以下に本発明の繊維強化樹脂組成物およびその成形品について具体的に説明する。
本発明の繊維強化樹脂組成物において、熱可塑性樹脂(A)は、熱可塑性を示す樹脂であれば特に限定されず、例えば、スチレン系樹脂、フッ素樹脂、ポリオキシメチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、塩化ビニル、オレフィン系樹脂、熱可塑性エラストマー、ポリアクリレート、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアリーレンサルファイド、セルロース誘導体、液晶性樹脂およびこれらの変性材などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
スチレン系樹脂としては、例えば、PS(ポリスチレン)、HIPS(高衝撃ポリスチレン)、AS(アクリロニトリル/スチレン共重合体)、AES(アクリロニトリル/エチレン・プロピレン・非共役ジエンゴム/スチレン共重合体)、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体)、MBS(メタクリル酸メチル/ブタジエン/スチレン共重合体)などが挙げられる。ここで、「/」は共重合体を示し、以下同じである。これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、特にABSが好ましい。
オレフィン系樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/非共役ジエン共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体、プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、エチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、メタクリル酸/メタクリル酸メチル/グルタル酸無水物共重合体などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、流動性および成形品の機械強度の観点から、特にポリプロピレンが好ましい。
熱可塑性エラストマーとしては、例えば、ポリエステルポリエーテルエラストマー、ポリエステルポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性スチレンブタジエンエラストマー、熱可塑性オレフィンエラストマー、熱可塑性ポリアミドエラストマーなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
ポリアミドは、ラクタム類の開環重合、ジアミンとジカルボン酸の重縮合、アミノカルボン酸の重縮合等の方法により得られる、繰り返し構造中にアミド結合を有するものであれば、特に限定されない。ラクタム類としては、例えば、ε−カプロラクタム、エナントラクタム、ω−ラウロラクタム等が挙げられる。ジアミンとしては、例えば、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、トリデカメチレンジアミン、1,9−ノナンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミンなどの脂肪族ジアミン、1,3−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4−ビスアミノメチルシクロヘキサンなどの脂環式ジアミン、m−フェニレンジアミン、p−フェニレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン等の芳香族ジアミン等が挙げられる。ジカルボン酸としては、例えば、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ダイマー酸、ドデカン二酸、1,1,3−トリデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族ジカルボン酸等が挙げられる。アミノカルボン酸としては、例えば、ε−アミノカプロン酸、7−アミノヘプタン酸、8−アミノオクタン酸、9−アミノノナン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、13−アミノトリデカン酸等が挙げられる。
ポリアミドの具体的な例としては、例えば、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン11,ナイロン12、ナイロン610、ナイロン612、ナイロン6/66コポリマー、ナイロン6/612、ナイロンMXD(m−キシリレンジアミン)6、ナイロン9T、ナイロン10T、ナイロン6T/66コポリマー、ナイロン6T/6Iコポリマー、ナイロン6T/M5Tコポリマー、ナイロン6T/12コポリマー、ナイロン66/6T/6Iコポリマー、ナイロン6T/6コポリマーなどが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。これらの中でも、繊維状充填材(B)との密着性に優れるナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン9Tが好ましく、成形品の強度、剛性および耐熱性をより向上させることができる。
ポリアミドの重合度には特に制限がないが、樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度が1.5〜7.0の範囲のものが好ましく、2.2〜4.0の範囲のものがより好ましい。
