JP6214439B2 - 機器収容室の床支持構造、及び、建造物 - Google Patents
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特許文献1に記載の免震構造は、機器類が建造物の梁部材等に揺動可能に吊り下げ支持され、その機器類の固有周期が地震動の卓越周期帯域から外れるように、吊り下げ支点から機器類の重心までの長さが設定されている。この免震構造の場合、吊り下げ支持される機器類の固有周期が地震動の卓越周期帯域から外れるため、機器類に設置された物品等の転倒や移動、脱落等を防止することができる。
また、上記従来の免震構造は、機器類が建造物の梁部材等に揺動のみを許容されて吊り下げ支持されるものであるため、振動の上下方向の振動成分については効率の良い免震を行うことが難しい。
この発明は、機器収容室の床を建造物に支持させる機器収容室の床支持構造において、建造物の天井部の部材に吊り下げ支持される複数の吊ロッドと、前記複数の吊ロッドの下端近傍に連結される機器収容室の床構成部材と、前記複数の吊ロッドの各上部を前記天井部の部材に連結する複数の連結具と、前記複数の吊ロッドの過大な揺動変位を規制する揺動規制ブロックと、前記床構成部材の下方の建造物の骨格部材に設けられ、前記床構成部材、若しくは、当該床構成部材に一体に結合された部材の下面に摺動自在に当接して、当該床構成部材の下方荷重の一部を支持する補助支持部材と、を備え、前記連結具は、前記天井部の部材に対する前記吊ロッドの上部の揺動方向及び上下方向の相対変位を許容する変位許容部と、前記吊ロッドの下方荷重を支持する座と、前記吊ロッドの上部の相対変位時に、その相対変位に伴う運動エネルギーを減衰するエネルギー吸収部と、を備え、前記揺動規制ブロックは、前記複数の吊ロッドの各外周部を取り囲む複数の規制筒と、前記複数の規制筒同士を剛的に連結する連結壁と、を備えていることを特徴とするものである。
地震発生時に床構成部材が振動したときには、各吊ロッドの上部が天井部の部材に対して連結具の変位許容部を介して相対変位し、その相対変位に伴う運動エネルギーが連結具のエネルギー吸収部によって減衰吸収される。これにより、床構成部材の振動エネルギーの一部がエネルギー吸収部によって吸収される。なお、このとき床構成部材は補助支持部材に対して相対移動する。また、床構成部材の振動時には、各吊ロッドの下方荷重は、連結具の座を介して天井部の部材に支持されるものの、各吊ロッドの上部の相対変位は連結具の変位許容部によって許容されるため、各吊ロッドの上端部には大きな応力が集中しなくなる。
また、床構成部材の振動時に吊ロッドの揺動が大きくなると、吊ロッド、若しくは、その吊ロッドの周囲を覆う部材が揺動規制ブロックの規制筒と当接することにより、その揺動が抑制される。つまり、各規制筒は、連結壁によって相互に剛的に連結されているために、吊ロッドの揺動には追従せず、吊ロッド、若しくは、その吊ロッドの周囲を覆う部材と当接して当該吊ロッドの揺動を規制することになる。
この場合、複数の吊ロッドに支持される床構成部材自体が揺動規制ブロックの連結壁の一部を構成するため、部品点数の増加と重量の増加を抑制することができる。
この場合、揺動規制ブロックの複数の規制筒同士が下端近傍の床構成部材と、その上方の上部連結部材とによって結合されるため、高さ方向の寸法を要する揺動規制ブロックの剛性を高めることができる。
この場合、剛性の高い揺動規制ブロックに機器が固定されることになるため、機器固定のための専用の固定部材を床構成部材上に付加することなく、機器を床構成部材上に安定して支持固定することができる。
この場合、地震発生時に床構成部材の振動を、床構成部材の下方の振動減衰装置によって速やかに減衰することが可能になる。特に、振動減衰装置は吊ロッドの上部を支点とした振れが最も大きくなる床構成部材とその下方の骨格部材との間に設けられていることから、床構成部材の振動を効率良く減衰することができる。
この場合、各連結具の固定が容易になるとともに、吊ロッドによって支持する床の荷重が天井部の床スラブの一部に集中しにくくなる。
