JP2018044043A - ポリアミド樹脂組成物およびその成形品 - Google Patents

ポリアミド樹脂組成物およびその成形品 Download PDF

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健 須藤
憲一 歌崎
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Abstract

【課題】本発明は、機械的特性、成形加工時の流動性、溶融滞留時の熱安定性および耐変色性に優れたポリアミド樹脂組成物およびそれを用いた成形品を提供する。【解決手段】本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)およびリン系化合物(B)を含有するポリアミド樹脂組成物であって、ポリアミド樹脂(A)は末端変性ポリアミド樹脂(a)を含有し、当該末端変性ポリアミド樹脂(a)が、ポリマーの主鎖を構成する繰り返し構造単位とは異なる構造単位から構成される構造(末端構造)をポリマーの末端に有する樹脂であり、ポリアミド樹脂(A)の含有量とリン系化合物(B)の含有量の合計を100質量部としたときのリン原子(b)の含有量が0.001質量部以上、1.000質量部以下である、ポリアミド樹脂組成物である。【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリアミド樹脂組成物に特定の末端変性ポリアミド樹脂および特定のリン系化合物を用いることにより、溶融流動性、溶融滞留時の熱安定性、耐酸化劣化性、成形加工性および成形品外観に優れたポリアミド樹脂組成物およびそれを用いた成形品に関するものである。
ポリアミド樹脂は、優れた機械特性および熱特性などの特性を有するため、繊維、各種容器、フィルム、電気・電子機器部品、自動車部品および機械部品など様々な成形品の材料として幅広く使用されている。
近年では、成形品の小型化、複雑化、薄肉化および軽量化に対する要求が高まっており、成形加工性に優れ、かつ、機械特性に優れた材料開発が求められている。また、成形加工温度の低下や成形サイクルの短縮の観点から、環境負荷低減やエネルギーコスト削減にも寄与する成形加工性の向上が求められている。一般的に、ポリアミド樹脂の分子量が増大するにしたがって、ポリアミド樹脂の機械特性も向上することが知られているが、同時にポリアミド樹脂の溶融流動性も低下するため、成形加工性が低下してしまうという側面があった。成形加工温度を高くすることにより溶融流動性を改善することはできるものの、成形加工時に酸化劣化が生じ、成形品が変色するなどの課題があった。また、成形加工時の酸化劣化を生じた成形品は、200℃以下の低温においても酸化劣化の影響をより受けやすく、成形品が変色しやすくというなる課題があった。
ポリアミド樹脂の酸化劣化を抑制し耐変色性を向上させる方法としては、これまでに、例えば、ポリアミド樹脂と、リン系化合物とを含有してなるポリアミド樹脂組成物(特許文献1、2参照。)が提案されている。
特開2001−81315号公報(特許請求の範囲) 特開2009−97011号公報(特許請求の範囲)
特許文献1や2にて提案される技術は、耐変色性を改善するものの、リン系化合物を添加することによって、溶融滞留時に溶融粘度が増加する、という新たな課題が発生する。
そこで本発明の目的は、機械的特性、成形加工時の流動性、溶融滞留時の安定性、ならびに耐変色性等に優れたポリアミド樹脂組成物およびそれを用いた成形品を提供することにある。
本発明者らは、機械的特性、成形加工時の流動性、溶融滞留時の安定性および酸化劣化による耐変色性の両立を達成すべく検討を重ねた結果、ポリアミド樹脂の末端に特定の構造を特定量含有する末端変性ポリアミド樹脂を含有する樹脂組成物であって、当該樹脂組成物がさらに特定のリン系化合物を特定量含有することにより、上記した課題を解決できることを見出し、本発明に達した。
本発明は、上記の課題を解決せんとするものであって、本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)およびリン系化合物(B)を含有するポリアミド樹脂組成物であって、
ポリアミド樹脂(A)は末端変性ポリアミド樹脂(a)を含有し、
当該末端変性ポリアミド樹脂(a)が、ポリマーの主鎖を構成する繰り返し構造単位とは異なる構造単位から構成される構造(末端構造)をポリマーの末端に有する樹脂であり、
ポリアミド樹脂(A)の含有量とリン系化合物(B)の含有量の合計を100質量部としたときのリン原子(b)の含有量が0.001質量部以上、1.000質量部以下である、ポリアミド樹脂組成物である。
本発明のポリアミド樹脂組成物の好ましい態様によれば、前記末端変性ポリアミド樹脂(a)が下記一般式(I)で表される末端構造を有するポリアミド樹脂を含有し、
ポリアミド樹脂(A)とリン系化合物(B)の合計含有量に対する、下記一般式(I)で表される末端構造の含有率が1質量%以上、20質量%以下であることである。
−X−(R−O)−R (I)
(上記一般式(I)中、mは2〜100の範囲を表す。Rは炭素数2〜10の2価の炭化水素基を表し、Rは炭素数1〜30の1価の炭化水素基を表す。−X−は−NH−、−N(CH)−または−(C=O)−を表す。一般式(I)中に含まれるm個のRの構造はそれぞれ同じでも異なってもよい)。
本発明のポリアミド樹脂組成物の好ましい態様によれば、前記末端変性ポリアミド樹脂(a)が、さらに下記一般式(II)で表される末端構造を有するポリアミド樹脂を含有し
ポリアミド樹脂(A)とリン系化合物(B)の合計含有量に対する、下記一般式(II)で表される末端構造の含有率が0.1質量%以上、5.0質量%以下であることである。
−Y−R (II)
(上記一般式(II)中、Rは炭素数1〜30の1価の炭化水素基を表す。前記一般式(I)におけるXが−NH−または−N(CH)−の場合、上記一般式(II)における−Y−は−(C=O)−を表し、前記一般式(I)におけるXが−(C=O)−の場合、上記一般式(II)におけるYは−NH−または−N(CH)−を表す)。
本発明のポリアミド樹脂組成物の好ましい態様によれば、前記リン系化合物(B)が、亜リン酸、次亜リン酸およびそれらの金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1つであることである。
本発明のポリアミド樹脂組成物の好ましい態様によれば、前記末端変性ポリアミド樹脂(a)が前記一般式(I)で表される末端構造を有する末端変性ポリアミド樹脂と前記一般式(II)で表される末端構造を有する末端変性ポリアミド樹脂を含有し、
ポリアミド樹脂(A)1t中に含まれる、前記一般式(I)で表される末端構造の含有量[mol/t]と前記一般式(II)で表される末端構造の含有量[mol/t]の合計が60〜250[mol/t]であり、かつ
前記一般式(II)で表される末端構造の含有量[mol/t]に対する前記一般式(I)で表される末端構造の含有量[mol/t]の比((I)/(II))が0.5〜2.5であることである。
本発明のポリアミド樹脂組成物の好ましい態様によれば、
前記ポリアミド樹脂(A)が、アミノ末端基を有するポリアミド樹脂と、カルボキシル末端基を有するポリアミド樹脂を含有し、
ポリアミド樹脂(A)1t中に含まれる、アミノ末端基の含有量とカルボキシル末端基の合計が50〜150[mol/t]であり、
カルボキシル末端基の含有量[mol/t]に対するアミノ末端基の含有量[mol/t]の比(アミノ末端基の含有量/カルボキシル末端基の含有量)が0.5〜2.5であることである。
本発明のポリアミド樹脂組成物の好ましい態様によれば、さらに繊維状充填材(C)を含有し、
ポリアミド樹脂(A)の含有量とリン系化合物(B)の含有量の合計を100質量部としたときの繊維状充填材(C)の含有量が5〜200質量部であることである。
本発明の成形品は、上記のポリアミド樹脂組成物を成形することにより得られる。
前記の成形品は、好ましくは射出成形品である
本発明によれば、末端変性ポリアミド樹脂を含有する樹脂組成物であって、当該樹脂組成物がさらにリン系化合物を特定量含有することにより、溶融流動性、溶融滞留時の熱安定性および耐変色性に優れたポリアミド樹脂組成物、ならびにそれを用いてなる成形品を得ることができる。
そのため、本発明のポリアミド樹脂組成物を用いてなる成形品は、自動車部品、電気・電子部品、建築部材およびスポーツ用品部品など、機械特性に加えて外観・意匠性が要求される各種用途に好適に用いられることができる。
次に、本発明のポリアミド樹脂組成物およびその成形品について具体的に説明する。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、ポリアミド樹脂(A)およびリン系化合物(B)を含有するポリアミド樹脂組成物であって、ポリアミド樹脂(A)は末端変性ポリアミド樹脂(a)を含有し、当該末端変性ポリアミド樹脂(a)が、ポリマーの主鎖を構成する繰り返し構造単位とは異なる構造単位から構成される構造(末端構造)をポリマーの末端に有する樹脂であり、ポリアミド樹脂(A)の含有量とリン系化合物(B)の含有量の合計を100質量部としたときのリン原子(b)の含有量が0.001質量部以上、1.000質量部以下である、ポリアミド樹脂組成物である。
本発明の実施形態において用いられるポリアミド樹脂は、アミノ酸、ラクタムおよび「ジアミンとジカルボン酸との混合物」から選ばれた1種以上を主たる原料として得ることができるポリアミド樹脂である。
ポリアミド樹脂の主たる構造単位を構成する化学構造としては、アミノ酸またはラクタムを原料とする場合、炭素数4〜20の範囲のものが好ましい。また、ジアミンとジカルボン酸とを原料とする場合、ジアミンの炭素数は2〜20の範囲であることが好ましく、ジカルボン酸の炭素数は2〜20の範囲であることが好ましい。原料の代表例としては、次のものが挙げられる。
具体的に、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸、パラアミノメチル安息香酸などのアミノ酸。ε−カプロラクタム、ω−ウンデカンラクタム、ω−ラウロラクタムなどのラクタム。エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカンジアミン、ウンデカンジアミン、ドデカンジアミン、トリデカンジアミン、テトラデカンジアミン、ペンタデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、ヘプタデカンジアミン、オクタデカンジアミン、ノナデカンジアミン、エイコサンジアミン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、2−メチル−1,8−ジアミノオクタンなどの脂肪族ジアミン;シクロヘキサンジアミン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンなどの脂環式ジアミン;キシリレンジアミンなどの芳香族ジアミンなどのジアミン。シュウ酸、マロン酸、スクシン酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸などの脂肪族ジカルボン酸;テレフタル酸、イソフタル酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、5−ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸などの芳香族ジカルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環族ジカルボン酸;これらジカルボン酸のジアルキルエステル、およびジクロリドなどが挙げられる。
本発明の実施形態においては、ポリアミド樹脂(A)として、これらの原料から誘導されるポリアミドホモポリマーまたはコポリマーを用いることができる。これらのポリアミド樹脂や詳しくは後述する末端変性ポリアミド樹脂が、2種以上混合されてポリアミド樹脂(A)となることも許容される。
また、本発明の実施形態において用いられる末端変性ポリアミド樹脂(a)は、ポリアミド樹脂のポリマーの主鎖を構成する繰り返し構造単位とは異なる構造単位から構成される構造をポリマーの末端に有する樹脂である。すなわち、変性された構造をポリマーの末端に有するポリアミド樹脂である。また、本発明においては、構造が異なる2種以上の末端変性ポリアミド樹脂が混合されて末端変性ポリアミド樹脂(a)となることも許容される。
本発明の実施形態においては、機械特性および溶融滞留時の熱安定性をより向上させるという観点から、上に例示した原料に由来する構造単位を、変性された構造を除いたポリアミド樹脂を構成する全構造単位100モル%中、80モル%以上有することが好ましく、90モル%以上有することがより好ましく、100モル%有することがさらに好ましい態様である。また、上に例示した原料に由来する重合構造は、直鎖であることが好ましい。
本発明の実施形態において用いられる末端変性ポリアミド樹脂の融点(Tm)は、200℃以上であることが好ましい。ここで、末端変性ポリアミド樹脂の融点は、示差走査熱量測定(DSC)により求めることができる。測定方法は、次のとおりである。末端変性ポリアミド樹脂5〜7mgを秤量する。窒素雰囲気下中、20℃の温度から昇温速度20℃/分でTm+30℃まで昇温する。引き続き、降温速度20℃/分で20℃の温度まで降温する。再度、20℃の温度から昇温速度20℃/分でTm+30℃まで昇温したときに現れる吸熱ピークの頂点の温度を、融点(Tm)と定義する。
融点が200℃以上の末端変性ポリアミド樹脂としては、下記のポリアミドおよびこれらの共重合体の末端に、変性された構造を有するポリアミド樹脂が挙げられる。耐熱性、靭性および表面特性などの必要特性に応じて、これらを2種以上用いることもできる。