ポリエステルとしては、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体の残基を主構造単位とする重合体または共重合体が好ましい。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリプロピレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート/ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート/ナフタレートなどの芳香族ポリエステルが特に好ましく、ポリブチレンテレフタレートが最も好ましい。これらを2種以上含有してもよい。これらのポリエステルにおいては、全ジカルボン酸残基に対するテレフタル酸残基の割合が30モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがさらに好ましい。
また、ポリエステルは、ヒドロキシカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体およびラクトンから選択された一種以上の残基を含有していてもよい。ヒドロキシカルボン酸としては、例えば、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸などが挙げられる。ラクトンとしては、例えば、カプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オンなどが挙げられる。これらの残基を構造単位とする重合体または共重合体としては、例えば、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸/乳酸、ポリヒドロキシ酪酸/β−ヒドロキシ酪酸/β−ヒドロキシ吉草酸などの脂肪族ポリエステル樹脂が挙げられる。
ポリエステルの融点は、特に限定されないが、耐熱性の点で、120℃以上であることが好ましく、220℃以上であることがより好ましい。上限は、特に限定されないが、300℃以下であることが好ましく、280℃以下であることがより好ましい。なお、上記ポリエステルの融点は、示差走査熱量計(DSC)により昇温速度20℃/分で測定した値である。ポリエステルのカルボキシル末端基量は、特に限定されないが、流動性、耐加水分解性および耐熱性の点で、50eq/t以下であることが好ましく、10eq/t以下であることがより好ましい。下限は0eq/tである。なお、ポリエステルのカルボキシル末端基量は、o−クレゾール/クロロホルム溶媒に溶解させた後、エタノール性水酸化カリウムで滴定し測定した値である。ポリエステルの粘度は、溶融混練が可能であれば特に限定されないが、成形性の点で、o−クロロフェノール溶液を25℃で測定したときの固有粘度が0.36〜1.60dl/gの範囲であることが好ましく、0.50〜1.25dl/gの範囲であることがより好ましく、0.7〜1.0dl/gの範囲であることがさらに好ましい。ポリエステルの分子量は、特に限定されないが、耐熱性の点で、重量平均分子量(Mw)5万〜50万の範囲であることが好ましく、15万〜25万の範囲であることがより好ましい。なお、本発明において、上記ポリエステルの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した値である。
ポリエステルの製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の重縮合法や開環重合法などを挙げることができる。バッチ重合および連続重合のいずれでもよく、また、エステル交換反応および直接重合による反応のいずれでも適用することができる。
ポリカーボネートは、2官能フェノール系化合物に苛性アルカリおよび溶剤の存在下でホスゲンを吹き込むホスゲン法、二官能フェノール系化合物と炭酸ジエチルとを触媒の存在下でエステル交換させるエステル交換法などにより得ることができる。ポリカーボネートとしては、芳香族ホモポリカーボネート、芳香族コポリカーボネート等が挙げられる。これらの芳香族ポリカーボネートの粘度平均分子量は、1万〜10万の範囲が好適である。2官能フェノール系化合物としては、例えば、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニル)ブタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジプロピルフェニル)プロパン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−フェニル−1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等が挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。
ポリアリーレンサルファイドとしては、例えば、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトン、これらのランダム共重合体、ブロック共重合体などが挙げられる。これらを2種以上用いてもよい。中でもポリフェニレンスルフィドが特に好ましく使用される。
ポリアリーレンサルファイドは、特公昭45−3368号公報に記載される、比較的分子量の小さな重合体を得る方法、特公昭52−12240号公報や特開昭61−7332号公報に記載される、比較的分子量の大きな重合体を得る方法などの通常公知の方法によって製造することができる。得られたポリアリーレンサルファイドを、加熱による架橋/高分子量化、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下での熱処理、有機溶媒、熱水、酸水溶液などによる洗浄、酸無水物、アミン、イソシアネート、官能基含有ジスルフィド化合物などの官能基含有化合物による活性化などの種々の処理を施した上で使用することも、もちろん可能である。
