JP2012092303A - 長繊維強化樹脂ペレットおよびそれを溶融成形してなる長繊維強化樹脂成形品 - Google Patents
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Abstract
【課題】本発明は、分散性に優れた樹状ポリエステルを長繊維強化樹脂に配合することにより、優れた機械的強度、流動性(成形加工性)、外観、寸法安定性を改善された長繊維強化樹脂成形品、およびそれに使用する長繊維強化樹脂ペレットを提供することをその課題とするものである。
【解決手段】熱可塑性樹脂(A)、樹状ポリエステル(B)を配合してなる樹脂組成物に対し、繊維状充填剤(C)を配合してなる長繊維強化樹脂組成物であり、繊維状充填剤(C)が樹脂組成物中において実質的にその全てがペレットと同じ長さで平行配列しており、かつその長さが5〜30mmである長繊維強化樹脂ペレット。
【選択図】なし
【解決手段】熱可塑性樹脂(A)、樹状ポリエステル(B)を配合してなる樹脂組成物に対し、繊維状充填剤(C)を配合してなる長繊維強化樹脂組成物であり、繊維状充填剤(C)が樹脂組成物中において実質的にその全てがペレットと同じ長さで平行配列しており、かつその長さが5〜30mmである長繊維強化樹脂ペレット。
【選択図】なし
Description
本発明は、長繊維強化樹脂に樹状ポリエステルを配合することにより、長繊維強化樹脂の機械的強度、流動性、外観等を著しく向上した長繊維強化樹脂成形品、およびそれに使用する長繊維強化樹脂ペレットに関するものである。
熱可塑性樹脂の機械強度を向上させるための手段として、ガラス繊維や炭素繊維等の繊維を配合することが知られている。一般的には熱可塑性樹脂とチョップドストランド等の短繊維を押出機で混練することにより繊維強化樹脂組成物が得られる。しかしながら近年、プラスチックの高性能化に対する要求がますます高まり、混練時の剪断により繊維の折損が避けられない上記押出機での混練では、高性能化には限界があった。
これに対し、繊維の折損を起こすことなく長繊維で強化された熱可塑性樹脂組成物を製造する方法として、溶融樹脂中に浸漬した繊維束を開繊、しごく、さらに樹脂に圧力を付与するなどして機械的に含浸させるプルトリュージョン法等が一般的である(特許文献1参照)。しかしながら繊維束への溶融樹脂の含浸は、樹脂の溶融粘度が高いほど困難となることは良く知られており、力学的特性に優れた熱可塑性樹脂は通常高分子量体であり溶融粘度も高い。このような高分子量体の熱可塑性樹脂をマトリックスとする繊維強化樹脂は繊維束中に樹脂が含浸し難いため、繊維の濡れ性、および分散性が悪く力学特性の低下を招くという問題があった。一方、含浸の容易な低分子量(低粘度)の熱可塑性樹脂をマトリックスとすると、強化材料の力学特性の大幅な低下を招くため、問題解決とはならない。
その他、繊維束を電線被覆用のコーティングダイの中に通し熱可塑性樹脂を押出被覆させ電線状のストランドを得る電線被覆法がある。しかしながら繊維に樹脂が含浸していないため、最終製品に成形する工程での樹脂と繊維の密着性が十分ではなく、繊維の分散性が低下するため、期待されるほどの機械強度の向上はできていないのが実状であった。
また繊維の表面改質や繊維との反応性を有する変性樹脂の添加によって含浸性を改善する手法が提案されている(特許文献2、3参照)。すなわち、サイジング剤やカップリング剤などで繊維表面を改質し、樹脂含浸時の繊維と樹脂との濡れ性を改善しようとするものである。しかし本手法でも樹脂と繊維との密着性は不十分なものであり機械的強度の向上が十分ではない。
さらに上記手法で得られた長繊維強化樹脂ペレットを最終形状に成形する工程において、例えば射出成形の場合、含浸、繊維分散が十分でなかったり、あるいは十分な含浸、繊維分散を達成するために混練効果の高いスクリュー形状を持った成形機を用いる必要が生じる。また汎用の射出成形機を用いた場合でも、混練による剪断力でせっかくの長繊維が短く折損してしまい、成形品として意図する機械強度が示されなくなってしまう。
以上の通り、長繊維強化樹脂において、ペレット製造工程や製品成形工程で生産性に優れ、かつ高い機械強度を得られるようなものは存在しなかった。
また、樹状構造ポリエステルに関して、熱可塑性樹脂に配合することで流動性や剛性、さらにはガスバリア性を向上させる検討(特許文献4参照)が、さらにポリアミド樹脂と繊維状充填剤からなる組成物に樹状ポリエステルを配合することで金型転写性、機械的特性、流動性を向上させる検討(特許文献5参照)が開示されている。
しかしながらいずれの公報にも、長繊維強化樹脂に樹状ポリエステルを配合することにより、本願の特徴である機械的強度、流動性、外観が高度にバランスがとれること、特に押出機や成形機中での剪断による繊維の折損が抑制できるために衝撃強度、曲げ弾性率、曲げ強度が向上するばかりか、強度向上により従来よりも繊維添加量が低減可能となり、軽量化、良外観を付与できることについては記載はなく示唆すらされない。
特許第4302938号公報(請求項1および6)
特許第4354776号公報(請求項1)
特開2007−112041号公報(請求項1)
特開2008−069339号公報(請求項1および10)
特開2008−133429号公報(請求項1)
本発明は、上記課題を解決し、優れた機械的強度、流動性(成形加工性)、外観、寸法安定性を改善された長繊維強化樹脂成形品、およびそれに使用する長繊維強化樹脂ペレットを提供することをその課題とするものである。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、
(1)熱可塑性樹脂(A)80〜99.9重量部、樹状ポリエステル(B)0.1〜20重量部((A)+(B)=100重量部)を配合してなる樹脂組成物100重量部に対し、繊維状充填剤(C)5〜200重量部を配合してなる長繊維強化樹脂組成物であり、繊維状充填剤(C)が樹脂組成物中において実質的にその全てがペレットと同じ長さで平行配列しており、かつその長さが5〜30mmである長繊維強化樹脂ペレット、
(2)熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、繊維状充填剤(C)5〜200重量部を配合してなる長繊維強化樹脂組成物であり、繊維状充填剤(C)が熱可塑性樹脂(A)中において実質的にその全てがペレットと同じ長さで平行配列しており、かつその長さが5〜30mmである長繊維強化樹脂ペレットと、樹状ポリエステル(B)を含む樹脂ペレットの混合ペレット、
(3)前記樹状ポリエステル(B)が、芳香族オキシカルボニル単位(P)、芳香族および/または脂肪族ジオキシ単位(Q)、芳香族ジカルボニル単位(R)、および3官能以上の有機残基(D)とを含み、かつ、(P)、(Q)、(R)、(D)はそれぞれ下式(1)および(2)で表される構造単位から選ばれる少なくとも1種の構造単位であり、(D)の含有量が樹状ポリエステルを構成する全単量体に対して7.5〜50モル%の範囲にある溶融液晶性を示す樹状ポリエステル樹脂であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載のペレット、
(1)熱可塑性樹脂(A)80〜99.9重量部、樹状ポリエステル(B)0.1〜20重量部((A)+(B)=100重量部)を配合してなる樹脂組成物100重量部に対し、繊維状充填剤(C)5〜200重量部を配合してなる長繊維強化樹脂組成物であり、繊維状充填剤(C)が樹脂組成物中において実質的にその全てがペレットと同じ長さで平行配列しており、かつその長さが5〜30mmである長繊維強化樹脂ペレット、
(2)熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、繊維状充填剤(C)5〜200重量部を配合してなる長繊維強化樹脂組成物であり、繊維状充填剤(C)が熱可塑性樹脂(A)中において実質的にその全てがペレットと同じ長さで平行配列しており、かつその長さが5〜30mmである長繊維強化樹脂ペレットと、樹状ポリエステル(B)を含む樹脂ペレットの混合ペレット、
(3)前記樹状ポリエステル(B)が、芳香族オキシカルボニル単位(P)、芳香族および/または脂肪族ジオキシ単位(Q)、芳香族ジカルボニル単位(R)、および3官能以上の有機残基(D)とを含み、かつ、(P)、(Q)、(R)、(D)はそれぞれ下式(1)および(2)で表される構造単位から選ばれる少なくとも1種の構造単位であり、(D)の含有量が樹状ポリエステルを構成する全単量体に対して7.5〜50モル%の範囲にある溶融液晶性を示す樹状ポリエステル樹脂であることを特徴とする前記(1)または(2)に記載のペレット、
(ここで、R1、R2およびR3は、それぞれ下式で表される構造単位から選ばれる少なくとも1種の構造単位である。)
(ただし、式中Yは、水素原子、ハロゲン原子およびアルキル基から選ばれる少なくとも1種である。式中nは2〜8の整数である。)
(4)前記樹状ポリエステル樹脂(B)が、3官能以上の有機残基(D)の含有量dを1モルとした場合に(P)、(Q)および(R)それぞれの含有量p、qおよびrがp+q+r=1〜10モルの範囲にあることを特徴とする前記(3)に記載のペレット、
(5)前記熱可塑性樹脂(A)が、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、ポリフェニレンスルフィドから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載のペレット、
(6)前記(1)〜(5)のいずれかに記載のペレットを溶融成形してなる長繊維強化樹脂成形品、
(7)成形品中の繊維状充填剤の重量平均繊維長が0.5〜2mmである前記(6)に記載の長繊維強化樹脂成形品である。
(5)前記熱可塑性樹脂(A)が、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、ポリフェニレンスルフィドから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載のペレット、
(6)前記(1)〜(5)のいずれかに記載のペレットを溶融成形してなる長繊維強化樹脂成形品、
(7)成形品中の繊維状充填剤の重量平均繊維長が0.5〜2mmである前記(6)に記載の長繊維強化樹脂成形品である。
本発明では、長繊維強化樹脂中に樹状ポリエステルを微分散化させることで、流動性(成形加工性)や機械的強度の向上、さらには外観、寸法安定性が改善された長繊維強化樹脂成形品およびそれに使用する長繊維強化樹脂ペレットを得ることができるようになった。
以下に本発明の長繊維強化樹脂ペレットについて具体的に説明する。
