JP2011074363A - ポリアミド組成物を含む自動車部品 - Google Patents

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Abstract

【課題】流動性、強度、剛性、靭性及び低吸水性に優れ、さらに高温剛性、耐熱エージング性、耐振動疲労性、耐LLC性及び表面外観にも優れる自動車部品を提供する。
【解決手段】(A)(a)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、(b)少なくとも50モル%の主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを含むジアミンとを重合させたポリアミドと、
(B)無機充填材と、
を、含有するポリアミド組成物を含む、自動車部品。
【選択図】なし

Description

本発明は、ポリアミド組成物を含む自動車部品に関する。
ポリアミド6及びポリアミド66(以下、それぞれ、「PA6」及び「PA66」と略称する場合がある。)などに代表されるポリアミドは、成形加工性、機械物性又は耐薬品性に優れていることから、自動車用、電気及び電子用、産業資材用、工業材料用、日用及び家庭品用などの各種部品材料として広く用いられている。
ところで自動車産業においては、環境に対する取り組みとして、排出ガス低減のために、金属代替による車体軽量化の要求がある。このような要求に応えるために、外装材料や内装材料などにポリアミドが一段と用いられるようになっており、ポリアミド材料に対する耐熱性、強度、及び外観などの要求特性のレベルは一層向上している。中でも、エンジンルーム内の温度も上昇傾向にあるため、ポリアミド材料に対する高耐熱化の要求が強まっている。
また、家電などの電気及び電子産業において、表面実装(SMT)ハンダの鉛フリー化に対応すべく、ハンダの融点上昇に耐えることができるように、ポリアミド材料の高耐熱化が要求されている。
PA6及びPA66などのポリアミドでは、融点が低く、耐熱性の点でこれらの要求を満たすことができない。
PA6及びPA66などの従来のポリアミドの前記問題点を解決するために、高融点ポリアミドが提案されている。具体的には、テレフタル酸とヘキサメチレンジアミンからなるポリアミド(以下、「PA6T」と略称する場合がある。)などが提案されている。
しかしながら、PA6Tは、融点が370℃程度という高融点ポリアミドであるため、溶融成形により成形品を得ようとしても、ポリアミドの熱分解が激しく起こり、十分な特性を有する成形品を得ることが難しい。
PA6Tの前記問題点を解決するために、PA6TにPA6及びPA66などの脂肪族ポリアミドや、イソフタル酸とヘキサメチレンジアミンからなる非晶性芳香族ポリアミド(以下、「PA6I」と略称する場合がある。)などを共重合させ、融点を220〜340℃程度にまで低融点化したテレフタル酸とヘキサメチレンジアミンを主成分とする高融点半芳香族ポリアミド(以下、「6T系共重合ポリアミド」と略称する場合がある。)などが提案されている。
6T系共重合体ポリアミドとして、特許文献1には、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンからなり、脂肪族ジアミンがヘキサメチレンジアミン及び2−メチルペンタメチレンジアミンの混合物である芳香族ポリアミド(以下、「PA6T/2MPDT」と略称する場合がある。)が開示されている。
また、芳香族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンからなる芳香族ポリアミドに対して、アジピン酸とテトラメチレンジアミンからなる高融点脂肪族ポリアミド(以下、「PA46」と略称する場合がある。)や、脂環族ジカルボン酸と脂肪族ジアミンからなる脂環族ポリアミドなどが提案されている。
特許文献2及び3には、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸とヘキサメチレンジアミンからなる脂環族ポリアミド(以下、「PA6C」と略称する場合がある。)と他のポリアミドとの半脂環族ポリアミド(以下、「PA6C共重合ポリアミド」と略称する場合がある。)が開示されている。
さらに、特許文献2には、ジカルボン酸単位として1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を1〜40%配合した半脂環族ポリアミドの電気及び電子部材はハンダ耐熱性が向上することが開示され、特許文献3には、自動車部品では、流動性及び靭性などに優れることが開示されている。
さらに、特許文献4には、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含むジカルボン酸単位と2−メチル−1,8−オクタンジアミンを含むジアミン単位からなるポリアミドが耐光性、靭性、成形性、軽量性、及び耐熱性などに優れることが開示されている。また、該ポリアミドの製造方法として、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,9−ノナンジアミンを230℃以下で反応してプレポリマーを作り、そのプレポリマーを230℃で固相重合し融点311℃のポリアミドを製造することが開示されている。
また、特許文献5には、トランス/シス比が50/50〜97/3である1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を原料として用いたポリアミドが、耐熱性、低吸水性、及び耐光性などに優れることが開示されている。
特表平6−503590号公報 特表平11−512476号公報 特表2001−514695号公報 特開平9−12868号公報 国際公開第2002/048239号パンフレット
しかしながら、6T系共重合ポリアミドは、低吸水性、高耐熱性、及び高耐薬品性という特性を有しているものの、流動性が低く成形性や成形品表面外観が不十分であり、靭性及び耐光性に劣る。そのため、外装部品のような成形品の外観が要求されたり、日光などに曝されたりする用途では改善が望まれている。また比重も大きく、軽量性の面でも改善が望まれている。
また、特許文献1に開示されたPA6T/2MPDTは、従来のPA6T共重合ポリアミドの問題点を一部改善することができるが、流動性、成形性、靭性、成形品表面外観、及び耐光性の面でその改善水準は不十分である。
さらに、PA46は、良好な耐熱性及び成形性を有するものの、吸水率が高く、また、吸水による寸法変化や機械物性の低下が著しく大きいという問題点を持っており、自動車用途などで要求される寸法変化の面で要求を満たせない場合がある。
さらにまた、特許文献2及び3に開示されたPA6C共重合ポリアミドも、吸水率が高く、また、流動性が十分でないなどの問題がある
またさらに、特許文献4及び5に開示されたポリアミドも、靭性、強度、及び流動性の面で改善が不十分であるという問題がある。
本発明が解決しようとする課題は、流動性、強度、剛性、靭性及び低吸水性に優れ、さらに高温剛性、耐熱エージング性、耐振動疲労性、耐LLC性及び表面外観にも優れる自動車部品を提供することにある。
本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意検討を重ねた。その結果、脂環族ジカルボン酸と主鎖から分岐した置換基を持つジアミンとを構成成分として重合させたポリアミドと、無機充填材とを含有するポリアミド組成物を含む自動車部品において、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下のとおりである。
〔1〕
(A)(a)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、(b)少なくとも50モル%の主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを含むジアミンとを重合させたポリアミドと、
(B)無機充填材と、
を、含有するポリアミド組成物を含む、自動車部品。
〔2〕
前記主鎖から分岐した置換基を持つジアミンが、2−メチルペンタメチレンジアミンである、前記〔1〕に記載の自動車部品。
〔3〕
前記脂環族ジカルボン酸が、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である、前記〔1〕又は〔2〕に記載の自動車部品。
〔4〕
前記(a)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸が、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸をさらに含む、前記〔1〕乃至〔3〕のいずれか一に記載の自動車部品。
〔5〕
前記(A)ポリアミドが、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸をさらに共重合させたポリアミドである、前記〔1〕乃至〔4〕のいずれか一に記載の自動車部品。
〔6〕
前記(A)ポリアミドの融点が270〜350℃である、前記〔1〕乃至〔5〕のいずれか一に記載の自動車部品。
〔7〕
前記(A)ポリアミド中における前記脂環族ジカルボン酸に由来する部分におけるトランス異性体比率が50〜85%である、前記〔1〕乃至〔6〕のいずれか一に記載の自動車部品。
〔8〕
前記ポリアミド組成物が、前記(A)ポリアミド100質量部に対して、前記(B)無機充填材1〜200質量部を含有する、前記〔1〕乃至〔7〕のいずれか一に記載の自動車部品。
〔9〕
前記ポリアミド組成物が、(C)銅化合物及び金属ハロゲン化合物をさらに含有する、前記〔1〕乃至〔8〕のいずれか一に記載の自動車部品。
〔10〕
前記銅化合物が酢酸銅及び/又はヨウ化銅であり、前記金属ハロゲン化合物がヨウ化カリウムである、前記〔9〕に記載の自動車部品。
〔11〕
前記(A)ポリアミド100質量部に対して、前記銅化合物0.01〜0.6質量部及び前記金属ハロゲン化合物0.05〜20質量部を含有する、前記〔9〕又は〔10〕に記載の自動車部品。
〔12〕
ハロゲン及び銅のモル比(ハロゲン/銅)が、2/1〜50/1である、前記〔9〕乃至〔11〕のいずれか一に記載の自動車部品。
〔13〕
前記(A)ポリアミド106質量部に対して、銅としての含有量が50〜2,000質量部となるように前記銅化合物を含有する、前記〔9〕乃至〔12〕のいずれか一に記載の自動車部品。
〔14〕
自動車アンダーフード部品である前記〔1〕乃至〔13〕のいずれか一に記載の自動車部品。
〔15〕
自動車機構部品である前記〔1〕乃至〔13〕のいずれか一に記載の自動車部品。
〔16〕
自動車外装部品である前記〔1〕乃至〔13〕のいずれか一に記載の自動車部品。
〔17〕
自動車内装部品である前記〔1〕乃至〔13〕のいずれか一に記載の自動車部品。
〔18〕
自動車電装部品である前記〔1〕乃至〔13〕のいずれか一に記載の自動車部品。
本発明によれば、流動性、強度、剛性、靭性及び低吸水性に優れ、さらに高温剛性、耐熱エージング性、耐振動疲労性、耐LLC性及び表面外観にも優れる自動車部品を提供することができる。
以下、本発明を実施するための形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
(自動車部品)
本実施形態の自動車部品は、ポリアミド組成物を含み、本実施形態において用いられるポリアミド組成物は、(A)ポリアミドと、(B)無機充填材とを含有する。
ここで、本実施形態の「自動車部品」とは、自動車吸気系部品及び自動車冷却系部品を除く自動車部品を意味する。
(ポリアミド組成物)
上述したように、ポリアミド組成物は(A)ポリアミドと、(B)無機充填材とを、必須の成分として含有する。
[(A)ポリアミド]
前記ポリアミド組成物に含有される(A)ポリアミドは、下記(a)及び(b)を重合させたポリアミドである。
(a)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸。
(b)少なくとも50モル%の主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを含むジアミン。
本実施形態において、ポリアミドとは主鎖中にアミド(−NHCO−)結合を有する
重合体を意味する。
〔(a)ジカルボン酸〕
前記(A)ポリアミドの重合成分である(a)ジカルボン酸は、少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含む。
(a)ジカルボン酸が脂環族ジカルボン酸を少なくとも50モル%含むことにより、得られる自動車部品の耐熱性、流動性、靭性、低吸水性及び強度などを同時に満足するポリアミドとすることができる。
<(a−1)脂環族ジカルボン酸>
(a−1)脂環族ジカルボン酸(脂環式ジカルボン酸とも記される。)としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、及び1,3−シクロペンタンジカルボン酸などの、脂環構造の炭素数が好ましくは3〜10であり、より好ましくは5〜10である脂環族ジカルボン酸が挙げられる。
脂環族ジカルボン酸は、無置換でも置換基を有していてもよい。
置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、及びtert−ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基などが挙げられる。
脂環族ジカルボン酸としては、耐熱性、低吸水性及び強度などの観点で、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸が好ましい。
脂環族ジカルボン酸としては、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
脂環族ジカルボン酸には、トランス異性体とシス異性体の幾何異性体が存在する。
原料モノマーとしての脂環族ジカルボン酸は、トランス異性体とシス異性体のどちらか一方を用いてもよく、トランス異性体とシス異性体の種々の比率の混合物として用いてもよい。