ポリアミドとしては、ポリカプロアミド(ポリアミド6)、ポリウンデカンアミド(ポリアミド11)、ポリドデカンアミド(ポリアミド12)、ポリヘキサメチレンアジパミド(ポリアミド66)、ポリテトラメチレンアジパミド(ポリアミド46)、ポリペンタメチレンアジパミド(ポリアミド56)、ポリテトラメチレンセバカミド(ポリアミド410)、ポリペンタメチレンセバカミド(ポリアミド510)、ポリヘキサメチレンセバカミド(ポリアミド610)、ポリヘキサメチレンドデカミド(ポリアミド612)、ポリデカメチレンセバカミド(ナイロン1010)、ポリデカメチレンドデカミド(ナイロン1012)、ポリメタキシリレンアジパミド(MXD6)、ポリメタキシリレンセバカミド(MXD10)、ポリパラキシリレンセバカミド(PXD10)、ポリノナメチレンテレフタルアミド(ナイロン9T)、ポリデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド10T)、ポリウンデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド11T)、ポリドデカメチレンテレフタルアミド(ポリアミド12T)、ポリペンタメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド5T/6T)、ポリ−2−メチルペンタメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド(ポリアミドM5T/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6T)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミドコポリマー(ポリアミド66/6I)、ポリヘキサメチレンアジパミド/ポリヘキサメチレンテレフタルアミド/ポリヘキサメチレンイソフタルアミド(ポリアミド66/6T/6I)、ポリビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンテレフタルアミド(ポリアミドMACMT)、ポリビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンイソフタルアミド(ポリアミドMACMI)、ポリビス(3−メチル−4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドMACM12)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンテレフタルアミド(ポリアミドPACMT)、ポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンイソフタルアミド(ポリアミドPACMI)、およびポリビス(4−アミノシクロヘキシル)メタンドデカミド(ポリアミドPACM12)などが挙げられる。
とりわけ好ましいポリアミドとしては、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリアミド56、ポリアミド410、ポリアミド510、ポリアミド610、ポリアミド6/66、ポリアミド6/12、ポリアミド9T、およびポリアミド10Tなどの末端に変性された構造を有するポリアミドを挙げることができる。
本発明の実施形態にて用いられる末端変性ポリアミド樹脂は、その末端に変性された構造を持つ。そして、当該変性された構造は、ポリマーの主鎖を構成する繰り返し構造とは異なるものである。
変性された構造としては、例えば、飽和脂肪族化合物、不飽和脂肪族化合物および芳香族化合物などに由来する構造が挙げられる。これらを2種以上用いることもできる。溶融粘度をより低下せしめる(すなわち、溶融時の流動性をより向上せしめる)という観点から、飽和脂肪族化合物または芳香族化合物に由来する構造がより好ましく、飽和脂肪族化合物に由来する構造がさらに好ましく用いられる。
本発明の実施形態において、「変性された構造」(末端構造)としては、後述する末端変性用化合物の残基などが挙げられる。
また、本発明の実施形態においては、末端変性ポリアミド樹脂(a)が、下記一般式(I)で表される末端構造を有するポリアミド樹脂を含有することが好ましい。下記の一般式(I)で表される末端構造は、アルキレンオキシド構造を有するため、得られるポリマーの分子運動性が高く、また、アミド基との親和性に優れている。また、当該ポリアミド樹脂の末端にある下記の一般式(I)で表される構造が、ポリアミド分子鎖の間に介在することによって、ポリマーの自由体積がより増加し、絡み合いがより減少する。その結果、ポリマーの分子運動性がさらに増大して、溶融粘度を低減することが可能となる。
また、リン系化合物は一般にポリアミド樹脂の重合触媒として作用する。この点、本発明の樹脂組成物はリン系化合物を含有するが、本発明の樹脂組成物においては、下記の一般式(I)で表される末端構造中のアルキレンオキシド構造にリン系化合物が配位する。これによって、末端変性ポリアミド樹脂のポリアミド構造へのリン系化合物の配位量が減少するため、溶融滞留時の重合の促進が抑制され、溶融粘度の上昇を抑制することができる。また、下記の一般式(I)で表される末端構造中のアルキレンオキシド構造の溶融滞留時の酸化劣化も同時に抑制することができるため、耐変色性をより向上することができる。このような効果は、ポリアルキレンオキシド構造をポリアミド樹脂の主鎖に主として有する場合に比べて、末端に有する場合のほうが極めて高い。
−X−(R−O)−R (I)
上記の一般式(I)中、mは2以上100以下の範囲を表す。mが大きいほど、溶融粘度の低減効果が効果的に奏される。mは5以上であることが好ましく、より好ましくは8以上であり、さらに好ましくは16以上である。一方、mが小さいほど、耐熱性をより高く維持することができる。mは70以下であることが好ましく、より好ましくは50以下である。ポリアミド樹脂の主たる構造単位に由来する特性を維持するという観点から、本発明において、末端変性ポリアミド樹脂は上記の一般式(I)で表される構造を、ポリマーの末端のみに有することが好ましい。
上記の一般式(I)中、Rは炭素数2以上10以下の2価の炭化水素基を表す。ポリアミド樹脂の主たる構造単位との親和性の観点から、炭素数2〜6の炭化水素基がより好ましく、炭素数2〜4の炭化水素基がより好ましい態様である。末端変性ポリアミド樹脂の熱安定性および着色防止の観点から、Rが飽和炭化水素基であることがさらに好ましい態様である。
としては、例えば、エチレン基、1,3−トリメチレン基、イソプロピレン基、1,4−テトラメチレン基、1,5−ペンタメチレン基および1,6−ヘキサメチレン基などが挙げられ、n個のRは、異なる炭素数の炭化水素基の組合せとすることができる。Rは、炭素数2価の飽和炭化水素基および炭素数3の2価の飽和炭化水素基から少なくとも構成されることが好ましい。ポリアミド樹脂の主たる構造単位との親和性に優れるエチレン基および自由体積の大きいイソプロピレン基から構成されることがより好ましく、溶融粘度低減効果をより効果的に発現させることができる。この場合、一般式(I)で表される末端構造は、エチレン基を10個以上含有し、かつイソプロピレン基を6個以下含有することが好ましく、所望に近い量の末端構造をポリアミド樹脂に導入することができ、溶融粘度低減効果をより高めることができる。
また、Rは炭素数1以上30以下の1価の炭化水素基を表す。Rの炭素数が少ないほどポリアミド樹脂の主たる構造単位との親和性に優れるため、炭素数1〜20の炭化水素基が好ましく、炭素数1〜10の炭化水素基がより好ましく用いられる。また、末端変性ポリアミド樹脂の熱安定性および着色防止の観点から、Rは1価の飽和炭化水素基であることがさらに好ましい態様である。Rとしては、例えば、メチル、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基などが挙げられ、その中でもポリアミド樹脂の主たる構造単位との親和性に優れるメチル基およびエチレン基がより好ましい。
上記の一般式(I)中、−X−は−NH−、−N(CH)−または−(C=O)−を表す。これらのうち、ポリアミド樹脂の主たる構造単位との親和性に優れている−NH−がより好ましい。
本発明の実施形態において用いられる末端変性ポリアミド樹脂は、一般式(I)で表される末端構造を、末端変性ポリアミド樹脂を構成するポリマーの少なくとも一方の末端に有することが好ましい。
本発明においては、ポリアミド樹脂(A)とリン系化合物(B)の合計含有量に対して、一般式(I)で表される末端構造の含有率が1質量%以上、20質量%以下であることが好ましい。
すなわち、本発明においては、ポリアミド樹脂(A)が、一般式(I)で表される末端構造を有するポリアミド樹脂を、末端変性ポリアミド樹脂(a)として含有し、かつ、ポリアミド樹脂(A)とリン系化合物(B)の合計を100質量%としたときに、一般式(I)で表される末端構造の含有率が1質量%以上、20質量%以下であることが好ましい。一般式(I)で表される末端構造の含有量が1質量%以上であると、末端変性ポリアミド樹脂の溶融粘度をより低減することができる。また、リン系化合物は、ポリアミド樹脂の重合触媒として作用するが、一般式(I)で表される末端構造中のアルキレンオキシド構造にリン系化合物が配位することにより、末端変性ポリアミド樹脂のポリアミド構造への配位が減少するため、溶融滞留時の重合が抑制され、溶融粘度の上昇を抑制できる。また、一般式(I)で表される末端構造中のアルキレンオキシド構造の溶融滞留時の酸化劣化も同時に抑制することができるため、耐変色性を向上することができる。
一般式(I)で表される末端構造の含有量は、より好ましくは3質量%以上であり、さらに好ましくは5質量%以上である。一方、一般式(I)で表される末端構造の含有量が20質量%以下であると、溶融滞留時における一般式(I)で表される構造中のアルキレンオキシド構造の酸化劣化による変色を抑制し、溶融滞留時の熱安定性をより向上させ、成形品の耐変色性をより向上することができる。また、リン系化合物の一般式(I)で表される末端構造中のアルキレンオキシド構造への配位量と末端変性ポリアミド樹脂のポリアミド構造への配位量が適正となり、溶融滞留時の重合が抑制され、溶融粘度の上昇を抑制させることができる。さらに、一般式(I)で表される末端構造中のアルキレンオキシド構造の溶融滞留時の酸化劣化も同時に抑制することができるため、耐変色性をより向上することができる。上記の一般式(I)で表される末端構造の含有量は、より好ましくは15質量%以下であり、さらに好ましくは10質量%以下である。
本発明の実施形態において用いられる末端変性ポリアミド樹脂中における一般式(I)で表される末端構造の含有量は、例えば、末端変性ポリアミド樹脂を製造する際に用いられる、後述する一般式(III)で表される末端変性用化合物の配合量を調整することにより、所望の範囲に調整することができる。
また、本発明の実施形態においては、末端変性ポリアミド樹脂(a)が、さらに、一般式(II)で表される末端構造を有するポリアミド樹脂を含有することが好ましい。前述のとおり、一般式(I)で表される末端構造を有するポリアミド樹脂を含有せしめることにより、一般式(I)で表される末端構造中のアルキレンオキシド構造にリン系化合物が配位する。それにより、末端変性ポリアミド樹脂のポリアミド構造へのリン系化合物の配位量が相対的に減少するため、溶融滞留時の重合が抑制され、溶融粘度の上昇を抑制することができる。また、一般式(I)で表される末端構造中のアルキレンオキシド構造の酸化劣化も同時に抑制することができ、耐変色性を向上することができるが、成形時などの長期間にわたる溶融滞留時においては、一般式(I)で表される末端構造の熱分解が進行しやすい傾向がある。
特に、末端構造が変性されていないポリアミド樹脂はアミノ末端基やカルボキシル末端基を持ち、これらのアミノ末端基やカルボキシル基は、一般式(I)で表される末端構造の熱分解触媒として作用する。そのため、ポリアミド樹脂(A)中のアミノ末端基量とカルボキシル末端基量を低減することにより、一般式(I)で表される末端構造の熱分解を抑制し、一般式(I)で表される末端構造による溶融粘度低減効果を維持しながら、溶融滞留時の熱安定性をより向上させることができる。
また、一般式(I)で表される末端構造の熱分解を抑制せしめることにより、一般式(I)で表される末端構造中のアルキレンオキシド構造へのリン系化合物の配位量が増加し、末端変性ポリアミド樹脂のポリアミド構造へのリン系化合物の配位量が減少する。そのため、溶融滞留時の重合が抑制され、溶融粘度の上昇を抑制することができる。また、一般式(I)で表される末端構造中のアルキレンオキシド構造の熱酸化劣化も同時に抑制することができ、耐変色性を向上することができる。
例えば、本発明においては、両方の末端構造が変性されていないポリアミド樹脂のカルボキシル末端基に、後述する一般式(III)で表される末端変性用化合物を反応させることにより、一般式(I)で表される末端構造を有するポリアミド樹脂を得ることができる。しかしながら、これによって得られる末端変性ポリアミド樹脂は、一方の末端が一般式(I)で表される構造で変性されているものの、他方の末端は変性されておらず、アミノ末端またはカルボキシル末端のままである。そこで、例えば、かかるポリアミド樹脂(すなわち、一方の末端のみが一般式(I)で表される構造で変性されているポリアミド樹脂)に、後述する一般式(IV)で表される末端変性用化合物をさらに反応させることなどによって、当該他方の末端を変性せしめ、下記一般式(II)で表される末端構造をさらに有するポリアミド樹脂を得ることができる。
ポリアミド樹脂に一般式(I)で表される末端構造のみを導入する場合に比べて、下記一般式(II)で表される末端構造をさらに導入することにより、一般式(I)で表される構造の熱分解を抑制できる。そして、それによって、一般式(I)で表される末端構造中のアルキレンオキシド構造へのリン系化合物の配位量が増加し、末端変性ポリアミド樹脂のポリアミド構造へのリン系化合物の配位が減少するため、溶融滞留時の重合が抑制され、溶融粘度の上昇を抑制できる。また、一般式(I)で表される末端構造中のアルキレンオキシド構造の酸化劣化も同時に抑制することができ、耐変色性をより向上することができる。
−Y−R (II)
上記一般式(II)中、Rは炭素数1以上30以下の1価の炭化水素基を表す。Rの炭素数が少ないほどポリアミド樹脂の主たる構造単位との親和性に優れるため、炭素数1〜30の炭化水素基であることが好ましい。具体的には、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、イコシル基、エイコシル基、ヘンイコシル基、ヘネイコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基、ペンタコシル基、ヘキサコシル基、ヘプタコシル基、オクタコシル基、ノナコシル基、トリアコンチル等の直鎖アルキル基、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基等の分岐鎖アルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基などが挙げられる。末端変性ポリアミド樹脂の熱安定性および着色防止の観点から、Rは1価の炭素数1以上20以下の飽和炭化水素基またはアリール基であることがさらに好ましい態様である。
前記の一般式(I)におけるXが、−NH−または−N(CH)−の場合、上記の一般式(II)における−Y−は−(C=O)−を表し、前記の一般式(I)におけるXが−(C=O)−の場合、上記の一般式(II)におけるYは、−NH−または−N(CH)−を表す。
通常、両方の末端が変性されていないポリアミド樹脂の末端基は、その一方の末端基がアミノ末端基であり、他方の末端基がカルボキシル末端基である。