ポリアリーレンサルファイドを加熱により架橋/高分子量化する場合の具体的方法としては、空気、酸素などの酸化性ガス雰囲気下あるいは前記酸化性ガスと窒素、アルゴンなどの不活性ガスとの混合ガス雰囲気下で、加熱容器中で所定の温度において希望する溶融粘度が得られるまで加熱を行う方法を例示することができる。加熱処理温度は200〜270℃の範囲が好ましく、加熱処理時間は2〜50時間の範囲が好ましい。効率よくより均一に加熱処理する観点から、回転式あるいは撹拌翼付の加熱容器中で加熱することが好ましい。ポリアリーレンサルファイドを窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧下で熱処理する場合の具体的方法としては、窒素などの不活性ガス雰囲気下あるいは減圧(好ましくは7,000Nm−2以下)下で、加熱処理温度200〜270℃、加熱処理時間2〜50時間の条件で加熱処理する方法を例示することができる。効率よくより均一に加熱処理する観点から、回転式あるいは撹拌翼付の加熱容器中で加熱することがより好ましい。ポリアリーレンサルファイドを有機溶媒で洗浄する場合、有機溶媒としては、N−メチルピロリドン、アセトン、ジメチルホルムアミドおよびクロロホルムなどが好ましく使用される。有機溶媒による洗浄の方法としては、例えば、有機溶媒中にポリアリーレンサルファイド樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。洗浄温度は常温〜150℃が好ましい。有機溶媒洗浄を施されたポリアリーレンサルファイドは、残留している有機溶媒を除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。ポリアリーレンサルファイドを熱水で処理する場合、使用する水は蒸留水あるいは脱イオン水であることが好ましい。熱水処理の操作は、通常、所定量の水に所定量のポリアリーレンサルファイドを投入し、常圧であるいは圧力容器内で加熱、撹拌することにより行われる。ポリアリーレンサルファイド樹脂と水との割合は、好ましくは水1リットルに対し、ポリアリーレンサルファイド200g以下の浴比で使用される。ポリアリーレンサルファイドを酸処理する場合の具体的方法としては、例えば、酸または酸の水溶液にポリアリーレンサルファイド樹脂を浸漬せしめるなどの方法があり、必要により適宜撹拌または加熱することも可能である。酸としては、酢酸、塩酸が好ましく用いられる。酸処理を施されたポリアリーレンサルファイドは、残留している酸または塩などを除去するため、水または温水で数回洗浄することが好ましい。洗浄に用いる水は、蒸留水または脱イオン水であることが好ましい。
ポリアリーレンサルファイドの溶融粘度は、310℃、剪断速度1000/秒の条件下で80Pa・s以下であることが好ましく、20Pa・s以下であることがより好ましい。下限については特に制限はないが、5Pa・s以上であることが好ましい。また、溶融粘度の異なる2種以上のポリアリーレンサルファイドを併用してもよい。なお、溶融粘度は、キャピログラフ(東洋精機(株)社製)装置を用い、ダイス長10mm、ダイス孔直径0.5〜1.0mmの条件により測定することができる。
セルロース誘導体としては、例えば、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、エチルセルロースなどを挙げることができる。これらを2種以上含有してもよい。
これらの熱可塑性樹脂のうち、ポリアミド樹脂、スチレン系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂およびポリアリーレンサルファイド樹脂などが好ましい。これらの熱可塑性樹脂(A)は繊維状充填材(B)との親和性に優れることから、成形加工性に優れ、成形品の機械特性および表面外観をより向上させることができる。ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610、ナイロン9T、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体)、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィドなどがより好ましく使用できる。
本発明の繊維強化樹脂組成物は、繊維状充填材(B)を含有する。繊維状充填材(B)を含有することにより、強度、剛性などの機械特性に加え、寸法安定性に優れた成形品を得ることができる。
繊維状充填材(B)は、繊維状の形状を有するいずれの充填材も使用することができる。具体的には、ガラス繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、ワラステナイト、アルミナシリケートなどの繊維状、ウィスカー状充填材、ニッケル、銅、コバルト、銀、アルミニウム、鉄およびこれらの合金からなる群より選ばれる1種以上の金属で被覆されたガラス繊維、炭素繊維、芳香族ポリアミド繊維、ポリエステル繊維などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。上記繊維状充填材の中でも、成形品の強度および剛性、表面外観をより向上させる観点から、ガラス繊維、炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維、芳香族ポリアミド繊維が好ましく用いられ、さらに剛性、強度等の機械特性と流動性のバランスに優れるガラス繊維、炭素繊維が特に好ましく用いられる。
繊維状充填材(B)の表面に、カップリング剤や集束剤等を付着させたものを用いてもよい。カップリング剤や集束剤を付着させることにより、熱可塑性樹脂(A)の濡れ性や繊維状充填材(B)の取り扱い性を向上させることができる。カップリング剤としては、例えば、アミノ系、エポキシ系、クロル系、メルカプト系、およびカチオン系のシランカップリング剤等が挙げられ、アミノ系シラン系カップリング剤が好適に使用可能である。集束剤としては、例えば、無水マレイン酸系化合物、ウレタン系化合物、アクリル系化合物、エポキシ系化合物、フェノール系化合物および/またはこれら化合物の誘導体を含有する集束剤が挙げられ、ウレタン系化合物を含有する集束剤が好適に使用可能である。繊維状充填材(B)中の集束剤の含有量は、0.1〜10重量%であることが好ましく、0.3〜8重量%がさらに好ましく、0.5〜6重量%が特に好ましい。