脂環族ジカルボン酸は、高温で異性化し一定の比率になることやシス異性体の方がトランス異性体に比べて、ジアミンとの当量塩の水溶性が高いことから、原料モノマーとして、トランス異性体/シス異性体の比がモル比にして、好ましくは50/50〜0/100であり、より好ましくは40/60〜10/90であり、さらに好ましくは35/65〜15/85である。
脂環族ジカルボン酸のトランス異性体/シス異性体の比(モル比)は、液体クロマトグラフィー(HPLC)や核磁気共鳴分光法(NMR)により求めることができる。ここで、本明細書におけるトランス体/シス体の比(モル比)は、1H−NMRにより求めることとする。
<(a−2)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸>
本実施形態に用いられる(a)ジカルボン酸のうち、上述した(a−1)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸(以下、(a−2)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸と言う。)としては、例えば、脂肪族ジカルボン酸及び芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、マロン酸、ジメチルマロン酸、コハク酸、2,2−ジメチルコハク酸、2,3−ジメチルグルタル酸、2,2−ジエチルコハク酸、2,3−ジエチルグルタル酸、グルタル酸、2,2−ジメチルグルタル酸、アジピン酸、2−メチルアジピン酸、トリメチルアジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、エイコサン二酸、及びジグリコール酸などの炭素数3〜20の直鎖又は分岐状飽和脂肪族ジカルボン酸などが挙げられる。
芳香族ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、2−クロロテレフタル酸、2−メチルテレフタル酸、5−メチルイソフタル酸、及び5−ナトリウムスルホイソフタル酸などの無置換又は種々の置換基で置換された炭素数8〜20の芳香族ジカルボン酸などが挙げられる。
種々の置換基としては、例えば、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数6〜10のアリール基、炭素数7〜10のアリールアルキル基、クロロ基及びブロモ基などのハロゲン基、炭素数1〜6のシリル基、並びにスルホン酸基及びその塩(ナトリウム塩など)が挙げられる。
前記(a−2)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸を共重合する場合、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性及び強度などの観点で、好ましくは脂肪族ジカルボン酸であり、より好ましくは、炭素数が6以上である脂肪族ジカルボン酸である。
中でも、耐熱性及び低吸水性などの観点で、炭素数が10以上である脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
炭素数が10以上である脂肪族ジカルボン酸としては、例えば、セバシン酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、及びエイコサン二酸などが挙げられる。
中でも、耐熱性などの観点で、セバシン酸及びドデカン二酸が好ましい。
前記(a−2)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、(a)ジカルボン酸成分として、さらに、本実施形態の目的を損なわない範囲で、トリメリット酸、トリメシン酸、及びピロメリット酸などの3価以上の多価カルボン酸を含んでもよい。
多価カルボン酸としては、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(a)ジカルボン酸中の(a−1)脂環族ジカルボン酸の割合(モル%)は、少なくとも50モル%である。脂環族ジカルボン酸の割合は50〜100モル%であり、60〜100モル%であることが好ましく、70〜100モル%であることがより好ましく、100モル%であることがより好ましい。脂環族ジカルボン酸の割合が、少なくとも50モル%であることにより、耐熱性、低吸水性及び強度などに優れるポリアミドとすることができる。
(a)ジカルボン酸中の(a−2)脂環族ジカルボン酸以外のジカルボン酸の割合(モル%)は、0〜50モル%であり、0〜40モル%であることが好ましい。
(a)ジカルボン酸成分として、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸を含む場合には、(a−1)脂環族ジカルボン酸が50〜99.9モル%及び(a−2)炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸0.1〜50モル%であることが好ましく、(a−1)脂環族ジカルボン酸が60〜95モル%及び(a−2)炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸5〜40モル%であることがより好ましく、(a−1)脂環族ジカルボン酸が80〜95モル%及び(a−2)炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸5〜20モル%であることがさらに好ましい。
本実施形態において、(a)ジカルボン酸としては、上記ジカルボン酸として記載した化合物に限定されるものではなく、上記ジカルボン酸と等価な化合物であってもよい。
ジカルボン酸と等価な化合物としては、上記ジカルボン酸に由来するジカルボン酸構造と同様のジカルボン酸構造となり得る化合物であれば特に限定されるものではなく、例えば、ジカルボン酸の無水物及びハロゲン化物などが挙げられる。
〔(b)ジアミン〕
前記(A)ポリアミドの重合成分である(b)ジアミンは、少なくとも50モル%の、主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを含む。
(b)ジアミンとして、主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを少なくとも50モル%含むことにより、流動性、靭性及び強度などを同時に満足する、ポリアミドを得ることができる。
主鎖から分岐した置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、及びtert−ブチル基などの炭素数1〜4のアルキル基などが挙げられる。
<(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミン>
(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンとしては、例えば、2−メチルペンタメチレンジアミン(2−メチル−1,5−ジアミノペンタンとも記される。)、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、及び2,4−ジメチルオクタメチレンジアミンなどの炭素数3〜20の分岐状飽和脂肪族ジアミンなどが挙げられる。
主鎖から分岐した置換基を持つジアミンとしては、耐熱性及び強度などの観点で、2−メチルペンタメチレンジアミンであることが好ましい。
主鎖から分岐した置換基を持つジアミンとしては、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<(b−2)主鎖から分岐した置換基を持つジアミン以外のジアミン>
本実施形態に用いられる(b)ジアミンのうち、上述した(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミン以外のジアミン(以下、(b−2)主鎖から分岐した置換基を持つジアミン以外のジアミンと言う。)としては、例えば、脂肪族ジアミン、脂環族ジアミン、及び芳香族ジアミンなどが挙げられる。
脂肪族ジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカメチレンジアミン、ウンデカメチレンジアミン、ドデカメチレンジアミン、及びトリデカメチレンジアミンなどの炭素数2〜20の直鎖飽和脂肪族ジアミンなどが挙げられる。
脂環族ジアミン(脂環式ジアミンとも記される。)としては、例えば、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,3−シクロヘキサンジアミン、及び1,3−シクロペンタンジアミンなどが挙げられる。
芳香族ジアミンとしては、芳香族を含有するジアミンであり、例えば、メタキシリレンジアミンなどが挙げられる。
(b−2)主鎖から分岐した置換基を持つジアミン以外のジアミンとしては、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性及び強度などの観点で、好ましくは脂肪族ジアミン及び脂環族ジアミンであり、より好ましくは炭素数4〜13の直鎖飽和脂肪族ジアミンであり、さらに好ましくは炭素数6〜10の直鎖飽和脂肪族ジアミンであり、さらにより好ましくはヘキサメチレンジアミンである。
(b−2)主鎖から分岐した置換基を持つジアミン以外のジアミンは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(b)ジアミン成分として、さらに、本実施形態の目的を損なわない範囲で、ビスヘキサメチレントリアミンなどの3価以上の多価アミンを含んでもよい。
多価アミンは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(b)ジアミン中の(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンの割合(モル%)は、少なくとも50モル%である。主鎖から分岐した置換基を持つジアミンの割合は、50〜100モル%であり、60〜100モル%であることが好ましい。より好ましくは、80〜100モル%であり、さらに好ましくは、85〜100モル%であり、さらにより好ましくは90〜100モル%、よりさらに好ましくは100モル%である。主鎖から分岐した置換基を持つジアミンの割合が、少なくとも50モル%であることにより、流動性、靭性及び強度に優れるポリアミドとすることができる。
(b)ジアミン中の(b−2)主鎖から分岐した置換基を持つジアミン以外のジアミンの割合(モル%)は0〜50モル%であり、0〜40モル%であることが好ましい。
(a)ジカルボン酸の添加量と(b)ジアミンの添加量は、同モル量付近であることが好ましい。重合反応中の(b)ジアミンの反応系外への逃散分もモル比においては考慮して、(a)ジカルボン酸全体のモル量1に対して、(b)ジアミン全体のモル量は、0.90〜1.20であることが好ましく、より好ましくは0.95〜1.10であり、さらに好ましくは0.98〜1.05である。
〔(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸〕
(A)ポリアミドは、靭性の観点から、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸をさらに共重合させることができる。
(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸とは、重(縮)合可能なラクタム及び/又はアミノカルボン酸を意味する。
(A)ポリアミドが、(a)ジカルボン酸、(b)ジアミン、及び(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸を重合させたポリアミドである場合には、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸は、炭素数が4〜14のラクタム及び/又はアミノカルボン酸が好ましく、炭素数6〜12のラクタム及び/又はアミノカルボン酸がより好ましい。
ラクタムとしては、例えば、ブチロラクタム、ピバロラクタム、ε−カプロラクタム、カプリロラクタム、エナントラクタム、ウンデカノラクタム、及びラウロラクタム(ドデカノラクタム)などが挙げられる。
中でも、靭性の観点から、ε−カプロラクタム及びラウロラクタムなどが好ましく、ε−カプロラクタムがより好ましい。
アミノカルボン酸としては、例えば、前記ラクタムが開環した化合物であるω−アミノカルボン酸やα,ω−アミノ酸などが挙げられる。
アミノカルボン酸としては、ω位がアミノ基で置換された炭素数4〜14の直鎖又は分岐状飽和脂肪族カルボン酸であることが好ましく、例えば、6−アミノカプロン酸、11−アミノウンデカン酸、及び12−アミノドデカン酸などが挙げられる。また、アミノカルボン酸は、パラアミノメチル安息香酸などであってもよい。
(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸の添加量(モル%)は、(a)、(b)及び(c)の各モノマー全体のモル量に対して、0〜20モル%であることが好ましい。
〔末端封止剤〕
(a)ジカルボン酸と(b)ジアミン、さらに必要に応じて(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸からポリアミドを重合する際に、分子量調節のために公知の末端封止剤をさらに添加することができる。
末端封止剤としては、例えば、モノカルボン酸、モノアミン、無水フタル酸などの酸無水物、モノイソシアネート、モノ酸ハロゲン化物、モノエステル類、及びモノアルコール類などが挙げられ、中でも熱安定性の観点から、モノカルボン酸及びモノアミンが好ましい。
末端封止剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