図1〜図3は、この実施形態に係る床支持構造を採用した機器収容室100の一部を示す図である。この実施形態の機器収容室100は、電子計算機や通信機器等の機器を収納する複数のラック50が設置される電算機室である。機器収容室100は、建造物51の底床52から上方に離間して二重床53が設けられ、その二重床53上に複数台のラック50が設置されている。この実施形態では、二重床53が建造物51の天井部に吊り下げ支持されるようになっている。二重床53上に設置される複数台のラック50は、作業者の歩行が可能な通路54(図1,図3参照。)を挟んで両側に直線状に並べられている。ここでは、全体の図示は省略されているが、通路54を挟む二列のラック群は二重床53上に連続して、若しくは、一部分散して複数配置されている。二重床53の下方には床下空間55が設けられ、その床下空間55には各ラック50から引き出された電子計算機や通信機器等の配線や、図示しない空気調和装置の配線等が引き回されている。
なお、二重床53には、設計に応じて任意列数のメイン床フレーム56と通路54を配置することができるが、以下では、説明の都合上、二重床53が二列のメイン床フレーム56とその間の通路54とから成るものとして説明する。
第2の連結部材17の内周壁部34の上部には、後に詳述するように吊ボルト5の上端部が吊り下げ支持されるようになっている。このため、吊ボルト5に支持される二重床53とその上面上の設置物とを加えた荷重は、第2の連結部材17のガイド面40と第1の連結部材16の係合板部24(挿通孔24aの上面側の縁部)との当接部を介して第1の連結部材16に入力され、その入力された荷重が固定ボルト13を介して梁58と床スラブ62等に支持される。
なお、この実施形態では、第2の連結部材17の内周壁部34の上端面や、第1の連結部材16の係合板部24の上面等が吊ボルト5の下方荷重を支持する座を構成している。
揺動規制ブロック65は、複数の吊ボルト5の各外周部を取り囲む複数の規制筒66と、複数の規制筒66同士を剛的に連結する連結壁67と、を備えている。この実施形態の場合、規制筒66と連結壁67は鋼材等の金属材料によって形成されている。ただし、この実施形態では、前述した二重床53のメイン床フレーム56が連結壁67の一部を構成している。
上部連結部材71は、各規制筒66の外周に溶接固定される断面略H字状の継手材72と、略水平方向に延出して隣接する継手材72同士を接続する断面略コ字状の梁材73と、を備え、各継手材72と梁材73が接続プレート74を介してボルト締結されている。
さらに、底床52と各メイン床フレーム56の間には、メイン床フレーム56が振動したときに、その振動を減衰する油圧ダンパや減衰ゴム等の振動減衰装置91が設けられている。
このとき、図5に示す連結具15の内部においては、吊ボルト5に作用する下方荷重が吊ボルト5の上端のナット27と弾性部材28を介して第2の連結部材17の内周壁部34に入力される。そして、第2の連結部材17に入力された下方荷重は、第2の連結部材17のガイド面40と第1の連結部材16の係合板部24との当接部を通して第2の連結部材17に入力され、第2の連結部材17を介して梁58と床スラブ62に支持される。
また、このときの吊ボルト5の上部の揺動は、第2の連結部材17の湾曲したガイド面40が、第1の連結部材16の係合板部24上で摺動することにより許容される。こうして、吊ボルト5の上部が第2の連結部材17とともに揺動すると、第2の連結部材17の外周壁部33と第1の連結部材16の下部円筒部23aの間に介装されたエネルギー吸収部材19がせん断変形する。これにより、吊ボルト5に入力された振動の水平方向成分はエネルギー吸収部材19によって減衰吸収される。
また、二重床53全体の振動時には、その振動エネルギーの一部は、底床52とメイン床フレーム56の間に介装された振動減衰装置91によって減衰される。
また、この床支持構造では、連結具15内での吊ボルト5の上部の上下方向や揺動方向の相対変位に伴う運動エネルギーが、弾性部材28やエネルギー吸収部材19によって吸収されるため、二重床53の振動を速やかに抑制することができる。
特に、この実施形態のように梁58の上部に複数のアンカープレート61を突出させて、そのアンカープレート61を床スラブ62に埋設する場合には、二重床53の設置安定性がより高まる。
ただし、連結具15は、アンカーを介して床スラブ62に直接固定するようにしても良い。
図13は、この別の実施形態に係る床支持構造を採用した機器収容室200の一部を示す図であり、図14,図15は、図13のI部とJ部の拡大断面図である。
