形態の定着装置40では、待機時間の短縮と温度制御の信頼性向上を図ることができる。
図14は、電力供給が遮断されてから電力供給再開されたときの、加熱ローラ43の第1検出部46による加熱ローラ温度の検出結果の一例を示す図である。
図14に示すように、従来技術では、電力供給遮断の後に電力供給が開始されてから第1期間PAの経過後に、加熱制御部62Eによる加熱部42の制御が開始されていた(線図P2参照)。一方、本実施の形態の定着装置40では、電力供給遮断の後に電力供給が開始されたときに、予測温度に応じて決定された加熱部制御値に応じた加熱部42の制御がなされる。このため、第1期間PAの経過前に、加熱部42の制御が開始されることから、第1検出部46で検知される加熱ローラ温度は、線図P1に示す関係となる。このため、従来の技術に比べて、本実施の形態の定着装置40では、待機時間の短縮を図ることができる。
なお、本実施の形態の定着装置40では、第1検出部46で検出された加熱ローラ43の加熱ローラ温度、第2検出部44で検出された加圧ローラ45の加圧ローラ温度、及び第3検出部49で検出された環境温度を、第1検出部46への電力供給開始からの経過時間に対応づけて温度推移情報63Mとして記憶する場合を説明した。しかし、温度推移情報63Mは、加熱ローラ温度と経過時間とを少なくとも対応づけた情報であればよい。
ただし、温度推移情報63Mを、加熱ローラ温度と経過時間と加圧ローラ温度とを対応づけた情報とすると、加熱ローラ43に接触して配置された加圧ローラ45の温度に起因した加熱ローラ43の温度変動をも加味して、予測温度を算出することができる。このため、更に精度よく予測温度を算出することができる。従って、温度制御の信頼性を更に向上させることができる。
また、温度推移情報63Mを、加熱ローラ温度と経過時間と環境温度とを対応づけた情報とすると、定着装置40の装置外の環境温度の温度変動をも加味して、予測温度を算出することができる。このため、更に精度よく予測温度を算出することができる。従って、温度制御の信頼性を更に向上させることができる。
また、温度推移情報63Mを、加熱ローラ温度と、経過時間と、加圧ローラ温度と、環境温度とを対応づけた情報とすることで、特に精度よく予測温度を算出することができる。従って、温度制御の信頼性を更に向上させることができる。
(第2の実施の形態)
本実施の形態の画像形成装置は、環境温度を検出する第3検出部49に代えて、定着装置の機内温度を検出する第4検出部を備える。
図1に示すように、本実施の形態の画像形成装置10Aは、第3検出部49を備えず、また、定着装置40に代えて定着装置41を備えた以外は、画像形成装置10と同様である。また、図2に示すように、本実施の形態の画像形成装置10Aは、主制御部50に代えて主制御部50Aを備え、定着装置40に代えて定着装置41を備える。主制御部50Aは、定着装置41を制御する以外は、主制御部50と同じ構成である。
図15は、本実施の形態の定着装置41を示す模式図である。
定着装置41は、定着機構部41Aと、定着制御部41Bと、を含む。定着機構部41Aは、第1検出部46、第2検出部44、加熱ローラ43、加圧ローラ45、加熱部42、及び第4検出部48を備える。第1検出部46、加熱ローラ43、加圧ローラ45、第2検出部44、加熱部42は、第1の実施の形態と同様である。
第4検出部48は、定着装置41の機内の温度を検出する。第4検出部48は、定着装置41の機内の温度を測定可能な位置に設けられている。第4検出部48は、例えば、定着装置41を覆う筐体11の内側に配置されている。第4検出部48には、公知の温度検知装置を用いる。第4検出部48には、例えば、熱を直接検知するサーミスタを用いることが好ましい。なお、以下では、第4検出部48によって検出された定着装置41の機内の温度を、機内温度と称して説明する。
図16は、定着装置41の機能ブロック図である。定着装置41における定着制御部41Bは、取得部62A、取得部62B、取得部62D、記憶制御部620M、加熱制御部620E、電力遮断時間算出部62G、タイマ62L、予測温度算出部620I、決定部620J、及び記憶部620Kを含む。予測温度算出部620Iは、作成部620Hを含む。記憶部620Kは、温度推移情報630M及び温度予測情報630Nを記憶する。
取得部62A、取得部62B、及び電力遮断時間算出部62Gは、第1の実施の形態と同様である。
取得部62Dは、定着装置41の機内温度を第4検出部48から取得する。