末端封止剤として使用できるモノカルボン酸としては、アミノ基との反応性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、カプリル酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチル酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ピバリン酸、及びイソブチル酸などの脂肪族モノカルボン酸;シクロヘキサンカルボン酸などの脂環族モノカルボン酸;並びに安息香酸、トルイル酸、α−ナフタレンカルボン酸、β−ナフタレンカルボン酸、メチルナフタレンカルボン酸、及びフェニル酢酸などの芳香族モノカルボン酸;などが挙げられる。
モノカルボン酸は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
末端封止剤として使用できるモノアミンとしては、カルボキシル基との反応性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、ブチルアミン、ヘキシルアミン、オクチルアミン、デシルアミン、ステアリルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、及びジブチルアミンなどの脂肪族モノアミン;シクロヘキシルアミン及びジシクロヘキシルアミンなどの脂環族モノアミン;並びにアニリン、トルイジン、ジフェニルアミン、及びナフチルアミンなどの芳香族モノアミン;などが挙げられる。
モノアミンとしては、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(a)ジカルボン酸及び(b)ジアミンの組み合わせは、下記に限定されるものではないが、50モル%以上の(a−1)脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸及び50モル%以上の(b−1)2−メチルペンタメチレンジアミンを含むジアミンの組み合わせが好ましく、50モル%以上の(a−1)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含むジカルボン酸及び50モル%以上の(b−1)2−メチルペンタメチレンジアミンを含むジアミンの組み合わせがより好ましい。
これらの組み合わせをポリアミドの成分として重合させることにより、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性及び強度に同時に優れたポリアミドとすることができる。
(A)ポリアミドにおいて、脂環族ジカルボン酸構造は、トランス異性体及びシス異性体の幾何異性体として存在する。
(A)ポリアミド中、(a−1)脂環族ジカルボン酸に由来する部分におけるトランス異性体比率は、ポリアミド中の脂環族ジカルボン酸全体に占める、脂環族ジカルボン酸に由来する部分がトランス異性体である比率で表される。かかるトランス異性体比率は、好ましくは50〜85モル%であり、より好ましくは50〜80モル%であり、さらに好ましくは60〜80モル%である。
(a−1)脂環族ジカルボン酸としては、トランス異性体/シス異性体の比(モル比)が50/50〜0/100である脂環族ジカルボン酸を用いることが好ましいが、その一方で、(a)ジカルボン酸と(b)ジアミンの重合により得られる(A)ポリアミド中、(a−1)脂環族ジカルボン酸に由来する部分におけるトランス異性体比率が50〜85モル%であることが好ましい。
トランス異性体比率が上記範囲内にあることにより、ポリアミドは、高融点、靭性及び強度に優れるという特徴に加えて、高いTgによる熱時剛性と、通常では耐熱性と相反する性質である流動性と、高い結晶性を同時に満足するという性質を持つ。
これらの特徴は、(a)50モル%以上の1,4−シクロヘキサンジカルボン酸を含むジカルボン酸及び(b)50モル%以上の2−メチルペンタメチレンジアミンを含むジアミンの組み合わせからなり、かつトランス異性体比率が50〜85モル%であるポリアミドで特に顕著である。
本実施形態において、トランス異性体比率は、以下の実施例に記載の方法により測定することができる。
[(A)ポリアミドの製造方法]
(A)ポリアミドは、特に限定されないが、(a)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と、(b)少なくとも50モル%の、主鎖から分岐した置換基を持つ脂肪族ジアミンを含むジアミンと、を重合させる工程を含むポリアミドの製造方法により、製造することができる。
(A)ポリアミドの製造方法としては、ポリアミドの重合度を上昇させる工程をさらに含むことが好ましい。
(A)ポリアミドの製造方法としては、例えば、以下に例示するように種々の方法が挙げられる。
1)ジカルボン酸・ジアミン塩又はその混合物の水溶液又は水の懸濁液を加熱し、溶融状態を維持したまま重合させる方法(以下、「熱溶融重合法」と略称する場合がある。)。
2)熱溶融重合法で得られたポリアミドを融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(以下、「熱溶融重合・固相重合法」と略称する場合がある。)。
3)ジアミン・ジカルボン酸塩又はその混合物の、水溶液又は水の懸濁液を加熱し、析出したプレポリマーをさらにニーダーなどの押出機で再び溶融して重合度を上昇させる方法(以下、「プレポリマー・押出重合法」と略称する場合がある。)。
4)ジアミン・ジカルボン酸塩又はその混合物の、水溶液又は水の懸濁液を加熱、析出したプレポリマーをさらにポリアミドの融点以下の温度で固体状態を維持したまま重合度を上昇させる方法(以下、「プレポリマー・固相重合法」と略称する場合がある。)。
5)ジアミン・ジカルボン酸塩又はその混合物を、固体状態を維持したまま重合させる方法(以下、「固相重合法」と略称する場合がある)。
6)ジカルボン酸と等価なジカルボン酸ハライド成分とジアミン成分を用いて重合させる方法(以下、「溶液法」ともいう。)。
(A)ポリアミドの製造方法において、ポリアミドの流動性の観点から、(A)ポリアミド中、(a−1)脂環族ジカルボン酸に由来する部分におけるトランス異性体比率を85%以下に維持して重合することが好ましく、特に、80%以下に維持することにより、さらに色調や引張伸度に優れ、高融点のポリアミドを得ることができる。
ポリアミドの製造方法において、重合度を上昇させてポリアミドの融点を上昇させるために、加熱の温度を上昇させたり、及び/又は加熱の時間を長くしたりする必要が生ずる。しかし、その場合、加熱によるポリアミドの着色や熱劣化による引張伸度の低下が起こる場合がある。また、分子量の上昇する速度が著しく低下する場合がある。
ポリアミドの着色や熱劣化による引張伸度の低下を効果的に防止する観点から、トランス異性体比率を80%以下に維持して重合することが好適である。
(A)ポリアミドを製造する方法としては、(a−1)脂環族ジカルボン酸に由来する部分におけるトランス異性体比率を85%以下に維持することが容易であり、かつ得られるポリアミドの色調に優れる観点から、1)熱溶融重合法、及び2)熱溶融重合・固相重合法によりポリアミドを製造することが好ましい。
(A)ポリアミドの製造方法において、重合形態としては、バッチ式でも連続式でもよい。
重合装置としては、特に限定されるものではなく、公知の装置、例えば、オートクレーブ型の反応器、タンブラー型反応器、及びニーダーなどの押出機型反応器などが挙げられる。
ポリアミドの製造方法としては、特に限定されるものではなく、以下に記載するバッチ式の熱溶融重合法によりポリアミドを製造することができる。
バッチ式の熱溶融重合法としては、例えば、水を溶媒として、ポリアミド成分((a)ジカルボン酸、(b)ジアミン、及び、必要に応じて、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸)を含有する約40〜60質量%の溶液を、110〜180℃の温度及び約0.035〜0.6MPa(ゲージ圧)の圧力で操作される濃縮槽で、約65〜90質量%に濃縮して濃縮溶液を得る。次いで、該濃縮溶液をオートクレーブに移し、容器における圧力が約1.5〜5.0MPa(ゲージ圧)になるまで加熱を続ける。その後、水及び/又はガス成分を抜きながら圧力を約1.5〜5.0MPa(ゲージ圧)に保ち、温度が約250〜350℃に達した時点で、大気圧まで降圧する(ゲージ圧は、0MPa)。大気圧に降圧後、必要に応じて減圧することにより、副生する水を効果的に除くことができる。その後、窒素などの不活性ガスで加圧し、ポリアミド溶融物をストランドとして押し出す。該ストランドを、冷却、カッティングしてペレットを得る。
また、ポリアミドの製造方法としては、特に限定されるものではなく、以下に記載する連続式の熱溶融重合法においても、ポリアミドを製造することができる。
連続式の熱溶融重合法としては、例えば、水を溶媒としてポリアミド成分を含有する約40〜60質量%の溶液を、予備装置の容器において約40〜100℃まで予備加熱し、次いで、濃縮槽/反応器に移し、約0.1〜0.5MPa(ゲージ圧)の圧力及び約200〜270℃の温度で約70〜90%に濃縮して濃縮溶液を得る。該濃縮溶液を約200〜350℃の温度に保ったフラッシャーに排出し、その後、大気圧まで降圧する(ゲージ圧は、0MPa)。大気圧に降圧後、必要に応じて減圧する。その後、ポリアミド溶融物は押し出されてストランドとなり、冷却、カッティングされてペレットとなる。
(A)ポリアミドの分子量は、25℃の相対粘度ηrを指標とすることができる。
(A)ポリアミドの分子量は、靭性及び強度などの機械物性並びに成形性などの観点で、JIS−K6920に従って測定した98%硫酸中濃度1%、25℃の相対粘度ηrにおいて、好ましくは1.5〜7.0であり、より好ましくは1.7〜6.0であり、さらに好ましくは1.9〜5.5である。
25℃の相対粘度の測定は、下記実施例に記載するように、JIS−K6920に準じて行うことができる。
(A)ポリアミドの融点は、Tm2として、耐熱性の観点から、270〜350℃であることが好ましい。融点Tm2は、好ましくは270℃以上であり、より好ましくは275℃以上であり、さらに好ましくは280℃以上である。また、融点Tm2は、好ましくは350℃以下であり、より好ましくは340℃以下であり、さらに好ましくは335℃以下であり、よりさらに好ましくは330℃以下である。
(A)ポリアミドの融点Tm2を270℃以上とすることにより、耐熱性に優れるポリアミドとすることができる。また、(A)ポリアミドの融点Tm2を350℃以下とすることにより、押出、成形などの溶融加工でのポリアミドの熱分解などを抑制することができる。
(A)ポリアミドの融解熱量ΔHは、耐熱性の観点から、好ましくは10J/g以上であり、より好ましくは14J/g以上であり、さらに好ましくは18J/g以上であり、さらにより好ましくは20J/g以上である。
(A)ポリアミドの融点(Tm1又はTm2)及び融解熱量ΔHの測定は、下記実施例に記載するように、JIS−K7121に準じて行うことができる。
融点及び融解熱量の測定装置としては、例えば、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCなどが挙げられる。
(A)ポリアミドのガラス転移温度Tgは、90〜170℃であることが好ましい。ガラス転移温度は、好ましくは90℃以上であり、より好ましくは100℃以上であり、さらに好ましくは110℃以上である。また、ガラス転移温度は、好ましくは170℃以下であり、より好ましくは165℃以下であり、さらに好ましくは160℃以下である。
(A)ポリアミドのガラス転移温度を90℃以上とすることにより、耐熱性や耐薬品性に優れるポリアミドとすることができる。また、(A)ポリアミドのガラス転移温度を170℃以下とすることにより、外観の良好な成形品を得ることができる。
ガラス転移温度の測定は、下記実施例に記載するように、JIS−K7121に準じて行うことができる。
ガラス転移温度の測定装置としては、例えば、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCなどが挙げられる。
[(B)無機充填材]
本実施形態の自動車部品に含有されているポリアミド組成物は、前記(A)ポリアミドと、(B)無機充填材と、を含有する。
(B)無機充填材を含有することにより、耐熱性、流動性、靭性及び低吸水性に優れるポリアミドの性質を損なうことなく、さらに、耐熱性、流動性、靭性及び低吸水性に優れ、強度、剛性及び耐振動疲労性にも優れるポリアミド組成物とすることができる。
上記の(B)無機充填材としては、特に限定されるものではなく、例えば、ガラス繊維、炭素繊維、ケイ酸カルシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、ホウ酸アルミニウム繊維、ガラスフレーク、タルク、カオリン、マイカ、クレー、ハイドロタルサイト、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、酸化亜鉛、リン酸一水素カルシウム、ウォラストナイト、シリカ、ゼオライト、アルミナ、ベーマイト、水酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、ケイ酸カルシウム、アルミノケイ酸ナトリウム、ケイ酸マグネシウム、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、カーボンナノチューブ、グラファイト、黄銅、銅、銀、アルミニウム、ニッケル、鉄、フッ化カルシウム、雲母、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母、及びアパタイトなどが挙げられる。
(B)無機充填材は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記した(B)無機充填材の中でも、剛性及び強度などを向上させる観点から、ガラス繊維、炭素繊維、ガラスフレーク、タルク、カオリン、マイカ、クレー、炭酸カルシウム、リン酸一水素カルシウム、ウォラストナイト、シリカ、カーボンナノチューブ、グラファイト、フッ化カルシウム、モンモリロナイト、膨潤性フッ素雲母及びアパタイトが好ましい。