詳しくは後述するように、末端が変性されていないポリアミド樹脂に後述の一般式(III)で表される末端変性用化合物を反応せしめることによって、一般式(I)で表される末端構造を有するポリアミド樹脂を得ることができる。
ここで、一般式(III)で表される末端変性用化合物がアミノ末端基を有する場合、かかる末端変性用化合物はポリアミド樹脂のカルボキシル末端基と反応し、一般式(I)におけるXが−NH−または−N(CH)−となる。この場合、ポリアミド樹脂の他方の末端であるアミノ末端基を、後述する一般式(IV)で表される末端変性用化合物と反応せしめることによって、ポリアミド樹脂の当該他方の末端に、上記の一般式(II)の末端構造を導入することができる。この場合、上記の一般式(II)におけるYは−(C=O)−となる。
一方、一般式(III)で表される末端変性用化合物がカルボキシル末端基を有する場合、かかる末端変性用化合物はポリアミド樹脂のアミノ末端基と反応し、一般式(I)におけるXが−(C=O)−となる。この場合、ポリアミド樹脂の他方の末端であるカルボキシル末端基を、後述する一般式(IV)で表される末端変性用化合物と反応せしめることによって、ポリアミド樹脂の当該他方の末端に、上記の一般式(II)の末端構造を導入することができる。この場合、上記の一般式(II)におけるYは−NH−または−N(CH)−となる。
本発明においては、ポリアミド樹脂(A)とリン系化合物(B)の合計含有量に対して、一般式(II)で表される末端構造の含有率が0.1質量%以上、5.0質量%以下であることが好ましい。
すなわち、本発明においては、ポリアミド樹脂(A)が、一般式(II)で表される末端構造を有するポリアミド樹脂を、末端変性ポリアミド樹脂(a)として含有し、かつ、ポリアミド樹脂(A)とリン系化合物(B)の合計を100質量%としたときに、一般式(II)で表される末端構造の含有率が0.1質量%以上、5.0質量%以下であることが好ましい。
一般式(II)で表される末端構造の含有量が0.1質量%以上であると、溶融滞留時に末端変性ポリアミド樹脂中の一般式(I)で表される構造の熱分解を抑制し、溶融滞留時の熱安定性をより向上させることができると同時に、一般式(I)で表される末端構造中のアルキレンオキシド構造へのリン系化合物の配位量が増加し、末端変性ポリアミド樹脂のポリアミド構造へのリン系化合物の配位が減少するため、溶融滞留時の重合が抑制され、溶融粘度の上昇を抑制することができる。また、一般式(I)で表される末端構造中のアルキレンオキシド構造の酸化劣化も同時に抑制することができ、耐変色性をより向上することができる。
一般式(II)で表される末端構造の含有量は、より好ましくは0.2質量%以上であり、さらに好ましくは0.4質量%以上である。一方、一般式(II)で表される末端構造の含有量が5.0質量%以下であると、リン系化合物の触媒作用による、溶融滞留時の重合が抑制され、溶融粘度の上昇を抑制できる。一般式(II)で表される末端構造の含有量は、より好ましくは3.0質量%以下であり、さらに好ましくは1.0質量%以下である。
本発明において、末端変性ポリアミド樹脂中における一般式(II)で表される末端構造の含有量は、例えば、末端変性ポリアミド樹脂を製造する際に用いる後述する一般式(IV)で表される末端変性用化合物の配合量を調整することにより、所望の範囲に調整することができる。
以上を簡単に纏めると、本発明においては、ポリアミド樹脂(A)は末端変性ポリアミド樹脂(a)を含有することから好ましい。なお、ポリアミド樹脂(A)は、上述のとおり、2種以上のポリアミド樹脂を含有してもよい。すなわち、ポリアミド樹脂(A)は、2種以上のポリアミド樹脂から構成されても良い。また、ポリアミド樹脂(A)は、末端変性ポリアミド樹脂(a)以外のポリアミド樹脂(例えば、両方の末端が変性されていないポリアミド樹脂)を含んでも良い。
また、本発明においては、末端変性ポリアミド樹脂(a)は一般式(I)で表される末端構造を有するポリアミド樹脂を含有することが好ましい。なお、本発明において、末端変性ポリアミド樹脂(a)は、上述のとおり、2種以上の末端変性ポリアミド樹脂を含有してもよい。すなわち、末端変性ポリアミド樹脂(a)は、上述のとおり、2種以上の末端変性ポリアミド樹脂から構成されてもよい。
また、本発明において、末端変性ポリアミド樹脂(a)は一般式(I)で表される末端構造を有するポリアミド樹脂、および、一般式(II)で表される末端構造を有するポリアミド樹脂を含有することが好ましい。本発明においては、
[態様i]末端変性ポリアミド樹脂(a)が、一般式(I)で表される末端構造のみを有するポリアミド樹脂(例えば、一方の末端は一般式(I)で表される末端構造で変性されているが、他方の末端は変性されていないポリアミド樹脂)、および、一般式(II)で表される末端構造のみを有するポリアミド樹脂(例えば、一方の末端は一般式(II)で表される末端構造で変性されているが、他方の末端は変性されていないポリアミド樹脂)を含有する態様でもよいし、
[態様ii]末端変性ポリアミド樹脂(a)が、一般式(I)で表される末端構造および一般式(II)で表される末端構造を有するポリアミド樹脂(すなわち、一方の末端は一般式(I)で表される末端構造で変性されており、他方の末端は一般式(II)で表される末端構造で変性されているポリアミド樹脂)を含有する態様でもよい。
もちろん、[態様iii]末端変性ポリアミド樹脂(a)が、一般式(I)で表される末端構造と一般式(II)で表される末端構造を有するポリアミド樹脂を含有し、さらに、一般式(I)で表される末端構造のみを有するポリアミド樹脂、および/または、一般式(II)で表される末端構造のみを有するポリアミド樹脂を含有する態様でもよい。
なお、一般式(I)で表される末端構造と一般式(II)で表される末端構造を有するポリアミド樹脂(一つのポリマー鎖において、一方の末端に一般式(I)で表される末端構造を有し、他方の末端に一般式(II)で表される末端構造を有するポリマー)は、本発明における「一般式(I)で表される末端構造を有する末端変性ポリアミド樹脂」にも該当するし、「一般式(II)で表される末端構造を有する末端変性ポリアミド樹脂」にも該当する。
また、本発明においては、ポリアミド樹脂(A)とリン系化合物(B)の合計含有量に対して、一般式(I)で表される末端構造の含有率が1質量%以上、20質量%以下であることが好ましい。加えて、ポリアミド樹脂(A)とリン系化合物(B)の合計含有量に対して、一般式(II)で表される末端構造の含有率が0.1質量%以上、5.0質量%以下であることが特に好ましい。
また、本発明においては、末端変性ポリアミド樹脂(a)が、一般式(I)で表される末端構造を有する末端変性ポリアミド樹脂と、前記一般式(II)で表される末端構造を有する末端変性ポリアミド樹脂を含有し、かつ、ポリアミド樹脂(A)1t中に含まれる、一般式(I)で表される末端構造の含有量[mol/t]と一般式(II)で表される末端構造の含有量[mol/t]の合計が60〜250[mol/t]であることが好ましい。ポリアミド樹脂(A)1t中に、一般式(I)で表される末端構造と一般式(II)で表される末端構造を、合計で60mol以上含有させることにより、溶融粘度を低減させることが可能となる。
また、リン系化合物は、ポリアミド樹脂の重合触媒として作用するが、一般式(I)で表される末端構造中のアルキレンオキシド構造にリン系化合物が配位することにより、末端変性ポリアミド樹脂のリン系化合物のポリアミド構造への配位が減少するため、溶融滞留時の重合が抑制され、溶融粘度の上昇を抑制することができる。また、一般式(I)で表される末端構造中のアルキレンオキシド構造の酸化劣化も同時に抑制することができ、耐変色性をより向上することができる。これらの末端構造の合計含有量は、より好ましくは70mol/t以上であり、さらに好ましくは80mol/t以上である。
一方、ポリアミド樹脂(A)1t中に、一般式(I)で表される末端構造と一般式(II)で表される末端構造を、合計で250mol/t以下含有させることにより、アルキレンオキシド構造へのリン系化合物の配位量と末端変性ポリアミド樹脂のポリアミド構造へのリン系化合物の配位量が適正となり、溶融滞留時の重合が抑制され、溶融粘度の上昇を抑制することができる。また、アルキレンオキシド構造の酸化劣化も同時に抑制することができ、耐変色性をより向上することができる。これらの末端構造の合計含有量は、より好ましくは225mol/tであり、さらに好ましくは200mol/t以下である。
本発明において、ポリアミド樹脂(A)における一般式(I)で表される末端構造と一般式(II)で表される末端構造の合計量は、例えば、末端変性ポリアミド樹脂を製造する際に用いる後述する一般式(III)で表される末端変性用化合物および一般式(IV)で表される末端変性用化合物の配合量を調整することにより、所望の範囲に調整することができる。
さらに、一般式(II)で表される末端構造の含有量[mol/t]に対する前記一般式(I)で表される末端構造の含有量[mol/t]の比((I)/(II))が0.3以上2.5以下であることが好ましい。ポリアミド樹脂は、溶融滞留時に熱分解による分子量低下と同時に、アミノ末端基とカルボキシル末端基との重合反応による分子量増大が進行する。前記のモル比((I)/(II))が1から離れるほど、変性される(封鎖される)アミノ末端基量とカルボキシル末端基量の差が大きくなることを示しており、差が大きくなるほど溶融滞留時の重合反応は進みにくく、熱分解による分子量低下の方が大きくなるため、溶融滞留時の溶融粘度や分子量低下が大きくなる傾向にある。また、差が大きくなるほど、溶融滞留時に重合反応が進行しにくくなり、すなわち、末端基が重合反応によって消費されない。そして、上述したように末端基(アミノ末端基やカルボキシル末端基)が一般式(I)で表される末端構造の熱分解触媒となり、一般式(I)で表される末端構造中のアルキレンオキシド構造の熱分解を促進するため、前記の差が大きくなるほど溶融粘度が大きくなる傾向となる。
上記の含有量のモル比((I)/(II))を0.3以上とすることにより、末端変性ポリアミド樹脂の溶融粘度をより低減することができると同時に、溶融滞留時における末端変性ポリアミド樹脂中の一般式(I)で表される構造の熱分解をより抑制し、熱安定性をより向上させることができる。そして、それによって、一般式(I)で表される末端構造中のアルキレンオキシド構造へのリン系化合物の配位量が増加し、末端変性ポリアミド樹脂のポリアミド構造へのリン系化合物の配位が減少する。そして、それによって、溶融滞留時の重合が抑制され、溶融粘度の上昇を抑制することができる。また、下記一般式(I)で表される末端構造中のアルキレンオキシド構造の酸化劣化も同時に抑制することができ、耐変色性をより向上することができる。上記の含有量のモル比((I)/(II))は、より好ましくは0.5以上であり、さらに好ましくは0.6以上であり、最も好ましくは0.8以上である。
一方、上記の含有量のモル比((I)/(II))を2.5以下とすることにより、溶融滞留時の末端変性ポリアミド樹脂中の一般式(I)で表される末端構造の熱分解をより抑制できる。それによって、一般式(I)で表される末端構造中のアルキレンオキシド構造へのリン系化合物の配位量が増加し、末端変性ポリアミド樹脂のポリアミド構造へのリン系化合物の配位が減少する。そして、それによって、溶融滞留時の重合が抑制されると同時に、一般式(I)で表される末端構造中のアルキレンオキシド構造の酸化劣化も同時に抑制することができ、耐変色性をより向上することができる。上記の含有量のモル比((I)/(II))は、より好ましくは2.2以下であり、さらに好ましくは2.0以下である。
ここで、ポリアミド樹脂(A)中の、一般式(I)で表される末端構造および一般式(II)で表される末端構造の含有量は、それぞれH−NMR測定によって求めることができる。測定と計算方法は、次のとおりである。
まず、ポリアミド樹脂(A)の濃度が50mg/mLである重水素化硫酸溶液を調製し、積算回数256回によってH−NMR測定を行う。Rのスペクトル積分値、Rのスペクトル積分値、Rのスペクトル積分値、およびポリアミド樹脂骨格の繰り返し構造単位(ポリマーの主鎖を構成する繰り返し構造単位)のスペクトル積分値から、各末端構造の含有量(質量%、または、mol/t)、および末端構造(II)の含有量(mol/t)に対する末端構造(I)の含有量(mol/t)の比(以下、「モル比」と称されることもある)を算出することができる。
本発明において、ポリアミド樹脂(A)中における上記モル比((I)/(II))は、例えば、末端変性ポリアミド樹脂を製造する際に用いられる後述する一般式(III)で表される末端変性用化合物および一般式(IV)で表される末端変性用化合物の配合比を調整することにより、所望の範囲に調整することができる。
本発明においては、前記ポリアミド樹脂(A)が、アミノ末端基を有するポリアミド樹脂と、カルボキシル末端基を有するポリアミド樹脂を含有することが好ましい。
なお、本発明において、アミノ末端基とカルボキシル末端基を有するポリアミド樹脂(一つのポリマー鎖において、一方の末端にアミノ末端基を有し、他方の末端にカルボキシル末端基を有するポリマー)は、「アミノ末端基を有するポリアミド樹脂」にも該当するし、「カルボキシル末端基を有するポリアミド樹脂」にも該当する。
本発明においては、
[態様i]ポリアミド樹脂(A)が、一方の末端にアミノ末端基を有するポリアミド樹脂(他方の末端にはアミノ末端基もカルボキシル末端基も有しない)、および、一方の末端にカルボキシル末端基を有するポリアミド樹脂(他方の末端にはアミノ末端基もカルボキシル末端基も有しない)を含有する態様でも良いし、
[態様ii]ポリアミド樹脂(A)が、一方の末端にアミノ末端基を有し、他方の末端にカルボキシル末端基を有するポリアミド樹脂を含有する態様でも良い。
もちろん、[態様iii]ポリアミド樹脂(A)が、一方の末端にアミノ末端基を有し、他方の末端にカルボキシル末端基を有するポリアミド樹脂を含有し、さらに、一方の末端にアミノ末端基を有するポリアミド樹脂、および/または、一方の末端にカルボキシル末端基を有するポリアミド樹脂を含有する態様でも良い。
ポリアミド樹脂(A)1t中に含まれる、アミノ末端基の含有量とカルボキシル末端基の合計は50〜150mol/tであることが好ましい。これらの末端基をポリアミド樹脂(A)1t中に合計50mol以上含有させることにより、リン系化合物の分散性も向上させることができる。それによって、アルキレンオキシド構造へのリン系化合物の配位を促進することができ、一般式(I)で表される末端構造中のアルキレンオキシド構造の酸化劣化も同時に抑制することができるので、耐変色性をより向上することができる。これらの末端基の合計含有量は、より好ましくは60mol/t以上であり、さらに好ましくは80mol/t以上である。