記憶制御部620Mは、取得部62Aで取得された加熱ローラ温度、取得部62Bで取得された加圧ローラ温度、及び第4検出部48で取得された機内温度を、定着装置41に電力供給が開始されてからの経過時間に対応づけて順次記憶部620Kへ記憶する制御を行う。本実施の形態では、取得部62A、取得部62B、及び取得部62Dは、各々、予め定めた時間毎に(例えば、0.5秒毎)、第1検出部46、第2検出部44、及び第4検出部48から各々の検出結果を取得する。そして、記憶制御部620Mはこれらの検出結果を、定着装置41に直前に電力供給が開始された時間を基準時間「0」とし、この基準時間からの経過時間に対応づけて、温度推移情報630Mとして記憶部620Kに記憶する。
すなわち、温度推移情報630Mは、第1検出部46(定着装置41)への電力供給が開始されてからの経過時間と、第1検出部46で検出された加熱ローラ温度と、第2検出部44で検出された加圧ローラ温度と、第4検出部48で検出された機内温度と、を対応づけたテーブルである。
なお、記憶制御部620Mは、取得部62A、取得部62B、及び取得部62Dの各々で取得された各温度(加熱ローラ温度、加圧ローラ温度、機内温度)を、これらの温度の取得時のタイマ62Lによって計測された経過時間に対応づけて、温度推移情報630Mを更新していく。
予測温度算出部620Iは、定着装置41に電力供給が開始されたときの加熱ローラ温度の予測温度を算出する。定着装置41に電力供給が開始されることで、第1検出部46にも電力供給が開始される。すなわち、予測温度算出部620Iは、第1検出部46に電力供給が開始されたときに、第1検出部46が安定して加熱ローラ温度を検出することができる状態であると仮定したときに、第1検出部46で検出される加熱ローラ43の加熱ローラ温度を予測し、予測結果を予測温度として算出する。
予測温度算出部620Iは、第1検出部46への電力供給が開始されたときに、記憶部620Kに格納されている温度推移情報630Mを読取り、電力遮断時間算出部62Gによって算出された電力遮断時間と、該温度推移情報630Mにおける電力供給が遮断された時に検出された加熱ローラ温度及び機内温度と、から予測温度を算出する。
本実施の形態では、予測温度算出部620Iは、作成部620Hを含む。本実施の形態では、予測温度算出部620Iは、作成部620Hが温度推移情報630Mに基づいて作成した温度予測情報630Nを用いて、予測温度を算出する。
図17、図18、及び図19は、温度予測情報630Nの一例を示す模式図である。
上述したように、温度推移情報630Mは、第1検出部46(定着装置41)への電力供給が開始されてからの経過時間と、第1検出部46で検出された加熱ローラ温度と、第2検出部44で検出された加圧ローラ温度と、第4検出部48で検出された機内温度と、を対応づけたテーブルである。作成部620Hは、第1検出部46への電力供給が開始されたときに、記憶部620Kに格納されている温度推移情報630Mを読取る。
作成部620Hは、温度推移情報630Mにおける、前回電力供給が遮断されたときに、温度推移情報630Mに記録された経過時間を読取る。そして、作成部620Hは、温度推移情報630Mにおける、該経過時間に対応する第1検出部46による加熱ローラ温度に収束し始めたときの経過時間としての第1経過時間を求める。そして、作成部620Hは、該温度推移情報630Mに示される経過時間「0」から該第1経過時間までの加熱ローラ温度と経過時間との関係を、該第1経過時間を経過時間「0」として、経過時間方向に反転させた関係を、温度予測情報630Nとして作成する。
ここで、本実施の形態では、作成部620Hは、加圧ローラ温度及び機内温度の各々を、予め定めた温度域毎に区切り、温度域毎の加熱ローラ温度と経過時間との関係を示す温度予測情報630Nを作成する。すなわち、作成部620Hは、複数の温度予測情報630Nを作成する。
詳細には、まず、作成部620Hは、温度推移情報630Mにおける、加圧ローラ温度を予め定めた温度域毎に区切る。本実施の形態では、作成部620Hは、温度推移情報630Mにおける加圧ローラ温度を、第1の実施の形態と同様に、100℃以上の温度域、60℃以上100℃未満の温度域、60℃未満の温度域に区切る。
また、作成部620Hは、温度推移情報630Mにおける、第4検出部48によって検出された機内温度を、予め定めた温度域に区切る。本実施の形態では、作成部620Hは、機内温度を、20℃未満の温度域、20℃以上40℃未満の温度域、40℃以上の温度域に区切る。
なお、加圧ローラ温度及び機内温度の各々の温度域の区切り方は、加圧ローラ45及び機内温度の変動に応じた加熱ローラ43の温度変動の挙動に応じて、加熱ローラ43がある特定の温度変動の挙動を示す挙動パターンごとに、加圧ローラ温度及び機内温度の各々の温度域の区切りを設ければよい。加圧ローラ温度及び機内温度の各々の温度域の区切り方は、予め設定して記憶部620Kに記憶しておけばよい。また、この温度域の区切り方は、ユーザによる図示を省略する操作部の操作指示等によって適宜変更可能としてもよい。