本発明の長繊維強化樹脂ペレットに使用する熱可塑性樹脂(A)とは、熱可塑性を示す樹脂であれば特に限定されず、例えば、スチレン系樹脂、フッ素樹脂、ポリオキシメチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、塩化ビニル、オレフィン系樹脂、熱可塑性エラストマー、ポリアクリレート、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィドなどのポリアリーレンスルフィド、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、エチルセルロース等のセルロース誘導体、液晶性樹脂等、およびこれらの変性材あるいは1種または2種以上のブレンド物等が挙げられる。
本発明の長繊維強化樹脂ペレットに使用する熱可塑性樹脂(A)とは、熱可塑性を示す樹脂であれば特に限定されず、例えば、スチレン系樹脂、フッ素樹脂、ポリオキシメチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、塩化ビニル、オレフィン系樹脂、熱可塑性エラストマー、ポリアクリレート、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィドなどのポリアリーレンスルフィド、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、エチルセルロース等のセルロース誘導体、液晶性樹脂等、およびこれらの変性材あるいは1種または2種以上のブレンド物等が挙げられる。
スチレン系樹脂としては、PS(ポリスチレン)、HIPS(高衝撃ポリスチレン)、AS(アクリロニトリル/スチレン共重合体)、AES(アクリロニトリル/エチレン・プロピレン・非共役ジエンゴム/スチレン共重合体)、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン共重合体)、MBS(メタクリル酸メチル/ブタジエン/スチレン共重合体)などが挙げられ、特にABSが好ましい。
オレフィン系樹脂としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/1−ブテン共重合体、エチレン/プロピレン/非共役ジエン共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体およびエチレン/プロピレン−g−無水マレイン酸共重合体、メタクリル酸/メタクリル酸メチル/グルタル酸無水物共重合体などが挙げられ、流動性、機械強度の観点から特にポリプロピレンが好ましい。
上記ポリプロピレンとは、プロピレンの単独重合からなるホモポリマー、エチレンなどのモノマーを共重合したランダムコポリマー、ポリエチレンやエチレン/プロピレンゴムが配合されるブロックコポリマーがいずれも好ましく用いられる。
さらにポリプロピレン系樹脂の構造には特に制限はなく、ランダムな構造のアタクチック、規則的に交互に配置する構造のシンジオタクチック、一方向に規則的に配置する構造のアイソタクチックのいずれの構造をとってもよい。
本発明のオレフィン系樹脂の分子量は、MFR(メルトフローレート)が指標の一つであり、ISO1133に準拠し、230℃−2.16kg荷重で測定した値が、0.1〜200g/10min、さらに0.5〜100g/10min、特に1〜50g/10minの範囲のものが流動性、機械特性の観点より好ましい。また、ポリプロピレンなどではデカヒドロナフタレンまたはテトラヒドロナフタレン溶媒中で測定される固有粘度も基本的な指標として用いることもできる。
熱可塑性エラストマーとしては、ポリエステルポリエーテルエラストマー、ポリエステルポリエステルエラストマー、熱可塑性ポリウレタンエラストマー、熱可塑性スチレンブタジエンエラストマー、熱可塑性オレフィンエラストマー、熱可塑性ポリアミドエラストマーなどが挙げられる。
ポリアミドとしては、ナイロン6(ポリカプロアミド)、ナイロン66(ポリヘキサメチレンアジパミド)、ナイロン12(ポリドデカンアミド)、ナイロン610(ポリヘキサメチレンセバカミド)、ナイロン6/66コポリマー(ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンアジパミドコポリマー)などが挙げられる。また、ナイロン6T/66コポリマー(ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー)、ナイロン6T/6Iコポリマー(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー)、ナイロン6T/M5Tコポリマー(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリ−2−メチルペンタメチレンテレフタルアミドコポリマー)、ナイロン6T/12コポリマー(ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリドデカンアミドコポリマー)、ナイロン66/6T/6Iコポリマー(ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー)およびナイロン6T/6コポリマー(ポリカプロアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー)などのヘキサメチレンテレフタルアミド単位を有する共重合体も好ましい。さらにこれらのポリアミド樹脂の複数を、耐衝撃性、成形加工性などの必要特性に応じて混合物として用いることも実用上好適である。
これらポリアミド樹脂の重合度には特に制限がないが、サンプル濃度0.01g/mlの98%濃硫酸溶液中、25℃で測定した相対粘度として、1.5〜7.0の範囲のものが好ましく、特に2.0〜6.0の範囲のナイロンが好ましい。
ポリアミド樹脂には、長期耐熱性を向上させる添加物として、銅化合物が好ましく用いられる。なかでも1価の銅化合物とりわけ1価のハロゲン化銅化合物が好ましく、酢酸第1銅、ヨウ化第1銅などを特に好適な銅化合物として例示できる。銅化合物の添加量は、ナイロン100重量部に対して0.01〜2重量部であることが好ましく、さらに0.015〜1重量部の範囲であることが好ましい。添加量が多すぎると溶融成形時に金属銅の遊離が起こり、着色により製品の価値を減ずることになる。銅化合物と併用する形でハロゲン化アルカリを添加することも可能である。このハロゲン化アルカリ化合物の例としては、ヨウ化カリウムおよびヨウ化ナトリウムが特に好ましい。
ポリエステルとしては、ジカルボン酸またはそのエステル形成性誘導体とジオールまたはそのエステル形成性誘導体を主構造単位とする重合体または共重合体が好ましい。中でも、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリシクロヘキサンジメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレート、ポリブチレンナフタレート、ポリエチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリプロピレンイソフタレート/テレフタレート、ポリブチレンイソフタレート/テレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ナフタレート、ポリプロピレンテレフタレート/ナフタレート、ポリブチレンテレフタレート/ナフタレートなどの芳香族ポリエステル樹脂が特に好ましく、ポリブチレンテレフタレートが最も好ましい。これらの重合体においては、全ジカルボン酸に対するテレフタル酸ユニットの割合が30モル%以上であることが好ましく、40モル%以上であることがさらに好ましい。
また、ポリエステルはヒドロキシカルボン酸あるいはそのエステル形成性誘導体およびラクトンから選択された一種以上を含有していてもよい。ヒドロキシカルボン酸としては、グリコール酸、乳酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸、ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸などが挙げられる。また、ラクトンとしてはカプロラクトン、バレロラクトン、プロピオラクトン、ウンデカラクトン、1,5−オキセパン−2−オンなどが挙げられる。これらを構造単位とする重合体または共重合体としては、ポリグリコール酸、ポリ乳酸、ポリグリコール酸/乳酸、ポリヒドロキシ酪酸/β−ヒドロキシ酪酸/β−ヒドロキシ吉草酸などの脂肪族ポリエステル樹脂が挙げられる。
ポリエステルの融点は、特に限定されないが、耐熱性の点で、120℃以上であることが好ましく、180℃以上であることがより好ましく、200℃以上であることがさらに好ましく、220℃以上であることが特に好ましい。上限は、特に限定されないが、300℃以下であることが好ましく、280℃以下であることがより好ましい。なお、上記ポリエステルの融点は、示差走査熱量計(DSC)により昇温速度20℃/分で測定した値である。
ポリエステルのカルボキシル末端基量は、特に限定されないが、流動性、耐加水分解性および耐熱性の点で、50eq/t以下であることが好ましく、30eq/t以下であることがより好ましく、20eq/t以下であることがさらに好ましく、10eq/t以下であることが特に好ましい。下限は0eq/tである。なおポリエステル樹脂のカルボキシル末端基量は、o−クレゾール/クロロホルム溶媒に溶解させた後、エタノール性水酸化カリウムで滴定し測定した値である。
ポリエステルの粘度は、溶融混練が可能であれば特に限定されないが、成形性の点で、o−クロロフェノール溶液を25℃で測定したときの固有粘度が0.36〜1.60dl/gの範囲であることが好ましく、0.50〜1.25dl/gの範囲であることがより好ましい。
ポリエステル樹脂の分子量は、特に限定されないが、耐熱性の点で、重量平均分子量(Mw)5万〜50万の範囲であることが好ましく、10万〜30万の範囲であることがより好ましく、15万〜25万の範囲であることがさらに好ましい。なお、本発明において、上記ポリエステルの分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定した値である。
上記ポリエステルの製造方法は、特に限定されるものではなく、公知の重縮合法や開環重合法などにより製造することができる。バッチ重合および連続重合のいずれでもよく、また、エステル交換反応および直接重合による反応のいずれでも適用することができる。
ポリカーボネートとしては芳香族ホモポリカーボネートと芳香族コポリカーボネートより選ぶことができる。製造方法としては、2官能フェノール系化合物に苛性アルカリ及び溶剤の存在下でホスゲンを吹き込むホスゲン法、あるいは二官能フェノール系化合物と炭酸ジエチルとを触媒の存在下でエステル交換させるエステル交換法を挙げることができる。該芳香族ポリカーボネートは粘度平均分子量が1万〜10万の範囲が好適である。ここで、上記2官能フェノール系化合物は、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニル)ブタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジプロピルフェニル)プロパン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−フェニル−1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等が挙げられる。