(B)無機充填材としては、ガラス繊維や炭素繊維がより好ましく、ガラス繊維や炭素繊維の中でも、優れた機械的強度をポリアミド組成物に付与できるという観点から、数平均繊維径が3〜30μmであり、重量平均繊維長が100〜750μmであり、かつ重量平均繊維長(L)と数平均繊維径(D)とのアスペクト比(L/D)が10〜100である繊維がさらに好ましい。
ここで、本明細書における数平均繊維径及び重量平均繊維長については、ポリアミド組成物を電気炉に入れて、含まれる有機物を焼却処理し、残渣分から100本以上のガラス繊維又は炭素繊維を任意に選択し、走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して、これらのガラス繊維又は炭素繊維の繊維径を測定することにより数平均繊維径を測定するとともに、倍率1,000倍でのSEM写真を用いて繊維長を計測することにより重量平均繊維長を求める。
ガラス繊維や炭素繊維は、その断面が真円状でも扁平状でもよい。かかる扁平状の断面としては、例えば、長方形、長方形に近い長円形、楕円形、及び長手方向の中央部がくびれた繭型などが挙げられる。ここで、本明細書における「扁平率」は、当該繊維断面の長径をD2及び当該繊維断面の短径をD1とするとき、D2/D1で表される値をいう(真円状は、扁平率が約1となる。)。真円状のガラス繊維や炭素繊維を使用するときは、扁平率は1.5〜10が好ましい。
また、(B)無機充填材としては、ウォラストナイトも好ましく用いられ、ウォラストナイトの中でも、数平均繊維径が3〜30μmであり、重量平均繊維長が10〜500μmであり、前記アスペクト比(L/D)が3〜100であるものがより好ましく用いられる。
さらに、(B)無機充填材としては、タルク、マイカ、カオリン及び窒化珪素もより好ましく、それらの中でも、数平均繊維径が0.1〜3μmであるものがさらに好ましく用いられる。
上記の無機充填材は、シランカップリング剤などにより表面処理してもよい。前記シランカップリング剤としては、特に制限されないが、例えば、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシランやN−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン等のアミノシラン類;γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランやγ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のメルカプトシラン類;エポキシシラン類;ビニルシラン類が挙げられる。中でも、上記の列挙成分から選択される1種以上であることが好ましく、アミノシラン類がより好ましい。
また、上記の無機充填材は、集束剤として、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体、エポキシ化合物、ポリウレタン樹脂、アクリル酸のホモポリマー、アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマー、並びにこれらの第1級、第2級及び第3級アミンとの塩、並びにカルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体を含む共重合体などを、さらに含んでもよい。これらは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、ポリアミド組成物の機械的強度の観点から、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体、エポキシ化合物、及びポリウレタン樹脂、並びにこれらの組み合わせが好ましく、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体及びポリウレタン樹脂、並びにこれらの組み合わせがより好ましい。
上記したカルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体のうち、前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体としては、特に制限されることはないが、例えば、無水マレイン酸、無水イタコン酸や無水シトラコン酸が挙げられ、中でも無水マレイン酸が好ましい。一方、前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とは、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体とは異なる不飽和ビニル単量体をいう。前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体としては、特に制限されないが、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジクロロブタジエン、1,3−ペンタジエン、シクロオクタジエン、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、及びエチルメタクリレートが挙げられる。中でもスチレン及びブタジエンが好ましい。
上記したこれらの組み合わせの中でも、無水マレイン酸とブタジエンとの共重合体、無水マレイン酸とエチレンとの共重合体、及び無水マレイン酸とスチレンとの共重合体、並びにこれらの混合物よりなる群から選択される1種以上であることがより好ましい。
また、カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体と前記カルボン酸無水物含有不飽和ビニル単量体を除く不飽和ビニル単量体とを構成単位として含む共重合体は、重量平均分子量が2,000以上であることが好ましい。また、ポリアミド組成物の流動性向上の観点から、重量平均分子量は2,000〜1,000,000であることがより好ましく、さらに好ましくは2,000〜500,000である。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定した値である。
エポキシ化合物としては、特に制限されないが、例えば、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブテンオキサイド、ペンテンオキサイド、ヘキセンオキサイド、ヘプテンオキサイド、オクテンオキサイド、ノネンオキサイド、デセンオキサイド、ウンデセンオキサイド、ドデセンオキサイド、ペンタデセンオキサイド、エイコセンオキサイドなどの脂肪族エポキシ化合物;グリシド−ル、エポキシペンタノ−ル、1−クロロ−3,4−エポキシブタン、1−クロロ−2−メチル−3,4−エポキシブタン、1,4−ジクロロ−2,3−エポキシブタン、シクロペンテンオキサイド、シクロヘキセンオキサイド、シクロヘプテンオキサイド、シクロオクテンオキサイド、メチルシクロヘキセンオキサイド、ビニルシクロヘキセンオキサイド、エポキシ化シクロヘキセンメチルアルコールなどの脂環族エポキシ化合物;ピネンオキサイドなどのテルペン系エポキシ化合物;スチレンオキサイド、p−クロロスチレンオキサイド、m−クロロスチレンオキサイドなどの芳香族エポキシ化合物;エポキシ化大豆油;及びエポキシ化亜麻仁油が挙げられる。
ポリウレタン樹脂としては、集束剤として一般的に用いられるものであれば特に制限されないが、例えば、m−キシリレンジイソシアナート(XDI)、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)(HMDI)やイソホロンジイソシアナート(IPDI)等のイソシアネートと、ポリエステル系やポリエーテル系のジオールとから合成されるものが好適に使用できる。
アクリル酸のホモポリマー(ポリアクリル酸)としては、重量平均分子量は1,000〜90,000であることが好ましく、より好ましくは1,000〜25,000である。
前記ポリアクリル酸は塩形態であってもよい。かかるポリアクリル酸の塩として、第一級、第二級又は第三級のアミンが挙げられる。特に制限されないが、例えば、トリエチルアミン、トリエタノールアミンや、グリシン等が挙げられる。中和度は、他の併用薬剤(シランカップリング剤など)との混合溶液の安定性向上の観点や、アミン臭低減の観点から、20〜90%とすることが好ましく、40〜60%とすることがより好ましい。
前記塩を形成するポリアクリル酸の重量平均分子量は、特に制限されるものではないが、3,000〜50,000の範囲であることが好ましい。ガラス繊維や炭素繊維の集束性向上の観点から、3,000以上が好ましく、樹脂組成物とした際の機械的特性向上の観点から、50,000以下が好ましい。
上記のアクリル酸のポリマーは、アクリル酸とその他共重合性モノマーとのコポリマーであってもよい。前記アクリル酸と共重合体を形成するモノマーとしては、特に制限されないが、例えば、水酸基及び/又はカルボキシル基を有するモノマーのうち、アクリル酸、マレイン酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、イソクロトン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸及びやメサコン酸から選ばれるよりなる群から選択される1種以上が挙げられる(但し、アクリル酸のみの場合を除く。)。好ましくは、上記したモノマーのうちエステル系モノマーを1種以上有する。
前記アクリル酸のポリマー(コポリマー)は塩の形態であってもよい。アクリル酸のポリマーの塩としては、特に制限されないが、第一級、第二級又は第三級のアミンが挙げられる。特に制限されないが、具体例としては、トリエチルアミン、トリエタノールアミンやグリシンが挙げられる。中和度は、他の併用薬剤(シランカップリング剤など)との混合溶液の安定性向上や、アミン臭低減の観点から、20〜90%とすることが好ましく、40〜60%とすることがより好ましい。
前記塩を形成するアクリル酸のポリマー(コポリマー)の重量平均分子量は、特に制限されないが、3,000〜50,000の範囲であることが好ましい。すなわち、無機充填材の集束性向上の観点から3,000以上が好ましく、樹脂組成物とした際の機械的特性向上の観点から50,000以下が好ましい。
(B)無機充填材としてのガラス繊維や炭素繊維は、公知の当該繊維の製造工程において、ローラー型アプリケーターなどの公知の方法を用いて、上記の集束剤を、当該繊維に付与して製造した繊維ストランドを乾燥することにより、連続的に反応させて得られる。前記繊維ストランドをロービングとしてそのまま使用してもよく、さらに切断工程を得て、チョップドガラスストランドとして使用してもよい。かかる集束剤は、ガラス繊維又は炭素繊維100質量%に対し、固形分率として0.2〜3質量%相当を付与(添加)することが好ましく、より好ましくは0.3〜2質量%付与(添加)する。当該繊維の集束を維持する観点から、集束剤の添加量が、ガラス繊維又は炭素繊維100質量%に対し、固形分率として0.2質量%以上であることが好ましい。一方、ポリアミド組成物の熱安定性向上の観点から、3質量%以下であることが好ましい。また、ストランドの乾燥は切断工程後に行ってもよく、又はストランドを乾燥した後に切断してもよい。
[(C)銅化合物及び金属ハロゲン化合物]
本実施形態の自動車部品は、上述したポリアミド組成物を含み、当該ポリアミド組成物は(C)銅化合物及び金属ハロゲン化合物をさらに含有することが好ましい。
上記のうち、銅化合物としては、例えば、ハロゲン化銅、酢酸銅、プロピオン酸銅、安息香酸銅、アジピン酸銅、テレフタル酸銅、イソフタル酸銅、サリチル酸銅、ニコチン酸銅、及びステアリン酸銅などや、エチレンジアミン、及びエチレンジアミン四酢酸などのキレート剤に配位した銅錯塩などが挙げられる。
銅化合物としては、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記のうち、金属ハロゲン化合物は、銅ハロゲン化物を除く。
金属ハロゲン化合物としては、元素周期律表の1族又は2族金属元素とハロゲンとの塩であり、例えば、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、ヨウ化ナトリウム、及び塩化ナトリウムなどが挙げられ、中でもヨウ化カリウム及び臭化カリウムが好ましい。
金属ハロゲン化合物は、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
金属ハロゲン化合物の中でも、耐振動疲労性に優れ、金属腐食を抑制することができる観点から、ヨウ化カリウムがより好ましい。
ポリアミド組成物が(C)銅化合物及び金属ハロゲン化合物をさらに含有することにより、耐熱性、流動性、靭性、低吸水性及び剛性などに優れるポリアミドの性質を損なうことなく、さらに流動性、靭性、低吸水性、強度及び剛性に優れ、耐熱性及び耐振動疲労性にも優れるポリアミド組成物とすることができる。
本実施形態は、かかるポリアミド組成物を含む自動車部品とすることにより、流動性、靭性、低吸水性、強度及び剛性に優れ、さらに耐熱性及び耐振動疲労性にも優れる自動車部品を提供することができる。
上記の銅化合物としては、耐振動疲労性に優れ、かつ押出時のスクリューやシリンダー部の金属腐食(以下、「金属腐食」と略称する場合がある。)を抑制することができる観点から、ヨウ化銅、臭化第一銅、臭化第二銅、塩化第一銅及び酢酸銅であることが好ましく、ヨウ化銅及び/又は酢酸銅であることがより好ましい。
(C)銅化合物及び金属ハロゲン化合物を含有するポリアミド組成物中の銅化合物の含有量は、(A)ポリアミド100質量部に対して、好ましくは0.01〜0.6質量部であり、より好ましくは0.02〜0.4質量部である。
銅化合物の含有量を、上記範囲内とすることにより、耐振動疲労性が十分向上し、銅の析出及び金属腐食を抑制することができる。
(C)銅化合物及び金属ハロゲン化合物を含有するポリアミド組成物は、当該ポリアミド組成物に含有されているポリアミド106質量部に対し、銅として、好ましくは50〜2,000質量部、より好ましくは100〜1,500質量部、さらに好ましくは150〜1,000質量部となるように、(C)の銅化合物を含有する。