本発明の繊維強化樹脂組成物に用いられる繊維状充填材(B)の形態としては、制限はなく、予め裁断されているチョップドストランドや破砕繊維、連続長繊維等が挙げられる。生産性の観点から、チョップドストランドが好ましく利用できる。
本発明の繊維強化樹脂組成物における繊維状充填材(B)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対し、15〜200重量部である。繊維状充填材(B)含有量が15重量部未満の場合は、繊維強化樹脂組成物を用いて得られる成形品の機械特性、特に剛性が低下する。繊維状充填材(B)含有量は20重量部以上が好ましく、25重量部以上がより好ましく、30重量部以上がさらに好ましく、40重量部以上が金属同等の剛性が得られるため最も好ましい。一方、繊維状充填材(B)の含有量が200重量部を越えると、溶融混練時および成形加工時の流動性が低下し、繊維状充填材同士の接触により繊維状充填材の折損が生じやすく、剛性や強度等の機械特性が低下するばかりか、生産安定性も低下する。繊維状充填材(B)の含有量は175重量部以下が好ましく、150重量部以下がより好ましく、125重量部以下がさらに好ましく、100重量部以下がさらに好ましい。
本発明の繊維強化樹脂組成物は、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)およびアンチモン(Sb)からなる群より選ばれる少なくとも二種の金属の酸化物を含み、少なくともアルミニウム、亜鉛および/またはアンチモンの酸化物を含む複合酸化物粒子(C)を含有する。かかる複合酸化物粒子(C)を含有することにより、繊維強化樹脂組成物において、複合酸化物粒子(C)が繊維状充填材(B)の表面に一部偏在し、コロの役割を果たすことで、成形加工時の繊維状充填材(B)同士の接触による折損や絡み合いを抑制し、繊維強化樹脂組成物の流動性を向上させ、うねり凹凸を抑制することができると考えられる。さらに、アルミニウム、亜鉛、アンチモンは硬度が低いため、これらの酸化物を含む複合酸化物粒子を含有することにより、成形加工時の繊維状充填材(B)同士の接触による折損を大幅に抑制することができ、成形品の機械特性を向上させることができる。
本発明における複合酸化物粒子(C)としては、具体的には、Co−Al、Co−Cr−Alなどのコバルトブルー系複合酸化物粒子、Co−Zn−Ni−Ti、Co−Zn−Cr−Ti、Co−Al−Cr−Znなどのグリーン系複合酸化物粒子、Ti−Cr−Sbなどのイエロー系複合酸化物粒子、Fe−Zn、Fe−Zn−Ti、Fe−Zn−Crなどのブラウン系複合酸化物粒子などを挙げることができる。繊維状充填材(B)として炭素繊維を用いる場合、炭素繊維強化樹脂本来の重厚な外観を維持するためには、コバルトブルー系複合酸化物粒子、ブラウン系複合酸化物粒子を選択することが好ましい。
本発明の繊維強化樹脂組成物における複合酸化物粒子(C)の含有量は、熱可塑性樹脂(A)100重量部に対し、0.1〜3重量部である。複合酸化物粒子(C)含有量が0.1重量部未満の場合は、繊維状充填材(B)の絡み合いによる成形品のうねり凹凸が増大し、外観・意匠性の改善効果が得られない。繊維強化樹脂組成物の成形加工時の流動性をより向上させ、成形品のうねり凹凸をより抑制して外観・意匠性をより向上させる観点から、複合酸化物粒子(C)含有量は0.2重量部以上が好ましく、0.3重量部以上がさらに好ましく、0.5重量部以上がさらに好ましい。一方、複合酸化物粒子(C)の含有量が3重量部を越えると、成形加工時の流動性や成形品の機械特性、特に衝撃強度が低下する。成形品の曲げ強度および引張強度をより向上させる観点から、複合酸化物粒子(C)の含有量は2.5重量部以下が好ましく、2重量部以下がより好ましく、1.5重量部以下がさらに好ましい。
本発明における複合酸化物粒子(C)は、前記の通り繊維状充填材(B)の表面に一部偏在することで繊維状充填材(B)の分散性や配向を制御できることから、繊維状充填材(B)の直径よりも小さいことが好ましい。具体的には、複合酸化物粒子(C)の平均粒子径は2μm以下が好ましく、成形加工時の流動性に優れ、成形品の機械特性をより高く保つことができる。1.5μm以下がより好ましく、1μm以下がさらに好ましい。一方、複合酸化物粒子(C)の平均粒子径は、0.01μm以上が好ましく、成形加工時の流動性をより向上させることができる。0.1μm以上がより好ましく、0.2μm以上がさらに好ましい。
ここで、本発明における複合酸化物粒子(C)の平均粒子径とは、レーザ回折散乱式粒度分布測定装置を用いて測定した球相当径の体積積算値から算出したd50(各粒径における粒子数を粒径の小さい側から累積し、その累積体積が全粒子の合計体積の50%となる粒径を意味している)の値を言う。なお、一般的な製造方法であれば、繊維強化樹脂組成物中の複合酸化物粒子(C)の平均粒子径は、配合前の複合酸化物粒子(C)の平均粒子径と同じであると考えられる。
本発明の繊維強化樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、安定剤、離型剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、難燃助剤、滴下防止剤、滑剤、蛍光増白剤、蓄光顔料、蛍光染料、流動改質剤、耐衝撃性改良剤、結晶核剤、無機および有機の抗菌剤、光触媒系防汚剤、赤外線吸収剤、フォトクロミック剤などの添加剤、繊維状充填材以外の充填材、熱硬化性樹脂を含有してもよい。
安定剤としては、例えば、酸化防止剤、光安定剤などを挙げることができ、例えば、ヨウ化第1銅などの銅化合物を挙げることができる。これらの安定剤を含有することで、機械特性、成形性、耐熱性および耐久性により優れた成形品を得ることができる。