ポリカーボネートとしては芳香族ホモポリカーボネートと芳香族コポリカーボネートより選ぶことができる。製造方法としては、2官能フェノール系化合物に苛性アルカリ及び溶剤の存在下でホスゲンを吹き込むホスゲン法、あるいは二官能フェノール系化合物と炭酸ジエチルとを触媒の存在下でエステル交換させるエステル交換法を挙げることができる。該芳香族ポリカーボネートは粘度平均分子量が1万〜10万の範囲が好適である。ここで、上記2官能フェノール系化合物は、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジメチルフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジフェニル)ブタン、2,2’−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジプロピルフェニル)プロパン、1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1−フェニル−1,1’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン等が挙げられる。
ポリアリーレンスルフィドとしては、ポリフェニレンスルフィドが挙げられる。ポリフェニレンスルフィドは通常公知の方法、即ち特公昭45−3368号公報に記載される比較的分子量の小さな重合体を得る方法或は特公昭52−12240号公報や特開昭61−7332号公報に記載される比較的分子量の大きな重合体を得る方法などによって製造することができる。ここでポリフェニレンスルフィドの溶融粘度は、溶融混練が可能であれば特に制限はないが、通常10〜50,000ポイズ(300℃、剪断速度1,000/秒)のものが使用され、10〜5,000ポイスの範囲がより好ましく、10〜2,000ポイズの範囲が更に好ましい。
これらの樹脂のうち、具体的には、ポリアミド、スチレン系樹脂、ポリオレフィン、ポリカーボネート、およびポリアリーレンスルフィドなどが好ましい。特にナイロン6、ナイロン66、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリフェニレンスルフィドなどが好ましい。
本発明の樹状ポリエステル(B)は、芳香族オキシカルボニル単位(P)、芳香族および/または脂肪族ジオキシ単位(Q)、芳香族ジカルボニル単位(R)、および3官能以上の有機残基(D)とを含み、かつ、(D)の含有量が樹状ポリエステルを構成する全単量体に対して7.5〜50モル%の範囲にある溶融液晶性を示す樹状ポリエステルであることが好ましい。
ここで、芳香族オキシカルボニル単位(P)、芳香族および/または脂肪族ジオキシ単位(Q)、および、芳香族ジカルボニル単位(R)は、それぞれ下式(1)で表される構造単位であることが好ましい。
ここで、R1およびR3は、それぞれ芳香族残基である。R2は、芳香族残基または脂肪族残基である。R1、R2、およびR3は、それぞれ複数の構造単位を含んでも良い。
上記の芳香族残基としては、置換または非置換のフェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基などが挙げられ、脂肪族残基としてはエチレン、プロピレン、ブチレンなどが挙げられる。R1、R2およびR3は、好ましくは、それぞれ下式で表される構造単位から選ばれる少なくとも1種以上の構造単位である。
ただし、式中Yは、水素原子、ハロゲン原子およびアルキル基から選ばれる少なくとも1種である。ここでアルキル基としては、炭素数1〜4のアルキル基が好ましい。式中nは2〜8の整数である。
本発明の樹状ポリエステルは、3官能以上の有機残基(D)が、互いにエステル結合および/またはアミド結合により直接、あるいは、枝構造部分である前記P、QおよびRからなる構造単位を介して結合した、3分岐以上の分岐構造を基本骨格としている。ポリマーの全てが該基本骨格からなる必要はなく、たとえば末端封鎖のために末端に他の構造が含まれても良い。樹状ポリエステル中には、Dが有する官能基が全て反応している構造、2つだけが反応している構造、および1つだけしか反応していない構造が混在していてもよい。好ましくはDの有する官能基が全て反応した構造が、D全体に対して15モル%以上であることが好ましく、より好ましくは20モル%以上であり、さらに好ましくは30モル%以上である。
本発明の樹状ポリエステルは、溶融液晶性を示すことが好ましい。ここで溶融液晶性を示すとは、室温から昇温していった際に、ある温度域で液晶状態を示すことである。液晶状態とは、剪断下において光学的異方性を示す状態である。
3官能の有機残基Dとしては、カルボキシル基、ヒドロキシル基およびアミノ基から選ばれる官能基を含有する化合物の有機残基であることが好ましい。例えばグリセロール、1,2,3−トリカルボキシプロパン、ジアミノプロパノール、ジアミノプロピオン酸などの脂肪族化合物や、トリメシン酸、トリメリット酸、4−ヒドロキシ−1,2−ベンゼンジカルボン酸、フロログルシノール、レゾルシン酸、トリカルボキシナフタレン、ジヒドロキシナフトエ酸、アミノフタル酸、5−アミノイソフタル酸、アミノテレフタル酸、ジアミノ安息香酸、メラミンなどの芳香族化合物の残基が好ましく用いられる。下式(2)で表される芳香族化合物の残基がさらに好ましい。
上記の3官能の有機残基の具体例としては、フロログルシノール、トリメシン酸、トリメリット酸、無水トリメリット酸、α−レゾルシル酸、4−ヒドロキシ−1,2−ベンゼンジカルボン酸などの残基が好ましく、さらに好ましくは、トリメシン酸、α−レゾルシル酸の残基であり、最も好ましくはトリメシン酸の残基である。
また、樹状ポリエステルの芳香族ヒドロキシカルボニル単位(P)、芳香族および/または脂肪族ジオキシ単位(Q)、芳香族ジカルボニル単位(R)は、樹状ポリエステルの分岐間の枝構造部分を構成する単位である。p、qおよびrはそれぞれ構造単位P、QおよびRの平均含有量(モル比)であり、Dの含有量dの1モルに対して、p+q+r=1〜10モルの範囲であることが好ましい。p+q+rは、より好ましくは、2〜6モルの範囲である。枝鎖長が長すぎると、剛直で綿密な樹状構造に基づく剪断応答性などの効果が低減するため好ましくない。
このp、qおよびrの値は、例えば、樹状ポリエステルをペンタフルオロフェノール50重量%:重クロロホルム50重量%の混合溶媒に溶解し、40℃でプロトン核の核磁気共鳴スペクトル分析を行い、それぞれの構造単位に由来するピーク強度比から求めることができる。各構造単位のピーク面積強度比から、平均含有率を算出し、小数点3桁は四捨五入する。分岐構造Dの含有量dにあたるピークとの面積強度比から、枝構造部分の平均鎖長を算出し、p+q+rの値とする。この場合にも小数点3桁は四捨五入する。
pとqの比率およびpとrの比率(p/q、p/r)は、いずれも5/95〜95/5の範囲が好ましく、より好ましくは10/90〜90/10であり、さらに好ましくは20/80〜80/20である。この範囲であれば、液晶性が発現しやすく好ましい。p/qおよびp/rの比率を95/5以下とすることで、樹状ポリエステルの融点を適当な範囲とすることができるため好ましい。また、p/qおよびp/rを5/95以上とすることで樹状ポリエステルの溶融液晶性を発現することができるため好ましい。
qとrは、実質的に等モルであることが好ましいが、末端基を制御するためにどちらかの成分を過剰に加えることもできる。q/rの比率としては0.7〜1.5の範囲であることが好ましく、より好ましくは0.9〜1.1である。ここでいう等モルとは、繰り返し単位内でのモル量が等しいことを意味し、末端構造は含めない。ここで、末端構造とは、枝構造部分の末端を意味し、末端が封鎖されている場合などには、最も末端に近い枝構造部分の末端を意味する。
前記一般式(1)において、R1は芳香族オキシカルボニル単位由来の構造単位であり、具体例としては、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸から生成した構造単位などが挙げられる。好ましくはp−ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位であり、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸由来の構造単位部併用することも可能である。また本発明の効果を損なわない範囲でグリコール酸、乳酸、ヒドロキシプロピオン酸、ヒドロキシ酪酸、ヒドロキシ吉草酸、ヒドロキシカプロン酸などの脂肪族ヒドロキシカルボン酸由来の構造単位を含有しても良い。
R2は芳香族および/または脂肪族ジオキシ単位由来の構造単位であり、例えば、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジヒドロキシビフェニル、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロキノン、メチルハイドロキノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、2,7−ジヒドロキシナフタレン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンおよび4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオールなど由来の構造単位が挙げられる。好ましくは、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、およびエチレングリコール由来の構造単位であり、4,4’−ジヒドロキシビフェニルとハイドロキノンもしくは4,4’−ジヒドロキシビフェニルとエチレングリコール由来の構造単位が含まれることが液晶性の制御の点から好ましい。
R3は芳香族ジカルボニル単位由来の構造単位であり、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、4,4’−ジフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロロフェノキシ)エタン−4,4’−ジカルボン酸および4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸など由来の構造単位が挙げられる。好ましくはテレフタル酸またはイソフタル酸由来の構造単位であり、特に両者を併用した場合に融点調節がしやすく好ましい。セバシン酸やアジピン酸などの脂肪族ジカルボン酸由来の構造単位が一部含まれていてもよい。