図17は、加圧ローラ温度が100℃以上であったときの、経過時間と加熱ローラ温度との関係を、機内温度の温度域毎に示した温度予測情報630Nである。
図18は、加圧ローラ温度が60℃以上100℃未満であるときの、経過時間と加熱ローラ温度との関係を、機内温度の温度域毎に示した温度予測情報630Nである。
図19は、加圧ローラ温度が60℃未満であるときの、経過時間と加熱ローラ温度との関係を、機内温度の温度域毎に示した温度予測情報630Nである。
このように、温度予測情報630Nによって示される経過時間と加熱ローラ温度との関係は、第2検出部44による加圧ローラ温度検知結果、及び第4検出部48による機内温度の検出結果に応じて、異なる挙動を示す。すなわち、作成部620Hは、加圧ローラ温度及び機内温度の上記予め定めた温度域毎に、温度予測情報630Nを作成する。
予測温度算出部620Iは、作成部620Hによって作成された複数の温度予測情報630Nの内、温度推移情報630Mに示される、電力供給が遮断されたときに、検出された加圧ローラ温度及び機内温度を温度域とする温度予測情報630Nを読取る。
そして、予測温度算出部620Iは、読取った温度予測情報630Nにおける、電力遮断時間算出部62Gによって算出された電力遮断時間と同一の経過時間に対応する加熱ローラ温度を、予測温度として読取ることで、予測温度を算出する。
決定部620Jは、第1検出部46が安定して温度検出可能な状態となるまでに要する第1期間内に、加熱ローラ43を、予測温度算出部620Iで算出された予測温度から目標温度となるように制御するための加熱部制御値を決定する。
記憶部620Kは、第1の実施の形態と同様に、加熱ローラ43を加熱する加熱部42の温度と、加熱部42の加熱部制御値であるヒータ点灯率と、を対応づけた加熱制御情報を予め記憶している。決定部620Jは、予測温度算出部620Iで算出された予測温度と同じ加熱部温度に対応するヒータ点灯率を、記憶部620Kに格納されている加熱制御情報から読取ることで、加熱部制御値を決定する。
加熱制御部620Eは、加熱部42の加熱制御を行う。本実施の形態では、加熱制御部620Eは、第1検出部46への電力供給が開始されてから、第1検出部46が安定して温度検知可能な状態となるまでの第1期間内は、決定部620Jで決定された加熱制御値によって特定されるヒータ点灯率となるように、加熱部42を制御する(第1定着温度制御)。
そして、加熱制御部620Eは、第1期間の経過後は、第1検出部46によって検出された加熱ローラ温度に応じた目標温度となるように、加熱部42を制御する(第2定着温度制御)。
次に、定着装置41で実行する記憶処理、及び温度制御処理を説明する。図20は、定着装置41の定着制御部41Bが実行する記憶処理の手順を示すフローチャートである。
定着装置41では、図示を省略する電源スイッチがユーザによって操作されることで、画像形成装置10Aの装置各部へ電力が供給されると共に、定着装置41への電力供給が開始されると、図20に示す記憶処理を実行する。なお、定着装置41への電力供給開始によって、定着装置41に設けられた装置各部(第1検出部46を含む)への電力供給が開始される。
まず、記憶制御部620Mが、第1検出部46への電力供給開始からの経過時間を記憶部620Kに記憶する(ステップS300)。記憶制御部620Mは、電力供給開始からの経過時間を、タイマ62Lの計測値を読取ることで取得し、記憶部620Kに記憶する。
次に、記憶制御部620Mは、ステップS300で記憶した経過時間に取得部62Dで取得した機内温度を該経過時間に対応づけて記憶部620Kに記憶する(ステップS302)。
次に、記憶制御部620Mは、ステップS300で記憶した経過時間に取得部62Bで取得した加圧ローラ温度を該経過時間に対応づけて記憶部620Kに記憶する(ステップS304)。次に、記憶制御部620Mは、ステップS300で記憶した経過時間に取得部62Aで取得した加熱ローラ温度を該経過時間に対応づけて記憶部620Kに記憶する(ステップS306)。
ステップS300〜ステップS306によって、ステップS300で記憶した経過時間と、該経過時間に取得された加熱ローラ温度、加圧ローラ温度、及び機内温度と、を対応づけた温度推移情報630Mが、記憶部620Kに格納される。
次に、記憶制御部620Mは、定着装置41への電力供給が遮断されたか否かを判断する(ステップS308)。ステップS308で否定判断すると(ステップS308:No)、上記ステップS300へ戻る。一方、ステップS308で肯定判断すると(ステップS308:Yes)、本ルーチンを終了する。