離型剤としては、例えば、脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪族部分鹸化エステル、パラフィン、低分子量ポリオレフィン、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、変性シリコーンなどを挙げることができる。これらの離型剤を含有することで、機械特性、成形性、耐熱性および耐久性により優れた成形品を得ることができる。
難燃剤としては、例えば、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、リン系難燃剤、窒素化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤およびその他の無機系難燃剤などを挙げることができる。難燃性および機械特性をより向上させる観点から、上記難燃剤を2種以上組み合わせることが好ましい。
繊維状充填材(B)以外の充填材としては、特に限定されるものでなく、板状、粉末状、粒状などのいずれの充填材も使用することができる。具体的には、タルク、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイトなどの金属珪酸塩、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化鉄などの金属酸化物(複合酸化物(C)を除く)、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの金属硫酸塩、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素、燐酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物、ガラスフレーク、ガラス粉、ガラスバルーン、カーボンブラック、シリカ、黒鉛、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイトなどのスメクタイト系粘土鉱物、バーミキュライト、ハロイサイト、カネマイト、ケニヤイト、燐酸ジルコニウム、燐酸チタニウムなどの各種粘土鉱物、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母、Li型四珪素フッ素雲母等の膨潤性雲母などの層状珪酸塩などが挙げられる。これらを2種以上含有してもよい。
本発明の炭素繊維強化樹脂組成物の製造方法は、熱可塑性樹脂(A)、繊維状充填材(B)、複合酸化物粒子(C)および必要に応じてその他添加剤などを溶融混練する方法が好ましい。溶融混練装置の設定温度は、使用する熱可塑性樹脂(A)の融点(Tm)+30℃以上、またはガラス転移温度(Tg)+100℃以上とすることが好ましい。溶融混練装置への原料供給位置は、特に制限はないが、熱可塑性樹脂(A)、複合酸化物粒子(C)は主原料供給口が好ましく、繊維状充填材(B)は、特に制限はないが主原料供給口と吐出口の中間、具体的にはスクリューエレメントデザインで主原料供給口に最も近いシールゾーンおよび/またはミキシングゾーンと吐出口に最も近いシールゾーンおよび/またはミキシングゾーンの中間位置が好ましく、成形品中の繊維状充填材(B)の重量平均繊維長を後述の所望の範囲に容易に調整することができる。
溶融混練装置としては特に制限はなく、熱可塑性樹脂(A)、繊維状充填材(B)および複合酸化物粒子(C)を適度な剪断場の下で加熱溶融混合することが可能な樹脂加工用に使用される公知の押出機、連続式ニーダー等を使用することができる。例えば、スクリューが1本の単軸押出機およびニーダー、スクリューが2本の二軸押出機およびニーダー、スクリューが3本以上の多軸押出機およびニーダー、また、押出機およびニーダーが2台以上繋がったタンデム押出機などが挙げられる。これらの溶融混練装置には、溶融混練せず原料供給のみ可能なサイドフィーダーが設置されていてもよい。スクリューエレメントデザインにおいては、フルフライトスクリュー等を有する溶融または非溶融搬送ゾーン、シールリング等を有するシールゾーン、ユニメルト、ニーディング等を有するミキシングゾーン等の組み合わせにも特に制限はないが、シールゾーンおよび/またはミキシングゾーンを2ヶ所以上有し、原料供給口を2ヶ所以上有する連続溶融混練装置が好ましく、シールゾーンおよび/またはミキシングゾーンを2ヶ所以上有し、原料供給口を2ヶ所以上有する2軸スクリュー部を有する連続溶融混練装置がさらに好ましく、シールゾーンおよび/またはミキシングゾーンを2ヶ所以上有し、原料供給口を2ヶ所以上有する2軸押出機が最も好ましい。
本発明の繊維強化樹脂組成物を溶融成形することにより、各種繊維強化樹脂成形品を製造することができる。溶融成形方法としては、例えば、射出成形、押出成形、回転成形、ブロー成形、圧縮成形などが挙げられる。
射出成形方法としては、例えば、通常の射出成形、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体の注入によるものを含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、超高速射出成形などを挙げることができる。これら各種成形法の利点は既に広く知られるところであり、成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。また、押出成形方法としては、例えば、インフレーション法、カレンダー法、キャスティング法などを挙げることができる。さらに延伸操作を施してもよい。
本発明の繊維強化樹脂成形品の形状としては特に制限はなく、一般的な射出成形により得られる成形品や押出成形による各種異形押出成形品、シート、フィルムなどの形で使用することもできる。また、熱収縮チューブや中空成形品とすることも可能である。