上記した範囲内の場合、耐振動疲労性に優れるポリアミド組成物を得ることができる。
(C)銅化合物及び金属ハロゲン化合物を含有するポリアミド組成物中の金属ハロゲン化合物の含有量は、(A)ポリアミド100質量部に対して、好ましくは0.05〜20質量部であり、より好ましくは0.20〜10質量部である。
金属ハロゲン化合物の含有量を、上記の範囲内とすることにより、耐振動疲労性が十分向上し、銅の析出及び金属腐食を抑制することができる。
ハロゲンと銅のモル比(ハロゲン/銅)が2/1〜50/1となるように、ポリアミド組成物は(C)銅化合物及び金属ハロゲン化合物を含有することが好ましい。ハロゲン/銅は、より好ましくは2/1〜40/1であり、さらに好ましくは5/1〜30/1である。
ハロゲン/銅が2/1以上である場合には銅の析出及び金属腐食の抑制をすることができる。一方、ハロゲン/銅が50/1以下の場合には靭性、強度及び剛性などの機械的物性を損なうことなく、さらに成形機のスクリューなどの腐食を防止することができる。
銅化合物及び金属ハロゲン化合物は、それぞれ単独で含有させても一定の効果を得ることはできる。しかし、得られるポリアミド組成物の性能を向上させる観点から、銅化合物及び金属ハロゲン化合物の双方を含有することが好ましい。
[熱安定剤]
ポリアミド組成物は、本実施形態の目的を損なわない範囲で、フェノール系熱安定剤、リン系熱安定剤、アミン系熱安定剤、並びに周期律表の第Ib族、第IIb族、第IIIa族、第IIIb族、第IVa族及び第IVb族の元素の金属塩、並びにアルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物よりなる群から選択される1種以上の熱安定剤を含有することができる。
<フェノール系熱安定剤>
フェノール系熱安定剤としては、特に制限されないが、例えば、ヒンダートフェノール化合物が挙げられる。フェノール系熱安定剤、中でもヒンダードフェノール化合物は、ポリアミド等の樹脂や繊維に優れた耐熱性や耐光性を付与する性質を有する。
ヒンダードフェノール化合物としては、特に制限されないが、例えば、N,N’−へキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンナマミド)、トリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピニロキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサピロ[5,5]ウンデカン、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート−ジエチルエステル、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、及び1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。中でも、耐熱エージング性向上の観点から、好ましくはN,N’−へキサン−1,6−ジイルビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオンアミド)]である。
フェノール系熱安定剤を用いる場合、ポリアミド組成物中のフェノール系熱安定剤の含有量は、ポリアミド組成物100質量部に対して、好ましくは0.01〜1質量部であり、より好ましくは0.10〜1質量部である。上記の範囲内の場合、耐熱エージング性を一層向上させ、さらにガス発生量を低減させることができる。
<リン系熱安定剤>
リン系熱安定剤としては、特に制限されないが、例えば、ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物、トリオクチルホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリデシルホスファイト、オクチルジフェニルホスファイト、トリスイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、フェニルジ(トリデシル)ホスファイト、ジフェニルイソオクチルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、ジフェニル(トリデシル)ホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(ブトキシエチル)ホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−テトラ−トリデシル)ジホスファイト、テトラ(C12〜C15混合アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、4,4’−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェニル)・ジ(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ビフェニル)ホスファイト、テトラ(トリデシル)−1,1,3−トリス(2−メチル−5−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ブタンジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル)ジホスファイト、テトラ(C1〜C15混合アルキル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニルジホスファイト、トリス(モノ、ジ混合ノニルフェニル)ホスファイト、4,4’−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェニル)・ジ(ノニルフェニル)ホスファイト、9,10−ジ−ヒドロ−9−オキサ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン−10−オキサイド、トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)ホスファイト、水素化−4,4’−イソプロピリデンジフェニルポリホスファイト、ビス(オクチルフェニル)・ビス(4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル))・1,6−ヘキサノールジホスファイト、ヘキサトリデシル−1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ジホスファイト、トリス(4、4’−イソプロピリデンビス(2−t−ブチルフェニル))ホスファイト、トリス(1,3−ステアロイルオキシイソプロピル)ホスファイト、2、2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、2,2−メチレンビス(3−メチル−4,6−ジ−t−ブチルフェニル)2−エチルヘキシルホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスファイト、及びテトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスファイトが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記で列挙したものの中でも、耐熱エージング性の一層の向上及びガス発生量の低減という観点から、ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物及び/又はトリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトが好ましい。前記ペンタエリスリトール型ホスファイト化合物としては、特に制限されないが、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・フェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・メチル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・2−エチルヘキシル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・イソデシル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・ラウリル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・イソトリデシル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・ステアリル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・シクロヘキシル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・ベンジル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・エチルセロソルブ・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・ブチルカルビトール・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・オクチルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・ノニルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・2,6−ジ−t−ブチルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・2,4−ジ−t−ブチルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・2,4−ジ−t−オクチルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル・2−シクロヘキシルフェニル・ペンタエリスリトールジホスファイト、2,6−ジ−t−アミル−4−メチルフェニル・フェニル・ペンタエリストリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−アミル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、及びビス(2,6−ジ−t−オクチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトが挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記で列挙したペンタエリスリトール型ホスファイト化合物の中でも、ガス発生量を低減させる観点から、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−エチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−アミル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、及びビス(2、6−ジ−t−オクチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトからなる群より選択される1種以上が好ましく、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトがより好ましい。
リン系熱安定剤を用いる場合、ポリアミド組成物中のリン系熱安定剤の含有量は、ポリアミド組成物100質量部に対して、好ましくは0.01〜1質量部であり、より好ましくは0.10〜1質量部である。上記の範囲内の場合、耐熱エージング性を一層向上させ、さらにガス発生量を低減させることができる。
<アミン系熱安定剤>
アミン系熱安定剤としては、特に制限されないが、例えば、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルアセトキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ステアリルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−シクロヘキシルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−ベンジルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−フェノキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(エチルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(シクロヘキシルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(フェニルカルバモイルオキシ)−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−カーボネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−オキサレート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−マロネート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−アジペート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−テレフタレート、1,2−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−エタン、α,α’−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルオキシ)−p−キシレン、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジルトリレン−2,4−ジカルバメート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ヘキサメチレン−1,6−ジカルバメート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,5−トリカルボキシレート、トリス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)−ベンゼン−1,3,4−トリカルボキシレート、1−[2−{3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}ブチル]−4−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ]2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、及び1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールとβ,β,β’,β’−テトラメチル−3,9−[2,4,8,10−テトラオキサスピロ(5,5)ウンデカン]ジエタノールとの縮合物が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アミン系熱安定剤を用いる場合、ポリアミド組成物中のアミン系熱安定剤の含有量は、ポリアミド組成物100質量部に対して、好ましくは0.01〜1質量部であり、より好ましくは0.1〜1質量部である。上記の範囲内の場合、耐熱エージング性を一層向上させることができ、さらにガス発生量を低減させることができる。