この実施形態は、上記の実施形態の規制筒(66)を無くし、各吊ボルト5の外周側に配置される補強パイプ142を規制筒とし、その補強パイプ142をメイン床フレーム56や上部連結部材71に溶接固定している。
図14に示すように、補強パイプ142の下端には、端部プレート68が溶接等によって固定され、吊ボルト5の下端がその端部プレート68に締結固定されている。
この実施形態は、上記の実施形態の上部連結部材71に代えて、隣接する二つの規制筒66を斜めに連結する金属製の複数のブレース98と、隣接する二つの規制筒66の上端部の近傍同士を略水平に連結する横梁部97を設けるようにしている。この実施形態では、二つのブレース98がX字状に交差して用いられている。また、この実施形態では、交差した二つのブレース98が上下二段に配置されている。
また、上記の実施形態の機器収容室は電算機室であるが、適用できる機器収容室は電算機室に限らず、什器その他の機器が設置される部屋であれば特に限定されるものではない。さらに、複数の吊ロッドで吊り下げ支持する床は、必ずしも床の全体である必要はなく床の一部であっても良い。
15…連結具
16…第1の連結部材(変位許容部)
17…第2の連結部材(変位許容部)
19…第2の弾性部材(エネルギー吸収部)
24…係合板部(座)
28…弾性部材(エネルギー吸収部)
34…内周壁部(座)
51…建造物
56…メイン床フレーム(床構成部材)
58…梁(天井部の部材)
62…床スラブ(天井部の部材)
65…揺動規制ブロック
66…規制筒
67…連結壁
71…上部連結部材71(連結壁67)
90…支持棒(補助支持部材)
91…振動減衰装置
100,200,300…機器収容室
142…補強パイプ(規制筒)
Claims (7)
- 機器収容室の床を建造物に支持させる機器収容室の床支持構造において、
建造物の天井部の部材に吊り下げ支持される複数の吊ロッドと、
前記複数の吊ロッドの下端近傍に連結される機器収容室の床構成部材と、
前記複数の吊ロッドの各上部を前記天井部の部材に連結する複数の連結具と、
前記複数の吊ロッドの過大な揺動変位を規制する揺動規制ブロックと、
前記床構成部材の下方の建造物の骨格部材に設けられ、前記床構成部材、若しくは、当該床構成部材に一体に結合された部材の下面に摺動自在に当接して、当該床構成部材の下方荷重の一部を支持する補助支持部材と、を備え、
前記連結具は、前記天井部の部材に対する前記吊ロッドの上部の揺動方向及び上下方向の相対変位を許容する変位許容部と、前記吊ロッドの下方荷重を支持する座と、前記吊ロッドの上部の相対変位時に、その相対変位に伴う運動エネルギーを減衰するエネルギー吸収部と、を備え、
前記揺動規制ブロックは、前記複数の吊ロッドの各外周部を取り囲む複数の規制筒と、前記複数の規制筒同士を剛的に連結する連結壁と、を備えていることを特徴とする機器収容室の床支持構造。 - 前記複数の吊ロッドの下端近傍は対応する前記複数の規制筒に連結され、
前記床構成部材は、前記複数の規制筒の下端近傍に連結されて、前記揺動規制ブロックの連結壁の少なくとも一部を構成することを特徴とする請求項1に記載の機器収容室の床支持構造。 - 前記揺動規制ブロックは、前記床構成部材よりも上方側で略水平に延出して、前記複数の規制筒同士を連結する前記連結壁の一部を構成する上部連結部材を備えていることを特徴とする請求項2に記載の機器収容室の床支持構造。
- 前記揺動規制ブロックには、前記床構成部材上に設置される機器が結合されていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の機器収容室の床支持構造。
- 前記床構成部材と当該床構成部材の下方の建造物の骨格部材との間には振動減衰装置が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の機器収容室の床支持構造。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載の機器収容室の床支持構造を用いたことを特徴する建造物。
- 前記複数の連結具が、天井部の床スラブに固定される金属製の梁に結合されていることを特徴とする請求項6に記載の建造物。
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