本発明の樹状ポリエステルの枝構造部分は、主としてポリエステル骨格からなることが好ましいが、カーボネート構造やアミド構造、ウレタン構造などを、特性に大きな影響を与えない程度に導入することも可能である。中でもアミド構造を導入することが好ましい。このような別の結合を導入することで、多種多様な熱可塑性樹脂に対する相溶性を調整することが可能であり、好ましい。アミド結合の導入の方法としては、p−アミノ安息香酸、m−アミノ安息香酸、p−アミノフェノール、m−アミノフェノール、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、テトラメチレンジアミンペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、2−メチルペンタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、2,2,4−/2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、5−メチルノナメチレンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタン、2,2−ビス(4−アミノシクロヘキシル)プロパン、ビス(アミノプロピル)ピペラジン、アミノエチルピペラジンなどの脂肪族、脂環族、あるいは芳香族のアミン化合物などを共重合することが好ましい。中でもp−アミノフェノールまたはp−アミノ安息香酸の共重合が好ましい。
樹状ポリエステルの枝構造部分の具体例としては、p−ヒドロキシ安息香酸および6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸由来の構造単位からなるもの、p−ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸由来の構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位およびテレフタル酸由来の構造単位からなるもの、p−ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位、テレフタル酸由来の構造単位およびイソフタル酸由来の構造単位からなるもの、p−ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位、ハイドロキノン由来の構造単位、テレフタル酸由来の構造単位およびイソフタル酸由来の構造単位からなるもの、p−ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位、エチレングリコール由来の構造単位およびテレフタル酸由来の構造単位からなるもの、p−ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位、エチレングリコール由来の構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位およびテレフタル酸由来の構造単位からなるもの、p−ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位、ハイドロキノン由来の構造単位、4,4’−ジヒドロキシビフェニル由来の構造単位、テレフタル酸由来の構造単位および2,6−ナフタレンジカルボン酸由来の構造単位からなるもの、p−ヒドロキシ安息香酸由来の構造単位、6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸由来の構造単位、ハイドロキノン由来の構造単位およびテレフタル酸由来の構造単位からなるものなどが挙げられる。
特に好ましいのは、枝構造部分が、下記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)から構成されること、もしくは、下記構造単位(I)、(II)、(VI)および(IV)から構成されることである。
枝構造部分が、上記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)から構成される場合には、構造単位(I)の含有量pは、各構造単位の合計p+q+rに対して30〜70モル%が好ましく、より好ましくは45〜60モル%である。
また、構造単位(II)の含有量q(II)は、構造単位(II)および(III)の合計含有量qに対して60〜75モル%が好ましく、より好ましくは65〜73モル%である。また、構造単位(IV)の含有量r(IV)は、構造単位(IV)および(V)の合計含有量rに対して60〜92モル%が好ましく、より好ましくは60〜70モル%、さらに好ましくは62〜68モル%である。
このような場合には、本発明の効果である、流動性や熱可塑性樹脂への添加効果が顕著に発現するため好ましい。
前記のように、構造単位(II)および(III)の合計含有量qと(IV)および(V)の合計含有量rは実質的に等モルであることが好ましいが、いずれかの成分を過剰に加えてもよい。
枝構造部分が、上記構造単位(I)、(II)、(VI)および(IV)から構成される場合には、上記構造単位(I)の含有量pは、p+q+rに対して30〜90モル%が好ましく、40〜80モル%がより好ましい。また、構造単位(VI)の含有量q(VI)は、(II)と(VI)の合計含有量qに対して70〜5モル%が好ましく、60〜8モル%がより好ましい。前記のように、構造単位(IV) の含有量rは、構造単位(II)および(VI)の合計含有量qと実質的に等モルであることが好ましいが、いずれかの成分を過剰に加えてもよい。
また、本発明の樹状ポリエステルの末端は、カルボキシル基、水酸基、アミノ基、またはそれらの誘導体が好ましい。水酸基の誘導体もしくは、カルボン酸の誘導体としては、メチルエステルなどのアルキルエステルやフェニルエステルやベンジルエステルなどの芳香族エステルが挙げられる。また、単官能エポキシ化合物、オキサゾリン化合物、酸無水物化合物などを用いて末端封鎖することも可能である。末端封鎖の方法としては、樹状ポリエステルを合成する際に、あらかじめ単官能性の有機化合物を添加する方法や、ある程度樹状ポリステルの骨格が形成された段階で単官能性の有機化合物を添加する方法などが挙げられる。
具体的には、水酸基末端やアセトキシ末端を封鎖する場合には、安息香酸、4−t−ブチル安息香酸、3−t−ブチル安息香酸、4−クロロ安息香酸、3−クロロ安息香酸、4−メチル安息香酸、3−メチル安息香酸、3,5−ジメチル安息香酸などを添加することで可能である。
また、カルボキシル基末端を封鎖する場合には、アセトキシベンゼン、1−アセトキシ−4−t−ブチルベンゼン、1−アセトキシ−3−t−ブチルベンゼン、1−アセトキシ−4−クロロベンゼン、1−アセトキシ−3−クロロベンゼン、1−アセトキシ−4−シアノベンゼンなどを添加することで可能である。
理論的には、上記末端封鎖に用いる有機化合物を、封鎖したい末端基に相当する量添加することで末端封鎖が可能である。封鎖したい末端基相当量に対して、末端封鎖に用いる有機化合物を、1.005倍当量以上用いることが好ましく、より好ましくは1.008倍当量以上である。また、末端封鎖に用いる有機化合物の添加量は1.5倍当量以下であることが好ましい。
末端封鎖に用いる有機化合物の添加量が少なすぎると、末端封鎖が充分ではない。一方、添加量が多すぎると、過剰な添加剤が、系中に残存して、反応速度を低下したり、ガスを発生したりするため好ましくない。
また、有機残基Dの含有量は、樹状ポリエステルを構成する全単量体の含有量に対して7.5モル%以上であり、10モル%以上がより好ましく、さらに好ましくは20モル%以上である。このような場合に、枝構造部分の連鎖長が、樹状ポリエステルが樹状の形態をとるのに適した長さとなるため好ましい。有機残基Dの含有量の上限としては、50モル%以下であり、45モル%以下が好ましく、40モル%以下がより好ましい。
また本発明の樹状ポリエステルは特性に影響が出ない範囲で、部分的に架橋構造を有していてもよい。
本発明において、樹状ポリエステルの製造方法は、特に制限されず、公知のポリエステルの重縮合法に準じて製造できる。前記R1で表される構造単位から選ばれる少なくとも1種の構造単位を含む単量体、R2で表される構造単位から選ばれる少なくとも1種の構造単位を含む単量体およびR3で表される構造単位から選ばれる少なくとも1種の構造単位を含む単量体、および、3官能性単量体を反応させる方法であって、該3官能性単量体の添加量(モル)が、樹状ポリエステルを構成する全単量体(モル)に対して7.5モル%以上として製造する方法が好ましい。3官能性単量体の添加量は、より好ましくは10モル%以上、さらに好ましくは20モル%以上である。
また、上記反応に際して、R1、R2およびR3で表される構造単位から選ばれる少なくとも1種の構造単位を含む単量体をアシル化した後、3官能性単量体を反応させる態様も好ましい。また、R1、R2およびR3で表される構造単位から選ばれる少なくとも1種の構造単位を含む単量体、および、3官能性単量体をアシル化した後、重合反応させる態様も好ましい。
前記構造単位(I)、(II)、(III)、(IV)および(V)とトリメシン酸残基から構成される樹状ポリエステルを製造する場合を例に挙げて、好ましい製造方法を説明する。
(1)p−アセトキシ安息香酸、4,4’−ジアセトキシビフェニル、ジアセトキシベンゼン、テレフタル酸およびイソフタル酸から脱酢酸縮重合反応によって液晶性ポリエステルオリゴマーを合成した後、トリメシン酸を加えて脱酢酸重合反応させて製造する方法。
(2)p−アセトキシ安息香酸、4,4’−ジアセトキシビフェニル、ジアセトキシベンゼン、テレフタル酸、イソフタル酸およびトリメシン酸から脱酢酸縮重合反応によって製造する方法。
(3)p−ヒドロキシ安息香酸、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンとテレフタル酸およびイソフタル酸に無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアシル化した後、脱酢酸重縮合反応によって液晶性ポリエステルオリゴマーを合成し、さらにトリメシン酸を加えて脱酢酸重合反応させて製造する方法。
(4)p−ヒドロキシ安息香酸、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンとテレフタル酸、イソフタル酸およびトリメシン酸に無水酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアシル化した後、脱酢酸重縮合反応によって製造する方法。
(5)p−ヒドロキシ安息香酸のフェニルエステル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、テレフタル酸ジフェニルエステルおよびイソフタル酸ジフェニルエステルから脱フェノール重縮合反応により液晶性ポリエステルオリゴマーを合成した後、トリメシン酸を加えて脱フェノール重縮合反応によって製造する方法。
(6)p−ヒドロキシ安息香酸のフェニルエステル、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、テレフタル酸ジフェニルエステル、イソフタル酸ジフェニルエステルおよびトリメシン酸のフェニルエステルから脱フェノール重縮合反応によって製造する方法。