一方、ポリアミド樹脂(A)1t中におけるアミノ末端基とカルボキシル末端基を、合計で150mol/t以下含有させることにより、溶融滞留時における末端変性ポリアミド樹脂中の一般式(I)で表される構造中のアルキレンオキシド構造の熱分解を抑制することができる。その結果、ポリマーの分子運動性がさらに増大して溶融粘度を低減可能となる。また、リン系化合物はポリアミド樹脂の重合触媒として作用するが、一般式(I)で表される構造の熱分解による減少を抑制することで、一般式(I)で表される構造中のアルキレンオキシド構造へのリン系化合物の配位量が増加し、末端変性ポリアミド樹脂のポリアミド構造への配位が減少するため、溶融滞留時の重合が抑制され、溶融粘度の上昇を抑制できる。また、一般式(I)で表される末端構造中のアルキレンオキシド構造の酸化劣化も同時に抑制することができ、耐変色性をより向上することができる。
さらに、本発明においては、アミノ末端基の含有量[mol/t]とカルボキシル末端基の含有量[mol/t]の比(アミノ末端基/カルボキシル末端基)が、0.5以上2.5以下であることが好ましい。前述のとおり、アミノ末端基量とカルボキシル末端基量の差が大きくなるほど溶融滞留時の重合は進みにくく、熱分解による分子量低下の方が大きくなるため、溶融滞留時の溶融粘度や分子量低下が大きくなる傾向にある。また、溶融滞留時に重合が進行しにくくなるので、末端基(アミノ末端基やカルボキシル末端基)が重合反応に消費されなくなる。上述したように、これらの末端基が一般式(I)の熱分解触媒となり、一般式(I)で表される末端構造の熱分解を促進するため、溶融粘度が大きくなる傾向となる。
上記の含有量のモル比(アミノ末端基の含有量/カルボキシル末端基の含有量)を0.5以上とすることにより、溶融滞留時における末端変性ポリアミド樹脂中の一般式(I)で表される構造の熱分解を抑制することができることから、一般式(I)で表される構造中のアルキレンオキシド構造へのリン系化合物の配位量が増加し、末端変性ポリアミド樹脂のポリアミド構造へのリン系化合物の配位が減少する。そして、それによって、溶融滞留時の重合が抑制され、溶融粘度の上昇を抑制できる。また、一般式(I)で表される末端構造中のアルキレンオキシド構造の酸化劣化も同時に抑制することができ、耐変色性をより向上することができる。上記の含有量のモル比(アミノ末端基の含有量/カルボキシル末端基の含有量)は、より好ましくは0.6以上であり、さらに好ましくは0.8以上である。
一方、上記の含有量のモル比(アミノ末端基の含有量/カルボキシル末端基の含有量)を2.5以下とすることにより、溶融滞留時における末端変性ポリアミド樹脂中の一般式(I)で表される構造の熱分解をより抑制することができることから、一般式(I)で表される構造中のアルキレンオキシド構造へのリン系化合物の配位量が増加し、末端変性ポリアミド樹脂のポリアミド構造へのリン系化合物の配位が減少する。そして、それによって、溶融滞留時の重合が抑制され、溶融粘度の上昇を抑制することができる。また、下記一般式(I)で表される末端構造中のアルキレンオキシド構造の酸化劣化も同時に抑制することができ、耐変色性をより向上することができる。上記の含有量のモル比(アミノ末端基の含有量/カルボキシル末端基の含有量)は、より好ましくは2.4以下であり、さらに好ましくは2.3以下である。
ここで、ポリアミド樹脂(A)中のアミノ末端基の含有量は、フェノール/エタノール混合溶液(比率:83.5/16.5質量比)にポリアミド樹脂を溶解し、チモールブルーを指示薬として使用し、塩酸水溶液で滴定することにより測定することができる。
また、ポリアミド樹脂(A)中のカルボキシル末端基量は、ベンジルアルコールにポリアミド樹脂を195℃の温度で溶解し、フェノールフタレインを指示薬として使用し、水酸化カリウムのエタノール溶液で滴定することにより測定することができる。
本発明において、ポリアミド樹脂(A)のアミノ末端基の含有量とカルボキシル末端基の含有量の比は、例えば、末端変性ポリアミド樹脂を製造する際に用いる後述する一般式(III)で表される末端変性用化合物および一般式(IV)で表される末端変性用化合物の配合比や、反応時間を調整することにより、所望の範囲に調整することができる。
本発明で用いられるポリアミド樹脂(A)や末端変性ポリアミド樹脂は、樹脂濃度が0.01g/mlの98%硫酸溶液の25℃の温度における相対粘度(ηr)が、1.3〜3.0の範囲であることが好ましい。ηrを1.3以上とすることにより、靭性を向上させることができ、成形品の機械特性を向上させることができる。相対粘度(ηr)は、より好ましくは1.4以上であり、さらに好ましくは1.5以上である。一方、ηrを3.0以下とすることにより、ポリアミド樹脂組成物を用いてなる成形品の成形性を向上させることができる。
本発明において、ポリアミド樹脂(A)や末端変性ポリアミド樹脂の相対粘度は、例えば、末端変性ポリアミド樹脂を製造する際に用いる後述する一般式(III)で表される末端変性用化合物および一般式(IV)で表される末端変性用化合物の配合量や、反応時間を調整することにより所望の範囲に調整することができる。
本発明で用いられるポリアミド樹脂(A)や末端変性ポリアミド樹脂の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した重量平均分子量(Mw)は、15,000以上であることが好ましい。Mwを15,000以上とすることにより、機械特性をより向上させることができる。重量平均分子量(Mw)は、より好ましくは18,000以上であり、さらに好ましくは20,000以上である。
また、Mwは50,000以下であることが好ましい。Mwを50,000以下とすることにより、溶融粘度をより低減し、ポリアミド樹脂組成物を用いてなる成形品の成形性を向上させることができる。Mwは、より好ましくは45,000以下であり、さらに好ましくは40,000以下である。
本発明において、重量平均分子量(Mw)とは、溶媒としてヘキサフルオロイソプロパノール(0.005N−トリフルオロ酢酸ナトリウム添加)を用い、カラムとしてShodex HFIP−806M(2本)およびHFIP−LGを用いて、30℃の温度でGPC測定して得られるものである。分子量基準物質として、ポリメチルメタクリレートを使用する。
本発明において、ポリアミド樹脂(A)や末端変性ポリアミド樹脂の重量平均分子量は、例えば、末端変性ポリアミド樹脂を製造する際に用いる後述する一般式(III)で表される末端変性用化合物および一般式(IV)で表される末端変性用化合物の配合量や、反応時間を調整することにより所望の範囲に調整することができる。
本発明で用いられる末端変性ポリアミド樹脂は、融点+60℃、せん断速度9728sec−1の条件における溶融粘度が30Pa・s以下であることが好ましい。融点+60℃、せん断速度9728sec−1の条件における溶融粘度を30Pa・s以下とすることにより、ポリアミド樹脂組成物を用いてなる成形品の成形性を向上できる。記の溶融粘度は、より好ましくは20Pa・s以下であり、さらに好ましくは15Pa・s以下あり、さらに好ましくは10Pa・s以下である。
この溶融粘度は、ポリアミド樹脂(A)または末端変性ポリアミド樹脂の融点+60℃の温度で、末端変性ポリアミド樹脂を溶融させるため5分間滞留させた後に、せん断速度9728sec−1の条件下で、キャピラリーフローメーターによって測定することができる。本発明においては、溶融粘度を評価するための指標として、溶融良流動化の効果が現れやすく、かつ、短時間の滞留では熱分解が進行しにくい温度条件として融点+60℃を選択し、射出成形時を想定した高せん断条件であるせん断速度として9728sec−1を選択した。
本発明において、ポリアミド樹脂(A)や末端変性ポリアミド樹脂の溶融粘度は、例えば、末端変性ポリアミド樹脂を製造する際に用いる後述する一般式(III)で表される末端変性用化合物および一般式(IV)で表される末端変性用化合物の配合量や、反応時間を調整することにより所望の範囲に調整することができる。
本発明で用いられるポリアミド樹脂(A)や末端変性ポリアミド樹脂は、融点+60℃の条件下60分間滞留前後における、一般式(I)で表される末端構造の含有量保持率((滞留後含有量/滞留前含有量)×100)が、80%以上であることが好ましい。一般式(I)で表される末端構造の含有量保持率を80%以上とすることにより、溶融滞留時における末端変性ポリアミド樹脂中の一般式(I)で表される末端構造の熱分解を抑制することができ、一般式(I)で表される末端構造中のアルキレンオキシド構造へのリン系化合物の配位量が増加し、末端変性ポリアミド樹脂のポリアミド構造へのリン系化合物の配位が減少するため、溶融滞留時の重合が抑制され、溶融粘度の上昇を抑制することができる。一般式(I)で表される末端構造の含有量保持率は、より好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。
この含有量保持率は、末端変性ポリアミド樹脂について、上述したH−NMR測定によって一般式(I)で表される末端構造の含有量を求め、次いで、キャピラリーフローメーター中において、ポリアミド樹脂(A)や末端変性ポリアミド樹脂の融点+60℃の温度で60分間滞留させた後に、同様に一般式(I)で表される末端構造の含有量を求め、溶融滞留前の一般式(I)で表される末端構造の含有量により除して100を乗ずることにより、算出することができる。本発明においては、溶融粘度を評価するための指標として、溶融良流動化の効果が現れやすく、かつ、短時間の滞留では熱分解が進行しにくい温度条件として融点+60℃を選択した。
本発明において、ポリアミド樹脂(A)や末端変性ポリアミド樹脂における一般式(I)で表される末端構造の含有量保持率は、例えば、末端変性ポリアミド樹脂を製造する際に用いる後述する一般式(III)で表される末端変性用化合物および一般式(IV)で表される末端変性用化合物の配合量や、反応時間を調整することにより所望の範囲に調整することができる。
本発明において、ポリアミド樹脂(A)や末端変性ポリアミド樹脂は、融点+60℃の条件下60分間滞留前後における重量平均分子量保持率((滞留後重量平均分子量/滞留前重量平均分子量)×100)が、80〜120%であることが好ましい。この重量平均分子量保持率を80%以上とすることにより、機械特性をより向上させることができる。重量平均分子量保持率は、より好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。
一方、重量分子量保持率を120%以下とすることにより、溶融粘度をより低減することができるため、ポリアミド樹脂組成物を用いてなる成形品の成形性を向上できる。重量平均分子量保持率は、より好ましくは115%以下であり、さらに好ましくは110%以下である。
この重量分子量保持率は、ポリアミド樹脂(A)または末端変性ポリアミド樹脂について、上述したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって重量平均分子量を測定し、次いで、キャピラリーフローメーター中において、ポリアミド樹脂(A)または末端変性ポリアミド樹脂の融点+60℃の温度で60分間滞留させた後に、同様に重量平均分子量を測定し、溶融滞留前の重量平均分子量により除して100を乗ずることにより、算出することができる。本発明においては、溶融粘度を評価するための指標として、溶融良流動化の効果が現れやすく、かつ、短時間の滞留では熱分解が進行しにくい温度条件として融点+60℃を選択した。
本発明において、ポリアミド樹脂(A)や末端変性ポリアミド樹脂の重量平均分子量保持率は、例えば、末端変性ポリアミド樹脂を製造する際に用いる後述する一般式(III)で表される末端変性用化合物および一般式(IV)で表される末端変性用化合物の配合量を調整することや、反応時間により所望の範囲に調整することができる。
本発明で用いられるポリアミド樹脂(A)や末端変性ポリアミド樹脂は、融点+60℃の条件下60分間滞留前後における溶融粘度保持率((滞留後溶融粘度/滞留前溶融粘度)×100)が、80〜120%であることが好ましい。この溶融粘度保持率を80%以上とすることにより、機械特性をより向上させることができる。溶融粘度保持率は、より好ましくは85%以上であり、さらに好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは95%以上である。一方、溶融粘度保持率を120%以下とすることにより、ポリアミド樹脂組成物を用いてなる成形品の成形性を向上できる。溶融粘度保持率は、より好ましくは115%以下であり、さらに好ましくは110%以下である。
この溶融粘度保持率は、ポリアミド樹脂(A)または末端変性ポリアミド樹脂の融点+60℃の温度で、ポリアミド樹脂(A)または末端変性ポリアミド樹脂を溶融させるため5分間滞留させた後に、せん断速度9728sec−1の条件下で、キャピラリーフローメーターによって測定した溶融粘度(滞留前溶融粘度)と、ポリアミド樹脂(A)または末端変性ポリアミド樹脂の融点+60℃の温度で、ポリアミド樹脂(A)または末端変性ポリアミド樹脂を60分間滞留させた後に、せん断速度9728sec−1の条件下で、キャピラリーフローメーターによって測定した溶融粘度(滞留前溶融粘度)から、(滞留後溶融粘度/滞留前溶融粘度)×100により算出することができる。
本発明においては、溶融粘度保持率を評価するための指標として、溶融良流動化の効果が現れやすく、かつ、短時間の滞留では熱分解が進行しにくい温度条件として融点+60℃を選択し、射出成形を想定した高せん断条件であるせん断速度として9728sec−1を選択した。
本発明において、ポリアミド樹脂(A)や末端変性ポリアミド樹脂の溶融粘度保持率は、例えば、末端変性ポリアミド樹脂を製造する際に用いる後述する一般式(III)で表される末端変性用化合物および一般式(IV)で表される末端変性用化合物の配合量や、反応時間を調整することにより所望の範囲に調整することができる。
本発明においては、ポリアミド樹脂(A)や末端変性ポリアミド樹脂は、窒素雰囲気下、融点+60℃の条件下40分間滞留前後における質量減少率が、4%以下であることが好ましい。この質量減少率を4%以下とすることにより、加工時の熱分解によって発生したガス起因による機械的特性の低下をより抑制することができる。質量減少率は、より好ましくは3%以下である。
この質量減少率は、熱重量分析装置(TGA)を用いて測定することができる。本発明においては、質量減少率を評価するための指標として、溶融良流動化の効果が現れやすく、かつ、短時間の滞留では熱分解が進行しにくい温度条件として融点+60℃を選択した。
本発明において、ポリアミド樹脂(A)や末端変性ポリアミド樹脂の質量減少率は、例えば、末端変性ポリアミド樹脂を製造する際に用いる後述する一般式(III)で表される末端変性用化合物および一般式(IV)で表される末端変性用化合物の配合量や、反応時間を調整することにより所望の範囲に調整することができる。
次に、本発明の実施形態において用いられる末端変性ポリアミド樹脂の製造方法について説明する。