次に、定着装置41で実行する温度制御処理を実行する。図21は、定着装置41の定着制御部41Bが実行する温度制御処理の手順を示すフローチャートである。なお、図20に示す記憶処理は、図21に示す温度制御処理中に割り込み処理される。
図示を省略する電源スイッチがユーザによって操作されることで、画像形成装置10Aの装置各部へ電力が供給されると共に、定着装置41(第1検出部46)への電力供給が開始(ステップS400)されると、電力遮断時間算出部62Gが、電力遮断時間を算出する(ステップS402)。
次に、作成部620Hが、記憶部620Kに格納されている温度推移情報630Mに基づいて、温度推移情報630Mに示される加圧ローラ温度及び機内温度の各々を、予め定めた温度域毎に区切り、温度域毎の加熱ローラ温度と経過時間との関係を示す温度予測情報630Nを作成する(ステップS404)。温度予測情報630Nの作成方法については、上述したため、ここでは説明を省略する。
次に、予測温度算出部620Iが、予測温度を算出する(ステップS406)。詳細には、予測温度算出部620Iは、上記ステップS404で作成部620Hによって作成された、加圧ローラ温度及び機内温度の温度域毎の温度予測情報630Nの内、温度推移情報630Mに示される電力供給が遮断されたときに、検出された加圧ローラ温度及び機内温度を温度域とする温度予測情報630Nを読取る。そして、予測温度算出部620Iは、読取った温度予測情報630Nにおける、上記ステップS402で算出された電力遮断時間と同一の経過時間に対応する加熱ローラ温度を、予測温度として読取る。これによって、予測温度算出部620Iは、予測温度を算出する。
次に、加熱制御部620Eが、加熱部制御値を決定する(ステップS408)。ステップS408では、加熱制御部620Eは、ステップS406で算出された予測温度と同じ加熱部温度に対応するヒータ点灯率を、記憶部620Kに格納されている加熱制御情報から読取ることで、加熱部制御値を決定する。
次に、加熱制御部620Eが、第1定着温度制御を実行する(ステップS410)。ステップS410では、加熱制御部620Eは、ステップS408で決定された加熱部制御値によって特定されるヒータ点灯率となるように、加熱部42を制御する。次に、加熱制御部620Eは、上記ステップS400で電力供給が開始されてから、第1検出部46が安定して温度検知可能な状態となるまでの第1期間を経過したか否かを判断する(ステップS412)。
ステップS412で否定判断すると(ステップS412:No)、上記ステップS410へ戻り、ステップS412で肯定判断すると(ステップS412:Yes)、ステップS414へ進む。
ステップS414では、加熱制御部620Eが、第2定着温度制御を実行する(ステップS414)。ステップS414では、加熱制御部620Eが、取得部62Aで取得した第1検出部46の加熱ローラ温度を読取り、加熱部42(すなわち加熱ローラ43)がこの加熱ローラ温度に応じた目標温度となるように、加熱部42を制御する。
次に、加熱制御部620Eが、第1検出部46への電力供給が遮断されたか否かを判断する(ステップS416)。ステップS416で否定判断すると(ステップS416:No)、上記ステップS414へ戻る。一方、ステップS416で肯定判断すると(ステップS416:Yes)、本ルーチンを終了する。
以上説明したように、本実施の形態の定着装置41では、第1検出部46で検出された加熱ローラ43の加熱ローラ温度、第2検出部44で検出された加圧ローラ45の加圧ローラ温度、及び第4検出部48で検出された機内温度を、定着装置41への電力供給開始からの経過時間に対応づけて温度推移情報630Mとして記憶する。そして、電力供給が開始されたときには、電力遮断時間算出部62Gが電力遮断時間を算出する。また、電力供給が開始されたときには、予測温度算出部620Iが、温度推移情報630Mに示される、電力供給が遮断されたときに検出された加熱ローラ温度と、加圧ローラ温度と、機内温度と、電力遮断時間と、から予測温度を算出する。そして、決定部620Jは、第1検出部46が安定して温度検出可能な第1期間に、加熱ローラ43が該予測温度から目標温度となるように制御するための加熱部制御値を決定する。加熱制御部620Eは、電力供給開始から第1期間は、決定した加熱部制御値に応じて加熱部42を制御する。このため、定着装置41の機内の温度変動に起因した加熱ローラ43の温度変動をも加味して、予測温度を算出することができる。
従って、本実施の形態の定着装置41では、待機時間の短縮と温度制御の信頼性向上を図ることができる。