本発明の繊維強化樹脂成形品中に含まれる繊維状充填材(B)の重量平均繊維長(Lw)は、0.15mm以上であることが好ましい。重量平均繊維長を0.15mm以上にすることで、剛性や強度などの機械特性をより向上させることができる。成形品中の繊維状充填材(B)の重量平均繊維長は0.175mm以上が好ましく、0.20mm以上がさらに好ましく、0.22mm以上がさらに好ましい。また、重量平均繊維長(Lw)の数平均繊維長(Ln)に対する比(分散度:Lw/Ln)は、1.5以下であることが好ましい。繊維状充填材の分布が狭く、特に短い繊維状充填材が少なくなるため、機械特性をより向上させることができる。成形品中の繊維状充填材(B)のLw/Lnは1.40以下が好ましく、1.35以下がさらに好ましく、1.30以下がさらに好ましい。
ここで、繊維状充填材(B)の重量平均繊維長(Lw)と数平均繊維長(Ln)は、以下の方法により求めることができる。繊維強化樹脂成形品を熱可塑性樹脂(A)を溶解する溶剤にて溶かした後、濾過を行い、繊維状充填材(B)の残渣を得る。その残渣を光学顕微鏡にて50〜100倍に拡大した画像を観察し、無作為に選んだ1000本の長さを測定し、その測定値(mm)(小数点2桁が有効数字)を用いて以下の式に基づき計算する。
数平均繊維長(Ln)=Σ(Li×ni)/Σni
重量平均繊維長(Lw)=Σ(Wi×Li)/ΣWi
=Σ(πri2×Li×ρ×ni×Li)/Σ(πri2×Li×ρ×ni)
繊維径ri、および密度ρが一定である場合、上式は簡略化され、以下の式となる。
=Σ(Li2×ni)/Σ(Li×ni)
Li:繊維状充填材の繊維長
ni:繊維長Liの繊維状充填材の本数
Wi:繊維状充填材の重量
ri:繊維状充填材の繊維径
ρ:繊維状充填材の密度
繊維強化樹脂成形品中の繊維状充填材(B)の分散度を前述の範囲にするためには、溶融成形加工時の過度の剪断や繊維状充填材(B)同士の接触を抑制することが好ましい。具体的には、例えば、低粘度の熱可塑性樹脂(A)を配合したり、溶融成形加工温度を高くすることにより、過度の剪断力を抑制する方法が挙げられる。また、前述の特定の複合酸化物粒子(C)を含有する繊維強化樹脂組成物を用いることにより、前述の分散度を有する成形品を容易に得ることができる。
本発明の繊維強化樹脂成形品は、うねり曲線の算術平均高さ(Wa値)が3.0μm以下であることが好ましい。Wa値が3.0μm以下であれば、繊維強化樹脂成形品表面に目視によって観察されるうねり状凹凸を低減することができ、表面外観・意匠性をより向上させることができる。より好ましくは2.5μm以下、さらに好ましくは2.0μm以下である。また、Wa値の下限値は0μmであり特に限定されない。ここでのうねり曲線の算術平均高さ(Wa値)とは、JIS B0601で定義されるものであり、射出成形により作製した80mm×80mm×3mmの角板成形品を用い、表面粗さ測定装置(ACCRTECH社製)を用いて、評価長さ20mm、試験速度0.6mm/secで、成形品表面を測定して得られるうねり曲線の算術平均高さ(Wa)である。
通常、成形品のうねりは繊維状充填材(B)の分散不良による厚み方向の収縮差で生じることから、厚みによってうねり曲線の算術平均高さは大きく変動する。そのため上記射出成形により得られた角板成形品以外の成形品のうねり曲線の算術平均高さ(Wa)の好ましい値は、成形品厚みで補正することにより求めることができる。補正方法としては、成形品厚みと基本厚みである3mmとの比(成形品厚み(mm)/3(mm))を上記規定のうねり曲線の算術平均高さの3.0μmに乗することにより得られる値が、本発明におけるWa値に相当する。例えば、1.5mm厚みの成形品の場合には、1.5mm/3mm=0.5と3.0μmを掛け算して算出された1.5μmが、本発明におけるWa値3.0μmに相当することを意味する。よって上記射出成形により得られた角板成形品以外の成形品のうねり曲線の算術平均高さ(Wa)に関しては、表面粗さ測定装置(ACCRTECH社製)を用いて、評価長さ20mm、試験速度0.6mm/secで、成形品表面を測定してうねり曲線の算術平均高さが、成形品厚みで補正された値よりも小さくなることが好ましいといえる。
また、上記角板成形品のような平面ではなく、傾いた面や曲面のうねり曲線の算術平均高さ測定に関しては、傾斜補正モードを直線またはR面とすることにより、傾きで生じる高さの変動を補正可能である。
Wa値を3.0μm以下にするためには、例えば、本発明の特定の複合酸化物粒子(C)を含有する繊維強化樹脂組成物を用いることにより、成形品のうねり凹凸の原因である繊維状充填材(B)の分散不良を抑制する方法が挙げられる。
本発明の繊維強化樹脂成形品は、表面粗さ(Ra値)が0.3μm以下であることが好ましい。Ra値が0.3μm以下であれば、繊維強化樹脂成形品表面に目視によって観察される繊維状充填材(B)の浮きを低減することができ、表面外観・意匠性をより向上させることができる。より好ましくは0.27μm以下、さらに好ましくは0.25μm以下であり、特に好ましくは0.22μm以下である。また、Ra値の下限値は0μmであり特に限定されない。ここで表面粗さは、80mm×80mm×3mmの角板を使用し、表面粗さ測定装置(ACCRTECH社製)を用いて、評価長さ8mm、試験速度0.6mm/secの測定条件で成形品表面の算術平均粗さ(Ra)値を評価することにより求めることができる。また、角板成形品のような平面ではなく、傾いた面や曲面の表面粗さを測定する場合には、傾斜補正モードを直線またはR面とすることにより、傾きで生じる高さの変動を補正可能である。