本発明の実施形態において用いられる末端変性ポリアミド樹脂の製造方法としては、例えば、
(1)ポリアミド樹脂、末端変性用化合物、および必要に応じてその他の成分を、ポリアミド樹脂の融点以上において溶融混練し、反応せしめる方法や、これらを溶液中において混合し、反応せしめた後に溶媒を除く方法、および
(2)ポリアミド樹脂の主たる構造単位を構成する原料、末端変性用化合物、および必要に応じてその他の成分を添加して反応させる方法(反応時添加方法)などが挙げられる。
具体的には、末端変性ポリアミド樹脂の原料を反応容器に仕込み、窒素置換して、加熱をすることにより反応させることが好ましい。この際の反応時間が短すぎると、分子量が上がらないだけでなく、オリゴマー成分が増加することから、機械的物性が低下することがある。そのため、反応時間に占める窒素フローの時間は15分以上であることが好ましい。一方、反応時間が長すぎると、熱分解が進行し着色などが生じるため、反応時間に占める窒素フローの時間は8時間以下であることが好ましい。
本発明の実施形態において用いられる末端変性用化合物としては、例えば、飽和脂肪族化合物、不飽和脂肪族化合物および芳香族化合物などが挙げられる。これらを2種以上用いることもできる。流動性をより向上させるという観点から、この末端変性用化合物は、飽和脂肪族化合物または芳香族化合物が好ましく、飽和脂肪族化合物がより好ましく用いられる。
飽和脂肪族化合物としては、例えば、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、シクロノナン、シクロデカン、シクロウンデカン、シクロドデカンなどの単環シクロアルカン化合物や、デカヒドロナフタレンなどの二環式シクロアルカン化合物などの環式飽和脂肪族化合物や、メタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、テトラデカン、およびヘプタデカンなどの炭素数が1〜15の炭化水素化合物などの鎖式飽和脂肪族化合物などが挙げられる。環式飽和脂肪族化合物は分岐構造を有してもよく、また鎖式飽和脂肪族化合物は直鎖構造であっても分岐構造であってもよい。
本発明の実施形態において用いられる末端変性用化合物としては、下記の一般式(V)で表される末端構造を一つ以上有する飽和脂肪族化合物が好ましく用いられる。
−(a−A)−W (V)
(上記一般式(V)において、Aは炭素原子数1〜12のアルキレン基または炭素数6〜24のアリーレン基を表す。aは炭素原子と水素原子以外の原子または単結合を表す。rは(a−A)で表される構造単位の繰り返し数を表し、1以上である。Wは、水酸基、アルデヒド基、カルボキシル基、スルホ基、アミノ基、グリシジル基、イソシアネート基、カルボジイミド基、オキサゾリン基、オキサジン基、エステル基、アミド基、シラノール基またはシリルエーテル基を表す。)。
本発明の実施形態において、溶融流動性をより向上させる観点から、前記の一般式(V)におけるAが、鎖式飽和脂肪族化合物から2つの水素原子を除いた残基であり、rが1〜100であり、Wが水酸基であることが好ましい。rが1以上であれば、溶融流動性をより向上させることができる。rは、より好ましくは3以上であり、さらに好ましくは5以上である。一方、rが100未満であれば、機械特性をより向上させることができる。rは、より好ましくは70以下である。また、溶融流動性および機械特性をより向上させるという観点から、aは酸素原子または単結合が好ましく、酸素原子がより好ましく用いられる。
本発明の実施形態において用いられる末端変性用化合物は、上記の一般式(V)で表される末端構造を1つ有してもよく、2つ以上有することも許容されるが、溶融流動性および機械特性をより向上させるという観点から、前記の一般式(V)で表される構造を1〜4つ有することが好ましく、1〜3つ有することがより好ましい態様である。
本発明において、一般式(I)で表される末端構造を有する末端変性ポリアミド樹脂得るためには、例えば、アミノ酸、ラクタム、ならびに/もしくは、ジアミンおよびジカルボン酸を重合する際に、上記の一般式(V)で表される末端変性用化合物を、アミノ酸、ラクタム、ジアミンおよびジカルボン酸の合計に対して1〜20質量%含有させて、ポリアミド樹脂の末端に末端変性用化合物を結合させることにより、一般式(I)で表される末端構造を1〜20質量%含有する末端変性ポリアミド樹脂を得ることができる。
より好ましくは一般式(V)で表される末端変性用化合物が、下記の一般式(III)で表される末端変性用化合物であることである。
H−X−(R−O)−R (III)
上記の一般式(III)中、mは2〜100の範囲を表す。一般式(I)におけるmと同様に、mは5以上であることが好ましく、より好ましくは8以上であり、さらに好ましくは16以上である。一方、mは70以下であることが好ましく、より好ましくは50以下である。Rは炭素数2〜10の2価の炭化水素基を表し、Rは炭素数1〜30の1価の炭化水素基を表す。それぞれ、一般式(I)におけるRおよびRとして例示したものが挙げられる。X−は、−NH−、−N(CH)−または−O(C=O)−を示す。ポリアミドの末端との反応性に優れている−NH−がより好ましい。
次に、本発明の実施形態で用いられる末端変性ポリアミド樹脂が、前記の一般式(I)で表される末端構造および前記の一般式(II)で表される末端構造を有する、末端変性ポリアミド樹脂を得るための方法の例を説明する。
例えば、ポリアミド樹脂の原料と前記一般式(III)で表される末端変性用化合物および下記一般式(IV)で表される末端変性用化合物を、重合時に反応させる方法や、ポリアミド樹脂と末端変性用化合物とを溶融混練する方法などが挙げられる。重合時に反応させる方法としては、例えば、ポリアミド樹脂の原料と末端変性用化合物をあらかじめ混合した後、加熱して縮合を進行させる方法や、主成分となる原料の重合途中に末端変性用化合物を添加して結合させる方法などが挙げられる。
H−Y−R (IV)
上記一般式(IV)中、Rは炭素数1〜30の1価の炭化水素基を表す。前記の一般式(II)と同様に、末端変性ポリアミド樹脂の熱安定性および着色防止の観点から、Rは1価の飽和炭化水素基であることがさらに好ましい態様である。前記の一般式(III)におけるXが−NH−または−N(CH)−の場合、上記の一般式(IV)における−Y−は−O(C=O)−を表し、前記の一般式(III)におけるXが−O(C=O)−の場合、上記の一般式(IV)におけるYは−NH−または−N(CH)−を表す。
一般式(III)で表される末端変性用化合物の数平均分子量は、500〜10000であることが好ましい。数平均分子量を500以上とすることにより、溶融粘度をより低減し、含浸性をより向上させることができる。数平均分子量は、より好ましくは800以上であり、さらに好ましくは900以上である。一方、数平均分子量を10000以下とすることにより、ポリアミド樹脂の主たる構造単位との親和性をより向上させることができ、成形品の機械特性をより向上させることができる。数平均分子量は、より好ましくは5000以下であり、さらに好ましくは2500以下であり、さらに好ましくは1500以下である。
一般式(III)で表される末端変性用化合物の具体的な例としては、メトキシポリ(エチレングリコール)アミン、メトキシポリ(トリメチレングリコール)アミン、メトキシポリ(プロピレングリコール)アミン、メトキシポリ(テトラメチレングリコール)アミン、メトキシポリ(エチレングリコール)ポリ(プロピレングリコール)アミン、メトキシポリ(エチレングリコール)カルボン酸、メトキシポリ(トリメチレングリコール)カルボン酸、メトキシポリ(プロピレングリコール)カルボン酸、メトキシポリ(テトラメチレングリコール)カルボン酸、およびメトキシポリ(エチレングリコール)ポリ(プロピレングリコール)カルボン酸などが挙げられる。2種類のポリアルキレングリコールが含まれる場合、ブロック重合構造をとっていてもよく、ランダム共重合構造とすることも許容される。上記した末端変性用化合物を、2種以上用いることもできる。
また、一般式(IV)で表される末端変性用化合物の具体的な例としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、ウンデカン酸、ラウリル酸、トリデカン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、アラキン酸、セロチン酸などの脂肪族モノカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸、メチルシクロヘキサンカルボン酸などの脂環式モノカルボン酸、安息香酸、トルイル酸、エチル安息香酸、フェニル酢酸などの芳香族モノカルボン酸、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、オクチルアミン、2−エチルヘキシルアミン、ノニルアミン、デシルアミン、ウンデシルアミン、ドデシルアミン、トリデシルアミン、テトラデシルアミン、ペンタデシルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン、ノナデシルアミン、イコシルアミンなどの脂肪族モノアミン、シクロヘキシルアミン、メチルシクロヘキシルアミンなどの脂環式モノアミン、ベンジルアミン、およびβ−フェニルエチルアミンなどの芳香族モノアミンなどが挙げられる。上記した末端変性用化合物を、2種以上用いることもできる。
また、ポリアミド樹脂を与える原料としては、前述のアミノ酸、ラクタムおよび「ジアミンとジカルボン酸との混合物」が例示される。
ポリアミド樹脂の原料と末端変性用化合物とを重合時に反応させる方法により、末端変性ポリアミド樹脂を製造する場合には、ポリアミド樹脂の融点以上で反応させる溶融重合法と、ポリアミド樹脂の融点未満で反応させる固相重合法のいずれも用いることができる。一方、ポリアミド樹脂と末端変性用化合物とを溶融混練することにより、末端変性ポリアミド樹脂を製造する場合には、溶融混練温度をポリアミド樹脂の融点(Tm)よりも10℃以上40℃以下高い温度で反応させることが好ましい。例えば、押出機を用いて溶融混練する場合、押出機のシリンダー温度を前記範囲とすることが好ましい。溶融混練温度をこの範囲にすることより、末端変性用化合物の揮発とポリアミド樹脂の分解を抑制しつつ、ポリアミド樹脂の末端と末端変性用化合物とを効率的に結合させることができる。
本発明で用いられるポリアミド樹脂組成物において、リン系化合物(B)としては、例えば、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、2−[[2,4,8,10テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン−6−イル]オキシ]−N,N−ビス[2−[[2,4,8,10テトラキス(1,1−ジメチルエチル)ジベンゾ[d,f][1,3,2]ジオキサフォスフェピン−6−イル]オキシ]−エチル]エタナミン)、ジステアリル−ペンタエリスリトール−ジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、亜リン酸、次亜リン酸、二リン(+4)酸(H)、亜リン酸二ナトリウム、亜リン酸ジメチル、亜リン酸ジエチル、亜リン酸ジフェニル、亜リン酸トリメチル、亜リン酸トリエチル、亜リン酸トリフェニル、次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カルシウムなどが挙げられる。中でも、亜リン酸金属塩あるいは次亜リン酸金属塩を用いることが好ましい。亜リン酸金属塩あるいは次亜リン酸金属塩の金属としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属および亜鉛族から選ばれるものが好ましく、より好ましくはアルカリ金属であり、もっとも好ましくは次亜リン酸ナトリウムである。
本発明の樹脂組成物においては、ポリアミド樹脂(A)の含有量とリン系化合物(B)の含有量の合計を100質量部としたときのリン原子(b)の含有量が0.001質量部以上、1.000質量部以下である。リン原子の含有量が0.001質量部未満の場合、耐変色性が低下する。耐変色性をより向上させるという観点からは、含有量は、0.01質量部以上であることが好ましく、より好ましくは0.02質量部以上である。一方、リン原子の含有量が1質量部を超えると、リン系化合物(B)の自己凝集が進行することにより分散径が粗大となり、機械物性が低下しやすくなる。含有量は、好ましくは0.5質量部以下であり、より好ましくは0.3質量部以下である。
ポリアミド樹脂組成物中のリン系化合物(B)由来のリン原子換算濃度は、以下の方法により求めることができる。ポリアミド樹脂組成物を減圧乾燥する。減圧乾燥されたポリアミド樹脂組成物を炭酸ソーダ共存下において乾式灰化分解するか、または硫酸・硝酸・過塩素酸系または硫酸・過酸化水素水系において湿式分解し、リンを正リン酸とする。次いで、前記正リン酸を1mol /L 硫酸溶液中においてモリブデン酸塩と反応させて、リンモリブデン酸とし、これを硫酸ヒドラジンで還元して、生成するヘテロポリブルーの830nmの吸光度を吸光光度計(検量線法)で測定して比色定量することにより、ポリアミド樹脂組成物中のリン原子濃度を求めることができる。
ポリアミド樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、繊維状充填材(C)を含有(配合)せしめることができ、繊維状の形状を有するいずれの繊維状充填材(C)も使用することができる。繊維状充填材(C)としては、具体的には、ガラス繊維、ポリアクリロニトリル(PAN)系やピッチ系の炭素繊維、ステンレス繊維、アルミニウム繊維や黄銅繊維などの金属繊維、芳香族ポリアミド繊維などの有機繊維、石膏繊維、セラミック繊維、アスベスト繊維、ジルコニア繊維、アルミナ繊維、シリカ繊維、酸化チタン繊維、炭化ケイ素繊維、ロックウール、チタン酸カリウムウィスカー、窒化ケイ素ウィスカー、ワラステナイト、アルミナシリケートなどの繊維状、ウィスカー状充填材、ニッケル、銅、コバルト、銀、アルミニウム、鉄およびこれらの合金からなる群より選ばれる1種以上の金属で被覆されたガラス繊維、炭素繊維、芳香族ポリアミド繊維、およびポリエステル繊維などが挙げられる。これらの繊維状充填材を2種以上配合して用いることもできる。上記の繊維状充填材の中でも、成形品の強度および剛性をより向上させる観点から、ガラス繊維とPAN系の炭素繊維が好ましく用いられる。
繊維状充填材(C)の表面に、樹脂の濡れ性の改善と取り扱い性の向上を目的として、カップリング剤や集束剤等を付着させた繊維状充填材を用いることができる。カップリング剤としては、例えば、アミノ系、エポキシ系、クロル系、メルカプト系、およびカチオン系のシランカップリング剤等が挙げられ、アミノ系シラン系カップリング剤が好適に使用可能である。繊維状充填材(C)中のカップリング剤の含有量は、0.01〜1.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.03〜0.8質量%であり、さらに好ましくは、0.05〜0.6質量%である。