(7)p−ヒドロキシ安息香酸、テレフタル酸、イソフタル酸、トリメシン酸にジフェニルカーボネートを反応させて、それぞれフェニルエステルとした後、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンを加え、脱フェノール重縮合反応によって製造する方法。
なかでも(1)〜(5)の製造方法が好ましく、(3)および(4)の方法がより好ましく、鎖長制御と立体規制の点から(3)の製造方法が最も好ましい。
(3)の製造方法において、無水酢酸の使用量は、鎖長制御の点からフェノール性水酸基の合計の0.95当量以上1.10当量以下であることが好ましく、1.00当量以上1.08当量以下であることがより好ましく、最も好ましくは1.02当量以上1.05当量以下である。無水酢酸量を制御すること、ジヒドロキシモノマーおよびジカルボン酸モノマーのいずれかを過剰に添加すること等により、末端基を制御することが可能である。
分子量を上げるためには、トリメシン酸のカルボン酸量に相当する分だけ、ハイドロキノンや4,4’−ジヒドロキシビフェニルなどのジヒドロキシモノマーを、ジカルボン酸モノマーに対して過剰に加え、全単量体におけるカルボン酸と水酸基当量を合わせることが好ましい。一方、カルボン酸を意図的に末端基に残す場合には、前記のようなジヒドロキシモノマーの過剰添加を行わないことが好ましい。さらに、水酸基を意図的に末端に残す場合には、ジヒドロキシモノマーをトリメシン酸のカルボン酸当量以上に過剰に添加し、かつ無水酢酸の使用量をフェノール性水酸基の1.00当量未満で行うことが好ましい。
これらの方法により、本発明の樹状ポリエステルには、種々の熱可塑性樹脂との反応性に富む末端基構造を選択的に設けることが可能である。ただし、マトリクスとなる熱可塑性樹脂によっては、過剰な反応性を抑制するために、単官能エポキシ化合物などを用いて末端を封鎖した方が分散状態を制御しやすい場合もある。
脱酢酸重縮合反応を行う場合には、樹状ポリエステルが溶融する温度で、場合によっては減圧下で反応させ、所定量の酢酸を留出させ、重縮合反応を完了させる溶融重合法が好ましい。例えば、所定量のp−ヒドロキシ安息香酸、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、テレフタル酸、イソフタル酸および無水酢酸を、攪拌翼および留出管を備え、下部に吐出口を備えた反応容器中に仕込む。混合物を、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら加熱して、水酸基をアセチル化させた後、200〜350℃まで昇温して脱酢酸重縮合反応を行い、酢酸を留出させる。酢酸が、理論留出量の50%まで留出した段階で、トリメシン酸を所定量加えて、さらに理論留出量の91%まで酢酸を留出させ、反応を完了させる。
アセチル化させる条件としては、反応温度は、130〜170℃の範囲が好ましく、より好ましくは135〜155℃の範囲である。反応時間は、0.5〜6時間が好ましく、より好ましくは1〜2時間である。
重縮合させる温度は、樹状ポリエステルが溶融する温度であり、好ましくは樹状ポリエステルの融点+10℃以上の温度である。具体的には、例えば、200〜350℃の範囲であり、240〜280℃が好ましい。重縮合させるときの雰囲気は、常圧窒素下でも問題ないが、減圧すると反応が早く進み、系内の残留酢酸が少なくなるため好ましい。減圧度は、0.1mmHg(13.3Pa)〜200mmHg(26600Pa)が好ましく、より好ましくは10mmHg(1330Pa)〜100mmHg(13300Pa)である。なお、アセチル化と重縮合は同一の反応容器で連続して行っても良いし、アセチル化と重縮合を異なる反応容器で行っても良い。
重縮合反応が完了した後、反応容器内を樹状ポリエステルが溶融する温度に保ち、例えば、0.01〜1.0kg/cm2(0.001〜0.1MPa)に加圧し、反応容器下部に設けられた吐出口より、樹状ポリエステルをストランド状に吐出する。吐出口には断続的に開閉する機構を設け、液滴状に吐出することも可能である。吐出した樹状ポリエステルは、空気中もしくは水中を通過して冷却された後、必要に応じて、カッティングもしくは粉砕される。
得られたペレット状、粒状または粉状の樹状ポリエステルは、さらに必要に応じて、熱乾燥や真空乾燥により水、酢酸などを除く。また、重合度の微調整、あるいは、さらに重合度を上げるために、固相重合をすることも可能である。固相重合は、例えば、上記により得られた樹状ポリエステルを、窒素気流下、または、減圧下、樹状ポリエステルの融点−5℃〜融点−50℃(例えば、200〜300℃)の温度範囲で1〜50時間加熱する方法が挙げられる。
樹状ポリエステルの重縮合反応は無触媒でも進行するが、酢酸第一錫、テトラブチルチタネート、酢酸カリウムおよび酢酸ナトリウム、三酸化アンチモン、金属マグネシウムなどの金属化合物を使用することもできる。
本発明で用いる樹状ポリエステルは、数平均分子量は1,000〜40,000であることが好ましく、より好ましくは1,000〜20,000、さらに好ましくは1,000〜10,000であり、最も好ましくは1,000〜5,000の範囲である。なお、この数平均分子量は、樹状ポリエステルが可溶な溶媒であるペンタフルオロフェノール/クロロホルム=35/65wt%を使用して濃度0.08%(wt/vol)に調整した試料を、GPC−LS(ゲル浸透クロマトグラフ−光散乱)法により絶対分子量として測定した値である。ここでの測定条件として、カラムはShodex K−G、Shodex K−806M×2本、Shodex K−802を用い、流速0.8mL/min、温度23℃、検出器は示差屈折計(RI)、多角度光散乱(MALS)とした。
また、本発明における樹状ポリエステルの溶融粘度は、0.01〜30Pa・sが好ましく、0.5〜20Pa・sがより好ましく、1〜10Pa・sが特に好ましい。なお、この溶融粘度は、樹状ポリエステルの液晶開始温度+10℃の条件で、ずり速度100/sの条件下で高化式フローテスターによって測定した値である。
こうして得られた樹状ポリエステルは、溶融液晶性を示し、流動性がよく、高弾性率を示すため、単独でも樹脂材料、コーティング剤などに用いられるが、本願発明では、長繊維強化樹脂ペレットに配合することで、特に繊維状充填剤への樹脂の含浸性や樹脂との濡れ性が向上するため、成形品中で繊維状充填剤が均一に分散し意図する機械強度、流動性、外観が得られやすくなるという効果を奏する。
本発明のペレットまたは混合ペレットにおける、熱可塑性樹脂(A)と樹状ポリエステル(B)の配合比率は、熱可塑性樹脂(A)と樹状ポリエステル(B)あわせて100重量部としたとき、熱可塑性樹脂(A)は80〜99.9重量部、好ましくは85〜99.5重量部、特に90〜99重量部で流動性、機械特性に優れるため好ましい。対する樹状ポリエステル(B)は0.1〜20重量部、好ましくは、0.5〜15重量部、より好ましくは1〜10重量部である。配合量が上記範囲において、本発明の効果が顕著に得られるために好ましい。
本発明では、熱可塑性樹脂(A)と樹状ポリエステル(B)の配合比率が上記の範囲となるように、長繊維強化樹脂ペレットを構成する熱可塑性樹脂(A)に樹状ポリエステル(B)を配合してもよい。また、樹状ポリエステル樹脂(B)を含むペレットと、長繊維強化樹脂ペレットの混合ペレットとして用いてもよい。
本発明では、熱可塑性樹脂(A)と樹状ポリエステル(B)の配合比率が上記の範囲となるように、長繊維強化樹脂ペレットを構成する熱可塑性樹脂(A)に樹状ポリエステル(B)を配合してもよい。また、樹状ポリエステル樹脂(B)を含むペレットと、長繊維強化樹脂ペレットの混合ペレットとして用いてもよい。
本発明で用いられる繊維状充填材(C)は、特に限定されるものでないが、繊維状の形状を有するいずれの充填材も使用することができる。具体的には、ガラス繊維、PAN系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、ワラステナイト、アルミナシリケートなどの繊維状、ウィスカー状充填材が挙げられる。上記繊維状充填材中、ガラス繊維、PAN系の炭素繊維が好ましい例として挙げられ、これらは1種または2種以上で使用される。特に好ましくはガラス繊維または炭素繊維である。本発明で用いられる繊維状充填剤は連続した強化繊維束(長繊維タイプ)が好ましく複合材料の強化材として成形品に高い機械的強度を付与するものである。またガラス繊維は弱アルカリ性のものが機械的強度の点で優れており好ましく使用できる。繊維状充填剤はエチレン/酢酸ビニル共重合体などの熱可塑性樹脂、エポキシ系、ウレタン系、アクリル系などの被覆あるいは収束剤で処理されていることが好ましく、エポキシ系が特に好ましい。またシラン系、チタネート系などのカップリング剤、その他表面処理剤で処理されていることが好ましく、エポキシシラン、アミノシラン系のカップリング剤が特に好ましい。
本発明における繊維状充填材の配合量は、熱可塑性樹脂(A)、樹状ポリエステル(B)からなる樹脂組成物100重量部に対し、5〜200重量部であり、好ましくは10〜180重量部、より好ましくは15〜150重量部である。配合量が5重量部未満の場合は、十分な剛性改良効果が得られず、200重量部を越えるときには本発明の特徴である成形時の良外観性が得られにくくなるため好ましくない。
本発明の長繊維強化樹脂ペレットには繊維状充填材(C)に加えて、非繊維状充填材を併用することもできる。非繊維状充填材としては、特に限定されるものでなく、板状、粉末状、粒状などのいずれの充填材も使用することができる。具体的には、タルク、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイトなどの珪酸塩、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化鉄などの金属化合物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの硫酸塩、ガラスビーズ、セラミックビ−ズ、窒化ホウ素、燐酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの水酸化物、ガラスフレーク、ガラス粉、ガラスバルーン、カーボンブラックおよびシリカ、黒鉛などの非繊維状充填材、およびモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイトなどのスメクタイト系粘土鉱物やバーミキュライト、ハロイサイト、カネマイト、ケニヤイト、燐酸ジルコニウム、燐酸チタニウムなどの各種粘土鉱物、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母、Li型四珪素フッ素雲母等の膨潤性雲母に代表される層状珪酸塩が挙げられる。層状珪酸塩は層間に存在する交換性陽イオンが有機オニウムイオンで交換された層状珪酸塩であってもよく、有機オニウムイオンとしてはアンモニウムイオンやホスホニウムイオン、スルホニウムイオンなどが挙げられ、上記の非繊維状充填材は2種以上を併用して使用することもできる。またこれら非繊維状充填材はシラン系、チタネート系などのカップリング剤、その他表面処理剤で処理されていることが好ましく、エポキシシラン、アミノシラン系のカップリング剤で処理されている場合が優れた機械的特性を発現できるため特に好ましい。これら非繊維状充填材の中で好ましくはガラスフレーク、ガラスビーズが好ましく用いられる。