本発明の繊維強化樹脂成形品は、自動車部品、電気・電子部品、建築部材、スポーツ用品部品、各種容器、日用品、生活雑貨および衛生用品など各種用途に利用することができる。具体的な用途としては、エアフローメーター、エアポンプ、サーモスタットハウジング、エンジンマウント、イグニッションボビン、イグニッションケース、クラッチボビン、センサーハウジング、アイドルスピードコントロールバルブ、バキュームスイッチングバルブ、ECUハウジング、バキュームポンプケース、インヒビタースイッチ、回転センサー、加速度センサー、ディストリビューターキャップ、コイルベース、ABS用アクチュエーターケース、ラジエータタンクのトップおよびボトム、クーリングファン、ファンシュラウド、エンジンカバー、シリンダーヘッドカバー、オイルキャップ、オイルパン、オイルフィルター、フューエルキャップ、フューエルストレーナー、ディストリビューターキャップ、ベーパーキャニスターハウジング、エアクリーナーハウジング、タイミングベルトカバー、ブレーキブースター部品、各種ケース、各種チューブ、各種タンク、各種ホース、各種クリップ、各種バルブ、各種パイプなどの自動車用アンダーフード部品、トルクコントロールレバー、安全ベルト部品、レジスターブレード、ウオッシャーレバー、ウインドレギュレーターハンドル、ウインドレギュレーターハンドルのノブ、パッシングライトレバー、サンバイザーブラケット、各種モーターハウジングなどの自動車用内装部品、ルーフレール、フェンダー、ガーニッシュ、バンパー、ドアミラーステー、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、グリルエプロンカバーフレーム、ランプリフレクター、ランプベゼル、ドアハンドルなどの自動車用外装部品、リレーケース、コイルボビン、光ピックアップシャーシ、モーターケース、ノートパソコンのハウジング、シャーシおよび内部部品、CRTディスプレーハウジングおよび内部部品、プリンターハウジングおよび内部部品、携帯電話、モバイルパソコン、ハンドヘルド型モバイルなどの携帯端末ハウジング、シャーシおよび内部部品、記録媒体(CD、DVD、PD、FDDなど)ドライブのハウジング、シャーシおよび内部部品、コピー機のハウジング、シャーシおよび内部部品、ファクシミリのハウジング、シャーシおよび内部部品、パラボラアンテナなどの電気・電子部品、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、ビデオカメラ、プロジェクターなどの映像機器部品、レーザーディスク(登録商標)、コンパクトディスク(CD)、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−R、DVD−RW、DVD−RAM、ブルーレイディスクなどの光記録媒体の基板、照明部品およびハウジング、シャーシ部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などの家庭・事務電気製品部品、電子楽器、家庭用ゲーム機、携帯型ゲーム機などのハウジング、シャーシおよび内部部品、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEPランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドホン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、トランス部材、コイルボビンなどの電気・電子部品、サッシ戸車、ブラインドカーテンパーツ、配管ジョイント、カーテンライナー、ブラインド部品、ガスメーター部品、水道メーター部品、湯沸かし器部品、ルーフパネル、断熱壁、アジャスター、プラ束、天井釣り具、階段、ドアー、床などの建築部材、コンクリート型枠などの土木関連部材、釣竿部品、リールのハウジング及びシャーシ部品、ルアー部品、クーラーボックス部品、ゴルフクラブ部品、テニス、バドミントン、スカッシュ等のラケット部品、スキー板部品、スキーストック部品、自転車のフレーム、ペダル、フロントフォーク、ハンドルバー、クランク、シートピラー、車輪等の部品、ボート用オール、スポーツ用ヘルメット、フェンス構成部材、ゴルフティー、剣道用防具(面)および竹刀などのスポーツ用品部品、歯車、ねじ、バネ、軸受、レバー、キーステム、カム、ラチェット、ローラー、給水部品、玩具部品、結束バンド、クリップ、ファン、パイプ、洗浄用治具、モーター部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などの機械部品、育苗用ポット、植生杭、農ビの止め具などの農業部材、骨折補強材などの医療用品、トレイ、ブリスター、ナイフ、フォーク、スプーン、チューブ、プラスチック缶、パウチ、コンテナー、タンク、カゴなどの容器・食器類、ホットフィル容器類、電子レンジ調理用容器類化粧品容器、ICトレイ、文房具、排水溝フィルター、カバン、イス、テーブル、クーラーボックス、クマデ、ホースリール、プランター、ホースノズル、食卓、机の表面、家具パネル、台所キャビネット、ペンキャップ、ガスライターなどとして有用である。特に自動車用内装部品、自動車用外装部品、スポーツ用品部材および各種電気・電子部品のハウジング、シャーシおよび内部部品として有用である。
本発明の繊維強化樹脂組成物およびその成形品は、リサイクルすることが可能である。例えば、繊維強化樹脂ペレットや繊維強化樹脂成形品を粉砕し、好ましくは粉末状とした後、必要に応じて添加剤を配合して溶融混練および成形することにより、繊維強化樹脂成形品を得ることができる。ただし、繊維の折損が生じている場合、それを用いて得られる繊維強化樹脂成形品は、本発明の繊維強化樹脂成形品と同様の機械強度を発現することは困難である。
本発明をさらに具体的に説明するために、以下、実施例、参考例および比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
使用原料としては下記のものを使用した。
(A)熱可塑性樹脂
<A1>ナイロン6樹脂“アミラン”(登録商標)CM1001(樹脂濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度2.35、東レ株式会社製)を使用した。
<A2>ポリカーボネート樹脂“タフロン”(登録商標)A1900(出光興産株式会社製)を使用した。
<A3>ポリブチレンテレフタレート樹脂“トレコン”(登録商標)1100M(固有粘度[η]0.85dl/g(o−クロロフェノール溶液を25℃で測定)、東レ株式会社製)を使用した。
<A4>ポリフェニレンスルフィド樹脂“トレリナ”(登録商標)M2888(東レ株式会社製)を使用した。
(B)繊維状充填材