また、集束剤としては、例えば、無水マレイン酸系化合物、ウレタン系化合物、アクリル系化合物、エポキシ系化合物、フェノール系化合物およびこれら化合物の誘導体からなる群から選ばれた1種以上を含有する集束剤が挙げられ、ウレタン系化合物を含有する集束剤が好適に使用可能である。繊維状充填材(C)中の集束剤の含有量は、0.1〜10.0質量%であることが好ましく、より好ましくは0.3〜8.0質量%であり、さらに好ましくは、0.5〜6.0質量%である。
本発明のポリアミド樹脂組成物に用いられる繊維状充填材(C)の形態としては、溶融混練装置に添加できる形態であれば制限はなく、予め裁断されているチョップドストランド、破砕繊維および連続長繊維等が挙げられる。形態としては、生産性の観点から、チョップドストランドが好ましく利用できる。
すなわち、本発明においては、ポリアミド樹脂組成物がさらに繊維状充填材(C)を含有し、ポリアミド樹脂(A)の含有量とリン系化合物(B)の含有量の合計を100質量部としたときの繊維状充填材(C)が5質量部以上200質量部以下であることが好ましい。繊維状充填材(C)配合量が5質量部未満の場合は、樹脂ペレットを用いて得られる成形品の機械特性、特に剛性が低下する。繊維状充填材(C)配合量は10質量部以上であることが好ましく、15質量部以上がより好ましく、20質量部以上がさらに好ましく、30質量部以上が特に好ましく、40質量部以上が金属同等の剛性が得られるため最も好ましい態様である。
一方、繊維状充填材(C)の配合量が200質量部を超えると、溶融混練時の流動性が低下し、繊維状充填材同士の接触により、所望の繊維長が得られないだけでなく、生産安定性も低下する。繊維状充填材(C)の配合量は175質量部以下であることが好ましく、150質量部以下がより好ましく、125質量部以下がさらに好ましく、10質量部以下がさらに好ましい態様である。
ポリアミド樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で、安定剤、離型剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、難燃助剤、滴下防止剤、滑剤、蛍光増白剤、蓄光顔料、蛍光染料、流動改質剤、耐衝撃性改良剤、結晶核剤、無機および有機の抗菌剤、光触媒系防汚剤、赤外線吸収剤、フォトクロミック剤などの添加剤、繊維状充填材以外の充填材、および熱硬化性樹脂を配合することができる。
安定剤としては、例えば、酸化防止剤や光安定剤などを挙げることができ、例えば、ヨウ化第1銅などの銅化合物を挙げることができる。これらの安定剤を配合することにより、機械特性、成形性、耐熱性および耐久性に優れた成形品を得ることができる。
離型剤としては、例えば、脂肪酸、脂肪酸金属塩、オキシ脂肪酸、脂肪酸エステル、脂肪族部分鹸化エステル、パラフィン、低分子量ポリオレフィン、脂肪酸アミド、アルキレンビス脂肪酸アミド、脂肪族ケトン、および変性シリコーンなどを挙げることができる。これらの離型剤を配合することにより、機械特性、成形性、耐熱性および耐久性に優れた成形品を得ることができる。
また、難燃剤としては、例えば、臭素系難燃剤、塩素系難燃剤、リン系難燃剤、窒素化合物系難燃剤、シリコーン系難燃剤およびその他の無機系難燃剤などを挙げることができる。難燃性および機械特性をより向上させるという観点から、上記の難燃剤を2種以上組み合わせることが好ましい態様である。
繊維状充填材(C)以外の充填材としては、例えば、板状、粉末状および粒状などのいずれの充填材も使用することができる。このような充填剤としては、具体的には、タルク、ゼオライト、セリサイト、マイカ、カオリン、クレー、パイロフィライト、ベントナイトなどの金属珪酸塩、酸化マグネシウム、アルミナ、酸化ジルコニウム、酸化鉄などの金属酸化物、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、ドロマイトなどの炭酸塩、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの金属硫酸塩、ガラスビーズ、セラミックビーズ、窒化ホウ素、燐酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物、ガラスフレーク、ガラス粉、ガラスバルーン、カーボンブラック、シリカ、黒鉛、モンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイトなどのスメクタイト系粘土鉱物、バーミキュライト、ハロイサイト、カネマイト、ケニヤイト、燐酸ジルコニウム、燐酸チタニウムなどの各種粘土鉱物、Li型フッ素テニオライト、Na型フッ素テニオライト、Na型四珪素フッ素雲母、およびLi型四珪素フッ素雲母等の膨潤性雲母などの層状珪酸塩などが挙げられる。これらを、2種以上配合することができる。
本発明のポリアミド樹脂組成物の製造方法は、溶融混練する方法が好ましく、特に、ポリアミド樹脂(A)とリン系化合物(B)を溶融混練することによって、ポリアミド樹脂組成物にリン系化合物(B)を含有せしめる方法ことが好ましい。その際に、溶融混練装置の温度設定としては、用いられるポリアミド樹脂の融点(Tm)+30℃以上、またはガラス転移温度(Tg)+100℃以上で行うことが好ましい。
ポリアミド樹脂(A)とリン系化合物(B)を供給する溶融混練装置や原料供給位置については、ポリアミド樹脂(A)とリン系化合物(B)をあらかじめドライブレンドし、主原料供給口から供給することが好ましい。繊維状充填材(C)を同時に溶融混練する場合、特に制限はないが主原料供給口と吐出口の中間、具体的にはスクリューエレメントデザインで主原料供給口に最も近いシールゾーンおよび/またはミキシングゾーンと吐出口に最も近いシールゾーンおよび/またはミキシングゾーンの中間位置であれば、繊維状充填材(C)の繊維長のコントロールが容易となり好ましい態様である。
ポリアミド樹脂組成物を製造する溶融混練装置としては、ポリアミド樹脂(A)とリン系化合物(B)とを、適度な剪断場の下で加熱溶融混合することが可能な樹脂加工用に使用される公知の押出機、および連続式ニーダー等の溶融混練装置を使用することができる。例えば、スクリューが1本の単軸押出機およびニーダー、スクリューが2本の二軸押出機およびニーダー、スクリューが3本以上の多軸押出機およびニーダー、さらに、押出機およびニーダーが1台の押出機、押出機及びニーダーが2台繋がったタンデム押出機、溶融混練せず原料供給のみ可能なサイドフィーダーが設置された押出機およびニーダー等が挙げられる。
スクリューエレメントデザインにおいては、フルフライトスクリュー等を有する溶融または非溶融搬送ゾーン、シールリング等を有するシールゾーン、ユニメルト、およびニーディング等を有するミキシングゾーン等の組み合わせにも特に制限はなく、例えば、シールゾーンおよび/またはミキシングゾーンを2ヶ所以上有し、原料供給口を2ヶ所以上有する連続溶融混練装置が好ましく、シールゾーンおよび/またはミキシングゾーンを2ヶ所以上有し、原料供給口を2ヶ所以上有する2軸スクリュー部を有する連続溶融混練装置がさらに好ましく、シールゾーンおよび/またはミキシングゾーンを2ヶ所以上有し、原料供給口を2ヶ所以上有する2軸押出機が最も好ましい。
本発明のポリアミド樹脂組成物は、通常上記の如く製造されたペレットを射出成形して各種製品を製造することができる。射出成形においては、通常の成形方法だけでなく、適宜目的に応じて、射出圧縮成形、射出プレス成形、ガスアシスト射出成形、発泡成形(超臨界流体の注入によるものを含む)、インサート成形、インモールドコーティング成形、断熱金型成形、急速加熱冷却金型成形、二色成形、サンドイッチ成形、および超高速射出成形などの射出成形法を用いて成形品を得ることができる。これら各種成形法の利点は、既に広く知られるところである。また、成形はコールドランナー方式およびホットランナー方式のいずれも選択することができる。
また、本発明のポリアミド樹脂組成物は、押出成形により、各種異形押出成形品、シートおよびフィルムなどの形で使用することもできる。また、シートやフィルムの成形には、インフレーション法、カレンダー法およびキャスティング法なども使用可能である。更に、特定の延伸操作をかけることにより、熱収縮チューブとして成形することも可能である。また、本発明のポリアミド樹脂組成物を回転成形やブロー成形などにより中空成形品とすることも可能である。
本発明のポリアミド樹脂組成物を用いてなる成形品中に繊維状充填材(C)を含有せしめる場合、繊維状充填材(C)の数平均繊維長は、0.01〜5mmであることが好ましく、0.01〜3mmであることがより好ましい。数平均繊維長は、さらに好ましくは0.1mm以上であり、特に好ましくは0.2mm以上であり、最も好ましくは0.3mm以上である。また、数平均繊維長は、よりさらに好ましくは1.5mm以下であり、特に好ましくは1mm以下であり、最も好ましくは0.8mm以下である。成形品中の炭素繊維の数平均繊維長がこの好ましい範囲であると、十分な機械特性と優れた表面外観を得ることができる。
ここで、本発明のポリアミド樹脂組成物を用いてなる成形品中の繊維状充填材(C)の数平均繊維長とは、得られた成形品を500℃の温度で1時間焼成し、得られた灰分を水分散させた後、濾過を行い、その残渣を光学顕微鏡にて観察し、1,000本の長さを測定した結果を数平均繊維長に計算して得られたものである。具体的には、ポリアミド樹脂組成物成形品を10g程度ルツボに入れ、電気コンロにて可燃性ガスが発生しなくなるまで蒸し焼きにした後、500℃の温度に設定した電気炉内でさらに1時間焼成することにより繊維状充填材(C)の残渣のみを得る。その残渣を光学顕微鏡にて50〜100倍に拡大した画像を観察し、無作為に選んだ1,000本の長さを測定し、その測定値(mm)(小数点2桁が有効数字)から重量平均繊維長(Lw)、数平均繊維長(Ln)、および分散度(Lw/Ln)を算出する。
数平均繊維長(Ln)=Σ(Li×ni)/Σni
重量平均繊維長(Lw)=Σ(Wi×Li)/ΣWi
=Σ(πri×Li×ρ×ni×Li)/Σ(πri×Li×ρ×ni)
繊維径ri、および密度ρが一定である場合、上式は簡略化され、次の式となる。
重量平均繊維長(Lw)=Σ(Li×ni)/Σ(Li×ni)
Li:繊維状充填材の繊維長
ni:繊維長Liの繊維状充填材の本数
Wi:繊維状充填材の重量
ri:繊維状充填材の繊維径
ρ:繊維状充填材の密度。
本発明のポリアミド樹脂組成物を用いてなる成形品は、自動車部品、電気・電子部品、建築部材、スポーツ用品部品、各種容器、日用品、生活雑貨および衛生用品など各種用途に利用することができる。
具体的な用途としては、エアフローメーター、エアポンプ、サーモスタットハウジング、エンジンマウント、イグニッションホビン、イグニッションケース、クラッチボビン、センサーハウジング、アイドルスピードコントロールバルブ、バキュームスイッチングバルブ、ECUハウジング、バキュームポンプケース、インヒビタースイッチ、回転センサー、加速度センサー、ディストリビューターキャップ、コイルベース、ABS用アクチュエーターケース、ラジエータタンクのトップおよびボトム、クーリングファン、ファンシュラウド、エンジンカバー、シリンダーヘッドカバー、オイルキャップ、オイルパン、オイルフィルター、フューエルキャップ、フューエルストレーナー、ディストリビューターキャップ、ベーパーキャニスターハウジング、エアクリーナーハウジング、タイミングベルトカバー、ブレーキブースター部品、各種ケース、各種チューブ、各種タンク、各種ホース、各種クリップ、各種バルブ、各種パイプなどの自動車用アンダーフード部品、トルクコントロールレバー、安全ベルト部品、レジスターブレード、ウオッシャーレバー、ウインドレギュレーターハンドル、ウインドレギュレーターハンドルのノブ、パッシングライトレバー、サンバイザーブラケット、各種モーターハウジングなどの自動車用内装部品、ルーフレール、フェンダー、ガーニッシュ、バンパー、ドアミラーステー、スポイラー、フードルーバー、ホイールカバー、ホイールキャップ、グリルエプロンカバーフレーム、ランプリフレクター、ランプベゼル、ドアハンドルなどの自動車用外装部品、リレーケース、コイルボビン、光ピックアップシャーシ、モーターケース、ノートパソコンのハウジング、シャーシおよび内部部品、CRTディスプレーハウジングおよび内部部品、プリンターハウジングおよび内部部品、携帯電話、モバイルパソコン、ハンドヘルド型モバイルなどの携帯端末ハウジング、シャーシおよび内部部品、記録媒体(CD、DVD、PD、FDDなど)ドライブのハウジング、シャーシおよび内部部品、コピー機のハウジング、シャーシおよび内部部品、ファクシミリのハウジング、シャーシおよび内部部品、パラボラアンテナなどの電気・電子部品、VTR部品、テレビ部品、アイロン、ヘアードライヤー、炊飯器部品、電子レンジ部品、音響部品、ビデオカメラ、プロジェクターなどの映像機器部品、レーザーディスク(登録商標)、コンパクトディスク(CD)、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−R、DVD−RW、DVD−RAM、ブルーレイディスクなどの光記録媒体の基板、照明部品およびハウジング、シャーシ部品、冷蔵庫部品、エアコン部品、タイプライター部品、ワードプロセッサー部品などの家庭・事務電気製品部品、電子楽器、家庭用ゲーム機、携帯型ゲーム機などのハウジング、シャーシおよび内部部品、各種ギヤー、各種ケース、センサー、LEPランプ、コネクター、ソケット、抵抗器、リレーケース、スイッチ、コイルボビン、コンデンサー、バリコンケース、光ピックアップ、発振子、各種端子板、変成器、プラグ、プリント配線板、チューナー、スピーカー、マイクロフォン、ヘッドホン、小型モーター、磁気ヘッドベース、パワーモジュール、半導体、液晶、FDDキャリッジ、FDDシャーシ、モーターブラッシュホルダー、トランス部材、コイルボビンなどの電気・電子部品、サッシ戸車、ブラインドカーテンパーツ、配管ジョイント、カーテンライナー、ブラインド部品、ガスメーター部品、水道メーター部品、湯沸かし器部品、ルーフパネル、断熱壁、アジャスター、プラ束、天井釣り具、階段、ドアー、床などの建築部材、コンクリート型枠などの土木関連部材、釣竿部品、リールのハウジング及びシャーシ部品、ルアー部品、クーラーボックス部品、ゴルフクラブ部品、テニス、バドミントン、スカッシュ等のラケット部品、スキー板部品、スキーストック部品、自転車のフレーム、ペダル、フロントフォーク、ハンドルバー、クランク、シートピラー、車輪等の部品、ボート用オール、スポーツ用ヘルメット、フェンス構成部材、ゴルフティー、剣道用防具(面)および竹刀などのスポーツ用品部品、歯車、ねじ、バネ、軸受、レバー、キーステム、カム、ラチェット、ローラー、給水部品、玩具部品、結束バンド、クリップ、ファン、パイプ、洗浄用治具、モーター部品、顕微鏡、双眼鏡、カメラ、時計などの機械部品、育苗用ポット、植生杭、農ビの止め具などの農業部材、骨折補強材などの医療用品、トレイ、ブリスター、ナイフ、フォーク、スプーン、チューブ、プラスチック缶、パウチ、コンテナー、タンク、カゴなどの容器・食器類、ホットフィル容器類、電子レンジ調理用容器類化粧品容器、ICトレイ、文房具、排水溝フィルター、カバン、イス、テーブル、クーラーボックス、クマデ、ホースリール、プランター、ホースノズル、食卓、机の表面、家具パネル、台所キャビネット、ペンキャップ、およびガスライターなどとして有用である。特に、自動車用内装部品、自動車用外装部品、スポーツ用品部材および各種電気・電子部品のハウジング、シャーシおよび内部部品として有用である。