<周期律表の第Ib族、第IIb族、第IIIa族、第IIIb族、第IVa族及び第IVb族の元素の金属塩>
周期律表の第Ib族、第IIb族、第IIIa族、第IIIb族、第IVa族及び第IVb族の元素の金属塩としては、特に制限されることはないが、好ましくは銅塩である。かかる銅塩としては、特に制限されないが、例えば、ハロゲン化銅(ヨウ化銅、臭化第一銅、臭化第二銅、塩化第一銅など)、酢酸銅、プロピオン酸銅、安息香酸銅、アジピン酸銅、テレフタル酸銅、イソフタル酸銅、サリチル酸銅、ニコチン酸銅及びステアリン酸銅、並びにエチレンジアミン、エチレンジアミン四酢酸などのキレート剤に銅の配位した銅錯塩が挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記で列挙した銅塩の中でも、好ましくはヨウ化銅、臭化第一銅、臭化第二銅、塩化第一銅及び酢酸銅よりなる群から選択される1種以上であり、より好ましくはヨウ化銅及び/又は酢酸銅である。かかる好ましい銅塩を用いた場合、耐熱エージング性に優れ、且つ押出時のスクリューやシリンダー部の金属腐食(以下、単に「金属腐食」ともいう。)を抑制可能なポリアミド組成物を得ることができる。
銅塩を用いる場合、ポリアミド組成物中の銅塩の含有量は、ポリアミド組成物100質量部に対して、好ましくは0.01〜0.2質量部であり、より好ましくは0.02〜0.15質量部である。上記範囲内の場合、耐熱エージング性が一層向上するとともに、銅の析出や金属腐食を抑制することができる。
また、耐熱エージング性を向上させる観点から、ポリアミド組成物全量に対し、銅元素の含有濃度として、好ましくは10〜500質量ppmであり、より好ましくは30〜500質量ppmであり、さらに好ましくは50〜300質量ppmである。
<アルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物>
アルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物としては、特に制限されないが、例えば、ヨウ化カリウム、臭化カリウム、塩化カリウム、ヨウ化ナトリウム及び塩化ナトリウム、並びにこれらの混合物が挙げられる。中でも、耐熱エージング性の向上及び金属腐食の抑制という観点から、好ましくはヨウ化カリウム及び臭化カリウム、並びにこれらの混合物であり、より好ましくはヨウ化カリウムである。
アルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物を用いる場合、ポリアミド組成物中のアルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物の含有量は、ポリアミド組成物100質量部に対して、好ましくは0.05〜5質量部であり、より好ましくは0.2〜2質量部である。上記の範囲内の場合、耐熱エージング性が一層向上するとともに、銅の析出や金属腐食を抑制することができる。
上記で説明してきた熱安定剤の成分は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよいが、中でも、銅塩とアルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物との混合物が好適である。
銅塩とアルカリ金属及びアルカリ土類金属のハロゲン化物との割合は、ハロゲンと銅とのモル比(ハロゲン/銅)が2/1〜40/1となるように、ポリアミド組成物に含有させることが好ましく、より好ましくは5/1〜30/1である。上記した範囲内の場合、耐熱エージング性を一層向上させることができる。
上記のハロゲン/銅が2/1以上である場合、銅の析出及び金属腐食を抑制することができるため好適である。一方、上記のハロゲン/銅が40/1以下である場合、靭性などの機械的物性を殆ど損なうことなく、成形機のスクリュー等の腐食を防止できるため、好適である。
[ポリアミド組成物に含まれ得るその他の成分]
前記ポリアミド組成物は、本実施形態の目的を損なわない範囲で、ポリアミドに慣用的に用いられる添加剤、例えば、顔料や染料などの着色剤(着色マスターバッチを含む。)、難燃剤、フィブリル化剤、潤滑剤、蛍光漂白剤、可塑化剤、酸化防止剤、安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、流動性改良剤、充填剤、補強剤、展着剤、核剤、ゴム及び強化剤、並びに他のポリマーなどを含有することもできる。
(ポリアミド組成物の製造方法)
本実施形態の自動車部品に含まれるポリアミド組成物の製造方法は、(A)ポリアミドと、(B)無機充填材と、所望により(C)銅化合物及び金属ハロゲン化合物及び熱安定剤等のその他の成分とを混合する方法であれば、特に限定されるものではない。
(A)ポリアミド、(B)無機充填材、(C)銅化合物及び金属ハロゲン化合物等の混合方法としては、例えば、(A)ポリアミドと(B)無機充填材と(C)銅化合物及び金属ハロゲン化合物とを、ヘンシェルミキサーなどを用いて混合し、溶融混練機に供給して混練する方法や、単軸又は2軸押出機で溶融状態にした(A)ポリアミド並びに(C)銅化合物及び金属ハロゲン化合物に、サイドフィダーから(B)無機充填材を配合する方法などが挙げられる。
上述した各種熱安定剤や、添加剤等のその他の成分については、一般的には、押出混練時に添加してもよく、押出後のペレットに添加するようにしてもよく、あるいはポリアミドの重合時に添加してもよい。
ポリアミド組成物を構成する成分を溶融混練機に供給する方法は、すべての構成成分を同一の供給口に一度に供給してもよいし、構成成分をそれぞれ異なる供給口から供給してもよい。
溶融混練温度は、樹脂温度にして250〜375℃程度であることが好ましい。
溶融混練時間は、0.25〜5分程度であることが好ましい。
溶融混練を行う装置としては、特に限定されるものではなく、公知の装置、例えば、単軸又は2軸押出機、バンバリーミキサー、及びミキシングロールなどの溶融混練機を用いることができる。
ポリアミド組成物の製造方法は、(A)ポリアミド、及び(C)銅化合物及び金属ハロゲン化合物を以下の方法により混合した後に、(B)無機充填材を混合する方法であってもよい。
かかる混合方法としては、(A)ポリアミドの重合工程中に(C)銅化合物及び金属ハロゲン化合物をそれぞれ単独で又は混合物として添加する方法(以下、「製法1」と略称する場合がある。)や、溶融混練を用いて(A)ポリアミドと(C)銅化合物及び金属ハロゲン化合物とをそれぞれ単独で又は混合物として添加する方法(以下、「製法2」と略称する場合がある。)などが挙げられる。
(A)ポリアミドに、(C)銅化合物及び金属ハロゲン化合物を添加する場合、固体のまま添加してもよく、水溶液の状態で添加してもよい。
製法1における「ポリアミドの重合工程中」とは、原料モノマーからポリアミドの重合完了までのいずれかの工程であって、その間であるならばどの時点でもよい。
製法2の溶融混練を行う装置としては、特に限定されるものではなく、公知の装置、例えば、単軸又は2軸押出機、バンバリーミキサー、及びミキシングロールなどの溶融混練機などを用いることができる。中でも2軸押出機が好ましく用いられる。
溶融混練の温度は、(A)ポリアミドの融点よりも、好ましくは1〜100℃程度高い温度、より好ましくは10〜50℃程度高い温度である。
混練機での剪断速度は100sec-1以上程度であることが好ましく、混練時の平均滞留時間は0.25〜5分程度であることが好ましい。
なお、ポリアミド組成物の製造工程においては、本実施形態の目的を損なわない程度で、(C)銅化合物及び金属ハロゲン化合物をポリアミド中に分散させる目的で(分散剤として)、他の成分を添加してもよい。
前記他の成分としては、例えば、滑剤としてラウリル酸などの高級脂肪酸、高級脂肪酸とアルミニウムなどの金属との高級脂肪酸金属塩、エチレンビスステアリルアミドなどの高級脂肪酸アミド、及びポリエチレンワックスなどのワックス類などが挙げられる。
また、一以上のアミド基を有する有機化合物も挙げられる。
(ポリアミド組成物の成形方法)
ポリアミド組成物は、周知の成形方法、例えば、プレス成形、射出成形、ガスアシスト射出成形、溶着成形、押出成形、吹込成形、フィルム成形、中空成形、多層成形及び溶融紡糸などを用いて各種成形品に加工できる。
ポリアミド組成物から得られる成形品は、靭性、成形性及び低吸水性に優れ、さらに耐熱性及び耐振動疲労性にも優れる。
(ポリアミド組成物及びその成形品の物性)
ポリアミド組成物の25℃の相対粘度ηr、融点Tm2、融解熱量ΔH、及びガラス転移温度Tgは、前記(A)ポリアミドにおける測定方法と同様の方法により測定することができる。また、ポリアミド組成物における測定値が、前記(A)ポリアミドの測定値として好ましい範囲と同様の範囲にあることにより、耐熱性、成形性及び耐薬品性に優れるポリアミド組成物を得ることができる。
ポリアミド組成物の溶融せん断粘度ηsは、好ましくは30〜200Pa・sであり、より好ましくは40〜180Pa・sであり、さらに好ましくは50〜150Pa・sである。
溶融せん断粘度は、下記実施例に記載の方法により測定することができる。
溶融せん断粘度が上記範囲内にあることにより、流動性に優れるポリアミド組成物を得ることができ、自動車部品として成形する際に、比較的大きな部品や薄肉部のある成形品に対し、成形不良が起こりにくい点で優れる。
ポリアミド組成物から得られる成形品の引張強度は、好ましくは180MPa以上であり、より好ましくは190MPa以上であり、さらに好ましくは200MPa以上である。
引張強度の測定は、下記実施例に記載するように、ASTM D638に準じて行うことができる。
成形品の引張強度が180MPa以上であることにより、強度及び剛性に優れる自動車部品を得ることができる。
ポリアミド組成物から得られる成形品の引張伸度は、好ましくは1.5%以上であり、より好ましくは2.0%以上であり、さらに好ましくは2.5%以上である。
引張伸度の測定は、下記実施例に記載するように、ASTM D638に準じて行うことができる。
成形品の引張伸度が1.5%以上であることにより、靭性に優れる自動車部品を得ることができる。
ポリアミド組成物から得られる成形品の吸水率は、好ましくは5.0%以下であり、より好ましくは4.0%以下であり、さらに好ましくは3.0%以下である。
吸水率は、下記実施例に記載の方法により測定することができる。
成形品の吸水率が5.0%以下であることにより、低吸水性に優れる自動車部品を得ることができる。
ポリアミド組成物から得られる成形品の100℃における曲げ弾性率は、好ましくは5.5GPa以上であり、より好ましくは6.5GPa以上であり、さらに好ましくは7.5GPa以上である。
成形品の100℃における曲げ弾性率が、5.5GPa以上であることにより、高温剛性に優れる自動車部品を得ることができる。
ポリアミド組成物から得られる成形品の強度半減期は、好ましくは40日以上であり、より好ましくは45日以上であり、さらに好ましくは50日以上である。
強度半減期は、下記実施例に記載の方法により測定することができる。
成形品の強度半減期が40日以上であることにより、耐熱性、特に、耐熱エージング性に優れる自動車部品を得ることができる。
ポリアミド組成物から得られる成形品の破壊応力は、好ましくは45MPa以上であり、より好ましくは50MPa以上であり、さらに好ましくは55MPa以上である。
破壊応力は、下記実施例に記載の方法により測定することができる。
成形品の破壊応力が45MPa以上であるポリアミド組成物を成形することにより、耐振動疲労性に優れる自動車部品を得ることができる。
ポリアミド組成物から得られる成形品の浸漬後の引張強度保持率は、好ましくは70%以上であり、より好ましくは75%以上であり、さらに好ましくは80%以上である。
浸漬後の引張強度保持率は、下記実施例に記載の方法により測定することができる。
成形品の浸漬後の引張強度保持率が70%以上であることにより、耐LLC性に優れる自動車部品を得ることができる。
[自動車部品]
ポリアミド組成物を含む成形品は、自動車部品として用いる。
上述したポリアミド組成物は、流動性、強度、剛性、靭性及び低吸水性に優れ、さらに高温剛性、耐熱エージング性、耐振動疲労性、耐LLC性及び表面外観にも優れるので自動車部品の原材料として好適に用いることができる。本実施形態の自動車部品は、自動車吸気系部品及び自動車冷却系部品を除く自動車部品である。かかる自動車部品としては、アンダーフード部品、機構部品、内装部品、外装部品及び電装部品などが挙げられる。