<B1>PAN系の炭素繊維“トレカ”(登録商標)カットファイバーTV14−006(東レ株式会社製、原糸T700SC−12K:引張強度4.90GPa、引張弾性率230GPa、繊維径6.8μm)を使用した。
<B2>PAN系の炭素繊維“トレカ”(登録商標)原糸T800SC−24K(東レ株式会社製、引張強度5.88GPa、引張弾性率294GPa、繊維径5.5μm)を、樹脂成分付着量が3.0重量%になるようにウレタン樹脂エマルジョンを付着させ、200℃の乾燥炉で乾燥し水分を除去したのち、ロータリーカッターで繊維長6.0mmにカットしたカットファイバーを使用した。
<B3>ガラス繊維“ECS03−350”(セントラル硝子(株)製、繊維径13μm)を使用した。
(C)複合酸化物粒子
<C1>複合酸化物粒子顔料“Cobalt Blue 1024”(Co−Al系、アサヒ化成工業株式会社製)を使用した。レーザ回折散乱式粒度分布測定装置(日機装株式会社製、マイクロトラックHRA)を用いて測定した球相当径の体積積算値から算出したd50(平均粒子径)は0.9μmであった。
<C2>複合酸化物粒子顔料“Yellow 5970”(Ti−Cr−Sb系、アサヒ化成工業株式会社製)を使用した。前記同様に測定したd50(平均粒子径)は0.8μmであった。
<C3>複合酸化物粒子顔料“Brown 4123”(Fe−Zn系、アサヒ化成工業株式会社製)を使用した。前記同様に測定したd50(平均粒子径)は1.8μmであった。
(C’)その他粒子
<C’1>カーボンブラック“MCF #1000”(三菱化学株式会社製、平均粒子径0.018μm)を使用した。
<C’2>酸化チタン(ルチル型)“CR−63”(石原産業株式会社製、平均粒子径0.21μm)を使用した。
[実施例1、3〜8、10〜12、参考例1〜2、比較例1〜8]
表1〜3記載の組成について、表中に示す押出条件、スクリュー回転数200rpmに設定した2軸押出機(日本製鋼所製TEX30α)を用い、熱可塑性樹脂(A)、複合酸化物粒子(C)またはその他粒子(C’)を主フィーダーより供給後、繊維状充填材(B)をサイドフィーダーを用いて溶融樹脂中に供給し、ダイから吐出されたストランドを水中にて冷却、ストランドカッターにより長さ3.0mm長にカットしてペレット化を実施し、繊維強化樹脂組成物ペレットを得た。
前記で得られた繊維強化樹脂ペレットのうちナイロン系は80℃で一昼夜真空乾燥、ポリカーボネート系、ポリブチレンテレフタレート系は120℃で5時間以上熱風乾燥、ポリフェニレンスルフィド系は140℃で5時間以上熱風乾燥した後、表中の成形条件で射出成形機(住友重機械社製SG75H−MIV)を使用し、射出速度100mm/sec、射出圧を下限圧(最低充填圧力)+1MPaでそれぞれの試験片を成形し、次の条件で各特性を測定した。なお、上記製造方法であれば、繊維強化樹脂組成物中の複合酸化物粒子(C)の平均粒子径は、配合前の複合酸化物粒子(C)の平均粒子径と同じであるといえる。
[繊維状充填材(B)のLn、Lw]:得られた繊維強化樹脂ペレットおよび成形品をギ酸に溶かした後、濾過を行い、繊維状充填材(B)の残渣を得た。その残渣を光学顕微鏡にて50〜100倍に拡大した画像を観察し、無作為に選んだ1000本の長さを測定し、その測定値(mm)(小数点2桁が有効数字)を用いて以下の式に基づき計算した。
数平均繊維長(Ln)=Σ(Li×ni)/Σni
重量平均繊維長(Lw)=Σ(Li2×ni)/Σ(Li×ni)
Li:繊維状充填材の繊維長
ni:繊維長Liの繊維状充填材の本数
[耐衝撃性]:ISO179に従い23℃でシャルピー衝撃強さ(ノッチ付き)を評価した。試験片12本についての測定値の平均値とした。
[曲げ強度、曲げ弾性率]ISO178に従い23℃で曲げ強度および曲げ弾性率を評価した。いずれも試験片6本についての測定値の平均値とした。
[引張強度]:ISO527に従い23℃で引張強度を評価した。試験片6本についての測定値の平均値とした。
[成形収縮率]:射出成形で得られた80mm×80mm×3mmの角板を使用し、ノギスを用いて流動方向(MD方向)と流動に対して垂直方向(TD方向)の長さを各々測定し、基準となる80mmに対する収縮率を算出した。試験片5個についての測定値の平均値とした。
[表面粗さ]:射出成形で得られた80mm×80mm×3mmの角板を使用し、表面粗さ測定装置(ACCRTECH社製)を用いて、評価長さ8mm、試験速度0.6mm/secの測定条件で成形品表面の算術平均粗さ(Ra)値を評価した。
[表面うねり]:射出成形で得られた80mm×80mm×3mmの角板を使用し、表面粗さ測定装置(ACCRTECH社製)を用いて、評価長さ20mm、試験速度0.6mm/secの測定条件で成形品表面のうねり曲線の算術平均高さ(Wa)値を評価した。
[流動性]:射出成形で80mm×80mm×3mmの角板を成形する際に、金型内に樹脂が充填される下限の射出圧力を測定した。値が大きいほど流動性が劣るといえる。
各実施例、参考例および比較例の組成、条件、評価結果を表1〜3に示す。
実施例1、3〜8、比較例1、2より、熱可塑性ポリアミド樹脂(A)、繊維状充填材(B)に特定の複合酸化物粒子(C)を併用することで、機械特性を低下させることなく、流動性の向上と外観特性の指標である表面粗さ、表面うねりが改善でき、金属並の機械特性と外観・意匠性を両立する成形品を得ることができる。特に、実施例7のように繊維状充填材(B)を高含有させた場合においても、複合酸化物粒子を含むことで良外観が得られることが分かる。しかし比較例3より、繊維状充填材(B)の含有量が本発明の範囲を超える場合には、繊維の折損が促進され衝撃強度が大幅に低下する。
一方、比較例4のように複合酸化物粒子ではない粒子を配合しても外観・意匠性の改善は見られず、また比較例5のように酸化チタンでは繊維状充填材(B)の折損が進行するため、外観改良効果は見られるが機械特性の低下が否めない。
実施例10〜12、比較例6〜8より、種々の熱可塑性樹脂(A)、繊維状充填材(B)に特定の複合酸化物粒子(C)を併用しても、前記ポリアミド樹脂系と同様に良流動化による外観・意匠性の改善が認められる。