なお、本実施の形態の定着装置41では、第1検出部46で検出された加熱ローラ43の加熱ローラ温度、第2検出部44で検出された加圧ローラ45の加圧ローラ温度、及び第4検出部48で検出された機内温度を、第1検出部46への電力供給開始からの経過時間に対応づけて温度推移情報630Mとして記憶する場合を説明した。しかし、温度推移情報630Mは、加熱ローラ温度と経過時間と機内温度とを少なくとも対応づけた情報であればよい。
ただし、温度推移情報630Mを、経過時間と、加熱ローラ温度と、加圧ローラ温度と、機内温度と、を対応づけた情報とすると、定着装置41の機内の温度変動と、加熱ローラ43に接触配置された加圧ローラ45の温度変動と、の双方に起因した加熱ローラ43の温度変動をも加味して、予測温度を算出することができる。このため、更に精度よく予測温度を算出することができる。従って、温度制御の信頼性を更に向上させることができる。
次に、第1の実施の形態及び第2の実施の形態の定着制御部40B、41Bのハードウェア構成について説明する。図22は、第1の実施の形態及び第2の実施の形態の定着制御部40B、41Bのハードウェア構成例を示すブロック図である。
第1の実施の形態及び第2の実施の形態の定着制御部40B、41Bは、CPU2202と、ROM2203やRAM2204などの記憶装置と、HDD210やCDドライブ装置(不図示)などの外部記憶装置と、キーボードやマウスなどの入力装置(不図示)と、I/F2201とを主に備えており、通常のコンピュータを利用したハードウェア構成となっている。
第1の実施の形態及び第2の実施の形態の定着制御部40B、41Bで実行される記憶処理及び温度制御処理を実行するためのプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD−ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD−R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録されて提供される。
また、第1の実施の形態及び第2の実施の形態の定着制御部40B、41Bで実行される記憶処理及び温度制御処理を実行するためのプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成してもよい。また、第1の実施の形態及び第2の実施の形態の定着制御部40B、41Bで実行される記憶処理及び温度制御処理を実行するためのプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供または配布するように構成しても良い。
また、第1の実施の形態及び第2の実施の形態の定着制御部40B、41Bで実行される記憶処理及び温度制御処理を実行するためのプログラムを、ROM2203等に予め組み込んで提供するように構成してもよい。
第1の実施の形態及び第2の実施の形態の定着制御部40B、41Bで実行される記憶処理及び温度制御処理を実行するためのプログラムは、上述した各部(電力遮断時間算出部、取得部、予測温度算出部、作成部、決定部、記憶部、タイマ、記憶制御部、及び加熱制御部)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPU2202(プロセッサ)が上記記憶媒体から当該プログラムを読み出して実行することにより上記各部がRAM2204等の主記憶装置上にロードされ、上記各部が主記憶装置上に生成されるようになっている。
すなわち、上述した各部(電力遮断時間算出部、取得部、予測温度算出部、作成部、決定部、記憶部、タイマ、記憶制御部、及び加熱制御部)は、例えば、CPUなどの処理装置にプログラムを実行させること、すなわち、ソフトウェアにより実現してもよいし、IC(Integrated Circuit)などのハードウェアにより実現してもよいし、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現してもよい。
以上、実施の形態を具体的に説明したが、本発明は、上記の実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で様々な変形や変更を加えて具体化することができる。例えば、上記の実施の形態では、画像形成部51の主制御部50、50Aと定着装置40、41の定着制御部40B、41Bと、を別の装置に内蔵させて実現する構成を説明したが、定着装置40、41における定着制御部40B、41Bの一部または全部の機能を、主制御部50、50Aに内蔵させた構成を採用してもよい。
また、上記実施の形態では、定着装置40、41が、画像形成装置10、10A内に組み込まれた構成である場合を説明したが、画像形成装置10、10Aと、定着装置40、41と、を別体として構成してもよい。