本発明における非繊維状充填材の配合量は、熱可塑性樹脂(A)、樹状ポリエステル(B)からなる樹脂組成物100重量部に対し、5〜100重量部であり、好ましくは10〜80重量部、より好ましくは15〜60重量部である。配合量が5重量部未満の場合は、十分な機械的特性改良効果が得られず、100重量部を越えるときには本発明の特徴である成形時の良外観性が得られにくくなるため好ましくない。
本発明の長繊維強化樹脂ペレットは、繊維状充填剤(C)が樹脂組成物中において実質的にその全てがペレットと同じ長さで平行配列しており、かつその長さが5〜30mmである。この繊維長を有すると射出成形品にしたときの成形品中の繊維状充填剤(C)の繊維長を長く保持できるため、機械的強度の向上が可能となるばかりか、強度向上により従来よりも繊維添加量が低減可能となり、軽量化、良外観を付与できる。
本発明では、樹状ポリエステル(B)を配合した熱可塑性樹脂(A)で構成される長繊維強化樹脂ペレット、または、樹状ポリエステル(B)を含むペレットと長繊維強化樹脂ペレットの混合ペレットを溶融成形することで、繊維状充填材の折損を抑制することができるため、重量平均繊維長が長く、外観、寸法安定性に優れる長繊維強化樹脂成形品を得ることができる。
本発明のペレット又は混合ペレットを溶融成形することで、成形品中の繊維状充填剤(C)の重量平均繊維長は0.5〜2mmである長繊維強化樹脂成形品を得ることができる。通常市販されている例えば2軸押出機でコンパウンドされた繊維強化樹脂ペレット中の繊維長はたかだか0.2〜0.3mmでしかなく、この程度の繊維長では前述した特性を十分に発現することは出来ない。ここで、成形品中の重量平均繊維長は、得られたペレットまたは成形品が溶ける溶剤にて溶かした後、濾過を行い残さを得る方法、または得られたペレットまたは成形品を焼成し残さを得る方法のいずれかで得られた残さを、光学顕微鏡にて観察、1000本の長さを測定し、重量平均繊維長を計算して得られたものである。
本発明の長繊維強化樹脂ペレットの形態は、長繊維ペレットの形態をとるものであって、ここでいう長繊維ペレットとは、繊維状充填剤(C)がペレットの長手方向に平行に配列し、ペレット中の繊維状充填剤(C)の長さがペレットと同一であるペレットのことである。
特にペレット中の配置は限定されないが、少なくとも熱可塑性樹脂(A)および/または樹状ポリエステル(B)を含む樹脂組成物が繊維状充填剤(C)の周囲を被覆するように配置されてなるペレットであることが好ましい。このようなペレットを得る手段としては、炭素繊維の束を押出機の先端に取り付けた溶融樹脂が充満しているコーティングダイの中に通しながら、バーでしごく、拡幅・集束を繰り返す、圧力や振動を加えるなどの操作で炭素繊維の束に樹脂を含浸させる方法や、電線被覆用のコーティグダイの中に通し、熱可塑性樹脂を押出被覆させ電線状のガットを得る方法などがある。このガットをストランドカッターで所定の長さにカットすることで、繊維状充填剤がペレットの長さと実質的に同一の長繊維強化樹脂ペレットが得られる。
本発明の長繊維強化樹脂ペレットの形状は、特に限定されるものではないが、直径1〜5mm、ペレット長5〜30mmの円柱形状であることが好ましい。直径がこれより小さすぎると製造が困難となり、大きすぎると射出成形時に成形機へのカミコミが難しく供給が困難になる場合がある。ペレット長は実質的に炭素繊維長であるため、短すぎると本発明の特性が十分に得られない場合があり、長すぎると射出成形機への供給が困難になるため好ましくない。
本発明の長繊維強化樹脂ペレットには本発明の効果を損なわない範囲において、以下の樹脂を添加することもできる。例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリフェニレンオキシド、ポリスチレン、ポリスルホン、四フッ化ポリエチレン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルケトン、ポリチオエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミドエラストマ、ポリエステルエラストマ、ポリアルキレンオキサイド、あるいはカルボキシル基等を含有するオレフィン系共重合体等の樹脂等を挙げることができるが、好ましくはポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、中でも樹状ポリエステルとの相溶性に優れるポリアミド樹脂を含む事が最も効果的である。
さらに本発明の長繊維強化樹脂ペレットには本発明の効果を損なわない範囲において、ポリアルキレンオキサイドオリゴマ系化合物、チオエーテル系化合物、エステル系化合物、有機リン化合物などの可塑剤、タルク、カオリン、有機リン化合物、ポリエーテルエーテルケトンなどの結晶核剤、ポリオレフィン系化合物、シリコーン系化合物、長鎖脂肪族エステル系化合物、長鎖脂肪族アミド系化合物、などの離型剤、防食剤、着色防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸アルミニウムなどの滑剤、難燃剤、紫外線防止剤、着色剤、発泡剤などの通常の添加剤を添加することができる。
また以下の官能基を有する有機化合物と(B)樹状ポリエステルとを相互作用させることで、特にオレフィン系樹脂間の相互作用を減少させ流動性向上を発現可能となるため好ましく用いることができる。ここで官能基を有する有機化合物とは、カルボキシ基、ヒドロキシ基、エポキシ基、アミノ基、オキサゾリン基、アルコキシ基、イソシアネート基、カルボジイミド基から選ばれた少なくとも一種の官能基を含有する化合物を用いることができる。
上記カルボキシ基を有する有機化合物としては特に制限はないが、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、マレイン酸モノエチルエステル、無水マレイン酸、フタル酸およびイタコン酸などのカルボキシ基または無水カルボキシ基を有するビニル系単量体を共重合する方法、γ,γ’−アゾビス(γ−シアノバレイン酸)、α,α’−アゾビス(α−シアノエチル)−p−安息香酸および過酸化サクシン酸などのカルボキシ基を有する重合開始剤および/またはチオグリコール酸、α−メルカプトプロピオン酸、β−メルカプトプロピオン酸、α−メルカプト−イソ酪酸および2,3または4−メルカプト安息香酸などのカルボキシ基を有する重合度調節剤を用いて共重合する方法、およびメタクリル酸メチルやアクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル酸エステル系単量体と所定のビニル系単量体との共重合体をアルカリによってケン化する方法などを用いることができる。
上記ヒドロキシ基を有する有機化合物としては特に制限はないが、例えばアクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル、アクリル酸3−ヒドロキシプロピル、メタクリル酸3−ヒドロキシプロピル、アクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、メタクリル酸2,3,4,5,6−ペンタヒドロキシヘキシル、アクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、メタクリル酸2,3,4,5−テトラヒドロキシペンチル、3−ヒドロキシ−1−プロペン、4−ヒドロキシ−1−ブテン、シス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、トランス−4−ヒドロキシ−2−ブテン、3−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロペン、シス−5−ヒドロキシ−2−ペンテン、トランス−5−ヒドロキシ−2−ペンテン、4,4−ジヒドロキシ−2−ブテンなどのヒドロキシル基を有するビニル系単量体を共重合する方法、ポリエチレングリコールなどヒドロキシ基を有する化合物を用いることができる。
上記エポキシ基を有する有機化合物としては特に制限はないが、例えばアクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、エタクリル酸グリシジル、イタコン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテルおよびp−グリシジルスチレンなどのエポキシ基を有する単量体を共重合する方法、エポキシ樹脂などを用いることができる。なかでもアルキル基で置換されているグリシジルエーテルなどは樹状ポリエステルとの反応性に優れるため、効果的に分散性が向上できるため好ましく用いることができる。
上記アミノ基を有する有機化合物としては特に制限はないが、例えばアクリルアミド、メタクリルアミド、N−メチルアクリルアミド、ブトキシメチルアクリルアミド、N−プロピルメタクリルアミド、アクリル酸アミノエチル、アクリル酸プロピルアミノエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸エチルアミノプロピル、メタクリル酸フェニルアミノエチル、メタクリル酸シクロヘキシルアミノエチル、N−ビニルジエチルアミン、N−アセチルビニルアミン、アリルアミン、メタアリルアミン、N−メチルアリルアミン、p−アミノスチレンなどのアミノ基およびその誘導体を有する単量体を共重合する方法などを用いることができる。
上記オキサゾリン基を有する有機化合物としては特に制限はないが、例えば2−イソプロペニル−オキサゾリン、2−ビニル−オキサゾリン、2−アクロイル−オキサゾリンおよび2−スチリル−オキサゾリンなどのオキサゾリン基を有する単量体を共重合する方法などを用いることができる。
上記アルコキシ基、イソシアネート基、カルボジイミド基を有する有機化合物としては特に制限はなく、上記同様各種官能基を有する単量体を共重合する方法や官能基を有する単量体により修飾された有機化合物を用いることができる。 本発明の有機化合物の添加量は(A)成分と(B)成分の合計100重量部に対して、0.1〜15重量部の範囲が好ましく、さらに好ましくは0.5〜10重量部の範囲であり、特に好ましい範囲としては1〜5重量部の範囲にある場合である。添加量を0.1重量部以上使用することで、樹状ポリエステルの分散性向上効果を発揮することができ、流動性向上やウェルド強度改善、さらには線膨張率の抑制が可能となる。また添加量を15重量部以下とすることで、樹脂組成物の滞留安定性を維持することができるため好ましい。