また、上述したポリアミド組成物は、流動性、強度、剛性、靭性、低吸水性、高温剛性、耐熱エージング性、耐振動疲労性及び耐LLC性に優れるので、自動車アンダーフード部品として非常に好適に用いられる。
自動車アンダーフード部品としては、特に限定されるものではなく、例えば、フロントエンドモジュール、ロッカーアームカバー、オーナメントカバー、オイルパン、サージタンク、パワステオイルタンク、冷却パイプ、EGR配管、オイルクーラータンク、オイルパイプ、オイルポンプ、オイルフィルターキャップ、ウォーターポンプ、ウォーターポンプインペラー、ウォーターポンプハウジング、ウォーターパイプ、クーリングファン、シリンダーヘッドカバー、バルブ、ブレーキ配管、燃料配管用チューブ、吸気ダクト、エンジンカバー、エアークリーナー、インバーターケース、コンバーターケース、駆動モーターケース、ガソリンタンクケース、燃料タンク、燃料タンクバルブ、インジェクター、オルタネーター、クラッチマスターシリンダー、モーターブラッシホルダー、結束バンド、吸気バルブボディ、ブレーキシリンダーガイド及びATF冷却ユニット等が挙げられる。
また、上述したポリアミド組成物は、強度、剛性、靭性、高温剛性、耐熱エージング性、耐振動疲労性に優れるので、自動車機構部品として非常に好適に用いられる。
自動車機構部品としては、特に限定されるものではなく、例えば、アクティブマウント、トルクロッド、シフトレバーブラケット、ステアリングロックブラケット、電子スロットルギア、ミッションアクチュエーター、オイルフィルターブラケット、ステアリングブラケット、ブレーキシリンダーガイド、インパネレインフォース、ミラーブラケット、バックドアインナー、ギヤ、ABS用ピストン及びキーシリンダーなどが挙げられる。
さらに、上述したポリアミド組成物は、強度、剛性、靭性、低吸水性、高温剛性、耐熱エージング性、表面外観に優れるので、自動車内装部品として非常に好適に用いられる。
自動車内装部品としては、特に限定されるものではなく、例えば、ステアリングホイール、ドアインナーハンドル、ドアハンドルカウル、室内ミラーブラケット、エアコンスイッチ、インストルメンタルパネル、コンソールボックス、グローブボックス、及びトリムなどが挙げられる。
さらにまた、上述したポリアミド組成物は、流動性、強度、剛性、靭性、低吸水性、高温剛性、耐熱エージング性、耐振動疲労性、表面外観に優れるので、自動車外装部品として非常に好適に用いられる。
自動車外装部品としては、特に限定されるものではなく、例えば、サンルーフデフレクター、ルーフレール、ドアミラーステイ、フード、フロントフェンダー、リアクオーターパネル、バックドアパネル、アウタードアハンドル、モール、ランプハウジング、フロントグリル、マッドガード、サンルーフブラケット及びサイドバンパーなどが挙げられる。
またさらに、上述したポリアミド組成物は、強度、靭性、低吸水性、高温剛性、耐熱エージング性、耐振動疲労性、に優れるので、自動車電装部品として非常に好適に用いられる。
自動車電装部品としては、特に限定されるものではなく、例えば、コネクターやワイヤーハーネスコネクター、モーター部品、ランプソケット、センサー車載スイッチ、及びコンビネーションスイッチ、スチックコイルケースタワー、モーターインシュレーター、FPMボビン、ハンドル舵角センサー、NSSカバー、ECUハウジング、高電圧コネクター、AT回転センサーハウジングなどが挙げられる。
以下、本実施形態を実施例及び比較例によってさらに具体的に説明するが、本実施形態は、これらの実施例のみに限定されるものではない。
実施例及び比較例に用いた原材料及び測定方法を以下に示す。
なお、本実施例において、1kg/cm2は、0.098MPaを意味する。
[原材料]
本実施例において下記化合物を用いた。
〔(A)ポリアミド〕
<(a)ジカルボン酸>
(1)1,4−シクロヘキサンジカルボン酸(CHDA) イーストマンケミカル製 商品名 1,4−CHDA HPグレード(トランス異性体/シス異性体(モル比)=25/75)
(2)テレフタル酸(TPA) 和光純薬工業製 商品名 テレフタル酸
(3)アジピン酸(ADA) 和光純薬工業製 商品名 アジピン酸
(4)スベリン酸(C8DA) 和光純薬工業製 商品名 スベリン酸
(5)アゼライン酸(C9DA) 和光純薬工業製 商品名 アゼライン酸
(6)セバシン酸(C10DA) 和光純薬工業製 商品名 セバシン酸
(7)ドデカン二酸(C12DA) 和光純薬工業製 商品名 ドデカン二酸
(8)テトラデカン二酸(C14DA) 東京化成工業製 商品名 テトラデカン二酸
(9)ヘキサデカン二酸(C16DA) 東京化成工業製 商品名 ヘキサデカン二酸
<(b)ジアミン>
(10)2−メチルペンタメチレンジアミン(2MPD) 東京化成工業製 商品名 2−メチル−1,5−ジアミノペンタン
(11)ヘキサメチレンジアミン(HMD) 和光純薬工業製 商品名 ヘキサメチレンジアミン
(12)1,9−ノナメチレンジアミン(NMD) アルドリッチ製 商品名 1,9−ノナンジアミン
(13)2−メチルオクタメチレンジアミン(2MOD) 特開平05−17413号公報に記載されている製法を参考にして製造した。
(14)2,2,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミンと2,4,4−トリメチル−1,6−ヘキサンジアミンの混合物(TMHD) アルドリッチ製 商品名 C,C,C−1,6−ヘキサメチレンジアミン
<(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸>
(15)ε−カプロラクタム(CPL) 和光純薬工業製 商品名 ε−カプロラクタム
〔(B)無機充填材〕
(15)ガラス繊維(GF) 日本電気硝子製 商品名 ECS03T275H 平均繊維径(平均粒径)10μmφ(真円状)、カット長3mm
〔(C)銅化合物及び金属ハロゲン化合物〕
(16)ヨウ化銅(CuI)和光純薬工業製 商品名 ヨウ化銅(I)
(17)ヨウ化カリウム(KI)和光純薬工業製 商品名 ヨウ化カリウム
〔分散剤〕
(18)エチレンビスステアリルアミド ライオン製 商品名 アーモワックス EBS
〔その他の成分〕
(19)カーボンブラック 三菱化学(株)製 商品名 三菱カーボンブラック#52
[ポリアミド成分量の計算]
(a−1)脂環族ジカルボン酸のモル%は、(原料モノマーとして加えた(a−1)脂環族ジカルボン酸のモル数/原料モノマーとして加えた全ての(a)ジカルボン酸のモル数)×100として、計算により求めた。
(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンのモル%は、(原料モノマーとして加えた(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンのモル数/原料モノマーとして加えた全ての(b)ジアミンのモル数)×100として、計算により求めた。
また、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸のモル%は、(原料モノマーとして加えた(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸のモル数/原料モノマーとして加えた、全ての(a)ジカルボン酸のモル数+(b)全てのジアミンのモル数+(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸のモル数)×100として、計算により求めた。
なお、上記式により計算する際に、分母及び分子には、追添分として加えた(b−1)主鎖から分岐した置換基を持つジアミンのモル数は含まれない。
[測定方法]
(1)融点Tm1、Tm2(℃)、融解熱量ΔH(J/g)
JIS−K7121に準じて、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCを用いて測定した。測定条件は、窒素雰囲気下、試料(ポリアミド)約10mgを昇温速度20℃/minでサンプルの融点に応じて300〜350℃まで昇温したときに現れる吸熱ピーク(融解ピーク)の温度をTm1(℃)とした。昇温の最高温度の溶融状態で温度を2分間保った後、降温速度20℃/minで30℃まで降温し、30℃で2分間保持した後、昇温速度20℃/minで同様に昇温したときに現れる吸熱ピーク(融解ピーク)の最大ピーク温度を融点Tm2(℃)とした。その全ピーク面積を融解熱量ΔH(J/g)とした。なお、ピークが複数ある場合には、融解熱量が1J/g以上のものをピークとみなした上でTm2及びΔHを求めた。例えば、融点295℃、前記融点での融解熱量=20J/gと、融点325℃、前記融点での融解熱量=5J/gという2つのピークが存在する場合、融点Tm2を325℃(複数のピークの中での最高温度)とし、融解熱量ΔHを25J/g(=20J/g+5J/g)とした。
(2)トランス異性体比率
ポリアミド30〜40mgをヘキサフルオロイソプロパノール重水素化物1.2gに溶解し、1H−NMRで測定した。脂環族ジカルボン酸が1,4−シクロヘキサンジカルボン酸の場合、トランス異性体に由来する1.98ppmのピーク面積とシス異性体に由来する1.77ppmと1.86ppmのピーク面積の比率から、ポリアミド中の脂環族ジカルボン酸のトランス異性体比率を求めた。
(3)ガラス転移温度Tg(℃)
JIS−K7121に準じて、PERKIN−ELMER社製Diamond−DSCを用いて測定した。測定条件は、試料(ポリアミド)をホットステージ(Mettler社製EP80)で溶融させて得られた溶融状態のサンプルを、液体窒素を用いて急冷し固化させて測定サンプルとした。得られた測定サンプル10mgを用いて、昇温速度20℃/minの条件下、30〜350℃の範囲で昇温して、ガラス転移温度Tgを測定した。
(4)25℃の相対粘度ηr
JIS−K6920に準じて実施した。具体的には、98%硫酸を用いて、1%の濃度の溶解液[(ポリアミド1g)/(98%硫酸100mL)の割合]を作製し、25℃の温度条件下で測定した。
(5)溶融せん断粘度ηs(Pa・s)
上記測定方法(1)で求めた融点+20℃の温度条件下で、せん断速度1000sec-1における溶融せん断粘度ηsで流動性を評価した。具体的な測定方法は、英国ROSAND社製ツインキャピラリーレオメーターRH7−2型を使用し、オリフィスは、ダイ径1.0mm、ダイ入口角180度のもので、L/Dが16及び0.25の2つのオリフィスを使用した。
(6)引張強度(MPa)及び引張伸度(%)
ASTM引張試験用のダンベル射出成形試験片(3mm厚)を用いて、ASTM D638に準じて行った。成形試験片は、射出成形機(日精樹脂(株)製PS40E)にASTM引張試験(ASTM D638)用のダンベル試験片(3mm厚)の金型(金型温度=表4〜表7中のポリアミドのガラス転移温度Tg+20℃)を取り付けて、シリンダー温度=(表4〜表7中のポリアミドの融点Tm2+10)℃〜(表4〜表7中のポリアミドの融点Tm2+30)℃で成形を行い、作製した。
(7)吸水率(%)
ASTM引張試験用のダンベル射出成形試験片(3mm厚)を成形後の絶乾状態(dry as mold)で、試験前質量(吸水前質量)を測定した。次に、80℃の純水中に24時間浸漬させた。その後、水中から試験片を取り出し、表面の付着水分をふき取り、恒温恒湿(23℃、50RH%)雰囲気下に30分放置後、試験後質量(吸水後質量)を測定した。吸水前質量に対する吸水後質量の増分を吸水量とし、吸水前質量に対する吸水量の割合を、試行数n=3で求め、その平均値を吸水率(%)とした。
(8)銅濃度、ハロゲン濃度、並びにハロゲン及び銅のモル比(ハロゲン/銅)
銅濃度は、試料(ポリアミド組成物)に硫酸を加え、加熱しながら硝酸を滴下して有機成分を分解し、得られた分解液を純水中で定容し、ICP発光分析(高周波プラズマ発光分析)法により定量した。ICP発光分析装置は、SEIKO電子工業社製Vista−Proを用いた。
ハロゲン濃度は、ヨウ素を例にとると、試料を高純度の酸素で置換したフラスコ中で燃焼し、発生したガスを吸収液に捕集し、得られた捕集液中のヨウ素を1/100N 硝酸銀溶液による電位差滴定法を用いて定量した。
ハロゲン及び銅のモル比(ハロゲン/銅)は、上記したそれぞれの定量値を用いて、分子量からモルに換算し算出した。
(9)高温曲げ弾性率(GPa)
ASTM引張試験用のダンベル射出成形試験片(3mm厚)を用いて、ASTM D790に準じて行った。測定温度は100℃とした。成形試験片は、射出成形機(日精樹脂(株)製PS40E)にASTM引張試験(ASTM D638)用のダンベル試験片(3mm厚)の金型(金型温度=表4〜表7中のガラス転移温度Tg+20℃)を取り付けて、シリンダー温度=(表4〜表7中のポリアミドの融点Tm2+10)℃〜(表4〜表7中のポリアミドの融点Tm2+30)℃で成形を行い、作製した。
(10)強度半減期(日)
上記測定方法(6)のASTM引張試験用のダンベル射出成形試験片(3mm厚)を熱風オーブン中で200℃、所定時間処理した後、ASTM−D638に準じて引張強度を測定した。熱処理前の引張強度に対する熱処理後の引張強度を引張強度保持率として算出し、かかる引張強度保持率が50%となる熱処理時間(日)を強度半減期とした。
(11)破壊応力(MPa)
上記測定方法(6)のASTM引張試験用のダンベル射出成形試験片(3mm厚)を、株式会社鷺宮製作所製油圧サーボ疲労試験機EHF−50−10−3を用い、120℃の空気雰囲気下、周波数20Hzの正弦波にて引張り荷重を負荷し、1,000,000回で破壊する応力(MPa)を求めた。
(12)浸漬後の引張強度保持率(%)
上記測定方法(6)のASTM引張試験用のダンベル射出成形試験片(3mm厚)を、120℃のエチレングリコール50%水溶液に24時間、720時間浸漬し、室温に放置した。その後、上記測定方法(6)の方法により引張試験を行い、引張強度を測定した。