本発明のポリアミド樹脂組成物およびその成形品は、リサイクルすることが可能である。例えば、ポリアミド樹脂ペレットやポリアミド樹脂成形品を粉砕し、好ましくは粉末状とした後、必要に応じて添加剤を配合して溶融混練および成形することにより、ポリアミド樹脂成形品を得ることができる。
次に実施例を示し、本発明のポリアミド樹脂組成物およびその成形品について更に具体的に説明する。各実施例および各比較例における特性評価は、下記の方法にしたがって行った。
[原料]
実施例および比較例において、原料は次に示す原料を用いた。
・ε−カプロラクタム:和光純薬工業(株)製 和光特級。
[[一般式(III)で表される末端変性用化合物]]
・下記の構造式(化学式1)で表されるメトキシポリ(エチレングリコール)ポリ(プロピレングリコール)アミン:HUNTSMAN製“JEFFAMINE”(登録商標) M1000 (数平均分子量Mn1000)。
・下記の構造式(化学式2)で表されるメトキシポリ(エチレングリコール)ポリ(プロピレングリコール)アミン:HUNTSMAN製“JEFFAMINE”(登録商標) M2070 (数平均分子量Mn2000)。
・下記の構造式(化学式3)で表されるメトキシエチレングリコールポリ(プロピレングリコール)アミン:HUNTSMAN製“JEFFAMINE”(登録商標) M600 (数平均分子量Mn600)。
[[一般式(IV)で表される末端変性用化合物]]
・安息香酸:和光純薬工業(株)製 試薬特級
・酢酸:和光純薬工業(株)製 試薬特級
・ステアリン酸:和光純薬工業(株)製 試薬特級
・セロチン酸:東京化成工業(株)製。
[リン系化合物(B)]
<B−1>次亜リン酸ナトリウム一水和物:和光純薬工業(株)製のホスフィン酸ナトリウム一水和物(試薬)を用いた。
<B−2>ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト:(株)アデカ製のPEP36(商品名)
[繊維状充填材(C)]
<C−1>ガラス繊維“ECS03−350”(セントラル硝子(株)製)を使用した。
[測定法]
[相対粘度(ηr)]
実施例および比較例により得られたポリアミド樹脂の、樹脂濃度0.01g/mlの98%硫酸溶液について、25℃の温度でオストワルド式粘度計を用いて相対粘度を測定した。
[分子量]
実施例および比較例により得られたポリアミド樹脂2.5mgを、ヘキサフルオロイソプロパノール(0.005N−トリフルオロ酢酸ナトリウム添加)4mlに溶解し、得られた溶液を0.45μmのフィルターでろ過した。得られた溶液を用いて、GPC測定により数平均分子量(Mn)および重量平均分子量(Mw)(溶融滞留前重量平均分子量)を測定した。測定条件を、次に示す。
・ポンプ:e−Alliance GPC system(Waters製)
・検出器:示差屈折率計 Waters 2414(Waters製)
・カラム:Shodex HFIP−806M(2本)+HFIP−LG
・溶媒:ヘキサフルオロイソプロパノール(0.005N−トリフルオロ酢酸ナトリウム添加)
・流速:1ml/分
・試料注入量:0.1ml
・温度:30℃
・分子量基準物質:ポリメチルメタクリレート。
[アミノ末端基量[NH]]
実施例および比較例により得られたポリアミド樹脂組成物0.5gを精秤し、フェノール/エタノール混合溶液(混合比(質量比):83.5/16.5)25mlを加えて室温で溶解した後、チモールブルーを指示薬として、0.02規定の塩酸で滴定してアミノ末端基量(mol/t)を求めた。
[カルボキシル末端基量[COOH]]
実施例および比較例により得られたポリアミド樹脂組成物0.5gを精秤し、ベンジルアルコール20mlを加えて195℃の温度で溶解した後、フェノールフタレインを指示薬として、0.02規定の水酸化カリウムのエタノール溶液を用いて、195℃の状態で滴定してカルボキシル末端基量(mol/t)を求めた。
[末端構造の同定、ならびに、一般式(I)の末端構造の含有量および一般式(II)の末端構造の含有量の定量]
実施例および比較例により得られたポリアミド樹脂組成物について、日本電子(株)製FT−NMR JNM−AL400を用いてH−NMR測定を実施した。まず、測定溶媒として重水素化硫酸を用いて、試料濃度50mg/mLの溶液を調製した。積算回数256回にて、ポリアミド樹脂のH−NMR測定を実施した。一般式(I)で表される末端構造におけるRおよびR由来部分のピーク、一般式(II)で表される末端構造におけるR部分由来のピークおよびポリアミド樹脂骨格の繰り返し構造単位由来のピークを同定した。各ピークの積分強度を算出し、算出した積分強度と、それぞれの構造単位中の水素原子数とから、ポリアミド樹脂における一般式(I)で表される末端構造の含有量[I](mol/t、質量%)(滞留前含有量)および一般式(II)で表される末端構造の含有量[II](mol/t、質量%)をそれぞれ算出した。
[熱特性]
TAインスツルメント社製示差走査熱量計(DSC Q20)を用いて、実施例および比較例により得られたポリアミド樹脂5〜7mgを秤量し、窒素雰囲気下、20℃の温度から昇温速度20℃/分で250℃の温度まで昇温した。昇温したときに現れる吸熱ピークの頂点をTm(融点)とした。
[溶融粘度]
実施例および比較例により得られたポリアミド樹脂を、80℃の温度の真空乾燥器中で12時間以上乾燥した。溶融粘度の測定装置として、キャピラリーフローメーター((株)東洋精機製作所製、キャピログラフ1C型)を用いて、径0.5mm、長さ5mmのオリフィスにて、融点+60℃、せん断速度9728sec−1の条件で溶融粘度(滞留前溶融粘度)を測定した。ただし、ポリアミド樹脂を溶融させるため、5分間滞留させた後に測定を行った。この溶融粘度の値が小さいほど、高い流動性を有することを示す。
[溶融粘度保持率]
実施例および比較例により得られたポリアミド樹脂を、80℃の温度の真空乾燥器中で12時間以上乾燥した。キャピラリーフローメーター((株)東洋精機製作所製、キャピログラフ1C型)を用いて、径0.5mm、長さ5mmのオリフィスにて、融点+60℃で60分間溶融滞留後、せん断速度9728sec−1の条件で溶融粘度(滞留後溶融粘度)を測定した。前述の方法により測定した溶融粘度(滞留前溶融粘度)と溶融粘度(滞留後溶融粘度)から、(滞留後溶融粘度/滞留前溶融粘度)×100により溶融粘度保持率[%]を算出した。
[重量平均分子量保持率]
実施例および比較例により得られたポリアミド樹脂を、80℃の温度の真空乾燥器中で12時間以上乾燥した。キャピラリーフローメーター((株)東洋精機製作所製、キャピログラフ1C型)を用いて、径0.5mm、長さ5mmのオリフィスにて、融点+60℃で60分間溶融滞留を行った。溶融滞留後のポリアミド樹脂について、前述の分子量測定方法と同様のGPC測定により重量平均分子量(Mw)(滞留後重量平均分子量)を測定した。前述の方法により測定した重量平均分子量(溶融滞留前重量平均分子量)と重量平均分子量(滞留後重量平均分子量)から、(滞留後重量平均分子量/滞留前重量平均分子量)×100により重量平均分子量保持率[%]を算出した。
[一般式(I)で表される末端構造の含有量の保持率、一般式(II)で表される末端構造の含有量の保持率]
実施例および比較例により得られたポリアミド樹脂を、80℃の温度の真空乾燥器中で12時間以上乾燥した。キャピラリーフローメーター((株)東洋精機製作所製、キャピログラフ1C型)を用いて、径0.5mm、長さ5mmのオリフィスにて、融点+60℃で60分間溶融滞留を行った。溶融滞留後のポリアミド樹脂について、前述の末端構造含有量測定方法と同様のH−NMR測定によりポリアミド樹脂における一般式(I)で表される末端構造の含有量[I](mol/t)(滞留後含有量)を算出した。前述の方法により測定した一般式(I)で表される末端構造の含有量[I](mol/t)(滞留前含有量)と一般式(I)で表される末端構造の含有量[I](mol/t)(滞留後含有量)から、(滞留後含有量/滞留前含有量)×100により含有量保持率を算出した。
[質量減少率]
実施例および比較例により得られたポリアミド樹脂を、80℃の温度の真空乾燥器中で12時間以上乾燥した。任意部分を20mg切り出し、熱重量分析装置(パーキンエルマー社製、TGA7)を用い、窒素ガス雰囲気下、ポリアミド樹脂の融点+60℃の温度で40分間保持し、熱処理前後の質量減少率[%]を測定した。
[引張破断伸度]
実施例および比較例により得られたポリアミド樹脂を、80℃の温度の真空乾燥器中で12時間以上乾燥した。東芝機械(株)製IS55EPN射出成形機を用いて、シリンダー温度は、ポリアミド樹脂の融点(Tm)+60℃とし、金型温度は80℃とし、射出時間と保圧時間は合わせて10秒、冷却時間は10秒の成形サイクル条件で、試験片厚み1/25インチ(約1.0mm)のASTM4号ダンベルの評価用試験片を射出成形した。得られたASTM4号ダンベル型試験片を、“テンシロン”(登録商標)UTA−2.5T(オリエンテック社製)に供し、ASTM−D638に準じて、23℃、湿度50%の雰囲気下で、歪み速度10mm/分で引張試験を行い、引張破断伸度を測定した。
(実施例1)
ε−カプロラクタム20g、イオン交換水20g、“JEFFAMINE”M1000 1.6g、および安息香酸0.14gを反応容器に仕込み密閉し、窒素置換した。反応容器外周にあるヒーターの設定温度を290℃とし、加熱を開始した。缶内圧力が1.0MPaに到達した後、水分を系外へ放出させながら缶内圧力1.0MPaに保持し、缶内温度が240℃になるまで昇温した。缶内温度が240℃に到達した後、ヒーターの設定温度を270℃に変更し、1時間かけて常圧となるよう缶内圧力を調節した(常圧到達時の缶内温度:243℃)。続けて、缶内に窒素を流しながら(窒素フロー)240分間保持してポリアミド樹脂(末端変性ポリアミド6樹脂)を得た(最高到達温度:253℃)。続いて、得られたポリアミド樹脂(末端変性ポリアミド6樹脂)を、イオン交換水でソックスレー抽出を行い、未反応のε−カプロラクタムおよび末端変性用化合物を除去し、80℃の温度の真空乾燥器中で12時間乾燥した。このようにして得られたポリアミド樹脂(末端変性ポリアミド6樹脂)の相対粘度は1.81、重量平均分子量は3.0万、融点(Tm)は220℃、溶融粘度は5.5Pa・sであった。また、得られたポリアミド樹脂は以下の化学式4にて示される構造と以下の化学式5で示される構造を末端に有する末端変性ポリアミド6樹脂を含むものであった。
得られたポリアミド樹脂(末端変性ポリアミド6樹脂)のその他の物性を、表に示す。
次に、スクリュー回転数200rpmに設定した2軸押出機(日本製鋼所製TEX30α)を用い、ポリアミド6樹脂およびリン系化合物の合計100質量部に対して、リン原子の含有量が0.051質量部となるようにリン系化合物<B−1>0.15質量部をドライブレンドした後、主フィーダーより供給し、ダイから吐出されたストランドを水中にて冷却、ストランドカッターにより長さ3.0mm長にカットしてペレット化を実施し、ポリアミド樹脂組成物(ペレット)を得た。得られたポリアミド樹脂組成物の物性を表に示す。
得られたポリアミド樹脂組成物(ペレット)を、80℃の温度の真空乾燥器中で12時間乾燥した後、下記に示す各特性を測定した。測定結果を表に示す。
[溶融粘度]
溶融粘度の測定装置として、キャピラリーフローメーター((株)東洋精機製作所製、キャピログラフ1C型)を用いて、径0.5mm、長さ5mmのオリフィスにて、ポリアミド樹脂の融点+60℃、せん断速度9728sec−1の条件でポリアミド樹脂組成物の溶融粘度(滞留前溶融粘度)を測定した。ただし、ポリアミド樹脂組成物を溶融させるため、5分間滞留させた後に測定を行った。この溶融粘度の値が小さいほど、高い流動性を有することを示す。
[溶融粘度保持率]
キャピラリーフローメーター((株)東洋精機製作所製、キャピログラフ1C型)を用いて、径0.5mm、長さ5mmのオリフィスにて、ポリアミド樹脂の融点+60℃で60分間溶融滞留後、せん断速度9728sec−1の条件でポリアミド樹脂組成物の溶融粘度(滞留後溶融粘度)を測定した。前述の方法により測定した溶融粘度(滞留前溶融粘度)と溶融粘度(滞留後溶融粘度)から、(滞留後溶融粘度/滞留前溶融粘度)×100により溶融粘度保持率[%]を算出した。
[成形加工性]
東芝機械(株)製IS55EPN射出成形機を用いて、シリンダー温度は、ポリアミド樹脂の融点(Tm)+5℃、+10℃、+15℃の3種類とし、金型温度は80℃とし、射出時間と保圧時間は合わせて10秒、冷却時間は10秒の成形サイクル条件で、試験片厚み1/25インチ(約1.0mm)のポリアミド樹脂組成物からなるASTM4号ダンベルを射出成形した。射出成形を5回実施し、成形片を5回全て採取できた場合は○、5回中1回でも金型への充填不十分または成形品を採取できなかった場合を×とした。
[耐変色性]
射出成形機(住友重機械工業(株)製SG75H−MIV)を用いて、シリンダー温度は、ポリアミド樹脂の融点(Tm)+60℃とし、金型温度は80℃とし、射出時間と保圧時間は合わせて10秒、冷却時間は10秒の成形サイクル条件で、80×80×3mm厚の角板(フィルムゲート)を射出成形した。スガ試験機(株) 製S M カラーコンピューター、型式SM−3を用い、前記角板のYI値(黄色度) を測定した。次に、前記角板を120℃の大気下で2時間熱処理し、同様にYI値を測定し、熱処理前後のYI値の差であるΔYIを算出した。ΔYIが小さいほど耐変色性に優れる。
(実施例2〜31、実施例40〜42、および、比較例1〜5)
原料を表に示す組成に変更し、かつ缶内圧力を常圧とした後、缶内に窒素を流しながら保持する時間(窒素フロー時間)を表に示す時間に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリアミド6樹脂を得た。ここで、実施例2〜9、14〜28、40〜42、比較例4、5にて得られたポリアミド樹脂は以下の化学式4にて示される構造と以下の化学式5で示される構造を末端に有する末端変性ポリアミド6樹脂を含むものであった。