かくして得られる本発明の長繊維強化樹脂ペレットは、長繊維強化樹脂の機械的強度、流動性、外観等を著しく向上した長繊維強化樹脂成形品、およびそれに使用する長繊維強化樹脂ペレットが得られる。
本発明の長繊維強化樹脂ペレットは、通常の射出成形、押出成形、プレス成形などの溶融成形方法によって、優れた表面外観(光沢)および機械的性質を有する成形品、シート、パイプ、フィルムなどに加工することが可能である。なかでも自動車部品等の大型射出成形品、厚み0.1〜2.0mmの薄肉部を有する成形品、微細パターン成形、寸法安定性の必要な成形品などに有用である。
本発明において、上記各種成形品は、自動車部品、電気・電子部品、建築部材、各種容器、日用品、生活雑貨および衛生用品など各種用途に利用することができる。具体的な用途としては、エアフローメーター、エアポンプ、サーモスタットハウジング、エンジンマウント、イグニッションホビン、イグニッションケース、クラッチボビン、センサーハウジング、アイドルスピードコントロールバルブ、バキュームスイッチングバルブ、ECUハウジング、バキュームポンプケース、インヒビタースイッチ、回転センサー、加速度センサー、ディストリビューターキャップ、コイルベース、ABS用アクチュエーターケース、ラジエータタンクのトップ及びボトム、クーリングファン、ファンシュラウド、エンジンカバー、シリンダーヘッドカバー、オイルキャップ、オイルパン、オイルフィルター、フューエルキャップ、フューエルストレーナー、ディストリビューターキャップ、ベーパーキャニスターハウジング、エアクリーナーハウジング、タイミングベルトカバー、ブレーキブースター部品、各種ケース、各種チューブ、各種タンク、各種ホース、各種クリップ、各種バルブ、各種パイプなどの自動車用アンダーフード部品、トルクコントロールレバー、安全ベルト部品、レジスターブレード、ウオッシャーレバー、ウインドレギュレーターハンドル、ウインドレギュレーターハンドルのノブ、パッシングライトレバー、サンバイザーブラケット、各種モーターハウジングなどの自動車用内装部品、ルーフレール、フェンダー、ガーニッシュ、バンパー、ドアミラーステー、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、グリルエプロンカバーフレーム、ランプリフレクター、ランプベゼル、ドアハンドルなどの自動車用外装部品、ワイヤーハーネスコネクター、SMJコネクター、PCBコネクター、ドアグロメットコネクターなど各種自動車用コネクター、リレーケース、コイルボビン、光ピックアップシャーシ、モーターケース、ノートパソコンハウジングおよび内部部品、CRTディスプレーハウジングおよび内部部品、プリンターハウジングおよび内部部品、携帯電話、モバイルパソコン、ハンドヘルド型モバイルなどの携帯端末ハウジングおよび内部部品、記録媒体(CD、DVD、PD、FDDなど)ドライブのハウジングおよび内部部品、コピー機のハウジングおよび内部部品、ファクシミリのハウジングおよび内部部品、パラボラアンテナなどに代表される電気・電子部品を挙げることができる。更に、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、ビデオカメラ、プロジェクターなどの映像機器部品、レーザーディスク(登録商標)、コンパクトディスク(CD)、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−R、DVD−RW、DVD−RAM、ブルーレイディスクなどの光記録媒体の基板、照明部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品、などに代表される家庭・事務電気製品部品を挙げることができる。また電子楽器、家庭用ゲーム機、携帯型ゲーム機などのハウジングや内部部品、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEPランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドホン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、トランス部材、コイルボビンなどの電気・電子部品、サッシ戸車、ブラインドカーテンパーツ、配管ジョイント、カーテンライナー、ブラインド部品、ガスメーター部品、水道メーター部品、湯沸かし器部品、ルーフパネル、断熱壁、アジャスター、プラ束、天井釣り具、階段、ドアー、床などの建築部材、釣り糸、漁網、海藻養殖網、釣り餌袋などの水産関連部材、植生ネット、植生マット、防草袋、防草ネット、養生シート、法面保護シート、飛灰押さえシート、ドレーンシート、保水シート、汚泥・ヘドロ脱水袋、コンクリート型枠などの土木関連部材、歯車、ねじ、バネ、軸受、レバー、キーステム、カム、ラチェット、ローラー、給水部品、玩具部品、結束バンド、クリップ、ファン、テグス、パイプ、洗浄用治具、モーター部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などの機械部品、マルチフィルム、トンネル用フィルム、防鳥シート、植生保護用不織布、育苗用ポット、植生杭、種紐テープ、発芽シート、ハウス内張シート、農ビの止め具、緩効性肥料、防根シート、園芸ネット、防虫ネット、幼齢木ネット、プリントラミネート、肥料袋、試料袋、土嚢、獣害防止ネット、誘因紐、防風網などの農業部材、紙おむつ、生理用品包材、綿棒、おしぼり、便座ふきなどの衛生用品、医療用不織布(縫合部補強材、癒着防止膜、人工器官補修材)、創傷被服材、キズテープ包帯、貼符材基布、手術用縫合糸、骨折補強材、医療用フィルムなどの医療用品、カレンダー、文具、衣料、食品等の包装用フィルム、トレイ、ブリスター、ナイフ、フォーク、スプーン、チューブ、プラスチック缶、パウチ、コンテナー、タンク、カゴなどの容器・食器類、ホットフィル容器類、電子レンジ調理用容器類化粧品容器、ラップ、発泡緩衝剤、紙ラミ、シャンプーボトル、飲料用ボトル、カップ、キャンディ包装、シュリンクラベル、蓋材料、窓付き封筒、果物かご、手切れテープ、イージーピール包装、卵パック、HDD用包装、コンポスト袋、記録メディア包装、ショッピングバック、電気・電子部品等のラッピングフィルムなどの容器・包装、天然繊維複合、ポロシャツ、Tシャツ、インナー、ユニホーム、セーター、靴下、ネクタイなどの各種衣料、カーテン、イス貼り地、カーペット、テーブルクロス、布団地、壁紙、ふろしきなどのインテリア用品、キャリアーテープ、プリントラミ、感熱孔版印刷用フィルム、離型フィルム、多孔性フィルム、コンテナバッグ、クレジットカード、キャッシュカード、IDカード、ICカード、紙、皮革、不織布等のホットメルトバインダー、磁性体、硫化亜鉛、電極材料等粉体のバインダー、光学素子、導電性エンボステープ、ICトレイ、ゴルフティー、ゴミ袋、レジ袋、各種ネット、歯ブラシ、文房具、水切りネット、ボディタオル、ハンドタオル、お茶パック、排水溝フィルター、クリアファイル、コート剤、接着剤、カバン、イス、テーブル、クーラーボックス、クマデ、ホースリール、プランター、ホースノズル、食卓、机の表面、家具パネル、台所キャビネット、ペンキャップ、ガスライターなどとして有用であり、自動車用内装部品、自動車用外装部品、自動車用コネクターとして特に有用である。
本発明の長繊維強化樹脂ペレットおよび成形品は、リサイクルすることが可能である。例えば、樹脂組成物およびそれからなる成形品を粉砕し、好ましくは粉末状とした後、必要に応じて添加剤を配合して使用することができるが、繊維の折損がおきている場合、得られる樹脂組成物は、本発明の成形品と同様の機械強度を発現することは困難である。
本発明をさらに具体的に説明するために、以下、実施例および比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。実施例中の部数および%はそれぞれ重量部および重量%を示す。
(A)熱可塑性樹脂
<A−1>ナイロン6樹脂“アミランCM1001”(東レ株式会社製)を使用した。
<A−2>ポリプロピレンブロックコポリマー“J707G”(株式会社プライムポリマー製)を使用した。
<A−3>ポリカーボネート樹脂“タフロンA1900”(出光興産株式会社製)を使用した。
<A−4>ポリフェニレンスルフィド樹脂“トレリナM2888”(東レ株式会社製)を使用した。
<A−1>ナイロン6樹脂“アミランCM1001”(東レ株式会社製)を使用した。
<A−2>ポリプロピレンブロックコポリマー“J707G”(株式会社プライムポリマー製)を使用した。
<A−3>ポリカーボネート樹脂“タフロンA1900”(出光興産株式会社製)を使用した。
<A−4>ポリフェニレンスルフィド樹脂“トレリナM2888”(東レ株式会社製)を使用した。
(B)樹状ポリエステル
<B−1>攪拌翼および留出管を備えた500mLの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸66.3g(0.48モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル8.38g(0.045モル)、テレフタル酸7.48g(0.045モル)、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレ−ト14.41g(0.075モル)および無水酢酸62.48g(フェノール性水酸基合計の1.00当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら145℃で2時間反応させた。その後、トリメシン酸31.52g(0.15モル)を加えて260℃まで昇温し、3時間攪拌し、理論留出量の91%の酢酸が留出したところで加熱および攪拌を停止し、内容物を冷水中に吐出した。
<B−1>攪拌翼および留出管を備えた500mLの反応容器にp−ヒドロキシ安息香酸66.3g(0.48モル)、4,4’−ジヒドロキシビフェニル8.38g(0.045モル)、テレフタル酸7.48g(0.045モル)、固有粘度が約0.6dl/gのポリエチレンテレフタレ−ト14.41g(0.075モル)および無水酢酸62.48g(フェノール性水酸基合計の1.00当量)を仕込み、窒素ガス雰囲気下で攪拌しながら145℃で2時間反応させた。その後、トリメシン酸31.52g(0.15モル)を加えて260℃まで昇温し、3時間攪拌し、理論留出量の91%の酢酸が留出したところで加熱および攪拌を停止し、内容物を冷水中に吐出した。
得られた樹状ポリエステルについて、核磁気共鳴スペクトル分析を行った結果、トリメシン酸残基に対して、p−オキシベンゾエート単位の含量pが2.66、4,4’−ジオキシビフェニル単位とエチレンオキシド単位の含量qが0.66、テレフタレート単位の含量rが0.66であり、p+q+r=4であった。末端はカルボン酸とアセチル基が64:36の比率で存在した。
また、分岐度は、トリメシン酸の三つの官能基で3つとも反応しているものの割合を算出した。