24時間浸漬後の引張強度に対する、720時間浸漬後の引張強度の割合(%)を、浸漬後の引張強度保持率として求めた。
(13)表面外観
平板試験片(130mm×130mm×3mm厚)の中央部を光沢計(HORIBA製IG320)を用いて、JIS−K7150に準じて60度グロスを測定した。
平板試験片は、射出成形機(東芝機械(株)製IS150E)を用いて、平板試験片(130mm×130mm×3mm厚)の金型(金型温度=表4〜表6のポリアミドのガラス転移温度Tg+20℃)を取り付けて、シリンダー温度=表4〜表6中のポリアミドの融点Tm2+30℃で1.0秒で充填するように射出速度を設定して成形を行った。
なお、黒色の平板試験片で実施するために、後述する[製造例24]の黒色着色マスターバッチペレットをそれぞれ組成物100質量部に対して、2.5質量部ブレンドしたブレンドペレット作製し、これを用いて平板試験片を成形した。
表面外観評価としては、測定したグロス値が、70%〜100%を○(優)、50〜70%を△(良)、0〜50%を×(並)とした。
[製造例1]
下記表1に示す化合物、及び配合量に従い、「熱溶融重合法」によりポリアミドの重合反応を実施した。
(a)CHDA 896g(5.20モル)、及び(b)2MPD 604g(5.20モル)を、蒸留水1,500gに溶解させ、原料モノマーの等モル50質量%均一水溶液を作った。この均一水溶液に2MPD 15g(0.13モル)を追添した。
得られた水溶液を内容積5.4Lのオートクレーブ(日東高圧製)に仕込み、液温(内温)が50℃になるまで保温して、オートクレーブ内を窒素置換した。オートクレーブの槽内の圧力が、ゲージ圧として(以下、槽内の圧力は全てゲージ圧として表記する。)、約2.5kg/cm2になるまで、液温を約50℃から加熱を続けた(この系での液温は約145℃であった。)。槽内の圧力を約2.5kg/cm2に保つため水を系外に除去しながら、加熱を続けて、水溶液の濃度が約75%になるまで濃縮した(この系での液温は約160℃であった。)。水の除去を止め、槽内の圧力が約30kg/cm2になるまで加熱を続けた(この系での液温は約245℃であった。)。槽内の圧力を約30kg/cm2に保つため水を系外に除去しながら、最終温度(後述の350℃)−50℃(ここでは300℃)になるまで加熱を続けた。液温が最終温度(後述の350℃)−50℃(ここでは300℃)まで上昇した後に、加熱は続けながら、槽内の圧力が大気圧(ゲージ圧は0kg/cm2)になるまで120分ほどかけながら降圧した。
その後、樹脂温度(液温)の最終温度が約350℃になるようにヒーター温度を調整した。樹脂温度は約350℃のまま、槽内を真空装置で約53.3kPa(400torr)の減圧下に30分維持した。その後、窒素で加圧し下部紡口(ノズル)からストランド状にし、水冷、カッティングを行いペレット状で排出して、ポリアミドを得た。
得られたポリアミドの上記測定方法(1)〜(4)の結果を表4(融点Tm2、ガラス転移温度Tg、トランス異性体比率、及び25℃での相対粘度)に示す。
[製造例2〜20]
製造例1において、(a)ジカルボン酸、(b)ジアミン、及び(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸として、下記表1又は2に記載の化合物及び量を用いた点と、樹脂温度の最終温度を下記表4又は5に記載の温度にした点以外は、製造例1に記載した方法でポリアミドの重合を行った(「熱溶融重合法」)。
得られたポリアミドの上記測定方法(1)〜(4)の結果を下記表4及び5に示す。
[比較製造例1]
製造例1において、(a)ジカルボン酸、(b)ジアミン、及び(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸として、下記表3に記載の化合物及び量を用いた点と、樹脂温度の最終温度を下記表6に記載の温度にした点以外は、製造例1に記載した方法でポリアミドの重合を行った(「熱溶融重合法」)。
比較製造例1においては、重合途中で、オートクレーブ内で固化したため、ストランドでの取り出しができなかったので、冷却後、塊で取り出し、粉砕機にて粉砕して、ペレットくらいの大きさにした。成形時の発泡が激しかったため、成形品が得られなかった。
[比較製造例2〜7]
製造例1において、(a)ジカルボン酸、(b)ジアミン、及び(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸として、下記表3に記載の化合物及び量を用いた点と、樹脂温度の最終温度を下記表6に記載の温度にした点以外は、製造例1に記載した方法でポリアミドの重合を行った(「熱溶融重合法」)。得られたポリアミドの上記測定方法(1)〜(4)の結果を下記表6に示す。
Figure 2011074363
Figure 2011074363
Figure 2011074363
以下、製造例21〜23は、銅化合物及び金属ハロゲン化合物の製造に関する。
[製造例21]
KI 85.1質量部、エチレンビスステアリルアミド10質量部を混合し、KIとエチレンビスステアリルアミドの混合物を得た。この混合物にCuI 4.9質量部をよく混合し、ディスクペレッター(不二パウダル社製 F5−11−175)で顆粒化し、顆粒(1)を得た。
[製造例22]
KI 80.7質量部、エチレンビスステアリルアミド10質量部を混合し、KIとエチレンビスステアリルアミドの混合物を得た。この混合物にCuI 9.3質量部をよく混合し、ディスクペレッター(不二パウダル社製 F5−11−175)で顆粒化し、顆粒(2)を得た。
[製造例23]
KI 88.0質量部、エチレンビスステアリルアミド10質量部を混合し、KIとエチレンビスステアリルアミドの混合物を得た。この混合物にCuI 2.0質量部をよく混合し、ディスクペレッター(不二パウダル社製 F5−11−175)で顆粒化し、顆粒(3)を得た。
[製造例24]
ポリアミド66(旭化成ケミカルズ(株)製 レオナ1300) 80質量部、エチレンビスステアリルアミド 8質量部、カーボンブラック 12質量部を混合し、二軸押出機[東芝機械(株)製TEM35φL/D=47.6、設定温度はポリアミドの280℃とした、スクリュー回転数300rpm]を用いて溶融混練し、ストランド状に取り出し、ストランドバス(水槽)で冷却後、カッターで造粒し黒色着色マスターバッチペレットを得た。
以下の実施例及び比較例は、ポリアミド組成物に関する。
[実施例1]
製造例1のポリアミド100質量部に対して、6.1質量部の製造例22で製造した顆粒(1)、55質量部の無機充填材(GF)を含有させ、二軸押出機[東芝機械(株)製TEM35φL/D=47.6、設定温度は、下記表4中のポリアミドの融点(Tm2)+20℃(具体的には、製造例1のポリアミドを用いる場合、327+20=347℃)とした、スクリュー回転数300rpm]を用いて溶融混練し、ストランド状に取り出し、ストランドバス(水槽)で冷却後、カッターで造粒し、ポリアミド組成物を得た。得られたポリアミド組成物についての上記測定方法(5)〜(13)の結果を下記表4に示す。
[実施例2〜20]
製造例1のポリアミドに代えて、それぞれ製造例2〜20のポリアミドを用いた点以外は、実施例1と同様にして実施した。得られたポリアミド組成物についての上記測定方法(5)〜(13)の結果を下記表4及び5に示す。
[比較例1]
製造例1のポリアミドに代えて、比較製造例1のポリアミドを用いた点以外は、実施例1と同様にして実施しようとしたが、押出状態が非常に不安定で、ストランド状のポリアミド組成物を得ることができなかった。
[比較例2〜7]
製造例1のポリアミドに代えて、それぞれ比較製造例2〜7のポリアミドを用いた点以外は、実施例1と同様にして実施した。得られたポリアミド組成物についての上記測定方法(5)〜(13)の結果を下記表6に示す。
[実施例21]
製造例5のポリアミド100質量部に対して、製造例21の顆粒(1):3.1質量部を用いた点以外は実施例5と同様にして実施した。得られたポリアミド組成物についての上記測定方法(5)〜(12)の結果を表7に示す。
[実施例22]
製造例5のポリアミド100質量部に対して、製造例21の顆粒(1):9.2質量部を用いた点以外は実施例5と同様にして実施した。得られたポリアミド組成物についての上記測定方法(5)〜(12)の結果を表7に示す。
[実施例23]
製造例5のポリアミド100質量部に対して、製造例21の顆粒(1):12.2質量部を用いた点以外は実施例5と同様にして実施した。得られたポリアミド組成物についての上記測定方法(5)〜(12)の結果を表7に示す。
[実施例24]
製造例5のポリアミド100質量部に対して、製造例22の顆粒(2):3.2質量部を用いた点以外は実施例5と同様にして実施した。得られたポリアミド組成物についての上記測定方法(5)〜(12)の結果を表7に示す。
[実施例25]
製造例5のポリアミド100質量部に対して、製造例23の顆粒(3) 15.0質量部を用いた点以外は実施例5と同様にして実施した。得られたポリアミド組成物についての上記測定方法(5)〜(12)の結果を表7に示す。
Figure 2011074363
Figure 2011074363
Figure 2011074363
Figure 2011074363
表4〜7の結果から、(A)特定の(a)ジカルボン酸及び(b)ジアミンを重合させたポリアミドと、(B)無機充填材とを含有する実施例1〜25のポリアミド組成物から得られた成形品は、流動性、強度、剛性、靭性及び低吸水性に優れ、さらに高温剛性、耐熱エージング性、耐振動疲労性、耐LLC性及び表面外観の点で、特に優れた特性を有するものであることを確認した。
これに対して、50モル%未満の2−メチルペンタメチレンジアミンを含むポリアミドを含有する比較例1では、押出状態が不安定なものであり、ポリアミド組成物を得ることができなかった。
また、50モル%未満の脂環族ジカルボン酸を重合させたポリアミドを含有する比較例2及び3のポリアミド組成物から得られた成形品は、低吸水性の点で十分なものではなく、比較例6のポリアミド組成物から得られた成形品は、強度及び剛性の点で十分なものではなかった。
また、特許文献1に開示されるように、(主に)テレフタル酸をジカルボン酸として重合させたポリアミドを含有する比較例4及び5のポリアミド組成物から得られた成形品は、溶融せん断粘度が大きく、流動性が低すぎ、かつ成形性の点でも十分なものではなかった。
また、PA66を含有する比較例7のポリアミド組成物から得られた成形品は、耐熱性及び低吸水性の点で劣るものであった。
本発明は、自動車アンダーフード、自動車機構部品、自動車外装部品、自動車内装部品、自動車電装部品等の各種自動車部品として、産業上の利用可能性を有する。

Claims (18)

  1. (A)(a)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸と(b)少なくとも50モル%の主鎖から分岐した置換基を持つジアミンを含むジアミンとを重合させたポリアミドと、
    (B)無機充填材と、
    を、含有するポリアミド組成物を含む、自動車部品。
  2. 前記主鎖から分岐した置換基を持つジアミンが、2−メチルペンタメチレンジアミンである、請求項1に記載の自動車部品。
  3. 前記脂環族ジカルボン酸が、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である、請求項1又は2に記載の自動車部品。
  4. 前記(a)少なくとも50モル%の脂環族ジカルボン酸を含むジカルボン酸が、炭素数10以上の脂肪族ジカルボン酸をさらに含む、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の自動車部品。
  5. 前記(A)ポリアミドが、(c)ラクタム及び/又はアミノカルボン酸をさらに共重合させたポリアミドである、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の自動車部品。
  6. 前記(A)ポリアミドの融点が、270〜350℃である、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の自動車部品。
  7. 前記(A)ポリアミド中における前記脂環族ジカルボン酸に由来する部分におけるトランス異性体比率が50〜85%である、請求項1乃至6のいずれか一項に記載の自動車部品。
  8. 前記ポリアミド組成物が、前記(A)ポリアミド100質量部に対して、前記(B)無機充填材1〜200質量部を含有する、請求項1乃至7のいずれか一項に記載の自動車部品。
  9. 前記ポリアミド組成物が、(C)銅化合物及び金属ハロゲン化合物をさらに含有する、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の自動車部品。
  10. 前記銅化合物が酢酸銅及び/又はヨウ化銅であり、前記金属ハロゲン化合物がヨウ化カリウムである、請求項9に記載の自動車部品。
  11. 前記(A)ポリアミド100質量部に対して、前記銅化合物0.01〜0.6質量部及び前記金属ハロゲン化合物0.05〜20質量部を含有する、請求項9又は10に記載の自動車部品。
  12. ハロゲン及び銅のモル比(ハロゲン/銅)が、2/1〜50/1である、請求項9乃至11のいずれか一項に記載の自動車部品。
  13. 前記(A)ポリアミド106質量部に対して、銅としての含有量が50〜2,000質量部となるように前記銅化合物を含有する、請求項9乃至12のいずれか一項に記載の自動車部品。
  14. 自動車アンダーフード部品である請求項1乃至13のいずれか一項に記載の自動車部品。
  15. 自動車機構部品である請求項1乃至13のいずれか一項に記載の自動車部品。
  16. 自動車外装部品である請求項1乃至13のいずれか一項に記載の自動車部品。
  17. 自動車内装部品である請求項1乃至13のいずれか一項に記載の自動車部品。
  18. 自動車電装部品である請求項1乃至13のいずれか一項に記載の自動車部品。
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