また、実施例10〜12で得られたポリアミド樹脂は以下の化学式6にて示される構造と以下の化学式5で示される構造を末端に有する末端変性ポリアミド6樹脂を含むものであった。
また、実施例13で得られたポリアミド樹脂は以下の化学式7にて示される構造と以下の化学式5で示される構造を末端に有する末端変性ポリアミド6樹脂を含むものであった。
また、実施例29〜31で得られたポリアミド樹脂は以下の化学式4にて示される構造を末端に有する末端変性ポリアミド6樹脂を含むものであった。
また、比較例1〜3にて得られたポリアミド6樹脂は末端変性ポリアミド6樹脂を含まず、アミノ末端基とカルボキシル末端基のみを有する樹脂であった。
その後、実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物(ペレット)を得た後、各特性を評価した。結果を、表に示す。
(実施例32)
原料を表に示す組成に変更し、かつ缶内圧力を常圧とした後、缶内に窒素を流しながら保持する時間(窒素フロー時間)を表に示す時間に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリアミド6樹脂を得た。ここで、実施例32にて得られたポリアミド樹脂は以下の化学式4にて示される構造と以下の化学式8で示される構造を末端に有する末端変性ポリアミド6樹脂を含むものであった。
その後、実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物(ペレット)を得た後、各特性を評価した。結果を表に示す。
(実施例33、34)
原料を表に示す組成に変更し、かつ缶内圧力を常圧とした後、缶内に窒素を流しながら保持する時間(窒素フロー時間)を表に示す時間に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリアミド6樹脂を得た。ここで、実施例32にて得られたポリアミド樹脂は以下の化学式4にて示される構造と以下の化学式9で示される構造を末端に有する末端変性ポリアミド6樹脂を含むものであった。
その後、実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物(ペレット)を得た後、各特性を評価した。結果を表に示す。
(実施例35、36)
原料を表に示す組成に変更し、かつ缶内圧力を常圧とした後、缶内に窒素を流しながら保持する時間(窒素フロー時間)を表に示す時間に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリアミド6樹脂を得た。ここで、得られたポリアミド樹脂は以下の化学式4にて示される構造と以下の化学式10で示される構造を末端に有する末端変性ポリアミド6樹脂を含むものであった。
その後、実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物(ペレット)を得た後、各特性を評価した。結果を表に示す。
(実施例37〜39)
原料を表に示す組成に変更し、かつ缶内圧力を常圧とした後、缶内に窒素を流しながら保持する時間(窒素フロー時間)を表に示す時間に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリアミド6樹脂を得た。ここで、得られたポリアミド樹脂は以下の化学式6にて示される構造と以下の化学式10で示される構造を末端に有する末端変性ポリアミド6樹脂を含むものであった。
その後、実施例1と同様にしてポリアミド樹脂組成物(ペレット)を得た後、各特性を評価した。結果を表に示す。
(実施例43)
原料を表に示す組成に変更し、かつ缶内圧力を常圧とした後、缶内に窒素を流しながら保持する時間(窒素フロー時間)を表に示す時間に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてポリアミド樹脂(末端変性ポリアミド6樹脂)を得た。得られたポリアミド樹脂は以下の化学式4にて示される構造と以下の化学式5で示される構造を末端に有する末端変性ポリアミド6樹脂を含むものであった。
次に、スクリュー回転数200rpmに設定した2軸押出機(日本製鋼所製TEX30α)を用い、得られた末端変性ポリアミド6樹脂およびリン系化合物の合計100質量部に対して、リン原子の含有量が0.051質量部となるようにリン系化合物<B−1>0.15質量部をドライブレンドした後、主フィーダーより供給し、繊維状充填材<C−1>をサイドフィーダーより溶融樹脂中に供給し、ダイから吐出されたストランドを水中にて冷却、ストランドカッターにより長さ3.0mm長にカットしてペレット化を実施し、ポリアミド樹脂組成物(ペレット)を得た。結果を表に示す。
(比較例6)
原料を表に示す組成に変更し、かつ缶内圧力を常圧とした後、缶内に窒素を流しながら保持する時間(窒素フロー時間)を表に示す時間に変更したこと以外は、実施例43と同様にしてポリアミド6樹脂を得た。得られたポリアミド6樹脂は末端変性ポリアミド6樹脂を含まず、アミノ末端基とカルボキシル末端基のみを有する樹脂であった。
その後、実施例43と同様にしてポリアミド樹脂組成物(ペレット)を得た後、各特性を評価した。結果を表に示す。
[繊維長]
実施例43および比較例6で得られた、繊維状充填材(C)を含有するポリアミド樹脂組成物(ペレット)を80℃の温度の真空乾燥器中で12時間乾燥した後、射出成形機(住友重機械社製SG75H−MIV)を使用し、樹脂温度280℃、射出速度100mm/sec、射出圧を下限圧(最低充填圧力)+1MPaでそれぞれ射出成形を行った。
射出成形で得られた試験片からサンプル10gを切り出し、500℃の温度に設定した電気炉中で1時間焼成した後、イオン交換水に分散し、濾過を行い、その残渣を光学顕微鏡で50倍の倍率で観察しながら、無作為に選んだ1,000本の長さを測定した。得られた測定値から、下記式により、重量平均繊維長(Lw)と数平均繊維長(Ln)を算出した。
数平均繊維長(Ln)=Σ(Li×ni)/Σni
重量平均繊維長(Lw)=Σ(Li×ni)/Σ(Li×ni)
Li:繊維状充填材の繊維長
ni:繊維長Liの繊維状充填材の本数。
結果を表に示す。
実施例1〜42と比較例1〜5の比較により、および、実施例43と比較例6の比較により、ポリマーの主鎖を構成する繰り返し構造単位とは異なる構造単位から構成される構造をポリマーの末端基に有する末端変性ポリアミド樹脂を含有し、さらにリン系化合物を特定範囲で含有するポリアミド樹脂組成物は、溶融滞留時の溶融粘度の上昇の抑制(溶融滞留時の熱安定性)と耐変色性を両立することができることがわかる。
また、実施例29と実施例30および実施例31との比較から、ならびに、実施例37と実施例39との比較から、一般式(I)で表される末端構造の含有量を特定の範囲とすることで、ポリアミド樹脂組成物の溶融滞留時の熱安定性がより高まり、成形品の耐変色性もより向上することがわかる。
実施例1および実施例23と実施例28との比較から、ならびに、実施例37と実施例38の比較から、一般式(II)で表される末端構造の含有量を特定の範囲とすることにより、ポリアミド樹脂組成物の溶融滞留時の熱安定性がより高まり、酸化劣化時の成形品の耐変色性もより向上することがわかる。
また、実施例1および実施例23と実施例27および実施例29との比較から、一般式(II)で表される末端構造の含有量を特定の範囲とすることにより、ポリアミド樹脂組成物の溶融滞留時の熱安定性がより高まり、酸化劣化時の成形品の耐変色性もより向上することがわかる。
実施例9と実施例14との比較から、ならびに、実施例2、実施例23、および実施例25と実施例15の比較から、一般式(I)で表される末端構造の含有量[I]と一般式(II)で表される末端構造の含有量[II]の合計([I]+[II])を250mol/t以下とすることにより、ポリアミド樹脂組成物の溶融滞留時の熱安定性がより高まることがわかる。
一方、実施例1、実施例3〜5、実施例8、実施例24、および実施例26と実施例16の比較から、一般式(I)で表される末端構造の含有量[I]と一般式(II)で表される末端構造の含有量[II]の合計([I]+[II])を60mol/t以上とすることにより、ポリアミド樹脂組成物の溶融滞留時の熱安定性がより高まることがわかる。
また、実施例2、実施例23、および実施例25と実施例17、および実施例19との比較から、ならびに、実施例1、実施例3〜5、実施例8、実施例24、および実施例26と実施例18の比較から、一般式(II)で表される末端構造の含有量[mol/t]に対する一般式(I)で表される末端構造の含有量[mol/t]の比([I]/[II])を2.5以下とすることにより、ポリアミド樹脂組成物の溶融滞留時の熱安定性がより高まることがわかる。
一方、実施例2、実施例23、および25と実施例21との比較から、ならびに、実施例1、実施例3〜5、実施例8、実施例24、および実施例26と実施例20の比較から、般式(II)で表される末端構造の含有量[mol/t]に対する一般式(I)で表される末端構造の含有量[mol/t]の比([I]/[II])を0.3以上とすることにより、ポリアミド樹脂組成物の溶融滞留時の熱安定性がより高まることがわかる。
実施例7と実施例22の比較から、アミノ末端基の含有量[NH]とカルボキシル末端基の含有量[COOH]の合計を50mol/t以上とすることにより、成形加工性により優れると同時に、酸化劣化時の成形品の耐変色性により優れることがわかる。
一方、実施例2と実施例23、および実施例25の比較から、アミノ末端の含有量[NH]とカルボキシル末端基の含有量[COOH]の合計を150mol/t以下とすることにより、ポリアミド樹脂組成物の溶融滞留時の熱安定性がより高まり、同時に、ポリアミド樹脂組成物を用いてなる成形品は、酸化劣化時の耐変色性により優れることがわかる。
また、実施例1、実施例3〜5、および実施例8と実施例24の比較から、カルボキシル末端基の含有量[mol/t]に対するミノ末端の含有量[mol/t]比([NH]/[COOH])を0.5以上とすることにより、ポリアミド樹脂組成物の溶融滞留時の熱安定性がより高まり、同時に、ポリアミド樹脂組成物を用いてなる成形品は、酸化劣化時の耐変色性により優れることがわかる。
一方、実施例1、実施例3〜5、および実施例8と実施例26の比較から、カルボキシル末端基の含有量[mol/t]に対するミノ末端の含有量[mol/t]比([NH]/[COOH])を2.5以下とすることにより、ポリアミド樹脂組成物の溶融滞留時の熱安定性がより高まり、同時に、ポリアミド樹脂組成物を用いてなる成形品は、酸化劣化時の耐変色性により優れることがわかる。

Claims (9)

  1. ポリアミド樹脂(A)およびリン系化合物(B)を含有するポリアミド樹脂組成物であって、
    ポリアミド樹脂(A)は末端変性ポリアミド樹脂(a)を含有し、
    当該末端変性ポリアミド樹脂(a)が、ポリマーの主鎖を構成する繰り返し構造単位とは異なる構造単位から構成される構造(末端構造)をポリマーの末端に有する樹脂であり、
    ポリアミド樹脂(A)の含有量とリン系化合物(B)の含有量の合計を100質量部としたときのリン原子(b)の含有量が0.001質量部以上、1.000質量部以下である、ポリアミド樹脂組成物。
  2. 前記末端変性ポリアミド樹脂(a)が下記一般式(I)で表される末端構造を有するポリアミド樹脂を含有し、
    ポリアミド樹脂(A)とリン系化合物(B)の合計含有量に対する、下記一般式(I)で表される末端構造の含有率が1質量%以上、20質量%以下である、請求項1に記載のポリアミド樹脂組成物。
    −X−(R−O)−R (I)
    (上記一般式(I)中、mは2〜100の範囲を表す。Rは炭素数2〜10の2価の炭化水素基を、Rは炭素数1〜30の1価の炭化水素基をそれぞれ表す。−X−は−NH−、−N(CH)−または−(C=O)−を表す。一般式(I)中に含まれるm個のRは、同じでも異なってもよい。)
  3. 前記末端変性ポリアミド樹脂(a)が、さらに下記一般式(II)で表される末端構造を有するポリアミド樹脂を含有し
    ポリアミド樹脂(A)とリン系化合物(B)の合計含有量に対する、下記一般式(II)で表される末端構造の含有率が0.1質量%以上、5.0質量%以下である、請求項2に記載のポリアミド樹脂組成物。
    −Y−R (II)
    (上記一般式(II)中、Rは炭素数1〜30の1価の炭化水素基を表す。前記一般式(I)におけるXが−NH−または−N(CH)−の場合、上記一般式(II)における−Y−は−(C=O)−を表し、前記一般式(I)におけるXが−(C=O)−の場合、上記一般式(II)におけるYは−NH−または−N(CH)−を表す。)
  4. 前記リン系化合物(B)が、亜リン酸、次亜リン酸およびそれらの金属塩からなる群より選ばれる少なくとも1つである、請求項1〜3のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
  5. 末端変性ポリアミド樹脂(a)が、前記一般式(I)で表される末端構造を有する末端変性ポリアミド樹脂と、前記一般式(II)で表される末端構造を有する末端変性ポリアミド樹脂を含有し、
    ポリアミド樹脂(A)1t中に含まれる、前記一般式(I)で表される末端構造の含有量[mol/t]と前記一般式(II)で表される末端構造の含有量[mol/t]の合計が60〜250[mol/t]であり、かつ
    前記一般式(II)で表される末端構造の含有量[mol/t]に対する前記一般式(I)で表される末端構造の含有量[mol/t]の比((I)/(II))が0.5〜2.5である請求項3または4のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
  6. 前記ポリアミド樹脂(A)が、アミノ末端基を有するポリアミド樹脂と、カルボキシル末端基を有するポリアミド樹脂を含有し、
    ポリアミド樹脂(A)1t中に含まれる、アミノ末端基の含有量とカルボキシル末端基の合計が50〜150[mol/t]であり、
    カルボキシル末端基の含有量[mol/t]に対するアミノ末端基の含有量[mol/t]の比(アミノ末端基の含有量/カルボキシル末端基の含有量)が0.5〜2.5である、請求項1〜5のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物。
  7. さらに繊維状充填材(C)を含有し、
    ポリアミド樹脂(A)の含有量とリン系化合物(B)の含有量の合計を100質量部としたときの繊維状充填材(C)の含有量が5〜200質量部である、ポリアミド樹脂組成物。
  8. 請求項1〜7のいずれかに記載のポリアミド樹脂組成物を用いてなる成形品。
  9. 成形品が、射出成形品である請求項8記載の成形品。
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