核磁気共鳴スペクトルは、サンプルをペンタフルオロフェノール50%:重クロロホルム50%混合溶媒に溶解し、40℃で測定し、プロトン核の核磁気共鳴スペクトル分析を行った。p−オキシベンゾエート単位由来の7.44ppmおよび8.16ppmのピーク、4,4’−ジオキシビフェニル単位由来の7.04ppm、7.70ppmのピーク、テレフタレート単位由来の8.31ppmのピーク、エチレンオキシド単位由来の4.75ppmのピーク、トリメシン酸由来の9.25ppmのピークが検出された。各ピークの面積強度比から、各構造単位の含有比率を算出し、小数点3桁は四捨五入した。枝構造部分P、QおよびR由来のピーク面積強度と、有機残基D由来のピーク面積強度との比から、含量p、q、rおよび分岐点Dの含有量を算出した。また、トリメシン酸の3つのプロトンのピークシフトからカルボン酸の反応の有無を判定し、分岐度を算出したところ、0.68(小数点3桁を四捨五入)であった。
得られた樹状ポリエステルの融点Tmは185℃、液晶開始温度は159℃で、数平均分子量2300であった。なお、融点(Tm)は、樹状ポリエステルを、示差熱量測定において、室温から20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm1)の観測後、Tm1+20℃の温度で5分間保持し、20℃/分の降温条件で室温まで一旦冷却し、再度20℃/分の昇温条件で測定した際に観測される吸熱ピーク温度(Tm)とした。液晶開始温度は、剪断応力加熱装置(CSS−450)により、剪断速度100(1/秒)、昇温速度5.0℃/分、対物レンズ60倍において測定し、視野全体が流動開始する温度とした。
また、分子量は樹状ポリエステルが可溶な溶媒であるペンタフルオロフェノール/クロロホルム=35/65wt%を使用して濃度0.08%(wt/vol)に調整した試料を、GPC−LS(ゲル浸透クロマトグラフ−光散乱)法により測定し、数平均分子量を求めた。ここでの測定条件として、カラムはShodex K−G、Shodex K−806M×2本、Shodex K−802を用い、流速0.8mL/min、温度23℃、検出器は示差屈折計(RI)、多角度光散乱(MALS)とした。
(C)繊維状充填剤
<C−1>炭素繊維“トレカT700SC−12K−50C”(東レ株式会社製)を使用した。
<C−2>ガラス繊維“AR2500H−200”(日本電気硝子株式会社製)を使用した。
<C−1>炭素繊維“トレカT700SC−12K−50C”(東レ株式会社製)を使用した。
<C−2>ガラス繊維“AR2500H−200”(日本電気硝子株式会社製)を使用した。
(D)有機化合物
<D−1>アルキルモノグリシジルエーテル“YED111N”(三菱化学株式会社製)を使用した。
<D−1>アルキルモノグリシジルエーテル“YED111N”(三菱化学株式会社製)を使用した。
[実施例1〜19、比較例1〜12]
表1、2記載の実施例、比較例(比較例11、12除く)の組成からなる原料について、繊維状充填剤(C)を直径40mmの短軸押出機の先端に設置された電線被覆法用のコーティングダイ中に通し、押出機からダイ中に表中に示す温度で溶融させた熱可塑性樹脂(A)を吐出させて、繊維状充填剤(C)の周囲を被覆するように熱可塑性樹脂(A)を連続的に配置した後、ストランドを水中にて急冷し、ストランドカッターにより長さ7mm長(比較例10は4mm)にカットし、長繊維強化樹脂ペレットを製造した。
表2記載の比較例11、12の組成からなる原料は、熱可塑性樹脂(A)と樹状ポリエステル(B)を表中に示す温度に設定した2軸スクリュー押出機(日本製鋼所製TEX30α)に供給後、繊維状充填剤(C)はサイドフィードを用いて同組成中へ導入し、ストランドを水中にて急冷、ストランドカッターにより長さ3.5mm長にカットしペレットを製造した。このとき比較例11はスクリュー回転数100rpm、比較例12はスクリュー回転数400rpmとすることで、フィラーへの剪断力を変えて繊維の折損をコントロールした。
表1、2記載の実施例、比較例(比較例11、12除く)の組成からなる原料について、繊維状充填剤(C)を直径40mmの短軸押出機の先端に設置された電線被覆法用のコーティングダイ中に通し、押出機からダイ中に表中に示す温度で溶融させた熱可塑性樹脂(A)を吐出させて、繊維状充填剤(C)の周囲を被覆するように熱可塑性樹脂(A)を連続的に配置した後、ストランドを水中にて急冷し、ストランドカッターにより長さ7mm長(比較例10は4mm)にカットし、長繊維強化樹脂ペレットを製造した。
表2記載の比較例11、12の組成からなる原料は、熱可塑性樹脂(A)と樹状ポリエステル(B)を表中に示す温度に設定した2軸スクリュー押出機(日本製鋼所製TEX30α)に供給後、繊維状充填剤(C)はサイドフィードを用いて同組成中へ導入し、ストランドを水中にて急冷、ストランドカッターにより長さ3.5mm長にカットしペレットを製造した。このとき比較例11はスクリュー回転数100rpm、比較例12はスクリュー回転数400rpmとすることで、フィラーへの剪断力を変えて繊維の折損をコントロールした。
上記で得られたペレット状のポリマーを80℃で一昼夜真空乾燥し、表中の条件で射出成形機(住友重機械社製SG75H−MIV)を使用し、射出速度100mm/sec、射出圧を下限圧+1MPaでそれぞれの試験片を成形し、次の条件で物性を測定した。
[繊維長]:得られたペレットまたは成形品(耐熱性試験用試験片の中央部)をルツボに任意の量を入れ、500℃の電気炉で1時間焼成を行い、その残さを光学顕微鏡にて20〜100倍の倍率で観察しながら、1000本の長さを測定し重量平均繊維長を求めた。
[比重]:ASTM D792に基づき、得られた試験片の比重測定を行った。
[耐衝撃性]:ISO 179に従い23℃でシャルピー衝撃強さ(ノッチ付き)を評価した。
[曲げ強さ]:ISO 178に従い曲げ強度を評価した。
[曲げ弾性率]:ISO 178に従い曲げ弾性率を評価した。
[耐熱性]:ISO 75(荷重:1.80MPa)に従い耐熱性を評価した。
[寸法安定性]:80mm×80mm×3mm厚みの試験片について、流れ方向、直角方向の各3点をノギスで計測し、その平均値から成形収縮率を求めた。
[スパイラルフロー長]:幅10mmm、2mmtの金型を用い、表中に示す温度条件、射出速度100mm/sec、射出圧力80MPaで成形した際の流動長を測定した。流動長は20ショットの平均の値とする。
[表面光沢]:80mm×80mm×3mm厚みの試験片中央部の表面光沢をデジタル変角光沢計(スガ試験機(株)製「UGV−5D」)を用いて、入射角60度で測定した。3回測定した平均の値とする。
実施例1〜8、比較例1〜7より、本発明のとおり各種熱可塑性樹脂(A)、樹状ポリエステル(B)、繊維状充填剤(C)からなる長繊維強化樹脂ペレットを成形してなる成形品は、樹状ポリエステル(B)未添加品に対して、繊維の折損が抑制されるため機械的強度が大幅に向上するばかりか、流動性に関しても向上するため表面外観に優れる(フィラー浮きが少なく、金型転写性が良い)。
次に実施例9〜12より、繊維状充填剤(C)量を変更した場合や樹状ポリエステル(B)量を変更した場合でも、本願発明の範囲であれば良好な機械的強度、流動性、および外観のバランスに優れる成形品が得られることが分かる。一方、比較例8、9より樹状ポリエステル(B)の配合量が本願発明の範囲から外れた場合には、所望の特性を得ることが困難となる。また比較例10〜12に記載の通り、本願発明の繊維長から外れるペレットを用いた場合にも所望の特性を得ることができない。
次に表3記載の組成からなる原料を表中の温度に設定した2軸スクリュー押出機(日本製鋼所製TEX30α)に供給しペレット状の樹状ポリエステル高濃度マスターを製造した。
続いて表4記載の実施例の組成からなる原料(熱可塑性樹脂(A)と繊維状充填剤(C))を表中に示す温度に設定した直径40mmの短軸押出機を用いて、上記同様に電線被覆した長繊維強化樹脂ペレットと、前記の樹状ポリエステル高濃度マスターペレットを成形時に配合し、表中の条件で射出成形機(住友重機械社製SG75H−MIV)を使用し、射出速度100mm/sec、射出圧を下限圧+1MPaでそれぞれの試験片を成形し、前記と同様条件で物性を測定した。
実施例13〜19より、各種熱可塑性樹脂(A)、繊維状充填剤(C)からなる長繊維強化樹脂ペレットと樹状ポリエステル(B)を含むマスターペレットを成形してなる成形品は、表1と同様に、繊維の折損が抑制されるため機械的強度が大幅に向上するばかりか、流動性に関しても向上するため表面外観に優れる。
本発明の長繊維強化樹脂成形品、およびそれに使用する長繊維強化樹脂ペレットは、電気・電子部品、自動車部品、機械機構部品、OA機器、家電機器などのハウジングおよびそれらの部品類、雑貨など種々の用途に用いることができる。
Claims (7)
- 熱可塑性樹脂(A)80〜99.9重量部、樹状ポリエステル(B)0.1〜20重量部((A)+(B)=100重量部)を配合してなる樹脂組成物100重量部に対し、繊維状充填剤(C)5〜200重量部を配合してなる長繊維強化樹脂組成物であり、繊維状充填剤(C)が樹脂組成物中において実質的にその全てがペレットと同じ長さで平行配列しており、かつその長さが5〜30mmである長繊維強化樹脂ペレット。
- 熱可塑性樹脂(A)100重量部に対して、繊維状充填剤(C)5〜200重量部を配合してなる長繊維強化樹脂組成物であり、繊維状充填剤(C)が熱可塑性樹脂(A)中において実質的にその全てがペレットと同じ長さで平行配列しており、かつその長さが5〜30mmである長繊維強化樹脂ペレットと、樹状ポリエステル(B)を含む樹脂ペレットの混合ペレット。
- 前記樹状ポリエステル(B)が、芳香族オキシカルボニル単位(P)、芳香族および/または脂肪族ジオキシ単位(Q)、芳香族ジカルボニル単位(R)、および3官能以上の有機残基(D)とを含み、かつ、(P)、(Q)、(R)、(D)はそれぞれ下式(1)および(2)で表される構造単位から選ばれる少なくとも1種の構造単位であり、(D)の含有量が樹状ポリエステルを構成する全単量体に対して7.5〜50モル%の範囲にある溶融液晶性を示す樹状ポリエステル樹脂であることを特徴とする請求項1または2に記載のペレット。
- 前記樹状ポリエステル樹脂(B)が、3官能以上の有機残基(D)の含有量dを1モルとした場合に(P)、(Q)および(R)それぞれの含有量p、qおよびrがp+q+r=1〜10モルの範囲にあることを特徴とする請求項3に記載のペレット。
- 前記熱可塑性樹脂(A)が、ポリアミド、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)、ポリフェニレンスルフィドから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のペレット。
- 請求項1〜5のいずれかに記載のペレットを溶融成形してなる長繊維強化樹脂成形品。
- 成形品中の繊維状充填剤の重量平均繊維長が0.5〜2mmである請求項6に記載の長繊維強化樹脂成形品。
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